特許第6022319号(P6022319)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6022319
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月9日
(54)【発明の名称】モータの駆動制御装置
(51)【国際特許分類】
   H02P 6/20 20160101AFI20161027BHJP
【FI】
   H02P6/20
【請求項の数】4
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2012-253700(P2012-253700)
(22)【出願日】2012年11月19日
(65)【公開番号】特開2014-103755(P2014-103755A)
(43)【公開日】2014年6月5日
【審査請求日】2015年9月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100064414
【弁理士】
【氏名又は名称】磯野 道造
(74)【代理人】
【識別番号】100111545
【弁理士】
【氏名又は名称】多田 悦夫
(72)【発明者】
【氏名】青木 政人
【審査官】 尾家 英樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−100526(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 6/00− 6/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源(Vcc)から電力の供給を受け、内部で生成されるPWM信号である駆動制御信号によってモータに流れる駆動電流を制御して当該モータを駆動するモータ駆動部と、
回転センサからの検出信号に基づいてロータの回転位置を検出し、検出したロータの回転位置に基づいて電機子コイルへの通電パターンを決定するとともに、
前記モータの起動の際に、あらかじめ設定された第1の通電パターンによる回転制御を開始し、それから所定時間が経過したならば、通電パターンの切り替え時に各相の上アームの駆動信号のエッジと下アームの駆動信号のエッジとが時間的に近接して発生することによる当該相の短絡が発生しない通電タイミングに調整してから、前記第1の通電パターンよりも所定の進角量を有する第2の通電パターンによる回転制御に切り替わるように、前記駆動制御信号を前記モータ駆動部に出力する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記第1の通電パターンから前記第2の通電パターンに切り替えるとき、その開始時には前記PWM信号のオンデューティが通電パターン切り替え直前よりも低下するように前記モータ駆動部を制御する、
ことを特徴とするモータの駆動制御装置。
【請求項2】
前記所定時間は、前記第1の通電パターンによる回転制御の開始時からのあらかじめ設定された経過時間である、
ことを特徴とする請求項1に記載のモータの駆動制御装置。
【請求項3】
前記所定時間は、前記第1の通電パターンによる回転制御の開始時からのあらかじめ設定された通電の切り替わり回数に達した時間である、
ことを特徴とする請求項1に記載のモータの駆動制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記第1の通電パターンおよび前記第2の通電パターンを記憶する通電パターン記憶部と、
時間を計測し、計時結果に基づく計時情報を出力するタイマ回路部と、
前記計時情報に基づき前記所定時間の経過有無を確認し、その結果に基づいて、前記通電パターン記憶部からいずれかの通電パターンを選択し、選択した通電パターンに応じた前記駆動制御信号を出力するモータ制御部と、
を備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のモータの駆動制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータを回転駆動させる駆動制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ブラシレスモータなどのモータの駆動制御装置は、回転しているロータの位置に応じて、モータの各相の電機子コイルを通電させる。そのために、モータの駆動制御装置は、例えば、ホールセンサなどの回転位置検出器を用いて、回転位置検出器からの出力信号に基づいてロータの位置を検出している。そして、モータの駆動制御装置は、検出したロータの位置に基づいて、モータの各相に通電するパターン(通電パターン)を設定し、ロータの回転を制御している。
【0003】
また、モータの駆動制御装置は、ホールセンサの取り付け位置の相対誤差を補正するために、または、モータのトルクを最大限に引き出すために、電機子コイルに於ける誘起電圧の位相とモータの電流の位相を合わせる進角制御を行う。
【0004】
モータの駆動制御装置が進角制御を行う場合、適切な進角位置よりも大きくずれた通電パターンでモータを起動させると、モータが意図しない方向に回転するなどの不安定な動作が発生する虞がある。そこで、特許文献1には、モータを起動した直後の低速回転の際の回転駆動を安定させるために、モータの起動時と、モータが所定の回転速度に達した後とにおいて通電パターンを切り替える制御装置が開示されている。
【0005】
特許文献1の要約には、課題として、「簡単な制御で回転駆動の安定化、特に起動直後の低速回転時の回転駆動を安定化させることができるブラシレスモータ制御装置を提供する。」と記載され、解決手段として、「駆動タイミング生成部16は、ロータ10aの回転位置(ホール素子Hu,Hv,Hwからの検出信号)に基づく正規通電タイミングと、120°進角通電タイミングとを生成し、制御部17は、ロータ10aの回転速度に応じて120°進角通電タイミングに対する遅延量を生成している。そして、制御部17により、ロータ10aの回転速度が所定回転速度未満の時には、正規通電タイミングによる回転制御が実施され、ロータ10aの回転速度が所定回転速度以上になると、遅延量反映後の進角通電タイミングによる回転制御に切り替えられる。」と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−268225号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の制御装置は、通電パターンを切り替える際に、モータへの通電を一旦停止している。これは、通電パターンを切り替える際に、切り替え前後の通電パターンが混在することなどにより発生する各相の素子の短絡や、回転制御の誤作動を防止するためである。
