(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6022729
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月9日
(54)【発明の名称】切梁受け具及びそれを用いた橋脚補強工法
(51)【国際特許分類】
E02D 17/04 20060101AFI20161027BHJP
E01D 22/00 20060101ALI20161027BHJP
【FI】
E02D17/04 A
E01D22/00 B
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-155331(P2016-155331)
(22)【出願日】2016年8月8日
【審査請求日】2016年8月8日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000103769
【氏名又は名称】オリエンタル白石株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120868
【弁理士】
【氏名又は名称】安彦 元
(74)【代理人】
【識別番号】100198214
【弁理士】
【氏名又は名称】眞榮城 繁樹
(72)【発明者】
【氏名】堀越 直樹
(72)【発明者】
【氏名】岩本 ▲靖▼
【審査官】
苗村 康造
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−206238(JP,A)
【文献】
特開2003−232044(JP,A)
【文献】
特公昭47−27972(JP,B1)
【文献】
実開昭61−71632(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 17/00〜 17/20
E01D 1/00〜 24/00
E02D 19/02〜 19/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
山留工法や仮締切工法に用いられる切梁の端部又は中間部に取り付けられ、前記切梁の軸力を支持構造体に伝達する切梁受け具であって、
プレキャストモルタル製又はプレキャストコンクリート製の受け具本体を有し、この受け具本体には、一方向に沿って鉄筋が埋設されているとともに、両端が所定距離突出し、機械式継手などで継ぎ足して新設のコンクリート構造物と一体化可能となっており、且つ、この埋設された鉄筋と直交する方向に沿って端部が開放された溝が形成されていること
を特徴とする切梁受け具。
【請求項2】
前記受け具本体は、高強度モルタル又は高強度コンクリートからなること
を特徴とする請求項1に記載の切梁受け具。
【請求項3】
前記受け具本体は、繊維材が混練されたモルタル又はコンクリートから成形されていること
を特徴とする請求項1又は2に記載の切梁受け具。
【請求項4】
既設橋脚の補強のために既設橋脚の周りに鉄筋コンクリート構造物を新設する橋脚補強工法であって、
前記鉄筋コンクリート構造物の新設するための山留や仮締切の支保工として設ける切梁の端部又は中間部の前記鉄筋コンクリート構造物と干渉する位置に、請求項1ないし3のいずれかに記載の切梁受け具を設置すること
を特徴とする橋脚補強工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、山留工法や仮締切工法に用いられる切梁の端部又は中間部に取り付けられ、切梁の軸力を橋脚などの支持構造体に伝達する切梁受け具に関し、詳しくは、既設橋脚等の補強工事におけるRC巻立工事等の新設コンクリート構造物と切梁が干渉する場合において切梁の盛替の必要がない切梁受け具及びそれを用いた橋脚補強工法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、このような既設橋脚の耐震補強工事等においては、既設橋脚の周りを鉄筋コンクリート(RC)を巻き立てること等が行われている。このような工事では、既設橋脚のフーチングが露出するまで掘り下げる必要があった。このとき、掘り残す橋脚周りの土砂が崩れないように鋼矢板(シートパイル)を設置する山留工事や、橋脚のフーチングが水中にある場合は、仮設の締切鋼板等で橋脚周りを締め切ってドライエリアを構築する仮締切工事が行われる。
【0003】
