(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
2つ以上の視差を有する画像を撮像し、該視差を有する画像間の視差を調整した画像データを出力する撮像装置と、前記画像データの少なくとも1つ以上の画像を表示部に表示し、前記表示した視差を有する画像の指定された領域の視差値の算出を行うと共に該視差値に基づいて前記指定された領域の実際の空間情報を算出する空間情報算出装置と、からなる空間情報算出システムであって、
前記撮像装置は、
前記画像データに、当該画像データの視差の調整に関わる視差調整関連情報を付属させて画像ファイルを出力するファイル生成部を有し、
前記空間情報算出装置は、
前記視差調整関連情報から前記視差を有する画像の指定された領域における補正視差量を取得する補正視差量取得部を有し、前記補正視差量に基づいて前記視差値を補正することを特徴とする空間情報算出システム。
前記視差調整関連情報は、撮像時と前記画像ファイルとしての出力時での視差を有する画像の相対位置の変化量である視差調整量であることを特徴とする請求項1に記載の空間情報算出システム。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明に係る空間情報算出システムについて各実施例を挙げ図面を参照しながら説明する。
【0017】
<第1の実施例>
図1は、本発明の空間情報算出システムの構成例を示す図である。
図1の例の空間情報算出システム1は、立体画像撮像装置100と、空間情報算出装置200とから成る。
【0018】
立体画像撮像装置100は、視差を有する2つの画像を撮像し、該視差を有する2画像間の視差を調整した画像データを画像ファイルとして出力する。画像ファイルは、フラッシュメモリやハードディスクへ記録された形態で、またはネットワークを通じた形態で、立体画像撮像装置100から空間情報算出装置200へ出力される。
【0019】
空間情報算出装置200は、上記画像データに基づいて一つの視差を有する画像を表示し、該表示した画像に対するユーザ入力を受け付ける。この空間情報算出装置200は、後述の画像処理部にて、ユーザ指定された領域の視差値の算出を行うと共に該視差値に基づいて上記指定された領域の実際の空間情報を算出する。ここでの空間情報とは、撮影時における実際の3次元空間情報であり、指定する領域までの実際の距離や幅等であり、空間情報算出装置200は、例えば、算出した空間情報を視差を有する画像上に重畳表示する。
【0020】
本発明の第1の実施例では既存の立体画像撮像装置とファイルフォーマットを用いるため、先に立体画像撮像装置とファイルフォーマットに関して述べる。
図2は、
図1の立体画像撮像装置(以下、撮像装置)100の概略構成を示すブロック図である。
撮像装置100は立体画像を撮影するもので、撮像部101と画像記録部102から構成される。
【0021】
撮像部101は、2組のレンズ、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)のセンサから構成される撮像モジュールと、それらを制御する制御部、メモリなどから構成され、ユーザによって撮影されたそれぞれの画像データと撮影時の設定情報である撮影情報を画像記録部102へ出力する。
画像記録部102は、画像処理部103、符号化部104、付属情報生成部105、ファイル生成部106を備え、撮像部101から得られた画像データと撮影情報を画像ファイルとして記録する処理を行い、記録媒体への記録またはネットワークなどへの出力を行う。
【0022】
撮像装置100全体の動作に関して詳細に説明する。
撮像部101では平行に配置された2組の撮像モジュールを備え、視点位置の異なる画像データである画像1a、画像2aがそれぞれ生成される。ここでは、画像1aは被写体に向かって左側の撮像モジュールで撮影された画像であり、画像2aは右側の撮像モジュールで撮影された画像であり、2つの画像は視差を有する。撮像部101で生成された2つの画像データは画像処理部103へと出力される。また、このとき、撮影時の画角を示す、焦点距離情報などの撮影時の設定情報を撮影情報として付属情報生成部105へと出力する。
【0023】
