(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0010】
<本発明の一実施形態>
(1)レンズ装置の構成
図1を用い、本発明の一実施形態に係るレンズ装置について説明する。
図1は、本実施形態に係るレンズ装置での構成を示す模式的断面図である。
【0011】
本実施形態のレンズ装置10は、互いに相対的に移動可能な物体側レンズ群および像面側レンズ群の間に設けられた固定光学群を固定した状態で保持するよう構成され、具体的には、物体側レンズ群と、光軸を軸として回転することにより物体側レンズ群を光軸に沿って移動可能に物体側レンズ群と係合する物体側カム機構と、物体側レンズ群よりも像面側に固定される固定光学群と、物体側カム機構よりも像面側で固定光学群を保持する固定光学保持部と、固定光学群よりも像面側に配置される像面側レンズ群と、固定光学保持部よりも像面側に設けられ、光軸を軸として回転することにより像面側レンズ群を光軸に沿って移動可能に像面側レンズ群と係合する像面側カム機構と、物体側カム機構および像面側カム機構を、固定光学保持部から独立して互いに連結する連結部材と、を備える。また、物体側カム機構および像面側カム機構は、連結部材により同一の周方向に連動可能である。以下詳細を説明する。
【0012】
以下では、互いに相対的に移動可能な2つのレンズ群のうち、物体側にあるレンズ群を「物体側レンズ群」、像面側にあるレンズ群を「像面側レンズ群」、その間に固定される光学群を「固定光学群」と呼ぶ。
【0013】
例えば、
図1に示されているように、レンズ装置10が監視用カメラなどに用いられるよう構成され、物体側より順に、第1レンズ群G1と、光軸Z1に沿って移動可能な「物体側レンズ群」である第2レンズ群G2と、「固定光学群」である第3レンズ群G3と、光軸に沿って「物体側レンズ群」に対して相対的に移動可能な「像面側レンズ群」である第4レンズ群G4と、第5レンズ群G5と、で構成される例について説明する。
【0014】
なお、
図1の上側は、第1レンズ群G1が光軸Z1に沿って最も像面(Simg)側に移動し、第2レンズ群G2が光軸Z1に沿って最も物体側に移動し、且つ第4レンズ群G4が光軸Z1に沿って最も像面Simg側に移動したときを示している。一方、
図1の下側は、第1レンズ群G1が光軸Z1に沿って最も物体側に移動し、第2レンズ群G2が光軸Z1に沿って最も像面Simg側に移動し、且つ第4レンズ群G4が光軸Z1に沿って最も物体側に移動したときを示している。
【0015】
第1レンズ群G1は、例えば、フォーカシング機能を有する。ここでいう「フォーカシング機能」とは、レンズ群が光軸Z1に沿って移動することによって物体にフォーカスを合わせる(合焦する)機能のことをいう。また、フォーカシング機能を有するレンズ群を「フォーカシングレンズ群」ともいう。本実施形態では、例えば第1レンズ群G1のみがフォーカシングレンズ群である。
【0016】
また、第1レンズ群G1は、例えば、1つ以上のレンズと、当該レンズを保持する保持枠(符号不図示)と、保持枠の外周に等間隔に配置され径方向に突出して設けられた3つのカムフォロアG1aと、を有し、カムフォロアG1aが後述する第1カム機構100に係合することによって第1カム機構100に保持されるよう構成される。
【0017】
第2レンズ群G2は、上記したように光軸に沿って移動可能な「物体側レンズ群」であり、例えば、バリエータ機能を有する。ここでいう「バリエータ機能」とは、レンズ群が光軸Z1に沿って移動することによって変倍を行う機能のことをいう。また、バリエータ機能を有するレンズ群を「バリエータレンズ群」ともいう。ただし、第2レンズ群G2は、フォーカシング機能を有していない。すなわち、フォーカスの際には、第2レンズ群G2は固定される。
【0018】
また、第2レンズ群G2は、例えば、1つ以上のレンズと、当該レンズを保持する保持枠G2fと、保持枠G2fの外周に等間隔に配置され径方向に突出して設けられた3つのカムフォロアG2aと、を有し、カムフォロアG2aが後述する第2カム機構200に係合することによって第2カム機構200に保持されるよう構成される。
【0019】
第3レンズ群G3は、上記したように「固定光学群」であり、例えば、レンズおよびアイリス(開口絞り)の少なくともいずれかを含む。ここでは、第3レンズ群G3は、例えば、アイリスI1と、アイリスI1よりも像面Simg側に設けられた1つ以上のレンズと、を有し、後述する第3光学保持部300に保持されるよう構成される。
【0020】
第4レンズ群G4は、上記したように光軸に沿って「物体側レンズ群」に対して相対的に移動可能な「像面側レンズ群」であり、例えば、コンペンセータ機能を有する。ここでいう「コンペンセータ機能」とは、変倍の際に、レンズ群がバリエータレンズ群と連動して光軸Z1に沿って移動することによって像面の位置を補正する機能のことをいう。また、コンペンセータ機能を有するレンズ群を「コンペンセータレンズ群」ともいう。ただし、第4レンズ群G4は、フォーカシング機能を有していない。すなわち、フォーカスの際には、第4レンズ群G4は固定される。
【0021】
また、第4レンズ群G4は、例えば、1つ以上のレンズと、当該レンズを保持する保持枠G4fと、保持枠G4fの外周に等間隔に配置され径方向に突出して設けられた3つのカムフォロアG4aと、を有し、カムフォロアG4aが後述する第4カム機構400に係合することによって第4カム機構400に保持されるよう構成される。なお、例えば、第4レンズ群G4のレンズの直径は、第2レンズ群G2のレンズの直径、および第3レンズ群G3のレンズの直径よりも小さい。
【0022】
第5レンズ群G5は、例えば変倍の際に固定されるレンズ群である。なお、第5レンズ群G5は、例えば、1つ以上のレンズを有し、後述する第4直進筒440が兼ねる第5レンズ保持部に保持されるよう構成される。
【0023】
光軸Z1方向の物体側と反対側である像面Simgの位置には、CCD(Charge Coupled Device)またはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)などの固体撮像素子が配置される。
【0024】
(物体側カム機構:第2カム機構)
次に、
図1〜
図4を用い、物体側レンズ群としての第2レンズ群G2を光軸Z1の方向に移動可能に保持する物体側カム機構(バリエータカム機構、Vカム機構)である第2カム機構200について説明する。
