(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記変更手段は、上記第1光源から出射された照明光が形成する第1投光範囲が、上記第2光源から出力された照明光が形成する第2投光範囲の周辺部または第2投光範囲以外に形成されるように、上記照射領域を変更することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の照明装置。
上記変更手段は、上記第1光源から出射された照明光が形成する第1投光範囲が、上記第2光源から出力された照明光が形成する第2投光範囲の一部に形成されるように、上記照射領域を変更することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の照明装置。
上記変更手段は、右側通行国で規定された照明光の配光パターン、および、左側通行国で規定された照明光の配光パターンのいずれかを満たすように、上記発光部に対する上記照射領域を変更することを特徴とする請求項11から16のいずれか1項に記載の車両用前照灯。
【発明を実施するための形態】
【0060】
本実施形態に係る照明装置の一実施形態について、
図1〜
図23に基づいて説明すれば、以下のとおりである。本実施形態では、本発明に係る照明装置を、自動車のヘッドランプに適用した場合を例に挙げて説明する。ただし、本発明に係る照明装置は、自動車以外の車両用前照灯、或いは、その他の照明装置に適用することも可能である。
【0061】
〔ヘッドランプ100の概略構造〕
まず、本実施形態に係るヘッドランプ100(照明装置、車両用前照灯)の概略的な構造の一例について、
図2を参照して説明する。
図2は、本実施形態に係るヘッドランプ100の概略構成の一例を示す平面図である。
【0062】
図2に示すように、ヘッドランプ100は、レーザ光源ユニット1(第1光源)、LED2(第2光源、発光ダイオード)、放熱ベース3、フィン4、反射ミラー12a(光制御部)、リフレクタ14(投光部)、波長カットコート15および凸レンズ16を備えている。
【0063】
ヘッドランプ100は、レーザ光源ユニット1およびLED2から出射された光を照明光として利用できるとともに、当該照明光の配光特性、および光強度分布を制御することができる。なお、一般に、レーザ光源ユニット1とLED2とを、同一の消費電力状況で比較すると、レーザ光源ユニット1は高輝度・低光束の照明光を出射する一方、LED2は低輝度・高光束の照明光を出射する。
【0064】
このヘッドランプ100は、搭載される自動車の前側両端部に、それぞれ1つずつ配置されるが、説明の便宜上、以下では、1つのヘッドランプ100によって照明する場合について説明する。
【0065】
<レーザ光源ユニット1>
図2に示すように、レーザ光源ユニット1は、レーザ素子11(レーザ光源)と、レーザ素子11から出射されたレーザ光を受けて発光する発光部13と、を備えている。
【0066】
(レーザ素子11)
レーザ素子11は、励起光を出射する励起光源として機能する発光素子である。レーザ素子11は、1チップに1つの発光点を有するものであってもよく、1チップに複数の発光点を有するものであってもよい。
【0067】
励起光としてレーザ光を用いることにより、後述する発光部13に含まれる蛍光体を効率的に励起して、従来の光源よりも輝度の高い光を発光することができ、さらに、発光部13自体のサイズを小径化することができる。本実施形態では、1つのレーザ素子11から出射されたレーザ光が、反射ミラー12aを介して発光部13に形成する照射領域(励起光のスポットサイズ)は、直径20μmから1000μmである。
【0068】
図2に示すレーザ光源ユニット1には、レーザ素子11が複数設けられており、複数のレーザ素子11のそれぞれから励起光としてのレーザ光が発振される。レーザ素子11は高輝度光源であるため、効率よく、発光部13の受光面に形成される照射領域を絞ることが可能となり、その結果、配光角の狭い投光が可能となる。
【0069】
本実施形態では、レーザ素子11の個数は24個である。すなわち、レーザ素子11のそれぞれから出射されたレーザ光は、発光部13のレーザ光を受ける表面である受光面に24個の照射領域を形成する。また、その24個の照射領域が受光面に均等に(マトリクス状に)形成される(例えば、受光面の縦方向に6個、横方向に4個)ように、フィン4の上に配置されている。これにより、複数のレーザ素子11から出射されたレーザ光により、発光部13の蛍光体をマトリクス状に励起することが可能となる。なお、レーザ素子11の個数は、上記に限定されず、発光部13の受光面全体へのレーザ光の照射を実現できる構成であればよい。
【0070】
レーザ素子11のレーザ光の波長は、例えば、395nm(青紫色)または450nm(青色)であるが、これらに限定されず、発光部13に含める蛍光体の種類に応じて適宜選択されればよい。
【0071】
また、レーザ素子11は、直径5.6mmの金属パッケージに実装され、出力2Wで、波長395nm(青紫色、380〜415nm)のレーザ光を発振する。なお、レーザ素子11には配線が接続されており、配線を介して、電力などがレーザ素子11に供給される。
【0072】
なお、波長は395nmに限定されるものではなく、発光部13に使用している蛍光体に応じて適宜、選択すればよい。
【0073】
(発光部13)
発光部13は、レーザ素子11から発振されたレーザ光を受けて蛍光を発するものである。すなわち、発光部13は、複数のレーザ素子11の少なくとも1つから出射されたレーザ光を受けて発光するものである。
【0074】
また、発光部13は、レーザ光を吸収して蛍光を発する蛍光体(蛍光物質)を含んでいる。
【0075】
例えば、発光部13は、封止材の内部に蛍光体の粒子が分散されているもの(封止型)、蛍光体の粒子を固めたもの、または、熱伝導率の高い材質からなる基板上に蛍光体の粒子を塗布した(堆積させた)もの(薄膜型)、などの蛍光体を含有した発光体である。本実施の形態では、発光部13は、4mm×2mmの矩形で、厚さ0.1mmの薄膜状となるように、蛍光体の粉末を放熱ベース3の傾斜部3aにTiO
2をバインダーとして塗布することで形成されている。
【0076】
この発光部13は、放熱ベース3で、且つ、リフレクタ14が有する2つの焦点のうちの1つの焦点(第1焦点)近傍に配置されている。このため、発光部13から発せられた光は、リフレクタ14の反射曲面によって反射されることで、その光路が制御される。
【0077】
図2に示すように、発光部13は、リフレクタ14よりも小さい(例えば、リフレクタ14の1/10程度)ことが好ましい。この場合、発光部13が発した光を、リフレクタ14の前方に効率よく投光することができる。
【0078】
また、発光部13は、全てのレーザ素子11から出射されたレーザ光により形成される照射領域(レーザ光照射範囲)よりも大きいことが望ましい。
【0079】
(発光部13の傾斜配置)
また、発光部13は、発光部13から発せられた蛍光が、効率的にリフレクタ14で反射して、リフレクタ14から投光することが可能なように、放熱ベース3の傾斜部3a上に傾いて配置されている。傾斜部3aは、レーザ光の入射方向に対して垂直な面を基準として、その入射方向に15°程度傾斜して構成されている。発光部13で発せられた光は、略ランバーシアン配光となる。そのため、傾斜部3aのレーザ光照射面がレーザ光の入射方向に対して垂直となるように傾斜部3aが形成されていると、発光部13で発せられた光の最も光度の高い領域がリフレクタ14の窓部14aとなるため、投光効率が悪くなる。
【0080】
この投光効率を考慮すれば、そのレーザ光照射面が15°程度傾斜していることが望ましいが、当該投光効率を考慮しなければ、傾斜部3aのレーザ光照射面がレーザ光の入射方向に対して垂直となるように傾斜部3aが形成されていてもよい。
【0081】
さらに、リフレクタ14の窓部14aをレーザ光が透過し、発光部13から発せられた光を反射するような構造とした場合には、製造コストは上昇するが、傾斜部3aのレーザ光照射面がレーザ光の入射方向に対して垂直となるように傾斜部3aが形成されていても、投光効率は向上する。
【0082】
(蛍光材料)
本実施の形態では、レーザ素子11によって発振された波長395nmのレーザ光を受けて、白色の蛍光を発するように、発光部13の蛍光体として、BAM(BaMgAl
10O
17:Eu)、BSON(Ba
3Si
6O
12N
2:Eu)、Eu−α(Ca−α−SiAlON:Eu)が用いられている。しかし、上記蛍光体は、これらに限定されるものではなく、自動車用のヘッドランプ100の照明光が、法律により規定されている所定の範囲の色度を有する白色となるように適宜選択されればよい。
【0083】
例えば、他の酸窒化物蛍光体(例えば、JEM(LaAl(SiAl)
6N
9O:Ce)、β-SiAlON等のサイアロン蛍光体)、窒化物蛍光体(例えば、CASN(CaAlSiN
3:Eu)蛍光体、SCASN((Sr,Ca)AlSiN
3:Eu)蛍光体)、Apataite((Ca,Sr)
5(PO
4)
3Cl:Eu)系、または、III−V族化合物半導体ナノ粒子蛍光体(例えば、インジュウムリン:InP)を用いることができる。
【0084】
また、黄色の蛍光体(または緑色および赤色の蛍光体)を発光部13に含め、450nm(青色)のレーザ光(または、440nm以上490nm以下の波長範囲にピーク波長を有する、いわゆる青色近傍のレーザ光)を照射することでも白色光が得られる。
【0085】
(封止型)
発光部13を封止型とした場合の封止材は、例えば、ガラス材(無機ガラス、有機無機ハイブリッドガラス)、シリコーン樹脂などの樹脂材料である。ガラス材として低融点ガラスを用いてもよい。封止材は、透明性の高いものが好ましく、レーザ光が高出力の場合には、耐熱性の高いものが好ましい。ゾルゲル法により、酸化ケイ素や酸化チタン等により封止する構造でもよい。
【0086】
発光部13の上面にレーザ光の反射を防止する反射防止構造が形成されていてもよい。封止型の場合には、発光部13の上面形状の制御が容易であるため、特に反射防止膜を形成することが望ましい。
【0087】
(薄膜型)
発光部13を薄膜型とした場合は、Al、Cu、AlNセラミック、SiCセラミック、酸化アルミ、Siなどを基板として用いる。その基板の上に蛍光体の粒子を塗布あるいは堆積させた後、基板毎に、所望の大きさに分割する。その後、放熱ベース3(発光部支持部)に高熱伝導接着剤により固定する。
【0088】
基板にAlやCuなどを用いた場合には、バリアメタルとしてTiNやTi、TaN、Ta等を、基板の蛍光体の粒子を堆積しない側(放熱ベース3に対向する側)にコートしておくことが望ましい。さらに、バリアメタル上にPtやAuなどをコートしても良い。
【0089】
高熱伝導性接着剤としては、SnAgCu、AuSnなどの共晶半田を用いることが望ましいが、限定はされない。
【0090】
(励起光スポットサイズ)
本実施の形態では、発光部13に形成される照射領域(励起光のスポットサイズ)を、直径100μmから1000μmとしているが、その理由は以下のとおりである。
1)最小サイズ
白色光を発するために、発光部13には複数の蛍光体が使用されるが、蛍光体の粒径サイズは10μm程度であり、また、白色光をむら無く発するために発光部13に3種類の蛍光体が使用された場合、1対1対1の配合だとしても、照射領域の大きさとしては直径20μmを要する。実際には、必要な色温度にあわせて蛍光体のブレンドを変えるため、白色光を発するために必要な照射領域の大きさは直径50μm程度となる。さらに、そのまま使用すると、各蛍光体粒子の分布に応じた色分布が投光範囲によっては発生してしまう。このため、照射領域の大きさが直径100μm以上となるように、レーザ光が照射されることが望ましい。
