(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6022044
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月9日
(54)【発明の名称】複数のマイクロレンズの製造方法及び製造装置
(51)【国際特許分類】
G02B 3/00 20060101AFI20161027BHJP
B29C 39/02 20060101ALI20161027BHJP
B29C 39/44 20060101ALI20161027BHJP
B29D 11/00 20060101ALI20161027BHJP
B29L 11/00 20060101ALN20161027BHJP
【FI】
G02B3/00
G02B3/00 A
G02B3/00 Z
B29C39/02
B29C39/44
B29D11/00
B29L11:00
【請求項の数】12
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-514357(P2015-514357)
(86)(22)【出願日】2012年5月30日
(65)【公表番号】特表2015-524083(P2015-524083A)
(43)【公表日】2015年8月20日
(86)【国際出願番号】EP2012060183
(87)【国際公開番号】WO2013178263
(87)【国際公開日】20131205
【審査請求日】2015年2月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】508333169
【氏名又は名称】エーファウ・グループ・エー・タルナー・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル カスト
【審査官】
池田 博一
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2012/055424(WO,A1)
【文献】
国際公開第2011/024630(WO,A1)
【文献】
特表2013−539427(JP,A)
【文献】
特開2010−224118(JP,A)
【文献】
特表2011−507727(JP,A)
【文献】
特開平09−248782(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 3/00
B29C 39/02
B29C 39/44
B29D 11/00
B29L 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
−マイクロレンズ(10)の賦形用に提供されたレンズ材料を、流体の形態において、第1の押型(3)の第1の賦形面(3o)に割り当てられている、前記マイクロレンズ(10)を賦形する複数の第1のレンズ成形部(5)へ供給するステップと、
−取付面(3a)が上方を向くように、前記第1の押型(3)を180°回転させるステップと、
−前記第1の押型(3)と、前記第1の押型(3)に平行な面、つまりX−Y平面において、前記第1の押型(3)に対して相対して配置されている第2の押型(4)とを、前記X−Y平面に対して垂直に延びるZ方向において、位置制御によって互いに接近するように動かすステップであって、前記第2の押型(4)は第2の賦形面(4o)を有している、ステップと、
−前記第1の押型(3)と前記第2の押型(4)とを互いに接近するように動かすステップにより生じる、前記第1及び第2の賦形面(3o,4o)の接近運動により行う前記レンズ材料の成形、及び前記レンズ材料の硬化により前記マイクロレンズ(10)を賦形するステップと
を有する、所定のレンズ材料から複数のマイクロレンズ(10)を製造する方法であって、
前記賦形時に、前記位置制御に加えて、力制御により前記賦形に少なくとも硬化中に影響を与える賦形力を測定し、
硬化中及び/又は賦形中に、前記第2の賦形面(4o)に対する前記第1の賦形面(3o)のX−Y位置合わせを、前記X−Y平面において行う、
ことを特徴とする、複数のマイクロレンズの製造方法。
【請求項2】
