(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
互いに直交する機械座標の第1直動軸、第2直動軸および第3直動軸と、前記第1直動軸、前記第2直動軸および前記第3直動軸の全ての直動軸に対して傾斜する第1軸線の周りの第1回転送り軸とを有する工作機械の制御装置において、
テーブルのワーク取付け面を基準にした互いに直交する仮想第1直動軸、仮想第2直動軸および仮想第3直動軸と、前記仮想第1直動軸、前記仮想第2直動軸および前記仮想第3直動軸のいずれかの仮想直動軸と平行な仮想第1軸線の周りの仮想第1回転送り軸とを有するテーブル座標の座標値を前記機械座標の座標値から算出する演算部と、
前記演算部にて算出したテーブル座標の座標値を表示する表示部と、を備えることを特徴とした、工作機械の制御装置。
前記テーブル座標の前記仮想第3直動軸は、工作機械の主軸の軸線の方向に延びる前記第3直動軸と平行であり、前記ワーク取付け面が移動した場合に向きが一定に維持されており、
前記仮想第1直動軸または前記仮想第2直動軸の一方の仮想直動軸は、前記ワーク取付け面の表面上に設定され、前記ワーク取付け面の移動と共に前記仮想第3直動軸に垂直な平面内にて移動し、
前記仮想第1軸線は、前記一方の仮想直動軸と平行に設定されており、
前記演算部は、前記機械座標の前記第1回転送り軸の座標値に対応する前記テーブル座標の前記仮想第1回転送り軸の座標値を演算し、
前記表示部は、前記テーブル座標の前記仮想第1回転送り軸の座標値を表示する、請求項1に記載の工作機械の制御装置。
前記仮想第2回転送り軸の座標値が0°であるときに前記一方の仮想直動軸と同一の方向に延びる基準線を前記ワーク取付け面に固定し、前記基準線を前記ワーク取付け面と共に移動させた場合に、
前記仮想第2回転送り軸の座標値は、前記第1軸線の周りに前記テーブルが回転したときに、前記一方の仮想直動軸と前記基準線とのなす角度に対応する、請求項4に記載の工作機械の制御装置。
前記演算部は、前記第1軸線の周りに前記テーブルが回転移動する場合に、前記ワーク取付け面に取り付けられたワークの予め定められた部分が予め定められた方向に維持されるように、前記第1軸線の周りの回転角度に対応して前記第2軸線の周りの回転角度を設定し、
前記第1軸線の周りの前記テーブルの回転移動に伴って前記第2軸線の周りに前記テーブルを回転移動する制御を実施する、請求項4に記載の工作機械の制御装置。
前記表示部は、前記仮想第1直動軸が前記ワーク取付け面の表面上に設定されるテーブル座標の表示、または前記仮想第2直動軸が前記ワーク取付け面の表面上に設定されるテーブル座標の表示を選択可能に形成されている、請求項2に記載の工作機械の制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(実施の形態1)
図1から
図25を参照して、実施の形態1における工作機械の制御装置について説明する。本実施の形態においては、立形の数値制御式の工作機械を例示して説明する。
【0024】
図1は、本実施の形態における工作機械の概略斜視図である。
図2は、工作機械のベッド、移動体および主軸ヘッドの概略側面図である。
図1および
図2を参照して、工作機械11は、基台となるベッド13と、ベッド13の上面に立設されたコラム15とを備える。ベッド13の上面には、移動体27が配置されている。移動体27は、傾斜旋回台28を介してテーブル35を支持している。テーブル35のワーク取付け面35aには、ワーク1が固定される。ワーク取付け面35aは、平面状に形成されている。
【0025】
コラム15の前面には、サドル17が配置されている。さらに、サドル17の前面には、主軸ヘッド21が配置されている。主軸ヘッド21には主軸25が取り付けられている。主軸25には、ワーク1を加工する工具41が取り付けられる。工具41は、主軸25と共に回転しながらワーク1を加工する。
【0026】
本実施の形態における工作機械11は、ワーク1に対する工具41の相対位置を変更する移動装置を備える。工作機械11における所定の位置を原点とした機械座標が予め設定されている。機械座標は、互いに直交する直動軸として、X軸、Y軸およびZ軸を含む。また、機械座標は、回転送り軸として、B軸およびC軸を含む。
【0027】
工作機械において、全ての直動軸の座標値が零であり、更に、全ての回転送り軸の座標値が0°である時の状態を基準状態と称する。基準状態において、主軸25の軸線25aが延びる方向をZ軸に設定する。本実施の形態の工作機械11は立形であり、鉛直方向にZ軸が延びる。また、X軸およびY軸は、Z軸に垂直な平面上に設定する。本実施の形態の工作機械11では、移動体27が移動する水平方向に延びる軸をY軸に設定している。また、サドル17が移動する水平方向、すなわちZ軸およびY軸に垂直な方向に延びる軸をX軸に設定している。
【0028】
傾斜旋回台28の回転中心線が軸線52であり、軸線52の周りの回転送り軸がB軸に設定されている。また、テーブル35の回転中心線が軸線53であり、軸線53の周りの回転送り軸がC軸に設定されている。テーブル35のワーク取付け面35aは、平面形状で円形に形成されている。C軸は、ワーク取付け面35aの中心35bを通り、ワーク取付け面35aに垂直な方向に延びる。
【0029】
移動装置は、X軸方向、Y軸方向およびZ軸方向に、工具41とワーク1とを相対的に移動させることができる。さらに、移動装置は、軸線52の周りのB軸方向および軸線53の周りのC軸方向に、工具41に対してワーク1を相対的に回転移動させることができる。
【0030】
移動装置は、ワーク1に対して工具41をX軸方向に相対移動させるX軸移動装置を含む。X軸移動装置は、コラム15の前面に形成されている一対のX軸レール19a,19bを含む。サドル17は、X軸レール19a,19bに沿って往復移動が可能に形成されている。X軸移動装置は、ボールねじ機構等によりサドル17を移動させるX軸サーボモータ20を含む。主軸ヘッド21および工具41は、サドル17と共にX軸方向に移動する。
【0031】
移動装置は、ワーク1に対して工具41をY軸方向に相対移動させるY軸移動装置を含む。Y軸移動装置は、ベッド13の上面に配置されている一対のY軸レール29a,29bを含む。移動体27は、ガイドブロック31を介してY軸レール29a,29bに支持されている。移動体27は、Y軸レール29a,29bに沿って往復移動が可能に形成されている。コラム15には、移動体27がY軸方向に移動可能なように空洞部15aが形成されている。Y軸移動装置は、ボールねじ機構等により移動体27を移動させるY軸サーボモータを含む。傾斜旋回台28およびテーブル35は、移動体27と共にY軸方向に移動する。
【0032】
移動装置は、ワーク1に対して工具41をZ軸方向に相対移動させるZ軸移動装置を含む。Z軸移動装置は、サドル17の前面に形成されている一対のZ軸レール23a,23bを含む。主軸ヘッド21は、Z軸レール23a,23bに沿って往復移動が可能に形成されている。Z軸移動装置は、ボールねじ機構等により主軸ヘッド21を移動させるためのZ軸サーボモータ24を含む。工具41は、主軸ヘッド21と共にZ軸方向に移動する。更に、主軸ヘッド21の内部には、主軸25を軸線25aの周りに回転する駆動モータが配置されている。
【0033】
移動装置は、ワーク1に対して工具41をB軸方向に相対的に回転させるB軸回転移動装置を含む。本実施の形態におけるB軸の軸線52は、X軸、Y軸およびZ軸の全ての軸に対して傾斜している傾斜回転中心線である。B軸回転移動装置は、傾斜旋回台28を含む。移動体27の内部には、傾斜旋回台28を回転させるためのB軸サーボモータが配置されている。B軸サーボモータを駆動することにより、B軸の軸線52の周りに傾斜旋回台28が回転する。ワーク1は、傾斜旋回台28およびテーブル35と共にB軸方向に回転する。
【0034】
移動装置は、ワーク1に対して工具41をC軸方向に相対的に回転させるC軸回転移動装置を含む。C軸の軸線53は、工作機械が基準状態である時にZ軸と平行になるように形成されている。C軸回転移動装置は、テーブル35を含む。傾斜旋回台28の内部にはC軸サーボモータが配置されている。C軸サーボモータを駆動することにより、C軸の軸線53の周りにテーブル35が回転する。ワーク1は、テーブル35と共にC軸方向に回転する。
