(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6021949
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月9日
(54)【発明の名称】ジフルオロメタンおよびジペンタエリトリトールエステルを含む動作流体
(51)【国際特許分類】
C10M 105/38 20060101AFI20161027BHJP
F25B 1/00 20060101ALI20161027BHJP
C09K 5/04 20060101ALI20161027BHJP
C10N 20/02 20060101ALN20161027BHJP
C10N 30/00 20060101ALN20161027BHJP
C10N 30/02 20060101ALN20161027BHJP
C10N 30/08 20060101ALN20161027BHJP
C10N 40/30 20060101ALN20161027BHJP
【FI】
C10M105/38
F25B1/00 396Z
C09K5/04 E
C10N20:02
C10N30:00 A
C10N30:02
C10N30:08
C10N40:30
【請求項の数】9
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-557803(P2014-557803)
(86)(22)【出願日】2013年2月15日
(65)【公表番号】特表2015-508842(P2015-508842A)
(43)【公表日】2015年3月23日
(86)【国際出願番号】US2013026302
(87)【国際公開番号】WO2013123300
(87)【国際公開日】20130822
【審査請求日】2015年8月14日
(31)【優先権主張番号】13/766,884
(32)【優先日】2013年2月14日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/599,004
(32)【優先日】2012年2月15日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508201282
【氏名又は名称】ケムチュア コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヘッセル、エドワード、ティー.
(72)【発明者】
【氏名】ベナンティ、トラヴィス
【審査官】
▲来▼田 優来
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−129178(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0240910(US,A1)
【文献】
特開2013−133443(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10M,C10N,F25B,C09K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
i)ジフルオロメタン(R−32)を含む冷媒であって、冷媒の10重量%未満がR−32以外である、冷媒と、
ii)40℃での動粘度60〜120cStを有し、直鎖状C5〜10アルキルカルボキシエステルと分岐状C5〜10アルキルカルボキシエステルの比が6:1〜1:6でジペンタエリトリトールの直鎖状および分岐状C5〜10アルキルカルボキシエステルを含むポリオールエステル潤滑剤組成物であって、ジペンタエリトリトールの前記C5〜10アルキルカルボキシエステルの84モル%以上が直鎖状または分岐状C5アルキルカルボキシエステルである、ポリオールエステル潤滑剤組成物と、
を含む、熱伝達デバイス用の動作流体。
【請求項2】
直鎖状C5〜10アルキルカルボキシエステルと分岐状C5〜10アルキルカルボキシエステルの前記比が5:1〜1:5である、請求項1に記載の動作流体。
【請求項3】
前記ポリオールエステル潤滑剤組成物が、40℃での動粘度60〜100cStを有する、請求項1に記載の動作流体。
【請求項4】
前記ポリオールエステル潤滑剤組成物がさらに、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、トリペンタエリトリトール、および/またはペンタエリトリトールモノマー4個以上を含むオリゴマーの直鎖状または分岐状C5〜10アルキルカルボキシエステルをさらに含み、前記C5〜10アルキルカルボキシエステルすべての50モル%以上が直鎖状または分岐状C5アルキルカルボキシエステルであり、かつ存在するC5〜10アルキルカルボキシエステルすべてが、直鎖状C5〜10アルキルカルボキシエステルと分岐状C5〜10アルキルカルボキシエステルの比が6:1〜1:6である、請求項1に記載の動作流体。
【請求項5】
前記ポリオールエステル潤滑剤組成物が、ジペンタエリトリトールのC5〜10アルキルカルボキシエステル30〜90重量%、およびネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパンおよび/またはペンタエリトリトールのC5〜10アルキルカルボキシエステル10〜70重量%を含み、前記重量%が、前記ポリオールエステル潤滑剤組成物の全重量に対する%である、請求項4に記載の動作流体。
【請求項6】