図2(a)は、本実施形態に係るレンズ装置での外観構成を示す斜視図であり、(b)は、(a)の反対側から見た斜視図である。
図3(a)は、本実施形態に係るレンズ装置での内部構成を示す斜視図であり、(b)は、(a)の反対側から見た斜視図である。
図4(a)は、本実施形態に係る第2カム筒を示す斜視図であり、(b)は、本実施形態に係る第4カム筒を示す斜視図である。
【0025】
図1に示されているように、物体側カム機構である第2カム機構200は、第2レンズ群G2に係合する第2カム筒(物体側カム筒)220および第2直進筒(物体側直進筒)240を備える。
【0026】
ここでは、レンズ装置10において、例えば、第2直進筒240が各レンズ群のカム機構の基準として固定されている。第2直進筒240よりも内側に、光軸Z1を軸として回転可能な第2カム筒220が設けられる。
【0027】
図1、
図2(a)および(b)に示されているように、第2直進筒240は、光軸Z1に沿った方向に設けられた直進溝242を有する。第2直進筒240の直進溝242には、第2レンズ群G2のカムフォロアG2aが係合する。
【0028】
図1、
図3(a)および(b)に示されているように、第2カム筒220は、光軸Z1に対して傾斜して設けられたカム溝222を有する。第2カム筒220のカム溝222と第2直進筒240の直進溝242とが重なる位置にカムフォロアG2aと略一致する開口が形成され、当該開口に第2レンズ群G2のカムフォロアG2aが係合する。
【0029】
図4(a)に示されているように、第2カム筒220のカム溝222は、広角端222wから望遠端222tに向かって、光軸Z1に対して所定の角度で傾斜して設けられる。カム溝222が光軸Z1に対して傾斜される角度を調整することにより、第2カム筒220の周方向への回転距離に対する第2レンズ群G2の光軸Z1の方向への直進距離が設定される。
【0030】
図1、
図3(a)および(b)に示されているように、第2カム筒220の像面Simg側には、第2カム筒220の周方向に沿って、後述する駆動部260の駆動力を伝達するギア(平歯車)224が設けられる。ギア224は周方向に沿って均等に設けられた貫通開口(不図示)を有し、ギア224の貫通開口には、第2カム筒220の位置決めピン(不図示)が嵌合する。これにより、ギア224は第2カム筒220に固定される。なお、ギア224の像面側の面の法線が光軸Z1に沿うように、ギア224は第2カム筒220に固定される。
【0031】
(ズーミング用駆動部)
図1に示されているように、第2カム機構200は、変倍の際に駆動する駆動部(ズーミング用駆動部)260を備える。第2カム機構200の駆動部260は、光軸Z1を軸として第2カム機構200の第2直進筒240に対して第2カム筒220を相対的に回転させるよう構成され、例えば、第2カム筒220を回転させる駆動源である本体部(モータ部)262と、本体部262によって回転される回転軸264と、回転軸264に設けられ当該回転軸264を軸として回転するギア(平歯車)266と、を備える。
【0032】
また、例えば、駆動部260のギア266と第2カム筒220のギア224との間には、駆動部260のギア266の直径よりも大きく第2直進筒240の厚さ以上の直径を有する遊びギア(遊び歯車)268が設けられる。駆動部260のギア266は、遊びギア268を介して、第2カム筒220のギア224に噛みあうよう構成される。これにより、大きい減速比で、駆動部260の駆動力が第2カム筒220に伝達される。
【0033】
図2(a)および(b)に示されているように、駆動部260の本体部262は、第3光学保持部300よりも物体側に設けられる。具体的には、例えば、レンズ装置10は、第2直進筒240の外周に接して設けられたフランジ部720と、フランジ部720の像面Simg側に設けられ物体側の一端がフランジ部720に接する支柱760と、支柱760の像面Simg側の他端に接し駆動部260の本体部262を支持する支持板762と、を備える。駆動部260の本体部262は、例えば支持板762、支柱760およびフランジ部720を介して第2直進筒240に固定される。支持板762には、駆動部260のギア266および第2カム筒220のギア224に噛み合って回転するように遊びギア268が配置される。
【0034】
このように、第2カム機構200の駆動部260は、本体部262が第2直進筒240に対して固定された状態でギア266を回転させることにより、光軸Z1を軸として第2カム機構200の第2直進筒240に対して第2カム筒220を相対的に回転させるよう構成される。
【0035】
(位置検出部)
図2(b)に示されているように、第2カム機構200は、第2カム筒220の回転位置、回転速度及び方向を検出するロータリーエンコーダである位置検出部280をさらに備える。位置検出部280は、例えば、本体部(検出部)282、回転軸(不図示)、およびギア(平歯車)286を備える。例えば、位置検出部280のギア286と第2カム筒220のギア224との間には、位置検出部280のギア286の直径よりも大きく第2直進筒240の厚さ以上の直径を有する遊びギア(遊び歯車)288が設けられる。位置検出部280のギア286は、遊びギア288を介して、第2カム筒220のギア224に噛みあうよう構成される。
【0036】
また、位置検出部280の本体部282は、第3光学保持部300よりも物体側に設けられる。具体的には、例えば、レンズ装置10は、上記したフランジ部720の像面Simg側に設けられ物体側の一端がフランジ部720に接する支柱764と、支柱764の像面Simg側の他端に接し位置検出部280の本体部282を支持する支持板766と、を備える。位置検出部280の本体部282は、例えば支持板766、支柱764およびフランジ部720を介して第2直進筒240に固定される。支持板766には、位置検出部280のギア286および第2カム筒220のギア224に噛み合って回転するように遊びギア288が配置される。
【0037】
