(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記立体物保持部が前記第1の被印刷面を前記インクジェットヘッドと対向させる場合、前記遮光部は、前記吐出方向における第1の遮光位置で紫外線を遮光し、前記立体物保持部が前記第2の被印刷面を前記インクジェットヘッドと対向させる場合、前記遮光部は、前記吐出方向において、前記第1の遮光位置と異なる第2の遮光位置で紫外線を遮光することを特徴とする請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
前記被印刷体保持部は、前記軸部材の回転に連動させて前記遮光部を前記吐出方向に進退させる連動部材を更に有することを特徴とする請求項3に記載のインクジェットプリンタ。
前記連動部材は、中心に前記軸部材が通されることにより前記軸部材の回転に従って回転する楕円カムであり、前記遮光部に接した状態で回転することにより、前記軸部材の回転に連動させて、前記遮光部を前記吐出方向に進退させることを特徴とする請求項4に記載のインクジェットプリンタ。
前記被印刷体保持部は、前記インクジェットヘッドから離れる方向へ前記遮光部を付勢する付勢部材を更に有することを特徴とする請求項5又は6に記載のインクジェットプリンタ。
紫外線硬化型インクを用いて立体物にインクジェット方式で印刷を行うインクジェットプリンタに用いられる部材であり、印刷対象となる前記立体物をインクジェットヘッドと対向させて保持する被印刷体保持部材であって、
インクジェットヘッドと対向させて前記立体物を保持する立体物保持部と、
前記被印刷体保持部材の外部へ向かう紫外線を低減する遮光部と
を備え、
印刷対象となる前記立体物は、前記インクジェットプリンタにより印刷がされる被印刷面として、第1の被印刷面と、前記第1の被印刷面に対する側面である第2の被印刷面とを少なくとも有し、
前記立体物保持部は、前記立体物の向きを変更することにより、前記第1の被印刷面、及び前記第2の被印刷面のそれぞれを、前記インクジェットヘッドと対向させ、
前記第1の被印刷面を前記インクジェットヘッドと対向させる場合、前記立体物保持部は、前記インクジェットヘッドがインク滴を吐出する方向である吐出方向における前記第1の被印刷面の位置が第1の対向位置になるように、前記立体物を保持し、
前記第2の被印刷面を前記インクジェットヘッドと対向させる場合、前記立体物保持部は、前記吐出方向における前記第2の被印刷面の位置が、前記第1の対向位置とは異なる第2の対向位置になるように、前記立体物を保持し、
前記遮光部は、前記立体物保持部に保持されている前記立体物から前記吐出方向と直交する方向に離間して設けられることにより、前記立体物の周囲の少なくともいずれかの方向において、前記被印刷体保持部材の外部へ向かう紫外線を遮光し、
かつ、前記遮光部は、少なくとも一部の位置において前記吐出方向において進退可能に設けられており、前記立体物保持部が前記第1の被印刷面を前記インクジェットヘッドと対向させる場合における前記第1の対向位置、及び、前記第2の被印刷面を前記インクジェットヘッドと対向させる場合における前記第2の対向位置のそれぞれに対応して進退することにより、前記吐出方向と直交する方向において紫外線を遮光する遮光領域を変更させることを特徴とする被印刷体保持部材。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、スマートフォン等の携帯端末の普及に伴い、携帯端末のカバーの需要が大きくなっている。そこで、本願の発明者は、スマートフォン等の携帯端末のカバーのような形状の立体物に対し、インクジェットプリンタで印刷を行う場合のワークの保持の仕方について、鋭意研究を行った。
【0005】
携帯端末のカバー等に印刷を行う場合、端末の裏面を覆う面の他に、その面と交差する側面へも印刷を行うことが望まれる。また、高いデザイン性が望まれる製品であるため、高精度の印刷が望まれる。一方で、携帯端末の本体等と比べて安価な製品であるため、より低いコストで印刷を行うことが望まれる。
【0006】
これに対し、本願の発明者は、先ず、携帯端末のカバー等のような形状のワークに対し、インクジェットプリンタでより適切に印刷を行う方法について、鋭意研究を行った。そして、例えば、携帯端末のカバー等のワークを軸部材に取り付け、軸部材を回転させることでワークの向きを変更することにより、ワークの各面に対して適切に印刷をし得ることを見出した。
【0007】
また、本願の発明者は、更に、このような方法でワークに印刷を行う場合に新たに生じる問題点についても、鋭意研究を行った。そして、紫外線硬化型インクを用いて印刷を行う場合について、このような構成で印刷を行った場合、インクを硬化させるために照射する紫外線がワークから外れた位置に漏れ出す迷光の問題が生じやすい場合があることを見出した。
【0008】
より具体的には、例えば、携帯端末のカバー等のワークに対して印刷を行う場合において、ワークを取り付けた軸部材を回転させることでワークの向きを変更する場合、端末の裏面を覆う面(主印刷面)を被印刷面とするためには、軸部材の回転位置を所定の位置に合わせ、主印刷面をインクジェットヘッドと対向させる。また、側面を被印刷面とする場合、軸部材を回転させ、側面をインクジェットヘッドと対向させる。
【0009】
そして、この場合、主印刷面を被印刷面とする場合と、側面を被印刷面とする場合とで、インク滴の吐出方向(例えば上下方向)における被印刷面の位置が異なることとなる。そして、この位置の変化に伴って紫外線が漏れ出る隙間が生じ、迷光の問題が生じる場合がある。
【0010】
