(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
陰極と陽極との間に、少なくとも有機化合物からなる発光層を含む複数の発光ユニットが電荷発生層を挟んで積層された構造を有し、前記複数の発光ユニットが発光することで白色光が得られる有機エレクトロルミネッセント素子であって、
前記複数の発光ユニットのうち最も前記陰極側に位置する第1の発光ユニットと、
前記第1の発光ユニットと第1の電荷発生層を挟んで隣り合う第2の発光ユニットと、
前記第2の発光ユニットと第2の電荷発生層を挟んで隣り合う第3の発光ユニットとを備え、
前記第1の発光ユニットは、第1の発光層と、前記第1の発光層と前記陰極との間に電子輸送層を含む第1の機能層と、前記第1の発光層と前記第1の電荷発生層との間に正孔輸送層を含む第2の機能層とを有し、
前記第2の発光ユニットは、第2の発光層と、前記第2の発光層と前記第1の電荷発生層との間に電子輸送層を含む第3の機能層と、前記第2の発光層と前記第2の電荷発生層との間に正孔輸送層を含む第4の機能層とを有し、
前記第3の発光ユニットは、第3の発光層と、前記第3の発光層と前記第2の電荷発生層との間に電子輸送層を含む第5の機能層と、前記第3の発光層と前記陽極との間に正孔輸送層を含む第6の機能層とを有し、
前記第1の発光層は、赤色波長域にピーク波長を有する赤色光を発する赤色燐光発光層であり、
前記第2の発光層は、青色波長域にピーク波長を有する青色光を発する青色蛍光発光層であり、
前記第3の発光層は、緑色波長域にピーク波長を有する緑色光を発する緑色燐光発光層であり、
前記第3の機能層の厚み及び前記第5の機能層の厚みが、前記第1の機能層の厚みよりも小さく、
前記第1の発光ユニット及び前記第3の発光ユニットは、三重項励起子から発光を得る燐光発光層を含み、
前記第2の発光ユニットは、一重項励起子から発光を得る青色蛍光発光層を含み、
前記第2の発光ユニットの総厚と、前記第1の発光ユニットの総厚及び前記第3の発光ユニットの総厚との差が、それぞれ30nm〜70nmであることを特徴とする有機エレクトロルミネッセント素子。
前記第2の発光ユニットの総厚が、前記第1の発光ユニットの総厚と前記第3の発光ユニットの総厚との何れよりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセント素子。
前記白色光の発光色が、「JIS Z 9112」に規定される色度範囲のうち、電球色又は温白色に区分され、且つ、前記白色光の平均演色評価数(Ra)が、70以上であることを特徴とする請求項1〜10の何れか一項に記載の有機エレクトロルミネッセント素子。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を適用した有機エレクトロルミネッセント(EL)素子及び照明装置について、図面を参照して詳細に説明する。
なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。また、以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに必ずしも限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0018】
(有機EL素子)
[第1の実施形態]
先ず、本発明の第1の実施形態として
図1に示す有機EL素子10について説明する。
なお、
図1は、本発明の第1の実施形態に係る有機EL素子10の構成を示す断面図である。
【0019】
有機EL素子10は、
図1に示すように、陰極11と陽極12との間に、第1の発光ユニット13と、第2の発光ユニット14とを有し、これら第1の発光ユニット13と第2の発光ユニット14との間に第1の電荷発生層15を挟んで積層された構造を有している。すなわち、この有機EL素子10は、陽極12、第2の発光ユニット14、第1の電荷発生層15、第1の発光ユニット13、及び陰極11の順で積層されたMPE構造を有している。
【0020】
陰極11には、一般的に仕事関数の小さい金属又はその合金、金属酸化物等を用いることが好ましい。具体的には、例えば、Li等のアルカリ金属、Mg、Ca等のアルカリ土類金属、Eu等の希土類金属などの金属単体、若しくは、これらの金属とAl、Ag、In等を含む合金などを用いることができる。
【0021】
また、例えば「特開平10−270171号公報」や「特開2001−102175号公報」に開示されるように、陰極11と有機層との界面に金属ドーピングされた有機層を用いた構成であってもよい。この場合、陰極11に導電性材料を用いればよく、その仕事関数等の性質は別段、制限とはならない。
【0022】
また、例えば「特開平11−233262号公報」や「特開2000−182774号公報」に開示されるように、陰極11に接する有機層をアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、希土類金属イオンのうち少なくとも1種以上を含有する有機金属錯体化合物により構成してもよい。この場合、有機金属錯体化合物中に含有される金属イオンを真空中で金属に還元し得る金属、例えば、Al、Zr、Ti、Siなどの(熱還元性)金属、若しくはこれらの金属を含有する合金を陰極11に用いることができる。この中でも特に、配線電極として一般に広く使用されているAlが、蒸着の容易さ、光反射率の高さ、化学的安定性等の観点から用いて好ましい。
【0023】
陽極12には、特に材料の制限はなく、この陽極12側から光を取り出す場合は、例えば、ITO(インジウム・すず酸化物)、IZO(インジウム・亜鉛酸化物)などの透明導電材料を使用することができる。
【0024】
また、例えば「特開2002−332567号公報」に開示された手法を用いて、有機膜に損傷の無いようなスパッタリング法によってITOの成膜を行う場合は、上記「特開平10−270171号公報」に開示されている金属ドーピングされた有機層を電子注入層に用いることで、上述したITOやIZOなどの透明導電材料を陰極11に使用することもできる。
【0025】
したがって、陰極11及び陽極12の両方を透明にして(第1及び第2の発光ユニット(有機膜)13,14や第1の電荷発生層15も同様に透明であるから)、透明な有機EL素子10を作製することが可能である。また、一般的な有機EL素子の場合とは逆に、陽極12を金属材料、陰極1に透明導電材料を用いることで、陰極11側から光を取り出すことも可能である。また、成膜順序に関しては必ずしも陽極12側から始める必要はなく、陰極11側から成膜を始めてもよい。
【0026】
第1及び第2の発光ユニット13,14は、従来公知の有機EL素子と同様に種々の構造を採用することができ、少なくとも有機化合物からなる発光層を含むものであれば、如何なる積層構造を有していてもよい。例えば、発光層の陰極11側に、電子輸送層や電子注入層、正孔阻止層等を配置する一方、発光層の陽極12側に、正孔輸送層や正孔注入層、電子阻止層等を配置することが可能である。