このように、位置検出部280は、本体部282が第2直進筒240に対して固定された状態で第2カム筒220の回転によってギア286が回転することにより、第2カム筒220の回転位置、回転速度及び方向を検出するよう構成される。これにより、第2カム筒220のカム溝222の設計情報に基づいて、第2レンズ群G2の光軸Z1方向の位置が検出される。なお、第2カム機構200は後述する第4カム機構400に連動することにより、第2レンズ群G2とともに、第4カム筒420のカム溝422の設計情報に基づいて、第4レンズ群G4の光軸Z1方向の位置を検出することができる。
【0038】
(固定光学保持部:第3光学保持部)
次に、固定光学群としての第3レンズ群G3を保持する固定光学保持部である第3光学保持部300について説明する。
【0039】
図1に示されているように、第3光学保持部300は、第2直進筒240の像面Simg側に嵌合して直接連結されることにより、変倍の際に第2カム筒220が回転するとき、第2直進筒240とともに固定される。また、第3光学保持部300は、物体側にアイリスI1を保持するとともに、中心が光軸Z1と重なるようにレンズを保持するよう構成される。
【0040】
図1、
図2(b)に示されているように、第3光学保持部300は、周方向に沿った円弧状の貫通開口302を有する。貫通開口302は、第3レンズ群G3よりも外側に設けられる。この貫通開口302には、後述する連結部材600が挿入される。光軸Z1に沿った方向から見て、貫通開口302が光軸Z1を中心として周方向に広がる角度は、カム溝222およびカム溝422の周方向の長さ、および連結部材600の移動範囲に基づいて設定され、例えば103°である。
【0041】
また、
図1、
図2(a)および(b)に示されているように、第2直進筒240および第3光学保持部300の間には、駆動部260のギア266に係る遊びギア288と、位置検出部280のギア286に係る遊びギア288と、が第2カム筒220に噛み合うように、開口(符号不図示)が設けられる。
【0042】
(アイリス)
ここで、
図6を用い、固定光学群としての第3レンズ群G3が有するアイリスI1について説明する。
図6(a)は、本実施形態に係るアイリスを示す斜視図であり、(b)は、アイリスを示す上面図であり、(c)は、アイリスを示す正面図である。
【0043】
図6(a)〜(b)に示されているように、アイリスI1は、開口径を制御して明るさを調整するよう構成され、光軸Z1に垂直な方向に沿って設けられる複数の絞り羽根320と、複数の絞り羽根320の開口の中心が光軸Z1と重なるように複数の絞り羽根320を移動可能に支持する円板状の絞り支持部340と、絞り支持部340の複数の絞り羽根320よりも外周側に設けられ、複数の絞り羽根320を移動させることにより光軸Z1を中心とする開口径を調整する絞り駆動部(アイリスメータ)360と、を有する。
【0044】
図1に示されているように、アイリスI1の支持部340は、複数の絞り羽根320の開口の中心が光軸Z1と重なるように第3光学保持部300に固定される。また、絞り駆動部360は、光軸Z1に沿った方向から見て第3光学保持部300の貫通開口302の反対側に設けられる。絞り駆動部360の一部は、第3光学保持部300よりも外側に露出しており、外部からの配線(不図示)等が接続される。
【0045】
(像面側カム機構:第4カム機構)
次に、
図1〜
図4を用い、像面側レンズ群としての第4レンズ群G4を光軸Z1に沿った方向に移動可能に保持する像面側カム機構(コンペンセータカム機構、Cカム機構)である第4カム機構400について説明する。
【0046】
図1に示されているように、像面側カム機構である第4カム機構400は、第4レンズ群G4に係合する第4カム筒(像面側カム筒)420および第4直進筒(像面側直進筒)440を備える。なお、例えば、第4レンズ群G4の直径が第3レンズ群G3の直径よりも小さいため、第4カム筒420および第4直進筒440の直径は、第2カム筒220および第2直進筒240の直径よりも小さい。
【0047】
ここでは、第4直進筒440は、第3光学保持部300の像面Simg側にねじ(ビス)(符号不図示)により直接連結される。第4直進筒440よりも外側に、光軸Z1を軸として回転可能な第4カム筒420が設けられる。
【0048】
図1に示されているように、第2カム機構200と同様にして、第4直進筒440は、光軸Z1に沿った方向に設けられた直進溝442を有する。第4直進筒440の直進溝442には、第4レンズ群G4のカムフォロアG4aが係合する。
【0049】
図1、
図2(a)および(b)に示されているように、第4カム筒420は、光軸Z1に対して少なくとも一部が傾斜して設けられたカム溝422を有する。第4カム筒420のカム溝422と第4直進筒440の直進溝442が重なる位置にカムフォロアG4aと略一致する開口が形成され、当該開口に第4レンズ群G4のカムフォロアG4aが係合する。
【0050】
図4(b)に示されているように、第4カム筒420のカム溝422は、広角端422wから望遠端422tに向かって、光軸Z1に対して物体側に凸に湾曲した曲線を有する。カム溝422が光軸Z1に対して傾斜する角度を調整することにより、第4カム筒420の周方向への回転距離に対する第4レンズ群G4の光軸Z1の方向への直進距離が設定される。
【0051】
(連結部材)
次に、
図1〜
図5を用い、連結部材600について説明する。
図5(a)は、本実施形態に係る連結部材を示す斜視図であり、(b)は、連結部材を示す左側面図であり、(c)は、連結部材を示す上面図であり、(d)は、連結部材を示す正面図である。
【0052】
図1に示されているように、第2カム機構200と第4カム機構400とは、第3光学保持部300から独立して、連結部材600により互いに連結される。これにより、第2カム機構200および第4カム機構400は、連結部材600により同一の周方向に連動可能である。
【0053】
連結部材600は、第2直進筒240よりも内側に設けられた第2カム筒220と、第4直進筒440よりも外側に設けられた第4カム筒420と、を互いに連結する。すなわち、第2カム機構200では、内側の第2カム筒220が回転し、第4カム機構400では、外側の第4カム筒420が第2カム筒220と同一の周方向に回転する。これにより、第2カム機構200と第4カム機構400との間に第3レンズ群G3を固定した状態で、第2カム機構200および第4カム機構400を安定的に連動させることができる。
【0054】
具体的には、連結部材600は、以下のような構成を有する。
【0055】
