(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6022504
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月9日
(54)【発明の名称】サンルーフ装置のディフレクタ構造
(51)【国際特許分類】
B60J 7/22 20060101AFI20161027BHJP
【FI】
B60J7/22
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-117504(P2014-117504)
(22)【出願日】2014年6月6日
(65)【公開番号】特開2015-229453(P2015-229453A)
(43)【公開日】2015年12月21日
【審査請求日】2016年1月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】390023917
【氏名又は名称】八千代工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 裕也
(72)【発明者】
【氏名】藤本 啓介
【審査官】
高島 壮基
(56)【参考文献】
【文献】
独国特許出願公開第102011116109(DE,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0313486(US,A1)
【文献】
独国特許発明第102008006344(DE,B3)
【文献】
実開平2−100818(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 7/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下側がフロントフレームに接続固定され、ルーフが開いたときに張架展開して走行風を整流しルーフが閉じたときに折り畳まれて収納される薄布状部材と、
前記薄布状部材の折り畳み動作を誘導する収納誘導部材と、を有するサンルーフ装置のディフレクタ構造であって、
前記収納誘導部材は、
前記フロントフレームと前記薄布状部材との固定部よりも後方に間隔を空けてフロントフレームから立設する前寄りの第1立設壁および後寄りの第2立設壁と、
前記薄布状部材の上側を支持する上部ホルダにおいて、張架展開した薄布状部材の上部後面に沿うように形成された板状の誘導壁と、を備え、
ルーフが閉じるとき、
前記薄布状部材の上部は、下がるにしたがい前方に変位する前記誘導壁の下端により折れ曲がり、
前記薄布状部材の下端寄りが前記固定部と前記第1立設壁との間に収納されるとともに、前記薄布状部材の上端寄りが前記第1立設壁と前記第2立設壁との間に収納され、
前記誘導壁は、収納時には前記第1立設壁と前記第2立設壁との間に起立した状態で配置されることを特徴とするサンルーフ装置のディフレクタ構造。
【請求項2】
前記薄布状部材に、折り畳み形状を安定させる形状安定部材が貼着されていることを特徴とする請求項1に記載のサンルーフ装置のディフレクタ構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サンルーフ装置のディフレクタ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のサンルーフ装置として、ルーフを空けて走行した際の室内への気流の巻き込みを抑制する目的でディフレクタを設けたものがある。ディフレクタの従来例としては、柔軟な生地素材の目の細かい網(薄布状部材)を備えた、いわゆるネット型ディフレクタが知られている(例えば特許文献1参照)。このネット型ディフレクタは、ルーフが開くと網が立設するように張架展開することで走行風を整流し、ルーフが閉じると網が折り畳まれてルーフ下方に収納されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2013−520359号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ネット型ディフレクタは、網が柔軟な生地素材であることから、収納される毎の網の折り畳み形状にばらつきが生じやすい。そのため、場合によっては、折り畳まれた際に網の一部が所定の収納部からはみ出て室内に露出するおそれがある。
【0005】
本発明はこのような課題を解決するために創作されたものであり、薄布状部材を張架展開して整流する構造のサンルーフ装置のディフレクタにおいて、収納スペースを大きくせずに、薄布状部材の折り畳み形状を安定化させることで室内への薄布状部材の露出を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明は、下側がフロントフレームに接続固定され、ルーフが開いたときに張架展開して走行風を整流しルーフが閉じたときに折り畳まれて収納される薄布状部材と、前記薄布状部材の折り畳み動作を誘導する収納誘導部材と、を有するサンルーフ装置のディフレクタ構造であって、前記収納誘導部材は、前記フロントフレームと前記薄布状部材との固定部よりも後方に