【0027】
具体的に、本実施形態では、第1の発光ユニット13として、陰極11と第1の電荷発生層15との間に、陰極11側から順に、電子注入層、電子輸送層を含む第1の機能層16Aと、第1の発光層17Aと、正孔輸送層、正孔注入層を含む第2の機能層18Aとが積層された構造を有している。
【0028】
また、本実施形態では、第2の発光ユニット14として、第1の電荷発生層15と陽極12との間に、第1の電荷発生層15側から順に、電子注入層、電子輸送層を含む第3の機能層16Bと、第2の発光層17Bと、正孔輸送層、正孔注入層を含む第4の機能層18Bとが積層された構造を有している。
【0029】
電子輸送層(ETL:Electron Transporting Layer)は、従来公知の電子輸送性物質を用いて形成すればよく、一般に有機EL素子に用いられる電子輸送性物質のなかでも比較的深いHOMO(Highest Occupied Molecular Orbital)準位を有するものが好ましい。具体的には、少なくとも概ね6.0eV以上のHOMO準位を有する電子輸送性物質を用いるのが好ましい。電子注入層は、陰極11若しくは第1の電荷発生層15から電子の注入効率を向上させるために、陰極11と電子輸送層との間、若しくは第1の電荷発生層15と陽極12側に位置する電子輸送層との間に挿入するものであり、一般的には、電子輸送層と同様な性質を有する電子輸送性物質が使用される。なお、電子輸送層と電子注入層をまとめて、電子輸送層と呼ぶ場合もある。
【0030】
正孔輸送層は、従来公知の正孔輸送性物質を用いて形成すればよく、特に制限はないが、例えばイオン化ポテンシャルが5.7eVより小さく、正孔輸送性、即ち電子供与性を有する有機化合物(電子供与性物質)を用いるのが好ましい。正孔注入層は、陽極12若しくは第1の電荷発生層15から正孔の注入効率を向上させるために、陽極12と正孔輸送層との間、若しくは第1の電荷発生層15と陰極11側に位置する正孔輸送層との間に挿入するものであり、一般的には、正孔輸送層と同様な性質を有する電子供与性物質が使用される。なお、正孔輸送層と正孔注入層をまとめて、正孔輸送層と呼ぶ場合もある。
【0031】
第1及び第2の発光ユニット13,14を構成する各層の成膜方法については、例えば真空蒸着法やスピンコート法などを用いることができる。また、上述した電子輸送層、電子注入層、正孔阻止層、正孔輸送層、正孔注入層などに用いられる材料についても、従来公知のものを使用することが可能である。
【0032】
第1及び第2の発光層17A,17Bは、有機化合物として、通常は主成分であるホスト材料と、少量成分であるゲスト材料とを含み、赤色、緑色、青色の発光は、特にゲスト材料の性質に起因する。
【0033】
ゲスト材料は、ドーパント材料とも呼ばれ、このゲスト材料に蛍光発光を利用するものは、通常、蛍光発光材料と呼ばれており、この蛍光発光材料で構成される発光層のことを蛍光発光層と呼ぶ。一方、ゲスト材料に燐光発光を利用するものは、通常、燐光発光材料と呼ばれており、この燐光発光材料で構成される発光層のことを燐光発光層と呼ぶ。
【0034】
このうち、燐光発光層では、電子と正孔の再結合により生じた75%の三重項励起子に加え、一重項励起子からのエネルギー移動により生成した25%分の三重項励起子も利用できるため、理論上は、100%の内部量子効率が得られる。すなわち、電子と正孔の再結合により生じた励起子が、発光層内で熱失括等を生じることなく光に変換される。実際に、イリジウムや白金等の重原子を含む有機金属錯体では、素子構造の最適化等によって100%に近い内部量子効率を達成している。
【0035】
燐光発光層のゲスト材料としては、特に制限されるものではなく、例えば、赤色燐光発光層としては、Ir(piq)
3やIr(btpy)
3等の赤色燐光発光材料を用いることができる。一方、緑色燐光発光層としては、Ir(ppy)
3等の緑色燐光発光材料を用いることができる。一方、青色燐光発光層としては、Ir(Fppy)
3等の青色燐光発光材料を用いることができる。これらの具体的な燐光発光材料としては、例えば、シグマアルドリッチ社製の688118−250MG、680877−250MG、694924−250MG、682594−250MG等を挙げることができる。
【0036】
燐光発光層のホスト材料としては、電子輸送性の材料、ホール輸送性の材料、又は両者を混合したものなどを使用することができる。具体的には、例えば、4,4’−ビスカルバゾリルビフェニル(CBP)や、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−9,10−フェナントロリン(BCP)等を用いることができる。
【0037】
但し、本発明では、素子寿命の向上、並びに高演色性の実現などの観点から、青色発光層のゲスト材料については、青色蛍光発光材料を用いることが好ましい。青色蛍光発光層のホスト材料及びゲスト材料については、例えば「国際公開第2012/053216号公報」の段落[0052]〜[0061]に記載される青色蛍光発光材料を用いることができる。また、ゲスト材料としては、例えば、スチリルアミン化合物、フルオランテン化合物、アミノピレン化合物、ホウ素錯体等を用いることができる。また、青色蛍光発光層を含む発光ユニットから得られる発光については、遅延蛍光成分を含むことが好ましい。
【0038】
第1の電荷発生層15は、電子受容性物質と電子供与性物質とから構成される電気的絶縁層からなり、この電気的絶縁層の比抵抗が1.0×10
2Ω・cm以上であることが好ましく、より好ましくは1.0×10
5Ω・cm以上である。
【0039】
また、第1の電荷発生層15は、異なる物質の混合層からなり、その一成分が金属酸化物であり、この金属酸化物が酸化還元反応による電荷移動錯体を形成しているものであってもよい。この場合、陰極11と陽極12との間に電圧を印加したときに、電荷移動錯体中の電荷が、それぞれ陰極11側及び陽極12側に向かって移動することにより、第1の電荷発生層15を挟んで陰極11側に位置する一の発光ユニット(第1の発光ユニット13)に正孔を注入し、第1の電荷発生層15を挟んで陽極12側に位置する他の発光ユニット(第2の発光ユニット14)に電子を注入する。これにより、同じ電流量のまま第1及び第2の発光ユニット13,14からの発光が同時に得られるため、これら発光ユニット13,14の個数倍相当の電流効率及び外部量子効率を得ることが可能である。
【0040】
