特許第6022231号(P6022231)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6022231
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月9日
(54)【発明の名称】建設機械
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/00 20060101AFI20161027BHJP
【FI】
   E02F9/00 D
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-141529(P2012-141529)
(22)【出願日】2012年6月25日
(65)【公開番号】特開2014-5638(P2014-5638A)
(43)【公開日】2014年1月16日
【審査請求日】2014年9月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 泰
(72)【発明者】
【氏名】早川 祐人
(72)【発明者】
【氏名】眞野 英徳
【審査官】 石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−196253(JP,A)
【文献】 特開2008−202232(JP,A)
【文献】 特開2000−064349(JP,A)
【文献】 特開2001−064996(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/00
F02M 35/00−35/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部走行体の上部に旋回可能に上部旋回体が搭載され、前記上部旋回体の前部側にキャブを、エンジンの吸気をフィルタリングするエアクリーナを保持するユーティリティ室を後部側に備えた建設機械において、
前記ユーティリティ室は前側の壁面及び後ろ側の壁面により区画されており、前記エアクリーナの下面にこのエアクリーナを前記ユーティリティ室内に保持するブラケットを設け、前記ブラケットは、前側の壁面と後ろの壁面とに係止する係止部を有し、この係止部の少なくともいずれかがL字溝であり、且つ
前記ブラケットを、前記前側の壁面に係止する前ブラケットと、前記後ろ側の壁面に係止する後ブラケットで構成し、前記エアクリーナを前記ユーティリティ室に保持するために取り付けるときに、前記前ブラケットと前記後ブラケットとを相対的にスライド可能としたことを特徴とする建設機械。
【請求項2】
前記前ブラケットと前記後ブラケットの相対的なスライド距離よりも前記L字溝の水平方向長さを長くしたことを特徴とする請求項に記載の建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は建設機械に係り、特に建設機械が備えるエンジン吸気用のエアクリーナに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の建設機械の例が、特許文献1に記載されている。この公報に記載の建設機械では、車体の組み立て作業性を向上させるために、新たな部品を設けることなくフレーム上にユーティリティ室を設けている。具体的には、第1、第2の熱交換装置を旋回フレームの左側に片寄せて配置し、第2の熱交換装置を第1の熱交換装置の前側に隙間をあけて配置し、この第1、第2の熱交換装置間の隙間をユーティリティ室として形成している。その際、第1、第2の熱交換装置を前後方向の仕切り面として利用するので、新たな仕切り板等の追加が不要であり、旋回フレーム上にユーティリティ室を簡単に構成できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−168739号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、建設機械、例えば油圧ショベルでは、特許文献1に示すように前後方向に配置した2個の熱交換器をそれぞれ箱体に収納し、前方に配置した箱体の後側壁面と後方に配置した箱体の前側壁面間に空間を形成している。そしてこの空間をユーティリティ室として利用している。ユーティリティ室では、エンジンや各熱交換機からの熱風が壁面で遮断されるので周囲に比べて空気温度が低くなる。そのため、エンジン吸気用のエアクリーナ等が配置される。
【0005】
エアクリーナは大型のものでは20kg程度にもなる重量物であり、従来は組み立てライン中で作業できるようにするために、エアクリーナの側面部に取り付け位置を設けていた。しかしながら、エアクリーナには種々の形式があって必ずしも側面部を取り付け位置にすることができないことや、作業効率を向上させるために組み立てライン中での作業ではなく、主要部品が取り付けられた後の作業とせざるを得ず、その場合重量物を狭い空間で吊り上げ機等を使用しないで人手で組み立てなければならなかった。
