(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記電極マガジンは、円盤部と、該円盤部の中心部において上方に突出する嵌合部と、前記円盤部の外縁部に沿って等間隔に配設され半径方向外方に突出する前記電極を把持するための複数の電極保持フィンガとを具備しており、
前記搬送ロボットのハンドに取り付けられた電極マガジン用グリッパが、前記嵌合部の外側面に係合するようになっている請求項1〜3の何れか1項に記載の放電加工システム。
前記電極マガジンの嵌合部は、前記円盤部の半径方向に開口し、前記フックの嵌合部を受容する受容穴と、該受容穴に連通し該電極マガジンの嵌合部の上面に開口する鍵穴形の係止穴とを含み、
前記フックの嵌合部は、前記電極マガジンの受容穴に挿入可能となっており、かつ、前記鍵穴形の係止穴に嵌合する鍵穴形の嵌合ボス部が形成されている請求項5に記載の放電加工システム。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本発明の好ましい実施の形態を説明する。
先ず、
図1を参照すると、本発明の放電加工システムの好ましい実施の形態が図示されている。
図1において、放電加工システム100は、軸線OBに沿って延設された搬送経路110、該搬送経路110に沿って往復動可能に設けられた搬送ロボット200、搬送経路110の周囲に配置された放電加工機300を具備している。放電加工システムは、更に、搬送経路110に沿って放電加工機300の近傍に電極マガジンストッカ400、ワークストッカ600、電極段取りステーション700およびワーク段取りステーション750を具備している。
【0012】
図1の実施形態では、5つの放電加工機300、7つの電極マガジンストッカ400、2つのワークストッカ600、1つの電極段取りステーション700および1つのワーク段取りステーション750が配設されているが、本発明は、こうした具体的な個数に限定されず、各々少なくとも1つずつ設けられていればよい。また、搬送経路110は、軸線OBに沿って直線状に延設されているが、本発明はこれに限定されず、軸線OBおよび搬送経路110は湾曲していてもよい。
【0013】
本実施の形態において、搬送経路110は、軸線OBに沿って互いに平行に延設された一対のレール112、114と、一対のレールの一方、
図2、3ではレール114の側面に沿って延設されたギアラック118、レール112、114およびギアラック118を覆うカバー116とを具備している。
【0014】
搬送ロボット200は、搬送経路110沿いに往復動可能にレール112、114上に取付けられた搬送台車210および該搬送台車210上に搭載されたロボット230を具備している。搬送台車210は、レール112、114上を転動する複数の転動体212、ギアラック118に係合するピニオン214および該ピニオン214を回転駆動する駆動モータ216を具備している。また、電極マガジンの仮置き台として、搬送台車210の上面に立設されたスタンド220、および、該スタンド220の上端には電極マガジン500を吊り下げ支持するフック260が取付けられている。
【0015】
搬送台車210においてフック260とは反対側の端部分には、ラック218が設けられている。ラック218は、上段にワークWを保持する2つのワークチャック219が設けられている。ラック218は、更に、保持するワークWの下段に、後述するロボット230のアタッチメントとしての電極マガジン用グリッパ250およびワーク用グリッパ252を保持するアタッチメント保持部(図示せず)が設けられている。なお、本実施の形態では、個々のワークWは、個々のワークホルダに装着されており、ワーク用グリッパ252はワークホルダと係合し、ワークチャック219はワークホルダと係合するようになっている。
【0016】
ロボット230は、搬送台車210に鉛直軸線ORを中心として回転可能に取り付けられたロボット本体232、該ロボット本体232に水平な第1旋回軸O1を中心として回転可能に取付けられたアーム234、236、および、該アーム234、236の先端部に水平な第3旋回軸O3を中心として回転可能に取付けられたハンド238を具備している。本実施の形態では、ロボット230のアームは、ロボット本体232に水平な第1旋回軸O1を中心として回転可能に取付けられた第1アーム234、該第1アーム234の先端部に水平な第2旋回軸O2を中心として回転可能に取付けられた第2アーム236を具備しており、ロボット230は、水平多関節型ロボットを構成している。ハンド238の先端部には、アタッチメントとして工具マガジン用グリッパ250またはワーク用グリッパ252が選択的に着脱可能に取付けられる。
