(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6022376
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月9日
(54)【発明の名称】記録装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20161027BHJP
【FI】
B41J2/01 125
B41J2/01 305
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-35062(P2013-35062)
(22)【出願日】2013年2月25日
(65)【公開番号】特開2014-162108(P2014-162108A)
(43)【公開日】2014年9月8日
【審査請求日】2015年11月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】395003187
【氏名又は名称】株式会社OKIデータ・インフォテック
(74)【代理人】
【識別番号】100096426
【弁理士】
【氏名又は名称】川合 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100116207
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 俊明
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 一男
【審査官】
下村 輝秋
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−223066(JP,A)
【文献】
特開2009−072999(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J2/01−2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出するインクジェットヘッドと、
記録媒体を搬送する搬送手段と、
前記インクジェットヘッドを搭載し、前記記録媒体の搬送方向に交差する方向に往復走査するキャリッジと、
前記インクジェットヘッドの走査方向に沿い、前記往復走査する前記インクジェットヘッドに対向する位置に配置され、前記記録媒体を吸引する複数の吸引孔を備えるプラテンと、
前記プラテンの前記搬送方向の上流側に配置され、前記記録媒体を案内するプリガイドと、
前記プラテンの前記搬送方向の下流側に配置され、前記記録媒体を案内するアフターガイドと、
を具備する記録装置において、
前記プラテンは裏面に溝が形成され、該溝に前記プラテン用のヒーター線が配置され、該ヒーター線によって前記プラテンが加熱され、
前記プリガイドは裏面に前記プリガイド用のヒーター線が配置され、該ヒーター線によって前記プリガイドが加熱され、
前記アフターガイドは裏面に前記アフターガイド用のヒーター線が配置され、該ヒーター線によって前記アフターガイドが加熱され、
前記プラテン用の前記ヒーター線は、前記プラテンの前記走査方向の端部に向かい段階的に前記プラテンの単位面積当たりの配線の密度が高くなり、
前記プリガイド用の前記ヒーター線は、前記プリガイドの前記走査方向の端部に向かい段階的に前記プリガイドの単位面積当たりの配線の密度が高くなり、
前記アフターガイド用の前記ヒーター線は、前記アフターガイドの前記走査方向の端部に向かい段階的に前記アフターガイドの単位面積当たりの配線の密度が高くなり、
前記プリガイドと前記アフターガイドの前記走査方向の端部に向かい変化する配線の密度の段階は、前記プラテンの前記走査方向の端部に向かい変化する配線の密度の段階よりも少ない段階で変化することを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記プラテンの熱容量は、前記プリガイドおよび前記アフターガイドよりも大きい事を特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記プラテンはアルミニウム製であり、前記プリガイドおよび前記アフターガイドは鉄製であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の記録装置。
【請求項4】
前記プラテン、前記プリガイドおよび前記アフターガイドの単位面積当たりの配線密度の高い領域の幅が等しいことを特徴とする請求項1から請求項3の何れか1項に記載の記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体を加熱するヒーターを備える記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクカートリッジからインクジェット式の記録ヘッドにインクを供給し、記録ヘッドからインク滴を記録媒体に吐出して画像や文字等の記録を行うインクジェット方式のプリンターなどの記録装置が普及している。
【0003】
このようなインクジェット方式の記録ヘッドは、家庭用や小規模なオフィスなどで利用される小型プリンターだけでなく、1メートル幅を超えるような大判の記録媒体への印刷が可能な大型プリンターまで幅広く採用されている。
【0004】