各前記マイクロレンズ(10)のレンズ材料は、少なくとも前記硬化中に、前記X−Y平面において隣合う前記各マイクロレンズ(10)のレンズ材料から分離されていることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の押型(3)及び前記第2の押型(4)は、前記第1及び前記第2の押型(3,4)の賦形面(3o,4o)において、ウェッジエラー補償及び/又はX−Y位置合わせ用に、それぞれ互いに相対している位置合わせマーク(6,6′,7,7′)を有することを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記レンズ材料の供給を、液滴供給により行うことを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記第1のレンズ成形部(5)を少なくとも部分的に取り囲む自由空間(11)が、硬化時に隣合う前記マイクロレンズ(10)のレンズ材料の分離用に設けられていることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
硬化中に前記マイクロレンズ(10)の収縮を補償することを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
所定のレンズ材料から、複数のマイクロレンズ(10)を製造する装置であって、
−第1の押型(3)であって、該第1の押型(3)の賦形面(3o)に割り当てられている第1のレンズ成形部(5)を備える第1の押型(3)と、
−前記賦形面(3o)とは反対側にある取付面(3a)に設けられている、前記第1の押型(3)を取り付ける第1の取付装置であって、前記第1の押型(3)は、前記第1の取付装置により180°だけ回転させることができ、該回転は、ロボットアームにより行われる、第1の取付装置と、
−第2の押型(4)が取り付けられる第2の取付装置であって、該第2の押型(4)の賦形面(4o)とは反対側にある、前記第2の押型(4)の取付面(4a)に設けられている、第2の取付装置と、
−前記マイクロレンズ(10)の賦形用に提供されている前記レンズ材料を、流体の形態において、前記第1のレンズ成形部(5)に供給する供給手段と、
−前記第1の押型(3)及び前記第2の押型(4)相互の相対的な位置制御用の手段により行う、前記第1の押型(3)及び第2の押型(4)のZ方向における接近運動により行う前記レンズ材料の成形、及び前記レンズ材料の硬化による前記マイクロレンズの賦形用の賦形手段と、
を備え、
前記賦形時の賦形力を測定する測定手段が設けられており、前記賦形力により、前記賦形に、少なくとも硬化中に、前記位置制御に加えて、力制御により影響を与え、
前記装置のX−Y位置合わせ手段により、硬化中及び/又は賦形中に、前記第2の賦形面(4o)に対する前記第1の賦形面(3o)のX−Y位置合わせが、X−Y平面において実施可能であるように構成されている、
ことを特徴とする、所定のレンズ材料から、複数のマイクロレンズを製造する装置。
【請求項8】
各前記マイクロレンズ(10)のレンズ材料は、前記供給手段により、前記レンズ材料が、少なくとも硬化中に、X−Y平面において隣合う前記各マイクロレンズ(10)のレンズ材料から分離されているように供給可能であるように構成されている、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記第1の押型(3)におけるウェッジエラー補償及び/又はX−Y位置合わせ用に、前記第1の賦形面(3o)に、前記第2の押型(4)の第2の位置合わせマーク(7,7′)に対して相対して配置されている、第1の位置合わせマーク(6,6′)が設けられているように構成されている、請求項7又は8に記載の装置。
【請求項10】
前記供給手段は、液滴供給手段として構成されている、請求項7から9までのいずれか1項に記載の装置。
【請求項11】
前記装置は、硬化時に少なくとも部分的に前記第1のレンズ成形部(5)を取り囲む、隣合う前記マイクロレンズ(10)のレンズ材料の分離用の自由空間(11)を有する、請求項7から10までのいずれか1項に記載の装置。
