(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6022366
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月9日
(54)【発明の名称】スプール
(51)【国際特許分類】
A01K 97/06 20060101AFI20161027BHJP
B65H 75/28 20060101ALI20161027BHJP
【FI】
A01K97/06 502
B65H75/28
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-13326(P2013-13326)
(22)【出願日】2013年1月28日
(65)【公開番号】特開2014-143935(P2014-143935A)
(43)【公開日】2014年8月14日
【審査請求日】2016年1月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】505430975
【氏名又は名称】株式会社ヤシマ精工
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【弁理士】
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】大軒 興二
【審査官】
本村 眞也
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−145447(JP,A)
【文献】
特開2012−152162(JP,A)
【文献】
特開2003−333969(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0017862(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 97/06
B65H 75/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スプール本体(2)が筒状の胴部(7)と、その胴部(7)の両端部からそれぞれ径方向外側へ延設した一対のフランジ部(8・9)とを備えており、この胴部(7)の周囲で両フランジ部(8・9)間に捲回部(10)が形成してあるスプールであって、
上記のスプール本体(2)は、上記の胴部(7)の一方の端部側に径方向内側へ延設された支持壁(11)を備えるとともに、この胴部(7)内に他方の端部側が外部空間に開放された胴内空間(12)を備えており、
上記の支持壁(11)に対し直交方向へ胴内空間(12)に延びる支柱部(15)を備え、
この支柱部(15)は支持壁(11)とは反対側の端部に、胴内空間(12)内でこの支柱部(15)の中心軸(16)に対し直交方向に配置された揺動部(4)を備え、
上記の揺動部(4)は、長尺体(26)を挟持する挟持部(20)を周縁部に沿って備えており、周縁部の一部に支持壁(11)側への押圧力(F)を加えることにより上記の支柱部(15)を挟んで反対側の周縁部が胴内空間(12)の外側へ進出する揺動姿勢(S)と、上記の押圧力(F)の除去により周縁部が胴内空間(12)内へ戻る復帰姿勢(R)とに切替え可能であることを特徴とする、スプール。
【請求項2】
上記の支持壁(11)は胴内空間(12)と外部空間とを連通する貫通孔(13)を備えており、この貫通孔(13)に固定部材(3)が装着してあり、この固定部材(3)に上記の支柱部(15)を介して上記の揺動部(4)が設けてある、請求項1に記載のスプール。
【請求項3】
上記の支柱部(15)が上記の固定部材(3)に形成してあり、この支柱部(15)の先端に上記の揺動部(4)が設けてある、請求項2に記載のスプール。
【請求項4】
上記の揺動部(4)は支柱部(15)の中心軸(16)に対し直交方向に配置された挟持本体(5)と、この挟持本体(5)に沿って配置されたガイド部(6)とを備え、この挟持本体(5)とガイド部(6)との間に上記の挟持部(20)が形成してある、請求項1から3のいずれかに記載のスプール。
【請求項5】