第1の電荷発生層15は、電子受容性物質と電子供与性物質との積層体からなるものであってもよい。この場合、陰極11と陽極12との間に電圧を印加したときに、電子受容性物質と電子供与性物質との界面において、これら電子受容性物質と電子供与性物質との間での電子移動を伴う反応により発生した電荷が、それぞれ陰極11側及び陽極12側に向かって移動することにより、第1の電荷発生層15を挟んで陰極11側に位置する一の発光ユニット(第1の発光ユニット13)に正孔を注入し、第1の電荷発生層15を挟んで陽極2側に位置する他の発光ユニット(第2の発光ユニット14)に電子を注入する。これにより、同じ電流量のまま第1及び第2の発光ユニット13,14からの発光が同時に得られるため、これら発光ユニット13,14の個数倍相当の電流効率及び外部量子効率を得ることが可能である。
【0041】
このような第1の電荷発生層15を構成する具体的な材料については、例えば、上記特許文献9に記載される材料を用いることができ、その中でも段落[0019]〜[0021]に記載の材料を好適に用いることができる。さらに、「国際公開2010/113493号公報」の段落[0023]〜[0026]に記載の材料を用いることができ、その中でも特に、段落[0059]に記載される、下記(1)の構造式からなる強電子受容性物質は、近年、第1の電荷発生層15によく使用される材料である。
【0042】
また、第1の電荷発生層15は、下記(1)の構造式からなる強電子受容性物質と、他の有機材料とを積層若しくは混合することによって形成されていることが好ましい。
【0044】
以上のような構造を有する有機EL素子10では、第1の発光ユニット13及び第2の発光ユニット14が発光することで白色光を得ることができる。また、本実施形態の有機EL素子10では、「JIS Z 9112」に規定される色度範囲のうち、電球色(L)又は温白色(WW)の何れかの光色に該当した白色光を得ることが好ましい。また、本実施形態の有機EL素子10では、平均演色評価数(Ra)が70以上(より好ましくは80以上)となる白色光を得ることが好ましい。これにより、本実施形態の有機EL素子10を、例えば一般照明などの照明装置の光源として好適に用いることが可能である。
【0045】
ところで、本実施形態では、高輝度且つ高効率な発光が可能であり、長寿命化にも対応可能な有機EL素子10を得るため、第1の機能層16Aの厚みT
1を30nm〜100nmとすることが好ましい。
【0046】
本実施形態の有機EL素子10では、電子輸送層を含む第1の機能層16Aの厚みT
1を厚くすることで、干渉の影響及びプラズモン損失の低減によりEQE(External Quantum Efficiency)が向上する。一方、第1の機能層16Aの厚みT
1が厚くなると、駆動電圧も上昇する。具体的には、第1の機能層16Aの厚みT
1が30nm未満になると、EQEの向上が不十分となる。一方、第1の機能層16Aの厚みT
1が100nmを超えると、PCE(Power Conversion Efficiency)が低下する。したがって、第1の機能層16Aの厚みT
1は、30nm〜100nmとすることが好ましく、30〜70nmとすることがより好ましい。
【0047】
なお、EQEは、外部量子効率を意味する。これは外部へ取り出したフォトン数を素子内部へ注入したキャリア数で除した割合であり、発光効率の指標として用いることが多い。しかしながら、EQEの算出結果には、駆動電圧のパラメータが含まれないため、低電圧化の効果を議論する際は不適な指標となる。その際は、PCEと呼ばれるエネルギー変換効率を使用することが多い。これは出力エネルギーを入力エネルギーで除した割合であり、入力エネルギーは消費電力に対応するため、駆動電圧の差分はPCEの効率値へと反映される。
【0048】
また、本実施形態では、高輝度且つ高効率な発光が可能であり、長寿命化にも対応可能な有機EL素子10を得るため、第3の機能層16Bの厚みT
2を第1の機能層16Aの厚みT
1よりも小さくすることが好ましい。具体的には、第3の機能層16Bの厚みT
2を1nm〜20nmとすることが好ましい。
【0049】
本実施形態の有機EL素子10では、電子輸送層を含む第3の機能層16Bの厚みT
2が厚くなることによる駆動電圧の上昇を防ぐため、第3の機能層16Bの厚みT
2を第1の機能層16Aの厚みT
1よりも小さくする。これにより、PCEの低下を抑制できる。
具体的に、第3の機能層16Bの厚みT
2は、20nm以下とすること好ましく、10nm以下とすることがより好ましい。一方、第3の機能層16Bの厚みT
2は、1nm以上とすることが好ましい。第3の機能層16Bの厚みT
2が極端に薄くなると、薄膜のモルフォロジーに対する影響の観点から好ましくない。
【0050】
本実施形態の有機EL素子10では、第1の発光ユニット13及び第2の発光ユニット14の積層順について、デバイス構造の観点から特に制限されてないものの、第1の発光ユニット13に三重光励起子から発光を得る燐光発光層を含み、第2の発光ユニット14に一重項励起子から発光を得る青色蛍光発光層を含む構成とすることが好ましい。
【0051】
これは、第1の発光ユニット13については、上述した段落[0046]の効果により発光効率が向上するのに対し、第2の発光ユニットについては、MPE構造によって陰極11までの光学距離が十分に確保されることから、プラズモン損失を低減する効果は小さくなるためである。その結果、発光効率の向上効果は、第1の発光ユニット13が第2の発光ユニット14よりも大きくなるため、第1の発光ユニット13が高い発光効率を有する燐光発光層を含み、第2の発光ユニット14が青色蛍光発光層を含む構成とすることが好ましい。
【0052】
以上のように、本実施形態の有機EL素子10では、MPE構造を採用したことによる高輝度化及び長寿命化の利点を保持しつつ、低電圧駆動が可能となる素子構造を取り入れることで、電力効率の改善も可能となっている。
【0053】
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態として
図2に示す有機EL素子20について説明する。
なお、
図2は、本発明の第2の実施形態に係る有機EL素子20の構成を示す断面図である。また、以下の説明では、上記有機EL素子10と同等の部位については、説明を省略すると共に、図面において同じ符号を付すものとする。
【0054】
有機EL素子20は、
図2に示すように、陰極21と陽極22との間に、第1の発光ユニット23と、第2の発光ユニット24と、第3の発光ユニット25とを有する。第1の発光ユニット23を構成する第1の電荷発生層26Aは、第2の発光ユニット24側に設けられ、第1の発光ユニット23と第2の発光ユニット24の境界部となっている。第2の発光ユニット24を構成する第2の電荷発生層26Bは、第3の発光ユニット25側に設けられ、第2の発光ユニット24と第3の発光ユニット25の境界部となっている。すなわち、この有機EL素子20は、陰極21、第1の発光ユニット23、第2の発光ユニット24、第3の発光ユニット25、及び陽極22の順で積層されたMPE構造を有している。
【0055】
