特許第6022038号(P6022038)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツングの特許一覧

特許6022038レーザビームによるワークピースの処理方法および処理装置
<>
  • 特許6022038-レーザビームによるワークピースの処理方法および処理装置 図000002
  • 特許6022038-レーザビームによるワークピースの処理方法および処理装置 図000003
  • 特許6022038-レーザビームによるワークピースの処理方法および処理装置 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6022038
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月9日
(54)【発明の名称】レーザビームによるワークピースの処理方法および処理装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/36 20140101AFI20161027BHJP
   B23K 26/073 20060101ALI20161027BHJP
   G02F 1/01 20060101ALI20161027BHJP
【FI】
   B23K26/36
   B23K26/073
   G02F1/01 D
【請求項の数】13
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-509341(P2015-509341)
(86)(22)【出願日】2013年3月18日
(65)【公表番号】特表2015-521108(P2015-521108A)
(43)【公表日】2015年7月27日
(86)【国際出願番号】EP2013055574
(87)【国際公開番号】WO2013164125
(87)【国際公開日】20131107
【審査請求日】2014年10月30日
(31)【優先権主張番号】102012207220.9
(32)【優先日】2012年4月30日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】ウルリヒ グラーフ
(72)【発明者】
【氏名】ローラント ガオホ
【審査官】 岩瀬 昌治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−119427(JP,A)
【文献】 特開2002−292488(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/107602(WO,A1)
【文献】 米国特許第06660964(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/36
B23K 26/073
G02F 1/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザビームによるワークピース(110)の処理方法であって、
少なくとも1つの、可変のビーム成形装置(132)によって変化する少なくとも1つのレーザビーム(130)を提供し、
次に前記レーザビーム(130)は、前記ワークピース(110)の少なくとも1つの処理面(112)に入射し、
前記ビーム成形装置(132)によって、前記処理面(112)の箇所の前記レーザビーム(130)に、少なくとも1つの、所定の調整可能なビームプロファイル(116、118、120)を与え
前記ビーム成形装置(132)は、前記処理面(112)上に照射領域と非照射領域(122、124)の少なくとも2つの異なるパターンを形成するように構成されており、かつ、前記2つの異なるパターンの切り替え時に、前記照射領域(122)におけるフルエンスが+/−30%の偏差を超えて変化しないように構成されている、
ことを特徴とする、レーザビームによるワークピース(110)の処理方法。
【請求項2】
前記ビーム成形装置(132)は変調素子(140)のマトリクス(138)を有しており、
前記変調素子(140)は、自身に入射する前記レーザビーム(130)の構成部分の位相、振幅、強度および偏光のうちの少なくとも1つを変調するように構成されている、請求項記載の方法。
【請求項3】
前記変調素子(140)は、前記位相を変調するように構成されており、
前記変調素子(140)によって、前記レーザビーム(130)の光軸(134)に対して垂直な面において、位置に依存する位相変調のパターンを形成し、
少なくとも1つの焦点合わせ部材(142)によって、前記位置に依存する位相変調のパターンを、前記処理面(112)上での位置に依存する強度変調のパターンに変換する、請求項記載の方法。
【請求項4】
前記変調素子(140)は、前記強度を変調するように構成されており、
前記変調素子(140)によって、前記レーザビーム(130)の光軸に対して垂直な面において、位置に依存する強度変調のパターンを形成し、
少なくとも1つの結像光学系(152)によって、前記位置に依存する強度変調のパターンを、前記処理面(112)上の位置に依存する強度変調のパターンに結像する、請求項記載の方法。
【請求項5】
前記ビーム成形装置(132)は少なくとも1つの空間光変調器(136)および/または少なくとも1つのマイクロミラーシステムを含んでいる、請求項1からまでのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
少なくとも2つの、異なる照射ステップのシーケンスを含んでおり、
当該少なくとも2つの、異なる照射ステップにおいて、前記レーザビーム(130)の異なるビームプロファイル(116、118、120)によって前記ワークピース(110)の前記処理面(112)を照射する、請求項1からまでのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