画像処理部103は入力された2つの画像1a、画像2aの画像サイズや色調整や相対位置を変更して視差を調整する。例えば、平行配置で撮影された画像は遠くの被写体になるほど視差が小さく、手前の被写体になるほど視差が大きくなる。このような画像で立体視するとすべて飛び出し方向の視差であり、無限遠がディスプレイ面となる画像となる。一般的にはディスプレイ面を境に飛び出しと引っ込み視差となるような画像が望ましいため、左右の相対位置を変更することで適切な立体視画像となるように処理をする。
【0024】
ここで、上記の視差に関して簡単に説明する。
図3(A)は平行配置された視点位置から撮影した場合の被写体までの距離と視差の関係を示したグラフであり、横軸が距離、縦軸が視差を表す。
図3(A)の曲線kで示すように2つの視点間の距離より被写体距離が十分大きくなるにつれて視差は0に近づく。また、逆に視点位置に近づくにつれて視差が大きくなる。
【0025】
図3(B)は平行配置された2つの撮像モジュールで撮影された左側視点の撮影画像B1と右側視点の撮影画像B2を示している。2つの撮影画像は被写体O1とO2と背景O3で構成されている。このとき背景は視点間距離に対して十分遠いものとする。この場合、遠景である背景O3は視差が0であり、被写体O1,O2は共に飛び出し方向の視差が付いている。また、この視差の大きさはO2<O1となる。この視差と距離との関係を
図3(A)に示すと曲線k上の点O1〜O3のようになる。
【0026】
撮影画像B1、B2をこのまま立体表示すると背景O3がディスプレイ面となり、O1、O2が飛び出した立体画像となる。一般的には飛び出し視差が大きすぎると眼精疲労の原因になるなどの課題や、実際に見える景色に近い奥行き感を得るために遠景は引っ込み方向の視差にする方が望ましい。そこで、左右画像の相対位置を変えることで遠景が引っ込み方向の視差となるように調整する。例えば手前の被写体O1の前面を視差0となるように左右の相対位置を変化させた場合、
図3(A)のO’1〜O’3に示す視差になる。このとき、立体視すると被写体O1はディスプレイ面となり、被写体O2、背景O3は奥行に引っ込んだ位置として見られ、立体視しやすく、奥行き感のある立体映像となる。
【0027】
このように、立体視用の画像は画像間の相対位置を変化させて視差調整し、実際に撮影された相対位置とは異なる視差となるようにして記録される場合がある。
【0028】
上述したような画像の相対位置合わせなどの処理を画像処理部103が行い、処理結果は画像1b、画像2bとして符号化部104に出力される。また、画像処理部103によってどのような処理を行ったかを示す情報が画像処理情報として付属情報生成部105に出力される。画像処理情報は例えば、画像のサイズ変更をした場合のサイズ情報などである。
【0029】
符号化部104は画像処理部103から得られた画像1b、画像2bの符号化を行う。符号化部104は、例えば、JPEG(Joint Photographic Experts Group)画像として圧縮する場合には、それぞれの画像データに対してJPEG圧縮処理を行い、圧縮画像データを生成し、ビットマップなど非圧縮画像として記録する場合には、このような圧縮処理は行わずに目的のデータ形式に合わせて画像データを出力する。また、符号化部104はどのような符号化を行ったかを示す符号化情報を付属情報生成部105に出力する。本例では、画像1b、画像2bのデータをJPEG圧縮処理した画像1c、画像2cが出力されるものとする。
【0030】
付属情報生成部105では撮像部101と画像処理部103、符号化部104からそれぞれ得られた撮影情報、処理情報と符号化情報を基に、画像ファイルの付属情報として記録可能なように変換した付属情報を生成し、ファイル生成部106へと出力する。この付属情報には、例えば、撮像機器のメーカ名や機種名といった画像ファイルを生成した撮像機器を識別する情報である撮影機器情報が含まれ、空間情報算出装置200において、視差補正量の算出時の視差調整関連情報として扱われる。視差補正量の算出に関しては後に詳細に説明する。
【0031】
次にファイル生成部106の処理に関して説明する。ファイル生成部106は、符号化部104から入力された画像データ(画像1c、画像2c)と付属情報生成部105から入力された付属情報とを関連付けて一つのファイルとして記録する。
【0032】
ここで、ファイル構成に関して