陰極21及び陽極22については、上記有機EL素子10が備える陰極11及び陽極12と同じものを用いることができる。また、第1及び第2の電荷発生層26A,26Bについても、上記有機EL素子10が備える第1の電荷発生層15と同じものを用いることができる。
【0056】
第1、第2及び第3の発光ユニット23,24,25は、上記有機EL素子10が備える第1及び第2の発光ユニット13,14と同様に、従来公知の有機EL素子と同様に種々の構造を採用することができ、少なくとも有機化合物からなる発光層を含むものであれば、如何なる積層構造を有していてもよい。例えば、発光層の陰極21側に、電子輸送層や電子注入層、正孔阻止層等を配置する一方、発光層の陽極22側に、正孔輸送層や正孔注入層等を配置することが可能である。
【0057】
具体的に、本実施形態では、第1の発光ユニット23として、陰極21と第2の発光ユニット24を構成する第3の機能層27Bとの間に、陰極21側から順に、電子注入層、電子輸送層を含む第1の機能層27Aと、第1の発光層28Aと、正孔輸送層、正孔注入層を含む第2の機能層29Aと、第1の電荷発生層26Aとが積層された構造を有している。
第1の発光層28Aは、例えば、赤色波長域にピーク波長を有する赤色光を発する赤色燐光発光層である。
【0058】
また、本実施形態では、第2の発光ユニット24として、第1の発光ユニット23を構成する第1の電荷発生層26Aと第3の発光ユニット25を構成する第5の機能層27Cとの間に、第1の電荷発生層26A側から順に、電子注入層、電子輸送層を含む第3の機能層27Bと、第2の発光層28Bと、正孔輸送層、正孔注入層を含む第4の機能層29Bと、第2の電荷発生層26Bとが積層された構造を有している。
第2の発光層28Bは、例えば、青色波長域にピーク波長を有する青色光を発する青色蛍光発光層である。
【0059】
また、本実施形態では、第3の発光ユニット25として、第2の発光ユニット24を構成する第2の電荷発生層26Bと陽極22との間に、第2の電荷発生層26B側から順に、電子注入層、電子輸送層を含む第5の機能層27Cと、第3の発光層28Cと、正孔輸送層、正孔注入層を含む第6の機能層29Cとが積層された構造を有している。
第3の発光層28Cは、例えば、緑色波長域にピーク波長を有する緑色光を発する緑色燐光発光層である。
【0060】
第1の発光ユニット23を構成する緑色燐光発光層からなる第1の発光層28Aは、有機化合物として、通常は主成分であるホスト材料と、少量成分であるゲスト材料とを含み、緑色の発光は、特にゲスト材料の性質に起因する。
第2の発光ユニット24を構成する青色蛍光発光層からなる第2の発光層28Bは、有機化合物として、通常は主成分であるホスト材料と、少量成分であるゲスト材料とを含み、青色の発光は、特にゲスト材料の性質に起因する。
第3の発光ユニット25を構成する赤色燐光発光層からなる第3の発光層28Cは、有機化合物として、通常は主成分であるホスト材料と、少量成分であるゲスト材料とを含み、赤色の発光は、特にゲスト材料の性質に起因する。
【0061】
ゲスト材料は、ドーパント材料とも呼ばれ、このゲスト材料に蛍光発光を利用するものは、通常、蛍光発光材料と呼ばれており、この蛍光発光材料で構成される発光層のことを蛍光発光層と呼ぶ。一方、ゲスト材料に燐光発光を利用するものは、通常、燐光発光材料と呼ばれており、この燐光発光材料で構成される発光層のことを燐光発光層と呼ぶ。
【0062】
このうち、燐光発光層では、電子と正孔の再結合により生じた75%の三重項励起子に加え、一重項励起子からのエネルギー移動により生成した25%分の三重項励起子も利用できるため、理論上は、100%の内部量子効率が得られる。すなわち、電子と正孔の再結合により生じた励起子が、発光層内で熱失括等を生じることなく光に変換される。実際に、イリジウムや白金等の重原子を含む有機金属錯体では、素子構造の最適化等によって100%に近い内部量子効率を達成している。
【0063】
燐光発光層のゲスト材料としては、特に制限されるものではなく、例えば、赤色燐光発光層としては、Ir(piq)
3やIr(btpy)
3等の赤色燐光発光材料を用いることができる。一方、緑色燐光発光層としては、Ir(ppy)
3等の緑色燐光発光材料を用いることができる。これらの具体的な燐光発光材料としては、例えば、シグマアルドリッチ社製の688118−250MG、680877−250MG、682594−250MG等を挙げることができる。
【0064】
燐光発光層のホスト材料としては、電子輸送性の材料、ホール輸送性の材料、又は両者を混合したものなどを使用することができる。具体的には、例えば、4,4’−ビスカルバゾリルビフェニル(CBP)や、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−9,10−フェナントロリン(BCP)等を用いることができる。
【0065】
但し、本発明では、素子寿命の向上、並びに高演色性の実現などの観点から、青色発光層のゲスト材料については、青色蛍光発光材料を用いることが好ましい。青色蛍光発光層のホスト材料及びゲスト材料については、例えば、「国際公開第2012/053216号公報」の段落[0052]〜[0061]に記載される青色蛍光発光材料を用いることができる。また、ゲスト材料としては、例えば、スチリルアミン化合物、フルオランテン化合物、アミノピレン化合物、ホウ素錯体等を用いることができる。また、青色蛍光発光層を含む発光ユニットから得られる発光については、遅延蛍光成分を含むことが好ましい。
【0066】
第1及び第2の電荷発生層26A,26Bは、電子受容性物質と電子供与性物質とから構成される電気的絶縁層からなり、この電気的絶縁層の比抵抗が1.0×10
2Ω・cm以上であることが好ましく、より好ましくは1.0×10
5Ω・cm以上である。
【0067】
また、第1及び第2の電荷発生層26A、26Bは、異なる物質の混合層からなり、その一成分が金属酸化物であり、この金属酸化物が酸化還元反応による電荷移動錯体を形成しているものであってもよい。この場合、陰極21と陽極22との間に電圧を印加したときに、電荷移動錯体中の電荷が、それぞれ陰極21側及び陽極22側に向かって移動することにより、第1の電荷発生層26Aを挟んで陰極21側に位置する一の発光ユニットの一部(第1の発光ユニット23から第1の電荷発生層26Aを除いた部分)に正孔を注入し、第1の電荷発生層26Aを挟んで陽極22側に位置する一の発光ユニット(第2の発光ユニット24)に電子を注入すると共に、第2の電荷発生層26Bを挟んで陰極21側に位置する一の発光ユニットの一部(第2の発光ユニット24から第2の電荷発生層26Bを除いた部分)に正孔を注入し、第2の電荷発生層26Bを挟んで陽極22側に位置する一の発光ユニット(第3の発光ユニット25)に電子を注入する。これにより、同じ電流量のまま第1、第2及び第3の発光ユニット23,24,25からの発光が同時に得られるため、これら発光ユニット23,24,25の個数倍相当の電流効率及び外部量子効率を得ることが可能である。
