【文献】
SHIBA, Y. et al.,"Engineering of the pyruvate dehydrogenase bypass in Saccharomyces cerevisiae for high-level production of isoprenoids",Metab. Eng.,2007年,Vol. 9,p. 160-168
【文献】
DE SMIDT, O. et al.,"The alcohol dehydrogenases of Saccharomyces cerevisiae: a comprehensive review",FEMS Yeast Res.,2008年,Vol. 8,p. 967-978
【文献】
KUNZE, M. et al.,"A central role for the peroxisomal membrane in glyoxylate cycle function",Biochim. Biophys. Acta.,2006年,Vol. 1763,p. 1441-1452
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
アルデヒドデヒドロゲナーゼ及びアセチル−CoAシンターゼ(ACS)の過剰発現によって改質された酵母菌細胞であって、アルコールデヒドロゲナーゼ及びアセトアセチル−CoAシンターゼがさらに過剰発現され、かつペルオキシソームクエン酸シンターゼをコードする遺伝子又はサイトゾルリンゴ酸シンターゼをコードする遺伝子が、酵母菌細胞ゲノムから欠失され、かつ前記アルコールデヒドロゲナーゼがADH2であることを特徴とする、前記酵母菌細胞。
アルデヒドデヒドロゲナーゼ及びアセチル−CoAシンターゼ(ACS)を過剰発現することを含む改質した酵母菌細胞を製造するための方法であって、該方法が、さらに、アルコールデヒドロゲナーゼ及びアセトアセチル−CoAシンターゼを過剰発現することを含み、前記方法が、さらに、ペルオキシソームクエン酸シンターゼをコードする遺伝子又はサイトゾルリンゴ酸シンターゼをコードする遺伝子を、酵母菌細胞ゲノムから欠失させることを含み、かつ前記アルコールデヒドロゲナーゼがADH2であることを特徴とする、前記方法。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】サッカロミセス・セレビシエにおけるアセチル−CoA代謝の単純な概要。アセチル−CoAは、3種の異なる細胞内コンパートメント:サイトゾル(C)、ミトコンドリア(A)、及びペルオキシソーム(B)において局在化した鍵となる一次代謝物質である。3種のコンパートメント間のアセチル−CoAの直接輸送はなく、かつ3種のコンパートメントにおけるアセチル−CoAの生合成は、異なる代謝経路を含む。ミトコンドリアにおいて、アセチル−CoAは、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ複合体によってピルビン酸塩から形成される。サイトゾルにおいて、アセチル−CoAは、アセチル−CoAシンターゼによって酢酸塩から形成される。ペルオキシソームにおいて、アセチル−CoAは、(示されていないがアセチル−CoAによっても)酢酸塩から、及びβ−酸化によって脂肪酸から形成される。ミトコンドリアにおいて、アセチル−CoAの主な運命は、トリカルボン酸(TCA)回路による酸化である。ペルオキシソームにおけるアセチル−CoAは、グリオキシル酸回路(GYC)によって、リンゴ酸酵素及びTCA回路による酸化のためにミトコンドリアに輸送されてよいC
4有機酸(リンゴ酸塩及びコハク酸)に変換されてよい。サイトゾルにおけるアセチル−CoAの主な運命は、細胞内脂質(脂肪酸及びエルゴステロール)のための前駆体として働くことである。多くの産業上関心のある生物工学的な生成物は、アセチル−CoAに由来し、かつこれらのほとんどの生合成は、サイトゾルにおいて生じる。全てのこれらの生成物のためのプラットフォーム酵母菌細胞工場は、従って、サイトゾルにおけるアセチル−CoAに対して炭素のリダイレクションを有する。
【
図2】サイトゾルにおけるアセチル−CoAの製造を向上するためのプッシュ−プル−ブロック代謝工学ストラテジーの図解。NADPに依存するアセトアルデヒドデヒドロゲナーゼをコードする内因性ALD6、及びアセチル−CoAシンターゼをコードするサルモネラ・エンテリカからの異種ACS変異体(ACS
SE)を過剰発現することによって、流れが、サイトゾルにおいてアセトアルデヒドからアセチル−CoAに向かうことが確実となる(ストラテジーのプッシュ部分)。アルコールデヒドロゲナーゼをコードするADH2のさらなる過剰発現を経て、製造されたエタノールを、アセトアルデヒドに変換して戻し、及びここからさらにアセチル−CoAに変換すること(ストラテジーのプル部分)ができることがさらに確実である。所望の経路の方向においてアセチル−CoAを引き出すために、アセチル−CoAのアセトアセチル−CoA(AcAcCoA)への変換を触媒化するアセトアセチル−CoAシンターゼをコードするERG10を過剰発現し、この代謝物は、アセチル−CoAプラットフォーム株を評価するために使用したこれらの生成物のための通常の前駆体である。過剰発現に加えて、アセチル−CoAの消費を含む反応を、欠失させた(ストラテジーのブロック部分)。これは、グリオキシル酸回路(GYC)、すなわちCIT2によってコードされたペルオキシソームクエン酸シンターゼ、及びMLS1によってコードされたサイトゾルリンゴ酸シンターゼの反応の2つの鍵を含む。図における経路図は、代謝の簡単な図であり、例えばペルオキシソームにおけるクエン酸シンターゼによって使用されたアセチル−CoAは、酢酸塩からAcs1pによってこれらに合成される。
