(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら,特許文献1記載の技術では,舌片と本体部分間が焼結し固着する可能性がある。舌片と本体部分が固着すると,セル本体の変位に追従して電気的導通を確保することが困難になる畏れがある。
上記に鑑み,本発明は,集電部材の固着を防止した燃料電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)本発明の一態様に係る燃料電池は,第1のインターコネクタおよび第2のインターコネクタと,前記第1および第2のインターコネクタの間に配置され,電解質,空気極,および燃料極を,それぞれ有するセル本体と,前記セル本体が接続される開口部を有し,前記第1および第2のインターコネクタの間を燃料室,空気室に区分するセパレータと,前記燃料室内に配置され,前記第1のインターコネクタに当接するコネクタ当接部と,前記セル本体に当接するセル本体当接部と,前記コネクタ当接部と前記セル本体当接部をつなぐ連接部とを有し,列をなして配置される集電部材の組と,スペーサーと,を具備し,前記スペーサーが,前記集電部材の組のコネクタ当接部とセル本体当接部の間に配置される。
【0006】
スペーサーが,集電部材のコネクタ当接部とセル本体当接部の間に配置されるため,コネクタ当接部とセル本体当接部間での焼結(固着)を防止できる。また,スペーサーが,燃料室内の集電部材の組(複数の集電部材)に対応する。このため,単一の集電部材それぞれに別個のスペーサーを配置する場合に比べて,スペーサーの配置のバラツキに起因する燃料ガスの流れの阻害(圧力損失の発生)を防止できる。
【0007】
(2)前記集電部材の組が複数並んで配置され,前記複数の組の集電部それぞれに対応して配置される,複数のスペーサーを具備しても良い。
複数の組の集電部材に複数のスペーサーが配置されることで,集電部材の複数の組それぞれにおいて,単一の集電部材それぞれに別個のスペーサーを配置する場合に比べて,スペーサーの配置のバラツキに起因する燃料ガスの流れの阻害(圧力損失の発生)を防止できる。
【0008】
(3)前記複数のスペーサーが,複数のスペーサー同士を接続する接続部をさらに有して,スペーサー集合体となっていても良い。
複数のスペーサーが互いに接続されることで,複数のスペーサーの配置のバラツキに起因する燃料ガスの流れの阻害(圧力損失の発生)を防止できる。
【0009】
(4)前記複数のスペーサーがそれぞれ,両端部で接続されても良い。
複数のスペーサーが両端部で接続されることで,スペーサーの配置のバラツキがさらに低減され,複数のスペーサーによる燃料ガスの流れの阻害(圧力損失の発生)を防止できる。
【0010】
(5)複数のスペーサーおよび前記接続部が,1枚のシートから一体的に構成されても良い。
複数のスペーサーおよび前記接続部が,1枚のシートから一体的に構成されることで,スペーサー集合体を,容易に作成することが可能となる。
【0011】
(6)前記接続部の厚さが,前記複数のスペーサーの厚さより薄くても良い。
接続部の厚さが,前記複数のスペーサーの厚さより薄いことで,接続部による燃料ガスの流れの阻害(圧力損失の発生)を低減できる。
【0012】
(7)複数の接続部を具備し,前記複数のスペーサーおよび前記複数の接続部が,前記複数のスペーサーに対応する第1の部位と,前記複数の接続部の何れかに対応する第2の部位と,を有する第1の板材と,前記複数のスペーサーに対応する第3の部位と,前記複数の接続部の他の何れかに対応する第4の部位と,を有し,前記第1の板材に積層される第2の板材と,から構成されても良い。
第1,第2の板材を組み合わせることで,スペーサーおよびこのスペーサーより薄い接続部の組み合わせを容易に作成できる。
【0013】
(8)複数の接続部を具備し,前記複数のスペーサーおよび前記複数の接続部が,前記複数のスペーサーに対応する第1の部位と,前記複数の接続部に対応する第2の部位と,を有する第1の板材と,前記複数のスペーサーに対応し,前記第1の板材に積層される複数の第2の板材と,から構成されても良い。
