特許第6022113号(P6022113)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6022113
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月9日
(54)【発明の名称】フィルムの再現方法
(51)【国際特許分類】
   H04N 5/91 20060101AFI20161027BHJP
   H04N 21/8541 20110101ALI20161027BHJP
   G11B 27/02 20060101ALI20161027BHJP
   G11B 27/10 20060101ALI20161027BHJP
【FI】
   H04N5/91 N
   H04N21/8541
   G11B27/02 B
   G11B27/10 A
【請求項の数】13
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-509560(P2016-509560)
(86)(22)【出願日】2014年4月23日
(65)【公表番号】特表2016-524830(P2016-524830A)
(43)【公表日】2016年8月18日
(86)【国際出願番号】IB2014000600
(87)【国際公開番号】WO2014174359
(87)【国際公開日】20141030
【審査請求日】2016年3月29日
(31)【優先権主張番号】RM2013A000244
(32)【優先日】2013年4月23日
(33)【優先権主張国】IT
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515295496
【氏名又は名称】マイオル ソチエタ・ア・レスポンサビリタ・リミタータ
【氏名又は名称原語表記】MAIOR Srl
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】ガブリエレ チェラッキーニ
【審査官】 堀 洋介
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−503027(JP,A)
【文献】 特表2010−504601(JP,A)
【文献】 特表2007−522597(JP,A)
【文献】 国際公開第03/021956(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 5/91
G11B 27/02
G11B 27/10
H04N 21/8541
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルムを再現する方法であって、
前記フィルムは、イベントの少なくとも2つのストリング(S1,S2,S3)の生成を含み、各ストリング(S1,S2,S3)は、前記フィルムのそれぞれのバージョンに関連付けられ、
イベントの各ストリング(S1,S2,S3)には、イベントの対(n,n+1)の少なくとも1つのシーケンスが含まれており、各イベントは、記憶媒体に記録されるオーディオ/ビジュアルコンテンツに対応し、
前記方法には、
・ オーディオ/ビジュアル手段上で第1のイベント(n)を再生するステップと、
・ 当該第1のイベント(n)に続いて前記オーディオ/ビジュアル手段上で第2のイベント(n+1)を再生するステップとが含まれており、
前記第1のイベント(n)および/または前記第2のイベント(n+1)は、前記再現に対し、対応する択一的な複数のイベント(nA,nB;n+1A,n+1B)の中から自動的に選択され、当該選択は、前記連続する複数のイベント(n,n+1)間で論理的な整合が維持されるように行われる、フィルムを再現する方法において、
前記フィルムには、第1のタイプのイベントnP(nP1,nP2)および第2のタイプのイベントnS(nS1)の複数のイベントが含まれており、これによって複数のイベントの1つまたは複数のストリング(S1,S2)における1つまたは複数の前記第1のタイプnP(nP1,nP2)のイベントの選択により、後続の複数のストリング(S3)の生成中に、1つまたは複数の前記第2のタイプのイベントnS(nS1)の選択が許可され、その他の場合には、第2のタイプのイベントnS(nS1)の前記選択は禁止される、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記第1のイベント(n)および/または前記第2のイベント(n+1)を、前記対応する択一的な複数のイベント(nA,nB;n+1A,n+1B)の中からランダムまたは擬似ランダムに選択する、
請求項1に記載の、フィルムを再現する方法。
【請求項3】
前記第1のイベントおよび/または前記第2のイベント(n+1)を、少なくとも部分的に、あらかじめ定めた判定基準に基づいて、前記対応する択一的な複数のイベント(n+1A,n+1B)の中から選択する、
請求項1または2に記載の、フィルムを再現する方法。
【請求項4】
さらに、前記対応する択一的な複数のイベント(nA,nB;n+1A,n+1B)の中からの前記第1のイベント(n)および/または前記第2のイベント(n+1)の選択を記憶し、前記フィルムの後続の複数回の再現中に、選択されかつ再生されるイベント(n,n+1)の履歴アーカイブを形成するステップを有する、
請求項1から3までのいずれか1項の、フィルムを再現する方法。
【請求項5】
再生される前記イベント(n,n+1)の前記選択に対する前記あらかじめ定めた判定基準は、以前の複数の選択の前記履歴アーカイブに関連付けられている、
請求項3を引用する請求項4に記載の、フィルムを再現する方法。
【請求項6】
前記あらかじめ定めた判定基準には、1つまたは複数のあらかじめ定めた条件が満たされた場合にのみ、再現に対して1つまたは複数のイベント(nS,n+1S)の前記選択が行われることが含まれている、
請求項3または5に記載の、フィルムを再現する方法。
【請求項7】
複数の前記条件には、1つまたは複数のあらかじめ定めたイベント(nP,n+1P)の選択が行われることが含まれている、
請求項6に記載の、フィルムを再現する方法。
【請求項8】
再現に対して選択可能な各イベントは、選択の確率インデックス(s)に関連付けられており、
前記選択の確率インデックス(i)は、前記フィルムの1回または複数回の再現中に前記イベントの選択の回数が増大するのに伴って、対応するイベントが選択される確率が低減されるように設定されている、
請求項1から7までのいずれか1項の、フィルムを再現する方法。
【請求項9】
各イベント(n,n+1)は、前に撮影した映画シーンに関連付けられている、
請求項1から8までのいずれか1項の、フィルムを再現する方法。
【請求項10】
請求項1から9までのいずれか1項に記載の方法を実行するように適合された手段を有する、
ことを特徴とする、フィルムを再現するための装置。
【請求項11】
プロセッサ上で実行される場合に、請求項1から9までのいずれか1項に記載の方法を実行するように適合された1つまたは複数の命令を含むコンピュータプログラム。