【0008】
しかし、制御装置がモータへの通電を一旦停止すると、モータのトルクおよび回転速度が低下する。更に制御装置が通電を再開したときに、モータに異音が発生する。
また、特許文献1に記載の制御装置は、回転速度の検出結果に基づいて通電パターンを切り替えている。そのため、ロータの回転速度を監視する回路を必要とし、そのためのコストが掛かる。
そこで、本発明は、通電パターンの切り替えによる異常の発生を防止することが可能なモータの駆動制御装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記した課題を解決するため、本発明の請求項1に記載のモータの駆動制御装置は、電源(Vcc)から電力の供給を受け、内部で生成されるPWM信号である駆動制御信号によってモータに流れる駆動電流を制御して当該モータを駆動するモータ駆動部と、回転センサからの検出信号に基づいてロータの回転位置を検出し、検出したロータの回転位置に基づいて電機子コイルへの通電パターンを決定するとともに、前記モータの起動の際に、あらかじめ設定された第1の通電パターンによる回転制御を開始し、それから所定時間が経過したならば、通電パターンの切り替え時に各相の上アームの駆動信号のエッジと下アームの駆動信号のエッジとが時間的に近接して発生することによる当該相の短絡が発生しない通電タイミングに調整してから、前記第1の通電パターンよりも所定の進角量を有する第2の通電パターンによる回転制御に切り替わるように、前記駆動制御信号を前記モータ駆動部に出力する制御部とを備え、前記制御部は、前記第1の通電パターンから前記第2の通電パターンに切り替えるとき、その開始時には前記PWM信号のオンデューティが通電パターン切り替え直前よりも低下するように前記モータ駆動部を制御することを特徴とする。
【0010】
このため、制部が、各相の短絡が発生しない通電タイミングで、通電を停止することなく、通電パターンを第1の通電パターンAから第2の通電パターンBに切り替える。これにより、回転制御の誤動作、モータの回転速度およびトルクの低下、異音が発生するなどの不具合を防止することができる。
その他の手段については、発明を実施するための形態のなかで説明する。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、通電パターンの切り替えによる異常の発生を防止することが可能なモータの駆動制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1の実施形態に於けるブラシレスモータの駆動制御装置を示す概略の構成図である。
図2】第1の実施形態に於ける第1の通電パターンAのタイムチャートを示す波形図である。
図3】第1の実施形態に於ける第1の通電パターンAの真理値を示す図である。
図4】第1の実施形態に於ける第2の通電パターンBのタイムチャートを示す波形図である。
図5】第1の実施形態に於ける第2の通電パターンBの真理値を示す図である。
図6】第1の実施形態に於けるモータ制御部が通電パターンを切り替える処理を示すフローチャートである。
図7】第2の実施形態に於けるブラシレスモータの駆動制御装置を示す概略の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以降、本発明を実施するための形態を、各図を参照して詳細に説明する。
【0014】
(第1の実施形態の構成)
【0015】
図1は、第1の実施形態に於けるブラシレスモータ20の駆動制御装置1を示す概略の構成図である。
ブラシレスモータ20の駆動制御装置1は、インバータ回路2と、プリドライブ回路3と、回転位置検出器4と、制御回路部5と、抵抗R1とを備えている。
駆動制御装置1は、電源Vccに接続され、U相配線、V相配線、W相配線の3相によってブラシレスモータ20に接続され、更に回転位置検出器4に接続されている。
駆動制御装置1は、ブラシレスモータ20の回転を制御するものである。駆動制御装置1は、ブラシレスモータ20に3相交流を出力する。
【0016】
インバータ回路2は、例えば、スイッチング素子Q1〜Q6として6個のFET(Field Effect Transistor)を有している。インバータ回路2は、U相のスイッチングレッグと、V相のスイッチングレッグと、W相のスイッチングレッグとで構成されている。インバータ回路2は、電源Vccに接続され、更に抵抗R1を介して直流グランドに接続されている。
【0017】
U相のスイッチングレッグは、上アーム側のスイッチング素子Q1と、下アーム側のスイッチング素子Q2とを備えている。スイッチング素子Q1のドレイン端子は、電源Vccに接続されている。スイッチング素子Q1のソース端子は、U相の交流信号が出力されると共に、スイッチング素子Q2のドレイン端子に接続されている。スイッチング素子Q2のソース端子は、抵抗R1を介して直流グランドに接続されている。スイッチング素子Q1のゲート端子には、駆動信号UH(図2(D)参照)が出力される。スイッチング素子Q2のゲート端子には、駆動信号UL(図2(E)参照)が出力される。
【0018】
V相のスイッチングレッグは、上アーム側のスイッチング素子Q3と、下アーム側のスイッチング素子Q4とを備えている。スイッチング素子Q3のドレイン端子は、電源Vccに接続されている。スイッチング素子Q3のソース端子は、V相の交流信号が出力されると共に、スイッチング素子Q4のドレイン端子に接続されている。スイッチング素子Q4のソース端子は、抵抗R1を介して直流グランドに接続されている。スイッチング素子Q3のゲート端子には、駆動信号VH(図2(F)参照)が出力される。スイッチング素子Q4のゲート端子には、駆動信号VL(図2(G)参照)が出力される。
