(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
図1は、従来の500kV変電所に設置される断路器1の一例を示している。断路器1の導電部2は、地上に設置された架台3の上に起立されたがいし装置4の頂上に設置される。このがいし装置4の頂上に設置される断路器1の導電部2は、その頂点で回転するヒンジ部5と、ヒンジ部5に連結された水平方向に延びるバット側ブレード6と、そのバット側ブレード6の先端に取り付けられた主接触部(バット)7,シールドリング8を備える。これらバット側ブレード6,主接触部7及びシールドリング8は、ヒンジ部5の回転に伴い一体となって回転する。ヒンジ部5は、バッテリー電源等の駆動源からの力を受けて正逆回転する。この種の断路器は、例えば特許文献1に開示されている。
【0003】
がいし装置4は、導電部2を支持する支持がいし11と、ヒンジ部5に対して回転力を伝達する操作がいし12を備える。1本の支持がいし11は、複数個のがいし 11aを直列に連結して形成する。この支持がいし11を3本用い、各支持がいし11を三角錐の各辺に組み付けて塔のように形成する。この3本の支持がいし11により形成される塔の上に導電部2を設置する。操作がいし12は、上記の3本の支持がいし11で構成される三角錐の中心を上下に延びるように配置する。この操作がいし12も、複数のがいし12aを直列に連結して形成される。この操作がいし12の上端がヒンジ部5に連携される。
【0004】
支持がいし11は、複数個(図の例では4個)のがいし11aをボルトにて連結することで全体が一本の直線状の細棒体としている。また、従前の操作がいし12は、複数個のがいし12をボルトにて連結してその全体を一本の直線状の棒状体としたものもある。一方、
図1,
図2に示すように、操作がいし12の中間部、すなわち、隣接するがいし12aの間にユニバーサルジョイントからなる中間連結部14を介在して連結したものがある。
【0005】
この中間連結部14は、例えば
図3に示すような中間ピンジョイント構造により構成される。すなわち、十文字型継手14aを、上側カップリング14bと下側カップリング14cで挟み込むとともに、ピン14dを用いて一体化する。十文字型継手部14a・ピン14dは、ピン接合構造となっており、ユニバーサルに可動する構成となる。
図4(b)に示すように、中間連結部14は、同一直線状に配置された一組のピン14dの軸回りに所定角度範囲内で正逆回転可能となる。これにより、直交する2軸の回りでそれぞれ所定角度回転することで、上側カップリング14bと下側カップリング14cは、ユニバーサルに可動となる。そして、
図4(a)に示すように、上側カップリング14bと下側カップリング14cは、がいし12aに連結する。
【0006】
例えば過度な地震動により操作がいし12が振られた場合、すべてのがいし12aをボルト等により直結していると、細棒状の操作がいし12はその全体が湾曲し、がいし12aの許容応力を超えると、がいし12aが破損してしまう。しかし、上記のように中間連結部14を設けると、過度な地震動により操作がいし12が振られても、
図2(b)に示すように、中間部連結部14がユニバーサルに可動し、平常時の真っ直ぐなときのがいし中心である基準線L1に対し、振られた状態の操作がいし12(がいし12a)の中心線L2は傾斜するが、中間連結部14の上側の2個のがいし12aと下側の2個のがいし12aはそれぞれ直線状を維持することができ、また、仮に湾曲したとしてもその程度を抑えることができ、がいし12aの破損を防ぐことができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したピンジョイント構造の中間連結部14は、構造上可動範囲が限られている。そして、可動範囲の限界に達した場合、上側カップリング14bと下側カップリング14c同士が接触する。よって、係る可動限界を超える過大な地震動を受けると、操作がいし12並びに中間連結部14が勢いよく振られ、中間連結部14は可動限界に達すると、上側カップリング14bと下側カップリング14c同士が接触し、それ以上の移動が阻止される。