【請求項12】
請求項11に記載の、プロセッサ用の前記1つまたは複数の命令を含む記憶媒体。
【請求項13】
フィルムを有する記憶媒体であって、
前記フィルムは、イベントの少なくとも2つのストリングを含み、各ストリングは、前記フィルムのそれぞれのバージョンに関連付けられ、
イベントの各ストリングは、イベントの少なくとも1つの対(n,n+1)のシーケンスを有しており、各イベントはオーディオ/ビジュアルコンテンツに対応する、記録媒体において、
1のイベント(n)および/または第2のイベント(n+1)には、対応する択一的なイベント(nA,nB;n+1A,n+1B)が含まれており、
オーディオ/ビジュアル手段上で前記フィルムを再現するために前記対応する択一的なイベント(nA,nB;n+1A,n+1B)が自動的に選択可能である、フィルムを有する記憶媒体において、
前記フィルムには、第1のタイプのイベントnPおよび第2のタイプのイベントnSの複数のイベントが含まれており、これによって複数のイベントの1つまたは複数のストリング(S1,S2)における1つまたは複数の前記第1のタイプnPのイベント選択により、後続の複数のストリング(S3)の生成中に、1つまたは複数の前記第2のタイプのイベントnSの選択が許可され、その他の場合には、第2のタイプのイベントnSの前記選択は禁止される、
ことを特徴とする記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オーディオ/ビジュアル手段によってフィルムを再現する方法およびフィルムを再現するための装置に関する。より具体的にいうと、本発明に記載された方法により、このフィルムそれ自体が視聴毎に異なるように自動的に構成されることにより、同じフィルムのより多くの回数の視聴が可能になるのである。
【0002】
発明の背景
映画がはじまった時代から公知のように、一般的な手法で製作される任意のフィルムはつねにそれ自体と等しく変化しない。今日製作されるすべての映画は、冒頭部を有し、プロットを展開し、結末に到達する。同じフィルムを何回も視聴する場合、このフィルムはつねにそれ自体と同じであることは明らかである。
【0003】
同様に「テレビの連続物」は一般的に「第1」話(またはプロット)と、後続の複数の話とから構成され、これらの話の各々は個別に(一般的に高いコストを伴って)制作される。それらの成果物をユーザは所定の、すなわち第1話から最終話まで順序を辿らなければならない。
【0004】
要約
本発明の一実施形態によれば、フィルムを再現する方法が提供され、この方法では、イベントの少なくとも2つのストリングが生成され、各ストリングは対応するプレイバックに関連付けられており、上記のフィルムは、少なくとも1つの、イベントの対n,n+1のストリングを有しており、ここで各イベントは、記憶媒体上に記録されるオーディオビジュアルコンテンツに対応する。
【0005】
より具体的にいうと、この方法には、
1. オーディオ/ビジュアル手段上で第1のイベントを再現するステップと、
2. このオーディオ/ビジュアル手段上で、第1のイベントnに続く第2のイベントn+1を再現するステップとが含まれている。第1のイベントnおよび/または第2のイベントn+1は、対応する択一的な複数のイベントnA,nB,n+1A,n+1Bの中かから自動的に選択され、この選択は、連続する2つのイベントn,n+1間の論理的な整合性が維持されるように行われる。
【0006】
本発明の一態様によれば、有利な実施形態の説明において詳述するように、フィルムには、第1のタイプのイベントnPおよび第2のタイプのイベントnSが含まれており、イベントの1つまたは複数のストリングにおいて第1タイプnPの1つまたは複数のイベントを選択することは、後続のストリングの生成中に上記の第1のタイプの1つまたは複数のイベントnPに相関付けされる第2のタイプの1つまたは複数のイベントの選択を許可し、その他の場合に選択は禁止される。
【0007】
本発明の一態様によれば、フィルムの再現方法が提供され、ここでは、第1のイベントnおよび/または第2のイベントn+1を、対応する択一的な複数のイベントnA,nB;n+1A,n+1Bの中からランダムまたは擬似ランダムに選択する。
【0008】
本発明の別の一態様によれば、フィルムの再現方法が提供され、ここでは第1のイベントおよび/または第2のイベントn+1を、少なくとも部分的に、あらかじめ定めた判定基準に基づいて、対応する択一的な複数のイベントn+1A,n+1Bの中から選択する。
【0009】
本発明の別の一態様によれば、フィルムの再現方法が提供され、ここでは対応する択一的な複数のイベントnA,nB;n+1A,n+1Bの中からの第1のイベントnおよび/または第2のイベントn+1の選択を記憶し、前記フィルムの後続の複数回の再現中に、選択されかつ再生されるイベントn,n+1の履歴アーカイブを形成するステップを有する。
【0010】
本発明の別の一態様によれば、フィルムの再現方法が提供され、ここでは、再現されるイベントn,n+1の選択に対するあらかじめ定めた判定基準は、以前の複数の選択の履歴アーカイブに関連付けられている。
【0011】
本発明の別の一態様によれば、映画の再現方法が提供され、ここでは、あらかじめ定めた判定基準には、1つまたは複数のあらかじめ定めた条件が満たされた場合にのみ、再現に対して1つまたは複数のイベントnS,n+1Sの選択が行われることが含まれている。
【0012】
本発明の別の一態様によれば、映画の再現方法が提供され、ここでは、複数の上記の条件には、1つまたは複数のあらかじめ定めたイベントnP,n+1Pの選択が行われることが含まれている。
【0013】
本発明の別の一態様によれば、フィルムの再現方法が提供され、ここでは、再現に対して選択可能な各イベントは、選択の確率インデックスiに関連付けられており、このインデックスは、フィルムの1回または複数回の再現中にイベントの選択の回数が増大するのに伴って、対応するイベントが選択される確率が低減されるように構成されている。
【0014】
本発明の別の一態様によれば、フィルムの再現方法が提供され、ここでは、各イベントn,n+1は、前に撮影した映画シーンに関連付けられている。本発明のさらに別の一様相によれば、フィルムを再現するための装置が提供され、この装置は、上記の方法を実行するのに適合された手段を有する。
【0015】
本発明では、プロセッサ上で実行される場合に、上記の方法を実行するように適合された1つまたは複数の命令を含むコンピュータプログラムが提供される。ここでは、プロセッサ用のこのような命令を有する記憶媒体も提供される。
【0016】
最後に本発明ではフィルムを有する記憶媒体が提供され、このフィルムは、イベントの少なくとも1つの対n,n+1のシーケンスを有しており、各イベントはオーディオ/ビジュアルコンテンツに対応しており、第1のイベントnおよび/または第2のイベントn+1には、対応する択一的なイベントnA,nB;n+1A,n+1Bが含まれており、オーディオ/ビジュアル手段上でフィルムを再現するために上記の択一的なイベントnA,nB;n+1A,n+1Bが自動的に選択される。