【請求項12】
前記装置は、硬化中に前記マイクロレンズ(10)の収縮を補償する補償手段を有する、請求項7から11までのいずれか1項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1に記載の、所定のレンズ材料から複数のマイクロレンズを製造する方法に関する。さらに、本発明は、請求項8に記載の、所定のレンズ材料から複数のマイクロレンズを製造する装置に関する。
【0002】
主にマイクロレンズは、光学フォーカス装置を必要とする、例えば携帯電話のカメラのような機器に使用される。小型化への圧力に基づいて、機能的な領域も一層小さくすることが望まれる。マイクロレンズの小型化が進むほど、それだけ一層、光学的に正確な製造が困難になる。その理由は、理想的には大量生産において製造されるマイクロレンズには、同時に膨大なコストの重圧があるからである。従来技術において、キャリア基板におけるマイクロレンズは、例えば、米国特許第6846137号明細書、米国特許出願公開第5324623号明細書、米国特許出願公開第5853960号明細書、米国特許出願公開第5871888号明細書に記載されているように、種々異なる製造方法により製造される。全ての前記方法は、基本的な条件として、所定の厚さが必要であり、マイクロレンズを透過する光は、レンズだけでなく支持基板を通過しなければならない、という点において共通する。同時に要求される高い品質、及びとりわけ光軸、つまり光路に沿った光学系の厚さ及び数に依存する、高い輝度と同時に高い解像度に対する要求に基づいて、マイクロレンズのさらなる最適化が望まれる。
【0003】
特に重要なのは、マイクロレンズの信頼ある(正確な)形状である。このことは、マイクロレンズが、押型の正確なネガ部でなければならない、と理解される。マイクロレンズの硬化工程中のマイクロレンズの形状信頼性が、とりわけ維持されないことは極めてよくあることである。その理由は、マイクロレンズが収縮するので、押型とマイクロレンズとの間に容積差が生じるからである。
【0004】
良質なマイクロレンズのさらに重要な特性は光軸である。マイクロレンズの正確な光軸にとって特に重要なのは、支持体に対する押型のウェッジエラーの除去である。その理由は、賦形時におけるウェッジエラーが存在する場合、光軸を、正確に支持体に対して垂直にあてがうことができないからである。
【0005】
本発明の根底にある目的は、特に大量生産において、高い製造正確性、特に極めて高い形状信頼性及び正確に位置合わせされた光軸を有する、マイクロレンズが製造可能である、装置もしくは方法を提供することである。
【0006】
上記目的は、請求項1及び請求項8の特徴部によって達成される。本発明の有利な改良形は、従属請求項に記載されている。本発明の枠内において、明細書、特許請求の範囲及び/又は図面に記載された少なくとも2つの特徴からなる全組合せもある。記載の値範囲において、上記制限内にある値は、制限値として開示されたものとみなされ、任意の組合せにおいて請求可能であってよい。
【0007】
本発明の根底にある思想は、方法プロセスにおいて製造された複数のマイクロレンズ(マイクロレンズアレイ(Mikrolinsenfeld))を同時に賦形及び硬化しつつも、個々のマイクロレンズを空間的に互いに分離して硬化することにある。こうして、賦形及び硬化により形成された起こり得るエラーは、各マイクロレンズに限定されるので、エラーは集約されない。このことは、さらに、マイクロレンズを互いに分離するための分離ステップを省くことができる、という積極的な結果をもたらす。分離は、いわゆるシステムに起因して、特に別々の提供又は空間的な分離を通じて押型を介して行われる。
【0008】
マイクロレンズ相互の分離は、本発明による、力制御された積極的な押型の制御の前提でもある。押型の制御が、全てのマイクロレンズの形状信頼性を初めて保証する。マイクロレンズが互いに分離されていなければ、マイクロレンズの硬化時、及びこの硬化時に一緒に発生する収縮工程時に、材料は、ウェハの全長に亘って縮み、ひいては位置に基づいて種々異なって、少なくともウェハ全体に亘って補償することができない著しい収縮が発生する。
