特許第6022485号(P6022485)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許60224852−カルボキサミドシクロアミノ尿素誘導体の合成
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6022485
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月9日
(54)【発明の名称】2−カルボキサミドシクロアミノ尿素誘導体の合成
(51)【国際特許分類】
   C07D 417/04 20060101AFI20161027BHJP
   C07D 213/26 20060101ALI20161027BHJP
   C07D 417/14 20060101ALI20161027BHJP
【FI】
   C07D417/04
   C07D213/26CSP
   C07D417/14
【請求項の数】11
【全頁数】33
(21)【出願番号】特願2013-555878(P2013-555878)
(86)(22)【出願日】2012年3月1日
(65)【公表番号】特表2014-511387(P2014-511387A)
(43)【公表日】2014年5月15日
(86)【国際出願番号】EP2012053559
(87)【国際公開番号】WO2012117071
(87)【国際公開日】20120907
【審査請求日】2015年2月20日
(31)【優先権主張番号】61/448,774
(32)【優先日】2011年3月3日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504389991
【氏名又は名称】ノバルティス アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】エルプ,ベルンハルト
(72)【発明者】
【氏名】ガロウ,イザベル シルヴィー
(72)【発明者】
【氏名】クレインべック,フロリアン カール
【審査官】 三木 寛
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/029082(WO,A1)
【文献】 国際公開第2004/096797(WO,A1)
【文献】 国際公開第2009/080694(WO,A1)
【文献】 国際公開第2009/080649(WO,A1)
【文献】 SARKIS.G.Y. et al,Preparation and spectral characTerization of substituted 2-aminothiazoles,Journal of chemical and engineering data,1973年,Vol.18, No.1,p.99-102
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 417/04
C07D 213/26
C07D 417/14
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(X)の化合物の製造方法であって、
【化1】
式(I)の化合物を溶媒としてのテトラヒドロフラン及び塩基としてのリチウムジイソプロピルアミドと接触させ、得られる混合物を5℃未満から15℃の内部温度で式(II)の化合物と接触させて、式(III)の化合物を生成させるステップAと、
【化2】
トルエン、アルコール溶媒、はそれらの組合せから選択される溶媒及び酸化剤としてのN−ブロモスクシンイミド又は1,3−ジブロモ−5,5−ジメチルヒダントインを含む反応混合物中で、式(III)の化合物をチオ尿素と接触させて、式(V)の化合物を生成させるステップBと、
【化3】
溶媒としてのテトラヒドロフラン及び塩基としてのアミンを含む反応混合物中で、式(V)の化合物を式(VII)の化合物と接触させて、式(VIII)の化合物を生成させるステップCと、
【化4】
テトラヒドロフラン、水又はそれらの組合せから選択される溶媒を含む反応混合物中で、式(VIII)の化合物を式(IX)の化合物と接触させて、式(X)の化合物を生成させるステップDと
【化5】
を含み、
は、場合により1回又は2回以上、重水素、ハロゲン、又はC〜Cシクロアルキルで置換されてもよい、分岐状又は直鎖状のC〜Cアルキルであり、
は、メチルであり、
は、C〜C14アリールオキシ又はヘテロアリールであり、
は、ハロゲン又はヘテロアリールであり、
Xは、ハライドである、
製造方法。
【請求項2】
式(V)の化合物の製造方法であって、
【化6】
式(I)の化合物を溶媒としてのテトラヒドロフラン及び塩基としてのリチウムジイソプロピルアミドと接触させ、得られる混合物を5℃未満から15℃の内部温度で式(II)の化合物と接触させて、式(III)の化合物を生成させるステップAと、
【化7】
トルエン、アルコール溶媒、はそれらの組合せから選択される溶媒及び酸化剤としてのN−ブロモスクシンイミド又は1,3−ジブロモ−5,5−ジメチルヒダントインを含む反応混合物中で、式(III)の化合物をチオ尿素と接触させて、式(V)の化合物を生成させるステップBと
を含み、
は、場合により1回又は2回以上、重水素、ハロゲン、又はC〜Cシクロアルキルで置換されてもよい、分岐状又は直鎖状のC〜Cアルキルであり、
は、メチルであり、
Xはハライドである、
製造方法。
【請求項3】
ステップBの溶媒が、トルエン及びエタノールを含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
ステップAの、式(I)の化合物と溶媒としてのテトラヒドロフランと塩基としてのリチウムジイソプロピルアミドとの前記得られる混合物を、15℃の内部温度で式(II)の化合物と接触させる、請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
ステップDの溶媒が、テトラヒドロフラン及び水を含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項6】
ステップCの塩基が、ピリジンである、請求項1に記載の製造方法。
【請求項7】
ステップBの溶媒がトルエン及びエタノールを含み、ステップDの溶媒がテトラヒドロフラン及び水を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項8】

【化8】
であり、Rがメチルであり、Rがフェノキシであり、Rが塩素であり、Xが臭素である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項9】
式(10)の化合物の製造方法であって、
【化9】
式(1)の化合物を溶媒としてのテトラヒドロフラン及び塩基としてのリチウムジイソプロピルアミドと接触させ、得られる混合物を5℃未満から15℃の内部温度で式(2)の化合物と接触させて、式(3)の化合物を生成させるステップAと、
【化10】
トルエン、アルコール溶媒、はそれらの組合せから選択される溶媒及び酸化剤としてのN−ブロモスクシンイミド又は1,3−ジブロモ−5,5−ジメチルヒダントインを含む反応混合物中で、式(3)の化合物をチオ尿素と接触させて、式(5)の化合物を生成させるステップBと、
【化11】
溶媒としてのテトラヒドロフラン及び塩基としてのアミンを含む反応混合物中で、式(5)の化合物を式(7)の化合物と接触させて、式(8)の化合物を生成させるステップCと、
【化12】
テトラヒドロフラン、水又はそれらの組合せから選択される溶媒を含む反応混合物中で、式(8)の化合物を式(IX)の化合物と接触させて、式(10)の化合物を生成させるステップDと
【化13】
を含む製造方法。
【請求項10】
ステップAの、式(1)の化合物と溶媒としてのテトラヒドロフランと塩基としてのリチウムジイソプロピルアミドとの前記得られる混合物を、15℃の内部温度で式(2)の化合物と接触させる、請求項9に記載の製造方法。
【請求項11】
式(1)に従う化合物。
【化14】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、2−カルボキサミドシクロアミノ尿素誘導体の製造方法、及びそのために有用な中間体を対象とする。
【0002】
背景