変調素子(140)によって構成されているマトリクス(138)が前記ビーム成形装置(132)に備えられており、前記変調素子を前記少なくとも2つの、異なる照射ステップにおいて異なって駆動制御する、請求項記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも2つの、異なる照射ステップそれぞれにおいて、前記ワークピース(110)の異なる面において、異なる幾何学的形状の孔および/または異なる深さの孔を、前記ワークピース(110)内に設ける、請求項5から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
レーザアブレーションを目的とした、請求項1からまでのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
レーザビームでワークピース(110)を処理するためのレーザ処理装置(126)であって、
前記レーザ処理装置(126)は、少なくとも1つのレーザビーム(130)を供給する少なくとも1つのレーザ源(128)を有しており、
当該レーザビーム(130)が、前記ワークピース(110)の少なくとも1つの処理面(112)上に入射するように、前記レーザ処理装置(126)は構成されており、
前記レーザ処理装置(126)はさらに、前記レーザビーム(130)に作用する、少なくとも1つのビーム成形装置(132)を有しており、
当該ビーム成形装置(132)は、前記処理面(112)の箇所の前記レーザビーム(130)に、少なくとも1つの、所定の調整可能なビームプロファイル(116、118、120)を与えるように構成されており、
さらに、前記ビーム成形装置(132)は、前記処理面(112)上に照射領域と非照射領域(122、124)の少なくとも2つの異なるパターンを形成するように構成されており、かつ、前記2つの異なるパターンの切り替え時に、前記照射領域(122)におけるフルエンスが+/−30%の偏差を超えて変化しないように構成されている、
ことを特徴とするレーザ処理装置(126)。
【請求項11】
前記レーザ処理装置(126)は少なくとも1つの制御部(148)を有しており、
当該制御部(148)は、少なくとも2つの、異なる照射ステップのシーケンスを実行するように構成されており、
前記少なくとも2つの、異なる照射ステップにおいて、前記ワークピース(110)の前記処理面(112)は、前記レーザビーム(130)の異なるビームプロファイル(116、118、120)によって照射される、請求項10記載のレーザ処理装置(126)。
【請求項12】
前記レーザ処理装置(126)は、前記ワークピース(110)を収容する少なくとも1つの保持部を有している、請求項10または11記載のレーザ処理装置(126)。
【請求項13】
前記レーザ処理装置(126)は、レーザアブレーション装置である、請求項10から12までのいずれか1項記載のレーザ処理装置(126)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
従来技術
本発明は、レーザビームによるワークピースの既知の処理方法および処理装置を始点とする。このような装置および方法は、殊に、材料内の三次元マイクロジオメトリーを除去するために使用される。本発明は例えば、金属表面構造製造時のレーザアブレーション技術に関し、例えばノズル製造時またはセラミックセンサ素子(例えばラムダセンサまたは別の様式のセラミックガスセンサ)の製造時の摩擦特性を改善するためのレーザアブレーション技術に関する。しかしこれは、他の使用例を制限するものではない。このようなレーザアブレーション技術の代わりに、多くの別の用途が考えられる。
【0002】
材料除去のために、殊に、超短パルス(UKP)レーザが使用される。超短パルスレーザとして殊に、ピコ秒およびフェトム秒またはより短い範囲のパルス幅を有するパルス状レーザ光を送出するレーザが挙げられる。これは例えば最大で100ピコ秒のパルス幅、有利には最大で10ピコ秒のパルス幅を有する。このような超短パルスレーザによって、殊に、パルスエネルギー過度に高くならない限りは、ほぼ、溶解の無い、かつ、ばりの無い、材料除去が可能になる。除去されるべき幾何学的形状は、従来技術においては、通常、自由にプログラミング可能なスキャナーシステムによって設定される。ここで、この幾何学的形状は、ビーム直径が小さいレーザビームによって、ワークピース上でスキャニングされ、これによって部分的かつ相毎に除去される。
【0003】
しかし複雑かつ、殊に三次元の幾何学的形状の除去には、実際には、多くのケースにおいて、割の合わない長いプロセス時間が必要である。プロセス時間の短縮は、通常、除去レートを上げることによってのみ可能である。除去レートのこの上昇は、多くの場合に、平均的なレーザ出力の上昇を必要とするPav=E・f。ここでPavは平均的なレーザ出力であり、Eは個々のパルスのパルスエネルギーであり、fは、パルス周波数である。しかし、光学的な結像システムが同じ場合に、パルスエネルギーEの上昇を介してのみこのような出力上昇が実現される場合には、通常、除去がほぼ溶解の無く、かつほぼばり無く行われるという利点がなくなってしまう。
【0004】
従って、除去レートが高い場合に正確な処理を実現するために、実際には通常、一定のパルスエネルギーのもとで、反復レートまたはパルス周波数fを上げることが必要である。しかし、同時に、ほぼ溶解のない除去を得るために、ワークピース上での個々のパルスのパルス重畳は少なくとも実質的に一定に保持されなければならない。従って、実際に多くの場合には、ワークピース上でのレーザビームの送り速度は、反復レートに比例して上げられなければならない。
【0005】
