(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6022791
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月9日
(54)【発明の名称】プッシュ・プル式のハンドル装置
(51)【国際特許分類】
E05B 65/06 20060101AFI20161027BHJP
E05B 1/00 20060101ALI20161027BHJP
E05B 63/22 20060101ALI20161027BHJP
E05C 1/14 20060101ALI20161027BHJP
【FI】
E05B65/06 C
E05B1/00 311G
E05B63/22
E05C1/14 C
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-79354(P2012-79354)
(22)【出願日】2012年3月30日
(65)【公開番号】特開2013-209805(P2013-209805A)
(43)【公開日】2013年10月10日
【審査請求日】2015年3月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】390037028
【氏名又は名称】美和ロック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080838
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 光康
(72)【発明者】
【氏名】桐生 紘明
(72)【発明者】
【氏名】林 弘和
【審査官】
佐々木 崇
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第85/003102(WO,A1)
【文献】
特開2009−197492(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 1/00− 85/28
E05C 1/00− 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
扉の壁面に固定された第1台座と、この第1台座に対して所要間隔を有して前記壁面に固定された第2台座と、前記第1台座にその基端部側がハンドル枢軸を介して軸支されていると共に、その他端部側が前記第2台座に連係手段を介して連結されたハンドルと、このハンドルの前記ハンドル枢軸側に直接又は間接的に設けられ、かつ箱体内に設けられた駆動体に係合する突片状作動片と、前記ハンドルを初期位置へと戻す付勢手段とから成るプッシュ・プル式のハンドル装置。
【請求項2】
請求項1に於いて、ハンドルは扉の壁面に対する一方の操作部材であり、この一方の操作部材の基端部の内面にハンドル枢軸に軸支される枢着部が突設され、また前記基端部寄りの内面に突設された枢着部側連結突起部分に動力変換用の第1ハンドル連結作動リンクの一端部が枢着され、その他端部に第2固定軸に軸支されたテコ式の突片状作動片の一端部が連結され、該突片状作動片の他端部は一方の操作部材の作用端部として箱体内に設けられた駆動体に係合し、さらに、一方の操作部材の他端部は、その一端部が第2台座に軸支された第2ハンドル連結作動リンクの他端部に連係手段を介して連結されていることを特徴とするプッシュ・プル式のハンドル装置。
【請求項3】
請求項2に於いて、一方の操作部材としてのハンドルは扉の内壁面に対して設けられ、一方、他方の操作部材としてのハンドルは扉の外壁面に対して設けられ、前記他方の操作部材の基端部の内面にハンドル枢軸に軸支される枢着部が突設され、また前記基端部寄りの内面に突設された枢着部側連結突起部分にその中央部が第1台座側固定軸に軸支されたテコ式の突片状作動片の一端部が可動軸を介して直接的に連結され、該突片状作動片の他端部は他方の操作部材の作用端部として箱体内に設けられた駆動体に係合し、さらに、前記他方の操作部材の他端部側は、第2台座に連係手段を介して連結されていることを特徴とするプッシュ・プル式のハンドル装置。
【請求項4】