【0017】
図4を参照すると、電極マガジン500は、円盤部512と、円盤部512の外縁部に沿って等間隔に配設され半径方向外方に突出する複数の電極保持フィンガ514とを具備しており、電極保持フィンガ514の各々に1つの電極Eが保持される。より詳細には、個々の電極Eは個々の電極ホルダに装着されており、電極保持フィンガ514は個々の電極ホルダと係合して、電極Eを鉛直下方に向けた状態で保持するようになっている。電極Eは電極ホルダ、電極ガイドホルダ及び細長い電極より成り、特許第4721896号公報(対応米国特許第7329825号公報)に詳述されている。
【0018】
円盤部512の上面の中心部には、フック260に嵌合する嵌合部516が設けられている。円盤部512の下面の中心部には、後述する放電加工機300の電極マガジン割出し装置330のチャック336が係合する突出部(図示せず)が設けられている。嵌合部516は、円盤部512の中心部において円盤部512の上面から上方に突出する中空のボス様の部材であり、上方に開口する鍵穴形の係止穴518と、半径方向に開口しフック260の先端部を受容する受容穴520とを有している。嵌合部516の側面は、電極マガジン用グリッパ250が係合するようになっている。より詳細には、嵌合部516の側面には、電極マガジン用グリッパ250に係合する係合溝(図示せず)が形成されており、電極マガジン用グリッパ250は該係合溝に係合することによって、電極マガジン500を吊り下げ支持するようになっている。
【0019】
図5を参照すると、フック260は略平板部材より成り、先端部に電極マガジン500の嵌合部516(
図4)に嵌合する嵌合部262が形成されている。嵌合部262には、上方に突出し電極マガジン500の係止穴518に嵌合する略鍵穴形の嵌合ボス部264が形成されている。本実施の形態では、フック260は、その嵌合部262がロボット230に対面するように配向され、かつ、同フック260において、嵌合部262とは反対側の基端部266がスタンド220の上端部に固定される。
【0020】
図6を参照すると、本実施の形態において、放電加工機300は、床面に固定される基台310、基台310上で水平なX軸(
図6では左右方向)およびY軸(
図6の紙面に対して垂直な方向)の双方に往復動可能に取付けられた主軸台314、鉛直なZ軸方向に主軸台314に取付けられ主軸318を保持する主軸頭316、主軸台314にZ軸と平行なW軸方向に移動可能に取付けられ主軸318に装着された電極Eを鉛直方向に案内するガイドアーム320、基台310と一体的に形成されたテーブル322、テーブル322の上面に設けられたワーク割出しヘッド324、テーブル322の四方を包囲しテーブル322に対して鉛直方向に上下動可能に基台310に取り付けられた加工槽328を具備している。テーブル322には、Y軸周りの回転送り軸であるB軸およびX軸周りの回転送り軸であるA軸を有したワーク割出しヘッド324が配設されており、該ワーク割出しヘッド324は、ワークWを保持するワークチャック326が取り付けられている。ワークチャック326は搬送台車210のワークチャック219と同様のもので、ワークホルダを介してワークWを保持する。
【0021】
放電加工機300は、更に、基台310に隣接させて設けられた電極マガジン500を格納する電極マガジン割出し装置330を具備している。電極マガジン割出し装置330は、放電加工機300の基台310上に立設された円筒中空部材より成る電極マガジンスタンド332、および、該電極マガジンスタンド332内に配設され鉛直方向の割出し軸Oiを中心として回転可能な割出しヘッド334を具備している。電極マガジンスタンド332は、
図6に示す電極収容位置と、該電極収容位置から加工槽328に接近した電極交換位置との間で、X軸と平行なXm軸方向に往復動可能に設けられている。また、割出しヘッド334の上端部には、電極マガジン500の円盤部512の下面をクランプするチャック336が配設されている。また、放電加工機300において、電極マガジン割出し装置330の反対側には、操作盤312が配設されている。