前記ポリオールエステル潤滑剤組成物が、ジペンタエリトリトールのC5〜10アルキルカルボキシエステル50〜90重量%、およびネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパンおよび/またはペンタエリトリトールのC5〜10アルキルカルボキシエステル10〜50重量%を含む、請求項5に記載の動作流体。
【請求項7】
前記ポリオールエステル潤滑剤組成物が、ジペンタエリトリトールのC5〜10アルキルカルボキシエステル30〜70重量%、およびペンタエリトリトールのC5〜10アルキルカルボキシエステル30〜70重量%を含む、請求項4に記載の動作流体。
【請求項8】
前記冷媒が本質的にR−32からなる、請求項1及び3〜7のいずれか一項に記載の動作流体。
【請求項9】
1種または複数種の酸化防止剤、極圧添加剤、耐摩耗添加剤、摩擦低減添加剤、消泡剤、予備発泡剤、金属不活性化剤、酸捕捉剤またはその混合物をさらに含む、請求項1及び3〜7のいずれか一項に記載の動作流体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、その開示内容が参照により本明細書に組み込まれる、2012年2月15日出願の米国仮特許出願第61/599,004号明細書および2013年2月14日出願の米国特許出願第13/766,884号明細書の利益を主張する。
【0002】
冷凍および空気調和システムなどの熱伝達デバイスに適した動作流体が提供され、前記動作流体は、ヒドロフルオロカーボン冷媒、つまりR−32とも呼ばれるジフルオロメタンと、40℃での動粘度32〜120cStを有し、ジペンタエリトリトールの直鎖状および分岐状C
5〜10アルキルカルボキシエステルを含むポリオールエステル潤滑剤組成物と、を含み、ジペンタエリトリトールのC
5〜10アルキルカルボキシエステルの40モル%以上、一般に60モル%以上が直鎖状または分岐状C
5アルキルカルボキシエステルである。多くの実施形態において、ジフルオロメタンは、動作流体における優先的な、または唯一の冷媒である。
【背景技術】
【0003】
冷蔵庫、冷凍機、熱ポンプおよび空気調和システムなどの熱伝達デバイスはよく知られている。簡単に言えば、かかるデバイスは、適切な沸点の冷媒がその周囲からの熱を受け取って低圧で蒸発し、その蒸気が凝縮器に送られ、そこで蒸気は液体へと再び凝縮して、新たな周囲へと熱を放出し、次いで凝縮液が蒸発器へと戻されて完了するサイクルを介して動作する。圧縮機等の冷凍装置の機械部品の他に、冷媒、適切な熱伝達材料、冷媒の損失を防ぐシーラントおよびデバイスの可動部品の動作を可能にする潤滑剤など、特に適合した材料が必要とされる。
【0004】
例えば、潤滑または封止を提供するのに十分な量の潤滑剤が圧縮機において望まれる。潤滑剤は、荷重下での軸受などの可動部品の摩耗に対する保護を提供し、圧縮機から熱を除去し、冷媒の損失を防ぐ封止を保存するのを助け、低圧から高圧へのガスの効率的な圧縮を確実にするために隙間を封止し、かつ騒音を減らす(減衰)ために使用することができる。
【0005】
潤滑剤は、良好な低温流動性を有し、熱安定性である必要がある。
【0006】
冷凍潤滑剤は冷媒と相溶性である必要もある。例えば、圧縮機の取り扱いでは、潤滑流体は、潤滑剤に溶解された冷媒の溶液として考えられる。蒸発器などの冷凍システムの他の部品では、オイルは、冷媒に溶解された潤滑剤として考えられ得る。一般に、冷凍システム全体の動作条件(温度および圧力)にわたって潤滑剤と冷媒とが高い混和性を有することが望ましく、混和性が部分的であると、熱伝達に問題が起こり、オイルを圧縮機に戻すのも妨げられる。
【0007】
例えば、蒸発器は、システムの最も冷たい部分であり、相分離が起こりやすい場所であるが、潤滑剤を含有する動作流体は、システムの他の場所で遭遇する、より高い温度でも機能しなければならない。
【0008】
したがって、その互いの溶解性の程度に応じて、冷媒と潤滑剤の組み合わせは、完全に混和性、部分的に混和性、または不混和性に分類される。冷媒と潤滑剤の部分的混和性の混合物は、特定の温度および冷媒中の潤滑剤濃度にて互いに可溶性であり、他の条件下で2つ以上の液相に分離する。
【0009】
オゾン層破壊および地球温暖化に関する問題によって、従来のクロロフルオロカーボン冷媒が、新たな材料または代替材料と交換されている。クロロフルオロカーボン冷媒の代替材料の一例、ジフルオロメタンは、クロロフルオロカーボンの有害なオゾン層破壊特性のない非常に効率的な冷媒である。しかしながら、この非常に望ましい冷媒を十分に活用するために、克服しなければならない技術的な障害がある。
【0010】
冷媒R−32、つまりジフルオロメタンは、オゾン層破壊可能性(ODP)0および地球温暖化係数(GWP)650を有するヒドロフルオロカーボン(HFC)である。しかしながら、R−32は中程度に引火性であり、より重要なことには、現在の熱伝達システムで使用するのに必要な特性を有する潤滑剤との混和性が不十分である。これらの技術的障害を克服するために、R−32がブレンドで使用され、例えば、R−140Aは、ジフルオロメタン(R−32)とペンタフルオロエタン(R−125)の共沸(50重量%/50重量%)混合物であり;R−407Aは、ジフルオロメタンとペンタフルオロエタンおよびテトラフルオロエタン(R−134a)との共沸混合物である。単独で使用する場合にR−32が直面する障害のいくつかが克服されるが、これらのブレンドは、性能または環境上の観点からそれほど望ましくない。
