(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1超音波センサと第2超音波センサとからなる超音波センサ組を備え、長手方向へ走行する帯状の基材の片面若しくは両面に塗材を塗工したワーク又は前記基材の厚み方向の両面に対し、その一方側に前記第1超音波センサを、その他方側に前記第2超音波センサを、それぞれ空気層を介し向い合せて配置し、前記第1超音波センサと前記第2超音波センサとの間で超音波を伝播させることにより、前記ワーク又は前記基材の厚みを計測する超音波計測方法であって、
前記超音波センサ組として、前記ワーク又は前記基材の厚みを実測するための実測用超音波センサ組と、前記実測用超音波センサ組とは別に設けられ、前記実測用超音波センサ組による実測値を校正するための校正用超音波センサ組と、前記ワーク又は前記基材の近傍に配置され、前記校正用超音波センサ組により厚みが計測される所定の基準材とを備える超音波計測方法において、
前記校正用超音波センサ組を移動させて、前記基準材の厚みと前記ワーク又は前記基材のある箇所の厚みを前記校正用超音波センサ組により校正用として周期的に交互又は順次に計測し、
その後、前記ワーク又は前記基材の走行に伴い、前記校正用超音波センサ組により直前に計測された前記ワーク又は前記基材の前記ある箇所の厚みを前記実測用超音波センサ組により実測し、
前記ワーク又は前記基材の前記校正用の計測値と前記基準材の校正用の計測値との比に、前記基準材の既知の厚みを乗算することにより、前記ワーク又は前記基材の校正用の厚みを求め、
前記ワーク又は前記基材の前記実測値と前記ワーク又は前記基材の前記校正用の計測値との比に、前記ワーク又は前記基材の前記校正用の厚みを乗算することにより、前記ワーク又は前記基材の前記ある箇所の最終的な厚みを求める
ことを特徴とする超音波計測方法。
前記基材に前記塗材を塗工する過程で、前記基材の前記ある箇所の最終的な厚みと、前記ワークの前記ある箇所の最終的な厚みを別々に求めておき、前記ワークの前記最終的な厚みから前記基材の前記最終的な厚みを減算することにより、前記ワークの前記ある箇所における前記塗材の厚みを求めることを特徴とする請求項1に記載の超音波計測方法。
第1超音波センサと第2超音波センサとからなる超音波センサ組を備え、長手方向へ走行する帯状の基材の片面若しくは両面に塗材を塗工したワーク又は前記基材の厚み方向の両面に対し、その一方側に前記第1超音波センサを、その他方側に前記第2超音波センサを、それぞれ空気層を介し向い合せて配置し、前記第1超音波センサと前記第2超音波センサとの間で超音波を伝播させることにより、前記ワーク又は前記基材の厚みを計測する超音波計測装置において、
前記超音波センサ組として設けられ、前記ワーク又は前記基材の厚みを実測するために定位置に固定され、前記第1超音波センサと前記第2超音波センサとからなる少なくとも1組の実測用超音波センサ組と、
前記超音波センサ組として前記実測用超音波センサ組とは別に設けられ、前記実測用超音波センサ組による実測値を校正するために前記第1超音波センサと前記第2超音波センサとからなる校正用超音波センサ組と、
前記ワーク又は前記基材の近傍に配置され、前記校正用超音波センサ組により厚みが計測される所定の基準材と、
前記校正用超音波センサ組を前記基準材と前記ワーク又は前記基材との間で移動させるための移動手段と、
前記校正用超音波センサ組を前記移動手段により移動させて前記基準材の厚みと前記ワーク又は前記基材の前記ある箇所の厚みを前記校正用超音波センサ組により校正用として周期的に交互又は順次に計測し、その後、前記ワーク又は前記基材の走行に伴い、前記校正用超音波センサ組により直前に計測された前記ワーク又は前記基材の前記ある箇所の厚みを前記実測用超音波センサ組により実測し、前記校正用超音波センサ組により交互又は順次に計測された校正用の計測値を用いて前記実測用超音波センサ組による前記実測値を補正することにより、前記ワーク又は前記基材の前記ある箇所の最終的な厚みを演算する計測制御手段と
を備え、前記計測制御手段は、前記ワーク又は前記基材の校正用の計測値と前記基準材の校正用の計測値との比に、前記基準材の既知の厚みを乗算することにより、前記ワーク又は前記基材の校正用の厚みを演算し、前記ワーク又は前記基材の実測値と前記ワーク又は前記基材の校正用の計測値との比に、前記ワーク又は前記基材の前記校正用の厚みを乗算することにより、前記ワーク又は前記基材の前記ある箇所の最終的な厚みを演算することを特徴とする超音波計測装置。
前記基材に前記塗材を塗工する過程で、前記計測制御手段は、前記ワークの前記ある箇所の最終的な厚みから、別途に求められた前記基材の前記ある箇所の最終的な厚みを減算することにより、前記ワークの前記ある箇所における前記塗材の厚みを演算することを特徴とする請求項3に記載の超音波計測装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、特許文献1に記載の超音波計測装置では、以下のようなことが考えられた。すなわち、この装置では、超音波送信手段101から計測対象物103へ向けて送信した超音波や、計測対象物103で反射して超音波受信手段102で受信された超音波が、計測対象物103以外の媒質である空気層を伝播する。そのため、空気層の温度が管理されていないと、音に関する抵抗値(音響インピーダンス)が空気層の温度変化によって変化してしまう。空気層により音響インピーダンスが変化すると、空気層を伝播する超音波の波長が変化してしまい、超音波の伝播速度を速度校正手段107で校正しただけでは、結果的に計測対象物103の厚みを正確に計測することができなくなるおそれがある。
【0008】
また、超音波センサの校正が超音波による実測時にリアルタイムに実施されていないと、超音波センサの周囲の雰囲気温度が、校正の実施時と超音波による実測時で大きく異なる場合がある。この場合、例えば、超音波を受信する受信側超音波センサの受信信号強度等が、雰囲気温度の違いによって変化するおそれがある。
【0009】
その一例として、
図15に、受信側超音波センサにつき、その受信信号強度と雰囲気温度との関係をグラフにより示す。この計測は、同じ周波数帯の受信側超音波センサをサンプル数2とし、
図15では、それぞれセンサA、センサBとした。
図15に示すように、センサA,Bとも、例えば、雰囲気温度が20(℃)近傍のとき、受信信号強度は約825(mV)であったものが、雰囲気温度が23(℃)を超えると、受信信号強度は780(mV)を下回り、3(℃)分の温度上昇変化で受信信号強度が実に5(%)以上低下することがわかる。
【0010】
また、超音波センサは、センサの特性上、超音波を送信又は受信しているときの時間経過に伴って自己発熱する。
図16に、受信側超音波センサにつき、一例として、自己発熱と受信信号強度との関係をグラフにより示す。