請求項1に於いて、ラッチ錠或いは扉の開動助勢機構を備えた扉の壁面にハンドル装置を配設したことを特徴とするプッシュ・プル式のハンドル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建具としての扉の壁面に取り付けられるプッシュ・プル式のハンドル装置に関し、望ましくは、内外気圧差解消装置を備えた扉の壁面に取り付けられるプッシュ・プル式のハンドル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1のハンドル装置は、扉1の開放端側に設けられるラッチ錠9と、扉内外の扉面に縦向き又は横向きにハンドルを取り付けるための座12、13と、この座のそれぞれに押し引き可能に保持されるハンドル11a、11と、ハンドルを押し引きの中間位置に保持するバネ14、14と、中間位置からのハンドルの押し操作並びに引き操作によって、縦向きハンドルが取り付けられたときには縦向きハンドル用の操作部材27を作動させ、横向きハンドルが取り付けられたときには横向きハンドル用の操作部材28を作動させて、ラッチ錠9のラッチ16の後退を許容させる作動機構15、15を設けている(符号は特許文献1に記載のもの)。
【0003】
この特許文献1のハンドル11a、11は、いわゆるプッシュ・プル式の操作部材であり、該操作部材の基端部には、錠箱内に突出する内外の作動片45a、45bが設けられている。これら内外の作動片45a、45bのいずれかが錠箱の上下方向(
図3参照)又は左右方向(
図13参照)に移動すると、上下一対のラッチ規制部材(ロッキングピース)22、22がラッチ16の規制を解く方向へ回転する。
【0004】
一方、特許文献2には、操作部材が、例えば操作軸を有するレバーハンドルであって、前記操作軸の回転によりラッチボルト(棒状体)が後退した後に、該操作軸のさらなる回転操作によって、「抉じ開けラッチ83」が扉枠側の反力部材(39、121)に扉を抉じ開けるように圧接する事項(内外気圧差解消装置)が記載されている(符号は特許文献2に記載のもの)。
【0005】
例えば特許文献2に記載のような扉の開動助勢装置は、扉の自由端部に設けられた錠箱内に摺動或いは回動可能に設けられた駆動体に大きなモーメントを掛けないようにすることが要望されている。それは扉の開動助勢装置を構成する抉じ開け杆に戸枠側から反力が掛かるからである。
【0006】
ところで、出願人は、貴庁に内外気圧差解消装置(扉の開動助勢装置)を出願している。特願2012−24659号(MP240102)もその一つであるが、その明細書本文に
図1及び
図2で示す内外のハンドル装置の具体的な構成を記述している。
【0007】
これらの図に於いて、符号Yは室内のハンドル装置、一方、Zは室外のハンドル装置である。これらの図から明らかなように、内外の操作手段9、10はプッシュ・プル方式のハンドルである。プル側の外側操作部材10は、扉を開く矢印A方向へプル可能である。また、プッシュ側の内側操作部材9も同様に扉を開く矢印A方向へプッシュ可能である。
【0008】
ここで、各ハンドル装置を説明すると、まず図面上右側のプル側のハンドル装置Zは、扉7の外壁面7bに所定間隔を有して固定される上下一組の台座15、16と、これらの台座に架設した状態で両端部が支持されると共に、付勢バネ17により初期位置に付勢された外側操作部材10と、この外側操作部材を握って扉7を開く方向Aへプルすると、外側操作部材の一端部を軸支するハンドル枢軸18が支点となって前記台座の一方の台座(この実施例では上方台座)15に第1固定軸19を介して軸支され、かつ、該外側操作部材の他端部に連結された作動リンク20のガイドピンン21aが案内長孔21bに案内されて台座15の外方向へ所定量位置変位すると共に、該作動リンク20に連動するように前記一方の台座15に第2固定軸22を介して軸支された連動レバー(ここでは「外の作動片」という。)23とから成る。
【0009】
そして、前記作動リンク20はテコ式の長杆片であり、前記第1固定軸19を基準として、その長梃側端部が前記外側操作部材10の一端部に連結ピン21を介して軸支されていると共に、その基端部側に作動係合歯24が形成され、また連動レバー(外の作動片)23も片手形状のテコ式の長杆片であり、第2固定軸22を基準として、その長梃部分の先端部がラッチ錠Xの錠箱8に内装の扉の開動助勢機構51を構成する駆動体(例えばスライダー)52に係合すると共に、その基端部側に前記作動係合歯24に常時係合する従動係合歯25が形成されている。
