特許第6022091号(P6022091)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6022091
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月9日
(54)【発明の名称】内視鏡用モデル
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/00 20060101AFI20161027BHJP
   G09B 23/28 20060101ALI20161027BHJP
【FI】
   A61B1/00 300B
   G09B23/28
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-560430(P2015-560430)
(86)(22)【出願日】2015年5月29日
(86)【国際出願番号】JP2015065548
(87)【国際公開番号】WO2015186623
(87)【国際公開日】20151210
【審査請求日】2015年12月11日
(31)【優先権主張番号】特願2014-116808(P2014-116808)
(32)【優先日】2014年6月5日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100086379
【弁理士】
【氏名又は名称】高柴 忠夫
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(72)【発明者】
【氏名】小木曽 淳一
【審査官】 長井 真一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−116206(JP,A)
【文献】 特開2014−095870(JP,A)
【文献】 特開2008−197483(JP,A)
【文献】 特開2004−049479(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/069143(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00−1/32
G09B 23/28
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管状の器官の形状を模して形成された基本形状部と、
組織片を保持し、前記基本形状部に対して着脱自在に設けられた組織保持部と、
を備え、
前記組織保持部は
筒状に形成されて外周面に内部空間と連通する窓部を有する本体と、
前記組織片の少なくとも一部が前記窓部と重なるように、前記本体上に前記組織片を固定する固定部材と、
を有し、
前記本体は、前記基本形状部に取り付けられた状態で前記基本形状部に対して前記本体の周方向に回転可能である内視鏡用モデル。
【請求項2】
前記固定部材は、突起部を有し、
前記本体は、前記内部空間に連通し、前記突起部が進入可能な固定穴を有する
請求項1に記載の内視鏡用モデル。
【請求項3】
前記固定穴は、前記本体の軸方向において前記窓部と重ならない位置に設けられている
請求項に記載の内視鏡用モデル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡用モデル、より詳しくは、軟性内視鏡等の操作のトレーニングや軟性内視鏡等の性能評価等に用いる内視鏡用モデルに関する。
本願は、2014年6月5日に、日本に出願された特願2014−116808号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
従来、軟性内視鏡等の操作のトレーニングや軟性内視鏡等の性能評価等において、ヒトの臓器を模して形成された内視鏡用モデルが用いられている。
このような内視鏡用モデルは、各種内視鏡操作のトレーニングにも用いられる。しかし、内視鏡的粘膜剥離や縫合などの手技のトレーニングでは、実際の臓器組織を用いる必要があるため、少なくとも手技を行う部分をブタやウシ等の内臓組織の切片を用いて構成するのがより一般的である。
【0003】
特許文献1には、所定の臓器の形状を有する模擬臓器と、粘膜組織を固定可能な固定枠とを備えた内視鏡用切開剥離術モデルが記載されている。固定枠は、模擬臓器に設けられた窓に組み込まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】日本国特開2006−116206号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の内視鏡用切開剥離術モデルでは、粘膜組織が固定された固定枠が模擬臓器に形成された窓に組み込まれる。そのため、模擬臓器の特定の位置にしか粘膜組織を取りつけられない。その結果、ある特定の状態しか再現できず、トレーニングや評価の多様性が制限されるという問題がある。
