(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
有機EL素子は、対向する陰極と陽極との間に有機化合物からなる発光層を有する自己発光型素子であり、陰極と陽極との間に電圧を印加したときに、陰極側から発光層に注入された電子と、陽極側から発光層に注入された正孔(ホール)とが、発光層内で再結合することによって生じた励起子(エキシトン)により発光する。
【0003】
イーストマンコダック社のTangらは、この有機EL素子の高効率化のため、キャリア輸送性の異なる有機化合物を積層し、電子及び正孔がそれぞれ陰極及び陽極よりバランス良く注入される構造とし、陰極と陽極との間に挟み込まれた有機層の層厚を2000Å以下とすることで、10V以下の印加電圧で1000cd/m
2と外部量子効率1%の実用化に十分な高輝度及び高効率を得ることに成功した(非特許文献1を参照。)。
【0004】
また、Tangらの特許の中での記載によれば、陰極と陽極との間に挟み込まれた有機層全体の層厚を1μm以下とすることで、より低い印加電圧によって発光できるデバイスを提供できるとしている。好ましくは有機層の層厚を1000Å〜5000Åの範囲とすれば、25V以下の印加電圧で発光を得るのに有用な電場(V/cm)を得られるとされている(特許文献1〜6を参照。)。
【0005】
有機EL素子は、このようなTangらが示した素子構造を基礎として発展してきた。
また、有機EL素子の素子構造としては、少なくとも1層以上の発光層を含む発光ユニットを1つの単位とし、この発光ユニットを陰極と陽極との間で直列に接続し得るように複数積層したタンデム構造の有機EL素子が開発されている(特許文献7,8を参照。)。
【0006】
このタンデム構造の有機EL素子は、上述した低電圧であるにもかかわらず大電流を必要としたTangらの有機EL素子の構造では実現できなかった長寿命化や高輝度化、大面積での均一発光を可能とする技術として注目されている。
【0007】
さらに、複数の発光ユニットの間に電気絶縁性の電荷発生層(CGL)が配置されたマルチフォトンエミッション(MPE)構造の有機EL素子が開発されている(特許文献9,10を参照。)。このMPE構造の有機EL素子では、陰極と陽極との間に電圧を印加したときに、電荷移動錯体中の電荷が、それぞれ陰極側及び陽極側に向かって移動することにより、電荷発生層を挟んで陰極側に位置する一の発光ユニットに正孔を注入し、電荷発生層を挟んで陽極側に位置する他の発光ユニットに電子を注入する。これにより、同じ電流量のまま複数の発光ユニットからの発光が同時に得られるため、発光ユニットの個数倍相当の電流効率及び外部量子効率を得ることが可能である。
【0008】
上述した有機EL素子は、高速度での発光の切り換えが可能であり、素子構造が簡単で薄型化が可能であるなどの特性を有している。有機EL素子は、このような優れた特性を活かして、例えば携帯電話や車載機器などの表示装置に応用されている。さらに、近年では、薄型面発光という特性を活かして、例えば液晶ディスプレイのバックライトや一般照明などの照明装置としても注目されている。
【0009】
ところで、有機EL素子を照明装置に応用する場合は、高い色温度及び演色性を有した白色光を得る必要がある。有機EL素子で白色光を得る方法としては、補色の関係にある2色の発光材料、例えば青色発光層と黄色発光層とが発する光を混色して白色を得る方法や、赤色、青色、緑色の3つの発光層が発する光を混色して白色を得る方法などがある。
その中でも、赤色、青色、緑色の3つの発光層が発する光を混色する方法が、演色性の高い白色光を得るのに適している(特許文献11,12を参照。)。
【0010】
しかしながら、従来の有機EL素子では、高い色温度及び演色性を得る観点から、赤色、青色、緑色の3つの発光層が発光することで得られる白色光の発光スペクトルが必ずしも十分に制御されたものとは言えなかった。すなわち、従来の有機EL素子は、照明装置の光源として必ずしも充分な性能を有するものではなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、このような従来の事情に鑑みて提案されたものであり、色温度及び演色性の高い白色光を得ることによって、特に照明装置の光源に用いて好適な有機エレクトロルミネッセント素子、並びに、そのような有機エレクトロルミネッセント素子を備えた照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