2)最大サイズ
レーザ素子11の1素子で投光したい投光範囲によって決まる値である。
【0091】
(青色レーザを用いた場合の照射領域の大きさ)
なお、青色近傍のレーザ光を出射するレーザ素子11(青色レーザ素子)を使用する場合には、レーザ光が投光されることになるため、IEC60825−1のクラス1となるように、レーザ光の出力を設定する必要がある。
【0092】
レーザ素子11において青色レーザ光および青紫色レーザ光が混合される場合(レーザ素子11が青色レーザ素子および青紫色レーザ素子からなる場合)には、それぞれのレーザ光の照射領域に応じて、発光部13における各蛍光体の領域を変えることが発光効率の観点から望ましい。例えば、青色レーザ光の照射領域にはYAG系蛍光体を用い、青紫色レーザ光の照射領域には、BAM、BSON、Eu−αを用いる(すなわち、これらの蛍光体を塗り分ける)。
【0093】
その場合、青色レーザ素子1個が出射した青色レーザ光が形成する照射領域の大きさは、青紫色レーザ素子1個が出射した青紫色レーザ光が形成する照射領域の大きさと同じか、または当該青紫色レーザ光が形成する照射領域の大きさよりも広く設定されることが安全性の観点より望ましい。
【0094】
なお、発光効率を考慮しなければ、各蛍光体を塗り分けずに混合し、発光部13の全面に塗布しても良い(例えば、YAG系蛍光体およびBAM、BSON、Eu−αの混合)。
【0095】
(白色光以外の光の出射について)
また、発光部13から出射される光は、白色光に限らず、発光装置において規定される色度を有する光を出射できればよい。
【0096】
なお、レーザ素子11が、赤外カメラ用光源としての赤外発光レーザ素子も含む場合、発光部13は、赤外レーザ光を所望領域に投光するための散乱体としての役目も果たすことになる。
【0097】
<LED2>
LED2は、レーザ光源ユニット1と比較すると低輝度な光源であり、発光面積を増やすことにより光束を増やしている。そのため、LED2から出射される照明光の投光範囲は広い。
【0098】
LED2は、レーザ素子11を用いずに白色を出す光源である。換言すれば、LED2は、レーザ光源ユニット1とは異なる発光原理によって発光する光源である。また、LED2は、白色光を発光することによって、発光部13から出射される蛍光と同様、照明光としての利用を可能としている。
【0099】
また、LED2は、後述の出力制御部66の制御により、ヘッドランプ100に規定された最低照度を満たすように照明光を出射するものである。これにより、レーザ光源ユニット1の非点灯時においても、LED2のみで当該最低照度を確保することができる。
【0100】
(LEDの仕様)
本実施形態では、LED2は、外形5mm角、厚さ3mmの直方体であり、発光領域は、約4mm×1mmである。
【0101】
本実施形態のLED2は、凸レンズ16へのカップリング効率(投光効率)を高めるために、LED2の配光特性において指向性を高めており、指向角(半値)を40°としている。
【0102】
本実施形態のLED2は、
図3に示すように、750μm角の4個のLEDチップ21(青色発光LEDチップ)を熱伝導率の高いマウント部材23(本実施形態では、AlNセラミック)の上にフリップチップボンドし、各LEDチップ21周辺に、LEDチップ21からの発光により励起される蛍光体22を堆積した構成としている。
【0103】
また、蛍光体22としては、YAG蛍光体を用いている。しかし、この構成に限定されるものではなく、LEDチップ21からの発光が、法律により規定されている所定の範囲の色度を有する白色となるように、適宜蛍光体が選択されればよい。
【0104】
LED2は、LEDチップ21、および、LEDチップ21周辺に堆積した蛍光体22からの発光を配光制御するために、リフレクタカップ24の略焦点位置に設置されている。
【0105】
また、マウント部材23の上には、LEDチップ21のそれぞれを駆動させるための電極25が配置されている。
【0106】
なお、本実施形態では、リフレクタカップ24によりLED2から出射された光の配光を制御しているが、モールドレンズ等によって当該配光を制御してもよい。また、凸レンズ16へのカップリング効率を考慮しないのであれば、そのような配光特性を制御しなくてもよい。
【0107】
(配置)
このLED2は、放熱ベース3上であり、且つ、リフレクタ14が有する2つの焦点のうちのもう1つの焦点(第2焦点)近傍に配置されている。また、LED2から出射された光は、リフレクタ14の外部に直接出射されるように、LED2の発光点がリフレクタ14の開口部を向くように、放熱ベース3に配置されている。LED2の配置位置は、当該位置に限らず、(1)LED2から出射された光が効率よく出射され、(2)規定の配光特性を実現でき、(3)発光部13から出射され、リフレクタ14によって反射された光を遮らない位置であればよい。
LED2から出射された光は、リフレクタ14の前方に第2投光範囲a2(例えば
図5参照)を形成する。すなわち、第2投光範囲a2は、LED2から出射された照明光によって形成されるものである。
【0108】
(マトリクスLED)
LED2を構成するそれぞれのLEDチップ21の出力を個々に制御しても良い。その場合には、後述の出力制御部66がLEDチップ21それぞれの出力(出射される光の光量)を制御することにより、LED2全体から出射される光の配光特性を制御することが可能となる。
【0109】
また、LED2を構成する複数のLEDチップ21をマトリクス状に配置してもよい。
【0110】
なお、LED2には配線(図示省略)が接続されており、当該配線を介して、電力などがLED2に供給される。
【0111】
(LED2以外の光源)
また、本実施の形態では、レーザ光源ユニット1および投光光学系(凸レンズ16)を共用し、全体のユニットサイズの小型化を図っているため、レーザ光源ユニット1と異なる発光原理によって発光する第2光源としてLED2が用いられている。
【0112】
一方、ハロゲンランプやHIDランプ(High Discharge Lamp)等といった光源を用いると、バルブを形成する硝子がレーザ光源ユニット1からの発光を妨げるため、所定の投光効率で投光を行うためには当該光源用の投光光学系をレーザ光源ユニット1の投光光学系とは別に用意する必要がある。しかし、この点を考慮しなければ、第2光源は、LED2に限られず、例えば、ハロゲンランプまたはHIDランプなどを用いてもよい。すなわち、レーザ光源ユニット1とは異なる発光原理によって発光する光源であれば、どのような光源を利用してもよい。
【0113】
また、LED2から出射される光は、白色光に限らず、照明装置において規定される色度を有する光を出射できればよい。
【0114】
また、異なる色度(例えばRGB)で発光する複数のLED2により、白色光の照明光を投光する仕様としてもよい。その場合、投光光束の色温度(色度)を変更することが容易となる。
【0115】
<放熱ベース3>
放熱ベース3は、発光部13およびLED2を支持する支持部材である。本実施の形態では、Alを用いているが、Cu、AlN、SiCなど、他の高熱伝導材を用いても良い。放熱ベース3は、発光部13およびLED2の発熱を効率的に放熱することができる。
【0116】
放熱ベース3は、
図2に示すように、発光部13を第1焦点に、LED2を第2焦点に配置することが可能で、かつ、発光部13から発せられた光が効率的にリフレクタ14に照射されるとともに、LED2から出射された光が効率的にリフレクタ14の外部に出射することが可能な形状となっている。
【0117】
また、発光部13から発せられた光がリフレクタ14によって反射された後、放熱ベース3に照射され、リフレクタ14の外部への出射効率が低下しないような形状であることが好ましい。このため、リフレクタ14の開口部側から見たときの放熱ベース3の幅は、発光部13およびLED2が配置可能な最小の大きさ(例えば4mm)であることが好ましい。
【0118】
また、発光部13の受光面から入射したレーザ光が、上記傾斜部3aまで透過してしまうような発光部13が用いられている場合には、発光部13が塗布される傾斜部3aの表面は、反射面として機能することが好ましい。この場合、入射したレーザ光をその反射面で反射させ、再び発光部13の内部に向かわせて蛍光に変換することができる。
【0119】
なお、本実施の形態では、発光部13とLED2とを同じ部材で支持しているが、それぞれを別個の部材で支持してもよい。また、別個の放熱ベースとした場合には、LED2の支持部材の方が発光部13の支持部材よりも大きな部材であることが望ましい。
【0120】
<フィン4>
フィン4は、レーザ素子11を冷却する冷却部(放熱機構)として機能するものであり、例えばアルミニウムからなる。このフィン4は、複数の放熱板を有するものであり、大気との接触面積を増加させることにより放熱効率を高めている。
【0121】
なお、フィン4は、必ずしもレーザ素子11に接している必要は無く、レーザ素子11とフィン4との間をヒートパイプや水冷パイプ、ペルティエ素子等で介してもよい。
【0122】
また、レーザ素子11を冷却する冷却部は、冷却(放熱)機能を有するものであればよく、水冷方式の場合、ラジエター方式のものであってもよい。また、ファン等により、強制冷却する構成であってもよい。
【0123】
<光制御部12>
光制御部12は、レーザ光の進行方向を制御するものであり、発光部13における照射領域の重ね合わせ、スポットサイズ、スポット形状等を制御するものである。
【0124】
光制御部12は、発光部13とレーザ素子11との間に配置されており、レーザ光源ユニット1を構成するレーザ素子11のそれぞれに対応するように配置される複数の反射ミラーまたは複数のレンズによって実現されている。なお、光制御部12は、発光部13における照射領域の重ね合わせ、スポットサイズ、スポット形状等を制御できれば良く、上記反射ミラーまたはレンズのほか、一体成形によるアレイレンズまたはマルチファセットミラーで実現されても良い。また、1つの反射ミラーまたはレンズを複数のレーザ素子11で共有する構造としても良い。
【0125】
<反射ミラー12a>
本実施の形態では、光制御部12として反射ミラー12aを用いている。
【0126】
反射ミラー12aは、複数のレーザ素子11のそれぞれと発光部13との間に配置され、複数のレーザ素子11から出射されたレーザ光のそれぞれの、発光部13への導光を制御するものである。換言すれば、反射ミラー12aは、複数のレーザ素子11から出射されたレーザ光のそれぞれを反射することにより、その導光を制御するものである。
【0127】
具体的には、複数のレーザ素子11のそれぞれから出射されたレーザ光は、各反射ミラー12aによって反射されることで略コリメート光となり、かつ、ビーム幅を縦方向に圧縮した後、リフレクタ14の窓部14aを通って発光部13へ導かれる。
【0128】
これにより、複数のレーザ素子11を、発光部13に対して自由に配置することができる。
【0129】
(構造)
本実施の形態では、反射ミラー12a(立上ミラー)は、レーザ素子11の発光点を略焦点位置とした軸外しパラボラミラーであり、レーザ素子11より出射されたレーザ光をコリメート光とし、且つ、光路を制御している。なお、反射ミラー12aは、レーザ素子11(レーザチップ)の非点隔差を補正し、コリメート光とするような非球面ミラーを用いると更によい。その場合、さらにコリメート性が上がる。
【0130】