【0006】
上記事情を踏まえ、本発明は、多様性を確保してトレーニング等を行うことができる内視鏡用モデルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1態様によれば、内視鏡用モデルは、管状の器官の形状を模して形成された基本形状部と、組織片を保持し、前記基本形状部に対して着脱自在に設けられた組織保持部とを備え前記組織保持部は、筒状に形成されて外周面に内部空間と連通する窓部を有する本体と、前記組織片の少なくとも一部が前記窓部と重なるように前記本体上に前記組織片を固定する固定部材と、を有し、前記本体は、前記基本形状部に取り付けられた状態で前記基本形状部に対して前記本体の周方向に回転可能であ
【0008】
本発明の第態様によれば、第態様の内視鏡用モデルにおいて、前記固定部材は、突起部を有し、前記本体は、前記内部空間に連通し、前記突起部が進入可能な固定穴を有してもよい。
【0009】
本発明の第態様によれば、第態様の内視鏡用モデルにおいて、前記固定穴は、前記本体の軸方向において前記窓部と重ならない位置に設けられてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の各態様の内視鏡用モデルによれば、多様性を確保してトレーニング等を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る内視鏡用モデルを示す図である。
図2】同内視鏡用モデルの組織保持部およびその周辺を示す拡大図である。
図3図2のI−I線における断面図である。
図4図2のII−II線における断面図である。
図5】同組織保持部の本体を示す図である。
図6】記録治具の一例を示す図である。
図7】記録治具の一例を示す図である。
図8】本発明に係る内視鏡用モデルの変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施形態について、図1から図7を参照して説明する。
図1は、本実施形態の内視鏡用モデル1が収容された筐体100を示す図である。筐体100は、樹脂等でヒトの胴体を模した形状に形成されており、内視鏡用モデル1を収容可能な内部空間101を有する。内視鏡用モデル1は、ヒトの大腸(管状の器官)を模したモデルであり、大腸に似せて形成された管状の柔軟部(基本形状部)10と、柔軟部10に回転可能に着脱される組織保持部20とを備えている。
【0013】
柔軟部10は、例えばシリコーン等の柔軟な材料で形成され、内視鏡用モデル1の基本形状を規定する。柔軟部10は、近位側の大腸を模した第一柔軟部11と、遠位側の大腸を模した第二柔軟部12とを有している。第二柔軟部12の一端は、筐体100に設けられた図示しない穴に接続されている。第二柔軟部12が接続された穴は、筐体100において肛門に相当する位置に設けられているため、柔軟部10をヒト大腸の走行態様と同様に筐体100の内部空間101に配置することで、内視鏡の挿入手技に関するトレーニングや評価を行うことができる。
【0014】
図2は、組織保持部20およびその周辺を示す拡大図である。図3は、図2のI−I線における断面図であり、図4は、図2のII−II線における断面図である。
組織保持部20は、略円筒状の本体21と、本体21に取りつけられる固定部材26とを備えている。図5は、本体21の平面図である。本体21には、組織を内視鏡用モデル1の内側に露出させるための窓部22と、窓部22の周囲に設けられた4つの固定穴23とが、本体21の周壁を貫通して内部空間と連通するように設けられている。
【0015】
窓部22の寸法は、内視鏡用モデル1の内側にどのくらいの大きさの組織を露出させたいか等を考慮して適宜設定されてよい。また、窓部の形状も四角形には限られず、適宜設定されてよいが、本体21の周方向における窓部の寸法D1は、概ね本体21の外周長の4分の1以下とされるのが好ましい。本体の周方向における窓部の寸法が大きすぎると、窓部に露出する組織の支持状態が不自然となり、実際の臓器と乖離することがあるため、好ましくない。
【0016】