図16に示すように、受信側超音波センサでは、その作動開始時(t=0(min))に、例えば、センサの温度が約28.5(℃)であったものが、作動開始後の所定時間経過時(t=120(min))には、センサ自体の発熱により、約30.7(℃)まで上昇した。その一方で、作動開始後2時間が経過する間に、受信信号強度は、約76200(mV)から約72300(mV)までと約5(%)も低下することがわかる。
【0011】
このように、同じ受信側超音波センサについて、その雰囲気温度が、校正の実施時と超音波による実測時とで異なる場合のほか、超音波センサの自己発熱によっても超音波の受信信号強度が変化してしまい、受信側超音波センサにより受信する超音波の波長の大きさが変化してしまう。ここで、超音波による計測は、受信側超音波センサにより受信する超音波の波長の大きさに基づき演算処理される。そのため、たとえ校正を適切に行ったとしても、校正が超音波による実測時に合わせてリアルタイムに実施されていなければ、同じ超音波センサを使用しても、その雰囲気温度の違いや自己発熱に起因して、受信する超音波の波長の大きさが異なり、超音波計測を精度良く行うことができなくなるおそれがある。
【0012】
一方、校正の実施と、超音波による対象物の実測を別々の超音波センサを使用して行う場合には、それら超音波センサの特性を合わせる必要がある。そのために、多くの超音波センサの中から特性が共通する超音波センサを選択しなければならない。しかしながら、特性が共通する超音波センサを、多くのセンサ製品の中から選択する作業は、労力と時間を必要とし、容易なものではなかった。
【0013】
この発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、製造ラインにおいて、長手方向へ走行する帯状の基材の片面若しくは両面に塗材を塗工したワーク又は基材の厚みを、インライン上で高精度に超音波計測すると共に、超音波計測の実施を容易なものにすることを可能とした超音波計測方法及び超音波計測装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、第1超音波センサと第2超音波センサとからなる超音波センサ組を備え、長手方向へ走行する帯状の基材の片面若しくは両面に塗材を塗工したワーク又は基材の厚み方向の両面に対し、その一方側に第1超音波センサを、その他方側に第2超音波センサを、それぞれ空気層を介し向い合せて配置し、第1超音波センサと第2超音波センサとの間で超音波を伝播させることにより、ワーク又は基材の厚みを計測する超音波計測方法であって、超音波センサ組として、ワーク又は基材の厚みを実測するための実測用超音波センサ組と、実測用超音波センサ組とは別に設けられ、実測用超音波センサ組による実測値を校正するための校正用超音波センサ組と、ワーク又は基材の近傍に配置され、校正用超音波センサ組により厚みが計測される所定の基準材とを備える超音波計測方法において、校正用超音波センサ組を移動させて、基準材の厚みとワーク又は基材のある箇所の厚みを校正用超音波センサ組により校正用として周期的に交互又は順次に計測し、その後、ワーク又は基材の走行に伴い、校正用超音波センサ組により直前に計測されたワーク又は基材のある箇所の厚みを実測用超音波センサ組により実測し、
ワーク又は基材の校正用の計測値と基準材の校正用の計測値との比に、基準材の既知の厚みを乗算することにより、ワーク又は基材の校正用の厚みを求め、ワーク又は基材の実測値とワーク又は基材の校正用の計測値との比に、ワーク又は基材の校正用の厚みを乗算することにより、ワーク又は基材のある箇所の最終的な厚みを求めることを趣旨とする。
【0015】
上記発明の構成によれば、校正用超音波センサ組を移動させて、ワーク又は基材の近傍に配置された所定の基準材の厚みとワーク又は基材のある箇所の厚みを校正用超音波センサ組により校正用として周期的に交互又は順次に計測する。これにより、同じ校正用超音波センサ組を使用して、基準材の厚みの校正用の計測値と、ワーク又は基材の厚みの校正用の計測値とが、交互又は順次に得られる。これら校正用の計測値は、基準材とワーク又は基材とが近傍に配置されることから、校正用超音波センサ組による計測に影響のある雰囲気温度などの環境条件が共通する中で得られる。また、同一の校正用超音波センサ組により基準材とワーク又は基材とが計測されるので、それら校正用の計測値から、校正用超音波センサ組の特性の違いが除かれる。従って、例えば、基準材の厚みが既知であれば、基準材の校正用の計測値とワーク又は基材の校正用の計測値との比に、基準材の既知の厚みを乗算することにより、ワーク又は基材の校正用の厚みを求めることができる。その後、ワーク又は基材の走行に伴い、校正用超音波センサ組により直前に計測されたワーク又は基材のある箇所の厚みを実測用超音波センサ組により実測する。そして、校正用超音波センサ組により交互又は順次に計測された校正用の計測値を用いて実測用超音波センサ組による実測値を補正することにより、ワーク又は基材のある箇所の最終的な厚みが求められる。従って、例えば、ワーク又は基材の校正用の計測値とワーク又は基材の実測値との比に、ワーク又は基材の校正用の厚みを乗算することにより、ワーク又は基材のある箇所の最終的な厚みを求めることができる。ここでは、校正用超音波センサ組の特性と実測用超音波センサ組の特性が同一でなくても、それらの特性を合わせる必要がない。
【0018】
上記目的を達成するために、請求項
2に記載の発明は、請求項
1に記載の発明において、基材に塗材を塗工する過程で、基材のある箇所の最終的な厚みと、ワークのある箇所の最終的な厚みを別々に求めておき、ワークの最終的な厚みから基材の最終的な厚みを減算することにより、ワークのある箇所における塗材の厚みを求めることを趣旨とする。
【0019】
上記発明の構成によれば、請求項
1に記載の発明の作用に加え、実測用超音波センサ組による実測値を校正しながら、ワークのある箇所における塗材の厚みが求められる。
【0020】
上記目的を達成するために、請求項
3に記載の発明は、第1超音波センサと第2超音波センサとからなる超音波センサ組を備え、長手方向へ走行する帯状の基材の片面若しくは両面に塗材を塗工したワーク又は基材の厚み方向の両面に対し、その一方側に第1超音波センサを、その他方側に第2超音波センサを、それぞれ空気層を介し向い合せて配置し、第1超音波センサと第2超音波センサとの間で超音波を伝播させることにより、ワーク又は基材の厚みを計測する超音波計測装置において、超音波センサ組として設けられ、ワーク又は基材の厚みを実測するために定位置に固定され、第1超音波センサと第2超音波センサとからなる少なくとも1組の実測用超音波センサ組と、超音波センサ組として実測用超音波センサ組とは別に設けられ、実測用超音波センサ組による実測値を校正するために第1超音波センサと第2超音波センサとからなる校正用超音波センサ組と、ワーク又は基材の近傍に配置され、校正用超音波センサ組により厚みが計測される所定の基準材と、上記校正用超音波センサ組を基準材とワーク又は基材との間で移動させるための移動手段と、校正用超音波センサ組を移動手段により移動させて基準材の厚みとワーク又は基材のある箇所の厚みを校正用超音波センサ組により校正用として周期的に交互又は順次に計測し、その後、ワーク又は基材の走行に伴い、校正用超音波センサ組により直前に計測されたワーク又は基材のある箇所の厚みを実測用超音波センサ組により実測し、校正用超音波センサ組により交互又は順次に計測された校正用の計測値を用いて実測用超音波センサ組による実測値を補正することにより、ワーク又は基材のある箇所の最終的な厚みを演算する計測制御手段とを備え