よって、中間連結部14は可動構造から固定構造となる。その結果、中間連結部14を実装しない操作がいしと同様に、操作がいし12は全体がくの字のように変形した屈曲状態となってテンションがかかる。さらに地震動により上側カップリング14bと下側カップリング14c同士が激しく衝突することで大きな衝撃力が発生し、その衝撃力は中間連結部14と接合しているがいし12aに伝わる。そして、その衝撃力と屈曲状態となったことによるテンションとの重畳による力が、がいしの耐力を超えた場合には、がいし12aは破壊するおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するために、本発明に係る断路器の衝撃緩衝装置は、(1)断路器の上下に隣接するがいしの間に介在させる衝撃緩衝装置であり、上側に連結するがいしと下側に連結するがいしのなす角を可変とするユニバーサルジョイントと、そのユニバーサルジョイントの上側のがいしに連結する上側連結部材と、下側のがいしに連結する下側連結部材の間に介在するように配置されたダンパ装置を備え、前記ダンパ装置は、操作がいし間の振動エネルギーを吸収するとともに、前記上側連結部材と前記下側連結部材の間隔が急激に小さくなる動作に基づいて発生する衝撃を吸収するものとした。
【0010】
上側連結部材は実施形態では上側カップリング26に対応し、下側連結部材は実施形態では下側カップリング27に対応する。このようにすると、操作がいしは、上側のがいしと下側のがいしの間に本発明の衝撃緩衝装置が介在されることで上方領域と下方領域に分けられる。なお、上方領域を構成するがいしの個数と下方領域を構成するがいしの個数は任意とすることができ、上下で同じでも良いし異なっていても良い。衝撃緩衝装置は、ユニバーサルジョイントを備えるので、例えば地震動などにより操作がいしが湾曲する方向に力が加わった場合、ユニバーサルジョイントの部分で上側のがいしと下側のがいしのなす角が容易に変化するため、各がいしが大きく湾曲することなく操作がいし全体が振動し、各がいしの破損が抑止される。そして、ユニバーサルジョイント内にダンパ装置を設けたので、上記の上側のがいしと下側のがいしのなす角が変化する際、上側連結部材と下側連結部材の相対角度も変化し、変化の方向により両連結部材の周縁のいずれかの部位が接近し、反対側から離反する。すると、その接近によりダンパ装置に圧縮するような衝撃が加わり、ダンパ装置は振動エネルギーを吸収するとともに係る衝撃を吸収する。よって、例えば過大な地震動が発生したとしても、ダンパ装置で衝撃を吸収し、操作がいしを構成するがいしに過大なストレスが加わるのを抑制し、がいしの破損を防止することができる。
【0011】
(2)前記がいしは、断路器の開閉のための回転力を伝達する操作がいしを構成するものとするとよい。
【0012】
(3)前記ダンパ装置は、ばね部材を用いて構成されると良い。(4)ばね部材は、皿ばねや輪ばねを用いるとよい。ばね部材を用いると、耐久性が良好でメンテナンスフリーが実現できるのでよい。そして、皿ばねよりも特に輪ばねを用いると、高い緩衝効果・減衰効果を得られるので好ましい。
【0013】
(5)前記輪ばねに対して初期負荷を加える初期荷重加荷構造を備えるとよい。初期負荷を与えておくと、例えば上側連結部材が傾き始めて上側連結部材と下側連結部材の間隔が短くなり始めた当初から、ばねが安定するとともにロス無く輪ばねの応差の大きい領域,ヒステリシス特性を充分に活かした領域で使用ができるので好ましい。
【0014】
(6)前記ダンパ装置は、前記輪ばねを収納する上方が開口した収納容器と、その収納容器の上部に昇降移動可能に配置されるガイドキャップとを備え、前記初期荷重加荷構造は、前記ダンパ装置の内部に実装され、前記収納容器と前記ガイドキャップの最大離反距離を制限するように前記収納容器と前記ガイドキャップを連携する連携手段を有し、前記収納容器と前記ガイドキャップが前記最大離反距離に位置する際にも前記輪ばねが圧縮されるようにするとよい。連携手段は、実施形態ではガイドピン40に対応する。この発明は、第一実施形態により実現されている。このようにすると、例えば上側連結部材がガイドキャップから離反したとしても、輪ばねに対して初期負荷が加わった状態を維持できるので好ましい。