【0022】
図7A、7Bを参照すると、電極マガジンストッカ400は、ベース部408、該ベース部408から立設された4本の柱410、該柱410の上端部間を連結する梁412より成る枠体と、該枠体内に鉛直方向の回転軸線Oesを中心として回転可能に設けられた支柱420と、ベース部408内に配設され支柱420を回転させる割出し装置(図示せず)とを主要な構成要素として具備している。支柱420は、該支柱420に沿って異なる複数の高さ位置に電極マガジン500を吊り下げ支持する複数のフック422が取り付けられている。本実施の形態では、高位置H、中間位置M、低位置Lの異なる3つの高さの各々で、3つのフック422が回転軸線Oesを中心として120°毎に配置されている。フック422は、
図5のフック260と同様に形成されており、先端部の嵌合部が半径方向外方になるように半径方向に配向され、基端部において支柱420に固定されている。
【0023】
図8A、8Bを参照すると、ワークストッカ600は、ベース部608、該ベース部608から立設された4本の柱610、該柱610の上端部間を連結する梁612より成る枠体と、該枠体内に鉛直方向の回転軸線Owsを中心として回転可能に設けられた支柱620と、ベース部608内に配設され支柱620を回転させる割出し装置(図示せず)とを具備している。支柱620は、該支柱620に沿って異なる複数の高さ、本実施の形態では、高さH1〜H6の異なる6つの高さ位置にワークマガジン650が取り付けられている。ワークマガジン650は、円盤部652と、円盤部652の外縁部に沿って等間隔に配設され半径方向外方に突出する複数のワーク保持フィンガ654とを具備している。ワークホルダに取り付けられたワークWは、ワーク保持フィンガ654の各々において鉛直方向上向きに配向された状態で保持される。
【0024】
図9A、9Bを参照すると、電極段取りステーション700は、オペレータが手操作で電極マガジン500から使用済の電極を取り外し、未使用電極を取り付ける電極の差替えを行うための装置または設備であり、架台710、架台710上に鉛直方向の回転軸線Oemを中心として回転可能に取付けられたマガジンスタンド712、回転軸線Oemを中心として回転可能に架台710上に設けられた安全ガード716、架台710の上方側面において、回転軸線Oemから機械側MS半分を覆う側面カバー718を具備している。
【0025】
マガジンスタンド712は、下端部に半径方向に延びる脚部712aを有して、回転軸線Oemから半径方向にオフセットされており、脚部712aの先端部が回転軸線Oemを中心として回転可能に架台710に取り付けられている。また、マガジンスタンド712の上端部には、半径方向内方に延びるフック714が取り付けられている。フック714は、マガジンスタンド712に連結された基端部とは反対側の先端部に、
図5のフック260と同様の電極マガジン500の嵌合部516と嵌合する嵌合部を有している。
【0026】
安全ガード716は、
図9Aにおいて実線で示すように、回転軸線Oemを中心とする半円筒状の薄板より成り、
図9Aにおいて実線で示す閉位置と、点線で示す開位置との間で、マガジンスタンド712と共に回転軸線Oemを中心として180°に亘って回転可能となっている。閉位置において、安全ガード716が電極段取りステーション700のオペレータ側OSを覆い、オペレータによる架台710の上方空間へのアクセスを防止する。閉位置では、また、電極段取りステーション700の機械側MSが開いているので、ロボット230による架台710の上方の空間へのアクセスが可能となる。開位置では、安全ガード716は、
図9Aにおいて破線で示すように、側面カバー718の間に配置されて、電極段取りステーション700のオペレータ側OSが開き機械側MSが閉じている。これによって、オペレータによる架台710の上方の空間へのアクセスが可能となると共に、ロボット230による架台710の上方の空間へのアクセスが防止される。
【0027】
図10A、10Bを参照すると、ワーク段取りステーション750は、加工済ワークと、未加工ワークとをオペレータが手操作でワークホルダから取り外したり取り付けたりするための装置または設備であり、架台760、架台760に鉛直方向の回転軸線Owm上に配置されたワークチャック764、回転軸線Owmを中心として回転可能に架台760上に設けられた安全ガード762、架台760の上方側面において、回転軸線Oemから機械側MS半分を覆う側面カバー766を具備している。ワークチャック764は、