【0006】
このように狭い空間で、しかも主要部品が組みあがった状態でエアクリーナを組み立てすることについては、上記特許文献1では考慮されていない。また、作業性を向上させるために軽量化した樹脂製のエアクリーナを使用する場合には、取り付け時のトルク管理が重要であるが、狭い場所での作業でありトルク管理が困難である。
【0007】
本発明は上記従来技術の不具合に鑑みなされたものであり、その目的は、建設機械に用いるエアクリーナの取り付け作業性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成する本発明の特徴は、下部走行体の上部に旋回可能に上部旋回体が搭載され、前記上部旋回体の前部側にキャブを、エンジンの吸気をフィルタリングするエアクリーナを保持するユーティリティ室を後部側に備えた建設機械において、前記ユーティリティ室は前側の壁面及び後ろ側の壁面により区画されており、前記エアクリーナの下面にこのエアクリーナを前記ユーティリティ室内に保持するブラケットを設け、前記ブラケットは、前側の壁面と後ろの壁面とに係止する係止部を有し、この係止部の少なくともいずれかがL字溝であり、且つ前記ブラケットを、前記前側の壁面に係止する前ブラケットと、前記後ろ側の壁面に係止する後ブラケットで構成し、前記エアクリーナを前記ユーティリティ室に保持するために取り付けるときに、前記前ブラケットと前記後ブラケットとを相対的にスライド可能としたことにある。
【0009】
そして、この特徴において、前記前ブラケットと前記後ブラケットの相対的なスライド距離よりも前記L字溝の水平方向長さを長くするのがよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、建設機械のユーティリティ室を構成する箱体の壁面にエアクリーナを保持するブラケットを取り付け、このブラケットが箱体の壁面に係止する係止部にL字溝を形成したので、エアクリーナのケーシングが樹脂材料であればトルク管理が容易になり、同ケーシングが鋼板製であれば重量物の人手による持ち上げ時間を短縮でき、建設機械に用いるエアクリーナの取り付け作業性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係るクローラ式の油圧ショベルの一実施例の側面図である。
図2図1に示した油圧ショベルの斜視図であり、作業装置を取り除いて示す図である。
図3図2に示した油圧ショベルの上面図であり、キャブ部等を除いて示す図である。
図4図1に示した油圧ショベル内に形成されるユーティリティ室に配置されるエアクリーナの組立手順を示す分解斜視図である。
図5】本発明に係るエアクリーナの一実施例の正面図及び上面図である。
図6図5に示したエアクリーナの斜視図である。
図7】エアクリーナを載置するブラケットの上面図及び側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る建設機械を、クローラ式の油圧ショベルを例にとり説明する。
図1は、クローラ式の油圧ショベル1の一実施例の側面図であり、図2は作業装置を取り除いた状態の油圧ショベル1の斜視図である。油圧ショベル1は、自走可能な下部走行体2と、この下部走行体2上に旋回装置3を介して旋回可能に搭載された上部旋回体4と、上部旋回体4の前側に俯仰動可能に設けられ、土砂の掘削作業等に用いる作業装置5とを備えている。上部旋回体4は、作業者が搭乗するキャブ15等を搭載し、車体フレームとして機能する旋回フレーム6を有している。
【0013】
上部旋回体4の後部には、作業装置5との重量バランスをとるためにカウンタウエイト16が配置されている。また、上部旋回体4のキャブ15後部には、機械室が形成されており、機械室には詳細を後述するエンジンや油圧ポンプ等の機器が配置されている。これらの各機器は、建屋カバー30で覆われている。建屋カバー30は、油圧ポンプ等の上部を覆う上面カバー30A(図2参照)と、上部旋回体4の左側面部を覆い前方側に配置される左側面ドア30Bと、後方側に配置される左側面ドア30Cと、上部旋回体4の右側面部を覆う図示しない右側面ドアと、上面カバー30A上に開閉可能に設けられ、エンジン17の上部を覆うエンジンカバー30Dとを有している。
【0014】
観音開きの左側面ドア30B、30Cを開放した状態である図2に示すように、左側面ドア30B、30Cの背面側、すなわちキャブ15の真後ろ側には、2個の箱体26、22が配置されている。2個の箱体26、22の間には、ユーティリティ室32が形成されている。ユーティリティ室32には、詳細を後述するエアクリーナ50が、前ブラケット41に載置されて配置されている。キャブ15の右後方には、前部側に燃料タンク20が、後部側に油圧ポンプ18が配置されている。
【0015】