しかし通常のスキャナーの軌道速度は、主に、焦点合わせレンズおよび殊にその焦点距離に依存して、通常は、スキャナーミラーの動性によって制限されている。従って、高い反復レートを有する高速ビーム源を、バルク除去上昇のために使用することを可能にするためには、市販されている多くのビーム偏向システム(例えばいわゆるガルボスキャナーまたはガルボノスキャナー)は遅すぎる。従って、一方で高い除去レートを有し、他方で高い処理精度を実現する、レーザビームでワークピースを処理する方法および装置を実現することが望まれている。
【0006】
本発明の開示内容
レーザビームでワークピースを処理する方法と、レーザビームでワークピースを処理する装置とを提示する。このレーザ処理装置は殊に、本発明の方法を実施するように構成可能であり、この方法は、殊に、提案されたレーザ処理装置を用いて実施される。レーザビームによる処理とは、殊にレーザアブレーションのことである。すなわち、ワークピース材の材料除去が行われる方法であり、これは例えば、ワークピースの材料を蒸発させることによって行われる。レーザ処理装置は、これに相応に、殊に、レーザアブレーション装置として構成可能である。
【0007】
提案する方法では、少なくとも1つのレーザビームが供給される。これに相応して、レーザ処理装置は少なくとも1つのレーザ源を、少なくとも1つのレーザビームを供給するために有している。このレーザビームは、提案する方法では、少なくとも1つの変更可能なビーム成形装置によって変えられ、これに続いて、ワークピースの少なくとも1つの処理面に入射する。このビーム成形装置によって、処理面の箇所のレーザビームに、少なくとも1つの所定のように調整可能なビームプロファイルが与えられる。
【0008】
ビーム成形装置とは、本発明では、処理面の場所でレーザビームのビームプロファイルを調整するように構成されている、基本的に任意の装置である。殊に、このような調整時には、少なくとも2つ、有利には少なくとも3つ、4つ、5つまたはそれよりも多くのビームプロファイルの間での選択が可能である、および/または、このビームプロファイルは自由に調整可能であり得る。この調整は、多くの段階において、または無段階に行われる。ビームプロファイルとはここで殊に、処理面の箇所での局部的な強度分布のことである。
【0009】
処理面とは一般的に、レーザ照射のためにアクセス可能な、ワークピースの表面のことである。このプロセスの間に、処理面が変化することがある。なぜなら、例えば材料除去が行われ、これによって処理面が、複数のステップの間に、ワークピース内部へと移動し得るからである。処理面はワンピースであり得る。しかし、処理面が複数の部分面から構成されてもよい。
【0010】
ビーム成形装置は殊に、処理面上で、照射領域と非照射領域の少なくとも2つの異なるパターンを形成するように構成されている。ここでパターンとは、例えば、少なくとも2つの次元における、異なって照射されている領域の調整可能なシーケンス、例えば照射領域と非照射領域との調整可能なシーケンスである。例えば、各空間方向において、少なくとも2つの、異なって照射される部分、例えば少なくとも2つの照射部分と非照射部分がパターン内で交互になる。例えば、照射領域と非照射領域のこのパターンは、円形、卵形、矩形および殊に正方形のパターンを含んでいる。従って、例えば、照射領域は円形、殊に環状または卵形、および/または矩形、殊に正方形の領域を形成する。この中で、例えば材料除去が行われる。
【0011】
この方法は、殊に、次のように実施可能である。すなわち、照射領域および非照射領域の連続した、少なくとも2つの異なるこのようなパターンが形成されるように実施可能である。少なくとも2つの異なるパターンの切り替え時に、殊に、異なるパターンの照射領域におけるフルエンスは、実質的に不変であり得る。フルエンスHは、ここで一般的に、レーザエネルギーの面積密度のことであり得る。「実質的に不変」とは、例えば、同一のことである。ここで例えば、フルエンスにおける+/−30%を超えない偏差、殊に+/−20%を超えない偏差、殊に有利には+/−10%を超えない偏差が、パターンの変換時に、許容可能である。しかし、フルエンスが変化する2つの異なるパターン間の切り替えも、基本的には可能である。
【0012】
別の可能な構成は、ビーム成形装置に関する。上述のように、この装置は、基本的に、処理面箇所でのビームプロファイルの調整が可能な任意の装置である。殊に、ビーム成形装置は、変調素子のマトリクスを含んでいる。ここでこの変調素子は、変調素子に入射するレーザビーム構成部分の位相および/または振幅および/または強度を変調するように構成されている。すなわち変調素子は、例えば、レーザビームの光軸に対して垂直な面において、このレーザビームを特徴付ける1つまたは複数のパラメータを局部的に変調するように構成可能である。これは例えば、位相、振幅、強度および偏光から成るグループから選択された、1つまたは複数のレーザパラメータである。マトリクスとはここで、一般的に、変調素子の少なくとも二次元のフィールドのことである。これは例えば、座標系によって特徴付け可能である。例えば、これは、デカルト座標系または極座標系のことである。従って、このマトリクス内では、例えば、座標系の各空間方向において、少なくとも2つの上述した変調素子が配置され得る。例えば、マトリクスは、例えば、レーザビームの光軸に対して垂直な面内に延在し得る。例えば、このマトリクスは、矩形のマトリクスのことである。ここでは各空間方向において、少なくとも2つの変調素子が配置されている。択一的または付加的に、円形、殊に環状のマトリクスも可能である。ここでは、変調素子は例えばリング状に配置されている。ビーム成形装置の別の構成も基本的に可能である。
【0013】
レーザビームは、ビーム成形装置のマトリクスによって、種々のように、角度を変えることができる。これは、変調素子の構造に依存している。例えば、レーザビームはマトリクスを貫通することができ、これによって例えば、透過型のビーム成形装置が使用可能になる。しかし択一的または付加的に、マトリクスが完全にまたは部分的に反射性の特性を有することもできる。従って、ビーム成形装置のマトリクスを例えば、反射性に組み込むことも可能である。
