特許第6022691号(P6022691)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6022691ジオキシノ−及びオキサジン−[2,3−D]ピリミジンPI3K阻害剤化合物及び使用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6022691
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月9日
(54)【発明の名称】ジオキシノ−及びオキサジン−[2,3−D]ピリミジンPI3K阻害剤化合物及び使用方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 491/056 20060101AFI20161027BHJP
   A61K 31/5377 20060101ALI20161027BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20161027BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20161027BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20161027BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20161027BHJP
【FI】
   C07D491/056CSP
   A61K31/5377
   A61P43/00 101
   A61P35/00
   A61P35/02
   A61K45/00
【請求項の数】29
【全頁数】86
(21)【出願番号】特願2015-529017(P2015-529017)
(86)(22)【出願日】2013年8月29日
(65)【公表番号】特表2015-526492(P2015-526492A)
(43)【公表日】2015年9月10日
(86)【国際出願番号】EP2013067861
(87)【国際公開番号】WO2014033196
(87)【国際公開日】20140306
【審査請求日】2015年5月13日
(31)【優先権主張番号】61/694,898
(32)【優先日】2012年8月30日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】306021192
【氏名又は名称】エフ・ホフマン−ラ・ロシュ・アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ヒールド, ロバート アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】マクリーン, ネヴィル ジェームズ
【審査官】 早川 裕之
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/151601(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/082997(WO,A1)
【文献】 国際公開第2007/127175(WO,A1)
【文献】 国際公開第2007/127183(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/059839(WO,A1)
【文献】 J. Med. Chem.,2007年,50,4279−4294
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 491/056
A61K 31/5377
A61K 45/00
A61P 35/00
A61P 35/02
A61P 43/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Ia:
Ia
[上式中、R及びRは、H、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルキニル及びC−C12カルボシクリルから独立して選択され、ここで、アルキル及びカルボシクリルは、F、Cl、Br、I、−CH、−CHCH、−CH(CH、−CHCH(CH、−CHCH、−CHCN、−CN、−CF、−CHOH、−COH、−CONH、−CONH(CH)、−CON(CH、−NO、−NH、−NHCH、−N(CH、−NHCOCH、−OH、=O、−OCH、−OCHCH、−OCH(CH、−SH、−NHC(=O)NHCH、−NHC(=O)NHCHCH、−NHC(=O)NHCH(CH、−NHS(O)CH、−N(CH)C(=O)OC(CH、−S(O)CH、ベンジル、ベンジルオキシ、シクロプロピル、モルホリニル、モルホリノメチル及び4−メチルピペラジン−1−イルから独立して選択される一又は複数の基で置換されていてもよく、又は
二つのR又はRは=Oを形成し、又は
二つのRは、3から6員炭素環又は複素環を形成し、
は、C−C20アリール、C−C20ヘテロシクリル及びC−C20ヘテロアリールから選択され、そのそれぞれが、F、Cl、Br、I、−CH、−CHCH、−CH(CH、−CHCH(CH、−CHCH、−CHCN、−CN、−CF、−CHOH、−COH、−CONH、−CONH(CH)、−CON(CH、−NO、−NH、−NHCH、−N(CH、−NHCOCH、−OH、−OCH、−OCHCH、−OCH(CH、−SH、−NHC(=O)NHCH、−NHC(=O)NHCHCH、−NHC(=O)NHCH(CH、−NHS(O)CH、−N(CH)C(=O)OC(CH、−S(O)CH、ベンジル、ベンジルオキシ、モルホリニル、モルホリノメチル及び4−メチルピペラジン−1−イルから独立して選択される一又は複数の基で置換されていてもよい]
から選択される化合物及びその立体異性体、幾何異性体、互変異性体、並びにそれらの薬学的に許容される塩。
【請求項2】
がH、−CH、−CHCH、−C(CH、−CHOH、−CHCHOH、−C(CHOH、−CHOCH3、−CN、−CHF、−CHF及び−CFから独立して選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
がH、−CH及びシクロプロピルから独立して選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
がH、−CH、−C(CH、−CHOH、−CF、−CHF及びシクロプロピルから独立して選択される、請求項1から3の何れか一項に記載の化合物。
【請求項5】
がそれぞれ−CHである、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
二つのRが=O又はシクロプロピルを形成する、請求項1から3の何れか一項に記載の化合物。
【請求項7】
が、F、Cl、Br、I、−CH、−CHCH、−CH(CH、−CN、−CF、−CHOH、−COH、−CONH、−CONH(CH)、−CON(CH、−NO、−NH、−NHCH、−N(CH、−NHCOCH、−OH、−OCH、−OCHCH、−OCH(CH、−SH、−NHC(=O)NHCH、−NHC(=O)NHCHCH、−NHS(O)CH、−N(CH)C(=O)OC(CH及び−S(O)CHから選択される一又は複数の基で置換されたフェニルである、請求項1から6の何れか一項に記載の化合物。
【請求項8】
が、1H−インダゾール、1H−インドール、インドリン−2−オン、1−(インドリン−1−イル)エタノン、1H−ベンゾ[d][1,2,3]トリアゾール、1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン、1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン、1H−ベンゾ[d]イミダゾール、1H−ベンゾ[d]イミダゾール−2(3H)−オン、1H−ピラゾロ[3,4−c]ピリジン、1H−ピロロ[2,3−c]ピリジン、3H−イミダゾ[4,5−c]ピリジン、7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン、7H−プリン、1H−ピラゾロ[4,3−d]ピリミジン、5H−ピロロ[3,2−d]ピリミジン、2−アミノ−1H−プリン−6(9H)−オン、キノリン、キナゾリン、キノキサリン、イソキノリン、イソキノリン−1(2H)−オン、3,4−ジヒドロイソキノリン−1(2H)−オン、3,4−ジヒドロキノリン−2(1H)−オン、キナゾリン−2(1H)−オン、キノキサリン−2(1H)−オン、1,8−ナフチリジン、ピリド[3,4−d]ピリミジン及びピリド[3,2−b]ピラジンから選択される、置換されていてもよい二環式ヘテロアリール基である、請求項1から6の何れか一項に記載の化合物。
【請求項9】
置換されていてもよいR


から選択され、ここで、波線が結合部位を示す、請求項1から6の何れか一項に記載の化合物。
【請求項10】
が1H−インダゾール−4−イルである、請求項9に記載の化合物。
【請求項11】
が、2−フラニル、3−フラニル、2−イミダゾリル、4−イミダゾリル、3−イソキサゾリル、4−イソキサゾリル、5−イソキサゾリル、2−オキサゾリル、4−オキサゾリル、5−オキサゾリル、3−ピラゾリル、4−ピラゾリル、2−ピラジニル、3−ピリダジニル、4−ピリダジニル、5−ピリダジニル、2−ピリミジニル、5−ピリミジニル、6−ピリミジニル、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル、2−ピロリル、3−ピロリル、2−チエニル、3−チエニル、5−テトラゾリル、1−テトラゾリル、2−テトラゾリル、2−チアゾリル、4−チアゾリル、5−チアゾリル、3−トリアゾリル及び1−トリアゾリルから選択される、置換されていてもよい単環式ヘテロアリール基である、請求項1から6の何れか一項に記載の化合物。
【請求項12】
が2−アミノピリミジン−5−イルである、請求項11に記載の化合物。
【請求項13】
置換されていてもよいR


から選択され、ここで、波線が結合部位を示す、請求項1から6の何れか一項に記載の化合物。
【請求項14】
Ia
上式中、
が、H、−CH及びシクロプロピルから独立して選択され、
が、H、−CH、−C(CH、−CHOH、−CF、−CHF及びシクロプロピルから独立して選択され、
が、−NHCOCH、−OH及び−NHS(O)CHから選択される一又は複数の基で置換されたフェニルであるか、或いは
が、−NH、-NHCH及び-OCHから選択される置換基で置換されていてもよい、ピリジル、ピリミジニル若しくはピラゾリルから選択される単環式ヘテロアリール基、又は1H−インダゾール、1H−インドール、インドリン−2−オン、1−(インドリン−1−イル)エタノン、1H−ベンゾ[d][1,2,3]トリアゾール、1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン、1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン、1H−ベンゾ[d]イミダゾール、1H−ベンゾ[d]イミダゾール−2(3H)−オン、1H−ピラゾロ[3,4−c]ピリジン、1H−ピロロ[2,3−c]ピリジン、3H−イミダゾ[4,5−c]ピリジン、7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン、7H−プリン、1H−ピラゾロ[4,3−d]ピリミジン、5H−ピロロ[3,2−d]ピリミジン、2−アミノ−1H−プリン−6(9H)−オン、キノリン、キナゾリン、キノキサリン、イソキノリン、イソキノリン−1(2H)−オン、3,4−ジヒドロイソキノリン−1(2H)−オン、3,4−ジヒドロキノリン−2(1H)−オン、キナゾリン−2(1H)−オン、キノキサリン−2(1H)−オン、1,8−ナフチリジン、ピリド[3,4−d]ピリミジン及びピリド[3,2−b]ピラジンから選択される二環式ヘテロアリール基である、請求項1に記載の化合物。
【請求項15】
Ia
上式中、
が、H、−CH及びシクロプロピルから独立して選択され、
が、H、−CH、−C(CH、−CHOH、−CF、−CHF及びシクロプロピルから独立して選択され、
が、−NHCOCH、−OH及び−NHS(O)CHから選択される一又は複数の基で置換されたフェニルであるか、或いは
が、−NH、-NHCH及び-OCHから選択される置換基で置換されていてもよい、ピリジル、ピリミジニル又はピラゾリルから選択される単環式ヘテロアリール基である、請求項1に記載の化合物。
【請求項16】
Ia
上式中、
が、H、−CH及びシクロプロピルから独立して選択され、
が、H、−CH、−C(CH、−CHOH、−CF、−CHF及びシクロプロピルから独立して選択され、
が、−NHCOCH、−OH及び−NHS(O)CHから選択される一又は複数の基で置換されたフェニルであるか、或いは
が、1H−インダゾール−4−イル又は2−アミノピリミジン−5−イルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項17】
Ia
上式中、
が、H、−CH及びシクロプロピルから独立して選択され、
が、H、−CH、−C(CH、−CHOH、−CF、−CHF及びシクロプロピルから独立して選択され、
が、−NHCOCH、−OH及び−NHS(O)CHから選択される一又は複数の基で置換されたフェニル、或いは
が、2−アミノピリミジン−5−イルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項18】
Ia
上式中、
が、H、−CH及びシクロプロピルから独立して選択され、
二つのR、3から6員炭素環を形成し、
が、−NHCOCH、−OH及び−NHS(O)CHから選択される一又は複数の基で置換されたフェニルであるか、或いは
が、−NH、-NHCH及び-OCHから選択される置換基で置換されていてもよい、ピリジル、ピリミジニル又はピラゾリルから選択される単環式ヘテロアリール基である、請求項1に記載の化合物。
【請求項19】
5-(4-モルホリノ-6,7-ジヒドロ-[1,4]ジオキシノ[2,3-d]ピリミジン-2-イル)ピリミジン-2-アミン、
5-[(6R)-6-メチル-4-モルホリノ-6,7-ジヒドロ-[1,4]ジオキシノ[2,3-d]ピリミジン-2-イル]ピリミジン-2-アミン、
5-(7-メチル-4-モルホリノ-6,7-ジヒドロ-[1,4]ジオキシノ[2,3-d]ピリミジン-2-イル)ピリミジン-2-アミン、
5-(7,7-ジメチル-4-モルホリノ-6H-[1,4]ジオキシノ[2,3-d]ピリミジン-2-イル)ピリミジン-2-アミン、
5-[4-モルホリノ-7-(トリフルオロメチル)-6,7-ジヒドロ-[1,4]ジオキシノ[2,3-d]ピリミジン-2-イル]ピリミジン-2-アミン、
5-(4-モルホリノスピロ[6H-[1,4]ジオキシノ[2,3-d]ピリミジン-7,1’-シクロプロパン]-2-イル)ピリミジン-2-アミン、
5-(6-シクロプロピル-4-モルホリノ-6,7-ジヒドロ-[1,4]ジオキシノ[2,3-d]ピリミジン-2-イル)ピリミジン-2-アミン、
5-(7-tert-ブチル-4-モルホリノ-6,7-ジヒドロ-[1,4]ジオキシノ[2,3-d]ピリミジン-2-イル)ピリミジン-2-アミン、
3-(7,7-ジメチル-4-モルホリノ-6H-[1,4]ジオキシノ[2,3-d]ピリミジン-2-イル)フェノール、
2-(2-メトキシピリミジン-5-イル)-7,7-ジメチル-4-モルホリノ-6H-[1,4]ジオキシノ[2,3-d]ピリミジン、
5-(7,7-ジメチル-4-モルホリノ-6H-[1,4]ジオキシノ[2,3-d]ピリミジン-2-イル)ピリジン-2-アミン、
N-[4-(7,7-ジメチル-4-モルホリノ-6H-[1,4]ジオキシノ[2,3-d]ピリミジン-2-イル)フェニル]アセトアミド、
5-(7,7-ジメチル-4-モルホリノ-6H-[1,4]ジオキシノ[2,3-d]ピリミジン-2-イル)-N-メチル-ピリジン-2-アミン、
N-[3-(7,7-ジメチル-4-モルホリノ-6H-[1,4]ジオキシノ[2,3-d]ピリミジン-2-イル)フェニル]メタンスルホンアミド、
2-(1H-インドール-5-イル)-7,7-ジメチル-4-モルホリノ-6H-[1,4]ジオキシノ[2,3-d]ピリミジン、
5-[7-(フルオロメチル)-4-モルホリノ-6,7-ジヒドロ-[1,4]ジオキシノ[2,3-d]ピリミジン-2-イル]ピリミジン-2-アミン、
[2-(2-アミノピリミジン-5-イル)-4-モルホリノ-6,7-ジヒドロ-[1,4]ジオキシノ[2,3-d]ピリミジン-7-イル]メタノール、及び
5-(7-シクロプロピル-4-モルホリノ-6,7-ジヒドロ-[1,4]ジオキシノ[2,3-d]ピリミジン-2-イル)ピリミジン-2-アミン
から選択される、請求項1から18の何れか一項に記載の化合物。
【請求項20】
請求項1から19の何れか一項に記載の化合物並びに薬学的に許容される担体、流動促進剤、希釈剤又は賦形剤を含んでなる薬学的組成物。
【請求項21】
化学療法薬、抗炎症薬、免疫調節薬、神経栄養因子、心臓血管病を治療するための薬剤、肝臓病を治療するための薬剤、抗ウイルス薬、血液疾患を治療するための薬剤、糖尿病を治療するための薬剤及び免疫不全疾患を治療するための薬剤から選択される追加の治療薬を更に含む、請求項20に記載の薬学的組成物。
【請求項22】
患者におけるがんを治療するための医薬であって、請求項1から19の何れか一項に記載の化合物の治療的有効量を含み、ここで、がんが乳がん、卵巣がん、子宮頸がん、前立腺がん、精巣がん、泌尿生殖器のがん、食道がん、喉頭がん、膠芽腫、神経芽細胞種、胃がん、皮膚がん、ケラトアカントーマ、肺がん、表皮癌、大細胞癌、非小細胞肺癌(NSCLC)、小細胞癌、肺腺癌、骨がん、結腸がん、腺腫、膵臓がん、腺癌、甲状腺癌、濾胞腺癌、未分化癌、乳頭癌、精上皮腫、黒色腫、肉腫、膀胱癌、肝臓癌及び胆汁道、腎癌、腎疾患、膵疾患、骨髄疾患、リンパ腫、毛様細胞癌、口腔前庭癌、鼻咽頭がん、咽頭がん、口唇がん、舌がん、口腔がん、小腸がん、結腸直腸がん、大腸がん、直腸がん、脳腫瘍及び中枢神経系のがん、ホジキン病又は白血病である、医薬
【請求項23】
がんが脳腫瘍である、請求項22に記載の医薬
【請求項24】
化学療法薬、抗血管形成治療薬、抗炎症薬、免疫調節薬、神経栄養因子、心臓血管病を治療するための薬剤、肝臓病を治療するための薬剤、抗ウイルス薬、血液疾患を治療するための薬剤、糖尿病を治療するための薬剤及び免疫不全疾患を治療するための薬剤から選択される追加の治療薬を更に含む、請求項22に記載の医薬
【請求項25】
追加の治療薬がベバシズマブである、請求項24に記載の医薬
【請求項26】
請求項1から19の何れか一項に記載の化合物と薬学的に許容される担体とを組み合わせることを含む、薬学的組成物を作製するための方法。
【請求項27】
a)請求項1から19の何れか一項に記載の化合物を含む第一の薬学的組成物、及び
b)使用説明書
を含む、PI3K介在状態を治療するためのキット。
【請求項28】
がんを治療するための医薬を製造するための請求項1から19の何れか一項に記載の化合物の使用であって、ここで、がんが乳がん、卵巣がん、子宮頸がん、前立腺がん、精巣がん、泌尿生殖器のがん、食道がん、喉頭がん、膠芽腫、神経芽細胞種、胃がん、皮膚がん、ケラトアカントーマ、肺がん、表皮癌、大細胞癌、非小細胞肺癌(NSCLC)、小細胞癌、肺腺癌、骨がん、結腸がん、腺腫、膵臓がん、腺癌、甲状腺癌、濾胞腺癌、未分化癌、乳頭癌、精上皮腫、黒色腫、肉腫、膀胱癌、肝臓癌及び胆汁道、腎癌、腎疾患、膵疾患、骨髄疾患、リンパ腫、毛様細胞癌、口腔前庭癌、鼻咽頭がん、咽頭がん、口唇がん、舌がん、口腔がん、小腸がん、結腸直腸がん、大腸がん、直腸がん、脳腫瘍及び中枢神経系のがん、ホジキン病又は白血病である、使用。
【請求項29】
がんを治療するための請求項1から19の何れか一項に記載の化合物であって、ここで、がんが乳がん、卵巣がん、子宮頸がん、前立腺がん、精巣がん、泌尿生殖器のがん、食道がん、喉頭がん、膠芽腫、神経芽細胞種、胃がん、皮膚がん、ケラトアカントーマ、肺、表皮癌、大細胞癌、非小細胞肺癌(NSCLC)、小細胞癌、肺腺癌、骨がん、結腸がん、腺腫、膵臓がん、腺癌、甲状腺癌、濾胞腺癌、未分化癌、乳頭癌、精上皮腫、黒色腫、肉腫、膀胱癌、肝臓癌及び胆汁道、腎癌、腎疾患、膵疾患、骨髄疾患、リンパ腫、毛様細胞癌、口腔前庭癌、鼻咽頭がん、咽頭がん、口唇がん、舌がん、口腔がん、小腸がん、結腸直腸がん、大腸がん、直腸がん、脳腫瘍及び中枢神経系のがん、ホジキン病又は白血病である、化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
37 CFR §1.53(b)に基づいて出願されたこの非仮出願は、2012年8月30日に出願された米国仮出願第61/694898号の35 USC §119(e)に基づく利益を主張し、その全体を参照として本明細書に援用する。
【0002】
本発明は、一般的に、抗がん活性又は抗炎症活性を伴う化合物、特に、PI3キナーゼ活性を阻害する化合物に関する。本発明はまた、哺乳類細胞又は関連する病的状態のインビトロ、インサイツ及びインビボ診断又は治療のための化合物を使用する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ホスファチジルイノシトールは、細胞膜にみられる多くのリン脂質のうちの一つであり、細胞内のシグナル伝達において重要な役割を果たす。3’−リン酸化ホスホイノシチドを介した細胞シグナリングは、様々な細胞過程、例えば、悪性転換、成長因子シグナリング、炎症及び免疫に関与してきた(Rameh et al (1999) J. Biol Chem, 274: 8347-8350)。これらのリン酸化シグナリング生成物、ホスファチジルイノシトール3−キナーゼ(PI 3−キナーゼ又はPI3Kとも称される)を生成する原因となる酵素は、元来、イノシトール環の3’−ヒドロキシルでホスファチジルイノシトール(PI)及びそのリン酸誘導体をリン酸化する、ウイルス性がんタンパク及び成長因子受容体チロシンキナーゼに関連する活性として同定された(Panayotou et al (1992) Trends Cell Biol 2:358-60)。
【0004】
ホスホイノシチド3−キナーゼ(PI3K)は、イノシトール環の3−ヒドロキシル残基で脂質をリン酸化する脂質キナーゼである(Whitman et al (1988) Nature, 332: 664)。PI3−キナーゼにより生成される3−リン酸化リン脂質(PIP3)は、脂質結合領域(プレクストリン相同(PH)領域を含む)にキナーゼをリクルートする、第二のメッセンジャー、例えば、Akt及びホスホイノシチド依存性キナーゼ−1(PDK1)として作用する。Aktが膜PIP3へ結合することにより、AktをPDK1と接触させて、Aktの細胞膜への転座を引き起こし、これがAktを活性化させる原因となる。腫瘍抑制ホスファターゼであるPTENは、PIP3を脱リン酸化し、したがって、Akt活性化の負の調節因子として作用する。PI3−キナーゼAkt及びPDK1は、細胞周期調節、増殖、生存、アポトーシス及び運動性を含む多くの細胞過程の調節において重要であり、がん、糖尿病及び免疫性炎症等の疾病の分子機序の重要な成分である(Vivanco et al (2002) Nature Rev. Cancer 2: 489; Phillips et al (1998) Cancer 83: 41)。
【0005】
がんにおける主なPI3−キナーゼ アイソフォームは、クラスIPI3−キナーゼであるp110α(アルファ)である(米国特許第5824492号;米国特許第5846824号;米国特許第6274327号)。その他のアイソフォームは、心血管及び免疫炎症疾病に関与している(Workman P (2004) Biochem Soc Trans 32: 393-396; Patel et al (2004) Proceedings of the American Association of Cancer Research (Abstract LB-247) 95th Annual Meeting, March 27-31, Orlando, Florida, USA; Ahmadi K and Waterfield MD (2004) Encyclopedia of Biological Chemistry (Lennarz W J, Lane M D eds) Elsevier/Academic Press)。PI3キナーゼ/Akt/PTEN経路は、がん薬剤の開発にとって魅力的な標的であり、それは、そのような調節剤又は阻害剤ががん細胞における増殖を阻害し、アポトーシスの抑制を覆し、且つ細胞毒性剤に対する耐性を克服することが見込まれているためである(Folkes et al (2008) J. Med. Chem. 51: 5522-5532; Yaguchi et al (2006) Jour. of the Nat. Cancer Inst. 98(7) (8) 545-556)。
【0006】
悪性神経膠腫は、成人における最も一般的な原発性脳腫瘍である。最も侵攻性のある神経膠腫亜型である膠芽腫(GBM)において、腫瘍形成及び成長は、細胞周期の制御を妨害する遺伝子変化と相まって、成長因子から生じたシグナル変換作用に関連する遺伝子産物の増幅及び過剰発現により引き起こされると思われる(Holland EC (2001) Nat Rev Genet 2: 120-129)。GBMにおけるゲノム変化のうち、PTEN変異及び/又は欠失は、最も一般的であり、およそ70−90%の頻度で生じる(Nutt C, Louis DN (2005) Cancer of the Nervous System (McGraw-Hill, New York), 2nd Ed, pp 837-847)。これらの発見は、GBMの症例におけるPTEN状態の予後値と共に、非常に侵攻性のあるグリアの悪性腫瘍を促進する際のホスホイノシチド3−キナーゼ(PI3K)/Akt経路の重要性並びに血液脳関門透過特性を持つPI3K阻害剤を伴う治療の機会を示唆する(Phillips HS, et al. (2006) Cancer Cell 9: 157-163)。
【0007】
悪性神経膠腫は、手術、放射線及びテモゾロミド(TEMODARTM)の併用で治療されるが、これらの治療は、高頻度の腫瘍再発により、最終的には失敗に終わる。過剰増殖性疾患、例えば、膠芽腫及び転移性脳腫瘍を治療するため、脳に有効な薬剤の有効な濃度を送達するために追加の治療が必要である。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、一般的に、抗がん活性、抗炎症活性又は免疫調節性を有する、より具体的にはPI3キナーゼ調節又は阻害活性を有する、式Iのジオキシノ−オキサジン−[2,3−d]ピリミジン PI3K阻害剤化合物に関する。ある過剰増殖性疾患は、PI3キナーゼ機能の調節、例えばタンパク質の変異又は過剰発現により特徴づけられる。したがって、本発明の化合物は、がん等の過剰増殖性疾患の治療において有用であり得る。本化合物は、哺乳動物における腫瘍増殖を阻害し、ヒトがん患者の治療に有用であり得る。
【0009】
本発明はまた、哺乳類細胞、生物又は関連する病的状態のインビトロ、インサイツ及びインビボ診断又は治療のための、式Iのジオキシノ−オキサジン−[2,3−d]ピリミジン PI3K阻害剤化合物を使用する方法に関する。
【0010】
式Iの化合物は:
及びその立体異性体、幾何異性体、互変異性体、並びにそれらの薬学的に許容される塩を含む。置換基は本明細書に記載される通りである。
【0011】
本発明の別の態様は、式Iのジオキシノ[2,3−d]ピリミジン PI3K阻害剤化合物及び薬学的に許容される担体を含む薬学的組成物を提供する。薬学的組成物は、一又は複数の追加の治療薬を更に含んでもよい。
【0012】
本発明の別の態様は、PI3キナーゼを有効阻害量の式Iの化合物と接触させることを含む、PI3キナーゼ活性を阻害する方法を提供する。
【0013】
本発明の別の態様は、PI3キナーゼにより調節される過剰増殖性疾病又は疾患を予防又は治療する方法であって、そのような治療を必要とする哺乳動物に、有効量の式Iの化合物を投与することを含む、方法を提供する。そのような過剰増殖性疾病又は疾患の例は、がんを含むがこれに限定されない。
【0014】
本発明の別の実施態様は、過剰増殖性疾患を予防又は治療する方法であって、そのような治療を必要とする哺乳動物に、有効量の式Iの化合物を単独で、又は、抗過剰増殖特性を有する一つ又は複数の追加の化合物と併用して、投与することを含む、方法を提供する。
【0015】
本発明の更なる態様において、哺乳動物におけるPI3キナーゼにより調節される過剰増殖性疾病又は症状を治療するために、本発明の化合物を使用する方法が提供される。
【0016】
本発明の更なる態様は、脳腫瘍を含む哺乳動物におけるPI3キナーゼにより調節されるがんを治療するための本発明の化合物の使用である。
【0017】
本発明の別の態様は、式Iの化合物、容器、及び場合によっては添付文書又は治療を示すラベルを含むキットを含む。
【0018】
本発明の別の態様は、式Iの化合物の調製方法、分離方法及び精製方法を含む。
【0019】
本発明の別の態様は、式Iの化合物を調製するのに有用な新規な中間体を含む。
【0020】
例示的な実施態様の詳細な説明
本発明のある実施態様について詳細に述べるが、それらの例は、付随する構造及び式に示される。本発明は列挙される実施態様と併せて記載されるが、本発明はそれらの実施態様に限定されるものではないと理解されるべきである。一方、本発明は、特許請求の範囲により定義される、本発明の範囲内に含まれ得る全ての代替物、改変物及び等価物を含むことを意図している。当業者は、本発明の実施において使用され得る本明細書に記載のものに類似の又は等価の多くの方法及び物質を認識するであろう。本発明は、記載される方法及び物質に決して限定されない。定義される用語、用語使用法、記載されている技術等を含めて、援用される文献、特許及び同様の物質のうちの一つ又は複数が、本出願と異なるか又は相反する場合は、本出願が支配する。
【0021】
定義
本明細書で使用される場合の「アルキル」なる用語は、一から十二の炭素原子(C−C12)の飽和の直鎖又は分枝鎖状の一価の炭化水素基を指し、ここでアルキル基は以下に記載する一又は複数の置換基で独立して置換されていてもよい。別の実施態様において、アルキル基は、一から八の炭素原子(C−C)であるか又は、一から六の炭素原子(C−C)である。アルキル基の例は、メチル(Me、−CH)、エチル(Et、−CHCH)、1−プロピル(n−Pr、n−プロピル、−CHCHCH)、2−プロピル(i−Pr、i−プロピル、−CH(CH)、1−ブチル(n−Bu、n−ブチル、−CHCHCHCH)、2−メチル−1−プロピル(i−Bu、i−ブチル、−CHCH(CH)、2−ブチル(s−Bu、s−ブチル、−CH(CH)CHCH)、2−メチル−2−プロピル(t−Bu、t−ブチル、−C(CH)、1−ペンチル(n−ペンチル、−CHCHCHCHCH)、2−ペンチル(−CH(CH)CHCHCH)、3−ペンチル(−CH(CHCH)、2−メチル−2−ブチル(−C(CHCHCH)、3−メチル−2−ブチル(−CH(CH)CH(CH)、3−メチル−1−ブチル(−CHCHCH(CH)、2−メチル−1−ブチル(−CHCH(CH)CHCH)、1−ヘキシル(−CHCHCHCHCHCH)、2−ヘキシル(−CH(CH)CHCHCHCH)、3−ヘキシル(−CH(CHCH)(CHCHCH))、2−メチル−2−ペンチル(−C(CHCHCHCH)、3−メチル−2−ペンチル(−CH(CH)CH(CH)CHCH)、4−メチル−2−ペンチル(−CH(CH)CHCH(CH)、3−メチル−3−ペンチル(−C(CH)(CHCH)、2−メチル−3−ペンチル(−CH(CHCH)CH(CH)、2,3−ジメチル−2−ブチル(−C(CHCH(CH)、3,3−ジメチル−2−ブチル(−CH(CH)C(CH、1−ヘプチル、1−オクチル等を含むが、これらに限定されない。
【0022】