【0035】
このように、工作機械11は、ワーク1に対して工具41が相対的に移動する3つの直動軸を有する。本実施の形態では、第1直動軸をX軸、第2直動軸をY軸、および第3直動軸をZ軸として説明する。また、工作機械11は、ワーク1に対して主軸25が相対的に回転移動する2つの回転送り軸を有する。工作機械11は、B軸の軸線52およびC軸の軸線53を有する。B軸の軸線52が第1軸線に相当し、B軸が第1軸線の周りの第1回転送り軸に相当する。また、C軸の軸線53が第2軸線に相当し、C軸が第2軸線の周りの第2回転送り軸に相当する。
【0036】
本実施の形態における工作機械は、制御装置を備える。制御装置は、移動装置のサーボモータに接続されている。制御装置は、移動装置のサーボモータを制御することによりワーク1に対して工具41を相対的に移動させることができる。
【0037】
本実施の形態の工作機械11は、立形の工作機械であり、XY平面が水平方向と平行である。またZ軸が鉛直方向と平行である。工作機械11は、それぞれの回転送り軸に関する回転角度が0°の時に、テーブル35のワーク取付け面35aが機械座標系のXY平面と平行な平面38に対して平行である。
【0038】
本実施の形態の工作機械11では、B軸の軸線52とC軸の軸線53とが交差している。すなわち、B軸の軸線52上にC軸の軸線53が配置されている。テーブル35がB軸方向に回転すると、B軸方向の回転と共にC軸の軸線53も回転する。本実施の形態では、B軸の軸線52がXY平面となす傾斜角度αは、137°に設定されている。なお、機械仕様に応じて傾斜角度αを135°に設定しても、または、他の角度に設定しても構わない。本実施の形態の工作機械では、B軸の軸線52の傾斜する角度αは、ワーク取付け面35aが平面38に平行な状態から傾斜旋回台28をB軸方向に180°回転させたときに、ワーク取付け面35aが機械座標のZ軸に対して傾くように設定されている。また、基準状態において、C軸の軸線53のXY平面に対する角度βは、90°に設定されている。
【0039】
図3に、本実施の形態における工作機械のブロック図を示す。工作機械11を駆動するための加工プログラムは、ワークの目標形状に基づいてCAM(Computer Aided Manufacturing)装置71にて生成することができる。ワークの目標形状は、たとえば、CAD(Computer Aided Design)装置にて作成することができる。
【0040】
工作機械11の制御装置70は、読取解釈部72、補間演算部73、およびサーボモータ制御部74を含む。読取解釈部72は、CAM装置71から出力される加工プログラムを読取って、プログラムされた移動指令を補間演算部73に送出する。補間演算部73は、補間周期毎の位置指令を演算し、位置指令をサーボモータ制御部74に送出する。たとえば、補間演算部73は、移動指令に基づいて予め設定された時間間隔ごとの移動量を算出する。サーボモータ制御部74は、位置指令値に基づいて各軸サーボモータ75を駆動する。各軸サーボモータ75には、直動軸に沿って相対移動させるためのX軸サーボモータ20、Y軸サーボモータ、Z軸サーボモータ24が含まれる。また、各軸サーボモータ75には、回転送り軸の軸線の周りに相対移動させるためのB軸サーボモータおよびC軸サーボモータが含まれる。
【0041】
CAM装置71を備える加工システムでは、CAM装置71が自動的に工作機械11の加工プログラムを生成することができるため、操作者が手動で工作機械11を操作しなくても自動的にワークを加工することができる。
【0042】
一方で、操作者が手動でワーク1に対して工具41を相対移動させて加工を行う場合がある。本実施の形態の制御装置70は、手動にてワーク1に対する工具41の相対移動を実施することができるように形成されている。
【0043】
制御装置70は、手動にてワーク1に対する工具41の相対位置を変更するための移動情報を入力する入力部78を含む。操作者は、入力部78に直動軸および回転送り軸の移動情報を入力する。入力部78は、手動パルス発生器79を含む。手動パルス発生器79は、例えば、移動軸を選択するボタンおよび移動量を設定する円盤状の操作部を含む。移動軸を選択した後に、操作部を回転させることにより、操作部の回転角度に応じた移動量にて相対移動させることができる。
【0044】
入力部78は、ジョグ送り装置80を含む。ジョグ送り装置80は、例えば、移動軸を選択するボタン、正側への移動または負側への移動を選択するボタン、および移動を指示するボタンを含む。移動軸および移動方向を選択した後に、移動を指示するボタンを押すことにより相対移動を実施することができる。このときの移動量は、ボタンを押している時間長さに対応する。
【0045】
操作者が手動にてワーク1に対して工具41を相対移動させる場合には、例えば、ジョグ送り装置80を用いることにより概略的な位置決めを行うことができる。さらに、手動パルス発生器79を用いることにより、厳密な位置決めを行うことができる。
【0046】
更に、入力部78は、MDI(Manual Data Input)装置81を含む。MDI装置81は、移動装置を制御する移動情報等の制御データを手動で入力する装置である。操作者は、各軸の移動情報やMコード等の制御コードをMDI装置81に入力する。制御装置70は、入力された制御データに従ってワーク1に対する工具41の相対移動を実施する。
【0047】
なお、制御装置の入力部としては、上記の形態に限られず、操作者が手動にてワークに対する工具の相対位置を変更するときに、各軸の移動情報を入力可能な任意の装置を採用することができる。
【0048】
入力部78に入力された移動情報は、読取解釈部72に送出される。読取解釈部72にて読み取られた移動情報は、演算部83に送出される。演算部83は、移動情報に基づく移動指令を補間演算部73に送出する。次に、補間演算部73からサーボモータ制御部74に位置指令が送出されて相対移動が実施される。制御装置70は、表示部84を含む。表示部84には、演算部83にて演算したワークに対する工具の相対位置の情報などが表示される。
【0049】
ここで、
図4および
図5を参照して、参考例の工作機械について説明する。参考例の工作機械は、基準状態において全ての回転送り軸の軸線が直動軸と平行になるように形成されている。
図4は、回転送り軸としてA軸が設定されている工作機械の概略図である。
図5は、回転送り軸としてB軸が設定されている工作機械の概略図である。
【0050】
図4は、操作者が操作盤42を操作可能な位置から窓部43を通してテーブル35を見たときの状況を示している。工作機械の所定の位置には、工作機械を操作するための操作盤42が配置される。操作盤42の近傍には窓部43が形成されている。操作者は、操作盤42を操作しながら窓部43を通して、工具41およびワーク1の位置や加工状況を確認することができる。
【0051】
立形の工作機械においては、X軸は、操作者がテーブル35を見たときに、右側が正側になるように設定されている。X軸に平行な軸線の周りに回転送り軸としてのA軸が設定されている。A軸方向に回転する旋回台37上にテーブル35が設けられている。また、テーブル35のワーク取付け面35aに垂直に延びる軸線の周りに回転送り軸としてのC軸が設定されている。A軸方向にテーブル35が回転するとC軸の軸線もA軸の軸線の周りに回転する。このようなA軸の軸線上にC軸の軸線が配置されている工作機械を本発明ではAタイプの工作機械と称する。
【0052】
図5は、操作者が操作盤42を操作可能な位置から窓部43を通してテーブル35を見たときの状況を示している。Y軸に平行な軸線の周りに回転送り軸としてのB軸が設定されている。B軸方向に回転する旋回台37上にテーブル35が設けられている。また、テーブル35のワーク取付け面35aに垂直に延びる軸線の周りに回転送り軸としてのC軸が設定されている。B軸方向にテーブル35が回転するとC軸の軸線もB軸の軸線の周りに回転する。このようなB軸の軸線上にC軸の軸線が配置されている工作機械を本発明ではBタイプの工作機械と称する。