【0019】
W相のスイッチングレッグは、上アーム側のスイッチング素子Q5と、下アーム側のスイッチング素子Q6とを備えている。スイッチング素子Q5のドレイン端子は、電源Vccに接続されている。スイッチング素子Q5のソース端子は、W相の交流信号が出力されると共に、スイッチング素子Q6のドレイン端子に接続されている。スイッチング素子Q6のソース端子は、抵抗R1を介して直流グランドに接続されている。スイッチング素子Q5のゲート端子には、駆動信号WH(図2(H)参照)が出力される。スイッチング素子Q6のゲート端子には、駆動信号WL(図2(I)参照)が出力される。
【0020】
すなわち、インバータ回路2は、ブラシレスモータ20の各電機子コイルLu,Lv,Lwの各相と電源Vccの一方の端子間に接続された上アーム側スイッチング素子Q1,Q3,Q5、および、各電機子コイルLu,Lv,Lwの各相と電源Vccのグランド端子間に抵抗R1を介して接続された下アーム側スイッチング素子Q2,Q4,Q6とを有している。
インバータ回路2は、電源Vccから電力の供給を受け、駆動制御信号Sdに応じた駆動信号UH,UL,VH,VL,WH,WLが入力されると、3相交流をブラシレスモータ20のU相配線、V相配線、W相配線に流す。
【0021】
プリドライブ回路3は、例えば、6個のゲートドライブ回路を備えている。プリドライブ回路3は、駆動制御信号Sdが入力されると、これらで駆動制御信号Sdに応じた駆動信号UH,UL,VH,VL,WH,WLを生成し、インバータ回路2に出力する。
インバータ回路2とプリドライブ回路3とは、本実施形態に於いて、電源Vccから電力の供給を受け、駆動制御信号Sdによってブラシレスモータ20を駆動するモータ駆動部である。
【0022】
回転位置検出器4は、ブラシレスモータ20の図示しないロータの回転位置を検出するものである。回転位置検出器4は、例えば3組のホールセンサと増幅器の組み合わせを有し、各ホールセンサの信号を増幅した3個の検出信号HU,HV,HW(パルス信号:図2(A),(B),(C)参照)を生成して回転位置信号Spとし、制御回路部5のモータ制御部6に出力する。
【0023】
制御回路部5(制御部)は、モータ制御部6と、進角制御部7と、通電パターン記憶部8と、タイマ回路部9と、を備える。制御回路部5は、回転位置検出器4に接続され、図示しない外部装置に接続されて速度指示信号Csが入力され、プリドライブ回路3に接続されて駆動制御信号Sdを出力する。制御回路部5(制御部)は、例えば図示しないROM(Read Only Memory)とRAM(Random Access Memory)とを備えたマイクロコンピュータであり、ROMに記録されたプログラムを読み込んで実行することにより、モータ制御部6と、進角制御部7と、通電パターン記憶部8と、タイマ回路部9とを具現化する。
制御回路部5は、ブラシレスモータ20の起動の際に、あらかじめ設定された第1の通電パターンAによる回転制御を開始し、それから所定時間が経過したならば、通電パターンの切り替え時に各相の短絡が発生しない通電タイミングに調整してから第1の通電パターンAよりも所定の進角量を有する第2の通電パターンBによる回転制御に切り替わるように、駆動制御信号Sdをプリドライブ回路3に出力する。
【0024】
制御回路部5は、図示しない外部装置から、ブラシレスモータ20の回転速度を指示する速度指示信号Csが入力されると、駆動制御信号Sdをプリドライブ回路3に出力し、ブラシレスモータ20を回転駆動するものである。
【0025】
進角制御部7は、速度指示信号Csと進角値とを対応付ける情報である進角値情報を保存するものである。なお、ブラシレスモータ20の進角値は、ブラシレスモータ20の図示しないロータの回転位置を電気角で表した値である。進角制御部7は、進角値情報を進角制御信号Saとしてモータ制御部6に出力する。
タイマ回路部9は、時間を計測し、計測した結果を計時情報Stとしてモータ制御部6へ出力するものである。
【0026】
モータ制御部6は、ブラシレスモータ20の回転速度を指示する速度指示信号Csを受信して、駆動制御信号Sdをプリドライブ回路3に出力して、ブラシレスモータ20の回転速度が指示速度となるように制御するものである。モータ制御部6は、受信した速度指示信号Csと、進角制御部7から取得した進角制御信号Saとに基づいて、駆動制御信号Sdを生成する。本実施形態の駆動制御信号Sdは、PWM(Pulse Width Modulation)信号である。モータ制御部6は、計時情報Stに基づき、所定時間の経過有無を確認し、その結果に基づいて、通電パターン記憶部8からいずれかの通電パターンを選択し、選択した通電パターンに応じた駆動制御信号Sdを、プリドライブ回路3に出力する。
【0027】
通電パターン記憶部8は、予め設定された2つの通電パターンである第1の通電パターンA(図2図3参照)および第2の通電パターンB(図4図5参照)とを記憶するものである。通電パターン記憶部8は、2つの通電パターンのいずれか一方を通電パターン情報Seとしてモータ制御部6に出力する。第2の通電パターンBは、第1の通電パターンAよりも位相が電気角で60度進んでいる。第2の通電パターンBは、第1の通電パターンAに対して所定の進角量を有している。ここで、進角量とは、進角値の差のことをいう。
制御回路部5は、ブラシレスモータ20の起動の際に、あらかじめ設定された第1の通電パターンAによる回転制御を開始する。それから所定時間が経過し、ブラシレスモータ20の速度が上昇したならば、制御回路部5は、各相の短絡が発生しない通電タイミングに切り替えてから第1の通電パターンAよりも所定の進角量を有する第2の通電パターンBによる回転制御に切り替わるように、駆動制御信号Sdをプリドライブ回路3に出力する。これにより、ブラシレスモータ20の駆動効率を向上させることができる。
ここで、所定時間とは、第1の通電パターンAによる回転制御の開始時からのあらかじめ設定された経過時間、または、あらかじめ設定された通電の切り替わり回数に達した時間である。
【0028】