「アルケニル」なる用語は、少なくとも一の不飽和部位、即ち、炭素−炭素、sp二重結合を有する、二から八の炭素原子(C−C)の直鎖又は分枝鎖状の一価の炭化水素基を指し、ここで、そのアルケニル基は、本明細書に記載される一又は複数の置換基で独立して置換されていてもよく、「シス」及び「トランス」配向、又は、「E」及び「Z」配向を有する基を含む。その例は、エチレニル又はビニル(−CH=CH)、アリル(−CHCH=CH)等を含むが、これらに限定されない。
【0023】
「アルキニル」なる用語は、少なくとも一の不飽和部位、即ち、炭素−炭素、sp三重結合を有する、二から八の炭素原子(C−C)の直鎖又は分枝鎖状の一価の炭化水素基を指し、ここで、そのアルキニル基は、本明細書に記載される一又は複数の置換基で独立して置換されていてもよい。その例は、エチニル(−CoCH)、プロピニル(プロパルギル、−CHCoCH)等を含むが、これらに限定されない。
【0024】
「炭素環(carbocycle)」、「カルボシクリル」、「炭素環(carbocyclic ring)」及び「シクロアルキル」なる用語は、単環として3から12の炭素原子(C−C12)又は二環として7から12の炭素原子を有する、一価の、非芳香族の、飽和又は部分的に不飽和の環を指す。7から12の原子を有する二環式炭素環は、例えば、二環式[4,5]、[5,5]、[5,6]又は[6,6]系として配列され得、9又は10の環原子を有する二環式炭素環は、二環式[5,6]又は[6,6]系として、又は二環式[2.2.1]ヘプタン、二環式[2.2.2]オクタン及び二環式[3.2.2]ノナン等の架橋系として配列され得る。単環式炭素環の例は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、1−シクロペント−1−エニル、1−シクロペント−2−エニル、1−シクロペント−3−エニル、シクロヘキシル、1−シクロヘキス−1−エニル、1−シクロヘキス−2−エニル、1−シクロヘキス−3−エニル、シクロヘキサジエニル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル、シクロウンデシル、シクロドデシル等を含むが、これらに限定されない。
【0025】
「アリール」とは、親芳香族環系の一の炭素原子から一水素原子を除去することにより生じる、6−20の炭素原子(C−C20)の一価の、芳香族の炭化水素基を意味する。幾つかのアリール基は、「Ar」として典型的な構造に表される。アリールは、飽和環、部分的不飽和環又は芳香族炭素環と縮合した芳香環から成る二環式基を含む。典型的なアリール基は、ベンゼン(フェニル)、置換ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ビフェニル、インデニル、インダニル、1,2−ジヒドロナフタレン、1,2,3,4−テトラヒドロナフチル等から生じる基を含むが、これらに限定されない。アリール基は、本明細書に記載される一又は複数の置換基で独立して置換されていてもよい。
【0026】
「複素環(heterocycle)」、「ヘテロシクリル」及び「複素環(heterocyclic ring)」なる用語は、本明細書で区別せずに使用され、少なくとも一の環原子が、窒素、酸素、リン及び硫黄から選択されるヘテロ原子であり、残りの環原子がCであり、ここで一又は複数の環原子が以下に記載される一又は複数の置換基で独立して置換されていてもよい、3から約20の環原子の飽和又は部分的不飽和(即ち、その環で一又は複数の二重及び/又は三重結合を有する)の炭素環式基を指す。複素環は、3から7環員(2から6の炭素原子並びにN、O、P及びSから選択される1から4のヘテロ原子)を有する単環、又は7から10環員(4から9の炭素原子並びにN、O、P及びSから選択される1から6のヘテロ原子)を有する二環、例えば:二環式[4,5]、[5,5]、[5,6]又は[6,6]系であり得る。複素環は、Paquette, Leo A.;「Principles of Modern Heterocyclic Chemistry」(W.A. Benjamin, New York, 1968), 特にChapters 1,3,4,6,7及び9;「The Chemistry of Heterocyclic Compounds, A series of Monographs」(John Wiley & Sons, New York, 1950から現在)、特にVolumes 13,14,16,19及び28;並びにJ. Am. Chem. Soc. (1960) 82: 5566に記載される。「ヘテロシクリル」とは、複素環基が飽和環、部分的飽和環又は芳香族炭素環若しくは複素環と縮合した基を含む。複素環の例は、モルホリン−4−イル、ピペリジン−1−イル、ピペラジニル、ピペラジン−4−イル−2−オン、ピペラジン−4−イル−3−オン、ピロリジン−1−イル、チオモルホリン−4−イル、S−ジオキソチオモルホリン−4−イル、アゾカン−1−イル、アゼチジン−1−イル、オクタヒドロピリド[1,2−a]ピラジン−2−イル、[1,4]ジアゼパン−1−イル、ピロリジニル、テトラヒドロフラニル、ジヒドロフラニル、テトラヒドロチエニル、テトラヒドロピラニル、ジヒドロピラニル、テトラヒドロチオピラニル、ピペリジノ、モルホリノ、チオモルホリノ、チオキサニル、ピペラジニル、ホモピペラジニル、アゼチジニル、オキセタニル、チエタニル、ホモピペリジニル、オキセパニル、チエパニル、オキサゼピニル、ジアゼピニル、チアゼピニル、2−ピロリニル、3−ピロリニル、インドリニル、2H−ピラニル、4H−ピラニル、ジオキサニル、1,3−ジオキソラニル、ピラゾリニル、ジチアニル、ジチオラニル、ジヒドロピラニル、ジヒドロチエニル、ジヒドロフラニル、ピラゾリジニルイミダゾリニル、イミダゾリジニル、3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサニル、3−アザビシクロ[4.1.0]ヘプタニル、アザビシクロ[2.2.2]ヘキサニル、3H−インドリル キノリジニル及びN−ピリジル 尿素を含むが、これらに限定されない。スピロ部分も本定義の範囲内に含まれる。2の環原子がオキソ(=O)部分で置換された複素環式基の例は、ピリミジノニル及び1,1−ジオキソ−チオモルホリニルである。複素環基は、本明細書に記載される一つ又は複数の基で独立して置換されていてもよい。
【0027】
「ヘテロアリール」なる用語は、5−、6−又は7−員環の、一価の芳香族基を指し、窒素、酸素及び硫黄から独立して選択される一又は複数のヘテロ原子を含む、5−20の原子の縮合環系(その少なくとも一は芳香族である)を含む。ヘテロアリール基の例は、ピリジニル(例えば、2−ヒドロキシピリジニルを含む)、イミダゾリル、イミダゾピリジニル、ピリミジニル(例えば、4−ヒドロキシピリミジニルを含む)、ピラゾリル、トリアゾリル、ピラジニル、テトラゾリル、フリル、チエニル、イソキサゾリル、チアゾリル、オキサジアゾリル、オキサゾリル、イソチアゾリル、ピロリル、キノリニル、イソキノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、インドリル、ベンズイミダゾリル、ベンゾフラニル、シンノリニル、インダゾリル、インドリジニル、フタラジニル、ピリダジニル、トリアジニル、イソインドリル、プテリジニル、プリニル、オキサジアゾリル、トリアゾリル、チアジアゾリル、チアジアゾリル、フラザニル、ベンゾフラザニル、ベンゾチオフェニル、ベンゾチアゾリル、ベンズオキサゾリル、キナゾリニル、キノキサリニル、ナフチリジニル及びフロピリジニルである。ヘテロアリール基は、本明細書に記載される一又は複数の置換基で独立して置換されていてもよい。
【0028】
複素環又はヘテロアリール基は、可能である場合、炭素(炭素結合)又は窒素(窒素結合)結合で結合されてもよい。限定ではなく、例として、炭素結合した複素環又はヘテロアリールは、ピリジンの2、3、4、5又は6位、ピリダジンの3、4、5又は6位、ピリミジンの2、4、5又は6位、ピラジンの2、3、5又は6位、フラン、テトラヒドロフラン、チオフラン、チオフェン、ピロール若しくはテトラヒドロピロールの2、3、4又は5位、オキサゾール、イミダゾール若しくはチアゾールの2、4又は5位、イソキサゾール、ピラゾール若しくはイソチアゾールの3、4又は5位、アジリジンの2又は3位、アゼチジンの2、3又は4位、キノリンの2、3、4、5、6、7又は8位、又はイソキノリンの1、3、4、5、6、7又は8位で結合される。
【0029】
限定ではなく、例として、窒素結合した複素環又はヘテロアリールは、アジリジン、アゼチジン、ピロール、ピロリジン、2−ピロリン、3−ピロリン、イミダゾール、イミダゾリジン、2−イミダゾリン、3−イミダゾリン、ピラゾール、ピラゾリン、2−ピラゾリン、3−ピラゾリン、ピペリジン、ピペラジン、インドール、インドリン、1H−インダゾールの1位、イソインドール又はイソインドリンの2位、モルホリンの4位、並びにカルバゾール若しくはβ−カルボリンの9位で結合される。
【0030】
「治療する」及び「治療」なる用語は、治療的処置及び予防的若しくは防止的対策の両方を指し、ここで、望ましくない生理学的変化又は疾患、例えば、がんの発生若しくは転移を予防する又は遅らせる(抑える)ことを目的とする。この発明の目的上、有益な又は所望の臨床結果は、検出可能であれ検出不可能であれ、徴候の軽減、疾病の程度の低減、疾病の安定化(つまり悪化しない)状態、疾病進行の遅延又は緩徐化、疾病状態の改善又は緩和、及び寛解(部分的又は完全)を含むが、これらに限定されない。「治療」は、治療を受けない場合に予想される生存率と比較して、生存を延長することを意味し得る。治療を必要とする者は、既に症状又は疾患を持つ者並びに症状又は疾患になりやすい者又は症状又は疾患が予防されるべき者を含む。
【0031】
「治療的有効量」なる語句は、かかる治療を必要とする哺乳動物に投与される場合、(i)特定の疾病、症状若しくは疾患を治療又は予防するのに、(ii)特定の疾病、症状若しくは疾患の一又は複数の徴候を軽減し、改善し、又は排除するのに、あるいは(iii)ここに記載される特定の疾病、症状若しくは疾患の一つ又は複数の徴候の発症を予防するか又は遅延させる、本発明の化合物の量を意味する。がんの場合、治療的有効量の薬剤は、がん細胞数を縮小させ;腫瘍の大きさを縮小させ;末梢器官へがん細胞浸潤を阻害し(即ち、ある程度遅らせ、好ましくは停止させる);腫瘍転移を阻害し(即ち、ある程度遅らせ、好ましくは停止させる);腫瘍増殖をある程度阻害し;及び/又はがんに関連する一又は複数の徴候をある程度緩和し得る。薬剤は、増殖を防ぎ、及び/又は既存のがん細胞を死滅させ得る範囲で、細胞増殖抑制性及び/又は細胞毒性であり得る。がん治療のために、例えば、疾病進行までの時間(TTP)を評価すること及び/又は反応率(RR)を決定することにより、有効性が測定され得る。
【0032】
「がん」なる用語は、調節されない細胞増殖を一般的に特徴とする、哺乳動物の生理学的状態をいうか又は表わす。「腫瘍」は、一つ又は複数の癌性細胞を含む。がんの例としては、癌腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫、及び白血病又は悪性リンパ性を含むが、これらに限定されない。このようながんのより具体的な例には、扁平上皮がん(例えば扁平上皮細胞がん)、肺がん(小細胞肺がん、非小細胞肺がん(NSCLC)、肺の腺癌及び肺の扁平上皮癌を含む)、腹膜のがん、肝細胞がん、消化管がんを含む胃(gastric、stomach)がん、膵臓がん、神経膠芽腫、子宮頸がん、卵巣がん、肝臓がん、膀胱がん、肝細胞癌、乳がん、結腸がん、直腸がん、結腸直腸がん、子宮内膜若しくは子宮細胞腫、唾液腺細胞腫、腎臓がん又は腎がん、前立腺がん、外陰部がん、甲状腺がん、肝細胞腫、肛門細胞腫、陰茎細胞腫、並びに頭部及び頸部のがんが含まれる。
【0033】
「化学療法薬」とは、作用機序を問わず、がんの治療に有用な化合物である。化学療法薬のクラスは:アルキル化剤、代謝拮抗剤、紡錘体毒植物アルカロイド、細胞毒性/抗腫瘍抗生物質、トポイソメラーゼ阻害剤、抗体、光増感剤及びキナーゼ阻害剤を含むが、これらに限定されない。化学療法薬は、「標的療法」及び従来の化学療法で使用される化合物を含む。化学療法薬の例は:エルロチニブ(TARCEVA(登録商標)、Genentech/OSI Pharm.)、ドセタキセル(TAXOTERE(登録商標)、Sanofi−Aventis)、5−FU(フルオロウラシル、5−フルオロウラシル、CAS No.51−21−8)、ゲムシタビン(GEMZAR(登録商標)、Lilly)、PD−0325901(CAS No.391210−10−9、Pfizer)、シスプラチン(シス−ジアミン、ジクロロ白金(II)、CAS No.15663−27−1)、カルボプラチン(CAS No.41575−94−4)、パクリタキセル(TAXOL(登録商標)、Bristol−Myers Squibb Oncology, Princeton, N.J.)、ペメトレキセド(ALIMTA(登録商標)、Eli Lilly)、トラスツズマブ(HERCEPTIN(登録商標)、Genentech)、テモゾロミド4−メチル−5−オキソ−2,3,4,6,8−ペントアザビシクロ [4.3.0]ノナ−2,7,9−トリエン−9−カルボキサミド、CAS No.85622−93−1、TEMODAR(登録商標)、TEMODAL(登録商標)、Schering Plough)、タモキシフェン((Z)−2−[4−(1,2−ジフェニルブト−1−エニル)フェノキシ]−N,N−ジメチルエタンアミン、NOLVADEX(登録商標)、ISTUBAL(登録商標)、VALODEX(登録商標))、及びドキソルビシン(ADRIAMYCIN(登録商標))、Akti−1/2、HPPD、及びラパマイシンを含む。
【0034】
化学療法薬のその他の例は:オキサリプラチン(ELOXATIN(登録商標)、Sanofi)、ボルテゾミブ(VELCADE(登録商標)、Millennium Pharm.)、スーテント(SUNITINIB(登録商標)、SU11248、Pfizer)、レトロゾール(FEMARA(登録商標)、Novartis)、メシル酸イマチニブ(GLEEVEC(登録商標)、Novartis)、XL−518(Mek阻害剤、Exelixis、WO2007/044515)、ARRY−886(Mek阻害剤、AZD6244、Array BioPharma, Astra Zeneca)、SF−1126(PI3K阻害剤、Semafore Pharmaceuticals)、BEZ−235(PI3K阻害剤、Novartis)、XL−147(PI3K阻害剤、Exelixis)、PTK787/ZK 222584(Novartis)、フルベストラント(FASLODEX(登録商標)、AstraZeneca)、ロイコボリン(フォリン酸)、ラパマイシン(シロリムス、RAPAMUNE(登録商標)、Wyeth)、ラパチニブ(TYKERB(登録商標)、GSK572016、Glaxo Smith Kline)、ロナファルニブ(SARASARTM、SCH 66336、Schering Plough)、ソラフェニブ(NEXAVAR(登録商標)、BAY43−9006、Bayer Labs)、ゲフィチニブ(IRESSA(登録商標)、AstraZeneca)、イリノテカン(CAMPTOSAR(登録商標)、CPT−11、Pfizer)、チピファルニブ(ZARNESTRATM、Johnson&Johnson)、ABRAXANETM(発色団なし)、パクリタキセルのアルブミン操作されたナノ粒子製剤(American Pharmaceutical Partners, Schaumberg, Il)、バンデタニブ(rINN、ZD6474、ZACTIMA(登録商標)、AstraZeneca)、クロラムブシル、AG1478、AG1571(SU 5271;Sugen)、テムシロリムス(TORISEL(登録商標)、Wyeth)、パゾパニブ(GlaxoSmithKline)、カンホスファミド(TELCYTA(登録商標)、Telik)、チオテパ及びシクロホスファミド(CYTOXAN(登録商標)、NEOSAR(登録商標));ブスルファン、インプロスルファン及びピポスルファン等のスルホン酸アルキル;ベンゾドーパ、カルボコン、メツレドーパ及びウレドーパ等のアジリジン;アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホルアミド、トリエチレンチオホスホルアミド及びトリメチロメラミンを含むエチレンイミン及びメチラメラミン;アセトゲニン(特に、ブラタシン及びブラタシノン);カンプトテシン(合成類似体トポテカンを含む);ブリオスタチン;カリスタチン;CC−1065(そのアドゼレシン、カルゼレシン及びビゼレシン合成類似体を含む);クリプトフィシン(特に、クリプトフィシン1及びクリプトフィシン8);ドラスタチン;デュオカルマイシン(合成類似体、KW−2189及びCB1−TM1を含む);エリュテロビン;パンクラチスタチン;サルコジクチン;スポンジスタチン;クロラムブシル、クロルナファジン、クロロホスファミド、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシド塩酸塩、メルファラン、ノブエンビキン、フェネステリン、プレドニムスチン、トロフォスファミド、ウラシルマスタード等の窒素マスタード;カルムスチン、クロロゾトシン、ホテムスチン、ロムスチン、ニムスチン及びラニムスチン等のニトロソ尿素;;エンジイン抗生物質等の抗生物質(例えば、カリケアマイシン、カリケアマイシンガンマ1I、カリケアマイシンオメガI1(Angew Chem. Intl. Ed. Engl. (1994) 33: 183-186);ジネミシン、ジネミシンA;クロドロナート等のビスホスホナート;エスペラミシン;並びにネオカルジノスタチン発色団及び関連色素タンパク質エンジイン抗生物質発色団))、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、オースラマイシン、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カラビシン、カルミノマイシン、カルジノフィリン、クロモミシニス、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6−ジアゾ−5−オキソ−L−ノルロイシン、モルホリノ−ドキソルビシン、シアノモルホリノ−ドキソルビシン、2−ピロリノ−ドキソルビシン及びデオキシドキソルビシン)、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、ネモルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシンC等のマイトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポルフィロマイシン、ピューロマイシン、クエラマイシン、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシン;メトトレキサート及び5−フルオロウラシル(5−FU)等の代謝拮抗物質;デノプテリン、メトトレキサート、プテロプテリン、トリメトレキサート等の葉酸類似体;フルダラビン、6−メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニン等のプリン類似体;アンシタビン、アザシチジン、6−アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジン等のピリミジン類似体;カルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン等のアンドロゲン;アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタン等の副腎皮質抑制剤;フロリン酸等の葉酸補給剤;アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;エニルウラシル;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトラキサート;デホファミン;デメコルシン;ジアジクオン;エルホルニチン;酢酸エリプチニウム;エポチロン;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシ尿素;レンチナン;ロニダイニン;メイタンシン及びアンサミトシン等のメイタンシノイド;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダンモール;ニトラエリン;ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ロソキサントロン;ポドフィリン酸;2−エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(登録商標)多糖類複合体(JHS Natural Products, Eugene, OR);ラゾキサン;リゾキシン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジクオン;2,2’,2”−トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン、ベラクリンA、ロリジンA及びアングイジン);ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン;アラビノシド(「Ara−C」);シクロホスファミド;チオテパ;6−チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;シスプラチン及びカルボプラチン等の白金類似体;ビンブラスチン;エトポシド(VP−16);イホスファミド;ミトキサントロン;ビンクリスチン;ビノレルビン(NAVELBINE(登録商標));ノバントロン;テニポシド;エダトレキサート;ダウノマイシン;アミノプテリン;カペシタビン(XELODA(登録商標)、Roche);イバンドロナート;CPT−11;トポイソメラーゼ阻害剤RFS 2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイン酸等のレチノイド;並びに上記のいずれかの薬学的に許容される塩、酸及び誘導体を含む。
【0035】
その他「化学療法薬」の定義に含まれるものは:(i)抗エストロゲン剤及び選択的エストロゲン受容体調節剤(SERM)等の、腫瘍へのホルモン作用を調節又は阻害するように作用する抗ホルモン剤、例えば、タモキシフェン(NOLVADEX(登録商標);クエン酸タモキシフェンを含む)、ラロキシフェン、ドロロキシフェン、4−ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケオキシフェン、LY117018、オナプリストン及びFARESTON(登録商標)(トレミフィンシトラート)を含むもの;(ii)酵素アロマターゼを阻害し、副腎でのエストロゲン産生を調節するアロマターゼ阻害剤、例えば、4(5)−イミダゾール、アミノグルテチミド、MEGASE(登録商標)(酢酸メゲストロール)、AROMASIN(登録商標)(エキセメスタン;Pfizer)、ホルメスタニ、ファドロゾール、RIVISOR(登録商標)(ボロゾール)、FEMARA(登録商標)(レトロゾール;Novartis)及びARIMIDEX(登録商標)(アナストロゾール;AstraZeneca)等のもの;(iii)抗アンドロゲン剤、例えば、フルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、ロイプロリド及びゴセレリン等のもの;並びにトロキサシタビン(1,3−ジオキソランヌクレオシドシトシン類似体);(iv)MEK阻害剤(国際公開第2007/044515号)等のプロテインキナーゼ阻害剤;(v)脂質キナーゼ阻害剤;(vi)アンチセンスオリゴヌクレオチド、特に、異常な細胞増殖に関係しているシグナル伝達経路の遺伝子の発現を阻害するもの、例えば、PKC−アルファ、Raf及びH−Ras、例えば、オブリメルセン(GENASENSE(登録商標)、Genta Inc.)等のもの;(vii)VEGF発現阻害剤(例えば、ANGIOZYME(登録商標))及びHER2発現阻害剤等のリボザイム;(viii)遺伝子療法ワクチン等のワクチン、例えば、ALLOVECTIN(登録商標)、LEUVECTIN(登録商標)及びVAXID(登録商標);PROLEUKIN(登録商標)rIL−2;LURTOTECAN(登録商標)等のトポイソメラーゼ1阻害剤;ABARELIX(登録商標)rmRH;(ix)ベバシズマブ(AVASTIN(登録商標)、Genentech)等の血管新生阻害剤;並びに上記のいずれかの薬学的に許容される塩、酸及び誘導体である。
【0036】
その他「化学療法薬」の定義に含まれるものは、アレムツズマブ(Campath)、ベバシズマブ(AVASTIN(登録商標)、Genentech);セツキシマブ(ERBITUX(登録商標)、Imclone);パニツムマブ(VECTIBIX(登録商標)、Amgen)、リツキシマブ(RITUXAN(登録商標)、Genentech/Biogen Idec)、ペルツズマブ(OMNITARGTM(商標)、2C4、Genentech)、トラスツズマブ(HERCEPTIN(登録商標)、Genentech)、トシツモマブ(Bexxar、Genentech)、及び抗体医薬コンジュゲートであるゲムツズマブオゾガマイシン(MYLOTARG(登録商標)、Wyeth)等の治療抗体である。
【0037】
本発明のPI3K阻害剤と併用して化学療法薬として治療可能性があるヒト化モノクローナル抗体は:アレムツズマブ、アポリズマブ、アセリズマブ、アトリズマブ、バピニューズマブ、ベバシズマブ、ビバツズマブ メルタンシン、カンツズマブ メルタンシン、セデリズマブ、セルトリズマブ ぺゴール、シドフシツズマブ、シドツズマブ、ダクリズマブ、エクリズマブ、エファリズマブ、エプラツズマブ、エルリズマブ、フェルビズマブ、フォントリズマブ、ゲムツズマブ オゾガマイシン、イノツズマブ オゾガマイシン、イピリムマブ、ラベツズマブ、リンツズマブ、マツズマブ、メポリズマブ、モタビズマブ、モチビズマブ、ノタリズマブ、ニモツズマブ、ノロビズマブ、ヌマビズマブ、オクレリズマブ、オマリズマブ、パリビズマブ、パスコリズマブ、ペクフシツズマブ、ペクツズマブ、ペルツズマブ、ペキセリズマブ、ラリビズマブ、ラニビズマブ、レスリビズマブ、レスリズマブ、レシビズマブ、ロベリズマブ、ルピリズマブ、シブロツズマブ、シプリズマブ、ソンツズマブ、タカツズマブ テトラキセタン、タドシズマブ、タリズマブ、テフィバズマブ、トシリズマブ、トラリズマブ、トラスツズマブ、ツコツズマブ セルモロイキン、ツクシツズマブ、ウマビズマブ、ウルトキサズマブ、及びビジリズマブを含む。
【0038】
「代謝物」とは、特定の化合物又はその塩の、体内での代謝を通じて生成される生成物である。化合物の代謝物は、当技術分野で知られる所定の技術及び本明細書で記載されるような試験を使用して決定されるその活性を使用して同定され得る。そのような生成物は、例えば、投与される化合物の酸化、還元、加水分解、アミド化、脱アミド化、エステル化、脱エステル化、酵素的切断等により生じ得る。したがって、本発明は、本発明の化合物を、その代謝生成物を酸性化するのに十分な時間、哺乳動物に接触させることを含むプロセスにより生成される化合物を含む、本発明の化合物の代謝を含む。
【0039】
「添付文書」なる用語は、治療薬の商用パッケージに通例含まれる取扱説明書を指すために使用され、そのような治療薬の使用に関する適応、使用法、用量、投与、禁忌及び/又は警告についての情報を含む。
【0040】
「キラル」なる用語は、鏡像対に重ね合わせできない分子をいう一方、「アキラル」なる用語は、その鏡像対に重ね合わせできる分子をいう。
【0041】
「立体異性体」なる用語は、同一の化学的構成を有しているが、空間におけるその原子又は基の配列については異なる化合物をいう。
【0042】
「ジアステレオマー」とは、二又はそれ以上のキラル中心を有し、その分子が互いの鏡像ではない立体異性体をいう。ジアステレオマーは、異なる物理的特性、例えば融点、沸点、スペクトル特性及び反応性を有している。ジアステレオマーの混合物は、例えば電気泳動及びクロマトグラフィーのような高分解能分析手順下で分離し得る。
【0043】
「エナンチオマー」とは互いに重ね合わせできない鏡像である化合物の二つの立体異性体をいう。
【0044】
本明細書で使用される立体科学の定義及び慣例は、一般的に、Stereochemical definitions and conventions used herein generally follow S. P. Parker, Ed., McGraw-Hill Dictionary of Chemical Terms (1984) McGraw-Hill Book Company, New York; and Eliel, E. and Wilen, S.,「Stereochemistry of Organic Compounds」, John Wiley & Sons, Inc., New York, 1994に従う。本発明の化合物は、不斉又はキラル中心を含み得、従って、異なる立体異性体形態で存在し得る。本発明の全ての立体異性体形態(ジアステレオマー、エナンチオマー及びアトロプ異性体、並びにラセミ混合物のようなその混合物を含むが、これらに限定されない)が、本発明の一部を形成すると意図される。多くの有機化合物は、光学活性形態で存在する、即ち、平面偏光の平面を回転させる能力を有する。光学的に活性な化合物の記載において、接頭語のD及びL、又はR及びSは、そのキラル中心に関する分子の絶対配置を表示するために使用される。接頭語d及びl又は(+)及び(−)は、化合物による平面偏光の回転の符号を表し、(−)又はlは、この化合物が左旋性であることを意味する。(+)又はdの接頭語がついた化合物は、右旋性である。所定の化学構造について、これらの立体異性体は、互いに鏡像対称であることを除いて同一である。特定の立体異性体は、エナンチオマーとも称され、そのような異性他の混合物は、しばしばエナンチオマー混合物と称される。エナンチオマーの50:50混合物は、ラセミ混合物若しくはラセミ体と呼ばれ、これは、化学反応又は方法において立体選択性若しくは立体特異性が存在しない場合に生じ得る。「ラセミ混合物」及び「ラセミ体」なる用語は、光学活性を有さない、2つのエナンチオマー種の等モル濃度の混合物をいう。
【0045】
「互変異性体」又は「互変異性体形態」なる用語は、低エネルギー障壁を介して相互転換可能な異なるエネルギーの構造異性体をいう。例えば、プロトン互変異性体(プロトトロピー互変異性体としても知られる)は、ケト−エノール及びイミン−エナミン異性化のようなプロトンの移動を介する相互変換を含む。原子価互変異性体は、結合電子の幾らかの再構築による相互変換を含む。
【0046】
ここで使用される「薬学的に許容される塩」なる語句は、本発明の化合物の薬学的に許容される有機又は無機の塩をいう。典型的な塩としては、硫酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硝酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、酸性リン酸塩、イソニコチン酸塩、乳酸塩、サリチル酸塩、酸性クエン酸塩、酒石酸塩、オレイン酸塩、タンニン酸塩、パントテン酸塩、酸性酒石酸塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、ゲンチシン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、サッカラート、ギ酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、メタンスルホン酸塩「メシラート」、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、及びパモ酸塩(すなわち、1,1’−メチレンビス−(2−ヒドロキシ−3−ナフトエート)を含むが、これらに限定されない。薬学的に許容される塩は、酢酸イオン、コハク酸イオン又は他の対イオンのような別の分子の包含を含み得る。対イオンは、親化合物上の電荷を安定化させる任意の有機部分又は無機部分であり得る。さらに、薬学的に許容されるな塩は、一つより多くの荷電した原子をその構造内に有し得る。多数の荷電した原子がその薬学的に許容される塩の一部分である場合、多数の対イオンを有し得る。したがって、薬学的に許容される塩は、一つ又は複数の荷電した原子及び/又は一つ又は複数の対イオンを有し得る。