【0009】
押型が、硬化プロセス中に積極的に、つまり制御されて賦形プロセスを続ける、ということが保証される場合、とりわけ、マイクロレンズの形状変化がもはやもたらされないことが保証されている限りは、形状信頼性は、本発明によれば維持することができる。その理由は、硬化プロセスが、完全に終了したからである。
【0010】
以下の方法ステップが、本発明によれば、特に下記に実施される順序において設定されている:
−マイクロレンズの賦形するために設けられたレンズ材料、特に硬化可能な流体、好ましくはポリマの、流体の形態において第1の押型の第1の賦形面に割り当てられている、マイクロレンズを賦形するための複数の第1のレンズ成形部への供給、
−第1の押型、及び第1の押型に対してほぼ平行に、つまりX−Y平面において相対して配置されている第2の押型の、X−Y平面に対してほぼ垂直に延在しているZ方向における接近運動、
−賦形材料により押型成形部を完全に充填した後の賦形プロセスの始めに、2つの押型の一方を制御する、少なくとも3つのアクチュエータの測定された力値の記録、
−レンズ材料の硬化、及びさらなる接近運動による2つの押型相互の間隔の同時の再調整、
のステップが設定されており、
その結果、硬化の始めに測定した力値は、硬化プロセス中に一定であるか、又は少なくとも大きくなり、これにより、レンズ材料の起こり得る収縮が、押型の接近運動により完全に補償される。
【0011】
本発明に係る装置は、特に以下の特徴を有する:
−第1の押型であって、賦形面に割り当てられているレンズ成形部を有する第1の押型と、
−賦形面とは反対側にある取付面に、1の押型を取り付ける第1の取付装置と、
−第2の押型の賦形面とは反対側にある、第2の押型の取付面に第2の押型を取り付ける第2の取付装置と、
−マイクロレンズの賦形用に設けられているレンズ材料、特に硬化可能な流体、特にポリマを、流体の形態において第1のレンズ成形部に供給するための供給手段と、
−第1の押型及び第2の押型のZ方向における接近運動により、特にレンズ材料の厚さD
1になるまで、特に第1の押型及び第2の押型相互を相対的に位置制御する手段により行われるレンズ材料の成形、及び硬化によるマイクロレンズに賦形するための賦形手段と、を備え、この構成において、賦形時の賦形力を測定する測定手段が設けられている。この測定手段は、特に少なくとも硬化中の賦形に、好ましくは位置制御に加えて、特に力制御により、影響を与えることが可能である。
【0012】
押型は、全記載において、硬化される流体と接触し、この流体を適切に変形させる要素と理解される。特別な構成においては、つまりケイ素、ガラス又は任意のあらゆる別の材料からなる単一の平坦なウェハが、構造化されていなくても、押型とみなすことができる。
【0013】
本発明は、装置によっても方法によっても特に、各マイクロレンズのレンズ材料が、少なくとも硬化中に、X−Y平面において隣合う各マイクロレンズのレンズ材料から分離されていることを特徴とする。X−Y平面は、特に第1の賦形面により規定される。この構成において、X−Y平面のX方向は、X−Y平面のY方向に対して垂直をなしている。
【0014】
本発明に基づいて記載された特徴の制御は、特に装置に配設された、好ましくは組み込まれている制御装置により行われる。制御装置は、装置について設けられているセンサ又は検知手段の信号を受信して、相応の制御信号又は調整信号を、本発明に係る方法を実施する装置の機構に送信する。
【0015】
組み込まれた制御装置は、好ましくは位置制御器から成っている。この位置制御器は、2つの押型の少なくとも1つを動かすことができ、その結果、2つの押型の接近運動、つまり相対運動が可能になる。さらに、少なくとも3つのロードセルが設けられている。力測定ボックスは、2つの押型の間でX−Y平面への面圧の測定、ひいては面力の測定が可能になるように、装置内に組み込まれている。
【0016】
力調整は特に、少なくとも硬化中に、力調整が、特に位置制御に加えて行われるように実施される。賦形力は、レンズ材料の収縮を、硬化中に補償するように形成する。このことは、好ましくは力調整により、賦形力が硬化中に一定であるか、又は特に位置に基づいた及び/又は時間に基づいた制御により増大するようにもたらされる。