第1,第2の板材を組み合わせることで,スペーサーおよびこのスペーサーより薄い接続部の組み合わせを容易に作成できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば,集電部材の固着を防止した燃料電池を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下,図面を参照して,本発明の実施の形態を詳細に説明する。
図1〜
図4は,実施形態に係る燃料電池1を表す図である。燃料電池1は,例えば,ZrO
2系セラミックを電解質2とする固体酸化物形燃料電池(SOFC)である。この燃料電池1は,発電の最小単位である燃料電池セル3と,該燃料電池セル3に空気を供給する空気供給流路4と,その空気を外部に排出する空気排気流路5と,同じく燃料電池セル3に燃料ガスを供給する燃料供給流路6と,その燃料ガスを外部に排出する燃料排気流路7と,該燃料電池セル3を複数セット積層してセル群となし該セル群を固定して燃料電池スタック8となす固定部材9と,燃料電池スタック8で発電した電気を出力する出力部材11と,から概略構成される。
【0017】
燃料電池セル3は平面視正方形であり,
図2に示したように,インターコネクタ12,13,セル本体20,空気室16,燃料室17,集電部材18,19と,を有する。
【0018】
インターコネクタ12,13はそれぞれ,セル本体20の上下に配置され,四角い板形態で導電性を有するフェライト系ステンレス等で形成される。インターコネクタ12,13は,固定部材9の後述する締め付け部材46a〜46dを通すコーナー通孔47を有する。
【0019】
セル本体20は,インターコネクタ12,13のほぼ中間に位置し,電解質2,および電解質2の上下に配置される空気極14,燃料極15を有する。
電解質2は,ZrO
2系セラミックの他,LaGaO
3系セラミック,BaCeO
3系セラミック,SrCeO
3系セラミック,SrZrO
3系セラミック,CaZrO
3系セラミック等で形成されてもよい。
【0020】
燃料極15の材質は,Ni及びFe等の金属と,Sc,Y等の希土類元素のうちの少なくとも1種により安定化されたジルコニア等のZrO
2系セラミック,CeO
2系セラミック等のセラミックのうちの少なくとも1種との混合物が挙げられる。
また,燃料極15の材質は,Pt,Au,Ag,Pb,Ir,Ru,Rh,Ni及びFe等の金属でもよく,これらの金属は1種のみでもよいし,2種以上の合金にしてもよい。
さらに,燃料極15の材質は,これらの金属及び/又は合金と,上記セラミックの各々の少なくとも1種との混合物(サーメットを含む。)が挙げられる。また,燃料極15の材質は,Ni及びFe等の金属の酸化物と,上記セラミックの各々の少なくとも1種との混合物等が挙げられる。
【0021】
空気極14の材質は,例えば各種の金属,金属の酸化物,金属の複酸化物等を用いることができる。
前記金属としてはPt,Au,Ag,Pb,Ir,Ru及びRh等の金属又は2種以上の金属を含有する合金が挙げられる。
さらに,金属の酸化物としては,La,Sr,Ce,Co,Mn及びFe等の酸化物(La
2O
3,SrO,Ce
2O
3,Co
2O
3,MnO
2及びFeO等)が挙げられる。
また,複酸化物としては,少なくともLa,Pr,Sm,Sr,Ba,Co,Fe及びMn等を含有する複酸化物(La
1−XSr
XCoO
3系複酸化物,La
1−XSr
XFeO
3系複酸化物,La
1−XSr
XCo
1−yFeO
3系複酸化物,La
1−XSr
XMnO
3系複酸化物,Pr
1−XBa
XCoO
3系複酸化物及びSm
1−XSr
XCoO
3系複酸化物等)が挙げられる。
【0022】
空気室16,燃料室17はそれぞれ,
図3,4に示したように,インターコネクタ12と空気極14との間,インターコネクタ13と燃料極15との間に形成された部屋である。