【0010】
次に図面左側のプッシュ側のハンドル装置Yは、扉7の内壁面7cに所定間隔を有して固定される上下一組の台座28、27と、これらの台座に架設した状態で両端部が支持されると共に付勢バネ29により初期位置に付勢された内側操作部材9と、この内側操作部材を扉7の開く方向Aへプッシュすると、内側操作部9の一端部を軸支する図面下方のハンドル枢軸30が支点となって図面上方の一方の台座27に第1固定軸31を介して軸支されかつ該内側操作部材9の自由端部に連結された作動リンク32のガイドピン33aが台座27の内方向へ所定量位置変位すると共に、該作動リンク32に連動するように前記台座27に第2固定軸34を介して軸支されたT型状の連動レバー(ここでは「内の作動片35」という。)とから成る。
【0011】
上記作動リンク32も長杆状に形成されており、一方、前記連動レバー(内の作動片)35はT字形状或いはアングル形状に形成され、回転半径の異なる前記作動リンク32及び連動レバー35の各中間部分は、連係手段36(ガイドピン33a、案内長孔33b)を介して互いに係合し、また前記連動レバー35の先端部に相当する作用端部は、一方の台座27の取付けベース面から突出した状態で前記ラッチ錠Xの扉の開動助勢機構51を構成するスライダー52と係合する。
【0012】
付言すると、外と内の各作動片23、35は、一つの長孔を有するブロック状又はコ字形状のいずれかに形成された駆動体52と係合し、該駆動体は、ハンドル側の内外の作動片23、35がそれぞれ選択的に移動する方向と同一方向(この第1実施形態では上方向)に移動する。なお、符号33は内側操作部材9の一端部を枢支する連結ピンである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平11−148259号公報
【特許文献2】特許第4295596号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本願発明の所期の目的は、バール(crowbar)の操作原理を応用し、小さな操作力であってもプッシュ・プル式のハンドルをプッシュ(押す)又は/及びプル(引く)ことができることである。第2の目的は、プッシュ又は/及びプルする量を少なくしても、箱体の一例である錠箱内の駆動体と係合する出力側の突片状作動片の回転角を大きくすることができることである。その他の目的は、長杆状の操作部材を短くすることができること、錠箱内に扉の開動助勢機構を備えたラッチ錠に適合すること、プッシュ・プル式の長杆状ハンドルを台座に簡単に取付けることができること等である。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本願発明のプッシュ・プル式のハンドル装置は、扉の壁面に固定された第1台座と、この第1台座に対して所要間隔を有して前記壁面に固定された第2台座と、前記第1台座にその基端部側がハンドル枢軸を介して軸支されていると共に、その他端部側が前記第2台座に連係手段を介して連結されたハンドルと、このハンドルの前記ハンドル枢軸側に直接又は間接的に設けられ、かつ箱体内に設けられた駆動体に係合する突片状作動片と、前記ハンドルを初期位置へと戻す付勢手段とから成ることを特徴とする。ここで「箱体」は、ラッチを備えた錠箱又は/及び扉の開動助勢機構を備えた錠箱或いは箱体である。
【発明の効果】
【0016】
(a)箱体内の駆動体に係合する突片状作動片を、ハンドル枢軸側に直接又は間接的に設けたので、いわゆるバールの操作原理により、小さな操作力であっても、プッシュ(押す)又は/及びプル(引く)ことができると共に、突片状作動片の作用端部に大きな力が作用するので、前記駆動体を容易に動かすことができる。したがって、例えばラッチ錠の仮施錠状態を解くために駆動体を動かす場合や錠箱内に設けた扉の開動助勢機構を構成する駆動体を動かす場合に適合する。
(b)請求項2に記載の発明は、ハンドル枢軸よりも多少離れた基端部寄りの内面に枢着部側連結突起部分を突設し、該枢着部側連結突起部分に動力変換用の第1ハンドル連結作動リンクを介在させて突片状作動片を回転させたので(第1実施形態)、傾倒する物(ハンドル)との関係で、ハンドル枢軸の先端部に突片状作動片を設ける実施形態(