このような既設橋脚の耐震補強工事等では、土圧や水圧で鋼矢板や締切鋼板等が倒壊しないように、腹起し等で鋼矢板や締切鋼板等を連結するとともに、土圧や水圧に対抗するため切梁を支保工として設置して既設橋脚から反力を得る必要があった。このため、既設橋脚を巻きたてる鉄筋コンクリートの打設の進捗に伴って、切梁を盛り替えなければならず、手間が掛かるという問題があった。
【0004】
また、既設橋脚の周りに新設する鉄筋コンクリートの一度に打設する範囲を決める打設ロットの割付は、設置している切梁の位置に左右され、切梁の位置によっては打設回数が増えてしまうという問題もあった。さらに、切梁を設置している位置には、既設橋脚を巻きたてる鉄筋コンクリートの配筋を行うことができず、構造設計通りの鉄筋コンクリート構造物にすることができないという問題もあった。
【0005】
これらの問題を解決するべく、特許文献1には、切梁山留工法における切梁の架設に当たり、該切梁と構築する鉄筋コンクリート構築物に配置される縦横の鉄筋との交差する位置に、前記切梁を連結・軸支し、且つ前記鉄筋の挿設が可能な空洞を形成した、剛体からなる連結具を、前記切梁の中間部又は端部に介設した切梁山留工法における切梁の連結具が開示されている(特許文献1の請求項1、明細書の段落[0011]〜[0017]、図面の
図3、
図6等参照)。
【0006】
特許文献1に記載された切梁の連結具のような従来の切梁受け金具は、切梁の盛り替えを行わなくて済むように、既設橋脚の周りに巻き立てる鉄筋コンクリート構造物にそのまま存置されていた。
【0007】
しかし、従来の切梁受け金具は、現状金属製であり、切梁受け金具を鉄筋コンクリート構造物に存置した場合は、切梁受け金具を被覆するコンクリートにおいて所定のかぶり厚さが取れないという問題があった。このため、塩害地域などでは、巻き立てた新設のコンクリート構造物の硬化後に切梁受け金具を斫り取ったうえ、断面修復したり、防錆処理を施したりする必要があった。このため、手間と工期が掛かかってしまうという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−206238号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明は、前述した問題に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、塩害地域であっても撤去したり防錆処理を施したりする必要がなく、且つ、耐久性の高い切梁受け具及びそれを用いた橋脚補強工法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1発明に係る切梁受け具は、山留工法や仮締切工法に用いられる切梁の端部又は中間部に取り付けられ、前記切梁の軸力を支持構造体に伝達する切梁受け具であって、プレキャストモルタル製又はプレキャストコンクリート製の受け具本体を有し、この受け具本体には、一方向に沿って鉄筋が埋設されているとともに、両端が所定距離突出し、機械式継手などで継ぎ足して新設のコンクリート構造物と一体化可能となっており、且つ、この埋設された鉄筋と直交する方向に沿って端部が開放された溝が形成されていることを特徴とする。
【0011】
第2発明に係る切梁受け具は、第1発明において、前記受け具本体は、高強度モルタル又は高強度コンクリートからなることを特徴とする。
【0012】
第3発明に係る切梁受け具は、第1発明又は第2発明において、前記受け具本体は、繊維材が混練されたモルタル又はコンクリートから成形されていることを特徴とする。
【0013】
第4発明に係る橋脚補強工法は、既設橋脚の補強のために既設橋脚の周りに鉄筋コンクリート構造物を新設する橋脚補強工法であって、前記鉄筋コンクリート構造物の新設するための山留や仮締切の支保工として設ける切梁の端部又は中間部の前記鉄筋コンクリート構造物と干渉する位置に、請求項1ないし3のいずれかに記載の切梁受け具を設置することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
第1発明〜第4発明によれば、塩害地域であっても切梁受け具を撤去したり防錆処理を施したりする必要がない。また、第1発明〜第5発明によれば、設置している切梁の位置に左右されず、一度に打設するコンクリートの範囲及び分量を決めることができ、コンクリートの打設回数を抑えることができる。さらに、第1発明〜第5発明によれば、構造設計通りの鉄筋コンクリート構造物を構築することができ、耐久性の高い補強を行うことができる。
【0015】
特に、第2発明によれば、受け具本体は、高強度モルタル又は高強度コンクリートからなるので、切梁に高い土圧や水圧が掛かった場合であっても切梁受け具が圧壊するおそれが少なくなる。