本実施形態において、固定穴23は、本体21の軸方向および周方向のいずれにおいても窓部22と重ならない位置に設けられている。固定穴23の数や設ける位置は、適宜設定されてよいが、少なくとも本体21の軸方向において窓部22と重ならない位置に設けると、窓部22と重ならないように固定部材26を配置しやすいため、好ましい。
固定穴23と窓部22との距離である固定しろD2は、例えば3ミリメートル(mm)以上あれば好適に組織を本体に保持することができる。また、固定穴の形状を、本体21の軸方向よりも周方向において長く設定すると、後述する固定操作における誤差を吸収しやすくなり、好ましい。
【0017】
固定部材26は、紐状または帯状のバンド部27と、バンド部27に設けられた突起部28とを有する。バンド部27は、樹脂や布などで形成することができ、環状にすることで、本体21の外周面上に配置した組織片を締め付けることができる。突起部28は、固定穴23に進入可能な形状を有する。
【0018】
図2に示すように、第一柔軟部11および第二柔軟部12の端部には、管状の接続部材30が取り付けられている。接続部材30と柔軟部10との接続態様については特に制限はなく、例えば、柔軟部10の端部を拡張させて嵌め込んだり、柔軟部10に接着したりして接続されてよい。
接続部材30の内径は、本体21の外径よりわずかに大きい。本体の21の端部を接続部材30内に進入させると、接続部材30の内面と本体21の外面との間に軽い摩擦が生じ、柔軟部10と組織保持部20とが係合する。組織保持部20は、所定の力を加えることにより、係合した柔軟部10に対して、本体21の軸まわりに回転させることができる。
【0019】
上記のように構成された本実施形態の内視鏡用モデル1の使用時の動作について説明する。
まず、組織保持部20に取りつける組織片を準備する。手技や部位等を考慮して適宜選択した動物の臓器等から、窓部22およびすべての固定穴23を覆う大きさの組織片を切り出す。
【0020】
次に、組織片においてモデル内部に露出させたい面と本体21の外周面等を対向させて、窓部22および固定穴23と重なるように組織片TPを本体21の外周面上に配置する。続いて、2本の固定部材26を、突起部28を組織片TPに対向させて環状に取り付け、本体21に対して組織片TPを締め付ける。このとき、突起部28と固定穴23の位置とを合わせ、突起部28が固定穴23内に進入するように固定部材26を取りつける。以上で、組織保持部20への組織片TPの固定が完了する。
【0021】
組織保持部20に組織片TPが固定された状態においては、図4に示すように、組織片TPの一部が固定部材26の突起部28に押されて固定穴23内に進入している。これにより、組織片TPが、本体21に対して本体21の周方向および長手方向にずれることが好適に抑制される。また、組織片TPの一部は、図3に示すように、適度にテンションがかかった状態で窓部22から内視鏡用モデル1の内側に露出され、柔軟部10内に挿入した内視鏡により手技を行うことが可能な状態に支持される。
【0022】
組織保持部20に組織片TPを固定したら、本体21の両端部を、それぞれ第一柔軟部11および第二柔軟部に取り付けられた接続部材30内に進入させる。これにより、組織保持部20と柔軟部10とが係合し、第一柔軟部11と第二柔軟部12とが、組織保持部20を介して一体に接続される。必要に応じて、組織保持部20を柔軟部10に対して本体21の周方向に回転し、窓部22を所望の位置に移動させると、内視鏡用モデル1が使用可能な状態となる。
【0023】
使用者は、柔軟部10に内視鏡を挿入したり、内視鏡に挿入した処置具を用いて窓部22から露出した組織に対して手技を行ったりすることにより、各種トレーニングや内視鏡、処置具等の性能評価等(以下、「トレーニング等」と称する。)を行うことができる。手技に関するトレーニング等を行う場合は、予め組織片を固定した組織保持部20を複数用意しておき、順次交換することにより、連続的にトレーニング等を行うことができる。高周波ナイフ等の、通電する処置具を用いたトレーニング等を行う場合は、組織片TPの端部に導電性を有する対極部材を取りつけたり、離れた位置に取り付けた対極部材と組織片TPとを生理食塩水で湿らせたガーゼでつないだりして、組織片TPへの通電を可能にすればよい。
【0024】
窓部22に露出した組織片TPの反対側には、組織片TPを支持するものが何もないため、窓部22に露出した組織に作用するテンション等の状態は、実際の臓器のものに非常に近い。したがって、例えば組織片TPに対してESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)のトレーニング等を行う際、内視鏡の先端部を粘膜下に潜り込ませるような操作を行った際の組織の挙動や感触等についても、実際の患者に対して行った場合に近いものを得ることができる。
