(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記取り外し可能カバーは、検知用途を実行することが望まれるときは、剥ぎ取るか、破壊するか、クリップを取り外すことにより、取り外される、請求項1に記載の分子検知デバイス。
請求項1に記載の分子検知デバイスを用いる方法であって、前記基板の前記表面上の前記材料又は前記基板の表面に取り外し可能カバーを取り付けることによって、前記ウェル内の前記浸漬流体を密封することを含む、請求項1に記載の分子検知デバイスを用いる方法。
前記浸漬流体を導入する前に、所定の化学種に対して選択的である所定の機能性リガンドを含むように前記浸漬流体を選択することを更に含む、請求項12に記載の方法。
前記付着される取り外し可能カバーは、検知用途を実行することが望まれるときは、剥ぎ取るか、破壊するか、クリップを取り外すことにより、取り外されるカバーである、請求項12に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0005】
本明細書において開示される分子検知デバイスの例は、信号増幅構造体(複数の場合もある)を周囲環境に暴露することなく輸送及び/又は格納することを可能にする。本明細書において開示される分子検知デバイス(複数の場合もある)は、少なくとも信号増幅構造体(複数の場合もある)を取り囲む浸漬流体と、この浸漬流体をデバイス内に密封する取り外し可能なカバーとを備える。「浸漬流体」は、本明細書において用いられるとき、液体又は不活性ガスであり得る。密封された浸漬流体は、信号増幅構造体(複数の場合もある)が周囲環境から望ましくない化学種を時期尚早に吸収することを防止する。場合によっては、密封された浸漬流体は、信号増幅構造体(複数の場合もある)が望ましくない方法で時期尚早に作用することも防止する。一例として、浸漬流体は、検知解析を行う前に、指状SERSナノ構造体が1つ又は複数の隣接する指状SERSナノ構造体と関連して又はこれらの隣接する指状SERSナノ構造体の方向に不可逆的に移動することを防止し得る。浸漬流体は、デバイスが放置されている間、信号増幅構造体の安定性も提供する。
【0006】
次に、
図1A及び
図1Bを参照すると、分子検知デバイスの2つの例10及び10’が示されている。分子検知デバイス10、10’のそれぞれは、基板12を備える。
図1Aに示す分子検知デバイス10は、基板12の表面S
12に形成されたウェル14を備える一方、
図1Bに示す分子検知デバイス10’は、基板12の表面S
12上に配置された材料16からなる表面S
16に形成されたウェル14’を備える。双方の例のウェル14、14’は、以下で更に論述することにする。
【0007】
図1Aに示す例又は
図1Bに示す例のいずれかにおける基板12は、検知システム(例えば、
図5に示すシステム100)において用いられるときに、分子検知デバイス10、10’の位置に応じて透明の場合もあるし、反射性の場合もある。例えば、センサーが、ウェル14又は14’が形成されている表面S
12又はS
16の向かいに配置されている場合、基板12は、反射性及び/又は非反射性の材料から選択され得る。この例における好適な基板の例には、ゲルマニウム、シリコン、又は、例えば、ガラス、石英、窒化物、アルミナ、サファイア、インジウムスズ酸化物、透明ポリマー(例えば、ポリカーボネート、ポリイミド、アクリル樹脂等)、それらを組み合わせたもの、及び/又はそれらの層等の透明の基板が含まれる。一例では、透明の基板は、基板12の裏面BS
12上に反射鏡を備える。一方、センサーが裏面BS
12(すなわち、ウェル14又は14’が形成されている表面S
12又はS
16に対向した表面)の向かいに配置されている場合、基板12は、生成された任意の信号(例えば、散乱光)が基板12を通ってセンサーに透過され得るように透明の材料から選択される。好適な透明の基板の例には、ガラス、石英、窒化物、アルミナ、サファイア、インジウムスズ酸化物、透明ポリマー(例えば、ポリカーボネート、ポリイミド、アクリル樹脂等)、若しくはこれらを組み合わせたもの、又はこれらの層が含まれる。ウェル14が基板12内に形成される場合は、基板12も、当該基板にウェル14を(例えば、エッチング、インプリンティング、又は別の好適な技法を介して)形成することができる材料から選択され得ることが理解されるべきである。
【0008】
基板12は、任意の望ましい寸法を有し得る。
図1Aに示す例では、基板12は、当該基板に単一のウェル14を製造するように十分に小さくされる場合もあるし、当該基板に複数のウェル14を製造するように十分大きくされる場合もある。
図1Aに示す基板12の厚さは、当該基板に形成されたウェル14が約1μmの深さを有するように1μm厚よりも大きくあり得る。
図1Bに示す例では、基板12は、当該基板上に配置された材料16に単一のウェル14’を製造するように十分小さくされる場合もあるし、当該基板上に配置された材料16に複数のウェル14’を製造するように十分大きくされる場合もある。
図1Bに示す基板12は、当該基板上に配置された材料16に支持を提供する任意の望ましい厚さを有し得る。
【0009】