【0023】
燃料室17は,燃料極ガス流路形成用絶縁フレーム(以下,「燃料極絶縁フレーム」ともいう。)21と,燃料極フレーム22と,によって,四角い部屋状に形成されている。燃料極絶縁フレーム21は,集電部材19の周りを囲うように,インターコネクタ13の上面に設置された額縁形態の絶縁フレームである。燃料極フレーム22は,額縁形態であって,前記燃料極絶縁フレーム21の上面に設置される。
【0024】
空気室16は,金属製のセパレータ23と,空気極ガス流路形成用絶縁フレーム(以下,「空気極絶縁フレーム」ともいう。)24と,によって四角い部屋状に形成されている。金属製のセパレータ23は,四角い額縁形態であって下面に前記電解質2が取着された導電性を有する薄い金属製のセパレータである。空気極絶縁フレーム24は,セパレータ23とインターコネクタ12との間に設置されて集電部材18の周りを囲う額縁形態の絶縁フレームである。
【0025】
集電部材18,19はそれぞれ,空気室16,燃料室17の内部に配置され,空気極14とインターコネクタ12,燃料極15とインターコネクタ13を電気的に接続する。
【0026】
空気室16側の集電部材18は,細長い角材形状で,緻密な導電部材である例えばステンレス材で形成され,電解質2の上面の空気極14とインターコネクタ12の下面(内面)に当接する状態にして複数本を平行に且つ一定の間隔をおいて配設されている。
【0027】
尚,上記実施形態では,空気室16側の集電部材18と,インターコネクタ12とは,別体として,形成されているが,これに限ることはない。例えば,空気室16側の集電部材18と,インターコネクタ12とを,一体的に形成してもよい。
【0028】
燃料室17側の集電部材19は,例えば,真空中1000℃で1時間の熱処理をして焼き鈍しを行ったNiの板材(HV硬度で200以下)で形成される。集電部材19は,
図4に示したように,インターコネクタ13に当接するコネクタ当接部19aと,セル本体20の燃料極15に当接するセル本体当接部19bと,コネクタ当接部19aとセル本体当接部19bとをつなぐU字状の連接部19cとが一連に形成される。連接部19cのU字に曲がった部分の弾性により,コネクタ当接部19aとセル本体当接部19bがそれぞれインターコネクタ13とセル本体20に向けて付勢される。
【0029】
なお,燃料室17側の集電部材19は,前記のように板材で形成する場合の他,例えばNi製の多孔質金属又は金網又はワイヤーで形成するようにしてもよい。また,燃料室17側の集電部材19は,Niの他,Ni合金やステンレス鋼など酸化に強い金属で形成するようにしてもよい。
【0030】
この集電部材19は,燃料室17に数十〜百個程度設けられる(燃料室の大きさにより異なる)。
【0031】
スペーサー集合体58は,
図4〜8に示したように,スペーサー581,接続部582に区分され,複数のスペーサー581と,接続部582とで,一体化されて形成されている。また,スペーサー集合体58は,コネクタ当接部19aとセル本体当接部19bの間に配置され,厚さ方向に弾性力を有する。スペーサー集合体58の材質としては,コネクタ当接部19aと,セル本体当接部19bとの固着を防止する観点から,マイカ,アルミナフェルト,バーミキュライト,カーボン繊維,炭化珪素繊維,シリカの何れか1種か,或は複数種を組み合わせたものを利用できる。また,これらを例えばマイカのような薄い板状体の積層構造とすることで,積層方向への荷重に対し,適度な弾性を確保できる。
【0032】
複数の集電部材19それぞれを個別に形成するより,
図5,
図6に示すように,複数の集電部材19を一体として形成した方が,作業効率上,好ましい。但し,これに限ることは無く,個々の集電部材19を,インターコネクタ13上に並べて,溶接(例えば,レーザー溶接や抵抗要セル)してもよい。
【0033】
集電部材19は,次のようにして作成できる。具体的には,