【0011】
上記のように、R−32は、GWP650を有し、冷媒R−410AのGWP=2100よりもかなり低い。R−410Aは、ODP 0.055およびGWP1810を有するR−22(クロロジフルオロメタン)HCFC冷媒の代替品とみなされている。R−32はまた、R−410Aよりも10%高い容積を有し、それによって成績係数(COP)が高くなる。
【0012】
独占的にR−32で動作することができる、冷凍およびAC装置の開発が近年、再燃している。R−32は、R−410Aよりも高い圧力で動作するが、経済的側面の改善と共に装置のデザインの向上によって、R−32の使用が現実的な事項となった。エンジニアリングの向上によって、引火の危険性を最小限にするように制御され、R−410Aは、非引火性(評点A1)とみなされ、R−32は中程度に引火性(評点A2)とみなされ、かつ一部の用途に対する引火性炭化水素冷媒(評点A3)の受け入れが増大しつつあることから、R−32が新たな装置用の次世代の主流低GWP冷媒となる可能性が高まっている。
【0013】
R−32の受け入れについて残っている問題の1つは、R−410Aと共に現在使用されている合成潤滑剤がR−32との使用に完全には適していないことである。R−410Aと共に最も一般的に使用されている潤滑剤は、ポリオールエステルおよびポリビニルエーテルである。現在の商業的潤滑剤は、冷凍/ACシステムの全動作範囲にわたって、特により望ましい潤滑剤粘度にて、R−32との適切な混和性/溶解性を持たない。また、R−32ベースの装置は、より高い吐出温度で動作し、そのため潤滑剤に対して熱安定性の更なる要求条件が求められる。
【0014】
合成エステルベース潤滑剤は、多くのシステムにおいて有効な冷凍潤滑剤である。エステル混合物の物理的性質、例えば粘度等は、エステルの種類および存在するエステルの割合に応じて異なる。
【0015】
米国特許第6,444,626号明細書には、ペンタエリトリトール、ジペンタエリトリトール、トリペンタエリトリトールおよびテトラペンタエリトリトールエステルの混合物、ならびに前述のエステルおよびトリメチロールポリオールエステルとの混合物を含む、冷却剤または潤滑剤として使用するのに十分に適した配合流体が開示されている。米国特許第6,444,626号明細書のペンタエリトリトールとポリペンタエリトリトールエステルの混合物は、ポリオール/エステルのオリゴマー化を生じさせる条件下にて完全なエステル化に必要とされるよりも少ないカルボン酸を使用して、酸性条件下でポリオールを一部エステル化することによる、米国特許第3,670,013号明細書の一般的な教示に従い、2段階プロセスにおいて優勢的にモノペンタエリトリトールである開始ポリオールから調製される。次の工程では、ヒドロキシ基のエステル化を完了する。
【0016】
米国特許第5,486,302号明細書に、分岐鎖カルボン酸を使用してポリオールをエステル化することによって得られる、より高い粘度のPOE潤滑剤が開示されており;残念なことに、これらの分岐鎖エステルは、特定の熱伝達デバイスで使用するには潤滑性が不十分である。
【0017】
米国特許第6,774,093号明細書には、米国特許第6,444,626号明細書に記載の潤滑剤と同様な、エステルを含む冷凍潤滑剤が開示されているが、粘度がそれよりかなり高くなれば、フッ素化冷媒と共に使用するのに適するようになる。
【0018】
同時係属中の米国特許出願第12/684,315号明細書に、ペンタエリトリトールのモノ、ジ、トリ、テトラおよびそれ以上のオリゴマーのカルボキシエステルの混合物を含む冷凍潤滑剤であって、少なくとも25%がテトラペンタエリトリトールまたはそれ以上のオリゴマーのエステルである、冷媒としてのCO
2と共に使用するのに有用な冷凍潤滑剤が開示されている。同時係属中の米国特許出願第13/080,739号明細書にも、主にC
3〜6直鎖状カルボン酸のエステル、例えば、n−ペンタン酸エステルを含有し、かつペンタエリトリトール基4個以上を含有するペンタエリトリトールオリゴマーのエステル30重量%以上を含む、CO
2と使用するのに有用な高粘度の潤滑剤が開示されている。
【0019】
驚くべきことに、ジペンタエリトリトールカルボキシレートエステルを含むポリオールエステルの特定の混合物であって、そのカルボキシレート基の少なくとも40%、例えば少なくとも50、60または70%がペンタノイルである、混合物は、R−32冷媒と共に使用するのに理想的に適した潤滑剤ベースストックを提供することが判明した。前記アルキルカルボキシレートエステル、および他のネオペンチルポリオールエステルとのそのブレンドは、期待される粘度およびR−32混和性よりも高いだけでなく、優れた潤滑性、膜の形成(building)および耐力特性も有する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、ヒドロフルオロカーボン冷媒ジフルオロメタン、つまりR−32と、40℃での動粘度32cSt以上を有するポリオールエステル潤滑剤組成物と、を含む熱伝達デバイスに適した動作流体であって、前記潤滑剤組成物が、ジペンタエリトリトールのC
5〜10アルキルカルボキシエステルを含み、アルキルカルボキシレート基の少なくとも40モル%、60モル%以上がペンタノイル基である、動作流体を提供する。
【0021】