【0015】
(7)前記ダンパ装置は、前記輪ばねを収納する上方が開口した収納容器と、その収納容器の上部に昇降移動可能に配置されるガイドキャップとを備え、前記初期荷重加荷構造は、前記ダンパ装置の外部から前記ガイドキャップを下方に付勢し、無負荷の平常状態で前記輪ばねが圧縮されるようにするとよい。この発明は、第二実施形態により実現されている。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、例えばユニバーサルジョイントの可動限界を超える過大な地震動を受けるような場合でも、ダンパ装置により振動エネルギーや衝撃を吸収することができ、がいしの破損を防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図5は、本発明の好適な第一実施形態である断路器の衝撃緩衝装置が実装される500kV変電所に設置される断路器1の一例を示している。
図6は、本発明の衝撃緩衝装置20が実装されるがいし装置4を模式的に示している。
図5と
図1を比較すると分かるように、断路器としての基本的な構成は、同じである。従って、対応する部材には同一符号を付し、詳細な説明を省略する。そして、従来の中間連結部14に換えて、本実施形態の衝撃緩衝装置20を用いることを特徴とする。
【0019】
つまり、新たに断路器を設置する場合には、操作がいし12を構成する所定のがいし12aの連結部分に、本実施形態の衝撃緩衝装置20を介在させ、衝撃緩衝装置20の上下にそれぞれがいし12aを連結するように構成する。さらに、既設の中間連結部14が実装されていた断路器に対しては、係る中間連結部14を取り外すとともに、衝撃緩衝装置20に交換することが可能となる。
【0020】
図示するように、本実施形態では、3本の支持がいし11を三角錐状に組み付けて塔のように構成し、その頂部にて導電部2を支持するようにする。各支持がいし11は、それぞれ複数(この例では、4個)のがいし11aをボルト等で直列に連結し、一直線上に延びる1本の細棒状に形成する。3本の支持がいし11は、柱間連結がいし13により相互に連結され、補強される。ヒンジ部5に対して回転力を伝達する操作がいし12は、3本の支持がいし11で構成される三角錐の中心を上下に延びるように配置する。さらに、操作がいし12は、複数(この例では、4個)のがいし12aを直列に連結して形成される。この操作がいし12の上端がヒンジ部5に連携される。また、操作がいし12の下端は、随省略の駆動源に連携される。操作がいし12は、駆動源からの動力を受けて回転し、これに伴い操作がいし12の上端に連携されたヒンジ部5が回転する。
【0021】
本実施形態では、操作がいし12の中間地点である上から2個目と3個目のがいし12aの間に衝撃緩衝装置20を介在させて、それぞれのがいしを衝撃緩衝装置20に連結する。また、上から1番目と2番目のがいし12a同士、並びに上から3番目と4番目のがいし12aは、ボルトなどで連結する。衝撃緩衝装置20は、後述するようにユニバーサルジョイントを備えていて、上面と下面の相対位置関係が、平行な基準状態から任意の向きに傾くことができる。これにより、衝撃緩衝装置20に連結される上から2番目のがいし12aと3番目のがいし12aは、それぞれ上面と下面の法線方向に向くため、衝撃緩衝装置20が基準状態のときには両がいし12aは一直線上に位置するが、上面と下面の相対的な傾きに沿って両がいし12aの軸方向のなす角も変化し、当該両がいし12aは所定角度で交差するように変位する。
【0022】
また、操作がいし12の上端とヒンジ部5とは、ピンジョイント16により連携する。操作がいし12の下端は、ピンジョイント17を介してスラストベアリング18に連携し、このスラストベアリング18を介して図外の駆動源に連携される。
【0023】
図7〜