、計測制御手段は、ワーク又は基材の校正用の計測値と基準材の校正用の計測値との比に、基準材の既知の厚みを乗算することにより、ワーク又は基材の校正用の厚みを演算し、ワーク又は基材の実測値とワーク又は基材の校正用の計測値との比に、ワーク又は基材の校正用の厚みを乗算することにより、ワーク又は基材のある箇所の最終的な厚みを演算することを趣旨とする。
【0021】
上記発明の構成によれば、校正用超音波センサ組、実測用超音波センサ組、移動手段及び計測制御手段を使用して請求項1に記載の超音波計測方法を実施することができる。
【0024】
上記目的を達成するために、請求項
4に記載の発明は、請求項
3に記載の発明において、基材に塗材を塗工する過程で、計測制御手段は、ワークのある箇所の最終的な厚みから、別途に求められた基材のある箇所の最終的な厚みを減算することにより、ワークのある箇所における塗材の厚みを演算することを趣旨とする。
【0025】
上記発明の構成によれば、請求項
3に記載の発明の作用に加え、請求項2に記載の超音波計測方法を実施することができる。
【発明の効果】
【0026】
請求項
1に記載の発明によれば、製造ラインにおいて、長手方向へ走行する帯状の基材の片面若しくは両面に塗材を塗工したワーク又は基材の厚みを、インライン上で高精度に超音波計測することができると共に、超音波計測の実施を容易なものにすることができる。
【0027】
請求項
2に記載の発明によれば、請求項
1に記載の発明の効果に加え、ワークのある箇所における塗材の厚みを精度よく求めることができる。
【0028】
請求項
3に記載の発明によれば、製造ラインにおいて、長手方向へ走行する帯状の基材の片面若しくは両面に塗材を塗工したワーク又は基材の厚みを、インライン上で高精度に超音波計測することができると共に、超音波計測の実施を容易なものにすることができる。
【0029】
請求項
4に記載の発明によれば、請求項
3に記載の発明の効果に加え、ワークのある箇所における塗材の厚みを精度よく求めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の超音波計測方法及び超音波計測装置を、電池に使用される電極の製造ラインにおける超音波計測に具体化した一実施形態につき図面を参照して詳細に説明する。
【0032】
図4に、この実施形態における電極製造ラインで製造される電極1をその幅方向Y(
図4の左右方向)に切断して断面図により示す。
図4に示すように、この電極1は、帯状の基材としての金属箔2と、その金属箔2の一方の面(A面)2a及び他方の面(B面)2bのそれぞれに塗工された塗材としての電極ペースト3A,3Bとを含む。この電極1は、後述するように金属箔2のA面2a及びB面2bに電極ペースト3A,3Bを塗工し、それらを乾燥することにより製造される。この実施形態の超音波計測方法及び超音波計測装置は、電極製造ラインにおいて電極製品の品質検査のために使用される。すなわち、この超音波計測方法及び超音波計測装置は、電極1の製造過程において、電極ペースト3A,3Bが塗工される前の金属箔2、金属箔2の片面(A面)2aに電極ペースト3Aが塗工された中間製造物(ワーク)、金属箔2の両面(A面及びB面)2a,2bに電極ペースト3A,3Bが塗工された最終製造物(ワーク)それぞれの目付け量(厚み)を計測するために使用される。
【0033】
この実施形態の電極1は、例えば、電気自動車やハイブリッド自動車の電源となる二次電池に使用される。ここで、金属箔2の材料として、例えば、Al,Cu等が使用される。金属箔2の厚みは、例えば「20(μm)」程度である。
図4に示すように、金属箔2に塗工される電極ペースト3A,3Bの厚みTpA,TpBは、例えば「40〜50(μm)」程度となる。電極1は、その幅方向Yの両側縁に、電極ペースト3A,3Bが塗工されない未塗工部4を含む。
【0034】
図1に、電極製造ラインを概略構成図により示す。
図1に示すように、電極製造ラインは、複数の工程部11,12,13,14,15,16,17,18,19,20を含む。各工程部11〜20は、ボックス21A,21B,21C,21D,21E,21F,21G,21H,21I,21Jによりそれぞれ覆われて構成される。各ボックス21A〜21Jは、帯状の金属箔2から電極1が製造されるまでの間で、金属箔2とワーク6が連続的に走行しながら貫通できるように構成される。電極製造ラインは、その上流部から下流部へ順に配置された、金属箔繰り出し部11、前段厚み計測部12、A面塗工部13、A面乾燥部14、中段厚み計測部15、ワーク反転部16、B面塗工部17、B面乾燥部18、後段厚み計測部19及び電極巻き取り部20を含む。
【0035】
金属箔繰り出し部11は、帯状の金属箔2を巻き貯めた金属箔ロール22を含み、その金属箔ロール22から帯状の金属箔2が一方向へ繰り出されるようになっている。
【0036】
前段厚み計測部12は、第1超音波計測装置23を含み、金属箔繰り出し部11から繰り出された金属箔2の厚みを、その第1超音波計測装置23により計測するようになっている。
【0037】
A面塗工部13は、電極ペースト3Aを噴射する第1ノズル24を含み、前段厚み計測部12を通過した金属箔2のA面2a上に、第1ノズル24から電極ペースト3Aを連続的に吹き付けて塗工するようになっている。
【0038】
A面乾燥部14は、電気ヒータよりなる第1ワークヒータ25を含み、A面塗工部13にて塗工された電極ペースト3Aを第1ワークヒータ25により連続的に加熱して乾燥させるようになっている。
【0039】
中段厚み計測部15は、第2超音波計測装置26を含み、A面乾燥部14で乾燥させたワーク6の厚み(金属箔2と電極ペースト3Aとの厚み)を、その第2超音波計測装置26により計測するようになっている。
【0040】
ワーク反転部16は、一対をなす反転ローラ27,28を含み、金属箔2のA面2aとB面2bの天地を反転ローラ27,28により反転させ、B面2bを上に向けて繰り出すようになっている。
【0041】
B面塗工部17は、電極ペースト3Bを噴射する第2ノズル29を含み、ワーク反転部16から繰り出されたワーク6の金属箔2のB面2b上に、第2ノズル29から電極ペースト3Bを連続的に吹き付けて塗工するようになっている。
【0042】
B面乾燥部18は、電気ヒータよりなる第2ワークヒータ30を含み、B面塗工部17にて塗工された電極ペースト3Bを第2ワークヒータ30により連続的に加熱して乾燥させるようになっている。
【0043】
後段厚み計測部19は、第3超音波計測装置31を含み、B面乾燥部18で乾燥させたワーク6の厚み(金属箔2と電極ペースト3A,3Bとの厚み)を、その第3超音波計測装置31により計測するようになっている。