ブラシレスモータ20は、電機子コイルLu,Lv,Lwを備えている。この電機子コイルLu,Lv,Lwの一端は、Y型結線されている。電機子コイルLuの他端はU相に、電機子コイルLvの他端はV相に、電機子コイルLwの他端はW相に、それぞれ接続されている。ブラシレスモータ20は、インバータ回路2からU相、V相、W相に3相交流が入力されることにより、回転駆動する。
電源Vccは、定電圧源である。電源Vccは、例えば、直流電源から供給された直流電力を定電圧に安定化して、駆動制御装置1に直流電力を供給するものである。電源Vccは、インバータ回路2に接続されていると共に、図示しない配線によって、駆動制御装置1の各部に接続されている。
【0029】
図2(A)〜(I)は、第1の実施形態に於ける第1の通電パターンAのタイムチャートを示す波形図である。図の横軸は共通して、電気角を単位とする時間を示している。図の縦軸は、信号がH(High)レベルとL(Low)レベルのいずれであるかを示している。
【0030】
モータ制御部6は、第1の通電パターンAまたは第2の通電パターンBで通電を行っている場合、通電パターンに係る駆動信号の真理値が1のとき、所定のオンデューティを有するPWM信号を駆動信号として生成し、通電パターンに係る駆動信号の真理値が0のとき、Lレベルの信号を駆動信号として生成する。
第2の通電パターンBは、第1の通電パターンAに対して、位相が電気角で60度進んでいる。
【0031】
図2(A)は、検出信号HUのタイムチャートを示している。
検出信号HUは、電気角0〜180度のときH(High)レベルであり、電気角180〜360度のときL(Low)レベルである。検出信号HUは、電気角0度、180度と360度に於いてエッジを有する。
【0032】
図2(B)は、検出信号HVのタイムチャートを示している。
検出信号HVは、電気角0〜60度のときHレベルであり、電気角60〜240度のときLレベルであり、電気角240〜360度のときHレベルである。検出信号HVは、電気角60度と電気角240度とに於いてエッジを有する。
【0033】
図2(C)は、検出信号HWのタイムチャートを示している。
検出信号HWは、電気角0〜120度のときLレベルであり、電気角120〜300度のときHレベルであり、電気角300〜360度のときLレベルである。検出信号HWは、電気角120度と300度とに於いてエッジを有する。
【0034】
図2(D)は、駆動信号UHのタイムチャートを示している。
駆動信号UHは、電気角0〜120度のときHレベルであり、電気角120〜360度のときLレベルである。
【0035】
図2(E)は、駆動信号ULのタイムチャートを示している。
駆動信号ULは、電気角0〜180度のときLレベルであり、電気角180〜300度のときHレベルであり、電気角300〜540度のときLレベルである。
【0036】
図2(D),(E)は、破線領域が、電気角120度、300度、480度、660度付近に示されている。
電気角120度付近の破線領域と、電気角480度付近の破線領域は、モータ制御部6が、通電パターンを第2の通電パターンBに変えたならば、駆動信号UHの立ち下がりエッジと駆動信号ULの立ち上がりエッジとが、時間的に近接する領域である。このとき、スイッチング素子Q1のオフの遅延(スイッチング遅延時間)や、スイッチング素子Q2のオンの遅延(スイッチング遅延時間)のばらつきによっては、U相のスイッチング素子Q1,Q2が同時にオンして貫通電流が流れる虞がある。
【0037】
電気角300度付近の破線領域と、電気角660度付近の破線領域は、モータ制御部6が、通電パターンを第2の通電パターンBに変えたならば、駆動信号UHの立ち上がりエッジと駆動信号ULの立ち下がりエッジとが、時間的に近接する領域である。このとき、スイッチング素子Q1のオンの遅延や、スイッチング素子Q2のオフの遅延のばらつきによっては、U相のスイッチング素子Q1,Q2が同時にオンして貫通電流が流れる虞がある。
なお、電気角120度、300度、480度、660度には、検出信号HWのエッジが存在する。
【0038】
図2(F)は、駆動信号VHのタイムチャートを示している。
駆動信号VHは、電気角0〜120度のときLレベルであり、電気角120〜240度のときHレベルであり、電気角240〜480度のときLレベルである。
【0039】
図2(G)は、駆動信号VLのタイムチャートを示している。
駆動信号VLは、電気角0〜60度のときHレベルであり、電気角60〜300度のときLレベルであり、電気角300〜420度のときHレベルである。
【0040】
図2(F),(G)は、破線領域が、電気角60度、240度、420度、600度付近に示されている。
電気角60度付近の破線領域と、電気角420度付近の破線領域は、モータ制御部6が、通電パターンを第2の通電パターンBに変えたならば、駆動信号VHの立ち上がりエッジと駆動信号VLの立ち下がりエッジとが、時間的に近接する領域である。このとき、スイッチング素子Q3のオンの遅延や、スイッチング素子Q4のオフの遅延のばらつきによっては、V相のスイッチング素子Q3,Q4が同時にオンして貫通電流が流れる虞がある。
【0041】
電気角240度付近の破線領域と、電気角600度付近の破線領域は、モータ制御部6が、通電パターンを第2の通電パターンBに変えたならば、駆動信号VHの立ち下がりエッジと駆動信号VLの立ち上がりエッジとが、時間的に近接する領域である。このとき、スイッチング素子Q3のオフの遅延や、スイッチング素子Q4のオンの遅延のばらつきによっては、V相のスイッチング素子Q3,Q4とが同時にオンして貫通電流が流れる虞がある。
なお、電気角60度、240度、420度、600度には、検出信号HVのエッジが存在する。
【0042】
図2(H)は、駆動信号WHのタイムチャートを示している。
駆動信号WHは、電気角0〜240度のときLレベルであり、電気角240〜360度のときHレベルである。
【0043】
図2(I)は、駆動信号WLのタイムチャートを示している。
駆動信号WLは、電気角0〜60度のときLレベルであり、電気角60〜180度のときHレベルであり、電気角180〜360度のときLレベルである。
【0044】
図2(H),(I)は、破線領域が、電気角180度、360度、540度、720度付近に示されている。