上記の長尺体(26)が釣糸である、請求項1から4のいずれかに記載のスプール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は釣糸などの長尺体を巻きつけるスプールに関し、さらに詳しくは、糸止め等の操作が容易で確実に長尺体端部を保持できるうえ、汎用のスプールにも容易に適用でき、しかも耐久性に優れるスプールに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、釣糸などを巻き付けるスプールは、円筒状の胴部とその両端から径方向外側へ延設した一対のフランジ部とを備え、その胴部の外側で両フランジ部間に捲回部が形成してあり、この捲回部に釣糸などが巻き付けられる。この巻き付けられた糸の端部は、例えばフランジ部の外周縁に形成した溝状の糸止め部などに挟持されていたが、この糸止め部やこれに係止された糸の端部は他物と接触し易く、その接触により糸止め部から糸が外れ易い問題があった。
そこでこの問題を解消するため、例えば上記の胴部内に糸止め機構を備えたものが提案されている(例えば、特許文献1参照、以下、従来技術という。)。
【0003】
この従来技術のスプールは、上記の胴部内に、一方の端部が外部空間に開放された胴内空間が形成してあり、この胴内空間の内側から外側方向へ出没するように、挟持片がこの胴内空間に保持してある。そしてこの挟持片を胴内空間の外側へ進出させて糸の端部を挟持したのち、この挟持片を胴内空間内へ後退させる。これにより、容易に糸止め操作できるものでありながら、糸の端部等が他物と接触する虞を低減でき、確実に糸止めすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−333969号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
スプールは通常、生産工場等で捲回部に長尺体を巻き付けできるように、上記の胴部の一方の端部側で径方向内側へ支持壁を延設し、この支持壁に巻取り軸嵌合孔を貫通形成してあり、この嵌合孔を巻取り軸に外嵌してスプールを回転支持するようにしてある。上記の従来技術では、この嵌合孔を利用して、上記の挟持片を備えた糸止め部材が装着してある。
【0006】
しかしながらこの従来技術では、挟持片を備えた糸止め部材を、胴内空間から外側へ進出した姿勢と、胴内空間内へ後退した姿勢とに切替え支持する必要があり、スプール本体に糸止め部材の姿勢を保持する係止爪を上記の巻取り軸嵌合孔内に形成しなければならない。このため、上記の従来技術では既存のスプールや汎用のスプールに適用することができず、専用のスプール本体を用いなければならないので安価に実施できない問題がある。また、上記の挟持片の姿勢を切り替えるため、上記の糸止め部材は巻取り軸嵌合孔内を摺動移動するが、この摺動面に異物を噛み込むと移動が困難となり、挟持片の姿勢切替えが容易でなくなる問題もある。
【0007】
本発明は上記の問題点を解消し、糸止め等の操作が容易で確実に長尺体端部を保持できるうえ、汎用のスプールにも容易に適用でき、しかも耐久性に優れる、スプールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記の課題を解決するために、例えば本発明の実施の形態を示す
図1から
図6に基づいて説明すると、次のように構成したものである。
即ち、本発明はスプールに関し、スプール本体(2)が筒状の胴部(7)と、その胴部(7)の両端部からそれぞれ径方向外側へ延設した一対のフランジ部(8・9)とを備えており、この胴部(7)の周囲で両フランジ部(8・9)間に捲回部(10)が形成してあるスプールであって、上記のスプール本体(2)は、上記の胴部(7)の一方の端部側に径方向内側へ延設された支持壁(11)を備えるとともに、この胴部(7)内に他方の端部側が外部空間に開放された胴内空間(12)を備えており、上記の支持壁(11)に対し直交方向へ胴内空間(12)に延びる支柱部(15)を備え、この支柱部(15)は支持壁(11)とは反対側の端部に、胴内空間(12)内でこの支柱部(15)の中心軸(16)に対し直交方向に配置された揺動部(4)を備え、上記の揺動部(4)は、長尺体(26)を挟持する挟持部(20)を周縁部に沿って備えており、周縁部の一部に支持壁(11)側への押圧力(F)を加えることにより上記の支柱部(15)を挟んで反対側の周縁部が胴内空間(12)の外側へ進出する揺動姿勢(S)と、上記の押圧力(F)の除去により周縁部が胴内空間(12)内へ戻る復帰姿勢(R)とに切替え可能であることを特徴とする。