【0047】
本発明の化合物が塩基である場合、所望の薬学的に許容される塩は、当技術分野で利用できる任意の適切な方法、例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、メタンスルホン酸、リン酸等のような無機酸で、又は例えば酢酸、トリフルオロ酢酸、マレイン酸、コハク酸、マンデル酸、フマル酸、マロン酸、ピルビン酸、シュウ酸、グリコール酸、サリチル酸、ピラノシジル酸、例えばグルクロン酸又はガラクツロン酸、アルファ−ヒドロキシ酸、例えばクエン酸又は酒石酸、アミノ酸、例えばアスパラギン酸又はグルタミン酸、芳香族酸、例えば安息香酸又はケイ皮酸、スルホン酸、例えばp−トルエンスルホン酸又はエタンスルホン酸等のような有機酸での遊離塩基の処理によって調製され得る。
【0048】
本発明の化合物が酸である場合、所望の薬学的に許容される塩は、任意の適切な方法、例えば無機又は有機塩基、例えばアミン(第1級、第2級又は第3級)、アルカリ金属水酸化物又はアルカリ土類金属水酸化物等での遊離酸の処理によって調製され得る。適切な塩を例証する例は、アミノ酸、例えばグリシン及びアルギニン、アンモニア、第1級、第2級及び第3級アミン、及び環状アミン、例えばピペリジン、モルホリン及びピペラジンから誘導される有機塩基、並びにナトリウム、カルシウム、カリウム、マグネシウム、マンガン、鉄、銅、亜鉛、アルミニウム及びリチウムから誘導される無機塩を含むが、これらに限定されない。
【0049】
「薬学的に許容される」なる語句は、物質又は組成物が、製剤を構成する他の成分、及び/又はそれで治療されている哺乳動物と、化学的に及び/又は毒物学的に適合性がある必要があることを示す。
【0050】
「溶媒和物」は一つ又は複数の溶媒分子と本発明の化合物の結合体又は複合体をいう。溶媒和物を形成する溶媒の例は、水、イソプロパノール、エタノール、メタノール、DMSO、酢酸エチル、酢酸及びエタノールアミンを含むが、これらに限定されない。
【0051】
「本発明の化合物(一又は複数)」及び「式Iの化合物」なる用語は、式Iの化合物及び立体異性体、幾何異性体、互変異性体、溶媒和物、代謝物、及びそれらの薬学的に許容される塩とプロドラッグを含む。
【0052】
式Iの化合物を含む本明細書で与えられる任意の式又は構造は、そのような化合物及びそれらの混合物の水和物、溶媒和物及び多形体を表すことが意図される。
【0053】
ジオキシノ−及びオキサジン−[2,3−D]ピリミジン PI3K阻害剤化合物
本発明は、式Iのジオキシノ−及びオキサジン−[2,3−d]ピリミジン PI3K阻害剤化合物及びその医薬製剤を提供し、それらは、キナーゼ(PI3K)によって調節される疾病、症状及び/又は疾患の治療において潜在的に有用である。特に、本発明は式I:
[上式中、
及びRは、H、=O、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルキニル及びC−C12カルボシクリルから独立して選択され、ここで、アルキル及びカルボシクリルは、F、Cl、Br、I、−CH、−CHCH、−CH(CH、−CHCH(CH、−CHCH、−CHCN、−CN、−CF、−CHOH、−COH、−CONH、−CONH(CH)、−CON(CH、−NO、−NH、−NHCH、−N(CH、−NHCOCH、−OH、=O、−OCH、−OCHCH、−OCH(CH、−SH、−NHC(=O)NHCH、−NHC(=O)NHCHCH、−NHC(=O)NHCH(CH、−NHS(O)CH、−N(CH)C(=O)OC(CH、−S(O)CH、ベンジル、ベンジルオキシ、シクロプロピル、モルホリニル、モルホリノメチル及び4−メチルピペラジン−1−イルから独立して選択される一又は複数の基で置換されていてもよく;又は
の基又はRの基が、スピロ、3から6員炭素環又は複素環を形成し;
が、C−C20アリール、C−C20ヘテロシクリル及びC−C20ヘテロアリールから選択され、そのそれぞれが、F、Cl、Br、I、−CH、−CHCH、−CH(CH、−CHCH(CH、−CHCH、−CHCN、−CN、−CF、−CHOH、−COH、−CONH、−CONH(CH)、−CON(CH、−NO、−NH、−NHCH、−N(CH、−NHCOCH、−OH、−OCH、−OCHCH、−OCH(CH、−SH、−NHC(=O)NHCH、−NHC(=O)NHCHCH、−NHC(=O)NHCH(CH、−NHS(O)CH、−N(CH)C(=O)OC(CH、−S(O)CH、ベンジル、ベンジルオキシ、モルホリニル、モルホリノメチル及び4−メチルピペラジン−1−イルから独立して選択される一又は複数の基で置換されていてもよく;
XがO、S及びNRから選択され;
RがH又はC−Cアルキルである]
の化合物及びその立体異性体、幾何異性体、互変異性体、並びにそれらの薬学的に許容される塩に関する。
【0054】
更に、本明細書に記載される通り、特定の残留物R、R、Rに関する全ての実施態様は、本明細書に記載される通り、別の残留物R、R、Rに関する他のあらゆる実施態様と組み合わせられ得る。
【0055】
本発明の化合物の典型的な実施態様は、式Ia及びIb:
を含む。
【0056】
式Iの化合物の典型的な実施態様は、RがH、−CH、−CHCH、−C(CH、−CHOH、−CHCHOH、−C(CHOH、−CHOCH3、−CN、−CHF、−CHF及び−CFから独立して選択されることを含む。
【0057】
式Iの化合物の典型的な実施態様は、RがH、−CH及びシクロプロピルから独立して選択されることを含む。
【0058】
式Iの化合物の典型的な実施態様は、RがH、−CH、−C(CH、−CHOH、−CF、−CHF及びシクロプロピルから独立して選択されることを含む。
【0059】
式Iの化合物の典型的な実施態様は、Rがそれぞれ−CHであることを含む。
【0060】
式Iの化合物の典型的な実施態様は、二つのRが=O又はシクロプロピルを形成することを含む。
【0061】
典型的な式Iの化合物は、RがF、Cl、Br、I、−CH、−CHCH、−CH(CH、−CN、−CF、−CHOH、−COH、−CONH、−CONH(CH)、−CON(CH、−NO、−NH、−NHCH、−N(CH、−NHCOCH、−OH、−OCH、−OCHCH、−OCH(CH、−SH、−NHC(=O)NHCH、−NHC(=O)NHCHCH、−NHS(O)CH、−N(CH)C(=O)OC(CH及び−S(O)CHから選択される一又は複数の基で置換されたフェニルであることを含む。
【0062】
典型的な式Iの化合物は、Rが1H−インダゾール、1H−インドール、インドリン−2−オン、1−(インドリン−1−イル)エタノン、1H−ベンゾ[d][1,2,3]トリアゾール、1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン、1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン、1H−ベンゾ[d]イミダゾール、1H−ベンゾ[d]イミダゾール−2(3H)−オン、1H−ピラゾロ[3,4−c]ピリジン、1H−ピロロ[2,3−c]ピリジン、3H−イミダゾ[4,5−c]ピリジン、7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン、7H−プリン、1H−ピラゾロ[4,3−d]ピリミジン、5H−ピロロ[3,2−d]ピリミジン、2−アミノ−1H−プリン−6(9H)−オン、キノリン、キナゾリン、キノキサリン、イソキノリン、イソキノリン−1(2H)−オン、3,4−ジヒドロイソキノリン−1(2H)−オン、3,4−ジヒドロキノリン−2(1H)−オン、キナゾリン−2(1H)−オン、キノキサリン−2(1H)−オン、1,8−ナフチリジン、ピリド[3,4−d]ピリミジン及びピリド[3,2−b]ピラジンから選択される、置換されていてもよい二環式ヘテロアリール基であることを含む。
【0063】
典型的な式Iの化合物は、置換されていてもよいR
から選択される(ここで、波線は結合部位を示す)ことを含む。
【0064】
本発明の一実施態様において、Rは1H−インダゾール−4−イルである。
【0065】
典型的な式Iの化合物は、Rが2−フラニル、3−フラニル、2−イミダゾリル、4−イミダゾリル、3−イソキサゾリル、4−イソキサゾリル、5−イソキサゾリル、2−オキサゾリル、4−オキサゾリル、5−オキサゾリル、3−ピラゾリル、4−ピラゾリル、2−ピラジニル、3−ピリダジニル、4−ピリダジニル、5−ピリダジニル、2−ピリミジニル、5−ピリミジニル、6−ピリミジニル、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル、2−ピロリル、3−ピロリル、2−チエニル、3−チエニル、5−テトラゾリル、1−テトラゾリル、2−テトラゾリル、2−チアゾリル、4−チアゾリル、5−チアゾリル、3−トリアゾリル及び1−トリアゾリルから選択される、置換されていてもよい単環式ヘテロアリールであるものを含む。
【0066】
典型的な式Iの化合物は、置換されていてもよいR
から選択される(ここで、波線は結合部位を示す)ことを含む。
【0067】
典型的な式Iの化合物は、Rが、ピリジル、ピリミジニル又はピラゾリルから選択される、置換されていてもよい単環式ヘテロアリール基であることを含む。
【0068】
典型的な式Iの化合物は、Rが置換されていてもよいピリミジニルであることを含む。
【0069】
本発明の一実施態様において、Rは2−アミノピリミジン−5−イルである。
【0070】
典型的な式Iの化合物は、置換されていてもよいR
(ここで、波線は結合部位を示す)を含む
【0071】
本発明の化合物の典型的な実施態様は、式Ia:
[上式中、
は、H、−CH及びシクロプロピルから独立して選択され;
は、H、−CH、−C(CH、−CHOH、−CF、−CHF及びシクロプロピルから独立して選択され;
は:−NHCOCH、−OH及び−NHS(O)CHから選択される一又は複数の基で置換されたフェニルであるか;又は
は、−NH、-NHCH及び-OCHから選択される置換基で置換されていてもよい、ピリジル、ピリミジニル若しくはピラゾリルから選択される単環式ヘテロアリール基、又は
1H−インダゾール、1H−インドール、インドリン−2−オン、1−(インドリン−1−イル)エタノン、1H−ベンゾ[d][1,2,3]トリアゾール、1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン、1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン、1H−ベンゾ[d]イミダゾール、1H−ベンゾ[d]イミダゾール−2(3H)−オン、1H−ピラゾロ[3,4−c]ピリジン、1H−ピロロ[2,3−c]ピリジン、3H−イミダゾ[4,5−c]ピリジン、7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン、7H−プリン、1H−ピラゾロ[4,3−d]ピリミジン、5H−ピロロ[3,2−d]ピリミジン、2−アミノ−1H−プリン−6(9H)−オン、キノリン、キナゾリン、キノキサリン、イソキノリン、イソキノリン−1(2H)−オン、3,4−ジヒドロイソキノリン−1(2H)−オン、3,4−ジヒドロキノリン−2(1H)−オン、キナゾリン−2(1H)−オン、キノキサリン−2(1H)−オン、1,8−ナフチリジン、ピリド[3,4−d]ピリミジン及びピリド[3,2−b]ピラジンから選択される二環式ヘテロアリール基である]
を含む。
【0072】
本発明の化合物の典型的な実施態様は、式Ia:
[上式中、
は、H、−CH及びシクロプロピルから独立して選択され;
は、H、−CH、−C(CH、−CHOH、−CF、−CHF及びシクロプロピルから独立して選択され;
は:−NHCOCH、−OH及び−NHS(O)CHから選択される一又は複数の基で置換されたフェニルであるか;又は
は、−NH、-NHCH及び-OCHから選択される置換基で置換されていてもよい、ピリジル、ピリミジニル又はピラゾリルから選択される単環式ヘテロアリール基である]
を含む。
【0073】
本発明の化合物の典型的な実施態様は、式Ia:
[上式中、
は、H、−CH及びシクロプロピルから独立して選択され;
は、H、−CH、−C(CH、−CHOH、−CF、−CHF及びシクロプロピルから独立して選択され;
は:−NHCOCH、−OH及び−NHS(O)CHから選択される一又は複数の基で置換されたフェニルであるか;又は
は、1H−インダゾール−4−イル又は2−アミノピリミジン−5−イルである]
を含む。
【0074】
本発明の化合物の典型的な実施態様は、式Ia:
[上式中、
は、H、−CH及びシクロプロピルから独立して選択され;
は、H、−CH、−C(CH、−CHOH、−CF、−CHF及びシクロプロピルから独立して選択され;
は:−NHCOCH、−OH及び−NHS(O)CHから選択される一又は複数の基で置換されたフェニル;又は
は、2−アミノピリミジン−5−イルである]
を含む。
【0075】
本発明の化合物の典型的な実施態様は、式Ia:
[上式中、
は、H、−CH及びシクロプロピルから独立して選択され;
の基は、3から6員炭素環を形成し;
は:−NHCOCH、−OH及び−NHS(O)CHから選択される一又は複数の基で置換されたフェニルであるか;又は
は、−NH、-NHCH及び-OCHから選択される置換基で置換されていてもよい、ピリジル、ピリミジニル又はピラゾリルから選択される単環式ヘテロアリール基である]
を含む。
【0076】
本発明の化合物の典型的な実施態様は、式Ib:
を含む。
【0077】
本発明の化合物の典型的な実施態様は、式Ib:
[上式中、
は、H、−CH及びシクロプロピルから独立して選択され;
は、H、=O、−CH、−C(CH、−CHOH、−CF、−CHF及びシクロプロピルから独立して選択され;
は:−NHCOCH、−OH及び−NHS(O)CHから選択される一又は複数の基で置換されたフェニルであるか;又は
は、−NH、-NHCH及び-OCHから選択される置換基で置換されていてもよい、ピリジル、ピリミジニル又はピラゾリルから選択される、単環式ヘテロアリール基であり、且つ
Rは、C1−6アルキルである]
を含む。
【0078】
本発明の化合物の典型的な実施態様は、式Ib
[上式中、
は、H、−CH及びシクロプロピルから独立して選択され;
は、H及び=Oから独立して選択され;
は、−NH、-NHCH及び-OCHから選択される置換基で置換されていてもよい、ピリジル、ピリミジニル又はピラゾリルから選択される単環式ヘテロアリール基であり、且つ
Rは、C1−6アルキルである]
を含む。
【0079】
本発明の化合物の典型的な実施態様は、式Ib
[上式中、
は、H、−CH及びシクロプロピルから独立して選択され;
は、H及び=Oから独立して選択され;
は、2−アミノピリミジン−5−イルであり、且つ
Rは、−CHである]
を含む。
【0080】
本発明の化合物は、不斉又はキラル中心を含み、従って、異なる立体異性体形態で存在し得る。本発明の全ての立体異性体形態(ジアステレオマー、エナンチオマー及びアトロプ異性体、並びにラセミ混合物のようなその混合物を含むが、これらに限定されない)が、本発明の一部を形成すると意図される。
【0081】
加えて、本発明は、全ての幾何及び位置異性体を含む。例えば、式Iの化合物が二重結合又は縮合環を含む場合、シス−及びトランス−形態並びにそれらの混合物は、本発明の範囲に含まれる。単一位置異性体及び位置異性体の混合物の両方もまた、本発明の範囲内である。
【0082】
ここで示される構造において、任意の特定のキラル原子の立体化学が明記されていない場合、全ての立体異性体が考慮され、本発明の化合物として含まれる。立体化学が、特定の配置を表す中黒楔又は破線により明記される場合、その立体異性体は、そのように明記され、定義される。
【0083】
本発明の化合物は、非溶媒和形態で、並びに、水、エタノール等の薬学的に許容される溶媒との溶媒和形態で存在し得、本発明は溶媒和及び非溶媒和形態の両方を含むことを意図する。
【0084】
本発明の化合物は、異なる互変異性形態で存在し得、全てのこのような形態は、本発明の範囲内に含まれる。「互変異性体」又は「互変異性体形態」なる用語は、低エネルギー障壁を介して相互転換可能な異なるエネルギーの構造異性体をいう。例えば、プロトン互変異性体(プロトトロピー互変異性体としても知られる)は、ケト−エノール及びイミン−エナミン異性化のようなプロトンの移動を介する相互変換を含む。原子価互変異性体は、結合電子の幾らかの再構築による相互変換を含む。
【0085】
また、本発明は、ここに示されているものと同一であるが、実際は一つ又は複数の原子が、通常自然界に見られる原子質量又は質量数とは異なる原子量又は質量数を有する原子により置換された、同位体で標識された本発明の化合物を含む。記載されている特定の原子及び要素の全ての同位体は、本発明の化合物及びその使用の範囲内で考慮される。本発明の化合物内に含むことのできる典型的な同位体は、水素、炭素、窒素、酸素、リン、硫黄、フッ素、塩素及びヨウ素、例えば、H(D)、H、11C、13C、14C、13N、15N、15O、17O、18O、32P、33P、35S、18F、36Cl、123I及び125Iの同位体を含む。ある同位体で標識された本発明の化合物(例えば、H及び14Cで標識されたもの)は、化合物及び/又は基質の組織分布アッセイにおいて有用である。トリチウム化(H)及び炭素−14(14C)同位体は、その調製及び検出を容易にするのに有用である。更に、重水素(つまりH)等のより重い同位体による置換により、より大きな代謝的安定性(例えば、インビボ半減期の増加又は必要用量の減少)によって生じる治療的利点を得ることがあり、従って、状況によっては好ましいものであり得る。15O、13N、11C及び18F等の陽電子放出同位体は、基質受容体占有を検査するための陽電子放出断層撮影法(PET)の研究にとって有用である。同位体で標識された本発明の化合物は、一般的に、以下のスキーム及び/又は実施例で開示されるものと類似した以下の手順により、同位体で標識された試薬を非同位体で標識された試薬で置換することによって、調製され得る。
【0086】
生物学的評価
式Iの化合物のPI3キナーゼ活性の決定は、多くの直接及び間接検出方法によって可能である。本明細書に記載されるある典型的な化合物は、そのp110α(アルファ)、及びその他の同位体、PI3K結合活性(実施例901)及び腫瘍細胞に対するインビトロ活性についてアッセイされる。本発明のある典型的な化合物は、10nM未満のPI3K結合活性IC50値を有していた。本発明のある化合物は、100nM未満の腫瘍細胞ベース活性EC50値を有していた。
【0087】
式Iの典型的な化合物の細胞毒性又は細胞増殖抑制性の活性は:増殖性の哺乳動物腫瘍細胞株を細胞培地に定着させ、式Iの化合物を添加し、約6時間から約5日間の期間で細胞を培養し;且つ細胞生存を測定することにより測定された(実施例902)。細胞ベースのインビトロアッセイは、生存能力、即ち、増殖(IC50)、細胞毒性(EC50)及びアポトーシス誘発(カスパーゼ活性化)を測定するために使用された。
【0088】
式Iの典型的な化合物のインビトロ能力は、Promega Corp., Madison, WIにより入手可能な細胞増殖アッセイである、CellTiter−Glo(登録商標)発光細胞生存性アッセイ(Luminescent Cell Viability Assay)により測定された(実施例902)。この相同アッセイ方法は、甲虫類ルシフェラーゼの組換え発現に基づいており(米国特許第5583024号;米国特許第5674713号;米国特許第5700670号)、代謝的に活性な細胞の指標である、存在するATPの定量化に基づく、培養下の生存細胞数を決定する(Crouch et al (1993) J. Immunol. Meth. 160: 81-88; 米国特許第6602677号)。CellTiter−Glo(登録商標)アッセイは、96又は384ウェルフォーマット中で行われ、自動化ハイスループット・スクリーニング(HTS)に適するようにした(Cree et al (1995) AntiCancer Drugs 6: 398-404)。相同アッセイ手順は、血清添加培地で培養される細胞に、単一試薬(CellTiter−Glo(登録商標)試薬)を直接添加することを含む。細胞洗浄、培地除去及び複数のピペット操作工程は、必要ではない。このシステムは、試薬の添加及び混合の10分後に、384−ウェルフォーマット中15細胞/ウェルを検出する。
【0089】
相同的な「添加−混和−測定」フォーマットは、細胞溶解及び存在するATP量に比例する発光シグナルの生成をもたらす。ATP量は、培養下で存在する細胞数に正比例する。CellTiter−Glo(登録商標)アッセイは、ルシフェラーゼ反応により生じる「グロータイプ」の発光シグナルを生成し、これは細胞の種類や使用される培地に依拠し、一般的に5時間以上の半減期を有する。生存細胞は発光量(RLU)に反映される。甲虫ルシフェリンである基質は、ATPのAMPへの同時変換及び光子の生成と共に蛍ルシフェラーゼの組換えにより、酸化的にカルボキシル基を除去されている。延長された半減期は、試薬注入器の使用の必要をなくし、複数のプレートの継続的又はバッチモード処理に対する適応性を提供する。この細胞増殖アッセイは、様々な複数ウェルフォーマット、例えば96又は384ウェルフォーマットと共に使用され得る。データは、照度計又はCCDカメラ撮像装置により記録され得る。発光出力は、時間外に測定される、発行量(RLU)として表される。
【0090】
式Iの典型的な化合物の抗増殖効果は、いくつかの腫瘍細胞株に対してCellTiter−Glo(登録商標)アッセイ(実施例902)により測定された。有効性EC50値は、試験化合物のために設定された。インビトロ細胞能力活性の範囲は、約100nMから約10μMである。ある試験化合物は、ある腫瘍細胞株の増殖を止めるのに1マイクロモル(1μM)未満のEC50値を有する。
【0091】
あるADME特性は、ある典型的な化合物のために、Caco−2透過性(実施例903)、肝細胞クリアランス(実施例904)、シトクロム P450阻害(実施例905)、シトクロムP450誘発(実施例906)、血漿タンパク結合(実施例907)及びhERGチャネル遮断(実施例908)を含むアッセイにより測定された。
【0092】
ある典型的な化合物は、担がんタコニックNCRヌードマウスモデルにおける用量漸増試験での有効性のために、試験された(実施例909)。U−87 MG Merchant(バージニア州マナッサスのATCCからのU−87 MG細胞由来の内部変異)皮下異種移植マウスモデルが用いて、ビヒクル(MCT、負の制御)と共に、式Iの化合物を用量を漸増させて試験した。腫瘍成長遅延は、<28日間の一日一回の経口投薬の後に測定された。治療中の体重変化は安全性の指標として測定された。この同一皮下腫瘍異種移植モデルにおける用量−及び時間−依存性の薬物動態学的及び薬力学的反応もまた試験された(実施例913)。
【0093】
血液脳関門透過[特性]潜在力は、P−糖タンパク(MDR1)又はbcrp1と安定してトランスフェクトされたMDCK細胞を使用してインビトロで評価された(実施例911)。能透過性は、単一IV又は経口投薬の後に、マウスの脳における化合物濃度を測定することにより(実施例912)及び/又はPI3K経路の調節を測定することにより(実施例913)、インビボで決定された。実施例914の脳腫瘍有効性は、GS−2(ルシフェラーゼを発現するよう操作されたヒト多形性神経膠芽腫(GBM))により測定された。GS−2頭蓋内移植片の成長における一日一回の経口投薬の効果は、磁気共鳴映像法(MRI)により評価される。U−87 MG細胞の腫瘍異種移植を伴うマウスは、薬物又はビヒクルを投薬され、試料はPK、PD及び/又はIHC分析のために解析される(実施例915)。
【0094】
表1の101−118の典型的な式Iの化合物は、PI3Kアルファ(p110アルファへの結合する1マイクロモル未満のIC50又はK、μM)の阻害及び本発明の方法による選択性のために作成され、特性化され、且つ試験され、以下の構造及び相当する命名を有する(ChemBioDraw Ultra, Version 11.0, CambridgeSoft Corp., Cambridge MA)。
【0095】
【0096】
式Iの化合物の投与
本発明の式Iの化合物は、治療される症状に適した任意の経路で投与され得る。適切な経路としては、経口、非経口(例えば皮下、筋肉内、静脈内、動脈内、皮内、髄腔内及び硬膜外)、経皮、直腸、鼻、局所(頬及び舌下を含む)、膣、腹腔内、肺内及び鼻腔内を含む。局所的免疫抑制療法に関し、本化合物は、移植前に移植片を阻害剤にかん流させること又はその他接触させることを含む、病巣内投与により投与され得る。好ましい投与法は、例えば、受容者の症状によって異なってもよいことが認識される。化合物が経口投与される場合、薬学的に許容される担体又は賦形剤と共に、丸薬、カプセル、錠剤等として製剤化され得る。化合物が非経口投与される場合、薬学的に許容される非経口ビヒクルと共に、及び下記に詳述される単位用量注射剤型で製剤化され得る。
【0097】
ヒト患者を治療するための式Iの化合物の用量は、約10mgから約1000mgの範囲であり得る。本化合物の典型的な用量は、約100mgから約300mgであり得る。特定の化合物の吸収、分布、代謝及び排出を含む、薬物動態学的及び薬力学的特性に依拠して、一日一回(QID)、一日二回(BID)、又はより頻繁に投与され得る。加えて、毒性要因は、用量及び投与レジメンに影響を及ぼし得る。経口投与される場合、丸薬、カプセル又は錠剤は、特定期間中、毎日又はそれより少ない頻度で摂取されてもよい。レジメンは、多くの治療サイクルで繰り返されてもよい。
【0098】
式Iの化合物による治療方法
本発明の式Iの化合物は、脂質キナーゼ、例えばPI3キナーゼの過剰発現により特徴づけられるものを含むが、これらに限定されない、増殖性疾病、症状及び/又は疾患を治療するために有用である。したがって、本発明の一態様は、PI3キナーゼを含む脂質キナーゼを阻害することにより治療又は予防される疾病又は症状を治療する又は予防する方法を含む。一実施態様において、本方法は、治療的有効量の式Iの化合物又はその立体異性体、幾何異性体、互変異性体若しくは薬学的に許容される塩を、それを必要とする哺乳動物に投与することを含む。一実施態様において、ヒト患者は、式Iの化合物及び薬学的に許容される担体、アジュバント若しくはビヒクルで治療され、ここで、前記式Iの化合物は、PI3キナーゼ活性を検出可能に阻害する量で存在する。
【0099】
本発明の一実施態様は、患者におけるがんを治療する方法であって、前記患者に、本発明の化合物の治療的有効量を投与することを含み、ここで、がんは乳、卵巣、子宮頸部、前立腺、睾丸、泌尿生殖器、食道、喉頭、膠芽腫、神経芽細胞種、胃、皮膚、ケラトアカントーマ、肺、表皮癌、大細胞癌、非小細胞肺癌(NSCLC)、小細胞癌、肺腺癌、骨、結腸、腺腫、脾臓、腺癌、甲状腺、濾胞腺癌、未分化癌、乳頭癌、精上皮腫、黒色腫、肉腫、膀胱癌、肝臓癌及び胆汁道、腎臓癌、腎性、脾臓、骨髄疾患、リンパ腫、毛様細胞、口腔、鼻咽頭、咽頭、口唇、舌、口、小腸、結腸直腸、大腸、直腸、脳及び中枢神経系、ホジキン病又は白血病である、方法を含む。一実施態様において、がんは脳腫瘍である。
【0100】
本発明の一実施態様において、本方法は、化学療法薬、抗血管形成治療薬、抗炎症薬、免疫調節薬、神経栄養因子、心臓血管病を治療するための薬剤、肝臓病を治療するための薬剤、抗ウイルス薬、血液疾患を治療するための薬剤、糖尿病を治療するための薬剤及び免疫不全疾患を治療するための薬剤から選択される追加の治療薬を患者に投与することを更に含む。本発明の一実施態様において、追加の治療薬はベバシズマブである。
【0101】
式Iの化合物はまた、リンパ腫及び固形腫瘍の発生に関与するPIM;遺伝子Pim−1、Pim−2及びPim−3(プロウィルス挿入モロニ―(Proviral Insertion Moloney))によりコードされるようなタンパク質キナーゼの過剰発現により特徴づけられる増殖性疾病の治療に有用であり得る(Cuypers et al. (1984) Cell, vol. 37 (1) pp. 141-50; Selten et al. (1985) EMBO J. vol. 4 (7) pp. 1793-8; van der Lugt et al. (1995) EMBO J. vol. 14 (11) pp. 2536-44; Mikkers et al. (2002) Nature Genetics, vol. 32 (1) pp. 153-9; van Lohuizen et al. (1991) Cell, vol. 65 (5) pp. 737-52)。
【0102】
本発明の方法により治療することのできるがんは、乳、卵巣、子宮頸部、前立腺、睾丸、泌尿生殖器、食道、喉頭、膠芽腫、神経芽細胞種、胃、皮膚、ケラトアカントーマ、肺、表皮癌、大細胞癌、非小細胞肺癌(NSCLC)、小細胞癌、肺腺癌、骨、結腸、腺腫、脾臓、腺癌、甲状腺、濾胞腺癌、未分化癌、乳頭癌、精上皮腫、黒色腫、肉腫、膀胱癌、肝臓癌及び胆汁道、腎臓癌、骨髄疾患、リンパ腫、毛様細胞、口腔及び咽頭(オーラル)、口唇、舌、口、咽頭、小腸、結腸直腸、大腸、直腸、脳及び中枢神経系、ホジキン病並びに白血病を含むが、これらに限定されない。
【0103】
式Iの化合物は、哺乳類細胞、生物又は関連する病的状態、例えば、全身性及び局所的炎症、例えば関節リウマチ、免疫抑制、臓器移植拒否反応、アレルギー、潰瘍性結腸炎、クローン病、皮膚炎、喘息、全身性エリテマトーデス、シェーグレン症候群、多発性硬化症、強皮症/全身性硬化症、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、抗好中球細胞質抗体(ANCA)血管炎、慢性閉塞性肺疾病(COPD)、乾癬等の免疫炎症疾病のインビトロ、インサイツ及びインビボ診断又は治療に、並びに一般的な関節保護効果に有用である。
【0104】
式Iの化合物は、血液脳関門の透過を必要とする脳及び中枢神経系の症状の治療に有用であり得る。ある式Iの化合物は、脳への送達のための血液脳関門の好ましい透過特性を有する。式Iの化合物で効果的に治療される脳の疾患は、転移性及び原発性脳腫瘍、例えば、膠芽腫及び黒色腫を含む。
【0105】
式Iの化合物は、目への局所的送達により、眼疾患、例えば、滲出型及び乾燥型加齢性黄斑変性症(AMD)及び網膜浮腫の治療に有用であり得る。ある式Iの化合物は、目への送達及び取り込みのための好ましい特性を有する。ある式Iの化合物は、ラニビズマブ(LUCENTIS(登録商標)、Genentech,Inc.)及びベバシズマブ(AVASTIN(登録商標)、Genentech,Inc.)との併用で、滲出型AMDの治療に対する有効性を拡大し、反応持続時間を延長し得る。
【0106】
本発明の別の態様は、本明細書に記載する疾病又は症状に罹患している哺乳動物、例えばヒトにおけるかかる疾病又は症状の治療で使用するための本発明の化合物を提供する。本明細書に記載する疾病及び症状に罹患している温血動物、例えば哺乳動物、例えばヒトにおけるかかる疾患の治療のための医薬の調製における本発明の化合物の使用もまた提供される。
【0107】
本発明の別の態様は、がんを治療するための医薬を作製するための本発明の化合物の使用であって、ここで、がんは乳、卵巣、子宮頸部、前立腺、睾丸、泌尿生殖器、食道、喉頭、膠芽腫、神経芽細胞種、胃、皮膚、ケラトアカントーマ、肺、表皮癌、大細胞癌、非小細胞肺癌(NSCLC)、小細胞癌、肺腺癌、骨、結腸、腺腫、脾臓、腺癌、甲状腺、濾胞腺癌、未分化癌、乳頭癌、精上皮腫、黒色腫、肉腫、膀胱癌、肝臓癌及び胆汁道、腎臓癌、腎性、脾臓、骨髄疾患、リンパ腫、毛様細胞、口腔、鼻咽頭、咽頭、口唇、舌、口、小腸、結腸直腸、大腸、直腸、脳及び中枢神経系、ホジキン病又は白血病である、使用を提供する。