【0017】
技術の現在の状況において、(一般的に高いコストを負担して実現される)ほとんどのオーディオビジュアル製品は、「使い捨て」タイプの製品のままである。言い換えると、テレビの連続物の場合、1回の話は、次回の話に進む前に一度しか視聴されないのに対し、フィルムの場合、一旦視聴されてしまえば、一般的にはユーザからさらに引き続いて複数回視聴される対象にならず、ユーザは一般的に別の新しいフィルムを楽しむことの方を好む。
【0018】
当然、このフィルムを再度視聴することは可能であるが、つねに同じである。
【0019】
このような欠点に対し、今日の技術は、「インタラクティブムービー」のような異なる解決手段を提供することを試みてきた(しかしながら視聴者の間に広がって成功することを妨げる複数の欠点がなくはなかったのである)。このタイプの映画において、視聴中にユーザによって操作される選択/好みの設定にしたがってプロットは異なって展開する。言い換えると、視聴者は、(一般的に複数回)選択を行わなければならず、この選択にしたがってフィルムは異なる仕方で発展するのである。
【0020】
この場合、後続の複数回の視聴中にフィルムは実際に変化し、確かに別の選択を行って同じプロットの異なる展開を辿れば、このフィルムは再度視聴することができる。それにもかかわらず、問題は、インタラクティブムービーにおけるそれぞれの択一的なパスの実現には、一般的に大きな経済的投資が必要であり、したがってこれらのパスは一般的に極めて限られた個数でしか提供されないことである。
【0021】
このような理由から、現在知られているインタラクティブムービーは、九分通り、数回の視聴内ですべての「多様性」を使い尽くしてしまうように運命付けられているのである。このことはまた、プロットの展開を変化するための選択がユーザによって能動的に行われるため、このような選択を多くすることはできないという事実が原因でもある。
【0022】
従来技術による通常のフィルムの制作において、オーディオビジュアル部門において現在活動している会社の、制作について努力は最適化されておらず、フィルムまたはTVの一回分の話の最終バージョンを配給するため、制作された素材のわずかな部分だけしか実際には使用されず、資源が明らかに廃棄されることを強調することも重要である。(シーンのカットまたは最終編集などに選択されなかった種々のシーケンスのような)一般的に一貫性のある制作された残りの素材は廃棄される。
【0023】
本発明の目的は、実質的に請求項1に定められているフィルムの再現方法を提供することによって上記のような欠点を克服することである。本発明の別の目的は、実質的に請求項10に定められているフィルム再現装置を提供することである。
【0024】
本発明のさらに別の目的は、実質的に請求項11に定められているフィルムを再現するためのコンピュータプログラムを提供することである。本発明のさらに別の目的は、実質的に請求項12に定められている記憶媒体を提供することである。本発明のさらに別の目的は、実質的に請求項13に定められている記憶媒体を提供することである。
【0025】
別の有利な特徴は、対応する複数の従属請求項に定められている。
【0026】
従来技術の上述した技術的な問題を克服する本発明には、数多くの明らかな利点が含まれている。本発明の有利な一様相によれば、映画を再現するための方法は、制限的でない例によって、以下で示す有利な実施形態の詳細の説明から明らかになるように「マルチフィルム」の制作が、すなわちフィルムのプロットを変更するために、視聴者が能動的な役割を担う必要なしに再現の度のプロットが変わるフィルムの制作が行われるのである。
【0027】
さらに、有利な実施形態による上記の方法は特に、不可能でないにしても視聴者が実際にその形態を使い尽くすのが極めて困難になってしまうような極めて多く視聴の回数に対して、フィルムが視聴毎にそのプロットを自動的に変化させることできるように適合される。後で明らかになるように、上記のマルチフィルムは、一度だけ視聴することを意図しているのではなく、ユーザが望む回数だけ視聴することを意図している。このマルチフィルムは、そのプロットを(コンピュータプログラムによって)ランダムまたは擬似ランダムに変更することができ、オーディオビジュアル手段上で再現される度に、上で示したように極めて多数の考えられ得るすべてのもの中からランダムに選び出されたものにしたがって組み立てられる。
【0028】
さらに具体的にいうと、マルチフィルムは、単一の視聴においてその物語としての潜在的な能力を使い尽くすことはない。有利な実施形態の詳細な説明から明らかになるように、視聴の回数が増大すると、視聴者による物語の筋の一般的な理解が増大する。この筋は、毎回異なる仕方で展開されるのに加えて、答えが得られていない問いをそのままにすることができる。例えば、このフィルムの前話、ある登場人物がある振る舞いをする理由、何が舞台裏であるかなどをそのままにし、これらはこのマルチフィルムを引き続いて複数回視聴することによってのみ解決される。
【0029】
このフィルムの映画物語素材が再現に対してどのように脚色されているかに依存して、物語のストーリーは、変化を除けば、主役の目標と一致し得る特定の方向に展開し得る。例えば、弱い主人公が、一貫して滅ぼされる強い敵対者と対決するように強いられる復讐劇をベースにするストーリーにおいて、後続の複数回の視聴において主人公は、過去の誤りから学習して次第に強くなり(または一層抜け目がなくなり)、最初の視聴からあらかじめ決定されているように最後にはその意志を成し遂げる(多くの結末が存在し得るが、ただ1つの結末が「グランドフィナーレ」とされる)。
【0030】
本発明による方法により、公知の技術によるフィルム制作に使用される撮影法によって制作される有利な量の映画素材により、実質的に視聴する度に、異なる物語の展開を提案できるような仕方で実現されるマルチフィルムの制作が可能になる。
【0031】
さらに別の利点、特徴および本発明を実施するための方法は、添付の図面を参照しかつ制限的でない実施例によって示される有利な実施形態の以下の詳細な説明から明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明による再現方法による、1つのフィルムの2つのシーンからなる1つのシーケンスを略示する図である。
図2】本発明の再現方法にしたがって再現される、1つのフィルムの複数のシーンの構成を略示する図である。
図2A】第1のタイプのイベントと第2のタイプのイベントとの間の相関付けを示す図である。
図3】有利な実施形態にしたがって図2の構成を略示する図である。
図4】有利な実施形態にしたがって図2の別の構成を略示する図である。
図5】有利な実施形態にしたがって図2のさらに別の構成を略示する図である。
図6】有利な実施形態にしたがって図2のさらに別の構成を略示する図である。
【0033】