【0014】
例えば、所定のパターンを処理面の箇所で形成するために、レーザビームの位相および/または振幅および/または強度を変調するように構成されているこのような変調素子は、基本的に、原理的に公知である。従って、例えば、切り替え可能な変調素子のマトリクスによって位相シフトを実現することができる。ここで、これらの変調素子は、例えばこの位相シフトを、切り替え可能な複屈折特性に基づいて、および/または、切り替え可能な電子光学作用に基づいて、例えば1次および/または2次の電子光学作用に基づいて、生じさせることができる。例えば、この目的のために、複屈折材料および/または電子光学材料が使用可能である。これは例えば、いわゆるポッケルスセルおよび/またはカーセルである。択一的または付加的に、例えば音響電気効果も使用可能である。レーザビームは、1回または複数回、変調素子を通過する。これらの変調素子は、1つまたは複数の他の素子と共働することも可能である。これは例えばフィルタおよび/または偏光フィルタである。例えば、変調素子は局部的に、レーザビームの偏光方向も変えることができる。従って、例えば、レーザビーム内で、ビーム成形装置の箇所で、種々の偏光方向の領域を有するパターンが生じる。偏光方向は、例えば、相応する偏光回転素子によって変えられ、例えば、光学的にアクティブな材料(例えば液晶および/または無機光学活性結晶および/または糖)によって変えられる。偏光および殊に偏光方向を変えることができ、このようにして例えば種々の偏光方向のパターンをこのレーザビームにおいて形成することができる、このような変調素子マトリクスも、例えば、処理面箇所で、強度パターンを形成するために、単独で、または、他の素子と共同して使用可能である。従って例えば、局部的に、ビーム成形装置の箇所で、偏光方向のパターンを調整することができる。ここで例えば、ビーム変形装置とワークピースないしは処理面との間に、1つまたは複数の偏光方向選択素子を設けることが可能である。これは例えば、ダイクロックミラーおよび/または偏光フィルタおよび/または偏光ビーム分配器であり得る。このようにして、例えば、ビーム成形装置によって、および、特定の光学的なパラメータのパターンを処理面箇所でのレーザビーム内に加えることによって、強度パターンを形成することが。このような強度パターンは、殊に自由に調整可能である。
【0015】
変調素子は殊に電子的に駆動制御可能であり得る。これは殊に、既知の原理に従って行われる。なぜなら例えば上述の電子光学作用は電子的に制御可能だからである。択一的または付加的に、例えば液晶ディスプレイから既知のように、偏光回転を、電界を変えることによって行うこともできる。別の様式の、電気的に駆動制御可能な変調素子も可能である。例えば、これは、変調素子が電気的に駆動制御可能なマイクロミラーのマトリクス、殊に半導体材料をベースにして、マイクロシステム技術の方法に従って製造可能なマイクロミラーのマトリクス(例えば、いわゆるMEMS)を含むことによって行われる。
【0016】
変調素子およびそのマトリクスは、殊に、ピクセルパターンによって駆動制御可能である。すなわち、例えばデータ処理装置によって設定可能な画像パターン、有利にはデジタル画像パターンによって行われる。例えばコンピュータ上に、この種の画像パターンを自動的または手動で形成することができる。これはこの場合には、例えば相応する駆動制御部によって、変調素子のマトリクスに伝達される。
【0017】
変調素子によって、殊に、レーザビームの光軸に対して垂直な面において、位置に依存した位相変調のパターンが形成可能である。このようなパターンは例えば、複数の領域から成る。これらは少なくとも2つの次元において相互に連続している。ここでは、異なる領域において、レーザビームの位相長をそれぞれ自由に、または、所定の範囲内で調整可能である。このようにして、位相パターンを、レーザビームの光軸に対して垂直な面において形成することができる。この方法ではさらに、ビーム成形装置と処理面との間に、少なくとも1つの焦点合わせ部材が使用される。これは、例えば、焦点合わせ特性を有する少なくとも1つのレンズおよび/またはミラーである。このような焦点合わせ部材は、殊に、変換作用を有している。従って、ビーム成形装置の箇所での位置に依存した位相変調のパターンは、処理面の箇所での、すなわち処理面上での、位置に依存した強度変調のパターンに変換される。このような変換は例えば、コリメートされた、および/または均一化された、ビーム成形装置の箇所でのレーザビームに、例えば、変調素子のマトリクスによって、上述した位相パターンが加えられることによって行われる。これは次に、焦点合わせ部材による焦点合わせによって、ここで生じるフーリエ変換によって、処理面上での相応する強度パターンに変換される。
【0018】
ビーム成形装置は、殊に、いわゆる空間光変調器(SLM)を有している、および/または、少なくとも1つのマイクロミラーシステムを有している。空間光変調器とは一般的に、光に対する空間変調器のことである。これは、光に空間的に、例えば光の伝播方向に対して垂直な面において変調を加えるように構成されている。上述のように、この変調は、パラメータ位相、振幅、強度および偏光のうちの1つまたは複数の局部的な変化のことである。従って例えば、このパラメータの値は、伝播方向に対して垂直な面での位置に依存する。殊に、これは、電子的に駆動制御可能なSLMのことである。例えばSLMは二次元、例えば矩形の、変調素子のマトリクスを有し得る。これは例えば、上述の説明に従う。SLMは例えば、透過性および/または反射性に動作される。殊に、SLMは、液晶素子のマトリクスを有することができる。これは、個々に、または、グループ毎に電気的に駆動制御可能であり、かつ、各液晶素子を通過したレーザビームの構成部分の位相長および/または偏光を所期のように変調するように構成されている。このようにして、例えば、上述のように、SLMによって、ビーム成形装置の箇所でのレーザビームに、レーザビームの伝播方向に対して垂直な面において、位相長パターンを加えることができる。