【0017】
マイクロレンズの形状は、1つには第1のレンズ成形部、もう1つには、本発明によれば特に第2のレンズ成形部を有することができる第2の押型により決定される。第1のレンズ成形部は、特に凸状又は凹状に湾曲付けされている一方で、第2の押型は、特に平坦な賦形面を有する。レンズ成形部若しくは押型は、したがってマイクロレンズのネガ部を形成する。
【0018】
マイクロレンズのレンズ材料は、本発明によれば特に提供から硬化まで、好ましくは本発明に係る全方法の間は、各マイクロレンズに対して別個に配置されている。換言すれば、マイクロレンズのレンズ材料は、本発明によれば特に互いに直接的に結合されてない。
【0019】
本発明の有利な構成によれば、装置に関しても方法に関しても、硬化中に、力コントロールされ且つ位置制御された、2つの押型相互の接近が行われるようになっており、マイクロレンズの起こり得る収縮は、再圧縮された材料により補償される。
【0020】
択一的に又は上述の構成と共通することは、有利な解決手段の特徴が、硬化中及び/又は賦形中に、第2の賦形面に対する第1の賦形面のX−Y位置合わせは、X−Y平面において行われる、という点にある。このために装置は、特に調整台を備える取付装置を有する。この調整台は、押型相互の並進運動、及び特に付加的には回転運動を実施するように形成されている。
【0021】
択一的に又は上述の構成と共通することは、有利な解決手段の特徴は、硬化前及び/又は賦形前に、ウェッジエラー補償手段によるウェッジエラー補償が、賦形面の平行な位置合わせのために行われる、という点にある。ウェッジエラー補償手段は、複数のマイクロレンズの各マイクロレンズの光軸の、正確で且つ再現可能な、まさに垂直な姿勢をもたらす。
【0022】
特に押型の第1の賦形面と第2の賦形面との間の間隔が所定の値を下回った後の、ウェッジエラー補償又はX−Y位置合わせ若しくはZ矯正は、特に連続して行うことができる。その理由は、本発明によれば、位置合わせ、矯正及び/又はウェッジエラー補償を、レンズウェハの賦形若しくは硬化の直前、及び硬化中に実施することが、特に有利であるからである。なぜならこの時点において、2つの相対する賦形面の間にある間隔は、可能な限り小さいからである。その結果、特に賦形面に対して固定された位置検出装置によって、賦形面の位置、ひいてはウェハ及び押型の位置の極めて正確な検出が可能になる。押型の位置若しくは各賦形面相互の位置の検出により、ウェッジエラー補償手段、及びX−Y補償手段の正確な制御が可能である。相応に、発明の有利な構成によれば、成形は、位置制御されて且つ/又は力制御されて行われる。本発明によれば、位置検出は、容量性及び/又は感応性の距離計及び/又は干渉計のような光学機器により行うことができる。
【0023】
ウェッジエラー補償及び/又はX−Y位置合わせをするための押型が、特にその賦形面、好ましくは少なくとも押型の周縁部において、それぞれ対応する位置合わせマークを有している場合、賦形面の位置のより正確な検出が実現可能で、そして位置合わせマークを賦形面に配置することにより、特に賦形面に面一で(整合して)組み込まれている場合、位置合わせマーク間の間隔は可能な限り小さい。これにより、位置検出の正確性は、本発明に係る、特に光学系、好ましくはマイクロスコープの形式の検出手段により明らかに向上する。
【0024】
レンズ材料が、電磁線、特に光に対して透過性を有していて、位置合わせ中に、レンズ材料を貫通しての位置検出が行われると特に有利である。この場合、マーキング部はレンズの下側に設けられている。このことは、以下、液中位置合わせ(In-Liquid-Ausrichtung)と称呼される。この措置により、特に倍率器(Multiplikator)としての液体の屈曲率だけ拡大された、本発明に基づいて設けられている位置検出手段、特に位置合わせマーク又は押型の賦形面の位置を検出のための光学系の被写界深度範囲がもたらされる。
【0025】