【0053】
参考例の工作機械のような回転送り軸の軸線が直動軸と平行に設定されている工作機械は従来から使用されている。参考例の工作機械では、直動軸に平行な軸線の周りにワーク1が回転する。このために、例えばAタイプの工作機械では、ワーク1の向きを機械座標のA軸の座標値およびC軸の座標値にて容易に確認することができる。また、ワーク1が回転移動する向きや目標となるA軸の座標値およびC軸の座標値を容易に予測することができる。
【0054】
本実施の形態の工作機械の制御装置は、参考例の工作機械に操作感が類似するように座標値の表示を行ったり制御したりする。本実施の形態では、参考例のAタイプの工作機械とBタイプの工作機械のうち、参考例のBタイプの工作機械に対応した工作機械の制御装置を説明する。
【0055】
本実施の形態の工作機械の制御装置には、機械座標に加えて、テーブル35のワーク取付け面35aを基準とした座標が設定されている。本発明では、この座標をテーブル座標と称する。
【0056】
図6から
図9を参照して、テーブル座標について説明する。
図6に、本実施の形態の工作機械のテーブルの第1の概略平面図を示す。
図6は、基準状態を示している。テーブル35のワーク取付け面35aは、機械座標におけるXY平面と平行である。本実施の形態においては、テーブル座標の原点をワーク取付け面35aの中心35bに設定している。
【0057】
テーブル座標は、互いに直交する仮想直動軸として、X’軸、Y’軸およびZ’軸を有する。X’軸は仮想第1直動軸に相当し、Y’軸は仮想第2直動軸に相当し、Z’軸は仮想第3直動軸に相当する。
図1、
図2および
図6を参照して、基準状態において、テーブル座標のX’軸は、機械座標のX軸と平行になる。また、基準状態において、テーブル座標のY’軸は、機械座標のY軸と平行になる。更に、基準状態において、テーブル座標のZ’軸は、機械座標のZ軸と平行になる。
【0058】
テーブル座標は、仮想回転送り軸としてのB’軸およびC’軸を有する。テーブル座標のB’軸は、Y’軸に平行な軸線の周りの回転送り軸である。本実施の形態のB’軸は、Y’軸を軸線としてY’軸の周りに設定されている。Y’軸が仮想第1軸線に相当し、B’軸が仮想第1回転送り軸に相当する。テーブル座標のC’軸は、回転中心である中心35bを通るワーク取付け面35aの法線を軸線として、この法線の周りに設定されている。中心35bを通るワーク取付け面35aの法線が仮想第2軸線に相当し、C’軸が仮想第2回転送り軸に相当する。
【0059】
次に、基準状態から、矢印111に示す方向に傾斜旋回台28を回転させる。機械座標のB軸の負側の方向に傾斜旋回台28を回転移動する。
【0060】
図7に、基準状態からB軸方向に傾斜旋回台を回転させたときのテーブルの第2の概略平面図を示す。
図7は、B軸方向の移動期間中の状態を示している。ワーク取付け面35aが機械座標の全ての直動軸に対して傾いた状態になる。テーブル座標のZ’軸は、ワーク取付け面35aが移動した場合も向きが一定に維持される。本実施の形態の工作機械は、参考例のBタイプの工作機械に対応させているので、Z’軸は、機械座標のZ軸と平行な状態を維持しながらワーク取付け面35aと共に移動する。テーブル座標のX’軸およびY’軸は、Z’軸に垂直な平面内にて移動する。すなわち、機械座標のXY平面に平行な平面内にて移動する。X’軸およびY’軸は、ワーク取付け面35aの回転移動に伴って向きが変化する。
【0061】
テーブル座標のY’軸は、B軸方向にテーブル35が回転しても、ワーク取付け面35a上に設定されている。Y’軸は、ワーク取付け面35aと平行な状態を維持しながら移動する。本実施の形態では、Y’軸はワーク取付け面35aに接触して移動する。これに対して、X’軸は、Z’軸に垂直な平面内にてY’軸に直交した状態を維持して移動する。基準状態では、X’軸はワーク取付け面35a上に配置されていたが、B軸方向の回転移動に伴ってX’軸は、ワーク取付け面35aから離れる。
【0062】
図8に、B軸方向の移動期間中の状態から更にB軸方向に回転した時のテーブルの第3の概略平面図を示す。
図8は、B軸方向の移動が終了してワーク取付け面35aが鉛直になった時の状態を示している。
図9に、B軸方向の移動が終了した時の状態を示すテーブルの斜視図を示す。
図8および
図9を参照して、テーブル35のワーク取付け面35aは、機械座標のZ軸と平行、すなわち、鉛直方向と平行である。
【0063】
テーブル座標のX’軸およびY’軸は、機械座標のXY平面に平行な平面38上に配置されている。テーブル座標のY’軸は、ワーク取付け面35a上に配置されている。これに対して、テーブル座標のX’軸は、ワーク取付け面35aに垂直な状態になる。
【0064】
次に、回転送り軸に関しては、
図6を参照して、テーブル座標のB’軸の軸線はY’軸である。傾斜旋回台28がB軸方向に回転するとB’軸の軸線も回転する。
図9を参照して、B’軸方向の回転角度θB’は、Y’軸の周りにワーク取付け面35aが回転した角度に相当する。B’軸方向の回転角度θB’は、矢印121と矢印122のなす角度で示されている。または、B’軸方向の回転角度θB’は、テーブル座標のZ’軸に垂直な平面に対するワーク取付け面35aのなす角度に相当する。B’軸の座標値は、B’軸の回転角度θB’に対応する。
図8および
図9に示す例では、B’軸の座標値は、−90°である。
【0065】
次に、テーブル座標のC’軸の軸線は、ワーク取付け面35aと共に移動する。
図6を参照して、基準状態では、C’軸の軸線は、Z’軸である。ここで、ワーク取付け面35aには基準点100が固定されている。基準点100は、テーブル座標のY’軸上に配置している。中心35bから基準点100に向かう方向を矢印123にて示している。矢印123は、基準線に相当する。基準線は、ワーク取付け面35aに固定されている。
【0066】
図7を参照して、傾斜旋回台28が矢印111の向きに回転するに伴って、基準点100が移動する。さらに、
図8および
図9に示すB軸方向の移動が終了した時の状態では、基準点100は、ワーク取付け面35aの下方に位置している。C’軸の軸線は、X’軸になる。このように、傾斜旋回台28の回転移動に伴って、見かけ上ワーク取付け面35aが回転する。C’軸の座標値は、B軸方向にテーブル35が回転したときにB軸方向の回転角度に対応して変化する。C’軸の回転角度θC’は、Y’軸に対して矢印123に示す基準線のなす角度に相当する。C’軸の座標値は、C’軸の回転角度θC’に相当する。ここで、参考例のBタイプの工作機械においてB軸方向に回転したときには、基準点100および矢印123はXY平面に平行な平面内に存在する。C’軸の回転角度θC’は、この平面内に存在する方向からのずれの角度を示している。
【0067】
テーブル座標において、B’軸の座標値(B’軸方向の回転角度)を設定することにより、容易にワーク取付け面35aの傾きを決定することができる。例えば、B’軸の座標値が0°のときには、ワーク取付け面35aがXY平面と平行である。さらに、B’軸の座標値が−90°のときにはワーク取付け面35aが、XY平面に対して垂直である。また、C’軸の座標値(C’軸方向の回転角度)を設定することにより、容易にワーク取付け面35a上のワーク1の傾きを設定することができる。特に、ワークの加工する部分を容易に工具に向けることができる。また、テーブル座標の座標値を見ながら操作することにより、参考例のBタイプの工作機械と同様の操作により、ワークを所望の向きに向けることができる。
【0068】
次に、本実施の形態の工作機械において、より具体的な制御例を取り上げて説明する。以下においては、ワークの向きを手動にて調整する制御例を説明する。
【0069】
図10は、本実施の形態の工作機械の操作盤における表示部の概略図である。表示部84は、機械座標系の座標値およびテーブル座標系の座標値を表示する座標表示部62を含む。座標表示部62は、機械座標を表示する機械座標表示部65を含む。機械座標表示部65には、X軸、Y軸、Z軸、C軸、およびB軸の座標値が表示される。さらに、座標表示部62は、テーブル座標を表示するテーブル座標表示部63を含む。テーブル座標表示部63には、X’軸、Y’軸、Z’軸、C’軸、およびB’軸の座標値が表示される。