【0019】
ビーム成形装置は、殊に、電子的に駆動制御可能であり得る。ここでこの電子式駆動制御によって、ビームプロファイルが調整可能であり、殊に自由に調整可能である。これは例えば、ビーム成形装置の電子制御に対して画像パターンが設定可能であることによって行われる。この画像パターンに従って、ビーム成形装置の箇所でのレーザビームの1つまたは複数の上述したパラメータの位置に依存した変更が行われる。これは例えば、レーザビームの伝播方向(これは光軸とも称される)に対して垂直の面において、上述したパラメータである位相、振幅、強度および偏光のうちの1つまたは複数においてパターンがレーザビームに印加されることによって行われる。従って、これらのパラメータは、上述した面において、位置に依存している。
【0020】
このレーザビームは殊に、ビーム成形装置への入射前に拡張可能である。殊に、ビーム成形装置の前、例えば、レーザ源とビーム成形装置との間に、少なくとも1つの光学装置を設けることができる。この装置は、レーザビームを拡張する、および/または、この装置はレーザビームを均一化する。これは例えば、相応するレンズシステムによって容易に行われる。
【0021】
このレーザビームは殊に、ビーム成形装置の通過後に焦点合わせされる。これは例えば、このレーザビームが、処理面上で焦点合わせされることによって行われる。この方法のこの構成は、殊に次のような場合に有利である。すなわち、ビーム成形装置が、ビーム成形装置の箇所でレーザビームに位相パターンを加えるように構成されている場合に有利である。これは次に、上述のように、焦点合わせによって、処理面の場所での強度パターンに変換される。
【0022】
しかし択一的または付加的に、この方法を次のように実施することもできる。すなわち、ビーム成形装置が例えば、ビーム成形装置の場所で、強度パターンを形成するように構成されているように実施することもできる。この場合には、特に有利には、ビーム成形装置と処理面との間に、少なくとも1つの結像システムが構成されており、これによってビーム成形装置の場所での強度パターンは、処理面の場所での相応の、同一の、拡大された、または縮小された強度パターンに変換される。このような結像システムは、例えば、1つまたは複数の対物レンズを含むことができる。
【0023】
この方法の実施の間に、殊に、ビーム成形装置が変化し得る。従って、この方法は殊に、少なくとも2つ、有利には少なくとも3つ、またはそれよりも多くの異なる照射ステップのシーケンスを含み得る。ここでこれらの異なる照射ステップにおいて、ワークピースの処理面は、レーザビームの異なるビームプロファイルによって照射される。例えば、第1の照射ステップを設けることができる。ここでは、レーザビームは、処理面の場所で、第1の直径および/または等価直径および/または第1の幾何学的形状を有する。さらに第2の照射ステップでは、レーザビームは、処理面上で、第1の直径とは異なる第2の直径、および/または、等価直径、および/または、第1の幾何学的形状とは異なる第2の幾何学的形状を有している。このようにして、全体的なシーケンスによって例えば順次連続して、異なるビームプロファイルで除去を行うことができる。従って、例えばこの方法は、一般的に、三次元の表面を製造するのに使用可能である。
【0024】
ビームプロファイルは殊に、それぞれ、処理面上で、照射領域および非照射領域のパターンを形成することができる。これは殊に、ピクセルパターンである。照射ステップでは、各変調素子マトリクスが異なって駆動制御される。これは殊に、上述の方法によって構成可能である変調素子マトリクスである。
【0025】
種々の照射ステップでは、例えば、ワークピースの種々の面に、種々の幾何学的形状および/または種々の深さの孔をワークピース内に設けることができる。従って殊にこの方法は、三次元の表面形成に用いられる。
【0026】
別の可能な構成は、レーザ処理装置に関する。このレーザ処理装置は、殊に制御部、殊に、少なくとも1つのデータ処理装置を備えた制御部を有する。ここでこの制御部は、ビーム成形装置を例えば次のようにプログラミングすることができる。すなわち、処理面の場所でのビームプロファイルが、自由にプログラミング可能であるように、プログラミングすることができる。例えば、処理面の場所でのビームプロファイルには、制御部によって、パターン、例えば強度パターンが印加される。
【0027】
レーザ処理装置が少なくとも1つの制御部を有している場合、この制御部は殊に、少なくとも2つの、異なる照射ステップを実施するように構成可能である。ここで、この少なくとも2つの異なる照射ステップでは、ワークピースの処理面は、レーザビームの異なるビームプロファイルによって照射される。
【0028】
レーザ源は殊に、少なくとも1つのパルス状のレーザを含むことができる。これは殊に、少なくとも1つの短パルスレーザ、殊に有利には、上で定義したような、少なくとも1つの超短パルスレーザを含むことができる。
【0029】
上述のように、ビーム成形装置は、殊にいわゆる空間光変調器を有することができる。これは透過性および/または反射性に動作可能である。
【0030】
殊に、ビーム成形装置は少なくとも1つの変調素子マトリクスを有することができる。この変調素子マトリクスは、レーザビームの光軸に対して垂直な面において、すなわち、ビーム成形装置の場所でのレーザビーム伝播方向に対して垂直な面において、レーザビームの種々のパラメータの領域のパターンを形成するように構成されている。殊にビーム成形装置は、ビーム成形装置の箇所において、強度パターンを形成するために構成されている。この場合には特に有利には、レーザ処理装置は、ビーム成形装置とワークピースの処理面との間で、少なくとも1つの結像システムを有している。ここで、ビーム成形装置の箇所での強度パターンは、相応の処理パターンにおいて、処理面上に結像される。ここでこの結像されたパターンは、同一のパターン、拡大されたパターンまたは縮小されたパターンを含み得る。