【
図3】プラスミドpIYC05及びpIYC08のマップ。
【
図4】プラスミドpICK01、pAK01及びpPHB−phaのマップ、並びに生合成経路を再構築させたα−サンタレン(A)、1−ブタノール(B)及びPHB(C)の略図。
【
図5】酵母菌アセチル−CoA代謝物質の遺伝子工学は、α−サンタレン(A)、1−ブタノール(B)及びポリヒドロキシ酪酸(PHB)(C)の製造を向上する。再構築させた生合成経路の略図を、上のパネルで示す。次の酵素は、他の生物由来である:Sts、ワンピ(Clausena lansium);PhaA、PhaB、PhaC、ラルストニア・ユートロファ(Ralstonia eutropha);Hbd、Crt、AdhE2、クロストリジウム・ベイジェンリキ(Clostridium beijerinckii);Ter、トレポネーマ・デンティコラ(Treponema denticola)。内因性HMG1(tHMG1)の不完全版を、α−サンタレン製造のために過剰発現させる。全ての遺伝子操作したS.セレビシエ株を本記載内容において記載した。培養物を、炭素源として20g/Lグルコースを有する20mlの最少培地を含む100ml撹拌フラスコ中で成長させ、α−サンタレンレベルを、GC−MSによって定量し、1−ブタノール及びPHBレベルをHPLCによって定量した。tHMGl、ヒドロキシメチルグルタリル−CoAレダクターゼ;Sts、α−サンタレンシンターゼ;PhaA、アセチル−CoAアセチルトランスフェラーゼ;PhaB、アセトアセチル−CoAレダクターゼ;PhaC、ポリ(3−ヒドロキシ酪酸)ポリメラーゼ;Hbd、3−ヒドロキシブチリル−CoAデヒドロゲナーゼ;Crt、クロトナーゼ;Ter、トランスエノイル−coAレダクターゼ;AdhE2、ブチルアルデヒドデヒドロゲナーゼ/ブタノールデヒドロゲナーゼ。
【
図6】Adh2及びErg10の過剰発現を、ACS
SE及びALD6を過剰発現する酵母菌細胞におけるα−サンタレン価を更に向上する。以下を発現する酵母菌細胞におけるα−サンタレンの比較:(i)ヒドロキシメチルグルタリル−CoAレダクターゼ(tHMG1)遺伝子及びα−サンタレンシンターゼ遺伝子(Sts)(SCIYC40株)の不完全版;(ii)ACS
SE及びALD6遺伝子(SCIYC41株)と一緒にtHMG1及びSts遺伝子;Adh2及びErg10(SCIY42株)と一緒にtHMGl、Sts、ACS
SE、ALD6遺伝子。
【0009】
発明の詳細な説明
本発明の酵母菌細胞は、増加させたレベルのアセチル−CoA及びアセトアセチル−CoAを製造し、従って増加させたレベルのそれらに由来する有用な生成物、例えばテルペノイド、1−ブタノール及びポリヒドロキシ酪酸の製造を可能にする、驚くべき利点を有する。
【0010】
酵母菌細胞は、あらゆるタイプの酵母菌細胞であってよい。有利には、酵母菌細胞は、エタノールを製造できる。より有利には、サッカロミセス属(Saccharomyces)、チゴサッカロミセス属(Zygosaccharomyces)、クリベロミセス属(Kluyveromyces)、カンジダ属(Candida)、ハンゼヌラ属(Hansenula)、デバリオミセス属(Debaryomyces)、ムコール属(Mucor)、ピチア属(Pichia)及びトルロプシス属(Torulopsis)の酵母菌から選択される。最も有利には、サッカロミセス・セレビシエである。
【0011】
ストラテジーは、アセトアルデヒドによるエタノールからサイトゾルアセチル−CoAまでの炭素のプッシュを含む。これは、アルコールデヒドロゲナーゼ、例えばサッカロミセス・セレビシエにおける内因性ADH2遺伝子、及びアルデヒドデヒドロゲナーゼ、例えばサッカロミセス・セレビシエにおけるNADP依存ALD6遺伝子、及びアセチル−CoAシンターゼ、例えばサルモネラ・エンテリカからのACS変異体(L641P)(ACS
SE)を過剰発現することにより得られる。ACS
SEは、酵素をアセチル化による阻害から防ぐ点突然変異を含み(J Biol Chem 2005, 280:26200)、かつこの変異体の使用は、及びサイトゾルにおけるアセトアルデヒドからアセチル−CoAへの流れを特に効率的に変える。
【0012】
関心のある3種の生成物に対するアセチル−CoAの引き抜きを確実にするために、アセチル−CoAのアセトアセチル−CoA(AcAcCoA)への変換を触媒化するアセチル−CoA C−アセチルトランスフェラーゼも過剰発現する。AcAcCoAは、アセチル−CoAプラットフォーム株を評価するために使用される3種の生成物のための通常の前駆体である。S.セレビシエにおいて、ERG10遺伝子は、アセチル−CoA C−アセチルトランスフェラーゼをコードする。
【0013】
本発明の好ましい一実施態様において、酵母菌細胞は、サイトゾルリンゴ酸シンターゼをコードする遺伝子、又は酵母菌細胞ゲノムからのペルオキシソームクエン酸シンターゼをコードする遺伝子の欠失によってさらに改質される。かかる欠失は、グリオキシル酸回路におけるアセチル−CoAの消費を避け、その結果他の経路、例えばテルペノイド、1−ブタノール又はポリヒドロキシ酪酸を導く経路のためのアセチル−CoAの有用性を増加する利点を有する。
【0014】
前駆体アセチル−CoAプールからの炭素の損失をさらに低減するために、従って、アセチル−CoAの消費を含む反応を有利には取り除く。これは、グリオキシル酸回路(GYC)、すなわちそれぞれS.セレビシエにおいてCIT2及びMLS1によってコードされたペルオキシソームクエン酸シンターゼ及びサイトゾルリンゴ酸シンターゼの反応の2つの鍵を含む。
