特許第6022863号(P6022863)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6022863
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月9日
(54)【発明の名称】換気構造及び建物
(51)【国際特許分類】
   E04D 13/152 20060101AFI20161027BHJP
【FI】
   E04D13/152 Z
【請求項の数】9
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-195222(P2012-195222)
(22)【出願日】2012年9月5日
(65)【公開番号】特開2014-51788(P2014-51788A)
(43)【公開日】2014年3月20日
【審査請求日】2015年4月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100082670
【弁理士】
【氏名又は名称】西脇 民雄
(72)【発明者】
【氏名】高橋 丈
【審査官】 油原 博
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−202934(JP,A)
【文献】 特開2010−265651(JP,A)
【文献】 特開2004−244964(JP,A)
【文献】 特開平11−270082(JP,A)
【文献】 特開2008−304140(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 13/15−13/158
E04B 1/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外壁の上端部内側に建物の軒部の長手方向に沿って設けた屋根梁と、当該屋根梁の上に配置される軒梁を設けた屋根を有し、
前記軒梁の外側に前記外壁の表面よりも突出した外樋を設け、
前記建物の換気空間とその外部とを連通させる前記建物の軒先に形成された換気口が、前記外樋の上側に位置するように構成され
建物の外方に向いた水返し部を前記換気口の内側に配置するとともに、建物の内方に向いた水返し部を前記外壁の上端部を覆うように配置したことを特徴とする換気構造。
【請求項2】
前記軒梁上に、建物の軒部の長手方向に沿って設けた屋根の野地板を取り付けた垂木を支持する支持材を設けたことを特徴とする請求項1に記載の換気構造。
【請求項3】
前記支持材は、断面略V字状であることを特徴とする請求項2に記載の換気構造。
【請求項4】
前記支持材は、建物の軒部の長手方向に沿って所定の間隔をあけて複数設けたことを特徴とする請求項2または3に記載の換気構造。
【請求項5】
前記換気口の外側面は、前記建物の屋根の端部から延設した水切り材で形成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の換気構造。
【請求項6】
前記換気口の入口は、前記外樋の外側上縁部よりも下方に位置するように設定されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の換気構造。
【請求項7】
前記換気口内の入口近傍には、前記軒部の長手方向に延びるスリット孔が形成された防鳥・防水板部が設けられていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の換気構造。
【請求項8】
請求項1乃至のいずれか1項に記載の換気構造を備えていることを特徴とする建物。
【請求項9】
前記建物は片傾斜した屋根を有し、前記換気空間は、前記屋根の下側に形成された片傾斜した屋根裏空間であり、前記屋根の水下側の前記軒先に、前記換気口が給気用の換気口として形成されているとともに、前記屋根の水上側の軒部には前記屋根裏空間と連通する排気用の換気口が形成されていることを特徴とする請求項に記載の建物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の換気構造、及びこの換気構造を備えた建物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の建物においては、建物本体の耐久性を高めるためなどの目的で、屋根裏などの換気が行える換気構造が多く実施されている。
【0003】
例えば特許文献1に開示された換気構造では、雨仕舞いを考慮して、軒部の下側に換気口が設けられ、屋根裏空間と連通している。
【0004】
また、特許文献2〜4などには、軒先から水切り材の先端を外樋の上側に位置するように延設した技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−13678号公報
【特許文献2】特開平04−202935号公報
【特許文献3】特開2011−32720号公報
【特許文献4】特開2008−150904号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のような従来の換気構造では、換気口が略下向きに開口しているので、上方向や横方向からの風雨の浸入は防げるものの、下方向からの風雨の浸入に対する対策は不十分であり、雨仕舞い性能の点で、改良の余地があった。
【0007】
なお、特許文献2〜4などに開示された従来技術における水切り材は、単に雨水を外樋内にうまく誘導させるためのものであり、換気構造における雨仕舞い性能を向上させるものではなかった。
【0008】