【0031】
択一的または付加的に、レーザ処理装置は、次のようにも構成される。すなわち、ビーム成形装置が、上述のように、レーザビームの光軸に対して垂直な面において位相パターンを形成し、これによって例えば、マトリクスが、レーザビームの種々の位相または位相長(この2つの用語はここでは、同義語として使用されている)の範囲で形成可能であるようにも構成される。この場合には、特に有利には、レーザ処理装置は、ビーム成形装置とワークピースの処理面との間に、少なくとも1つの焦点合わせ部材を有している。従って、ビーム成形装置の箇所での位相パターンは、処理面の箇所での強度パターンに変換される。すなわち、一般的にレーザ処理装置は、例えば、ビーム成形装置とワークピースとの間に、少なくとも1つの焦点合わせ部材、および/または、少なくとも1つの結像光学系、例えば少なくとも1つの対物レンズを有し得る。
【0032】
レーザ処理装置はさらに、ビーム成形装置とワークピースとの間に、少なくとも1つの絞りを有することができる。この絞り、例えばアイリス絞りによって、レーザビームの不所望な構成部分がワークピースから遠ざけられる。
【0033】
レーザ処理装置はさらに、少なくとも1つの保持部を、ワークピースを新たに受容するために有している。このような保持部は、ワークピースを、所定の位置で固定することができる、および/または、ワークピースをレーザビームに対して相対的に位置付けするおよび/または配向するようにも構成可能である。例えば、保持部はこの目的のために、少なくとも1つの位置付け装置を有している。この位置付け装置は例えば、1つまたは複数のアクチュエータを、ワークピースの位置付けおよび/または配向のために有する。
【0034】
レーザビームは、固定位置で、処理面に入射することができる。これに相応して、例えば、レーザ処理装置の全体的なレンズは固定されて構成可能である。すなわち、例えばワークピースのみを、レーザビームに対して相対的に位置付けおよび/または配向することができる。しかし択一的または付加的に、レーザビームも、可動および/または位置付け可能および/または配向可能に構成可能である。これは例えば、レーザ処理装置が、1つまたは複数の、レーザビームを位置付けする素子、例えば1つまたは複数の可動ミラー、例えば1つまたは複数の上述したガルバノスキャナーを有することによって実現される。
【0035】
この方法は殊に、ワークピースの材料のレーザ除去(レーザアブレーション)が行われるように、実施可能である。有利には、この除去は次のように行われる。すなわち、ワークピースの材料の溶融が起こらない、または、実質的にこのような溶融が起こらないように、行われる。これに相応して、処理面の箇所でのレーザビームは、次のように調整される。すなわち、これが照射領域と非照射領域のパターンを有するように調整される。ここで、照射領域では、レーザビームの強度は、材料の蒸発に必要な強度を超えている。しかし非照射領域では、レーザビームの強度は、材料の蒸発に必要な強度を下回っている。従って、例えば、レーザビームの強度が材料の溶融に必要な強度閾値と、材料の蒸発に必要な強度閾値との間に存在する領域は生じない。照射領域と非照射領域との間の移行領域においてのみ、このような状況が生じ得る。しかしこのような領域はここでは、有利には、小さく保たれる。従って、形成されるべき構造体のエッジの溶融は、小さく保たれる。この方法は殊に、次のように実施可能である。すなわち、迅速なビーム形状交換、すなわち、処理面の箇所でのビームプロファイルの迅速な交換が行われるように実施可能である。これは殊に、上述のように、自由にプログラミング可能なSLMによって実現される。
【0036】
この提案された方法および提案されたレーザ処理装置は、1つまたは複数の上述の構成において、この様式の既知の装置および方法と比べて、多くの分担分を有している。シーケンシャルに相互に隣接して位置する、ワークピースの処理面の領域がスキャンされるスキャン方法に代わって、提案された方法によって、殊に完全または部分的な幾何学的形状が、処理されるべきワークピース上で、柔軟なビーム成形装置によって成形される。このようにして、ビームプロファイルは、次のように成形される。すなわち、これが、処理面の箇所で、例えば処理面において、所望の除去幾何学的形状に相当するように成形される。これによって、例えば、レーザパルスによって、ナノメートル領域からマイクロメートル領域の所望の形状の完全な層が除去される。殊に、提案された方法では、ほぼ任意の形状での「レーザ打ち抜き」が可能である。ここでは、正確な除去が行われる。
【0037】
提案された方法では、殊に、ワークピースの材料の除去は、少なくともほぼ溶解なく保たれる。この目的のために、上述したように、レーザビームのフルエンスHが一定に保たれる。パルスエネルギーEは、通常、処理スポットの面積Aspotによって、E=Aspot・Hから得られるので、通常は欠点なく、従来の方法に比べて格段に大きいパルスエネルギーによって、処理される。同時に、パルスあたりの除去量が上がり、処理は相応に、レーザビームによるスキャンによって可能であるのよりも迅速になる。しかしそれにもかかわらず、上述のように、付加的にスキャン方法を使用することができる。
【0038】
処理面での柔軟なビーム成形は、上述のように、殊に、空間光変調器(SLM)のピクセルの駆動制御によって、容易かつ確実に実現される。多段の幾何学的形状の場合には、プログラミングされたビーム形状によって、例えば、第1の面が除去される。次に、例えば、SLMのプログラミングを変えることによって、別のビーム形状で、それぞれ別の段が形成される。これによって一般的に、本発明では、相応の制御によって、例えばSLMのプログラミング可能な制御によって、これまで得られなかった速度で、複雑な三次元の幾何学的形状が正確に製造される。