(1)陰極と陽極との間に、少なくとも有機化合物からなる発光層を含む複数の発光ユニットを有する有機エレクトロルミネッセント素子であって、
赤色波長域に1つのピーク波長を有する赤色光を発する赤色燐光発光層と、緑色波長域に1つのピーク波長を有する緑色光を発する緑色燐光発光層とからなる発光層を含む第1の発光ユニットと、
青色波長域に2つのピーク波長を有する青色光を発する青色蛍光発光層からなる発光層を含む第2の発光ユニットとを有し、
前記第1の発光ユニットと前記第2の発光ユニットとが電荷発生層を挟んで、前記陽極、前記第2の発光ユニット、前記第一の発光ユニットおよび前記陰極がこの順に積層された構造を有し、
前記第1の発光ユニット及び前記第2の発光ユニットが発光することで得られる白色光が、少なくとも380〜780nmの波長域に亘って連続した発光スペクトルを有し、且つ、この発光スペクトルにおいて、600〜640nmの赤色波長域に1つのピーク波長と、500〜540nmの緑色波長域に1つのピーク波長と、440〜490nmの青色波長域に2つのピーク波長と、490〜510nmの青色乃至緑色波長域にボトム波長とを有し、
前記白色光の発光色が、「JIS Z 9112」に規定される色度範囲のうち、昼光色(D)、昼白色(N)、白色(W)の何れかであり、且つ、前記白色光の平均演色評価数(Ra)が、70以上であることを特徴とする有機エレクトロルミネッセント素子。
(2)前記緑色及び青色波長域において、互いに隣接するピーク波長の間隔が、15〜50nmであることを特徴とする前記(1)に記載の有機エレクトロルミネッセント素子。
(3)前記赤色及び緑色波長域において、互いに隣接するピーク波長の間隔が、60nm以上であることを特徴とする前記(2)に記載の有機エレクトロルミネッセント素子。
(4)前記電荷発生層は、電子受容性物質と電子供与性物質とから構成される電気的絶縁層からなり、この電気的絶縁層の比抵抗が1.0×10
2Ω・cm以上であることを特徴とする前記(1)〜(3)の何れか一項に記載の有機エレクトロルミネッセント素子。
(5)前記電気的絶縁層の比抵抗が1.0×10
5Ω・cm以上であることを特徴とする前記(4)に記載の有機エレクトロルミネッセント素子。
(6)前記電荷発生層は、異なる物質の混合層からなり、その一成分が金属酸化物であり、この金属酸化物が酸化還元反応による電荷移動錯体を形成しており、
前記陰極と前記陽極との間に電圧を印加したときに、前記電荷移動錯体中の電荷が、それぞれ前記陰極側及び前記陽極側に向かって移動することにより、前記電荷発生層を挟んで前記陰極側に位置する一の発光ユニットに正孔を注入し、前記電荷発生層を挟んで前記陽極側に位置する他の発光ユニットに電子を注入することを特徴とする前記(1)〜(3)の何れか一項に記載の有機エレクトロルミネッセント素子。
(7)前記電荷発生層は、前記電子受容性物質と前記電子供与性物質との積層体からなり、
前記陰極と前記陽極との間に電圧を印加したときに、前記電子受容性物質と前記電子供与性物質との界面において、これら電子受容性物質と電子供与性物質との間での電子移動を伴う反応により発生した電荷が、それぞれ前記陰極側及び前記陽極側に向かって移動することにより、前記電荷発生層を挟んで前記陰極側に位置する一の発光ユニットに正孔を注入し、前記電荷発生層を挟んで前記陽極側に位置する他の発光ユニットに電子を注入することを特徴とする前記(1)〜(3)の何れか一項に記載の有機エレクトロルミネッセント素子。
(8)前記(1)〜(7)の何れか一項に記載の有機エレクトロルミネッセント素子を備える照明装置。
(9)前記有機エレクトロルミネッセント素子の光取り出し面側に光学フィルムを備えることを特徴とする前記(8)に記載の照明装置。