【0068】
第1及び第2の電荷発生層26A、26Bは、電子受容性物質と電子供与性物質との積層体からなるものであってもよい。この場合、陰極21と陽極2との間に電圧を印加したときに、電子受容性物質と電子供与性物質との界面において、これら電子受容性物質と電子供与性物質との間での電子移動を伴う反応により発生した電荷が、それぞれ陰極21側及び陽極22側に向かって移動することにより、第1の電荷発生層26Aを挟んで陰極21側に位置する一の発光ユニットの一部(第1の発光ユニット23から第1の電荷発生層26Aを除いた部分)に正孔を注入し、第1の電荷発生層26Aを挟んで陽極22側に位置する一の発光ユニット(第2の発光ユニット24)に電子を注入すると共に、第2の電荷発生層26Bを挟んで陰極21側に位置する一の発光ユニットの一部(第2の発光ユニット24から第2の電荷発生層26Bを除いた部分)に正孔を注入し、第2の電荷発生層26Bを挟んで陽極22側に位置する一の発光ユニット(第3の発光ユニット25)に電子を注入する。これにより、同じ電流量のまま第1、第2及び第3の発光ユニット23,24,25からの発光が同時に得られるため、これら発光ユニット23,24,25の個数倍相当の電流効率及び外部量子効率を得ることが可能である。
【0069】
このような第1及び第2の電荷発生層26A、26Bを構成する具体的な材料については、例えば、上記特許文献9に記載される材料を用いることができ、その中でも段落[0019]〜[0021]に記載の材料を好適に用いることができる。さらに、「国際公開2010/113493号公報」の段落[0023]〜[0026]に記載の材料を用いることができ、その中でも特に、段落[0059]に記載される、下記(1)の構造式からなる強電子受容性物質は、近年、第1の電荷発生層26Aによく使用される材料である。
【0070】
また、第1の電荷発生層26Aは、下記(1)の構造式からなる強電子受容性物質と、他の有機材料とを積層若しくは混合することによって形成されていることが好ましい。
【0072】
以上のような構造を有する有機EL素子20では、第1の発光ユニット23、第2の発光ユニット24及び第3の発光ユニット25が発光することで白色光を得ることができる。また、本実施形態の有機EL素子20では、「JIS Z 9112」に規定される色度範囲のうち、電球色(L)又は温白色(WW)の何れかの光色に該当した白色光を得ることが好ましい。また、本実施形態の有機EL素子20では、平均演色評価数(Ra)が70以上(より好ましくは80以上)となる白色光を得ることが好ましい。これにより、本実施形態の有機EL素子20を、例えば一般照明などの照明装置の光源として好適に用いることが可能である。
【0073】
本実施形態では、高輝度且つ高効率な発光が可能であり、長寿命化にも対応可能な有機EL素子20を得るため、上記有機EL素子10と同様に、第1の機能層27Aの厚みT
1を30nm〜70nmとすることが好ましい。
【0074】
また、本実施形態では、高輝度且つ高効率な発光が可能であり、長寿命化にも対応可能な有機EL素子20を得るため、第3及び第5の機能層27B,27Cの厚みT
2,T
3を第1の機能層27Aの厚みT
1よりも小さくすることが好ましい。具体的には、第3及び第5の機能層27B,27Cの厚みT
2,T
3を1nm〜20nmとすることが好ましい。
【0075】
本実施形態の有機EL素子20では、第1、第2及び第3の発光ユニット23,24,25の積層順について、デバイス構造の観点から特に制限されないものの、第2の発光ユニット24に一重項励起子から発光を得る青色蛍光発光層を含む構成とすることが好ましい。
【0076】
ここで、後述する第3の実施例における実施例1について、各発光ユニットにおける発光層から陰極までの膜厚と、その際のプラズモン損失及び外部放射モードの割合をシミュレーションソフトにより計算した結果を表1に示す。
【0078】
この表1に示す結果から、プラズモン損失の割合は、陰極21からの膜厚が増加するに従い低下する。一方、外部放射モードは、第2の発光ユニット24が最も低い値となることが読み取れる。このことから、第1の発光ユニット23及び第3の発光ユニット25が高い発光効率を有する燐光発光層を含み、第2の発光ユニット24が青色蛍光発光層を含む構成とすることで、「JIS Z 9112」に規定される色度範囲のうち、電球色又は温白色にて高輝度且つ高効率な発光が可能となる。
【0079】
一方、発光効率(lm/W)の改善には駆動電圧の低減が重要となる。駆動電圧は各発光ユニット23,24,25における有機層全体の膜厚(総厚)によって概ね決定される。駆動電圧を低減するためには、各発光ユニット23,24,25における総厚を薄くすることが効果的である。
【0080】
しかしながら、第1の発光ユニット23においては、プラズモン損失を低減する観点から第1の発光層28Aと陰極21との間に一定の膜厚を確保する必要があるため、総厚を極端に薄くすることはできない。また、第3の発光ユニット25については、有機EL素子20の短絡を防ぐために正孔輸送層(第6の機能層29C)を厚くする必要があるため、総厚を極端に薄くすることはできない。
【0081】
したがって、本実施形態の有機EL素子20では、低電圧化のために、一重項励起子から発光を得る青色蛍光発光層を含む第2の発光ユニット24の総厚を薄くすることが好ましい。さらには、第2の発光ユニット24の総厚が、第1の発光ユニット23の総厚と第3の発光ユニット25の総厚との何れよりも小さいことが好ましい。
【0082】
ここで、後述する第3の実施例における実施例1について、各発光ユニットの総厚を表2に示す。
【0084】
第2の発光ユニット24の総厚と、第1の発光ユニット23の総厚及び第3の発光ユニット25の総厚との差は、それぞれ30nm〜70nmである。
第2の発光ユニット24の総厚と第1の発光ユニット23の総厚との差が30nm未満であると、第2の発光ユニット24を構成する第2の発光層28Bから陰極21までの光学距離が不十分となり、段落[0074]に記載したプラズモン損失の低減効果が不十分となる。一方、第2の発光ユニット24の総厚と第1の発光ユニット23の総厚との差が70nmを超えると、有機EL素子20全体の総厚が大きくなり、駆動電圧の上昇によって発光効率が低下する。
また、第2の発光ユニット24の総厚と、第3の発光ユニット25の総厚との差が30nm未満であると、第2の発光ユニット24の総厚を薄くすることができない状態、もしくは、第3の発光ユニット25の膜厚を厚くすることができ来ない状態のいずれかとなる。前者では、駆動電圧を低減させる効果が不十分となり、後者では十分な正孔輸送層の厚みを確保することができなくなるため、段落[0074]に記載した素子の短絡防止の効果が低くなる。一方、第2の発光ユニット24の総厚と、第3の発光ユニット25の総厚との差が70nmを超えると、有機EL素子20全体の総厚が大きくなり、駆動電圧の上昇によって発光効率が低下する。