【0039】
本発明の可能な実施形態のさらなる詳細および特徴を、後続の実施例および図面に示す。本発明は、これらの実施例および図面に制限されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】三次元レーザアブレーションの目的で、レーザビームによってワークピースを処理するための本発明の方法の実施例
図2】本発明のレーザ処理装置の第1の実施例
図3】本発明のレーザ処理装置の第2の実施例
【実施例】
【0041】
図1には、処理面112を有するワークピース110を処理する方法が極めて概略的に示されている。この方法では、ワークピース110は、少なくとも1つのレーザビームの、図1には示されていないレーザ放射によって、処理される。ここでは一例として、レーザアブレーションが行われる。このレーザアブレーションは、図示の実施例では、三次元の幾何学的形状114をワークピース110内に形成する。このワークピースは、図1では、部分断面図で示されている。この方法は、三次元の幾何学的形状114を形成するための「レーザ打ち抜き」とも称される。
【0042】
提案された方法のこの実施例では、この方法は、少なくとも2つの異なる照射ステップのシーケンスを含んでいる。ここで、図1には、象徴的に、3つの異なる照射ステップが示されている。順次連続して実施される照射ステップの各照射ステップでは、ワークピース110はそれぞれ、レーザビームの種々のビームプロファイルによって照射される。一例として、図1には、3つの異なるビームプロファイル116、118および120が示されている。各ビームプロファイル116−120において、レーザビームは、処理面112の箇所において、照射領域122と非照射領域124とのパターンを有している。しかし、処理面112での別のビームプロファイルも基本的には可能である。例えば、図1には、ワークピース110の図1に示された断面における、ビームプロファイルの各強度分布が記載されている。ここでは、各強度Iが場所xに対して記載されている。この方法は殊に、次のように実施される。すなわち、照射領域122においては、強度Iが、アブレーション閾値を上回っており、例えば、ワークピース110の材料の蒸着閾値を上回っており、これに対して、非照射領域124においては、この強度がワークピース110の材料の溶解閾値を下回っているように実施される。
【0043】
ビームプロファイル116−120は、例えば、その直径および/または等価直径および/または幾何学的形状に関して、相違している。従って、例えば、ビームプロファイル116−120は、一例では、図1において、この順番で、小さくなる直径ないしは等価直径を有する。さらに、ビームプロファイル116−120の右側には、ビームプロファイルが異なる幾何学的形状を有し得ることが示されている。すなわち、第1のビームプロファイル116は、例えば、第3のビームプロファイル120と同様に、平面図において円形の幾何学的形状を有している。これに対して例えば、第2のビームプロファイル118は1つの例において、正方形の幾何学的形状を有している。これに相応して、図1に示されたこの実施例では、階段状の幾何学的形状が生じる。これは、除去面1、2および3によって示されている。第1の段(参照番号1が付けられている)は、第1のビームプロファイル116によって第1の照射ステップを実施した後の状態に相応し、参照番号2が付けられた段は、第2のビームプロファイル118による第2の照射ステップの後の状態に相応し、番号3は、第3のビームプロファイル120による第3の照射ステップの後の状態に相応する。
【0044】
本発明の方法における柔軟なビーム成形は、基本的に、種々の方法で行うことができる。ここで、全てのケースにおいて、少なくとも1つのビーム成形装置が、処理面112の箇所での、調整可能なビームプロファイルの形成に使用される。本発明で使用可能なレーザ処理装置126の第1の実施例は、図2に示されている。このレーザ処理装置は、少なくとも1つのレーザビーム130を供給する、図1に暗示されているだけの少なくとも1つのレーザ源128を含んでいる。このレーザビームは、例えばコリメートされる(またはされている)、および/または、均一化される(またはされている)。上述のように、レーザビーム130、殊にコリメートされたレーザビーム130は例えば、ガウス強度プロファイルを有することができる。
【0045】
さらに、レーザ処理装置126は少なくとも1つのビーム成形装置132を有する。これは、ワークピース110の処理面112の箇所で(図2では単に暗示されているだけである)調整可能なビームプロファイルを形成するように構成されている。図2では一例として、3つのビームプロファイルが示されている。これは参照番号1、2および3によって示されている。ここでもこれは、強度Iの強度分布の形状で、位置xに依存して、例えば、レーザビーム130の光軸134に対して垂直な位置座標に依存して、示されている。例えば、照射領域と非照射領域とを伴ったデジタルの段プロファイルが形成される(例えば強度分布1を参照)、または、複数の段階を伴ったプロファイルも形成される(例えば強度分布3を参照)。
【0046】