【0070】
テーブル座標のX’軸、Y’軸、およびZ’軸の3つの直動軸の座標値は、機械座標のX軸サーボモータ、Y軸サーボモータ、およびZ軸サーボモータのいずれかが駆動したときに、それぞれの直動軸の移動量により定まる。本実施の形態では、テーブルを直動軸の方向に相対移動しないために、テーブル座標の直動軸の座標値および機械座標の直動軸の座標値は、すべて零である。
【0071】
また、表示部84は、模式図表示部64を含む。模式図表示部64には、参考例のBタイプの工作機械の模式図が示されている。すなわち、Y軸と平行な軸線の周りのB軸が設けられている工作機械の模式図が示されている。模式図表示部64を表示する制御については、後に説明する。
【0072】
次に、
図11から
図17を参照して、本実施の形態における第1の制御について説明する。第1の制御では、B軸方向の回転移動とC軸方向の回転移動とを同時に行わずに独立して実施する。
【0073】
図11は、基準状態におけるテーブルおよびワークの概略斜視図である。本実施の形態においては、立方体のワーク1を例に取り上げて説明する。ワーク1には、工具にて加工を行う加工対象面1aが設定されている。基準状態から加工対象面1aが機械座標のZ軸の正側を向くようにワーク1を手動にて回転する。ワーク取付け面35aは、Z’軸方向に垂直な状態である。
【0074】
前述したように、テーブル座標のX’軸、Y’軸、およびZ’軸は互いに直交し、B’軸の軸線は、Y’軸に設定されている。さらに、基準状態においては、C’軸の軸線はZ’軸に設定されている。
【0075】
図12は、基準状態における表示部の座標表示部である。テーブル座標の全ての座標値および機械座標の全ての座標値は零である。操作者は、入力部78の操作により傾斜旋回台28を、矢印111に示すB軸方向の負側に移動する。操作盤に配置されている手動パルス発生器79等の入力部78を操作することにより傾斜旋回台28を回転する。
【0076】
図13に、基準状態から傾斜旋回台の回転移動が終了してワーク取付け面が鉛直になったときの中間状態のテーブルおよびワークの概略斜視図を示す。
図14に、中間状態における座標表示部を示す。中間状態では、ワーク取付け面35aがテーブル座標のZ’軸方向と平行である。この時のテーブル座標のY’軸は、中心35bを通るXY面に平行な平面と、ワーク取付け面35aの交線上に存在する。B’軸は、Y’軸の周りの回転送り軸である。テーブル35自体が回転する回転送り軸のC’軸の軸線は、X’軸になる。すなわち、中間状態では、C’軸は、X’軸の周りの回転送り軸となる。
【0077】
図15に、テーブル座標のX’軸とY’軸との回転移動を説明する概略平面図を示す。基準状態では、機械座標のX軸とテーブル座標のX’軸とが平行である。また、機械座標のY軸とテーブル座標のY’軸が平行である。傾斜旋回台28を回転させることにより、テーブル座標のX’軸およびY’軸は、矢印124に示すように、テーブル35のワーク取付け面35aと共に回転する。この時に、Y’軸は、ワーク取付け面35aに接触した状態を維持しながら回転する。X’軸は、Y’軸に対して90°の角度を維持しながら回転する。
【0078】
図14を参照して、基準状態から機械座標のB軸方向に回転移動すると、機械座標では、B軸の座標値以外は零である。ワーク取付け面35aがZ軸と平行であるにも関わらず、機械座標のB軸の座標値は90°や45°等の判断が容易な角度とはならずに複雑な値になる。このように、ワーク取付け面35aを水平状態から鉛直状態に移動する時に、機械座標の座標値を参照するとワーク取付け面35aの向きの判断が困難である。ところが、テーブル座標のB’軸の座標値は、XY平面に対するワーク取付け面35aの角度を示しているために、容易にワーク取付け面35aの傾斜角度を所望の角度に設定することができる。この実施例では、操作者は、B’軸の座標値に注目して−90°になるまで傾斜旋回台28を回転することにより、ワーク取付け面35aを容易にZ軸に平行な状態にすることができる。
【0079】
B軸方向の回転移動が終了した中間状態では、ワーク1の加工対象面1aが、Z軸の正側を向いていない状態である。そこで、矢印125に示すように、テーブル35をC軸方向に回転する。操作盤42に配置されている入力部78を操作して、機械座標のC軸方向にテーブル35を回転する。なお、矢印125は、本実施の形態のC軸方向の正側の回転方向を示している。
【0080】
図16に、C軸方向のテーブルの回転移動が終了した時の最終状態のテーブルおよびワークの概略斜視図を示す。
図17に、最終状態における座標表示部を示す。最終状態においては、加工対象面1aは、Z軸の正側を向かっている。すなわち、加工対象面1aは、工具41に向かっており、主軸25の軸線25aに垂直な状態である。
【0081】
図14および
図17を参照して、テーブル35をC軸方向に回転することにより、機械座標のC軸の座標値が増加している。さらに、テーブル座標のC’軸の座標値が増加している。ここで、加工対象面1aがZ軸の正側を向くようにワークの向きを調整すると、機械座標のC軸の座標値は、複雑な値になる。ところが、テーブル座標のC’軸の座標値は、180°になる。このため、機械座標のC軸方向にテーブルを回転する場合には、C’軸の座標値を確認しながら移動することにより、容易にワークの向きを調整することができる。ここでは、テーブル座標のC’軸の座標値が180°になるようにC軸方向に回転移動することにより、ワーク1の加工対象面1aをZ軸の正側の方向に向けることができる。
【0082】
本実施の形態のテーブル座標のB’軸は、参考例のBタイプの工作機械(
図5参照)のB軸に対応している。テーブル座標のC’軸は、Bタイプの工作機械のC軸に対応している。テーブル座標のB’軸の座標値およびC’軸の座標値は、参考例のBタイプの工作機械において、B軸方向およびC軸方向に回転移動した時のB軸の座標値およびC軸の座標値に対応する。このため、テーブル座標のB’軸の座標値およびC’軸の座標値を確認しながら操作することにより、Bタイプの工作機械と同様の操作感覚にてワークの向きを調整することができる。特に、Bタイプの工作機械と同様の操作感覚にてワーク1の加工する部分を工具41に向けることができる。
【0083】
たとえば、Bタイプの工作機械において、B軸方向に−90°およびC軸方向に180°回転させたワークの状態と、
図16に示す最終状態とを比較すると、両方の移動後には加工対象面1aがZ軸の正側を向いていることが分かる。
図16に示す最終状態では、平面視したときに、機械座標のX軸およびY軸に対してワーク1がずれているものの、参考例のBタイプの工作機械に類似する移動が実施されている。
【0084】
このように、テーブル座標のB’軸の座標値およびC’軸の座標値を用いることにより、容易にワークの向きを予測したり設定したりすることができる。ワークを所望の向きにする場合に、参考例のBタイプの工作機械を想像しながらB’軸の座標値およびC’軸の座標値を設定すれば良いために、容易にワークの向きを予測したり設定したりすることができる。特に、加工対象面1a等のワーク1を加工する部分を工具41に容易に向けることができる。
【0085】
次に、
図18から
図21を参照して、本実施の形態における第2の制御について説明する。第2の制御においては、手動にてB軸方向に回転移動するときに、制御装置は、ワークの動作が第1の制御よりも参考例のBタイプの工作機械に近くなるようにC軸方向の回転移動を制御する。
【0086】
図18に、基準状態における工作機械のテーブルおよびワークの概略斜視図を示す。
図19に、基準状態における表示部の座標表示部を示す。ワーク1には、加工対象面1aと移動時の参考面1bが設定されている。
図5を参照して、参考例のBタイプの工作機械にて、B軸方向にテーブル35を回転している期間中には、立方体のワーク1の所定の面が機械座標のY軸に垂直な状態が維持されている。ところが、