【0009】
上記の揺動部の周縁部の一部に支持壁側への押圧力を加えると、この揺動部が揺動姿勢に切替えられて、支柱部を挟んで反対側の周縁部が胴内空間の外側へ進出する。この揺動部の周縁部には挟持部が備えてあるので、上記の捲回部に巻き付けられた長尺体の端部はこの挟持部へ容易に案内されて挟持される。そして上記の押圧力を除くと、上記の揺動部は復帰姿勢に切替えられ、上記の挟持部に保持された長尺体の端部は胴内空間内に収容されて、他物と接触する虞が低減される。
【0010】
スプールは、通常、上記の胴部の一方の端部側に径方向内側へ支持壁が延設してあり、胴部内の空間は他方の端部側が外部空間に開放されており、上記の支持壁に巻取り軸嵌合孔が貫通形成してある。本発明の上記のスプール本体は、上記の支持壁に支柱部が備えてあればよく、支柱部を支持壁に一体形成した専用のスプール本体を用いることも可能であるが、例えば上記の巻取り軸嵌合孔である貫通孔に上記の支柱部を備える固定部材を係止するなどにより、既存のスプールや汎用のスプールを用いることが可能である。
【0011】
上記の支柱部は特定の形状や構造のものに限定されず、前述のように、上記の支持壁に一体に形成されたものであってもよい。例えばこの支持壁に筒状の巻取り軸嵌合部が胴部内を横断するように長く形成してある場合、この巻取り軸嵌合部を支柱部に兼用することも可能である。しかし、一般に上記の巻取り嵌合部は、上記の支持壁から胴内空間へ短く突設されていることが多い。一方、上記の支柱部の先端側に配置される揺動部は、胴内空間の他方の端部側に近接させて配置されると、揺動姿勢への切替えが容易であるので好ましい。このため、上記の支持壁が胴内空間と外部空間とを連通する貫通孔を備えている場合は、この貫通孔に固定部材を装着し、この固定部材に上記の支柱部を介して上記の揺動部を設けると、汎用のスプール等を容易に用いることができて好ましい。
【0012】
上記の貫通孔に固定部材を係止する場合、上記の支柱部は、上記の揺動部に一体に形成してあってもよく、この場合は、支柱部の支持壁側端部が上記の固定部材に固定される。しかし上記の固定部材に支柱部が形成してあり、この支柱部の先端に上記の揺動部が設けてあると、この揺動部を揺動姿勢へ容易に切替えることができて好ましい。特に上記の支柱部の少なくとも先端部が筒状に形成されており、上記の揺動部が中央部の片面に突設した支軸を備えており、この支軸が上記の支柱部に嵌合してあると、この支軸の弾性変形により上記の揺動部を一層容易に揺動姿勢へ切り替えることができて好ましい。
【0013】
上記の挟持部は、上記の揺動部の周縁部に備えてあればよく、特定の形状や構造のものに限定されない。例えば、揺動部の周縁部に溝状の挟持部を、一または複数形成し、この溝状の挟持部に長尺体の端部近傍を挟み込んで挟持させることも可能である。しかし上記の揺動部が、支柱部の中心軸に対し直交方向に配置された挟持本体と、この挟持本体に沿って配置されたガイド部とを備え、この挟持本体とガイド部との間に上記の挟持部が形成してあると、揺動部の周縁部の全域に亘って、この周縁部に沿って挟持部を形成でき、その周縁部に沿った任意の位置で長尺体の端部近傍を挟持できるので好ましい。
【0014】
なお、上記の長尺体は特定の用途のものに限定されないが、特にこの長尺体が釣糸であると、糸止め操作が容易で確実に糸端部を保持できる利点が良好に発揮されて好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明は上記のように構成され作用することから、次の効果を奏する。
(1)使用者は、揺動部の周縁部の一部に支持壁側への押圧力を加えてこの揺動部を揺動姿勢に切替えるだけで、胴内空間から外部へ進出した挟持部へ容易に長尺体を挟持させることができ、しかもその押圧力を除くだけで、上記の揺動部を復帰姿勢に切り替えて、上記の挟持部に保持された長尺体を胴内空間に収容することができる。従って、糸止め等の操作が極めて容易である。しかも、上記の胴内空間に収容された挟持部や長尺体の端部は他物と接触する虞がないので、確実に長尺体の端部を挟持部に保持することができる。また、上記の糸止め等の操作はスプールの片側面で行われるので、例えばスプールケースへ収容している状態のスプールに対し、ケース片側の蓋部を開放するだけで簡単に操作できる利点もある。