図1Bに示す例では、材料16は、基板12上において、少なくとも当該基板に形成されるウェル14’にとって望ましい厚さに堆積される(場合によっては硬化される)。例えば、材料16の厚さは、当該材料に形成されるウェル14’が約1μmの深さを有するように1μm厚よりも大きくあり得る。一例では、材料16は、当該材料に(例えば、エッチング、インプリンティング、又は別の好適な技法を介して)ウェル14’を形成することができる任意の透明材料であり得る。透明材料16は、基板12が透明であるときに望ましい場合がある。好適な透明材料の例には、ガラス、石英、窒化物、アルミナ、シリカ、サファイア、透明ポリマー、又はそれらを組み合わせたものが含まれる。基板12が透明でない場合、材料16は、透明材料の場合もあるし、透明材料でない場合もある。他の好適な材料16の例には、シリコン、ゲルマニウム、チタン、これらの材料の酸化物(例えば、シリコン酸化物)、又は窒化物が含まれる。ウェル14’が、インプリンティング技法(
図2A〜
図2Fを参照して更に説明する)によって材料16に形成されるとき、材料16は、紫外線硬化性レジスト又は熱硬化性レジストであり得る。幾つかの好適なレジストは、ニュージャージー州モンマスジャクションのナノネックス社(Nanonex Corp.)(例えば、NXR−2000シリーズ及びNXR−1000シリーズ)、及びカリフォルニア州サンマルコスのナノリソソリューション社(NanoLithoSolution, Inc.)(例えば、AR−UV−01)から市販されている。
【0010】
上述したように、分子検知デバイス10及び10’は、それぞれ、基板12の表面S
12に形成されたウェル14又は材料16の表面S
16に形成されたウェル14’を備える。
図1Aに示す例では、ウェル14は、基板12の表面S
12から基板12内に、基板12の厚さよりも小さな望ましい深さまで延在する陥凹部である。
図1Bに示す例では、ウェル14’は、材料16の表面S
16から材料16内に、材料16の厚さ以下の望ましい深さまで延在する陥凹部である。したがって、一例では、ウェル14は、基板表面S
12が暴露されるように材料16の全厚さにわたって延在し、別の例では、ウェル14’は、基板表面S
12が暴露されないように材料16の全厚さよりも小さく延在する。
【0011】
ウェル14、14’は、(例えば、ウェル14、14’が上面図から現われているように)任意の望ましい形状を有するように形成され得、任意の望ましい寸法(例えば、長さ、幅、直径等)を有し得る。これらの寸法のそれぞれは、ウェル14、14’に形成される信号増幅構造体18のタイプ及び数、形成されるウェル14、14’の数、基板12のサイズ、並びに場合によっては材料16のサイズに少なくとも部分的に依存する。例示の上面図における形状には、正方形、長方形(
図3A参照)、円形(
図3B参照)、三角形(
図3C参照)、楕円形、長円形等が含まれる。
図1A及び
図1Bに示す例は、ウェル14、14’の深さ全体にわたって続く正方形状を有する。代替的に、ウェル14、14’の壁は、ウェル14、14’の寸法が表面S
12又はS
16に向かって増加するようにテーパリングされ得る(
図2F参照)。ウェル14、14’を形成するための技法は、以下でより詳細に論述する。
【0012】
図1A及び
図1Bのそれぞれには1つのウェル14、14’が示されているが、任意の数のウェル14、14’が単一の基板12又は単一の材料16に形成され得ることが理解されるべきである。用いられる基板12のサイズによって規定される場合を除いて、形成され得るウェル14、14’の数に関して制限はない。複数のウェル14、14’が形成される場合、ウェル14、14’が互いに流体分離されるようにするとともに、検知技法が単一のウェル14、14’内で実行され得ることが望ましい場合にはそのようにされるように、各ウェル14、14’は、各隣接するウェル14、14’から十分に離間され得る。一例として、アレイのウェル14、14’は、少なくとも約1μm隔てられ得る。これは、場合によっては、ほぼレーザースポットサイズの限界である。
【0013】
図1A及び
図1Bに示す分子検知デバイス10、10’は、ウェル14、14’内に配置された前述した信号増幅構造体18(複数の場合もある)も示している。用いられる信号増幅構造体18のタイプ及び数は、分子検知デバイス10、10’を用いて実行される検知のタイプに少なくとも部分的に依存し得る。例えば、分子検知デバイス10、10’が表面増強ラマン分光法(SERS)に用いられる場合、信号増幅構造体18(複数の場合もある)は、ナノ構造体であり得る。これらのナノ構造体は、少なくとも1つの寸法が約0.1nm〜約100nmの範囲であり、高さが、当該ナノ構造体が形成されるウェル14、14’の深さよりも小さい。一例として、ウェル14、14’は、約1μmの深さを有し、信号増幅構造体18(複数の場合もある)は、約500nmの高さを有する。
【0014】
ナノ構造体の例には、アンテナ、ピラー又はナノワイヤ、ポール、可撓性の柱状構造体又は指状構造体、円錐形構造体、多面構造体等が含まれる。SERS信号増幅構造体18(複数の場合もある)は、レーザー照射に暴露されたときに分子(すなわち、試料、対象となる化学種、所定の化学種)からのラマン散乱を増幅する金属ナノ構造体又は金属被覆されたプラズモニックナノ構造体であり得る。この金属又は金属被覆は、信号増強材料、すなわち、特定の検知プロセス中に生成される信号を増強することができる材料である。一例では、この信号増強材料は、分子(又は対象となる他の化学種)が信号増幅構造体18(複数の場合もある)に近接して位置するとき、かつ分子及び材料が光/電磁放射を受けたときに、ラマン散乱光子の数を増加させるラマン信号増強材料である。ラマン信号増強材料には、銀、金、及び銅が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0015】