また、フィン4には複数のレーザ素子11が設けられているので、そのレーザ素子11の発光点のそれぞれと対向するように、複数の反射ミラー12aのそれぞれが一対一に備えられている。
【0131】
(機能)
上述したように、本実施の形態の反射ミラー12aを構成する立上ミラーは、発散光(レーザ素子11から出射されたレーザ光)をコリメート光としている。また、当該立上ミラーを用いることにより、リフレクタ14の窓部14aを小さくすることができる。
【0132】
具体的に、
図2に示すレーザ素子11から発光部13までのレーザ光の光路を考察する。各レーザ素子11から出射された3本のレーザ光の幅(紙面横方向)は、各レーザ素子11の配置間隔に依存している。しかし、各反射ミラー12aを構成する立上ミラーのそれぞれにおいて反射した後の3本のレーザ光の幅は、圧縮されている(紙面縦方向)。そのため、リフレクタ14の窓部14aを小さくすることができ、発光部13から出射される光を有効に使用することが可能となる。
【0133】
なお、ヘッドランプ100は車両用ヘッドランプ用の光源であるため、例えば
図12(a)に示すように、最終的な投光パターンを横長の配光とする必要がある。そのため、反射ミラー12aは、レーザ素子11から出射された光を、縦方向に圧縮し、発光部13において横長となるように照射している。
【0134】
このように、本実施の形態の反射ミラー12aは、発散光のコリメート化、および、縦方向のビーム圧縮という2つの機能を有している。
【0135】
なお、
図2では、反射ミラー12aを備えた構成を示しているが、これに限らず、コリメートレンズと平面鏡とを用いることによっても、反射ミラー12aを構成する立上ミラーと同様の機能を実現することが可能である。また、レーザ素子11の内部にコリメートレンズあるいはコリメートミラーを設けることにより、レーザ素子11からコリメート光を出射可能な構成の場合は、反射ミラー12aを平面鏡にすることで、反射ミラー12aを構成する立上ミラーと同様の機能を実現することが可能である。
【0136】
また、レーザ光の導光制御において、反射ミラー12aを用いた場合には、コリメートレンズを使用する場合に比べ、コート膜の劣化を低減することができる。そのため、長期の信頼性を担保するという意味でも、反射ミラー12aを用いる事が望ましい。
【0137】
(素材)
反射ミラー12aは、機材であるAlNセラミックに、反射膜であるAlおよび酸化防止膜として酸化アルミをコートしたものであるが、本構成に限定されるものではない。
【0138】
例えば、機材としては、BK7、石英ガラス等のガラス類、ポリカーボネート、アクリル、FRP、SiC、Al
2O
3等、熱膨張係数の小さい素材を用いることが望ましいが、最終的なコリメート精度があまり求められない場合には、Al等の金属を用いても良い。
【0139】
また、反射膜としては、Ag、Ptなどの金属が望ましいが、SiO
2/TiO
2多層膜等の多層膜構造による反射膜でも良い。
【0140】
さらに、酸化防止膜は、酸化ケイ素などを用いても良い。なお、酸化防止膜が必ずしもコートされている必要はない。
【0141】
また、反射ミラー12aの表面には、増反射膜(増反射構造、例えばHRコート膜)が設けられていても良い。この場合、レーザ光の反射ミラー12aによる反射損失(ミラーロス)を低減することができる。
【0142】
<リフレクタ14>
リフレクタ14は、発光部13によって発せられた光を反射し、制御するものである。すなわち、第1投光範囲a1(例えば
図5(a)参照)は、レーザ光源ユニット1から出射された照明光によって形成されるものである。
【0143】
本実施の形態では、レーザ光源ユニット1から出射された照明光はリフレクタ14と凸レンズ16により投光される。
【0144】
リフレクタ14は、反射面の少なくとも一部が楕円形状である楕円ミラーからなり、レーザ光が入射される側に第1焦点を有しており、第1焦点近傍に発光部13が設置されている。また、凸レンズ16の焦点位置がリフレクタ14の第2焦点近傍となるように、凸レンズ16は設置されている。
【0145】
なお、投光効率を上げるために、リフレクタ14の射出瞳と凸レンズの入射瞳とをマッチングさせている。これにより、発光部13からの光を立体角内に効率的に投光させて、第1投光範囲a1を形成することができ、その結果、光の利用効率を高めることができる。
【0146】
発光部13によって発せられた光はリフレクタ14により反射され、リフレクタ14の第2焦点近傍に集光された後、凸レンズ16により略平行光とされ、投光される。
【0147】
(材料)
本実施の形態では、リフレクタ14は、FRPを基材とし、その上に反射膜としてAlコート、さらにその上に、Alの酸化防止を目的とした酸化ケイ素をコートしたものを用いている。
【0148】
ただし、本構成に限定されるものではなく、リフレクタ14は、反射制御が行う機能を有するものであればよい。例えば、基材としてアクリルやポリカーボネートといった他の樹脂やAl等の金属製の部材を用いても良いし、反射膜としてAgやPt等を用いていても良い。また、酸化防止膜としては、酸化アルミ系等を用いても良く、酸化ケイ素および酸化チタンの多層膜とした増反射機能を兼ね備えた膜を用いても良い。
【0149】
また、レーザ素子11は、リフレクタ14の外部にあるフィン4の上に配置されており、リフレクタ14には、レーザ光を透過または通過させる窓部14aが設けられている。この窓部14aは、貫通孔であってもよく、或いは、レーザ光を透過可能な透明部材を含むものであってもよい。例えば、レーザ光を透過し、且つ、白色光(発光部13の蛍光)を反射するフィルターを設けた透明板を窓部14aとして設けてもよい。この構成によれば、発光部13から発せられた光が、窓部14aから漏れることを防止することができる。
【0150】
本実施形態では、樹脂製の楕円ミラーの内面にアルミニウムがコーティングされたリフレクタ14を用いており、開口部の半径が38mm、第1焦点と第2焦点との距離は32.5mmである。
【0151】
このような構成によれば、高輝度、且つ、配光特性に優れたレーザ光源ユニット1を実現することができる。
【0152】
なお、本実施形態では、1つのリフレクタ14内部に、発光部13およびLED2が備えられているが、これに限らず、発光部13およびLED2のそれぞれに対して1つのリフレクタが備えられてもよい。ただし、車両において、ヘッドランプが配置される位置には、ヘッドランプ以外の種々の部材が搭載されるので、ヘッドランプ全体の大きさは少しでも小さいことが好ましい。また、複数のリフレクタの光軸をあわせるための繁雑な作業も要することになる。この点を考慮すれば、リフレクタは1つの方が好ましい。
【0153】
<凸レンズ16>
凸レンズ16は、発光部13またはLED2から出射され、波長カットコート15を透過した光を略平行光にして、その略平行光をヘッドランプ100の前方へ投光するものである。この凸レンズ16は、波長カットコート15またはリフレクタ14に当接されることによって保持されており、その当接面の大きさは、当該波長カットコート15(すなわち、リフレクタ14の開口部)と略同一である。また、凸レンズ16の主点を通り、主平面に直行する線は、リフレクタ14の第1焦点および第2焦点を通る平面と同一の平面状に存在する。
【0154】
(略平行光について)
略平行光とは、完全に平行である必要はなく、投光角(光度が半値となる頂角)が20°以下であればよい。
【0155】
本実施の形態では、レーザ素子11を構成する素子のそれぞれについて投光角を設定しており、複数のレーザ素子11のそれぞれの投光角は、配光制御の観点より、0.1°〜20°の範囲で設定されている。特に、車両用ヘッドランプである場合、車両進行方向に投光する(車両の軸に対して±8°の範囲を投光する)複数のレーザ素子11の投光角を、それぞれ3°以下とすることがより細やかな配光を実現する上で望ましい。
【0156】
<波長カットコート15>
波長カットコート15は、特定の波長域の光を遮断する。本実施の形態では、波長カットコート15は、400nm以下の波長の光をカットしており、波長395nmのレーザ光を遮断している。
【0157】
これにより、レーザ光を投光しない人の目に優しい装置をユーザに提供する。なお、遮断する波長は、波長カットコート15の種類に応じて適宜調整できる。また、波長カットコート15の代わりに波長カットフィルタを用いることもできる。
【0158】
〔ヘッドランプ100の構成〕
次に、本実施形態に係るヘッドランプ100の概略的な構成の一例について、
図1を参照して説明する。
【0159】
図1は、本実施形態に係るヘッドランプ100の概略構成の一例を示すブロック図である。
図1に示すように、ヘッドランプ100は、上述したレーザ光源ユニット1、LED2、光制御部12としての反射ミラー12aの他、カメラ5、制御部6、傾斜センサ7および記憶部8を備えている。
【0160】
<カメラ5>
カメラ5は、配光エリア(第1投光範囲a1または第2投光範囲a2)を含む車両前方の画像を連続的に撮影するものであり、例えば、室内前方のルームミラー近傍や、ヘッドランプ100(前照灯)近傍に配置される。カメラ5には、テレビフレームレートで動画像を撮影する撮影装置を用いることができる。
【0161】
カメラ5は、例えば、レーザ素子11およびLED2のいずれか一方が点灯された時点から撮影を開始し、撮影した動画像を制御部6に出力する。制御部6は、この動画像を解析することにより、所定の物体を検知・識別することができ、さらにはその識別結果に応じた第1投光範囲a1の位置を制御することができる。
【0162】
なお、カメラ5の代わりに、車両前方に存在する物体に赤外線を照射して、その反射波を検知する赤外線レーダ(レーダ)であってもよい。赤外線レーダを利用する場合も、カメラ5と同様、汎用性の高い技術を用いて、車両前方に存在する物体の検知を行うことができる。
【0163】
また、カメラ5は可視光用であっても良いし、赤外光用のものであってもよく、赤外および可視の両方の機能を有していても良い。なお、カメラ5を赤外光用とすることにより、人間を含む恒温動物の検知が容易となる。
【0164】
また、カメラ5は、1台のカメラである必要はなく、複数台のカメラを用いていも良い。
【0165】
なお、カメラ5によって撮影された動画像中の物体の種類を識別する手法は、上記のものに限られず、公知の手法を適用してもよい。
【0166】
<制御部6>
制御部6は、例えば制御プログラムを実行することにより、ヘッドランプ100を構成する部材を制御するものであり、主として、物体検出部61(検知手段)、物体識別部62(識別手段)、傾斜検出部63(傾斜検出手段)、照射領域変更部64(変更手段)、点灯制御部65および出力制御部66(出力制御手段)を備えている。制御部6は、ヘッドランプ100に備えられた記憶部8に格納されているプログラムを、例えばRAM(Random Access Memory)等で構成される一次記憶部(不図示)に必要に応じて読み出して実行することにより各種処理を行う。なお、上記各種部材については、後述する。
【0167】
<傾斜センサ7>
傾斜センサ7は、傾斜検出部63が車両の傾斜を検出するための情報を測定するセンサである。傾斜センサ7のセンシング手法は、車両の姿勢変化に追随するレスポンスの早い手法であれば、どのような手法であってもよい。
【0168】
<記憶部8>
記憶部8は、制御部6が実行する(1)各部の制御プログラム、(2)OSプログラム、(3)アプリケーションプログラム、および、(4)これらプログラムを実行するときに読み出す各種データを記録するものである。記憶部8は、例えばHDD(Hard Disk Drive)、半導体メモリ等の記憶装置によって構成されるものであり、必要に応じてROM(Read Only Memory)フラッシュメモリなどの不揮発性の記憶装置が備えられる。なお、上述した一次記憶部は、RAMなどの揮発性の記憶装置によって構成されているが、本実施形態では、記憶部8が一次記憶部の機能も備えているものとして説明する場合もある。