【0085】
以上のように、本実施形態の有機EL素子20では、MPE構造を採用したことによる高輝度化及び長寿命化の利点を保持しつつ、低電圧駆動が可能となる素子構造を取り入れることで、電力効率の改善も可能となっている。
【0086】
(照明装置)
[第3の実施形態]
次に、本発明の第3の実施形態として
図3〜
図10に示す照明装置100について説明する。なお、
図3は、本発明の第3の実施形態に係る照明装置100の構成を示す平面図である。
図4は、
図3に示す線分A−Aによる照明装置100の断面図である。また、照明装置100は、本発明が適用される照明装置の一例を示したものであり、このような構成に必ずしも限定されるものではなく、適宜変更を加えることが可能である。
【0087】
照明装置100は、光源として、上記何れかの有機EL素子10,20を備えている。
具体的に、この照明装置100は、
図3及び
図4に示すように、大面積の有機EL素子10,20を均一に発光させるため、ガラス基板110上の四辺にそれぞれ陽極端子電極111が形成されており、ガラス基板110上の四隅にそれぞれ陰極端子電極112が形成されている。なお、配線抵抗を低減するために、陽極端子電極111の表面と、陰極端子電極112の表面の全面に亘り半田(下地半田)が被覆されている。そして、陽極端子電極111及び陰極端子電極112により、それぞれ四方向より有機EL素子10,20へ均一に電流を供給している。
【0088】
また、ガラス基板110上には、酸素や水等による有機EL素子10,20の性能劣化を防止するため、有機EL素子10,20を覆うように封止材114が形成されている。
なお、本実施形態では、基板としてガラス基板110を用いたが、これ以外にも、プラスチックや金属やセラミック等の材料を基板として用いることも可能である。
【0089】
図5は、
図3に示す照明装置100の陽極端子電極111及び陰極端子電極112の図示を省略した構成を示す平面図である。
図6は、
図5に示す線分B−Bによる照明装置の断面図である。
図7は、
図5に示す線分C−Cによる照明装置の断面図である。
図8は、
図5に示す線分D−Dによる照明装置の断面図である。なお、
図5〜
図8においては、陽極端子電極111及び陰極端子電極112を含む給電端子部について図示を省略したが、実際には給電端子部が形成されている。
【0090】
照明装置100は、
図5に示すように、四箇所の陽極端子電極111に均等に給電するための陽極配線101bと、四箇所の陰極端子電極112に均等に給電するための陰極配線101aが形成された枠状の配線基板101を備えている。
【0091】
なお、本実施形態では、配線基板101が封止材114を囲むように設置されている。
また、配線基板101の材料には、ガラスエポキシ基板やフレキシブルプリント基板を用いることとする。また、配線基板101の厚さは、0.2mm〜0.5mm程度とした。
【0092】
配線基板101の四辺の裏面には、
図6〜
図8に示すように、陽極端子電極111と対応する位置に陽極端子電極111と接続される陽極電極101cが形成されている。また、配線基板101の四隅の裏面には、陰極端子電極112と対応する位置に陰極端子電極112と接続される陰極電極101dが形成されている。
【0093】
なお、本実施形態では、陽極電極101c及び陰極電極101d上に異方性導電膜(以下、ACF:Anisotropic Conductive Filmという。)を貼付するか、異方性導電ペースト(以下、ACP:Anisotropic Conductive Paste という。)を塗布した上で、配線基板101をガラス基板110に貼り付けて熱圧着した。これにより、陽極電極101cと陽極端子電極111、及び陰極電極101dと陰極端子電極112が電気的に接続される。
【0094】
陽極配線101a及び陽極電極101cは、
図5及び
図7に示すように、スルーホールを通した陽極接続配線101eにより接続されている。また、陰極配線101bと陰極電極101dは、
図5及び
図8に示すように、スルーホールを通した陰極接続配線101fにより接続されている。したがって、プラス電流とマイナス電流は短絡することなく配線基板101によりそれぞれ回路を形成するようになっている。
【0095】
なお、本実施形態では、四角形状に形成された有機EL素子10,20に均等に電流を供給するため四箇所の陽極端子電極111及び陰極端子電極112を備えているため、配線基板101には四箇所の陽極電極101cと四箇所の陰極電極101dが形成されているが、例えば、三角形状に形成された有機EL素子10,20に均等に電流を供給するため三箇所の陽極端子電極111及び陰極端子電極112を備えている場合には、配線基板101には三箇所の陽極電極101cと三箇所の陰極電極101dを形成するようにしてもよい。
【0096】
さらに、五角形状以上の多角形に形成された有機EL素子10,20に均等に電流を供給するため五箇所の陽極端子電極111及び陰極端子電極112を備えている場合には、配線基板101には五箇所以上の陽極電極101cと五箇所以上の陰極電極101dを形成するようにしてもよい。
【0097】
図9は、照明装置100における配線基板101の構成を示した模式図である。
配線基板101は、
図9に示すように、二つのL字状のL字型配線基板102と、二つのL字状のL字型配線基板102を接続するための二つのL字状の接続用L字型配線基板103とにより構成されている。L字型配線基板2の表面の端部には、陽極電極102aと陰極電極102bが形成されている。
【0098】
陽極電極101c及び陽極電極102aは、
図7に示すように、スルーホールを通した陽極接続配線102cにより接続されている。陰極電極101d及び陰極電極102bは、
図8に示すように、スルーホールを通した陰極接続配線102dにより接続されている。
【0099】
なお、本実施形態では、配線基板101が二つのL字型配線基板102と二つの接続用L字型配線基板103とを組み合わせてロの字状に形成されているが、配線基板101はこれに限らず、はじめからロの字状に形成された配線基板を使用してもよい。また、配線基板101はロの字状に限らずコの字状やVの字状等の形状であってもよく、必要に応じて有機EL素子10,20の一部または全部を囲むように形成すればよい。
【0100】
図10は、照明装置100における接続用L字型配線基板103の構造を示した模式図である。なお、
図10(a)は、接続用L字型配線基板103の表面側の構造を示した模式図、
図10(b)は、接続用L字型配線基板103の裏面側の構造を示した模式図である。
【0101】
接続用L字型配線基板103の表面側には、