間隔を空けてフロントフレームから立設する前寄りの第1立設壁および後寄りの第2立設壁と、前記薄布状部材の上側を支持する上部ホルダにおいて、張架展開した薄布状部材の上部後面に沿うように形成された
板状の誘導壁と、を備え、
ルーフが閉じるとき、前記薄布状部材の上部は、下がるにしたがい前方に変位する前記誘導壁の下端により折れ曲がり、前記薄布状部材の下端寄りが前記固定部と前記第1立設壁との間に収納されるとともに、前記薄布状部材の上端寄りが前記第1立設壁と前記第2立設壁との間に収納され、前記誘導壁は
、収納時には前記第1立設壁と前記第2立設壁との間に
起立した状態で配置されることを特徴とする。
特徴とする。
【0007】
本発明によれば、薄布状部材の下部が第1立設壁の上端によって折り畳まれるとともに、薄布状部材の上部が誘導壁の下端によって折り畳まれる。これにより、薄布状部材の折り畳み形状を安定化させることができる。
【0008】
また、本発明は、前記薄布状部材に、折り畳み形状を安定させる形状安定部材が貼着されていることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、形状安定部材の存在により、柔軟な生地からなる薄布状部材の折り畳み形状が安定し、折り畳み形状のばらつきが一層低減される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、収納スペースを大きくすることなしに、薄布状部材の折り畳み形状を安定化させて室内への薄布状部材の露出を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図4】ラバー部材を有するディフレクタの外観斜視図である。
【
図5】ラバー部材を有するディフレクタの側断面作用図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1において、サンルーフ装置1は、車体の固定ルーフ2に形成された略矩形状の開口部3を開閉するルーフパネル4を備えるとともに、ルーフパネル4が後方にスライドして開口部3が開いたとき、開口部3の前縁に沿って固定ルーフ2から上方に突出するディフレクタ5を備える。
【0013】
ディフレクタ5は、
図2に示すように、薄布状部材6と、薄布状部材6の上側、下側をそれぞれ支持する上部ホルダ7および下部ホルダ8とを備えている。薄布状部材6は柔軟な生地素材の目の細かい網から構成されている。薄布状部材6の上縁および下縁は、縫合等によってそれぞれ側断面視して袋状に形成されており、各袋部に挿通された芯棒9,10が上部ホルダ7、下部ホルダ8の各溝部に嵌入固定されている。上部ホルダ7および下部ホルダ8は例えば樹脂材により成形されている。
【0014】
図1に示すように、上部ホルダ7は、開口部3の前縁に沿って形成されており、両端は後方に延びるデフアーム7A,7Aとして形成されている。デフアーム7Aの後端は車幅方向に沿う回転軸O回りに回動自在に支持されている。また、デフアーム7Aには、上部ホルダ7が常に上方に突出する方向へ回転軸O回りに回動付勢する弾性部材(図示せず)が取り付けられている。
【0015】
図2に示す下部ホルダ8も開口部3の前縁に沿って形成されており、両端は若干後方に延設されている。下部ホルダ8はフロントフレーム11に固定される。開口部3の両側縁の下方には、ルーフパネル4のスライドのガイド機能やデフアーム7Aの支持機能、前記弾性部材の支持機能を担うサイドフレーム(図示せず)が配置されている。フロントフレーム11は、この両サイドフレームの各前端を連結するように車幅方向に長尺の部材として形成されており、開口部3の前縁の下方に配置されている。フロントフレーム11は例えば樹脂材により成形されている。
【0016】
フロントフレーム11は側断面視して、前寄りから順に、固定ルーフ2に倣ってやや前下がりに傾斜した前端部11Aと、前端部11Aの後端から下方に屈曲したうえで形成される第1底部11Bと、第1底部11Bよりも若干下方に位置する略水平状の第2底部11Cと、第2底部11Cの後端から上方に屈曲したうえで形成される略水平状の後端部11Dと、を有した形状からなる。下部ホルダ8は、フロントフレーム11において車幅方向に間隔を空けて形成された複数のホルダ固定突部12,13に支持されて第1底部11B上に固定される。つまり、薄布状部材6の下側が下部ホルダ8を介してフロントフレーム11に接続固定される。
【0017】