図11を用いて、本実施形態の衝撃緩衝装置20について説明する。本実施形態の衝撃緩衝装置20は、ユニバーサルジョイント21と、そのユニバーサルジョイント21内に実装したダンパ装置22とを備えている。ユニバーサルジョイント21は、十文字型継手25を、上側カップリング26と下側カップリング27で挟み込むとともに、ピン28を用いて一体化する。上側カップリング26,下側カップリング27は、共に鋼材から構成され、強度を増している。
【0024】
図10等に示すように、上側カップリング26は、平面矩形状のベース板26aの下面の四隅に凹部26bを設け、ベース板26aの下面の一組の対辺の中央近傍に、十文字型継手支え部26cを垂下形成する。凹部26bを形成した部分のベース板26aの厚さd1(
図7(b)等参照)を厚くし、強度を保持させる。さらにこの十文字型継手支え部26cには、貫通孔26dが形成される。
【0025】
さらにベース板26aの上面には、平面略円形の凹所26eが形成され、その凹所26eの底面に矩形状の細長な突起26fが形成される。この凹所26e内に、操作がいし12のがいし12aの下端を挿入し、がいし12aの底面に形成された位置決め用の凹部内に突起26fを付合することで、がいし12aの軸回りの回転を抑止しつつ当該がいし12aを上側カップリング26上にセットする。凹所26eの底面に設けた複数の貫通孔26g内を貫通するボルト(図示省略)により、がいし12aを固定する。
【0026】
図3,
図4に示すように、従来の中間連結部14の上側カップリング14bは、平板状のベース板の上に位置決め突起を形成しているが、本実施形態では、ベース板26aを従来のものよりも肉厚にした。その厚くした分を凹所26eの深さで補正した。換言すると、凹所26eの深さの分だけ厚さを増すようにした。このようにベース板26aを肉厚にすることで、凹部26bを設けた部分のベース板26aの厚さd1を所望の強度が得られる厚さに設定することが可能となる。
【0027】
下側カップリング27は、平面矩形状のベース板27aの上面の四隅に凹部27bを設ける。この凹部27bの形成位置は、上側カップリング27の凹部26bと上下方向で重なるように対向配置する。また、ベース板27aの上面の一組の対辺の中央近傍に、十文字型継手支え部27cを起立形成する。この一組の十文字型継手支え部27cの形成位置は、上側カップリング27の一組の十文字型継手支え部26cの形成位置と90度回転させた位置としている。さらに凹部27bの底部を形成した部分のベース板26aの厚さd2(
図7(b)等参照)を厚くし、強度を保持させる。さらにこの十文字型継手支え部27cには、貫通孔27dが形成される。
【0028】
さらにベース板27aの下面には、略円形の凹所27eが形成され、その凹所27eの奥面に矩形状の細長な凹溝27fが形成される。この凹所27e内に、操作がいし12のがいし12aの上端を挿入し、がいし12aの上面に形成された位置決め用の突起を凹溝27f内に付合することで、がいし12aの軸回りの回転を抑止しつつ当該がいし12aを下側カップリング26上にセットする。凹所27eの形成位置にベース板27aを貫通するように設けた複数の貫通孔27g内を貫通するボルト(図示省略)により、がいし12aを固定する。
【0029】
上述した上側カップリングと同様に、従来の中間連結部14の下側カップリング14cは、平板状のベース板の上に位置決め凹溝を形成しているが、本実施形態では、ベース板27aを従来のものよりも肉厚にした。換言すると、凹所27eの深さの分だけベース板27aの厚さを増すようにした。その厚くした分を凹所27eの深さで補正した。このようにベース板27aを肉厚にすることで、凹部27bを設けた部分のベース板27aの厚さd2を所望の強度が得られる厚さに設定することが可能となる。
【0030】
上述したように上側カップリング26,下側カップリング27のベース板26a,27aの肉厚を所定量厚くし、既存の中間連結部14の厚さから増えた分を凹所26e,27eの深さで調整したので、凹所26e,27eを設けた分の上側カップリング26の上面(凹所26eの底面)から下側カップリング27の下面(凹所27eの奥面)間の距離は、中間連結部14の上側カップリングの上面から下側カップリング14cの下面間の距離と等しくなる。よって、先に述べた通り、既設の中間連結部14が実装されていた断路器に対しては、係る中間連結部14を取り外すとともに、衝撃緩衝装置20に交換することが可能となる。