図1A及び
図1Bでは、ラマン信号増強材料は、20の符号で示され、信号増幅構造体18(複数の場合もある)の基部部分22の先端に存在する材料である。信号増幅構造体18(複数の場合もある)がラマン信号増強材料20で部分的又は完全に被覆されているとき、信号増幅構造体18(複数の場合もある)の基部部分22は、基板12の材料、材料16等の他の任意の好適な材料から形成され得る。
【0016】
信号増幅構造体18は、増強蛍光(例えば、金属増強蛍光又は表面増強蛍光(SEF:surface enhanced fluorescence))又は増強化学ルミネセンス等の技法において用いられるようにも構成され得る。一例として、金属増強蛍光が適用される場合、信号増幅構造体18の基部22は、銀ナノ粒子で被覆され得る。別の例として、増強蛍光が適用される場合、信号増幅構造体18は、局所表面プラズモン及び伝播表面プラズモンを結合するように構成され得る。
【0017】
信号増幅構造体18(複数の場合もある)を形成するための技法を以下でより詳細に論述する。
【0018】
前述したように、任意の数の信号増幅構造体18(複数の場合もある)がウェル14、14’に存在し得るが、それは、ウェル14、14’の寸法、信号増幅構造体18(複数の場合もある)のサイズ、及び実行される検知のタイプに少なくとも部分的に依存している。例として、単一の信号増幅構造体18が、単一のウェル14、14’に存在する場合もある。或いは、単一のウェル14、14’が複数構造体アセンブリを含み得るが、例えば、ダイマー(dimer:二量体)(すなわち、2つの構造体18)、トライマー(trimer:三量体)(すなわち、3つの構造体18)、テトラマー(tetramer:四量体)(すなわち、4つの構造体18)、ペンタマー(pentamer:五量体)(すなわち、5つの構造体18)等である。
【0019】
図1A及び
図1Bに示す分子検知デバイス10、10’は、ウェル14、14’内の信号増幅構造体18(複数の場合もある)を取り囲むとともに場合によっては覆うようにウェル14、14’内に導入される浸漬流体24も備える。浸漬流体24は、信号増幅構造体18(複数の場合もある)に有害な影響(例えば、形態の劣化、変化等)を与えない任意の好適な液体又は気体であり得る。浸漬流体24は、(カバー26とともに)信号増幅構造体18(複数の場合もある)が、周囲環境からの望ましくない化学種を吸収することを防止すると考えられている。換言すれば、流体24は、所望の検知技法を実行する前に、信号増幅構造体18(複数の場合もある)を周囲環境から保護する。複数の指状構造体が、信号増幅構造体18として用いられ、同じウェル14、14’内に含まれるとき、浸漬流体は、これらの指状信号増幅構造体18が(例えば、マイクロキャピラリー力等の外力に起因して)時期尚早に及び不可逆的に互いに向かって崩壊することを防止するとも考えられている。選択される浸漬流体24は、信号増幅構造体18(複数の場合もある)に用いられる材料(複数の場合もある)に少なくとも部分的に依存する。一例では、浸漬流体24は、水、水性溶液、非水系液体(複数の場合もある)、又は非水系溶液である。非水系液体の例には、アルコール(例えば、エタノール)、エタノールに溶解した炭化水素、窒素含有化合物、硫黄含有化合物、又はそれらを組み合わせたものが含まれる。別の例では、浸漬流体24は、不活性ガス(例えば、ネオンガス、アルゴンガス、窒素系不活性ガス等)である。浸漬流体24は、信号増幅構造体18(複数の場合もある)の表面に取り付けるか又は別の方法で関連付けて、或る特定の検知用途向けに対象となる化学物質の特定の結合を増強するリガンド又は別のアンカー化学種(anchor species)(例えば、DNA、タンパク質等)も含み得る。これらの場合に、浸漬流体24は、保護及び表面機能化という2重の目的に貢献し得る。
【0020】
図1A及び
図1Bに示すように、分子検知デバイス10、10’は、(
図1Aに示すように)残りの表面S
12又は(
図1Bに示すように)残りの表面S
16に取り付けられ得る取り外し可能カバー26も備える。ウェル14、14’内の信号増幅構造体18(複数の場合もある)に有害な影響を与えることなく表面S
12又はS
16から取り外され得る任意の好適な材料が用いられ得る。取り外し可能カバー材料の例には、表面S
12若しくはS
16から剥ぎ取ることができる薄いポリマー膜/メンブレン、又は表面S
12若しくはS
16から破壊して取り去るか若しくは切り取ることができるガラス、金属層若しくはポリマー層が含まれる。取り外し可能カバー26は、任意の好適な厚さを有し得る。
【0021】
カバー26が閉鎖位置にある(すなわち、ウェル14、14’内の浸漬流体24を密封するために基板12、又は材料16、又は基板12若しくは材料16上に堆積された材料20に付着されるか又は別の方法で固定されている)場合は、分子検知デバイス10、10’は、当該デバイス10、10’を検知用途で用いることが望まれるときまで、輸送及び/又は格納が可能である。検知用途を実行することが望まれるとき、取り外し可能カバー26は、例えば、カバー26を剥ぎ取るか、カバー26を破壊するか、カバー26のクリップを取り外すか、又は他の或る好適な方法によってカバー26を取り外すことによって取り外され得る。
【0022】
図1A及び