【0016】
(2)スプールは通常、上記の支持壁と胴内空間を備えており、この支持壁に巻取り軸嵌合孔が貫通形成してある。本発明のスプール本体は、例えば上記の巻取り軸嵌合孔である貫通孔に固定部材を係止して、この固定部材に支柱部を介して上記の揺動部を固定する等により、既存のスプールや汎用のスプールにも容易に適用でき、安価に実施することができる。
【0017】
(3)上記の揺動部は、上記の押圧力により、この揺動部や上記の支柱部等が弾性変形して揺動姿勢に切り替わり、その押圧力が除去されると、揺動部等の弾性復元力により復帰姿勢に切り替わる。従って、これらの姿勢切替えは各部材の弾性変形やその弾性復元力により行われるので、各部材同士の摺動移動を低減でき、異物による動作不良の虞を低減できるので、長期に亘って円滑な姿勢切替えを行うことができ、耐久性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施形態を示す、スプールを分解した一部破断斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態の、スプールの断面図である。
【
図3】本発明の実施形態の、スプールの要部の拡大断面図である。
【
図4】本発明の実施形態の、揺動部を揺動姿勢に切替えた状態のスプールの要部の拡大断面図である。
【
図5】本発明の実施形態の、複数のスプールを連結した状態の断面図である。
【
図6】本発明の実施形態の変形例を示す、スプールの要部の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面に基づいて本発明を具体的に説明する。
図1に示すように、このスプール(1)はスプール本体(2)と、これに装着される固定部材(3)と、この固定部材(3)に固定される円盤状の揺動部(4)とを備えており、この揺動部(4)は挟持本体(5)とガイド部(6)とを備えている。
【0020】
図1と
図2に示すように、上記のスプール本体(2)は筒状の胴部(7)と、その胴部(7)の両端部からそれぞれ径方向外側へ延設した一対のフランジ部(8・9)とを備えている。そしてこの胴部(7)の周囲で、両フランジ部(8・9)間に捲回部(10)が形成してあり、この捲回部(10)に釣糸などの長尺体が巻き付けられる。
【0021】
図2と
図3に示すように、上記のスプール本体(2)は、上記の胴部(7)の一方の端部側である第1フランジ部(8)側に、径方向内側へ延設された支持壁(11)を備えており、この胴部(7)内の胴内空間(12)は、他方の端部側である第2フランジ部(9)側が外部空間に開放されている。
上記の支持壁(11)には、上記の捲回部(10)へ長尺体を巻き付ける際に、巻取り軸へ外嵌するための貫通孔(13)が透設してある。この貫通孔(13)を介して、上記の胴内空間(12)が第1フランジ部(8)側の外部空間と連通している。
【0022】
上記の固定部材(3)は、この貫通孔(13)に装着してあり、この固定部材(3)の周面に形成した固定爪(14)で、上記の支持壁(11)に確りと固定してある。この固定部材(3)には、支持壁(11)に対し直交方向へ胴内空間(12)に延びる支柱部(15)が一体に形成してある。この支柱部(15)は先端が開口した筒状に形成してあり、この支柱部(15)の先端部、即ち、支持壁(11)とは反対側の端部に、上記の揺動部(4)が付設してある。従ってこの揺動部(4)は、上記の支柱部(15)を介して固定部材(3)に付設されている。
【0023】
上記の揺動部(4)を構成する上記の挟持本体(5)は、支柱部(15)の中心軸(16)に対し直交方向に配置されており、上記のガイド部(6)はこの挟持本体(5)に沿って配置されている。従って上記の揺動部(4)は、上記の支柱部(15)の中心軸(16)に対し直交方向に配置されており、
図3に示すように、外力を受けない復帰姿勢(R)では上記の胴内空間(12)内に収容されている。この揺動部(4)は支柱部(15)近傍を中心に揺動可能であり、
図4に示すように、周縁部に外力を受けると揺動して、周縁部の一部が胴内空間(12)の外側へ進出した揺動姿勢(S)に切り替わる。