【0031】
そして、上記の上側カップリング26とした側カップリング27を用いて、上下から十文字型継手25を挟み込む。このとき、十文字型継手25の側面に90度間隔で形成したピン装着穴25aを、それぞれ対応する十文字型継手支え部26c,27cの貫通孔26d,27dに対向するように位置合わせをする。この状態で、ピン28を貫通孔26d,27d経由でピン装着穴25a内に挿入固定する。これにより、上側カップリング26と下側カップンリング27は、一直線上に配置されるピン28の軸回りに相対的に回転可能となり、ユニバーサルジョイント21が構成される。
【0032】
ダンパ装置22は、下側カップリング27に設けた凹部27bに装着する。よって、本実施形態では、下側カップリング27の四隅にそれぞれ1個ずつダンパ装置22が取り付けられる。ダンパ装置22の固定は、凹部27bの底面に設けた貫通孔27h内に貫通させた固定用のボルト30を締結することで行う。このボルト30の締結で、下側カップリング27とダンパ装置22が一体化する。また、ダンパ装置22の上端は、上側カップリング26の凹部26bの奥面に接触可能となる。より具体的には、例えば上側カップリング26と下側カップリング27が平行な基準状態のときには、4つのダンパ装置22の上面が、それぞれ対応する4つの凹部26bに接触するようにしている。
【0033】
ダンパ装置22は、本実施形態では、上部開口した収納容器31内に輪ばね33を装着するとともに、収納容器31の上方を覆うように下部開口したガイドキャップ32を装着して構成される。ガイドキャップ32は、収納容器31に対して軸方向、すなわち、設置状態では上下方向に移動可能となる。収納容器31内に装着された輪ばね33の上下両端は、それぞれガイドキャップ32と収納容器31に接触している。例えば、ガイドキャップ32に下方への付勢力が加わると、ガイドキャップ32は、輪ばね33を下方に付勢し、当該輪ばね33を圧縮変形させながら下降移動する。また、ガイドキャップ32に加わっていた付勢力が解除されると、輪ばね33の弾性復元力によりガイドキャップ32は上昇移動して元の位置に復帰する。
【0034】
図8に拡大して示すように、収納容器31は、同心状に配置されたシャフト35と、そのシャフト35の外側に装着されるガイドシャフト36を備える。シャフト35の下端の基部35aが、下側カップリング27の凹部27bの底面に接触し、固定用のボルト30により締結される。また、係る基部35aの外径と、ガイドシャフト36の外径を等しくしており、収納容器31の外周側面が上下方向でほぼ面一となるようにしている。シャフト35の上方の本体部位35bの外径は、輪ばね33の内輪33aの内径に比べ一回り小さくする。
【0035】
また、ガイドシャフト36の内径は、輪ばね33の外輪33bの外径に比べて一回り大きくする。ガイドシャフト36の内周面と、シャフト35の本体部位35bの外周面との間に所定の空間が確保され、その空間内に輪ばね33を挿入セットする。すると、輪ばね33の内部にシャフト35が貫通する状態となる。
【0036】
シャフト35とガイドシャフト36の間に形成される空間の下端奥部は、基部35aの上面が位置し、係止部35cとなる。上記のセットされた輪ばね33の下端が、係る係止部35cに接触し、支持される。
【0037】
一方、ガイドキャップ32は、上下開口した円筒状の本体38と、本体の上端に装着された蓋部材39とを備える。本体38の内周面は、その上方が中心に向かって突出して係止部38aが形成される。輪ばね33の上端は、係る係止部38に接触する。よって、輪ばね33は、その上下両端が両係止部38a,35cに接触し、それに挟まれた状態で収納容器31・ガイドキャップ32内に保持される。
【0038】