図4に示す。近年では立体撮像装置の記録フォーマットとしてCIPA(一般社団法人カメラ映像機器工業会)規格であるCIPA DC−007 マルチピクチャーフォーマット(MPF:Multi-Picture Format)を扱う機器が増えてきており、画像1c、画像2cを該規格に沿った形で記録するものとする。
図4では、画像1c、画像2cはそれぞれExif(Exchangeable Image File Format)で規定されるファイルフォーマット構成で連続して記録される。
【0033】
画像1c、画像2cはJPEG圧縮して記録され、付属情報はヘッダ部分のAPP(アプリケーションマーカセグメント)にExif規格やMPF規格に沿った形で記録される。なお、Exif付属情報はAPP1に記録され、MPF付属情報はAPP2に記録される。Exif付属情報としては、画像1c、画像2cに関する撮影機器情報等の撮像素子、撮像機器の情報や露光時間、Fナンバーなどの撮影条件や画像読み出しに関する情報が記録される。また、MPF付属情報としては、両画像の視点位置の関係を示す基線長や輻輳角情報、または立体、パノラマなど用途を識別する情報などが記録される。
【0034】
また、先頭画像である画像1cのMPF付属情報には、MP Index IFDによって画像2cの記録位置やサイズ、MPF構造でいくつの画像が記録されているかを示す画像数に関する情報などの情報が記録される。
ここで各画像データの両端のSOI、EOIはそれぞれの画像の領域の開始と終了とを識別するための情報である。
本例では画像1c、画像2cを上述した標準化されたMPFで記録するものとしている。
【0035】
図5は、
図1の空間情報算出装置200の概略構成を示したブロック図である。空間情報算出装置200はファイル読み出し部201、画像処理部202、表示部203、ユーザ入力部204によって構成される。
【0036】
ファイル読み出し部201は、
図4に示すような画像ファイルからヘッダ部分の管理情報を読み取り、ファイル形式の判別や付属情報、画像データ位置を判別し、視差を有する2つのJPEG画像データとExif付属情報やMPフォーマット付属情報などを抽出する。抽出した2つの画像データ(画像1、画像2)と付属情報は画像処理部202へと出力される。この時、画像1が左視点の撮影画像、画像2が右視点の画像であり、画像1が基準画像として扱われるものとしている。次に、画像処理部202は、入力された画像データを表示部203が処理可能な形式へと変換して画像データを出力したり、視差のある2つの画像データからユーザの指定する領域の空間情報を算出し、画像データと共に表示部203へ出力したりする。動作の詳細については後述する。
【0037】
表示部203は、画像処理装置から入力された画像を表示したり、ユーザが指定した内容に応じて算出された距離やサイズ情報を表示したりする。本例では、表示部203が画像1及び画像2のうち基準画像である画像1のみを表示し、該表示された画像に基づいてユーザがユーザ入力部204によって領域を指定するものとする。例えば、ユーザ入力部204が画像上に表示されたカーソル位置の情報を取得するものである場合には、画像上に表示されたカーソルをユーザが操作し、目的の領域を選択するものとする。また、タッチパネル液晶のように表示と入力が一体化したものでも構わない。この場合には、表示画面上を指などで押すことでユーザが目的とする領域を指定し、その座標情報をユーザ指定領域情報としてユーザ入力部204が画像処理部202に出力する。また、表示部203は、画像処理部202によって算出された結果を画像上に重畳し、ユーザに視覚的に分かるように表示する。例えば、長さであれば指定した2点を結んだ線分とその2点間に対応する実空間上での長さの値を画像上に重畳して表示するなど、視覚的に分かりやすく表示することが望ましい。
【0038】
ここで、各部の動作について具体的に説明する。
【0039】