図13を参照して、第1の制御の中間状態においては、ワーク1のいずれの面もテーブル座標のY’軸と垂直にならずに傾いている。第2の制御では、B軸方向にテーブルを回転したときに、このようなワークの傾きを修正する制御を実施する。
【0087】
図18を参照して、第2の制御においても、矢印111に示すように、手動にて傾斜旋回台28をB軸の負側の方向に回転させる。この時に、制御装置は、B軸方向の回転角度に基づいてC軸方向の回転角度を算出する。そして、制御装置は、矢印126に示すように、C軸方向の負側に自動的に回転移動を行う。第2の制御では、参考面1bがテーブル座標における所定の方向に向いているようにC軸方向に回転移動する。
【0088】
本実施の形態では、ワーク1の参考面1bがY’軸方向の負側の方向を向いた状態が維持される。すなわち、参考面1bは、Y’軸に垂直な状態を維持する。または、参考面1bは、XY平面に対して垂直な状態を維持する。B’軸方向の回転角度に対応して、矢印126に示すように、テーブル35をC’軸の負側の方向に回転させることにより参考面1bの向きを維持することができる。第2の制御においてもテーブル座標のB’軸方向に−90°回転する制御を例示している。
【0089】
図20に、第2の制御の中間状態におけるワークおよびテーブルの概略斜視図を示す。
図21に、第2の制御の中間状態における座標表示部を示す。中間状態においては、テーブル35のワーク取付け面35aは、機械座標のZ軸と平行である。
図13に示す第1の制御の中間状態と比較すると、参考面1bがY’軸と垂直な状態を維持していることが分かる。または、ワーク1の加工対象面1aがXY平面と平行であることが分かる。
【0090】
このように、第2の制御では、機械座標のB軸方向にテーブル35を回転するときに、ワーク1の予め定められた部分が予め定められた向きに維持するように、テーブル35をC軸方向に回転させる。演算部は、B軸方向にテーブルが回転移動する場合に、B線の軸線の周りの回転角度に対応してC軸の軸線の周りの回転角度を演算する。そして、制御装置は、B軸方向のテーブルの回転移動に伴ってC軸方向にテーブルを回転移動する制御を実施する。本発明では、この制御を連れ回り制御と称する。
【0091】
操作盤の座標表示部62においては、機械座標のB軸の座標値およびC軸の座標値が変化する。テーブル座標の座標値は、B’軸の座標値が変化する一方で、C’軸の座標値は、0°に維持されている。連れ回り制御では、テーブル座標のC’軸の座標値が所定の値に維持されるようにテーブル35をC軸方向に回転させる。
【0092】
第2の制御を実施することにより、中間状態では、加工対象面1aがZ軸方向に垂直な状態になる。すなわち、加工対象面1aの向き(加工対象面1aの法線方向)は、参考例のBタイプの工作機械において、B軸方向に−90°回転した向きと同一になる。
【0093】
次に、矢印125に示す様に、C軸方向の正側にテーブル35を回転することにより、
図16および
図17に示す第1の制御の最終状態と同一の状態にすることができる。加工対象面1aを工具41に向けることができる。
【0094】
第2の制御においては、傾斜旋回台28の回転角度に応じて、テーブル35がC軸方向に回転する。加工対象面1aの向きが参考例のBタイプの工作機械にてB軸方向にワークを回転したときの向きと同様になる。このため、手動にてワーク1の傾きを容易に制御することができる。または、ワーク1の加工対象面1aを容易に工具41に向けることができる。このように、第2の制御を実施することにより、操作者は、参考例のBタイプの工作機械と類似した操作感覚によりワーク1の傾きを設定することができる。
【0095】
図3を参照して、工作機械の手動による操作においては、操作者は、操作盤に配置されている手動パルス発生器79またはジョグ送り装置80により、任意の回転送り軸の軸線の周りに任意の移動量にてテーブルの回転移動を指示することができる。
【0096】
本実施の形態の制御装置70は、予め第1の制御または第2の制御を選択できるように形成されている。第1の制御を選択した場合に、演算部83は、入力部78にて入力された移動情報に基づいて、ワーク1に対する工具41の相対位置の移動指令を生成する。演算部83は、各軸の移動情報に基づいて機械座標の座標値およびテーブル座標の座標値を演算する。そして、演算部83は、移動指令を補間演算部73に送出する。また、演算部83は、機械座標の座標値およびテーブル座標の座標値を表示部84に送出する。表示部84は、演算部83にて演算されたこれらの座標値を表示する。
【0097】
第2の制御を選択した場合には、演算部83は、入力部78にて入力された軸線が傾斜する1つの回転送り軸の移動情報に基づいて他の回転送り軸の移動情報を設定する。例えば、B軸方向の移動量に基づいてC軸方向の移動量を算出する。演算部83は、複数の回転送り軸に対して、ワーク1に対する工具41の相対位置の移動指令を生成する。また、演算部83は、機械座標の座標値およびテーブル座標の座標値を演算する。そして、第1の制御と同様に、演算部83は、移動指令を補間演算部73に送出する。また、演算部83は、機械座標の座標値およびテーブル座標の座標値を表示部84に送出する。
【0098】
工作機械の手動による制御では、操作者は、MDI装置81により予めMコードを制御装置70に入力することができる。本実施の形態の入力部78のMDI装置81は、テーブル座標に基づくMコードが予め定められている。演算部83は、工作機械に設定されているMコードを用いて、工具41に対してワーク1を相対移動させる移動指令を作成することができる。このようなMコードは、例えば、次の式(1)に示されるように作成することができる。
【数1】
【0099】
本実施の形態では、仮想第1回転送り軸はテーブル座標のB’軸であり、仮想第2回転送り軸はテーブル座標のC’軸である。このようなMコードとしては、例えば、「M1600」がテーブル座標の各軸の移動を設定するコードであり、目標とするB’軸の座標値が−90°の場合には、「M1600 S2 T90」と入力することができる。
【0100】
入力部78のMDI装置81にて移動情報が入力された場合には、入力されたMコードの移動情報が演算部83に送出される。第1の制御を選択した場合には、演算部83は、入力されたテーブル座標のMコードに基づいて、機械座標の1つの回転送り軸の移動指令を演算する。第2の制御を選択した場合には、演算部83は傾斜した1つの回転送り軸の移動指令に加えて、他の回転送り軸の移動指令も演算する。演算部83は、移動指令を補間演算部73に送出する。また、演算部83は、機械座標の座標値およびテーブル座標の座標値を演算し、表示部84に送出する。表示部84は、演算部83にて演算された座標値を表示する。
【0101】
本実施の形態における制御装置70の入力部78は、テーブル座標の回転送り軸の制御コードが入力可能である。また、制御装置70は、この制御コードに基づいて機械座標の回転送り軸の軸線の周りの回転移動を実施する。本実施の形態の制御コードは、テーブル座標の座標値にて工具に対するワークの向きを設定することができる。このために、操作者は、機械座標の座標値を入力しなくても良く、参考例のBタイプの工作機械と類似の操作感覚にてワークの向きを設定することができる。
【0102】
ここで、演算部83における計算例について説明する。本実施の形態におけるテーブル座標表示部63は、機械座標の他にテーブル座標の座標値を表示する。演算部83は、回転行列を用いることにより機械座標の座標値からテーブル座標の座標値を演算することができる。演算部83は、機械座標のB軸方向に傾斜旋回台28を回転させたときのテーブル座標のB’軸の座標値およびC’軸の座標値を算出する。
【0103】
演算部83には、テーブル座標の座標値の計算のために、計算用座標が設定されている。計算用座標は、互いに直交する直動軸としてX’’軸、Y’’軸およびZ’’軸を含む。計算用座標の3つの直動軸は、テーブル35のワーク取付け面35aに固定され、テーブル35のワーク取付け面35aと共に移動する。テーブル座標の座標値を算出するための各変数は、以下の通りである。