【0044】
電極巻き取り部20は、電極ロール32を含み、後段計測部19を通過したワーク6を製品である電極1としてその電極ロール32に巻き取るようになっている。
【0045】
上記したように、この実施形態の電極製造ラインでは、その上流部から下流部にかけて、金属箔2のA面2aとB面2bに電極ペースト3A,3Bを塗工して乾燥させ、その過程で、金属箔2の厚み、金属箔2とそのA面2aに塗工された電極ペースト3Aとの厚み、金属箔2とそのA面2a及びB面2bに塗工された電極ペースト3A,3Bとの厚みを、それぞれ前段厚み計測部12、中段厚み計測部15及び後段厚み計測部19にて順次計測するようになっている。
【0046】
次に、各厚み計測部12,15,19について説明する。ここで、各厚み計測部12,15,19は、基本的にそれぞれ同じ構成を備えることから、以下には、後段厚み計測部19を代表的に説明する。
図2に、後段厚み計測部19の概略構成を平面図により示す。
図3に、後段厚み計測部19の概略構成を側面図により示す。
【0047】
図2,3に示すように、後段厚み計測部19のボックス21Iは、第1室35と第2室36に分かれる。ボックス21Iの前後及び各室35,36の中には、ワーク6にテンションを与えながらワーク6を一方向へ送るための複数の送りローラ37,38,39,40が設けられる。ボックス21Iの前壁21a、後壁21b及び仕切壁21cには、それぞれ帯状のワーク6の通過を許容する通し口21d,21e,21fが形成される。
【0048】
ボックス21Iの第1室35には、第1超音波センサ41A,42Aと第2超音波センサ41B,42Bとからなる超音波センサ組として、第1実測用超音波センサ組41と第2実測用超音波センサ組42が設けられる。これら実測用超音波センサ組41,42は、金属箔2のA面2a及びB面2bに電極ペースト3A,3Bを塗工したワーク6の厚みを実測するために、それぞれ定まった位置に固定される。この実施形態で、各実測用超音波センサ組41,42の第1超音波センサ41A,42Aは、超音波を受信するセンサとして構成され、受信信号を増幅するためのアンプ44を備える。一方、第2超音波センサ41B,42Bは、超音波を送信するセンサとして構成される。
【0049】
図5に、ワーク6の幅方向Yにおける第1及び第2の実測用超音波センサ組41,42の配置を概略構成図により示す。
図2,3,5に示すように、各実測用超音波センサ組41,42は、ワーク6の幅方向Yに沿って並び、かつ、ワーク6の中央と各側縁から同じ距離だけ離れて配置される。つまり、ワーク6を幅方向Yの中央で二つに切断した場合に、その二分されたワークの中央に対応するように各実測用超音波センサ組41,42が配置される。各実測用超音波センサ組41,42を構成する第1超音波センサ41A,42Aと第2超音波センサ41B,42Bは、ワーク6の厚み方向Zの両面側にて、その一方側に第1超音波センサ41A,42Aが、その他方側に第2超音波センサ41B,42Bがそれぞれ空気層を介し向い合せて配置される。そして、ワーク6を間に挟んで、第1超音波センサ41A,42Aと第2超音波センサ41B,42Bとの間で超音波を伝播させることにより、ワーク6の目付け量(厚み)を計測するようになっている。2つの第1超音波センサ41A,42Aは、ボックス21Iに固定された上側の支持フレーム45Aに固定され、同じく、2つの第2超音波センサ41B,42Bは、ボックス21Iに固定された下側の支持フレーム45Bに固定される。
【0050】
ワーク6の走行方向Xにおいて、第1室35よりも上流側に位置する第2室36には、各実測用超音波センサ組41,42とは別に、第1超音波センサ43Aと第2超音波センサ43Bとからなる校正用超音波センサ組43が設けられる。この校正用超音波センサ組43は、各実測用超音波センサ組41,42の実測値を校正するために設けられる。
【0051】
図6に、ワーク6の幅方向Yにおける校正用超音波センサ組43の配置を概略構成図により示す。
図2,3,6に示すように、ワーク6の幅方向Yの一側方には、ワーク6と同一の平面上に、所定のシート状の基準材7が配置される。校正用超音波センサ組43を構成する第1超音波センサ43Aと第2超音波センサ43Bは、基準材7及びワーク6の厚み方向Zの両面側にて、その一方側に第1超音波センサ43Aが、その他方側に第2超音波センサ43Bがそれぞれ空気層を介し向い合せて配置される。この校正用超音波センサ組43を、基準材7とワーク6との間でワーク6の幅方向Yへ移動させるために、移動手段としての移動機構46が設けられる。この移動機構46は、ワーク6の厚み方向Zの一方側及び他方側に固定された一対の案内レール46A,46Bを備える。校正用超音波センサ組43を構成する第1超音波センサ43Aと第2超音波センサ43Bは、それぞれ各案内レール46A,46Bにブラケット47を介して支持される。各ブラケット47は、駆動源(図示略)により案内レール46A,46Bに沿って移動できるように構成される。校正用超音波センサ組43は、
図6に実線で示すように基準材7を挟んで向い合せとなる初期位置P0と、
図6に2点鎖線で示すようにワーク6を挟んで向い合わせとなる第1計測位置P1及び第2計測位置P2とへ順次移動可能になっている。
【0052】
この実施形態で、基準材7は、ボックス21Iに固定された固定枠48に支持される。固定枠48は、上下の挟み板48A,48Bを含み、基準材7はこれら挟み板48A,48Bに挟まれて水平に支持される。挟み板48A,48Bの中央には、超音波を基準材7に当てるために基準材7を露出させる通し孔48aが形成される。基準材7は、例えば、PETフィルム(ポリエチレンテレフタレート製フィルム)や、その他の高分子フィルム等、経時的に酸化せず、重量変化のない材質により、ワーク6と同程度の厚みや密度を有する材料で形成される。この基準材7の厚みは、予めスケール等を使用して直接計測されて既知となっている。
【0053】
この実施形態で、各超音波センサ組41〜43を構成する第1超音波センサ41A,42A,43A及び第2超音波センサ41B,42B,43Bとして、例えば、車両用バックソナー等の障害物センサに使われる汎用性の高い超音波センサが使われる。これらのセンサでは、例えば「40kHz」程度の超音波が使われる。
【0054】
上記したように第1及び第2の実測用超音波センサ組41,42、校正用超音波センサ組43及び移動機構46により、後段厚み計測部19における第3超音波計測装置31が構成される。
【0055】
図7に、第3超音波計測装置31の電気的構成をブロック図により示す。