色材に顔料を用い、溶媒に有機溶剤が添加されている溶剤インクは、プラスチックフィルムに対して定着性や耐光性などの性能が良く、野外用の印刷物の作成に広く利用されている。溶剤インクを用いるときに、記録前、記録中、記録後に記録媒体を温めることで、更に定着性や溶剤インクの乾燥性が良くなる。しかし、インクジェットプリンターにおける記録媒体の搬送路は、その両端部や中央部など部位によって放熱特性が異なる。このことによって、記録媒体の部位ごとに温度の差が生じ、その影響で定着性や乾燥性がその部位毎に異なり、記録する画像の画質を悪くすることがある。特に大型のプリンターにおいては、その違いが顕著に現れる。
【0005】
そのため、下記の特許文献1に記載されているような、複数のヒーターを用い、記録媒体を支持するプラテンを領域別に加熱処理を行うことで、インクの定着性を高める技術が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−207262号公報
【特許文献2】特開2012−135889号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載のインクジェットプリンターでは、長方形のヒーターを記録媒体の搬送方向と交差する方向に沿って並設しているので、ヒーターの存在しない境界領域が低温となり、それが、記録媒体の搬送方向に沿って形成されてしまう。そのため、記録媒体の搬送方向に沿った特定部分は、連続してヒーターの境界領域上を通過するので、境界領域上を通過した記録媒体の部分は、他の部分に比べて適切に加熱が行われないため温度ムラが生じ、インクの定着性が不均一となって画像品質が低下してしまう。
【0008】
また、特許文献2に記載の記録装置では、プラテンおよびプラテンの記録媒体の搬送方向上流側と下流側に記録媒体を加熱するプレヒーター部とアフターヒーター部が備わる。これらは、線状のヒーターを、端部で折り返して往復させ、幅方向に沿って配置している。そのため、記録媒体の搬送方向に沿った低温領域は無い。しかし、単調に配置しているため、放熱特性の異なる部分、あるいは、熱容量のことなるプラテンとプレヒーター部またはアフターヒーター部とでは、部位により温度が異なる問題が生じる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで本発明は、記録媒体の搬送路を加熱する場合における、記録媒体の温度ムラをより低減させることを目的とする。
【0010】
この目的を達成するために、本発明のインクジェットプリンターは、インクを吐出するインクジェットヘッドと、記録媒体を搬送する搬送手段と、前記インクジェットヘッドを搭載し、前記記録媒体の搬送方向に交差する方向に往復走査するキャリッジと、前記インクジェットヘッドの走査方向に沿い、前記往復走査する前記インクジェット
ヘッドに対向する位置に配置され
、前記記録媒体を吸引する複数の吸引孔を備えるプラテンと、前記プラテンの前記搬送方向の上流側に配置され、前記記録媒体を案内するプリガイドと、前記プラテンの前記搬送方向の下流側に配置され、前記記録媒体を案内する
アフターガイドと、を具備する記録装置において、前記プラテンは裏面に溝が形成され、該溝に前記プラテン用のヒーター線が配置され、該ヒーター線によって前記プラテンが加熱され、前記プリガイドは裏面に前記プリガイド用のヒーター線が配置され、該ヒーター線によって前記プリガイドが加熱され、前記アフターガイドは裏面に前記アフターガイド用のヒーター線が配置され、該ヒーター線によって前記アフターガイドが加熱され、前記プラテン用の前記ヒーター線は、前記プラテンの前記走査方向の端部に向かい段階的に
前記プラテンの単位面積当たりの配線の密度が高くなり、前記プリガイド用の前記ヒーター線は、前記プリガイドの前記走査方向の端部に向かい段階的に
前記プリガイドの単位面積当たりの配線の密度が高くなり、前記アフターガイド用の前記ヒーター線は、前記アフターガイドの前記走査方向の端部に向かい段階的に
前記アフターガイドの単位面積当たりの配線の密度が高くなり、前記プリガイドと前記アフターガイドの前記走査方向の端部に向かい変化する
配線の密度の段階は、前記プラテン
の前記走査方向の端部に向かい変化する配線の密度の段階よりも少ない段階で変化することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、記録媒体の搬送領域における記録媒体の加熱を均一化でき、記録媒体における温度ムラを緩和することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、インクジェットプリンターの例を示す外観図である。
【
図2】
図2は、プラテンおよびペーパーガイドを説明する図である。
【
図3】
図3は、ヒーターの配置の例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好適な実施の形態について、
図1〜
図3を参照して説明する。
図3はヒーターの配置の例を示す概略図であり、
図2はプラテンおよびペーパーガイドを説明する図であり、
図1はインクジェットプリンターの例を示す外観図である。これらを用いて説明する。
【0014】
まず、インクジェットプリンター1の全体について説明する。インクジェットプリンター1は、直線状に幅方向に延びるレール2が備わっている。このレール2に沿ってキャリッジ3が往復移動する。キャリッジ3にはインクジェットヘッドが搭載されている。インクジェットヘッドはカラー印刷するため、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの4色のインクに対応してキャリッジ3に搭載されている。キャップ4はインクジェットヘッドが乾燥しないようにキャップしたり、メンテナンスのために定期的にインクジェットヘッドからインクを吸引したりする。記録媒体を搬送する搬送手段は、レール2に沿って多数配置された搬送ローラー10を含み、この搬送ローラー10を回転させることで、記録媒体を搬送する。