しかし、インクジェットプリンタにおいて印刷を行う場合、プリンタの近傍にて、オペレータ(ユーザ)がプリンタの操作を行う場合がある。そのため、紫外線が漏れ出すことは好ましくない。また、漏れ出した紫外線は、例えばプリンタの部品や周囲の樹脂部品等を劣化させる場合もある。そのため、ワークから外れた位置に漏れ出す迷光は、極力少なくすることが望まれる。そこで、本発明は、上記の課題を解決できるインクジェットプリンタ、被印刷体保持部材、及び印刷方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、本発明は、以下の構成を有する。
(構成1)立体物にインクジェット方式で印刷を行うインクジェットプリンタであって、紫外線硬化型インクのインク滴を吐出するインクジェットヘッドと、紫外線硬化型インクを硬化させる紫外線を照射する紫外線照射部と、印刷対象となる立体物をインクジェットヘッドと対向させて保持する被印刷体保持部とを備え、印刷対象となる立体物は、インクジェットプリンタにより印刷がされる被印刷面として、第1の被印刷面と、第1の被印刷面に対する側面である第2の被印刷面とを少なくとも有し、被印刷体保持部は、インクジェットヘッドと対向させて立体物を保持する立体物保持部と、被印刷体保持部の外部へ向かう紫外線を低減する遮光部とを有し、立体物保持部は、立体物の向きを変更することにより、第1の被印刷面、及び第2の被印刷面のそれぞれを、インクジェットヘッドと対向させ、第1の被印刷面をインクジェットヘッドと対向させる場合、立体物保持部は、インクジェットヘッドがインク滴を吐出する方向である吐出方向における第1の被印刷面の位置が第1の対向位置になるように、立体物を保持し、第2の被印刷面をインクジェットヘッドと対向させる場合、立体物保持部は、吐出方向における第2の被印刷面の位置が、第1の対向位置とは異なる第2の対向位置になるように、立体物を保持し、遮光部は、立体物保持部に保持されている立体物から吐出方向と直交する方向に離間して設けられることにより、立体物の周囲の少なくともいずれかの方向において、被印刷体保持部の外部へ向かう紫外線を遮光し、かつ、遮光部は、少なくとも一部の位置において吐出方向において進退可能に設けられており、立体物保持部が第1の被印刷面をインクジェットヘッドと対向させる場合における第1の対向位置、及び、第2の被印刷面をインクジェットヘッドと対向させる場合における第2の対向位置のそれぞれに対応して進退することにより、吐出方向と直交する方向において紫外線を遮光する遮光領域を変更させる。
【0012】
このように構成した場合、例えば、立体物の向きを変更することにより被印刷面の位置が変わった場合に、その位置に合わせて、遮光部による遮光領域を適切に変更できる。そのため、このように構成すれば、例えば、印刷対象のワークである立体物から外れた位置に漏れ出す迷光を、適切に抑えることができる。
【0013】
尚、立体物保持部は、所定の軸の周りに立体物を回転させることにより、第1の被印刷面、及び第2の被印刷面のそれぞれを、インクジェットヘッドと対向させる。印刷対象となる立体物は、例えば、スマートフォン等の携帯端末のカバーである。遮光部は、例えば、被印刷体保持部の筐体部分におけるインクジェットヘッドに近い側の部分またはその近傍(例えば、筐体部分の上部)において、紫外線を遮光する。被印刷体保持部の筐体部分とは、例えば、被印刷体保持部において位置が固定された側面により構成される部分である。
【0014】
また、遮光部による遮光領域を変更するとは、例えば、進退動作により遮光部の位置を変更すること、又は、遮光部において遮光に寄与する領域の面積を変更することである。遮光部は、進退動作により、位置の変更及び遮光に寄与する領域の面積の変更の両方を行ってもよい。また、遮光部は、進退動作により、遮光に寄与する領域の面積を0に変更してもよい。この場合、遮光部は、例えば、第1の被印刷面をインクジェットヘッドと対向させる場合、又は、第2の被印刷面をインクジェットヘッドと対向させる場合の一方の場合においてのみ紫外線を遮光し、他方の場合には遮光を行わなくてもよい。
【0015】
また、この場合、より具体的には、例えば、吐出方向への進退動作に加え、この進退動作によって上側(インクジェットヘッド側)に押し出された部分が折れ曲がって被印刷体保持部の上面(天井部分)へ移動する構成の遮光部を用いることが考えられる。この場合、例えば、上記他方の場合において、遮光部を天井部分へ移動させることにより、吐出方向と直交する方向の遮光には一切関係しない状態とすることができる。また、上記一方の場合においては、遮光部を天井部分から降ろすことにより、遮光部に紫外線を遮光させることができる。また、このような遮光部の構成としては、例えば、車両用のガレージ等に用いられているスライダー型の扉の構成のうち、ガレージの天井部分にスライダーを移動させることでガレージを開放する構成と同様の構成を用いることが考えられる。
【0016】
(構成2)立体物保持部が第1の被印刷面をインクジェットヘッドと対向させる場合、遮光部は、吐出方向における第1の遮光位置で紫外線を遮光し、立体物保持部が第2の被印刷面をインクジェットヘッドと対向させる場合、遮光部は、吐出方向において、第1の遮光位置と異なる第2の遮光位置で紫外線を遮光する。
【0017】
このように構成すれば、例えば、進退動作により遮光部の位置を変更することにより、遮光部による遮光領域を適切に変更できる。また、これにより、例えば、立体物から外れた位置に漏れ出す迷光を、適切に抑えることができる。
【0018】
(構成3)立体物保持部は、吐出方向と直交する方向へ延伸する軸部材と、軸部材を回転可能に保持する軸保持部と、軸部材に対して立体物を固定する固定部材であり、軸部材に対して固定されることにより立体物を軸部材と共に回転させる立体物固定部材とを有し、立体物保持部は、軸部材を回転させることにより立体物の向きを変更して、第1の被印刷面、及び第2の被印刷面のそれぞれを、インクジェットヘッドと対向させる。