【0015】
本発明の酵母菌細胞は、アルデヒドデヒドロゲナーゼ、アセチル−CoAシンターゼ(ACS)、アルコールデヒドロゲナーゼ及びアセトアセチル−CoAシンターゼを過剰発現することを含む方法によって製造されてよい。
【0016】
本発明の好ましい一実施態様において、前記方法は、サイトゾルリンゴ酸シンターゼをコードする遺伝子、又は酵母菌細胞ゲノムからのペルオキシソームクエン酸シンターゼをコードする遺伝子を欠失することをさらに含む。
【0017】
アルデヒドデヒドロゲナーゼ、ACS、アルコールデヒドロゲナーゼ、アセトアセチル−CoAシンターゼ、サイトゾルリンゴ酸シンターゼ、ペルオキシソームクエン酸シンターゼ、及び酵母菌細胞は、酵母菌細胞に関連する本発明のあらゆる実施態様において前記で定義されている。
【0018】
アルデヒドデヒドロゲナーゼ、ACS、アルコールデヒドロゲナーゼ、アセトアセチル−CoAシンターゼの過剰発現を、エピソームの酵母菌発現ベクターを使用して、又は当業者によく知られている方法を使用するゲノムの組込みによって実施してよい。これらの方法が標準であるが、しかし、例えば、Methods in Yeast Genetics, 2005 Ed., Cold Spring Harbor Laboratory pressにおいて記載されているように実施してよい。
【0019】
リンゴ酸シンターゼ及びクエン酸シンターゼの遺伝子欠失を、遺伝子欠失についての当業者によく知られているあらゆる方法、例えばGenome Res. 1997, 7:1174において記載されているクローニングを有さないPCRを基礎とした対立遺伝子置換法を使用して実施してよい。
【0020】
適した条件下で本発明の酵母菌細胞を培養することにより、二次代謝物質を製造できる。有利には、前記代謝物質を、増加させたレベルで製造し、すなわち形質転換していない酵母菌細胞を培養する場合よりも、本発明の酵母菌細胞を培養する場合に、より二次代謝物質が製造される。
【0021】
酵母菌細胞は、所望の二次代謝物質を製造できなければならない。これは、酵母菌細胞が、かかる二次代謝物質を自然に製造することができるか、又は代わりに、酵母菌細胞が、かかる代謝物質の製造のために必要である追加の遺伝子で形質転換されることを意味する。前記のような酵母菌細胞のさらなる改質は、改質されていない酵母菌細胞によって製造された二次代謝物質のレベルを増加する効果を有する。
【0022】
例えば、二次代謝物質がテルペノイドである場合に、酵母菌細胞を形質転換して、非環式テルペン前駆体のかかるテルペノイドへの変換を触媒することができるテルペンシンターゼを発現又は過剰発現してよい。これは、全ての非環式テルペン前駆体、例えばゲラニルピロホスフェート、ファルネシルピロホスフェート及びゲラニルゲラニルピロホスフェートについて、製造されることを意図したテルペノイドに依存して適用する。テルペノイドは、それらのフレーバー及びフレグランス、化粧品、医薬品及び抗菌性について公知の天然生成物である。これらの化合物は、5個の炭素単位、いわゆるイソプレン単位から製造され、それらの構造に存在するこれらの単位の数によって分類される。従って、モノテルペン、セスキテルペン及びジテルペンは、それぞれ炭素原子10個、15個及び20個を含むテルペンである。例えばセスキテルペンは、植物界において広く見いだせる。多くのモノテルペン、セスキテルペン及びジテルペン分子は、それらのフレーバー及びフレグランス特性、並びにそれらの化粧品効果、医薬品効果及び抗菌効果について公知である。300を超えるセスキテルペン炭化水素及び3000を超えるセスキテルペノイドが、同定されており、かつ多くの新たな構造が年ごとに同定されている。種々の方法、例えば蒸気蒸留又は溶媒抽出によって得られた植物抽出物は、テルペンの源として使用される。テルペン分子を通常それ自体で使用するが、しかしいくつかの場合に、化学反応物を、他の高い価の分子中にテルペンを形質転換するために使用する。今日の使用における主なテルペンは、多様な生物(植物、海洋生物、...)から抽出された天然生成物である。しかしながら、これらの源の生物のほとんどは、商業上生存可能な量を製造するために必要なラージスケール培養にも、それらの製造可能性を高めるための遺伝子操作にも従わない。さらに、多くのこれらの天然生成物は、複雑な構造を有し、かつ化学的方法によって現在は入手できない。
【0023】
好ましいセスキテルペンの例は、α−サンタレン、パチョロール、β−サンタレン、バレンセン、クベボール、ジザエン、アモルファ4,11−ジエン、フムレン、アリストロチェン、ベルガモテン、ジンギベレン、ファルネセン、カリオフィレン、イソダウセン、セスキツジェン、アバミチロール、オイデスモール、ベチスピラジエン、ロンギホレン、シクロコパカムフェン、イソロンギホレン、ゲルマクレン、ビシクロゲルマクレン、ビサボロール、ゲルマクラジエノール、ヘディカリオール、バルバテン、エピ−セドロール、エピ−アリストロチェン、セスキサビネン、クプレン、セリネン、コパエン、マクロカルペン、カジノール、インターメデオール、ネロリドール、ムウロラ−3,5−ジエン、クルクメン及びエピ−ベータサンタレンを含む。より好ましいセスキテルペンは、α−サンタレン、パチョロール、β−サンタレン、バレンセン、クベボール、ジザエン、アモルファ4,11−ジエンを含む。さらにより有利には、セスキテルペンは、パチョロール又はα−サンタレンである。
【0024】
