(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6021947
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月9日
(54)【発明の名称】リチウム−硫黄電池に使用される硫黄含有複合材、それを含む電極材料およびリチウム−硫黄電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/38 20060101AFI20161027BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20161027BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20161027BHJP
【FI】
H01M4/38 Z
H01M4/36 C
H01M10/052
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-556898(P2014-556898)
(86)(22)【出願日】2012年2月16日
(65)【公表番号】特表2015-507340(P2015-507340A)
(43)【公表日】2015年3月5日
(86)【国際出願番号】CN2012071215
(87)【国際公開番号】WO2013120263
(87)【国際公開日】20130822
【審査請求日】2014年8月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(73)【特許権者】
【識別番号】511096558
【氏名又は名称】中国科学院化学研究所
【氏名又は名称原語表記】INSTITUTE OF CHEMISTRY, CHINESE ACADEMY OF SCIENCES
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(74)【代理人】
【識別番号】100165940
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 令子
(72)【発明者】
【氏名】ユーグオ グオ
(72)【発明者】
【氏名】セン シン
(72)【発明者】
【氏名】ナホン ジャオ
(72)【発明者】
【氏名】ロンジエ ジョウ
【審査官】
瀧 恭子
(56)【参考文献】
【文献】
特表2011−518743(JP,A)
【文献】
特開2012−238448(JP,A)
【文献】
特開2010−095390(JP,A)
【文献】
国際公開第2011/147924(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00−4/62、10/05−10/0587
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
細孔炭素球(MPCS)基材である電気伝導性細孔基材と、前記電気伝導性細孔基材に担持される鎖状構造を有する硫黄と、を含み、
前記細孔炭素球(MPCS)基材の直径は、200〜800nmであり、
前記細孔炭素球(MPCS)基材は、中空球構造を有し、
前記電気伝導性細孔基材は、BET比表面積が300〜4500m2/gであり、
前記電気伝導性細孔基材は、細孔容積が0.1〜3.0cm3/gであり、
前記電気伝導性細孔基材は、平均細孔径が0.2〜1.0nmであり、
前記鎖状構造を有する硫黄の直径は、前記電気伝導性細孔基材の細孔径より小さい、
リチウム−硫黄電池電極材料用硫黄含有複合材。
【請求項2】
前記硫黄含有複合材の合計重量に対し、前記硫黄含有複合材の硫黄担持量が20〜85重量%である、
請求項1に記載のリチウム−硫黄電池電極材料用硫黄含有複合材。
【請求項3】
請求項1または2に記載のリチウム−硫黄電池電極材料用硫黄含有複合材を含むリチウム−硫黄電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気伝導性細孔基材(conductive microporous substrate)と、上記電気伝導性細孔基材に担持される鎖状構造を有する硫黄と、を含む硫黄含有複合材に関する。また、上記硫黄含有複合材を含む電極材料およびリチウム−硫黄電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウム−硫黄(Li/S)電池は、理論容量がLiFePO