【0019】
このように構成すれば、例えば、印刷対象となる立体物の各被印刷面を、インクジェットヘッドと高い精度で適切に対向させることができる。また、これにより、高精度での印刷を適切に行うことができる。尚、立体物固定部材は、例えば、軸部材を貫通させた状態で、軸部材に対して固定される。軸保持部は、例えば、被印刷体保持部の筐体部分を構成する側面又はその一部であってよい。
【0020】
(構成4)被印刷体保持部は、軸部材の回転に連動させて遮光部を吐出方向に進退させる連動部材を更に有する。このように構成すれば、例えば、軸部材の回転に応じて変化する被印刷面の位置に合わせて、遮光部を適切に進退させることができる。また、これにより、立体物から外れた位置に漏れ出す迷光を、より適切に抑えることができる。
【0021】
(構成5)連動部材は、中心に軸部材が通されることにより軸部材の回転に従って回転する楕円カムであり、遮光部に接した状態で回転することにより、軸部材の回転に連動させて、遮光部を吐出方向に進退させる。このように構成すれば、例えば、軸部材の回転に応じて変化する被印刷面の位置に合わせて、遮光部を適切に進退させることができる。また、これにより、立体物から外れた位置に漏れ出す迷光を、より適切に抑えることができる。
【0022】
(構成6)立体物保持部は、軸方向を平行にして並ぶ少なくとも2個の軸部材と、それぞれの軸部材に対して立体物をそれぞれ固定する少なくとも2個の立体物固定部材とを有し、被印刷体保持部は、少なくとも2個の軸部材のそれぞれの一端側及び他端側にそれぞれに取り付けられる少なくとも4個の楕円カムを有し、遮光部は、少なくとも2個の軸部材の一端側における少なくとも2個の楕円カムと、少なくとも2個の軸部材の他端側における少なくとも2個の楕円カムと接しており、少なくとも4個の楕円カムの回転に応じて、吐出方向へ進退する。
【0023】
このように構成すれば、遮光部を少なくとも4点で支持しつつ進退させることにより、例えば、より滑らかに、かつ、より安定して遮光部を進退させることができる。また、これにより、立体物から外れた位置に漏れ出す迷光を、より適切に抑えることができる。
【0024】
また、このように構成した場合、複数の軸部材及び複数の立体物固定部材を用いることにより、多数の立体物に対し、同時に適切に印刷を行うことができる。そのため、このように構成すれば、印刷のコストを適切に低減できる。また、この場合、複数の軸部材等を用いる構成を有効に利用することにより、遮光部の進退の動作をより適切に行うことが可能になる。そのため、このように構成すれば、例えば、低コストでの印刷を可能にするための特有の構成を利用して、より適切に迷光を抑えることができる。
【0025】
尚、遮光部は、例えば、少なくとも2個の軸部材の一端側において楕円カムと接する第1の部分と、少なくとも2個の軸部材の他端側において楕円カムと接する第2の部分と、第1の部分と第2の部分とを連結する第3の部分とを有する。この場合、遮光部の第1の部分、第2の部分、及び第3の部分は、例えば、互いの相対位置を固定されている状態で、吐出方向へ同時に進退する。第1の部分、第2の部分、及び第3の部分等は、全体が繋がった一の部材の各部であってよい。また、少なくとも4個の楕円カムは、少なくとも2個の軸部材のそれぞれの一端側及び他端側において遮光部と接することにより、遮光部の第1の部分、第2の部分、及び第3の部分を、吐出方向へ進退させる。また、遮光部は、第1の部分、第2の部分、及び第3の部分の少なくともいずれかの部分において、紫外線を遮光する。また、遮光部は、第3の部分と異なる位置で第1の部分と第2の部分とを連結する第4の部分を更に有してもよい。
【0026】
(構成7)被印刷体保持部は、インクジェットヘッドから離れる方向へ遮光部を付勢する付勢部材を更に有する。このように構成すれば、例えば、連動部材である楕円カムにより、遮光部をより適切に進退させることができる。
【0027】
(構成8)軸部材の回転角度を補正するための情報を記憶する補正情報記憶部を更に備える。補正情報記憶部は、例えばROMである。このように構成すれば、例えば、軸部材の回転を高い精度でより適切に制御することができる。
【0028】
(構成9)紫外線硬化型インクを用いて立体物にインクジェット方式で印刷を行うインクジェットプリンタに用いられる部材であり、印刷対象となる立体物をインクジェットヘッドと対向させて保持する被印刷体保持部材であって、インクジェットヘッドと対向させて立体物を保持する立体物保持部と、被印刷体保持部材の外部へ向かう紫外線を低減する遮光部とを備え、印刷対象となる立体物は、インクジェットプリンタにより印刷がされる被印刷面として、第1の被印刷面と、第1の被印刷面に対する側面である第2の被印刷面とを少なくとも有し、立体物保持部は、立体物の向きを変更することにより、第1の被印刷面、及び第2の被印刷面のそれぞれを、インクジェットヘッドと対向させ、第1の被印刷面をインクジェットヘッドと対向させる場合、立体物保持部は、インクジェットヘッドがインク滴を吐出する方向である吐出方向における第1の被印刷面の位置が第1の対向位置になるように、立体物を保持し、第2の被印刷面をインクジェットヘッドと対向させる場合、立体物保持部は、吐出方向における第2の被印刷面の位置が、第1の対向位置とは異なる第2の対向位置になるように、立体物を保持し、遮光部は、立体物保持部に保持されている立体物から吐出方向と直交する方向に離間して設けられることにより、立体物の周囲の少なくともいずれかの方向において、被印刷体保持部材の外部へ向かう紫外線を遮光し、かつ、遮光部は、少なくとも一部の位置において吐出方向において進退可能に設けられており、立体物保持部が第1の被印刷面をインクジェットヘッドと対向させる場合における第1の対向位置、及び、第2の被印刷面をインクジェットヘッドと対向させる場合における第2の対向位置のそれぞれに対応して進退することにより、吐出方向と直交する方向において紫外線を遮光する遮光領域を変更させる。このように構成すれば、例えば、構成1と同様の効果を得ることができる。