(10)前記白色光のRaが90以上であり、且つ、演色評価数のうち、R9及びR15がそれぞれ90以上であることを特徴とする前記(9)に記載の照明装置。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明によれば、色温度及び演色性の高い白色光が得られる有機エレクトロルミネッセント素子、並びに、そのような有機エレクトロルミネッセント素子を備えた照明装置を提供することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を適用した有機エレクトロルミネッセント(EL)素子及び照明装置について、図面を参照して詳細に説明する。
なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。また、以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに必ずしも限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0018】
本発明を適用した有機EL素子は、陰極と陽極との間に、少なくとも有機化合物からなる発光層を含む複数の発光ユニットを有し、これら複数の発光ユニットが発光することで得られる白色光が、少なくとも380〜780nmの波長域に亘って連続した発光スペクトルを有し、且つ、この発光スペクトルにおいて、600〜640nmの赤色波長域に1つのピーク波長と、500〜540nmの緑色波長域に1つのピーク波長と、440〜490nmの青色波長域に2つのピーク波長とを有することを特徴とする。
【0019】
図1は、本発明を適用した有機EL素子により得られる白色光の発光スペクトルの一例を示すグラフである。
具体的に、この有機EL素子により得られる白色光は、
図1に示すように、いわゆる可視光として、少なくとも380〜780nmの波長域に亘って連続した発光スペクトルSを有している。
【0020】
また、この発光スペクトルSは、600〜640nmの赤色波長域Rに1つのピーク波長p
1と、500〜540nmの緑色波長域Gに1つのピーク波長p
2と、440〜490nmの青色波長域Bに2つのピーク波長p
3,p
4とを有している。
【0021】
また、赤色及び緑色波長域(500〜640nm)において、互いに隣接する2つのピーク波長p
1,p
2の間隔t
1は、60nm以上であることが好ましい。一方、緑色及び青色波長域(440〜540nm)において、互いに隣接する3つのピーク波長p
2,p
3,p
4の間隔t
2,t
3は、それぞれ15〜50nmであることが好ましい。
【0022】
さらに、赤色及び緑色波長域(500〜640nm)において、互いに隣接する2つのピーク波長p
1,p
2の間にある1つのボトム波長b
1が、緑色及び青色波長域(440〜540nm)において、互いに隣接する3つのピーク波長p
2,p
3,p
4の間にある2つのボトム波長b
2,b
3のうち何れか一方よりも発光強度が低くなることが好ましい。(なお、
図2では、ボトム波長b
1がボトム波長b
2,b
3よりも発光強度が低くなっている。)
【0023】
これにより、本発明を適用した有機EL素子では、色温度及び演色性の高い白色光を得ることが可能である。具体的に、この有機EL素子では、「JIS Z 9112」に規定される色度範囲のうち、昼光色(D)、昼白色(N)、白色(W)の何れかの光色に該当した白色光を得ることが可能である。また、この有機EL素子では、平均演色評価数(Ra)が70以上(より好ましくは80以上)となる白色光を得ることが可能である。
【0024】
本発明では、このような高い色温度及び演色性を有した白色光が得られる有機EL素子を、例えば液晶ディスプレイのバックライトや一般照明などの照明装置の光源として好適に用いることが可能である。すなわち、本発明を適用した有機EL素子を備える照明装置では、色温度及び演色性の高い白色光による照明が可能である。また、本発明では、この有機EL素子を照明装置の光源に限定されることなく、様々な用途に用いることが可能である。
【0025】
本発明を適用した有機EL素子は、上述した色温度及び演色性の高い発光スペクトルSを有する白色光を得るための素子構造として、例えば