他の種類の冷媒が存在してもよいが、ヒドロフルオロカーボン、つまりHFC冷媒が、存在するすべての冷媒の過半数を占め、多くの実施形態では、冷媒は、優勢的に、または独占的にHFC冷媒で構成される。多くの実施形態において、動作流体は、優勢的な冷媒としてジフルオロメタンを含み、特定の詳細な実施形態では、冷媒は、ジフルオロメタンから本質的になり、つまりジフルオロメタン以外の冷媒が、本発明の基本的かつ新規な特徴に実質的に影響を及ぼさない量で存在する。
【0022】
本発明のジペンタエリトリトールポリオールエステルは都合よくは、既知の方法によって製造され、他のポリオールエステル、例えばペンタエリトリトール、ネオペンチルグリコールまたはトリメチロールプロパンのカルボン酸エステルとブレンドすることができる。一実施形態において、本発明のポリオールエステル潤滑剤組成物は、ペンタエリトリトールのC
5〜10アルキルカルボキシエステルとジペンタエリトリトールのC
5〜10アルキルカルボキシエステルの混合物を含み、すべてのアルキルカルボキシレート基の少なくとも50モル%、一般に60モル%以上がペンタノイルである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
i)ジフルオロメタン(R−32)を含む冷媒;
ii)C
5〜10アルキルカルボキシジペンタエリトリトールエステルを含むポリオールエステル潤滑剤組成物であって、アルキルカルボキシジペンタエリトリトールエステルのアルキルカルボキシレート基の少なくとも40モル%がペンタノイル基である、組成物;
を含む動作流体であって、
ポリオールエステル潤滑剤組成物が、32cSt、しばしば40cStを超える40℃での動粘度、例えば50cSt以上の40℃での動粘度、または60cSt以上の40℃での動粘度を有する、動作流体。
【0024】
ポリオールエステル潤滑剤組成物は、直鎖エステルと分枝鎖エステルの比9:1〜1:9で直鎖および分枝鎖C
5〜10アルキルカルボキシエステルを含む。
【0025】
本発明の潤滑剤は、少なくとも32cSt、40cSt、46cSt、60cSt以上の40℃での動粘度を有し、90、cSt、100cSt、110、cSt、120cStまたは150cStと高い動粘度であり得る。大部分の場合には、40℃での動粘度は、32〜120cSt、例えば32〜100cSt、例えば40〜100cSt、または46〜100cStである。一般に、本発明の潤滑剤は、32〜100、48〜100のISO粘度グレードを有し、例えば、48、68、100、またはその間のいくつかの値のISO粘度グレードを必要とするシステムで十分に機能する。
【0026】
ポリオールエステル潤滑剤組成物は、ジペンタエリトリトールエステルの混合物からなり得るが、多くの実施形態では、潤滑剤は、同一またはそれ以下の粘度を有する、ジペンタエリトリトールエステルと、他のネオペンチルポリオールエステル、例えばネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、トリペンタエリトリトール、および/またはペンタエリトリトールモノマー4個以上を含むオリゴマーのエステルと、の混合物を含み、40℃での動粘度32〜100cStのポリオールエステル潤滑剤組成物が得られる。
【0027】
本発明のジペンタエリトリトールエステルは、式I:
【化1】
の化合物の混合物であり、
上記式中、Rはそれぞれ独立して、炭素原子5〜10個の直鎖状または分岐状アルキルカルボニルであり、そのアルキルカルボニルの60モル%、しばしば70モル%、75モル%以上がC
5アルキルカルボニルである。直鎖状アルキルカルボニルと分岐状アルキルカルボニルの比は、9:1〜1:9、しばしば6:1〜1:6、または5:1〜1:5である。
【0028】
ポリオールエステル潤滑剤組成物中のすべてのエステルの少なくとも30重量%、例えば50重量%、60重量%、または75重量%が式Iの化合物であり、一実施形態では、90重量%以上が式Iの化合物であり、特定の一実施形態では、潤滑剤組成物中のポリオールエステルの本質的にすべてが式Iの化合物である。
【0029】
一部の実施形態において、ジペンタエリトリトールエステルが、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトールおよびペンタエリトリトールオリゴマーの直鎖状または分岐状C
5〜10アルキルカルボキシエステルとブレンドされる。これらのブレンドにおいて、存在するすべてのC
5〜10アルキルカルボキシエステルの50モル%以上がC
5アルキルカルボキシエステルであり、すべてのジペンタエリトリトールエステルの60モル%、70モル%、75モル%以上がC
5アルキルカルボキシエステルである。
【0030】
一実施形態において、ポリオールエステル潤滑剤組成物は、式Iの化合物と、ペンタエリトリトールエステル、つまり式II:
【化2】
(式中、Rはそれぞれ独立して、炭素原子5〜10個の直鎖状または分岐状アルキルカルボニルである)の化合物と、の混合物を含む。かかる実施形態において、ポリオールエステル潤滑剤組成物は、式Iのジペンタエリトリトールエステル30〜70重量%および式IIのペンタエリトリトールエステル30〜70重量%を含むことができ、すべてのC
5〜10アルキルカルボキシエステルの50%以上がC
5アルキルカルボキシエステルである。
【0031】
他の実施形態において、ポリオールエステル潤滑剤組成物は、式Iの化合物とネオペンチルグリコールおよび/またはトリメチロールプロパンのC
5〜10アルキルカルボキシレートエステルとの混合物、あるいは式Iの化合物および式IIの化合物と、ネオペンチルグリコールおよび/またはトリメチロールプロパンのC