本発明の方法は、式(X)に従う、アルファ−選択性ホスファチジルイノシトール(PI)3−キナーゼ阻害剤化合物及びその中間体の製造に有用である。ホスファチジルイノシトール3−キナーゼ(PI3K)は、イノシトール脂質のD−3’位へのリン酸の転移を触媒して、ホスフォイノシトール−3−リン酸(PIP)、ホスフォイノシトール−3,4−二リン酸(PIP2)及びホスフォイノシトール−3,4,5−三リン酸(PIP3)を生成する脂質キナーゼファミリーを構成し、PIP、PIP2及びPIP3は、プレクストリン相同、FYVE、Phox及びその他のリン脂質結合各ドメインを含有するタンパク質を、多くの場合原形質膜において、様々なシグナル伝達複合体中にドッキングすることによって、シグナル伝達カスケードにおけるセカンドメッセンジャーとして作用する。
【0003】
PCT公開第WO2010/029082号は、PI3K阻害剤を開示する。そこで開示される化合物は、(S)−ピロリジン−1,2−ジカルボン酸2−アミド1−({4−メチル−5−[2−(2,2,2−トリフルオロ−1,1−ジメチル−エチル)−ピリジン−4−イル]−チアゾール−2−イル}−アミド)(すなわち式(10)の化合物)を含む。本発明は、式(X)の化合物、具体的には式(10)の化合物、の改良された製造方法、並びに式(I)の化合物、具体的には式(1)の化合物、などの有用な中間体も対象とする。
【0004】
【化1】
【0005】
発明の概要
本発明では、式(X)の化合物の製造方法を提供する。また、本発明では、式(X)の化合物の製造に有用である中間体化合物、並びにそれらの中間体の製造方法をも提供する。式(I)〜(X)の化合物及び式(1)〜(8)及び(10)の化合物は、本願明細書の記載において定義される化合物を指す。
【0006】
1つの態様において、本発明では、式(V)の化合物の製造方法であって、
【0007】
【化2】
式(I)の化合物を溶媒及び塩基と接触させ、得られる混合物を式(II)の化合物と接触させて、式(III)の化合物を生成させるステップ(ステップA)を含む、前記製造方法を提供する。その後、溶媒及び酸化剤を含む反応混合物中で、式(III)の化合物をチオ尿素と接触させて、式(V)の化合物を生成させる(ステップB)。
【0008】
他の態様において、本発明では、式(X)の化合物の製造方法であって、
【0009】
【化3】
溶媒及び塩基を含む反応混合物中で、式(V)の化合物を式(VII)の化合物と接触させて、式(VIII)の化合物を生成させるステップ(ステップC)を含む、前記製造方法を提供する。その後、溶媒を含む反応混合物中で、式(VIII)の化合物を式(IX)の化合物と接触させて、式(X)の化合物を生成させる(ステップD)。
【0010】
更に他の態様において、本発明では、式(X)の化合物の製造方法であって、式(I)の化合物を溶媒及び塩基と接触させ、得られる混合物を式(II)の化合物と接触させて、式(III)の化合物を生成させるステップ(ステップA)と、溶媒及び酸化剤を含む反応混合物中で、式(III)の化合物をチオ尿素と接触させて、式(V)の化合物を生成させるステップ(ステップB)と、溶媒及び塩基を含む反応混合物中で、式(V)の化合物を式(VII)の化合物と接触させて、式(VIII)の化合物を生成させるステップ(ステップC)と、溶媒を含む反応混合物中で、式(VIII)の化合物を式(IX)の化合物と接触させて、式(X)の化合物を生成させるステップ(ステップD)と、を含む、前記製造方法を提供する。
【0011】
本発明によれば、ステップAの溶媒は、芳香族溶媒、脂肪族溶媒、ハロゲン化溶媒、極性非プロトン性溶媒及びエーテル系溶媒から選択される1種又は2種以上の溶媒を含む。
【0012】
本発明によれば、ステップB、C、及びDの溶媒は、独立に、芳香族溶媒、脂肪族溶媒、ハロゲン化溶媒、エーテル系溶媒、極性非プロトン性溶媒、水及びアルコール溶媒から選択される1種又は2種以上の溶媒を含む。
【0013】
更に他の態様において、本発明では、式(10)の化合物の製造方法であって、式(1)の化合物を溶媒及び塩基と接触させ、得られる混合物を式(2)の化合物と接触させて、式(3)の化合物を生成させるステップ(ステップA)を含む、前記製造方法を提供する。その後、溶媒及び酸化剤を含む反応混合物中で、式(3)の化合物をチオ尿素と接触させて、式(5)の化合物を生成させる(ステップB)。次に、溶媒及び塩基を含む反応混合物中で、式(5)の化合物を式(7)の化合物と接触させて、式(8)の化合物を生成させる(ステップC)。最後に、溶媒を含む反応混合物中で、式(8)の化合物を式(IX)の化合物と接触させて、式(10)の化合物を生成させる(ステップD)。
【0014】
式(10)の化合物の合成の1つの実施形態において、ステップAの溶媒はテトラヒドロフランを含み、ステップAの塩基はリチウムジイソプロピルアミドであり、ステップBの溶媒はトルエン及びエタノールを含み、ステップBの酸化剤はN−ブロモスクシンイミドであり、ステップCの溶媒はテトラヒドロフランを含み、ステップCの塩基はピリジンであり、並びに、ステップDの溶媒はテトラヒドロフラン及び水を含む。
【0015】
別の態様において、本発明では、式(1)に従う化合物を提供する。
【0016】
詳細な説明
本発明では、PI3K阻害剤の製造に有用な方法及び中間体化合物を提供する。これらのプロセスは、以前より知られる方法(例えば、PCT公開第WO2010/029082号を見られたい)に対して、幾つかの点で有利である。例えば、本製造方法は、遷移金属触媒により触媒される反応を用いず、そのため、遷移金属副生成物、残渣及び不純物を除去するステップを必要としない。加えて、本製造方法は、非常に低温(例えば−78℃)で行われる反応を必要としない。
【0017】
本発明の1つの態様において、本発明では、式(V)の化合物の製造方法であって、
式(I)の化合物を溶媒及び塩基と接触させ、得られる混合物を式(II)の化合物と接触させて、式(III)の化合物を生成させるステップAと、
【0018】
【化4】
溶媒及び酸化剤[X+]を含む反応混合物中で、式(III)の化合物をチオ尿素と接触させて、式(V)の化合物を生成させるステップBと、
【0019】
【化5】
を含み、
但し、Rは、場合により1回又は2回以上、重水素、ハロゲン、又はC〜Cのシクロアルキルで置換されてもよい、環状又は非環状の、分岐状又は直鎖状のC〜Cのアルキルであり、
は、(1)水素、(2)フルオロ、クロロ、(3)場合により置換されるメチルから選択され、前記置換基が1種又は2種以上、好ましくは1種〜3種の次の部分:重水素、フルオロ、クロロ、ジメチルアミノから独立に選択され、
Xはハライド、カルボキシレート及びスルホネートからなる群から選択される、前記製造方法を提供する。
【0020】
別の態様において、本発明では、式(X)の化合物の製造方法であって、
溶媒及び塩基を含む反応混合物中で、式(V)の化合物を式(VII)の化合物と接触させて、式(VIII)の化合物を生成させるステップCと、
【0021】
【化6】
溶媒を含む反応混合物中で、式(VIII)の化合物を式(IX)の化合物と接触させて、式(X)の化合物を生成させるステップDと、
【0022】
【化7】
を含み、
但し、Rは、場合により1回又は2回以上、重水素、ハロゲン、又はC〜Cのシクロアルキルで置換されてもよい、環状又は非環状の、分岐状又は直鎖状のC〜Cのアルキルであり、
は、(1)水素、(2)フルオロ、クロロ、(3)場合により置換されるメチルから選択され、前記メチルにおいて、その置換基が1種又は2種以上、好ましくは1種〜3種の次の部分:重水素、フルオロ、クロロ、ジメチルアミノから独立に選択され、
Xはハライド、カルボキシレート及びスルホネートからなる群から選択され、
及びRは、ハロゲン、ヘテロアリール、アルコキシ及びアリールオキシからなる群から独立に選択され、
及びRのヘテロアリール、アルコキシ及びアリールオキシ部分は、場合により1回又は2回以上アルキル、アルコキシ、ハロゲン及びニトロにより独立に置換される、前記製造方法を提供する。
【0023】