【0025】
以上説明したように、本実施形態の内視鏡用モデル1によれば、組織片TPが保持される組織保持部20が、柔軟部10に対して軸まわりに回転可能に取り付けられるため、柔軟部10を回転せずに組織が露出する窓部22を所望の位置に移動させることができる。その結果、手技対象の組織が腹側にある場合、背側にある場合等の様々な状況を容易に再現することができ、容易な操作で多様性を確保してトレーニング等を行うことができる。
【0026】
内視鏡用モデル1を用いたトレーニング等を行う際は、必ずしも組織保持部に組織が固定されなくてもよい。例えば組織保持部に紙等を固定し、内視鏡のチャンネルには高周波ナイフ等の処置具に代えて、紙等に先端の軌跡を残すことができる記録治具を挿入する。この状態で内視鏡の先端から突出した記録治具を操作することで、記録治具先端の軌跡を紙に記録し、トレーニング等を行うことができる。
【0027】
記録治具の例を図6および図7に示す。図6に示す記録治具50Aと図7に示す記録治具50Bは、同様の基本構成を有する。すなわち、可撓性を有する長尺の挿入部51と、挿入部51の先端部に設けられた印字部と、挿入部51の基端部に設けられた印字材料供給部とを備えている。
挿入部51は内視鏡のチャンネルに挿通可能な寸法を有する管状の部材であり、内部空間にインク等の印字材料54が充填されている。挿入部51は、シース55に挿通されている。記録治具50Aおよび50Bの例では、印字材料供給部はシリンジ53となっており、ピストン53aを操作することで挿入部51内に印字材料54を供給することができる。
印字部の構成としては、挿入部51から供給される印字材料54を用いて印字を行うことができれば特に制限はなく、公知の筆記具の構造等を適宜採用することができる。図6にはフェルトペン状の印字部52Aを、図7にはボールペン状の印字部52Bをそれぞれ例示している。
【0028】
以上、本発明の内視鏡用モデルについて、一実施形態を用いて説明したが、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において構成要素の組み合わせを変えたり、各構成要素に種々の変更を加えたり、削除したりすることが可能である。
【0029】
例えば、本発明において、臓器の形状に模して形成される基本形状部は、必ずしも柔軟である必要はない。ただし、柔軟であるほうがより実際の臓器に近い感覚でトレーニング等を行うことができ、好ましい。
【0030】
また、基本形状部を3以上に分割し、それぞれの接続部位に接続部材を取りつけることで基本形状部の2以上の位置に組織保持部を取り付け可能とすることにより、さらにトレーニング等の多様性を向上させることができる。このとき、対向する接続部材を、組織保持部を挟まずに連結可能に構成すると、組織保持部を取りつける位置の変更が容易になり、さらに好ましい。
【0031】
さらに、対象とする臓器も大腸には限られない。図8に示す変形例の内視鏡用モデル81では、胃の形状を模した基本形状部82の幽門部に相当する位置に、組織保持部20が取り付けられている。内視鏡用モデル81においては、組織保持部20が噴門部に取り付けられるよう構成されても構わない。
【0032】
加えて、上述の実施形態では、組織保持部の本体が基本形状部の接続部材内に進入して両者が接続される例を説明したが、これに代えて、図8に示す内視鏡用モデル81のように、本体21Aの内径を接続部材30Aの外径よりも大きくし、接続部材30Aが本体21A内に進入して両者が接続される構成にしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、軟性内視鏡等の操作のトレーニングや軟性内視鏡等の性能評価等に用いる内視鏡用モデルに広く適用でき、多様性を確保してトレーニング等を行うことを可能とする。
【符号の説明】
【0034】
1、81 内視鏡用モデル
10 柔軟部(基本形状部)
11 第一柔軟部
12 第二柔軟部
20 組織保持部
21、21A 本体
22 窓部
23 固定穴
26 固定部材
27 バンド部
28 突起部
30、30A 接続部材
50A、50B 記録治具
51 挿入部
52A、52B 印字部
53 シリンジ
53a ピストン
54 印字材料
55 シース
82 基本形状部
100 筐体
101 内部空間
TP 組織片
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8