5〜10アルキルカルボキシレートエステルとの混合物を含む。
【0032】
いくつかの一般に使用されるポリオールエステルおよびポリビニルエーテル潤滑剤は、冷媒R−32、または優勢的または本質的にR−32である冷媒混合物と混和性であるが、これらの潤滑剤は低い粘度、例えば、40℃での動粘度32cStを有し、かつ広い温度範囲で本発明の潤滑剤ほど混和性ではない。多くの熱伝達システム、つまり冷凍、空気調和等には、より高い粘度の潤滑剤が好ましく、場合によっては必要である。本発明の潤滑剤は、必要な範囲のR−32混和性を有し、かつより高い粘度で利用可能である。
【0033】
本出願において、別段の指定がない限り、「1つ(a)」の化合物または「1つ(an)」の構成要素とは、「1つまたは複数の」化合物または「構成要素」を意味する。「過半数」とは、50%以上、一般に50%を超えることを意味し、「優先的に(predominately)」とは、かなりの過半数、例えば70%以上を意味し、冷媒の場合には、「優先的にR−32」とは、冷媒の15重量%未満、しばしば10重量%または5重量%未満がR−32以外の冷媒であることを意味する。
【0034】
式IおよびIIの各R、ならびに本発明の他のネオペンチルアルコールエステル上に存在する各アルキルカルボニルは独立して、直鎖状または分岐状であり得る、炭素原子5〜10個のアルキルカルボニルであり、すべてのC
5〜10アルキルカルボキシレートエステルの少なくとも45%以上、一般に潤滑剤組成物中のすべてのアルキルカルボニル基の50%、60%、70%、75%、90%以上がペンタノイルである。
【0035】
多くの実施形態において、すべてのアルキルカルボニル基の過半数は、n−ペンタン酸約66%と2−メチルブタン酸約34%との混合物から誘導される。すべてのアルキルカルボニル基の例えば、60%、70%、80%、または90%は、n−ペンタン酸約66%と2−メチルブタン酸約34%との混合物から誘導される。
【0036】
一般に、存在する直鎖状C
5〜10アルキルカルボニルと分岐状C
5〜10アルキルカルボニルの比は、9:1〜1:9、しばしば6:1〜1:6または5:1〜1:5、例えば、3:1〜1:3である。しばしば、直鎖状C
5アルキルカルボニルと分岐状C
5アルキルカルボニルの比は、5:1〜1:3、しばしば3:1〜1:1である。
【0037】
本発明のポリオールエステルの混合物は、よく知られている方法によって調製される。
【0038】
上述の式IまたはIIの化合物と同様な他の化合物が動作流体中に少量存在し得る。例えば、不完全なエステル化によって、1つまたは複数のR基が水素である化合物の存在が生じることがあり、使用される合成方法に応じて、より高い分岐度を示す、より高級なオリゴマーも可能性がある。
【0039】
より多い量の直鎖状または非ペンタノイルアルキルカルボニル基を含有する同様な潤滑剤と比較して、上記の潤滑剤は、かなり向上したR−32との混和性を有することが確認されている。
【0040】
本発明の動作流体は、上記の潤滑剤と、R−32を含む冷媒と、を含む。冷媒は、複数種のHFC化合物の混合物であってもよいし、または非HFC化合物を含有してもよいが、一般に冷媒は優勢的にR−32である。例えば、動作流体中に存在し得る他の冷媒としては、CO
2、アンモニア等が挙げられるが、冷媒の少なくとも85重量%、しばしばそれ以上がHFCであり、一般に冷媒の少なくとも90%または95%、しばしばそれ以上がR−32である。
【0041】
ポリオールエステル潤滑剤と冷媒の混合割合は特に制限されないが、潤滑剤は、冷媒100重量部につき1〜500重量部、さらに好ましくは2〜400重量部の割合で存在し得る。一実施形態において、動作流体は、潤滑剤と冷媒の重量に対してエステル潤滑剤を5〜20重量%含む。
【0042】
本発明の具体的な実施形態の例は:
i)ジフルオロメタン(R−32)を含む冷媒と、
ii)40℃での動粘度32〜120cStを有し、直鎖状C
5〜10アルキルカルボキシエステルと分岐状C
5〜10アルキルカルボキシエステルの比9:1〜1:9、しばしば6:1〜1:6または5:1〜1:5で、ジペンタエリトリトールの直鎖状および分岐状C
5〜10アルキルカルボキシエステルを含む、ポリオールエステル潤滑剤組成物であって、ジペンタエリトリトールのC
5〜10アルキルカルボキシエステルの60モル%以上、例えば70モル%以上、しばしば75モル%以上が直鎖状または分岐状C
5アルキルカルボキシエステルである組成物と、
を含む熱伝達デバイス用の動作流体;または
ポリオールエステル潤滑剤組成物が、40℃での動粘度32〜100cSt、または46〜100cStを有する、上述の動作流体;を包含する。
【0043】
i)ジフルオロメタン(R−32)を含む冷媒と、
ii)40℃での動粘度32〜120cStを有し、上述のジペンタエリトリトールの直鎖状および分岐状C
5〜10アルキルカルボキシエステルを含み、かつネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、トリペンタエリトリトールおよび/またはペンタエリトリトールモノマー4個以上を含むオリゴマーのC
5〜10アルキルカルボキシエステルをさらに含む、ポリオールエステル潤滑剤組成物であって、C
5〜10アルキルカルボキシエステルすべての50モル%以上が直鎖状または分岐状C