蓋部材39は、その上面39aを湾曲した曲面とした。さらに、上面39aの曲面をなだらかにしている。これにより、例えば地震動などを受けて上側カップリング26が傾斜した場合、その傾斜角度がどのようになっても上側カップリング26の凹部26bと蓋部材39の上面39aの接触が安定的に行え、接触範囲を広くすることができる。これにより、効率よくダンパ装置が圧縮され、充分な緩衝効果・減衰効果を得られる。
【0039】
さらに、本実施形態では、輪ばね33に対して初期負荷を加える初期荷重加荷構造を備える。初期荷重加構造は、上側カップリング26と下側カップリング27が平行な基準状態において輪ばねに初期荷重を与えて初期圧縮させる構造である。そして本実施形態では、ダンパ装置22内のスタッドボルト構造によってダンパ装置22の内部で輪ばね33に初期荷重を与えて初期圧縮させ、輪ばね33を安定させる構造とした。具体的には、ガイドピン40の両端にネジを設けたスタッドボルトを用いる。ガイドピン40の一端は、蓋部材39に連結する。ガイドピン40は、シャフト35の貫通孔35e内を貫通させ、ガイドピン40の他端を基部35aの内部空間内に突出させる。ガイドピン40の他端に締め付けナット41を装着し、締め付けナット41を装着する。締め付けナット41は、シャフト35の基部35aの内部空間の天面35a′(貫通孔35eの下端外周縁)に接触し、その状態で締め付けナット41を適宜の量だけ締め付けることで、ガイドキャップ32を下降移動させて輪ばね33に対して初期荷重をかける。
【0040】
本実施形態の断路器の衝撃緩衝装置20によれば、地震動等があった場合でも以下のように機能し、操作がいし12(がいし12a)の破損を防ぐことができる。すなわち、衝撃緩衝装置20は、ユニバーサルジョイント21を備えているので、地震動が断路器1ひいてはがいし装置4に加わると、操作がいし12が湾曲するように振幅運動するが従来と同様にユニバーサルジョイント21の部分が適宜変位し、上側カップリング26と下側カップリング27の相対位置関係・角度が変わることで、がいし12aが過度に湾曲し破損するのを抑制する。さらに、本実施形態では、輪ばね33を内装するダンパ装置22を備えているため、過大な地震動によって振幅運動する操作がいし12の動作特性に適宜に追従し、ダンパ装置22(輪ばね33)がもつ衝撃吸収性および減衰性(外乱抑制)が機能して免震動作するので、耐震性能が向上する。さらに、輪ばね33が持つ高い減衰性によって、仮に、操作がいし12が共振してしまうことで起こる操作がいしの振幅運動の増幅も抑えることができる。よって、本実施形態の衝撃緩衝装置20を実装することで、地震動の強さだけではなく、長期の地震に対しても耐震効果を充分に発揮することができる。
【0041】
さらに、本実施形態では、ダンパ装置22内に初期荷重加荷構造を組み込んだため、装置内部で輪ばね33を初期圧縮させ安定させることができる。すなわち、地震動が加わると、衝撃緩衝装置20は、
図7に示す上側カップリング26と下側カップリング27が平行な基準状態から、
図11に示すように上側カップリング26は下側カップリング27に対して相対的に傾斜する状態に変位する。すると、上側カップリング26の周縁で下側カップリング27と近づく側(
図11では右側)は、ガイドキャップ32が下方に付勢され、輪ばね33が圧縮変形する。このとき、輪ばね33が持つ特性により、衝撃を吸収するとともに振動を減衰させることになる。そして、輪ばね33は、圧縮されて輪ばねの応差の大きい領域に達するまで多少のロスが生じるが、ばねが安定するとともに本実施形態では初期荷重加荷構造によって予め輪ばね33を初期圧縮させているため、上側カップリング26が傾き始めて上側カップリング26と下側カップリング27の間隔が短くなり始めた当初から、ロス無く輪ばねの応差の大きい領域,ヒステリシス特性を充分に活かした領域で使用ができる。よって、本実施形態では、より高い衝撃緩衝効果および減衰効果を発揮することができる。
【0042】