更に別の態様において、本発明では、式(X)の化合物の製造方法であって、式(I)の化合物を溶媒及び塩基と接触させ、得られる混合物を式(II)の化合物と接触させて、式(III)の化合物を生成させるステップAと、溶媒及び酸化剤を含む反応混合物中で、式(III)の化合物をチオ尿素と接触させて、式(V)の化合物を生成させるステップBと、溶媒及び塩基を含む反応混合物中で、式(V)の化合物を式(VII)の化合物と接触させて、式(VIII)の化合物を生成させるステップCと、溶媒を含む反応混合物中で、式(VIII)の化合物を式(IX)の化合物と接触させて、式(X)の化合物を生成させるステップDと、を含み、但し、R、R、R、R及びXは、上記において定義されるとおりである、前記製造方法を提供する。
【0024】
本発明によれば、ステップAの溶媒は、芳香族溶媒、脂肪族溶媒、ハロゲン化溶媒、極性非プロトン性溶媒及びエーテル系溶媒から選択される1種又は2種以上の溶媒を含む。当業者には、これらの溶媒の多数の例が知られている。芳香族溶媒の限定されない例としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、ニトロベンゼン、アニソール、エチルベンゼン、及びピリジンが挙げられる。脂肪族溶媒の限定されない例としては、石油エーテル、リグロイン、n−ヘキサン、シクロヘキサン及びへプタンが挙げられる。ハロゲン化溶媒の限定されない例としては、クロロホルム、クロロベンゼン及びパーフルオロヘキサンが挙げられる。極性非プロトン性溶媒の限定されない例としては、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、及びN−メチルピロリドンが挙げられる。エーテル系溶媒の限定されない例としては、ジエチルエーテル、メチル第3級ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、及びジメトキシエタンが挙げられる。ある実施形態においては、ステップAの溶媒は、非プロトン性有機溶媒である。好ましい実施形態において、ステップAの溶媒はテトラヒドロフランを含む。
【0025】
本発明によれば、ステップB、C、及びDの溶媒は、独立に、芳香族溶媒、脂肪族溶媒、ハロゲン化溶媒、エーテル系溶媒、極性非プロトン性溶媒、水及びアルコール溶媒から選択される1種又は2種以上の溶媒を含む。アルコール溶媒の限定されない例としては、エタノール、第3級ブタノール及びエチレングリコールが挙げられる。他のアルコール溶媒は当業者に知られている。ある実施形態において、ステップBの溶媒は、芳香族溶媒及びアルコール溶媒を含む。好ましい実施形態において、ステップBの溶媒はトルエン及びエタノールを含む。ある実施形態において、ステップCの溶媒は、エーテル系溶媒を含む。好ましい実施形態において、ステップCの溶媒は、テトラヒドロフランを含む。ある実施形態において、ステップDの溶媒は、エーテル系溶媒及び水を含む。好ましい実施形態において、ステップDの溶媒は、テトラヒドロフラン及び水を含む。
【0026】
本発明によれば、ステップAの塩基は、強塩基である。強塩基としては、炭化水素、アンモニア、アミン及び分子状水素の共役塩基が挙げられる。強塩基の限定されない例としては、n−ブチルリチウム、n−ヘキシルリチウム、水素化ナトリウム及びリチウムジイソプロピルアミドが挙げられる。その他の強塩基は当業者に知られている。ある実施形態において、ステップAの塩基はリチウムジイソプロピルアミドである。リチウムジイソプロピルアミドの調製方法は当業者に知られている(例えば、Smith, A. P.; Lamba, J. J. S.; Fraser, C. L., Org. Syn. Col. Vol. 10: 107, (2004)を見られたい)。1つの実施形態において、リチウムジイソプロピルアミドは、イソプロピルアミンの、n−ブチルリチウム、n−ヘキシルリチウム又はn−オクチルリチウムなどのアルキルリチウム塩基による脱プロトン化反応によって調製される。リチウムジイソプロピルアミドの調製に用いる試薬の選択には、安全性及び経済的な考慮が影響し得る(例えば、Chapter 3: Reagent Selection, in "Practical Process Research and Development", Academic Press, 2000を見られたい)。1つの実施形態において、リチウムジイソプロピルアミドは、ジイソプロピルアミンのn−ヘキシルリチウムによる脱プロトン化反応によって調製される。当業者であれば、THF等の然るべき溶媒中にリチウムジイソプロピルアミドを溶解した溶液は、0℃以下に維持されるべきものであることを理解されよう。
【0027】
上記方法の1つの実施形態において、ステップCの塩基はアミンである。限定されないアミン塩基の例としては、第3級ブチルアミン、ピペリジン、トリエチルアミン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン及びピリジンが挙げられる。その他のアミン塩基は当業者に知られている。ある実施形態において、ステップCの塩基はピリジンである。
【0028】
本発明によれば、ステップBの酸化剤は親電子ハロゲン試薬である。多数の親電子ハロゲン試薬が当業者に知られているが、これらとしては、分子状臭素、分子状ヨウ素、分子状塩素、塩化スルフリル、N−ブロモスクシンイミド、N−ヨードスクシンイミド、N−クロロスクシンイミド及び1,3−ジブロモ−5,5−ジメチルヒダントインが挙げられる。ある実施形態において、ステップBの酸化剤はN−ブロモスクシンイミドである。
【0029】
本発明の1つの実施形態において、ステップBの酸化剤はN−ブロモスクシンイミドであり、それに続く混合物を貧溶媒試剤で希釈する。好ましい実施形態において、貧溶媒は酢酸イソプロピルである。
【0030】
本発明によれば、Xは、ハライド、カルボキシレート、及びスルホネートからなる群から選択される。ある実施形態において、Xはハライドである。好ましい実施形態において、Xは臭素である。
【0031】
上記方法の好ましい実施形態において、ステップAの溶媒はテトラヒドロフランを含み、ステップAの塩基はリチウムジイソプロピルアミドであり、ステップBの溶媒はトルエン及びエタノールを含み、ステップBの酸化剤はN−ブロモスクシンイミドであり、ステップCの溶媒はテトラヒドロフランを含み、ステップCの塩基はピリジンであり、並びに、ステップDの溶媒はテトラヒドロフラン及び水を含む。
【0032】
上記方法の様々な実施形態において、Rは、その全てが場合により1回又は2回以上、重水素、ハロゲン、又はC〜Cのシクロアルキルで置換されてもよい、環状又は非環状の、分岐状又は直鎖状のC〜Cのアルキルである。その他の実施形態において、Rは、場合により1回又は2回以上ハロゲンで置換される、分岐状又は直鎖状のC〜Cのアルキルである。好ましい実施形態において、R
【0033】
【化8】
である。
【0034】
上記方法の様々な実施形態において、Rは、(1)水素、(2)フルオロ、クロロ、(3)場合により置換されるメチルを表し、前記メチルにおいて、その置換基が1種又は2種以上、好ましくは1種〜3種の次の部分:重水素、フルオロ、クロロ、ジメチルアミノから独立に選択される。ある実施形態において、Rは、水素、環状又は非環状の、分岐状又は直鎖状のC〜Cのアルキル、及びハロゲンから選択され、前記アルキルは、場合により1回又は2回以上、重水素、フッ素、塩素及びジメチルアミノで置換される。その他の実施形態において、Rは、分岐状又は直鎖状のC〜Cのアルキルである。好ましい実施形態において、Rはメチルである。
【0035】
様々な実施形態において、R及びRは、ハロゲン、ヘテロアリール、アルコキシ及びアリールオキシからなる群から独立に選択され、R及びRのヘテロアリール、アルコキシ及びアリールオキシ部分は、場合により1回又は2回以上アルキル、アルコキシ、ハロゲン及びニトロにより独立に置換される。ある実施形態において、Rはアリールオキシであり、Rは共にヘテロアリールである。その他の実施形態において、Rはアリールオキシであり、Rはハロゲンである。好ましい実施形態において、Rはフェノキシであり、Rは塩素である。
【0036】
上記の製造方法の好ましい実施形態において、R
【0037】
【化9】
であり、Rはメチルであり、Rはフェノキシであり、Rは塩素であり、Xは臭素である。
【0038】