図10(a)に示すように、陽極配線103aが形成されている。また、接続用L字型配線基板103の裏面側には、
図10(b)に示すように、陰極配線電極103bと陽極電極103cが形成されている。陽極配線103aと陽極電極103cは、
図7に示すように、スルーホールを通した陽極接続配線103dにより接続されている。
【0102】
照明装置100では、
図5、
図7及び
図8に示すように、陽極電極102aと陽極電極103c、及び陰極電極102bと陰極配線電極103bとを半田付けにより接続する。
なお、本実施形態では、陽極電極102aと陽極電極103cとを半田付けにより接続し、陰極電極102bと陰極配線電極103bとを半田付けにより接続したが、ACFやACPを用いて熱圧着して接続することとしてもよい。
【0103】
また、
図5〜
図10では、簡略化のため陽極配線101a、陰極配線101b及び陽極配線103aを外部に剥き出しになった状態で記載しているが、ショートや感電を避けるために非電気伝導性の材料で必要に応じて被覆することが望ましい。
【0104】
また、照明装置100では、図示を省略するものの、有機EL素子10,20の光取り出し面側に、演色性を向上させるための光学フィルムを備えた構成とすることが可能である。
【0105】
有機EL素子は、空気よりも屈折率の高い(屈折率1.6〜2.1程度)発光層の内部で発光し、この発光層が発する光のうち15〜20%程度の光しか取り出せないことが一般的に言われている。これは、臨界角以上の角度で界面に入射する光は全反射を起こし、素子外部に取り出すことができないことや、透明電極ないし発光層と透明基板との間で光が全反射を起こし、光が透明電極ないし発光層を導波し、結果として光が素子側面方向に逃げるためである。
【0106】
この光の取り出しの効率を向上させる手法としては、例えば、透明基板の表面に凹凸を形成し、透明基板と空気界面での全反射を防ぐ方法(例えば、「米国特許第4,774,435号明細書」を参照。)。基板に集光性を持たせることにより効率を向上させる方法(例えば、「特開昭63−314795号公報」を参照。)。素子の側面等に反射面を形成する方法(例えば、「特開平1−220394号公報」を参照。)。基板と発光体の間に中間の屈折率を持つ平坦層を導入し、反射防止膜を形成する方法(例えば、「特開昭62−172691号公報」を参照。)。基板と発光体の間に基板よりも低屈折率を持つ平坦層を導入する方法(例えば、「特開2001−202827号公報」を参照。)。基板、透明電極層や発光層の何れかの層間(含む、基板と外界間)に回折格子を形成する方法(例えば、「特開平11−283751号公報」を参照。)などがある。
【0107】
なお、照明装置100では、上述した演色性の向上を図るために、上記光学フィルムの表面に更にマイクロレンズアレイ等を設けた構造としたり、集光シートと組み合わせることにより、特定方向、例えば、素子発光面に対し正面方向に集光することにより、特定方向上の輝度を高めたりすることが可能である。さらに、有機EL素子からの光放射角を制御するために、光拡散フィルムを集光シートと併用して用いてもよい。このような光拡散フィルムとしては、例えば、きもと社製の光拡散フィルム(ライトアップ)などを用いることができる。
【0108】
なお、本発明は、上記実施形態のものに必ずしも限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
具体的に、本発明では、上述した白色光が得られる有機EL素子10,20を、例えば一般照明などの照明装置100の光源として好適に用いることが可能である。一方、本発明では、有機EL素子10,20を照明装置100の光源に用いる場合に限定されることなく、例えば液晶ディスプレイのバックライトなど様々な用途に用いることが可能である。
【実施例】
【0109】
以下、実施例により本発明の効果をより明らかなものとする。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することができる。
【0110】
(第1の実施例)
第1の実施例では、
図11に示す素子構造を有する有機EL素子を作製した。具体的には、先ず、厚み100nm、幅2mm、シート抵抗約20Ω/□のITO膜が成膜された、厚さ0.7mmのソーダライムガラス基板を用意した。そして、この基板を、中性洗剤、イオン交換水、アセトン、イソプロピルアルコールで各5分間の超音波洗浄した後、スピン乾燥し、更にUV/O
3処理を施した。
【0111】
次に、真空蒸着装置内の蒸着用るつぼ(タンタル製又はアルミナ製)の各々に、
図11に示す各層の構成材料を充填した。そして、上記基板を真空蒸着装置にセットし、真空度1×10
−4Pa以下の減圧雰囲気下で、蒸着用るつぼに通電して加熱し、各層を蒸着速度0.1nm/秒の蒸着速度で所定の膜厚で蒸着した。また、発光層など2つ以上の材料からなる層は、所定の混合比で形成されるように、蒸着用るつぼに通電を行い共蒸着した。また、陰極は1nm/秒の蒸着速度で所定の膜厚で蒸着した。
【0112】
第1の実施例では、電子輸送層(ETL)の厚みX[nm]をそれぞれ55nm、92nm、142nm、217nmとした1つの発光ユニット(発光層)を有する有機EL素子を作製した。そして、作製した各有機EL素子に、電源(KEITHLEY2425)を接続し、3mA/cm
2の定電流を通電することで、この有機EL素子を発光させた。
このときの各有機EL素子の駆動電圧を測定し、EQE及びPCEの評価を行った。その評価結果を下記の表3に示す。また、電子輸送層(ETL)の厚みXとPCEとの関係を示すグラフを
図12に示す。
【0113】
【表3】
【0114】
なお、表3では、電子輸送層の厚みXが55nmのときの駆動電圧、EQE値及びPCE値を基準値(=1)として、それ以外の厚みXの駆動電圧、EQE値及びPCE値を、この基準値に対する相対値として示している。
【0115】
表3及び
図12に示すように、電子輸送層の厚みXが100nmを超えた時点から、PCEの値が低下していくことがわかる。
【0116】
(第2の実施例)
第2の実施例では、
図13に示す素子構造を有する有機EL素子を作製した。具体的には、先ず、厚み100nm、幅2mm、シート抵抗約20Ω/□のITO膜が成膜された、厚さ0.7mmのソーダライムガラス基板を用意した。そして、この基板を、中性洗剤、イオン交換水、アセトン、イソプロピルアルコールで各5分間の超音波洗浄した後、スピン乾燥し、更にUV/O
3処理を施した。
【0117】
次に、真空蒸着装置内の蒸着用るつぼ(タンタル製又はアルミナ製)の各々に、
図13に示す各層の構成材料を充填した。そして、上記基板を真空蒸着装置にセットし、真空度1×10
−4Pa以下の減圧雰囲気下で、蒸着用るつぼに通電して加熱し、各層を蒸着速度0.1nm/秒の蒸着速度で所定の膜厚で蒸着した。また、発光層など2つ以上の材料からなる層は、所定の混合比で形成されるように、蒸着用るつぼに通電を行い共蒸着した。また、陰極は1nm/秒の蒸着速度で所定の膜厚で蒸着した。