好ましいジテルペンの例は、スクラレオール、ラブデンジオール及びタキサジエンを含む。好ましいモノテルペンの例は、リモネン、ピネン、ミリセノール、カンフェン、フェランドレン、テルピノレン、オシメン、リナロール、シネオール、ゲラニオール、テルピネン、フェンコール、カレン、サビネンを含む。
【0025】
本発明の方法を使用して製造されてよい代謝物質の他の例は、1−ブタノールである。1−ブタノールは、可能なガソリン置換として考えられている。それというのも、それは、より高いエネルギー密度を有する一方で、より少ない腐食性及びエタノールより少ない水溶性であるからである。
【0026】
本発明の方法を使用して製造されてよい代謝物質のさらなる例は、ポリヒドロキシ酪酸(PHB)である。PHBは、商業上関心のある生分解性バイオポリマーの1種である。
【0027】
本発明の酵母菌細胞を、かかる酵母菌種に適応するあらゆるタイプの成長培地中で培養してよい。かかる培地は、当業者によく知られているが、本明細書のより完全な記載を保証せず、あらゆる場合に網羅的でない。成長培地は、有利には、前記遺伝子を過剰発現するために使用されるプロモーターのタイプにも適応する。例えば、過剰発現した遺伝子がグルコース調整プロモーターの制御下にある場合に、成長培地は、有利にはグルコースを含む。
【0028】
実施例
本発明を、次の実施例の方法によってさらに詳細に記載する。
【0029】
実施例1
酵母菌株及び培地
サッカロミセス・セレビシエ株CEN.PK113−11C(MATa SUC2 MAL2−8
c ura3−52 his3−Δ1、P. Koetter, University of Frankfurt, Germanyによって提供された)を、バックグラウンド株として使用した。この研究において使用した全ての酵母菌株を表1において要約する。
【0030】
【表1】
【0031】
遺伝子操作した酵母菌株を、適宜ウラシル及び/又はヒスチジンを有さない合成デキストロース(SD)(Metabolic Engineering 2009、11:391)培地上で選択した。S.セレビシエ株を、グルコース20g/Lを有する限定最少培地(Yeast 1992、8:501)中で成長させた。
【0032】
α−サンタレンの製造のために、10%(v/v)ドデカンオーバーレイを、有機相中のα−サンタレンを捕らえるための1のOD
600で培養液に添加した。
【0033】
実施例2
ALD6、ACS
SE、ADH2及びERG10酵母菌発現プラスミド
グルコースを基礎とする培養において遺伝子発現を提供するために、全ての酵母菌発現プラスミドは、構成性プロモーターP
TEF1及びP
PGK1を有するpSP−G1及びpSP−G2を基礎とする(Yeast 2010、27:955)(この研究において使用したプラスミドのリストについて表2を参照)。
【0034】
【表2】
【0035】
それぞれのターミネーターの下流の追加の制限酵素認識部位(それぞれ、T
ADH1及びT
CYC1)を提供するために、全体の発現カセットを、プライマー17及び18(この研究において使用したプライマーのリストについて表3を参照)PCRによって増幅させ、PvuIIで切断し、そしてベクター骨格中に連結して、それぞれpSP−GM1及びpSP−GM2を生じた。P
TEF1−P
PGK1双方向プロモーターカセットを含むpSP−GM1からの2.1−kbのPvullフラグメントを、続いて、pESC−HIS(Stratagene)のPvull部位中にクローニングして、pIYC04を得た。
【0036】
【表3】
制限部位に下線を引く。
【0037】
ALD6(配列番号:42)を、プライマー対1及び2を使用してS.セレビシエCEN.PK113−5Dの染色体DNA標本(MATa SUC2 MAL2−8
c ura3−52)からPCR増幅した。これらのプライマーを使用して、核酸配列5’−AAAACA−3’(コザック配列)を、ALD6の出発コドンの上流に直ちに導入して、翻訳効率を向上した(Nucleic Acids Res. 1987、15:3581)。このストラテジーを、この研究において使用した全ての他の遺伝子に適用した。L641P突然変異を有するサルモネラ・エンテリカアセチル−CoAシンターゼ(ACS
SE)遺伝子(J. Biol. Chem. 2005, 280:26200)、ACS
SEは、最適化したコドンであり(配列番号:52)、かつ酵母菌中での高いレベルの発現のためにDNA2.0(Menlo Park, CA, USA)によって合成される。コザック配列を含み、ALD6の配列をコードする1.5−kbのBamHI/XhoIフラグメント、及びコザック配列及びACS
SEコード配列を含む2.0−kbのNotI/PacIフラグメントを、pIYC04の対応する部位に連続して挿入し、プラスミドpIYC05を得た(
図3)。
【0038】
グルコースを基礎とするHXT7プロモーターの制御下でADH2遺伝子を発現するために、HXT7の0.6−kbのプロモーター領域を、プライマー対3及び4を使用してCEN.PK113−5DからPCR増幅した。増幅した生成物を、BamHI/FseIで分割し、そしてpSP−GM1のBamHI及びFseI部位中に導入してPKG1プロモーターを置き換え、プラスミドpIYC06を得た。ADH2(配列番号:41)の1047−bpの完全配列及びその天然ターミネーターを含む434−bpの下流の配列を含む1.5−kbのフラグメントを、プライマー5及び6を使用してCEN.PK113−5DからPCRによって増幅した。同様に、CEN.PK113−5DからのERG10(配列番号:43)の1.2−kb領域を、プライマー7及び8を使用してPCR増幅した。コザック配列及びADH2を含む1.5−kbのBamHI/XhoIフラグメント、及びコザック配列及びERG10を含む1.2−kbのSpeI/SacIフラグメントを、pIYC06の対応する部位に連続して挿入し、プラスミドpIYC07を得た。