【0108】
本発明の別の態様は、がんを治療するための本発明の化合物の使用であって、ここで、がんは乳、卵巣、子宮頸部、前立腺、睾丸、泌尿生殖器、食道、喉頭、膠芽腫、神経芽細胞種、胃、皮膚、ケラトアカントーマ、肺、表皮癌、大細胞癌、非小細胞肺癌(NSCLC)、小細胞癌、肺腺癌、骨、結腸、腺腫、脾臓、腺癌、甲状腺、濾胞腺癌、未分化癌、乳頭癌、精上皮腫、黒色腫、肉腫、膀胱癌、肝臓癌及び胆汁道、腎臓癌、腎性、脾臓、骨髄疾患、リンパ腫、毛様細胞、口腔、鼻咽頭、咽頭、口唇、舌、口、小腸、結腸直腸、大腸、直腸、脳及び中枢神経系、ホジキン病又は白血病である、使用を提供する。
【0109】
本発明の別の態様は、がんを治療するための治療において使用するための本発明の化合物であって、ここで、がんは乳、卵巣、子宮頸部、前立腺、睾丸、泌尿生殖器、食道、喉頭、膠芽腫、神経芽細胞種、胃、皮膚、ケラトアカントーマ、肺、表皮癌、大細胞癌、非小細胞肺癌(NSCLC)、小細胞癌、肺腺癌、骨、結腸、腺腫、脾臓、腺癌、甲状腺、濾胞腺癌、未分化癌、乳頭癌、精上皮腫、黒色腫、肉腫、膀胱癌、肝臓癌及び胆汁道、腎臓癌、腎性、脾臓、骨髄疾患、リンパ腫、毛様細胞、口腔、鼻咽頭、咽頭、口唇、舌、口、小腸、結腸直腸、大腸、直腸、脳及び中枢神経系、ホジキン病又は白血病である、化合物を提供する。
【0110】
本発明の別の態様は、上記に記載する発明を提供する。
【0111】
医薬製剤
ヒトを含む哺乳動物の治療的処置(予防的処置を含む)のために式Iの化合物を使用するために、式Iの化合物は、通常、標準的な薬務に従って、薬学的組成物として製剤化される。本発明の本態様に従って、薬学的に許容される希釈剤又は担体と関連して、本発明の化合物を含む薬学的組成物が提供される。
【0112】
本発明の一実施態様は、本発明の化合物及び薬学的に許容される担体、流動促進剤、希釈剤若しくは賦形剤から成る薬学的組成物を含む。
【0113】
本発明の一実施態様は、本発明の化合物と薬学的に許容される担体とを組み合わせることを含む、薬学的組成物を作製するための方法を含む。
【0114】
本発明の一実施態様は、化学療法薬、抗炎症薬、免疫調節薬、神経栄養因子、心臓血管病を治療するための薬剤、肝臓病を治療するための薬剤、抗ウイルス薬、血液疾患を治療するための薬剤、糖尿病を治療するための薬剤及び免疫不全疾患を治療するための薬剤から選択される追加の治療薬を更に含む、上記に記載される薬学的組成物を含む。
【0115】
典型的な製剤は、式Iの化合物と担体、希釈剤又は賦形剤を混合することにより調製される。適切な担体、希釈剤及び賦形剤は、当業者によく知られており、炭水化物、ワックス、水溶性及び/又は膨潤性ポリマー、親水性又は疎水性物質、ゼラチン、油、溶媒、水等の物質を含む。使用される特定の担体、希釈剤又は賦形剤は、本発明の化合物が適用されている手段及び目的によって決まる。溶媒は、一般的に、当業者に安全と認められる(GRAS)溶媒に基づき選択され、哺乳動物に投与される。一般に、安全な溶媒は、非毒性の溶媒、例えば水、並びに水溶性若しくは水混和性であるその他非毒性の溶媒である。適切な水性溶媒は、水、エタノール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール(例えば、PEG400、PEG300)等並びにそれらの混合物を含む。製剤はまた、薬剤(すなわち、本発明の化合物又はその薬学的組成物)を見栄え良く提供するため又は薬学的製品(すなわち、医薬)の製造を補助するための一又は複数のバッファー、安定剤、界面活性剤、湿潤剤、平滑剤、乳化剤、懸濁化剤、保存料、酸化防止剤、不透明化剤、流動促進剤、加工助剤、着色料、甘味料、香料、香味料及びその他既知の添加剤も含み得る。
【0116】
製剤は、従来の希釈及び混合手順を使用して調製され得る。例えば、バルク薬剤原料(即ち、本発明の化合物又は式Iの化合物の安定した形態(例えば、シクロデキストリン誘導体を伴う複合体又はその他既知の錯体形成剤))は、上記に記載された一又は複数の賦形剤の存在下で、適切な溶媒中に溶解する。本発明の化合物は、薬学的投薬形態に典型的に製剤化され、薬剤の容易に制御可能な投薬を提供し、患者が処方されたレジメンを順守できるようにする。
【0117】
薬学的組成物(又は製剤)は、薬剤の投与方法によって、さまざまな方法で包装され得る。一般的に、流通用の品目は、適切な形態での医薬製剤を入れる容器を含む。適切な容器は、当業者によく知られており、瓶(プラスチック及びガラス、サシェ、アンプル、ビニル袋、金属シリンダー等を含む。容器はまた、パッケージの内容物を無分別に入手することを防ぐための不正開封防止組立を含む。加えて、容器は、容器の内容物を記載するラベルを付している。ラベルは、適切な警告を含み得る。
【0118】
本発明の化合物の医薬製剤は、様々な投与法及び投与の種類で調製され得る。例えば、所望の純度を有する式Iの化合物は、凍結乾燥製剤、破砕粉体又は水溶液の形態で、薬学的に許容される希釈剤、担体、賦形剤又は安定剤と混合されてもよい(Remington’s Pharmaceutical Sciences (1980) 16th edition, Osol, A. Ed.)。製剤化は、生理学的に許容される担体、すなわち、ガレヌス投与形態へ用いられる投薬量及び濃度で受容者に対して非毒性である担体と共に、適切なpHで、かつ所望の純度で、常温で混合することにより実施され得る。製剤のpHは、主に化合物の特定の使用及び濃度に依拠するが、その範囲は約3から約8であり得る。PH5の酢酸バッファー中の製剤式は、適切な実施態様である。
【0119】
本明細書での使用のための本発明の化合物は、好ましくは無菌である。特に、インビボ投与に使用される製剤は、無菌でなければならない。そのような滅菌は、無菌の濾過膜を通じて濾過することにより、容易になされる。
【0120】
化合物は、通常、固形組成物、凍結乾燥製剤又は水溶液として保存され得る。
【0121】
式Iの化合物を含む本発明の薬学的組成物は、適切な医療行為に合った方法、即ち、量、濃度、スケジュール、期間、ビヒクル及び投与経路で製剤化、投薬、投与される。この観点において考慮される要因は、治療されている特定の疾患、治療されている特定の哺乳動物、個々の患者の臨床状態、疾患の原因、薬剤送達部位、投与方法、投与スケジュール及び医療従事者が知る他の要因を含む。投与される化合物の「治療的有効量」とは、このような考慮により制御され、凝固因子介在疾患を予防、改善又は治療するのに必要な最小量である。このような量は、宿主に対して毒性があるか又は宿主を有意に出血を起こしやすい状態にする量を好ましくは下回る。
【0122】
一般的な提案として、非経口投与される式Iの化合物の、用量当たりの当初の薬学的有効量は、約0.01−100mg/kg、つまり、1日当たり患者の体重1Kg当たり約0.1から20mgの範囲であり、使用される化合物の典型的な当初範囲は、0.3から15mg/kg/日である。
【0123】
許容される希釈剤、担体、賦形剤及び安定剤は、用いられる用量及び濃度で受容者に対し非毒性であり、リン酸、クエン酸及び他の有機酸等のバッファー;アスコルビン酸及びメチオニンを含む酸化防止剤;防腐剤(塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチルアルコール若しくはベンジルアルコール;メチルパラベン若しくはプロピルパラベン等のアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3−ペンタノール;及びm−クレゾール等);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン若しくは免疫グロブリン等のタンパク質;ポリビニルピロリドン等の親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン若しくはリジン等のアミノ酸;グルコース、マンノース若しくはデキストリンを含む単糖、二糖及び他の炭水化物;EDTA等のキレート化剤;スクロース、マンニトール、トレハロース若しくはソルビトール等の糖;ナトリウム等の塩形成対イオン;金属錯体(例えば、Zn−タンパク質錯体);並びに/又はTWEENTM、PLURONICSTM)若しくはポリエチレングリコール(PEG)等の非イオン性界面活性剤を含む。また、活性医薬品成分は、例えば、コアセルベーション技術により又は界面重合により調製されるマイクロカプセル、例えば、それぞれ、ヒドロキシメチルセルロース若しくはゼラチン−マイクロカプセル及びポリ−(メチルメタシレート)マイクロカプセル中、コロイド薬物送達システム(例えば、リポソーム、アルブミンマイクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子及びナノカプセル)中又はマクロエマルジョン中に封入してもよい。このような技術は、Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition, Osol, A. Ed. 1980に開示されている。
【0124】
式Iの化合物の持続放出性調製物を調製され得る。持続放出性調製物の適切な例は、式Iの化合物を含む固体疎水性ポリマーの半透過性マトリックスを含み。このマトリックスは、成形物、例えば、フィルム又はマイクロカプセルの形態である。持続放出性マトリックスの例は、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリラート)又はポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド(米国特許第3773919号)、L−グルタミン酸とガンマ−エチル−L−グルタマートのコポリマー、非分解性エチレン−酢酸ビニル、LUPRON DEPOTTM(乳酸−グリコール酸コポリマーと酢酸ロイプロリドを含んでなる注射可能なマイクロスフェア)等の分解性乳酸−グリコール酸コポリマー及びポリ−D−(−)−3−ヒドロキシ酪酸を含む。
【0125】
製剤は、本明細書に詳述された投与経路について適切であるものを含む。製剤は、単位投与形態で簡便に提供され、薬学の分野においてよく知られた方法の何れかによって調製され得る。技術及び製剤は、一般的に、Remington’s Pharmaceutical Sciences(Mack Publishing Co., Easton, PA)に見られる。そのような方法は、活性成分を一又は複数の副成分で構成される担体と混合する工程を含む。一般に、製剤は、活性成分を、液体担体又は微粉化された固体担体、若しくはその両方と均一かつ密に混合し、次いで必要であれば生成物を成形することによって調製される。
【0126】
経口投与に適した式Iの化合物の製剤は、個別の単位、例えば、式Iの化合物の所定量を含む丸薬、カプセル、カシェ又は錠剤として調製され得る。
【0127】
圧縮錠は、適切な機械で活性成分を自由流動形態、例えば、結合剤、潤滑剤、不活性な希釈剤、保存料、界面活性剤若しくは分散剤と混合させてもよい粉末又は顆粒に圧縮することにより調製され得る。成形錠は、不活性な液体希釈剤で湿らされた粉末状の活性成分の混合物を適切な機械で成形することにより、作製される。錠剤は、コーティング又は分割されてもよく、錠剤からの活性成分の持続又は制御放出を提供するように製剤化されてもよい。
【0128】
錠剤、トローチ、ロゼンジ、水性若しくは油性懸濁液、分散性粉末若しくは顆粒、乳液、硬質若しくは軟質カプセル(例えばゼラチンカプセル)、シロップ又はエリキシルは、経口使用のために調製され得る。経口使用が意図される式Iの化合物の製剤は、薬学的組成物の製造のための当技術分野で既知の方法に従って調製され得、そのような組成物は、口当たりの良い調製物を提供するための、甘味料、香味料、着色料及び保存料を含む一又は複数の薬剤を含んでもよい。混合剤に活性成分を含む錠剤は、錠剤の製造に適した非毒性の薬学的に許容される賦形剤と共に、許容される。これらの賦形剤は、例えば、不活性な希釈剤(例えば炭酸カルシウム若しくは炭酸ナトリウム)、ラクトース、リン酸カルシウム若しくはリン酸ナトリウム);造粒及び崩壊剤(例えばトウモロコシ澱粉又はアルギン酸);結合剤(例えば澱粉、ゼラチン又はアカシア);及び潤滑剤(例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸又はタルク)であってもよい。錠剤はコーティングされていなくてもよく、あるいは、胃腸管での分解及び吸収を遅延させ、それにより、長期間にわたる持続的作用を提供するためのマイクロカプセル化を含む既知の技術によってコーティングされていてもよい。例えば、モノステアリン酸グリセリン又は単体で若しくはワックスと使用するジステアリン酸グリセリル等の時間遅延物質を用いてもよい。
【0129】
目又はその他外部組織、例えば口及び皮膚の治療について、活性成分は、活性成分を例えば0.075から20%w/wの量で含む局所軟膏又はクリームとして適用され得る。軟膏に製剤化される場合、活性成分は、パラフィン系又は水混和性軟膏基剤と共に用いられてもよい。あるいは、活性成分は、水中油型クリーム基剤を伴うクリームに製剤化されてもよい。
【0130】
必要に応じて、クリーム基剤の水性相は、多価アルコール、即ち、プロピレングリコール、ブタン 1,3−ジオール、マンニトール、ソルビトール、グリセロール及びポリエチレングリコール(PEG400を含む)並びにそれらの混合物等の二以上のヒドロキシル基を有するアルコールを含んでもよい。局所製剤は、望ましくは、皮膚又はその他患部を通じて活性成分の吸収又は透過を促進する化合物を含む。そのような透過促進剤の例は、ジメチルスルホキシド及び関連する類似物質を含む。
【0131】
本発明の乳液の油性相は、既知の方法で既知の成分から構成され得る。その相は乳化剤のみを含み得る一方、望ましくは脂肪若しくは油を伴うか又は脂肪及び油の両方を伴う少なくとも一の乳化剤の混合物を含む。好ましくは、安定剤として作用する脂溶性乳化剤と共に、親水性乳化剤が含まれる。さらに、安定剤の有無にかかわらず乳化剤は、いわゆる乳化ろうを作り出し、そのろう並びに油又は脂肪は、クリーム製剤の油性分散相を形成する、いわゆる乳化軟膏基剤を作り出す。本発明の製剤で使用するのに適した乳化剤及び乳安定剤は、Tween(登録商標)60、Span(登録商標)80、セトステアリルアルコール、ベンジルアルコール、ミリスチルアルコール、モノステアリン酸グリセリン及びラウリル硫酸ナトリウムを含む。
【0132】
式Iの化合物の水性懸濁液は、水性懸濁液の製造に適した賦形剤と混合して活性物質を含む。そのような賦形剤は、懸濁化剤、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、クロスカルメロース、ポビドン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピル メチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカント・ゴム、アカシア・ゴム、及び分散又は湿潤剤、例えば、天然に存在するリン脂質(例えばレシチン)、アルキレンオキシドと脂肪酸との縮合生成物(例えばステアリン酸ポリオキシエチレン)、エチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコールとの縮合生成物(例えばヘプタデカエチレンオキシセタノール)、エチレンオキシドと脂肪酸及び無水ヘキシトールから得られる部分エステルとの縮合生成物(例えばポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート)を含む。また、水性懸濁剤は、p−ヒドロキシ安息香酸エチル又はp−ヒドロキシ安息香酸−n−プロピル等の一又は複数の防腐剤、一又は複数の着色料、一又は複数の香味料及びスクロース又はサッカリン等の一又は複数の甘味料を含んでもよい。
【0133】
式Iの化合物の薬学的組成物は、無菌注射可能な水性又は油性懸濁液等の無菌注射可能な調製物の形態であってもよい。この懸濁液は、上記で言及した適切な分散若しくは湿潤剤及び懸濁化剤を使用して、既知の技術に従って製剤化され得る。無菌注射可能な調製物は、例えば1,3−ブタンジオール中の溶液等の、非毒性の非経口的に許容される希釈剤又は溶媒中の無菌注射可能な溶液若しくは懸濁液であってもよく、凍結乾燥粉末として調製されてもよい。用いられ得る許容されるビヒクル及び溶媒は、水、リンゲル溶液及び等張食塩液である。加えて、無菌固定油は、従来、溶媒又は懸濁化媒体として用いられ得る。この目的上、任意の無菌固定油は、合成モノグリセリド又はジグリセリドを含んで用いられ得る。加えて、オレイン酸等の脂肪酸は、注射剤の調製において同様に使用され得る。
【0134】
単一投与形態を製造するために担体物質と組み合わせてもよい活性成分の量は、治療されている宿主及び特定の投与様式によって様々であろう。例えば、ヒトへの経口投与が意図される持続放出製剤は、全組成の約5から約95%(重量:重量)で変化する、適切かつ簡便な量の担体物質と共に、およそ1から1000mgの活性物質化合物を含んでもよい。薬学的組成物は、容易に測定可能な投与量を提供するために調製され得る。例えば、静脈内注入が意図される水溶液は、約30mL/時の速さで適切な量の注入が生じるように、溶液1ミリリットル当たり3から500μgの活性成分を含み得る。
【0135】
非経口投与に適した製剤は、製剤を意図される受容者の血液と等張にする酸化防止剤、バッファー、静菌薬及び溶質を含み得る水性及び非水性の無菌注射溶液;並びに懸濁化剤及び増粘剤を含み得る水性及び非水性の無菌懸濁液を含む。
【0136】
目への局所投与に適した製剤は、活性成分が適切な担体、特に活性成分の水性溶媒に溶解するか又は懸濁する、点眼薬も含む。活性成分は、好ましくはそのような製剤中に約0.5から20%w/w、約0.5から10%w/w又は約1.5%w/wの濃度で存在する。
【0137】
口腔における局所投与に適した製剤は、通常ショ糖及びアカシア又はトラガカントである香味基剤中に活性成分を含むロゼンジ;ゼラチン及びグリセリン又はショ糖及びアカシア等の不活性基剤中に活性成分を含む香錠;並びに適切な液体担体中に活性成分を含む洗口剤を含む。
【0138】
直腸投与の製剤は、例えばココアバター又はサリチル酸塩を含む適切な基剤と共に、坐薬として提示され得る。
【0139】
肺内又は鼻腔内投与に適した製剤は、例えば0.1から500ミクロンの範囲の粒度(ミクロン単位で0.1から500ミクロンの範囲内、例えば、0.5、1、30ミクロン、35ミクロン等の粒度を含む)を有し、鼻孔を通じた急速吸入により、又は肺胞嚢に到達するように口を通じた吸入により、投与される。適切な製剤は、活性成分の水性又は油性溶液を含む。エアロゾル又は乾燥粉末投与に適した製剤は、従来の方法に従って調製され得、以下に記載される疾患の治療又は予防においてこれまで使用されてきた化合物等のその他の治療薬と共に送達され得る。
【0140】
膣内投与に適した製剤は、活性成分に加えて、当技術分野において適切であることが知られているような担体を含むペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、フォーム又はスプレー製剤として提示され得る。
【0141】
製剤は、単位投薬又は多投薬容器、例えば、密封アンプル及びバイアルに詰められ得、使用直前に注射用の無菌液体担体、例えば水の添加のみを必要とする、フリ−ズドライ(凍結乾燥)状態で保管され得る。即時型注射溶液又は懸濁液は、前述された種類の無菌粉末、顆粒及び錠剤から調製される。好ましい単位投薬製剤は、本明細書に列挙したような一日量若しくは一日量の分割単位、又はその適切な分率の活性成分を含む製剤である。
【0142】
本発明はさらに、上に定義される少なくとも一の活性成分を獣医学用担体と共に含むことから獣医学用である組成物を提供する。獣医学用担体は、組成物を投与する目的に有用な物質であり、その他の点で不活性であるか又は獣医学分野において許容され、且つ活性成分と適合する固体、液体又は気体の物質であり得る。これらの獣医学用組成物は、非経口的に、経口的に、又は任意のその他所望の経路によって投与され得る。
【0143】
併用療法
式Iの化合物は、単独で又は過剰増殖性疾患(例えばがん)等の本明細書に記載された疾病又は疾患の治療のためのその他の治療薬と併用して用いられ得る。ある実施態様において、式Iの化合物は、薬学的併用製剤又は併用療法としての投薬レジメンにおいて、抗過剰増殖性を有するか又は過剰増殖性疾患(例えばがん)を治療するのに有用な、第二の化合物と組み合わされる。薬学的併用製剤又は投薬レジメンの第二の化合物は、それらが互いに悪影響を及ぼさないよう、好ましくは、式IVの化合物と相補的な活性を有する。そのような化合物は、意図される目的に有効な量で組み合わされて、適切に存在する。一実施態様において、本発明の組成物は、式Iの化合物を、本明細書で記載したような化学療法薬と組み合わせて含む。
【0144】
併用療法は、同時又は逐次レジメンとして投与され得る。逐次投与される場合、併用製剤は、二回又はそれ以上の投与で投与されてもよい。併用投与は、別々の製剤又は単一の医薬製剤を使用する同時投与、及び何れかの順序での連続投与を含み、その際、両方(又は全ての)活性薬剤がそれらの生物学的活性を同時に発揮する期間があることが好ましい。
【0145】
上記の同時投与される薬剤の何れかの適切な投薬量は、現在使用されているものであり、新しく同定された薬剤及びその他の化学治療薬又は治療の併用作用(相乗作用)に応じて減少させてもよい。
【0146】
併用療法は「相乗作用」を提供し、「相乗的である」ことを証明しうる。即ち、活性成分が一緒に使用された場合に達成される効果は、それらの化合物を別々に使用することで生じる効果の合計よりも大きい。相乗効果は、活性成分が:(1)同時に処方され投与されるか、又は組み合わされた単位投薬製剤で同時に送達される場合;(2)別々の製剤として交互に又は並行して送達される場合;あるいは(3)何らかのその他のレジメンによる場合に達成され得る。交互療法で送達される場合、相乗作用は、化合物が、例えば、別々のシリンジ、別々の丸薬若しくはカプセル、又は別々の輸液中の異なる注入により、逐次投与又は送達される場合に達成され得る。一般に、交互療法の間、それぞれの活性成分の効果的な投薬量は、逐次的、即ち連続的に投与されるが、併用療法では、二又はそれ以上の成分の効果的な投薬量は、一緒に投与される。
【0147】
抗がん療法の特定の実施態様において、式Iの化合物又はその立体異性体、幾何異性体、互変異性体、溶媒和物、代謝物あるいは薬学的に許容される塩若しくはプロドラッグは、本明細書に記載されるもののようなその他の化学療法薬、ホルモン薬又は抗体薬と組み合わせてもよいし、同様に外科的療法及び放射線療法と組み合わせてもよい。したがって、本発明による併用療法は、少なくとも一の式Iの化合物又はその立体異性体、幾何異性体、互変異性体、溶媒和物、代謝物あるいは薬学的に許容される塩若しくはプロドラッグの投与、並びに少なくとも一のその他のがんの治療方法の使用を含む。式Iの化合物(一又は複数)及びその他の薬学的に活性な化学療法薬(一又は複数)の量、並びに投与の相対的なタイミングは、所望の併用治療の効果を実現するために選択されることになる。
【0148】
式Iの化合物の代謝物
本発明の範囲に更に該当するものは、本明細書に記載される式Iのインビボ代謝生成物である。そのような生成物は、例えば、投与される化合物の酸化、還元、加水分解、アミド化、脱アミド化、エステル化、脱エステル化、酵素的切断等により生じ得る。したがって、本発明は、式Iの化合物を、その代謝生成物を酸性するのに十分な時間、哺乳動物に接触させることを含むプロセスにより精製される化合物を含む、本発明の化合物の代謝を含む。
【0149】
代謝生成物は、典型的に、本発明の化合物の放射性標識(例えば、14C又はH)同位体を調製し、それを検出可能な用量(例えば、約0.5mg/kg超)で動物、例えば、ラット、マウス、モルモット、サル又はヒト等に非経口投与し、代謝が起こるのに十分な時間(典型的には約30秒から30時間)置き、且つその変換生成物を尿、血液又はその他の生体試料から単離することにより同定される。これらの生成物は、標識されているため容易に単離される(その他の生成物は代謝物中で生存するエピトープに結合可能な抗体の使用によって単離される)。代謝物の構造は、従来の方法で、例えば、MS、LC/MS又はNMR分析によって決定される。一般に、代謝物の分析は、当業者に周知の従来の薬物代謝研究と同じ方法で行う。代謝生成物は、それらがインビボで見出されない限り、本発明の化合物の治療投薬の診断アッセイにおいて有用であり得る。
【0150】
製造品
本発明の別の実施態様において、上記の疾病及び疾患の治療に有用な物質を含む製造品又は「キット」が提供される。キットは、化合物Iを含む容器を含む。キットは、容器上の又は容器に付随するラベル又は添付文書を更に含み得る。「添付文書」なる用語は、治療薬の商用パッケージに通例含まれる取扱説明書を指すために使用され、そのような治療薬の使用に関する適応、使用法、用量、投与、禁忌及び/又は警告についての情報を含む。
【0151】
本発明の一実施態様は、本発明の化合物及び使用説明書を含む、PI3K介在状態を治療するためのキットを含む。
【0152】
適切な容器は、例えば、瓶、バイアル、シリンジ、ブリスターパック等を含む。容器は、ガラス又はプラスチック等の様々な物質から形成されてもよい。容器は、症状を治療するために効果的な式Iの化合物又はその製剤を保持し、且つ無菌のアクセスポートを有し得る(例えば、容器は皮下注射針で孔をあけることのできるストッパーを有する静脈用溶液バッグ又はバイアルであってもよい)。組成物中の少なくとも一の活性薬剤は式Iの化合物である。ラベル又は添付文書は、組成物が、選択される症状、例えばがん等を治療するために使用されることを示す。加えて、ラベル又は添付文書は、治療される患者が疾患、例えば過剰増殖性疾患、神経変性、心肥大、疼痛、片頭痛又は神経外傷性の疾病若しくは事象等を有する患者であることを示してもよい。一実施態様において、ラベル又は添付文書は、式Iの化合物を含む組成物が、異常な細胞増殖に起因する疾患を治療するために使用され得ることを示す。また、ラベル又は添付文書は、その他の疾患を治療するために組成物を使用され得ることを示してもよい。あるいは、又は加えて、製造品は、薬学的に許容されるバッファー、例えば注射用静菌水(BWFI)、リン酸緩衝生理食塩水、リンゲル溶液及びデキストロース溶液等を含む第二の容器を更に含んでもよい。それは、その他のバッファー、希釈剤、フィルター、針、及びシリンジを含む、商業的及び使用者の見地から望ましいその他の物質を更に含んでもよい。
【0153】
キットは、式Iの化合物及び、存在する場合、第二の医薬製剤の投与のための指示書を更に含んでもよい。例えば、キットが式Iの化合物を含む第一の組成物及び第二の医薬製剤を含む場合、キットは、第1一及び第二の薬学的組成物の、それを必要とする患者への同時、逐次又は別々の投与のための指示書を更に含んでもよい。
【0154】
別の実施態様において、キットは、式Iの化合物の固体経口形態、例えば錠剤又はカプセル等の送達に適している。そのようなキットは、好ましくはいくつかの単位投薬量を含む。そのようなキットは、意図する使用順序に向けられた投薬量を有するカードを含み得る。そのようなキットの一例は、「ブリスターパック」である。ブリスターパックは、包装業界においてよく知られており、医薬単位投薬形態の包装に広く使用されている。必要に応じて、例えば数字、文字、若しくはその他のマークの形態で、又はこれらの投薬量が投与され得る治療スケジュールの日を示す、カレンダーの挿入によって、記憶補助が提供され得る。
【0155】
一実施態様によれば、キットは、(a)式Iの化合物が含まれている第一の容器;及び場合によっては(b)第二の医薬製剤が含まれている第二の容器を含み得、この第二の医薬製剤は、抗過剰増殖活性をもつ第二の化合物を含む。あるいは、又は加えて、キットは、薬学的に許容されるバッファー、例えば注射用静菌水(BWFI)、リン酸緩衝生理食塩水、リンゲル溶液及びデキストロース溶液等を含む第三の容器を更に含んでもよい。それは、その他のバッファー、希釈剤、フィルター、針、及びシリンジを含む、商業的及び使用者の見地から望ましいその他の物質を更に含んでもよい。
【0156】
キットが式Iの組成物及び第二の治療薬を含むその他の実施態様では、キットは、分割された瓶又は分割されたホイルパケット等の別々の組成物を含むための容器を含んでもよいが、別々の組成物は、単一の分割されていない容器に含められてもよい。典型的に、キットは、別々の構成成分の投与のための指示書を含む。キットの形態は、別々の構成成分が異なる投薬形態(例えば、経口及び非経口)で好ましくは投与される場合、異なる投薬間隔で投与される場合、又は処方する医師が組合せの個別の構成成分の容量設定を望む場合に特に有利である。
【0157】
式Iの化合物の調製
式Iの三環式化合物は、特に、本明細書に含まれる記載を踏まえて、化学分野でよく知られた類似のプロセスを含む合成経路により合成され得る。出発物質は、一般的に、Aldrich Chemicals(Milwaukee, WI)等の商業的供給源から入手可能であるか又は、当業者に周知の方法を使用して容易に調製される(例えば、Louis F. Fieser and Mary Fieser, Reagents for Organic Synthesis, v. 1-23, Wiley, N.Y.(1967-2006 ed.) Handbuch der organischen Chemie, 4, Aufl. ed. Springer-Verlag, Berlin(補遺を含む)(Beilsteinオンラインデータベースを介しても入手可能)に一般的に記載されている方法により調製される)。
【0158】
ある実施態様において、式Iの化合物は、Comprehensive Heterocyclic Chemistry II, Editors Katritzky and Rees, Elsevier, 1997, e.g. Volume 3; Liebigs Annalen der Chemie, (9): 1910-16, (1985); Helvetica Chimica Acta, 41: 1052-60, (1958); Arzneimittel-Forschung, 40 (12): 1328-31, (1990)に記載された複素環化合物を調製するよく知られた手順を使用して、容易に要請され得る。
【0159】
式Iの化合物は、単独で、又は、少なくとも2、例えば5から1,000の化合物若しくは10から100の化合物を含む化合物ライブラリーとして、調製され得る。式Iの化合物ライブラリーは、当業者に公知の手順による、組合せ「分割混合」アプローチ又は液相若しくは固相化学の何れかを使用した多重並行合成により調製され得る。よって、本発明のさらなる態様によれば、本発明の少なくとも2の化合物を含む化合物ライブラリー又はその薬学的に許容される塩が提供される。
【0160】
例示を目的として、一般手順は、式Iの化合物並びに重要な中間体の調製に適用され得る一般的な方法を示す。図面及び実施例の項は、個別の反応工程のより詳細な記載を含む。当業者は、その他の合成経路が本発明の化合物を合成するのに使用され得ることを認識するであろう。ある出発物質及び経路がスキーム、一般手順及び実施例に表されているが、その他同様の出発物質及び経路は、置換され、様々な誘導体及び/又は反応条件を提供し得る。加えて、以下に記載される方法により調製される化合物の多くは、当業者によく知られた従来科学を使用した本開示を踏まえて、さらに調節され得る。
【0161】
式Iの化合物の調製時には、中間体の遠隔官能性(例えば、第1級又は第2級アミン等)の保護が必要になり得る。このような保護の必要性は、遠隔官能性の性質及び調製方法の条件に応じて変化する。適切なアミノ保護基は、アセチル、トリフルオロアセチル、t−ブトキシカルボニル(Boc)、ベンジルオキシカルボニル(CBz)及び9−フルオレニルメチレンオキシカルボニル(Fmoc)を含む。このような保護の必要性は、当業者によって容易に決定される。保護基及びそれらの使用の一般的な説明については、T. W. Greene, Protective Groups in Organic Synthesis, John Wiley & Sons, New York, Third Ed., 1999を参照のこと。