結果として、ウェッジエラー補償及び/又はX−Y位置合わせ及び/又はZ矯正のために、光学的な位置検出手段、特に光学系が設けられていると特に有利である。この構成において、ウェッジエラー補償及び/又はX−Y位置合わせ及び/又はZ矯正中に、第1の押型の賦形面又は押型の位置合わせマークも、第2の押型の賦形面又は押型の位置合わせマークも、特に同時に、特に押型に対して固定された光学的な位置検出手段の被写界深度範囲内に配置されている。したがって、本発明によれば、位置検出手段を、位置検出中又は位置合わせ中及び成形中に移動させることはもはや必要ない。その結果、位置検出手段自体は、第2の押型に対する第1の押型の相対位置に影響を与えず、ひいては付加的なエラー原因は排除される。先行技術においては、より大きな被写界深度範囲を備えた、固定された位置検出手段、又は小さな被写界深度範囲を備えた、可動な位置検出手段を使用する必要がある、という問題があった。このジレンマは、本発明による手段により解消される。
【0026】
第1の押型の賦形面(又は位置合わせマーク)と、第2の押型の賦形面(又は位置合わせマーク)との間の間隔が、Z方向において0より大きいと同時に、位置検出中のZ方向における被写界深度範囲よりも小さいことにより、検出正確性は改良されるか、又は高められる。
【0027】
本発明の別の構成によれば、有利には、装置により及び/又は方法により、レンズ材料の提供が、滴提供(Tropfenaufbringung)により行われるようになっている。このために、装置により、滴提供手段、特にドロップレットディスペンサ(droplet-Dispenser)が設けられている。このような液滴供給手段によって、各マイクロレンズ用のレンズ材料のそれぞれの量の正確な調整を制御することができる。制御は、特に制御装置を介して行われる。
【0028】
マイクロレンズアレイの各マイクロレンズのレンズ材料の分離は、本発明のさらに有利な構成に基づいて、第1のレンズ成形部が、少なくとも部分的に、特に完全に取り囲む自由空間は、硬化時に隣合うマイクロレンズのレンズ材料の分離のために設けられていることにより行われる。したがって、マイクロレンズのレンズ材料は、少なくとも十分に、有利には完全に空間的に互いに分離されている。
【0029】
本発明によれば、硬化中のマイクロレンズの収縮が、特にウェッジエラー補償手段及び/又はX−Y位置合わせ手段及び/又はZ矯正及び/又は位置検出手段により補償される場合、マイクロレンズの正確性がさらに明らかに高められる。
【0030】
独立した発明として、さらに本発明に係る装置及び/又は本発明に係る方法により製造された、マイクロレンズアレイが設けられている。このマイクロレンズアレイは、
−特に平坦な基板、好ましくはウェハとして形成されている第2の押型を備えており、この第2の押型は、第2の押型によって賦形され且つ硬化された、互いに分離されて第2の押型に配置されている複数のマイクロレンズを備えている。
【0031】
特に、第2の押型は、特に賦形面、好ましくは第2の押型の周縁に、ウェッジエラー補償及び/又はX−Y位置合わせ及び/又はZ矯正のために、位置合わせマークを有している。
【0032】
好ましくは、2つの押型の一方と、賦形材料との間の粘着が、他の押型に対してより大きい。これにより、一方の押型の除去によりレンズの脱型時に、マイクロレンズが、一方の押型にのみ付着したままである。好ましくは、マイクロレンズが残されている押型は、下側の押型である。
【0033】
変形後のレンズの再加工は、種々異なる手法により行うことができる。
【0034】
考慮可能で且つ有利な可能な構成は、後続のプロセスにおいて取り上げられるためにレンズが搬送される下側の押型として一時的な支持体が使用される。
【0035】
例えば、フリップチップボンダを、レンズを収容し、且つ別のウェハに位置決めするために使用することができる。レンズは、相応に積層することができ、またレンズには口径(アパーチャ)を備えること等ができる。
【0036】
さらに可能な構成の特徴は、透明なウェハを、マイクロレンズが不変に残っている下側の押型として使用するという点にある。別のステップにおいて、適切な“バックボーン”基底を備えた複数の個々のマイクロレンズを確保するために、個々の部分領域の切断を行うことができる。
【0037】