図5(a)〜(d)に示されているように、連結部材600は、例えばトンボ形状に構成され、具体的には、第2カム筒220の像面側の一端に当接して連結される物体側連結部620と、第4カム筒420の外周に連結される像面側連結部660と、物体側連結部620と像面側連結部660との間に延在し、物体側連結部620と像面側連結部660とを中継する長尺な板状の中継部640と、を備える。
【0056】
物体側連結部620は、中継部640の物体側の一端に接し、中継部640の長手方向に対して垂直に屈曲される。また、物体側連結部620は、例えば、中継部640の長手方向に沿った中心線を含む面を挟んで両側に対称に設けられた2つの凹部622(622a,622b)と、中継部640の長手方向に沿った中心線を含む面上に位置し中継部640の長手方向に沿って貫通された貫通開口624と、を有する。
【0057】
図3(b)に示されているように、物体側連結部620は、第2カム筒220の像面側の一端、例えばギア224の像面側の面に当接して連結される。物体側連結部620の貫通開口624にはギア224に設けられた位置決めピン(不図示)が嵌合する。これにより、物体側連結部620の第2カム筒220に対して連結される位置精度が向上する。また、2つの凹部622には、連結部材600側から第2カム筒220に対して、ねじ(ビス)(符号不図示)が締め付けられる。これにより、物体側連結部620は、中継部640の長手方向が光軸Z1に沿うように、第2カム筒220に連結される。
【0058】
このように、物体側連結部620が第2カム筒220の一端に当接することにより、連結部材620の光軸Z1に沿った方向の位置が確定される。
【0059】
一方、
図5(a)〜(d)に示されているように、像面側連結部660は、中継部640を挟んで両側に拡張して設けられた第1像面側連結部662および第2像面側連結部664を有する。第1像面側連結部662および第2像面側連結部664は、中継部640の長手方向に沿った中心線に対して互いに対称に設けられ、中継部640に対して物体側連結部620が屈曲された側に所定の角度で屈曲して設けられる。例えば、第1像面側連結部662および第2像面側連結部664は、中継部640の長手方向に沿った方向から見て第4カム筒420の外周に対して接線となるように中継部640に対して屈曲される。
【0060】
第1像面側連結部662は、中継部640に接する板部662cと、板部662cの中継部640に接する側から所定の距離だけ離間した位置に設けられ中継部640の長手方向に沿って長尺に設けられた貫通開口662bと、板部662cの貫通開口662bよりも中継部640と反対側に設けられた屈曲部662aと、を有する。例えば、屈曲部662aは、板部662cから物体側連結部620が屈曲された側と反対側に屈曲される。また、屈曲部662aと板部662cとの間における折り曲げ線は、中継部640の長手方向に沿って形成される。
【0061】
なお、第2像面側連結部664は、中継部640の長手方向に延びる中心線に対して第1像面側連結部662と対称に構成され、第1像面側連結部662と同様に、板部664cと、貫通開口664bと、屈曲部664aと、を有する。また、第1像面側連結部662の貫通開口662bと、第2像面側連結部664の貫通開口664bとの距離は、中継部640の短手方向の幅よりも長い。
【0062】
さらに、
図5(a)〜(d)に示されているように、中継部640の第1像面側連結部662および第2像面側連結部664の間の中心には、貫通開口642が設けられる。
【0063】
図3(b)に示されているように、連結部材600は、中継部640の長手方向が光軸Z1に沿うように配置され、像面側連結部660は、第4カム筒420の外周面の中継部640を挟んだ両側で連結される。これにより、第2カム筒220の回転力が中継部640に伝達した際に、中継部640の長手方向が光軸Z1に対して傾斜することが抑制される。すなわち、第2カム筒220と第4カム筒420との連動位置がずれることが抑制される。
【0064】
具体的には、中継部640の貫通開口642には、第4カム筒420に設けられた位置決めピン(符号不図示)が嵌合する。これにより、像面側連結部660の第4カム筒420に対して連結される少なくとも周方向の位置精度が向上する。また、第1像面側連結部662および第2像面側連結部664は、第4カム筒420の外周面に接する。例えば、第1像面側連結部662の貫通開口662bには、連結部材600側から第4カム筒420に対して2つのねじ(ビス)(符号不図示)が締め付けられ、第2像面側連結部664の貫通開口664bには、連結部材600側から第4カム筒420に対して1つのねじ(ビス)(符号不図示)が締め付けられる。これにより、像面側連結部660は、第4カム筒420に連結される。
【0065】
このとき、第1像面側連結部662の貫通開口662bと、第2像面側連結部664の貫通開口664bとの距離が中継部640の短手方向の幅よりも長いことにより、像面側連結部660は、中継部640の短手方向の両端よりも遠い2点で第4カム筒420に固定される。これにより、第2カム筒220と同期して第4カム筒420を安定的に回転させることができる。
【0066】
また、例えば貫通開口662bが中継部640の長手方向に沿って長尺に設けられることにより、第2カム機構200から第4カム機構400までを組み上げた際の組み上げ誤差が調整されて、像面側連結部660が第4カム筒420に連結される。これにより、第4レンズ群G4の第2レンズ群G2に対する光軸Z1に沿った方向の相対的位置が調整される。
【0067】
図2(b)に示されているように、第3光学保持部300の円弧状の貫通開口302には、連結部材600の中継部640が挿入される。連結部材600は、貫通開口302を介して第2カム筒220および第4カム筒420を連結する。これにより、連結部材600は、変倍の際に第2カム筒220が回転するとき、第2カム筒220および第4カム筒420を連結した状態で、第3光学保持部300の円弧状の貫通開口302の範囲内で周方向に回転する。
【0068】
また、1つの連結部材600により、第2カム筒220と第4カム筒420とが貫通開口302を介して連結される。これにより、第3光学保持部300において、連結部材600が貫通する貫通開口302が占める割合を小さくすることができる。したがって、連結部材600がアイリスI1に干渉することなく、アイリスI1の絞り駆動部360が第3光学保持部300の外側に露出することができる。