【0016】
特に、第3発明によれば、受け具本体は、繊維材が混練されたモルタル又はコンクリートから成形されているので、切梁に高い土圧や水圧が掛かって圧壊する場合にも繊維材で脆性的な破壊を防ぐことができる。
【0017】
特に、第4発明によれば、橋脚補強工法において切梁を盛り替える必要がなくなるだけでなく、塩害地域であっても切梁受け具を撤去したり防錆処理を施したりする必要がなくなり、橋脚補強工事のコストダウンを図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施形態に係る切梁受け具を示す斜視図である。
【
図2】同上の切梁受け具の使用状態を示す側面図である。
【
図3】同上の切梁受け具の別の使用状態を示す斜視図である。
【
図7】同上の切梁受け具の切梁側を示す正面図である。
【
図8】同上の切梁受け具の橋脚側を示す背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る切梁受け具を実施するための一実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0020】
[切梁受け具]
先ず、
図1〜
図8を用いて、本発明の実施形態に係る切梁受け具について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る切梁受け具1を示す斜視図である。
図1に示すように、本実施形態に係る切梁受け具1は、水平断面がH字状となった受け具本体2と、この受け具本体2に埋設されている3本の鉄筋3,3,3などから構成されている。なお、一点鎖線で示す符号S1は、後述の新設のコンクリート構造物P2の主筋を配筋する位置を示している。
【0021】
図2は、切梁受け具1の使用状態を示す側面図であり、
図3は、切梁受け具1の別の使用状態を示す斜視図、
図4は、
図2の部分拡大図である。
図2〜
図4に示すように、図示形態では、橋脚P1の周りに耐震補強のため新設のコンクリート構造物P2を打ち増して巻き立てる場合を例示して説明する。
【0022】
図2に示す符号SPが、鋼矢板であるシートパイル、符号H1が、シートパイルSPを水平方向に連結する腹起し、K1が、その腹起しH1を支持する支保工としての切梁である。本実施形態に係る切梁受け具1は、
図2〜
図4に示すように、切梁K1の橋脚P1側の端部に取り付けられ、山留工法や仮締切工法に用いられる切梁K1の端部に取り付けられ、切梁K1の軸力を橋脚P1などの支持構造体に伝達する機能を有している。なお、矢印で示す符号Aは、切梁K1の軸方向を示している。
【0023】
(受け具本体)
図5は、本発明の実施形態に係る切梁受け具1を示す平面図であり、
図6は、その左側面図である。
図1、
図5、
図6に示すように、切梁受け具1の受け具本体2は、正方形状の板からなる切梁側フランジ部21と、この切梁側フランジ部21と略同形の橋脚側フランジ部22と、これらの切梁側フランジ部21と橋脚側フランジ部22とを繋ぐウェブ部23など、から構成されたプレキャストモルタル製の部材である。
【0024】
受け具本体2は、工場等で予め鉄筋が配筋された鋼製型枠等の型枠内に高強度モルタルが打設されて一体成形されるプレキャストモルタル構造体である。ここで、高強度モルタル(高強度コンクリート)とは、一般的には、設計基準強度が50N/mm
2以上のモルタル(
コンクリート)を指している。このように、受け具本体2を高強度モルタル製(高強度コンクリート)とすることにより、高い土圧や水圧が掛かり、切梁K1から高い軸力が作用する場合であっても切梁受け具1が圧壊するおそれが少なくなる。
【0025】
また、前述の高強度モルタル(高強度コンクリート)には、繊維材が混練されている。このため、ひび割れや脆性的な破壊を抑える効果があり、土圧や水圧の急変に対する耐久性、安全性が向上するとともに、新設するコンクリート構造物P2の耐久性も向上する。
【0026】
なお、モルタル又はコンクリートに混合する繊維材としては、鋼繊維や、炭素繊維、アラミド繊維などが一般的であり、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン繊維、ビニロン繊維などの合成繊維も用いることができる。要するに、繊維材は、モルタル又はコンクリートとの付着の相性が良く、比較的強度、弾性率が高い繊維であればよい。
【0027】
<切梁側フランジ部>
図7は、切梁受け具1の切梁側の端面である切梁側フランジ部21を示す切梁受け具1の正面図である。
