特許第6022110号(P6022110)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6022110プリント配線基板及びプリント配線基板の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6022110
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月9日
(54)【発明の名称】プリント配線基板及びプリント配線基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/02 20060101AFI20161027BHJP
   H05K 3/00 20060101ALI20161027BHJP
   H05K 3/28 20060101ALI20161027BHJP
【FI】
   H05K1/02 R
   H05K3/00 P
   H05K3/28 B
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-506700(P2016-506700)
(86)(22)【出願日】2015年5月21日
(86)【国際出願番号】JP2015064625
【審査請求日】2016年2月8日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000243906
【氏名又は名称】株式会社メイコー
(74)【代理人】
【識別番号】100090022
【弁理士】
【氏名又は名称】長門 侃二
(72)【発明者】
【氏名】黒須 満帆
(72)【発明者】
【氏名】高木 剛
(72)【発明者】
【氏名】瀧井 秀吉
(72)【発明者】
【氏名】種子 典明
【審査官】 内田 勝久
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−319031(JP,A)
【文献】 実公昭58−014621(JP,Y1)
【文献】 特開2013−140908(JP,A)
【文献】 特開2007−150059(JP,A)
【文献】 特開2011−119522(JP,A)
【文献】 特開2009−124080(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/00 〜 1/02
H05K 3/00
H05K 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半田を介して部品を実装するプリント配線基板であって、
基板材料層及び前記基板材料層の表面上にパターニングされた導体層を積層した積層構造を備える積層体と、
前記半田を付ける以外の前記積層体の表面を被覆するコーティング層と、を有し、
前記コーティング層は、前記積層体の表面上に形成される第1絶縁膜、及び前記第1絶縁膜上に形成される第2絶縁膜を備え、
前記第2絶縁膜は、前記第1絶縁膜と同一の絶縁材料から構成され、前記第1絶縁膜を露出するとともに、前記部品の所定情報を表す開口が形成されているプリント配線基板。
【請求項2】
前記第1絶縁膜及び前記第2絶縁膜は、互いに膜厚が異なる請求項1に記載のプリント配線基板。
【請求項3】
前記第2絶縁膜の膜厚は、前記第1絶縁膜の膜厚よりも大きい請求項2に記載のプリント配線基板。
【請求項4】
前記第2絶縁膜の開口は、前記導体層の外縁近傍以外の部分に形成される請求項1乃至3に記載のプリント配線基板。
【請求項5】
半田を介して部品を実装するためのプリント配線基板の製造方法であって、
基板材料層の表面上にパターニングされた導体層が積層された構造を備える積層体を準備する準備工程と、
前記半田を付ける以外の前記積層体の表面上に第1絶縁膜を形成する第1絶縁膜形成工程と、
前記第1絶縁膜の表面上に、前記第1絶縁膜と同一の絶縁材料から構成される第2絶縁膜を形成する第2絶縁膜形成工程と、を有し、
前記第2絶縁膜形成工程においては、前記第1絶縁膜を露出するとともに、前記部品の所定情報を表す開口を形成するプリント配線基板の製造方法。
【請求項6】
前記第1絶縁膜形成工程及び第2絶縁膜形成工程は、インクジェット方式によって絶縁材料を塗布する請求項5に記載のプリント配線基板の製造方法。
【請求項7】
前記第2絶縁膜形成工程は、前記第1絶縁膜形成工程における解像度よりも高い解像度によってインクジェット描画を行う請求項6に記載のプリント配線基板の製造方法。