図10Bに示すように、ワークWを鉛直方向上向きに配向した状態で、ワークWを装着したワークホルダを保持する。ワークチャック764は、搬送台車210のワークチャック219、ワーク割出しヘッド324のワークチャック326と同様のものである。
【0028】
安全ガード762は、
図10Aにおいて実線で示すように、回転軸線Owmを中心とする半円筒状の薄板より成り、
図10Aにおいて実線で示す閉位置と、点線で示す開位置との間で回転軸線Owmを中心として180°に亘って回転可能となっている。閉位置において、安全ガード762がワーク段取りステーション750のオペレータ側OSを覆い、オペレータによる架台760の上方空間へのアクセスを防止する。閉位置では、また、ワーク段取りステーション750の機械側MSが開いているので、ロボット230による架台760の上方の空間へのアクセスが可能となる。開位置では、安全ガード762は、
図10Aにおいて破線で示すように、側面カバー766の間に配置されて、ワーク段取りステーション750のオペレータ側OSが開き機械側MSが閉じている。これによって、オペレータによる架台760の上方の空間へのアクセスが可能となると共に、ロボット230による架台760の上方の空間へのアクセスが防止される。尚、搬送台車210のワークチャック219及びワーク段取りステーションのワークチャック764は、本実施の形態ではワーク割出しヘッド324のワークチャック326と同様のものとして説明したがワークWを上向きに搬送台車210のラック218やワーク段取りステーション750の架台760に挿入載置し、回り止め可能な穴のあいた置台であってもよい。
【0029】
以下、本実施の形態による放電加工システム100の作用を説明する。
放電加工機300は、難加工性の材料に微小な孔を形成する、例えばチタン合金製のガスタービンブレードの表面にフィルム冷却用の空気の噴出口を形成するのに適しており、比較的細く長い電極Eが用いられる。こうした加工プロセスでは、電極Eの消耗速度は非常に高く、頻繁に電極Eを交換しなければならない。放電加工機300において、電極Eを使い果たすと電極交換動作が開始される。電極交換動作が開始されると、先ず、加工槽328に貯留されている加工液が排水され、次いで、加工槽328が下降する。加工槽328の下降動作と同時または下降動作の後に、ガイドアーム320がZ軸と平行なWG軸方向に上動し、電極ガイドホルダを電極ホルダにクランプする位置に移動し、主軸318が割り出されて電極ホルダに電極ガイドホルダをクランプする。電極マガジン割出し装置330の電極マガジンスタンド332が、Xm軸方向に電極収容位置から電極交換位置へ移動する。このとき、電極Eを保持していない空の電極保持フィンガ514が、後述するように、主軸318に装着されている使用済電極Eの電極ホルダを受容できる位置に割り出されている。
【0030】
加工槽328の下降動作が完了すると、主軸318に装着されている使用済電極Eの電極ホルダが、該電極ホルダを受容すべく割り出され待機している空の電極保持フィンガ514に対してX軸方向に一直線上に位置決めするために、主軸頭316がY軸およびZ軸方向へ移動する。このときガイドアーム320は、WG軸方向に最低位置に配置される。次いで、主軸318は、電極交換位置へ向けてX軸方向に移動(電極マガジン割出し装置330へ向けて接近)し、装着されている使用済電極E(電極ホルダ)を空の電極保持フィンガ514内へ押し込み、これに把持させる。次いで、主軸318に装着されている使用済電極(電極ホルダ)が主軸318からアンクランプされ、主軸頭316がZ軸方向に上動する。これによって、使用済電極E(電極ホルダ)が主軸318から離脱し、電極マガジン500の電極保持フィンガ514に保持される。
【0031】
次いで、割出しヘッド334が回転し、未使用電極Eが主軸318の直下に位置決めされる。主軸頭316がZ軸方向に下動し、新電極Eが主軸318の先端部に装着、クランプされ、更に、主軸頭316がX軸方向に電極マガジン割出し装置330から離反動作することによって、主軸318に装着されている新電極Eが電極マガジン500の電極保持フィンガ514から離脱する。これと同時に、電極マガジンスタンド332がXm軸方向に電極収容位置へ移動する。また、電極Eが電極保持フィンガ514から離脱すると、ガイドアーム320が上動し、電極Eがガイドアーム320のガイド孔に挿通され、電極Eの電極ガイドホルダがガイドアーム320にクランプされる。最後に加工槽328が上昇し、該加工槽328内に加工液が供給され、所定量の加工液が加工槽328内に貯留されると、新たな電極Eによる放電加工が開始される。