4より約一桁高い。しかし、Li/S系は、多くの用途でまだ実行されていないのは、硫黄正極材料が再充電可能な電池に実際に用いられる前に、1)高い硫黄の利用率およびサイクル時の高い可逆容量を確保するために、硫黄の粒子径をできるだけ小さくすべきであること、2)長いサイクル寿命を確保するために、ポリスルフィドの放電生成物が電解質に溶解することを注意深く防止すべきであること、および、3)よりよいレート特性を確保するために、正極材料の導電率を向上すべきであること、との課題を解決しなければならないためである。
【0003】
S
8リング状構造は、硫黄の標準温度および標準圧力で、熱力学に安定な形式であることが知られている。標準条件で、硫黄原子は、S
8リング状分子、すなわち、硫黄の最も安定的な存在形式となる傾向がある。これについて、よく引用される解釈としては、硫黄の低エネルギー空3d軌道による、著しい連鎖(catenation)傾向およびクロスリング共鳴(cross−ring resonance)を起こすものである。従来のリング状S
8分子に基づくLi−S電池は、一般的に二電子反応である1/8S
8 + 2Li
+ + 2e
− ⇔ Li
2Sにより放電し、これにより2つのプラトーが発生する(
図1)。第1のプラトー(約2.35V)では、硫黄がリング状S
8からS4
2−に還元される。この期間で、一連の電解質に溶性のポリスルフィド(例えば、Li
2S
8、Li
2S
6およびLi
2S
4)が形成される可能性がある。一方、第2のプラトー(通常、2.0Vから)が、Li
2S
4から不溶性のLi
2S
2に転化し、最終にLi
2Sに転化する過程に対応する。放電過程で発生されたポリスルフィドが電解質に溶解し、充電の過程でリチウム負極に沈着する可能性があるため、硫黄正極の容量が大幅に減られている。硫黄には、例えば、短鎖構造を有する小さい硫黄分子S
2−4、リング状構造または鎖状構造を有するS
5−20、および長鎖構造を有するポリ硫黄S
∞など、多くの同素体を有することを考慮した上で、これらの同素体を異なる電化学的な性能を発現する可能性がある。しかし、これらの同素体は、標準状態で安定に存在できないため、まだ硫黄の同素体の電化学的な性能に関する報告がされていない。
【0004】
リング状S
8以外の多くの硫黄の同素体、特に鎖状構造を有する硫黄の同素体は、標準条件で安定に存在できないため、その製造プロセスが大きなチャレンジになることが知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、改善された電化学性能を有する高エネルギー密度のLi−S電池を提供することを目的とする。これにより、上記問題が解決されている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的は、硫黄含有複合材により達成される。この硫黄含有複合材は、電気伝導性細孔基材と、上記電気伝導性細孔基材に担持される鎖状構造を有する硫黄と、を含む。細孔の閉じ込め効果により、鎖状構造を有する硫黄分子は、細孔チャネルの中に安定に存在することが可能である。このように得られた硫黄含有複合材は、1つのプラトーのみを発現することができる。
【0007】
本発明の別の側面において、本発明にかかる硫黄含有複合材を含む電極材料を提供する。
【0008】
本発明の別の側面において、本発明にかかる硫黄含有複合材を含むリチウム−硫黄電池を提供する。
【0009】
本発明にかかる実施の形態に関する下記説明および図面を参照すれば、本発明にかかる上記特徴およびその他の特徴、利点およびこれらを得る手段がさらに明らかになり、本発明自身も容易に理解できるものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】S
8−炭素複合材の充放電曲線を示すグラフである。
【
図2】本発明にかかる炭素−炭素複合基材(CNT@MPC)の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【
図2A】本発明にかかる炭素−炭素複合基材(CNT@MPC)の模式図である。
【
図3】本発明にかかる炭素−炭素複合ナノワイヤ(CNT@MPC)のミクロ構造を示す透過型電子顕微鏡(TEM)写真である。
【
図3A】本発明にかかる炭素−炭素複合ナノワイヤ(CNT@MPC)のミクロ構造を示す模式図である。
【
図4】塗層における炭素チャネルのリング状明視野走査透過型電子顕微鏡(ABF−STEM)写真である。なお、黒部分が、炭素層を表し、グレー部分が、炭素チャネルを表す。
【