画像処理部202により処理された画像及び算出された空間情報は表示部203に表示される。本例では、表示部203が画像1及び画像2のうち基準画像である画像1のみを表示し、該表示された画像に基づいてユーザがユーザ入力部204によって領域を指定するものとする。例えば、ユーザ入力部204は画像上に表示されたカーソル位置の情報を取得するものである場合には、画像上に表示されたカーソルをユーザが操作し、目的の領域を選択するものとする。また、タッチパネル液晶のように表示と入力が一体化したものでも構わない。この場合には、表示画面上を指などで押すことでユーザが目的とする領域を指定し、その座標情報をユーザ指定領域情報として画像処理部202に出力する。また、画像処理部202によって算出された結果を画像上に重畳し、ユーザに視覚的に分かるように表示する。例えば、長さであれば指定した2点を結んだ線分とその2点間に対応する実空間上での長さの値を画像上に重畳して表示するなど、視覚的に分かりやすく表示することが望ましい。
【0040】
また、本実施例では、2つの視差を有する画像のうち1つの画像のみを表示した場合を示しているが、これに制限されることなく、2つの画像を同時に表示するような構成としてもよい。この場合、1つの視差を有する画像を表示する場合に比べて各画像を表示する領域は狭くなるが、2つの視差を有する画像に対応点を表示することで対応箇所が間違っていないか確認することができる。表示する画面領域が広く、対応点検出の誤判定を低減させる場合には有効である。
【0041】
ここで、本発明の特徴部に関わる画像処理部202について以下説明する。
図6は、
図5の画像処理部202の概略構成例を示したブロック図である。
画像処理部202は、補正視差量取得部210、カメラパラメータ取得部211、視差値算出部212、3次元位置情報算出部213、距離・サイズ情報算出部214から構成される。
【0042】
補正視差量取得部210は、画像保存時の視差調整量を取得する。補正視差量取得部210は、付属情報のExif付属情報から撮像機器のメーカ名や機種名である撮影機器情報を参照し、画像がどの撮像装置によって撮影されたか判定する。
また、補正視差量取得部210はこのような撮影機器情報とその機器での視差調整量を関連づけた参照テーブル210aを有しており、撮影機器に対応する視差調整量を取得する。視差調整量は多くの撮影機器で固有の値となっており、例えば撮像装置から2m先の領域で視差が0(立体視時にはディスプレイ面となるポイント)とするなど、ある一定距離のところの視差が0となるように左右画像の相対位置を変化させる調整をしている場合が多い。
【0043】
また、この視差を0とする輻輳点の位置は撮影時のズーム倍率によっても異なる場合が多く、例えばレンズのワイド端での撮影時には2mの距離を視差が0となるように視差調整し、ズーム端での撮影時には6mの距離を視差が0となるように視差調整する。このようなズーム倍率はExif付属情報の中の焦点距離情報で判別することが可能である。そのため、参照テーブル210aは各撮像機器とその焦点距離に対応した視差調整量の情報を有し、単に撮像機器だけでは判別できない場合には、補正視差量取得部210ではさらにExif付属情報の中の焦点距離情報を基に参照テーブル210aから視差調整量を判定する。
【0044】
また、視差調整量は撮影時の画像サイズの設定でも異なる。一般的には撮像機器では保存する解像度(画像サイズ)を設定することが可能で、センサの画素数以下の解像度で保存することができる。センサの解像度より小さな解像度に設定して撮影すると撮像素子で得られた画像データを切り出し処理や縮小処理して保存する。視差調整は基本的には画像単位で行われるため、撮像装置がある一定距離の視差が0となるように視差調整している場合には、撮影画像サイズによって視差調整の値が異なり、撮影画像サイズが小さい程その視差調整量も縮小されて小さくなる。そのため、参照テーブル210aはさらに画像サイズごとの視差調整量に関する情報を有しており、補正視差量取得部210は撮像機器情報と画像サイズを基に参照テーブル210aから視差調整量を判定する。画像サイズ情報は例えばExif付属情報内の画像の高さを示すタグや画像の幅を示すタグから得ることができる。このように、撮像機器情報に加えて焦点距離情報や画像サイズ情報を識別することでより正確に視差調整量を識別することができる。
【0045】
この参照テーブル210aはネットワークから更新するなどして常に最新の情報へとすることが望ましい。更新可能な構成とすることでより多くの撮像装置で撮影された画像ファイルに対応することができる。また、本実施例では参照テーブル210aを補正視差量取得部210内の記録領域に格納しているものとしているが、これに制限されるものではなく、通信機能を持たせることでネットワークを通じて撮像装置内に外部にある参照テーブル210a内のデータを参照するようにしても構わない。このように、補正視差量取得部210では撮像機器や焦点距離情報などを参照することで視差調整量を取得し、補正視差値として視差値算出部212へと出力する。