図3に、図2に示した油圧ショベル1を、上面図で示す。この図3は、キャブ15及び建屋カバー30を取り去った状態を示している。上部に旋回装置3が設けられた底板7に、前後方向に延びる2枚の縦板8、9がほぼ平行に立設されている。この左右縦板8、9にほぼ平行であって左右両端側に、左サイドフレーム12及び右サイドフレーム13が配設されている。左右縦板8、9と左右サイドフレーム12、13に接合され左右サイドフレーム2、13とほぼ直交する方向に、間隔をおいて複数の張り出しビーム10〜11Eが配置されている。
【0016】
右縦板9と右張出しビーム11B、11Cで区画される部分には、上述した燃料タンク20が搭載されており、右縦板9と右張出しビーム11C、11Eで区画される部分の前部側であって右張出しビーム11Dの上には、作動油タンク19が搭載されている。右縦板9と右張出しビーム11Eとで区画される部分の後部側には、作業装置5のアクチュエータ等に圧油を供給する油圧ポンプ18が搭載されている。
【0017】
右縦板9と左縦板8とで囲まれた部分であって、最も後部側にはエンジン17が搭載されており、このエンジン17に付設される過給器17Bがエンジン17の近傍であって前方に配置されている。左縦板8よりも左側であってエンジン17の近傍には、エンジン17に冷風を送風する冷却ファン17Aとこの冷却ファン17Aを収容するファンシュラウド22Eが配置されている。
【0018】
左サイドフレーム12は左縦板8よりも前方側に延びており、この前方側に延びた部分は左張出しビーム10Aとともにキャブ支持部14を形成し、キャブ支持部14に図3では図示を省略したキャブ15が搭載される。左張出しビーム10Bの後方には、上述したように2個の箱体22、26が搭載されている。
【0019】
前側の箱体26は主としてオイルクーラ27を収容するためのものであり、オイルクーラ27とこのオイルクーラ27に冷風を送風し駆動モータ28で駆動される冷却ファン29が収容されている。オイルクーラ27は、下部走行体2および旋回装置3、作業装置5等のアクチュエータから作動油タンク19に戻される高温な作動油を冷却する。箱体26は、前側側面を形成する前面板26Aと後側側面を形成する後面板26B及び天井面を形成する上面板26Cを有している。
【0020】
後ろ側の箱体22は主としてラジエータ23とインタクーラ24を収容するためのものであり、エンジン17に対向する側である背面側には、ファンシュラウド22Eが形成された右面板22Dを有している。インタクーラ24は、過給機17Bで発生した圧縮熱を冷却する。前側の箱体26と同様に、後ろ側の箱体22も前側側面を形成する前面板22Aと後側側面を形成する後面板22B及び天井面を形成する上面板22Cを有している。これら2つの箱体22、26間には上述した通りユーティリティ室32が形成されており、エアクリーナ50が前後ブラケット41、42に載置されて搭載されている。ユーティリティ室32は、上部旋回体4にグリースやウェス等の消耗品、各種スパナ、グリースガン等のメンテナンス用工具を収容するのにも使用できる。
【0021】
次に図4ないし図7を用いて、本発明に係るエアクリーナ50およびこのエアクリーナ50をユーティリティ室32に保持収容するための前後ブラケット41、42について、詳細に説明する。図4は、エアクリーナ50をユーティリティ室32に取付ける様子を示す分解斜視図であり、図4(a)は取付けの最初の段階を示しており、図4(b)は取付けの中間状態を示している。図5は、ユーティリティ室32にエアクリーナ50を取付け完了した状態を示しており、図5(a)はその正面図、図5(b)は上面図である。図6はユーティリティ室32にエアクリーナ50を取付け完了後の状態を示す図であり、後ろ側箱体22の前面板22Aを取り除いて示している。この図6は、下方側から見た斜視図である。図7は、エアクリーナ50をユーティリティ室32内に取り付ける際に使用する前後ブラケット41、42の図であり、図7(a)は前ブラケット41の平面図、正面図及び左右側面図、図7(b)は後ブラケット42の平面図、正面図及び左右側面図、図7(c)は前ブラケット61の他の実施例の平面図及び左右側面図である。
【0022】
エアクリーナ50では、有底円筒形のケース54A内に図示しないエレメントが内蔵されており、ケース54Aの開放端側にはふた54Bが周方向複数個所、図では4か所に設けた留め具55で取り付けられている。ケース54Aの上面であって開放端側の近傍には、上下方向に延びる円筒形のエアインレット52が形成されており、ケース54Aの下面であって反開放端側の近傍には、鉛直下向きにバキュエータバルブ53が設けられている。
【0023】
ケース54Aの反開放端面の中央部には、先端にカップリング部57が形成されたエアアウトレット56が設けられている。このエアアウトレット56は、ダクト59の先端に設けたカップリング部58とカップリング部57で結合及び取り外し可能になっている。ケース54Aの軸方向中間部であって下面側には、M字型形状の両脚の下端部を連結した形状の取付けブラケット51が形成されている。取付けブラケット51の下端面には、複数のねじ穴が形成されており、詳細を後述する前ブラケット41が取り付け可能になっている。エアクリーナ50の直径は200〜300mm程度であり、軸方向長さは300〜500mm程度である。エアクリーナ50の重量は、ケース54Aが樹脂製では10kg程度であるが、鋼板製の場合には20kg程度まで重量が増加する。