図4A】塗層における炭素チャネルの模式図である。
【
図5】本発明にかかる炭素−炭素複合基材(CNT@MPC)により得られた硫黄含有複合材(S%=33重量%)のTEM写真である。
【
図5A】本発明にかかる炭素−炭素複合基材(CNT@MPC)により得られた硫黄含有複合材の模式図である。
【
図6】本発明にかかる硫黄含有複合材(S%=33重量%)の元素マッピング図(elemental mapping)である。
【
図7】細孔炭素(MPC)層の硫黄が担持された後のABF−STEM写真である。なお、グレー部分が炭素を表し、黒部分が硫黄を表し、この図において、硫黄鎖(黒い鎖)がはっきり見え、一部の硫黄鎖が矢印で標識される。
【
図7A】炭素チャネルにおける充放電過程の模式図である。
【
図8】本発明にかかる硫黄含有複合材(S%=33重量%)の0.1C充放電倍率での充放電曲線を示すグラフである。
【
図9】本発明にかかる硫黄含有複合材(S%=33重量%)の0.1C充放電倍率でのサイクル性能を示すグラフである。
【
図10】本発明にかかる硫黄含有複合材(S%=33重量%)の異なる充放電倍率でのサイクル性能を示すグラフである。
【
図11】本発明にかかるポリスチレン(PS)ナノ小球の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【
図11A】本発明にかかるポリスチレン(PS)ナノ小球の模式図である。
【
図12】本発明にかかるスルホン化ポリスチレン(SPS)ナノ小球の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【
図12A】本発明にかかるスルホン化ポリスチレン(SPS)ナノ小球の模式図である。
【
図13】本発明にかかる炭素被覆されたスルホン化ポリスチレン(SPS@C)ナノ小球の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【
図13A】本発明にかかる炭素被覆されたスルホン化ポリスチレン(SPS@C)ナノ小球の模式図である。
【
図14】本発明にかかる細孔炭素球(MPCS)基材の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【
図14A】本発明にかかる細孔炭素球(MPCS)基材の模式図である。
【
図15】本発明にかかる硫黄含有複合材(硫黄含有量:50.23重量%)の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【
図15A】本発明にかかる硫黄含有複合材の模式図である。
【
図16】本発明にかかる硫黄含有複合材(硫黄含有量:50.23重量%)の透過型電子顕微鏡(TEM)写真である。
【
図16A】本発明にかかる硫黄含有複合材の模式図である。
【
図17】本発明にかかる硫黄含有複合材(硫黄含有量:50.23重量%)の元素マッピング図である。
【
図18】細孔炭素(MPC)層の硫黄が担持された後のABF−STEM写真である。なお、グレー部分が炭素を表し、黒部分が硫黄を表し、この図において、硫黄鎖(黒い鎖)がはっきり見え、一部の硫黄鎖が楕円で標識される。
【
図19】本発明にかかる硫黄含有複合材(硫黄含有量:50.23重量%)の0.1C充放電倍率での異なるサイクルにおける充放電曲線を示すグラフである。
【
図20】本発明にかかる硫黄含有複合材(硫黄含有量:50.23重量%)の0.1C充放電倍率でのサイクル性能を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、電気伝導性細孔基材と、上記電気伝導性細孔基材に担持される鎖状構造を有する硫黄と、を含む硫黄含有複合材に関する。
【0012】
本発明にかかる硫黄含有複合材では、電気伝導性細孔基材のBET比表面積が300〜4500m
2/gであり、400〜1000m
2/gであることが好ましく、550〜800m
2/gであることがより好ましい。細孔容積が0.1〜3.0cm
3/gであり、1.2〜3.0cm
3/gであることが好ましく、1.3〜2.0cm
3/gであることがより好ましい。平均細孔径が0.2〜1.0nmであり、0.5〜0.7nmであることが好ましい。このような細孔構造は、鎖状構造を有する硫黄分子を閉じ込めることができ、硫黄の利用率を向上させ、かつ、ポリスルフィドの電解質への溶解を抑制することに寄与するため、硫黄のサイクル安定性が改善される。
【0013】
これらの硫黄含有複合材は、鎖状構造を有する硫黄(短鎖構造を有する小さい硫黄分子S