図3)よりも、該突片状作動片の作用端部の振れ角(回転角)を大きく取ることができる。また、基端部寄りの内面に突設された枢着部側連結突起部分に第1ハンドル連結作動リンクの一端部が枢着され、該第1ハンドル連結作動リンクは、その中央部が第1固定軸で軸支されていると共に、その他端部に第2固定軸に軸支されたテコ式の突片状作動片の一端部が連結されているので、ハンドル装置がプッシュ(押す)及びプル(引く)のセット物である実施形態の場合には、相手側(例えばプル側)のテコ式の突片状作動片の方向に合わせることができるように「方向変換」させることができる。さらに、内側操作部材の他端部(例えば上端部)は、該他端部よりも上方に位置している固定軸にその一端部(例えば上端部)が軸支された第2ハンドル連結作動リンクの他端部(下端部)に連係手段を介して連結されているので、該内側操作部材の他端部(例えば上端部)は、上方の台座内に十分に入り込むことができる。付言すると、内側操作部材を所望する位置まで傾倒させることができる。
(c)請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明と同様にハンドル枢軸よりも多少離れた基端部寄りの内面に枢着部側連結突起部分を突設し、該枢着部側連結突起部分に固定軸に軸支されたテコ式の突片状作動片の一端部が連結されているので、ハンドル枢軸の先端部に突片状作動片を設ける実施形態(
図3)よりも、該突片状作動片の作用端部の振れ角(回転角)を大きく取ることができる。
(d)請求項4に記載の発明は、操作部材に大きな力を加えなくても、例えば錠箱内に扉の開動助勢機構やラッチ規制片を作動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1及び
図2は
上述した先願(特願2012−24659号)のハンドル装置の一例を示す各説明図、
図3は本発明の技術的思想を示す概略説明図、
図4乃至
図10は本発明の第1実施形態を示す各説明図、
図11乃至
図17は本発明の第2実施形態を示す各説明図、
図18は本発明の第3実施形態を示す説明図である。
図19乃至
図21は、本発明を適用したラッチ錠及び内外気圧差解消装置(扉の開動助勢装置)の各説明図。
【
図6】ハンドル枢軸の反対側の第2ハンドル連結作動リンクの説明図。
【
図7】ハンドル枢軸側の第1ハンドル連結作動リンクの説明図。
【
図8】ハンドル枢軸側に設けられた内の作動片の説明図。
【
図9】要部の初期状態から作動した状態の概略説明図。
【
図10】全体の初期状態から作動した状態の概略説明図。
【
図11】第2実施形態の外側ハンドル装置の説明図。
【
図13】ハンドル枢軸の反対側の第2ハンドル連結案内板の説明図。
【
図14】ハンドル枢軸側の第1ハンドル連結案内板の説明図。
【
図15】ハンドル枢軸側に設けられた外の作動片の説明図。
【
図16】要部の初期状態から作動した状態の概略説明図。
【
図17】全体の初期状態から作動した状態の概略説明図。
【
図18】第3実施形態の主要部を示す概略説明図(初期状態)。
【
図19】例えば外の作動片23により駆動スライダーが始動して、ラッチ規制部材の規制を解く一例の全体の説明図。
【
図20】終期(開扉時における差圧解消時)の概略説明図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
まず、
図3の実施形態を参照にして本発明の技術的思想を説明する。なお、本発明の技術的思想及び後述の各実施形態を説明するに当たって、
図1及び
図2で示した
先願(特願2012−24659号)と同一の部分には同一の符号を付して重複する説明を割愛する。
【0019】
図3はプッシュ側のハンドル装置Yで、(a)は初期状態、一方(b)は内側操作部材9を矢印A方向へプッシュした状態である。
図2ではプッシュ側のハンドル装置Yを左側に示しているのに対して、
図3では右側に示しているが、両者の使用態様に差異はない。
【0020】
さて、
図3で示すように、本発明では、棒状の内側操作部材9を「バール(crowbar)」形式にし、図面下方の支点30側に作用端部としての杵35を設け、普通一般に内側操作部材9を握り締める箇所(ポイント)Pが内側操作部材9の作用点である前記杵35よりも遠ざかるように構成している。
その結果、バール操作の原理により、小さな操作力であっても、杵35の作用端に大きな力が加わり、駆動体52を容易に動かすことができる。