図7に示すように,箔材190を四角い平板19pに加工し,この平板19pにセル本体当接部19bと連接部19cに対応する切込線19dを形成する。そして,
図6に示すように,連接部19cをU字状に曲げて,セル本体当接部19bがコネクタ当接部19aの上方に被さるようにする。セル本体当接部19bを折り曲げることで,平板19pが穴あき状態となる。穴あき状態の平板19pが,コネクタ当接部19aの集合体となる。
【0034】
スペーサー集合体58は,
図8に示すように,横格子状とした,一枚の材料シートから構成できる。この材料シートは,平板19pとほぼ同幅で,平板19pより若干短い,四角形状を有する。この材料シートから,セル本体当接部19bと連接部19cに対応する部分を横1列分ずつ纏めて切り抜くことにより,横格子状のスペーサー集合体58を作成する。
【0035】
このスペーサー集合体58を平板19p(集電部材19への加工前,
図7参照)に重ね,連接部19cで曲げることで,スペーサー集合体58を組み込んだ集電部材19を作成できる。
【0036】
以上のように,インターコネクタ13と,燃料極絶縁フレーム21と,燃料極フレーム22と,セパレータ23と,空気極絶縁フレーム24と,インターコネクタ12と,の組合せによって燃料室17と空気室16が形成される。燃料室17と空気室16は,電解質2で仕切られる。燃料極絶縁フレーム21と空気極絶縁フレーム24によって,燃料極15側と空気極14側とが電気的に絶縁される。
【0037】
燃料電池セル3は,
図2,
図3に示したように,空気供給部25,空気排気部26,燃料供給部27,燃料排気部28を備える。
【0038】
空気供給部25は,空気室16の内部に空気を供給するものであり,空気供給通孔29,空気供給連絡室30,空気供給連絡部32,空気供給流路4(
図1,
図4参照)を備える。空気供給通孔29は,四角い燃料電池セル3の一辺側中央に上下方向に開設される。空気供給連絡室30は,空気供給通孔29に連通するように空気極絶縁フレーム24に開設される。空気供給連絡部32は,空気供給連絡室30と空気室16の間を仕切る隔壁31の上面を間隔に窪ませて複数個形成される。空気供給流路4は,空気供給通孔29に挿通して外部から空気供給連絡室30に空気を供給する。
【0039】
空気排気部26は,空気室16から空気を外部に排出するものであり,空気排気通孔33,空気排気連絡室34,空気排気連絡部36,空気排気流路5(
図1,
図4参照)と,を備える。空気排気通孔33は,燃料電池セル3の空気供給部25の反対側の一辺側中央に上下方向に開設される。空気排気連絡室34は,空気排気通孔33に連通するように空気極絶縁フレーム24に開設される。空気排気連絡部36は,空気排気連絡室34と空気室16の間を仕切る隔壁35の上面を間隔に窪ませて複数個形成される。空気排気流路5は,空気排気通孔33に挿通して空気排気連絡室34から外部に空気を排出する。
【0040】
燃料供給部27は,燃料室17の内部に燃料ガスを供給するものであり,燃料供給通孔37,燃料供給連絡室38,燃料供給連絡部40,燃料供給流路6(
図1,
図4参照)と,を備える。燃料供給通孔37は,四角い燃料電池セル3の残り二辺のうちの一辺側中央に上下方向に開設される。燃料供給連絡室38は,燃料供給通孔37に連通するように燃料極絶縁フレーム21に開設される。燃料供給連絡部40は。燃料供給連絡室38と燃料室17の間を仕切る隔壁39の上面を間隔に窪ませて複数個形成される。燃料供給流路6は,燃料供給通孔37に挿通して外部から前記燃料供給連絡室38に燃料ガスを供給する。
【0041】
燃料排気部28は,燃料室17から燃料ガスを外部に排出するものであり,燃料排気通孔41,燃料排気連絡室42,燃料排気連絡部44,燃料排気流路7(
図1,