本発明の1つの実施形態において、式(I)の化合物を、最初に塩基及び溶媒を含む反応混合物中で式(II)の化合物と接触させ、次に、水性の酸又は塩基を含む反応混合物と、場合により接触させ、その結果、水相のpHを2<pH<4の範囲内、好ましくはpH3とする。好ましくは、塩基はリチウムジイソプロピルアミドであり、最初の溶媒はTHFであり、反応混合物を、内部温度が−5℃未満、好ましくは−15℃に留まるように維持する。好ましくは、硫酸、水及びトルエンを含む反応混合物により、水相のpHをpH3に調節する。
【0039】
本発明の1つの実施形態において、式(VIII)の化合物を、最初の溶媒を含む反応混合物中で、式(IX)の化合物と接触させて、式(X)の化合物を生成させる。その後、芳香族溶媒を混合物に添加し、次に蒸留により最初の溶媒を除去し、その結果式(X)の化合物が沈殿する。芳香族溶媒は、好ましくはトルエンである。
【0040】
本発明の別の態様において、本発明では、式(10)の化合物の製造方法であって、
式(1)の化合物を溶媒及び塩基と接触させ、得られる混合物を式(2)の化合物と接触させ、そのようにして式(3)の化合物を生成させるステップAと、
【0041】
【化10】
溶媒及び酸化剤[Br+]を含む反応混合物中で、式(3)の化合物をチオ尿素と接触させ、そのようにして式(5)の化合物を生成させるステップBと、
【0042】
【化11】
溶媒及び塩基を含む反応混合物中で、式(5)の化合物を式(7)の化合物と接触させ、そのようにして式(8)の化合物を生成させるステップCと、
【0043】
【化12】
溶媒を含む反応混合物中で、式(8)の化合物を式(IX)の化合物と接触させ、そのようにして式(10)の化合物を生成させるステップDと、
【0044】
【化13】
を含む、前記製造方法を提供する。本発明のこの態様によれば、ステップAの溶媒は、芳香族溶媒、脂肪族溶媒、ハロゲン化溶媒、極性非プロトン性溶媒及びエーテル系溶媒から選択される1種又は2種以上の溶媒を含む。当業者には、これらの溶媒の多数の例が知られている。芳香族溶媒の限定されない例としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、ニトロベンゼン、アニソール、エチルベンゼン、及びピリジンが挙げられる。脂肪族溶媒の限定されない例としては、石油エーテル、リグロイン、n−ヘキサン、シクロヘキサン及びへプタンが挙げられる。ハロゲン化溶媒の限定されない例としては、クロロホルム、クロロベンゼン及びパーフルオロヘキサンが挙げられる。極性非プロトン性溶媒の限定されない例としては、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、及びN−メチルピロリドンが挙げられる。エーテル系溶媒の限定されない例としては、ジエチルエーテル、メチル第3級ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、及びジメトキシエタンが挙げられる。ある実施形態において、ステップAの溶媒は、非プロトン性有機溶媒である。好ましい実施形態において、ステップAの溶媒はテトラヒドロフランを含む。
【0045】
本発明のこの態様によれば、ステップB、C、及びDの溶媒は、独立に、芳香族溶媒、脂肪族溶媒、ハロゲン化溶媒、エーテル系溶媒、極性非プロトン性溶媒、水及びアルコール溶媒から選択される1種又は2種以上の溶媒を含む。アルコール溶媒の限定されない例としては、エタノール、第3級ブタノール及びエチレングリコールが挙げられる。他のアルコール溶媒は当業者に知られている。ある実施形態において、ステップBの溶媒は、芳香族溶媒及びアルコール溶媒を含む。好ましい実施形態において、ステップBの溶媒はトルエン及びエタノールを含む。ある実施形態において、ステップCの溶媒は、エーテル系溶媒を含む。好ましい実施形態において、ステップCの溶媒は、テトラヒドロフランを含む。ある実施形態において、ステップDの溶媒は、エーテル系溶媒及び水を含む。好ましい実施形態において、ステップDの溶媒は、テトラヒドロフラン及び水を含む。
【0046】
本発明のこの態様によれば、ステップAの塩基は強塩基である。強塩基としては、炭化水素、アンモニア、アミン及び分子状水素の共役塩基が挙げられる。強塩基の限定されない例としては、n−ブチルリチウム、n−ヘキシルリチウム、水素化ナトリウム及びリチウムジイソプロピルアミドが挙げられる。その他の強塩基は当業者に知られている。ある実施形態において、ステップAの塩基はリチウムジイソプロピルアミドである。リチウムジイソプロピルアミドの調製方法は当業者に知られている(例えば、Smith, A. P.; Lamba, J. J. S.; Fraser, C. L., Org. Syn. Col. Vol. 10: 107, (2004)を見られたい)。1つの実施形態において、リチウムジイソプロピルアミドは、イソプロピルアミンの、n−ブチルリチウム、n−ヘキシルリチウム又はn−オクチルリチウムなどのアルキルリチウム塩基による脱プロトン化反応によって調製される。リチウムジイソプロピルアミドの調製に用いる試薬の選択には、安全性及び経済的な考慮が影響し得る(例えば、Chapter 3: Reagent Selection, in "Practical Process Research and Development", Academic Press, 2000を見られたい)。1つの実施形態において、リチウムジイソプロピルアミドは、ジイソプロピルアミンのn−ヘキシルリチウムによる脱プロトン化反応によって調製される。当業者であれば、THF等の然るべき溶媒中にリチウムジイソプロピルアミド溶解した溶液は、0℃以下に維持されるべきものであることを理解されよう。
【0047】
本発明の上記の製造方法の更なる実施形態において、ステップCの塩基はアミンである。限定されないアミン塩基の例としては、第3級ブチルアミン、ピペリジン、トリエチルアミン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン及びピリジンが挙げられる。その他のアミン塩基は当業者に知られている。ある実施形態において、ステップCの塩基はピリジンである。
【0048】
本発明の上記の製造方法の1つの実施形態において、ステップBの酸化剤が親電子ハロゲン試薬である。多数の親電子ハロゲン試薬が当業者に知られているが、これらとしては、分子状臭素、分子状ヨウ素、分子状塩素、塩化スルフリル、N−ブロモスクシンイミド、N−ヨードスクシンイミド、N−クロロスクシンイミド及び1,3−ジブロモ−5,5−ジメチルヒダントインが挙げられる。ある実施形態において、ステップBの酸化剤はN−ブロモスクシンイミドである。
【0049】
本発明の1つの実施形態において、ステップBの酸化剤はN−ブロモスクシンイミドであり、それに続く混合物を貧溶媒試剤で希釈する。好ましい実施形態において、貧溶媒は酢酸イソプロピルである。
【0050】
式(10)の化合物の合成の好ましい実施形態において、ステップAの溶媒はテトラヒドロフランを含み、ステップAの塩基はリチウムジイソプロピルアミドであり、ステップBの溶媒がトルエン及びエタノールを含み、ステップBの酸化剤がN−ブロモスクシンイミドであり、ステップCの溶媒はテトラヒドロフランを含み、ステップCの塩基はピリジンであり、並びに、ステップDの溶媒はテトラヒドロフラン及び水を含む。
【0051】
本発明の1つの実施形態において、式(1)の化合物を、最初に塩基及び溶媒を含む反応混合物中で式(2)の化合物と接触させ、次に、水性の酸又は塩基を含む反応混合物と、場合により接触させ、その結果、水相のpHを2<pH<4の範囲内、好ましくはpH3とする。好ましくは、塩基はリチウムジイソプロピルアミドであり、最初の溶媒はTHFであり、内部温度が−5℃未満、好ましくは−15℃に留まるように、反応混合物を維持する。好ましくは、硫酸、水及びトルエンを含む反応混合物により、水相のpHをpH3に調節する。
【0052】
本発明の1つの実施形態において、式(5)の化合物を、溶媒のTHF及び塩基のピリジンを含む反応混合物中で式(7)の化合物と接触させ、その後、飽和塩類溶液又は水性の塩(好ましくは塩化ナトリウム)溶液の添加により、塩基のピリジンを除去する。本発明の1つの実施形態において、最初の溶媒を含む反応混合物中で、式(8)の化合物を式(IX)の化合物と接触させて、式(10)の化合物を生成させる。その後、この混合物に芳香族溶媒を添加し、次に蒸留により最初の溶媒を除去し、その結果、式(10)の化合物が沈殿する。芳香族溶媒は、好ましくはトルエンである。