方法に関して開示されている特徴は、装置に関して開示されたものとしても扱われ、その逆もまた然りである。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】
図1aは、本発明に係るマイクロレンズアレイの本発明に従うマイクロレンズを作製するために、レンズ材料の提供をする、本発明の第1の方法ステップにおける本発明に基づく装置の概略的な側断面図であり、
図1bは、本発明に基づく位置検出手段によるX−Y位置合わせの、本発明の方法ステップの概略図であり、
図1cは、賦形手段による賦形の本発明の方法ステップの概略図であり、
図1dは、硬化手段による硬化の本発明の方法の概略図であり、
図1eは、本発明により賦形し且つ硬化したマイクロレンズアレイの概略図である。
【0039】
本発明のさらなる利点、特徴及び詳細は、以下の、有利な実施形態の記載から及び図面に基づいて明らかになる。
【0040】
図面において、本発明の利点及び特徴は、本発明の実施形態に基づいて、それぞれ特定する符号とともに記す。同じ又は同様に作用する機能を備えた構成部品及び特徴部は、同一の符号で記載する。
【0041】
図1a〜
図1eは、所定のレンズ材料、つまり硬化可能な流体2、この実施形態においてはポリマからなる、複数のマイクロレンズ10(
図1e参照)を作製する、本発明の実施形態に基づく、本発明の方法手順を示す。
【0042】
図1aは、第1の押型3を示す。この第1の押型3は、賦形面3oとは反対側の取付面3aで、第1の押型3が取り付けられるための第1の取付装置(図示せず)に取り付けられる。取付装置、ひいては第1の押型3の運動は、制御装置(図示せず)により制御される。
【0043】
賦形面3oは、
図1aに示した、マイクロレンズ10の賦形のために設けられている硬化可能な流体2を供給する、第1の方法ステップにおいて、上方を向いて配置されている。これにより、硬化可能な流体2の供給は、液滴ディスペンサ1を介して、硬化可能な流体2の自重により行うことができる。
【0044】
この供給は、流体状で、硬化していない形態において、第1の賦形面3oに割り当てられている複数の第1のレンズ成形部5に対して行われる。第1のレンズ成形部5の賦形面5oは、記載の実施形態においては、凹状に、製造したいマイクロレンズ10に対するネガ部(Negative)として成形されている。硬化可能な流体2の供給は、各製造されるマイクロレンズ10用に別々に、液滴ディスペンサ1を介して各第1のレンズ成形部5に対して行われる。液滴ディスペンサ1は、制御装置により制御され、硬化可能な流体2の、正確に規定された量を、各第1のレンズ成形部5に供給する。
【0045】
続く
図1bに示した方法ステップにおいて、第1の押型3は、180°回転させて(ひっくり返して)、取付面3aが上方に向いている。このことは、例えばロボットアームにより行うことができる。このロボットアームは、特に取付装置としても働く。本発明によれば、押型3を回転させずに、押型4を上側から接近させることも可能である。
【0046】
第1の押型3は、上方を向く第2の押型4の第2の賦形面4oに相対して配置され、第1の押型3の位置合わせマーク6,6′及び第2の押型4の位置合わせマーク7,7′に対応して位置合わせされている(方向付けされている)。
【0047】
位置合わせマーク6,6′,7,7′は、好ましくはそれぞれ、第1及び第2の押型3,4の周縁部3u,4uに位置し、好ましくはレンズ成形部5により覆われる領域の外側に位置する。
【0048】
このために、2つのマイクロスコープ8,9の形式の検出手段、及び第1の押型3を位置合わせするための位置合わせ手段が、第2の押型4に対して設けられている。位置合わせ手段は、第1の押型3及び/又は第2の押型4をX方向、Y方向及び回転方向において位置合わせすることができ、且つ水平平面(X−Y平面)に対する第1、第2の押型3,4を位置合わせすることができる。角度位置の位置合わせはウェッジエラー補償手段により行われる。このウェッジエラー補償手段は、特に好ましくは理想的に賦形面3o,4oの平行な位置合わせを提供する。ウェッジエラー補償手段及びX−Y位置合わせ手段の制御は、制御装置により行う。この制御装置は、検出手段及び場合によっては別のセンサから、第1の押型3及び第2の押型4の相対的な位置(姿勢)及び/又は絶対的な位置(姿勢)に関する値を得る。