以上により、ルーフパネル4が閉じているときには、ルーフパネル4の下面に設けられた押圧シュー(図示せず)が前記弾性部材の付勢力に抗してデフアーム7Aを押し下げることで上部ホルダ7が下方に変位し薄布状部材6が折り畳まれてフロントフレーム11の上方に収納される。ルーフパネル4が開いてデフアーム7Aに対する前記押圧シューからの押圧が解かれると、前記弾性部材の付勢力により上部ホルダ7が上方に変位し薄布状部材6が張架展開して走行風を整流し、室内への気流の巻き込みを抑制する。
【0018】
「収納誘導部材14」
本発明のディフレクタ構造は、薄布状部材6の折り畳み動作を誘導する収納誘導部材14を備えている。収納誘導部材14は、フロントフレーム11と薄布状部材6との固定部、つまり下部ホルダ8よりも後方においてフロントフレーム11から立設する前寄りの第1立設壁15および後寄りの第2立設壁16と、上部ホルダ7において、張架展開した薄布状部材の上部後面に沿うように形成された誘導壁17と、を備えて構成されている。
【0019】
第1立設壁15は、第2底部11Cにおける車両前後方向中程から若干前側に傾斜するようにして、略車幅方向に沿って延設されている。第2立設壁16は、後端部11Dにおける前寄りから若干前側に傾斜するようにして、略車幅方向に沿って延設されている。第2立設壁16の方が第1立設壁15よりも若干高く形成されている。第1立設壁15および第2立設壁16は共にフロントフレーム11に一体成形として形成されている。
【0020】
誘導壁17は、上部ホルダ7に一体成形として形成された板状壁であり、略車幅方向に沿って延設されている。
図2に仮想線で示すように、薄布状部材6の張架展開時には第2立設壁16よりも後方に配置され、実線で示すように、収納時には第1立設壁15と第2立設壁16との間に配置される。誘導壁17は前記回転軸Oを中心として回動することにより、下がるにしたがい前方に変位する。収納時の誘導壁17の上端は第2立設壁16の上端と略同じ高さに位置する。
【0021】
「作用」
図3において、(a)は薄布状部材6が張架展開して、誘導壁17が第2立設壁16よりも後方に位置した状態を示している。薄布状部材6は上側が後方に変位するように傾斜状に立設して張架展開される。薄布状部材6の上部は誘導壁17と略平行となるように張架している。
【0022】
図1においてルーフパネル4が閉じて前記押圧シューがデフアーム7Aを回転軸O回りに押し下げると、薄布状部材6は、
図3(b),(c)に示すように下部が第1立設壁15の上端によって第1立設壁15に覆いかぶさるように折り畳まれる。また、第2立設壁16よりも後方に位置していた誘導壁17は、下方に変位するにしたがい前方に変位するので、
図3(c)に示されるように薄布状部材6の上部には、誘導壁17の下端によって後方側に凸となるように折れ曲がるきっかけが与えられる。
【0023】
そして、
図3(d)のようにルーフパネル4が完全に閉じると、誘導壁17は第1立設壁15と第2立設壁16との間に位置し、薄布状部材6は第1立設壁15と誘導壁17とにより折り畳まれた状態で収納される。第2立設壁16が存在するため、薄布状部材6が後方側にはみ出すこともない。
【0024】
以上のように、フロントフレーム11と薄布状部材6との固定部(本実施形態では下部ホルダ8)よりも後方においてフロントフレーム11から立設する前寄りの第1立設壁15および後寄りの第2立設壁16と、上部ホルダ7において張架展開した薄布状部材6の上部後面に沿うように形成された誘導壁17と、を備え、誘導壁17が、薄布状部材6の張架展開時には第2立設壁16よりも後方に配置され、収納時には第1立設壁15と第2立設壁16との間に配置されるようにすれば、薄布状部材6の折り畳み形状を安定化させることができる。したがって、薄布状部材6の収納スペースを大きく確保する必要もなく、室内への薄布状部材6の露出を防止できる。また、薄布状部材6の収納スペースを小さく抑えられる分、サンルーフ装置1の開口部3の開口寸法を大きくとれる。
【0025】
図4および
図5は、薄布状部材6に、折り畳み形状を安定させる形状安定部材21を貼着した場合を示す。形状安定部材21は、例えばラバー(ゴム)部材からなる。
図4に示すように縦帯状の形状安定部材21は車幅方向に間隔を空けて複数貼着される。この形状安定部材21の存在により、柔軟な生地からなる薄布状部材6の折り畳み動作に制限が加わることとなるので、折り畳み形状が安定し、薄布状部材6の折り畳み形状のばらつきが一層低減される。
【符号の説明】
【0026】
1 サンルーフ装置
2 固定ルーフ
3 開口部
4 ルーフパネル
5 ディフレクタ
6 薄布状部材
7 上部ホルダ
8 下部ホルダ
11 フロントフレーム
14 収納誘導部材
15 第1立設壁
16 第2立設壁
17 誘導壁
21 形状安定部材