電気角180度付近の破線領域と、電気角540度付近の破線領域は、モータ制御部6が、通電パターンを第2の通電パターンBに変えたならば、駆動信号WHの立ち上がりエッジと駆動信号WLの立ち下がりエッジとが、時間的に近接する領域である。このとき、スイッチング素子Q5のオンの遅延や、スイッチング素子Q6のオフの遅延のばらつきによっては、W相のスイッチング素子Q5,Q6が同時にオンして貫通電流が流れる虞がある。
【0045】
電気角360度付近の破線領域と、電気角720度付近の破線領域は、モータ制御部6が、通電パターンを第2の通電パターンBに変えたならば、駆動信号WHの立ち下がりエッジと駆動信号WLの立ち上がりエッジとが、時間的に近接する領域である。このとき、スイッチング素子Q5のオフの遅延や、スイッチング素子Q6のオンの遅延のばらつきによっては、W相のスイッチング素子Q5,Q6とが同時にオンして貫通電流が流れる虞がある。
なお、電気角180度、360度、540度、720度には、検出信号HVのエッジが存在する。
【0046】
第1の通電パターンAは、各相の上アーム側のスイッチング素子と下アーム側のスイッチング素子とが、同時にオンしないように設定されている。第1の通電パターンAは更に、各相の上アーム側に係る駆動信号のエッジと下アーム側に係る駆動信号のエッジとが、時間的に近接しないように設定されている。
しかし、第1の通電パターンAから第2の通電パターンBへの切り替えが、検出信号HU,HV,HWのエッジの時間的近傍で行われたならば、各相の上アーム側に係る駆動信号のエッジと下アーム側に係る駆動信号のエッジとが、時間的に近接する虞がある。このとき、上アーム側に係るスイッチング素子のオンオフの遅延や、スイッチング素子のオンオフの遅延のばらつきによっては、上アーム側のスイッチング素子と下アーム側のスイッチング素子とが同時にオンして、貫通電流が流れる虞がある。
【0047】
図3は、第1の実施形態に於ける第1の通電パターンAの真理値を示す図である。図の各行は、電気角を示している。図の各列は、各信号を示している。
第1の通電パターンAの検出信号HUの真理値は、電気角0〜180度のとき1であり、電気角180〜360度のとき0である。
第1の通電パターンAの検出信号HVの真理値は、電気角0〜60度のとき1であり、電気角60〜240度のとき0であり、電気角240〜360度のとき1である。
第1の通電パターンAの検出信号HWの真理値は、電気角0〜120度のとき0であり、電気角120〜300度のとき1であり、電気角300〜360度のとき0である。
【0048】
第1の通電パターンAの駆動信号UHの真理値は、電気角0〜120度のとき1であり、電気角120〜360度のとき0である。
第1の通電パターンAの駆動信号ULの真理値は、電気角0〜180度のとき0であり、電気角180〜300度のとき1であり、電気角300〜360度のとき0である。
【0049】
第1の通電パターンAの駆動信号VHの真理値は、電気角0〜120度のとき0であり、電気角120〜240度のとき1であり、電気角240〜360度のとき0である。
第1の通電パターンAの駆動信号VLの真理値は、電気角0〜60度のとき1であり、電気角60〜300度のとき0であり、電気角300〜360度のとき1である。
【0050】
第1の通電パターンAの駆動信号WHの真理値は、電気角0〜240度のとき0であり、電気角240〜360度のとき1である。
第1の通電パターンAの駆動信号WLの真理値は、電気角0〜60度のとき0であり、電気角60〜180度のとき1であり、電気角180〜360度のとき0である。
【0051】
図4(A)〜(I)は、第1の実施形態に於ける第2の通電パターンBのタイムチャートを示す波形図である。図の横軸は共通して、電気角を単位とする時間を示している。図の縦軸は、信号がH(High)レベルとL(Low)レベルのいずれであるかを示している。
【0052】
図4(A)は、検出信号HUのタイムチャートを示している。
第2の通電パターンBの検出信号HUのタイムチャートは、第1の通電パターンAの検出信号HU(図2(A))のタイムチャートと同様である。
【0053】
図4(B)は、検出信号HVのタイムチャートを示している。
第2の通電パターンBの検出信号HVのタイムチャートは、第1の通電パターンAの検出信号HV(図2(B))のタイムチャートと同様である。
【0054】
図4(C)は、検出信号HWのタイムチャートを示している。
第2の通電パターンBの検出信号HWのタイムチャートは、第1の通電パターンAの検出信号HW(図2(C))のタイムチャートと同様である。
【0055】
図4(D)は、駆動信号UHのタイムチャートを示している。
駆動信号UHは、電気角0〜60度のときHレベルであり、電気角60〜300度のときLレベルであり、電気角300〜420度のときHレベルである。なお、第2の通電パターンBの駆動信号UHの位相は、第1の通電パターンAの駆動信号UH(図2(D)参照)の位相よりも、電気角で60度だけ進んでいる。
【0056】
図4(E)は、駆動信号ULのタイムチャートを示している。
駆動信号ULは、電気角0〜120度のときLレベルであり、電気角120〜240度のときHレベルであり、電気角240〜480度のときLレベルである。なお、第2の通電パターンBの駆動信号ULの位相は、第1の通電パターンAの駆動信号UL(図2(E)参照)の位相よりも、電気角で60度だけ進んでいる。
【0057】
図4(F)は、駆動信号VHのタイムチャートを示している。
駆動信号VHは、電気角0〜60度のときLレベルであり、電気角60〜180度のときHレベルであり、電気角180〜420度のときLレベルである。なお、第2の通電パターンBの駆動信号VHの位相は、第1の通電パターンAの駆動信号VH(図2(F)参照)の位相よりも、電気角で60度だけ進んでいる。
【0058】
図4(G)は、駆動信号VLのタイムチャートを示している。
駆動信号VLは、電気角0〜240度のときLレベルであり、電気角240〜360度のときHレベルである。なお、第2の通電パターンBの駆動信号VLの位相は、第1の通電パターンAの駆動信号VL(図2(G)参照)の位相よりも、電気角で60度だけ進んでいる。
【0059】
図4(H)は、駆動信号WHのタイムチャートを示している。