5アルキルカルボキシエステルであり、かつ存在するすべてのC
5〜10アルキルカルボキシエステルのすべての組み合わせが、直鎖状C
5〜10アルキルカルボキシエステルと分岐状C
5〜10アルキルカルボキシエステルの比が9:1〜1:9、6:1〜1:6、または5:1〜1:5である、組成物と、
を含む、熱伝達デバイス用の動作流体;
ポリオールエステル潤滑剤組成物が、ジペンタエリトリトールのC
5〜10アルキルカルボキシエステル30〜90重量%、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパンおよび/またはペンタエリトリトールのC
5〜10アルキルカルボキシエステル10〜70重量%を含み、その重量%がポリオールエステル潤滑剤組成物の全重量に対する%である、上記の動作流体;
ポリオールエステル潤滑剤組成物が、ジペンタエリトリトールのC
5〜10アルキルカルボキシエステル50〜90重量%、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパンおよび/またはペンタエリトリトールのC
5〜10アルキルカルボキシエステル10〜50重量%を含む、上記の動作流体;または
ポリオールエステル潤滑剤組成物が、ジペンタエリトリトールのC
5〜10アルキルカルボキシエステル30〜70重量%、ペンタエリトリトールのC
5〜10アルキルカルボキシエステル30〜70重量%を含む、上記の動作流体。
【0044】
冷媒がR−32を含み、かつ冷媒の15重量%未満、例えば10重量%未満がR−32以外の冷媒であり、かつ他のヒドロフルオロカーボン冷媒、CO
2、アンモニアおよび炭化水素冷媒から選択される、あるいは冷媒がR−32から本質的になる、上記の動作流体のいずれか。
【0045】
ポリαオレフィン、ポリアルキレングリコール、アルキル化芳香族化合物、ポリビニルエーテル、鉱油、他のエステルベースの潤滑剤、例えばペンタエリトリトールオリゴマーのエステル、植物油等の他の潤滑剤と、ポリオールエステルエステルをブレンドして、潤滑剤組成物を形成することもできる。しかしながら、上記で定義されるポリオールエステルの混合物は、動作流体の製造に使用される潤滑剤組成物の過半数の、優勢的な、または唯一の成分であり、他の潤滑剤ベースストックに添加する場合には、冷媒と共にそれを使用することに関してポリオールエステル組成物の望ましい特性が損なわれないように注意を払わなければならない。
【0046】
したがって、本発明の動作流体はさらに、成分i)およびii)に加えて、鉱油、ポリαオレフィン、アルキルベンゼン、成分ii)のネオペンチルポリオールエステル以外のカルボン酸エステル、ポリエーテル、ポリビニルエーテル、パーフルオロポリエーテル、リン酸エステルまたはその混合物の1つまたは複数を少量であるが、通常10重量%未満、5重量%未満、一般に2重量%未満含み得る。
【0047】
本発明の動作流体は、当技術分野で一般的な他の成分、例えば添加剤、他の潤滑剤を含み得る。動作流体中にも存在し得る一般的な添加剤としては、酸化防止剤、極圧添加剤、耐摩耗添加剤、摩擦低減添加剤、消泡剤、予備発泡剤(profoaming agent)、金属不活性化剤、酸捕捉剤等が挙げられる。
【0048】
使用することができる酸化防止剤の例としては、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールおよび4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)などのフェノール系酸化防止剤;p,p−ジオクチルフェニルアミン、モノオクチルジフェニルアミン、フェノチアジン、3,7−ジオクチルフェノチアジン、フェニル−1−ナフチルアミン、フェニル−2−ナフチルアミン、アルキルフェニル−1−ナフチルアミン、およびアルキルフェニル−2−ナフチルアミンなどのアミン酸化防止剤;硫黄含有酸化防止剤、例えばアルキルジスルフィド、チオジプロピオン酸エステルおよびベンゾチアゾール;およびジアルキルジチオリン酸亜鉛およびジアリールジチオリン酸亜鉛が挙げられる。
【0049】
使用することができる、極圧添加剤、耐摩耗添加剤、摩擦低減添加剤の例としては、ジアルキルジチオリン酸亜鉛およびジアリールジチオリン酸亜鉛などの亜鉛化合物;チオジプロピオン酸エステル、ジアルキルスルフィド、ジベンジルスルフィド、ジアルキルポリスルフィド、アルキルメルカプタン、ジベンゾチオフェンおよび2,2’−ジチオビス(ベンゾチアゾール)などの硫黄化合物;ジアルキルジメルカプトチアジアオゾールおよびメチレンビス(N,N−ジアルキルジチオカルバメート)などの硫黄/窒素無灰耐摩耗添加剤;リン酸トリクレシルおよびリン酸トリアルキルなどのリン酸トリアリールなどのリン化合物;リン酸ジアルキルまたはジアリール;亜リン酸トリアルキルまたは亜リン酸トリアリール;ジメチルリン酸エステルのドデシルアミン塩など、アルキルおよびジアルキルリン酸エステルのアミン塩;亜リン酸ジアルキルまたはジアリール;亜リン酸モノアルキルまたはモノアリール;パーフルオロアルキルポリエーテル、トリフルオロクロロエチレンポリマーおよびフッ化黒鉛などのフッ素化合物;脂肪酸修飾シリコーンケイ素化合物などのケイ素化合物;モリブデンジスルフィド、グラファイト等が挙げられる。有機摩擦改質剤の例としては、長鎖脂肪アミンおよびグリセロールエステルが挙げられる。
【0050】