【0029】
(構成10)立体物にインクジェット方式で印刷を行う印刷方法であって、紫外線硬化型インクのインク滴を吐出するインクジェットヘッドと、紫外線硬化型インクを硬化させる紫外線を照射する紫外線照射部と、印刷対象となる立体物をインクジェットヘッドと対向させて保持する被印刷体保持部材とを用い、印刷対象となる立体物は、インクジェットプリンタにより印刷がされる被印刷面として、第1の被印刷面と、第1の被印刷面に対する側面である第2の被印刷面とを少なくとも有し、被印刷体保持部材は、インクジェットヘッドと対向させて立体物を保持する立体物保持部と、被印刷体保持部材の外部へ向かう紫外線を低減する遮光部とを有し、立体物保持部は、立体物の向きを変更することにより、第1の被印刷面、及び第2の被印刷面のそれぞれを、インクジェットヘッドと対向させ、第1の被印刷面をインクジェットヘッドと対向させる場合、立体物保持部は、インクジェットヘッドがインク滴を吐出する方向である吐出方向における第1の被印刷面の位置が第1の対向位置になるように、立体物を保持し、第2の被印刷面をインクジェットヘッドと対向させる場合、立体物保持部は、吐出方向における第2の被印刷面の位置が、第1の対向位置とは異なる第2の対向位置になるように、立体物を保持し、遮光部は、立体物保持部に保持されている立体物から吐出方向と直交する方向に離間して設けられることにより、立体物の周囲の少なくともいずれかの方向において、被印刷体保持部材の外部へ向かう紫外線を遮光し、かつ、遮光部は、少なくとも一部の位置において吐出方向において進退可能に設けられており、立体物保持部が第1の被印刷面をインクジェットヘッドと対向させる場合における第1の対向位置、及び、第2の被印刷面をインクジェットヘッドと対向させる場合における第2の対向位置のそれぞれに対応して進退することにより、吐出方向と直交する方向において紫外線を遮光する遮光領域を変更させる。このように構成すれば、例えば、構成1と同様の効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、例えば、携帯端末のカバー等の立体物に対して印刷を行う場合において、迷光を適切に抑えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明に係る実施形態を、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るインクジェットプリンタ10の構成の一例を示す。
図1(a)は、インクジェットプリンタ10の機能及び構成の概要を示す。
【0033】
本例において、インクジェットプリンタ10は、立体物にインクジェット方式で印刷を行う印刷装置であり、スマートフォン等の携帯端末のカバーに対して印刷を行う。携帯端末のカバーは、第1の被印刷面と、第1の被印刷面に対する側面である第2の被印刷面とを少なくとも有する立体物の一例である。印刷対象の立体物は、携帯端末のカバー以外のカバー状部材であってもよい。
【0034】
また、インクジェットプリンタ10は、インクジェットヘッド12、紫外線照射部14、ガイドレール16、被印刷体保持部18、保持部駆動部20、及び制御部22を備える。インクジェットヘッド12は、印刷対象の立体物へインク滴を吐出する印刷ヘッドである。本例において、インクジェットヘッド12は、紫外線硬化型のインクのインク滴を吐出する。また、インクジェットヘッド12は、例えば、CMYKの各色のインク滴を吐出することにより、カラー印刷を行う。インクジェットヘッド12は、白色インク、クリアインク等を更に吐出してもよい。紫外線照射部14は、紫外線硬化型インクを硬化させる紫外線を照射する光源である。
【0035】
ガイドレール16は、所定の主走査方向へ延伸するレール状部材であり、印刷時において、インクジェットヘッド12に、主走査の動作(スキャン動作)を行わせる。スキャン動作において、インクジェットヘッド12は、ガイドレール16に沿って主走査方向へ移動しつつ、インク滴を吐出する。
【0036】
被印刷体保持部18は、印刷対象の立体物である被印刷体をインクジェットヘッド12と対向させて保持する保持部材であり、立体物における被印刷面をインクジェットヘッド12と対向させて、立体物を保持する。また、本例において、被印刷体保持部18は、インクジェットプリンタ10の本体に対して必要に応じて取り付けられるアタッチメント部材である。被印刷体保持部18の詳細な構成については、後に更に詳しく説明する。
【0037】
保持部駆動部20は、被印刷体保持部18を移動させる駆動機構である。本例において、保持部駆動部20は、例えば、インク滴の吐出方向において、被印刷体保持部18を移動させる。インク滴の吐出方向とは、インクジェットヘッド12がインク滴を吐出する方向である。また、本例において、この吐出方向は、重力方向の下方へ向かう方向である。これにより、保持部駆動部20は、立体物における被印刷面と、インクジェットヘッド12との間のギャップ距離(ヘッドギャップ)を調整する。保持部駆動部20は、例えば、上下5cm程度の範囲で、被印刷体保持部18を動かす。
【0038】
尚、ギャップ距離の調整において、保持部駆動部20は、インクジェットヘッド12と被印刷面との距離を、例えば、1.0〜1.5mmの範囲にすることが好ましい。このように構成すれば、立体物への印刷を、高い精度でより適切に行うことができる。また、ギャップ距離の調整は、例えば、インクジェットヘッド12の側を移動させることで行ってもよい。この場合、保持部駆動部20は、例えば、ガイドレール16を移動させることにより、インクジェットヘッド12に対して相対的に被印刷体保持部18を移動させる。