以下では1つのフィルムの1つの「シーン」とは一般的に「イベント」の意味であるとする。1つのフィルムの1つのイベントとは、1つまたは複数のカメラによって制作されるオーディオ/ビジュアルコンテンツ(またはサイレントフィルムの場合にはビジュアルコンテンツだけ(このタイプは現在では滅多に使用されないが))のことである。イベントは、1つまたは複数のカメラによって得ることができ、ここでは記録は、時間的に連続して行われるかまたは相互に分割されかつ連続した複数の記録によって行われ、これらの種々異なる複数の部分は、後で相互に編集されて、視聴者にこのイベントが中断なしに記録されているような感覚を与える。
【0034】
いずれの場合においても、また極めて一般的なレベルにおいて、フィルムの再現は、フィルムを構成しているすべてのイベントが順次に再生される場合に行われる。制限的ではない例として、1つのフィルムの1つのイベントは、目的地に、例えば教会に行くため、登場人物が公園内を歩いているシーンに対応し得るものとする。
【0035】
後続のイベントは、主役が教会内にいる連続したシーンから構成され得る。したがって、この場合、これらの2つのイベントは互いに異なる。なぜならば、これらの連続するシーンについて周囲環境が変化しているからである。これとは別に2つのイベントは、同じ場所で撮影されているが、フラッシュバックのように時間の変化によって特徴付けられている2つのシーンに関連付けることができる。より一般的には、1つのイベントは、フィルムの一部分と考えることができる。
【0036】
したがって1つのイベントはまた、1つ以上のシーンを含み得る。映画の撮影中、上でわかりやすく説明したように、対応する1つまたは複数のシーンにそれぞれ相応するすべてのイベントは、オーディオ/ビジュアルファイルのような記憶媒体に記録される。よく知られているように、撮影中にこのようにして制作されたすべての素材は、ポストプロダクションのための後の段階において利用され、このポストプロダクションにおいて最終的な製作物が得られるまでこれらのシーンが編集される。
【0037】
この過程において、利用可能なすべての素材が実際に利用される訳ではない。実際に同じ複数の役者による対話シーンまたはフレーミング毎の撮影中には最善のテイクを選択できるようにするため(連続して記録された単一の演技として意図された)複数の異なるテイクを撮影する。この映画の特定のシチュエーションを物語り得る異なる複数の映像が存在し、役者によって得られた同じ台詞のいくつかの有効かつ異なる解釈が存在したとしても、1つの映像および1つの演技を選択しなければならないのであり、これらが従来行われてきたように映画の一部構成するのである。
【0038】
このことは、苦労して集積したあらゆる選択肢を必然的に捨ててしまうことになることは理解されよう。同様にシーン毎に数多く編集ソリューションが存在するのにもかかわらず、単一のバージョンを提案しなければならないのである。
【0039】
本発明による方法にしたがえば、フィルムの同じイベントは、すなわち、視聴中に視聴者に提示されることが意図されたフィルムの一部分は、イベント毎に利用可能な編集、主題、シナリオ、演技の種々異なる可能性を探ることによって得られる複数の選択的なイベントに対応する。
【0040】
制限的でない実施例として、上述のケースに戻り、主役が教会に向かって進んでいる、フィルムのイベントを考察する。
【0041】
第1のイベントにおいて主役は、旅の途中で登場人物Aと出会う。ここでこのシーンは上記のように、撮影されてオーディオ/ビジュアル手段として利用可能になっている。第2のイベントでは、第1のイベントとは択一的に、主役は、Aとは異なる登場人物Bに偶然出会う。この第2の択一的なイベントも同様に記録されて、記録媒体上にファイルとして格納される。
【0042】
同様に主役が教会に到達すると、第1のイベントでは主役は誰にも会わないが、第1のイベントとは択一的な第2のイベントにおいて、主役は、集団がいる中で教会に入って行く。
【0043】
図1を参照すると、ここには、本発明が対象とする方法にしたがって再現される1つのフィルムの連続する2つのイベントのシーケンスが示されている。
【0044】
特に1つのイベントnと、これに続くイベントn+1とが略示されている。第1のイベントnは、対応する択一的なイベントnAおよびnBに相当するのに対し、イベントn+1は、対応する択一的なイベントn+1Aおよびn+1Bに相当する。
【0045】
制限的でないケースとして、第1のイベントnが、教会に向かって進む主役に対応するのに対し、第2のイベントn+1が、教会に到着した後の主役に関連付けられている上述の例を参照する。択一的なイベントnAにおいて、主役は登場人物Aに出会うのに対して、択一的なイベントnBでは、主役は登場人物Bに出会う。後続のイベントn+1を参照すると、択一的なイベントn+1Aにおいて主役は、教会に誰もいないことを見出すのに対して、択一的なイベントn+1Bでは教会において一団が祝福されている。
【0046】
本発明の有利な実施形態によれば、このフィルムの再現には、オーディオ/ビジュアル手段上で第1のイベントnを、すなわち上で例では、主役が教会に進むシーンを再現する第1のステップが含まれている。イベントnは、択一的なイベントnA(対象Aに会う)およびnB(対象Bに会う)の中から自動的に選択される。
【0047】
この再現方法には、第2のイベントn+1を、すなわち上記の例では主役が教会に入るシーンに関連するイベントを再現する第2のステップが含まれている。上記と同様にイベントn+1は、択一的なイベントn+1A(教会に誰もいない)およびn+1B(一団が祝福されている)から自動的に選択される。
【0048】
したがって一般的に本発明による方法が対象とするものにより、2つのイベントnおよびn+1を有するフィルムの再現において、異なる4つの組み合わせが可能になるのである。図1に示した矢印を参照とすると、オーディオ/ビジュアル手段において2つのイベントnおよびn+1を順次に再現することにより、結果としてつぎのような再現を得ることできる。すなわち、
1. イベントnA − イベントn+1A(主役が登場人物Aに会い、誰もいない教会に到着する)、
2. イベントnB − イベントn+1A(主役が登場人物Bに会い、誰もいない教会に到着する)、
3. イベントnA − イベントn+1B(主役が登場人物Aに会い、集団が祝福されている間に教会に到着する)、
4. イベントnB − イベントn+1B(主役が登場人物Bに会い、集団が祝福されている間に教会に到着する)、
を得ることができる。
【0049】
フィルムの再現中、nAおよびn+1Bのようなイベントの選択は、連続するイベントnとn+1との間で論理的な整合性が維持されるように行われる。言い換えると、以下でより詳しく説明するように、最初に定められていたこのフィルムの特定のプロットが、再現に対して行われる上記の自動選択に影響を及ぼし得るのである。好適には、対応する複数の択一的なイベントの選択は、選択を行うために実装されているアルゴリズムのタイプにしたがってランダムまたは擬似ランダムに行うことができる。このようなアルゴリズムを開発して実装するために必要な知識は、当業者が手近にあるものであるため、本発明の明細書では詳細に説明しない。
【0050】