【0162】
分離方法
本発明の化合物の調製方法において、反応生成物を互いに、及び/又は出発物質から分離することは有益であり得る。各工程又は一連の工程の所望の生成物は、当技術分野で一般的な技法により、分離され、及び/又は所望程度の均質性に精製される(以降、分離されると称する)。典型的には、このような分離は、多相抽出、溶媒又は溶媒混合物からの結晶化、蒸留、昇華又はクロマトグラフィーを含む。クロマトグラフィーは、任意の数の方法、例えば逆相及び順相、サイズ排除、イオン交換、高、中及び低圧液体クロマトグラフィー法及び装置、小規模分析用、擬似移動床(SMB)及び分取薄層又は厚層クロマトグラフィー、並びに小規模薄層及びフラッシュクロマトグラフィーの技法を含む可能性がある。
【0163】
分離方法の別のクラスは、所望の生成物、未反応出発物質、生成物による反応等と結合するか又はそれを他の分離可能な状態にするために選択された試薬とともに混合物を処理することを含む。このような試薬は、吸着剤、又は活性炭、分子篩、イオン交換媒体等の吸収剤を含む。あるいは、試薬は、塩基性物質の場合は酸、酸性物質の場合は塩基、結合試薬、例えば抗体、結合タンパク質、選択的キレート、例えばクラウンエーテル、液体/液体イオン抽出試薬(LIX)等であり得る。
【0164】
適切な分離方法の選択は、含まれる物質の特質によって決まる。例えば、蒸留物及び昇華物における沸点及び分子量、クロマトグラフィーにおける極性官能基の存在又は不存在、多相抽出での酸性及び塩基性媒体における物質の安定性等である。当業者は、所望の分離を達成すると最も考えられる技法を適用する。
【0165】
ジアステレオマー混合物は、当業者に周知の方法により、例えばクロマトグラフィー及び/又は分別晶出により、それらの物理化学的差に基づいて、それらの個々のジアステレオマーに分離され得る。エナンチオマーは、適切な光学活性化合物(例えば、キラル補助基、例えばキラルアルコール又はモッシャーの酸塩化物)と反応させて、エナンチオマー混合物をジアステレオマー混合物に転化し、ジアステレオマーを分離して、個々のジアステレオ異性体を対応する純粋なエナンチオマーに転化(例えば、加水分解)することにより分離され得る。また、本発明の化合物のいくつかは、アトロプ異性体(例えば、置換ビアリール)であり得、本発明の一部であると考えられている。エナンチオマーは、キラルHPLCカラムの使用によっても分離され得る。
【0166】
その立体異性体を実質的に有さない単一立体異性体、例えばエナンチオマーは、光学活性分割剤を使用したジアステレオマーの形成等の方法を用いて、ラセミ混合物の分割により得られる(Eliel, E. and Wilen, S. 「Stereochemistry of Organic Compounds」, John Wiley & Sons, Inc., New York, 1994; Lochmuller, C. H., (1975) J. Chromatogr., 113 (3): 283-302)。本発明のキラル化合物のラセミ混合物は、(1)キラル化合物を用いたイオン性ジアステレオマー塩の形成、及び分別晶出又は他の方法による分離、(2)キラル誘導体化試薬を用いたジアステレオマー化合物の形成、ジアステレオマーの分離、及び純粋な立体異性体への転化、並びに(3)直接キラル条件下での実質的に純粋な又は濃縮された立体異性体の分離を含む、任意の適切な方法により、分離され、単離され得る。「Drug Stereochemistry, Analytical Methods and Pharmacology,」 Irving W. Wainer, Ed., Marcel Dekker, Inc., New York (1993)を参照のこと。
【0167】
方法(1)下では、ジアステレオマー塩は、エナンチオマー的に純粋なキラル塩基、例えばブルシン、キニーネ、エフェドリン、ストリキニーネ、α−メチル−β−フェニルエチルアミン(アンフェタミン)等を、酸性官能基、例えばカルボン酸やスルホン酸を保有する不斉化合物と反応させることにより形成され得る。αβジアステレオマー塩は、分別晶出又はイオンクロマトグラフィーにより分離されるよう誘導され得る。アミノ化合物の光学異性体の分離に関しては、カンファースルホン酸、酒石酸、マンデル酸又は乳酸等の、キラルカルボン酸又はスルホン酸を添加することによって、ジアステレオマー塩の形成をもたらし得る。
【0168】
あるいは、方法(2)により、分割されるべき基質をキラル化合物の1つのエナンチオマーと反応させて、ジアステレオマー対を形成する(E. and Wilen, S. 「Stereochemistry of Organic Compounds」, John Wiley & Sons, Inc., 1994, p. 322)。ジアステレオマー化合物は、不斉化合物をエナンチオマー的に純粋なキラル誘導体化試薬、例えばメンチル誘導体と反応させることによって形成され得、次いでジアステレオマーを分離し、加水分解して、純粋な又は濃縮されたエナンチオマーを生じさせ得る。光学純度の決定方法は、例えば(−)を伴うクロロギ酸メンチルのメンチルエステル(塩基の存在下)、又はラセミ混合物のモッシャーエステル、α−メトキシ−α−(トリフルオロメチル)フェニルアセテートαα(Jacob III. J. Org. Chem. (1982) 47: 4165)等のラセミ混合物のキラルエステルを作製すること、及び2つのアトロプ異性エナンチオマー又はジアステレオマーの存在に関してH NMRスペクトルを分析することを含む。アトロプ異性化合物の安定ジアステレオマーは、アトロプ異性ナフチル−イソキノリンの分離方法に従って、順相及び逆相クロマトグラフィーにより分離され、単離され得る(国際公開第1996/015111号)。方法(3)により、2つのエナンチオマーのラセミ混合物は、キラル固定相を用いたクロマトグラフィーにより分離され得る(「Chiral Liquid Chromatography」 (1989) W. J. Lough, Ed., Chapman and Hall, New York; Okamoto, J. Chromatogr., (1990) 513: 375-378)。濃縮又は精製されたエナンチオマーは、旋光性及び円二色性のような、不斉炭素原子を有する他のキラル分子を識別するために用いられる方法により、識別され得る。
【0169】
一般調製手順
鈴木カップリング:
鈴木タイプのカップリング反応は、式1の化合物の中間体の2−クロロ−ピリミジン 1中間体のピリミジン環の2位で、単環式ヘテロアリール、縮合二環式複素環、縮合二環式ヘテロアリール、又はフェニルに結合するのに有用である。例えば、1は、RがH又はピナコール等の保護ボロナートである、アリール又はヘテロアリール ボロナート試薬2と組み合わせ得られ得る。例えば、1.5当量の4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)1H−インダゾール24は、水中の約1モル溶液及びほぼ等容量のアセトニトリルとして約3当量の炭酸ナトリウムに溶解する。低原子価パラジウム試薬、例えばビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリドの触媒量、又はそれ以上が、添加され、3を得る。置換基R1’、R2’、R3’は、定義されたR、R、R又はその保護形態若しくは前駆体であり得る。
【0170】
様々なボロン酸又はボロン酸エステルが、インダゾール ボロン酸エステルの代わりに使用され得る。あるいは、例えば、N−THP保護化合物25の、インダゾールの窒素も、保護され得る。いくつかの場合において、酢酸カリウムが、炭酸ナトリウムの代わりに使用され、水性層のpHを調節する。鈴木パラジウムカップリング反応は、マイクロ波条件下で最適化及び/又は加速され得る。反応物は、Biotage Optimizer(Biotage,Inc.)等のマイクロ波反応器中の気圧下で、約100−150℃で約10から30分間加熱される。内容物を冷却し、濃縮し、酢酸エチル又はその他の有機溶媒で抽出する。有機層の蒸発後、鈴木カップリング生成物3は、シリカ上で又は逆相HPLCにより精製され得る。
【0171】
ハロゲン化物1のボロン酸又はエステル2、例えば、4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−1H−インダゾール24若しくは4−メチル−5−(4,4,5,5−テトラメチル(1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル))ピリミジン−2−イルアミン26とのパラジウム介在クロス鈴木カップリング反応中、様々なパラジウム触媒が使用され得る。PdCl2(PPh、Pd(t−Bu)、PdCldppf CHCl、Pd(PPh、Pd(OAc)/PPh、ClPd[(Pet)]、Pd(DIPHOS)、ClPd(Bipy)、[PdCl(PhPCHPPh)]、ClPd[P(o−tol)]、Pd(dba)/P(o−tol)、Pd(dba)/P(furyl)、ClPd[P(furyl)]、ClPd(PmePh、ClPd[P(4−F−Ph)]、ClPd[P(C]、ClPd[P(2−COOH−Ph)(Ph)]、ClPd[P(4−COOH−Ph)(Ph)]、並びにカプセル化触媒Pd EnCatTM 30、Pd EnCatTM TPP30、及びPd(II)EnCatTM BINAP30(米国特許公開第2004/0254066号)を含む低原子価Pd(II)及びPd(0)触媒が、鈴木カップリング反応において使用され得る。そのような鈴木パラジウム触媒の一つは、ジクロロメタンとの複合体で、Pd(dppf)Clとして表される[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)である。
【実施例】
【0172】
実施例中に記載された化学反応は、本発明の他の多数のPI3K阻害剤を調製するために容易に適合され得、本発明の化合物を調製するための別の方法は、本発明の範囲内であると見なされる。例えば、例示されていない本発明の化合物の合成は、当業者に明らかな修正により、例えば、反応感応基を適切に保護すること、記載された試薬以外の当分野において知られている他の適切な試薬を利用すること、及び/又は反応条件の通例の修正を行うことにより、成功裡に実施され得る。あるいは、本明細書において開示されているか又は当分野において知られている他の反応は、本発明の他の化合物を調製するための適応性を有するものと認識されるであろう。
【0173】
以下に記載の実施例において、別記しない限り、温度は全て摂氏(℃)で記述される。試薬は、商業的供給元、例えばSigma Aldrich Chemical Company、Lancaster、TCI又はMaybridgeから購入し、別記しない限り、更には精製せずに使用した。以下に明記する反応は、一般的に、窒素若しくはアルゴンの陽圧下で、又は(別記されない限り)無水溶媒中で乾燥管によって行い、反応フラスコには、典型的に、シリンジを介した基質及び試薬の導入のためにゴム隔膜を装着した。ガラス器具は、オーブンで乾燥及び/又は加熱して乾燥させた。カラムクロマトグラフィーは、シリカゲルカラムを有するBiotageシステム(製造者:Dyax Corporation)上又はシリカ SEP PAK(登録商標)カートリッジ(Waters)上で実施した。H NMRスペクトルは、参照標準(7.25ppm)としてクロロホルムを使用して、重水素化されたCDCl、d−DMSO、CHOD又はd−アセトン溶液(ppmで報告された)において400MHzで得られた.。ピークの多重性が報告される場合には、以下の略語を使用する:s(一重線)、d(二重線)、t(三重線)、m(多重線)、br(拡大線)、dd(二重の二重線)、dt(三重の二重線)。カップリング定数は、与えられる場合、ヘルツ(Hz)で報告される。
【0174】
【0175】
【0176】
(C)LCMS 2.5分間キラルメソッド
移動相A:CO2
移動相B:メタノール
等張条件:25%B
流量:5mL/分
出口圧力:120バール
温度:40℃
カラム:ChiralCelOJ(4.6x50mm、3μm)
Uv:230nm
システム:Berger Analytical SFC/MS
【0177】
キラル精製:
条件A:
移動相A:CO2
移動相B:メタノール
等張条件:25%B
流量:60mL/分
出口圧力:100バール
温度:40℃
カラム:ChiralCelOJ(21.2x250mm、5μm)
Uv:230nm
システム:Berger MGII
【0178】
実施例1 6−ヒドロキシ−5−メトキシ−1H−ピリミジン−2,4−ジオン、ナトリウム塩
窒素雰囲気下で、ナトリウム金属(1.15g、0.05モル)を40℃で少量ずつエタノール(4Å分子篩上で乾燥、50mL)に添加し、溶液が形成されるまで、混合物を撹拌した。尿素(3.0g、0.05モル)を添加し、完全に溶解するまで、混合物を100℃で15分間加熱した。反応混合物をわずかに冷却して、メトキシメチル マロネート(8.1g、0.05モル)を添加し、ピンク/白色の沈殿物をほぼすぐに形成した。更に、乾燥エタノール(10mL)を添加し、撹拌可能な混合物を維持した。得られた懸濁液を100℃(還流)で4時間加熱した。反応混合物を真空で濃縮し、残留物を高真空下で乾燥させ、6−ヒドロキシ−5−メトキシ−1H−ピリミジン−2,4−ジオン、ナトリウム塩をピンク/白色の固体として得、分析又は精製せずに次の工程で使用した。
【0179】
実施例2 2,4,6−トリクロロ−5−メトキシ−ピリミジン
6−ヒドロキシ−5−メトキシ−1H−ピリミジン−2,4−ジオン、ナトリウム塩(21mmol)をオキシ塩化リン(20mL)に懸濁させ、混合物を二つの20mLマイクロ波反応バイアルに分けた。反応混合物を、マイクロ波照射(注意!大幅に圧力が上昇する!)を使用して、130−140℃(〜10−12バール)で30分間加熱した。冷却した反応混合物を混合し、温かい(およそ40℃)水(注意!)に注いで、得られた混合物を酢酸エチルで二度抽出し、混合有機抽出物を乾燥させ(NaSO)、濾過して、真空で濃縮し、2,4,6−トリクロロ−5−メトキシ−ピリミジンを結晶性の黄色/褐色の固体(3.75g、84%)として得た。1H NMR(CDCl3): 3.98(3H,s).
【0180】
実施例3 2,4,6−トリクロロ−5−ヒドロキシ−ピリミジン
窒素雰囲気下で、2,4,6−トリクロロ−5−メトキシ−ピリミジン(4.0g、18.7mmol)が入ったDCM溶液(200mL)を0℃に冷却し、三臭化ホウ素(6.6mL、65mmol)を滴下して処理した。室温で18時間撹拌した後。反応混合物を冷却し、メタノール(25mL、注意、発熱する!)で希釈して、反応混合物を水(200mL)で希釈した。水性層をDCMで抽出し、混合有機抽出物を乾燥させ(NaSO)、真空で濃縮し、2,4,6−トリクロロ−5−ヒドロキシ−ピリミジンを淡黄褐色の固体(2.55g、71%)として得た。13C NMR(DMSO-d6): 149.23(C), 145.25(C), 145.08(C). LCMS(方法C): RT= 2.65/2.77. [M-H]- 197/199.
【0181】
実施例4 4−(4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロラン−2−イル)−1H−インダゾール 24−経路1
3−ブロモ−2−メチル アニリン(5.0g、26.9mmol)が入ったクロロホルム溶液(50mL)に、酢酸カリウム(1.05当量、28.2mmol、2.77g)を添加した。氷水中で同時冷却しながら、無水酢酸(2.0当量、53.7mmol、5.07mL)を添加した。次いで混合物を室温で10分間撹拌し、その後白色のゼラチン状の固体を形成した。18−クラウン−6(0.2当量、5.37mmol、1.42g)を添加し、続いて亜硝酸イソ−アミル(2.2当量、59.1mmol、7.94mL)を添加して、混合物を還流下で18時間加熱した。反応混合物を冷却し、クロロホルム(3x100mL)と飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(100mL)との間で分配した。混合有機抽出物をブライン(100mL)で洗浄し、分離させ、乾燥させた(MgSO)。粗生成物をシリカ上に蒸発させ、クロマトグラフィーで精製し、20%から40%のEtOAc−ガソリンで溶出させ、1−(4−ブロモ−インダゾール−1−イル)−エタノンA(3.14g、49%)をオレンジの固体として、4−ブロモ−1H−インダゾール B(2.13g、40%)をペールオレンジの固体として得た。A: 1H NMR(400 MHz, CDCl3)δ 2.80(3H, s), 7.41(1H, t, J=7.8Hz), 7.50(1H, d, J=7.8Hz), 8.15(1H, s), 8.40(1H, d, J=7.8Hz). B: 1H NMR(400 MHz, CDCl3)7.25(1H, t, J=7.3Hz), 7.33(1H, d, J=7.3Hz), 7.46(1H, d, J=7.3Hz), 8.11(1H, s), 10.20(1H, br s).
【0182】
1−(4−ブロモ−インダゾール−1−イル)−エタノン A(3.09g、12.9mmol)が入ったMeOH溶液(50mL)に、6NHCl水溶液(30mL)を添加し、混合物を室温で7時間撹拌した。MeOHを蒸発させ、混合物をEtOAc(2×50mL)と水(50mL)との間で分配した。混合有機層をブライン(50mL)で洗浄し、分離させ、乾燥させた(MgSO)。溶媒を減圧下で蒸発させて除去し、4−ブロモ−1H−インダゾール B(2.36g、93%)を得た。
【0183】
4−ブロモ−1H−インダゾール B(500mg、2.54mmol)及びビス(ピナコラト)ジボロン(1.5当量、3.81mmol)が入ったDMSO溶液(20mL)に、酢酸カリウム(3.0当量、7.61mmol、747mg;乾燥ピストル中で乾燥させた)及びPdCl(dppf)(3mol%、0.076mmol、62mg)を添加した。混合物をアルゴンで脱気し、80℃で40時間加熱した。反応混合物を冷却し、水(50mL)とエーテル(3X50mL)との間で分配した。混合有機層をブライン(50mL)で洗浄し、分離させ、乾燥させた(MgSO)。粗物質をクロマトグラフィーで精製し、30%から40%のEtOAc−ガソリンで溶出させ、4−(4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロラン−2−イル)−1H−インダゾール 24(369mg、60%)とインダゾール(60mg、20%)が3:1である分離不可能な混合物を得、放置した際に凝固した黄色のゴムとして単離し、オフホワイトの固体を得た。1H NMR(400 MHz, d6-DMSO)1.41(12H, s), 7.40(1H, dd, J=8.4Hz, 6.9Hz), 7.59(1H, d, J=8.4Hz), 7.67(1H, d, J=6.9Hz), 10.00(1H, br s), 8.45(1H, s), 及びインダゾール: 7.40(1H, t), 7.18(1H, t, J=7.9Hz), 7.50(1H, d, J=9.1Hz), 7.77(1H, d, J=7.9Hz), 8.09(1H, s);不純物量1.25.
【0184】
実施例5 4−(4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロラン−2−イル)−1H−インダゾール 24−経路2
2−メチル−3−ニトロアニリン(2.27g、14.91mmol)が入った酢酸溶液(60mL)に、亜硝酸ナトリウム(1.13g、1.1当量)が入った水溶液(5mL)を添加した。2時間後、深紅色の溶液を氷/水に注ぎ、得られた沈殿物を濾過により収集し、4−ニトロ−1H−インダゾール C(1.98g、81%)を得た。
【0185】
4−ニトロ−1H−インダゾールC(760mg、4.68mmol)、パラジウム炭(10%、触媒)及びエタノール(30mL)の混合物を水素バルーン下で4時間撹拌した。次いで反応混合物をセライトを通して濾過し、溶媒を真空で除去して、1H−インダゾール−4−イルアミン D(631mg、100%)を得た。
【0186】
1H−インダゾール−4−イルアミン D(631mg、4.74mmol)が入った6M 塩酸懸濁液(7.2mL)に、亜硝酸ナトリウム(337mg、4.89mmol)が入った水溶液(2mL)を氷点下で滴下した。30分間撹拌した後、テトラフルオロホウ酸ナトリウム(724mg)を反応混合物に添加した。粘性の溶液を得、これを濾過して水で簡単に洗浄し、1H−インダゾール−4−ジアゾニウム テトラフルオロボラート塩 E(218mg、20%)を深紅色の固体として得た。
【0187】
乾燥メタノール(4mL)をアルゴンで5分間パージした。これに1H−インダゾール−4−ジアゾニウム テトラフルオロボラート塩(218mg、0.94mmol)、ビス−ピナコラト ジボロン(239mg、1.0当量)及び[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]塩化パラジウム(II)(20mg)を添加した。反応混合物を5時間撹拌し、次いでセライトを通して濾過した。残留物をフラッシュクロマトグラフィーを使用して精製し、4−(4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロラン−2−イル)−1H−インダゾール 24(117mg)を得た。
【0188】
実施例6 1−(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)−4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−1H−インダゾール 25(経路A)
工程A:4−クロロ−1H−インダゾールの調製:撹拌子付の250mlフラスコに2−メチル−3−クロロアニリン(8.4ml、9.95g、70.6mmol)、酢酸カリウム(8.3g、84.7mmol)及びクロロホルム(120ml)を添加した。この混合物を撹拌しながら0℃に冷却した。冷却した混合物に、無水酢酸(20.0ml、212mmol)を2分間にわたって滴下した。反応混合物を25℃に温め、1時間撹拌した。この時点で、反応物を60℃に加熱した。亜硝酸イソアミル(18.9ml、141mmol)を添加し、反応物を60℃で一晩撹拌した。完了後、水(75ml)及びTHF(150ml)を添加し、反応物を0℃に冷却した。LiOH(20.7g、494mmol)を添加し、反応物を0℃で3時間撹拌した。水(200ml)を添加し、生成物をEtOAc(300ml、100ml)で抽出した。有機層を混合し、MgSOで乾燥させて、真空で濃縮し、11.07gの4−クロロ−1H−インダゾール(100%)をオレンジの固体として得た。1H NMR(400 MHz, CDCl3)δ 8.18(d, J = 1 Hz, 1H), 7.33(d, J = 8 Hz 1H), 7.31(t, J = 7 Hz, 1H), 7.17(dd, J = 7 Hz, 1 Hz 1H).LCMS(ESI pos)m/e 153(M+1).
【0189】
工程B:4−クロロ−1−(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)−1H−インダゾールの調製:機械撹拌器付の1Lフラスコに、4−クロロ−1H−インダゾール(75.0g、0.492mol)、ピリジニウム p−トルエンスルホナート(1.24g、4.92mmol)、CHCl(500ml)及び3,4−ジヒドロ−2H−ピラン(98.6ml、1.08mol)を添加した。この混合物を撹拌しながら45℃に16時間加熱した。反応混合物の分析は、生成物の両方の異性体の生成を示している。反応物を25℃に冷却し、CHCl(200ml)を添加した。溶液を水(300ml)及び飽和NaHCO(250ml)で洗浄した。有機物をMgSOで乾燥させて、濃縮して乾燥させた。EtOAc/ヘキサン(4:6、1L)に溶解させ、SiO(1.2L)を添加することにより、粗生成物を生成した。混合物を濾過し、ケーキをEtOAc/ヘキサン(4:6、2L)で洗浄した。有機物を真空で濃縮し、110.2gの4−クロロ−1−(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)−1H−インダゾール(95%)をオレンジの固体として得た。異性体1:1H NMR(400 MHz, CDCl3)δ 8.10(d, J = 1 Hz, 1H), 7.50(dd, J = 9 Hz, 1 Hz 1H), 7.29(dd, J = 9 Hz, 8 Hz 1H), 7.15(dd, J = 8 Hz, 1 Hz 1H)5.71(dd, J = 9 Hz, 3 Hz 1H)4.02(m, 1H)3.55(m, 1H)2.51(m, 1H)2.02(m, 2H)1.55(m, 3H). LCMS(ESI pos)m/e 237(M+1);異性体2:1H NMR(400 MHz, CDCl3)δ 8.25(d, J = 1 Hz, 1H), 7.62(dd, J = 9 Hz, 1 Hz 1H), 7.20(dd, J = 9 Hz, 8 Hz 1H), 7.06(dd, J = 8 Hz, 1 Hz 1H)5.69(dd, J = 9 Hz, 3 Hz 1H)4.15(m, 1H)3.80(m, 1H)2.22(m, 2H)2.05(m, 1H)1.75(m, 3H). LCMS(ESI pos)m/e 237(M+1).
【0190】
工程C:1−(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)−4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−1H−インダゾールの調製:撹拌子付500mlフラスコに、4−クロロ−1−(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)−1H−インダゾール(10.0g、42.2mmol)、DMSO(176ml)、PdCl(PPh(6.2g、8.86mmol)、トリシクロヘキシルホスフィン(0.47g、1.69mmol)、ビス(ピナコラト)ジボロン(16.1g、63.4mmol)及び酢酸カリウム(12.4g、0.127mol)を添加した。混合物を撹拌しながら130℃に16時間加熱した。反応物を25℃に冷却し、EtOAc(600ml)を添加して、水(2x250ml)で洗浄した。有機物をMgSOで乾燥させて、真空で濃縮して乾燥させた。粗生成物をSiOプラグ(120g)で精製し、10% EtOAc/ヘキサン(1L)及び30% EtOAc/ヘキサン(1L)で溶出させた。濾液を真空で濃縮し、13.9g(100%)の1−(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)−4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−1H−インダゾールを酢酸エチル中20%(wt/wt)溶液として得た。H NMRは、約20%(wt/wt)のビス(ピナコラト)ジボロンが存在することを示す。1H NMR(400 MHz, CDCl3)δ 8.37(s, 1H), 7.62(dd, J = 14 Hz, 2 Hz 1H), 7.60(dd, J = 7 Hz, 1 Hz 1H), 7.31(dd, J = 8 Hz, 7 Hz 1H)5.65(dd, J = 9 Hz, 3 Hz 1H)4.05(m, 1H)3.75(m, 1H)2.59(m, 1H)2.15(m, 1H)2.05(m, 1H)1.75(m, 3H)1.34(s, 12H).LCMS(ESI pos)m/e 245(M+1).
【0191】
実施例7 1−(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)−4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2 ジオキサボロラン−2−イル)−1H−インダゾール 25(経路B)
工程A:4−ニトロ−1H−インダゾールの調製:2−メチル−3−ニトロアニリン(200g、1.315モル)、酢酸(8000ml)の混合物を15−20℃に冷却し、亜硝酸ナトリウム(90.6g、1.315モル)が入った水溶液(200ml)を30分にわたってゆっくりと添加した。添加後、反応温度を25−30℃に上昇させ、反応物をこの温度で2−3時間撹拌した。反応進行をTLCでモニターして、反応完了後、生成物を濾過し、残留物を酢酸(1000ml)で洗浄した。酢酸を80℃未満の真空下(550mm Hg)で蒸留し、水(8000ml)を添加し、25−30℃に冷却して、30分間撹拌した。スラリーを濾過し、水(1000ml)で洗浄した。粗生成物を70−80℃で2時間加熱して乾燥させ、次いで5% 酢酸エチル/n−ヘキサン(100:2000ml)溶液に取り出し、周囲温度で1−1.5時間撹拌した。懸濁液を濾過し、5% 酢酸エチル/n−ヘキサン混合物(25:475ml)で洗浄した。得られた生成物を80℃未満の真空下で10−12時間乾燥させ、4−ニトロ−1H−インダゾールを褐色の固体(150g、70%)として得た: mp: 200-203℃;1H NMR(200 MHz, CDCl3)δ 13.4(br, 1H), 8.6(s, 1H), 8.2-7.95(dd, 2H), 7.4(m, 1H). ESMS m/z 164(M+1)。 純度: 95% (HPLC)
【0192】
工程B:4−アミノ−1H−インダゾールの調製:EtOH(3000ml)に4−ニトロ−1H−インダゾール(200g、1.22モル)と10% パラジウム炭素(20.0g)が入った混合物を周囲温度で水素化した(反応物は発熱し、温度は50℃に上昇した)。反応完了後、触媒を濾過により除去した。溶媒を80℃未満の真空で蒸発させ、室温に冷却し、n−ヘキサン(1000ml)を残留物に添加して、30分間撹拌した。単離した固体を濾過し、n−ヘキサン(200ml)で洗浄した。得られた生成物を70−80℃の真空下で10−12時間乾燥させ、4−アミノ−1H−インダゾールを褐色の固体(114g、70%)として得た。m. p.: 136-143℃. 1H NMR200 MHz, CDCl3,) δ12 (br, 1H), 8.0(s, 1H), 7.1-7.0(dd, 2H), 6.5(d, 1H), 3.9(m, 2H). ESMS m/z 134(M+1)。 純度: 90-95%(HPLC)
【0193】
工程C:4−ヨード−1H−インダゾールの調製:4−アミノ−1H−インダゾール(50.0g、0.375モル)が入った水(100ml)と濃塩酸(182ml)の混合物を−10℃に冷却した。この溶液に、亜硝酸ナトリウム(51.7g、0.75モル)が入った水溶液(75ml)を−10℃で約30−60分で滴下した(添加中、発泡が観察された)。別のフラスコ中で、水(3000ml)にヨウ化カリウム(311g、1.87モル)が入った混合物を室温で調製し、これに上記の冷却したジアゾニウム塩を30−40℃で約30−40分で添加した。反応物を30℃で1時間置き、反応完了後、酢酸エチル(500ml)を添加し、反応混合物をセライトを通して濾過した。層を分離し、水性層を酢酸エチル(2X500ml)で抽出した。混合有機層を5% 低張液(2x500ml)、ブライン(500ml)で洗浄し、乾燥させ(NaSO)、濃縮した。粗生成物をクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン、15−20% 酢酸エチル/ヘキサン)で精製し、4−ヨード−1H−インダゾールをオレンジの固体(23.0g、25%)として得た。mp:151-177 C: 1H NMR(200 MHz, CDCl3)δ 12.4(br, 1H), 8.0(s, 1H), 7.6(dd, 2H), 7.1(d, 1H). ESMS m/z 245(M+1). 純度: 95-98%(HPLC).