【0053】
本発明の別の態様において、本発明では、式(1)に従う化合物を提供する。
【0054】
【化14】
式(1)の化合物は、特に式(10)の化合物の製造における出発物質又は中間体として、並びに式(10)の化合物の化学的な類似物としても有用である。式(1)の化合物は、本明細書中のスキーム4又はスキーム5に述べる製造方法に従って合成することができる。
【0055】
当業者は、望ましい成果を得るために、上述の製造方法の幾つかのパラメータを有利になるように変更し得ることを認識されよう。これらのパラメータとしては、例えば、反応成分及び溶媒の精製方法又は手段、反応混合物に対する前記反応成分及び溶媒の添加順序、前記反応成分及び溶媒の反応時間、並びに、前記反応の間の反応成分及び溶媒の温度及び撹拌、混合又はかきまぜ速度などが挙げられる。
【0056】
定義
本明細書で使用する場合、用語「低級」又は「C〜C」は、7を含む最大7まで、特には4を含む最大4までの炭素原子を有する基を意味し、当該基は直鎖状、又は単一若しくは複数の分枝を有する分岐状のいずれであってもよい。
【0057】
本明細書で使用する場合、用語「アルキル」は、直鎖状又は分岐状のアルキル基を指し、好ましくはC1〜12の直鎖状又は分岐状のアルキルを表し、特に好ましくはC1〜7の直鎖状又は分岐状のアルキル、例えば、メチル、エチル、n−又はiso−プロピル、n−、iso−、sec−又はtert−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル、n−ウンデシル、n−ドデシルを表し、メチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル並びにn−ブチル及びiso−ブチルが特に好ましい。アルキルは無置換であっても、又は置換されていてもよい。代表的な置換基としては、それらに限定されるものではないが、重水素、ヒドロキシ、アルコキシ、ハロ及びアミノが挙げられる。置換されたアルキルの例はトリフルオロメチルである。シクロアルキルもまたアルキルに対する置換基となり得る。そのような場合の例としては、(アルキル)−シクロプロピル部分又はアルカンジイル−シクロプロピル部分、例えば−CH−シクロプロピル部分である。C〜C−アルキルは、好ましくは1を含む1から7を含む7までの、好ましくは1を含む1から4を含む4までの、そして直鎖状又は分岐状のアルキルであり、好ましくは、低級アルキルは、n−ブチル、sec−ブチル、iso−ブチル、tert−ブチルなどのブチル、n−プロピル若しくはiso−プロピルであるプロピル、エチル又は好ましくはメチルである。
【0058】
「アルコキシ」、「アルコキシアルキル」、「アルコキシカルボニル」、「アルコキシカルボニルアルキル」、「アルキルスルホニル」、「アルキルスルホキシル」、「アルキルアミノ」、「ハロアルキル」などのその他の基のそれぞれのアルキル部分は、上述の「アルキル」の定義において述べたものと同様の意味を有する。
【0059】
本明細書で使用する場合、用語「アルカンジイル」は、部分に対して2つの異なる炭素原子によって結合された直鎖状又は分岐状のアルカンジイルを指し、好ましくは直鎖状又は分岐状のC1〜12のアルカンジイルを表し、特に好ましくは直鎖状又は分岐状のC1〜6のアルカンジイル、例えば、メタンジイル(−CH−)、1,2−エタンジイル(−CH−CH−)、1,1−エタンジイル((−CH(CH)−)、1,1−、1,2−、1,3−プロパンジイル及び1,1−、1,2−、1,3−、1,4−ブタンジイルを表し、メタンジイル、1,1−エタンジイル、1,2−エタンジイル、1,3−プロパンジイル、1,4−ブタンジイルが特に好ましい。
【0060】
本明細書で使用する場合、用語「シクロアルキル」は、飽和又は一部飽和の、単環式、縮合多環式、又はスピロ多環式であり、1つの炭素環当たり3〜12の環原子を有する炭素環を指す。シクロアルキル基の説明のための例としては、次の部分、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル及びシクロヘキシルが挙げられる。シクロアルキルは無置換であっても、又は置換されていてもよく、代表的な置換基としては、アルキルに対する定義において提示したものであり、アルキル自体(例えばメチル)も含む。−(CH)シクロプロピルのような部分は、置換されたシクロアルキルと見なされる。
【0061】
本明細書で使用する場合、用語「アリール」は、6又はそれを超える炭素原子を有する芳香族単素環系(すなわち、環形成原子が炭素のみ)を指し、アリールは好ましくは6〜14の環炭素原子を有する、より好ましくは、フェニル又はナフチル、好ましくはフェニルなどの6〜10の環炭素原子を有する芳香族部分である。アリールは、無置換であるか、又は、1若しくは2以上、好ましくは3まで、より好ましくは2個までの置換基によって置換されていてもよく、その置換基は、以下に述べるような無置換又は置換ヘテロシクリル、特にピロリジノなどのピロリジニル、オキソピロリジノなどのオキソピロリジニル、C〜C−アルキル−ピロリジニル、2,5−ジ−(C〜Cアルキル)ピロリジノなどの2,5−ジ−(C〜Cアルキル)ピロリジニル、テトラヒドロフラニル、チオフェニル、C〜C−アルキルピラゾリジニル、ピリジニル、C〜C−アルキルピペリジニル、ピペリジノ、アミノ又はN−モノ−若しくはN,N−ジ−[低級アルキル、フェニル、C〜C−アルカノイル及び/又はフェニル−低級アルキル)−アミノにより置換されたピペリジノ、環炭素原子を介して結合された無置換又はN−低級アルキル置換ピペリジニル、ピペラジノ、低級アルキルピペラジノ、モルホリノ、チオモルホリノ、S−オキソ−チオモルホリノ又はS,S−ジオキソチオモルホリノ;C〜C−アルキル、アミノ−C〜C−アルキル、N−C〜C−アルカノイルアミノ−C〜C−アルキル、N−C〜C−アルカンスルホニル−アミノ−C〜C−アルキル、カルバモイル−C〜C−アルキル、[N−モノ−又はN,N−ジ−(C〜C−アルキル)−カルバモイル]−C〜C−アルキル、C〜C−アルカンスルフィニル−C〜C−アルキル、C〜C−アルカンスルホニル−C〜C−アルキル、フェニル、ナフチル、モノ−〜トリ−[C〜C−アルキル、ハロ及び/若しくはシアノ]−フェニル又はモノ−〜トリ−[C〜C−アルキル、ハロ及び/若しくはシアノ]−ナフチル;C〜C−シクロアルキル、モノ−〜トリ−[C〜C−アルキル及び/若しくはヒドロキシ]−C〜C−シクロアルキル;ハロ、ヒドロキシ、低級アルコキシ、低級アルコキシ−低級アルコキシ、(低級アルコキシ)−低級アルコキシ−低級アルコキシ、ハロ−C〜C−アルコキシ、フェノキシ、ナフチルオキシ、フェニル−又はナフチル−低級アルコキシ;アミノ−C〜C−アルコキシ、低級アルカノイルオキシ、ベンゾイルオキシ、ナフトイルオキシ、ホルミル(CHO)、アミノ、N−モノ−又はN,N−ジ−(C〜C−アルキル)−アミノ、C〜C−アルカノイルアミノ、C〜C−アルカンスルホニルアミノ、カルボキシ、例えば、ベンジルオキシカルボニルなどのフェニル−又はナフチル−低級アルコキシカルボニルのような低級アルコキシカルボニル;アセチルなどのC〜C−アルカノイル、ベンゾイル、ナフトイル、カルバモイル、置換基が低級アルキル、(低級アルコキシ)−低級アルキル及びヒドロキシ−低級アルキルから選択されるN−モノ−又はN,N−ジ−置換カルバモイルなどのN−モノ−又はN,N−ジ−置換カルバモイル、;アミジノ、グアニジノ、ウレイド、メルカプト、低級アルキルチオ、フェニル−又はナフチルチオ、フェニル−又はナフチル−低級アルキルチオ、低級アルキル−フェニルチオ、低級アルキル−ナフチルチオ、ハロ−低級アルキルメルカプト、スルホ(−SOH)、低級アルカンスルホニル、フェニル−又はナフチル−スルホニル、フェニル−又はナフチル−低級アルキルスルホニル、アルキルフェニルスルホニル、トリフルオロメタンスルホニルなどのハロ−低級アルキルスルホニル;スルホンアミド、ベンゾスルホンアミド、アジド、特にアジドメチルであるアジド−C〜C−アルキル、C〜C−アルカンスルホニル、スルファモイル、N−モノ−又はN,N−ジ−(C〜C−アルキル)−スルファモイル、モルホリノスルホニル、チオモルホリノスルホニル、シアノ及びニトロからなる群より独立に選択され、ここで、置換基又は置換されたアルキル(若しくは本明細書に挙げた、置換されたアリール、ヘテロシクリル等の)の置換基の一部として上記されたそれぞれのフェニル又はナフチル(フェノキシ又はナフトキシ中のものも含む)は、それ自体は、無置換であるか、又は1若しくは2以上、例えば3まで、好ましくは1若しくは2個の、ハロ、ハロ−低級アルキル、例えばトリフルオロメチル、ヒドロキシ、低級アルコキシ、アジド、アミノ、N−モノ−又はN,N−ジ−(低級アルキル及び/又はC〜C−アルカノイル)−アミノ、ニトロ、カルボキシ、低級アルコキシカルボニル、カルバモイル、シアノ及び/又はスルファモイルから独立して選択される置換基により置換される。