駆動信号WHは、電気角0〜180度のときLレベルであり、電気角180〜300度のときHレベルであり、電気角300〜540度のときLレベルである。なお、第2の通電パターンBの駆動信号WHの位相は、第1の通電パターンAの駆動信号WH(図2(H)参照)の位相よりも、電気角で60度だけ進んでいる。
【0060】
図4(I)は、駆動信号WLのタイムチャートを示している。
駆動信号WLは、電気角0〜120度のときHレベルであり、電気角120〜360度のときLレベルである。なお、第2の通電パターンBの駆動信号WLの位相は、第1の通電パターンAの駆動信号WL(図2(I)参照)の位相よりも、電気角で60度だけ進んでいる。
第2の通電パターンBは、各相の上アーム側のスイッチング素子と下アーム側のスイッチング素子とが、同時にオンしないように設定されている。第2の通電パターンBは更に、各相の上アーム側に係る駆動信号のエッジと下アーム側に係る駆動信号のエッジとが、時間的に近接しないように設定されている。
【0061】
図5は、第1の実施形態に於ける第2の通電パターンBの真理値を示す図である。図の各行は、電気角を示している。図の各列は、各信号を示している。
第2の通電パターンBの検出信号HUの真理値は、第1の通電パターンAの検出信号HUの真理値(図3参照)と同じである。
第2の通電パターンBの検出信号HVの真理値は、第1の通電パターンAの検出信号HVの真理値(図3参照)と同じである。
第2の通電パターンBの検出信号HWの真理値は、第1の通電パターンAの検出信号HWの真理値(図3参照)と同じである。
【0062】
第2の通電パターンBの駆動信号UHの真理値は、電気角0〜60度のとき1であり、電気角60〜300度のとき0であり、電気角300〜360度のとき1である。
第2の通電パターンBの駆動信号ULの真理値は、電気角0〜120度のとき0であり、電気角120〜240度のとき1であり、電気角240〜360度のとき0である。
【0063】
第2の通電パターンBの駆動信号VHの真理値は、電気角0〜60度のとき0であり、電気角60〜180度のとき1であり、電気角180〜360度のとき0である。
第2の通電パターンBの駆動信号VLの真理値は、電気角0〜240度のとき0であり、電気角240〜360度のとき1である。
【0064】
第2の通電パターンBの駆動信号WHの真理値は、電気角0〜180度のとき0であり、電気角180〜300度のとき1であり、電気角300〜360度のとき0である。
第2の通電パターンBの駆動信号WLの真理値は、電気角0〜120度のとき1であり、電気角120〜360度のとき0である。
【0065】
図5の真理値によれば、第1の実施形態に於いて、第2の通電パターンBは、第1の通電パターンAに対して、位相が電気角で60度だけ進んでいる。
【0066】
(第1の実施形態の動作)
【0067】
図6は、モータ制御部6が通電パターンを切り替える処理を示すフローチャートである。
モータ制御部6は、駆動制御装置1が起動され、速度指示信号Csを受信したなら、ブラシレスモータ20の起動処理を開始する。
ステップS1に於いて、モータ制御部6は、選択されている通電パターンが第2の通電パターンBであるか否かを判断する。モータ制御部6は、当該判断条件が成立したならば(Yes)、図6の処理を終了し、当該判断条件が成立しなかったならば(No)、ステップS2の処理を行う。
【0068】
ステップS2に於いて、モータ制御部6は、第1の通電パターンAでブラシレスモータ20の起動を開始する。すなわち、モータ制御部6は、通電パターン記憶部8から第1の通電パターンAを示す通電パターン情報Seを取得する。モータ制御部6は、取得した通電パターン情報Seに基づいて、予め定められたPWM信号のオンデューティで、第1の通電パターンAで通電する駆動制御信号Sdを生成し、プリドライブ回路3に出力する。PWM信号のオンデューティは、例えば、ブラシレスモータ20の仕様などに基づいて定められている。
【0069】
ステップS3に於いて、モータ制御部6は、ブラシレスモータ20の回転速度を増加させる。モータ制御部6は、PWM信号のオンデューティを変えずに第1の通電パターンAで通電を続ける。
【0070】
ステップS4に於いて、モータ制御部6は、タイマ回路部9から取得した計時情報Stに基づいて、ブラシレスモータ20を起動してから所定時間が経過したか否かを判断する。モータ制御部6は、当該判断条件が成立したならば(Yes)、ステップS5の処理を行い、当該判断条件が成立しないならば(No)、ステップS3の処理を行う。ここで、ブラシレスモータ20の起動とは、第1の通電パターンAで通電を開始したことをいう。ここで、所定時間とは、例えば、第1の通電パターンAで通電を開始したのちの経過時間であり、例えば、モータの仕様などに基づき定められるものである。
【0071】
ステップS5に於いて、モータ制御部6は、通電パターン切替可能タイミングであるか否かを判断する。モータ制御部6は、当該判断条件が成立したならば(Yes)、ステップS6の処理を行い、当該判断条件が成立しないならば(No)、再びステップS5の処理を行う。ここで、通電パターン切替可能タイミングとは、検出信号HU,HV,HWのいずれかのエッジ(立ち上がり、または、立ち下がり)を検出するタイミングである。例えば、電気角が60度を超えて、120度未満で所定時間が経過した場合の通電パターン切替可能タイミングは、所定時間経過後、最初に検出される検出信号HWの立ち上がりエッジの検出タイミング(電気角120度のとき)となる。
【0072】
ステップS6に於いて、モータ制御部6は、第1の通電パターンAの各駆動信号の位相を電気角60度だけ進める。モータ制御部6は、各駆動信号UH,UL,VH,VL,WH,WLからなる駆動制御信号Sdを、プリドライブ回路3に出力する。
【0073】
ステップS7に於いて、モータ制御部6は、第1の通電パターンAに於いて、PWM信号のオンデューティを低下させ、低下したオンデューティのPWM信号を有する駆動制御信号Sdをプリドライブ回路3へ出力する。ここで、PWM信号のオンデューティの低下量は、例えば、第2の通電パターンBに切り替えたのち、ブラシレスモータ20が目標回転速度で回転する定常状態に於ける、PWM信号のオンデューティである。
【0074】