【請求項8】
前記第1絶縁膜形成工程及び第2絶縁膜形成工程は、スクリーン印刷方式によって絶縁材料を塗布する請求項5に記載のプリント配線基板の製造方法。
【請求項9】
前記第2絶縁膜形成工程においては、前記第2絶縁膜の膜厚を前記第1絶縁膜の膜厚よりも大きくする請求項5乃至8のいずれか1項に記載のプリント配線基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シンボルマークを備えるプリント配線基板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線基板には、実装される電子部品の位置、大きさ、極性の方向などを示す長方形、丸形の図形及び矢印、並びに当該電子部品の番号及び型格の略号を示すシンボルマークが形成されている。当該シンボルマークは、非導電性のインキをソルダーレジストからなる絶縁膜上に印刷することによって形成される。このようなシンボルマークを形成することにより、プリント配線基板への部品実装及び修理を容易に行うことが可能になる。
【0003】
シンボルマークの形成に関する先行技術として、例えば、特許文献1及び特許文献2に、シンボルマークを備えるプリント配線基板が開示されている。特に、特許文献1には、吸湿の有無を目視により確認することができる吸湿識別機能付のシンボルマークを備えるプリント配線基板が開示されている。また、特許文献2には、シンボルマークの形成回数を配線パターン等の形成よりも多くしたプリント配線基板が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−305639号公報
【特許文献2】特開2008−135680号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、シンボルマークはソルダーレジストからなる絶縁膜上に形成されるため、シンボルマークの形成工程は当該絶縁膜の形成工程とは別工程となる。このため、シンボルマークを形成するためには、リードタイム及び作業者が増加し、更には別の設備が必要となり、製造コストの低減を図ることが困難である。また、絶縁膜上にシンボルマークを形成するため、プリント配線基板にはシンボルマークの厚みが加わり、プリント配線基板自体の薄型化が困難となる。更に、当該ソルダーレジストとシンボルマークの材料との密着性が低いため、シンボルマーク自体が剥離又は欠けてしまい、プリント配線基板自体の不具合につながる問題がある。
【0006】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、製造コストの低減及び薄型化を図るとともに、剥離及び欠けの発生が防止されたプリント配線基板及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明のプリント配線基板は、半田を介して部品を実装するプリント配線基板であって、基板材料層及び前記基板材料層の表面上にパターニングされた導体層を積層した積層構造を備える積層体と、前記半田を付ける以外の前記積層体の表面を被覆するコーティング層と、を有し、前記コーティング層は、前記積層体の表面上に形成される第1絶縁膜、及び前記第1絶縁膜上に形成される第2絶縁膜を備え、前記第2絶縁膜は、前記第1絶縁膜と同一の絶縁材料から構成され、前記第1絶縁膜を露出するとともに、前記部品の所定情報を表す開口が形成されている。
【0008】
また、上記目的を達成するため、本発明のプリント配線基板の製造方法は、半田を介して部品を実装するためのプリント配線基板の製造方法であって、基板材料層の表面上にパターニングされた導体層が積層された構造を備える積層体を準備する準備工程と、前記半田を付ける以外の前記積層体の表面上に第1絶縁膜を形成する第1絶縁膜形成工程と、前記第1絶縁膜の表面上に、前記第1絶縁膜と同一の絶縁材料から構成される第2絶縁膜を形成する第2絶縁膜形成工程と、を有し、
前記第2絶縁膜形成工程においては、前記第1絶縁膜を露出するとともに、前記部品の所定情報を表す開口を形成することである。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、製造コストの低減及び薄型化を図るとともに、剥離及び欠けの発生が防止されたプリント配線基板、及び当該プリント配線基板の製造を可能とする製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施例に係るプリント配線基板の部分拡大断面図である。