【0039】
また、本例において、保持部駆動部20は、主走査方向及び副走査方向へも、被印刷体保持部18を移動させることができる。副走査方向とは、インク滴の吐出方向、及び主走査方向と直交する方向である。これにより、保持部駆動部20は、例えば、インクジェットヘッド12に対する立体物の位置合わせを行う。また、本例において、保持部駆動部20は、更に、インクジェットヘッド12のスキャン動作の合間に、副走査方向へ、保持部駆動部20を移動させる。これにより、保持部駆動部20は、インクジェットヘッド12に対して相対的に、印刷対象の立体物を、副走査方向へ順次送る。
【0040】
制御部22は、例えばインクジェットプリンタ10のCPUであり、例えば外部のホストPCから受け取る指示、及びファームウェア等のプログラム等に基づき、インクジェットプリンタ10の各部の動作を制御する。例えば、制御部22は、被印刷体保持部18の動作を制御することにより、被印刷体保持部18に保持されている立体物の向きを制御する。また、例えば、保持部駆動部20の動作を制御することにより、印刷対象の立体物の位置合わせを行う。更に、例えば、インクジェットヘッド12及び被印刷体保持部18の動作を制御することにより、立体物の被印刷面に対し、インクジェットヘッド12に印刷を行わせる。
【0041】
図1(b)は、インクジェットプリンタ10の全体について、より具体的な構成の一例を示す図であり、保持部駆動部20及び被印刷体保持部18をインクジェットプリンタ10の本体の外側へ出した状態のインクジェットプリンタ10の斜視図を示す。尚、
図2(b)は、インクジェットプリンタ10の本体に対して被印刷体保持部18等を取り付けた状態の一例を示すための図である。
図2(b)において、被印刷体保持部18の細部については、図示の便宜上、一部省略又は変更を行っている。
【0042】
本例において、インクジェットプリンタ10の本体としては、例えば、ミマキエンジニアリング社制のUJF−3042HG型の印刷装置を好適に用いることができる。この印刷装置は、30cm×42cmの領域に置かれた立体物に対して印刷が可能なインクジェットプリンタである。また、この場合、例えば、インクジェットヘッド12、紫外線照射部14、ガイドレール16、保持部駆動部20、及び制御部22の機能は、印刷装置の本体の機能により実現できる。また、保持部駆動部20に対応する部材に設けられた位置合わせ用の穴部等を利用して、高い精度で被印刷体保持部18を設置できる。更には、例えば600dpi以上、(例えば720×600dpi、1,440×1,200dpi等)の高い解像度で適切に印刷を行うことができる。以上のように、本例によれば、立体物への印刷を高い精度で適切に行うことができる。
【0043】
続いて、被印刷体保持部18の詳細な構成について、更に詳しく説明する。
図2及び
図3は、被印刷体保持部18の詳細な構成の一例を示す。
図2は、被印刷体保持部18の具体的な構成の一例を示す図である。
図2(a)は、被印刷体保持部18の構成の一例を示す斜視図である。
図2(b)(c)は、被印刷体保持部18における遮光部110の進退動作について説明する図である。本例において、被印刷体保持部18は、スマートフォン等の携帯端末のカバーである立体物50を複数個保持する部材であり、立体物保持部152、回転駆動部108、遮光部110、複数の楕円カム112、及び複数のガイドシャフト114を有する。
【0044】
先ず、立体物保持部152の構成について、説明をする。立体物保持部152は、インクジェットヘッド12(
図1参照)と対向させて立体物50を保持するための構成である。本例において、立体物保持部152は、複数の軸部材102、筐体部104、及び複数のワークセット部材106を有する。複数の軸部材102は、立体物50の被印刷面をインクジェットヘッド12と対向させるために立体物50を回転させる駆動シャフトである。本例において、それぞれの軸部材102は、インク滴の吐出方向と直交する方向へ延伸する向きで、軸方向を平行にして、筐体部104に保持される。軸部材102が延伸する向きは、例えば主走査方向であってよい。また、軸部材102が延伸する向きは、副走査方向であってもよい。
【0045】
筐体部104は、被印刷体保持部18の筐体部分である。本例において、筐体部104は、印刷時にインクジェットヘッド12と対向する側が開放された箱状体であり、対向する2つの側面によりそれぞれの軸部材102の一端及び他端を支持することにより、それぞれの軸部材102を回転可能に保持する。また、これにより、筐体部104は、軸保持部として機能する。
【0046】
尚、筐体部104は、インク滴の吐出方向における位置(高さ)を揃えた状態で、複数の軸部材102を保持する。また、筐体部104において、軸部材102の一端及び他端を支持する軸受け部分は、例えばボールベアリングの構成とすることが好ましい。このように構成すれば、軸部材102の保持をより適切に行うことができる。
【0047】
複数のワークセット部材106のそれぞれは、印刷可能な所定の位置に印刷対象の立体物50を設置するための立体物固定部材の一例である。本例において、それぞれのワークセット部材106は、いずれかの軸部材102を貫通させた状態で軸部材102に対して固定されており、軸部材102に対して立体物50を固定する。また、これにより、ワークセット部材106は、軸部材102の回転に応じて、立体物50を軸部材102と共に回転させる。
【0048】
ここで、本例において、携帯端末等の裏面を覆うカバーである立体物50は、主印刷面及び一対の側面を有する。主印刷面は、第1の被印刷面の一例である。一対の側面は、主印刷面と交差する面である。また、一対の側面の一方は、第2の被印刷面の一例である。また、立体物50における主印刷面の裏面側は、携帯端末等を覆う構造上、開放されている。