【0169】
<制御部6の詳細構成>
次に、制御部6が備える各種部材について説明する。
【0170】
(物体検出部61)
物体検出部61は、カメラ5によって撮影された動画像を解析して、動画像中の物体を検出するものである。具体的には、物体検出部61は、カメラ5から動画像を取得したとき、動画像中の配光可能エリアに含まれる物体を検出する。
【0171】
物体検出部61は、動画像中の配光可能エリア内に物体が検出された場合、物体が検出された座標値を示す検出信号を物体識別部62に出力する。
【0172】
(物体識別部62)
物体識別部62は、物体検出部61から出力された検出信号に示される座標値における物体の種類を、画像認識により識別するものである。具体的には、物体識別部62は、物体検出部61から検出信号を取得したとき、検出信号に示される座標値に示される物体の移動速度、形状、位置などの特徴点を抽出し、特徴点を数値化した特徴値を算出する。
【0173】
そして、物体識別部62は、記憶部8に記憶された、物体の種類ごとの特徴点が数値化された基準値を管理する基準値テーブルを参照して、当該基準値テーブルに、算出した特徴値との誤差が所定閾値以内である基準値を検索する。
【0174】
例えば、基準値テーブルには、車両、道路標識、歩行者、動物または想定される障害物などに対応する基準値が予め登録され、管理されている。算出した特徴値との誤差が所定閾値以内の基準値が特定された場合、物体識別部62は、当該基準値で示される物体を、物体検出部61によって検出された物体であるものと判定する。
【0175】
物体識別部62は、物体検出部61によって検出された物体が、基準値テーブルに予め登録された物体であると判定したとき、当該物体と、当該物体が検出された座標値とを示す識別信号を照射領域変更部64に出力する。
【0176】
(傾斜検出部63)
傾斜検出部63は、傾斜センサ7から出力された信号に基づいて、車両全体の傾斜、特に水平面に対する車両の傾斜を検出するものであり、車両の傾斜角度の値を示す角度信号を、照射領域変更部64に出力する。傾斜検出部63は、車両の姿勢変化に追随するレスポンスの早い手法であれば、どのような手法で実現されていてもよい。
【0177】
(照射領域変更部64)
照射領域変更部64は、レーザ素子11から出射されたレーザ光が発光部13に形成する照射領域(その面積および/または位置など)を変更するものである。そのために、照射領域変更部64は、レーザ素子11それぞれの出力値を決定して、その出力値を示す出力信号を点灯制御部65に出力する。なお、照射領域変更部64は、駆動させるレーザ素子11と、駆動させないレーザ素子11とを決定するものともいえる。
【0178】
(点灯制御部65)
点灯制御部65は、照射領域変更部64から出力された出力信号に従って、複数のレーザ素子11のそれぞれについて、点灯および消灯(すなわち、レーザ素子11の駆動)を制御するものである。すなわち、点灯制御部65は、レーザ素子11のそれぞれの出力を制御する(変動させる)ものである。
【0179】
点灯制御部65は、レーザ素子11のそれぞれの点灯状態を示す点灯状態信号を、出力制御部66に出力する。
【0180】
(出力制御部66)
出力制御部66は、LED2から出力される照明光の出力を制御(すなわち、LED2の光量を制御)するものである。これにより、LED2から出射される照明光の強度を制御することができる。LED2がマトリクス状に配置され、それぞれのLEDの出力を制御する場合には、大まかな配光制御(例えば、すれ違い前照灯の配光特性基準や、左側通行国で規定される配光パターンなどの大まかな制御)を行うことが可能となる。
【0181】
また、出力制御部66は、点灯制御部65から出力された点灯状態信号を解析し、複数のレーザ素子11のうちの少なくとも1つが点灯状態であると判定した場合には、レーザ光源ユニット1から照明光が出射されていると判定する。この場合、出力制御部66は、LED2から出射される照明光の出力を制御する。
【0182】
例えば、出力制御部66は、運転者(年齢や種族等の差による視感度の差)や、走行環境(天候、市街地か山間部か、夕方か夜か等)等に対応して、LED2の出力や色度等を変更する。
【0183】
なお、記憶部8に、運転者(年齢や種族等の差による視感度の差)および/または走行環境(天候、市街地か山間部か、夕方か夜か等)と、LED2の出力値(色度変更タイプの場合は色度)とが対応付けて格納されており、出力制御部66は、その出力値を読み出すことにより、LED2の出力を段階的に制御する。
【0184】
また、出力制御部66は、例えば、レーザ素子11のすべてが故障して突如点灯しなくなった場合にも、LED2から照明光を出射制御することにより、ヘッドランプ100で必要となる規定の配光特性および照度を、少なくとも最低限担保することができる。
【0185】
また、出力制御部66は、レーザ光源ユニット1の点灯状態(レーザ光源ユニット1からの照明光の出力状態)に従ってLED2の出力制御を行うことも可能であり、消費電力を低減するモードにすることができるとともに、LED2を、レーザ光源ユニット1のバックアップとして利用することができる。
【0186】
(照射領域変更部64の詳細)
照射領域変更部64は、形成すべき所望の第1投光範囲a1にあわせて、上述のように、レーザ素子11それぞれの出力値を決定し、その決定結果を出力信号として点灯制御部65に出力する。すなわち、照射領域変更部64は、複数のレーザ素子11のそれぞれの出力を変更することにより、照射領域を変更するために移動させることが可能な移動部材を備えることなく、レーザ光が発光部13に形成する照射領域を変更する。これにより、各レーザ素子11の出力の変更にすばやく反応して照射領域を変更することができる。それゆえ、レーザ光源ユニット1の出力の変更に対する応答性の高い照明光の配光特性の制御を行うことができる。
【0187】
ここで、上記移動部材とは、機械的に移動することが可能な部材であり、ヘッドランプ100が備えるレーザ素子11、光制御部12などの集光系、リフレクタ14などのほか、上記移動を可能とするためにこれらの部材とは別に設けることが可能な部材を指す。すなわち、本実施の形態のヘッドランプ100は、上記のような移動部材を備えることなく、照射領域を変更することが可能な照明装置を含む構成である。
【0188】
上記所望の第1投光範囲a1は、例えば、
(1)物体識別部62から出力された識別信号に示される物体および座標値に基づく範囲、
(2)走行用前照灯(ハイビーム)の配光特性基準を満たす範囲、
(3)すれ違い用前照灯(ロービーム)の配光特性基準を満たす範囲、
(4)右側通行国で規定された照明光の配光パターンを満たす範囲、
(5)左側通行国で規定された照明光の配光パターンを満たす範囲、
(6)傾斜検出部63から出力された角度信号に基づく範囲、
(7)夕方用配光パターンを満たす範囲、
(8)夜間用配光パターンを満たす範囲、
(9)雨天時用配光パターンを満たす範囲、
(10)雪面路用配光パターンを満たす範囲、
(11)凍結路用配光パターンを満たす範囲、
(12)舗装路用配光パターンを満たす範囲、
(13)非舗装路用配光パターンを満たす範囲、
(14)市街地用配光パターンを満たす範囲、
(15)山間部用配光パターンを満たす範囲、
などが挙げられる。
【0189】
また、上記(1)の物体としては、
(a)車両前方に飛び出してきた人、
(b)車両前方に飛び出してきた車、
(c)車両前方に飛び出してきたバイク等の2輪車、
(d)車両前方に飛び出してきた動物、
(e)停止車両、
(f)落下物、
(g)対向車、
(h)前走車(先行車)、
等がある。
【0190】
(記憶部8)
上記(1)等に示す第1投光範囲a1の変更を実現するために、記憶部8には、例えば、
(A)識別信号に示される物体および座標値と、駆動させるレーザ素子11と、各レーザ素子11の駆動電力とを対応付けた識別関連データ、
(B)走行用前照灯またはすれ違い用前照灯の配光特性基準と、駆動させるレーザ素子11と、各レーザ素子11の駆動電力とを対応付けた特性基準関連データ、
(C)右側通行国または左側通行国の配光パターンと、駆動させるレーザ素子11と、各レーザ素子11の駆動電力とを対応付けた配光パターン関連データ、
(D)車両の傾斜角度と、駆動させるレーザ素子11と、各レーザ素子11の駆動電力とを対応付けた角度関連データ、
や、各種周辺環境に対応したレーザ光源ユニット1の駆動、光制御およびLED2の駆動に関連するデータなどが格納されている。
【0191】
照射領域変更部64は、上記識別関連データ、特性基準関連データ、配光パターン関連データ、角度関連データ等のうちのいずれかを記憶部8から読み出し、複数のレーザ素子11について駆動または非駆動(すなわち、各レーザ素子11の出力値)を決定する。
【0192】
(レーザ素子11および投光範囲について)
ここで、
図4および
図5を参照して、複数のレーザ素子11から出射されるレーザ光が発光部13に形成する照射領域、および、照射領域の形成パターンと第1投光範囲a1の大きさとの関係について説明する。
【0193】
図4は、複数のレーザ素子11と発光部13との関係を模式的に示した図である。なお、
図4では、光制御部12として機能する反射ミラー12aまたはレンズ12b(後述)の図示は省略している。また、簡略化のために、この図では、12個のレーザ素子11が図示されている。
【0194】
図4に示すように、複数のレーザ素子11が発光部13に対してマトリクス状に配置されているので、当該レーザ素子11から出射されたレーザ光も、発光部13の受光面に形成される照射領域の全てが重ならないように、当該受光面全体にマトリクス状に照射される。これにより、発光部13の蛍光体を効率よく発光させることができるとともに、各レーザ素子11の点灯制御によって、第1投光範囲a1を種々の配光特性にあわせて変更することができる。
【0195】
また、
図5は、発光部13における照射領域の形成パターンと、第1投光範囲a1の大きさとの関係を模式的に示す図である。なお、
図5は、簡略化のため、リフレクタ14としてパラボラミラーが用いられ、そのほぼ焦点位置に発光部13が配置されている場合を図示している。
【0196】
図5(a)の場合、LED2が点灯状態であれば、少なくとも第2投光範囲a2内を、レーザ光源ユニット1から出射された照明光を用いて、より明るくすることができる。また、例えば、LED2の故障などにより、第2投光範囲a2が、ヘッドランプ100に必要となる規定の投光範囲および光強度を満たさなくなった場合であっても、レーザ光源ユニット1から出射された照明光により、その第2投光範囲a2内の照明を担保することができる。
【0197】
また、照射領域変更部64が、点灯制御部65に、1つのレーザ素子11を駆動させることを示す出力信号を出力した場合には、
図5(b)に示すように、発光部13の受光面の、当該レーザ素子11に対応する位置のみ(受光面の1つのセグメントのみ)を含むように、照射領域が形成される。この場合、第1投光範囲a1は、その照射領域から出射される照明光が投光される範囲のみとなる。
【0198】
この場合、第1投光範囲a1を、第2投光範囲a2よりも小さくすることができる。例えば、後述のように、ヘッドランプ100前方の所定の物体のみを明るく照らすことが可能となる。また、必要なところを照らし、不必要なところを照らさないことができるのでヘッドランプ100全体の消費電力を低減させることができる。