図7に示すように、この第3超音波計測装置31は、コントローラ51と、各超音波センサ組41,42,43を構成する第1超音波センサ41A,42A,43A及び第2超音波センサ41B,42B,43Bと、それら超音波センサ41A,42A,43A,41B,42B,43Bへそれぞれ超音波を発信する第1発振器52、第2発振器53、第3発振器54、第4発振器55、第5発振器56及び第6発振器57とを備える。各発振器52〜57は、コントローラ51に接続される。この他、コントローラ51には、移動機構46、キーボード58及びモニタ59が接続される。コントローラ51は、中央処理装置(CPU)や各種メモリ、入出力ポート等を含んで構成される。コントローラ51は、基準材7やワーク6の厚みを計測するために、所定の制御プログラムに基づいて各発振器52〜57及び移動機構46を制御するようになっている。また、この第3超音波計測装置31で、コントローラ51は、各超音波センサ組41〜43の計測値に基づいて、金属箔2と金属箔2のA面2a及びB面2bに塗工された両電極ペースト3A,3Bとの厚み実測し、補正演算するようになっている。これに対し、他の第1超音波計測装置23では、金属箔2の厚みを実測し、補正演算するようになっている。第2超音波計測装置26では、金属箔2と金属箔2のA面2aに塗工された電極ペースト3Aとの厚みを実測し、補正演算するようになっている。また、この第3超音波計測装置31のコントローラ51は、上記のように第1〜第3の超音波計測装置23,26,31により補正演算された各種厚みに基づき、金属箔2のA面2aに塗工された電極ペースト3Aの厚み、金属箔2のB面2bに塗工された電極ペースト3Bの厚みをそれぞれ演算するようになっている。
【0056】
各発振器52〜57は、電圧を印加することで各超音波センサ41A,42A,43A,41B,42B,43Bを超音波振動させる発振回路と、同センサ41A,42A,43A,41B,42B,43Bで受信した超音波振動を電圧信号に変換する変換回路とを含む。コントローラ51は、各発振器52〜57を介して各超音波センサ41A,42A,43A,41B,42B,43Bに対し、超音波の送受信を制御する。
【0057】
この実施形態で、コントローラ51は、校正用超音波センサ組43により計測した基準材7の計測値、校正用超音波センサ組43により第1計測位置P1及び第2計測位置P2にて計測したワーク6の計測値に基づき、ある箇所(第1抽出箇所及び第2抽出箇所)におけるワーク6の校正用の厚みを演算する。また、コントローラ51は、第1及び第2の実測用超音波センサ組41,42により第1抽出箇所及び第2抽出箇所にて実測したワーク6の厚みを、校正用の厚みに基づいて補正演算することにより、第1抽出箇所及び第2抽出箇所における最終的なワーク6の厚みを演算するようになっている。
【0058】
ここで、ワーク6の厚みが計測されるある箇所(第1抽出箇所及び第2抽出箇所)は、ワーク6の走行速度に応じて任意に設定されるようになっている。この実施形態では、前段厚み計測部12にて最初に金属箔2について計測されたある箇所が、その後、中段厚み計測部15及び後段厚み計測部19にて同様にワーク6について計測されるようになっている。これは、金属箔2及びワーク6の走行速度が決まれば、ある箇所の各段厚み計測部12,15,19への到達時刻が定まり、それに合わせて各超音波計測装置23,26,31により同じある箇所を特定して計測できるからである。従って、ワーク6の走行に伴い、複数のある箇所(第1抽出箇所及び第2抽出箇所)が、各超音波計測装置23,26,31により順次計測されることになる。
【0059】
この実施形態では、コントローラ51は、校正用超音波センサ組43を移動機構46により初期位置P0から第1計測位置P1と第2計測位置P2へ平行に移動させて、基準材7の厚みとワーク6の第1抽出箇所及び第2抽出箇所の厚みとを、それぞれ校正用超音波センサ組43により校正用として周期的に順次に計測する。その後、コントローラ51は、ワーク6の走行に伴い、校正用超音波センサ組43により直前に計測されたワーク6の第1抽出箇所及び第2抽出箇所の厚みを各実測用超音波センサ組41,42によりそれぞれ実測する。そして、コントローラ51は、校正用超音波センサ組43により直前に順次に計測された校正用の計測値を用いて実測用超音波センサ組41,42による実測値を補正することにより、ワーク6の第1抽出箇所及び第2抽出箇所における最終的な厚みを演算する。この実施形態で、コントローラ51は、本発明の計測制御手段に相当する。
【0060】
次に、コントローラ51が実行する、超音波計測に関する制御プログラムについて説明する。
図8に、校正用超音波センサ組43を使用して実行される計測制御プログラムの内容をフローチャートにより示す。
【0061】
処理がこのルーチンへ移行すると、コントローラ51は、ステップ100で、初期位置P0にて校正用超音波センサ組43により基準材7の厚み(基準厚み)を計測する。コントローラ51は、この基準厚みを計測したら、その計測値Skをメモリに記憶させる。
【0062】
次に、ステップ110で、コントローラ51は、移動機構46により校正用超音波センサ組43を第1計測位置P1へ移動させる。
【0063】
次に、ステップ120で、コントローラ51は、第1計測位置P1で校正用超音波センサ組43によりワーク6の第1抽出箇所における厚み(第1校正厚み)を計測する。コントローラ51は、この第1校正厚みを計測したら、その計測値Sx1をメモリに記憶させる。
【0064】
次に、ステップ130で、コントローラ51は、基準厚みの計測値Skと第1校正厚みの計測値Sx1に基づき、ワーク6の未知の第1校正厚みMx1を、以下の(式1)により演算する。コントローラ51は、演算後にこの第1校正厚みMx1をメモリに記憶させる。
Mx1=Mk*
Sx1/Sk ・・・(式1)
ここで、「Mk」は、基準材7の既知の(目付け量)厚みを意味する。
【0065】
次に、ステップ140で、コントローラ51は、移動機構46により校正用超音波センサ組43を第2計測位置P2へ移動させる。
【0066】
次に、ステップ150で、コントローラ51は、第2計測位置P2にて校正用超音波センサ組43によりワーク6の第2抽出箇所における厚み(第2校正厚み)を計測する。コントローラ51は、この第2校正厚みを計測したら、その計測値Sx2をメモリに記憶させる。
【0067】
次に、ステップ160で、コントローラ51は、基準厚みの計測値Skとワーク6の第2校正厚みの計測値Sx2に基づき、ワーク6の未知の第2校正厚みMx2を、以下の(式2)により演算する。コントローラ51は、演算後にこの第2校正厚みMx2をメモリに記憶させる。
Mx2=Mk*
Sx2/Sk ・・・(式2)
【0068】
その後、ステップ170で、コントローラ51は、移動機構46により校正用超音波センサ組43を基準材7に対応する初期位置P0へ移動させた後、処理をステップ100へ戻す。
【0069】
このように、コントローラ51は、ステップ100〜ステップ170の処理を、ワーク6の走行速度に合わせて繰り返す。すなわち、ワーク6の走行速度が速くなれば、それに合わせてステップ100〜ステップ170の処理速度を速めることになる。
【0070】
図9に、第1及び第2の実測用超音波センサ組41,42を使用して実行される計測制御プログラムの内容をフローチャートにより示す。
【0071】