【0049】
そして、本例において、それぞれのワークセット部材106は、立体物50の内面側の少なくとも一部を押さえることにより、立体物50を保持する。立体物の内面側とは、例えば、立体物における被印刷面の裏面側である。より具体的に、本例において、ワークセット部材106は、例えば、立体物50が覆う対象となる携帯端末に相当する形状の部分を有している。そして、カバー状の立体物50は、この部分に取り付けられる。また、これにより、ワークセット部材106は、立体物50を保持する。
【0050】
また、それぞれのワークセット部材106は、2個の立体物50における主印刷面の裏面が軸部材を挟んで対向するように、2個の立体物50を保持する。更に、それぞれの軸部材102には、2個のワークセット部材106が取り付けられる。そのため、本例によれば、被印刷体保持部18により、多数の立体物50を同時に適切に保持できる。
【0051】
以上の構成により、本例において、立体物保持部152は、複数の立体物50を保持する。また、複数の軸部材102を回転させることにより、立体物50においてインクジェットヘッド12と対向する被印刷面を変更する。そのため、本例によれば、立体物50の各面に対し、適切に印刷を行うことができる。尚、図示した構成において、立体物保持部152は、3個の軸部材102を有する。そのため、本例において、立体物保持部152は、最大で、合計で12個の立体物50を保持する。
【0052】
次に、回転駆動部108の構成について、説明をする。回転駆動部108は、複数の軸部材102を回転させる駆動部であり、例えば制御部22(
図1参照)から受け取る指示に応じて、複数の軸部材102を回転させる。また、本例において、回転駆動部108は、回転角度を揃えて、複数の軸部材102を回転させる。これにより、回転駆動部108は、立体物保持部152に保持されている複数の立体物50について、同じ被印刷面を同時にインクジェットヘッド12に対向させる。
【0053】
また、より具体的に、回転駆動部108は、例えば、複数のプーリー、ステッピングモータ、タイミングベルト、及び角度検出器等を有することが好ましい。この場合、複数のプーリーのそれぞれは、複数の軸部材102のそれぞれの一端と接続され、自身の回転に応じて、それぞれの軸部材102を回転させる。ステッピングモータは、例えば制御部22から受け取る指示に応じて回転する。タイミングベルトは、複数のプーリーのそれぞれと、ステッピングモータとを繋ぐことにより、ステッピングモータの回転量に応じて、それぞれのプーリー及び軸部材102を回転させる。また、角度検出器は、プーリーの回転角度を検出する。
【0054】
このように構成した場合、例えば、ステッピングモータ及びタイミングベルト等を用いることにより、軸部材102の回転角度の制御を、高い精度で適切に行うことができる。また、特に、立体物50のそれぞれの被印刷面をインクジェットヘッド12と対向させた角度において、軸部材102の回転を高い精度で適切に停止させることが可能になる。そのため、このように構成すれば、例えば、立体物50の各被印刷面に対し、高い精度で適切に印刷を行うことが可能になる。また、これにより、複数の軸部材102をより適切に回転させることができる。
【0055】
また、本例において、回転駆動部108は、更に、軸部材102の回転角度を補正するための情報を記憶するメモリであるROM116を有している。ROM116は、例えば、回転駆動部108に設けた角度検出器の読み取り結果と、実機におけるワークセット部材106の取り付け位置とのズレ量を記憶する。ROM116としては、例えば、書き換え可能な不揮発メモリ等を好適に用いることができる。ROM116に記憶されている情報は、例えば、インクジェットプリンタ10の制御部22が読み取る。制御部22は、例えば、ROM116に記憶されている情報に応じた補正を行って、軸部材102の回転角度を制御する。このように構成すれば、例えば、軸部材102の回転を高い精度で制御することができる。
【0056】
尚、立体物に対し、高い精度で印刷を行おうとする場合、被印刷面とインクジェットヘッド12との間のギャップ距離を、例えば1.0〜1.5mm程度にすることが必要になる場合がある。そのため、各部材の取り付け精度や、軸部材102の回転の精度も、このギャップ距離に応じた精度にすることが望まれる。これに対し、本例によれば、ROM116を用いて回転角度を補正することにより、狭いギャップ距離に応じた精度で、軸部材102を回転させることができる。また、これにより、高い精度で適切に印刷を行うことができる。
【0057】
また、軸部材102及びワークセット部材106の回転量の誤差を小さくするためには、ワークセット部材106の初期位置を高い精度で設定することも重要である。そして、その確認のためには、例えば、回転角度の初期設定時等に、立体物保持部152における全てのワークセット部材106に対し、平面の板状部材を重ねる方法が有効である。より具体的には、例えば、立体物50の主印刷面302に対応するワークセット部材106の面を上に向けた状態で、全てのワークセット部材106に板状部材を重ねる。このようにすれば、例えば、他のワークセット部材106に対して傾いているワークセット部材106を適切に発見できる。また、これにより、全てのワークセット部材106の初期位置を高い精度で設定できる。また、この場合、ROM116は、例えば、軸部材102の回転角度を補正するための情報として、この初期位置を示す情報を記憶する。
【0058】