2−4、鎖状構造を有するS
5−20および長鎖構造を有するポリ硫黄S
∞を含む)を捕獲することができ、これらの硫黄の直径は、細孔基材より小さい。
【0014】
本発明にかかる硫黄含有複合材では、硫黄が電気伝導性細孔基材の中に細かく分散される。特に電気伝導性細孔基材の細孔から形成される細孔チャネルの中に担持される。これにより、硫黄への強い閉じ込め効果、硫黄の高い電化学活性および利用率を確保できる。
【0015】
上記硫黄含有複合材の合計重量に対し、本発明にかかる硫黄含有複合材の硫黄含有量が20〜85重量%であり、25〜80重量%であることが好ましく、30〜75重量%であることがより好ましく、特に33〜60重量%であることが好ましい。
【0016】
本発明にかかる硫黄含有複合材では、上記電気伝導性細孔基材は、炭素系基材(carbon−based substrates)、非炭素系基材(non−carbon subtrates)、および、炭素系基材と非炭素系基材との組み合わせまたは複合材からなる群より選択されてもよい。
【0017】
上記非炭素系基材は、細孔導電ポリマー、細孔金属、細孔半導体セラミックス、細孔配位ポリマー、細孔金属有機骨格材料(MOF)、非カーボンモレキュラーシーブ、および、これらの組み合わせ、複合材、誘導体からなる群より選択されることが好ましい。
【0018】
上記炭素系基材は、カーボンモレキュラーシーブ、カーボンチューブ、細孔グラフェン、グラフディン(graphdiyne)、アモルファスカーボン、硬質カーボン、軟質カーボン、黒鉛化炭素、および、これらの組み合わせ、複合材、誘導体、ドーパント系からなる群より選択される炭素材料から作成されることが好ましい。
【0019】
上記炭素系基材は、例えば炭素−炭素複合基材(CNT@MPC)であってもよい。そのうち、上記炭素−炭素複合基材(CNT@MPC)は、カーボンナノチューブ(CNT)と、カーボンナノチューブ(CNT)の表面に施される細孔炭素(MPC)塗層とから形成される。
【0020】
上記炭素−炭素複合基材(CNT@MPC)では、細孔炭素(MPC)塗層の厚さが30〜150nmであり、約40nm、約60nm、約80nm、約100nm、約120nm、約130nmまたは約140nmであることが好ましい。
【0021】
上記炭素−炭素複合基材(CNT@MPC)に使用されるカーボンナノチューブ(CNT)の直径が2〜100nmであり、約10nm、約30nm、約40nm、約60nmまたは約80nmであることが好ましい。ここに使用されるカーボンナノチューブ(CNT)の長さには特に制限がないが、例えば5μm未満、5〜15μm、または15μm超であってもよい。
【0022】
ここに使用されるカーボンナノチューブ(CNT)の所定の形式には制限がない。単層カーボンナノチューブ(SWNT)、2層カーボンナノチューブ(DWNT)および多層カーボンナノチューブ(MWNT)が使用されることができるが、多層カーボンナノチューブ(MWNT)が好ましい。
【0023】
上記炭素−炭素複合基材(CNT@MPC)は、同軸ケーブル状の構造を有することが好ましい。
【0024】
上記の炭素系基材は、例えば細孔炭素球(MPCS)基材であってもよい。尚、上記の細孔炭素球(MPCS)基材の直径は、200〜800nmであることが好ましく、300〜600nmであることがより好ましい。上記細孔炭素球(MPCS)基材は、中空球構造を有することが好ましい。
【0025】
また、本発明は、本発明にかかる硫黄含有複合材を含む電極材料に関する。
【0026】
また、本発明は、本発明にかかる硫黄含有複合材を含むリチウム−硫黄電池に関する。
【0027】
本発明の発明者は、本発明にかかる細孔構造が、様々の形式で存在する硫黄に対し強い閉じ込め効果を有することが発見した。適切な細孔径を有する細孔構造を構築することにより、細孔の閉じ込め効果で、鎖状構造を有する硫黄分子を細孔チャネルの中に安定に存在させることができる。閉じ込められた鎖状構造を有する硫黄に基づくLi−S電池は、全く異なる充放電特性(約1.9Vでの単一充放電プラトー)を発現し、例えば、高い容量および優れたサイクル安定性を含む。さらに、実際の用途で、従来の2つのプラトーを有する硫黄正極材料と比べ、1つのプラトーのほうが、電池設計を容易にさせる。これらの利点により、Li−S電池はその利用において大きな優位性を占めす。
【0028】