図1Bに示す分子検知デバイス10、10’は、複数の方法を介して形成され得る。特に、ウェル14、14’は、任意の好適な技法を介して形成され得る。この任意の好適な技法は、用いられる基板12又は材料16のタイプ、並びにウェル(複数の場合もある)14、14’及び信号増幅構造体18(複数の場合もある)を順次形成することが望ましいのか又は同時に形成することが望ましいのかに少なくとも部分的に依存する。
【0023】
一例示の方法では、信号増幅構造体18(複数の場合もある)及びウェル(複数の場合もある)14、14’は、順次形成される。この例示の方法では、2ステップマスキング及びエッチングプロセスが用いられ得る。ウェル(複数の場合もある)14が基板12に形成されることが望ましいとき、この方法のこの例は、最初に、信号増幅構造体18(複数の場合もある)を基板12に形成することと、次に、ウェル(複数の場合もある)14を基板12に形成することとを含む。例えば、信号増幅構造体18(複数の場合もある)用の所望のパターンを提供するマスクが基板12上に配置され得、エッチングが、基板の厚さよりも小さくかつウェル(複数の場合もある)14の所望の深さ以下である所望の深さまで実行され得る。用いられるエッチング液は、用いられている基板材料に依存するが、このステップは、一般に等方性(ウェット又はドライ)エッチングプロセスを伴う。信号増幅構造体18(複数の場合もある)が形成された後、マスクは除去される。ウェル(複数の場合もある)14用の所望のパターンを提供するとともに前に形成された信号増幅構造体18(複数の場合もある)を保護する別のマスクが、基板12上に配置され得る。このエッチングステップは、基板12の厚さよりも小さくかつ前に形成された信号増幅構造体18(複数の場合もある)の高さ以下である所望の深さまで実行され得る。
【0024】
用いられるエッチング液は、この場合も、用いられている基板材料に依存するが、このステップは、等方性又は異方性のいずれかの(ウェット又はドライ)エッチングプロセスを伴い得る。この同じ順次プロセスは、ウェル(複数の場合もある)14’が材料16に作製され、信号増幅構造体18(複数の場合もある)が当該材料に形成されるように、材料16においても行われ得る。基板12又は材料16は、2つの層も有し得ることが理解されるべきであり、これらの2つの層では、上部層の材料及び厚さが、信号増幅構造体18(複数の場合もある)を(上記で説明した第1のマスキング/エッチングステップを用いて)形成するのに好適であるとともに、底部層の材料及び厚さが、ウェル(複数の場合もある)14、14’が当該材料に(上記で説明した第2のマスキング/エッチングステップを用いて)形成されるのに好適である。
【0025】
別の例示の方法では、信号増幅構造体18(複数の場合もある)及びウェル14、14’は同時に形成される。この方法の1つの例が、
図2A〜
図2Fに示され、分子検知デバイス10’の形成を示している。この方法は、分子検知デバイス10(又は
図4に示す10”)を形成するのにも用いられ得ることが理解されるべきである。
【0026】
図2Aは、信号増幅構造体18(複数の場合もある)及びウェル14’の双方を形成するのに用いられ得るモールド28の断面図を示している。モールド28は、単結晶シリコン、ポリマー材料(アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリイミド等)、金属(アルミニウム、銅、ステンレス鋼、ニッケル、合金等)、石英、セラミック、サファイア、シリコン窒化物、又はガラスから形成され得る。
【0027】
モールド28は、信号増幅構造体18(複数の場合もある)及びウェル14’用のパターンPを有する。
図2Aに示すモールドは、単一のウェル14’及び当該ウェル内の信号増幅構造体18(複数)を形成するためのものであるが、単一のモールド28が複数のウェル14、14’を作製するのにも用いられ得ることが理解されるべきであり、それぞれのウェルが1つ又は複数の信号増幅構造体18を有する。
【0028】
パターンPは、所望の信号増幅構造体18(複数の場合もある)及びウェル14’のネガ複製であり、したがって、形成される信号増幅構造体18(複数の場合もある)の少なくとも基部(複数の場合もある)22及びウェル14’のための形状を画定する。パターンPは、前述したナノ構造体(例えば、アンテナ、ピラー若しくはナノワイヤ、ポール、可撓性の柱状構造体若しくは指状構造体、円錐形構造体、又は多面構造体)のうちの任意のもののネガ複製であり得る。2つ以上の信号増幅構造体18が所望されているとき、信号増幅構造体18用のパターンPは、全て同じの場合(例えば、全てがピラー)もあるし、全て異なる場合(例えば、1つはピラー、1つはポール、1つは指状構造体等)もあるし、信号増幅構造体18のうちの幾つかのもののパターンPが、信号増幅構造体18のうちの1つ又は複数の他のものと異なる場合(例えば、1つはピラー、2つはポール、2つは円錐等)もある。さらに、2つ以上の信号増幅構造体18が所望されているとき、信号増幅構造体18用のパターンPは、同じ又は異なる寸法を有し得る。またさらに、複数のウェル14、14’が同じモールド28を用いて形成されるとき、ウェル14、14’用のパターンPは、ウェル14、14’のうちの少なくとも1つについて同じである場合も又は異なる場合もあるとともに、信号増幅構造体18用のパターンPは、ウェル14、14’のうちの少なくとも1つについて同じである場合も又は異なる場合もある。例として、パターンPは、縦長(tall)のナノワイヤ及び短いナノワイヤを同じウェル14、14’に形成するためのものである場合もあるし、幅広の直径の指状構造体を1つ又は複数のウェル14、14’に形成するとともに狭い直径の指状構造体を1つ又は複数の他のウェル14、14’に形成するためのものである場合もある。