【0069】
また、
図2(a)および(b)に示されているように、例えば、第2レンズ群G2のカムフォロアG2aと、第4レンズ群G4のカムフォロアG4aと、は光軸Z1に沿った方向から見て光軸Z1に対して同じ径方向に配置される。すなわち、第2直進筒240の直進溝242は、第4直進筒440の直進溝442に沿って配置される。
【0070】
(その他の構成)
次に、本実施形態のレンズ装置10のその他の構成について説明する。
【0071】
(第1カム機構)
図1〜
図5を用い、第1レンズ群G1を光軸Z1の方向に移動可能に保持する第1カム機構100について説明する。
【0072】
図1に示されているように、第1カム機構100は、第1レンズ群G1に係合する第1カム筒120および第1直進筒140を備える。第1直進筒140は、第2直進筒240の物体側に直接連結される。また、第1直進筒140よりも外側に、光軸Z1を軸として回転可能な第1カム筒120が設けられる。
【0073】
図1に示されているように、第2カム機構200と同様にして、第1直進筒140は、光軸Z1に沿った方向に設けられた直進溝142を有する。第1直進筒140の直進溝142には、第1レンズ群G1のカムフォロアG1aが係合する。
【0074】
図1、
図2(a)および(b)に示されているように、第1カム筒120は、光軸Z1に対して傾斜して設けられたカム溝122を有する。第1カム筒120のカム溝122と第1直進筒140の直進溝142が重なる位置にカムフォロアG1aと略一致する開口が形成され、当該開口に第1レンズ群G1のカムフォロアG1aが係合する。
【0075】
図2(a)および(b)に示されているように、第1カム筒120のカム溝122は、光軸Z1に対して所定の角度で傾斜して設けられる。カム溝122が光軸Z1に対して傾斜される角度を調整することにより、第1カム筒120の周方向への回転距離に対する第1レンズ群G1の光軸Z1の方向への直進距離が設定される。例えば、第1カム筒120のカム溝122の光軸Z1に対する角度は、第2カム筒220のカム溝222の光軸Z1に対する角度よりも大きく、第1カム筒120のカム溝122の光軸Z1の長さは、第2カム筒220のカム溝222の光軸Z1の長さよりも短い。
【0076】
また、
図1、
図2(a)および(b)に示されているように、第1カム筒120の像面Simg側には、第1カム筒120の周方向に沿って、後述する駆動部160の駆動力を伝達するギア(平歯車)124が設けられる。
【0077】
(フォーカシング用駆動部)
図1に示されているように、第1カム機構100は、変倍の際に駆動するズーミング駆動部としての駆動部260とは別に設けられ、合焦の際に駆動する駆動部(フォーカシング用駆動部)160を備える。第1カム機構100の駆動部160は、光軸Z1を軸として第1カム機構100の第1直進筒140に対して第1カム筒120を相対的に回転させるよう構成され、例えば、第1カム筒120を回転させる駆動源である本体部(モータ部)162と、本体部162によって回転される回転軸164と、回転軸164に設けられ当該回転軸164を軸として回転するギア(平歯車)166と、を備える。駆動部160のギア166は、第1カム筒120のギア124に噛みあうよう構成される。これにより、駆動部160の駆動力が第1カム筒120に伝達される。
【0078】
図2(a)および(b)に示されているように、駆動部160の本体部162は、第1カム筒120よりも像面Simg側に設けられる。具体的には、例えば、レンズ装置10は、上述したフランジ部720の物体側に設けられ像面Simg側の一端がフランジ部720に接する支柱740と、支柱740の物体側の他端に接し駆動部160の本体部162を支持する支持板742と、を備える。駆動部160の本体部162は、例えば支持板742、支柱740およびフランジ部720を介して第2直進筒240に固定される。
【0079】
すなわち、第1カム機構100の駆動部160と、第2カム機構200の駆動部260と、は同一のフランジ部720を介して第2直進筒240に固定される。第1カム機構100の駆動部160は、第1カム筒120を回転させるために第1カム筒120に近い側に設けられなければならない。一方で、第2カム機構200の駆動部260は、第3光学保持部300よりも物体側であっても像面側であってもかまわない。しかしながら、第2カム機構200の駆動部260が第3光学保持部300よりも物体側に設けられることにより、第2カム機構200の駆動部260を第1カム機構100の駆動部160に近付け、第1カム機構100の駆動部160とともに固定することができる。したがって、駆動部260を固定する支点となるフランジ部720と、第2カム機構200を回転させる力点となる駆動部260のギア266と、を近づけることができ、駆動部260は第2カム機構200を安定的に回転させることができる。また、第1カム機構100の駆動部160と、第2カム機構200の駆動部260と、をそれぞれ個別に固定する場合よりも部品点数を削減することができる。
【0080】
また、第1カム機構100の駆動部160は、第2カム機構200の駆動部260と同じ仕様、すなわち同じ回転速度、およびトルクを有する。これにより、第1カム機構100の駆動部160として、第2カム機構200の駆動部260と同じ共通部品を用いることができる。したがって、レンズ装置10の製造コストを低減することができる。
【0081】
このように、第1カム機構100の駆動部160は、本体部262が第2直進筒240に対して固定された状態でギア166を回転させることにより、光軸Z1を軸として第1カム機構100の第1直進筒140に対して第1カム筒120を相対的に回転させるよう構成される。
【0082】
(位置検出部)
図2(b)に示されているように、第1カム機構100は、第1カム筒120の回転位置、回転速度及び方向を検出するロータリーエンコーダである位置検出部180をさらに備える。位置検出部180は、例えば、本体部(検出部)182、回転軸(不図示)、およびギア(平歯車)186を備える。位置検出部180のギア186は、第1カム筒120のギア124に噛みあうよう構成される。
【0083】
また、位置検出部180の本体部182は、例えば、駆動部160の本体部162と同様にして、支持板742、支柱740およびフランジ部720を介して第2直進筒240に固定される。