図2図1と同様にして示す、プリント配線基板の製造工程における部分拡大断面図である。
図3図1と同様にして示す、プリント配線基板の製造工程における部分拡大断面図である。
図4図1と同様にして示す、プリント配線基板の製造工程における部分拡大断面図である。
図5図1と同様にして示す、プリント配線基板の製造工程における部分拡大断面図である。
図6図1と同様にして示す、プリント配線基板の製造工程における部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態について、実施例に基づき詳細に説明する。なお、本発明は以下に説明する内容に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において任意に変更して実施することが可能である。また、実施例の説明に用いる図面は、いずれも本発明によるプリント配線基板及びその構成部材を模式的に示すものであって、理解を深めるべく部分的な強調、拡大、縮小、または省略などを行っており、プリント配線基板及びその構成部材の縮尺や形状等を正確に表すものとはなっていない場合がある。更に、実施例で用いる様々な数値は、一例を示す場合もあり、必要に応じて様々に変更することが可能である。
【0012】
<実施例>
(プリント配線基板の構造)
先ず、本発明の実施例に係るプリント配線基板の構造について、図1を参照しつつ詳細に説明する。ここで、図1は、本実施例に係るプリント配線基板の部分拡大断面図である。
【0013】
図1に示すように、本実施例に係るプリント配線基板1は、積層体2、積層体2の第1の面2a側に形成された第1コーティング層3、及び積層体2の第2の面2b側に形成された第2コーティング層4を有している。また、積層体2は、基板材料層5、基板材料層5の第1の面5aに形成された第1導体層6、及び基板材料層5の第2の面5bに形成された第2導体層7から構成されている。更に、第1コーティング層3は、第1絶縁膜11及び第2絶縁膜12から構成され、第2コーティング層4は第3絶縁膜13及び第4絶縁膜14から構成されている。
【0014】
基板材料層5は、絶縁材料のみから構成される絶縁層であってもよく、或いは複数の絶縁層及び内層配線となる複数の導体層を積層し、ビアホール及びスルーホール等が形成されている基材であってもよい。また、第1導体層6及び第2導体層7にはパターニングが施されており、プリント配線基板1の外層配線及び実装するための部品の接続パッドとして機能する。本実施例において、第1導体層6及び第2導体層7の構成材料は銅を用いているが、金、銀等の他の金属材料を用いてもよい。
【0015】
図1からわかるように、第1絶縁膜11は、第1導体層6から所定距離だけ離間して第1導体層6の周囲を囲むように、積層体2の第1の面2aの一部を被覆している。また、第2絶縁膜12は、第1絶縁膜11上のみに形成されているため、第1導体層6から所定距離だけ離間して第1導体層6の周囲を囲むことになる。これらのことを換言すると、第1コーティング層3は、第1導体層6から所定距離だけ離間して第1導体層6の周囲を囲むように、積層体2の第1の面2aの一部を被覆し、開口15を有している。ここで、第1コーティング層3は、部品を実装するために使用される半田が付けられる領域であり、第1コーティング層3が形成されている領域が半田を付ける必要がない領域となる。
【0016】
図1に示すように、第2絶縁膜12には、第2絶縁膜12を貫通して第1絶縁膜11を露出する開口16が形成されている。ここで、開口16は、プリント配線基板1に実装される部品の位置、大きさ、極性、又は番号若しくは型格の略称等の所定情報を表す。従って、プリント配線基板1を平面視した場合における開口16の平面形状は、当該所定情報を示す図形、矢印、記号、文字等になっている。すなわち、本実施例においては、従来のような非導電性のインキを塗布してシンボルマークを形成する必要がなく、開口16(換言すると、第1絶縁膜11)がシンボルマークとして機能することになる。
【0017】
また、本実施例においては、第1絶縁膜11と第2絶縁膜12との膜厚は異なっており、第2絶縁膜12の膜厚が第1絶縁膜11の膜厚よりも大きくなっている。例えば、第1絶縁膜11の膜厚は20μmであり、第2絶縁膜12の膜厚は30μmである。このような膜厚差により、第1コーティング層3にコントラストをより良好につけることができ、開口16によって表される所定情報をより視認しやすくすることができる。なお、第1絶縁膜11と第2絶縁膜12との膜厚差は必須ではなく、プリント配線基板1に要求される特性やコストに応じて、当該膜厚差をなくしたり、或いは第1絶縁膜11を厚くするようにしてもよい。