【0046】
カメラパラメータ取得部211は付属情報からカメラの外部パラメータや内部パラメータを取得する。ここで、カメラの外部パラメータとは2つの画像がどのような配置の撮像モジュールによって撮影されたかを示す情報であり、例えば2つの撮像モジュール間の距離である基線長や撮像モジュールの光軸の相対的角度を示す輻輳角などがある。輻輳角は平行配置であれば0が記録されている。カメラパラメータ取得部211ではこのような2つの画像が平行配置か輻輳がある状態で撮影されたのかの情報を視差値算出部212へ視差値算出パラメータとして出力する。また、基線長、焦点距離情報、撮像素子の画素ピッチなどの情報を3次元位置情報算出部213へ出力する。
【0047】
視差値算出部212は、ユーザ指定領域情報に対応した座標に対する視差値を算出する。例えば、ユーザによって左画像の画像上のある点が指定された場合、その座標における対応点を右画像上から判定し、そのずれ量を視差値とする。対応点とは左右画像、すなわち視差を有する画像に写る被写体上の同じ特徴点を示す。本実施例では2つの画像は平行配置された撮像モジュールによって撮影された画像であるものとしているので、視差算出パラメータから輻輳角0、つまり平行配置であるとの情報が取得され、次に記載する視差値算出処理を行う。ここで、本処理における視差算出に関して概要を説明する。
【0048】
本例の視差算出はブロックマッチング法を用い、ブロック単位での類似度により2つの画像間で同じ被写体の同一点の位置を検出し、そのずれ量(視差)を検出する。この同一の点に係る画像1、画像2中の2つの点を対応点と呼ぶ。対応点の探索を行うために評価関数としてSAD(Sum of Absolute Difference)を用いる。SADでは画像1、画像2のそれぞれで注目画素を中心にウィンドウを設定し、設定したウィンドウ間の各画素の輝度の差を求め、その各画素間から得られた輝度の差の和を算出する。同様な処理を画像2側の注目画素を変えながら行い、値が最も小さい注目画素が対応点であるとする。
【0049】
ここで、上述の処理内容を具体的に説明する。
図7(A)には被写体Xを水平方向に視点の異なる位置から撮影した場合の概要図を示している。左視点から撮影された画像は画像1であり、右視点から撮影された画像は画像2になる。このとき、撮影された画像を
図7(B)に示している。
図7(B)では視点位置が異なることで、被写体Xの位置がそれぞれの画像で異なる位置に存在することが分かる。
【0050】
画像1を基準に視差を算出する場合において被写体Xの一つの頂点を特徴点とした際のブロックマッチングの説明をする。
図7(C)に示すように、この特徴点が画像1上の画素aに存在するとした場合に、画素aを中心とした3×3の大きさのウィンドウM1を設定する。次に、画像2において画素aと同一の位置にある画素a’0を探索開始点として設定し、3×3のウィンドウM2を設定する。次に設定したウィンドウ間の各画素の輝度の差を求め、その各画素間から得られた輝度の差の和を算出する。例えば、
図7(D)のように、それぞれの設定したウィンドウの画素の値をX1〜X9、X’1〜X‘9とすると、以下のような計算を行いSAD値を求める。
【0051】
【数1】
【0052】
平行配置した撮像モジュールで撮影された視差を有する画像は無限遠の視差が0であり、近くの被写体になるほど視差が付く。このとき、画像1を基準として画像2が右視点の場合には、画像2上の特徴点が左側に移動する。そこで、探索方向を左側として画素a’0から左方向に注目画素を変更していき、上述したSAD値を順次求め、得られたSAD値の中で最小値をとる注目画素を対応点とする。この場合、対応点である画像2上の画素a’1が最も値が小さい結果となった。
【0053】