図4参照)と,を備える。燃料排気通孔41は,燃料電池セル3の燃料供給部27の反対側の一辺側中央に上下方向に開設される。燃料排気連絡室42は,燃料排気通孔41に連通するように燃料極絶縁フレーム21に開設される。燃料排気連絡部44は,燃料排気連絡室42と燃料室17の間を仕切る隔壁43の上面を間隔に窪ませて複数個形成される。燃料排気流路7は,前記燃料排気通孔41に挿通して燃料排気連絡室42から外部に燃料ガスを排出する。
【0042】
燃料電池スタック8は,
図1に示したように,複数の燃料電池セル3を固定部材9で固定して構成される。なお,複数の燃料電池セル3を積層した場合,図面に於ける,下側に位置する燃料電池セル3の上のインターコネクタ12と,その上側に載る燃料電池セル3の下のインターコネクタ13とは,一体として上下の燃料電池セル3,3同士で共有される。
【0043】
固定部材9は,一対のエンドプレート45a,45b,四組の締め付け部材46a〜46dと,を組み合わせたものである。エンドプレート45a,45bは,燃料電池セル群(3,3)の上下を挟む。締め付け部材46a〜46dは,エンドプレート45a,45b,複数の燃料電池セル3を締め付けるものであり,その材質は,例えばインコネル601である。
【0044】
出力部材11は,燃料電池スタック8で発電した電気を出力するものであり,締め付け部材46a〜46dから構成される。締め付け部材46a,46cは,正極である上のエンドプレート45aに電気的に接続される。締め付け部材46b,46dは,負極である下のエンドプレート45bに電気的に接続される。
【0045】
正極に接続した締め付け部材46a,46dや負極に接続した締め付け部材46b,46cは,他極のエンドプレート45a(45b)に対しては絶縁座金55(
図1参照)を介在させ,また,燃料電池スタック8に対してはコーナー通孔47との間に隙間を設けるなどして絶縁される。
【0046】
燃料電池(燃料電池セル)が,発電する原理(電解質,燃料極,空気極を積層したセル本体に,燃料ガス,酸化剤ガスを供給することで,発電する詳細な説明)については,周知の技術の為,本実施形態では,詳細な説明を省略する。
【0047】
空気供給流路4に空気を供給すると,その空気は,空気供給流路4と,空気供給連絡室30と,空気供給連絡部32とからなる空気供給部25を通って空気室16に供給される。この空気は,この空気室16の集電部材18同士の間の隙間によって形成された空気用のガス流路56を通り抜け,さらに空気排気連絡部36と,空気排気連絡室34と,空気排気流路5とからなる空気排気部26を通って外部に排出される。
【0048】
燃料供給流路6に燃料ガスとして例えば水素を供給すると,その燃料ガスは,燃料供給流路6と,燃料供給連絡室38と,燃料供給連絡部40とからなる燃料供給部27を通って燃料室17に供給される。この燃料ガスは,この燃料室17の集電部材19,19…の間,厳密にはセル本体当接部19b,19b…同士の間の燃料ガス用のガス流路57を拡散しながら通り抜け,さらに燃料排気連絡部44と,燃料排気連絡室42と,燃料排気流路7とからなる燃料排気部28を通って外部に排気される。
なお,集電部材19が,前記のように,多孔質金属又は金網又はワイヤーで形成されている場合には,ガス流路57を,燃料ガスが通過し易く,かつ燃料ガスの拡散性が向上する為,好ましい。
【0049】
図4に示したように,複数の燃料供給連絡部40,燃料排気連絡部44それぞれの開口が,燃料室17の2辺に配置される。複数の燃料供給連絡部40,燃料排気連絡部44それぞれの開口が対向して配置され,燃料ガスが
図4(a)の上から下に向かって流れる。即ち,燃料ガスの流れ方向は,
図4(a)の上から下に向かう方向となっている。
【0050】
本実施形態では,既に,
図4,
図8に示したように,スペーサー集合体58が,スペーサー581と接続部582に区分される。
【0051】
スペーサー581は,一列に並ぶ複数の集電部材19(即ち,列をなして配置される集電部材19の組)で共通に用いられ,コネクタ当接部19aとセル本体当接部19bの間に配置される。このため,スペーサー581の配置,特に,コネクタ当接部19aとセル本体当接部19bからのはみ出し部分の配置が集電部材19の列方向(即ち,燃料ガスの流れ方向)で揃っている。