【0062】
用語「アリールオキシ」は、上記に定義したアリール基により置換された酸素原子を含む部分を指す。
【0063】
本明細書で使用する場合、用語「ヘテロアリール」は、少なくとも1つの環が芳香族であり、且つ、1〜4の、O、N及びSからなる群から選択されるヘテロ原子を含有し、各環が7原子までの単環式又は2環式の安定な環を表す。この定義の範囲内のヘテロアリール基としては、それらに限定されるものではないが、アクリジニル、カルバゾリル、シンノリニル、キノキサリニル、ピラゾリル、インドリル、ベンゾトリアゾリル、フラニル、チエニル、ベンゾチエニル、ベンゾフラニル、キノリニル、イソキノリニル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、インドリル、ピラジニル、ピリダジニル、ピリジニル、ピリミジニル、ピロリル、テトラヒドロキノリンが挙げられる。下記のヘテロ環状の定義によるのと同様に、「ヘテロアリール」もまた、窒素含有ヘテロアリールのN−オキシド誘導体を包含することが理解される。ヘテロアリール置換基が2環であり、1つの環が非芳香族である又はヘテロ原子を含まない場合は、接続はそれぞれ、芳香族環を介する、又はヘテロ原子含有環を介することが理解される。
【0064】
本明細書で使用する場合、用語「ヘテロ環」又は「ヘテロシクリル」は、不飽和(=環(複数可)中に、出来る限り多数の共役二重結合をもつ)、飽和又は一部飽和であり、好ましくは単環式、又は、より広い発明の態様においては2環式、3環式若しくはスピロ環式の環であり、3〜24、より好ましくは4〜16、最も好ましくは5〜10、そして最も好ましくは5又は6の環原子を有し、ここで、1又は2以上、好ましくは1〜4、特には1又は2の環原子がヘテロ原子である(それ故、残余の環原子は炭素である)ヘテロ環状基を指す。結合環(すなわち分子に繋がる環)は、好ましくは4〜12、特には5〜7の環原子を有する。用語ヘテロシクリルはまたヘテロアリールをも含む。ヘテロ環状基(ヘテロシクリル)は無置換であっても、1又は2以上、特には1〜3の、上記で置換アルキルについて定義した置換基からなる群から、及び/又は以下の置換基:オキソ(=O)、チオカルボニル(=S)、イミノ(=NH)、イミノ−低級アルキルの1又は2以上から、独立に選択される置換基で置換されていてもよい。更に、ヘテロシクリルは、特にオキシラニル、アジリニル、アジリジニル、1,2−オキサチオラニル、チエニル(=チオフェニル)、フラニル、テトラヒドロフリル、ピラニル、チオピラニル、チアントレニル、イソベンゾフラニル、ベンゾフラニル、クロメニル、2H−ピロリル、ピロリル、ピロリニル、ピロリジニル、イミダゾリル、イミダゾリジニル、ベンゾイミダゾリル、ピラゾリル、ピラジニル、ピラゾリジニル、チアゾリル、イソチアゾリル、ジチアゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、ピリダジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、(S−オキソ又はS,S−ジオキソ)−チオモルホリニル、インドリジニル、アゼパニル、ジアゼパニル、特に1,4−ジアゼパニル、イソインドリル、3H−インドリル、インドリル、ベンゾイミダゾリル、クマリル、インダゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、プリニル、4H−キノリジニル、イソキノリル、キノリル、テトラヒドロキノリル、テトラヒドロイソキノリル、デカヒドロキノリル、オクタヒドロイソキノリル、ベンゾフラニル、ジベンゾフラニル、ベンゾチオフェニル、ジベンゾチオフェニル、フタラジニル、ナフチリジニル、キノキサリル、キナゾリニル、キナゾリニル、シンノリニル、プテリジニル、カルバゾリル、ベータ−カルボリニル、フェナントリジニル、アクリジニル、ペリミジニル、フェナントロリニル、フラザニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサジニル、クロメニル、イソクロマニル、クロマニル、ベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イル及び2,3−ジヒドロ−ベンゾ[1,4]ジオキシン−6−イルからなる群から選択されるヘテロ環状基であり、これらの基の各々は、無置換であるか、又は、上記で置換アリールについて述べた置換基からなる群から、及び/又は以下の置換基:オキソ(=O)、チオカルボニル(=S)、イミノ(=NH)、イミノ−低級アルキルの1又は2以上から選択される、1又は2以上、好ましくは3までの置換基で置換されていてもよい。
【0065】
用語「ヘテロ原子」は、炭素及び水素以外の原子であり、好ましくは窒素(N)、酸素(O)又はイオウ(S)、特には窒素である。
【0066】
更に、上記のアルキル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ及びヘテロアリール基は、「無置換」でも、又は「置換された」ものでもよい。用語「置換された」は、例えばC、O又はNである、分子の1又は2以上の原子上の水素を置き換える置換基を有する部分を言い表すことを意図している。そのような置換基としては、独立に、例えば、以下の1種又は2種以上が挙げられる:直鎖状又は分岐状のアルキル(好ましくはC〜C)、シクロアルキル(好ましくはC〜C)、アルコキシ(好ましくはC〜C)、チオアルキル(好ましくはC〜C)、アルケニル(好ましくはC〜C)、アルキニル(好ましくはC〜C)、ヘテロ環状、炭素環状、アリール(例えばフェニル)、アリールオキシ(例えばフェノキシ)、アラルキル(例えばベンジル)、アリールオキシアルキル(例えばフェニロキシアルキル)、アリールアセトアミドイル、アルキルアリール、ヘテロアラルキル、アルキルカルボニル及びアリールカルボニル若しくはその他のそのようなアシル基、ヘテロアリールカルボニル、若しくはヘテロアリール基、(CR’R’’)0〜3NR’R’’(例えば−NH)、(CR’R’’)0〜3CN(例えば−CN)、−NO、ハロゲン(例えば−F、−Cl、−Br、又は−I)、(CR’R’’)0〜3C(ハロゲン)(例えば−CF)、(CR’R’’)0〜3CH(ハロゲン)、(CR’R’’)0〜3CH(ハロゲン)、(CR’R’’)0〜3CONR’R’’、(CR’R’’)0〜3(CNH)NR’R’’、(CR’R’’)0〜3S(O)1〜2NR’R’’、(CR’R’’)0〜3CHO、(CR’R’’)0〜3O(CR’R’’)0〜3H、(CR’R’’)0〜3S(O)0〜3R’(例えば−SOH、−OSOH)、(CR’R’’)0〜3O(CR’R’’)0〜3H(例えば−CHOCH及び−OCH)、(CR’R’’)0〜3S(CR’R’’)0〜3H(例えば−SH及び−SCH)、(CR’R’’)0〜3OH(例えば−OH)、(CR’R’’)0〜3COR’、(CR’R’’)0〜3(置換又は無置換フェニル)、(CR’R’’)0〜3(C〜Cシクロアルキル)、(CR’R’’)0〜3COR’(例えば−COH)、若しくは(CR’R’’)0〜3OR’基、又は任意の天然アミノ酸の側鎖であり、ここで、R’及びR’’はそれぞれ独立に、水素、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、C〜Cアルキニル、又はアリール基である。
【0067】