図2に示すように、陰極1と陽極2との間で、赤色波長域Rに1つのピーク波長p
1を有する赤色光を発する赤色燐光発光層と、緑色波長域Gに1つのピーク波長p
2を有する緑色光を発する緑色燐光発光層とを含む第1の発光ユニット21と、青色波長域Bに2つのピーク波長p
3,p
4を有する青色光を発する青色蛍光発光層を含む第2の発光ユニット22とを積層した構造(タンデム構造)とすることが好ましい。
【0026】
さらに、本発明を適用した有機EL素子は、これら第1及び第2の発光ユニット21,22が電荷発生層(CGL)31を挟んで積層された構造(MPE構造)を有することが好ましい。
【0027】
陰極1には、一般的に仕事関数の小さい金属又はその合金、金属酸化物等を用いることが好ましい。具体的には、例えば、Li等のアルカリ金属、Mg、Ca等のアルカリ土類金属、Eu等の希土類金属などの金属単体、若しくは、これらの金属とAl、Ag、In等を含む合金などを用いることができる。
【0028】
また、例えば「特開平10−270171号公報」や「特開2001−102175号公報」に開示されるように、陰極1と有機層との界面に金属ドーピングされた有機層を用いた構成であってもよい。この場合、陰極1に導電性材料を用いればよく、その仕事関数等の性質は別段、制限とはならない。
【0029】
また、例えば「特開平11−233262号公報」や「特開2000−182774号公報」に開示されるように、陰極1に接する有機層をアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、希土類金属イオンのうち少なくとも1種以上を含有する有機金属錯体化合物により構成してもよい。この場合、有機金属錯体化合物中に含有される金属イオンを真空中で金属に還元し得る金属、例えば、Al、Zr、Ti、Siなどの(熱還元性)金属、若しくはこれらの金属を含有する合金を陰極1に用いることができる。この中でも特に、配線電極として一般に広く使用されているAlが、蒸着の容易さ、光反射率の高さ、化学的安定性等の観点から用いて好ましい。
【0030】
陽極2には、特に材料の制限はなく、この陽極2側から光を取り出す場合は、例えば、ITO(インジウム・すず酸化物)、IZO(インジウム・亜鉛酸化物)などの透明導電材料を使用することができる。
【0031】
また、例えば「特開2002−332567号公報」に開示された手法を用いて、有機膜に損傷の無いようなスパッタリング法によってITOの成膜を行う場合は、上記「特開平10−270171号公報」に開示されている金属ドーピングされた有機層を電子注入層に用いることで、上述したITOやIZOなどの透明導電材料を陰極1に使用することもできる。
【0032】
したがって、陰極1及び陽極2の両方を透明にして(第1及び第2の発光ユニット(有機膜)21,22や電荷発生層31も同様に透明であるから)、透明な有機EL素子を作製することが可能である。また、一般的な有機EL素子の場合とは逆に、陽極2を金属材料、陰極1に透明導電材料を用いることで、陰極1側から光を取り出すことも可能である。また、成膜順序に関しては必ずしも陽極2側から始める必要はなく、陰極1側から成膜を始めてもよい。
【0033】
第1及び第2の発光ユニット21,22は、従来公知の有機EL素子と同様に種々の構造を採用することができ、少なくとも有機化合物からなる発光層を含むものであれば、如何なる積層構造を有していてもよい。例えば、発光層の陰極1側に、電子輸送層や電子注入層等を配置する一方、発光層の陽極2側に、正孔輸送層や正孔注入層等を配置することが可能である。
【0034】
電子輸送層は、従来公知の電子輸送性物質を用いて形成すればよく、一般に有機EL素子に用いられる電子輸送性物質のなかでも比較的深いHOMO(Highest Occupied Molecular Orbital)順位を有するものが好ましい。具体的には、少なくとも概ね6.0eV以上のHOMO順位を有する電子輸送性物質を用いるのが好ましい。電子注入層は、陰極1若しくは電荷発生層31から電子の注入効率を向上させるために、陰極1と電子輸送層との間、若しくは電荷発生層31と陽極2側に位置する電子輸送層との間に挿入するものであり、一般的には、電子輸送層と同様な性質を有する電子輸送性物質が使用される。電子輸送層と電子注入層をまとめて、電子輸送層と呼ぶ場合もある。