そして、上側カップリング26と下側カップリング27はユニバーサルジョイント21によって連結されているため、振動の方向によって任意の方向に傾くが、どの方向に傾いたとしても1または複数のダンパ装置22が圧縮される状態となる。よって、衝撃緩衝装置20は、振動時は所定のダンパ装置22により常に衝撃吸収並びに減衰効果を発揮し、操作がいし12,がいし12aに加わる力を抑制するとともに、早期に操作がいし12の振幅を収縮することができる。
【0043】
一方、上側カップリング26が下側カップリング27に対して相対的に傾斜した場合、下側カップリング27と接近する部位があれば、その反対側は下側カップリング27から離れることになる。すると、例えば
図11(a)中左側のように、上側カップリング26とダンパ装置22が離れてしまい、上側カップリング26からのダンパ装置への付勢力は解除される。しかし、本実施形態では、スタッドボルト構造による内部に初期荷重加荷構造を組み込んでいるため、ガイドキャップ32はガイドピン40により規定される距離以上は上昇しない。よって、
図11に示す状態でも輪ばね33は所定量圧縮された状態となっている。そして、振動により変位する上側カップリング26は、
図11の状態の次には上側カップリング26が水平に戻り、その後図中左側が下に傾斜する状態に遷移する。従って、
図11中、上側カップリング26の左側の凹部26bがダンパ装置22の上面に接触した際には、すでに左側のダンパ装置22内の輪ばねは初期荷重により適宜量圧縮されているため、上述したように上側カップリング26が傾き始めてダンパ装置22内の輪ばねが圧縮し始める当初から、ばねが安定するとともにロス無く輪ばねの応差の大きい領域,ヒステリシス特性を充分に活かした領域で使用ができる。
【0044】
図12は、本発明の第二実施形態の要部を示している。この実施形態では、上述した第一実施形態と同様に、ダンパ装置22に対して初期荷重を与える初期荷重加荷構造を備えている。但し、この実施形態では、ダンパ装置22に対して外部から初期荷重を与えるようにしている。
【0045】
具体的には、上側カップリング26の凹部26bを形成した部分のベース板26aの上面に補強板43を取り付ける。そして、その補強板43並びにベース板26aを貫通するように押しボルト41を取り付ける。押しボルト41の先端をダンパ装置22のガイドキャップ32′の上面に接触させる。そして、押しボルト41の締め付け量を調整して押しボルト41の先端位置を適宜位置にすることで、輪ばね33に適宜の初期荷重を与え初期圧縮させる。
【0046】
ガイドキャップ32′は、円筒状の本体38′と、その本体38′の上方部を閉塞する蓋部材39′とにより構成される。輪ばね33の上端は蓋部材39′の下面で受けるようにしている。
【0047】
また、下側カップリング27の凹部27bを形成した部分のベース板27aの下面に補強板42を取り付ける。固定用のボルト30は、補強板42,ベース板27を貫通し、ダンパ装置22の収納容器31に連結する。本実施形態においても押しボルト41を用いて外部からダンパ装置22に対して初期荷重を与えるようにしたため、ダンパ装置22を支持する上側カップリング26,下側カップリング27に大きな反力がかかる。そこで、補強板43,42を連結して上側カップリング26,下側カップリング27を補強し、反力に耐えうるために充分に強度を確保した。本実施形態では、補強板43,42を取り付けることで充分な強度を得るようにしたが、上述した実施形態と同様に上側カップリング26,下側カップリング27の肉厚自体を厚くするようにしても良い。
【0048】
本実施形態によれば、上述した実施形態と同様に、上側カップリング26と下側カップリング27が平行な基準状態のときに上側カップリング26(押しボルト41)が接触する4つのダンパ装置22に初期荷重がかかっているので、ばねが安定するとともに地震動により方向に上側カップリング26が傾いたとしても、輪ばねの応差の大きい領域,ヒステリシス特性を充分に活かした領域からロス無く動作させることができる。
【0049】
しかし、外部から負荷を与える初期荷重加荷構造のため、例えば一旦上側カップリング26が傾いて上部カップリング26とダンパ装置22が離れる(