【数2】
【0104】
ここで、基準点Xt、基準点Yt、および基準点Ztは、テーブル上に固定された計算用座標系のX’’軸、Y’’軸およびZ’’軸上の任意の点である。例えば、テーブル上に固定された計算用座標の原点から1離れた単位ベクトルに設定することができる。同様に、基準点Xbは、テーブル座標におけるX’軸上の任意の点である。次に、機械座標のB軸方向にテーブルを回転したときにテーブル上に固定されたZ’’軸の基準点Ztの座標値は、次の式(2)から式(4)にて表すことができる。
【数3】
【0105】
テーブル座標のB’軸の回転角度θB’は、次の式(5)にて示すことができる。
【数4】
【0106】
また、B軸方向に回転した時の計算用座標のX’’軸の基準点Xt、およびY’’軸の基準点Ytのそれぞれの座標値は、次の式(6)から式(9)にて表される。更に、テーブル座標におけるX’軸の基準点Xbの座標値は、式(10)および式(11)にて表すことができる。
【数5】
【0107】
これらの変数に基づいて、テーブル座標におけるC’軸の回転角度θC’は次の式(12)にて表すことができる。
【数6】
【0108】
このように、演算部83では、機械座標の座標値をテーブル座標の座標値に変換することができる。演算部83は、機械座標のB軸の座標値に対応するテーブル座標のB’軸の座標値およびC’軸の座標値を演算することができる。また、演算部83は、回転行列を用いて、テーブル座標の座標値を機械座標の座標値に変換することもできる。演算部83は、入力部78のジョグ送り装置80等にて入力された移動情報に基づいて、機械座標の座標値およびテーブル座標の座標値を算出することができる。
【0109】
図10を参照して、本実施の形態の表示部84は、模式図表示部64を含む。模式図表示部64は、回転送り軸の軸線が直動軸に平行な工作機械の模式図を表示する。
図10に示す例では、模式図として機械座標のB軸の軸線がY軸と平行である工作機械を示している。すなわち、参考例のBタイプの工作機械を示している(
図5参照)。
【0110】
ワーク取付け面35aには、C軸方向の回転移動を確認するためにマーク36が配置されている。本実施の形態の工作機械の模式図は、僅かに斜め上側からテーブル35を見た時の図を記載している。B軸の座標が0°のときに、ワーク取付け面35aが僅かに見えるように斜視図を示している。この模式図では、B軸の座標が0°のときにテーブル35の外周に配置されたマーク36の位置を確認することができる。
【0111】
図22から
図24は、第2の制御によりテーブル35が回転移動したときの模式図を示している。
図22は、基準状態に対応する工作機械の模式図である。
図23は、中間状態に対応する工作機械の模式図である。実際の工作機械11の傾斜旋回台28の回転移動に伴って、模式図の工作機械ではY軸を軸線とするB軸方向にテーブル35が回転する。
図23に示す中間状態では、テーブル35のワーク取付け面35aが、鉛直方向に延びる状態になる。
【0112】
図24には、第2の制御の最終状態に対応する工作機械の模式図を示している。実際の工作機械11を中間状態からテーブル35をC軸方向に回転させることにより、模式図の工作機械もC軸方向にテーブル35が回転する。マーク36は、例えば、上側の位置から下側の位置に移行する。
【0113】
工作機械11のテーブル35の回転移動に伴って模式図が変化することにより、本実施の形態の工作機械が参考例の工作機械であった場合の状況を参照することができる。この例では、参考例のBタイプの工作機械と同様の操作感覚により、本実施の形態の工作機械を手動にて操作することができる。また、操作者は、模式図を参照することにより、テーブル35の状態、すなわちワーク1の向きを確認することができる。このように、操作者は、ワーク座標の座標値と併せて模式図によりテーブル35の向きおよびワークの向きを確認することができる。
【0114】
図25に、本実施の形態における工作機械の表示部の制御について説明する。手動の操作を行う場合の制御として、第1の制御または第2の制御の一方が予め操作者により選択されている。また、テーブル座標の表示をするか否かが、予め操作者により選択されている。
【0115】
ステップ211においては、表示部84にテーブル座標を表示するか否かを選択する。ステップ211においてテーブル座標を表示しない場合、すなわち、機械座標のみを表示する場合には、この制御を終了する。ステップ211においてテーブル座標を表示する場合にはステップ212に移行する。ステップ212において、演算部83は、現在の機械座標の座標値を読み込む。このときの機械座標の座標値は計算値であっても実際の機械座標の座標値であっても構わない。
【0116】
次に、ステップ213において、演算部83は、テーブル座標の座標値を算出する。そして、ステップ214においては、機械座標の座標値、テーブル座標の座標値、および参考例の工作機械の模式図を表示する。
【0117】
このような制御は、予め定められた時間間隔ごとに実施することができる。本実施の形態の制御装置70の表示部84は、ワーク1に対して工具41が相対移動している期間中もテーブル座標の座標値および機械座標の座標値を更新する。このために、手動パルス発生器79またはジョグ送り装置80を使用する場合に、操作者は、表示部84に表示されたテーブル座標の座標値を確認しながらワーク1に対する工具41の相対移動を実施することができる。また、MDI装置81を使用する場合には、ワーク1に対する工具41の相対移動の進行状況を確認することができる。
【0118】
(実施の形態2)
図26から
図37を参照して、実施の形態2における工作機械の制御装置について説明する。本実施の形態の工作機械の制御装置は、参考例のAタイプの工作機械に対応する。工作機械11が3つの直動軸と、軸線が傾斜するB軸の回転送り軸と、C軸の回転送り軸とを有することは、実施の形態1と同様である(
図1および
図2参照)。
【0119】
図4を参照して、操作者は、回転送り軸の軸線が傾斜する工作機械を使用する前に、参考例のAタイプの工作機械を使用していた場合がある。この場合には、参考例のAタイプの工作機械に操作感が類似するように座標値の表示を行ったり制御したりすることが好ましい。本実施の形態の工作機械の制御装置は、Aタイプの工作機械に対応したテーブル座標が設定されている。
【0120】
図26から
図32を参照して、本実施の形態の第1の制御について説明する。第1の制御では、B軸方向の回転とC軸方向の回転とを独立して実施する。操作者は、加工対象面1aを工具41に向ける操作を行う。操作者は、制御装置70の入力部78の操作により手動にてワークに対する工具の相対位置を入力する。第1の制御では、B軸方向にテーブルを回転した後にC軸方向にテーブルを回転する。
【0121】
図26に、基準状態におけるワークおよびテーブルの概略斜視図を示す。
図27に、基準状態における座標表示部を示している。本実施の形態のテーブル座標は、仮想第1直動軸としてのX’軸、仮想第2直動軸としてのY’軸および仮想第3直動軸としてのZ’軸を含む。本実施の形態では、X’軸がワーク取付け面35aと接触した状態でテーブル35が回転する。
【0122】
本実施の形態のテーブル座標は、仮想回転送り軸としてC’軸およびA’軸を含む。A’軸は、テーブル座標のX’軸と平行な線を軸線とする回転送り軸である。本実施の形態では、テーブル座標のX’軸がA’軸の軸線になる。テーブル座標のX’軸が仮想第1軸線に相当し、A’軸が仮想第1回転送り軸に相当する。テーブル座標のC’軸は、実施の形態1と同様である。中心35bを通るワーク取付け面35aの法線が仮想第2軸線に相当し、C’軸が仮想第2回転送り軸に相当する。
【0123】
座標表示部62のテーブル座標表示部63には、C’軸の座標値およびA’軸の座標値が表示される。操作者は、入力部78の操作により、矢印111に示すように、手動にて機械座標のB軸方向の負側に傾斜旋回台28を回転させる。
【0124】
図28に、本実施の形態の第1の制御における中間状態のワークおよびテーブルの概略斜視図を示す。