【0018】
更に、本実施例においては、第1絶縁膜11と第2絶縁膜12とは、同一の絶縁材料であるソルダーレジストから構成されている。このような材料選択を行うことにより、第1絶縁膜11と第2絶縁膜12との密着性を高めることができ、第1絶縁膜11と第2絶縁膜12との界面における剥離等の不具合を防止することができる。ただし、当該絶縁材料が完全に一致している必要性はなく、第1絶縁膜11と第2絶縁膜12との密着性を良好に保つことができれば、プリント配線基板1に要求される特性やコストに応じて、最適な絶縁材料を選択してもよい。
【0019】
ここで、第1絶縁膜11の膜厚は、第1導体層6の層厚よりも一般的に大きくなるように設定される。ただし、第1導体層6が第1絶縁膜11よりも厚くなること、或いは第1導体層6が開口15から突出することもある。
【0020】
一方、積層体2の第2の面2b側においては、図1に示すように、第3絶縁膜13は、第2導体層7を覆うように、積層体2の第2の面2bを全体的に被覆している。また、第4絶縁膜14は、第3絶縁膜13上に形成されている。従って、第2導体層7は、第2コーティング層4内(すなわち、第3絶縁膜13内)に埋設されている。このような第2コーティング層4の構造から、本実施例においては、第2導体層7には半田が付けられることがない。なお、第2導体層7、第3絶縁膜13、及び第4絶縁膜14との厚みの関係は、適宜調整することができるが、第2導体層7が露出しないように調整することが前提となる。
【0021】
また、図1に示すように、第4絶縁膜14にも、第4絶縁膜14を貫通して第3絶縁膜13を露出する開口17が形成されている。開口17も、開口16と同様に、プリント配線基板1に実装される部品の位置、大きさ、極性、又は番号若しくは型格の略称等の所定情報を表し、シンボルマークとして機能する。
【0022】
更に、第3絶縁膜13と第4絶縁膜14との膜厚も異なっており、第4絶縁膜14の膜厚が第3絶縁膜13の膜厚よりも大きくなっている。例えば、第3絶縁膜13の膜厚は20μmであり、第4絶縁膜14の膜厚は30μmである。このような膜厚差により、第2コーティング層4にコントラストをより良好につけることができ、開口17によって表される所定情報をより視認しやすくすることができる。なお、第3絶縁膜13と第4絶縁膜14との膜厚差も必須ではなく、プリント配線基板1に要求される特性やコストに応じて、当該膜厚差をなくしたり、或いは第3絶縁膜13を厚くするようにしてもよい。
【0023】
そして、第3絶縁膜13と第4絶縁膜14とも、同一の絶縁材料であるソルダーレジストから構成されている。このような材料選択を行うことにより、第3絶縁膜13と第4絶縁膜14との密着性を高めることができ、第3絶縁膜13と第4絶縁膜14との界面における剥離等の不具合を防止することができる。ただし、当該絶縁材料が完全に一致している必要性はなく、第3絶縁膜13と第4絶縁膜14との密着性を良好に保つことができれば、プリント配線基板1に要求される特性やコストに応じて、最適な絶縁材料を選択してもよい。なお、第1絶縁膜11、第2絶縁膜12、第3絶縁膜13、及び第4絶縁膜14を同一の絶縁材料から構成することにより、製造コストの更なる低減を図るようにしてもよい。
【0024】
本実施例に係るプリント配線基板1によれば、第2絶縁膜12の開口16及び第4絶縁膜14の開口17がシンボルマークとして機能することから、従来のような非導電性のインキをコーティング層上に塗布してシンボルマークを形成する必要がなくなる。このため、プリント配線基板1の低コスト化及び薄型化を容易に実現することが可能になる。また、シンボルマーク自体が第1コーティング層3及び第2コーティング層4よりも突出して形成されることがないため、シンボルマーク自体の剥離及び欠けの発生が抑制されることになる。
【0025】
更に、本実施例においては、第3絶縁膜13に埋設された第2導体層7の近傍に形成される開口17を、第2導体層7の外縁近傍ではなく中央部の近傍に形成しているため、第2導体層7の外縁部分における第3絶縁膜13の膜厚が薄くなっていたとしても、開口17の形状を安定化することができる。このため、開口17のシンボルマークとしての機能が低下することなく、所定情報を適格に表すことができる。