【0032】
ワークWの加工が完了すると、加工済ワークWは未加工ワークWと交換される。1つの放電加工機300でワーク交換動作が開始されると、該放電加工機300へ向けて搬送ロボット200が搬送経路110沿いに移動する。このとき、搬送ロボット200のラック218の2つのワークチャック219の一方に未加工ワークWが装着され、他方のワークチャック219は空になっている。更に、ロボット230のハンド238には、アタッチメントとしてワーク用グリッパ252が装着されている。
【0033】
ワーク交換動作の開始と同時に、加工槽328に貯留されている加工液が排水され、次いで、加工槽328が下降する。加工槽328の下降動作が完了すると、搬送ロボット200は、ロボット230のロボット本体232、第1および第2アーム234、236、ハンド238を作動させ、放電加工機300のワーク割出しヘッド324のチャック326に装着されている加工済ワークWをワーク用グリッパ252によって把持する。ワーク用グリッパ252による加工済ワークWの把持と同時或いはそれに続いて、放電加工機300のワークチャック326が加工済ワークWをアンクランプする。
【0034】
こうして加工済ワークWが放電加工機300から取り外されると、ロボット230は、該加工済ワークWをラック218の空のワークチャック219に装着する。次いで、ロボット230は、ラック218から未加工ワークWを把持して、これを放電加工機300のワークチャック326に装着する。すると加工槽328が上昇し、該加工槽328内に加工液が供給される。所定量の加工液が加工槽328内に貯留されると、新たな未加工ワークWの放電加工が開始される。
【0035】
次いで、搬送ロボット200は、放電加工機300から取り外した加工済ワークWを1つのワークストッカ600へ搬送する。ワークストッカ600では、ロボット230は、ワークWを保持していないワーク保持フィンガ654に、ハンド238のワーク用グリッパ252が把持している加工済ワークWのワークホルダを係合させる。次いで、ロボット230はハンド238を水平に移動させて、ワーク用グリッパ252をワーク保持フィンガ654に装着された加工済ワークWのワークホルダから離脱させる。その後、支柱620が回転して、1つの未加工ワークWが割り出される。ロボット230は、該割り出された未加工ワークWのワークホルダに、ワーク用グリッパ252を係合せ、該未加工ワークWをワークマガジン650から取り外し、ラック218のワークチャック219の1つに装着する。こうして、加工済ワークWと未加工ワークWとの交換が完了する。
【0036】
一方、1つの放電加工機300において、電極マガジン割出し装置330が有する電極マガジン500が保持する電極Eの全てが使用済電極Eとなると、電極マガジン交換動作が開始される。電極マガジン交換動作が開始されると、搬送ロボット200は、アタッチメントを電極マガジン用グリッパ250に交換する。このとき、2つのフック260の一方に未使用電極Eのみを保持した新規の電極マガジン500が装着され、他方のフック260は空いている。この状態で、搬送ロボット200は、電極マガジン交換動作を開始した放電加工機300へ移動する。
【0037】
放電加工機300において、ロボット230は、ハンド238に装着されている電極マガジン用グリッパ250を、電極マガジン割出し装置330に装着されている電極マガジン500の嵌合部516の係合溝に係合させる。次いで、電極マガジン割出し装置330のチャック336がアンクランプされる。ロボット230は、ハンド238を鉛直方向に上動させて、全ての電極Eが使用済となった電極マガジン500を電極マガジンスタンド332から上方に離反させる。電極マガジン500の下面に設けられている突出部(図示せず)がチャック336から完全に離反するとともに、電極Eの下端位置が電極マガジンスタンド332より高くなった位置で、ロボット230はハンド238を水平方向に移動させ、電極マガジン500を電極マガジン割出し装置330から取り出す。
【0038】