図7、
図5に示すように、切梁側フランジ部21は、内側の縦方向の角部が面取り(ひら面)成形された310mm角×60mm厚のプレキャストモルタル製の部材であり、切梁K1の端部とボルト接合できるように4つのボルト孔21aが穿設されている。
【0028】
<橋脚側フランジ部>
図8は、切梁受け具1の橋脚側の端面である橋脚側フランジ部22を示す切梁受け具1の背面図である。
図8、
図5に示すように、橋脚側フランジ部22は、切梁側フランジ部21と線対称の略同形である、内側の縦方向の角部が面取り(ひら面)成形された310mm角×60mm厚の部材であり、橋脚P1に設置された後施工アンカーとボルト接合できるように4つのボルト孔22aが穿設されている。この後施工アンカーとしては、一般的には、ケミカルアンカーやホールインアンカーなどが用いられる。
【0029】
なお、このボルト孔22aは、既存の橋脚P1の鉄筋に邪魔されて後施工アンカーが正確な位置に設置できない場合を考慮し、横方向に長い長孔となっている。
【0030】
<ウェブ部>
図1、
図5に示すように、ウェブ部23は、切梁側フランジ部21と橋脚側フランジ部22とを繋ぐ奥行100mm×高さ310mm×幅90mmの部材であり、橋脚側フランジ部22側に応力集中を防ぐハンチが形成されている。このため、橋脚P1が曲面であった場合でも橋脚側フランジ部22とウェブ部23との入り隅に応力が集中して破壊されるおそれが少なくなる。
【0031】
(鉄筋)
また、このウェブ部23には、異形鋼棒からなる3本の鉄筋3が埋設されている。この鉄筋3の呼び径や本数等は、補強部分である新設のコンクリート構造物P2の横筋に応じて適宜定められるものである。しかし、この鉄筋3のウェブ部23からの突出長さは、機械式継手等の継手に必要な長さだけ、左右両端がウェブ部23から突出している必要がある。なお、継手は、機械式継手に限られず、重ね継手やその他の継手であってもよいことは云うまでもない。
【0032】
このように、本実施形態に係る切梁受け具1は、切梁側フランジ部21と橋脚側フランジ部22との間に、ウェブ部23が形成された水平断面がH字状となっている。言い換えると、切梁受け具1の受け具本体2には、上下の端部が開放された溝が形成されている。このため、新設するコンクリート構造物P2を構成する鉄筋S1を配筋する際に、切梁受け具1への横方向からの入れ込みが容易となっている。
【0033】
[橋脚補強工法]
次に、
図2〜
図4を用いて、本発明の実施形態に係る切梁受け具1の使用方法の一例である本発明の実施形態に係る橋脚補強工法について説明する。本実施形態に係る橋脚補強工法は、既設の橋脚P1の補強のために橋脚P1の周りに鉄筋コンクリート構造物P2を新設する橋脚補強工法であり、山留の支保工として設ける切梁K1の端部と新設する鉄筋コンクリート構造物P2と干渉する位置に、前述の切梁受け具1を設けることを特徴としている。
【0034】
本実施形態に係る橋脚補強工法では、先ず、
図2、
図3に示すように、土留めとしてシートパイルSPや鋼製ケーシングCなどを連結支持する腹起しH1等が取り付けられる。そして、この腹起しH1等と直交する方向に支保工として切梁K1が設置され、その切梁K1の橋脚P1側の端部に本発明の実施形態に係る切梁受け具1が設置される。
【0035】
勿論、切梁受け具1が設置される位置は、補強する場所によっては、切梁K1の中間部に設けてもよい。なお、通常、切梁K1は、シートパイルSPに掛かる土圧の変動に対応できるように、
図3に示すように、切梁K1の端部又は中間部にキリンジャッキGを介在させて長さ調整可能とされている。
図2は、切梁K1の途中を省略している。
【0036】
切梁受け具1の設置は、切梁K1の端部と切梁受け具1の切梁側フランジ部21とがボルト接合されるとともに、切梁受け具1の橋脚側フランジ部22が、既存の橋脚P1に穿孔して取り付けた後施工アンカー等にボルト止めされることで固定されて設置される。
【0037】
次に、シートパイルSPや鋼製ケーシングCの橋脚P1側を掘削して所定の深さまで床堀を行う。掘削の進行に伴って、掘り残すシートパイルSPや鋼製ケーシングCの外側の土砂が崩壊しないように、腹起しH1、切梁K1、及び切梁受け具1を前述の要領で追加して行き、橋脚P1の補強工事が可能な所定の深さまで掘削して行き、床堀が完了する。
【0038】
そして、