【0194】
工程D:4−ヨード−1−(2−テトラヒドロピラニル)インダゾールの調製:CHCl(1250ml)に4−アミノ−1H−インダゾール(250.0g、1.024モル)、3,4−ジヒドロ−2H−ピラン(126.0g、1.5モル)及びPPTS(2.57g、0.01モル)が入った混合物を50℃で2時間加熱した。反応物を室温に冷却し、水(625ml)に注ぎ、層を分離させて、水性層をCHClで(250ml)抽出した。混合有機層を水(625ml)で洗浄し、乾燥させ(NaSO)、濃縮した。粗残留物をクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン、5−10% 酢酸エチル/ヘキサン)で精製し、4−ヨード−1−(2−テトラヒドロピラニル)インダゾールを油(807.0g、60%)として得た。1H NMR (200 MHz, CDCl3) δ 8.5 (s, 1H), 7.8 (m, 1H), 7.6 (d, 1H), 7,.25 (m, 1H), 5.7 (dd, 1H), 4.2-3.8 (dd, 1H), 2.2-2.0 (m, 4H) 2.0-1.8 (m, 4H). ESMS m/z 329 (M+1).
【0195】
工程E:1−(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)−4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−1H−インダゾールの調製:DMSO(500ml)に4−ヨード−1−(2−テトラヒドロピラニル)インダゾール(100g、0.304モル)、ビスピナカロトジボラン(96.4g、0.381モル)、PdCl(dppf)(8.91g、0.012モル)及び酢酸カリウム(85.97g、0.905モル)が入った混合物を80℃で2−3時間加熱した。完了後、反応物を室温に冷却して水(1500ml)を添加した。反応物の塊を酢酸エチル(3x200ml)中に抽出し、混合有機層を蒸発させ、乾燥させ(NaSO)、濃縮した。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン、5−10% 酢酸エチル/ヘキサン)で精製し、1−(テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル)−4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−1H−インダゾール 25を粘性の褐色の油(70.0g、70%)として得た。1H NMR(CDCl3)δ 8.5(s, 1H), 7.8(m, 1H), 7.6(d, 1H), 7.25(m, 1H), 5.7(dd, 1H), 4.2-3.8(dd, 1H), 2.2-2.0(m, 4H)2.0-1.8(m, 4H)1.4-1.2(s, 12H).ESMS m/z 329(M+1)
【0196】
実施例8 4−メチル−5−(4,4,5,5−テトラメチル(1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル))ピリミジン−2−イルアミン 26
4−メチルピリミジン−2−イルアミン(8.0g、0.073mol)が入ったクロロホルム溶液(320mL)に、N−ブロモスクシンイミド(13.7g、0.077mol)を添加した。反応混合物を暗室で18時間撹拌した。LC/MSは反応が完了したことを示した。混合物をDCMで希釈し、次いで1N NaOH水溶液及びブラインで洗浄し、MgSO上で乾燥させ、濾過して濃縮し、5−ブロモ−4−メチルピリミジン−2−イルアミン(12g、収率:86%)を得た。
【0197】
ジオキサン(140mL)に5−ブロモ−4−メチルピリミジン−2−イルアミン(5.0g、26mmol)、酢酸カリウム(7.83g、79.8mmol)、4,4,5,5−テトラメチル−2−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−1,3,2−ジオキサボロラン(7.43g、29.2mmol)が入った混合物を窒素下で20分間撹拌した。1、1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン塩化パラジウム(II)ジクロロメタン付加物(1.08g、1.33mmol)を反応混合物に添加した。反応混合物を窒素下で115℃に18時間加熱した。完了後、混合物を冷却し、EtOAcを添加した。得られた混合物を超音波で分解し、濾過した。追加のEtOAcを使用して、固体を洗浄した。混合有機抽出物を水で洗浄し、MgSO上で乾燥させて濃縮した。粗生成物をクロマトグラフィーで精製し、20〜100% EtOAc/ヘキサンで溶出させ、4.5gの4−メチル−5−(4,4,5,5−テトラメチル(1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル))ピリミジン−2−イルアミン 26(収率:74%)を得た。1H-NMR(DMSO, 400 MHz): δ 8.28(s, 1H), 6.86(br s, 2H), 2.35(s, 3 H), 1.25(s, 12 H).MS(ESI)m/e(M+H+)236.15, 154.07.
【0198】
実施例101 5−(4−モルホリノ−6,7−ジヒドロ−[1,4]ジオキシノ[2,3−d]ピリミジン−2−イル)ピリミジン−2−アミン 101
工程1: (2,4,6−トリクロロ−ピリミジン−5−イルオキシ)−酢酸エチル エステル
ジオキサン(100mL)に2,4,6−トリクロロ−ピリミジン−5−オール(3.0g、15.0mmol)、エチルグリコラート(16.7mL、17.3mmol)、トリフェニルホスフィン(4.5g、17.3mmol)及びDIAD(3.4mL、17.3mmol)が入った混合物を室温で18時間撹拌し、次いで真空で濃縮した。得られた残留物をカラムクロマトグラフィー(SiO、シクロヘキサン中勾配0−15% 酢酸エチル)で精製し、(2,4,6−トリクロロ−ピリミジン−5−イルオキシ)−酢酸エチル エステルを白色の固体(2.67g、62%)として得た。1H NMR(400 MHz, CDCl3): δ 4.77(2 H, s), 4.28(2 H, q, J = 7.14 Hz), 1.32(3 H, t, J = 7.15 Hz).
【0199】
工程2: (2,4−ジクロロ−6−モルホリン−4−イル−ピリミジン−5−イルオキシ)−酢酸エチルエステル
IMS(50mL)に(2,4,6−トリクロロ−ピリミジン−5−イルオキシ)−酢酸 エチルエステル(2.67g、9.35mmol)、モルホリン(815μL、9.35mmol)及びトリエチルアミン(2.6mL、18.7mmol)が入った混合物を室温で2時間撹拌し、その後反応物を真空で濃縮した。得られた残留物を酢酸エチルと飽和重炭酸ナトリウム水溶液との間で分配した。水性相を追加の酢酸エチルで抽出し、混合有機抽出物を乾燥させ(NaSO)、真空で濃縮し、(2,4−ジクロロ−6−モルホリン−4−イル−ピリミジン−5−イルオキシ)−酢酸エチルエステル(2.97g、95%)を得た。LCMS: RT = 3.35 min, [M+H]+ = 336/338/340.
【0200】
工程3: 2−(2,4−ジクロロ−6−モルホリン−4−イル−ピリミジン−5−イルオキシ)−エタノール
(2,4−ジクロロ−6−モルホリン−4−イル−ピリミジン−5−イルオキシ)−酢酸エチルエステル(188mg、0.56mmol)が入ったTHF溶液(2.5mL)に、−78℃でDIBAL−H(2.0mL、2.0mmol、THF中1M 溶液)を添加し、得られた混合物を30分にわたって0℃に温めた。反応混合物をメタノール及びロッシェル塩(1M 水溶液)でクエンチし、水を酢酸エチルで抽出した。混合有機抽出物を乾燥させ(NaSO)、真空で濃縮し、2−(2,4−ジクロロ−6−モルホリン−4−イル−ピリミジン−5−イルオキシ)−エタノールを油(156mg、95%)として得た。LCMS: RT = 2.60min, [M+H]+ = 294/296/298.
【0201】
工程4: 2−クロロ−4−モルホリン−4−イル−6,7−ジヒドロ−[1,4]ジオキシノ[2,3−d]ピリミジン
2−(2,4−ジクロロ−6−モルホリン−4−イル−ピリミジン−5−イルオキシ)−エタノール(145mg、0.49mmol)が入ったTHF溶液(5mL)に、水素化ナトリウム(59mg、1.50mmol、鉱油中60%分散)を添加し、得られた混合物を室温で30分間撹拌した。反応混合物を塩化アンモニウム飽和水溶液でクエンチし、酢酸エチルで抽出した。混合有機抽出物を乾燥させ(NaSO)、真空で濃縮し、2−クロロ−4−モルホリン−4−イル−6,7−ジヒドロ−[1,4]ジオキシノ[2,3−d]ピリミジンを白色の固体(114mg、90%)として得た。LCMS: RT = 2.62min, [M+H]+ = 258/260.
【0202】
工程5: ジオキサン(5mL)及び水に2−クロロ−4−モルホリン−4−イル−6,7−ジヒドロ−[1,4]ジオキシノ[2,3−d]ピリミジン(114mg、0.44mmol)、5−(4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロラン−2−イル)−ピリミジン−2−イルアミン(196mg、0.88mmol)、PdCldppf.DCM(36mg、0.04mmol)及び炭酸セシウム(430mg、1.32mmol)が入った混合物を脱気し、次いで100℃で2時間加熱した。更に、5−(4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロラン−2−イル)−ピリミジン−2−イルアミン(100mg、0.44mmol)、PdCldppf.DCM(36mg、0.04mmol)を添加し、混合物を100℃で更に2時間加熱した。反応混合物を水で希釈し、酢酸エチルで抽出した。混合有機抽出物を乾燥させ(NaSO)、真空で濃縮した。得られた残留物をIsolute(登録商標)SCX−2カートリッジにロードし、これをメタノールで洗浄し、生成物をメタノール中の2M アンモニアで溶出させた。塩基性画分を混合し、真空で濃縮した。得られた残留物をカラムクロマトグラフィー(SiO、DCM中勾配0−10% メタノール)で精製し、次いでジエチルエーテルで粉砕し、101(37mg、27%)を得た。LCMS: RT = 2.75min, [M+H]+= 317.1H NMR(400 MHz, DMSO): δ 8.90(2 H, s), 7.01(2 H, s), 4.42-4.36(2 H, m), 4.25-4.18(2 H, m), 3.70(8 H, s).
【0203】
実施例102 5−[(6R)−6−メチル−4−モルホリノ−6,7−ジヒドロ−[1,4]ジオキシノ[2,3−d]ピリミジン−2−イル]ピリミジン−2−アミン 102
工程1: (R)−2−(2,4,6−トリクロロ−ピリミジン−5−イルオキシ)−プロピオン酸エチルエステル
ジオキサン(5mL)に2,4,6−トリクロロ−ピリミジン−5−オール(600mg、3.01mmol)、(R)−2−ヒドロキシ−プロピオン酸エチルエステル(411μL、3.60mmol)、トリフェニルホスフィン(906mg、3.45mmol)及びDIAD(678μL、3.45mmol)が入った混合物を室温で18時間撹拌し、その後真空で濃縮した。得られた残留物をカラムクロマトグラフィー(SiO、シクロヘキサン中勾配0−25% 酢酸エチル)で精製し、(R)−2−(2,4,6−トリクロロ−ピリミジン−5−イルオキシ)−プロピオン酸 エチル エステル(522mg、52%)を得た。1H NMR(400 MHz, CDCl3): δ 4.30-4.16(2 H, m), 4.12(1 H, q, J = 7.14 Hz), 1.70(3 H, d, J = 6.78 Hz), 1.29(3 H, t, J = 7.19 Hz).
【0204】
工程2: (R)−2−(2,4−ジクロロ−6−モルホリン−4−イル−ピリミジン−5−イルオキシ)−プロピオン酸 エチル エステル
エタノール(15mL)に(R)−2−(2,4,6−トリクロロ−ピリミジン−5−イルオキシ)−プロピオン酸 エチル エステル(522mg、1.74mmol)、モルホリン(152μL、1.74mmol)及びトリエチルアミン(484μL、3.48mmol)が入った混合物を室温で18時間撹拌し、次いで酢酸エチルと水との間で分配した。水性相を追加の酢酸エチルで抽出し、混合有機抽出物を乾燥させ(NaSO)、真空で濃縮し、(R)−2−(2,4−ジクロロ−6−モルホリン−4−イル−ピリミジン−5−イルオキシ)−プロピオン酸 エチル エステル(490mg、80%)を得た。LCMS: RT = 3.57 min, [M+H]+ = 350/352.
【0205】
工程3: (R)−2−クロロ−6−メチル−4−モルホリン−4−イル−6,7−ジヒドロ−[1,4]ジオキシノ[2,3−d]ピリミジン
(R)−2−(2,4−ジクロロ−6−モルホリン−4−イル−ピリミジン−5−イルオキシ)−プロピオン酸 エチル エステル(175mg、0.50mmol)が入ったTHF溶液(5mL)に、DIBAL−H(2.0mL、2.0mmol、THF中1M 溶液)を−78℃で添加し、得られた混合物を30分にわたって0℃に温めた。反応混合物をロッシェル塩(1M 水溶液)でクエンチし、水を酢酸エチルで抽出した。混合有機抽出物を乾燥させ(NaSO)、真空で濃縮した。得られた残留物をTHF(10mL)中に取り出し、得られた溶液に、水素化ナトリウム(60mg、1.50mmol、鉱油中60%分散)を添加し、得られた混合物を室温で18時間撹拌した。反応混合物を塩化アンモニウム飽和水溶液でクエンチし、酢酸エチルで抽出した。混合有機抽出物を乾燥させ(NaSO)、真空で濃縮し、(R)−2−クロロ−6−メチル−4−モルホリン−4−イル−6,7−ジヒドロ−[1,4]ジオキシノ[2,3−d]ピリミジンを白色の固体(157mg、定量)として得た。LCMS: RT = 2.89 min, [M+H]+ = 272/274.
【0206】
工程4: n−ブタノール(2.25mL)及び水(0.25mL)に(R)−2−クロロ−6−メチル−4−モルホリン−4−イル−6,7−ジヒドロ−[1,4]ジオキシノ[2,3−d]ピリミジン(65mg、0.24mmol)、5−(4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロラン−2−イル)−ピリミジン−2−イルアミン(80mg、0.36mmol)、Pd(OAc)(1mg、10mol%)、(S)−phos(4.1、20mol%)及び三塩基性リン酸カリウム(106mg、0.50mmol)が入った混合物を脱気し、ついで、100℃で18時間加熱した。反応混合物を水で希釈し、酢酸エチルで抽出した。混合有機抽出物を乾燥させ(NaSO)、真空で濃縮した。得られた残留物をカラムクロマトグラフィー(SiO、DCM中勾配0−5% メタノール)で精製し、102を得た。LCMS: RT = 3.09 min, [M+H]+ = 331.1H NMR(400 MHz, DMSO): δ 9.15(2 H, s), 5.73(2 H, s), 4.44(1 H, dd, J = 11.44, 2.17 Hz), 4.31-4.24(1 H, m), 4.08(1 H, dd, J = 11.45, 8.21 Hz), 3.89-3.73(8 H, m), 1.42(3 H, d, J = 6.38 Hz).
【0207】
実施例103 5−(7−メチル−4−モルホリノ−6,7−ジヒドロ−[1,4]ジオキシノ[2,3−d]ピリミジン−2−イル)ピリミジン−2−アミン 103
工程1: (2,4−ジクロロ−6−モルホリン−4−イル−ピリミジン−5−イルオキシ)−酢酸
THF(10mL)及び水(2.5mL)に(2,4−ジクロロ−6−モルホリン−4−イル−ピリミジン−5−イルオキシ)−酢酸エチルエステル(581mg、1.73mmol)が入った溶液に、LiOH(951μL、1.90mmol、2M 水溶液)を添加し、得られた混合物を室温で2.5時間撹拌した。反応混合物を1M HClでクエンチし、酢酸エチルで抽出した。混合有機抽出物を乾燥させ(NaSO)、真空で濃縮し、(2,4−ジクロロ−6−モルホリン−4−イル−ピリミジン−5−イルオキシ)−酢酸を白色の固体(515mg、97%)として得た。1H NMR(400 MHz, CDCl3): δ 4.59(2 H, s), 3.93-3.87(4 H, m), 3.81-3.75(4 H, m).
【0208】
工程2: 2−(2,4−ジクロロ−6−モルホリン−4−イル−ピリミジン−5−イルオキシ)−N−メトキシ−N−エチル−アセトアミド
DCM(5mL)に(2,4−ジクロロ−6−モルホリン−4−イル−ピリミジン−5−イルオキシ)−酢酸(722mg、2.34mmol)及びCDI(493mg、3.04mmol)が入った混合物を室温で1.5時間撹拌し、その後トリエチルアミン(457μL、3.28mmol)及びO,N−ジメチル−ヒドロキシルアミン 塩酸塩(320mg、3.28mmol)を添加した。得られた混合物を18時間撹拌し、次いで1M HClでクエンチした。水性層をDCMで抽出し、混合有機抽出物をブラインで洗浄し、次いで乾燥させ(NaSO)、真空で濃縮し、2−(2,4−ジクロロ−6−モルホリン−4−イル−ピリミジン−5−イルオキシ)−N−メトキシ−N−エチル−アセトアミドを黄色の油(830mg、定量)として得た。LCMS: RT = 2.83 min, [M+H]+ =351/353/355.
【0209】
工程3: 1−(2,4−ジクロロ−6−モルホリン−4−イル−ピリミジン−5−イルオキシ)−プロパン−2−オン
2−(2,4−ジクロロ−6−モルホリン−4−イル−ピリミジン−5−イルオキシ)−N−メトキシ−N−エチル−アセトアミド(200mg、0.60mmol)が入ったTHF溶液(4mL)に、メチルマグネシウム臭化物(1.28mL、1.79mmol、THF/トルエン中1.4M 溶液)を−78℃で添加し、得られた混合物を室温に温め、3時間撹拌した。得られた混合物を1M HClでクエンチし、酢酸エチルで抽出した。混合有機抽出物をブラインで洗浄し、次いで乾燥させ(NaSO)、真空で濃縮し、1−(2,4−ジクロロ−6−モルホリン−4−イル−ピリミジン−5−イルオキシ)−プロパン−2−オンを白色の固体(146mg、80%)として得た。LCMS: RT = 2.90 min, [M+H]+ = 306/308/310.
【0210】
工程4: 1−(2,4−ジクロロ−6−モルホリン−4−イル−ピリミジン−5−イルオキシ)−プロパン−2−オール
1−(2,4−ジクロロ−6−モルホリン−4−イル−ピリミジン−5−イルオキシ)−プロパン−2−オン(146mg、0.48mmol)が入ったTHF溶液(5mL)に、DIBAL−H(580μL、0.58mmol、トルエン中1M 溶液)を−78℃で添加し、得られた混合物を0℃に温め、1.5時間撹拌した。反応混合物を−78℃に冷却し、その後追加のDIBAL−H(480μL、0.48mmol)を添加し、混合物を0℃に温め、2時間撹拌した。反応混合物をロッシェル塩(1M 水溶液)でクエンチし、混合物を酢酸エチルで抽出した。混合有機抽出物をブラインで洗浄し、次いで乾燥させ(NaSO)、真空で濃縮し、1−(2,4−ジクロロ−6−モルホリン−4−イル−ピリミジン−5−イルオキシ)−プロパン−2−オール(148mg、定量)を得た。LCMS: RT = 2.84 min, [M+H]+ = 308/310/312.
【0211】
工程5: 2−クロロ−7−メチル−4−モルホリン−4−イル−6,7−ジヒドロ−[1,4]ジオキシノ[2,3−d]ピリミジン
1−(2,4−ジクロロ−6−モルホリン−4−イル−ピリミジン−5−イルオキシ)−プロパン−2−オール(148mg、0.48mmol)が入ったTHF溶液(8mL)に、水素化ナトリウム(58mg、1.44mmol、鉱油中60%分散)を添加し、得られた混合物を室温で4時間撹拌した。反応混合物を塩化アンモニウム飽和水溶液でクエンチし、酢酸エチルで抽出した。混合有機抽出物を乾燥させ(NaSO)、真空で濃縮し、2−クロロ−7−メチル−4−モルホリン−4−イル−6,7−ジヒドロ−[1,4]ジオキシノ[2,3−d]ピリミジンをオフホワイトの固体として得た(139mg、定量)。LCMS: RT = 2.94 min, [M+H]+ = 272/274.
【0212】
工程6: アセトニトリル(1.2mL)に2−クロロ−7−メチル−4−モルホリン−4−イル−6,7−ジヒドロ−[1,4]ジオキシノ[2,3−d]ピリミジン(99mg、0.36mmol)、5−(4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロラン−2−イル)−ピリミジン−2−イルアミン(97mg、0.44mmol)、Pd(PPhCl(28mg、0.04mmol)及び炭酸ナトリウム(1.2mL、1.20mmol、1M 水溶液)が入った混合物を脱気し、次いでマイクロ波照射を使用して140℃で25分間加熱した。反応混合物を濾過し、酢酸エチルでフラッシュした。濾液相を分離し、水性層を酢酸エチルで抽出した。混合有機抽出物を乾燥させ(NaSO)、真空で濃縮した。得られた残留物をカラムクロマトグラフィー(SiO、DCM中勾配0−4% メタノール)で精製し、次いでジエチル エーテルで粉砕し、103を白色の固体として得た(12mg、11%)。LCMS: RT = 3.06 min, [M+H]+ = 331.1H NMR(400 MHz, DMSO): δ 8.90(2 H, s), 7.01(2 H, s), 4.57-4.47(1 H, m), 4.36(1 H, dd, J = 11.41, 2.34 Hz), 3.82(1 H, dd, J = 11.43, 7.60 Hz), 3.77-3.61(8 H, m), 1.34(3 H, d, J = 6.44 Hz)
【0213】
実施例104 5−(7,7−ジメチル−4−モルホリノ−6H−[1,4]ジオキシノ[2,3−d]ピリミジン−2−イル)ピリミジン−2−アミン 104
工程1: 1−(2,4−ジクロロ−6−モルホリン−4−イル−ピリミジン−5−イルオキシ)−2−メチル−プロパン−2−オール
実施例101で得た(2,4−ジクロロ−6−モルホリン−4−イル−ピリミジン−5−イルオキシ)−酢酸エチルエステル(2.45g、7.29mmol)が入ったTHF溶液(100mL)に、メチルマグネシウム臭化物(14.58mL、43.74mmol、ジエチル エーテル中3.0M 溶液)を−78℃で添加し、得られた混合物を0℃で2時間撹拌した。反応混合物を飽和塩化アンモニウム溶液でクエンチし、酢酸エチルで抽出した。混合有機抽出物を乾燥させ(NaSO)、真空で濃縮し、1−(2,4−ジクロロ−6−モルホリン−4−イル−ピリミジン−5−イルオキシ)−2−メチル−プロパン−2−オールを琥珀色のゴムとして得た(2.18g、93%)。LCMS: RT = 3.00 min, [M+H]+ = 322/324/326.
【0214】
工程2: 2−クロロ−7,7−ジメチル−4−モルホリン−4−イル−6,7−ジヒドロ−[1,4]ジオキシノ[2,3−d]ピリミジン
1−(2,4−ジクロロ−6−モルホリン−4−イル−ピリミジン−5−イルオキシ)−2−メチル−プロパン−2−オール(2.18g、6.77mmol)が入ったTHF溶液(150mL)に、水素化ナトリウム(812mg、20.31mmol、鉱油中60%分散)を添加し、得られた混合物を室温で5時間撹拌した。反応混合物を飽和塩化アンモニウム水溶液でクエンチし、酢酸エチルで抽出した。混合有機抽出物を乾燥させ(NaSO)、真空で濃縮した。得られた残留物をシクロヘキサンで粉砕し、2−クロロ−7,7−ジメチル−4−モルホリン−4−イル−6,7−ジヒドロ−[1,4]ジオキシノ[2,3−d]ピリミジンを白色の固体として得た(1.35g、70%)。LCMS: RT = 3.03 min, [M+H]+ = 286/288.
【0215】
工程3: 5−(7,7−ジメチル−4−モルホリン−4−イル−6,7−ジヒドロ−[1,4]ジオキシノ[2,3−d]ピリミジン−2−イル)−ピリミジン−2−イルアミン
アセトニトリル(7mL)に2−クロロ−7,7−ジメチル−4−モルホリン−4−イル−6,7−ジヒドロ−[1,4]ジオキシノ[2,3−d]ピリミジン(285mg、1.00mmol)、5−(4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロラン−2−イル)−ピリミジン−2−イルアミン(440mg、1.99mmol)、Pd(PPhCl(70mg、0.10mmol)及び炭酸ナトリウム(3.3mL、3.3mmol、1M 水溶液)が入った混合物を脱気し、次いでマイクロ波照射を使用して120℃で30分間加熱した。反応混合物をメタノール及びDCMで希釈し、珪藻土に吸収させた。得られた残留物をカラムクロマトグラフィー(SiO、DCM中勾配0−4% メタノール、次いでSiO、シクロヘキサン中勾配0−100% 酢酸エチル)で精製し、104を白色の固体として得た(245mg、71%)。LCMS: RT = 3.28 min, [M+H]+= 345.1H NMR(400 MHz, DMSO): δ 8.90(2 H, s), 7.00(2 H, s), 3.97(2 H, s), 3.70(8 H, s), 1.35(6 H, s).
【0216】
実施例105 5−[4−モルホリノ−7−(トリフルオロメチル)−6,7−ジヒドロ−[1,4]ジオキシノ[2,3−d]ピリミジン−2−イル]ピリミジン−2−アミン 105
工程1: 2−クロロ−4−モルホリン−4−イル−7−トリフルオロメチル−6,7−ジヒドロ−[1,4]ジオキシノ[2,3−d]ピリミジン
マイクロ波バイアルを2,4,6−トリクロロ−ピリミジン−5−オール(200mg、1.00mmol)及び2−トリフルオロメチル−オキシラン(429μL、5.01mmol)で充填し、次いで密封した。反応混合物を95℃で48時間加熱し、その後冷却して真空で濃縮した。得られた残留物をIMS(5mL)に溶解させ、次いでトリエチルアミン(198μL、1.42mmol)及びモルホリン(83μL、0.95mmol)処理した。オレンジの混合物を室温で18時間撹拌し、その後真空で濃縮した。得られた残留物をカラムクロマトグラフィー(SiO、シクロヘキサン中勾配0−20% 酢酸エチル)で精製し、2−クロロ−4−モルホリン−4−イル−7−トリフルオロメチル−6,7−ジヒドロ−[1,4]ジオキシノ[2,3−d]ピリミジンを白色の固体として得た(105mg、32%)。LCMS: RT = 3.20 min, [M+H]+ = 326/328.
【0217】
工程2: マイクロ波バイアルを2−クロロ−4−モルホリン−4−イル−7−トリフルオロメチル−6,7−ジヒドロ−[1,4]ジオキシノ[2,3−d]ピリミジン(105mg、0.32mmol)、5−(4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロラン−2−イル)−ピリミジン−2−イルアミン(143mg、0.64mmol)、Pd(PPhCl(23mg、0.03mmol)及び炭酸ナトリウム(1.06mL、1.06mmol、1M 水溶液)が入ったアセトニトリル(1.6mL)で充填し、その後ベッセルを空にしてアルゴン(x3)で再び満たした。マイクロ波を使用して、混合物を120℃で30分間加熱した。反応混合物をHO/DCM/メタノールで希釈し、次いで珪藻土に吸収させ、その後カラムクロマトグラフィー(SiO、DCM中勾配0−4% メタノール、次いでSiO、次いでシクロヘキサン中勾配0−90% 酢酸エチル)で精製し、続いて、ジエチル エーテル中で粉砕し、105を白色の固体として得た(60mg、49%)。LCMS: RT = 3.52 min, [M+H]+= 385.1H NMR(400 MHz, DMSO): δ 8.92(2 H, s), 7.08(2 H, s), 5.51-5.41(1 H, m), 4.53-4.41(2 H, m), 3.78-3.65(8 H, m)
【0218】
実施例106 5−(4−モルホリノスピロ[6H−[1,4]ジオキシノ[2,3−d]ピリミジン−7,1’−シクロプロパン]−2−イル)ピリミジン−2−アミン 106
工程1: 1−(2,6−ジクロロ−5−メトキシ−ピリミジン−4−イルオキシ)−シクロプロパンカルボン酸メチルエステル
2,4,6−トリクロロ−5−メトキシ−ピリミジン(213mg、1.00mmol)及び1−ヒドロキシ−シクロプロパンカルボン酸メチルエステル(139mg、1.20mmol)が入ったTHF溶液(4mL)に、水素化ナトリウム(48mg、1.20mmol、鉱油中60%分散)を−78℃で添加した。得られた混合物を室温に温め、2時間撹拌した。反応混合物を飽和塩化アンモニウム水溶液でクエンチし、酢酸エチルで抽出した。混合有機抽出物を乾燥させ(NaSO)、真空で濃縮し、1−(2,6−ジクロロ−5−メトキシ−ピリミジン−4−イルオキシ)−シクロプロパンカルボン酸メチルエステルを白色の固体として得た(300mg、定量)。LCMS: RT = 3.49 min, [M+H]+ = 341/343/345.
【0219】
工程2: [1−(2,6−ジクロロ−5−メトキシ−ピリミジン−4−イルオキシ)−シクロプロピル]−メタノール
1−(2,6−ジクロロ−5−メトキシ−ピリミジン−4−イルオキシ)−シクロプロパン−カルボン酸メチルエステル(293mg、1.00mmol)が入ったDCM溶液(8mL)に、DIBAL−H(4.00mL、4.00mmol、THF中1M 溶液)を−78℃で添加し、得られた混合物を0℃に温め、90分間撹拌した。反応混合物をメタノール、続いてロッシェル塩(1M 水溶液)でクエンチし、混合物を酢酸エチルで抽出した。混合有機抽出物を乾燥させ(NaSO)、真空で濃縮し、[1−(2,6−ジクロロ−5−メトキシ−ピリミジン−4−イルオキシ)−シクロプロピル]−メタノールを油として得た(220mg、83%)。LCMS: RT = 2.86 min, [M+H]+ 195/197/199.
【0220】
工程3: 2,4−ジクロロ−6−(1−ヒドロキシメチル−シクロプロポキシ)−ピリミジン−5−オール
[1−(2,6−ジクロロ−5−メトキシ−ピリミジン−4−イルオキシ)−シクロプロピル]−メタノール(800mg、3.02mmol)及び塩化リチウム(600mg、14.15mmol)が入った無水DMF(3mL)を、マイクロ波照射を使用して140℃で10分間加熱し、次いで真空で濃縮した。得られた残留物をカラムクロマトグラフィー(SiO、DCM中勾配0−5% メタノール)で精製し、2,4−ジクロロ−6−(1−ヒドロキシメチル−シクロプロポキシ)−ピリミジン−5−オール(300mg、40%)を得た。LCMS: RT= 2.52 min, [M-H]- = 249/251/253.