【0199】
また、照射領域変更部64が、点灯制御部65に、全てのレーザ素子11を駆動させないことを示す出力信号を出力した場合、
図5(c)に示すように、発光部13の受光面には照射領域が形成されない。この場合、第1投光範囲a1は形成されず、第2投光範囲a2のみが形成されることとなる。
【0200】
このように、照射領域変更部64は、複数のレーザ素子11のいずれを駆動させるかを決定する(すなわち、レーザ素子11それぞれの出力値を決定する)ことにより、レーザ光が発光部13に形成する照射領域を変更している。これにより、発光部13から出射される照明光が形成する第1投光範囲a1を、所望の面積に変更することができる。それゆえ、レーザ光源ユニット1およびLED2から出射された光を照明光として利用できるとともに、当該照明光の配光特性、および光強度分布を制御することが可能となる。すなわち、ヘッドランプ100が出射する光が形成する配光パターンを自由に変更することが可能となる。
【0201】
また、上記の照射領域変更部64による駆動させるレーザ素子11の決定(すなわち、レーザ素子11それぞれの出力値の決定)により、発光部13の受光面に形成する照射領域の位置を制御することができる。すなわち、照射領域変更部64は、発光部13に対する照射領域の位置を変更するものといえる。これにより、第1投光範囲a1の位置および大きさを変更することができるので、第1投光範囲a1が形成する配光パターンを自由に変更するだけでなく、その光の強度も自在に制御できるため、さらにバラエティーに富む配光パターンを実現することができる。
【0202】
また、
図5に示すように、LED2による投光よりもレーザ光源ユニット1による投光の方が、投光範囲および配光パターンを細かく制御することが可能である。その細かい投光範囲および配光パターンの制御例については、例えば
図6および
図7等を用いて後に説明する。
【0203】
さらに、ヘッドランプ100は、レーザ光源ユニット1およびLED2を備えているので、1つの照明装置にて、発光原理の異なる光源から出射された光を、照明光として利用することができる。
【0204】
また、従来技術のように、光源から出射される光を走査して出射する灯具においては、当該光源が故障した場合、配光制御どころか、照明光の出射すらできなくなってしまい、灯具としての機能を実現できなくなってしまう可能性があった。しかし、本実施形態のヘッドランプ100は、上記のようにレーザ光源ユニット1およびLED2を備えているので、灯具としての機能が実現できなくなってしまうという事態を回避できる。
【0205】
また、従来、LEDによって特定の配光パターン(例えば、すれ違い前照灯の配光特性)を実現するために、マスク(遮光板)、レンズカットまたはミラーカットによって照明光の一部を遮っていたが、この構成では、照明光のロスが生じる。
【0206】
一方、本実施形態では、LED2は、主として、レーザ光源ユニット1から出射された光のバックアップとして利用される。また、照射領域変更部64による制御により、第1投光範囲a1の形状や大きさなどを自由に変更できる。それゆえ、特定の配光パターンの形成のために、高度な光学設計(例えば、レンズカットやミラーカットなど)が不要となる。また、例えば走行用前照灯とすれ違い用前照灯の配光特性の切り替えを、単純な形状のリフレクタで実現できる。なお、本実施形態においては、ミラーカットなどによって、かえって自由な第1投光範囲a1の形成が阻害される可能性がある。
【0207】
また、本実施形態のヘッドランプ100の構成を、ヘッドランプ100以外の照明装置(例えば室内灯)によって実現した場合には、例えば、LED2から出射された照明光によって部屋全体を照らし、レーザ光源ユニット1から出射された照明光によって机の上を照らすことも可能となる。
【0208】
以下、上記(1)等を実現し得るヘッドランプ100の動作例1〜6について説明する。なお、動作例1〜6はあくまで例示であって、ヘッドランプ100の動作例を限定するものではない。なお、以下の動作例において、車両前方の物体(歩行者、動物、道路標識、センターライン等)を含むように形成される第1投光範囲a1は、レーザ光源ユニット1からの投光により形成される範囲のことであり、LED2のみの投光により形成される第2投光範囲a2よりも光度が高くなっていればよい。
【0209】
(具体的な動作例1)
まず、市街地における配光の一例について、
図6および
図7を用いて説明する。
図6は、ヘッドランプ100を市街地で用いたときの配光特性の一例を示す図である。また、
図7(a)は、そのときにレーザ光源ユニット1が出射する照明光が形成する第1投光範囲a1を示す図であり、
図7(b)は、そのときの照射領域Aである。
【0210】
図6(a)は、LED2のみが点灯している時の配光特性、すなわち第2投光範囲a2を形成している様子を示す。
図6(a)に示すように、歩道、走行道および対向する道の全体と、当該道以外の前方とを照射しているが、遮光板等による配光特性の制御を行った場合であっても、細やかな制御を行うことは困難である。
【0211】
本実施の形態では、レーザ光源ユニット1から出射された照明光を、上記LED2から出射された照明光とともに出射できる。
図6(b)に示すように、レーザ光源ユニット1は、第1投光範囲a1を形成している。
【0212】
このときの第1投光範囲a1を、
図7(a)に示す。
図7(a)の第1投光範囲a1を形成するために、照射領域変更部64は、
図7(b)に示すような照射領域Aが形成されるように、レーザ素子11それぞれの出力値を決定する。すなわち、照射領域変更部64は、第1投光範囲a1が、第2投光範囲a2の周辺部または第2投光範囲a2以外に形成されるように、レーザ素子11それぞれの出力値を決定して、出力信号を点灯制御部65に送信する。点灯制御部65は、この出力信号に従ってレーザ素子11の点灯を制御し、
図7(b)に示すような照射領域Aを形成する。
【0213】
これにより、
図6(b)に示すように、LED2から出射された照明光では視認しにくい範囲(LED2では照射できない範囲)を、レーザ光源ユニット1から出射された照明光で補うことができる。
【0214】
さらに、
図7(b)に示すように、照射領域変更部64は、複数のレーザ素子11から出射されたレーザ光のそれぞれが形成する照射領域の一部が互いに重なるように、当該照射領域を変更するので、
図7(a)に示すように、各照射領域に対応して形成される第1投光範囲a1を互いに重ねることができる。それゆえ、第1投光範囲a1を滑らかに形成することができる。
【0215】
なお、LED2等の光源において、このような滑らかな投光範囲の重なりを実現するためには、複数のLEDチップ21のそれぞれに対してリフレクタ、またはマルチファセットミラーを設け、投光時にそれぞれの投光範囲を重ねるよう制御する必要がある。しかも、本実施の形態におけるレーザ光源ユニット1の輝度は1000Mcd/m
2である一方、一般的なLEDまたはHIDランプの輝度は100Mcm/m
2である。そのため、レーザ光源ユニット1と同じ投光範囲をLEDまたはHIDランプで形成しようとした場合、リフレクタサイズを1桁大きくする必要があり、現実的ではない。本実施の形態のヘッドランプ100では、レーザ素子11を用いているので、リフレクタまたはマルチファセットミラーを設けることなく、上記の滑らかな投光範囲の変更を実現できる。
【0216】
また、
図7(b)に示すように、複数のレーザ素子11から出射されたレーザ光のそれぞれが形成する複数の照射領域は、発光部13に同時に形成されることにより、レーザ光源ユニット1から出射された照明光が形成する投光範囲(同図の各丸印)を同時に複数形成することができる。それゆえ、ヘッドランプ100前方の複数箇所のそれぞれを、同時に投光することができる。
【0217】
(具体的な動作例2)
次に、
図8および
図9を参照して、物体検出部61によって検知された物体に、レーザ光源ユニット1から出射された照射光を照射する場合の動作例について説明する。
図8は、当該動作例におけるヘッドランプ100の処理の流れの一例を示すものであり、
図9(a)は、当該処理によって形成される投光範囲の一例を示す模式図であり、
図9(b)は発光部13に形成される照射領域の一例を示す模式図である。
【0218】
図8に示すように、レーザ光源ユニット1および/またはLED2が点灯状態にあるときに、カメラ5は、車両前方の撮影を開始する(S1)。このとき、カメラ5は、狭くとも配光エリア全体が撮影可能な画角で車両前方を撮影し、撮影した動画像を制御部6の物体検出部61に出力する。
【0219】
次に、物体検出部61は、カメラ5によって撮影された動画像を解析して、動画像中の配光可能エリア内の物体を検出する(S2)。物体検出部61は、動画像中の配光可能エリア内に物体が検出された場合、物体が検出された座標値を示す検出信号を物体識別部62に出力する。
【0220】
次に、物体識別部62は、物体検出部61から出力された検出信号に示される座標値における物体の種類を識別する(S3)。具体的には、物体識別部62は、物体検出部61から検出信号を取得したとき、検出信号に示される座標値における物体の移動速度、形状、位置などの特徴点を抽出して数値化した特徴値を算出する。
【0221】
そして、物体識別部62は、基準値テーブルを参照して、算出した特徴値との誤差が所定閾値以内である基準値を検索する。算出した特徴値との誤差が所定閾値以内の基準値が特定された場合、物体識別部62は、当該基準値で示される物体が、物体検出部61によって検出された物体であるものと判定する。
【0222】
物体識別部62は、物体検出部61によって検出された物体が、基準値テーブルに予め登録された物体であると判定したとき、当該物体が検出された座標値を示す識別信号を照射領域変更部64に出力する。
【0223】
図9(a)に示される場合、物体識別部62は、物体の種類を歩行者Oであると判定すると共に、当該歩行者Oが検出された動画像中の座標値を示す識別信号を照射領域変更部64に出力する。なお、歩行者Oは、事故因子の一例として図示されたものである。
【0224】
次に、照射領域変更部64は、物体識別部62から出力された識別信号に示される座標値に基づいて、発光部13からの光が物体に向けて配光されるように、レーザ素子11の出力値を決定し、出力信号を点灯制御部65に出力する。
【0225】
点灯制御部65は、この出力信号に従って、レーザ素子11それぞれについての出力をコントロールする(消灯含む)。すなわち、照射領域変更部64は、上記識別信号に基づいて、レーザ光が発光部13に形成する照射領域(その面積、位置および/または輝度分布)を変更する(S4)。
【0226】
図9の場合、照射領域変更部64は、記憶部8から識別関連データを読み出すことにより、例えば、歩行者Oが検出された動画像中の座標値に対応する位置に配置されたレーザ素子11を駆動させ、それ以外のレーザ素子11については駆動させないと決定する。そして、点灯制御部65は、当該決定結果を示す出力信号に従って、レーザ素子11の点灯を制御する。
【0227】
この場合、
図9(b)に示すように、駆動したレーザ素子11が出射したレーザ光は、発光部13の受光面の領域A1(同図中の明部)のみ照射され、それ以外の領域(同図中の暗部)には照射されない。これにより、
図9(a)に示すように、発光部13からの光が歩行者Oに向けて配光されるように第1投光範囲a1が形成されるので、歩行者Oをより明るく照明することが可能となる。
【0228】