【0084】
このように、位置検出部180は、本体部182が第2直進筒240に対して固定された状態で第1カム筒120の回転によってギア186が回転することにより、第1カム筒120の回転位置、回転速度及び方向を検出するよう構成される。これにより、第1カム筒120のカム溝122の設計情報に基づいて、第1レンズ群G1の光軸Z1方向の位置が検出される。
【0085】
(第5レンズ保持部)
図1〜
図5を用い、第5レンズ群G5を保持する第5レンズ保持部について説明する。
【0086】
図1に示されているように、例えば、第4カム機構400の第4直進筒440が、第5レンズ保持部を兼ねるよう構成される。具体的には、第4直進筒440は、直進溝442よりも物体側で径が細くなることにより、内部に第5レンズ群G5を保持するよう構成される。
【0087】
図1、
図2(a)および(b)に示されているように、第4直進筒440の像面側の外周には、マウント接続部(マウント環)500が設けられる。マウント接続部500は、例えば、広く普及されているCマウントまたはCSマウントに接続するよう構成される。
【0088】
本実施形態のレンズ装置10を接続する固体撮像素子の対角長は、例えば8mm(いわゆる1/2インチ)以上11mm(いわゆる2/3インチ)以下である。また、ズームレンズのうち最大レンズ(例えばレンズL1)のレンズ径は、例えば、50mm以上100mm以下である。
【0089】
(2)レンズ装置の動作
図1を用い、本実施形態に係るレンズ装置10の動作について説明する。
【0090】
(ズーミング)
本実施形態では、広角端から望遠端へのズーミング(変倍)に際し、第1レンズ群G1、第3レンズ群G3、および第5レンズ群G5を固定した状態で、バリエータレンズ群としての第2レンズ群G2を光軸Z1に沿って物体側から像面Simg側に移動させるとともに、第2レンズ群G2に追従するようにコンペンセータレンズ群としての第4レンズ群G4を光軸Z1に沿って移動させる。これにより、光学全長を維持したまま、容易にズームレンズの変倍を行うことができる。なお、「光学全長」とは、最も物体側のレンズの面から像面Simgまでの距離のことをいう。
【0091】
具体的には、広角端から望遠端へのズーミング(変倍)を行うとき、第2カム機構200の駆動部260は、光軸Z1に沿って像面Simg側から物体側を見て、第2カム筒220を第2直進筒240に対して時計回りに相対的に回転させる。
【0092】
このとき、第2直進筒240の直進溝242は、カムフォロアG2aを周方向に移動することを規制するとともに、光軸Z1に沿った方向に案内する。また、第2カム筒220が第2直進筒240に対して時計回りに相対的に回転することにより、第2カム筒220のカム溝222と第2直進筒240の直進溝242とが重なる位置に形成される開口が、光軸Z1に沿って像面Simg側に移動する。これにより、当該開口とともに第2レンズ群G2のカムフォロアG2aも光軸Z1に沿って移動する。このようにして、第2レンズ群G2は、第2カム機構200内を光軸Z1に沿って物体側から像面Simg側に単調に摺動する。なお、ここでいう「単調に摺動」とは、逆方向に戻ることなく摺動することを意味する。
【0093】
また、第4カム機構400は、連結部材600により第2カム機構200に連結された状態で、第2カム機構200と同一の周方向に連動する。すなわち、第4カム機構400の第4カム筒420は、第2カム機構200の第2カム筒220とともに、光軸Z1に沿って像面Simg側から物体側を見て、第4直進筒440に対して時計回りに相対的に回転する。
【0094】
このとき、第4直進筒440の直進溝442は、カムフォロアG4aを周方向に移動することを規制するとともに、光軸Z1に沿った方向に案内する。また、第4カム筒420が第4直進筒440に対して時計回りに相対的に回転することにより、第4カム筒420のカム溝422と第4直進筒440の直進溝442とが重なる位置に形成される開口が、光軸Z1に沿って物体側に移動した後に像面Simg側に移動する。言い換えれば、当該開口は、物体側に凸の軌跡を描くように移動する。これにより、当該開口とともに第4レンズ群G4のカムフォロアG4aも光軸Z1に沿って移動する。このようにして、第4レンズ群G1は、第4カム機構400内を光軸Z1に沿って物体側に移動した後に像面Simg側に摺動する。
【0095】
一方で、第1レンズ群G1、第3レンズ群G3および第5レンズ群G5は以下のように固定される。
【0096】
第1レンズ群G1は、変倍の際には第1カム機構100の駆動部160が静止されるため、固定された状態を維持する。第3レンズ群G3は、第2直進筒240および第4直進筒440に連結された第3光学保持部300に固定される。また、第5レンズ群G5は、第4直進筒440が兼ねる第5保持部により、常に同じ位置で固定される。
【0097】
以上のように、レンズ装置10の広角端から望遠端へのズーミング(変倍)が行われる。
【0098】
(フォーカシング)
本実施形態では、フォーカシング(合焦)に際し、フォーカスレンズ群としての第1レンズ群G1のみが、例えば無限遠物体から近距離物体へフォーカスを行う場合に光軸Z1に沿って像面Simg側から物体側に移動する。一方で、第2レンズ群G2、第3レンズ群G3、第4レンズ群G4および第5レンズ群G5は固定される。これにより、変倍しても、フォーカシングレンズ群の繰り出し量は一定となり、安定的にフォーカスを行うことができる。なお、レンズの「繰り出し量」とは、ピントを合わせるために、レンズを前後に移動させる移動距離のことをいう。
【0099】
具体的には、無限遠物体から近距離物体へのフォーカシング(合焦)を行うとき、第1カム機構100の駆動部160は、光軸Z1に沿って像面Simg側から物体側を見て、第1カム筒120を第1直進筒140に対して時計と反対回りに相対的に回転させる。
【0100】
このとき、第1直進筒140の直進溝142は、カムフォロアG1aを周方向に移動することを規制するとともに、光軸Z1に沿った方向に案内する。また、第1カム筒120が第1直進筒140に対して時計と反対回りに相対的に回転することにより、第1カム筒120のカム溝122と第1直進筒140の直進溝142とが重なる位置に形成される開口が、光軸Z1に沿って像面Simg側に移動する。これにより、当該開口とともに第1レンズ群G1のカムフォロアG1aも光軸Z1に沿って移動する。このようにして、第1レンズ群G1は、第1カム機構100内を光軸Z1に沿って物体側から像面Simg側に単調に摺動する。