図29に、本実施の形態の第1の制御の中間状態における座標表示部を示す。中間状態では、B軸方向の回転移動が終了し、ワーク取付け面35aが機械座標のXY平面に対して垂直である。
【0125】
テーブル座標のZ’軸は、実施の形態1と同様に、テーブル35が回転移動しても機械座標のZ軸と平行な状態が維持される。テーブル座標のX’軸およびY’軸は、Z’軸に垂直な平面内にて移動する。本実施の形態のテーブル座標のX’軸は、ワーク取付け面35a上に設定されている。X’軸は、傾斜旋回台28が回転した時に、ワーク取付け面35aと平行な状態を維持しながら移動する。X’軸は、ワーク取付け面35aに接触して移動する。A’軸は、X’軸を軸線とした回転送り軸であるために、B軸方向の回転移動と共に移動する。テーブル座標のY’軸は、Z’軸に垂直な平面内にてX’軸に直交した状態を維持して移動する。
図28に示す制御例では、テーブル座標のY’軸は、テーブル35の裏側に向かって移動する。
【0126】
このように、ワーク取付け面35aの表面上に設定され、ワーク取付け面35aの移動と共に仮想第3直動軸に垂直な平面内にて移動する仮想直動軸としては、仮想第1直動軸または仮想第2直動軸の一方を設定することができる。
【0127】
図30に、傾斜旋回台を回転したときのテーブル座標のX’軸およびY’軸の移動状況を説明する概略平面図を示す。本実施の形態では、B軸方向に傾斜旋回台28を回転したときには、矢印127に示すように、X’軸は、ワーク取付け面35aと共に移動する。また、Y’軸は、X’軸となす角度が90°を維持しながら回転する。
【0128】
図26および
図28を参照して、基準状態ではC’軸の軸線はZ’軸になる。C’軸の軸線は、B軸方向のテーブル35の回転移動と共に移動する。中間状態ではC’軸の軸線はY’軸になる。
【0129】
ここで、A’軸の回転角度は、テーブル座標のZ’軸に垂直な平面に対するワーク取付け面35aのなす角度に相当する。すなわち、A’軸の座標値は、実施の形態1におけるB’軸の座標値と同様である。
【0130】
図26を参照して、基準状態においてX’軸上に基準点100および矢印123に示す基準線を設定する。基準線は、ワーク取付け面35aに固定され、ワーク取付け面35aと共に移動する。
図28を参照して、C’軸方向の回転角度θC’は、X’軸と矢印123とのなす角度に相当する。すなわち、C’軸の座標値は、回転角度θC’に対応した角度に相当する。
【0131】
図29を参照して、機械座標のB軸方向の負側に傾斜旋回台28を回転することにより、A’軸の座標値は負側に小さくなる。そして、A’軸の座標値が、−90°になった時に、ワーク取付け面35aが機械座標のXY平面に対して垂直になる。また、傾斜旋回台28が回転するために、テーブル座標のC’軸の座標値は、所定の値になる。一方で、機械座標のB軸の座標値は、実施の形態1におけるBタイプの工作機械に対応した制御の中間状態のB軸の座標値と同一である(
図14参照)。操作者は、Aタイプの工作機械に対応した制御では、テーブル座標のA’軸の座標値を確認することにより、ワーク取付け面35aの傾きを確認することができる。
【0132】
図28を参照して、次に、矢印125に示す様に、手動にてC軸方向の正側にテーブル35を回転して最終状態に移行する。加工対象面1aを機械座標のZ軸の正側に向ける制御を実施する。
【0133】
図31に、本実施の形態の第1の制御における最終状態のワークおよびテーブルの概略斜視図を示す。
図32に、本実施の形態の第1の制御の最終状態における座標表示部を示す。C軸方向にテーブル35を回転することにより、ワーク1の加工対象面1aを工具41に向けることができる。本実施の形態の最終状態におけるワーク取付け面35aの状態およびワーク1の向きは、実施の形態1の第1の制御の最終状態と同様になる。そして、テーブル座標のC’軸の座標値が270°になった時に、加工対象面1aが機械座標のZ軸の正側に向いている。また、テーブル座標のA’軸の座標値およびC’軸の座標値は、参考例のAタイプの工作機械において、A軸方向およびC軸方向に回転移動した時のA軸の座標値およびC軸の座標値に対応する。
【0134】
このように、テーブル座標のA’軸の座標値およびC’軸の座標値を確認することにより、ワークの向きを確認したり調整したりすることができる。ワークの加工する部分を所望の向きに向けることができる。また、参考例のAタイプの工作機械と同様の操作感覚により、ワークの向きを調整することができる。参考例のAタイプの工作機械を使用してきた操作者は、従来と同様の操作感覚にて回転移動を行うことができる。
【0135】
次に、
図33から
図37を参照して、本実施の形態の第2の制御について説明する。第2の制御は、連れ回り制御を含む。第2の制御では、手動にて傾斜旋回台28をB軸方向に回転しているときに、制御装置は、C軸方向にテーブル35を回転させる。この時に、制御装置は、ワーク1の加工対象面1aがX’軸の正側を向く状態を維持するように制御する。
【0136】
図33は、本実施の形態の第2の制御の基準状態を示すテーブルおよびワークの概略斜視図である。
図34は、本実施の形態の第2の制御の基準状態における座標表示部である。ワーク1には、加工対象面1aおよび参考面1bが設定されている。傾斜旋回台28を、矢印111に示す様に、B軸方向の負側に回転させる。この時に、本実施の形態の第2の制御では、矢印126に示すように、テーブル35をC軸方向の負側に回転させる。
【0137】
図35は、本実施の形態の第2の制御の中間状態を示すテーブルおよびワークの概略斜視図である。
図36は、本実施の形態の第2の制御の中間状態における座標表示部である。傾斜旋回台28が回転して、A’軸の座標値が−90°になったときに、ワーク取付け面35aが機械座標のXY平面に対して垂直になる。すなわち、参考例のAタイプの工作機械をA軸方向に−90°回転させた状態に近い状態になる。このときに、制御装置は、C軸方向にテーブル35を回転して、C’軸の座標値が零を維持するように制御する。加工対象面1aが、テーブル座標のX’軸の正側を向くように、C軸方向の回転が制御される。加工対象面1aがX’軸と垂直な状態を維持するように制御される。すなわち、加工対象面1aが機械座標のXY平面と垂直な状態を維持するように制御される。
【0138】
本実施の形態の第2の制御では、参考例のAタイプの工作機械においてA軸方向にテーブルを回転させた動作に近い動作にすることができる。たとえば、中間状態において加工対象面1aの向きが参考例のAタイプの工作機械においてA軸方向に−90°回転させた状態に近くなる。このために、操作者は、参考例のAタイプの工作機械と同様の操作感覚にて加工対象面1aの向きを調整することができる。
【0139】
この後に、矢印125に示すように、C軸方向にテーブル35を回転することにより、加工対象面1aを機械座標のZ軸の正側に向けることができる。すなわち、
図31および
図32に示す最終状態にすることができる。
【0140】
本実施の形態の制御装置においても、実施の形態1と同様の演算方法により、機械座標のB軸の座標値に基づいて、テーブル座標のA’軸の座標値およびC’軸の座標値を演算することができる。テーブル座標のA’軸の回転角度θA’は、前述の式(5)と同様に、次の式(13)にて示すことができる。
【数7】
【0141】
また、C’軸の回転角度θC’は、前述の式(12)の代わりに、次の式(14)にて表すことができる。
【数8】
【0142】
また、本実施の形態の第1の制御および第2の制御においても、入力部78のMDI装置81を用いて手動にてワークに対する工具の相対位置を調整することができる。MDI装置のMコードとしては、前述の式(1)と同様の制御コードを用いることができる。ここで、参考例のAタイプの工作機械に対応する場合には、仮想第1回転送り軸がA’軸に相当する。また、仮想第2回転送り軸がC’軸に相当するとしてMコードを生成することができる。
【0143】