このように、ヘッドランプ100では、照射領域変更部64が、物体検出部61によって検知された物体(すなわち、道路標識、歩行者、動物、障害物、センターラインなど)を含むように、発光部13に対する照射領域を変更するので、当該物体に対してのみ、発光部13からの光を配光することができる。すなわち、道路標識、歩行者または障害物などを明るく照明することができるので、目視によって、道路標識を正確に読み取ることや、歩行者または障害物などを正確に認識させることが可能となる。それゆえ、安全な運転環境を実現することができる。
【0229】
また、基準値テーブルには、道路標識、歩行者および障害物などに対応した基準値のほか、例えば、自転車、オートバイなどの車両に対応した基準値が管理されている。これにより、物体識別部62によって識別された物体の種類に応じて、第1投光範囲a1を最適な位置に形成することが可能となる。
【0230】
本実施の形態では、励起光源としてレーザ素子11を用い、投光系(リフレクタ14および凸レンズ16)に対し光学的に小さな光源(高輝度光源)となっているため、投光効率が非常に高く発光部13にて発光した光の90%を対象物に投光することができる。そのため、低消費電力でかつ対象物における照度が高い投光が可能となっている。
【0231】
(具体的な動作例2の変形例)
図10は、具体的な動作例2の変形例を示す図である。本変形例では、対象物が歩行者Oと動物である。第2投光範囲a2のみの場合、対象物(歩行者Oおよび動物)における照度が低いため、ドライバが対象物を認識することは困難であった。
【0232】
本変形例では、
図10の場合も
図9の場合と同様、第2投光範囲a2とは無関係にスポット光(発光部13から出射された照明光)を対象物に向けることができるので、ドライバへの注意喚起が可能となる。
【0233】
また、本変形例では、発光部13への各レーザ光の照射によって各スポット光の配光(第1投光範囲a1の形成位置)が制御される。このため、単一のヘッドランプ100(投光装置)で複数箇所の投光が可能となり、当該ヘッドランプ100の小型化を図ることができる。すなわち、複数の対象物のそれぞれを含むように、第1投光範囲a1を複数箇所に同時に形成することができる。なお、本変形例における処理は、上記動作例2と同様であるため、その説明は割愛する。
【0234】
また、動作例2およびその変形例のように、対象物が動く物体であっても、照射領域変更部64がレーザ光の発光部13への照射領域を変更させるだけよいため、対象物の動きに対してレスポンスが早い第1投光範囲a1の変更が可能であり、当該対象物を追従することができる。
【0235】
(具体的な動作例3)
次に、
図11を参照して、物体検出部61によって検知された物体に、レーザ光源ユニット1から出射された照射光を照射しない場合の動作例について説明する。
図11(a)は、ヘッドランプ100の処理によって形成される投光範囲の別例を示す模式図であり、
図11(b)は、発光部13に形成される照射領域の一例を示す模式図である。また、
図11(c)は、LEDのみ点灯時の配光特性の一例を示す図である。なお、
図11(b)では、説明を簡略化するために、
図11(a)の第1投光範囲a1に対応する照射領域については図示していない。
【0236】
この動作例3は、物体検出部61によって検知された物体に対向車が含まれ、ハイビーム相当の配光パターンで投光している場合(ハイビーム相当の第1投光範囲a1が形成されている場合)の一例を示している。
【0237】
動作例2と同様、物体検出部61および物体識別部62の処理により、物体の種類を識別し、当該物体が検出された動画像中の座標値を示す識別信号が、照射領域変更部64に出力される。
図11(a)に示される場合、物体識別部62は、物体の種類をそれぞれ、対向車(自動車やオートバイなど)、歩行者、道路標識および動物であると判定し、当該対向車が検出された動画像中の座標値を示す識別信号を照射領域変更部64に出力する。
【0238】
照射領域変更部64は、物体識別部62から出力された識別信号に示される座標値に基づいて、発光部13からの光が対向車に向けて配光されないように、レーザ素子11の出力値を決定し、出力信号を点灯制御部65に出力する。点灯制御部65は、この出力信号に従って、レーザ素子11それぞれについての出力をコントロールする。このとき、動作例2と同様、照射領域変更部64は、上記座標値に基づいて、発光部13からの光が歩行者、道路標識および動物のそれぞれに向けて配光されるように、レーザ素子11の出力値を決定する。
【0239】
図11の場合、照射領域変更部64は、記憶部8から識別関連データを読み出すことにより、例えば、対向車が検出された動画像中の座標値に対応する位置に配置されたレーザ素子11を駆動させず、それ以外のレーザ素子11を駆動させると決定する。そして、点灯制御部65は、当該決定結果を示す出力信号に従って、レーザ素子11の点灯を制御する。
【0240】
この場合、
図11(b)に示すように、駆動したレーザ素子11が出射したレーザ光は、発光部13の受光面の領域A2(同図中の暗部)以外の領域(同図中の明部)のいずれかに照射される。これにより、
図11(a)に示すように、発光部13からの光が対向車に向けて配光されないように、第1投光範囲a1が形成される。すなわち、ヘッドランプ100は、対向車に照射されることとなる領域(領域B)には投光しないよう投光範囲を制御することができる。
【0241】
このように、ヘッドランプ100では、物体が対向車等の場合には、照射領域変更部64が、物体検出部61によって検知された当該物体を含まないように、発光部13に対する照射領域を変更するので、当該物体を含まないように、発光部13からの光を配光することができる。それゆえ、対向車や先行車のドライバなどに与える不快な眩しさや幻惑を低減することができるため、安全、且つ、快適な交通環境を実現することができる。
【0242】
また、動作例1および2では、照射領域変更部64は、物体識別部62によって識別された物体の種類が、予め登録された基準値テーブルに示される物体の種類と一致したとき、レーザ光が発光部13に形成する照射領域を変更している。
【0243】
上述のように、動作例2では、照射領域変更部64は、物体識別部62によって識別された物体の種類と、予め登録された物体の種類とが一致したとき、発光部13からの光が当該物体に向かって投光されるように、上記照明領域の位置を変更する。これにより、物体検出部61によって検知された物体(道路標識、歩行者、動物など)のみ、第1投光範囲a1に含めることができるので、当該物体をより明るく照明することが可能となる。
【0244】
一方、動作例3では、照射領域変更部64は、物体識別部62によって識別された物体の種類(その種類が対向車等の場合)と、予め登録された物体の種類とが一致したとき、発光部13からの光が当該物体に向かって投光されないように、上記照明領域の位置を変更することも可能である。これにより、物体検出部61によって検知された物体(自動車など)のみ、第1投光範囲a1に含めないことができるので、対向車のドライバなどに不快な眩しさなどを与えないようにすることができる。
【0245】
ここで、
図11(c)に示すように、LEDのみを備える灯具の場合、対向車のドライバなどに不快な眩しさを与える可能性は低いが、その分、前方の広範囲にわたって照度の低い範囲(図中の範囲D)ができてしまう。一方、上記灯具において、前方の照度を高めようとした場合には、対向車のドライバなどに不快な眩しさを与えてしまう可能性が高い。したがって、このような灯具では、対向車のドライバなどに不快な眩しさを与えずに、前方の照度を高めることは困難である。
【0246】
一方、本実施の形態のヘッドランプ100では、上述のように、物体識別部62による物体の種類の識別により、その種類に応じた、最適な照射領域の変更、ひいては第1投光範囲a1の変更の実現が可能となる。それゆえ、対向車のドライバなどに不快な眩しさを与えずに、前方の照度を高めることができる。
【0247】
(具体的な動作例4)
次に、
図12を参照して、車両が通行する国の法規に応じて配光パターンを変更する場合の動作例について説明する。
図12(a)は、ヘッドランプ100が右側通行国で規定されたすれ違い灯の配光パターンを実現している様子を示す図であり、
図12(b)は、ヘッドランプ100が左側通行国で規定されたすれ違い灯の配光パターンを実現している様子を示す図である。
【0248】
例えば右側通行国であるフランスと、左側通行国のイギリスとでは、各国の法規に応じて配光パターンを変更する必要がある。照射領域変更部64は、右側通行国で規定された照明光の配光パターン、および、左側通行国で規定された照明光の配光パターンのいずれかを満たすように、発光部13に形成されるレーザ光の照射領域の位置を変更する。
【0249】
具体的には、照射領域変更部64は、例えばイギリスとフランスとを行き来する場合には、例えばGPSと連動させることによって、記憶部8から、各国の法規に従った配光パターン関連データを読み出すことにより、当該法規に従った第1投光範囲a1を形成するように、レーザ素子11それぞれの出力値を決定する。そして、点灯制御部65は、当該決定結果を示す出力信号に従って、レーザ素子11の点灯を制御する。これにより、本願のヘッドランプ100を、あらゆる国で利用される車両に搭載し、活用することができる。
【0250】
また、従来の灯具では、配光をレンズカットやマルチファセットミラーを用いることによって実現していたため、細かな配光制御ができなかった。しかし、本実施の形態では、レーザ素子11(高輝度光源)を用い、高い投光効率で投光するため、理想的な配光制御ができる。
【0251】
また、DMD方式では、対象物での照度が暗く、消費電力も大きかったが、本実施の形態では、細かくて且つ対象物が高照度となるような配光制御を、低消費電力で実現することができる。
【0252】
なお、LED2についても、出力制御部66の制御により、第2投光範囲a2が、走行中の国の法規に従った配光パターンとなるように制御されている。
【0253】
(具体的な動作例5)
次に、
図13〜
図17を参照して、傾斜検出部63によって検知された車両の傾斜角度に従って、照射領域変更部64が照射領域の変更を行う場合の動作例について説明する。
図13は、当該動作例におけるヘッドランプ100の処理の流れを示すものである。
図14(a)〜(c)は、車両の傾斜角度と照射領域の変更との関係の一例を示す図であり、
図15(a)〜(c)はその変形例を示す図である。
図16は、車両が下り坂に差し掛かった場合の配光特性の一例を示す図である。
図17は、車両が出射する照明光が、坂道の上がり口において対向車に影響を与える様子を模式的に示す図である。
【0254】
図17に示すように、一般に、車両110が坂道の上がり口などにおいて対向車111とすれ違うときには、車両110が出射する照明光によって、対向車111のドライバに不快な眩しさなどを与えてしまう。また、従来の車両では、車両の傾斜にしたがって照明光の投光範囲を変更する場合、当該車両が備えるヘッドランプのリフレクタ自体を動作させる必要があったため、その動作機構が大規模となり、動作速度も遅かった。このため、当該動作機構が、鉛直方向(縦方向)への投光範囲の変更のために利用された場合には、対向車のドライバなどに不快な眩しさなどを与える可能性が高く、安全性の担保が困難であった。そこで、当該動作機構は、主として、その動作速度が遅くても特に問題とならない水平方向(左右方向)への投光範囲の変更のために利用されていた。
【0255】