ステップS8に於いて、モータ制御部6は、第2の通電パターンBに切り替えた駆動制御信号Sdを、プリドライブ回路3に出力する。ここでモータ制御部6は、通電パターン記憶部8から第2の通電パターンBに係る通電パターン情報Seを取得し、取得した通電パターン情報Seに基づいて、第2の通電パターンBで通電する駆動制御信号Sdを、プリドライブ回路3に出力する。ステップS8の処理が終了すると、モータ制御部6は、図6の処理を終了する。
【0075】
モータ制御部6は、通電パターンを切り替える処理を終了したならば、速度指示信号Csに基づいて、ブラシレスモータ20が所定の回転速度になるように制御する。
【0076】
例えば、ステップS5に於いて、モータ制御部6が、検出信号HVの立ちがりエッジを検出した場合を考える。このとき、ブラシレスモータ20のタイミングは、図2のタイムチャートに於ける電気角60度の時間に対応する。モータ制御部6は、検出信号HVの立ちがりエッジを検出した後に、ステップS6の処理を行う。
ステップS6に於いて、モータ制御部6は、通電タイミングを調整して、第1の通電パターンAの駆動信号UH,UL,VH,VL,WH,WLの位相を電気角で60度だけ進める。この通電タイミングの調整は、例えば進角制御部7の進角制御信号Saに基づいて行う。このとき、ブラシレスモータ20のロータのタイミングが電気角60〜120度なので、モータ制御部6は、第1の通電パターンAに基づく通電タイミングを電気角120〜180度に調整して、駆動信号UH,UL,VH,VL,WH,WLを生成する。
ステップS6の処理により、駆動信号UHは、HレベルからLレベルに変化する。駆動信号ULは、Lレベルのままである。駆動信号ULのエッジは発生せず、駆動信号UHのエッジと近接しない。よって、U相の上アーム側スイッチング素子Q1と下アーム側スイッチング素子Q2との短絡は発生せず、U相スイッチングレッグに貫通電流が流れることはない。
更にステップS6の処理により、駆動信号VHは、LレベルからHレベルに変化する。駆動信号VLは、Lレベルのままである。駆動信号VLのエッジは発生せず、駆動信号VHのエッジと時間的に近接しない。よって、V相の上アーム側スイッチング素子Q3と下アーム側スイッチング素子Q4との短絡は発生せず、V相スイッチングレッグに貫通電流が流れることはない。
更にステップS6の処理により、駆動信号WHは、Lレベルのままである。駆動信号WLは、レベルのままである。駆動信号WH,WLともにエッジは発生しない。よって、W相の上アーム側スイッチング素子Q5と下アーム側スイッチング素子Q6との短絡は発生せず、W相スイッチングレッグに貫通電流が流れることはない。
【0077】
ステップS7に於いて、モータ制御部6は、第1の通電パターンAにて、PWM信号のオンデューティを低下させ、低下したオンデューティのPWM信号を有する駆動制御信号Sdをプリドライブ回路3へ出力する。
ステップS8に於いて、モータ制御部6は、第2の通電パターンBに切り替えた駆動制御信号Sdを、プリドライブ回路3に出力する。
【0078】
このようにして、モータ制御部6は、ブラシレスモータ20への通電を一旦停止することなく、各相のスイッチング素子の上下短絡が発生しない通電タイミングで、第1の通電パターンAから第2の通電パターンBに切り替えている。よって、モータ制御部6は、各相アームに貫通電流が流れることを抑止し、第1の通電パターンAから第2の通電パターンBに安全に切り替えることができる。更にモータ制御部6は、第2の通電パターンBへの切り替えに伴うブラシレスモータ20の急激な速度変化(加速)を抑制することができる。
【0079】
(第1の実施形態の効果)
以上説明した第1の実施形態では、次の(A)〜(E)のような効果がある。
【0080】
(A) モータ制御部6は、ブラシレスモータ20の起動の際に、あらかじめ設定された第1の通電パターンAによる回転制御を開始し、通電パターンの切り替え時に各相の短絡が発生しない通電タイミングに調整してから第1の通電パターンAよりも所定の進角量を有する第2の通電パターンBによる回転制御に切り替わるように、駆動制御信号Sdをプリドライブ回路3に出力している。これにより、モータ制御部6は、通電を停止することなく、各相のスイッチング素子の上下短絡が発生しない通電タイミングで、第1の通電パターンAから第2の通電パターンBに、安全に切り替えることができる。
【0081】
(B) モータ制御部6は、ブラシレスモータ20の起動の際には、あらかじめ設定された第1の通電パターンAによる回転制御を開始し、所定時間が経過したならば、第2の通電パターンBによる回転制御に切り替えている。これにより、モータ制御部6は、ブラシレスモータ20の起動の際には、第1の通電パターンAによる回転制御を行うので、モータが意図しない方向に回転するなどの不安定な動作を抑止できる。更にモータ制御部6は、通常回転の際には、通常回転に最適な第2の通電パターンBによる回転制御を行うので、モータのトルクを最大限に引き出すことができる。
【0082】
(C) モータ制御部6は、通電を停止することなく、第1の通電パターンAから第2の通電パターンBに切り替えている。これにより、モータ制御部6は、回転制御の誤動作、ブラシレスモータ20の回転速度の低下、ブラシレスモータ20のトルクの低下、ブラシレスモータ20からの異音発生などの不具合を、未然に防止することができる。
【0083】
(D) 制御回路部5がブラシレスモータ20を起動して、第2の通電パターンBに切り替えるまでの所定時間は、第1の通電パターンAによる回転制御の開始時からのあらかじめ設定された経過時間、または、あらかじめ設定された通電の切り替わり回数に達した時間である。このため、モータ制御部6は、回転速度を監視する回路を設ける必要がなく、回路が簡素化され、コストを低減することができる。
【0084】
(E) モータ制御部6は、第1の通電パターンAから第2の通電パターンBに切り替えるとき、そのPWM信号のオンデューティを、通電パターンの切り替え直前よりも低下するようにしている。これにより、モータ制御部6は、第2の通電パターンBに切り替えた際に、急激な速度変化(加速)が生ずることを抑制することができる。
【0085】
(第2の実施形態の構成)
【0086】