【0039】
単一のプラスミドからALD6、ACS
SE、ADH2及びERG10を過剰発現するために、pIYC08を構築した。pIYC07からのTEF1プロモーター、ERG10及びADH1ターミネーターを含む2.0−kbフラグメントを、プライマー9及び10を使用してPCR増幅して、MreI/Kpn2I部位を導入した。得られたDNAを、MreI/Kpn2Iで分割し、pIYC05のMreI/Kpn2I部位中に挿入して、プラスミドpIYC05−1を得た。同様に、pIYC07からのHXT7プロモーター、ADH2及びその天然ターミネーターを含むカセットを、プライマー11及び12を使用してPCR増幅して2つのAscI部位を導入した。増幅した生成物を、AscIで消化し、続いてpIYC05−1のAscI部位にクローニングして、プラスミドpIYC08を得た(
図3)。
【0040】
実施例3
α−サンタレン及びtHMG1酵母菌発現ベクターの構築
(+)−α−サンタレン発現ベクターを構築するために、サンタレンシンターゼ(Sts)cDNA(配列番号:46)を、プライマー19及び20を使用して、プラスミドCont2B−27−pET101(WO 2009109597号、GenBank受託番号:HQ452480)からPCRによって増幅し、NotI/PacIで切断し、そしてNotI/PacIを制限したベクターpSP−G1(Yeast 2010, 27:954)中に連結した。続いて、tHMG1を、鋳型としてS.セレビシエCEN.PK113−5DのゲノムDNA並びにプライマー31及び32を使用してPCR増幅し、BamHI/NheIで切断し、そしてBamHI及びNheIでの制限後に同様のベクター中に連結した(Nature 2006, 440:940)。これは、発現プラスミドpICK01の形成をもたらした(
図4)。
【0041】
実施例4
ポリヒドロキシ酪酸経路発現ベクターの構築
ポリヒドロキシ酪酸生合成経路を、多コピー型プラスミドを使用することによってS.セレビシエ株CEN.PK113−11C中に導入した。PHBの生合成経路は、3種の酵素、phaAによってコードされるβ−ケトチオラーゼ、phaBによってコードされるアセトアセチル−CoAレダクターゼ、及びphaC遺伝子によってコードされるPHAシンターゼを含む。phaA(配列番号:53)、phaB(配列番号:54)及びphaC(配列番号:55)を合成し、そしてラルストニア・ユートロファH16からの元来のpha遺伝子の配列に基づくDNA2.0によってS.セレビシエにおける発現のためにコドンを最適化した。phaA及びphaBを、それぞれPGK1及びTEF1プロモーターの下流のpSP−GM2プラスミドのSacI/SpeI及びSalI/BamHI部位中にクローニングして、pSP−GM2−phaABを得た。phaCを、TEF1プロモーターの下流のpSP−GM2のXhoI/KpnI部位中にクローニングした。phaC、TEF1プロモーター及びCYC1ターミネーターのフラグメントを、プライマー13及び14を使用して増幅し、そしてMfeI部位でpSP−GM2−phaABに連結して、プラスミドpPHB−phaを得た(
図4)。
【0042】
実施例5
ブタノール経路発現ベクターの構築
2つのプラスミドを使用して、ブタノール経路遺伝子を発現させた。ブチルアルデヒドデヒドロゲナーゼ、3−ヒドロキシブチリル−CoAデヒドロゲナーゼ、クロトナーゼ及びトランスエノイル−CoAレダクターゼをコードする4つの遺伝子を、1つのプラスミドから発現させた一方で、チオラーゼ遺伝子(ERG10)を、他のプラスミドから発現させた。
【0043】
CEN.PK113−5DからのERG10を、SpeI及びSacIを使用してTEF1プロモーター下でpIYC04中にpIYC07からクローニングして、pCS01を得た。
【0044】
ブチルアルデヒドデヒドロゲナーゼ/ブタノールデヒドロゲナーゼ(adhE2)、3−ヒドロキシブチリル−CoAデヒドロゲナーゼ(hbd)及びクロトナーゼ(crt)をコードする遺伝子は、クロストリジウム・ベイジェリンキからであった。トランスエノイル−CoAレダクターゼ(ter)は、トレポネーマ・デンディコラからであった。全てのこれらの遺伝子は、酵母菌中での高いレベルの発現のために最適化したコドンであり、DNA2.0によって合成した。
【0045】
AdhE2(配列番号:50)を、TEF1プロモーター下でNotI及びPacIを使用してpSP−GM1中にクローニングした。そしてTer(配列番号:51)を、BamHI及びNheIを使用してPGK1プロモーター下で同様のプラスミド中にクローニングした。これは、プラスミドpAK0をもたらした。
【0046】
Crt(配列番号:48)を、TEF1プロモーター下でNotI及びPaxIを使用してpSP−GM1中にクローニングし、そして、hbd(配列番号:47)を、BamHI及びNheIを使用してPGK1プロモーター下で同様のプラスミド中にクローニングした。そして、これらの遺伝子とそれらのプロモーターの双方を含むカセットを、Kpn2I及びMreI制限部位を含んだプライマー15及び16を使用してこのプラスミドから増幅させた。そして、このカセットを、pAK0中にクローニングして、pAK1を得た(
図4)。
【0047】
実施例6
cit2及びmls1の欠失