一方、ヘッドランプ100では、照射領域変更部64は、傾斜検出部63によって検知された検知結果(水平面に対する車両の傾斜)にしたがって、照射領域の位置を変更する。それゆえ、水平面に対する車両の傾斜に従って、第1投光範囲a1の位置を変更することができるので、対向車のドライバなどに与える不快な眩しさなどを低減することができる。また、当該位置の変更は、発光部13に形成される照射領域を変更することでのみで可能となるため、第1投光範囲a1の鉛直方向の位置変更をもすばやく行うことができる。すなわち、ヘッドランプ100は、対向車のドライバなどに与える不快な眩しさや幻惑を低減するためのヘッドランプとして好適といえる。
【0256】
具体的には、
図13に示すように、傾斜検出部63は、車両の傾斜を検出し、車両の前後方向の傾斜角度を求め(S11)、当該傾斜角度の値を示す角度信号を、照射領域変更部64に出力する。照射領域変更部64は、記憶部8から角度関連データを読み出すことにより、レーザ素子11それぞれの出力値を決定する。そして、点灯制御部65は、当該決定結果を示す出力信号に従って、レーザ素子11の点灯を制御する。すなわち、照射領域変更部64は、上記角度信号に基づいて、レーザ光が発光部13に形成する照射領域を変更する(S12)。
【0257】
なお、上記の照射領域の変更は、カーナビゲーションや、高度道路交通システム(ITS)、カメラ5からの情報に基づいて行われてもよい。
【0258】
例えば、
図14(a)は、平坦な道路において、照射領域変更部64が所望の配光を満たすために、全てのレーザ素子11を駆動させ、発光部13全体にレーザ光が照射されている様子を示す概念図である。このとき、車両は、例えば、ヘッドランプ100の正面方向に対して角度−αからαの範囲に第1投光範囲a1を形成する。なお、ここでは、説明簡略化のため、12個のレーザ素子11のそれぞれが、発光部13の受光面に、4×3のマトリクス状に照射領域を形成する様子を例示している。
【0259】
図14(a)を前提として、
図14(b)は、例えば車両が水平面に対して角度θ1の坂道を上がる様子を示している。このとき、例えば、発光部13の鉛直方向上段C1には照射領域が形成されないように、照射領域変更部64によってレーザ素子11それぞれの出力値(駆動可否)が決定される。その結果、ヘッドランプ100は、ヘッドランプ100の正面方向に対して角度−αからβ(β<α)の範囲に第1投光範囲a1を形成する。
【0260】
このとき、LED2は、平坦地走行時(
図14(a)参照)に比べ出力を落としている。点灯制御部65は、その光量差を補うように、発光部13へのレーザ素子11の出力強度を上げている。
【0261】
また、
図14(c)に示すように、車両が水平面に対して角度θ2(>θ1)の坂道を上がる場合、発光部13の鉛直方向上段C2には照射領域が形成されないように、照射領域変更部64によってレーザ素子11それぞれの出力値(駆動可否)が決定される。その結果、ヘッドランプ100は、ヘッドランプ100の正面方向に対して角度−αからγ(γ<β)の範囲に第1投光範囲a1を形成する。
【0262】
このとき、LED2は、角度θ1の坂道走行時(
図14(b)参照)に比べ出力を落としている。点灯制御部65は、その光量差を補うように、発光部13へのレーザ素子11の出力強度を上げている。つまり、LED2の出力は、
図14(a)>
図14(b)>
図14(c)となっている。
【0263】
また、例えばレーザ素子11が8×6のマトリクス状に配置されている場合、すなわち
図14の場合よりもレーザ素子11が多く配置されている場合には、平坦地走行時においてもすべてのレーザ素子11を駆動させる必要はない。すなわち、
図15(a)〜(c)に示すように、平坦地および坂道のいずれを走行中であっても、その照射領域の面積を変えず、その位置を変えるだけで、
図14と同様、車両の傾きに対応した配光制御(第1投光範囲a1の位置制御)を行うことができる。
【0264】
このように、ヘッドランプ100は、照射領域変更部64の上記制御により、道路の傾斜に応じて、対向車のドライバなどに影響を与えないように、第1投光範囲a1を変更できる。それゆえ、対向車のドライバなどに与える不快な眩しさや幻惑を低減することができる。
【0265】
なお、動作例5は、坂道の上がり口において対向車があった場合の一例であり、対向車にグレアを感じさせないような配光が、発光部13へのマトリクス状のレーザ照射により実現されれば良い。
【0266】
また、動作例5では、車両が坂道を上がる場合について説明したが、坂道を下る場合も同様の制御がなされる。これにより、坂道を下る場合についても、坂道の上がり口に差し掛かっている対向車のドライバなどに与える不快な眩しさや幻惑を低減することができる。
【0267】
また、下り坂においては、
図16(a)に示すように、従来のヘッドランプでは、走行灯時でも坂の傾斜が急であった場合には、進行方向遠方の物体を照射することができなかった。しかし、本実施の形態のヘッドランプ100は、レーザ素子11から出射されたレーザ光が、発光部13をマトリクス状に励起するので、
図16(b)に示すように、遠方をも照らすような仕様にすることも可能である。
【0268】
なお、従来のヘッドランプでも、それぞれの目的に合わせてリフレクタを設置すれば、同じ機能を実現することは可能であるが、自動車やオートバイ等は、その設置場所の制限があり、当該リフレクタを設置することができなかった。本実施の形態では、複数のレーザ素子11(高輝度光源)をマトリクス状に配することにより、上記のような配光を省スペースで実現することができる。
【0269】
(具体的な動作例6)
次に、
図18を参照して、雨天時に形成される投光範囲の一例について説明する。
【0270】
従来、雨天の夕方には、センターラインが特に見えにくいという問題があった。そのため、例えば、進行1車線、対向2車線といった走行路においては、センターラインをはみ出すことによる事故が発生している。しかし、路面全体を明るくすると、対向車は路面からの反射光をグレアと感じてしまう可能性がある。そのため、路面全体を明るくする機能のみを有する従来のヘッドランプでは、雨天時のセンターラインの視認性を向上させることは困難であった。
【0271】
本実施の形態のヘッドランプ100では、照射領域変更部64が、第1投光範囲a1が第2投光範囲a2の一部に形成されるように、発光部13に形成される照射領域を変更する。具体的には、照射領域変更部64は、例えば動作例2と同様、物体検出部61によって検知された第2投光範囲a2内のセンターラインを含むように第1投光範囲a1が形成されるように、レーザ素子11それぞれの出力値を制御する。これにより、第2投光範囲a2内において視認しにくい範囲があっても、その部分をレーザ光源ユニット1から出射された照明光で補うことができるので、雨天時のセンターラインの視認性を向上させることができ、上記のような事故の発生を低減させることができる。
【0272】
<変形例1>
次に、ヘッドランプ100の変形例1であるヘッドランプ200(照明装置、車両用前照灯)について説明する。
図19は、ヘッドランプ100の変形例を示す図である。
図19に示すように、変形例1に係るヘッドランプ200は、光制御部12として、反射ミラー12aの代わりに、レンズ12b(光制御部)を備えている。
【0273】
(レンズ12b)
レンズ12bは複数備えられ、レーザ素子11から発振されたレーザ光が発光部13に適切に照射されるように、当該レーザ光の進行方向を制御するものである。複数のレーザ素子11の発光点のそれぞれと対向するように、複数のレンズ12bのそれぞれが一対一に備えられている。そして、レンズ12bのそれぞれを透過したレーザ光は、リフレクタ14に設けられた窓部14aを介して発光部13に照射される。
【0274】
ここで、光制御部12として反射ミラー12aを用いた場合には、反射ミラー12aに照射される前のレーザ光の進行方向と、反射ミラー12aにて反射した後のレーザ光の進行方向は異なる。すなわち、反射ミラー12aは、レーザ素子11の発光点の光軸とは異なる方向に、レーザ光の進行方向を変更することができる。
【0275】
このため、例えば
図2に示すように、レーザ素子11の発光点がリフレクタ14の開口部方向とは異なる方向(例えば鉛直上向き)となるように、レーザ素子11を配置することができる。それゆえ、
図2では、フィン4は、その台座表面が鉛直上向きとなるように設置され、レーザ素子11はその表面上に配置されている。
【0276】
一方、レンズ12bは、拡がりをもって進行するレーザ光を略平行光とし、かつ、発光部13への導光を制御する。すなわち、反射ミラー12aとは異なり、レーザ素子11の発光点の光軸と、レンズ12bを透過した後のレーザ光の進行方向は略同一となる。
【0277】
このため、例えば
図19に示すように、レーザ素子11の発光点がリフレクタ14の開口部方向と略同一方向となるように、レーザ素子11を配置する必要がある。それゆえ、
図19では、フィン4の台座表面も当該開口部方向と略同一方向となるように設置され、その表面上にレーザ素子11が配置されている。
【0278】
なお、反射ミラー12a(立上ミラー)を用いず、レンズ12bのみを用いる方法では、ビーム圧縮することができないため、反射ミラー12aを用いる方法に比べ、リフレクタ14の窓部14aを大きくする必要がある。それゆえ、リフレクタ14の投光効率の観点から言えば、本変形例のヘッドランプ200よりも、
図2に示すヘッドランプ100の方が好ましい形態である。
【0279】
なお、レンズ12bとしては、非球面レンズを用いているが、凸レンズを用いることもできる。
【0280】
<変形例2>
次に、ヘッドランプ100の変形例2であるヘッドランプ300(照明装置、車両用前照灯)について説明する。
図20は、ヘッドランプ100の更なる変形例を示す図である。
【0281】
本変形例のヘッドランプ300は、リフレクタ14としてパラボラミラーを用いている点、および、発光部13がLED2の一部として機能している点で、上述したヘッドランプ100の構造とは異なる。
【0282】
(発光部13)
発光部13は、
図20(a)に示すように、発光部13の受光面の延長面が、開口部が形成されたリフレクタ14の端部と接するように、放熱ベース3に設けられた傾斜部3a上に傾いて配置されている。このため、発光部13から発せられた光は、直接外部に漏れることなく、効率的にリフレクタ14で反射して配光することができる。
【0283】
また、
図20(b)に示すように、発光部13とLED2とは一体形成されていてもよい。また、LED2の蛍光体が発光部13に含まれる蛍光体として機能してもよい。何れの場合も、発光部13がLED2の一部として機能するものといえる。この場合、ヘッドランプ300の部品数を減少させることが可能となるため、ヘッドランプ300の構成を単純化することができる。
【0284】
図20(a)に示す例では、発光部13およびLED2は、リフレクタ14のほぼ焦点位置に配置されている。
【0285】
なお、本変形例では、レーザ素子11とLED2とで同一の発光部13を共用しているため、LED2の発光中心波長は395nmとなっている。また、蛍光体についても、395nmのレーザ光の励起に適した蛍光体を用いている。
【0286】
(リフレクタ14)
リフレクタ14は、放物線の対称軸を回転軸として、当該放物線を回転させることによって形成される曲面(放物曲面)を、上記の回転軸に平行な平面で切断することによって得られる部分曲面の少なくとも一部をその反射面に含んでいる。また、リフレクタ14は、発光部13およびLED2によって発せられた光を配光する方向に半円形の開口部を有している。
【0287】