【0026】
なお、図1においては、実施例の説明の便宜上のため、積層体2の第1の面2a側に露出した第1導体層6のみを図示されていたが、第1絶縁膜11内に埋設される他の導電層が形成されていてもよい。同様に、積層体の第2の面2b側に、露出した他の導電層が形成されていてもよい。当該導電層の形成については、プリント配線基板1に要求される特性及びパターン、並びに実装する部品の種類及び数量に応じて適宜変更されることになる。
【0027】
(プリント配線基板の製造方法)
次に、本発明の実施例に係るプリント配線基板1の製造工程を図1乃至図6を参照しつつ、詳細に説明する。ここで、図2乃至図6は、図1と同様にして示す、プリント配線基板の製造工程における部分拡大断面図である。
【0028】
先ず、図2に示すように、本実施例に係るプリント配線基板1の構成部材である積層体2を準備する(準備工程)。本実施例においては、積層体2として、基板材料層5、並びに基板材料層5の表面上に形成された第1導体層6及び第2導体層7が積層された構造を備える基材を用いた。ここで、第1導体層6及び第2導体層7には、プリント配線基板1に実装されることになる半導体チップ、抵抗、及びコンデンサ等の電子部品の接続端子に対応したパターニング、又は所望の電気的な配線を形成するパターニングが施されている。
【0029】
次に、図3及び図4に示すように、絶縁材料であるソルダーレジスト20を塗布するための塗布装置を用いて、インクジェット方式によるインクジェット描画を行い、第1絶縁膜11を形成する(第1絶縁膜形成工程)。本実施例において、図3に示すように、当該塗布装置は、インクジェットヘッド21、及び紫外線光源22からなる印刷ヘッド23を備えている。このような印刷ヘッド23の構成から、印刷ヘッド23を主走査方向してソルダーレジスト20の塗布を行うと、当該塗布の直後に紫外線照射を行うことができる。すなわち、印刷ヘッド23の主走査方向への1回の移動により、ソルダーレジスト20の塗布及び硬化を行うことができ、スクリーン印刷方式と比較して仮硬化の時間(例えば、約20分)を短縮することができる。また、本実施例におけるインクジェットヘッド21の解像度は、300dpiであるが、当該解像度は適宜変更することができる。
【0030】
具体的な第1絶縁膜11の形成工程として、基板材料層5の第1の面5a上であって、第1導体層6の形成領域を離間して囲むように、インクジェット方式によってソルダーレジスト20を塗布する。すなわち、ソルダーレジスト20は、積層体2の第1の面2aの全面を覆うことなく、第1導体層6の周辺部分を露出するように塗布されることになる。本実施例においては、1200dpiの解像度でインクジェット描画を行い、第1絶縁膜11を形成する。ここで、インクジェットヘッド21の解像度が300dpiであるため、インクジェットヘッド21を副走査方向に複数回移動させ、一定領域中のドット数を増加させることになる。
【0031】
次に、図5に示すように、第1絶縁膜形成工程の際に使用した塗布装置を用い、インクジェット方式によるインクジェット描画を行い、第2絶縁膜12を形成する(第2絶縁膜形成工程)。具体的な第2絶縁膜12の形成工程として、第1絶縁膜11の表面上のみに、インクジェット方式によってソルダーレジスト20を塗布し、開口15が形成されることになる。この際、シンボルマークとなる開口16に対応する領域にはソルダーレジスト20を塗布しないような描画を行い、開口16を備える第2絶縁膜12を形成することになる。
【0032】
本実施例においては、1800dpiの解像度でインクジェット描画を行い、第2絶縁膜12を形成する。ここで、インクジェットヘッド21の解像度が300dpiであるため、インクジェットヘッド21を副走査方向に複数回移動させ、一定領域中のドット数を増加させることになる。
【0033】
次に、図6に示すように、第1絶縁膜形成工程の際に使用した塗布装置を用い、インクジェット方式によるインクジェット描画を行い、第3絶縁膜13を形成する。具体的な第3絶縁膜13の形成工程として、第2導体層7を埋設するように、基板材料層5の第2の面5b上に、インクジェット方式によってソルダーレジスト20を塗布する。本実施例においては、第3絶縁膜13の形成に係る描画の解像度も1200dpiとするため、インクジェットヘッド21を副走査方向に複数回移動させ、一定領域中のドット数を増加させることになる。