【0029】
パターンPは、モールド28に一体形成され得る。一例では、パターンPは、深掘り反応性イオンエッチング及びパッシベーションを介してモールド28に形成され得る。より具体的には、ボッシュ(Bosch)プロセスが用いられ得、このプロセスは、エッチング(例えば、SF
6プラズマ及びO
2プラズマを用いる)とパッシベーション(例えば、C
4F
8プラズマを用いる)との一連の交番サイクルを伴う。結果として得られるパターンの形態は、プロセスの条件(例えば、真空圧力、RF電力、総処理時間、個々のエッチングサイクル時間、個々のパッシベーションサイクル時間、及びガス流量)を制御することによって制御され得る。一例では、エッチャーは、15mTorr(1.9998Pa)の圧力において作動され得、エッチャーのコイル及びプラテンの電力は、それぞれ800W及び10Wであり、各エッチングサイクル(SF
6及びO
2を用いる)は6秒であり、各パッシベーションサイクル(C
4F
8を用いる)は5秒であり、SF
6、O
2、及びC
4F
8の流量は、それぞれ100sccm、13sccm、及び100sccmである。より一般的には、流量は、約100sccmまでの任意の流量であり得る。
【0030】
パターンPのうち、信号増幅構造体18(複数の場合もある)を形成する部分は、信号増幅構造体の形状の規則的なアレイ又は不規則的なアレイを含み得る。前に説明したエッチングプロセス及びパッシベーションプロセスは、多くの場合、不規則的なアレイをもたらす。規則的なアレイを生成するために、集束イオンビームリソグラフィー、集束eビームリソグラフィー、又は光リソグラフィー等の製造方法が用いられ得ることが理解されるべきである。パターンPのうち、信号増幅構造体18(複数の場合もある)を形成する部分は、結果として得られる信号増幅構造体18(複数の場合もある)がラマンスペクトル上の標的範囲に対して高感度になる(例えば、特定の波長においてより強い信号を生成することができる)ことを可能にする所定の方法で設計され得ると考えられる。
【0031】
図2Bに示すように、モールド28は、基板12上に事前に堆積されたレジスト材料16内にプレス加工される。代替的に、レジスト材料16をモールド28上に堆積させることができ、その後、基板12を材料16に付着させることができる。レジスト材料16は、紫外線(UV)硬化性レジスト材料又は熱硬化性レジスト材料であり得る。レジスト材料16は、スピンコーティング、ドロップコーティング、ディップコーティング等の任意の好適な技法を介して基板12又はモールド28上に堆積され得る。レジスト材料16の厚さは、当該レジスト材料に形成されるウェル14’の所望の深さと同程度の厚さ又はそれよりも大きな厚さであり得る。
【0032】
モールド28は、レジスト材料16内に(又はそれ以外の場合にはレジスト材料と接触して)プレス加工されるが、構造体は、レジスト材料16を部分的又は完全に硬化させるためにUV光又は熱に暴露され得る。完全に硬化したものが
図2Cに示されている。UV又は熱に暴露する時間、用いられるUVランプの電力、熱の温度、及び他の同様の硬化パラメーターは、用いられるレジスト材料16に少なくとも部分的に依存することが理解されるべきである。図に示す例では、硬化が完了すると、モールド28は、除去され得(
図2Dに図示)、その結果得られる構造体は、ウェル14’を形成するようにパターン化された硬化したレジスト16と、信号増幅構造体18(複数の場合もある)の基部(複数の場合もある)22とを含む。上述したように、モールド28は、レジスト材料16内(又はそれ以外の場合にはレジスト材料と接触して)プレス加工されるが、部分的な硬化が実行され得る。部分的な硬化では、レジスト材料16の全てではなく一部が硬化する。部分的な硬化の後、モールド28は除去され得る。モールド28が除去されると、レジスト材料16が完全に硬化するまで、硬化は継続され得る。
【0033】
図2A〜
図2Fに示す方法の例では、硬化が完了し、モールド28が除去された後、信号増強材料20は、少なくとも、信号増幅構造体18(複数の場合もある)の基部部分22の表面上に堆積される。信号増強材料20は、任意の好適な堆積技法又は他のコーティング技法によって確立され得る。幾つかの例では、材料20が、硬化したレジスト16の暴露された部分の全てに確立されるように、ブランケット堆積技法が用いられ得る。他の例では、材料20が、例えば、基部22の先端のみに確立されるように、選択的堆積技法が用いられ得る。例として、材料20は、電子ビーム(eビーム)蒸着又はスパッタリングを介して堆積され得る。更に他の例では、信号増強材料20は、硬化したレジスト16上に被覆される事前に形成された(例えば、銀、金、銅等の)ナノ粒子とすることができる。そのようなナノ粒子は、約1nm〜約10nmの範囲の平均直径を有し得る。基部22の頂端に(材料20の連続コーティングではなく)材料20のナノ粒子が存在することによって、例えば、SERSの動作中に電界強度が更に高められると考えられている。材料20自体は、堆積プロセス中に自然発生的に形成される表面粗さも有し得る。この表面粗さは、付加的な光アンテナとして機能して、各信号増幅構造体18上でのSERS活性サイトを増大させることができる。