【0021】
図3に於いて、7cは扉7の内壁面、27は上方の台座(第2台座)、28は下方の台座(第1台座)、30は内側操作部材9の基端部(下端部)を軸支するハンドル枢軸、35はハンドル枢軸側に設けられたハンドルの作用点を有する杵、52は、例えばラッチ錠の錠箱8や扉の開動助勢機構を備えた箱体に内装された駆動体(例えばスライダー)である。
【0022】
一方、図面上方の36は、上方の台座27側の連係手段、29はハンドル用の付勢バネである。前記連係手段36は内側操作部材9の上端部に設けられたガイドピン(可動ピン)33aと、上方の台座27に直接又は間接的に設けられたガイド孔33bとから成る。また前記内側操作部材9を初期位置へと付勢する付勢バネ29の一端部29aは、台座27に支持され、一方、その作用端29bはガイドピン33aに圧接している。
【0023】
上記構成に於いて、
図3(b)で示すように、内側操作部材9の中央部(中央部寄りの部位も含む)に相当する箇所(ポイント)Pを扉7の内壁面7cに向って矢印A方向へ押圧すると、内側操作部材9はハンドル枢軸30を支点にして矢印方向に回転するから、作用点を有する杵35は矢印B方向へと位置変位して駆動体52を押す。
【0024】
したがって、
先願の実施例(
図1、
図2)と本発明とを比較すると、
先願の実施例はハンドル枢軸30よりも著しく離れた位置、すなわち、内側操作部材9の上端部側に内の突片状作動片(杵)35が設けられているのに対して、本発明は、その逆であることから、バール操作の原理により、小さな操作力であっても、枢着部側に設けられた突片状作動片(杵)35の作用端に大きな力が作用し、駆動体52を容易に動かすことができる。
【0025】
次に、
図4乃至
図10を参照にして、最適な第1実施形態を説明する。この第1実施形態も
図3と同様に「プッシュ側のハンドル装置Y」の一例を示している。
【0026】
すなわち、
図5で示す長杆状ハンドルは内側操作部材9であり、この内側操作部材9の基端部(図面上では下端部)9aの内面にハンドル枢軸30に軸支される枢着部9bが突設され、また前記基端部寄り部位(基端部側)の内面に突設された枢着部側連結突起部分9cに、
図7で示す第1ハンドル連結作動リンク(方向変換片)32の一端部32aが可動軸aを介して枢着され、該第1ハンドル連結作動リンク32は、その中央部32bが第1固定軸31で軸支されていると共に、その他端部32cに第2固定軸34に軸支されたテコ式の突片状作動片(内作動片)35の一端部35aが連結されている。そして、前記突片状作動片(内作動片)35の他端部35cは駆動体52に係合可能である。
【0027】
さらに、
図5を参照にして内側操作部材9の構成を説明する。枢着部9bよりも多少上方に位置する枢着部側連結突起部分9cは、長杆状の内側操作部材9の中央部(O)よりも下方(ここでは「枢着部側」或いは「基端部側」とする)の内壁面に突設され、前記中央部(O)よりも下方の部位は、ここでは「ハンドル枢軸側」の概念に含まれる。この枢着部側連結突起部分9cを設けた理由は、枢着部9bに作用端を有する杵を設けるよりも、該枢着部9bよりも多少離れた部位に動く物(ハンドル)の力点を設定することにより、杵の振れ角を大きく取ることができるからである。
【0028】
また実施形態では、内側操作部材9の上端部内面に、上方の台座27にその上端部が固定軸41を介して軸支された第2ハンドル連結作動リンク42にガイドピン43aを介してぶら下がる連結突起部分9dが突設されている。
【0029】
したがって、実施形態では、前記連結突起部分9dと前記枢着部側連結突起部分9cの略中央部が操作者の握り締める箇所(操作ポイント)Pである。なお、連結突起部分9dが形成された内側操作部材9の他端部(図面上では上端部)は、
図4で示すように、その一端部42aが固定軸41を介して第2台座27に軸支された第2ハンドル連結作動リンク42の他端部42bに連係手段43を介して連結されている。
【0030】
しかして、該第2ハンドル連結作動リンク42は、
図6で示すように例えば「く」の字形状に折り曲げ形成され、上端部に相当する一端部42aに固定軸41用の軸孔が形成され、一方、下端部に相当する他端部42bに、連係手段43を構成する内側操作部材9のガイドピン43aが係合する縦長の案内長孔43bが形成されている。そして、上方の台座27に配設された内側付勢手段29は、