【0024】
上記の挟持本体(5)は、周縁部が上記の支持壁(11)側へ湾曲している円盤状に形成してある。この挟持本体(5)の上記のガイド部(6)と対面する側面には、環状の凹部(17)が形成してあり、これとは反対側の側面の中央部に、上記の支柱部(15)側へ延びる支軸(18)が突設してある。この支軸(18)が上記の支柱部(15)内へ挿入され、これによりこの挟持本体(5)が支柱部(15)に確りと固定される。
【0025】
一方、上記のガイド部(6)は環状に形成してあり、上記の挟持本体(5)と対面する側面に環状凸部(19)が形成してある。この環状凸部(19)を上記の挟持本体(5)の環状凹部(17)に係合させることで、ガイド部(6)が挟持本体(5)に固定されている。この挟持本体(5)とガイド部(6)は、周縁部では互いに離隔しているが中央部側は互いに密着しており、この密着する挟持本体(5)とガイド部(6)との間に挟持部(20)が、揺動部(4)の周縁部に沿って形成されている。
【0026】
上記の固定部材(3)と揺動部(4)とは、上記の支持壁(11)に装着されたスプール連結具(21)を兼ねており、このスプール連結具(21)により、互いに隣接するスプール(1)同士を連結することができる。
【0027】
即ち、このスプール連結具(21)は、上記の固定部材(3)が上記の第1フランジ部(8)の側方の外側空間に臨む第1端面(22)を備えており、上記のガイド部(6)が上記の第2フランジ部(9)の側方の外側空間に臨む第2端面(23)を備えている。そして、上記の第1端面(22)に連結用凹部(24)が形成してあり、上記の第2端面(23)に連結用係止部(25)が突設してある。
【0028】
上記の第1端面(22)と第2端面(23)との間の寸法は、上記のスプール本体(2)の厚さとほぼ等しく、具体的には、スプール本体(2)の厚さと同じ寸法か、これよりも僅かに短い寸法に、例えば1mm程度以下の範囲内で短い寸法に設定してあり、上記の復帰姿勢(R)では、両端面(22・23)とも上記の胴内空間(12)内に収容されている。ただし、上記の第2端面(23)に突設された上記の連結用係止部(25)は、胴内空間(12)からスプール本体(2)の側方へ突出した状態となっている。
【0029】
上記の連結用凹部(24)は、隣接するスプール本体(2)に装着されたスプール連結具(21)の連結用係止部(25)が係合できる深さに形成されておればよく、特定の寸法や形状のものに限定されない。一方、上記の連結用係止部(25)は、上記の第2端面(23)からの突出寸法が2mm以下であると他物と接触する虞を低減できるので好ましく、1.5mm以下であるとより好ましい。
【0030】
次に、上記のスプール(1)における糸止め等、長尺体の端部を保持する操作について説明する。
上述のように、上記の揺動部(4)は、外力を受けない状態では
図3に示す復帰姿勢(R)となっており、上記の胴内空間(12)内に収容されている。
【0031】
上記の揺動部(4)は、中央部が支軸(18)を介して支柱部(15)に支持されており、支柱部(15)近傍を中心に揺動可能である。このため、上記の復帰姿勢(R)の揺動部(4)の周縁部の一部に支持壁(11)側への押圧力(F)を加えると、上記の支軸(18)や支柱部(15)などが弾性変形し、
図4に示すように、揺動部(4)は上記の揺動姿勢(S)に切り替わる。この状態で、上記の捲回部(10)に巻き付けられた糸(26)の端部近傍を、スプール本体(2)の第2フランジ部(9)側の側面に沿って移動させる。これにより、この糸(26)は、上記のガイド部(6)によりこのガイド部(6)と上記の挟持本体(5)との間の挟持部(20)へ案内され、確りと挟持される。
【0032】
そして上記の糸(26)が挟持部(20)に挟持されたのち、上記の押圧力(F)を除去すると、上記の揺動部(4)が上記の支軸(18)や支柱部(15)などの弾性復元力により、
図3に示す復帰姿勢(R)に切り替わる。この復帰姿勢(R)では上記の揺動部(4)が胴内空間(12)内に収容されているので、上記の挟持部(20)やこれに挟持された糸(26)もその胴内空間(12)内に収容され、他物と接触する虞が低減される。
【0033】
次に、上記のスプール(1)における連結操作について説明する。