以上の構成により、本例によれば、例えば、複数の軸部材102を回転させることにより、立体物50の主印刷面、及びそれぞれの側面を、インクジェットヘッド12と適切に対向させることができる。また、これにより、立体物50の主印刷面及び側面の全面に対し、適切に印刷を行うことができる。
【0059】
続いて、遮光部110、複数の楕円カム112、及び複数のガイドシャフト114の構成について、説明をする。遮光部110は、紫外線照射部14(
図1参照)が照射する紫外線により生じる迷光を抑えるための遮光板である。遮光部110は、立体物保持部152に保持されている立体物50からインク滴の吐出方向と直交する方向に離間して設けられることにより、立体物50の周囲において、被印刷体保持部18の外部へ向かう紫外線を遮光する。また、本例において、遮光部110は、インクジェットヘッド12によるインク滴の吐出方向において進退可能に設けられる。尚、本例において、インクジェットヘッド12は、重力方向の下方へインク滴を吐出する。そのため、吐出方向において進退可能とは、上下方向において進退可能なことである。
【0060】
また、本例において、遮光部110は、
図2(a)等に示すように、第1〜第4の部分202a〜202dから構成されている。第1〜第4の部分202a〜202dのそれぞれは、筐体部104の各側面の上部に設けられる部分である。例えば、第1の部分202aは、複数の軸部材102の一端側において筐体部104の側面上部に沿って延伸する部分である。第2の部分202bは、複数の軸部材102の他端側において筐体部104の側面上部に沿って延伸する部分である。また、第3の部分202c及び第4の部分202dは、軸部材102と平行な筐体部104の側面上部に沿って延伸する部分であり、第1の部分202aと第2の部分202bとを連結する。
【0061】
このような構成により、本例において、遮光部110は、筐体部104の上辺に沿って配設され、被印刷体保持部18の外部へ向かう紫外線を低減する。遮光部110は、例えば、第1〜第4の部分202a〜202dのそれぞれにおいて紫外線を遮光することにより、立体物50の周囲を囲む4方向において、紫外線を遮光する。このように構成すれば、例えば、立体物50の周囲の全方向において、立体物から外れた位置に漏れ出す迷光を、より適切に抑えることができる。
【0062】
また、遮光部110は、例えば、第1〜第4の部分202a〜202dの一部において紫外線を遮光することにより、立体物50の周囲の一部の方向において、紫外線を遮光してもよい。この場合、遮光部110は、インクジェットプリンタ10の前後方向において紫外線を遮光することが好ましい。インクジェットプリンタ10の前後方向とは、インクジェットプリンタ10の正面側及び背面側の方向である。このように構成すれば、例えば、インクジェットプリンタ10のオペレータ(ユーザ)が頻繁に立つ位置へ向かう紫外線を適切に遮光できる。これにより、漏れ出た紫外線がオペレータにあたることを適切に防ぐことができる。
【0063】
また、本例において、遮光部110の第1〜第4の部分202a〜202dは、全体が繋がった一の部材の各部である。そのため、第1〜第4の部分202a〜202dは、互いの相対位置を固定されている状態で、上下方向へ同時に進退する。遮光部110の進退動作については、後に更に詳しく説明をする。
【0064】
複数の楕円カム112は、軸部材102の回転に連動させて遮光部110を進退させる連動部材の一例である。本例において、楕円カム112は、中心に軸部材102が通されることにより軸部材102の回転に従って回転する。また、本例において、楕円カム112が、立体物50の主印刷面と長軸が平行になり、かつ立体物50の側面と短軸が平行となる向きで、軸部材102に通される。また、楕円カム112は、遮光部110に下側から当接しており、遮光部110に接した状態で回転することにより、軸部材102の回転に連動させて、遮光部110を上下方向に進退させる。
【0065】
より具体的に、例えば、
図2(b)に示すように、短軸側において楕円カム112が遮光部110に下側から当接する場合、遮光部110は、下方へ下がった状態となる。また、
図2(c)に示すように、長軸側において楕円カム112が遮光部110に下側から当接する場合、遮光部110は、上方へ上がった状態となる。そのため、軸部材102と共に楕円カム112を回転させることにより、遮光部110を上下方向に進退させることができる。
【0066】
また、本例において、被印刷体保持部18は、4個の楕円カム112を有する。4個の楕円カム112のそれぞれは、図示したように、複数(3本)の軸部材102のうち、並びの外側の2本の軸部材102に対し、一端及び他端のそれぞれに取り付けられている。そして、これらのうち、軸部材102の一端側の楕円カム112は、
図2(b)等に示すように、遮光部110の第1の部分202aに下側から接する。また、軸部材102の他端側の楕円カム112は、
図2(c)等に示すように、遮光部110の第2の部分202bに下側から接する。これにより、4個の楕円カム112は、複数の軸部材102の一端側及び他端側において遮光部110と接して、軸部材102の回転に応じて、遮光部110を上下方向へ進退させる。本例によれば、例えば、遮光部110を4点で支持しつつ進退させることにより、より滑らかに、かつ、より安定して遮光部110を進退させることができる。
【0067】
複数のガイドシャフト114は、インクジェットヘッド12から離れる方向へ遮光部110を付勢する付勢部材の一例である。本例において、複数のガイドシャフト114は、軸部材102の一端側及び他端側のそれぞれにおいて各軸部材102の間の領域に設けられ、バネにより、遮光部110を上方へ付勢する。このように構成すれば、例えば、複数の楕円カム112により、遮光部110をより適切に進退させることができる。
【0068】