図12(c)中、右側)と、初期荷重がキャンセルされて0となってしまい、そのことにより輪ばねの応差の大きい領域に達到達まで多少のロスが生まれてしまう。そのため、上述した内部に初期荷重加荷構造を採用した第一実施形態の方がより好ましいと言える。
【0050】
なお、本実施形態では、蓋部材39′の頂部の形状が、曲面の曲率が大きくしているが、第一実施形態と同様に緩やかな曲面とするとなお良い。なお、その他の構成並びに作用効果は、上述した第一実施形態と同様であるので、対応する部材に同一符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0051】
図13は本発明の第三実施形態を示している。本実施形態では、上述した各実施形態のように初期荷重加荷構造を採用しておらず、簡易的な構造といえる。初期荷重を与えていないので、両実施形態に比べると上側カップリング26と下側カップリング27の強度を高くする必要はないので、凹部26b,27bに対応するベース板26a,27aの肉厚は薄く、また、補強板なども設けていない。これにより、衝撃緩衝装置20の軽量化は図れる。
【0052】
また、本実施形態では、下側カップリング27の凹部27bの底面とダンパ装置22との間にライナー44を挿入してダンパ装置22を底上げし、ダンパ装置22の上端と上側カップリング26との隙間を無くした。これにより、ダンパ装置22を安定して保持する。本実施形態では、初期荷重を与えていないため、輪ばねの応差の大きい領域,ヒステリシス特性を充分に活かした領域での使用状態になるまでにロスが生じるので、第一実施形態や第二実施形態と比べると、衝撃緩衝効果および減衰効果が低下するものの、従来のユニバーサルジョイントのみのもの比べると衝撃を吸収し、振動を減衰することができ、操作がいし12・がいし12aの破損防止を図ることができる。なお、その他の構成並びに作用効果は、上述した各実施形態と同様であるので、対応する部材に同一符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0053】
[変形例]
上述した各実施形態では、ダンパ装置は4個配置したが、その設置個数は4個に限ることはなく、各種の個数を用いることができる。例えば45度間隔で8個配置すると、上側カップリング26の傾きの方向の如何に関わらず、より適切・効果的に衝撃緩衝効果や減衰効果を発揮することができるので好ましい。但し、その場合には例えば上述した実施形態をベースに考えると、例えば十文字型継手25と、両カップリング26,27を連結するピン28の外側に4個のダンパ装置を配置することになり、装置全体が大型化してしまう。また、例えば、正三角形の頂点にダンパ装置を配置すると、上側カップリング26と下側カップリング27を3点支持するので安定性は良いので好ましい。但し、既存の中間連結部14の構成を前提とすると、想定する三角形が大きなものとなり、装置全体が大型化してしまう。これらのことを鑑みると、上述した各実施形態のように4個とするのが好ましい。
【0054】
上述した各実施形態では、ダンパ装置として輪ばねを用いたが、本発明はこれに限ることはなく、例えば輪ばねに換えて皿ばねを用いても良いし、その他の各種のばね部材や、ばね部材以外の衝撃吸収機能及びまたは減衰機能等を備えた部材を用いても良い。例えば、ゴムなどを用いても高性能な衝撃吸収や減衰機能を備えているので好ましい。但し、ゴムは、ばね部材に比べて耐久性が劣る。従って、例えば、断路器の設置環境を考えると長期にわたり交換をしないですむメンテナンスフリーを得るためには、ばね部材を用いると良い。また、ばね部材のなかでも衝撃吸収や減衰機能を鑑みると、実施形態で示した輪ばねが最も良い。一方、輪ばねは高価であるため、衝撃吸収や減衰に対しての要求が低い場合には、例えば皿ばねなど安価なものを用いると良い。
また、ユニバーサルジョイントは、十文字型継ぎ手を用いるものに限ることはなく、ボールを用いるものなど各種のものを用いることができる。
【0055】
本発明に係る衝撃緩衝装置の適用箇所は、上述した実施形態並びに変形例のものに限ることはなく、例えば支持がいし間等各種のがいしの連結部を有する箇所に適用することができる。