図3で説明したように、連係手段43を構成するガイドピン43aにその作用端部が圧接している。
【0031】
図8はハンドル枢軸側に設けられた内の突片状作動片(杵)35の説明図である。この突片状作動片(杵)35は、中央部35bに前述した第2固定軸34用の軸孔が形成され、この中央部35bの軸孔を基準として、図面上の右端部に相当する一端部35aに連結ピン用の軸孔が形成され、一方、図面上左端部に相当する指状他端部35cが、駆動体を押圧する作用端部と成る。
【0032】
上記構成に於いて、
図9は要部の初期状態から作動した状態の概略説明図、また
図10は全体の初期状態から作動した状態の概略説明図である。
【0033】
これらの図に於いて、内側操作部材9の中央部よりも上方の握り部分Pをプッシュすると、内側操作部材9は基端部9aのハンドル枢軸30を支点にして反時計方向へ回転して傾倒状態に成る。この時、枢着部側連結突起部分9cの可動軸aは扉の内壁面7c側へ位置変位するので、その中央部32bが第1固定軸31で軸支されている第1ハンドル連結作動リンク32は、反時計方向へと回転する。そうすると、第2固定軸34に軸支されている突片状作動片35は、時計方向に回転し、その作用端部35cで駆動体52を上方に持ち上げる(
図19、
図20参照)。
【実施例】
【0034】
次に
図11乃至
図17は、本発明の第2実施形態の各説明図である。この第2実施形態の説明に当って、第1実施形態と同一の部分には同一又は同様の符号を付して重複する説明を割愛する。
【0035】
この第2実施形態は「プル側のハンドル装置Z」で、該プル側のハンドル装置Zは、
図2の右側に説図したそれと対比することができる。プル側のハンドル装置Zは、外側操作部材10の基端部10aの内面にハンドル枢軸18に軸支される枢着部10bが突設され、また前記基端部寄りの下部内面に突設された枢着部側連結突起部分10cにその中央部23bが下方の第1台座16A側の固定軸22に軸支されたテコ式の突片状作動片23の一端部23aが、前記枢着部10bによも多少上方に離れた位置に突設された枢着部側連結突起部分10cに可動軸aを介して直接的に連結され、該突片状作動片23の他端部23cは外側操作部材10の作用端部としてラッチ錠Xの錠箱8或いは扉の開動助勢機構51を備えた箱体8内に設けられた駆動体52に係合し、さらに、外側操作部材10の他端部側(図面上では上端部側)は、その突起部分10dに連係手段21を介して第2台座15に連結され、前記連係手段21を構成するガイドピン21aに外側付勢手段17の作用端部が圧接する。
【0036】
ここで、
図12を参照にして外側操作部材10の構成について説明する。図面上、下端部に相当する基端部10aの内面には枢着部10bが突設されている。この枢着部10bよりも多少離れた上方に位置に枢着部側連結突起部分10cが突設されている。この枢着部側連結突起部分10cは、長杆状の外側操作部材10の中央部(O)よりも下方(ここでは「下部」とする)の内壁面に突設され、前記中央部(O)よりも下方の部位は、内側操作部材9と同様に「ハンドル枢軸側」の概念に含まれる。また外側操作部材10の上部内面には、突起部分10dが突設されている。
【0037】
したがって、実施形態では、前記突起部分10dと前記枢着部側連結突起部分10cの略中央部が操作者の握り締める箇所(操作ポイント)Pである。この点は長杆状外側操作部材10も長杆状内側操作部材9と同様である。ただ、長杆状外側操作部材10は、プル側なので、長杆状内側操作部材9の如く、必ずしも第1ハンドル連結作動リンク42を使用する必要はない。そこで、第2ハンドル連結作動リンク42ではなく、ガイドピン用規制長孔21bが形成された第2ハンドル連結案内板42Aを上方の台座15に一体的に設けている。そして、前記第2ハンドル連結案内板42Aの適宜箇所(例えば上部)には外側付勢手段17の中央部を支持する支持ピン19Aが設けられ、前記外側付勢手段17の作用端部は前述した突起部分10dに設けたガイドピン21aに圧接している。
【0038】
次に
図14は、ハンドル枢軸側に設けられた第1ハンドル連結案内板16Aで、この第1ハンドル連結案内板16Aには、可動軸aが遊嵌する矩形状の案内孔bと、該案内孔よりも下方の部位に形成された固定軸22用の軸孔cがそれぞれ形成されている。また