【0221】
工程4: 7−シクロプロピル−2,4−ジクロロ−6,7−ジヒドロ−[1,4]ジオキシノ[2,3−d]ピリミジン
2,4−ジクロロ−6−(1−ヒドロキシメチル−シクロプロポキシ)−ピリミジン−5−オール(135mg、0.54mmol)及びトリフェニルホスフィン(180mg、0.65mmol)が入ったTHF溶液(8mL)に、DIAD(128μL、0.65mmol)を添加し、混合物を室温で30分間撹拌して、次いで真空で濃縮した。得られた残留物をカラムクロマトグラフィー(SiO、シクロヘキサン中勾配0−25% 酢酸エチル)で精製し、7−シクロプロピル−2,4−ジクロロ−6,7−ジヒドロ−[1,4]ジオキシノ[2,3−d]ピリミジンを白色の固体として得た(90mg、72%)。1H NMR(400 MHz, CDCl3): δ 4.30(2H, s), 1.36-1.29(2H, m), 1.01-0.95(2H, m).
【0222】
工程5: 2−クロロ−7−シクロプロピル−4−モルホリン−4−イル−6,7−ジヒドロ−[1,4]ジオキシノ[2,3−d]ピリミジン
IMS(3mL)に7−シクロプロピル−2,4−ジクロロ−6,7−ジヒドロ−[1,4]ジオキシノ[2,3−d]ピリミジン(93mg、0.40mmol)、モルホリン(150μL、1.71mmol)及びリエチルアミン(80μL、0.57mmol)が入った混合物を、マイクロ波照射を使用して140℃で35分間加熱し、その後真空で濃縮した。得られた残留物をカラムクロマトグラフィー(SiO、シクロヘキサン中0−20% 酢酸エチル)で精製し、2−クロロ−7−シクロプロピル−4−モルホリン−4−イル−6,7−ジヒドロ−[1,4]ジオキシノ[2,3−d]ピリミジンを白色の固体として得た(98mg、87%)。LCMS: RT = 3.02 min, [M+H]+ = 284/286.
【0223】
工程6: アセトニトリル(4mL)に2−クロロ−7−シクロプロピル−4−モルホリン−4−イル−6,7−ジヒドロ−[1,4]ジオキシノ[2,3−d]ピリミジン(98mg、0.34mmol)、5−(4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロラン−2−イル)−ピリミジン−2−イルアミン(144mg、0.65mmol)、Pd(PPhCl(25mg、0.035mmol)及び炭酸ナトリウム(1.0mL、1.0mmol、1M 水溶液)が入った混合物を脱気し、次いでマイクロ波照射を使用して120℃で30分間加熱した。反応混合物をIsolute(登録商標)SCX−2カートリッジにロードし、これをメタノールで洗浄し、生成物をメタノール中の2M アンモニアで溶出させた。塩基性画分を混合し、真空で濃縮した。得られた残留物を逆相HPLC(Phenomenex Gemini 5μm C18、水中0.1% HCOH、アセトニトリル 5−98%の勾配)で精製し、106を白色の固体として得た(41mg、35%)。LCMS: RT = 3.24 min, [M+H]+ = 343.1H NMR(400 MHz, CDCl3): δ 9.12(2H, s), 5.20(2H, broad s), 4.16(2H, s), 3.82(8H, s), 1.29(2H, t, J = 6.89 Hz), 0.88(2H, t, J = 6.88 Hz).
【0224】
実施例107 5−(6−シクロプロピル−4−モルホリノ−6,7−ジヒドロ−[1,4]ジオキシノ[2,3−d]ピリミジン−2−イル)ピリミジン−2−アミン 107
工程1: シクロプロピル−(2,4,6−トリクロロ−ピリミジン−5−イルオキシ)−酢酸メチルエステル
2,4,6−トリクロロ−ピリミジン−5−オール(250mg、1.25mmol)、シクロプロピル−ヒドロキシ−酢酸メチルエステル(245mg、1.88mmol)及びトリフェニルホスフィン(493mg、1.88mmol)が入ったTHF溶液(12mL)に、DIAD(370μL、1.88mmol)を滴下した。得られた懸濁液を18時間撹拌し、その後ジオキサン(10mL)を添加し、反応物を更に6時間撹拌した。不均一混合物を真空で濃縮し、得られた残留物をカラムクロマトグラフィー(SiO、シクロヘキサン中勾配0−30% 酢酸エチル)で精製し、シクロプロピル−(2,4,6−トリクロロ−ピリミジン−5−イルオキシ)−酢酸メチルエステルを白色の固体として得た(224mg、32%)。LCMS: RT = 3.66 min, [M+H]+ = 311/313/315.
【0225】
工程2: シクロプロピル−(2,4−ジクロロ−6−モルホリン−4−イル−ピリミジン−5−イルオキシ)−酢酸メチルエステル
シクロプロピル−(2,4,6−トリクロロ−ピリミジン−5−イルオキシ)−酢酸メチルエステル(224mg、0.72mmol)が入ったIMS懸濁液(4mL)に、トリエチルアミン(150μL、1.08mmol)、続いてモルホリン(63μL、0.72mmol)を添加した。黄色の溶液を室温で2.5時間撹拌し、その後真空で濃縮した。得られた残留物をカラムクロマトグラフィー(SiO、シクロヘキサン中勾配0−20% 酢酸エチル)で精製し、シクロプロピル−(2,4−ジクロロ−6−モルホリン−4−イル−ピリミジン−5−イルオキシ)−酢酸メチルエステルを無色のゴムとして得た(233mg、89%)。1H NMR(CDCl3): δ 3.99(1 H, d, J = 9.54 Hz), 4.03-3.83(4 H, m), 3.80-3.75(4H, m), 3.78(3 H, s), 1.32-1.21(1 H, m), 0.70-0.57(2 H, m), 0.52-0.45(1 H, m), 0.33-0.26(1 H, m).
【0226】
工程3: 2−シクロプロピル−2−(2,4−ジクロロ−6−モルホリン−4−イル−ピリミジン−5−イルオキシ)−エタノール
シクロプロピル−(2,4−ジクロロ−6−モルホリン−4−イル−ピリミジン−5−イルオキシ)−酢酸 メチル エステル(233mg、0.64mmol)が入ったTHF溶液(6.5mL)に、窒素雰囲気下でDIBAL−H(1.93mL、1.93mmol、トルエン中1.0M)を−78℃で滴下した。反応混合物を室温に温め、20分間撹拌し、その後ロッシェル塩(15mL、1M 水溶液)でクエンチした。混合物を酢酸エチル(3x30mL)で抽出し、混合有機相を乾燥させ(NaSO)、次いで真空で濃縮し、2−シクロプロピル−2−(2,4−ジクロロ−6−モルホリン−4−イル−ピリミジン−5−イルオキシ)−エタノールを無色のゴムとして得た(215mg、定量)。1H NMR(CDCl3): δ 3.94-3.88(2 H, m), 3.87-3.82(4 H, m), 3.79-3.73(4 H, m), 3.48-3.41(1 H, m), 1.11-0.99(1 H, m), 0.60-0.51(1 H, m), 0.51-0.42(1 H, m), 0.19-0.11(1 H, m), 0.03- -0.05(1 H, m).
【0227】
工程4: 2−クロロ−6−シクロプロピル−4−モルホリン−4−イル−6,7−ジヒドロ−[1,4]ジオキシノ[2,3−d]ピリミジン
2−シクロプロピル−2−(2,4−ジクロロ−6−モルホリン−4−イル−ピリミジン−5−イルオキシ)−エタノール(215mg、0.64mmol)が入ったTHF溶液(10mL)に、水素化ナトリウム(71mg、1.93mmol、鉱油中65%分散)を添加し、反応物を2時間撹拌した。反応物を飽和塩化アンモニウム水溶液(15mL)及び水(5mL)でクエンチし、次いで酢酸エチル(3x20mL)で抽出した。混合有機相をブライン(15mL)で洗浄し、乾燥させ(NaSO)、次いで真空で濃縮し、2−クロロ−6−シクロプロピル−4−モルホリン−4−イル−6,7−ジヒドロ−[1,4]ジオキシノ[2,3−d]ピリミジンを白色の固体として得た(191mg、定量)。LCMS: RT = 3.18 min, [M+H]+ = 298/300.
【0228】
工程5: マイクロ波バイアルを2−クロロ−6−シクロプロピル−4−モルホリン−4−イル−6,7−ジヒドロ−[1,4]ジオキシノ[2,3−d]ピリミジン(191mg、0.64mmol)、5−(4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロラン−2−イル)−ピリミジン−2−イルアミン(283mg、1.28mmol)、Pd(PPhCl(45mg、0.06mmol)、炭酸ナトリウム(2.11mL、2.11mmol、1M 水溶液)及びアセトニトリル(2.5mL)で充填した。ベッセルを密封し、次いで空にして、アルゴン(x3)で再び満たし、その後マイクロ波照射を使用して120℃で30分間加熱した。反応混合物を濾過し、その後カラムクロマトグラフィー(SiO、DCM中勾配0−4% メタノール)で精製した。得られた残留物をジエチル エーテルで粉砕し、107を白色の固体として得た(21mg、9%)。LCMS: RT = 3.54 min, [M+H]+ = 357.1H NMR(400 MHz, DMSO-d6): δ 8.89(2 H, s), 7.00(2 H, s), 4.53(1 H, dd, J = 11.48, 2.34 Hz), 4.22(1 H, dd, J = 11.50, 7.87 Hz), 3.75-3.67(8 H, m), 3.65-3.58(1 H, m), 1.01-0.99(1 H, m), 0.63-0.55(2 H, m), 0.51-0.42(2 H, m).
【0229】
実施例108 5−(7−tert−ブチル−4−モルホリノ−6,7−ジヒドロ−[1,4]ジオキシノ[2,3−d]ピリミジン−2−イル)ピリミジン−2−アミン 108
工程1: 3,3−ジメチル−1−(2,4,6−トリクロロ−ピリミジン−5−イルオキシ)−ブタン−2−オール
2,4,6−トリクロロ−ピリミジン−5−オール(400mg、2.01mmol)と2−tert−ブチル オキシラン(3mL)の混合物を100℃で3時間加熱し、その後冷却して真空で濃縮した。得られた残留物を熱メタノール中で粉砕し、不溶性物質を除去した。濾液を真空で濃縮し、得られた残留物をカラムクロマトグラフィー(SiO、シクロヘキサン中0−15% 酢酸エチル)で精製し、3,3−ジメチル−1−(2,4,6−トリクロロ−ピリミジン−5−イルオキシ)−ブタン−2−オールを白色の固体として得た(275mg、52%)。1H NMR(400 MHz, CDCl3): δ 4.28(1 H, dd, J = 9.38, 2.19 Hz), 4.00(1 H, t, J = 9.19 Hz), 3.76-3.69(1 H, m), 2.53(1 H, d, J = 3.48 Hz), 0.95(9 H, s).
【0230】
工程2: 1−(2,4−ジクロロ−6−モルホリン−4−イル−ピリミジン−5−イルオキシ)−3,3−ジメチル−ブタン−2−オール
3,3−ジメチル−1−(2,4,6−トリクロロ−ピリミジン−5−イルオキシ)−ブタン−2−オール(275mg、1.05mmol)が入ったIMS(3mL)溶液に、トリエチルアミン(291μL、2.09mmol)、続いてモルホリン(100μL、1.15mmol)を添加し、室温で2時間撹拌した。反応物を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液でクエンチし、次いで酢酸エチルで抽出した。混合有機抽出物を乾燥させ(NaSO)、次いで真空で濃縮し、1−(2,4−ジクロロ−6−モルホリン−4−イル−ピリミジン−5−イルオキシ)−3,3−ジメチル−ブタン−2−オール(255mg、77%)を得た。LCMS: RT = 3.57 min, [M+H]+ = 350/352/354.
【0231】
工程3: 7−tert−ブチル−2−クロロ−4−モルホリン−4−イル−6,7−ジヒドロ−[1,4]ジオキシノ[2,3−d]ピリミジン
1−(2,4−ジクロロ−6−モルホリン−4−イル−ピリミジン−5−イルオキシ)−3,3−ジメチル−ブタン−2−オール(255mg、0.73mmol)が入ったTHF溶液(10mL)に、水素化ナトリウム(87mg、2.18mmol、鉱油中60%分散)を添加し、混合物を室温で1.5時間撹拌した。反応物を飽和塩化アンモニウム水溶液でクエンチし、次いで酢酸エチル(x2)で抽出した。混合有機層を乾燥させ(NaSO)、次いでシリカパッドを通し、酢酸エチルで溶出させた。関連画分を真空で濃縮し、7−tert−ブチル−2−クロロ−4−モルホリン−4−イル−6,7−ジヒドロ−[1,4]ジオキシノ[2,3−d]ピリミジンを白色の固体として得た(250mg、100%)。LCMS: RT = 3.64 min, [M+H]+ = 314/316.
【0232】
工程4: マイクロ波バイアルを7−tert−ブチル−2−クロロ−4−モルホリン−4−イル−6,7−ジヒドロ−[1,4]ジオキシノ[2,3−d]ピリミジン(50mg、0.16mmol)、5−(4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロラン−2−イル)−ピリミジン−2−イルアミン(70mg、0.32mmol)及びビス(ジ−tert−ブチル(4−ジメチルアミノフェニル)ホスフィン)ジクロロパラジウム(II)(11mg、0.02mmol、10mol%)で充填し、次いで密封した。ベッセルを空にし、窒素で再び満たし、その後炭酸ナトリウム(0.25mL、0.25mmol、1M 水溶液)及びアセトニトリル(0.75mL)を添加した。マイクロ波照射を使用して混合物を150℃で30分間加熱し、その後混合物を濾過し、濾液を真空で濃縮した。得られた残留物をカラムクロマトグラフィー(SiO、DCM中0−5% メタノール)で精製し、次いでシクロヘキサン/ジエチルエーテルで粉砕し、108を白色の固体として得た(13mg、22%)。LCMS: RT = 4.04 min, [M+H]+= 373.1H NMR(400 MHz, CDCl3): δ 9.14(2 H, s), 5.25(2 H, s), 4.44(1 H, dd, J = 11.08, 1.92 Hz), 3.99(1 H, dd, J = 8.97, 1.89 Hz), 3.91-3.69(9 H, m), 1.12(9 H, s).
【0233】
実施例109 3−(7,7−ジメチル−4−モルホリノ−6H−[1,4]ジオキシノ[2,3−d]ピリミジン−2−イル)フェノール 109
マイクロ波バイアルを実施例104で得た2−クロロ−7,7−ジメチル−4−モルホリン−4−イル−6,7−ジヒドロ−[1,4]ジオキシノ[2,3−d]ピリミジン(50mg、0.18mmol)、3−(4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロラン−2−イル)−フェノール(58mg、0.26mmol)、Pd(PPhCl(12mg、0.02mmol)及び炭酸ナトリウム(0.5mL、0.5mmol、1M 水溶液)が入ったアセトニトリル(1.5mL)で充填し、次いで空にし、窒素で再び満たし、その後マイクロ波照射を使用して120℃で30分間加熱した。反応混合物をIsolute(登録商標)SCX−2カートリッジにロードし、これをメタノールで洗浄し、生成物をメタノール中の2M アンモニアで溶出させた。塩基性画分を混合し、真空で濃縮した。得られた残留物をジエチルエーテルで粉砕して精製し、109を白色の固体として得た(38mg、63%)。LCMS: RT = 4.13 min, [M+H]+ = 344.1H NMR(400 MHz, CDCl3): δ 7.87-7.82(2 H, m), 7.26(1 H, t, J = 7.6 Hz), 6.91(1 H, dd, J = 2.4, 7.6 Hz), 3.92(2 H, s), 3.90-3.80(8 H, m), 1.47(6 H, s).
【0234】
実施例110 2−(2−メトキシピリミジン−5−イル)−7,7−ジメチル−4−モルホリノ−6H−[1,4]ジオキシノ[2,3−d]ピリミジン 110
マイクロ波バイアルを実施例104で得た2−クロロ−7,7−ジメチル−4−モルホリン−4−イル−6,7−ジヒドロ−[1,4]ジオキシノ[2,3−d]ピリミジン(50mg、0.18mmol)、2−メトキシピリミジン−5−イルボロン酸(42mg、0.27mmol)、Pd(PPhCl(12mg、0.02mmol)及び炭酸ナトリウム(0.5mL、0.5mmol、1M 水溶液)が入ったアセトニトリル(1.5mL)で充填し、次いで空にし、窒素で再び満たし、その後マイクロ波照射を使用して120℃で加熱した。反応混合物をIsolute(登録商標)SCX−2カートリッジにロードし、これをメタノールで洗浄し、生成物をメタノール中の2M アンモニアで溶出させた。塩基性画分を混合し、真空で濃縮した。得られた残留物をジエチルエーテルで粉砕して精製し、110を白色の固体として得た(30mg、17%).LCMS: RT = 4.18 min, [M+H]+ = 360.1H NMR(400 MHz, CDCl3): δ 9.33(2 H, s), 4.07(3 H, s), 3.92(2 H, s), 3.83(8 H, s), 1.47(6 H, s)
【0235】
実施例111 5−(7,7−ジメチル−4−モルホリノ−6H−[1,4]ジオキシノ[2,3−d]ピリミジン−2−イル)ピリジン−2−アミン 111
マイクロ波バイアルを実施例104で得た2−クロロ−7,7−ジメチル−4−モルホリン−4−イル−6,7−ジヒドロ−[1,4]ジオキシノ[2,3−d]ピリミジン(50mg、0.18mmol)、5−(4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロラン−2−イル)−ピリジン−2−イルアミン(58mg、0.26mmol)、Pd(PPhCl(12mg、0.02mmol)及び炭酸ナトリウム(0.5mL、0.5mmol、1M 水溶液)が入ったアセトニトリル(1.5mL)で充填し、次いで空にし、窒素で再び満たし、その後マイクロ波照射を使用して120℃で30分間加熱した。反応混合物をIsolute(登録商標)SCX−2カートリッジにロードし、これをメタノールで洗浄し、生成物をメタノール中の2M アンモニアで溶出させた。塩基性画分を混合し、真空で濃縮した。得られた残留物を逆相HPLC(Phenomenex Gemini 5μm C18、水中0.1% HCOH、アセトニトリル5−98%の勾配)で精製し、111を白色の固体として得た(32mg、53%)。LCMS: RT = 2.73 min, [M+H]+= 344.1H NMR(400 MHz, CDCl3): δ 9.01(1 H, d, J = 2.1 Hz), 8.33(1 H, dd, J = 2.1, 8.5 Hz), 6.50(1 H, d, J = 8.5 Hz), 4.61(2 H, broad s), 3.89(2 H, s), 3.86-3.77(8 H, m), 1.43(6 H, s)
【0236】
実施例112 N−[4−(7,7−ジメチル−4−モルホリノ−6H−[1,4]ジオキシノ[2,3−d]ピリミジン−2−イル)フェニル]アセトアミド 112
マイクロ波バイアルを実施例104で得た2−クロロ−7,7−ジメチル−4−モルホリン−4−イル−6,7−ジヒドロ−[1,4]ジオキシノ[2,3−d]ピリミジン(50mg、0.18mmol)、N−[4−(4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロラン−2−イル)−フェニル]−アセトアミド(69mg、0.26mmol)、Pd(PPhCl(12mg、0.02mmol)及び炭酸ナトリウム(0.5mL、0.5mmol、1M 水溶液)が入ったアセトニトリル(1.5mL)で充填し、次いで空にし、窒素で再び満たし、その後マイクロ波照射を使用して120℃で30分間加熱した。反応混合物をIsolute(登録商標)SCX−2カートリッジにロードし、これをメタノールで洗浄し、生成物をメタノール中の2M アンモニアで溶出させた。塩基性画分を混合し、真空で濃縮した。得られた残留物を逆相HPLC(Phenomenex Gemini 5μm C18、水中0.1% HCOH、アセトニトリル 5−98%の勾配)で精製し、112を白色の固体として得た(40mg、59%)。LCMS: RT = 2.73 min, [M+H]+ = 344. 1H NMR(400 MHz, CDCl3): δ 8.28(2 H, d, J = 8.8 Hz), 7.54(2 H, d, J = 8.8 Hz), 7.22(1 H, broad s), 3.90(2 H, s), 3.87-3.78(8 H, m), 2.19(3H, s), 1.46(6 H, s)
【0237】
実施例113 5−(7,7−ジメチル−4−モルホリノ−6H−[1,4]ジオキシノ[2,3−d]ピリミジン−2−イル)−N−メチル−ピリジン−2−アミン 113
マイクロ波バイアルを実施例104で得た2−クロロ−7,7−ジメチル−4−モルホリン−4−イル−6,7−ジヒドロ−[1,4]ジオキシノ[2,3−d]ピリミジン(50mg、0.18mmol)、メチル−[5−(4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロラン−2−イル)−ピリジン−2−イル]−カルバミン酸 tert−ブチル エステル(88mg、0.26mmol)、Pd(PPhCl(12mg、0.02mmol)及び炭酸ナトリウム(0.5mL、0.5mmol、1M 水溶液)が入ったアセトニトリル(1.5mL)で充填し、次いで空にし、窒素で再び満たし、その後マイクロ波照射を使用して120℃で30分間加熱した。反応混合物をIsolute(登録商標)SCX−2カートリッジにロードし、これをメタノールで洗浄し、生成物をメタノール中の2M アンモニアで溶出させた。塩基性画分を混合し、真空で濃縮した。得られた残留物を逆相HPLC(Phenomenex Gemini 5μm C18、水中0.1% HCOH、アセトニトリル 5−98%の勾配)で精製し、113を白色の固体として得た(20mg、32%)。LCMS: RT = 2.79 min, [M+H]+= 358.1H NMR(400 MHz, CDCl3): δ 9.04(1 H, d, J = 2.4 Hz), 8.35(1 H, dd, J = 2.4, 8.6 Hz), 6.39(1H, d, J = 8.6 Hz), 4.84(1 H, broad s), 3.89(2 H, s), 3.85-3.76(8 H, m), 2.97(3 H, d, J = 5.2 Hz), 1.45(6 H, s)
【0238】
実施例114 N−[3−(7,7−ジメチル−4−モルホリノ−6H−[1,4]ジオキシノ[2,3−d]ピリミジン−2−イル)フェニル]メタンスルホンアミド 114
マイクロ波バイアルを実施例104で得た2−クロロ−7,7−ジメチル−4−モルホリン−4−イル−6,7−ジヒドロ−[1,4]ジオキシノ[2,3−d]ピリミジン(50mg、0.18mmol)、3−(メタンスルホニルアミノ)フェニルボロン酸(57mg、0.27mmol)、Pd(PPhCl(12mg、0.02mmol)及び炭酸ナトリウム(0.5mL、0.5mmol、1M 水溶液)が入ったアセトニトリル(1.5mL)で充填し、次いで空にし、窒素で再び満たし、その後マイクロ波照射を使用して120℃で30分間加熱した。反応混合物をIsolute(登録商標)SCX−2カートリッジにロードし、これをメタノールで洗浄し、生成物をメタノール中の2M アンモニアで溶出させた。塩基性画分を混合し、真空で濃縮した。得られた残留物を逆相HPLC(Phenomenex Gemini 5μm C18、水中0.1% HCOH、アセトニトリル 5−98%の勾配)で精製し、114を白色の固体として得た(11mg、15%)。LCMS: RT = 4.22 min, [M+H]+ = 421.1H NMR(400 MHz, CDCl3): δ 8.19-8.12(1 H, m), 8.05-8.02(1 H, m), 7.44-7.37(2 H, m), 6.34(1 H, broad s), 3.92(2 H, s), 3.88-3.79(8 H, m), 3.00(3 H, s), 1.47(6 H, s)
【0239】
実施例115 2−(1H−インドール−5−イル)−7,7−ジメチル−4−モルホリノ−6H−[1,4]ジオキシノ[2,3−d]ピリミジン 115
マイクロ波バイアルを実施例104で得た2−クロロ−7,7−ジメチル−4−モルホリン−4−イル−6,7−ジヒドロ−[1,4]ジオキシノ[2,3−d]ピリミジン(50mg、0.18mmol)、5−インドリルボロン酸(42mg、0.26mmol)、Pd(PPhCl(12mg、0.02mmol)及び炭酸ナトリウム(0.5mL、0.5mmol、1M 水溶液)が入ったアセトニトリル(1.5mL)で充填し、次いで空にし、窒素で再び満たし、その後マイクロ波照射を使用して120℃に30分間加熱した。反応混合物をIsolute(登録商標)SCX−2カートリッジにロードし、これをメタノールで洗浄し、生成物をメタノール中の2M アンモニアで溶出させた。塩基性画分を混合し、真空で濃縮した。得られた残留物を逆相HPLC(Phenomenex Gemini 5μm C18、水中0.1% HCOH、アセトニトリル 5−98%の勾配)で精製し、115を白色の固体として得た(11mg、17%)。LCMS: RT = 4.37 min, [M+H]+ = 367.1H NMR(400 MHz, CDCl3): δ 8.67(1 H, s), 8.28-8.20(2 H, m), 7.39(1 H, d, J = 8.6 Hz), 7.23-7.19(1 H, m), 6.61(1 H, broad s), 3.91(2 H, s), 3.90-3.82(8 H, m), 1.48(6 H, s)
【0240】
実施例118 5−(7−シクロプロピル−4−モルホリノ−6,7−ジヒドロ−[1,4]ジオキシノ[2,3−d]ピリミジン−2−イル)ピリミジン−2−アミン 118
工程1: (tert−ブチル−ジメチル−シラニルオキシ)−シクロプロピル−酢酸メチルエステル
シクロプロピル−ヒドロキシ−酢酸メチルエステル(1.00g、7.68mmol)が入ったDCM溶液(9mL)に、tert−ブチルジメチルシリル 塩化物(1.27g、8.45mmol)及びイミダゾール(628mg、9.22mmol)を添加した。反応混合物を室温で65時間撹拌し、その後水(10mL)及び1M HCl(5mL)でクエンチした。混合物を酢酸エチル(3x15mL)で抽出し、混合有機相を1M HCl(10mL)、ブライン(10mL)で洗浄し、乾燥させ(NaSO)、次いで真空で濃縮した。これにより(tert−ブチル−ジメチル−シラニルオキシ)−シクロプロピル−酢酸メチルエステルを琥珀色の油(1.66g、88%)として得た。1H NMR(400 MHz, CDCl3): δ 3.81(1 H, d, J = 6.33 Hz), 3.74(3 H, s), 1.23-1.13(1 H, m), 0.89(9 H, s), 0.52-0.0.38(4 H, m), 0.06(3 H, s), 0.04(3 H, s).
【0241】
工程2: 2−(tert−ブチル−ジメチル−シラニルオキシ)−2−シクロプロピル−エタノール
(tert−ブチル−ジメチル−シラニルオキシ)−シクロプロピル−酢酸メチルエステル(1.66g、6.79mmol)が入ったDCM溶液(27mL)に、窒素雰囲気下でDIBAL−H(20.37mL、20.37mmol、トルエン中1.0M)を−78℃で滴下した。反応混合物を−78℃で2.5時間撹拌し、次いで0℃で1時間撹拌し、その後ロッシェル塩(30mL、1M 水溶液)でクエンチした。混合物を酢酸エチル(3x30mL)で抽出し、混合有機相を乾燥させ(NaSO)、真空で濃縮し、2−(tert−ブチル−ジメチル−シラニルオキシ)−2−シクロプロピル−エタノールをペールオレンジの油として得た(764mg、52%)。1H NMR(400 MHz, CDCl3): δ 3.66-3.49(2 H, m), 3.09(1 H, ddd, J = 7.96, 6.40, 3.80 Hz), 1.96(1 H, dd, J = 7.43, 5.46 Hz), 0.91(9 H, s), 0.91-0.82(1 H, m), 0.57-0.43(2 H, m), 0.34-0.24(1 H, m), 0.23-0.14(1 H, m), 0.11(3 H, s), 0.07(3 H, s).
【0242】
工程3: 5−[2−(tert−ブチル−ジメチル−シラニルオキシ)−2−シクロプロピル−エトキシ]−2,4,6−トリクロロ−ピリミジン
2,4,6−トリクロロ−ピリミジン−5−オール(250mg、1.25mmol)、2−(tert−ブチル−ジメチル−シラニルオキシ)−2−シクロプロピル−エタノール(407mg、1.88mmol)及びトリフェニルホスフィン(493mg、1.88mmol)が入ったTHF溶液(12mL)に、DIAD(370μL、1.88mmol)を添加した。反応混合物を室温で18時間撹拌し、その後真空で濃縮した。得られた残留物をカラムクロマトグラフィー(SiO、シクロヘキサン中勾配0−30% 酢酸エチル)で精製し、5−[2−(tert−ブチル−ジメチル−シラニルオキシ)−2−シクロプロピル−エトキシ]−2,4,6−トリクロロ−ピリミジンを粘性の黄色の油として得た(411mg、83%)。1H NMR(400 MHz, CDCl3): δ 4.14(1 H, dd, J = 8.83, 6.02 Hz), 3.99(1 H, dd, J = 8.82, 4.21 Hz), 3.60-3.53(1 H, m), 1.13-1.03(1 H, m), 0.89(9 H, s), 0.56-0.50(2 H, m), 0.46-0.28(2 H, m), 0.10(3 H, s), 0.07(3 H, s).
【0243】
工程4: 4−{5−[2−(tert−ブチル−ジメチル−シラニルオキシ)−2−シクロプロピル−エトキシ]−2,6−ジクロロ−ピリミジン−4−イル}−モルホリン
5−[2−(tert−ブチル−ジメチル−シラニルオキシ)−2−シクロプロピル−エトキシ]−2,4,6−トリクロロ−ピリミジン(411mg、1.03mmol)が入ったIMS溶液(5mL)に、トリエチルアミン(215μL、1.55mmol)、続いてモルホリン(94μL、1.08mmol)を添加した。反応混合物を室温で4時間撹拌し、その後真空で濃縮した。得られた残留物をカラムクロマトグラフィー(SiO、シクロヘキサン中勾配0−20%酢酸エチル)で精製し、4−{5−[2−(tert−ブチル−ジメチル−シラニルオキシ)−2−シクロプロピル−エトキシ]−2,6−ジクロロ−ピリミジン−4−イル}−モルホリンを無色のゴムとして得た(387mg、84%)。LCMS: RT = 5.22 min, [M+H]+ = 448/450/452.