本明細書で使用する場合、用語「ハロゲン」又は「ハロ」は、フッ素、臭素、塩素又はヨウ素を指し、特にフッ素、塩素である。ハロゲンにより置換されたアルキル(ハロアルキル)などのハロゲン置換された基及び部分は、モノハロゲン化、ポリハロゲン化又は全ハロゲン化することができる。
【0068】
本明細書で使用する場合、用語「アミン」又は「アミノ」は、本技術分野において一般的に理解されるように、分子、又は部分若しくは官能基の両方に対して広く適用されるものと理解されるべきであり、第一級、第二級、又は第三級であり得る。用語「アミン」又は「アミノ」は、窒素原子が少なくとも1の炭素、水素又はヘテロ原子に共有結合している化合物を包含する。当該用語は、例えば、それらに限定されるものではないが、「アルキルアミノ」、「アリールアミノ」、「ジアリールアミノ」、「アルキルアリールアミノ」、「アルキルアミノアリール」、「アリールアミノアルキル」、「アルカミノアルキル」、「アミド(amide)」、「アミド(amido)」、及び「アミノカルボニル」を包含する。用語「アルキルアミノ」は、窒素が少なくとも1の追加的なアルキル基に結合している基及び化合物を含む。用語「ジアルキルアミノ」は、窒素原子が少なくとも2の追加的なアルキル基に結合している基を包含する。用語「アリールアミノ」及び「ジアリールアミノ」は、窒素が少なくとも1又は2のアリール基にそれぞれ結合している基を包含する。用語「アルキルアリールアミノ」、「アルキルアミノアリール」又は「アリールアミノアルキル」は、少なくとも1のアルキル基及び少なくとも1のアリール基に結合しているアミノ基を指す。用語「アルカミノアルキル」は、窒素原子に結合しているアルキル、アルケニル、又はアルキニル基であって、その窒素原子がまたアルキル基に結合しているものを指す。
【実施例】
【0069】
略語
次の略語は図及び文章中で用いられる。THF(テトラヒドロフラン)、RT(室温)、iPrNH(ジイソプロピルアミン)、iPrNLi(リチウムジイソプロピルアミド)、LDA(リチウムジイソプロピルアミド)、HSO(硫酸)、HO(水)、IPA(酢酸イソプロピル)、NaCl(塩化ナトリウム)、MsCl(メタンスルホン酸クロリド)、NaH(水素化ナトリウム)、n−BuLi(n−ブチルリチウム)、SF(四フッ化イオウ)、HCl(塩酸)、HF(フッ化水素酸)。
【0070】
合成
【0071】
【化15】
−15℃の、n−ヘキシルリチウム及びジイソプロピルアミンから新たに調製したばかりのリチウムジイソプロピルアミド1.5当量のTHF溶液に対して、1.0当量の構成要素(1)のTHF溶液を、30分かけて添加した。その後、得られた深褐赤色の溶液を、−15℃にて30分間撹拌した。続いて、1.15当量のワインレブアミド(2)のTHF溶液を30分かけて添加し、−15℃にて1時間反応物を撹拌した後、10℃の、1.5モル濃度の硫酸水溶液及びトルエンの混合物上に移した。2相混合物を室温にて25分間、激しく撹拌した。水相が2<pH<4、好ましくはpH3に維持されるように注意を払った。相を分離した後、有機層を水洗し、その後50℃にて減圧下に、元の容量の約15〜20%まで濃縮して、粗ケトン(3)のトルエン溶液を得た。
【0072】
【化16】
1.0当量の粗(3)のトルエン溶液を室温の無水エタノールで希釈し、その後、1.10当量のチオ尿素を添加した。黄色の懸濁液を40℃に加熱し、概ね1.01当量の固体のN−ブロモスクシンイミドを数回に分けて30分かけて添加した。全てを添加した後、得られた赤色の透明な溶液を40℃にて1時間撹拌した。反応混合物を酢酸イソプロピル(IPA)にて希釈し、微細な黄橙色懸濁液を1.5時間かけて0℃まで冷却した。焼結ガラスフィルタ上でろ過し、続いて洗浄して、湿った反応生成物(5)を得て、それを最終的に50℃にて減圧下に乾燥した。
【0073】
【化17】
室温の、黄色の、1.0当量の化合物(5)のTHF懸濁液に対して、2.0当量のピリジンを添加した。反応混合物を40℃に加熱し、その後1.0当量のクロロギ酸フェニル(7)のTHF溶液を30分かけて添加した。40℃にて1時間撹拌した後、反応物を室温まで冷却し、その後飽和NaCl水溶液を添加し、2相混合物を室温にて10分間撹拌し、相を分離した。有機層を60℃に加熱し、その後1.0当量のL−プロリンアミド(IX)水溶液を30分かけて添加した。反応物を60℃にて2時間撹拌し、その後反応混合物を50℃まで冷却し、その後トルエンを添加し、続いて減圧下での蒸留を通じてTHFを除去した。得られた懸濁液を水で処理し、反応混合物を50℃にて30分間撹拌し、その後2時間かけて10℃まで冷却した。10℃にて更に30分間撹拌下後、オフホワイトの懸濁液をろ過し、ろ過ケーキをトルエンで洗浄し、その後50℃にて減圧下に乾燥して(10)を得た。
【0074】
【化18】
4−メチル−2−(2,2,2−トリフルオロ−1−メチル−1−トリメチルシラニルオキシ−エチル)ピリジン(b) 1LのDIMSO中、酢酸ナトリウム(96.0g、117mmol、1.0当量)の微細で白色の懸濁液に対して、2−アセチル−4−メチルピリジン(158g、117mmol、1.0当量)を添加した。別の0.5LのDMSOにより希釈した後、トリメチル−トリフルオロメチルシラン(375g、264mmol、2.2当量)を75分かけて添加した。添加の間、反応槽を10℃の冷却浴内に設置して内部温度を20〜25℃の間に維持した。得られた暗色の懸濁液を室温にて一晩撹拌し、その後1.5Lの水を20分かけて添加することにより、注意深くクエンチした。水を添加する間、反応槽を−5℃の冷却浴内に設置して内部温度を10〜25℃の間に維持した。室温にて45分間撹拌した後、混合物を3Lの酢酸エチルにより希釈し、更に15分間撹拌した。相を分離し、水層を2Lの酢酸エチルで抽出した。1つにまとめた有機相を3LのNaHCO飽和水溶液で洗浄し、MgSO上で乾燥し、ろ過及び減圧下での濃縮を行い、346g(106%、HPLCにより88.6面積%)のトリフルオロメチル化合物(b)を、褐色の強く臭気を発する油として得た。
【0075】
1,1,1−トリフルオロ−2−(4−メチルピリジン−2−イル)プロパン−2−オール(c) 室温の、1.5Lのメタノール中、4−メチル−2−(2,2,2−トリフルオロ−1−メチル−1−トリメチルシラニルオキシ−エチル)ピリジン(b)(346g、125mmol、1.0当量)の溶液に対して、固体のKCO(344g、249mmol、2.0当量)を添加した。得られたベージュ色の懸濁液を室温にて1時間撹拌し、その後ろ紙上でろ過した。ろ液を減圧下に濃縮して、固体の、強く臭気を発する残渣を得た。残渣を1Lの酢酸エチルに溶解し、水洗した(2×1L)。MgSO上で乾燥しろ過した後、減圧下に濃縮して252g(98%)のアルコール(c)を油として得た。
【0076】
メタンスルホン酸1,1,1−トリフルオロ−2−(4−メチルピリジン−2−イル)プロパン−2−イル(d) 0℃の、1LのTHF中、NaH(鉱油中60%、23.4g、585mmol、1.5当量)の懸濁液に対して、200mlのTHF中、1,1,1−トリフルオロ−2−(4−メチルピリジン−2−イル)プロパン−2−オール(c)(80g、390mmol、1.0当量)の溶液を34分かけて滴下により添加した。気体の発生が起こり、反応混合物が褐色へと変化した。気体の発生が収まったところで反応物を40℃に加温し、40℃にて45分間撹拌した。室温まで冷却した後、50mlのTHF中、メタンスルホン酸クロリド(45.6ml、585mmol、1.5当量)の溶液を30分かけて、滴下により添加した。内部温度が36℃まで上昇し、反応混合物が明るい褐色の懸濁液に変化した。反応混合物を40℃に加温し、この温度で15分間撹拌し、その後室温まで冷却し、更に一晩撹拌した。氷浴中で冷却しながら、750mlの水を添加して、反応物を注意深くクエンチした。得られた褐色の2相の混合物を室温にて30分間撹拌し、その後相を分離した。水層を750mlの酢酸エチルで抽出し、1つにまとめた有機相を飽和NaHCO水溶液で洗浄した。MgSO上で乾燥し、ろ過し、減圧下に乾燥してベージュ色の固体を得た。残渣を300mlの酢酸エチルに再溶解して混濁した溶液を得て、その後シリカゲル充填物(120g)上でろ過し、600mlの酢酸エチルで流出させた。減圧下での濃縮によりベージュ色の固体を得て、これを400mlのヘプタン及び150mlの酢酸エチル中に還流下に再溶解した。ガラス焼結ロート上で熱時ろ過した後、生成物を0℃にて結晶化させた。ろ過によって結晶を収集し、冷ヘプタン/酢酸エチル8:3(2×80ml)により洗浄し、一晩乾燥して(50℃、10ミリバール)94.0g(85%)のメシル酸エステル(d)を白色結晶として得た。