ここで図2を参照すると、イベントn0,n,n+1およびn+2を含む、複数の再現に使用可能なオーディオ/ビジュアルファイルとしてのイベント1の構造が略示されている。イベント1の構造は実質的に木構造に相当し、ここでは各イベントはこの構造の1つのノードに対応する。この木構造1は、わかりやすくするために図示しないが、より大きな構造の部分と考えることもできる。したがってイベントn0それ自体は、(図示しない)対応する複数の択一的なイベントから選択され得る可能な一イベントとすることができる。
【0051】
この図の例を特に参照とすると、連続する2つのイベント間の論理的な整合性が維持されるようにこれらのイベントを選択するため、イベントnAの選択は、後続のイベントn+1Cの選択とは両立しないことがあり得る。例えば、イベントnAは、登場人物Cの死に関連し得るのに対し、(nAとは異なる前のイベントnBから発生する)イベントn+1Cにおいてこの登場人物がまだ生きている可能性があるのである。
【0052】
この図に示したようにイベントnAを選択することにより、結果的にイベントn+1C〜n+1Fの選択が除外されることになる。複数のイベントと、これらの対応するイベントとが相互にどのように配置されるかに依存して、上記の木構造が異なる形状を有することは明らかであり、図2は単に、制限的ではない実施例を表しているだけである。
【0053】
フィルムの考えられ得る展開は、すなわち、連続して再現されるイベントの考えられる組み合わせは、利用可能なイベントの量について非線形的な傾向で増大することは理解されよう。最低限同じ物語の進行に沿って複数回この映画が再現される場合であっても、上記のランダムまたは擬似ランダムな選択により、この物語の進行に沿った各イベントの異なるバージョンが再現されることが保証される。
【0054】
利用可能なイベントの量は、このフィルムの制作中に利用可能になった「映画素材」の量、および/または、編集フェーズにおいて後で処理された「映画素材」の量に実質的に等しいことは明らかである。
【0055】
このため、本発明による再現方法にしたがってフィルムを制作するのに必要な作業は、公知の方法にしたがってフィルムを製作するのに必要な作業よりも大きい。(1つの筋ではなく異なる複数の筋を辿ることができるようにするため、種々異なるシーンを考え出さればならない、シーン毎により多くの択一的なイベントを考え出さなければならない、対話を含むイベント毎に、同じ対話および/または思考/ナレーションの異なる変化形態を準備しなければならない、各シーンの撮影中、最大量の素材を収集できるように異なる複数のバージョンを記録すべきであり、これによってこれらの素材は後で、ポストプロダクションにおいて異なる複数の編集ソリューションによってさらに増大される)。しかしながら得られるこのフィルムの考えられ得る変化形態は極めて多い(言い換えると、このフィルムは、実質的に視聴毎に異なる展開を有する)。このことは、図2に示した木構造1の分析から明らかである。視聴者の体験を改善するため、上記のイベントの選択は、少なくとも部分的に、あらかじめ定めた判定基準に基づいて行うことができる。
【0056】
このフィルムの単一の「視聴」に対して意図されるのは、ストリング全体が、上で示したように連続して選択される複数のイベントからなる集合として定められることであり、ここでは再現される最初のイベントがこのフィルムの冒頭シーンに対応するのに対して、最後のイベントがこのフィルムの最後のシーンに対応する。
【0057】
有利には、択一的な各イベントの選択(言い換えると、他のイベントではなくイベントn+1Eが選択されること)は、メモリバッファのような適当な担体に格納され、これによって、選択したイベントの履歴アーカイブがフィルムの後続の視聴中に作成される。あらかじめ設定される上記の判定基準は有利には、前に行ったこのような選択の履歴に関連付けることができる。
【0058】
本発明の有利な実施形態によれば、上記のマルチフィルムを構成するイベントには、第1のタイプのイベントと、第2のタイプのイベントとが含まれている。本発明による方法により、第1のタイプのイベントと第2のタイプのイベントとの間に種々の相関が得られ、これらの相関は、以下で説明するように構成される。
【0059】
上記のマルチフィルムに関連するイベントのストリングの生成中、nSで示される第2のタイプのイベントにはアクセスすることはできない。したがってその選択は禁止される。この条件は、ストリングA1の生成中まで、またこのフィルムの対応する視聴に関連して有効である。この選択には、nPで示される第1のタイプの少なくとも1つのイベントが含まれる。第1のタイプのイベントnPは、第2のタイプの少なくとも1つのイベントnSに相関付けられるため、ストリングA1におけるイベントnPへのアクセスにより、またしたがってその視聴により、ストリングA1の後に生成されるイベントのストリングA2の生成中に(したがってこのフィルムの異なる視聴中に関連して)イベントnSの選択が可能になる。
【0060】
第1のタイプのイベントnPの視聴は、後続のストリングの生成において、これに相関付けられる第2のタイプの1つまたは複数のイベントnSの選択を許可することができる。付加的または選択的には、第2のタイプのイベントnSの選択の許可は、第1のタイプの複数のイベントnPの複数の選択した後にのみ(それが異なる別の複数のストリングにおける選択であったとしても)行われるようにすることができる。
【0061】
例えば、図2Aを参照すると、第2のタイプのイベントnS1が、これに相関する第1のタイプのイベントnP1およびnP2の視聴(したがって選択)の後、はじめてアクセス可能になる場合、このような選択は、後続のストリングにおいても同様に行われ得る。例えば、イベントnP1は、ストリングS1において選択されるのに対し、イベントnP2は、S2の生成中に選択される。したがってイベントnS1は、S2に続くストリングS3の生成において選択される。図2Aおよび後続の図3〜6において、実線のついた矢印は、選択可能な「許可された」イベントを、また破線のついた矢印は、まだブロックされている、すなわち「許可されていない」イベントを表するのに対し、一点鎖線のついた矢印は、対応するストリングの生成中に選択されたイベントを表す。
【0062】
一般的に上で説明した相関性は、第2のタイプの1つまたは複数のイベントnSと、第1のタイプの1つまたは複数のイベントnPとの間に存在する。
【0063】
制限的なものではないケースとして、図2に示した例を引き続き参照すると、この図においてnS,n+1Sで示した第2のタイプの1つまたは複数の個別のイベントの選択は、あらかじめ定めた1つまたは複数の条件が発生したはじめて行われる。これらのような条件には、前の視聴のストリングの生成中に、(この図において例としてnPおよびn+1Pで示される)第1のタイプのあらかじめ定めた、個別のいくつかのイベントの選択が行われたことが含まれ得る。したがって結果的には、あらかじめ定めたいくつかのコンテンツが前の視聴においてユーザにすでに見せられた場合にだけ、このフィルムの展開のうちのいくつかが発生するのである。
【0064】