そこで、本発明は、換気性能に優れているうえに、雨仕舞い性能にも優れている換気構造、及びこの換気構造を備えた建物を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明の換気構造は、建物の軒部の長手方向に沿って、その外方に突出した外樋が設けられており、前記建物の換気空間とその外部とを連通させる前記建物の軒先に形成された換気口が、前記外樋の上側に位置するように構成されていることを特徴とする。
【0010】
ここで、前記換気口の外側面は、前記建物の屋根の端部から延設した水切り材で形成されているとよい。
【0011】
また、前記換気口の入口は、前記外樋の外側上縁部よりも下方に位置するように設定されているとよい。
【0012】
さらに、前記換気口内には、換気経路を確保する長さで前記建物内側から前記建物外側に向かって突出する水返し部が設けられているとよい。
【0013】
また、前記換気口内の入口近傍には、前記軒部の長手方向に延びるスリット孔が形成された防鳥・防水板部が設けられているとよい。
【0014】
本発明の建物は、上記した換気構造を備えていることを特徴とする。
【0015】
ここで、前記建物は片傾斜した屋根を有し、前記換気空間は、前記屋根の下側に形成された片傾斜した屋根裏空間であり、前記屋根の水下側の前記軒先に、前記換気口が給気用の換気口として形成されているとともに、前記屋根の水上側の軒部には前記屋根裏空間と連通する排気用の換気口が形成されているとよい。
【発明の効果】
【0016】
このような本発明の換気構造は、建物の軒部の長手方向に沿って、その外方に突出した外樋が設けられており、建物の換気空間とその外部とを連通させる建物の軒先に形成された換気口が、外樋の上側に位置するように構成されている。
【0017】
こうした構成なので、外樋の下面により換気口の下方向からの風雨の浸入が抑止されるため、換気性能に優れているうえに、雨仕舞い性能にも優れている。
【0018】
ここで、換気口の外側面は、建物の屋根の端部から延設した水切り材で形成されている場合は、こうした換気口を簡易に形成することができる。
【0019】
また、換気口の入口は、外樋の外側上縁部よりも下方に位置するように設定されている場合は、外樋の外側面により、換気口の横方向から回り込んでの風雨の浸入が抑制されるため、より雨仕舞い性能に優れたものとすることができる。
【0020】
さらに、換気口内には、換気経路を確保する長さで建物内側から建物外側に向かって突出する水返し部が設けられている場合は、この水返し部により、万一換気口から雨水が上ってきても排除できるので、さらにより雨仕舞い性能に優れたものとすることができる。
【0021】
また、換気口内の入口近傍には、軒部の長手方向に延びるスリット孔が形成された防鳥・防水板部が設けられている場合は、この防鳥・防水板部により、鳥などが侵入したり巣を作ったりするのを防止することができるうえに、さらにより雨仕舞い性能に優れたものとすることができる。
【0022】
このような本発明の建物は、上記した換気構造を備えた構成とされている。
【0023】
こうした構成なので、上記した効果を奏する建物を構築することができる。
【0024】
ここで、建物は片傾斜した屋根を有し、換気空間は、屋根の下側に形成された片傾斜した屋根裏空間であり、屋根の水下側の軒先に、換気口が給気用の換気口として形成されているとともに、屋根の水上側の軒部には屋根裏空間と連通する排気用の換気口が形成されている場合は、屋根裏空間内は建物の外側に比べて暖かいので、給気用の換気口から給気された換気用の空気は、屋根裏空間内の上昇気流にのって排気用の換気口から排気され、効率の良い換気が行える。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】実施例1の換気構造を備えた建物の概略構成を示す説明図である。
図2図1におけるA−A線矢視拡大断面図であって、実施例1の換気構造の概略構成を示す説明図である。
図3】実施例2の換気構造の概略構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を実施するための形態を、図面に示す実施例1,2に基づいて説明する。
【実施例1】
【0027】
先ず、実施例1の構成について説明する。
【0028】
図1は、実施例1の換気構造を備えた建物1の概略構成を示している。
【0029】
この建物1は、図1に示したように、片傾斜した屋根Yを有している。
【0030】
この実施例1の換気構造の要部は、図2に示したように、この片傾斜した屋根Yの水下側に構成されている。
【0031】
この建物1では、図2に示したように、軒部Nを構成する溝形鋼の軒梁3のウェブ部の長手方向に沿って、桟材4を介して、建物1の外方に突出した外樋5が設けられている。
【0032】
なお、この外樋5の水下側(紙面手前側)には、図示省略の下部が下水道に繋がった縦樋が連通して設けられ、外樋5内に溜まった雨水が排水可能とされている。
【0033】
また、桟材4と外樋5との間には、上部に建物1の外方に向いた水返し部61を有し、下部に建物1の内方に向いた水返し部62を有する断面略Z字状の水返し部材6が挟み込まれて設けられている。
【0034】
さらに、軒梁3は、フランジ部間に防水パッキン7を介して、溝形鋼の屋根梁8で支持されている。
【0035】
また、屋根梁8の上側フランジ部と外壁9の上端部との間には、防水シート19が貼設されている。
【0036】
さらに、片傾斜した屋根Yを構成する野地板10の下面は、垂木11,・・・で支持されている。
【0037】
ここで、最下部の垂木11を受ける断面略L字状の垂木受材12の立ち上がり部と軒梁3の上側フランジ部との間には、断面略V字状の支持材13が設けられている。
【0038】
この支持材13は、屋根Yの大きな荷重を軒梁3へ伝達でき、しかも、換気経路も確保できるように、軒梁3の長手方向に沿って所定の間隔をあけて、複数個設けられている。