【0034】
完全な信号増幅構造体18が形成された後、選択された浸漬流体24が、
図2Fに示すように堆積されるか又は別の方法でウェル14’内に導入される。浸漬流体24は、例えば、信号増幅構造体18(複数の場合もある)を取り囲むとともに、場合によっては、ウェル14’(又は14)を満たす浸漬流体24の量を堆積/分注することができる任意のディスペンサーを用いて堆積/分注され得る。浸漬流体24は、例えば、先端又はピペットを介して手動で分注され得る。浸漬流体24は、同様に又は代替的に、例えば、ジェットディスペンサー(例えば、サーマルジェットディスペンサー、ピエゾジェットディスペンサー、ピエゾキャピラリージェットディスペンサー)又はアコースティックディスペンサー(例えば、ラボサイトエコー(Labcyte Echo)アコースティックディスペンサー)を介して自動的に分注され得る。
【0035】
ガスが用いられるとき、構造体は、所望のガスで満たされた箱又は容器内に配置され得る。ウェル14、14’は、ガスで満たされた箱内にある間、密封され得る。
【0036】
浸漬流体24は、構造体の最も外側の表面、又は液体24をウェル14’(又は14’)内に密封する構造体の他の任意の表面に取り外し可能カバー26を取り外し可能に取り付けることによって、ウェル14’(又は14)内に密封され得る。取り外し可能カバー26は、
図2Fに示されている。この特定の例では、取り外し可能カバー26は、硬化した材料16の最も外側の部分に存在する信号増強材料20に付着されている。カバー26を基板12、材料16、又は材料20に取り付ける方法は、用いられる材料及び所望の取り外し方法に少なくとも部分的に依存する。例えば、薄いポリマー膜/メンブレンが取り外し可能カバー26として用いられ、この膜/メンブレンを剥ぎ取ることができることが望ましい場合、カバー26を分子検知デバイス10、10’に取り外し可能に固定するのに、接着剤が用いられ得る。別の例の場合、より厚いポリマー層又はガラス層が、取り外し可能カバー26として用いられ、このカバー26は、後でクリッパーを用いて分子検知デバイス10、10’からクリップを取り外され得るように、構造体に取り付けられ得る。一例では、クリップは、整合する孔及び突出部をエンボス加工することによって形成され得る。
【0037】
浸漬流体24がカバー26を介して密封されると、分子検知デバイス10、10’の輸送及び/又は格納の準備が完了する。
【0038】
次に
図3A〜
図3Cを参照すると、デバイス10、10’の種々の上面図が示されている。カバー26及び信号増幅構造体18(複数の場合もある)は、明瞭にするために取り除かれている。これらの図は、ウェル14、14’に用いられ得る種々の形状(デバイス10、10’を上から見たときのもの)を示すとともに、ウェル14、14’に含まれる浸漬流体24の様々な選択肢も示している。
【0039】
図3Aは、矩形のウェル14、14’を有する一例示のデバイス10、10’を示し、このデバイスでは、この長方形は、表面S
12又はS
16からウェル14、14’の深さにわたって延在する。矩形のウェル14、14’のそれぞれにおける異なるイラストは、長方形のウェル14、14’のそれぞれに堆積された異なる浸漬流体24
A、24
B、24
C、24
D、24
E、24
Fを表している。異なる浸漬流体24
A、24
B、24
C、24
D、24
E、24
Fは、例えば、1つのウェル14、14’に存在する信号増幅構造体18(複数の場合もある)を、他のウェル14、14’のそれぞれに存在する信号増幅構造体18(複数の場合もある)と異なって機能化させることが望ましいときに用いられ得る。例えば、それぞれのウェル14、14’内の信号増幅構造体18(複数の場合もある)が、異なるタイプのDNAを用いて機能化される場合、浸漬流体24
A、24
B、24
C、24
D、24
E、24
Fは、特定のウェル14、14’内の特定のタイプのDNAに好適な異なるイオン濃度及び/又は異なるpHレベルを有する異なるイオン溶液であり得る。この特定のデバイス10、10’を用いて検知が適用されている間、各ウェル14、14’を同じ試料に暴露することが望ましい場合もあるし、幾つかのウェル14、14’を特定の試料に暴露するとともに少なくとも1つの他のウェル14、14’を異なる試料に暴露することが望ましい場合もあるし、ウェル14、14’のそれぞれを異なる試料に暴露することが望ましい場合もある。
【0040】
図3Bは、円形のウェル14、14’を有する一例示のデバイス10、10’を示し、このデバイスでは、この円形は、表面S
12又はS
16からウェル14、14’の深さにわたって延在する。この図では、円形のウェル14、14’のそれぞれにおける異なるイラストは、円形のウェル14、14’のそれぞれに堆積された同じ浸漬流体24を表している。この同じ浸漬流体24は、例えば、ウェル14、14’のそれぞれに存在する信号増幅構造体18(複数の場合もある)を同じように機能化させることが望ましいとき、又は非機能化された信号増幅構造体18(複数の場合もある)を同じ試料(浸漬流体24がウェル14、14’に存在する間に加えることができる)に暴露することが望ましいときに用いられ得る。この特定のデバイス10、10’を用いて検知が適用されている間、各ウェル14、14’を同じ試料に暴露することが望ましい場合もあるし、幾つかのウェル14、14’を特定の試料に暴露するとともに少なくとも1つの他のウェル14、14’を異なる試料に暴露することが望ましい場合もあるし、ウェル14、14’のそれぞれを異なる試料に暴露することが望ましい場合もある。