取り出された電極マガジン500は、水平方向Hにフック260の嵌合部262を嵌合部516の受容穴520内に挿入し、次いで、鉛直方向Vにフック260の鍵穴形の嵌合ボス部264を電極マガジン500の鍵穴形の係止穴518に嵌合させる。これによって、電極マガジン500が搬送台車210の空のフック260に装着される。
【0039】
次いで、ロボット230はハンド238を移動させて、電極マガジン用グリッパ250を他方のフック260に装着されている新規の電極マガジン500の嵌合部516の係合溝に係合させる。次いで、ロボット230はハンド238を鉛直方向∨に上動させて、電極マガジン500の鍵穴形の係止穴518をフック260の鍵穴形の嵌合ボス部264から離脱させる。次いで、ハンド238を水平方向Hに移動させ、電極マガジン500の嵌合部516の受容穴520をフック260の嵌合部262から離反させる。これによって、全て未使用電極Eである新規の電極マガジン500がフック260から取り外される。
【0040】
ロボット230は、こうして他方のフック260から取り外された新規の電極マガジン500を、放電加工機300の電極マガジン割出し装置330の電極マガジンスタンド332の上方へ移動し、次いで、電極マガジン500の下面の嵌合部をチャック336に嵌合させるよう、ハンド238を鉛直方向に下動させる。チャック336が電極マガジンの嵌合部をクランプした後、ロボット230は、ハンド238を水平に移動させて、電極マガジン用グリッパ250を電極マガジン500の嵌合部516の係合溝から離脱させる。
【0041】
次いで、搬送ロボット200は、上述したように放電加工機300の電極マガジン割出し装置330から取り外した使用済電極Eのみを有した電極マガジン500を1つの電極マガジンストッカ400へ搬送する(
図7A、7B)。電極マガジンストッカ400では、ロボット230は、空いているフック422、
図7A、7Bの例では高位置Hにある1つのフック422の嵌合部に電極マガジン500の嵌合部516を嵌合させる。つまり、フック422の嵌合部を嵌合部516の受容穴520内に水平方向に挿入し、次いで、ハンド238を鉛直方向に下動させて、フック422の鍵穴形の嵌合ボス部を電極マガジン500の鍵穴形の係止穴518に嵌合させる。これによって、電極マガジン500が電極マガジンストッカ400の1つのフック422に装着される。次いで、ロボット230はハンド238を水平に移動させて、電極マガジン用グリッパ250を電極マガジン500の嵌合部の係合溝から離脱させる。
【0042】
その後、支柱420が回転して、未使用電極Eを保持する新規の電極マガジン500の1つが割り出される。ロボット230は、該割り出された新規の電極マガジン500の嵌合部の係合溝に、電極マガジン用グリッパ250を係合せ、該電極マガジン500をフック422から取り外し、搬送台車210の2つのフック260の一方に装着する。こうして、使用済電極Eを保持する電極マガジン500と、未使用電極Eを保持する電極マガジン500との交換が完了する。
【0043】
このように、加工済ワークWと未加工ワークWとを放電加工機300とワークストッカ600との間で交換し、使用済電極Eを保持する電極マガジン500と未使用電極Eを保持する電極マガジン500とを放電加工機300と電極マガジンストッカ400との間で交換することによって、例えば夜間等のように、オペレータが放電加工システム100を操作していなくとも、放電加工システム100は、その加工を予め組み込んだプログラムに従って、加工を継続することができる。
【0044】
電極マガジンストッカ400に収納されている使用済電極Eを保持した電極マガジン500、および、ワークストッカ600に収納されている加工済ワークWは、定期的に搬送ロボット200によって、電極段取りステーション700およびワーク段取りステーション750へ夫々搬送され、そこでオペレータによって未使用電極Eまたは未加工ワークWと取り替えられる。また、未使用電極Eを保持する電極マガジン500および未加工ワークWは、電極段取りステーション700およびワーク段取りステーション750から、搬送ロボット200によって、夫々電極マガジンストッカ400およびワークストッカ600へ搬送される。
【0045】