遺伝子欠失を、クローニングしていないPCRを基礎とする対立遺伝子置換法を使用して実施した(Genome Res. 1997, 7: 1174)。cit2(配列番号:44)の欠失のために、cit2オープンリーディングフレームの5’及び3’領域を、次のオリゴヌクレオチド:CIT2−UP−フォワード、CIT2−UP−リバース、CIT2−DOWN−フォワード、CIT2−DOWN−リバース(遺伝子欠失のために使用したプライマーのリストについて表4を参照)を使用して、PCRによってゲノムCEN.PK 113−5Dから個々に増幅させた。KanMX発現モジュールを、オリゴヌクレオチド:KanMX−UP−フォワード、KanMX−UP−リバース、KanMX−DOWN−フォワード、KanMX−DOWN−リバースを使用して、プラスミドpUG6(Guldener et al.、1996)から2つのオーバーラップ部位中で増幅させた。
【0048】
【表4】
下線を引いた配列は、オーバーラップしたヌクレオチドに対応する。
【0049】
フラグメントCIT2−UP/KanMX−UP及びKanMX−DOWN/CIT2 DOWNを、PCRによってそれぞれ融合した。2つの融合フラグメントを、相同組換えによってゲノム中に組込んだ。KanMX発現モジュールのループ−アウト(loop−out)について、手順を前記のように実施した(Guldener et al., 1996)。続いて、正しい形質転換体を、URA3マーカーでのプラスミドpSH47のループアウトのための5−フルオロオロチン酸、及びウラシル補助栄養の再利用を含む培地上で、再度ストリーキングした。そして、株SCIYC06(MATa MAL2−8
c SUC2 ura3−52 cit2Δ::lox)を得た。
【0050】
同様のアプローチを、MLS1(配列番号:45)欠失のために使用した。MLS1遺伝子欠失を実施するために使用したオリゴヌクレオチドを表4において挙げる。
【0051】
それぞれの遺伝子の欠失を、鋳型としてそれぞれの株からのゲノムDNAを使用することによって実施し、そしてプライマーの2つの遺伝子対について、統合位置の1つの外側及び統合したフラグメントの内側を使用した、診断PCRによって検証した。株確認のために使用したすべてのプライマーを表5において挙げる。
【0052】
【表5】
【0053】
最終的に、株SCIYC32(MATa SUC2 MAL2−8
c ura3−52 his3−Δ1 cit2Δ)を、株SCIYC06(MATa SUC2 MAL2−8
c ura3−52 cit2Δ)及びCEN.PK110−10C(MATα SUC2 MAL2−8
c his3−Δ1、P. Koetterにより提供された種類)を交叉することによって構築し、続いて四分子解析(tetrad dissection)した。同様に、株SCIYC33(MATa SUC2 MAL2−8
c ura3−52 his3−Δ1 mls1Δ)を、株SCIYC07(MATa SUC2 MAL2−8
c ura3−52 mls1Δ)及びCEN.PK110−10C)を交叉することによって構築し、続いて四分子解析した。
【0054】
実施例7
α−サンタレン、1−ブタノール及びPHB製造のために遺伝子操作した酵母菌株の構築
全ての酵母菌株の形質転換を、標準酢酸リチウム法(Nucleic Acids Res.1992, 20: 1425)によって実施した。それぞれの形質転換からの3〜10個のコロニーを、最良に製造した形質転換体の選別のためにスクリーニングした。
【0055】
α−サンタレンを製造する株SCIYC40を、プラスミドpICK01及びpIYC04を、CEN.PK113−11C中に形質転換し、続いてSD−URA−HISプレート上で選別した。プラスミドpICK01及びpIYC08を、株CEN.PK113−11C中に同時形質転換し、そしてSCIYC42の構築のためにSD−URA−HISプレート上で選別した。同様に、これらの2つのプラスミドを、SCIYC32及びSCIYC33中に同時形質転換し、それぞれSCIYC45及びSCIYC46を得た。
【0056】
1−ブタノールを製造する株pAKY1、pAKY2及びpAKY3を、CEN.PK113−11C、SCIYC33及びSCIYC32を(それぞれ)pIYC08及びpAK1で形質転換することによって構築した。株pAKY4、pAKY5及びpAKY6を、CEN.PK113−11C、SCIYC33及びSCIYC32を(それぞれ)pCS01及びpAKlで形質転換することによって構築した。株pAKY0を、CEN.PK113−11CをpIYC04及びpAK1で形質転換することによって構築した。株を、SD−URA−HISプレートで選別した。
【0057】
PHBを製造する株SCKK005を、プラスミドpPHB−pha及びpIYC04を、CEN.PK113−11C中に形質転換し、続いて対照としてSD−URA−HISプレート上で選別した。プラスミドpPHB−pha及びpIYC08を、SCKK006の構築のために株CEN.PK113−11C中に同時形質転換した。同様に、これらの2つのプラスミドを、SCIYC32及びSCIYC33中に同時形質転換し、それぞれSCKK009及びSCKK010を得た。
【0058】
実施例8
α−サンタレン、1−ブタノール及びPHBの製造、精製、及び定量分析のための方法
前記の種々からの株α−サンタレン、1−ブタノール及びPHB製造を試験するために、20mL培養液を、100mlの未調整フラスコ中で、600nm(OD
600)での最終工学密度0.02をもたらす前培養の量を接種することによって開始した。その株を、30℃で180r.p.m.のオービタルシェイクで、次の組成物を有する限定最少培地中で成長させた:7.5g/L(NH
4)
2SO
4;14.4g/L KH
2PO
4;0.5g/L MgSO
4.7H