リフレクタ14のほぼ焦点に配置された発光部13およびLED2から発せられた光は、放物曲面の反射面を有するリフレクタ14によって、平行に近い光線束を形成して開口部から前方に配光される。すなわち、変形例2に係るリフレクタ14は、発光部13およびLED2の両方から出射された照明光を投光するものである。これにより、発光部13からの光を狭い立体角内に効率的に投光させて、第1投光範囲a1および第2投光範囲a2を形成することができ、その結果、光の利用効率を高めることができる。
【0288】
本変形例では、樹脂製のハーフパラボラミラーの内面にアルミニウムがコーティングされた半円形のリフレクタ14を用いており、奥行きL1が40mm、開口部の半径L2が40mmである。また、その焦点は、窓部14aが形成されるリフレクタ14の頂点部から10mm離れた位置(すなわち、L3=10mm)となる。
【0289】
なお、リフレクタ14は、この他、プロジェクションミラー、特に閉じた円形の開口部を有するパラボラミラーであってもよく、その一部を含むものであってもよい。また、パラボラミラー以外にも、楕円形状や自由曲面形状、或いは、マルチファセット化されたマルチリフレクタを用いることができる。さらに、リフレクタ14の一部に放物曲面ではない部分を含めてもよい。
【0290】
また、リフレクタ14としてプロジェクションレンズを利用することも可能であるが、一般にミラーを用いた方が設計上簡易である。
【0291】
なお、リフレクタ14は、ハーフパラボラなど、パラボラ形状を含むものであればよく、軸外しパラボラミラーや、マルチファセット型パラボラミラーであっても良い。
【0292】
<変形例3>
次に、ヘッドランプ100の変形例3であるヘッドランプ100aについて説明する。
図21は、ヘッドランプ100の変形例であるヘッドランプ100aの概略構成の一例を示すブロック図である。
図21に示すように、ヘッドランプ100a(照明装置、車両用前照灯)は、カメラ5の代わりに、赤外線カメラ5a(検知手段)を備えており、制御部6の代わりに制御部6aを備えている。なお、赤外線カメラ5aは、そのいずれかのみが備えられている構成であってもよい。
【0293】
(赤外線カメラ5a)
赤外線カメラ5aは、配光可能エリアに存在する物体から放射される赤外線放射エネルギーを検知し、当該赤外線放射エネルギー分布を示す分布信号を、物体識別部62aに出力する。
【0294】
(物体識別部62a)
物体識別部62a(識別手段)は、赤外線カメラ5aによって検知された赤外線放射エネルギーに基づいて温度分布画像を生成することにより、上記物体の種類を識別するものである。すなわち、赤外線カメラ5aおよび物体識別部62aは、赤外線サーモグラフィの機能を実現するものである。
【0295】
物体識別部62aは、物体識別部62と同様、温度分布画像中の温度が高い領域の移動速度、形状、位置などなどの特徴点を抽出し、特徴点を数値化した特徴値を算出し、記憶部8に格納された基準値テーブルとの照合により、当該物体と、当該物体が検出された座標値とを示す識別信号を照射領域変更部64に出力する。
【0296】
これにより、ヘッドランプ100と同様、照射領域変更部64が、上記物体を含む、または含まないように、レーザ素子11それぞれの出力値(駆動可否)を決定することにより、所望の第1投光範囲a1の大きさおよび位置を形成することができる。
【0297】
<変形例4>
次に、ヘッドランプ100の変形例4であるヘッドランプ400(照明装置、車両用前照灯)について説明する。
図22および
図23は、ヘッドランプ100の更なる変形例を示す図である。
図22は、ヘッドランプ300の一例を示す概略図である。また、
図23は、アレイレーザ素子40の周辺構成の一例を示す概略図である。
【0298】
本変形例のヘッドランプ400は、レーザ素子11としてアレイレーザ素子40を用いている以外は、上述したヘッドランプ100の構成と同様である。すなわち、本変形例では、アレイレーザ素子40および発光部13により、レーザ光源ユニット1が形成されている。
【0299】
ヘッドランプ400は、
図22のように、複数のレーザ素子11がアレイ状に構成されたアレイレーザ素子40、反射ミラー12aと同様の機能を有する反射ミラー44(立上ミラー、光制御部)、ステム43(台座、筐体)およびキャップ45(筐体)を備えている。
【0300】
なお、アレイレーザ素子40は、レーザチップ41とサブマウント42とからなるレーザ光源を複数備えたレーザ光源群を形成することにより、その基本構造を形成している。
【0301】
また、ステム43およびキャップ45により、アレイレーザ素子40および反射ミラー44を備える1つの筐体を形成している。この構造により、レーザチップ41およびステム43の間の熱抵抗を下げることができる。
【0302】
そのため、ヘッドランプ100と同じフィン4を用いた場合、ヘッドランプ100に比べ、システムとしての信頼性をあげることが可能となる。別の見方をすれば、システムとして、ヘッドランプ100と同じ信頼性に設定した場合、全体を小型化することができる。すなわち、ヘッドランプ400の小型化を図ることができる。
【0303】
また、レーザチップ41と反射ミラー44との相対配置を厳密に制御することが容易であり、製造歩留まりが上がるというメリットもある。
【0304】
(アレイレーザ素子40)
アレイレーザ素子40は、フィン4に装着された1つのステム43に対して当接されており、複数のレーザチップ41およびサブマウント42からなる。
図23(c)に示すように、サブマウント42の上にレーザチップ41が配置されている。
【0305】
レーザチップ41は、レーザ素子11が備えるチップと同様の機能を有するものである。また、サブマウント42は、レーザチップ41のダイボンド部である。例えば
図23(a)および(b)に示すように、このレーザチップ41とサブマウント42とが連なることによって、アレイレーザ素子40が形成される。すなわち、このようなアレイレーザ素子40をレーザ光源群として用いることにより、ヘッドランプ400の小型化を形成することが可能となる。
図23(a)および(b)については、さらに後述する。
【0306】
(ステム43)
熱伝導性を有するステム43は、
図23に示すように、フィン4と対向する面(第2面、ステム43の外側で最も広い面積を持つ部分)、および、第2面と略平行な面(第1面、キャップ45により大部分が封止される側の面)を有する。
【0307】
そのステム43の第1面に、アレイレーザ素子40および反射ミラー44が当接されている。これにより、アレイレーザ素子40から発生した熱は、ステム43の第1面から第2面へと直接的に導かれるので、ステム43内に滞留することなく、フィン4へと導かれる。それゆえ、アレイレーザ素子40を効率よく冷却することができる。また、アレイレーザ素子40が第1面に当接されることにより、アレイレーザ素子40がステム43の第1面以外の箇所に当接される場合に比べ、ヘッドランプ400の小型化を図ることができる。
【0308】
なお、
図22に示すように、本変形例では、ステム43の第1面の中心が発光部13と略対向する位置となるように、ステム43および発光部13が配置されている。ただし、発光部13とアレイレーザ素子40との間にミラーを挟むことにより、ヘッドランプ100のように、紙面横方向に(フィン4の表面が鉛直上向き方向となるように)フィン4を設置しても良い。その場合、フィン4を、ステム43および放熱ベース3で共有しても良い。
【0309】
(反射ミラー44)
反射ミラー44は、反射ミラー12aと同じ機能を有しており、アレイレーザ素子40に対向するように備えられている。反射ミラー44は、ステム43の第1面のほぼ中心位置に備えられている。これにより、アレイレーザ素子40の各レーザチップ41から出射されたレーザ光が、反射ミラー44に適切に照射され、当該反射ミラー44にて反射されたレーザ光が発光部13へと導光される。また、例えば反射ミラー44がレーザ光を反射せずに吸収してしまうなど、反射ミラー44におけるレーザ光の反射ロスによって発生した熱を効率よく放散させることができる。
【0310】
また、反射ミラー44は、ステム43の第1面に当接されており、その当接後にレーザチップ41が当接されることが好ましい。この場合、レーザ光の導光制御や、発光部13における発光形状および発光点位置などを考慮してのアレイレーザ素子40の設置位置を容易に調整することができ、ヘッドランプ400の製造を容易にすることができる。
【0311】
また、反射ミラー44は、1つのアレイレーザ素子40に対して、1つの反射ミラーが対向するように備えられていても、当該アレイレーザ素子40が備える複数のレーザチップ41それぞれに対して、複数の反射ミラーが対向するように備えられていてもよい。
【0312】
反射ミラー44が複数の反射ミラーからなる場合には、アレイミラーであることが好ましい。発光部13における発光形状に応じて、反射面カーブが異なる複数種類の反射ミラー(立上ミラー)を一括して形成しているため、製造工程を簡略化することができる。また、レーザチップ41とアレイミラーを構成する1つの反射ミラー44とが一対一に備えられているので、当該レーザチップ41から出射されたレーザ光を、発光部13に精度よく導光することができる。
【0313】
(キャップ45)
キャップ45は、
図23に示すように、アレイレーザ素子40および反射ミラー44を保護するために、ステム43の第1面を封止している。封止された内部は、ドライエアで満たされている。封止方法は、抵抗溶接であるが、他の方法でも良い。
【0314】
これにより、レーザ光による集塵を防ぐことができるとともに、アレイレーザ素子40および反射ミラー44に塵や埃が降りかかることを防ぐことができる。キャップ45の一部(少なくともレーザ光が形成する光路上となる部分)は、透明板(例えばコバールガラス)で構成され、反射ミラー44によって反射されたレーザ光を透過させる。
【0315】
(アレイレーザ素子40のバリエーション)
次に、アレイレーザ素子40のバリエーションについて、
図23(a)および(b)を用いて説明する。なお、アレイレーザ素子40aおよび40b、反射ミラー44aおよび44bは、それぞれアレイレーザ素子40、反射ミラー44と同様の機能を有している。サブマウント群42aおよび42bは、複数のサブマウント42から形成されている。
【0316】
図23(a)の場合、ステム43のほぼ中央位置に2つの反射ミラー44aが備えられ、それぞれの反射ミラー44aと対向するように、2つのアレイレーザ素子40a(第1および第2レーザ光源群)が備えられている。
【0317】
アレイレーザ素子40aおよびサブマウント群42aは、ステム43の第1面から見ると矩形状となっている。この場合、レーザチップ41およびサブマウント42からなるレーザ光源が複数あっても、それらをレーザ光源群としてひとまとまりに配置することができるので、その配置領域を小さくすることができる。また、反射ミラー44aは、アレイミラーである。
【0318】
なお、
図23(a)では、アレイレーザ素子40aが2つの場合について説明したが、これに限らず、3つ以上のアレイレーザ素子40aを配置してもよい。例えば、
図23(a)の1つのアレイレーザ素子40aを2つに分割してもよい。
【0319】
また、
図23(b)の場合、ステム43のほぼ中央に備えられた反射ミラー44bに対向するように、1つのアレイレーザ素子40bが備えられている。アレイレーザ素子40bおよびサブマウント群42bは、ステム43の第1面から見ると円形状となっている。すなわち、アレイレーザ素子40bは、反射ミラー44bの周囲に配されている。この場合、
図23(a)のようにアレイレーザ素子40bが矩形状に形成される場合に比べ、よりヘッドランプ400の小型化を図ることができる。
【0320】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。