以上の構成により、本例によれば、例えば、立体物50におけるいずれの面を被印刷面とするかに応じて、遮光部110を適切に進退させることができる。また、これにより、迷光を適切に抑えることができる。
【0069】
また、上記においても説明をしたように、本例の被印刷体保持部18においては、複数の軸部材102及び複数のワークセット部材106を用いることにより、多数の立体物50に対し、同時に適切に印刷を行うことができる。また、これにより、印刷のコストの低減が可能になる。そして、本例においては、複数の軸部材102等を用いる構成を有効に利用して、4個の楕円カム112を配設している。また、これにより、遮光部110をより適切に進退させ、迷光を抑えている。そのため、本例の構成については、低コストでの印刷を可能にするための特有の構成を利用して、より適切に迷光を抑えることを可能にしているとも言える。
【0070】
続いて、軸部材102の回転と、遮光部110の進退動作について、更に詳しく説明をする。
図3は、軸部材102及び楕円カム112の回転に伴って遮光部110が上下方向へ進退する様子について説明をする図である。
図3(a)は、
図2(b)に示した状態を側面側から見た様子を模式的に示した図であり、立体物50の主印刷面302へ印刷を行う状態の一例を示す。
図3(b)は、
図2(c)に示した状態を側面側から見た様子を模式的に示した図であり、立体物50の側面304へ印刷を行う状態の一例を示す。
【0071】
図2を用いて説明をしたように、本例において、被印刷体保持部18における立体物保持部152は、軸部材102を回転させることにより立体物50の向きを変更し、インクジェットヘッド12(
図1参照)と対向させる被印刷面を変更する。また、本例の被印刷体保持部18においては、この回転により、上下方向における被印刷面の位置が変化する。
【0072】
例えば、
図3(a)に示すように、主印刷面302をインクジェットヘッド12と対向させる場合、立体物保持部152は、主印刷面302の上下方向における位置が所定の第1の対向位置になるように、立体物50を保持する。本例において、第1の対向位置は、被印刷体保持部18の筐体部104の側面の上辺とほぼ同じ、又はわずかに高い位置である。
【0073】
また、
図3(b)に示すように、側面304をインクジェットヘッド12と対向させる場合、立体物保持部152は、側面304の上下方向における位置が、第1の対向位置とは異なる第2の対向位置になるように、立体物50を保持する。本例において、第2の対向位置は、上下方向において第1の対向位置よりも高い位置である。そのため、側面304をインクジェットヘッド12と対向させる場合、被印刷面となる側面304は、被印刷体保持部18の筐体部104の側面よりも高い位置へ突出する。
【0074】
また、本例においては、
図2を用いても説明をしたように、軸部材102及び楕円カム112の回転に応じて上下方向へ進退する遮光部110を用いている。この進退の動作により、遮光部110は、主印刷面302又は側面304のいずれが被印刷面であるかに応じて、上下方向の異なる位置において、紫外線を遮光する。また、これにより、遮光部110は、主印刷面302又は側面304のいずれが被印刷面であるかに応じて、紫外線を遮光する遮光領域を変更する。
【0075】
例えば、主印刷面302をインクジェットヘッド12と対向させる場合、
図2(b)及び
図3(a)に示すように、遮光部110は、楕円カム112の短軸側と接する。これにより、遮光部110は、上下方向における第1の遮光位置で紫外線を遮光する。本例において、第1の遮光位置は、主印刷面302を被印刷面とする場合の主印刷面302の位置に合わせた遮光位置である。
【0076】
また、側面304をインクジェットヘッド12と対向させる場合、
図2(c)及び
図3(b)に示すように、遮光部110は、楕円カム112の長軸側と接する。これにより、遮光部110は、上下方向において、第1の遮光位置よりも高い第2の遮光位置で紫外線を遮光する。本例において、第2の遮光位置は、いずれかの側面304を被印刷面とする場合のその側面304の位置に合わせた遮光位置である。
【0077】
ここで、本例のように、印刷工程内で立体物50を回転させること等により被印刷面の位置が変化する場合、単に立体物50を回転させるのみでは、インクジェットヘッド12と被印刷面との間の距離であるギャップ距離が変化する。そして、その結果、立体物50から外れた位置に漏れ出す迷光が生じやすくなることが考えられる。また、インクジェットヘッド12と被印刷面との間の距離を調節してギャップ距離を一定にしたとしても、
図3(a)、(b)等からわかるように、立体物50の被印刷面の位置が上下方向において変化した場合、被印刷体保持部18の筐体部104の側面との位置関係等により、迷光が生じることが考えられる。
【0078】
これに対し、本例においては、例えば、軸部材102の回転に応じて変化する被印刷面の位置に合わせて、遮光部110を適切に進退させることができる。また、これにより、迷光を、適切に抑えることができる。そのため、本例によれば、例えば、携帯端末のカバー等の立体物50に対して印刷を行う場合において、迷光を適切に抑えることができる。また、これにより、立体物50に対する印刷をより適切に行うことができる。
【0079】
以上、本発明を実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0080】
例えば、遮光部による遮光領域を変更する方法として、遮光部において遮光に寄与する領域の面積を変更する方法を用いることも考えられる。また、遮光部について、例えば、第1の被印刷面をインクジェットヘッドと対向させる場合、又は、第2の被印刷面をインクジェットヘッドと対向させる場合の一方の場合においてのみ紫外線を遮光し、他方の場合には遮光を行わない構成とすることも考えられる。