【0035】
正孔輸送層は、従来公知の正孔輸送性物質を用いて形成すればよく、特に制限はないが、例えばイオン化ポテンシャルが5.7eVより小さく、正孔輸送性、即ち電子供与性を有する有機化合物(電子供与性物質)を用いるのが好ましい。正孔注入層は、陽極2若しくは電荷発生層31から正孔の注入効率を向上させるために、陽極2と正孔輸送層との間、若しくは電荷発生層31と陰極1側に位置する正孔輸送層との間に挿入するものであり、一般的には、正孔輸送層と同様な性質を有する電子供与性物質が使用される。正孔輸送層と正孔注入層をまとめて、正孔輸送層と呼ぶ場合もある。
【0036】
第1及び第2の発光ユニット21,22を構成する各層の成膜方法については、例えば真空蒸着法やスピンコート法などを用いることができる。また、上述した電子輸送層、電子注入層、正孔輸送層、正孔注入層などに用いられる材料についても、従来公知のものを使用することが可能である。
【0037】
第1及び第2の発光ユニット21,22を構成する赤色、緑色、青色の各発光層は、有機化合物として、通常は主成分であるホスト材料と、少量成分であるゲスト材料とを含み、赤色、緑色、青色の発光は、特にゲスト材料の性質に起因する。
【0038】
ゲスト材料は、ドーパント材料とも呼ばれ、このゲスト材料に蛍光発光を利用するものは、通常、蛍光発光材料と呼ばれており、この蛍光発光材料で構成される発光層のことを蛍光発光層と呼ぶ。一方、ゲスト材料に燐光発光を利用するものは、通常、燐光発光材料と呼ばれており、この燐光発光材料で構成される発光層のことを燐光発光層と呼ぶ。
【0039】
このうち、燐光発光層では、電子と正孔の再結合により生じた75%の三重項励起子に加え、一重項励起子からのエネルギー移動により生成した25%分の三重項励起子も利用できるため、理論上は、100%の内部量子効率が得られる。すなわち、電子と正孔の再結合により生じた励起子が、発光層内で熱失括等を生じることなく光に変換される。実際に、イリジウムや白金等の重原子を含む有機金属錯体では、素子構造の最適化等によって100%に近い内部量子効率を達成している。
【0040】
燐光発光層のゲスト材料としては、特に制限されるものではなく、例えば、赤色燐光発光層としては、Ir(piq)
3やIr(btpy)
3等の赤色燐光発光材料を用いることができる。一方、緑色燐光発光層としては、Ir(ppy)
3等の緑色燐光発光材料を用いることができる。一方、青色燐光発光層としては、Ir(Fppy)
3等の青色燐光発光材料を用いることができる。これらの具体的な燐光発光材料としては、例えば、シグマアルドリッチ社製の688118−250MG、680877−250MG、694924−250MG、682594−250MG等を挙げることができる。
【0041】
燐光発光層のホスト材料としては、電子輸送性の材料、ホール輸送性の材料、又は両者を混合したものなどを使用することができる。具体的には、例えば、4,4’−ビスカルバゾリルビフェニル(CBP)や、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−9,10−フェナントロリン(BCP)等を用いることができる。
【0042】
但し、本発明では、素子寿命の向上、並びに高演色性の実現などの観点から、青色発光層のゲスト材料については、青色蛍光発光材料を用いることが好ましい。青色蛍光発光層のホスト材料及びゲスト材料については、例えば「国際公開第2012/053216号公報」の段落[0052]〜[0061]に記載される青色蛍光発光材料を用いることができる。また、ゲスト材料としては、例えば、スチリルアミン化合物、フルオランテン化合物、アミノピレン化合物、ホウ素錯体等を用いることができる。
【0043】
ところで、本発明では、上記青色蛍光発光層が発する青色光が2つのピーク波長p
3,p