電極マガジンストッカ400と電極段取りステーション700との間の電極マガジンの交換動作は、先ず、搬送ロボット200が電極マガジンストッカ400へ移動し、既述したように、電極マガジンストッカ400から使用済電極Eを保持する電極マガジン500を取り出すことから開始される。電極マガジンストッカ400からの電極マガジン500を保持して、搬送ロボット200が電極段取りステーション700へ移動すると、
図9A、9Bに示すように、ロボット230は機械側MSから電極段取りステーション700に接近する。このとき、安全ガード716はオペレータ側OSを覆う位置にあり、機械側MSが開放されている。
【0046】
電極段取りステーション700において、ロボット230は、ハンド238を水平に移動させて、その保持する電極マガジン500の嵌合部516を電極段取りステーション700のフック714の嵌合部に既述したように嵌合させる。次いで、ロボット230は、ハンド238を水平に移動させて、フック714から離反させる。これによって、ハンド238に装着されている電極マガジン用グリッパ250が、電極マガジン500の嵌合部の係合溝から離脱し、電極マガジン500がフック714に装着される。
【0047】
ハンド238が電極マガジン段取りステーション700から退出した後、オペレータが手操作により安全ガード716を回転軸線Oemを中心として180°回転させることによって、電極段取りステーション700のオペレータ側OSが開放され、同時に機械側MSが安全ガード716によって覆われる。これによって、オペレータは、安全に使用済電極Eを電極マガジン500の各電極保持フィンガ514から取り外し、新たな未使用電極Eを電極保持フィンガ514に装着することが可能となる。なお、電極段取りステーション700では、電極マガジン500は、オペレータが手操作により回転軸線Oemを中心として回転させることができる。
【0048】
ワークストッカ600とワーク段取りステーション750との間のワークWの交換動作は、先ず、搬送ロボット200がワークストッカ600へ移動し、既述したように、ワークストッカ600から加工済ワークWを取り出すことから開始される。搬送ロボット200が、ワークストッカ600から取り外した加工済ワークWを、ハンド238に装着したワーク用グリッパ252によって保持した状態で、ワーク段取りステーション750へ移動すると、
図10A、10Bに示すように、ロボット230は機械側MSからワーク段取りステーション750に接近する。このとき、安全ガード762はオペレータ側OSを覆う位置にあり、機械側MSが開放されている。ロボット230は、ワーク用グリッパ252によって保持する加工済ワークWをワーク段取りステーション750のワークチャック764に装着する。
【0049】
ハンド238がワーク段取りステーション750から退出した後、オペレータが手操作により安全ガード762を回転軸線Owmを中心として180°回転させることによって、ワーク段取りステーション750のオペレータ側OSが開放され、同時に機械側MSが安全ガード762によって覆われる。これによって、オペレータは、安全に加工済ワークWをワークホルダから取り外し、新たな未加工ワークWをワークホルダに装着することが可能となる。ワークWはワークホルダに限らずワークパレットに取り付けられていてもよいし、ワークホルダやワークパレット等の補助具を用いず、搬送ロボット230、ワークチャック219、326、764がワークWを直接把持する形態でもよい。
【0050】
本実施の形態では、放電加工機によって例えば1つのタービンブレード(ワーク)に冷却用の細穴を数百箇所あけ、そのワークが多数あり、かつ、そのようなワークが多種類ある場合の放電加工システムについて述べた。このような細穴放電加工では、1つのワークを加工する間に電極を新しい電極に数回交換する必要があり、ワークの交換頻度に比べ電極の交換頻度が非常に高い。また、細穴を放電加工するための電極は、細くて長い形状をしており剛性が低いため、電極交換速度を下げて電極の損傷を防がなければならない。このような制約の中で生産性を上げるため、従来は電極ストッカと各放電加工機との間の電極交換を複数の搬送ロボットを用いて1本単位で行っていたのを、本発明の実施の形態では、1台の搬送ロボットを用いて電極マガジンストッカと各放電加工機との間で電極マガジン単位で電極交換を行うようにした。従って、ロボットの構成を複雑化することなく生産性を向上させることができた。また、電極交換速度を上げなくても能率良く電極交換を行うことができるので、電極の損傷も生じない。