処理がこのルーチンへ移行すると、コントローラ51は、ステップ200で、第1抽出箇所が到達するのを待つ。すなわち、直前に校正用超音波センサ組43により計測された第1抽出箇所が、第1実測用超音波センサ組41に対応する位置に到達したか否かを判断する。この判断は、ワーク6の走行速度と基準位置を監視することで行うことができる。
【0072】
第1抽出箇所が到達すると、ステップ210で、コントローラ51は、第1実測用超音波センサ組41により第1抽出箇所のワーク6の厚み(第1実測厚み)を実測する。コントローラ51は、実測後にこの第1実測厚みの実測値SRx1をメモリに記憶させる。
【0073】
次に、ステップ220で、コントローラ51は、以下の(式3)により、第1校正用厚みの計測値Sx1、演算された第1校正用厚みMx1に基づき、第1実測厚みの実測値SRx1を補正して最終的な第1実測厚みMRx1を演算する。コントローラ51は、演算後にこの第1実測厚みMRx1をメモリに記憶させる。
MRx1=Mx1*SRx1/Sx1 ・・・(式3)
【0074】
次に、ステップ230で、コントローラ51は、第2抽出箇所が到達するのを待つ。すなわち、直前に校正用超音波センサ組43により計測された第2抽出箇所が、第2実測用超音波センサ組42に対応する位置に到達したか否かを判断する。
【0075】
第2抽出箇所が到達すると、ステップ240で、コントローラ51は、第2実測用超音波センサ組42により第2抽出箇所のワーク6の厚み(第2実測厚み)を実測する。コントローラ51は、実測後にこの第2実測厚みの実測値SRx2をメモリに記憶させる。
【0076】
そして、ステップ250で、コントローラ51は、以下の(式4)により、第2校正用厚みの計測値Sx2、演算された第2校正用厚みMx2に基づき、第2実測厚みの実測SRx2を補正して最終的な第2実測厚みMRx2を演算する。コントローラ51は、演算後にこの第2実測厚みMRx2をメモリに記憶させる。その後、コントローラ51は、処理をステップ200へ戻す。
MRx2=Mx2*SRx2/Sx2 ・・・(式4)
【0077】
このように、コントローラ51は、ステップ200〜ステップ250の処理を、ワークの走行速度に合わせて繰り返す。
【0078】
この実施形態では、上記各計測制御プログラムを実行することにより、次のような超音波計測方法を実施することができる。すなわち、校正用超音波センサ組43を移動させて、ワーク6又は金属箔2の近傍に配置された所定の基準材7の厚みとワーク6又は金属箔2のある箇所(第1抽出箇所及び第2抽出箇所)の厚みを校正用超音波センサ組43により校正用として周期的に交互又は順次に計測する。その後、ワーク6又は金属箔2の走行に伴い、校正用超音波センサ組43により直前に計測されたワーク6又は金属箔2のある箇所(第1抽出箇所及び第2抽出箇所)の厚みを各実測用超音波センサ組41,42により実測する。そして、交互又は順次に計測された校正用の計測値を用いて各実測用超音波センサ組41,42による実測値を補正することにより、ワーク6又は金属箔2のある箇所(第1抽出箇所及び第2抽出箇所)における最終的な厚みを求める。
【0079】
図10(a)〜(c)に、後段厚み計測部19における校正用超音波センサ組43の位置変化を平面図により示す。ワーク6のある箇所(第1抽出箇所及び第2抽出箇所)の厚みを計測するために、先ず、
図10(a)に示すように、校正用超音波センサ組43を初期位置P0に配置して校正を行う。すなわち、校正用超音波センサ組43により基準材7の厚みを計測する。
【0080】
次に、
図10(b)に示すように、移動機構46により校正用超音波センサ組43を第1計測位置P1へ移動させて、その計測位置P1にて校正用超音波センサ組43によりワーク6の第1抽出箇所の厚みを計測する。この第1抽出箇所は、その後にワーク6が走行することで、第1実測用超音波センサ組41の位置に到達することになる。この到達のときに、第1実測用超音波センサ組41が、その第1抽出箇所の厚みを再び計測(実測)することになる。
【0081】
次に、
図10(c)に示すように、移動機構46により校正用超音波センサ組43を第2計測位置P2へ更に移動させて、その計測位置P2にて校正用超音波センサ組43によりワーク6の第2抽出箇所の厚みを計測する。この第2抽出箇所は、その後にワーク6が走行することで、第2実測用超音波センサ組42の位置に到達することになる。この到達のときに、第2実測用超音波センサ組42が、その第2抽出箇所の厚みを再び計測(実測)することになる。
【0082】
その後、校正用超音波センサ組43を、
図10(c)に示す第2計測位置P2から、
図10(a)に示す初期位置P0へ戻す。そして、
図10(a)に示す初期位置P0での計測、
図10(b)に示す第1計測位置P1での計測、
図10(c)に示す第2計測位置P2での計測を1サイクルとして、そのサイクルを繰り返す。また、この1サイクルの計測に合わせて、第1及び第2の実測用超音波センサ組41,42により、ワーク6の第1抽出箇所及び第2抽出箇所の厚みをそれぞれ実測する。
【0083】
このように校正用超音波センサ組43により基準材7とワーク6の厚みを計測し、2つの実測用超音波センサ組41,42によりワーク6の厚みを実測し、それら計測値及び実測値からワーク6の第1抽出箇所及び第2抽出箇所の最終的な厚みを演算する。このような一連の計測と演算を、ワーク6の走行速度に合わせて周期的に繰り返す。
【0084】
図11に、金属箔2のA面2a及びB面2bに塗工された電極ペースト3A,3Bそれぞれの(目付け量)厚みを演算するための演算プログラムの内容をフローチャートにより示す。この演算プログラムは、後段厚み計測部19の第3超音波計測装置31のみにてコントローラ51により演算される。
【0085】
処理がこのルーチンへ移動すると、コントローラ51は、ステップ300で、第1抽出箇所における金属箔2のA面2aの電極ペースト3Aの厚みTpA1を演算する。この厚みTpA1は、以下の(式5)に示すように、中段厚み計測部15で計測され演算された第1抽出箇所におけるワーク6の第1実測厚みMRx1(m)から、前段厚み計測部12で計測され演算された第1抽出箇所におけるワーク6(金属箔2)の第1実測厚みMRx1(f)を減算することにより求めることができる。
TpA1=MRx1(m)−MRx1(f) ・・・(式5)
【0086】
次に、ステップ310で、コントローラ51は、第1抽出箇所における金属箔2のB面2bの電極ペースト3Bの厚みTpB1を演算する。この厚みTpB1は、以下の(式6)に示すように、後段厚み計測部19で計測され演算された第1抽出箇所でのワーク6の第1実測厚みMRx1(l)から、中段厚み計測部15で計測され演算された第1抽出箇所でのワーク6の第1実測厚みMRx1(m)を減算することにより求めることができる。
TpB1=MRx1(l)−MRx1(m) ・・・(式6)
【0087】