【0041】
図3Cは、三角形のウェル14、14’を有する一例示のデバイス10、10’を示し、このデバイスでは、この三角形は、表面S
12又はS
16からウェル14、14’の深さにわたって延在する。三角形のウェル14、14’の異なる列における異なるイラストは、特定の列に整列されたそれぞれの三角形のウェル14、14’に堆積された異なる浸漬流体24
A、24
B、24
Cを表している。異なる浸漬流体24
A、24
B、24
Cは、例えば、1つの列のウェル14、14’に存在する信号増幅構造体18(複数の場合もある)を、他の列のウェル14、14’に存在する信号増幅構造体18(複数の場合もある)と異なって機能化させることが望ましいときに用いられ得る。例えば、第1列のウェル14、14’内の信号増幅構造体18の全てをDNAを用いて機能化させ、第2列のウェル14、14’内の信号増幅構造体18の全てをタンパク質を用いて機能化させ、第3列のウェル14、14’内の信号増幅構造体18の全てをリガンドを用いて機能化させることが望ましい場合がある。この例では、浸漬流体24
Aは、DNAを含有する液体であり、浸漬流体24
Bは、タンパク質を含有する液体であり、浸漬流体24
Cは、リガンドを含有する液体である。この特定のデバイス10、10’を用いて検知が適用されている間、各ウェル14、14’を同じ試料に暴露することが望ましい場合もあるし、1つの列内のウェル14、14’の全てを同じ試料に暴露するが、列のそれぞれを異なる試料に暴露することが望ましい場合もあるし、1つの行内のウェル14、14’の全てを同じ試料に暴露するが、行のそれぞれを異なる試料に暴露することが望ましい場合もある。
【0042】
次に
図4を参照すると、分子検知デバイスの別の例10”が示されている。このデバイス10”は、1つのウェル14を別のウェル14から更に隔離する隔壁30を備える。隔壁30は、任意の望ましい高さを有し得、それぞれのウェル14、14’を完全に取り囲むように配置又は形成することができる。ウェル14、14’を完全に取り囲む隔壁30によって、浸漬流体24が、隣接するウェル14、14’に入ることなくウェル14、14’からあふれ出ることが可能になる。ウェル14、14’を完全に取り囲む隔壁30によって、異なる試料含有溶液を特定のウェル14、14’内に正確に分注する必要なく、異なる試料含有流体を異なるウェル14、14’に導入することも可能になる。これは、隔壁30が、ウェル14、14’自体よりも大きな、ウェル14、14’を取り囲む包含エリアを作成することに起因している。
【0043】
この例示のデバイス10”では、隔壁30は、基板12の表面S
12に取り付けられているが、壁30は、基板12と一体形成することができることが理解されるべきである。隔壁30は、実行される検知技法を妨げない任意の望ましい材料(例えば、透明ポリマー、ガラス等)から作製され得る。隔壁30は、基板12とは別個のものであるとき、例えば、接着剤を用いて取り付けられ得る。
【0044】
このデバイス10”は、ウェル14が基板12に形成されているので、
図1Aに示すデバイス10に類似している。一方、デバイス10”は、基板12に存在する材料16にウェル14’を形成し、次いで、隔壁30を材料16に取り付けることによって、
図1Bに示すデバイス10’に類似させることができる。代替的に、隔壁30は、材料16と一体形成することができる。
【0045】
図4に示す例示のデバイス10”では、2つのウェル14内の信号増幅構造体18は異なる。ウェル14のうちの一方(図の左側)は、4つの指状信号増幅構造体18を含み、ウェル14のうちの他方(図の右側)は、3つの円錐形信号増幅構造体18を含む。単一のモールド28がそのようなウェル14及び構造体18を製造するのに用いられ得ることが理解されるべきである。
【0046】
図4に示す隔壁30は、2つの別々のカバー26がウェル14を密封するのに利用され得るようにウェル14を分離している。この例では、取り外し可能カバー26が基板12から個々に取り外され得るように、カバー26は、基板12のそれぞれのエリアに別々に取り付けられる。一例では、カバーされていないウェル14を用いて分子検知技法を実行し得るように、一方のカバー26は、ウェル14のうちの一方から取り外され得るが、ウェル14のうちの他方は、カバーされたままである。この例では、ウェル14のうちの他方は、その後、そのウェル14を用いて別の分子検知技法を実行し得るようにカバーを除かれ得る。別の例では、カバーされていないウェル14のそれぞれを同時に用いて分子検知技法を実行し得るように、カバー26のそれぞれが取り外され得る。隔壁30がそれぞれのウェル14を完全に取り囲む他の例では、単一のカバー26が、ウェル14の周囲のそれぞれのエリア(隔壁30によって画定される)を密封するように隔壁30に取り付けられ得る。
【0047】
次に
図5を参照すると、分子検知システムの一例100が示されている。
図5に示すシステム100は、レーザー源32と、分子検知デバイスの一例10’(ただし、デバイス10及び10”もシステム100において利用され得る)と、光検出器34とを備えるSERSシステムである。この例では、信号増幅構造体18は、SERS信号増幅構造体であり、これらのSERS信号増幅構造体のそれぞれは、ピラー又は指状基部22と、この基部22の先端/上部に堆積されたラマン信号増強材料20とを備える。試料分子Aがウェル14’内に導入される。