4を有している。ある波長域に複数のピーク波長を有する発光材料は一般に存在するものの、通常はディスプレイ等の表示装置への適用を考えた場合、その色純度を向上させるため、1つのピーク波長を強調するように素子構造を設計する手法が用いられている。具体的には、光の干渉を利用して、ある波長で発光強度が極大となるように膜厚を設定する方法である。一方、本発明は、主に照明装置への適用を意図している。この場合、色温度及び演色性の高い白色光を得るためには、青色波長域でのピーク波長が単一とならないように干渉設計することが好ましい。
【0044】
電荷発生層31は、電子受容性物質と電子供与性物質とから構成される電気的絶縁層からなり、この電気的絶縁層の比抵抗が1.0×10
2Ω・cm以上であることが好ましく、より好ましくは1.0×10
5Ω・cm以上である。
【0045】
また、電荷発生層31は、異なる物質の混合層からなり、その一成分が金属酸化物であり、この金属酸化物が酸化還元反応による電荷移動錯体を形成しているものであってもよい。この場合、陰極1と陽極2との間に電圧を印加したときに、電荷移動錯体中の電荷が、それぞれ陰極1側及び陽極2側に向かって移動することにより、電荷発生層31を挟んで陰極1側に位置する一の発光ユニット(第1の発光ユニット21又は第2の発光ユニット22)に正孔を注入し、電荷発生層31を挟んで陽極2側に位置する他の発光ユニット(第2の発光ユニット22又は第1の発光ユニット21)に電子を注入する。これにより、同じ電流量のまま第1及び第2の発光ユニット21,22からの発光が同時に得られるため、これら発光ユニット21,22の個数倍相当の電流効率及び外部量子効率を得ることが可能である。
【0046】
電荷発生層31は、電子受容性物質と電子供与性物質との積層体からなるものであってもよい。この場合、陰極1と陽極2との間に電圧を印加したときに、電子受容性物質と電子供与性物質との界面において、これら電子受容性物質と電子供与性物質との間での電子移動を伴う反応により発生した電荷が、それぞれ陰極1側及び陽極2側に向かって移動することにより、電荷発生層31を挟んで陰極1側に位置する一の発光ユニット(第1の発光ユニット21又は第2の発光ユニット22)に正孔を注入し、電荷発生層31を挟んで陽極2側に位置する他の発光ユニット(第2の発光ユニット22又は第1の発光ユニット21)に電子を注入する。これにより、同じ電流量のまま第1及び第2の発光ユニット21,22からの発光が同時に得られるため、これら発光ユニット21,22の個数倍相当の電流効率及び外部量子効率を得ることが可能である。
【0047】
このような電荷発生層31を構成する具体的な材料については、例えば、上記特許文献9に記載される材料を用いることができ、その中でも段落[0019]〜[0021]に記載の材料を好適に用いることができる。さらに、「国際公開2010/113493号公報」の段落[0023]〜[0026]に記載の材料を用いることができ、その中でも特に、段落[0059]に記載される強電子受容性物質(HATCN6)は、近年、電荷発生層31によく使用される材料である。
【0048】
本発明を適用した照明装置では、上記有機EL素子の光取り出し面側に、演色性を向上させるための光学フィルムを備えた構成とすることが可能である。
【0049】
通常、演色性は、平均演色評価数(Ra)で評価されることが多く、この平均演色評価数(Ra)は、8種類の演色評価数(R1〜R8)の平均値で表されるものである。また、それ以外にも、赤色の色再現性を評価するR9や、西洋人の肌の色の再現性を評価するR13、日本人の肌の色の再現性を評価するR15などの7種類の演色評価数がある。
【0050】
本発明で用いられる光学フィルムは、上記発光スペクトルSのうち、540〜580nmの波長域に現れる窪み(ボトム波長b
1)をカバーし、演色性の更なる向上を図るためのものである。すなわち、この540〜580nmの波長域をカバーすることは、平均演色評価数(Ra)の向上はもとより、それ以外の演色評価数を向上させる上でも非常に効果的である。
【0051】