【0052】
接続部582は,複数のスペーサー581を接続する。ここでは,スペーサー581の両端それぞれに一対の接続部582が配置される。このため,スペーサー581の配置,特に,コネクタ当接部19aとセル本体当接部19bからのはみ出し部分の配置が複数の集電部材19の列(集電部材19の複数の組)間で揃っている。
【0053】
本発明の実施形態では,上記のように,スペーサー581が一列に並ぶ複数の集電部材19で共通に用いられることから,スペーサー581の不揃いな配置が無いため,燃料ガスの流れの阻害(即ち,圧力損失の発生)を防止できる。更に,複数のスペーサー581が接続部582で接続されていることから,後述の比較例と比べて,スペーサー581の不揃いな配置が無い為,燃料ガスの圧力損失のバラツキが低減され,燃料ガスの均一な流れを確保できることが可能となる。
【0054】
(比較例)
図9は,比較例に係る燃料電池(燃料電池セル3x)の上面図および断面図である。
燃料電池セル3xでは,本発明とは異なる構造となっている。具体的には,集電部材19毎に,個別のスペーサー58xが,それぞれ配置されている。具体的には,
図9では,集電部材100個(縦10個かける横10個)について,スペーサー100個が,個別に,それぞれ配置されている。このため,集電部材19毎に,スペーサー58xの配置が一定しない(位置や方向のバラツキ,ズレが有る)。この結果,燃料ガスの流れにもバラツキが生じる。例えば,ガス流路57それぞれに於いて,ガスの流量にバラツキが生じる。
【0055】
このような燃料ガスの流れのバラツキは,燃料電池の発電量や発熱量(温度分布)の局所的な偏りを生じ,燃料電池の特性,耐久性の劣化の原因ともなる。また,積層された燃料電池スタックの燃料電池セルでの特性,耐久性の劣化の原因となる。
【0056】
(変形例1〜3)
図10,
図11,
図12は,それぞれ,本発明の実施形態における,変形例1〜3に係る燃料電池のスペーサー集合体58a〜58cの斜視図である。
尚,以下の実施形態では,スペーサー集合体以外の燃料電池の部材の構成については,上記の実施形態の燃料電池と同様の構成になるため,詳細の説明は省略する。具体的には,スペーサー集合体以外は,
図1から
図7までの説明と同様の,燃料電池の構成となる。
【0057】
(変形例1)
スペーサー集合体58aは,スペーサー581のみであり,上記の実施形態のように接続部582を有しない。この場合でも,スペーサー581が一列に並ぶ複数の集電部材19で共通に用いられるため,スペーサー581の配置,特に,コネクタ当接部19aとセル本体当接部19bからのはみ出し部分の配置が集電部材19の列方向で揃っている為,燃料ガスの流れが均一となる効果を奏する。
【0058】
(変形例2)
スペーサー集合体58bでは,複数のスペーサー581が,その端部以外(中央付近の1箇所)で,接続部582により接続される。
(変形例3)
スペーサー集合体58cでは,複数のスペーサー581が,その端部以外(2箇所)で,接続部582により接続される。
本発明の実施形態の変形例1〜3に於いては,このように,複数のスペーサー581をその端部以外で接続しても,複数のスペーサー581間でのバラツキを低減し,燃料ガスの均一な流れを確保できる。
【0059】
(変形例4)
図13は,本発明の実施形態における,変形例4に係る燃料電池セル3cの概略図および断面図である。変形例4は,本発明(
図1〜
図3)の燃料電池のスペーサー集合体に於いて,スペーサーの厚みと,接続部との厚みが異なる例である。
燃料電池セル3cでは,スペーサー集合体58dにおいて,スペーサー581の厚みより,接続部582の厚みが薄くなっている。このため,接続部582による燃料ガスの流れへの影響が低減される(燃料ガスの流路が,より確保されて,燃料ガスが流れやすくなる)。
【0060】