次に、ステップ320で、コントローラ51は、第2抽出箇所における金属箔2のA面2aの電極ペースト3Aの厚みTpA2を演算する。この厚みTpA2は、以下の(式7)に示すように、中段厚み計測部15で計測され演算された第2抽出箇所でのワーク6の第2実測厚みMRx2(m)から、前段厚み計測部12で計測され演算された第2抽出箇所でのワーク6(金属箔2)の第2実測厚みMRx2(f)を減算することにより求めることができる。
TpA2=MRx2(m)−MRx2(f) ・・・(式7)
【0088】
次に、ステップ330で、コントローラ51は、第2抽出箇所における金属箔2のB面2aの電極ペースト3Bの厚みTpB2を演算する。この厚みTpB2は、以下の(式8)に示すように、後段厚み計測部19で計測され演算された第2抽出箇所でのワーク6の第2実測厚みMRx2(l)から、中段厚み計測部15で計測され演算された第2抽出箇所でのワーク6の第2実測厚みMRx2(m)を減算することにより求めることができる。
TpB2=MRx2(l)−MRx2(m) ・・・(式8)
【0089】
コントローラ51は、ワーク6の走行に合わせて上記ステップ300〜ステップ330の処理を繰り返すことにより、長尺なワーク6につき、その走行方向Xに沿った複数の第1抽出箇所及び第2抽出箇所におけるA面2a及びB面2bの電極ペースト3A,3Bの厚みを求めることができる。この厚みを監視することで、電極製造ラインで製造される電極1の品質管理を行うことができる。
【0090】
以上説明したこの実施形態の超音波計測方法によれば、中段厚み計測部15及び後段厚み計測部19では、校正用超音波センサ組43を移動させて、ワーク6の近傍に配置された所定の基準材7の厚みとワーク6のある箇所(第1抽出箇所及び第2抽出箇所)の厚みを校正用超音波センサ組43により校正用として周期的に順次に計測する。これにより、同じ校正用超音波センサ組43を使用して、基準材7の厚み(基準厚み)の校正用の計測値Skと、ワーク6の厚み(第1校正厚み、第2校正厚み)の校正用の計測値Sx1,Sx2とが順次に得られる。これら校正用の計測値Sk,Sx1,Sx2は、基準材7とワーク6とが近傍に配置されることから、校正用超音波センサ組43による計測に影響のある雰囲気温度や気圧などの環境条件が共通する中で得られる。また、同一の校正用超音波センサ組43により基準材7とワーク6とが計測されるので、それら校正用の計測値Sk,Sx1,Sx2から、校正用超音波センサ組43の特性の違いが除かれる。
【0091】
同様に、前段厚み計測部12では、校正用超音波センサ組43を移動させて、金属箔2の近傍に配置された所定の基準材7の厚みと金属箔2のある箇所(第1抽出箇所及び第2抽出箇所)の厚みを校正用超音波センサ組43により校正用として周期的に順次に計測する。これにより、同じ校正用超音波センサ組43を使用して、基準材7の厚み(基準厚み)の校正用の計測値Skと、金属箔2の厚み(第1校正厚み、第2校正厚み)の校正用の計測値Sx1,Sx2とが順次に得られる。これら校正用の計測値Sk,Sx1,Sx2は、基準材7と金属箔2とが近傍に配置されることから、校正用超音波センサ組43による計測に影響のある雰囲気温度や気圧などの環境条件が共通する中で得られる。また、同一の校正用超音波センサ組43により基準材7と金属箔2とが計測されるので、それら校正用の計測値Sk,Sx1,Sx2から、校正用超音波センサ組43の特性の違いが除かれる。
【0092】
従って、この実施形態では、各段の厚み計測部12,15,19において、基準材7の校正用(基準厚み)の計測値Skとワーク6又は金属箔2の校正用(第1校正厚み、第2校正厚み)の計測値Sx1,Sx2との比に、基準材7の既知の厚みMkを乗算することにより、ワーク6又は金属箔2の校正用の厚み(第1校正厚みMx1、第2校正厚みMx2)を求めることができる。
【0093】
その後、各段の厚み計測部12,15,19では、ワーク6又は金属箔2の走行に伴い、校正用超音波センサ組43により直前に計測されたワーク6又は金属箔2のある箇所(第1抽出箇所及び第2抽出箇所)の厚みを実測用超音波センサ組41,42により実測する。そして、校正用超音波センサ組43により順次に計測された校正用の計測値Sk,Sx1,Sx2を用いて実測用超音波センサ組41,42による実測値SRx1,SRx2を補正することにより、ワーク6又は金属箔2のある箇所(第1抽出箇所及び第2抽出箇所)における最終的な厚み(第1実測厚みMRx1、第2実測厚みMRx2)が求められる。
【0094】
従って、この実施形態では、各段の厚み計測部12,15,19にて、ワーク6又は金属箔2の校正用の計測値Sx1,Sx2とワーク6又は金属箔2の実測値SRx1,SRx2との比に、ワーク6又は金属箔2の校正用の厚み(第1校正厚みMx1、第2校正厚みMx2)を乗算することにより、ワーク6又は金属箔2のある箇所(第1抽出箇所及び第2抽出箇所)の最終的な厚み(第1実測厚みMRx1、第2実測厚みMRx2)を求めることができる。ここでは、校正用超音波センサ組43の特性と実測用超音波センサ組41,42の特性が同一でなくても、それらの特性を合わせる必要がない。すなわち、互いに特性が共通する校正用超音波センサ組43及び実測用超音波センサ組41,42を、多くのセンサ製品の中から選択する必要がなく、その選択作業のために労力や時間をかける必要がない。
【0095】
この結果、電極1の製造ラインにおいて、長手方向へ走行する帯状の金属箔2の片面若しくは両面に電極ペースト3A,3Bを塗工したワーク6又は金属箔2の厚みを、インライン上で高精度に計測することができる。また、上記した電極製造ラインにおいて、ワーク6又は金属箔2の厚みの計測の実施や各超音波計測装置23,26,31のメンテナンスを容易なものにすることができる。
【0096】
ここで、上記したように、空気層を伝播する超音波を用いてワーク6(金属箔2)及び基準材7を介して伝達された超音波のレベルの比に基準材7の既知の目付け量(厚み)を乗算することにより、ワーク6(金属箔2)の厚みを演算することができる。その前提条件として、本来は、複数の超音波センサ組41〜43(超音波センサ)の特性(温度による受信・送信の信号特性)がほぼ同一で、計測時のセンサ周りの雰囲気温度と、電極や基準材の温度がほぼ同一であるときに、以下の(式9)の条件が成立する。
Mx=Mk*Sx/Sk ・・・(式9)
ここで、「Mx」は求める厚み、「Mk」は基準材7の既知の厚み、「Sx」はワーク6(金属箔2)の計測値、「Sk」は基準材7の計測値を意味する。
【0097】
上記(式9)により、キャリブレーション(校正)のための基準材7の重量と面積(目付け量(厚み))「Mk」と、ワーク6(金属箔2)の超音波による計測値「Sx」を高精度に把握することができれば、ワーク6(金属箔2)の未知の目付け量(厚み)「Mx」を高精度に演算することができる。また、校正の実施と、ワーク6(金属箔2)の超音波による実測を同時に常時行えば、各超音波センサ組41〜43(超音波センサ)の周囲の雰囲気温度や雰囲気気圧による超音波計測の精度低下を排除することができる。
【0098】
ここで、本願出願人が実施する従前の超音波計測装置と超音波計測方法について説明する。