2O;2ml/L微量金属溶液(1リットルあたり、pH4.0:EDTA(ナトリウム塩)、15.0g;ZnSO
4・7H
2O、0.45g;MnCl
2・2H
2O、1g;CoCl
2・6H
2O、0.3g;CuSO
4・5H
2O、0.3g;Na
2MoO
4・2H
2O、0.4g;CaCl
2・2H
2O、0.45g;FeSO
4・7H
2O、0.3g;H
3BO
3、0.1g及びKI、0.10g)。最少培地のpHを、2M NaOHを添加することによって6.5に調整し、そして炭素源溶液とは別々にオートクレーブした。グルコースを、濃度20g/Lで添加した。ビタミン溶液(1リットルあたり、pH6.5:ビオチン、0.05g;p−アミノ安息香酸、0.2g;ニコチン酸、1g;Ca−パントテン酸塩、1g;ピリドキシン−HCl、1g;チアミン−HCl、1g及びミオイノシトール、25g)を、濾過滅菌し、そして1ml/Lの濃度でオートクレーブ後に培地に無菌で添加した。前培養液を製造するために、限定培地(前記したもの)の5mLを含む培養管に、関心のある株の単コロニーを接種した。これらの接種材料を、30℃で220r.p.m.のオービタルシェイクで、1〜2のOD
600まで培養した。
【0059】
α−サンタレンの製造のために、10%(v/v)ドデカンを、1のOD
600で主培養液に添加して、有機相中のα−サンタレンを捕らえた。このドデカン層を、サンプリングし、そしてGC−MSによるα−サンタレン製造の測定のためにデカン中で希釈した。
【0060】
α−サンタレンを、SLB−5 msキャピラリーカラム(30m、0.25mm i.d.、0.25μm膜厚;Supelco、Bellefonte、PA、USA)を備えたガスクロマトグラフィ−質量分光法(Thermo Scientific、Waltham、MA)によって分析した。キャリヤーガスは、1.2mL/分の一定流でのヘリウムであった。スプリット スプリットレス インジェクターを、スピリットレスモードで使用した。最初の炉温は80℃であり、インジェクター温度は250℃であった。炉温を120℃まで10℃/分の速度で上昇させ、続いて160℃まで3℃/分の速度で上昇させた。そして、温度を、10℃/分の勾配で270℃まで上昇させ、そしてこの温度で5分間維持した。完全な質量スペクトルを、代謝物同定のために50〜650の範囲内のm/zをスキャンすることによって生じた。α−サンタレンの定量化を、標準曲線を使用して実施した。
【0061】
PHBを前記のように分析した(Appl. Environ. Microbiol. 1983, 46: 1339; Appl. Environ. Microbiol. 2006, 72:3412)。10mgより多い細胞を、遠心分離(10分、5000×g)によって培養液から採取した。得られた細胞ペレットを一度洗浄し、そして凍結乾燥させた。乾燥細胞を、1mlの濃硫酸中で60分間沸騰させ、そして4mlの14mM H
2SO
4で希釈した。試料を遠心分離(15分、16000×g)して、細胞片を取り出し、そしてその上澄みを、Aminex HPX−87Hイオン排除カラム(300×7.8mm;Bio−Rad Hercules、CA)及びUV検出器を備えた高圧液体クロマトグラフィー(Dionex−HPLC、Sunnyvale、CA)によって分析した。試料と平行して加工した、市販のPHB(Sigma−Aldrich、St Louis、MO)を、標準として使用した。HPLCを、60℃及び5mM H
2SO
4の0.6ml/分の流速で操作した。
【0062】
1−ブタノールレベルを解析するために、異なる時点での試料を採取し、遠心分離し、そして濾過した。そして試料を、Aminex HPX−87Hイオン排除カラム(300×7.8mm;Bio−Rad Hercules、CA)及びRI検出器を備えた高圧液体クロマトグラフィー(Dionex−HPLC、Sunnyvale、CA)によって分析した。市販の1−ブタノールを標準として使用した。HPLCを、45℃及び5mM H
2SO
4の0.6ml/分の流速で操作した。
【0063】
実施例9
アセチル−CoAプラットフォーム株の評価
アセチル−CoAプラットフォーム株、セスキテルペンを自然に生じるα−サンタレン及びα−サンタレンの生合成前駆体を評価するために、ビャクダン油の重要な化成成分を評価した。
図4Aにおいて示されているように、サンタレンは、セスキテルペンのための生物学的前駆体、ファルネシルジホスフェート(FPP)からの単独の酵素的工程において直接誘導される。FPP製造を増加するために、酵母菌内因性メバロン酸経路を、3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−補酵素Aレダクターゼ1(tHMG1)(J Biol Chem 1999, 274:316171)の過剰発現によって調整解除して、酵母菌(Nature 2006, 440:940)におけるイソプレノイド製造の向上をもたらしたことを証明した。酵母菌における植物遺伝子を発現することにおける困難性を克服するために、α−サンタレンシンターゼをコードするSts cDNAは、S.セレビシエにおける高レベルの発現のために最適化したコドンであった。参考株として、トランスジェニック酵母菌株SCYC040(表1)を、tHMG1及びStsを含むプラスミドpICK01で形質転換した。撹拌フラスコ培養液中で、2.08mg/Lのα−サンタレンを、成長の48時間後に製造した(
図5A)。ALD6、ACS
SE、ADH2及びERG10を発現するプラスミドpIYC08でpICK01を同時発現することによって、α−サンタレン製造を、3.65mg/L(