図15は、ハンドル枢軸18側に設けられた外の突片状作動片23の説明図で、該突片状作動片23の上端部23aには可動軸aが遊嵌する係合孔dが形成され、またその中央部23bには固定軸22用の軸孔eが形成されている。突片状作動片23の指先状に延在する下端部23cは、前述したように動く物の作用端部として箱体8内の駆動体52を動かす。
【0039】
なお、
図16は要部の初期状態から作動した状態の概略説明図、
図17は全体の初期状態から作動した状態の概略説明図である。また、
図18は本発明の第3実施形態を示す説明図で、この第3実施形態は、プッシュ側のハンドル装置Yとプル側のハンドル装置Zを組み合わせたものである。その他、ハンドルを初期位置へと戻す付勢手段の作用端部は、実施形態の如くガイドピンに圧接させる他に、第2ハンドル連結作動リンクや内側操作部材自体に圧接させることも可能である。
【0040】
ここで、
図19乃至
図21を参照にして、本発明を適用したラッチ錠及び内外気圧差解消装置(扉の開動助勢装置51)を簡単に説明する。これらの図に於いて、符号1は戸枠、13は傾斜状の受け面13aを有する反力部材、14は反力部材を固定する固着具である。
【0041】
さて、閉扉時、駆動スライダー52は、例えば錠箱8の底壁側に存在している。また、扉の開動助勢装置を構成する「マラカス」形態の短杆状抉じ開け部材54は、垂直状態となっていると共に、反転ラッチ11は、ラッチ規制部材50に規制されている。
【0042】
そこで、
図19は、例えば外の操作部材10を操作し始めたとき、駆動スライダー52が上方へと始動して、摺動可能なラッチ規制部材50の規制を解いた状態を示す。ラッチ規制部材50の規制は、駆動スライダー52が外の作動片23に押し上げられて摺動し始めると、垂直部分52bから突出する突起状係合部分52cがラッチ規制部材50の後方の係合腕の係合部分(例えば小突起)50aを押し上げる状態を保持する。
【0043】
このように、開扉時、前記駆動スライダー52の始動開始後に該駆動スライダー52を介して前記ラッチ規制部材50の規制が解かれる。
図20は終期(開扉時における差圧解消時)の概略説明図、
図21は終期の平面視からの概略説明図である。
【0044】
ラッチ規制部材50の規制を解かれた直後、駆動スライダー52がさらに上方へと上昇すると、中央部が横軸56で軸支されかつ駆動スライダー52と共働するシーソ式動力変換部材53の後端部分53bはさらに上方へと回転する。したがって、シーソ式動力変換部材53の先端部分53aの係合突起58により、短杆状抉じ開け部材54の連係突片54乃至基端部54aは下方へと押し下げられる。この時、短杆状抉じ開け部材54は第2横軸58を介して時計方向へと回転し、その先端部54bはフロント8aに形成した開口61から飛び出て行く(
図20参照)。そうすると、前記先端部54bが扉枠1側の反力部材13に対して回転しながら傾斜状受け面13aに圧接し、該圧接力が扉7を開く方向に作用する反力と成る(
図21参照)。
【0045】
なお、ハンドル装置を初期位置へと戻す付勢手段は、第1台座、第2台座、箱体内に適宜に配設することができる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は錠前及び建具の分野で利用される。
【符号の説明】
【0047】
X…ラッチ錠、Y…プッシュ側のハンドル装置、Z…プル側のハンドル装置、P…握り部分、7…扉、8…錠箱、9…内側操作部材、9a,10a…基端部、9b,10b…枢着部、9c,10c…枢着部側連結突起部分、9d…連結突起部分、10…外側操作部材、10d…突起部分、22…第1台座側の固定軸、15,27…上方の台座(第2台座)、16,28…下方の台座(第1台座)、16A…第1ハンドル連結案内板、17…外側付勢手段、21a…ガイドピン、21b…ガイドピン用規制長孔、29…内側付勢手段、18,30…ハンドル枢軸、31…第1固定軸、32…第1ハンドル連結作動リンク、34…第2固定軸、a…可動軸、23,35…突片状作動片、23c,35c…作用端部、41…固定軸、42…第2ハンドル連結作動リンク、42A…第2ハンドル連結案内板、36,43…連係手段、43a…ガイドピン、43b…案内長孔、50…ラッチ規制部材、51…開動助勢装置、52…駆動体。