図10を参照して、本実施の形態のAタイプの工作機械に対応した制御を選択した場合には、テーブル座標表示部63におけるB’軸の座標値が、A’軸の座標値に置き換わって表示される。また、表示部84の模式図表示部64には、参考例のAタイプの工作機械の模式図が表示される。模式図表示部64には、X軸と平行な軸線の周りのA軸を有する工作機械の模式図が表示される。テーブルの回転送り軸がC軸およびA軸として表示される。
【0144】
工作機械は、実施の形態1におけるBタイプの工作機械に対応した制御または本実施の形態のAタイプの工作機械に対応した制御のいずれか一方を実施できるように形成することができる。更に、工作機械は、Bタイプの工作機械に対応した制御およびAタイプの工作機械に対応した制御の両方の制御を実施可能に形成することができる。いずれの制御を実施するかについては、操作者により選択可能に形成することができる。
【0145】
図3を参照して、制御装置70は、テーブル形態選択部82を含む。テーブル形態選択部82は、操作者が参考例のAタイプの工作機械または参考例のBタイプの工作機械を選択できるように形成されている。テーブル形態選択部82にて選択された工作機械の種類は、演算部83に送出される。
【0146】
また、制御装置70は、操作者が第1の制御または第2の制御を選択できるように形成されている。制御装置70は、連れ回り制御選択部85を含む。連れ回り制御選択部85は、操作者により連れ回り制御を実施するか否かが選択できるように形成されている。連れ回り制御選択部85にて選択された制御は、演算部83に送出される。演算部83は、これらの選択に基づいて移動指令を生成したり座標値を算出したりする。
【0147】
図37に、テーブル座標の種類およびB軸方向に回転移動したときの連れ回り制御の実施を選択するフローチャートを示す。
図37に示す制御は、たとえば、工作機械の始動時に実施することができる。または、操作者の所望の時期に実施することができる。
【0148】
ステップ221においては、操作者が参考例のAタイプの工作機械を選択するか否かが判別される。ステップ221において、操作者が参考例のAタイプの工作機械を選択した場合には、ステップ222に移行する。ステップ222においては、テーブル座標を参考例のAタイプの工作機械に対応した座標に設定する。
【0149】
次に、ステップ223においては、連れ回り制御を実施するか否かが判別される。連れ回り制御の実施が選択された場合には、ステップ224に移行する。ステップ224においては、表示部が参考例のAタイプの工作機械に対応した表示をするように設定される。また、手動にてテーブルをB軸方向に回転するときに連れ回り制御を実施するように設定する。
【0150】
ステップ223において、連れ回り制御の実施を選択しない場合には、ステップ225に移行する。ステップ225においては、表示部が参考例のAタイプの工作機械に対応した表示をするように設定される。また、手動にてテーブルをB軸方向に回転するときに連れ回り制御を実施しないように設定する。
【0151】
一方で、ステップ221において、参考例のAタイプの工作機械が選択されない場合には、ステップ228に移行する。ステップ228においては、テーブル座標を参考例のBタイプの工作機械に対応した座標に設定する。
【0152】
次に、ステップ229においては、連れ回り制御の実施を選択するか否かが判別される。ステップ229において、連れ回り制御の実施が選択された場合には、ステップ230に移行する。ステップ230においては、表示部が参考例のBタイプの工作機械に対応した表示をするように設定される。また、テーブルをB軸方向に回転するときに連れ回り制御を実施するように設定される。
【0153】
ステップ229において、操作者が連れ回り制御の実施を選択しない場合には、ステップ231に移行する。ステップ231においては、表示部が参考例のBタイプの工作機械に対応した表示するように設定される。また、テーブルをB軸方向に回転するときに連れ回り制御を実施しないように設定される。
【0154】
このように、工作機械は、操作者の希望に合わせて表示部に表示するテーブル座標を参考例のAタイプの工作機械またはBタイプの工作機械のいずれかを選択することができる。また、連れ回り制御を実施するか否かを選択することができる。
【0155】
その他の構成、作用および効果については、実施の形態1と同様であるので、ここでは説明を繰り返さない。
【0156】
本発明の制御装置は、互いに直交する3つの直動軸の全てに対して傾斜する第1軸線周りの第1回転送り軸の座標値から、互いに直交する3つの仮想直動軸のいずれかの仮想直動軸と平行な仮想第1軸線の周りの仮想第1回転送り軸の座標値を算出して表示できる。つまり、現実の傾斜する回転送り軸の回転角度を仮想の傾斜していない回転送り軸の回転角度に変換して表示する。このために、手動で工具に対するワークの相対位置を変更する場合に、工具に対するワークの向きを容易に設定できる。傾斜する第1回転送り軸の上に第2回転送り軸が載っている機械構成の場合にも、互いに直交する仮想第1回転送り軸の上に仮想第2回転送り軸が載るトラニオン型のような通常の機械構成を想定して、2つの回転送り軸の回転角度値を変換して表示できる。また、テーブルの回転状態を模式図として分かり易く表示することもできる。
【0157】
また、このような制御装置の構成により、例えば互いに直交するA軸の上にC軸が載るAタイプの工作機械、または、互いに直交するB軸の上にC軸が載るBタイプの工作機械のいずれかの工作機械のテーブル装置を使い慣れた機械操作者でも、容易に傾斜するB軸の上にC軸が載る本発明の工作機械のテーブル装置を取り扱うことができる。このときに、Aタイプの工作機械またはBタイプの工作機械のうち想定するテーブル装置のタイプを、操作者の好みに応じて選択することができる。また、トラニオン型のような通常のテーブル装置と同様に、テーブルのワーク取付け面に取り付けられたワークの所定の面が常に所定の方向を向いた状態で、目標とする面を主軸に装着された工具に対面させるようにテーブルを動作させることもできる。このように、手動パルス発生器、ジョグ送りボタン、または手動プログラムの入力による手動送り操作を、表示部に表示された座標値や模式図を見ることによって容易に遂行することができる。
【0158】
前述の実施の形態1および実施の形態2においては、2つの回転送り軸を有する工作機械を例示して説明したが、この形態に限られず、3つの直動軸に対して傾斜する軸線の周りの回転送り軸を有する工作機械に、本発明を適用することができる。たとえば、軸線が傾斜した回転送り軸が1つである工作機械にも本発明を適用することができる。
【0159】
また、前述の実施の形態1および実施の形態2の工作機械では、B軸の軸線が、機械座標のXY平面に対して傾斜する一方で、YZ平面と平行になるように配置されているが、この形態に限られず、回転送り軸の軸線がXY平面、YZ平面およびZX平面の全ての平面に対して傾斜していても構わない。
【0160】
また、前述の実施の形態1および実施の形態2においては、立形の工作機械を例に取り上げて説明したが、この形態に限られず、横形の工作機械にも本発明を適用することができる。すなわち、全ての直動軸の座標値が零であり、更に、全ての回転送り軸の回転角度が0°である基準状態において、Z軸が水平方向に延びる工作機械にも本発明を適用することができる。
【0161】
なお、テーブル座標は、実施の形態1および実施の形態2の形態に限られず、テーブルのワーク取付け面を基準にした互いに直交する仮想第1直動軸、仮想第2直動軸および仮想第3直動軸が設定され、更に、仮想第1直動軸、仮想第2直動軸および仮想第3直動軸のいずれかの仮想直動軸と平行な仮想第1軸線が設定され、この仮想第1軸線の周りの仮想第1回転送り軸が設定されている座標を採用することができる。
【0162】
前述の実施の形態1および実施の形態2のそれぞれの形態は、適宜組み合わせることができる。制御装置による制御においては、機能および作用が変更されない範囲において適宜ステップの順序を変更することができる。上述のそれぞれの図において、同一または相等する部分には同一の符号を付している。なお、上記の実施の形態は例示であり発明を限定するものではない。また、実施の形態においては、請求の範囲に示される形態の変更が含まれている。