【0048】
レーザー源32は、狭いスペクトル線幅を有する光源であり得、可視領域内又は近赤外領域内の単色光ビームLを放出するように選択される。レーザー源32は、定常状態レーザー又はパルスレーザーから選択され得る。レーザー源32は、光Lを分子検知デバイス10’上に投射するように配置される。レンズ(図示せず)及び/又は他の光学機器(例えば、光学顕微鏡)が、レーザー光Lを所望の方法で誘導する(例えば、曲げる)のに用いられ得る。1つの例では、レーザー源32はチップ上に集積される。レーザー源32は、電源(図示せず)にも作動接続され得る。
【0049】
システム100の動作中、分子検知デバイス10’のカバー(複数の場合もある)26は取り外され、ウェル内の浸漬流体24は、試料含有流体の導入前に除去され得るか又は試料含有流体が導入されるときにウェル14’内に留まり得る。浸漬流体24が除去されるか否かは、用いられる浸漬流体24のタイプと、浸漬流体24が導入される試料分子Aと反応するか否か又はそれ以外で試料分子Aと信号増幅構造体18との間の望ましい相互作用を妨げるか否かとに少なくとも部分的に依存する。浸漬流体24の除去は、液体24をウェル(複数の場合もある)14’の外部に流出させることによるか、液体24をウェル(複数の場合もある)14’からピペットで取り出すか若しくは吸引することによるか、ウェル(複数の場合もある)14’にガスを流すことによるか、液体24をウェル(複数の場合もある)14’から気化させることによるか、又は他の任意の好適な技法によって達成され得る。
【0050】
試料分子Aを含有するか又は試料分子Aの担体として機能する流体(すなわち、液体(例えば、水、エタノール等)又は気体(例えば、空気、窒素、アルゴン等)は、ウェル(複数の場合もある)14’内に導入される。上述したように、異なる試料分子Aが、1つ又は複数の異なるウェル14’内に導入される場合もあるし、同じ試料分子Aが、ウェル14’のそれぞれに導入される場合もある。試料分子Aは、重力、マイクロキャピラリー力、及び/又は化学力に起因してSERS信号増幅構造体18の表面上に沈殿し得る。1つの例では、試料分子Aを含有する液体がウェル(複数の場合もある)14’内に導入され、次いで、ウェル(複数の場合もある)14’は、その後、乾燥される。マイクロキャピラリー力に少なくとも部分的に起因して、隣接するSERS信号増幅構造体18は、互いに引き寄せ合い、試料分子Aは、SERS信号増幅構造体18の先端に又はそれらの近くに捕捉され得る。これは、
図5に示されている。
【0051】
次に、レーザー源32が稼動して、分子検知デバイス10’に向けて光Lを放出する。ウェル14’のアレイ全体(及び当該ウェル内の構造体18)が同じ時点で暴露される場合もあるし、1つ又は複数の個々のウェル14’が特定の時点で暴露される場合もあることが理解されるべきである。したがって、同時の検知又は並行した検知が実行され得る。分子検知デバイス10’のSERS信号増幅構造体18に又はそれらの近くに凝縮している試料分子Aは、光/電磁放射Lと相互作用してこの光/電磁放射を散乱する(散乱した光/電磁放射には符号Rが付されていることに留意されたい)。試料分子AとSERS信号増幅構造体18のSERS信号増強材料20との間の相互作用によって、ラマン散乱放射Rの強度が増加する。ラマン散乱放射Rは、光検出器34に向けて方向転換される。この光検出器は、任意の反射成分及び/又はレイリー成分を光学的にフィルタリング除去し、次いで、入射波長の近くの波長ごとのラマン散乱放射Rの強度を検出し得る。
【0052】
システム100は、分子検知デバイス10’と光検出器34との間に配置された光フィルタリング素子38を備え得る。この光フィルタリング素子38は、任意のレイリー成分、及び/又は所望の領域にないラマン散乱放射Rのうちの任意のものを光学的にフィルタリング除去するのに用いられ得る。システム100は、分子検知デバイス10’と光検出器34との間に配置された光分散素子40も備え得る。この光分散素子40は、ラマン散乱放射Rを種々の角度に分散させ得る。素子38及び40は、同じデバイスの一部の場合もあるし、別々のデバイスの場合もある。
【0053】
プロセッサ36は、レーザー源32及び光検出器34の双方に作動接続されて、これらの構成要素32、34の双方を制御し得る。プロセッサ36は、光検出器34から読み取り値も受信して、ラマンスペクトル読み出し情報を生成し得る。この読み出し情報のピーク及び谷は、その後、試料分子Aを解析するのに利用される。
【0054】
本明細書において提供した範囲は、明記した範囲及び当該明記した範囲内の任意の値又は部分範囲を含むことが理解されるべきである。例えば、約0.1nm〜約100nmの範囲は、約0.1nm〜約100nmの明示的に列挙した境界を含むだけでなく、0.2nm、0.7nm、15nm等の個々の値、及び約0.5nm〜約50nm、約20nm〜約40nm等の部分範囲も含むものと解釈されるべきである。さらに、「約」が、値を記載するのに利用されるとき、これは、明記した値から僅かな変化(+/−10%まで)を包含することを意図している。
【0055】
幾つかの例が詳細に説明されてきたが、開示した例は変更され得ることが、当業者には明らかであろう。したがって、上記説明は限定的なものでないとみなされるべきである。