このような処理をユーザ指定領域に対して行うことで指定領域に対する視差値を取得することができる。本例では基準画像は画像1であり、画像1と画像2のサイズは1920×1080、ウィンドウサイズは注目画素を中心に15×15として設定して視差算出を行っている。なお、ここでは上記のように画像やブロックサイズを設定したが、これに限定されるものではなく精度や処理量を考慮し、適宜設定すればよい。また、本実施例ではSADを用いたブロックマッチングによって求めたが、他の評価関数を用いたブロックマッチングや特徴点を検出し、その特徴量(類似性)で対応点を求める特徴点マッチングなどや他の手法でも構わない。
【0054】
視差値算出部212は、上述のように視差値を算出する際に、補正視差量取得部210から入力された補正視差値に基づいて画像の相対位置を補正して視差値を算出することで、視差調整前の視差値を取得することができる。このように、視差調整して記録された画像の視差値を補正視差量に基づいて補正することで撮影時の平行配置時の視差値を得る。また、2つの視差を有する画像から視差値を算出してから得られた視差値を補正視差値に基づいて補正するのでもよく、上述した相対値を変化させてから視差を算出する方法とは視差調整して記録された画像の視差値を補正視差量に基づいて補正する点では同意とする。ただし、この場合、視差調整後の画像は輻輳点(視差が0の位置)を境に逆符号になるため、視差算出時に両方向に対応点を探索しにいく必要があり、処理が複雑になる。一方、相対値を補正した後に視差算出した方が1方向の探索で済むため、処理が簡素化できる効果がある。
【0055】
視差値算出部212で算出された視差情報は3次元位置情報算出部213に入力され、視差値と距離算出パラメータを基に撮影時における指定した点の実際の3次元的な位置情報が算出される。ここでの3次元位置は基準画像を撮影した撮像モジュールの光学中心を基準とした実空間座標上の位置であり、ここでは撮像装置から被写体までの距離をZ座標、左右方向をX座標、上下方向をY座標で表すものとする。また、このとき、基準画像の画像の中心を原点とする。
【0056】
例えば基準画像上の左上を原点とした場合のある座標点K(x、y)があるとし、画像の中心を原点として変換した場合に、点Kの座標は(x’、y’)と表せるとする。この時、点Kに対する視差値をD、撮影時の焦点距離をf、基線長をB、センサの画素ピッチをPとすると、基準画像を撮影した撮像部の光学中心を基準点として点Kまでの実空間上の距離Zは下記のように表すことができる。
Z=(B×f)/(D×P)
【0057】
また、センサ1画素あたりの大きさは距離Zの平面上ではZ*P/fと示せるので基準画像中心を基準とした3次元位置情報(X,Y,Z)のXとYは下記のように表せる。
X=x’×B/D
Y=y’×B/D
【0058】
このようにして算出可能な実際の空間上の3次元位置情報(X,Y,Z)は画像上の指定座標と関連付けられて距離・サイズ情報算出部214に出力される。このような、3次元位置の算出はユーザ指定領域に伴う各座標点に対して算出を行う。
【0059】
距離・サイズ情報算出部214ではユーザから指定された領域中の各座標の3次元位置情報から距離や長さ、面積、体積などユーザの要求に応じた値を算出する。例えば、被写体までの距離情報が要求されている場合には、ユーザの指定した被写体上の点の3次元位置情報のZを被写体距離として出力する。また、指定する2点間の長さが要求される場合には、2点A,Bの3次元座標をA(Xa,Ya,Za),B(Xb,Yb,Zb)とすると下記のように長さLを算出できる。
L=√(|Xa−Xb|
2+|Ya−Yb|
2+|Za−Zb|
2)
【0060】
上述のように各点の3次元位置情報から長さや面積を求めることから、被写体と撮像装置が正対して撮影された画像でなくても被写体の実際の大きさの取得が可能となる。
【0061】
このように、本発明では、既存の立体撮像装置において視差調整がされた画像であっても、画像の付属情報からその視差調整量を判定し該視差調整量に基づいて空間情報算出装置側で再調整を行っているので、ユーザの指定する任意の領域の距離や長さや大きさなどを取得できる。言い換えれば、新たに専用の装置やシステム、データの記録転送方式を準備することなく、すでに撮影された画像ファイルであってもその画像ファイルから大きさ情報が取得できるためコスト増加を抑えることができる。また、ユーザが既に有していた画像ファイルの活用ができる。
【0062】
<第2の実施例>
次に、本発明の空間情報算出システムの別の例について、
図8〜
図10を用いて詳細に説明する。
第2の実施例は、第1の実施例における画像処理部103(