有利にはさらに、第2のタイプの複数のイベントnSは、これに相関付けされる1つまたは複数のイベントnPによってブロック解除されてはじめて、それ自体が、マルチフィルムの構造内で第1のタイプのイベントnPとして識別され、そのアクセスは、つぎにこれに相関付けされる第2のタイプのイベントnSをブロック解除する。第2のタイプの所定のイベントnSのアクセスの、より多くのレベルが存在することにより、有利にも、極めて複雑な物語のパスを展開することができ、このフィルムの1つのバージョンに関連付けられるそれぞれイベントの複数のストリングを視聴する間に、視聴者を大いに満足させるものを同時に提供することができる。
【0065】
このコンセプトは、後続の図3および図4を参照すれば、さらにわかりやすく説明される。特に、このフィルムの最初の視聴A1の間、上で詳細に説明したようにオーディオ/ビジュアル手段上で選択されかつ再現される個別のイベントは、メモリバッファに格納される。特に図3において略示した最初の視聴A1中のイベントのシーケンスには、第1のタイプのイベントnP,n+1Pの選択が含まれている。これらの第1のタイプの個別のイベントnP,n+1Pの選択に関連する情報が格納され、このフィルムの後続の複数回の視聴においてイベントの新しいシーケンスの生成を操作するために使用される。フィルムの視聴A1に関連するストリングの生成中、イベントnSおよびn+1Sの選択はできない(このため、対応する矢印は破線で示されている)。
【0066】
図4には、このフィルムの視聴A1に続く視聴A2が示されている。ここでは第2のタイプのイベントnSおよびn+1Sが選択されて再現される。それは、前の視聴A1において第1のタイプの個別の「ブロック解除」イベントnP,n+1Pが選択されており、前の視聴におけるその選択に関連する情報が、このフィルムの後続の再現に(すなわち、後続の再現A2)使用される。
【0067】
したがって極めて一般的には、単一の視聴に関連するイベントのストリングの生成中の第1のタイプの1つまたは複数の個別イベントの選択は、これに相関付けられた第2のタイプの1つまたは複数のあらかじめ定められたイベントの選択を、後続の視聴に関連するイベントのストリングの生成中にアクセス可能にする。
【0068】
後続の視聴中に別のイベントの「選択をトリガする」、このフィルムの視聴において個別に選択可能なイベントが存在する。これらの別のイベントは、このトリガが行われなければ、視聴者にはアクセスできないままになる。これにより、このフィルムの単一の視聴においてだけでなく、連続する複数回の視聴間においても物語の一貫性を形成することができ、これによってプロットは、ランダムであると同時に合理性を有するため、このプロットは、一貫性のある物語のパスがまったく存在しないように変化するのではなく、連続する複数回の視聴間で「展開」することができる。
【0069】
連続作品はことごとく複数の話の間、すべての話の間で極めて類似している物語の構造を提示するにもかかわらず、その登場人物の発展を利用する。「ブロック」および「ロック解除」された複数のイベントのこのメカニズムにより、上記のマルチフィルム(従来技術とは異なり)、実質的にランダムのままである物語のパスのコンテキストにおいても、連続する視聴の間で登場人物および状況が発展する物語を提案することもできる。
【0070】
これによって物語体験が大いに改善される。これは、本発明によるマルチフィルムが、通常の連続作品の利点を維持しながら、ストーリーをランダムに語ることができることによって行われ、ここでは1つの視聴と別の視聴との間でそのコンテンツを並び替えることができ、これによって視聴者に、フィルムの登場人物または一般的な状況に関連して、答えの出されていない問いを残したままにするイベントを見せる。これらの問いは、それを視聴した後でなれば、説明のためのイベントを有するストリングが生成されない。例えば、まず登場人物の弱さが見せられ、後にはじめてその強さが見せられるのであり、または、まずその敗北が見せられ、後になってはじめてその勝利が見せられるのである。
【0071】
有利にはこのような構造により、(「すべて」が終了し、「すべて」が説明されるイベントである)「グラントフィナーレ」に対応する1つのイベントを提供することができる。このグランドフィナーレは、このマルチフィルムの後続の複数回の視聴に関連する物語のパスの「終了」をマークする(このマークを越えた場合、このマルチフィルムは、すでに少なくとも一回視聴者が楽しんだと称されている同じ複数のクリップの新たな組み合わせを提供することによってなお視聴可能である。これはつぎのような場合を除いて行われる。すなわち、再び最初の視聴からグラントフィナーレに至る複数の視聴の第2の「サイクル」に対し、その重要な部分の成果物が保持されることが望まれ、またこのようにこの興味が複数の視聴の複数のサイクル中に保持されるようにする場合を除いて行われる)。
【0072】
この構成はさらに、この構成により、付加的な制作コストになしにオーディオビジュアルエンターテインメントの大量の「特別編」を製作することが可能になるという利点を有する(ただし、同じ複数のシーンのより多くの編集作業に関連するコストを除く。しかしながら一般的には、得られる結果に比べれば小さい)。実現される各オーディオビジュアルイベントから、同じイベントの異なる複数の部分の形態で、いくつかのイベントを制作することができ、それらを合成したものは、オリジナルよりもかなり長く、ユーザに提供され、このユーザは、すでに見たコンテンツを視聴するが、つねになんらかの新しいもの加わって視聴するのである。
【0073】
例えば、5分間続く1つのイベントから、最初の1分間を有する1つのイベント(a)と、最初の2分間を有する1つのイベント(b)、最初の3分間を有する1つのイベント(c)と、最初の4分間を有する1つのイベント(d)と、元々利用可能であった全部で5分間を有する最後の1つのイベント(e)とを作成することができる。したがって5分間続く1つのイベントにより、全部で15分間のエンターテインメントを得ることができる(変化形態b,c,dおよびe内で、すでに見た複数の部分を変更するおよび/または高速にする編集ソリューションを使用することも考えられる)。
【0074】
このような増殖化は、視聴者がこれらの部分を正確にa,b,c,d,eの順序で見る場合にのみ可能であり、実際に、これがランダムに調節された場合、視聴者は直ちに全体シーンを見てしまうことがあり、つぎにそのすべての部分を視聴することは意味を成さない。なぜならばこれらのコンテンツはすでにすべてが明かされているからである。このために必要であるのは、このマルチフィルムを最初に視聴する際には、各部分の「a」バージョンだけがアクセス可能であり、すなわち再現可能であり、それらの各々は、選択された場合、後続の視聴においてそのバージョン「b」をブロック解除し、バージョン「b」はバージョン「c」をブロック解除する等であり、これはすべてのイベントが見せられるまで続く。
【0075】