さらに、本発明にかかる電気伝導性細孔基材は、有利な導電率および比較的に小さい細孔径を同時に有するため、硫黄の基材材料として使用される場合、Li−S電池に使用される硫黄含有複合材を形成する際に非常に有望である。一方、より高い導電率が分極現象の減少に寄与するため、硫黄の利用率を向上させ、サイクル容量を向上させることができる。一方、より小さい細孔径は硫黄をナノレベルで分散することに寄与し、かつ、ポリスルフィドの電解質への溶解を抑制するため、Li−S電池のサイクル安定性が改善される。さらに、製造過程が簡単に実現でき、全ての原料が廉価である。これらのすべての利点により、上記の複合材は、Li−S電池に用いるにあたり、非常に将来性を期待できるものとなる。
【0029】
本発明にかかる複合材の潜在的な用途は、許容できる高出力密度を有する高エネルギー密度リチウムイオン電池を含み、エネルギー貯蔵、例えば電動工具、太陽電池および電気自動車に使用される。
【0030】
以下、非制限性の実施例により、本発明の様々な特徴および特性を説明するが、本発明の範囲を制限することはない。
【0031】
実施例A
まず、開始材料として30mg多層カーボンナノチューブ(製品名:L.MWNTs−4060、Shenzhen nanotech port co., Ltd.製、純度>95%、直径が40〜60nm,長さが5〜15μm)を100mLの6M 稀硝酸で12時間処理し、その後、40℃で超音波処理により10mLのドデシル硫酸ナトリウム(SDS、分析純、Sinopharm Chemical Reagent Co., Ltd.から購入)の水溶液(1×10
−3 M)の中に分散し、黒い懸濁液を得た。その後、この懸濁液に1gのD−グルコース(分析純、Sinopharm Chemical Reagent Co., Ltd.製)を加える。この懸濁液をオートクレーブの中に密封し、160℃で20時間加熱し、細孔炭素複合材(CNT@MPC)を形成した。イオン交換水で洗浄し、オーブンの中で、50℃で一晩乾燥して、その後、上記CNT@MPC複合材を3℃/minのレートで加熱し、さらに800℃で、アルゴンガスで4時間アニールし、炭素塗層をさらに炭素化させる。得られたCNT@MPC複合材の直径が220〜300nm(炭素塗層の厚さが80〜100nm、
図2〜
図4に示す)であり、比表面積が1025m
2/gであり、総細孔容積が1.32cm
3/gであり、平均細孔径が0.5 nmである(
図4)。
【0032】
硫黄含有複合材を製造するために、まず、硫黄粉末(Aldrich、純度>99.995%)とCNT@MPC複合材とを1:2の重量比で混合し、この混合物をガラス容器の中に密封し、145℃で6時間加熱し、硫黄含有量が33%である硫黄含有複合材を得た(
図5〜
図7)。加熱した後、この複合材を自然に室温まで冷却し、黒い粉末状の最後生成物を得た。
【0033】
走査型電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡(TEM)、高分解能透過型電子顕微鏡(HRTEM)、リング明視野走査透過型電子顕微鏡(ABF−STEM)およびエネルギー色散X線元素マッピングにより、上記生成物のサイズ、構造および元素組成を反映する。Brunauer−Emmett Teller(BET)窒素ガス吸着・脱着法により上記複合材の比表面積を測定する。それは、77.3KでNova 2000e型比表面積および細孔径アナライザーにより実施される。
【0034】
アルゴンガスが充填されているグローブボックスに実装されたコイン電池を用い、電化学測定を実施する。工作電極を製造するために、重量比が70:20:10で活生材料とカーボンブラックとポリフッ化ビニリデン(PVDF)との混合物をアルミ箔に塗布する。リチウム箔を対電極として利用する。ガラス繊維シート(GF/D,Whatman)をセパレーターとして利用する。LiPF
6塩を炭酸エタンジオール(EC)/炭酸ジメチル(DMC)(1:1W/W)に溶解した1M電解質(製品名LB−301,Zhangjiagang Guotai−Huarong New Chemical Materials Co., Ltd.製)を使用する。電池試験システムを用い、1〜3V(vs Li
+/Li)の電圧で、実装された電池に定電流サイクルを実施する。測定された比容量が全て電極における純硫黄の重量を基づくものである。
【0035】
0.1Cで放電する時、製造された硫黄含有複合材が1つのプラトーのみを発現する。硫黄の重量で計算される最初放電容量が1680mAh/gであり、可逆容量が1150mAh/g(硫黄の利用率が69%)であり、サイクル寿命が100回サイクルと高い。5Cで放電する時(12分以内で放電する)、可逆容量が依然として750mAh/gに維持する(