使用することができる、消泡剤および予備発泡剤の例としては、ジメチルポリシロキサンなどのシリコーン油およびケイ酸ジエチルなどの有機ケイ酸エステルが挙げられる。使用することができる、金属不活性化剤の例としては、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、アリザリン、キニザリンおよびメルカプトベンゾチアゾールが挙げられる。さらに、フェニルグリシジルエーテル、アルキルグリシジルエーテル、アルキルグリシジルエステル、エポキシステアリン酸エステルおよびエポキシ化植物油などのエポキシ化合物、有機スズ化合物およびホウ素化合物が、酸捕捉剤または安定剤として添加され得る。
【0051】
水分捕捉剤の例としては、オルトギ酸トリメチルおよびオルトギ酸トリエチルなどのオルトギ酸トリアルキル、1,3−ジオキサシクロペンタンなどのケタール、および2,2−ジアルキルオキサゾリジンなどのアミノケタールが挙げられる。
【0052】
本発明のポリオールエステルと冷媒とを含む動作流体は、多種多様な冷凍および熱エネルギー伝達用途において使用することができる。非制限的な例としては、小窓空気調和装置、集中型家庭用空気調和ユニットから、軽い工業用空気調和装置および工場、オフィスビル、共同住宅用の大きな工業用ユニットまでの、すべての範囲の空気調和装置が挙げられる。冷凍用途としては、小さな家庭用器具、例えば家庭用冷蔵庫、冷凍庫、冷水器、自動販売機および製氷機、大規模な冷凍倉庫およびアイススケートリンクが挙げられる。食料品店のカスケード冷凍およびフリーザーシステムもまた、工業用途に含まれるだろう。熱エネルギー伝達用途には、家庭用加熱用の熱ポンプおよび熱水ヒーターが挙げられる。輸送に関連する用途としては、自動車およびトラックの空気調和、冷凍セミトレーラならびに海上および鉄道輸送冷凍コンテナが挙げられる。
【0053】
上記の用途に有用な圧縮機のタイプは2つの広いカテゴリー:容積式圧縮機および動圧縮機に分類することができる。容積式圧縮機は、圧縮機の装置にかけられる仕事により圧縮チャンバの容積を低減することによって、冷媒蒸気圧を増加する。容積式圧縮機は、現在使用されている多くのスタイルの圧縮機、例えば往復圧縮機、回転圧縮機(ローリングピストン、回転翼型、一軸、二軸)および軌道(スクロールまたはトロコイド)を含む。動圧縮機は、回転部材からの運動エネルギーを蒸気に連続的に伝達し、続いて、このエネルギーを圧力上昇へと変換することによって、冷媒の蒸気圧を増加する。遠心圧縮機は、これらの原理に基づいて機能する。
【実施例】
【0054】
ジフルオロメタン、つまりR−32および潤滑剤を含む動作流体を製造し、R−32/潤滑剤混和性を様々な温度、重量%で決定した。
表1に示すジペンタエリトリトールエステル混合物を使用して、実施例1〜7を製造した。
表2に示す潤滑剤を使用して、比較例A〜Gを製造した。
【0055】
以下の実施例において、i−C5は、ペンタン酸/2−メチルブタン酸の約66/34混合物であり、i−C9は、3,5,5−トリメチルヘキサン酸であり、PEはペンタエリトリトールであり、DiPEはジペンタエリトリトールであり、PVEはポリビニルエーテルである。
【0056】
【表1】
【0057】
i−C5はペンタン酸/2−メチルブタン酸の約2:1混合物であることから、実施例1〜3および5〜7において、C
5アルキルカルボニル基の67%はn−ペンタン酸から誘導され、33%は2−メチルブタン酸から誘導される。
【0058】
【表2】
【0059】
表3は、様々な潤滑剤重量%での上記動作流体に関して、それを超える温度で潤滑剤/R−32混和性が確認される温度を示す。以下に示すように温度が低下した場合に、記載の潤滑剤重量%にて2つの相が識別できる。
【0060】
【表3】
【0061】
【表4】
【0062】
多くの冷凍潤滑剤の基本要求は、それが0℃を超える温度ですべての濃度にて冷媒と単相を形成することである。上記のデータから、実施例1〜5のジペンタエリトリトールの潤滑剤それぞれで達成されているが、実施例6、7および比較例A〜Hの潤滑剤では達成されていない。
【0063】
実施例8〜16において、実施例1、2および5からの高い混和性の潤滑剤を非ジペンタエリトリトールエステル潤滑剤とブレンドし、様々な温度および重量%にてR−32/潤滑剤混和性を決定した。表4は、カルボキシレートがそれから誘導される酸を示し、いくつかの丸めの誤差が見られる。示す比は重量比である。表5は混和性の結果を示す。
【0064】
実施例8では、実施例2からの潤滑剤と比較例Bの潤滑剤との1:2混合物が使用される。
【0065】
実施例9〜11では、実施例1からの潤滑剤と比較例Bの潤滑剤との1:2、1:1、および1:2混合物が使用される。
【0066】
実施例12では、実施例1の潤滑剤と、n−ペンタン酸:3,5,5−トリメチルヘキサン酸の72:28混合物から誘導されるペンタエリトリトールエステルとの3:2混合物が使用される。
【0067】
実施例13および14では、実施例1の潤滑剤と、ネオペンチルグリコールのn−ヘプタノイルエステルとの9:1および4:1混合物が使用される。
【0068】
実施例15では、実施例1の潤滑剤と、ペンタエリトリトール80〜95%およびジペンタエリトリトール15〜20%を含む工業的純度ペンタエリトリトールおよびp−ペンタン酸:n−ヘプタン酸:3,5,5−トリメチルヘキサン酸の43:41:16混合物から製造されるエステルとの3:1混合物が使用される。
【0069】
実施例16では、実施例1の潤滑剤と、比較例Bの潤滑剤との3:2混合物が使用される。