ビーム成形装置132は、種々の様式で構成される。図2では、ビーム成形装置132がいわゆる空間光変調器(SLM)136を含んでいる実施例が示されている。このSLMは、例えば、図示の実施例において次のように構成可能である。すなわち、これが、光軸134に対して垂直な方向において、変調素子140の相応のマトリクス138によって、レーザビーム130の位置に依存する位相変調のパターンを形成するように構成可能である。例えば、このようにして、マトリクス138に相応して、光軸134に対して垂直な面において、レーザビーム130の種々の位相長の各領域が、ビーム成形装置132の場所で形成される。ワークピース110とビーム成形装置132との間に、少なくとも1つの焦点合わせ部材を設けることができる。すなわち、ビーム成形装置132の箇所でのレーザビーム130の種々の位相長のパターンを、処理面112の箇所で強度分布パターンに変換するように構成されている素子である。例えば、焦点合わせ部材142は、少なくとも1つのレンズ144である。この焦点合わせ部材142は、物理的に観察して、ビーム成形装置132の箇所での位相長パターンのフーリエ変換を行う。従って、処理面112の箇所での強度分布Iは、ビーム成形装置132の箇所でのフーリエ変換されたレーザビーム130となる。焦点合わせ部材142と処理面112との間に、選択的に、1つまたは複数の絞り146を設けることができる。これによって例えば、ノイズビームが抑圧される、および/または、不所望な縁部作用が回避される。
【0047】
ビーム成形装置132は、例えば、レーザ処理装置126の少なくとも1つの制御部148を介して、駆動制御される。従って、例えば処理面112の箇所での強度分布のパターンが、マトリクス138の相応の調整によって、例えば相応する電気的な駆動制御によって、調整可能である。
【0048】
SLM136では、例えば、パターンの各画像点に対する位相遅延がマトリクス138によって、電気的な駆動制御部を介して、マトリクス138の各ピクセルにおいて個々に調整可能である。これは例えば、液晶を介して、および/または、電気光学的な作用を介して行われる。この位相素子の後、レーザビーム130は、焦点合わせレンズ144および/または、焦点合わせ部材142として作用する別の様式の焦点合わせ光学系を通る。位相変調と焦点合わせが組み合わされることによって、ワークピース110の処理面112が配置されるべきレーザ処理装置126の動作面において、位相調節SLM136の調整後、別の強度分布が生じる。動作面における強度分布の所望の形状のためのSLM136の調整は、例えば、事前に、波動光学のシミュレーションを介して決められ、および/または、ビーム形成結果の測定によって実験によってまたはオンラインでも求められる、または、改良される。殊に、偏向角度が、光学的なシステムから出るノイズビーム成分は、必要に応じて、ワークピース110の少なくとも1つの絞り146によって遮断される。
【0049】
レーザ処理装置126および/またはビーム成形装置132の図2に示された実施形態に対して択一的または付加的に、別の装置も、本発明に相応して使用可能である。図3には、基本的に図2と同様の実施例が示されている。これは、実質的に、ビーム成形装置132の設計において、異なっている。この場合には、ビーム成形装置132は、多数の変調素子140と共に使用される。これらの変調素子140は、例えば、光軸134に対して垂直な面において、レーザビーム130の強度分布のパターンを形成することができる。一般的に、例えば、各変調素子140、すなわちマトリクス134の各ピクセルの強度変調を介して、任意のビーム分布が、レーザビーム130の生ビームにおいて、ビーム成形装置132の通過前に生成される。ここで、所望のビームプロファイルに適していないビーム成分は、空間的に切り取られる、または、局部的に弱められる。例えば、マトリクス138の個々のピクセルは切り替えられて透過性になる。別のものは同様に、切り替えられて不透過性になる。同様に、ビーム成形装置132は、例えば、制御部148によって駆動制御される。マトリクス138のパターンは例えば、相応する歪みおよび/または拡大および/または縮小を考慮して、実質的に、処理面112上の除去されるべき領域150のパターンに相応する。これに相応して、制御部148によって設定された、マトリクス138用のパターンも、実質的に、自身の形状において、除去されるべき領域150の幾何学的形状に相関し得る。従って、マトリクス138の透過性のピクセルによって、除去が行われる。ビーム成形装置132の箇所における、光軸134に対して垂直な面における強度分布は、相応する結像光学形152を用いて、例えば、対物レンズを用いて、および/または類似の結像装置を用いて、処理面112上に結像される。従って、強度分布のマトリクス138によって形成されたパターンの結像が、処理面112上に生じる。この結像は、その幾何学的形状および/または大きさに関して、マトリクス138の箇所でのパターンと同一であり得るが、拡大、縮小または歪みがあってもよい。種々の実施形態が可能である。
【0050】
従って、SLM136は例えば、自由にプログラミング可能な減衰器幾何学的形状と、自由にプログラミング可能な絞り幾何学的形状からの組み合わせのように、作用する。切り取られたビーム領域による大きい出力損失の他に、多くの場合に、SLMにおいて、図3に示されていない、絞りのエッジでの屈折による干渉作用も生じる。ワークピース表面、すなわち処理面112上での、絞りに従った強度分布の幾何学的形状光学結像によって(リレーイメージング)、ワークピース110上の強度分布の自由にプログラミング可能な幾何学的形状が処理に使用される。これによって、処理面112が配置されている結像面において、プロセスへの、屈折の作用が最小限にされる。ビーム成分のマスキングによる、通常は不可避の性能損失を最小化するために、殊に均一のレーザビーム130を使用することができる。この均一のレーザレーザビーム130は殊に、絞りの自由開口部に勝る位に大きい。さらに、レーザビーム130は、マトリクス138の個々のピクセルを部分的に弱めることによって、レーザ損失を回避するために、次のように構成される。すなわち、レーザビームがガウスプロファイルを有しておらず、強度調節SLM136の前に既に、生ビームのビーム成形によって均一化され得る、または、レーザ源128によって既に均一化されて放射されるように、構成される。
図1
図2
図3