また、有機EL素子は、空気よりも屈折率の高い(屈折率1.6〜2.1程度)発光層の内部で発光し、この発光層が発する光のうち15〜20%程度の光しか取り出せないことが一般的に言われている。これは、臨界角以上の角度で界面に入射する光は全反射を起こし、素子外部に取り出すことができないことや、透明電極ないし発光層と透明基板との間で光が全反射を起こし、光が透明電極ないし発光層を導波し、結果として光が素子側面方向に逃げるためである。
【0052】
この光の取り出しの効率を向上させる手法としては、例えば、透明基板の表面に凹凸を形成し、透明基板と空気界面での全反射を防ぐ方法(例えば、「米国特許第4,774,435号明細書」を参照。)。基板に集光性を持たせることにより効率を向上させる方法(例えば、「特開昭63−314795号公報」を参照。)。素子の側面等に反射面を形成する方法(例えば、「特開平1−220394号公報」を参照。)。基板と発光体の間に中間の屈折率を持つ平坦層を導入し、反射防止膜を形成する方法(例えば、「特開昭62−172691号公報」を参照。)。基板と発光体の間に基板よりも低屈折率を持つ平坦層を導入する方法(例えば、「特開2001−202827号公報」を参照。)。基板、透明電極層や発光層の何れかの層間(含む、基板と外界間)に回折格子を形成する方法(例えば、「特開平11−283751号公報」を参照。)などがある。
【0053】
なお、照明装置では、上述した演色性の向上を図るために、上記光学フィルムの表面に更にマイクロレンズアレイ等を設けた構造としたり、集光シートと組み合わせることにより、特定方向、例えば、素子発光面に対し正面方向に集光することにより、特定方向上の輝度を高めたりすることが可能である。さらに、有機EL素子からの光放射角を制御するために、光拡散フィルムを集光シートと併用して用いてもよい。このような光拡散フィルムとしては、例えば、きもと社製の光拡散フィルム(ライトアップ)などを用いることができる。
【0054】
なお、本発明は、上記実施形態のものに必ずしも限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
具体的に、本発明を適用した有機EL素子は、上述した
図1に示す色温度及び演色性の高い発光スペクトルSを有する白色光を得るための素子構造として、上記
図2に示す素子構造を好適に採用するものであるが、このような素子構造に必ずしも制限されるものではない。すなわち、本発明を適用した有機EL素子の素子構造としては、上述した
図1に示す色温度及び演色性の高い発光スペクトルSを有する白色光が得られるものであればよく、それに合わせて様々な素子構造や材料等を採用することが可能である。
【実施例】
【0055】
以下、実施例により本発明の効果をより明らかなものとする。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することができる。
【0056】
(実施例1)
実施例1では、
図3に示す素子構造を有する有機EL素子を作製した。具体的には、先ず、厚み300nm、幅2mm、シート抵抗約10Ω/□のITO膜が成膜された、厚さ0.7mmのソーダライムガラス基板を用意した。そして、この基板を、中性洗剤、イオン交換水、アセトン、イソプロピルアルコールで各5分間の超音波洗浄した後、スピン乾燥し、更にUV/O
3処理を施した。
【0057】
次に、真空蒸着装置内の蒸着用るつぼ(タンタル製又はアルミナ製)の各々に、
図3に示す各層の構成材料を充填した。そして、上記基板を真空蒸着装置にセットし、真空度1×10
−4Pa以下の減圧雰囲気下で、蒸着用るつぼに通電して加熱し、各層を蒸着速度0.1nm/秒の蒸着速度で所定の膜厚で蒸着した。また、発光層など2つ以上の材料からなる層は、所定の混合比で形成されるように、蒸着用るつぼに通電を行い共蒸着した。
また、陰極は1nm/秒の蒸着速度で所定の膜厚で蒸着した。
【0058】
以上のようにして作製した有機EL素子に、電源(KEITHLEY2425)を接続し、4mA/cm
2の定電流を通電することで、この有機EL素子を発光させた。このとき、有機EL素子から正面方向に向けて発せられた光の発光スペクトルを、マルチチャネルアナライザー(浜松ホトニクス製PMA−11)により測定した。
【0059】