図7は、第2の実施形態に於けるブラシレスモータ20の駆動制御装置1aの概略の構成図である。第1の実施形態の駆動制御装置1(図1参照)と同一の要素には同一の符号を付与している。
【0087】
第2の実施形態の駆動制御装置1aは、第1の実施形態の制御回路部5(図1参照)の代わりに制御回路部5aを備えている。それ以外は、駆動制御装置1aは、第1の実施形態の駆動制御装置1(図1参照)と同様に構成されている。
【0088】
制御回路部5aは、第1の実施形態の進角制御部7(図1参照)の代わりに進角制御部7aを備えており、更に速度検出部10を備えている。それ以外は、制御回路部5aは、第1の実施形態の制御回路部5(図1参照)と同様に構成されている。
【0089】
速度検出部10は、回転位置検出器4からの回転位置信号Spに基づいて、ブラシレスモータ20の回転速度を検出し、回転速度信号Ssを出力するものである。速度検出部10は、回転位置検出器4に接続されて、回転位置信号Spが入力される。速度検出部10は、検出した速度を示す回転速度信号Ssをモータ制御部6および進角制御部7aに出力する。
【0090】
進角制御部7aは、回転速度信号Ssに応じた進角値情報を有しており、回転速度信号Ssを入力して、現在速度に応じた最適な進角量となるように進角制御信号Saを出力する。
進角制御部7aは、ブラシレスモータ20の回転速度と進角値を対応付けるものである。進角制御部7aは、回転速度信号Ssと進角値とが対応付けられている進角値情報を格納している。進角制御部7aは、回転速度信号Ssに基づいて、現在速度に応じた最適な進角量となるように、進角制御信号Saをモータ制御部6に出力する。
【0091】
モータ制御部6は、速度指示信号Csと回転速度信号Ssとを比較して、駆動制御信号SdのPWM信号のオンデューティを調整してプリドライブ回路3に出力し、ブラシレスモータ20が指定された回転速度になるように制御する。
【0092】
(第2の実施形態の効果)
以上説明した第2の実施形態では、第1の実施形態と同様な効果に加えて、次の(F)のような効果がある。
【0093】
(F) 駆動制御装置1aは、速度検出部10を備え、回転速度信号Ssを用いて、ブラシレスモータ20の速度制御や進角制御などのフィードバック制御を行っている。これにより、第2の通電パターンBへの切り替えを正確に行い、PWM信号のオンデューティの低下量を正確に設定することができる。
【0094】
(変形例)
本発明は、上記実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更実施が可能である。この利用形態や変形例としては、例えば、次の(a)〜(l)のようなものがある。
【0095】
(a) 上記実施形態のブラシレスモータ20の相数は、3相である。しかし、これに限られず、ブラシレスモータ20の相数は、3相以上であればよい。
【0096】
(b) 駆動制御装置1,1aが制御するモータの種類は、ブラシレスモータに限定されない。
【0097】
(c) スイッチング素子Q1〜Q6の種類は、FETに限定されず、任意の種類のスイッチング素子でもよい。例えば、スイッチング素子には、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などを採用してもよい。
【0098】
(d) 第1の通電パターンAと、第2の通電パターンBとは、図2図5の具体例に限定されない。第2の通電パターンBは、例えば、第1の通電パターンAに対して位相が電気角で最低間隔に相当する角度以上進んでいればよい。
【0099】
(e) 進角制御部7,7aは、上記実施形態の構成に限定されない。進角値を設定するための対象パラメータは、あらかじめ設定された固定値、検出される回転速度、検出されるモータ電流、回転の指示速度などに基づいて、任意に設定することができる。
【0100】
(f) 図6に示したフローチャートは具体例であって、この処理に限定されるものではなく、たとえば、各ステップ間に他の処理が挿入されてもよい。
【0101】
(g) 図6に示すフローチャートのステップS4に於いて、所定時間は、予め設定された時間ではなく、あらかじめ設定されたオンオフによる通電の切り替わりの回数が所定回数に達した時間でもよい。なお、所定回数は、例えば、モータの仕様などに基づき定められていてもよい。
【0102】
(h) モータ制御部6は、図6に示すステップS6に於いて、電気角を60度進める駆動制御信号Sdをプリドライブ回路3に出力して、ステップS8に於いて、通電パターンを切り替えた。しかし、モータ制御部6が通電パターンを切り替える制御方法は、駆動信号UH,UL、駆動信号VH,VL、駆動信号WH,WLのいずれに於いても、同時にHレベルにならず、かつ、同相のスイッチングレッグに係る駆動信号のエッジが時間的に近接しないものであれば、どのような制御方法であってもよい。
【0103】
(i) 駆動制御信号Sdは、PWM信号である。しかし、これに限られず、駆動制御信号Sdは、PFM(Pulse Frequency Modulation)信号や、PDM(Pulse Density Modulation)信号など、任意のパルス変調信号であってもよい。
【0104】
(j) モータ制御部6は、第1の通電パターンAに於いて、全ての相の電気角を進めるように制御している。しかし、これに限られず、モータ制御部6は、駆動信号のエッジが発生する相に限り、その電気角を進めるように制御してもよい。
【0105】
(k) モータ制御部6は、第1の通電パターンAに於いて、全ての相の電気角を進めるように制御している。しかし、これに限られず、モータ制御部6は、駆動信号のエッジが発生する相に限り、その相の通電パターンをオフするように制御してもよい。
【符号の説明】
【0106】
1、1a 駆動制御装置
2 インバータ回路 (モータ駆動部)
3 プリドライブ回路 (モータ駆動部)
4 回転位置検出器
5、5a 制御回路部 (制御部)
6 モータ制御部
7、7a 進角制御部
8 通電パターン記憶部
9 タイマ回路部
10 速度検出部
20 ブラシレスモータ
Sp 回転位置信号
Sa 進角制御信号
St 計時情報
Se 通電パターン情報
Ss 回転速度信号
Cs 速度指示信号
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7