【0077】
4−メチル−2−(1,1,1−トリフルオロ−2−メチルプロパン−2−イル)ピリジン(1) 10℃の、60mLのシクロヘキサン中、メタンスルホン酸1,1,1−トリフルオロ−2−(4−メチルピリジン−2−イル)プロパン−2−イル(d)(5.68g、20.1mmol、1.0当量)の懸濁液に対して、AlMeのヘキサン溶液(2.0M、15.0ml、30mmol、23.0当量)を15分かけて滴下により添加した。反応物を室温に加温し、室温にて3時間撹拌した。混合物を0℃の水100mlに注意深く添加してこれをクエンチし、室温で15分間撹拌した。セルフロック(cellflock)充填物上でろ過し、酢酸エチルで流出させた後、相を分離した。水層を酢酸エチルで抽出し、1つにまとめた有機相を水及び飽和NaCl水溶液で洗浄した。NaSO上で乾燥した後、ろ過及び減圧下での濃縮により、僅かに褐色を帯びた油を得て、これをシリガゲル上でのクロマトグラフィー(ヘキサン/TBME 9:1)により精製して、無色の油として、1.15g(28%)の所望の化合物(1)を得た。
【0078】
【化19】
最高でも−40℃の、n−ブチルリチウム(2.04当量)の2−メチルテトラヒドロフラン溶液に対して、温度を−30℃未満に維持しながら、2,4−ジメチルピリジン(e)(2.02当量)の2−メチルテトラヒドロフラン溶液を60分かけて添加した。反応混合物を最高でも−30℃にて30分間撹拌した。温度を−30℃未満に維持しながら、炭酸ジエチル(1.00当量)の2−メチルテトラヒドロフラン溶液を60分かけて添加した。反応物を室温に加温し、その後この温度にて5時間撹拌した。0℃に冷却した後、温度を25℃未満に維持しながら、ヨウ化メチル(2.15当量)を40分かけて添加した。反応物を室温にて更に1時間撹拌し、その後1M HClを添加し、pHをpH8〜9の値に調節した。15分間撹拌の後、相を分離し、有機相を水洗した。その後、減圧下に35℃にて蒸留し、粗製のジメチル化エステル(f’)を得た。続いてエステル(f’)を、78℃の水酸化ナトリウム(1.05当量)のエタノール溶液に2時間かけて添加した。更にエタノールを添加し、反応物を78℃にて10時間撹拌した。常圧下での蒸留により、容積を概ね50%に低減した。室温まで冷却の後、tert−ブチルメチルエーテルを添加し、反応混合物をこの温度にて30分間撹拌した。5〜10℃に冷却した後、ろ過を行い、ろ過ケーキをジクロロメタンで洗浄した。湿った生成物を減圧下に60〜70℃にて乾燥して、カルボン酸ナトリウム塩(g’)を得た。化合物(g’)を四フッ化イオウ及びフッ化水素酸と反応させ、化合物(1)を得た。

本発明は以下の態様を包含し得る。
[1] 式(V)の化合物の製造方法であって、
【化20】
式(I)の化合物を溶媒及び塩基と接触させ、得られる混合物を式(II)の化合物と接触させて、式(III)の化合物を生成させるステップAと、
【化21】
溶媒及び酸化剤を含む反応混合物中で、式(III)の化合物をチオ尿素と接触させて、式(V)の化合物を生成させるステップBと
を含み、
は、場合により1回又は2回以上、重水素、ハロゲン、又はC〜Cシクロアルキルで置換されてもよい、環状又は非環状の、分岐状又は直鎖状のC〜Cアルキルであり、
は、(1)水素、(2)フルオロ、クロロ、(3)場合により置換されるメチルから選択され、前記置換基が1種又は2種以上、好ましくは1種〜3種の次の部分:重水素、フルオロ、クロロ、ジメチルアミノから独立に選択され、
Xはハライド、カルボキシレート及びスルホネートからなる群から選択される
製造方法。
[2] 式(X)の化合物の製造方法であって、
【化22】
溶媒及び塩基を含む反応混合物中で、式(V)の化合物を式(VII)の化合物と接触させて、式(VIII)の化合物を生成させるステップCと
【化23】
溶媒を含む反応混合物中で、式(VIII)の化合物を式(IX)の化合物と接触させて、式(X)の化合物を生成させるステップDと、
【化24】
を含み、
、R及びXは、上記[1]において定義されるとおりであり、
及びRは、ハロゲン、ヘテロアリール、アルコキシ及びアリールオキシからなる群より独立に選択され、
及びRのヘテロアリール、アルコキシ及びアリールオキシ部分は、場合により、1回又は2回以上アルキル、アルコキシ、ハロゲン及びニトロにより独立に置換される
製造方法。
[3] 式(X)の化合物の製造方法であって、
【化25】
式(I)の化合物を溶媒及び塩基と接触させ、得られる混合物を式(II)の化合物と接触させて、式(III)の化合物を生成させるステップAと、
【化26】
溶媒及び酸化剤を含む反応混合物中で、式(III)の化合物をチオ尿素と接触させて、式(V)の化合物を生成させるステップBと、
【化27】
溶媒及び塩基を含む反応混合物中で、式(V)の化合物を式(VII)の化合物と接触させて、式(VIII)の化合物を生成させるステップCと、
【化28】
溶媒を含む反応混合物中で、式(VIII)の化合物を式(IX)の化合物と接触させて、式(X)の化合物を生成させるステップDと
【化29】
を含み、
、R、R、R及びXは、上記[1]及び[2]において定義されるとおりである
製造方法。
[4] ステップAの溶媒が、芳香族溶媒、脂肪族溶媒、ハロゲン化溶媒、極性非プロトン性溶媒及びエーテル系溶媒から選択される1種又は2種以上の溶媒を含む、上記[1]〜[3]のいずれか一項に記載の製造方法。
[5] ステップAの溶媒が、テトラヒドロフランを含む、上記[4]に記載の製造方法。
[6] ステップB、C、及びDの溶媒が、独立に、芳香族溶媒、脂肪族溶媒、ハロゲン化溶媒、エーテル系溶媒、極性非プロトン性溶媒、水及びアルコール溶媒から選択される1種又は2種以上の溶媒を含む、上記[1]〜[5]のいずれか一項に記載の製造方法。
[7] ステップBの溶媒が、トルエン及びエタノールを含む、上記[6]に記載の製造方法。
[8] ステップCの溶媒が、テトラヒドロフランを含む、上記[6]に記載の製造方法。
[9] ステップDの溶媒が、テトラヒドロフラン及び水を含む、上記[6]に記載の製造方法。
[10] ステップAの塩基が、リチウムジイソプロピルアミドである、上記[1]〜[9]のいずれか一項に記載の製造方法。
[11] ステップCの塩基が、アミンである、上記[1]〜[10]のいずれか一項に記載の製造方法。
[12] ステップCの塩基が、ピリジンである、上記[11]に記載の製造方法。
[13] ステップBの酸化剤が、親電子ハロゲン試薬である、上記[1]〜[12]のいずれか一項に記載の製造方法。
[14] ステップBの酸化剤が、N−ブロモスクシンイミドである、上記[13]に記載の製造方法。
[15] ステップAの溶媒がテトラヒドロフランを含み、ステップAの塩基がリチウムジイソプロピルアミドであり、ステップBの溶媒がトルエン及びエタノールを含み、ステップBの酸化剤がN−ブロモスクシンイミドであり、ステップCの溶媒がテトラヒドロフランを含み、ステップCの塩基がピリジンであり、ステップDの溶媒がテトラヒドロフラン及び水を含む、上記[1]〜[14]のいずれか一項に記載の製造方法。
[16] R
【化30】
であり、Rがメチルであり、Rがフェノキシであり、Rが塩素であり、Xが臭素である、上記[1]〜[15]のいずれか一項に記載の製造方法。
[17] 式(10)の化合物の製造方法であって、
【化31】
式(1)の化合物を溶媒及び塩基と接触させ、得られる混合物を式(2)の化合物と接触させて、式(3)の化合物を生成させるステップAと、
【化32】
溶媒及び酸化剤を含む反応混合物中で、式(3)の化合物をチオ尿素と接触させて、式(5)の化合物を生成させるステップBと、
【化33】
溶媒及び塩基を含む反応混合物中で、式(5)の化合物を式(7)の化合物と接触させて、式(8)の化合物を生成させるステップCと、
【化34】
溶媒を含む反応混合物中で、式(8)の化合物を式(IX)の化合物と接触させて、式(10)の化合物を生成させるステップDと
【化35】
を含む製造方法。
[18] 式(1)に従う化合物。
【化36】