【0244】
工程5: 1−シクロプロピル−2−(2,4−ジクロロ−6−モルホリン−4−イル−ピリミジン−5−イルオキシ)−エタノール
4−{5−[2−(tert−ブチル−ジメチル−シラニルオキシ)−2−シクロプロピル−エトキシ]−2,6−ジクロロ−ピリミジン−4−イル}−モルホリン(386mg、0.86mmol)が入ったTHF溶液(10mL)に、TBAF(947μL、0.95mmol、THF中1.0M 溶液)を滴下した。反応混合物を室温で3時間撹拌し、その後反応物を飽和塩化アンモニウム水溶液(20mL)でクエンチした。混合物を酢酸エチル(3x20mL)で抽出し、次いで混合有機相をブライン(10mL)で洗浄し、乾燥させ(NaSO)、真空で濃縮した。得られた残留物をカラムクロマトグラフィー(SiO、勾配0−50% 酢酸エチル)で精製し、1−シクロプロピル−2−(2,4−ジクロロ−6−モルホリン−4−イル−ピリミジン−5−イルオキシ)−エタノールを無色のゴムとして得た(196mg、68%)。LCMS: RT = 3.04 min, [M+H]+ = 334/336.
【0245】
工程6: 2−クロロ−7−シクロプロピル−4−モルホリン−4−イル−6,7−ジヒドロ−[1,4]ジオキシノ[2,3−d]ピリミジン
1−シクロプロピル−2−(2,4−ジクロロ−6−モルホリン−4−イル−ピリミジン−5−イルオキシ)−エタノール(196mg、0.59mmol)が入ったTHF溶液(10mL)に、水素化ナトリウム(65mg、1.77mmol、鉱油中65%分散)を添加し、反応混合物を室温で4時間撹拌した。反応物を飽和塩化アンモニウム水溶液(15mL)でクエンチし、次いで酢酸エチル(3x20mL)で抽出した。混合有機相を乾燥させ(NaSO)、真空で濃縮し、2−クロロ−7−シクロプロピル−4−モルホリン−4−イル−6,7−ジヒドロ−[1,4]ジオキシノ[2,3−d]ピリミジンを白色の固体として得た(205mg、定量)。LCMS: RT = 3.19 min, [M+H]+ = 298/300.
【0246】
工程7: マイクロ波バイアルを2−クロロ−7−シクロプロピル−4−モルホリン−4−イル−6,7−ジヒドロ−[1,4]ジオキシノ[2,3−d]ピリミジン(205mg、0.49mmol)、5−(4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロラン−2−イル)−ピリミジン−2−イルアミン(324mg、1.47mmol)、Pd(PPhCl(51mg、0.07mmol)、炭酸ナトリウム(2.41mL、2.41mmol、1M 水溶液)及びアセトニトリル(2.5mL)で充填した。ベッセルを密封し、次いで空にして、アルゴン(x3)で再び満たし、その後マイクロ波照射を使用して120℃で30分間加熱した。反応混合物を濾過し、濾液を真空で濃縮した。得られた残留物をカラムクロマトグラフィー(SiO、DCM中勾配0−4% メタノール)、次いでジエチルエーテル/ペンタン中で粉砕した。得られた残留物を逆相HPLC(Phenomenex Gemini 5μm C18、水中0.1% HCOH、メタノール10−98%の勾配)で精製し、118をオフホワイトの固体として得た(4.5mg、3%)。LCMS: RT = 3.52 min, [M+H]+ = 357.1H NMR(400 MHz, DMSO-d6): δ 8.91(2 H, s), 7.01(2 H, s), 4.40(1 H, dd, J = 11.38, 2.41 Hz), 4.01(1 H, dd, J = 11.41, 7.52 Hz), 3.80-3.60(9 H, m), 1.11-0.98(1 H, m), 0.69-0.41(4 H, m).
【0247】
実施例119 5−(8−メチル−4−モルホリノ−7,8−ジヒドロ−6H−ピリミド[5,4−b][1,4]オキサジン−2−イル)ピリミジン−2−アミン 119
工程1: メチル−[2−(2,4,6−トリクロロ−ピリミジン−5−イルオキシ)−エチル]−カルバミン酸tert−ブチルエステル
ジオキサン(2.5mL)に2,4,6−トリクロロ−ピリミジン−5−オール(300mg、1.50mmol)、(2−ヒドロキシ−エチル)−メチル−カルバミン酸tert−ブチルエステル(300mg、1.71mmol)、トリフェニルホスフィン(455mg、1.73mmol)及びDIAD(339μL、1.73mmol)が入った混合物を室温で1.5時間撹拌し、次いで真空で濃縮した。得られた残留物をカラムクロマトグラフィー(SiO、シクロヘキサン中勾配0−50% 酢酸エチル)で精製し、メチル−[2−(2,4,6−トリクロロ−ピリミジン−5−イルオキシ)−エチル]−カルバミン酸tert−ブチルエステル(666mg、定量)を得た。LCMS: RT = 3.09 min, [M-Boc+Na]+ = 279.
【0248】
工程2: [2−(2,4−ジクロロ−6−モルホリン−4−イル−ピリミジン−5−イルオキシ)−エチル]−メチル−カルバミン酸tert−ブチルエステル
エタノール(5mL)にメチル−[2−(2,4,6−トリクロロ−ピリミジン−5−イルオキシ)−エチル]−カルバミン酸tert−ブチルエステル(1.50mmol)、モルホリン(130μL、1.50mmol)及びトリエチルアミン(417μL、3.00mmol)が入った混合物を室温で1時間撹拌し、次いで酢酸エチルと水との間で分配した。水性相を追加の酢酸エチルで抽出し、混合有機抽出物を乾燥させ(NaSO)、真空で濃縮し、[2−(2,4−ジクロロ−6−モルホリン−4−イル−ピリミジン−5−イルオキシ)−エチル]−メチル−カルバミン酸tert−ブチルエステル(定量)を得た。LCMS: RT = 3.89 min, [M-CH2CH2NMeBoc+H]+= 250/252/254.
【0249】
工程3: 2−クロロ−8−メチル−4−モルホリン−4−イル−7,8−ジヒドロ−6H−ピリミド[5,4−b][1,4]オキサジン
メタノール(10mL)に[2−(2,4−ジクロロ−6−モルホリン−4−イル−ピリミジン−5−イルオキシ)−エチル]−メチル−カルバミン酸tert−ブチルエステル(1.50mmol)及び4M HClが入った混合物を室温で1.5時間撹拌し、次いで真空で濃縮し、エタノールと共沸混合した。得られた残留物をメタノール(10mL)中で溶解させ、次いでトリエチルアミン(3.0mL)で処理し、混合物を室温で30分間撹拌し、その後真空で濃縮した。得られた残留物をカラムクロマトグラフィー(SiO、シクロヘキサン中勾配0−50% 酢酸エチル)で精製し、2−クロロ−8−メチル−4−モルホリン−4−イル−7,8−ジヒドロ−6H−ピリミド[5,4−b][1,4]オキサジン(368mg、3工程を通して91%)。LCMS: RT = 2.94 min, [M+H]+ = 271/273.
【0250】
工程4: ジオキサン(5mL)及び水(0.5mL)に2−クロロ−8−メチル−4−モルホリン−4−イル−7,8−ジヒドロ−6H−ピリミド[5,4−b][1,4]オキサジン(120mg、0.44mmol)、5−(4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロラン−2−イル)−ピリミジン−2−イルアミン(196mg、0.88mmol)、PdCldppf.DCM(36mg、0.04mmol)及び炭酸セシウム(573mg、1.76mmol)が入った混合物を脱気し、100℃で18時間加熱した。反応混合物を水で希釈し、酢酸エチルで抽出した。混合有機抽出物を乾燥させ(NaSO)、真空で濃縮した。得られた残留物をIsolute(登録商標)SCX−2カートリッジにロードし、これをメタノールで洗浄し、生成物をメタノール中の2M アンモニアで溶出させた。塩基性画分を混合し、真空で濃縮した。得られた残留物をカラムクロマトグラフィー(SiO、DCM中勾配0−5% メタノール)で精製し、次いでジエチルエーテルで粉砕し、119(357mg、24%)を得た。LCMS: RT = 3.04 min, [M+H]+ = 330.1H NMR(400 MHz, DMSO): δ 8.94(2 H, s), 6.92(2 H, s), 4.16(2 H, t, J = 4.37 Hz), 3.67(4 H, t, J = 4.57 Hz), 3.52(4 H, t, J = 4.56 Hz), 3.48(2 H, t, J = 4.36 Hz), 3.13(3 H, s).
【0251】
実施例120 2−(2−アミノピリミジン−5−イル)−8−メチル−4−モルホリノ−6H−ピリミド[5,4−b][1,4]オキサジン−7(8H)−オン 120
工程1: 2−クロロ−8−メチル−4−モルホリン−4−イル−8H−ピリミド[5,4−b][1,4]オキサジン−7−オン
IMS(10mL)に(2,4−ジクロロ−6−モルホリン−4−イル−ピリミジン−5−イルオキシ)−酢酸エチルエステル(501mg、1.49mmol)、メチルアミン(1.0mL、2.0mmol、THF中2M)及びトリエチルアミン(250μL、1.79mmol)が入った混合物を、マイクロ波照射を使用して140℃で35分間加熱した。反応混合物を真空で濃縮し、得られた残留物をカラムクロマトグラフィー(SiO、シクロヘキサン中0−20% 酢酸エチル)で精製し、2−クロロ−8−メチル−4−モルホリン−4−イル−8H−ピリミド[5,4−b][1,4]オキサジン−7−オン(159mg、38%)を得た。LCMS: RT = 2.93 min, [M+H]+ = 285/287.
【0252】
工程2: アセトニトリル(4mL)に2−クロロ−8−メチル−4−モルホリン−4−イル−8H−ピリミド[5,4−b][1,4]オキサジン−7−オン(100mg、0.35mmol)、5−(4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロラン−2−イル)−ピリミジン−2−イルアミン(116mg、0.53mmol)、Pd(PPhCl(25mg、0.035mmol)及び炭酸ナトリウム(1.0mL、1.0mmol、1M 水溶液)が入った混合物を脱気し、次いでマイクロ波照射を使用して120℃で30分間加熱した。反応混合物をIsolute(登録商標)SCX−2カートリッジにロードし、これをメタノールで洗浄し、生成物をメタノール中の2M アンモニアで溶出させた。塩基性画分を混合し、真空で濃縮した。得られた残留物を逆相HPLC(Phenomenex Gemini 5μm C18、水中0.1% HCOH、アセトニトリル 5−98%の勾配)で精製し、120を白色の固体として得た(86mg、71%)。LCMS: RT = 3.04 min, [M+H]+ = 344. 1H NMR(400 MHz, CDCl3): δ 9.14(2H, s), 5.25(2H, broad s), 4.62(2H, s), 3.81(8H, s), 3.49(3H, s).
【0253】
実施例901 p110α(アルファ)PI3K結合アッセイ
結合アッセイ:最初の偏極実験を、Analyst HT(登録商標)96−384(Molecular Devices Corp, Sunnyvale, CA.)上で実施した。偏光バッファー(10mM トリス pH7.5、50mM NaCl、4mM MgCl、0.05%Chaps、及び1mM DTT)中の20μg/mLの最終濃度で開始するp110アルファPI3Kの1:3段階希釈物(Upstate Cell Signaling Solutions, Charlottesville, VA)を10mM PIP(Echelon-Inc., Salt Lake City, UT.)の最終濃度に加えることにより、蛍光偏光親和性測定のための試料を調製した。室温での30分のインキュベーション時間後、それぞれ100nM及び5nMの最終濃度のGRP−1及びPIP3−TAMRAプローブ(Echelon-Inc., Salt Lake City, UT.)を加えることによって反応を止めた。384ウェルの黒の低容量Proxiplates(登録商標)(PerkinElmer, Wellesley, MA.)中のローダミンフルオロフォア(λex=530nm;λem=590nm)について標準的なカットオフフィルターで読み取る。蛍光偏光値をタンパク質濃度の関数としてプロットし、KaleidaGraph(登録商標)ソフトウェア(Synergy software, Reading, PA)を使用してデータを4パラメータ式にフィットさせることによってEC50値を得た。この実験はまた、阻害剤を用いた続く競合実験において使用する適切なタンパク質濃度を確立する。
【0254】
PIP(10mMの最終濃度)と混合した0.04mg/mLのp110アルファPI3K(最終濃度)を、偏光バッファー中の25mMの最終濃度のATP(Cell Signaling Technology, Inc., Danvers, MA)中のアンタゴニストの1:3段階希釈物を含むウェルに加えることにより、阻害剤のIC50値を決定した。室温での30分のインキュベーション時間後、それぞれ100nM及び5nMの最終濃度のGRP−1及びPIP3−TAMRAプローブ(Echelon-Inc., Salt Lake City, UT.)を加えることによって反応を止めた。384ウェルの黒の低容量PROXIPLATES(登録商標)(PerkinElmer, Wellesley, MA.)中のローダミンフルオロフォア(λex=530nm;λem=590nm)について標準的なカットオフフィルターで読み取る。蛍光偏光値をアンタゴニスト濃度の関数としてプロットし、Assay Explorer(登録商標)ソフトウェア(MDL, San Ramon, CA.)においてデータを4パラメータ式にフィットさせることによってIC50値を得た。
【0255】
あるいは、精製した組換え酵素及びATPを1μMの濃度で使用した放射測定アッセイにおいてPI3Kの阻害を決定した。式Iの化合物を100%のDMSOで段階希釈した。キナーゼ反応物を室温で1時間インキュベートし、PBSを添加することによって反応を終わらせた。続いて、シグモイド用量応答曲線の当てはめ(可変勾配)を使用して、IC50値を決定した。
【0256】
実施例902 インビトロ細胞増殖アッセイ
式Iの化合物の有効性を、次のプロトコル(Promega Corp. Technical Bulletin TB288; Mendoza et al (2002) Cancer Res. 62: 5485-5488)を用いた細胞増殖アッセイによって測定した:
1 培地中に約10の細胞を含む細胞培養物(PC3(前立腺がん)、Detroit562(咽頭癌)、又はMDAMB361.1(乳がん))の100μlのアリコートを、384ウェルの不透明な壁のプレートの各ウェルに沈着させた。
2 培地を含み細胞を伴わないコントロールウェルを調製した。
3 化合物を実験ウェルに添加し、3−5日間インキュベートした。
4 プレートを室温におよそ30分間平衡化した。
5 各ウェル中に存在する細胞培養培地の体積と等しい体積のCellTiter−Glo(登録商標)試薬を加えた。
6 内容物をオービタルシェーカーで2分間混合し、細胞溶解を誘発した。
7 プレートを室温で10分間インキュベートし、発光シグナルを安定化させた。
8 発光を記録し、RLU=相対発光単位としてグラフで報告した。
【0257】
あるいは、細胞を96ウェルプレートに最適密度で播種し、試験化合物の存在下で4日間インキュベートした。続いて、Alamar BlueTMをアッセイ培地に添加し、細胞を6時間インキュベートした後、544nmの励起、590nmの発光で読み取った。シグモイド用量反応曲線の当てはめを使用してEC50値を計算した。EC50なる用語は、最大半減有効濃度を示し、ある特定暴露時間後に薬剤が基準値と最大値との間の途中の反応を誘発する濃度のことである。この用語は、通常、薬効の測定値として使用される。
【0258】
式Iの例示的化合物の抗増殖効果を、次のものを含む様々な腫瘍細胞株に対するCellTiter−Glo(登録商標)アッセイによって測定した。
【0259】
実施例903 Caco−2透過率
Caco−2細胞を1x10細胞/cmでMillipore Multiscreen(登録商標)プレート上に播種し、20日間培養した。続いて、化合物透過率の評価を実施した。化合物を細胞単層の頂端表面(A)に塗布し、基底側(B)コンパートメントへの化合物透過を測定した。
これを逆方向(B−A)で行い、能動輸送を調べる。膜を通る化合物の透過速度の測定値である各化合物についての透過係数値Pappを計算する。化合物を、確立されたヒト吸収性を持つコントロール化合物との比較に基づき、低い(Papp</=1.0x10cm/s)又は高い(Papp>/=1.0x10cm/s)吸着電位に分類する。
【0260】
能動流出を被る化合物の能力の評価では、頂端側(A)に対する基底側(B)輸送の比を、Bに対するAと比較して決定した。B−A/A−B>/=1.0の値が能動細胞流出の発生を示す。
【0261】
実施例904 肝細胞クリアランス
凍結保存されたヒト肝細胞の懸濁液を使用する。0.5x10個の生存細胞/mLの細胞密度で1mM又は3μMの化合物濃度でインキュベーションを実施する。インキュベーション中の最終DMSO濃度は約0.25%である。コントロールインキュベーションもまた細胞の非存在下で行い、非酵素的分解を明らかにする。2組の試料(50μL)を、0、5、10、20、40及び60分(コントロール試料は60分のみ)でインキュベーション混合物から取り除き、内部標準を含むメタノール(100μL)に添加し、反応を終了させる。トルブタミド、7−ヒドロキシクマリン、及びテストステロンをコントロール化合物として使用してもよい。試料を遠心分離し、各時点での上清をLC−MSMSによる分析のためにプール化する。時間に対するlnピーク面積比(親化合物ピーク面積/内部標準ピーク面積)のプロットから、固有クリアランス(CLint)を次のように計算する:CLint(μl/分/100万個細胞)=V×k(ここで、kは、時間に対してプロットしたln濃度の勾配から得た排出速度定数であり;Vは、インキュベーション体積から算出される体積用語であり、10細胞−1として表される)。
【0262】
実施例905 シトクロムP450阻害
式Iの化合物を、約100μMの最高濃度での約10通りの濃度で、2組、CYP450ターゲット(1A2、2C9、2C19、2D6、3A4)に対してスクリーニングしてもよい。標準的阻害剤(フラフィリン、スルファフェナゾール、トラニルシプロミン、キニジン、ケトコナゾール)はコントロールとして使用してもよい。プレートは蛍光モードにおいてBMG LabTechnologies PolarStarTMを使用して読んでもよい。
【0263】
実施例906 シトクロムP450誘導
単一のドナーから新鮮に単離されたヒト肝細胞を、三通りの濃度の式Iの化合物の添加前に約48時間培養し、72時間インキュベートしてもよい。CYP3A4及びCYP1A2のためのプローブ基質を、インキュベーション終了前、30分間及び1時間添加する。72時間で、細胞及び培地を除去し、各プローブ基質の代謝の程度をLC−MS/MSによって定量化する。実験を、一つの濃度で3組でインキュベートした個々のP450の誘導物質を使用することによって制御する。
【0264】
実施例907 血漿タンパク質結合
式Iの化合物の溶液(5μm、0.5%の最終DMSO濃度)を、バッファー及び10%血漿(バッファー中v/v)中で調製する。96ウェルHT透析プレートを、各ウェルが半透性セルロース膜によって2つに分割されるように構成する。バッファー溶液を膜の一側に加え、血漿溶液を他側に加える。次いで、37℃で2時間にわたり3組、インキュベーションを行う。続いて、細胞を出し、化合物の各バッチの溶液を二群(血漿非含有及び血漿含有)に組み合わせ、次いで血漿非含有(6ポイント)及び血漿含有(7ポイント)溶液についての2セットの較正標準を使用してLC−MSMSによって分析する。化合物についての画分未結合値を計算する。
【0265】
実施例908 hERGチャネル遮断
確立された流束法を使用して、hERGカリウムチャネルを安定して発現しているHEK−294細胞からのルビジウム流出を調節する能力について、式Iの化合物を評価する。RbClを含む培地中で細胞を調製し、96ウェルプレートに播種し、一晩増殖させて単層を形成させる。培地を吸引し、各ウェルを3×100μLのプレインキュベーションバッファー(低[K]を含む)で室温で洗浄することによって流出実験を開始する。最後の吸引後、50μLの操作用ストック(2×)化合物を各ウェルに添加し、室温で10分間インキュベートする。次いで、50μLの刺激バッファー(高[K+]を含む)を各ウェルに加え、最終試験化合物濃度とする。次いで、細胞プレートを室温で更に10分間インキュベートする。次いで、各ウェルからの80μLの上清を96ウェルプレートの同等のウェルに移し、原子発光分光法を介して分析する。化合物を、100μMの最高濃度からの10ポイントの二組のIC50曲線(n=2)としてスクリーニングする。
【0266】
実施例909 インビボ腫瘍異種移植
NCRヌードマウス(Taconic Farms, IN)に対し、5百万個のU−87 MG Merchant(ATCC, Manassas, VAからのU−87 MG細胞由来の自社変異型)細胞をHBSS/Matrigel(1:1、v/v)で右胸部側面に皮下接種した。腫瘍異種移植を有するマウスに対し、類似する大きさの腫瘍を有する、異なる用量のグループに分けた後、強制飼養により、薬剤又はビヒクルを<28日間毎日経口投与した。研究中、腫瘍の大きさを少なくとも週に二回記録した。マウスの体重も少なくとも週に二回記録し、マウスを毎日観察した。腫瘍体積をUltra Cal−IVキャリパー(モデル54−10−111;Fred V. Fowler Co., Inc.; Newton, MA)を使用して、二つの垂直寸法(長さ及び幅)で測定し、Excel v.11.2(Microsoft Corporation; Redmond, WA)を使用して分析した。GraphPad PrismTM, Version 5.0c(GraphPad Software, Inc.; La Jolla, CA)を使用して、腫瘍阻害グラフをプロットした。腫瘍体積は以下の式で計算した:
腫瘍の大きさ(mm)=(長方向の長さx短方向の長さ)x0.5
【0267】
Adventurer ProTM AV812スケール(Ohaus Corporation;Pine Brook, NJ)を使用して、動物の体重を測定した。グラフは、GraphPad PrismTM, Version 5.0cを使用して生成した。体重変化パーセントは以下の式を使用して計算した:
個体のパーセント体重変化=((新体重/当初体重)−1)x100。
【0268】
腫瘍体積が2000mmを超えたか又は体重減少が開始時の体重の20%を超えたマウスは、規制ガイダンスによって安楽死させた。
【0269】
研究終了時(EOS)の腫瘍増殖(% TGI)は、以下の式を使用して計算した:
%TGI=(1−[(AUC/日)治療÷(AUC/日)コントロール])X100
(ここで、AUC/日は、自然縮尺上の当てはめ腫瘍増殖曲線下面積を研究日数で除したものである)。Log2(腫瘍体積)増殖痕は、各グループにおける固定時間及び用量効果に関して、制限三次スプラインで各用量グループに当てはめた。当てはめは、R version 2.12.0中のR package‘nlme’, version 3.1−97(11)(R Development Core Team 2008; R Foundation for Statistical Computing; Vienna, Austria)を使用して、直線混合効果モデルを介して行った。
【0270】
部分反応(PR)は、いかなる研究日においても完全寛解(CR)とならなかった開始時の腫瘍体積における>50%減少として定義された。CRは、任意の研究日での開始時の腫瘍体積における100%減少として定義された。研究腫瘍発生率(STI)は、最後の腫瘍体積測定に関して、測定可能な腫瘍があったグループにおける動物数を反映した。
【0271】
直線混合効果分析はまた、経時的及び用量に応じた体重のパーセント変化をモデル化するために用いた。
【0272】
実施例910 ホスホAKT誘導アッセイ
6−well組織培養プレートに、一晩1ウェル当たり5x10細胞で細胞を播種した。細胞をEC80の式Iの化合物で処理した。処理後、細胞を冷たいPBSで一度洗浄し、プロテアーゼ阻害剤(Roche, Mannheim, Germany)を補充した、Biosource(Carlsbad, CA)からの1X細胞抽出バッファー(Cell Extraction Buffer)、1mM PMSF、並びにSigma(St. Louis, MO)からのホスファターゼ阻害剤カクテル(Phosphatase Inhibitor Cocktails)1及び2に溶解させた。タンパク質濃度の決定は、Pierce BCA Protein Assay Kit(Rockford, IL)を使用して実施した。pAkt(Ser473)のレベル及び総Aktは、Biosource(Carlsbad, CA)からのビーズキット及びLuminexTM Bio−Plexシステム(Bio-Rad, Hercules, CA)を使用して評価した。
【0273】
実施例911 血液脳関門活性/透過アッセイ MDCKI−MDR1及びMDCKII−Bcrp1アッセイ
ヒトPgpか又はマウスBcrp1を異種発現させるメイディン・ダービー(Madin−Darby)イヌ腎臓(MDCK)細胞は、化合物がこれらの輸送体の基質であるかを決定するのに使用され、したがって血液脳関門透過の可能性を評価する。MDR1−MDCKI細胞は、NCI(National Cancer Institute, Bethesda, MD)から認可を受けており、Bcrp1−MDCKII細胞は、Netherlands Cancer Institutes(Amsterdam, The Netherlands)から入手した。細胞を、使用の4日前に(ポリエステル膜、1μM 細孔径; Millipore; Billerica, MA)1.3x10細胞/mLの播種密度で、24ウェルMilliporeフィルタープレート上に播種した。頂端側から基底側(A−B)及び基底側から頂端側(B−A)の方向において、化合物を5μMで試験した。10mM HEPES(Invitrogen Corporation, Grand Island, NY)を伴うハンクス平衡塩類溶液(HBSS)からなる輸送体バッファーに化合物を溶解させた。Lucifer Yellow(Sigma-Aldrich, St. Louis, MO)を傍細胞マーカーとして使用した。A−B及びB−A方向における見掛透磁率(Papp)は、以下の方程式を使用してインキュベーション2時間後に計算した:
app=(dQ/dt)x1/Cx1/A
(ここで、dQ/dtは、レシーバー区画における化合物出現の速度であり、Cはドナー区画における濃度であり、Aは挿入物の表面積である)。Papp(B−A)/Papp A−B)として定義されるEfflux Ratioは、試験される輸送体(P−糖タンパク又はbcrp1)を伴う化合物により被った活性流出の程度を評価するのに使用した。化合物は、LC−MS/MSにより分析した。
【0274】
以下を含む、式Iの典型的な化合物について、ラットにおける脳タンパク質結合を測定した。
【0275】
実施例912 脳内化合物濃度の決定
投薬後1及び6時間後に、各時点で異なる3動物から脳を収集し、非常に冷たい生理食塩水で洗い流し、計量し、分析するまで−80℃で保管した。化合物の定量化のため、マウスの脳を3水量で均質化した。ホモジネートを内部標準を含むアセトニトリルで、タンパク質沈殿により抽出した。LC−MS/MS分析を実施した。脳対血漿比の計算のため、脳ホモジネート濃度を、脳濃度に変換した。
【0276】
実施例913 脳内PI3K経路調節の測定
PI3K経路調節の分析のため、10mM トリス pH7.4、100mM NaCl、1mM EDTA、1mM EGTA、1mM NaF、20mM Na、2mM NaVO、1% トリトン X−100、10% グリセロール、0.1% SDS、及び0.5% デオキシコレートを含む細胞抽出バッファー(Invitrogen, Camarillo, CA)に、ホスファターゼ、プロテアーゼ阻害剤(Sigma, St. Louis, MO)及び1mM PMSFを補充し、凍った脳生検に添加した。投薬後1及び6時間後に収集した脳を小さな乳棒(Konte Glass Company, Vineland, NJ)で均質化し、氷上で簡単に超音波で分解し、20,000gで20分間、4℃で遠心分離器にかけた。タンパク質濃度をBCAタンパク質アッセイ(Pierce, Rockford, IL)を使用して決定した。タンパク質を電気泳動法で分離し、NuPageニトロセルロース膜(Invitrogen, Camarillo, CA)に変換した。Licor OdysseyTM赤外線探知システム(Licor, Lincoln, NE)を使用して、タンパク質発現を評価し、定量化した。PI3K経路マーカーをpAktser473及び総Akt(Invitrogen, Camarillo, CA及びCell Signaling, Danvers, MA)に対する抗体を使用した免疫ブロット法により評価した。
【0277】
実施例914 脳腫瘍インビボ有効性アッセイ
CD−1ヌードマウス(Charles River Laboratories, Hollister, CA)に対し、定位手術下で、自社設計のGS−2(ヒト多形性膠芽腫)細胞を頭蓋内に接種し、HBSSにルシフェラーゼを発現させた。細胞接種の四週間後に磁気共鳴映像法(MRI)により脳異種移植が確認されたマウスに対し、類似する大きさの腫瘍を有するグループに分けた後、強制飼養により、薬剤又はビヒクルを28日間一日一回経口投与した。28日投薬期間の最後にMRI(4.7T、Varian, Inc., Palo Alto, CA)を繰り返し、治療に対する反応を評価した。
【0278】
マウスの体重を少なくとも週に二回記録し、マウスを毎日観察した。Adventurer ProTMAV812スケール(Ohaus Corporation; Pine Brook, NJ)を使用して、動物の体重を測定した。グラフは、GraphPad Prism, Version 5.0cを使用して生成した。体重変化パーセントは以下の式を使用して計算した:
個体のパーセント体重変化=((新体重/当初体重)−1)x100。体重減少が開始時の体重の20%を超えたマウスは、規制ガイダンスによって安楽死させた。
【0279】
各動物を撮像した二回にわたる直線として、腫瘍体積変化をモデル化した。R version 2.12.0中のR package‘nlme’, version 3.1−97(11)(R Development Core Team 2008; R Foundation for Statistical Computing; Vienna, Austria)を使用して、これらのデータに直線混合効果モデルを当てはめた。混合効果モデルは、個々のマウスに対する経時的な反復測定を考慮し、マウス内の相関を適切に扱う。また、直線混合効果分析を用いて経時的な体重変化率をモデル化した。
【0280】
薬物動態学的(PK)、薬力学的(PD)、及び/又は免疫組織化学的(IHC)分析のための最終治療の投与後2及び8時間に血漿及び脳試料を収集した。
【0281】
実施例915 インビボ腫瘍異種移植PK/PD研究
NCRヌードマウス(Taconic Farms, IN)に対し、5百万個のU−87 MG Merchant(ATCC, Manassas, VAからのU−87 MG細胞由来の自社変異型)細胞をHBSS/MatrigelTM, BD Biosciences(1:1、v/v)で右胸部側面に皮下接種した。>600mmの腫瘍異種移植を有するマウスに対し、類似する大きさの腫瘍を有するグループに分けた後、薬剤又はビヒクルを一度投与した。PK、PD、及び/又はIHC分析のための治療投与後1、4、12、及び24時間に、血漿、皮下腫瘍異種移植、骨格筋、及び脳試料を収集した。
【0282】
「含む(comprise)」、「含んでいる(comprising)」、「含む(include)」、「含んでいる(including)」及び「含む(includes)」なる用語は、本明細書及び特許請求の範囲において使用される場合、定められた特徴、整数、成分、又は工程の存在を特定することを意図するが、一つ又は複数の他の特徴、整数、成分、工程、又はその群の存在又は追加を除外しない。
【0283】
前述の発明は、明瞭さと理解を目的として、例示及び実施例によっていくらか詳細に記載したが、かかる例示及び実施例は、本発明の範囲を限定するものと見なされるべきではない。本明細書で引用される全ての特許及び科学文献の開示は、参照によりその全文が明示的に援用される。