図2)と補正視差量取得部213(
図6)の形態が異なり、撮影装置側では、既存の標準化された画像フォーマットを用いて、画像ファイル中に視差調整量を付属情報として記録し、空間情報算出装置側では、補正視差量取得部が付属情報から視差調整量を抽出するものである。
【0063】
図8に本実施例における撮像装置の概略ブロック図を、
図9に本実施例における空間情報算出装置の概略ブロック図を、
図10に
図9の画像処理部401の概略ブロック図を示す。なお、本実施例における第1の実施例と同様の部分については、同じ番号を付与することによりその詳細な説明は省略する。
【0064】
図8の撮像装置300において、画像処理部301は調整視差量取得部302を有し、画像処理部301によって調整された左右画像の相対位置の変化量の情報を取得する。例えば、画像1aを基準にして、画像2aの相対位置を10画素分変更して視差調整した場合であれば、画像1bの調整量を0画素、画像2bの調整量を10画素とする。このとき、どちらの方向へ相対位置を変化したかの情報も併せて取得する。例えば、右視点に対応する画像2aを左側に10画素シフトした位置で切り出すことで程よい視差量で遠景の被写体が引っ込み視差となる場合には、左方向へのシフトを負の値とし、右方向のへのシフトを正の方向とすると、−10を画像2bの調整量とする。このような視差調整量の情報を画像処理情報として付属情報生成部105へと出力する。付属情報生成部105では入力された視差調整量をそれぞれの画像のヘッダ領域に記録する。例えば、ExifのMaker Noteの領域は各メーカが自由に使用可能な記録領域であり、この領域に視差調整量を記録するものとする。
【0065】
次に、
図9の空間情報算出装置400の説明をする。空間情報算出装置400の画像処理部401はファイル読み出し部201で分離された2つの画像データと付属情報、ユーザ入力部204から出力されたユーザ指定領域情報を受け取り、ユーザ指定領域情報に応じた距離、空間情報の算出を行う。
【0066】
ここで、画像処理部401について
図10を用いてさらに詳細に説明する。
図示した画像処理部401の補正視差量取得部402は、撮像装置300によって生成された画像ファイルから付属情報内に記録された視差調整量の格納位置を検出し、その視差調整量を取得する。ここでは、ExifのMakernote内の該当するタグを検出し、それに対応する値を抽出する。次に、取得した視差調整量からどのように左右画像位置の相対位置を変化させたか判定し、視差算出部210で用いる補正視差値として出力する。このように視差補正値は画像データの付属情報から直接取得可能なため、データ取得の簡素化が行える。
【0067】
視差値算出部212では補正視差量取得部402から得られた補正視差値を基にユーザの指定する領域の視差値を補正することが可能であり、また、実施例1の場合と同様に3次元位置情報算出部213によって指定領域の3次元情報を算出し、距離・サイズ情報算出部214によって被写体までの距離や被写体の大きさなどを求めることができる。このように、撮像装置300側でファイル内に視差調整量を記録し、空間情報算出装置内の画像処理部401で画像データと共に読み出すようにすることで、データベースを持つ必要がないためシステムの簡素化が図れる。また、撮像装置300においても画像データの記録の際に付属情報として記録するだけであるので、ソフトやファームウェアのアップデート等の対応で容易に実現することが可能となる。本実施例では既存の標準化されたフォーマットと撮像装置300を用いて画像上でユーザの指定する領域の距離や大きさを取得可能であり、特別に専用のシステムを構築する必要がない。
【0068】
以上の例では平行配置された2画像で示したが、これに制限されるものではなく3画像以上でも構わない。その場合には、2つの画像を選択し、その対応付けなどを同様にすればよい。また、画像のファイル構成は2つの視差を有する画像を左右方向や上下方向に並べて結合して1枚の画像とした構成でも構わない。その場合、例えばExifのMakernote内に画像ファイルの構成を示す情報を記録するなどファイルのヘッダ部分にデータ構成の識別情報を付加し、あとは本実施例と同様にして必要な付属情報を読み出すことで調整された視差量を取得し、補正した視差値を用いて距離や長さの情報を得ることが可能である。