【0015】
キャリッジ3は無端ベルト5に接続され、ベルト5はモーター6に接続されている。無端ベルト5はインクジェットプリンター1の端に設置されたプーリーに掛け回されている。モーター6を駆動することで無端ベルト5は移動し、同時にキャリッジ3も移動する。
【0016】
プラテン7はレール2に沿って配置される平板である。このプラテン7は、表面に吸引孔が複数備わり、搬送される記録媒体を吸引孔で吸引することで固定することができる。プラテン7の記録媒体の搬送方向下流側にはアフターガイド8が備わる。アフターガイド8は搬送される記録媒体を案内する。また、プラテン7の記録媒体の搬送方向下流側にはプリガイド9が備わる。プラテン7、アフターガイド8、プリガイド9はヒーターが備わり、加熱することができる。この加熱により搬送される記録媒体を適度な温度に加熱する。
【0017】
プラテン7はアルミニウム製の平板である。のアルミニウム製の平板の表面は平らで、また吸引孔が設けられている。裏側には、溝が設けられ、この溝にヒーター線が埋め込まれ、プラテン7を加熱する。また、アフターガイド8およびプリガイド9は鉄製の板を湾曲させたもので、その裏側にヒーター線を配置し、さらにアルミシートを覆い被せて固定している。
【0018】
プラテン7は5〜10mm程度の厚みがあり、またアフターガイド8およびプリガイド9は0.5〜1.0mm程度の厚みがある。プラテン7はアフターガイド8およびプリガイド9よりも熱容量が大きい。熱容量が大きいと、加熱時に時間がかかるが、熱の変動を少なくすることができる。また、熱容量が小さいと、加熱に時間はかからないが、熱の変動が大きくなる。
【0019】
図3では、プラテン7とアフターガイド8のヒーター線の配線の例を示している。プラテン7のヒーター線11は、プラテン7の裏面に掘られた溝に埋め込まれている。ヒーター線11は、プラテン7の両端部の密部分12において密に配線されている。プラテン7の中央部分はヒーター線11が平行に配線され、密部分12に比べ配線の間隔が広く、疎部分13を構成している。また、中間部14は密部分12と疎部分13の間にあり、両者の中間の密度で配線されている。このように単位面積当たりの配線の密度を場所によって変えている。このようにすることで、温度のむらを防止している。
【0020】
アフターガイド8のヒーター線15は、アフターガイド8の裏面に、粘着性のアルミシートで覆われて固定されている。アフターガイド8の裏面は平坦であり、そこにヒーター線15が固定されている。アフターガイド8の両端部の密部分16においてヒーター線15が密に配線されている。アフターガイド8の中央部分はヒーター線15が平行な部分とそれに対して斜めな部分によって構成されている。この斜めにすることで、密部分16間のヒーター線15の長さは、プラテン7のようにする場合に比べて5%程度短くなる。また、アフターガイド8にはプラテン7のような中間部14が無い。ここでは、アフターガイド8とプラテン7が同じサイズであった場合について説明した。また、アフターガイド8とプリガイド9はヒーター線の配線は同じように配線されている。このように単位面積当たりの配線の密度を場所によって変えている。このようにすることで、温度のむらを防止している。
【0021】
プラテン7は、両端での放熱が大きく、何も対策をしないと温度が低くなる。これに対して、温度を均一にするために、ヒーター線11を密部分12で密にして加える熱量を大きくしている。そして、中央に行くに従い段階的にヒーター線1を疎にする配線をしている。アフターガイド8も両端での放熱が大きく、何も対策をしないと温度が低くなる。これに対して、温度を均一にするために、ヒーター線15を密部分16で密にして加える熱量を大きくしている。そして、中央はヒーター線1を疎にする配線をしている。プリガイド9も同様である。
【0022】
プラテン7とアフターガイド8とでは、放熱、熱容量が異なるので、異なる配線にしている。プラテン7は熱容量が大きいので、端部の熱を上げるのに時間がかかるので、段階的に疎から密にしている。たま、アフターガイド8は熱容量が小さいので、疎部分17ではなるべく配線を短くするため、中間部を用いずに斜めに配線をしている。プリガイド9も同様である。
【0023】
プラテン7とアフターガイド8は隣り合うので両者間で温度差が出るところをなるべく無くしたほうがよい。そのために、端部ではほぼヒーター線の密度は同じであるが、中間部、疎部分の配線を異ならせ、温度差が出るところを抑制した。プリガイド9も同様である。
【0024】
また、プラテン7は厚みがあるので、溝を設けてその中にヒーター線11を入れることで内部から加熱ができ、好適に伝熱することができる。また、アフターガイド8とプリガイド9は薄い鉄の平板を湾曲させた物なので、熱伝導性の高いアルミシートによりヒーター線15を挟み込み、伝熱性を高めている。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明は、インクジェットプリンターに利用できる。
【符号の説明】
【0026】
1 インクジェットプリンター
2 レール
3 キャリッジ
7 プラテン
8 アフターガイド
9 プリガイド
11 ヒーター線