このスプール(1)は、スプール本体(2)の支持壁(11)に上記のスプール連結具(21)が装着されており、このスプール連結具(21)の第1端面(22)に連結用凹部(24)が形成してあり、第2端面(23)に連結用係止部(25)がスプール本体(2)の側方へ突設してある。この連結用係止部(25)を、隣接するスプール本体(2)に装着されたスプール連結具(21)の連結用凹部(24)へ係合させることで、
図5に示すように、互いに隣接するスプール(1)同士が連結される。
【0034】
上記のスプール連結具(21)は上記の揺動部(4)に挟持部(20)を備えるので、この挟持部(20)に挟持された糸(26)は、互いに隣接しているスプール(1)間に配置されることとなる。従って、この挟持部(20)やこれに挟持された糸(26)の端部が、連結された隣接するスプール(1)で覆われるので、他物と接触することが防止され、糸(26)が挟持部(20)から外れることが確実に防止される。
【0035】
上記の実施形態で説明したスプールは、本発明の技術的思想を具体化するために例示したものであり、各部の寸法や形状、構造、配置などをこの実施形態のものに限定するものではなく、本発明の特許請求の範囲内において種々の変更を加え得るものである。
【0036】
例えば上記の実施形態では、上記の支柱部を固定部材に一体に成形した。しかし本発明ではこれらを別体に形成して係合等により互いに固定するものであってもよく、またこの支柱部は、上記の揺動部と一体に成形したものであってもよい。さらには、上記の支柱部をスプール本体の支持壁と一体に成形することも可能である。
【0037】
また上記の実施形態では、上記の揺動部を挟持本体とガイド部で構成し、両者間に挟持部を設けた。しかし本発明では、この揺動部を一体に形成してもよく、上記の挟持部は揺動部の周縁部に形成された、長尺体を挟持できる溝で構成するなど、任意の構造を採用することが可能である。
【0038】
また上記の実施形態では、上記の支柱部とこれに内嵌される上記の支軸等の弾性変形により、上記の揺動部の姿勢を切替え可能に構成した。しかし本発明では、例えば上記の支軸を弾性変形が容易な材料で構成するなどして、揺動部の姿勢を切替え可能に構成してもよい。さらに本発明では、例えば
図6に示す変形例のように、弾性部材(27)を用いて揺動部(4)の姿勢を切り替えることも可能である。
【0039】
即ちこの変形例では、支柱部(15)に揺動部(4)が揺動可能に支持してあり、この支柱部(15)の周囲で揺動部(4)と支持壁(11)との間に、コイルばねからなる弾性部材(27)が装着してある。そして上記の実施形態と同様に、揺動部(4)の周縁部の一部に支持壁(11)側への押圧力を加えると、揺動部(4)は仮想線で示す揺動姿勢(S)に切り替わり、その押圧力を除去すると、弾性部材(27)の復元力により実線で示す復帰姿勢(R)に切り替わる。その他の構成は上記の実施形態と同様であり、同様に作用する。なお上記の弾性部材(27)には、例えばゴム製の筒体など、ゴム弾性を備えたものを用いてもよい。
【0040】
また上記の実施形態や変形例では、上記の固定部材と揺動部がスプール連結具を兼ねている場合について説明したが、本発明ではこれらの部材がスプール連結具を兼ね備えない場合であってもよい。また上記の捲回部に巻き付けられる長尺体は、釣糸以外の長尺体であってもよいことは、いうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明のスプールは、糸止め等の操作が容易で確実に長尺体端部を保持できるうえ、汎用のスプールにも容易に適用でき、しかも耐久性に優れるので、特に、釣糸用スプールとして有用であるが、他の長尺体を巻き付けるためのスプールとしても有用である。
【符号の説明】
【0042】
1…スプール
2…スプール本体
3…固定部材
4…揺動部
5…挟持本体
6…ガイド部
7…胴部
8…第1フランジ部
9…第2フランジ部
10…捲回部
11…支持壁
12…胴内空間
13…貫通孔
14…固定爪
15…支柱部
16…支柱部(15)の中心軸
17…環状凹部
18…支軸
19…環状凸部
20…挟持部
21…スプール連結具
22…第1端面
23…第2端面
24…連結用凹部
25…連結用係止部
26…長尺体(糸)
27…弾性部材
F…押圧力
R…復帰姿勢
S…揺動姿勢