図5A、株SCYC042)まで増加させた。CIT2欠失とプラスミドpIYC08での同時発現との組合せは、4.98mg/Lのα−サンタレンを製造することができる株SCYC045をもたらした(
図5A)。さらに、プラスミドpIYC08を、株SCYC046をもたらすMLS1欠失で同時発現した場合に、α−サンタレン製造は、さらに、参考株と比較して4倍の向上を示す、8.29mg/L(
図5A)まで増加した。さらに最新のストラテジーを評価するため、及びACS
SE及びALD6(Metab Eng 2007, 9: 160)の過剰発現に対する以前に発表された研究とそれを比較するために、これらの2つの遺伝子を、プラスミドpICK01(
図6、株SCIYC41)で同時発現させた。結果は、ADH2及びERG10のさらなる過剰発現が、α−サンタレンの最終価(
図6、株SCIYC42)における及びブロックストラテジーと共に、25%の増加を導き、α−サンタレン製造における2〜4倍の増加を得た(
図6A)ことを示した。
【0064】
次に、1−ブタノールの製造を、アセチル−CoAプラットフォーム株において評価した。1−ブタノールは、一般に、可能なガソリン置換として考えられているおり、それというのも、それは、より高いエネルギー密度を有する一方で、より少ない腐食性及びエタノールより少ない水溶性であるからである(Nat Chem Biol 2011, 11:262)。反応、及びアセチル−CoAからの1−ブタノール製造のために要求される対応する酵素を、
図4Bにおいて概説する。合成経路を、補因子としてNADHを使用する3−ヒドロキシブチリル−CoAデヒドロゲナーゼ(Hbd)、クロトナーゼ(Crt)、並びにクロストリジウム・ベイジェンリキからの二官能ブチルアルデヒド及びブタノールデヒドロゲナーゼ(AdhE2)(Microb Cell Fact 2008, 7:8)、並びにトレポネーマ・デンティコラからのNADH−依存クロトニル−CoA特異性トランス−エノイル−CoAレダクターゼ(Ter)(Nat Chem Biol 2011, 7:222)を選択することによって組み立てた。これらの酵素をコードする遺伝子を、化学的に合成して、コドンを最適化させ、そして1つのエピソームプラスミド中にクローニングして、1−ブタノールを製造するプラスミドpAK01を得た(
図4B)。1−ブタノールを製造するために組み立てた経路の能力を確認するために、これらの外因性遺伝子を発現するS.セレビシエ培養物を、2%グルコースを有する最少培地中で成長させた。S.セレビシエ(21)において製造した前記の量と同様である2.17mg/Lの1−ブタノールを観察した(
図4B、株SCAK00)。そして、機能経路を、ALD6、ACS
SE、ADH2及びERG10を有するpIYC08(
図5B、株SCAK01)を同時に同時発現させ、そしてアセチル−CoA経路の遺伝子操作していない参考株に対して〜4倍増加している9.40mg/Lの1−ブタノールの価に達した。これらの結果は、ブタノール製造のための前駆体アセチル−CoAの効率的な供給を確実にするために重要であることを証明する。MLS1欠失株(
図5B、株SCAK02)この1つのプラスミドシステムのさらなる評価は、14.04mg/Lまでの1−ブタノール製造においてさらに1.7倍の増加をもたらした。過剰発現と16.26mg/Lの1−ブタノールを製造できる株(
図5B、株SCAK03)をもたらすCIT2欠失との組合せの場合に、製造レベルは、前記報告(Microb Cell Fact 2008, 7:8)よりもほぼ8倍高い。
【0065】
アセチル−CoAプラットフォーム株を、最終的に、商業上関心のある生分解性バイオポリマーの種類であるPHB(Microbiol Mol Biol Rev 1999,63:21)の製造について試験した。S.セレビシエにおけるPHBの製造のために、その合成経路を、モノマー生合成(phaA及びphaB)及び重合化(PhaC)のためのラルストニア・ユートロファからの3種の遺伝子経路の形質転換によって実施した(J Biol Chem 1989, 264: 15293; J Biol Chem 1989, 264: 15298; J Biotechnol 2006, 124:561)。phaA、phaB及びphaCをコードする合成した、最適化したコドンを、単一の発現ベクター中にクローニングして、pPHA−phaを得た(
図4C)。参考株における合成経路の発現は、限定最少培地中で120時間の成長に13.39mg/LのPHB濃度をもたらした(
図5C、株SCKK005)。ALD6、ACS
SE、ADH2及びERG10を含むプラスミドpIYC08をPHB製造ベクターで同時発現した場合に、PHBは、参考株
(株SCKK006)(J Biotechnol 2006,124:561)と比較して18倍の増加を示す240.99mg/Lまで増大した
(図5C)。CIT2欠失又はMLS1欠失を有する株におけるこれらの2つのプラスミドの同時の同時発現は、しかしながら、さらにPHB製造を改良せず、ブロックストラテジーが、PHBの製造のために作用しなかったことを示した(
図5C、株SCKK09及びSCKK10)。これは、同様に、PHB製造を評価するためにここで使用したバッチ発酵において、PHBが、ディオキシーシフトのエタノール相において主に製造される事実による。CIT2又はMLS1の欠失をもたらす株は、唯一の炭素源としてC
2化合物、例えばエタノール及びアセトンで成長することができず、従って、これらの株は、エタノール成長相におけるPHB製造のための必要なギブス自由エネルギー及び酸化還元当量を提供することができない。