図13(c)に示すように,本発明の変形例4では,セル本体20側においてスペーサー581と接続部582間に段差がある。一方,インターコネクタ13側においてスペーサー581と接続部582間には段差が無い。
【0061】
この変形例4のように,セル本体20側に段差がある構成であると,セル本体20側に段差が無い場合と比較して,セル本体20への燃料ガスの供給が,より容易となるので,好ましい。但し,この構成に限ることは無く,段差が,セル本体20側に無くても,スペーサー集合体58dにおいて,スペーサー581の厚みより,接続部582の厚みが薄い構成であればよい。この構成だと,接続部582の厚さがスペーサー581の厚さと同じ場合と比較して,燃料室17の空間が広くなるので,セル本体20への燃料ガスの供給が容易となる。また,複数の接続部582において,セル本体20側に段差があるものと無いものが混在しても良い。
【0062】
スペーサー集合体58dは,場所により厚さの異なる型等を用いて,一体的に形成することができる。
また,複数のシートを組み合わせて,スペーサー集合体58dを作成しても良い。
【0063】
図14は,2つのシート58e,58fからスペーサー集合体58dを構成する例を示す斜視図である。シート58e,58fを例えば,接着剤で接着したり,熱で圧着したりすることで,一体化して(1枚のシートとすることで),スペーサー集合体58dとすることができる。
【0064】
図14では,シート58eは,スペーサー583および接続部584を有し,複数のスペーサーに対応する第1の部位と,複数の接続部の何れかに対応する第2の部位と,を有する第1の板材に対応する。また,シート58fは,スペーサー585および接続部586を有し,複数のスペーサーに対応する第3の部位と,前記複数の接続部の他の何れかに対応する第4の部位と,を有する第2の板材であり,前記第1の板材に積層され一体化されることにより,スペーサー集合体58dを構成する。
【0065】
スペーサー583,585は,略同一形状,同一厚さを有し,積層して用いられる。即ち,シート58e,58fが重ねられることで,スペーサー583,585は全体として,スペーサー583,585個別の個別の厚さと比べて,2倍の厚さを有するスペーサー集合体58dとなる。
【0066】
以上では,シート58e,58fの厚さが同一であるとしているが,シート58e,58fの厚さが異なっても良い。
【0067】
接続部584,586は,シート58e,58fを重ねたときに,互いに異なる場所に配置される。即ち,シート58e,58fが重ねられることで,接続部584,586は異なる箇所に配置され,重ならない。このため,接続部584,586は交互に配置される。複数の接続部582において,セル本体20側に段差があるものと無いものが混在する。
【0068】
図15では,シート58gと複数のスペーサー585を組み合わせることで,スペーサー集合体58dが構成される,別の例を示す斜視図である。シート58gは,スペーサー583および接続部584を有し,複数のスペーサーに対応する第1の部位と,前記複数の接続部に対応する第2の部位と,を有する第1の板材に対応する。複数のスペーサー585は,複数のスペーサーに対応し,前記第1の板材に積層される複数の第2の板材に対応する。
【0069】
シート58g(スペーサー583)とスペーサー585とを重ね合わせることで,スペーサー583,585が一体化されて,スペーサー集合体58dとなる。このスペーサー集合体58dにおいて,スペーサー部の厚みは,接続部584の厚みよりも厚くなる。
【0070】
上記では,シート58g(スペーサー583),スペーサー585の厚さが同一であるとしているが,シート58g(スペーサー583),スペーサー585の厚さが異なっても良い。
【0071】
(その他の実施形態)
本発明の実施形態は上記の実施形態に限られず拡張,変更可能であり,拡張,変更した実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。