そして、この測定結果に基づき、発光色をCIE表色系の色度座標で評価した。また、この色度座標に基づいて、発光色を「JIS Z 9112」に規定される光源色に区分した。また、「JIS Z 8725」の規定に基づき、黒体軌跡からの偏差duvを導出した。さらに、発光色の平均演色評価数(Ra)を、「JIS Z 8726」に規定される方法によって導出した。これらをまとめた評価結果を
図4に示す。
【0060】
(実施例2)
実施例2では、上記実施例1と同様の作製方法を用いて、
図5に示す素子構造を有する有機EL素子を作製した。そして、この実施例2の有機EL素子について、上記実施例1と同様の方法を用いて評価を行った。その評価結果を
図6に示す。
【0061】
(実施例3)
実施例3では、上記実施例1と同様の作製方法を用いて、
図7に示す素子構造を有する有機EL素子を作製した。そして、この実施例3の有機EL素子について、上記実施例1と同様の方法を用いて評価を行った。その評価結果を
図8に示す。
【0062】
(実施例4)
実施例4では、上記実施例1と同様の作製方法を用いて、
図9に示す素子構造を有する有機EL素子を作製した。そして、この実施例4の有機EL素子について、上記実施例1と同様の方法を用いて評価を行った。その評価結果を
図10に示す。
【0063】
(実施例5)
実施例5では、上記実施例1と同様の作製方法を用いて、
図11に示す素子構造を有する有機EL素子を作製した。そして、この実施例5の有機EL素子について、上記実施例1と同様の方法を用いて評価を行った。その評価結果を
図12に示す。但し、
図12は、他の実施例とは異なり、6mA/cm
2の定電流を通電した状態での評価結果である。
【0064】
(実施例6)
実施例6では、上記実施例1と同様の作製方法を用いて、
図13に示す素子構造を有する有機EL素子を作製した。そして、この実施例6の有機EL素子について、上記実施例1と同様の方法を用いて評価を行った。その評価結果を
図14に示す。
【0065】
図4,6,8,10,12,14に示すように、実施例1〜6の有機EL素子では、何れも色温度及び演色性の高い白色光が得られた。したがって、このような本発明の有機EL素子を備える照明装置では、色温度及び演色性の高い白色光による照明が可能であることが明らかとなった。
【0066】
なお、実施例5,6について、同じ素子構造(
図11,13を参照。)にも関わらず、評価結果(
図12,
図14を参照。)に違いが生じたのは、電流値の変化によるものである(電流依存性)。すなわち、電流値の大小により、緑色光と赤色光の強度比が変化する。例えば、電流値が増大した場合は、緑色光の赤色光に対する強度比が低下し、緑色発光層よりも赤色発光層側での発光が支配的となる。また、実施例5では、この電流値が増大した場合に該当し、
図12に示す発光スペクトルより、赤色発光層側での発光が支配的になっていることがわかる。
【0067】
(実施例7)
実施例7では、上記実施例1の有機EL素子の光取り出し面(陽極)側に、光学フィルムを貼付した照明装置を作製した。そして、この実施例7の照明装置について、上記実施例1と同様の方法を用いて評価を行った。その評価結果を
図15に示す。
【0068】
(実施例8)
実施例8では、上記実施例1の有機EL素子の光取り出し面(陽極)側に、光学フィルムを貼付した照明装置を作製した。そして、この実施例8の照明装置について、上記実施例1と同様の方法を用いて評価を行った。その評価結果を
図16に示す。
【0069】
図15,16に示すように、実施例7,8の照明装置では、有機EL素子の光取り出し面(陽極)側に光学フィルムを貼付することによって、光学フィルムを貼付しなかった場合(図中の破線で示す。)と比較して、その形状が変化していることがわかる。特に、青色波長域に現れる2つのピーク波長p
3,p
4のうち、長波長側のピーク波長p
3の発光強度が相対的に弱まることによって、これらピーク波長p
3,p
4の間に現れるボトム波長b
3の発光強度との差が縮まっていることがわかる。
【0070】
これにより、実施例7の照明装置では、Raが92、R9が95、R15が90となり、また、実施例8の照明装置では、Raが92、R9が94、R15が90となり、何れにおいても、非常に優れた演色性が得られた。