1つのマルチフィルムのほぼすべてのシーンにこのメカニズムを使用することにより、コンテンツ最適化についての利点が極めて有利に得られる。通常のTVシリーズでは、すでに使用したものによってエンターテインメントを制作する試みにおいて、フラッシュバックに頼ることが多い。上記のマルチフィルムは、その代わりに、場合によっては任意のイベントの始めからの「分解」を利用する。この任意のイベントは、いくつかの部分に利用可能であり(その合計は長さがオリジナルを上回り)、また、後続の視聴中に所定の順序で視聴者にこれらの部分を提示し、物語体験の合計持続時間が大きく増大することを保証し(またこれによってこれに関連した考えられ得る経済的利益の増大を保証し(連続作品の「持続時間」または話数が大きくなれば、それによって保証される収入も大きくなる))、その一方で、異なる複数回の視聴の過程において、すでに体験したコンテンツの視聴者への復帰と、前に一度も体験されていないコンテンツと間で正しいバランスがなお保たれる。
【0076】
連続して(しかも発展的な方法で)押し戻すため、後続の複数回の視聴における上記の物語コンテンツの完全な鑑賞の楽しみが必要であり、これがなければ、物語コンテンツは視聴者によって完全に鑑賞されて楽しまれることがない。このことは、視聴者が複数回の視聴を行うための別の誘因である。これらのコンテンツが、以前の視聴からすべて得られる場合、視聴者の興味は急速に失われる。
【0077】
本発明によれば、マルチフィルムは、後続の視聴において物語上の発展を制作することができ、これは、後続の視聴が無束縛になってしまうことを回避しながら、もっぱら利用可能なイベントランダムまたは擬似ランダムな選択および再現に依存して行われる。
【0078】
上で説明した本発明の特徴によって有利にも、フィルムの再現毎に複数の利用可能なプロットを適切に脚色して、このフィルムそれ自体が、またその複数のコンテンツが視聴毎に徐々に発展するようにすることが可能である。さらに、フィルムを複数回の視聴中に視聴者の体験をさらに拡大するため、また、後続の複数回の視聴の間に前に選択したイベントが選択されて何回も再現される(これによって体験が満足できないものになる)ことを回避するため、選択の確率のインデックスiを、再現に対して選択可能な各イベントに関連付けることができ、このインデックスiは、有利には、フィルムの後続の複数回の視聴の間に、イベントが選択される回数が増大するのに伴って、対応する同じイベントが選択される確率が低減するように構成される。
【0079】
したがって、第1のストリングA1を生成中の1つのイベントの選択の確率は、このイベントが選択されると、イベントの後続のストリングA2の生成中には低減され得るのである。
【0080】
有利にはこれにより、ブロック解除するイベント(または第1のタイプの)を複数回視聴して、これに相関付けされた第2のタイプのイベントが一度も視聴されないリスクが回避され、さらに、一般的に常時同じイベントが見せられて別のイベントへのアクセスが行わないというリスクがあるが、そのようにならないようにするため、すでに選択されたイベントは、後続のストリングの生成中には確率が低くなり、したがってまだ見ていないイベントの選択が優先されるようにする。
【0081】
上記のマルチフィルムによって提案される物語上の発展によれば、イベントは、初期の確率のインデックスを有することができ、これは、特定のイベントに依存して変化し得る。またこのようなインデックスの変化は、後続のストリングの生成における1つまたは複数の選択後、特定のイベントに依存して変化し得るのである。例えば、あるイベントは、フィルムの後続の複数回の視聴の間に一定のままになり得る確率インデックスを有し得る(これらがこのフィルムの特に重要なコンテンツに対応する場合)。
【0082】
各イベントの確率のインデックスを調整するため、後続のストリングを生成中に行われるすべての選択がメモリバッファに格納され、このバッファは、各イベントの確率のインデックスを制御するため、後続のストリングの生成に使用される。
【0083】
本発明の方法が対象とするものは、実際の役者によるフィルムと、アニメーションフィルムとの両方の再現に使用可能である。マルチフィルムを構成する複数のイベントを実現するフェーズは、本発明の範囲外にあることが理解されよう。これは、上記のように実際の役者およびカメラによって撮影した映画のシーンの場合、および、現在のアニメーションフィルムを処理する今日の技術によって制作されたイベントまたは完全にコンピュータグラフィックで制作されたイベントの場合の両方において当てはまる。
【0084】
実際の役者によって撮影した映画シーンに関連し、その択一的なイベントを制作するための種々異なる方法がある。いくつかの種類を以下に挙げる。
【0085】
1. 主題の複数の変形形態。同じシーンは、実質的に互いに異なる択一的なイベントによって特徴付けられる。上で説明した例を挙げると、主役が公園を歩き回るのを描写するシーンは、登場人物Aまたは登場人物Bとの出会いによって特徴付けることができる。
【0086】
2. 台本の複数の変形形態。択一的なイベントは、同じ物語コンテンツを有するが、コンテンツを表現する形態が異なる。例えば、2人の役者間の同じ対話は、対話の内容を変えるかまたは異なる表現で同じ内容を提示することにより、種々異なる複数の形態で提示することができる。
【0087】
3. 演じ方の複数の変形形態。同じシーンまたは対話は、役者によってさまざまに演じられる。これらの解釈のそれぞれは、監督によって有効であると考えられる限り、択一的なイベントとして使用可能である。このために推奨されるのは、シーンを一度適切に準備した場合、同じものの異なる複数のバージョンを収集するのにより多くの時間を費やすことである。なぜならば、これらのうちの1つを選択して他のすべてを廃棄する必要はなく、有効であると思われる異なる変化形態のすべてが択一的なイベントとして使用され、誤りおよび解釈がうまくいかないものだけが使用されないようにするからである。
【0088】
4. 編集の複数の変化形態。同じシーンは、異なるカメラアングルによるショットのような、異なる仕方のショットである。同じ素材の異なるそれぞれの編集ソリューションは、対応する択一的なイベントに相当する。このため、制作時間を短縮し、またより多くの編集ソリューションを得るために同時に動作する複数のカメラでフィルムを撮影するとよい。
【0089】
伝統的な方法にしたがったオーディオ・ビジュアル素材の制作において、コストを増大させるのに一般的に最も大きく影響する複数の要因のうちの2つは、(1つのセットから別のセットへの)クルーの搬送およびシーンの準備である。
【0090】
同じシーンの複数のバージョンの制作は、このシーンを一度適切に準備してしまえば、複数の異なるシーンの準備に関連するコストに比べると、極めて小さなコストしか必要としない。同様に、異なる複数の対話の立案、および、同じシーンの複数の編集ソリューションの処理は、オーディオビジュアル制作に大きな影響を及ぼし得るコストを生じさせることはない。
【0091】
本発明の別の課題は、上記の再現方法を実行するように構成された装置と、プロセッサ上で実行された場合に上記の方法を実現する命令を有するコンピュータプログラムとを提供することである。特にこのプログラムは、任意の言語で書き表すことの可能な複数の命令を有し、これらの命令は、例えば、考えられ得る選択可能なイベントのパス(またはストリング)を木構造内で識別し、これにより、対応するパスにしたがってフィルムの後続のそれぞれの再現を可能にするためのものある。