図8〜
図10)。
【0036】
図2および
図3には、実施例Aにより製造されたCNT@MPC複合材の典型的ミクロ構造を示す。尚、
図3がCNT@MPCナノワイヤの同軸ケーブル状構造をはっきり示す。
図4が、CNT@MPCナノワイヤ上の細孔構造を示す。
図5および
図6がそれぞれ実施例Aにより上記CNT@MPC複合材で製造された硫黄含有量が33重量%である硫黄含有複合材のミクロ構造および元素マッピングを示す。
図7が炭素細孔における閉じ込められた硫黄鎖を示す。
図8〜
図10が実施例Aにより製造された硫黄含有量が33重量%である上記硫黄含有複合材の充放電曲線およびサイクル性能を示す。
【0037】
実施例B
開始材料として40gのスチレン(Jinke Fine Chemical Institute, Tianjin製、99%)を360mL水に加える。この混合物を窒素ガスで60分脱気した後、0.15g過硫酸アンモニウム((NH
4)
2S
2O
8、分析純、Sinopharm Chemical Reagent Co., Ltd.から購入)を添加し、反応物を70℃で、24時間、インキュベートし、平均径が630nmであるポリスチレン(PS)ナノ小球(
図11)を得た。その後、得られたPSナノ小球1gを濃硫酸(MOS級,Beijing Institute of Chemical Reagentsから購入、約18.4M)20gと混合し、40℃で24時間インキュベートし、スルホン化PS(SPS)ナノ小球を得た。硫酸を除去した後、上記SPSナノ小球を水で数回洗浄し、50℃で乾燥する(
図12)。サッカロース800mg(分析純、Sinopharm Chemical Reagent Co., Ltd.から購入)を水10gに溶解し、上記SPSナノ小球300mgおよび界面活性剤SDS2mg(分析純、Sinopharm Chemical Reagent Co., Ltd.)を添加する。その後、この溶液をオートクレーブの中で密封し、180℃で10時間加熱し、炭素被覆されたSPS(SPS@C)ナノ小球を得た。尚、上記SPSナノ小球に200nm細孔炭素塗層を形成した。上記SPS@Cナノ小球をイオン交換水で洗浄し、オーブンの中で、50℃で、一晩乾燥する(
図13)。得られたSPS@Cナノ小球を5℃/minのレートで加熱し、800℃で、さらに窒素ガスで3時間アニールし、SPS内核を蒸発させ、炭素塗層をさらに炭素化させ、平均径が600nmである細孔炭素系材(MPCS)を得た(
図14)。そのBET比表面積が653m
2/gであり、細孔容積が1.42cm
3/gであり、最終に平均細孔径が0.71nmである。
【0038】
硫黄含有複合材を製造するために、硫黄粉末(Aldrich、純度>99.995%)をMPCSと重量比1:1で混合し、均一の混合物を得た後、この混合物をガラス容器の中に密封し、155℃で20時間加熱し、硫黄を上記複合材に分散させ、最終に硫黄含有量が50.23%である硫黄含有複合材を得た(
図15〜
図18)。加熱した後、この複合材を室温まで自然に冷却し、最終生成物を得た。
【0039】
実施例Aと同様に、電化学測定を行う。0.1C倍率で放電する時、上記硫黄含有複合材の硫黄の重量で計算された最初放電容量が1720mAh/gであり、可逆容量が1010mAh/gであり、活性材料の利用率が60%より高く、サイクル寿命が75回サイクルと高い(
図19および
図20)。
【0040】
実施例Bにより得られたPSナノ小球(平均径:630nm)、SPSナノ小球、SPS@Cナノ小球(平均径:1000nm)およびMPCS(平均径:600nm)の典型的なミクロ構造をそれぞれ
図11〜
図14に示す。実施例Bの上記細孔炭素系材で得られた硫黄含有量が50.23重量%である硫黄含有複合材粒子のミクロ構造および元素分布を
図15〜
図17に示す。
図18には、硫黄の細孔における分布の詳細を示す。上記硫黄含有複合材(硫黄含有量:50.23重量%)は、0.1C充放電倍率で異なるサイクルで充放電曲線を
図19に示し、上記硫黄含有複合材(硫黄含有量:50.23%重量%)のサイクル性能を
図20にプロットする。
【0041】
特定の実施の形態を説明したが、これらの実施の形態は、ただ例として挙げられたものに過ぎないため、本発明の範囲を制限することはない。本発明の範囲および要旨を逸脱しない場合、添付される請求の範囲およびそれと等しい技術案は、全ての変更、置換および変形した技術案を含む。