【0034】
次に、図1に示すように、第1絶縁膜形成工程の際に使用した塗布装置を用い、インクジェット方式によるインクジェット描画を行い、第4絶縁膜14を形成する。具体的な第4絶縁膜14の形成工程として、第3絶縁膜13の上に、インクジェット方式によってソルダーレジスト20を塗布する。この際、シンボルマークとなる開口17に対応する領域にはソルダーレジスト20を塗布しないような描画を行い、開口17を備える第4絶縁膜14を形成することになる。本実施例においては、第4絶縁膜14の形成に係る描画の解像度も1800dpiとするため、インクジェットヘッド21を副走査方向に複数回移動させ、一定領域中のドット数を増加させることになる。
【0035】
その後、加熱処理(ポストキュア)を施し、第1絶縁膜11、第2絶縁膜12、第3絶縁膜13、及び第4絶縁膜14を完全に硬化する。これにより、第1絶縁膜11及び第2絶縁膜12からなる第1コーティング層3が形成され、第3絶縁膜13及び第4絶縁膜14からなる第2コーティング層4が形成され、プリント配線基板1の製造が完了する。
【0036】
本実施例に係るプリント配線基板1の製造方法においては、従来のような非導電性のインキをコーティング層上に塗布してシンボルマークを形成することなく、第1コーティング層3及び第2コーティング層4の形成と同時にシンボルマークを形成することができる。このため、従来のシンボルマーク作成に係る設備(印刷機、露光機、乾燥炉等)が不要となり、更には製造工程に係る人員の削減を図ることができ、プリント配線基板1の製造コストを大幅に低減することが可能になる。
【0037】
また、第1絶縁膜11、第2絶縁膜12、第3絶縁膜13、及び第4絶縁膜14を同一の装置を使用して同一の絶縁材料から形成するため、開口16及び開口17の位置精度を向上することができ、プリント配線基板1の歩留まりの向上も図ることができる。これにより、廃却品を低減して、環境負荷の低減も図ることが可能になる。
【0038】
上述した実施例においては、第1絶縁膜11、第2絶縁膜12、第3絶縁膜13、及び第4絶縁膜14を形成する際に、インクジェット方式によって絶縁材料を塗布したが、マスク及びスキージを用いたスクリーン印刷方式によって絶縁材料を塗布してもよい。スクリーン印刷方式で第1コーティング層3及び第2コーティング層4を形成する場合であっても、第2絶縁膜12に開口16を形成し、更には第4絶縁膜14に開口17を形成するため、第1コーティング層3及び第2コーティング層4のコントラストによってシンボルマークを表示することが可能になる。従って、このような場合であっても、上述した実施例と同様に、製造コストの低減及び薄型化を図るとともに、剥離及び欠けの発生を防止することできる。
【0039】
なお、スクリーン印刷方式で第1コーティング層3及び第2コーティング層4を形成する場合であっても、第1絶縁膜11と第2絶縁膜12とに膜厚差を設け、第3絶縁膜13と第4絶縁膜14とのに膜厚差を設け、第1コーティング層3及び第2コーティング層4のコントラストをより良好につけることが好ましい。例えば、上述した実施例と同様に、第2絶縁膜12の膜厚を第1絶縁膜11の膜厚よりも大きくし、第3絶縁膜13の膜厚を第4絶縁膜14の膜厚よりも大きくしてもよい。
【0040】
<本発明の実施態様>
本発明の第1実施態様に係るプリント配線基板は、半田を介して部品を実装するプリント配線基板であって、基板材料層及び前記基板材料層の表面上にパターニングされた導体層を積層した積層構造を備える積層体と、前記半田を付ける以外の前記積層体の表面を被覆するコーティング層と、を有し、前記コーティング層は、前記積層体の表面上に形成される第1絶縁膜、及び前記第1絶縁膜上に形成される第2絶縁膜を備え、前記第2絶縁膜には、前記第1絶縁膜を露出するとともに、前記部品の所定情報を表す開口が形成されている。
【0041】
第1実施態様においては、第2絶縁膜の開口がシンボルマークとして機能することから、従来のような非導電性のインキをコーティング層上に塗布してシンボルマークを形成する必要がなくなる。このため、プリント配線基板の低コスト化及び薄型化を容易に実現することが可能になる。また、シンボルマーク自体がコーティング層よりも突出して形成されることがないため、シンボルマーク自体の剥離及び欠けの発生が抑制されることになる。
【0042】