【0092】
この場合、このフィルムの再現に対して特定のパスを決定すると、このコンピュータプログラムにより、このパスを構成する、選択された複数のイベントが、オーディオ/ビジュアル手段上で確実に表示されるようになる。これらの命令(またはコード)を書き、また実装するために必要なスキルは、当業者がなし得るものであるため、これについてはさらに説明しない。
【0093】
本発明の別の課題は、図2において例示的に示したイベントの木構造が格納される(「DVD」または「ブルーレイ」のような)記憶媒体を提供することである。このような記憶媒体にはまた、好適にはフィルムを再現するためのプログラムも含めることができる。このように作製されるストレージは、通常のディスクとして配備して、必要なハードウェアを備えた適当の手段によって読み出すことができ、ここでこのハードウェアは、上記のように、視聴毎にフィルムの異なる展開を可能にする必要な再現プログラムを読み出して実装するためのものである。
【0094】
このようなハードウェア構成を実現するための技術的知識も当業者の知識内にあると考えられるため、その詳しい説明はしない。
【0095】
単一の視聴またストリング全体に対して論理的な整合性を維持するため、上記の木の各個別ノードまたはイベントが、許可された後続の複数の(「子」と称される)ノードのリストと、上記のイベントの子に続きかつ許可されておらず、したがってストリング全体に対して選択可能でない(「不所望の孫」と称される)ノードのリストとを有する必要があることを強調することも重要である。ここで上記の許可された後続のノードは、個別ノードの直後に視聴可能な複数のイベントである。
【0096】
例えば、図5を参照とすると、ノードまたはイベントnCは、「子」として、イベントn+1E,n+1Fおよびn+1Pを、また「不所望の孫」としてイベントn+2F,n+2Gを有する。
【0097】
この例において、イベントnCは、登場人物Xと登場人物Yとの間の対話から構成されており、ここでは登場人物Xは、情報C(イベントnA,nB,nSおよびnPに含まれている情報A,B,SおよびPとは選択的に)を登場人物Yに与える。nCの「子」のイベント(n+1E,n+1Fおよびn+1P)は、登場人物Yが、登場人物Zを探すシーンからなり、このシーンの間に別の複数のシチュエーションが発生し得る。
【0098】
後続のイベント(n+1E,n+1Fおよびn+1Pの子であるn+2E,n+2F,n+2G,n+2H)は、登場人物Yと登場人物Zとの間の出会いおよび対話からなり、ここでは、この視聴の始めにおいてYがXとした対話への参照が行われる。しかしながら物語の整合性を維持するため、登場人物Yは、Zの前にいる間、(イベントnA,nB,nS,nCおよびnPにおいて)Xから得られ得る情報の考えられ得る部分のうちの一部(A,B,S,CおよびP)をランダムに参照せずに、イベントnC中に視聴者によって集められる情報の部分(C)だけを参照する。したがってnCから出発すると、情報の複数の部分A,B,SおよびPが続いて参照されるイベント(この場合はn+2Fおよびn+2G)は、同じ視聴の一部としてアクセス可能にならないのである。
【0099】
最後に図6を参照すると、n+1Eからn+2Fに至る父−息子の接続は、無用ではないことに注意されたい。それは、視聴者が前のノードにおいてncの代わりにnSを収集した場合、これは完全にアクティブだからである。なぜならばn+2EはnSの「不所望の孫」であるが、n+2Fはそうではないからである。所定のイベントまたは択一的なノードは、「子」および「不所望の孫」の同じリストを共有し得ることは了解されよう。
【0100】
最後に本発明の方法を実現する上記のコンピュータプログラムは、いくつかの選択肢の間でイベントのシーケンスを作成してこれらを接続し、結果的に中断のない完全な映画として視聴者に提供する。しかしながら2つのイベント間では不快な音のアタックを有するという問題が発生し得る。一般的には通常のフィルムを編集した後、1つのイベントと別のイベントとの間にオーディオフェードアウトを適用して、不快なオーディオの移行を回避する。
【0101】
しかしながら、マルチフィルムにおいて複数回の視聴それ自体は、種々異なる仕方で組み立てられる。この場合には、視聴を行う前に、イベント間の各アタックに対してオーディオフェードアウトを適用する機能が必要である。これらのイベントは好適には正常な効果を形成する有効なオーディオの「末尾」によって残される。これは、この技術分野の通常の知識を有する技術者(音響技術者)によって保証することができる。
【0102】
有利な実施形態によるマルチフィルムの別の特徴を以下に列挙する。
【0103】
1) 各視聴は、見た直後に表示することができる。戻り、休止および任意のオーディオビジュアルに提供される通常の制御が可能である。好みのインデックス、タイトルおよび/またはコメントに関連して、マルチフィルムの現在の視聴も保存することができる。各視聴の終了時、後続の視聴を生成することができる。
【0104】
2) 1つまたは複数のマルチフィルムに対し、ユーザ体験に関連するウェッブベースのプラットホームを形成することができる。ここでは、別のユーザからのメッセージ、フォーラム/チャットサイト上に書き込まれたポストへの応答、マルチフィルムの進行度(すなわち全体に対していくつのイベントが視聴されたか)、保存したデータ、コメントのようなすべてのアクティビティのリポートおよびユーザのデータを有するプロフィールページが設けられており、ユーザの好み設定にしたがってすべてを掲載することができる。有利には、すべてのウェッブプラットホームのサービス利用者に共有されるページが設けられおり、各サービス利用者は、データ、マルチフィルムの進行、視聴の回数、保存、コメントなどを掲載するチャンスを有するまたはこれを掲載しないことも可能である。
【0105】
3) マルチフィルムを数回しか視聴していないユーザが、多く視聴を行っている別のユーザの保存データにアクセスした場合、前者のユーザは、このユーザが後で視聴しなければならないイベントにアクセスしてしまうリスクがあり、これは不都合である。これを克服するため、進行の度合いが低いユーザが、進行の度合いが高い別のユーザの保存データにアクセスできないように上記のソフトウェアが構成される。
【0106】
この点について、コンテンツの許可されるプレビューを制限するリミットを定めるために「許容度」のレベルを設けることができる。例えば、(当然のことながらいくつかの異なるバージョンの形で存在し得る)「グランドフィナーレ」の掲載された保存データは、「グランドフィナーレ」にまだ到達していないユーザは見ることができない。
【0107】
好適な実施形態を参照して本発明をここまで説明してきた。同じ発明のコンセプトに到達する別の複数の実施形態もあり、これはすべての添付の特許請求の範囲の保護範囲内にあることは了解されよう。
図1
図2
図2A
図3
図4
図5
図6