第1の発光ユニットを構成する発光層1を赤色燐光発光層、第2の発光層を構成する発光層2を青色蛍光発光層、第3の発光ユニットを構成する発光層3を緑色燐光発光層とし、有機EL素子を得た。
【0118】
第2の実施例では、最も陰極側に位置する電子輸送層(ETL)の厚みX[nm]をそれぞれ28nm、38nm、48nm、58nm、68nmとした3つの発光ユニット(発光層1〜3)を有する有機EL素子を作製した。そして、作製した各有機EL素子に、電源(KEITHLEY2425)を接続し、3mA/cm
2の定電流を通電することで、この有機EL素子を発光させた。このときの各有機EL素子の駆動電圧を測定し、EQE及びPCEの評価を行った。
【0119】
また、演色性(CRI)及び色温度(CCT)の評価を行った。具体的には、第2の実施例の測定結果に基づき、発光色をCIE表色系の色度座標で評価した。また、この色度座標に基づいて、発光色を「JIS Z 9112」に規定される光源色に区分した。また、「JIS Z 8725」の規定に基づき、黒体軌跡からの偏差duvを導出した。さらに、発光色の平均演色評価数(Ra)を、「JIS Z 8726」に規定される方法によって導出した。その評価結果を下記の表4及び
図14に示す。なお、
図14中に示す黒い点は、黒点放射の軌跡を表している。
【0120】
【表4】
【0121】
なお、表4では、電子輸送層の厚みXが28nmのときの駆動電圧、EQE値及びPCE値を基準値(=1)として、それ以外の厚みXの駆動電圧、EQE値及びPCE値を、この基準値に対する相対値として示している。
【0122】
表4に示すように、電子輸送層の厚みXが厚くなるほど、駆動電圧が上昇するが、駆動電圧の上昇に対してEQEの増分の方が大きくなることがわかる。結果としてPCEも向上していることがわかる。また、平均演色評価数(Ra)も70以上を維持していることがわかる。また、
図14に示すように、電子輸送層の厚みXが28nmと薄い場合は、色度座標がJIS Z 9112にて規定される範囲から外れることがわかる。
また、最も陰極側に位置する電子輸送層(ETL)の厚みXが38nm、48nm、58nm、68nmの場合、第1の発光ユニットの総厚は、126.6nm、136.6nm、146.6nm、156.6nmであり、第2の発光ユニットの総厚(93.6nm)と、第1の発光ユニットの総厚との差が33nm〜63nmであった。また、第2の発光ユニットの総厚(93.6nm)と、第3の発光ユニットの総厚(140nm)との差が46.4nmであった。したがって、これらの有機EL素子は短絡を防ぐ効果及び発光効率に優れていた。
【0123】
(第3の実施例)
第3の実施例では、
図15に示す素子構造を有する有機EL素子を作製した。具体的には、先ず、厚み100nm、幅2mm、シート抵抗約20Ω/□のITO膜が成膜された、厚さ0.7mmのソーダライムガラス基板を用意した。そして、この基板を、中性洗剤、イオン交換水、アセトン、イソプロピルアルコールで各5分間の超音波洗浄した後、スピン乾燥し、更にUV/O
3処理を施した。
【0124】
次に、真空蒸着装置内の蒸着用るつぼ(タンタル製又はアルミナ製)の各々に、
図15に示す各層の構成材料を充填した。そして、上記基板を真空蒸着装置にセットし、真空度1×10
−4Pa以下の減圧雰囲気下で、蒸着用るつぼに通電して加熱し、各層を蒸着速度0.1nm/秒の蒸着速度で所定の膜厚で蒸着した。また、発光層など2つ以上の材料からなる層は、所定の混合比で形成されるように、蒸着用るつぼに通電を行い共蒸着した。また、陰極は1nm/秒の蒸着速度で所定の膜厚で蒸着した。
第1の発光ユニットを構成する発光層1を赤色燐光発光層、第2の発光層を構成する発光層2を青色蛍光発光層、第3の発光ユニットを構成する発光層3を緑色燐光発光層とし、有機EL素子を得た。
【0125】
第3の実施例では、第1の発光ユニットを構成する電子輸送層(ETL)の厚みT
1[nm]、第2の発光ユニットを構成する電子輸送層(ETL)の厚みT
2[nm]、第3の発光ユニットを構成する電子輸送層(ETL)の厚みT
3[nm]とした3つの発光ユニット(発光層1〜3)を有する有機EL素子を作製した。
【0126】
具体的には、各電子輸送層の厚みT
1,T
2,T
3を変化させた実施例1(T
1=48、T
2=15、T
3=5)、比較例1(T
1=28、T
2=30、T
3=30)、比較例2(T
1=48、T
2=50、T
3=50)、比較例3(T
1=28、T
2=15、T
3=5)の有機EL素子を作製した。
【0127】
そして、実施例1及び比較例1〜3の各有機EL素子に、電源(KEITHLEY2425)を接続し、3mA/cm
2の定電流を通電することで、この有機EL素子を発光させた。このときの各有機EL素子の駆動電圧を測定し、EQE及びPCEの評価を行った。
【0128】
また、演色性(CRI)及び色温度(CCT)の評価を行った。具体的には、第3の実施例の測定結果に基づき、発光色をCIE表色系の色度座標で評価した。また、この色度座標に基づいて、発光色を「JIS Z 9112」に規定される光源色に区分した。また、「JIS Z 8725」の規定に基づき、黒体軌跡からの偏差duvを導出した。さらに、発光色の平均演色評価数(Ra)を、「JIS Z 8726」に規定される方法によって導出した。その評価結果を下記の表5及び
図16に示す。なお、
図16中に示す黒い点は、黒点放射の軌跡を表している。
【0129】
【表5】
【0130】
なお、表5では、実施例1のときの駆動電圧、EQE値及びPCE値を基準値(=1)として、比較例1〜3の駆動電圧、EQE値及びPCE値を、この基準値に対する相対値として示している。
実施例1(T
1=48、T
2=15、T
3=5)の場合、第1の発光ユニットの総厚は136.6nmであり、第2の発光ユニットの総厚(93.6nm)と、第1の発光ユニットの総厚との差が43nmであった。また、第2の発光ユニットの総厚(93.6nm)と、第3の発光ユニットの総厚(140nm)との差が46.4nmであった。したがって、これらの有機EL素子は短絡を防ぐ効果及び発光効率に優れていた。
【0131】
また、実施例1及び比較例1〜3の各有機EL素子について、各電子輸送層の厚みT
1,T
2,T
3が本発明の条件を満足する(○)か否(×)かをまとめたものを以下の表6に示す。
【0132】
【表6】
【0133】
表6及び
図16に示すように、本発明の条件を満足する実施例1の有機EL素子では、比較例1〜3の有機EL素子に比べて、EQE値及びPCE値に良好であることがわかる。また、実施例1の有機EL素子では、演色性及び色温度についても良好な結果が得られた。一方、比較例1〜3の有機EL素子の中には、「JIS Z 9112」に規定される色度範囲から外れたものがある。