本発明の第2実施態様に係るプリント配線基板は、上述した第1実施態様において、前記第1絶縁膜及び前記第2絶縁膜が互いに膜厚が異なることである。これにより、コーティング層にコントラストをより良好につけることができ、開口によって表される所定情報をより視認しやすくすることができる。
【0043】
本発明の第3実施態様に係るプリント配線基板は、上述した第2実施態様において、前記第2絶縁膜の膜厚が前記第1絶縁膜の膜厚よりも大きいことである。これにより、コーティング層にコントラストをより一層良好につけることができ、開口によって表される所定情報をより一層視認しやすくすることができる。
【0044】
本発明の第4実施態様に係るプリント配線基板は、上述した第1乃至第3実施態様のいずれかにおいて、前記第1絶縁膜及び前記第2絶縁膜が同一の絶縁材料から構成されていることである。これにより、第1絶縁膜と第2絶縁膜との界面における剥離を防止するとともに、製造コストの低減を図ることができる。
【0045】
本発明の第5実施態様に係るプリント配線基板の製造方法は、半田を介して部品を実装するためのプリント配線基板の製造方法であって、基板材料層の表面上にパターニングされた導体層が積層された構造を備える積層体を準備する準備工程と、前記半田を付ける以外の前記積層体の表面上に第1絶縁膜を形成する第1絶縁膜形成工程と、前記第1絶縁膜の表面上に第2絶縁膜を形成する第2絶縁膜形成工程と、を有し、前記第2絶縁膜形成工程においては、前記第1絶縁膜を露出するとともに、前記部品の所定情報を表す開口を形成する。
【0046】
第5実施態様においては、従来のような非導電性のインキをコーティング層上に塗布してシンボルマークを形成することなく、第2絶縁膜の形成と同時にシンボルマークを形成することができる。このため、従来のシンボルマーク作成に係る設備が不要となり、更には製造工程に係る人員の削減を図ることができ、プリント配線基板の製造コストを大幅に低減することが可能になる。
【0047】
本発明の第6実施態様に係るプリント配線基板の製造方法は、上述した第5実施態様において、前記第1絶縁膜形成工程及び第2絶縁膜形成工程でインクジェット方式によって絶縁材料を塗布することである。これにより、第1絶縁膜及び第2絶縁膜を良好且つ容易に形成することができ、仮硬化に係る加熱工程を削減することができる。
【0048】
本発明の第7実施態様に係るプリント配線基板の製造方法は、上述した第6実施態様において、前記第2絶縁膜形成工程で前記第1絶縁膜形成工程における解像度よりも高い解像度によってインクジェット描画を行うことである。これにより、第1絶縁膜及び第2絶縁膜におけるコントラストをより良好につけることができ、開口によって表される所定情報をより視認しやすくすることができる。
【0049】
本発明の第8実施態様に係るプリント配線基板の製造方法は、上述した第5実施態様において、前記第1絶縁膜形成工程及び第2絶縁膜形成工程でスクリーン印刷方式によって絶縁材料を塗布することである。これにより、第1絶縁膜及び第2絶縁膜を良好且つ容易に形成することができる。
【0050】
本発明の第9実施態様に係るプリント配線基板の製造方法は、上述した第5乃至第8実施態様のいずれかにおいて、前記第2絶縁膜形成工程で前記第2絶縁膜の膜厚を前記第1絶縁膜の膜厚よりも大きくすることである。これにより、第1絶縁膜及び第2絶縁膜におけるコントラストをより一層良好につけることができ、開口によって表される所定情報をより一層視認しやすくすることができる。
【符号の説明】
【0051】
1 プリント配線基板
2 積層体
2a 第1の面
2b 第2の面
3 第1コーティング層
4 第2コーティング層
5 基板材料層
5a 第1の面
5b 第2の面
6 第1導電層
7 第2導電層
11 第1絶縁膜
12 第2絶縁膜
13 第3絶縁膜
14 第4絶縁膜
15 開口
16 開口
17 開口
20 ソルダーレジスト
21 インクジェットヘッド
22 UV光源
23 印刷ヘッド
【要約】
半田を介して部品を実装するプリント配線基板(1)であって、基板材料層(5)及び前記基板材料層の表面上にパターニングされた導体層(6)を積層した積層構造を備える積層体(2)と、前記半田を付ける以外の前記積層体の表面を被覆するコーティング層(3)と、を有し、前記コーティング層は、前記積層体の表面上に形成される第1絶縁膜(11)、及び前記第1絶縁膜上に形成される第2絶縁膜(12)を備え、前記第2絶縁膜には、前記第1絶縁膜を露出するとともに、前記部品の所定情報を表す開口(16)が形成されていること。
図1
図2
図3
図4
図5
図6