図4に示すように、橋脚P1の耐震補強として打ち増しする新設のコンクリート構造物P2の鉄筋S1等の配筋を行う。このとき、コンクリート構造物P2の配筋作業と並行して切梁受け具1の鉄筋3とコンクリート構造物P2の横筋(図示せず)とを機械式継手等で接続する。このため、切梁受け具1と新設のコンクリート構造物P2を強固に一体化することができる。
【0039】
また、このとき、特許文献1に記載された従来の切梁の連結具のように、鉄筋を縦方向に差し込むだけしか配筋できないのと相違して、受け具本体2のH字状の形状のため、受け具本体2への横方からの鉄筋の入れ込みが可能である。このため、切梁受け具1の位置に拘わらず、コンクリート構造物P2の配筋の際の鉄筋の間隔調整等が極めて容易となっており、配筋の作業時間を短縮してコスト削減を図ることができる。
【0040】
その後、木枠、型枠を設置し、コンクリートを打設して養生期間経過後、型枠を撤去する。この間、切梁受け具1及び切梁K1の位置を盛り替えたりする必要がない。
【0041】
最後に、新設したコンクリート構造物P2の周りに土砂を埋め戻して行き、埋め戻しの進行に合わせて下から腹起しH1、切梁K1、及び切梁受け具1を順次撤去して行く。そして、シートパイルSPや鋼製ケーシングCを引き抜いて橋脚P1の補強工事が完了する。
【0042】
なお、特許文献1に記載された従来の切梁の連結具では、連結具が一般的に鋼製、少なくともモルタル製やコンクリート製ではないため、コンクリート構造物P2の表面の連結具を設置していた部分に、コンクリートやモルタルなどを埋めるなどして補修して表面を仕上げる必要があった。
【0043】
しかし、本実施形態に係る切梁受け具1は、受け具本体2がプレキャストのモルタル製であるため、コンクリートやモルタルなどで埋める必要がなく、コンクリート構造物P2の表面仕上が必要ないか、又は、目違い程度の補修で済み、養生期間が殆ど必要なくなる。このため、橋脚P1の補強工事の工期を短縮することができる。
【0044】
また、本実施形態に係る切梁受け具1は、橋脚補強工法において切梁を盛り替える必要がなくなるだけでなく、塩害地域であっても切梁受け具を撤去したり防錆処理を施したりする必要がなくなり、橋脚補強工事のコストダウンを図ることができる。
【0045】
以上説明した実施形態に係る切梁受け具によれば、従来工法と比べて、工期を大幅に短縮して工事のコストを削減することができるとともに、危険な切梁等の盛替えが一切不要となり、安全性が向上する。
【0046】
また、本実施形態に係る切梁受け具1によれば、切梁受け具1と新設のコンクリート構造物P2を強固に一体化することができるとともに、塩害地域であっても切梁受け具を撤去したり防錆処理を施したりする必要がない。
【0047】
また、切梁の位置に左右されず、コンクリートの打設回数を抑えることができる。さらに、設置している切梁受け具の位置を避けるように鉄筋を配筋する必要がなく、構造設計通りの鉄筋コンクリート構造物を構築することができ、耐久性の高い補強を行うことができる。
【0048】
その上、本実施形態に係る切梁受け具1によれば、切梁に高い土圧や水圧が掛かった場合であっても切梁受け具1が圧壊するおそれが少なくなるだけでなく、切梁に高い土圧や水圧が掛かって圧壊する場合にも切梁受け具1に混合されている繊維材で脆性的な破壊を防ぐことができる。
【0049】
以上、本発明の実施形態に係る切梁受け具について詳細に説明したが、前述した又は図示した実施形態は、いずれも本発明を実施するにあたって具体化した一実施形態を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。
【符号の説明】
【0050】
1 :切梁受け具
2 :受け具本体
21 :切梁側フランジ部
21a :ボルト孔
22 :橋脚側フランジ部
22a :ボルト孔
23 :ウェブ部
3 :鉄筋
H1 :腹起し
K1 :切梁
P1 :橋脚
P2 :コンクリート構造物
S1 :鉄筋
SP :シートパイル
C :鋼製ケーシング
G :キリンジャッキ
【要約】
【課題】塩害地域であってもコンクリート構造物の硬化後に撤去する必要がなく、耐久性の高い切梁受け具及びそれを用いた橋脚補強工法を提供する。
【解決手段】山留工法や仮締切工法に用いられる切梁の端部又は中間部に取り付けられ、前記切梁の軸力を支持構造体に伝達する切梁受け具において、プレキャストモルタル製又はプレキャストコンクリート製の受け具本体を設け、この受け具本体に、一方向に沿った鉄筋を埋設するとともに、両端を所定距離突出させ、機械式継手などで継ぎ足して新設のコンクリート構造物と一体化可能とし、且つ、この埋設された鉄筋と直交する方向に沿って端部が開放された溝を設ける。
【選択図】
図1