【0101】
一方で、第2レンズ群G2、第3レンズ群G3、第4レンズ群G4および第5レンズ群G5は固定される。
【0102】
第2レンズ群G2および第4レンズ群G4は、フォーカシング(合焦)の際には第2カム機構200の駆動部260が静止されるため、固定された状態を維持する。第3レンズ群G3は、第2直進筒240および第4直進筒440に連結された第3光学保持部300に固定される。また、第5レンズ群G5は、第4直進筒440が兼ねる第5保持部により、常に同じ位置で固定される。
【0103】
以上のように、レンズ装置10のフォーカシング(合焦)が行われる。
【0104】
(3)本実施の形態の効果
本実施形態によれば、以下に示す1つまたは複数の効果を奏する。
【0105】
(a)本実施形態によれば、レンズ装置10は、物体側カム機構としての第2カム機構200と像面側カム機構としての第4カム機構400とを、固定光学保持部としての第3光学保持部300から独立して互いに連結する連結部材600を備える。第2カム機構200および第4カム機構400は、連結部材600により同一の周方向に連動可能である。これにより、第2レンズ群G2および第4レンズ群G4の間に、第3レンズ群G3を固定した状態で安定的に保持することができる。
【0106】
ここで、比較例として、1つのカム機構が、光軸に沿って互いに相対的に移動する2つのレンズ群と、2つのレンズ群の間に固定される固定光学群と、を保持する場合について考える。比較例では、例えば、カム機構は、2つのレンズ群に係合するカム筒と直進筒とを有する。カム筒には、2つのレンズ群をそれぞれ光軸に沿って移動させるように光軸に沿った方向に2つのカム溝が設けられる。比較例では、例えば、カム機構の2つのカム溝の間に、外周から光軸に垂直な方向に向かって凹部を設けることにより、固定光学群を、カム筒の凹部に挿入して、直進筒に固定することが考えられる。
【0107】
しかしながら、比較例のカム機構が固定光学群を固定した状態で、カム筒が回転するためには、カム筒に大きな凹部が設けられる必要がある。具体的には、カム筒における凹部の周方向の長さは、カム筒が回転する際に固定光学群に干渉しないような長さであり、少なくともカム溝の周方向の長さよりも長い必要がある。このため、カム機構の全体の剛性が低下し、カム筒におけるカム溝の加工精度(カム溝の位置精度)を維持することができない可能性がある。また、例えば、このカム機構が低い加工精度で製造されたとき、光軸に沿って移動する2つのレンズ群の相対的位置が調整出来ずに固定されてしまう可能性がある。
【0108】
これに対して、本実施形態によれば、物体側カム機構としての第2カム機構200と像面側カム機構としての第4カム機構400とが、分離して設けられる。第2カム機構200と第4カム機構400とは、連結部材600により連結される。第2カム機構200および第4カム機構400は、連結部材600により同一の周方向に連動可能である。これにより、第2カム機構200および第4カム機構400のそれぞれの剛性を維持するとともに、第2カム筒220および第4カム筒420のそれぞれにおけるカム溝の加工精度(カム溝の位置精度)を維持することができる。このようにして、光軸Z1に沿って互いに相対的に移動する第2レンズ群G2および第4レンズ群G4の間に、第3レンズ群G3を固定した状態で安定的に保持するレンズ装置10を提供することができる。
【0109】
(b)本実施形態によれば、連結部材600は、第2直進筒240よりも内側に設けられた第2カム筒220と、第4直進筒440よりも外側に設けられた第4カム筒420と、を互いに連結する。すなわち、第2カム機構200では、内側の第2カム筒220が回転し、第4カム機構400では、外側の第4カム筒420が第2カム筒220と同一の周方向に回転する。これにより、第2カム機構200と第4カム機構400との間に第3レンズ群G3を固定した状態で、第2カム機構200および第4カム機構400を安定的に連動させることができる。
【0110】
ここで、比較例として、連結部材が、第2直進筒よりも外側に設けられた第2カム筒と、第4直進筒よりも外側に設けられた第4カム筒と、を互いに連結する場合について考える。この比較例では、第2カム筒が第2直進筒よりも外側で回転するため、第2直進筒に対して第2カム筒を相対的に回転させる駆動部を第2直進筒に固定することができない可能性がある。
【0111】
また、他の比較例として、連結部材が、第2直進筒よりも内側に設けられた第2カム筒と、第4直進筒よりも内側に設けられた第4カム筒と、を互いに連結する場合について考える。この比較例では、少なくともいずれか一方のカム筒に対して、外側に直進筒がある状態で、内側のカム筒に連結部材を連結しなければならず、組立工程が複雑になる可能性がある。また、この比較例において、連結部材が第3レンズ群を回避して第2カム筒および第4カム筒を連結することが困難であり、連結部材が特に第3レンズ群に干渉してしまう可能性がある。
【0112】
これに対して、本実施形態によれば、第2カム筒220が第2直進筒240よりも内側に設けられ、これとは逆に第4カム筒420が第4直進筒440よりも外側に設けられる。連結部材600は、第3レンズ群G3を挟んで、内側の第2カム筒220と外側の第4カム筒420とを互いに連結する。これにより、第2直進筒240に対して第2カム筒220を相対的に回転させる駆動部260を、外側に位置する第2直進筒240に固定することができる。また、第4カム筒420が第4直進筒440よりも外側に設けられるため、レンズ装置10の組立ての際に、連結部材600を第4カム筒420に容易に連結することができる。また、連結部材600が第3レンズ群G3を回避して第2カム筒220および第4カム筒420を連結することができ、連結部材600が特に第3レンズ群G3に干渉することが抑制される。さらに、本実施形態のように第4カム筒420の直径が第2カム筒220の直径よりも小さい場合に、連結部材600が第3レンズ群G3を回避しながら第2カム筒220および第4カム筒420を短い距離で連結することができる。このように、第2カム機構200と第4カム機構400との間に第3レンズ群G3を固定した状態で、第2カム機構200および第4カム機構400を安定的に連動させることができる。