図12に、従前の超音波計測装置の概略構成を平面図により示す。
図13に、
図12に示す装置の一部機構の動きのみを平面図により示す。この超音波計測装置は、ワーク6が通過するボックス81を備え、ボックス81の前後と中には、ワーク6を案内する送りローラ82,83,84,85が設けられる。ボックス81の中には、ワーク6の幅方向Yの両側縁に隣接して第1基準材86と第2基準材87が、ワーク6と同一の平面内に配置される。また、ボックス81の中には、第1超音波センサ組88、第2超音波センサ組89及び第3超音波センサ組90が設けられる。各超音波センサ組88〜90は、それぞれ第1超音波センサ及び第2超音波センサにより構成される。第1超音波センサ組88は、アーム状の第1移動機構91により、ワーク6に対応する第1計測位置(
図12に参照)と、第1基準材86に対応する第1初期位置(
図13参照)との間で切り替え配置可能となっている。第2超音波センサ組89と第3超音波センサ組90は、V字形の第2移動機構92の両端にそれぞれ固定され、第2移動機構92により、第2超音波センサ組89がワーク6に対応し、第3超音波センサ組90が第2基準材87に対応する第2計測位置(
図12参照)と、第2超音波センサ組89が第2基準材87に対応し、第3超音波センサ組90が第2基準材87にもワーク6にも対応しない第2初期位置(
図13参照)との間で切り替え配置可能となっている。
【0099】
上記した超音波計測装置を使用したワーク6の厚み計測は、次のように行われる。先ず、計測開始前には、
図13に示すように、第1超音波センサ組88を第1初期位置に、第2超音波センサ組89及び第3超音波センサ組90を第2初期位置にそれぞれ配置する。この状態で、第1超音波センサ組88により第1基準材86を計測し、第2超音波センサ組89により第2基準材87を計測する。このとき第3超音波センサ組90は、計測を行わない。これにより、第1及び第2の超音波センサ組88,89により、計測開始時点でのボックス81の中の温度及び気圧を反映した基準計測値を得ることができる。
【0100】
その後、計測開始時には、
図12に示すように、第1超音波センサ組88を第1計測位置に、第2超音波センサ組89及び第3超音波センサ組90を第2計測位置にそれぞれ配置する。この状態では、第1超音波センサ組88は、ワーク6の幅方向Yの第1の片側を計測し、第1厚み計測値SFx1を得る。また、第2超音波センサ組89は、ワーク6の幅方向Yの第2の片側を計測し、第2厚み計測値SFx2を得る。第3超音波センサ組90は、第2基準材87を常時計測し、計測開始からの第2基準材87の目付け量(厚み)の変化を連続的に計測し、基準厚み計測値SFkとその変動値ΔSFkを得る。
【0101】
これにより、ワーク6の第1の片側の厚みMFx1及び第2の片側の厚みMFx2は、以下の(式10),(式11)により求めることができる。
MFx1=SFx1−ΔSFk ・・・(式10)
MFx2=SFx2−ΔSFk ・・・(式11)
【0102】
ただし、(式10),(式11)が成り立つためには、第1〜第3の超音波センサ組88〜90がすべて周囲の温度や気圧に対して同じ特性を持つことが必要となる。そのために、複数の超音波センサ組の中から特性が共通する3つの超音波センサ組を見つけなければならず、その作業のために時間と労力が必要となる。
【0103】
これに対し、この実施形態の超音波計測方法及び超音波計測装置によれば、上記した構成を採用することにより、各超音波センサ組41〜43(超音波センサ)の特性を共通化するという前提条件を無視して超音波計測を実施することができる。これにより、校正用超音波センサ組43と第1及び第2の実測用超音波センサ組41,42を使用するために、複数の超音波センサ組の中から特性が共通する3つの超音波センサ組を見つける必要がなく、互いに特性の異なる超音波センサ組を使用することができる。このことから、超音波計測の実施やメンテナンスを容易なものにできることがわかる。
【0104】
この実施形態の超音波計測方法によれば、基準材7の校正用の計測値とワーク6又は金属箔2の校正用の計測値との比に、基準材7の既知の厚みを乗算することにより、ワーク6又は金属箔2の校正用の厚みを求める。そして、ワーク6又は金属箔2の校正用の計測値とワーク6又は金属箔2の実測値との比に、ワーク6又は金属箔2の校正用の厚みを乗算することにより、ワーク6又は金属箔2のある箇所の最終的な厚みを求めるようにしている。従って、実測用超音波センサ組41,42による実測値を校正しながら、ワーク6又は金属箔2のある箇所の最終的な厚みが求められる。この結果、電極製造ラインにおいて、長手方向へ走行する帯状の金属箔2の片面若しくは両面に電極ペースト3A,3Bを塗工したワーク6又は金属箔2の厚みを、インライン上で高精度に計測することができると共に、その厚みの計測の実施や各超音波計測装置23,26,31のメンテナンスを容易なものにすることができる。
【0105】
この実施形態では、金属箔2に電極ペースト3A,3Bを塗工する過程で、金属箔2のある箇所の最終的な厚みと、電極ペースト3A,3Bを塗工したワーク6のある箇所の最終的な厚みを別々に求めておく。そして、ワーク6の最終的な厚みから金属箔2の最終的な厚みを減算することにより、ワーク6のある箇所における電極ペースト3A,3Bの厚みを求めるようにしている。従って、実測用超音波センサ組41,42による実測値を校正しながら、ワーク6のある箇所における電極ペースト3A,3Bの厚みが求められる。このため、ワーク6のある箇所における電極ペースト3A,3Bの厚みを精度よく求めることができる。
【0106】
この実施形態の各超音波計測装置23,26,31によれば、校正用超音波センサ組43、各実測用超音波センサ組41,42、移動機構46及びコントローラ51を使用して上記した超音波計測方法を実施することができる。このため、電極1の製造ラインにおいて、長手方向へ走行する帯状の金属箔2の片面若しくは両面に電極ペースト3A,3Bを塗工したワーク6又は金属箔2の厚みを、延いては塗工された電極ペースト3A,3Bの厚みを、インライン上で高精度に計測することができると共に、計測の実施やメンテナンスを容易なものにすることができる。
【0107】
なお、この発明は前記実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱することのない範囲で校正の一部を適宜変更して実施することもできる。
【0108】
(1)前記実施形態では、電池に使用される電極の製造ラインにおける超音波計測に具体化したが、これに限られるものではなく、長手方向へ走行する帯状の基材の片面若しくは両面に塗材を塗工したワーク又は基材の厚みを超音波計測する場合であればよい。
【0109】
(2)前記実施形態では、ワーク6における第1抽出箇所と第2抽出箇所の2つの箇所の目付け量(厚み)を超音波計測するように構成したが、ワークにおける1つの箇所又は3つ以上の箇所の目付け量(厚み)を超音波計測するように構成してもよい。