【0070】
【表5】
【0071】
多くの冷凍潤滑剤の基本要求は、それが0℃を超える温度ですべての濃度にて冷媒と単相を形成しなければならないことである。下記表5のデータから、実施例8〜16のブレンドそれぞれで、これが達成されている。
【0072】
【表6】
以下を特許請求する。
[請求項1]
i)ジフルオロメタン(R−32)を含む冷媒と、
ii)40℃での動粘度32〜120cStを有し、直鎖状C5〜10アルキルカルボキシエステルと分岐状C5〜10アルキルカルボキシエステルの比が9:1〜1:9でジペンタエリトリトールの直鎖状および分岐状C5〜10アルキルカルボキシエステルを含むポリオールエステル潤滑剤組成物であって、ジペンタエリトリトールの前記C5〜10アルキルカルボキシエステルの60モル%以上が直鎖状または分岐状C5アルキルカルボキシエステルである、ポリオールエステル潤滑剤組成物と、
を含む、熱伝達デバイス用の動作流体。
[請求項2]
ジペンタエリトリトールの前記C5〜10アルキルカルボキシエステルの70モル%以上が、直鎖状または分岐状C5アルキルカルボキシエステルである、請求項1に記載の動作流体。
[請求項3]
ジペンタエリトリトールの前記C5〜10アルキルカルボキシエステルの75モル%以上が、直鎖状または分岐状C5アルキルカルボキシエステルである、請求項1に記載の動作流体。
[請求項4]
直鎖状C5〜10アルキルカルボキシエステルと分岐状C5〜10アルキルカルボキシエステルの前記比が6:1〜1:6である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の動作流体。
[請求項5]
直鎖状C5〜10アルキルカルボキシエステルと分岐状C5〜10アルキルカルボキシエステルの前記比が5:1〜1:5である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の動作流体。
[請求項6]
前記ポリオールエステル潤滑剤組成物が、40℃での動粘度32〜100cSを有する、請求項1に記載の動作流体。
[請求項7]
前記ポリオールエステル潤滑剤組成物が、40℃での動粘度46〜100cStを有する、請求項1に記載の動作流体。
[請求項8]
前記ポリオールエステル潤滑剤組成物がさらに、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、トリペンタエリトリトール、および/またはペンタエリトリトールモノマー4個以上を含むオリゴマーの直鎖状または分岐状C5〜10アルキルカルボキシエステルをさらに含み、前記C5〜10アルキルカルボキシエステルすべての50モル%以上が直鎖状または分岐状C5アルキルカルボキシエステルであり、かつ存在するC5〜10アルキルカルボキシエステルすべてが、直鎖状C5〜10アルキルカルボキシエステルと分岐状C5〜10アルキルカルボキシエステルの比が9:1〜1:9である、請求項1に記載の動作流体。
[請求項9]
前記ポリオールエステル潤滑剤組成物が、ジペンタエリトリトールのC5〜10アルキルカルボキシエステル30〜90重量%、およびネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパンおよび/またはペンタエリトリトールのC5〜10アルキルカルボキシエステル10〜70重量%を含み、前記重量%が、前記ポリオールエステル潤滑剤組成物の全重量に対する%である、請求項8に記載の動作流体。
[請求項10]
前記ポリオールエステル潤滑剤組成物が、ジペンタエリトリトールのC5〜10アルキルカルボキシエステル50〜90重量%、およびネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパンおよび/またはペンタエリトリトールのC5〜10アルキルカルボキシエステル10〜50重量%を含む、請求項9に記載の動作流体。
[請求項11]
前記ポリオールエステル潤滑剤組成物が、ジペンタエリトリトールのC5〜10アルキルカルボキシエステル30〜70重量%、およびペンタエリトリトールのC5〜10アルキルカルボキシエステル30〜70重量%を含む、請求項8に記載の動作流体。
[請求項12]
直鎖状C5〜10アルキルカルボキシエステルと分岐状C5〜10アルキルカルボキシエステルの比が6:1〜1:6である、請求項8〜11のいずれか一項に記載の動作流体。
[請求項13]
直鎖状C5〜10アルキルカルボキシエステルと分岐状C5〜10アルキルカルボキシエステルの比が5:1〜1:5である、請求項8〜11のいずれか一項に記載の動作流体。
[請求項14]
前記冷媒がR−32を含み、かつ前記冷媒の15重量%未満がR−32以外の冷媒であり、かつ他のヒドロフルオロカーボン冷媒、CO2、アンモニアおよび炭化水素冷媒から選択される、請求項1、2、3、または6〜11のいずれか一項に記載の動作流体。
[請求項15]
前記冷媒がR−32を含み、かつ前記冷媒の10重量%未満がR−32以外の冷媒である、請求項1、2、3、または6〜11のいずれか一項に記載の動作流体。
[請求項16]
前記ヒドロフルオロカーボン冷媒が本質的にR−32からなる、請求項1、2,3または6〜11のいずれか一項に記載の動作流体。
[請求項17]
1種または複数種の酸化防止剤、極圧添加剤、耐摩耗添加剤、摩擦低減添加剤、消泡剤、予備発泡剤、金属不活性化剤、酸捕捉剤またはその混合物をさらに含む、請求項1、2、3または6〜11のいずれか一項に記載の動作流体。