【0039】
また、野地板10の上面には、屋根材14が敷設されて、片傾斜した屋根Yが構成されている。
【0040】
この屋根材14の下端部には、フック部14aが形成されており、このフック部14aには、フック部15aが係合されて、クリップ部材15が設けられている。
【0041】
このクリップ部材15と野地板10の下端部との間に水切り材16の上端部を挟み込んで固定することにより、水切り材16が屋根Yの軒先から延設されている。
【0042】
この水切り材16の下端部16aは、水返し部材6の水返し部61の先端部から間隔をあけて、外樋5の上側の中央部寄りから外樋5の外側上縁部よりも若干下方に位置するまで垂下している。
【0043】
これにより、この実施例1の換気構造の換気口Eが形成されている。
【0044】
ここで、換気口Eの入口近傍には、軒部Nの長手方向に延びる複数のスリット孔が形成された防鳥・防水板部17が設けられている。
【0045】
そして、矢印Wで示したように、換気口Eから給気された空気は、換気空間としての屋根裏空間2へと入り、屋根裏空間2内を換気した後、屋根Yの水上側の軒部に形成された図示を省略した換気口から排気される。
【0046】
次に、実施例1の作用効果について説明する。
【0047】
このような実施例1の換気構造は、建物1の軒部Nの長手方向に沿って、その外方に突出した外樋5が設けられており、建物1の換気空間としての屋根裏空間2とその外部とを連通させる建物1の軒先に形成された換気口Eが、外樋5の上側に位置するように構成されている。
【0048】
こうした構成なので、外樋5の下面により換気口Eの下方向からの風雨の浸入が抑止されるため、換気性能に優れているうえに、雨仕舞い性能にも優れている。
【0049】
ここで、換気口Eの外側面は、建物1の屋根Yの端部から延設した水切り材16で形成されている。
【0050】
このため、こうした換気口Eを簡易に形成することができる。
【0051】
また、換気口Eの入口は、外樋5の外側上縁部よりも下方に位置するように設定されている。
【0052】
このため、外樋5の外側面により、換気口Eの横方向から回り込んでの風雨の浸入が抑制されるため、より雨仕舞い性能に優れたものとすることができる。
【0053】
さらに、換気口E内には、換気経路を確保する長さで建物1の内側から建物1の外側に向かって突出する水返し部61が設けられている。
【0054】
このため、この水返し部61により、万一換気口Eから雨水が上ってきても排除できるので、さらにより雨仕舞い性能に優れたものとすることができる。
【0055】
また、換気口E内の入口近傍には、軒部Nの長手方向に延びるスリット孔が形成された防鳥・防水板部17が設けられている。
【0056】
このため、この防鳥・防水板部17により、鳥などが侵入したり巣を作ったりするのを防止することができるうえに、さらにより雨仕舞い性能に優れたものとすることができる。
【0057】
このような実施例1の建物1は、上記した実施例1の換気構造を備えた構成とされている。
【0058】
こうした構成なので、上記した実施例1の換気構造の作用効果を奏する建物を構築することができる。
【0059】
ここで、建物1は片傾斜した屋根Yを有し、換気空間は、屋根Yの下側に形成された片傾斜した屋根裏空間2であり、屋根Yの水下側の軒先に、換気口Eが給気用の換気口として形成されているとともに、屋根Yの水上側の軒部には屋根裏空間2と連通する図示を省略した排気用の換気口が形成されている。
【0060】
このため、屋根裏空間2内は建物1の外側に比べて暖かいので、給気用の換気口Eから給気された換気用の空気は、屋根裏空間2内の上昇気流にのって図示を省略した排気用の換気口から排気され、効率の良い換気が行える。
【実施例2】
【0061】
次に、実施例2について説明する。
【0062】
なお、実施例1で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については同一符号を付して説明する。
【0063】
図3は、実施例2の換気構造の概略構成を示している。
【0064】
この実施例2の換気構造では、野地板10の下端部と水返し部材6との間に、立ち上がり部において軒部Nの長手方向に延びる複数のスリット孔が形成された断面略逆L字状の防水部材18が設けられていることが実施例1の換気構造と主に異なる。
【0065】
このため、防水部材18を設けた分、さらにより雨仕舞い性能に優れたものとすることができる。
【0066】
なお、他の構成及び作用効果については、実施例1と略同様であるので説明を省略する。
【0067】
以上、図面を参照して、本発明を実施するための形態を実施例1,2に基づいて詳述してきたが、具体的な構成は、これら実施例1,2に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0068】
例えば、上記した実施例1,2では、片傾斜した屋根Yを有する建物1で実施したが、これに限定されず、平屋根の建物などで実施してもよい。
【0069】
また、上記した実施例1,2では、換気空間を屋根裏空間として実施したが、これに限定されず、例えば、換気空間をバルコニーの床下空間などにして実施してもよい。
【符号の説明】
【0070】
1 建物
2 屋根裏空間(換気空間)
3 軒梁
4 桟材
5 外樋
6 水切り部材
61 水切り部
62 水切り部
7 防水パッキン
8 屋根梁
9 外壁
10 野地板
11 垂木
12 垂木受材
13 支持材
14 屋根材
14a フック部
15 クリップ部材
15a フック部
16 水切り材
16a 水切り材の下端部
17 防鳥・防水板部
18 防水部材
19 防水シート
E 換気口
N 軒部
Y 屋根
図1
図2
図3