【0024】
一方、ユーティリティ室32を画成する前側の箱体26の後面板26Bには、前ブラケット41を取り付けるための複数の取付け孔26Bが、ユーティリティ室32を画成する後ろ側の箱体22の前面板22Aには、後ブラケット42を取り付けるための複数の取付け孔22Aが、それぞれ形成されている。なお、前側の箱体26の後面板26Bの周縁部は、後面板26Bの剛性を増すためにユーティリティ室32側に曲げられており、それぞれ水平縁26B及び垂直縁26B、26Bを形成している。同様に、後ろ側の箱体22の前面板22Aの周縁部は、前面板22Aの剛性を増すためにユーティリティ室32側に曲げられており、それぞれ水平縁22A及び垂直縁22Aを形成している。
【0025】
図7(a)、(b)に示すように、前後ブラケット41、42は矩形状の水平台部である上面41A(エアクリーナ50の載置面)、上面42A(スライド面)を有している。前ブラケット41の上面41Aには、エアクリーナ50の取付けブラケット51に設けた取付け用ねじ穴に対応する位置に、取付け孔43Aが複数個形成されている。
【0026】
前ブラケット41の上面41Aから下方に3面の側面が形成されており、1側面が箱体26の後面板26Bへの取付け面(側面)41Bを構成している。この側面41Bには、本発明の特徴である前後ブラケット41、42間でのスライドが可能なように、L字状の溝(L字溝)45B、45Bが形成されている。このL字溝を構成している水平方向に走る溝(水平方向のL字溝)45Bの長さはLである。また側面41Bには、取付け孔45Aも形成されている。L字溝45B45B及び取付け孔45Aは、箱体26の後面板26に形成した取付け孔26Bに対応する。後面板26への取付け面41Bと反対側の側部には、側面が形成されていない。これは、前ブラケット41を後ブラケット42上でスライド可能にするためである。
【0027】
前ブラケット41の上面41Aにおいて、側面が形成されていない側の端部近傍には、複数の取付け孔46Aが形成されている。この取付け孔46Aは、前ブラケット41を後ブラケット42上でスライドさせた後に、前ブラケット41を後ブラケット42に固定するのに用いられる。
【0028】
後ブラケット42でも、矩形状の上面42Aから下方に3側面が形成されており、その1側面が箱体22の前面板22Aへの取付け面42Bとなっている。側面42Bには、複数の取付け孔44Aが形成されている。取付け孔44Aは、箱体22の前面板22Aに形成した取付け孔22Aに対応する。上面42において、側面が形成されていない側の端部近傍には、複数の取付け孔46Bが形成されている。この取付け孔46Bは、取付け孔46Aとともに前ブラケット41を後ブラケット42に固定するのに用いられる。
【0029】
図4に戻り、エアクリーナ50及び前後ブラケット41、42を用いた組立ての様子を説明する。初めにエアクリーナ50の下面を前ブラケット41に載置し、取付け孔43Aとエアクリーナ50の取付けブラケット51のねじ穴とを位置合わせする。そして、ボルト43で前ブラケット41とエアクリーナ50とを固定する。エアクリーナ50のケース54A及び取付けブラケット51が樹脂製の場合には、予め定められたトルクで締結し、トルク管理する。また、後ブラケット42の取付け孔44Aと箱体22の前面板22Aに形成した取付け孔22Aとを位置決めし、ボルト44で後ブラケット42を前面板22Aに締結する。
【0030】
次に、L字溝45B、45B内をボルト45のねじ部がスライドして通過できるように、L字溝45B、45Bに対応するボルト45だけを、箱体26の後面板26Bに形成した取付け孔26Bに仮止めする。前ブラケット41と一体化したエアクリーナ50の前後方向の一方側を後ブラケット42に載置する。すなわち、後ブラケット42の前端部に前ブラケット41の後端部を載置する。その際、取付け孔26Bに仮止めしたボルト45のねじ部をL字溝のうち垂直方向の溝(垂直方向のL字溝)45Bに嵌め込む。これにより、エアクリーナ50の重量は、後ブラケット42とボルト45により支持される。エアクリーナ50は、軸方向には移動可能に保持される(図4(b)参照)。
【0031】
エアクリーナ50の後面板26B側は水平方向のL字溝45Bをガイドとして、前面板22A側は後ブラケット42をガイドとして、エアクリーナ50の軸方向にそれぞれ移動可能になっているので、作業者はダクト59側へエアクリーナ50を押し込むだけで、エアクリーナ50のカップリング部57とダクト59のカップリング部58とがワンタッチで結合する。
【0032】