【0049】
第2の押型4は、取付装置(図示せず)により取り付けられる。第1及び第2の取付装置は、特にチャックとして、第1及び/又は第2の押型3又は押型4を固定する吸引路(Saugbahn)を備えて構成されていてよい。第1及び/又は第2の押型3,4は、特にウェハとして構成されてよく、この実施形態において、第2の押型4は、図示の実施例において、平坦な賦形面4oを有する。本発明によれば、第2の賦形面4oは、第1の押型3のレンズ成形部5に対応する位置に配置されている第2のレンズ成形部を有することもできる。
【0050】
次いで、Z方向において、第2の押型4に対する相対的な、第1の押型3の接近運動(Aufeinander-zu-Bewegung)が行われる。接近運動中には、他のX−Y位置合わせ及び/又はウェッジエラー補償が、特に連続して行われる。
【0051】
接近運動は、硬化可能な流体2が厚さD
1になるまで行われる。厚さの検出は、好ましくは対応する第1及び第2の位置合わせマーク6,7又は6′,7′間の距離d
Aを測定することにより、又は押型の表面4o,3oが平坦である他の適切な個所において行われる(
図1c参照)。
【0052】
図1dに示した方法ステップにおいて、硬化可能な流体2は、第1の押型3及び/又は第2の押型4を通過する硬化手段(この実施形態ではUV線)により硬化される。硬化中に、本発明によれば、2つの押型の互いの力の測定及び位置再調整が行われる。その結果、力を同じに保つか又は少なくとも増大させる。
【0053】
硬化は、各種電磁放射線により行うことができ、特にUV光により行うことができる。熱硬化も可能であり、又は各任意の別の硬化形式も可能である。硬化形式は、大抵使用される材料に基づき、各当業者には公知である。
【0054】
X−Y位置合わせ及びウェッジエラー補償に加えて、本発明によれば、硬化可能な流体2の、少なくともZ方向における収縮が、特にX方向及びY方向における付加的な収縮が考慮され、マイクロレンズ10の厚さD
2が調節される。これにより、マイクロレンズ10は、完璧な光学特性を有し、収縮により形成される凹み又は欠陥は形成されない。
【0055】
厚さD
1及びD
2は、特にZ方向におけるレンズの最大厚さに相当する。
【0056】
硬化が行われると直ぐに、第1の押型3は、第2の押型4から外されて、本発明により互いに分離した複数のマイクロレンズ10が、第2の押型4に残る。硬化後の機械的な分離を、本発明により省くことができる。
【0057】
分離は支持面5o間の間隔Aにより行われる。この間隔Aは、
図1eに示したステップにおける、硬化可能な流体2の賦形及び硬化後に、賦形され且つ硬化されたマイクロレンズ10の間の間隔Bが存在するように設定されている。
【0058】
したがって、全方法手順の間は、各マイクロレンズ10の周囲に、又はマイクロレンズ10用にそれぞれ設けられている硬化可能な流体2に対して、自由空間11が設けられている。この自由空間11には、硬化可能な流体2が、所定の限度をもって膨張することができるか、又は縮むことができる。これにより、マイクロレンズ10の光学系にとって重要な領域は、対応する変形により損なわれない。その結果、マイクロレンズ10は、硬化可能な流体2の硬化後に、少なくともマイクロレンズ10の光学系にとって重要な中間領域において、完全にZ方向に位置合わせされた、各マイクロレンズ10の光軸を備えた最適な形状を有する。
【符号の説明】
【0059】
1 液滴ディスペンサ
2 硬化可能な流体
3 第1の押型
3a 取付面
3o 第1の賦形面
3u 周縁部
4 第2の押型
4a 取付面
4o 第2の賦形面
4u 周縁部
5 第1のレンズ成形部
5o 賦形面
6,6′ 第1の位置合わせマーク
7,7′ 第2の位置合わせマーク
8 マイクロスコープ
9 マイクロスコープ
10 マイクロレンズ
11 自由空間
A 間隔
B 間隔
D
1 (最大の)厚さ
D
2 (最大の)厚さ
X X方向
Y Y方向
Z Z方向