【0113】
(c)本実施形態によれば、連結部材600は、第2カム筒220の像面側の一端に当接して連結される物体側連結部620と、第4カム筒420の外周に連結される像面側連結部660と、物体側連結部620と像面側連結部660との間に延在し、物体側連結部620と像面側連結部660とを中継する中継部640と、を備える。これにより、固定光学群としての第3レンズ群G3を回避して第2カム筒220および第4カム筒420を連結することができる。また、第2カム筒220の像面側の一端に物体側連結部620の光軸Z1に沿った方向の位置を確定しながら、像面側連結部660が第4カム筒420に連結される位置を適正位置に調整することができる。すなわち、第4レンズ群G4の第2レンズ群G2に対する光軸Z1に沿った方向の相対的位置を適正位置に調整することができる。
【0114】
(d)本実施形態によれば、像面側連結部660は、第4カム筒420の外周面の中継部640を挟んだ両側で連結される。これにより、第2カム筒220の回転力が中継部640に伝達した際に、中継部640の長手方向が光軸Z1に対して傾斜することが抑制される。すなわち、第2カム筒220と第4カム筒420との連動位置がずれることが抑制される。
【0115】
(e)本実施形態によれば、固定光学保持部としての第3光学保持部300は、周方向に沿った円弧状の貫通開口302を有する。貫通開口302は、第3レンズ群G3よりも外側に設けられる。連結部材600は、貫通開口302を介して第2カム機構200と第4カム機構400とを連結する。これにより、第3光学保持部300の外周よりも内側、すなわち、最も大きな第1レンズ群G1を保持する第1カム機構100の外周よりも内側で、連結部材600が連結される。したがって、レンズ装置10全体としてのサイズを小さくすることができる。
【0116】
(f)本実施形態によれば、一つの駆動部260により、互いに連結された第2カム筒220および第4カム筒420を回転させるため、駆動部260には大きな負荷がかかる。そこで、駆動部260は、光軸Z1を軸として、像面側に位置する第4カム筒420ではなく、物体側に位置する第2カム機構200の第2直進筒240に対して第2カム筒220を相対的に回転させる。これにより、物体側に位置する第2カム筒220の直径は、像面Simg側に位置する第4カム筒420の直径よりも大きいため、駆動部が第4カム筒を回転させる場合よりも減速比を大きくすることができる。すなわち、駆動部260にかかるトルクを小さくすることができ、駆動部260を小型化することができる。
【0117】
(g)本実施形態によれば、広角端から望遠端への変倍に際し、第1レンズ群G1、第3レンズ群G3、および第5レンズ群G5を固定した状態で、バリエータレンズ群である第2レンズ群G2を光軸Z1に沿って物体側から像面Simg側に移動させるとともに、コンペンセータレンズ群である第4レンズ群G4を光軸Z1に沿って移動させる。これにより、光学全長を維持したまま、容易にズームレンズの変倍を行うことができる。
【0118】
(h)本実施形態によれば、第1レンズ群G1は、フォーカシング機能を有し、フォーカスに際し、第1レンズ群G1のみが光軸Z1に沿って移動する。一方で、第2レンズ群G2、第3レンズ群G3、第4レンズ群G4および第5レンズ群G5は固定される。これにより、変倍しても、フォーカシングレンズ群の繰り出し量は一定となり、安定的にフォーカスを行うことができる。
【0119】
<本発明の他の実施形態>
以上の説明は本発明の好適な実施の形態の例証であり、本発明の範囲はこれに限定されることはない。
【0120】
上述の実施形態では、レンズ装置が5つのレンズ群からなる場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。レンズ装置が少なくとも互いに相対的に移動可能な「物体側レンズ群」および「像面側レンズ群」、その間に固定される「固定光学群」を備えていればよく、レンズ装置が備えるレンズ群の数は限られない。また、レンズ装置は、実質的にパワーを有しないレンズ等を更に有していても良い。なお、「実質的にパワーを有しないレンズ」とは、本実施形態のズームレンズの光学性能に原理的に影響をおよぼすようなパワーを有しないレンズ等のことである。
【0121】
また、上述の実施形態では第1レンズ群G1がフォーカシングレンズ群である場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。第1レンズ群が固定群とフォーカシングレンズ群とで構成される、いわゆるフロントインナーフォーカス方式で構成されていても良い。
【0122】
また、上述の実施形態では第1レンズ群G1を光軸Z1に沿って移動させる機構は、カム溝122が設けられた第1カム機構100である場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。第1レンズ群を光軸に沿って移動させる機構は、多条ねじを有するヘリコイド式の機構であってもよい。
【0123】
また、上述の実施形態では、ズームレンズが監視用カメラに用いられる場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。ズームレンズは、ビデオカメラ、電子スチルカメラ、または放送用カメラに用いられても良い。
【0124】
また、上述の実施形態では、固定光学群としての第3レンズ群G3がアイリスI1と、1つ以上のレンズと、を有する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。固定光学群がレンズのみ、またはアイリスのみを有していてもよい。また、固定光学群が、特定の波長域の光を吸収させる光学フィルタ、または光量を減少させるNDフィルタを有していてもよい。
【0125】
また、上述の実施形態では、連結部材600が第3光学保持部300に設けられた貫通開口302を介して第2カム機構200および第4カム機構400を連結する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。連結部材は第3光学保持部に周方向に沿って設けられ外周側から切欠かれた切欠き部を介して連結してもよい。すなわち、連結部材が回動する外側が覆われていなくてもよい。