ここで、図5(b)に示すように、ダクト59は予め留め具59Aを用いて、図示しない係止部材に係止されている。前ブラケット41の垂直方向のL字溝45Bにボルト45が嵌合した状態では、カップリング部57とカップリング部58との間の距離は、水平方向のL字溝45Bの長さLより短い長さLになっている(図4(b)参照)。したがって、カップリング部57、58の結合は、エアクリーナ50を軸方向へ押し込むだけで実現できる。
【0033】
エアクリーナ50とエンジン17側のダクト59とが結合したので、仮止めしたボルト45を締め付ける。それとともに前ブラケット41の取付け孔45Aと後面板26に形成した取付け孔26Bに係止するボルト45とを締め付ける。また、前ブラケット41に形成した取付け孔46Aと後ブラケット42に形成した取付け孔46Bとの位置が合っているので、この位置でボルト46を締め付ける(図6参照)。
【0034】
本実施例によれば、エアクリーナのケースが樹脂製であれば取付け時のトルク管理が容易になり、鋼板製であれば前後ブラケットをスライドさせることにより重量物を持ち上げながらの作業が減り、ともに作業性が向上する。また、前側の箱体26の後面板26B及び後ろ側の箱体22の前面板22Aの周縁部26B〜26B22A、22Aにより、エアクリーナ50を取り付けるブラケットをユーティリティ室32内に水平状態で出し入れするのが困難になっていても、ブラケットを前後ブラケット41、42に分割した形状で形成したので、ユーティリティ室32内への重量物の導入が容易になる。その結果、ラインでの組立て時ではなく、主要部品が組み上がった後の、吊り上げ具などを使用できない状態でも容易にエアクリーナ50の組立てが可能になる。なお、前ブラケット41のエアクリーナ50の軸方向長さを、後ブラケット42の同方向の長さよりも水平方向のL字溝45Bの長さL以上長くして、前後ブラケット41、42が相対的にスライドしてもボルト44、45による支持位置から外れないようにしている。
【0035】
前ブラケットの他の実施例を図7(c)に示す。この図7(c)に示した前ブラケット61が上記前ブラケット41と異なるのは、L字溝45B、45B;45C、45Cを複数設けたことにある。その他は上記実施例と同じである。本実施例によっても上記実施例と同様の効果が得られる。
【0036】
なお上記各実施例における取付け孔22A、26B、46Aは空孔であってもよく、ねじ穴であってもよい。また、上記各実施例ではL字溝を前ブラケット41に設けていたがL字溝は後ろブラケット42に設けてもよいことは言うまでもない。
【0037】
また上記実施例では、ユーティリティ室31を熱交換器を収容する箱体22、26間に形成したが、ユーティリティ室は箱体22、26間に限るものではなく、前後に壁面を有するものであれば、一般の仕切り壁間に設けてもよい。さらに上記実施例では、前後ブラケット41、42にエアクリーナ50を載置しているが、前後ブラケット41、42の下面にエアクリーナ50を取り付け、エアクリーナ50を前後ブラケット41、42から吊り下げる状態にしても、同様の手法で組み立てることができる。
【符号の説明】
【0038】
1…油圧ショベル(建設機械)、2…下部走行体、3…旋回装置、4…上部旋回体、5…
作業装置、6…旋回フレーム、7…底板、8…左縦板、9…右縦板、10、10A、10B…左張出しビーム、11、11A〜11E…右張出しビーム、12…左サイドフレーム、13…右サイドフレーム、14…キャブ支持部、15…キャブ、16…カウンタウエイト、17…エンジン、17A…冷却器、17B…過給機、18…油圧ポンプ、19…作動油タンク、20…燃料タンク、22…箱体、22A…前面板、22A…水平縁、22A…垂直縁、22A…取付け孔、22B…後面板、22C…上面板、22D…右面板、22E…ファンシュラウド、23…ラジエータ、24…インタクーラ、26…箱体、26A…前面板、26B…後面板、26B…水平縁、26B、26B…垂直縁、26B…取付け孔、26C…上面板、27…オイルクーラ、28…駆動モータ、29…冷却ファン、30…建屋カバー、30A…上面カバー、30B、30C…左側面ドア、30D…エンジンカバー、31…底面板、32…ユーティリティ室、41…前ブラケット、41A…上面(エアクリーナ載置面)、41B…側面(箱体取付け面)、42…後ブラケット、42A…上面(スライド面)、42B…側面(箱体取付け面)、43…ボルト、43A…取付け孔、44…ボルト、44A…取付け孔(係止部)、45…ボルト、45A…取付け孔(係止部)、45B、45B、45C、45C…L字溝(係止部)、46…ボルト、46A、46B…取付け孔、50…エアクリーナ、51…取付けブラケット、52…エアインレット、53…バキュエータバルブ、54A…ケース、54B…ふた、55…留め具、56…エアアウトレット、57、58…カップリング部、59…ダクト、59A…留め具。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7