(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
軸方向の一端に形成され燃料が噴射される噴孔(31)、前記噴孔の周囲に形成される弁座(32)、および前記噴孔への燃料が流通する燃料通路(18)を形成する筒状のハウジング(20)と、
前記ハウジング内に軸方向に往復移動可能に設けられ、前記弁座に当接または離間するとき前記噴孔を開閉するニードル(40)と、
通電されるとき磁界を発生するコイル(38)と、
前記ハウジング内で前記コイルが発生する磁界内に固定される固定コア(35)と、
前記固定コアの前記弁座側に設けられ、前記ニードルとともに前記ハウジングの軸方向に往復移動可能に収容され、前記コイルに通電されるとき前記固定コアの方向に吸引される可動コア(47)と、
を備え、
前記噴孔の外側開口(313)は、前記ハウジングの外壁に形成される凹部(33、53、93)の曲面状の底面(331、531、931)に設けられ、前記外側開口および前記凹部を前記外側開口の中心軸(φ1)に垂直な第1仮想平面(P1)上に投影したとき、前記第1仮想平面上に投影された前記外側開口の開口端上の点(314)から前記第1仮想平面上に投影された前記凹部が有する底面の外周端上の点のうち少なくとも1点(334)までの距離(D1)は、0.2mm以下であることを特徴とする燃料噴射弁。
前記凹部を前記外側開口の中心軸(φ1)に平行な第2仮想平面(P2)上に投影したとき、前記第2仮想平面上に投影された前記凹部が有する底面の外周端上の点(336)から前記第2仮想平面上に投影された前記凹部の開口端上の点(337)までの距離(D2)は、0.01mm以上かつ0.2mm以下であることを特徴とする請求項1に記載の燃料噴射弁。
前記凹部(33、93)は、前記ハウジングの中心軸(φ)に垂直な第3仮想平面上に投影した形状が円形状であることを特徴とする請求項1または2に記載の燃料噴射弁。
前記凹部(53)は、前記ハウジングの中心軸(φ)に垂直な第3仮想平面上に投影した形状が前記外側開口の近傍を通る多辺形状であることを特徴とする請求項1または2に記載の燃料噴射弁。
軸方向の一端に形成され燃料が噴射される噴孔(31)、前記噴孔の周囲に形成される弁座(32)、および前記噴孔への燃料が流通する燃料通路(18)を形成する筒状のハウジング(20)と、
前記ハウジング内に軸方向に往復移動可能に設けられ、前記弁座に当接または離間するとき前記噴孔を開閉するニードル(40)と、
通電されるとき磁界を発生するコイル(38)と、
前記ハウジング内で前記コイルが発生する磁界内に固定される固定コア(35)と、
前記固定コアの前記弁座側に設けられ、前記ニードルとともに前記ハウジングの軸方向に往復移動可能に収容され、前記コイルに通電されるとき前記固定コアの方向に吸引される可動コア(47)と、
を備え、
前記噴孔の外側開口(313)からみて前記ハウジングの軸方向側に凹部(63、73、83)が設けられ、前記ハウジングの曲面状の外壁(303)に形成される前記外側開口および前記凹部を前記外側開口の中心軸(φ1)に垂直な第1仮想平面(P1)上に投影したとき、前記第1仮想平面上に投影された前記外側開口の開口端上の点(314)から前記第1仮想平面上に投影された前記凹部が有する底面の外周端上の点のうち少なくとも1点(634)までの距離(D3)は、0.2mm以下であることを特徴とする燃料噴射弁。
前記凹部を前記外側開口の中心軸(φ1)に平行な第2仮想平面(P2)上に投影したとき、前記第2仮想平面上に投影された前記凹部が有する底面の外周端上の点(636)から前記第2仮想平面上に投影された前記凹部の開口端上の点(637)までの距離(D4)は、0.01mm以上かつ0.2mm以下であることを特徴とする請求項5に記載の燃料噴射弁。
前記凹部(63、83)は、前記ハウジングの中心軸(φ)に垂直な第3仮想平面上に投影した形状が円形状であることを特徴とする請求項5または6に記載の燃料噴射弁。
前記凹部(73)は、前記ハウジングの中心軸(φ)に垂直な第3仮想平面上に投影した形状が前記外側開口の近傍を通る多辺形状であることを特徴とする請求項5または6に記載の燃料噴射弁。
軸方向の一端に形成され燃料が噴射される噴孔(31)、前記噴孔の周囲に形成される弁座(32)、および前記噴孔への燃料が流通する燃料通路(18)を形成する筒状のハウジング(20)と、
前記ハウジング内に軸方向に往復移動可能に設けられ、前記弁座に当接または離間するとき前記噴孔を開閉するニードル(40)と、
通電されるとき磁界を発生するコイル(38)と、
前記ハウジング内で前記コイルが発生する磁界内に固定される固定コア(35)と、
前記固定コアの前記弁座側に設けられ、前記ニードルとともに前記ハウジングの軸方向に往復移動可能に収容され、前記コイルに通電されるとき前記固定コアの方向に吸引される可動コア(47)と、
を備え、
前記噴孔の外側開口(313)は、前記ハウジングの外壁に形成される第1凹部(98)の曲面状の第1底面(981)に設けられ、
前記外側開口および前記第1凹部を前記外側開口の中心軸に垂直な第1仮想平面上に投影したとき、前記第1仮想平面上に投影された前記外側開口の開口端上の点から前記第1仮想平面上に投影された前記第1凹部が有する底面の外周端上の点のうち少なくとも1点までの距離は、0.2mm以下であって、
前記外側開口からみて前記ハウジングの軸方向側には前記第1底面より前記ハウジングの内部側に形成される第2底面(983)を有する第2凹部(99)が設けられることを特徴とする燃料噴射弁。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の複数の実施形態について図面に基づいて説明する。
【0010】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態による燃料噴射弁を
図1〜3に示す。なお、
図1には、ニードル40が弁座32から離間する方向である開弁方向、およびニードル40が弁座32に当接する方向である閉弁方向を図示する。
【0011】
燃料噴射弁1は、例えば図示しない直噴式ガソリンエンジンの燃料噴射装置に用いられ、燃料としてのガソリンをエンジンに噴射供給する。燃料噴射弁1は、ハウジング20、ニードル40、可動コア47、固定コア35、コイル38、スプリング24、26等を備える。
【0012】
ハウジング20は、
図1に示すように、第1筒部材21、第2筒部材22、第3筒部材23および噴射ノズル30から構成されている。第1筒部材21、第2筒部材22および第3筒部材23は、いずれも略円筒状に形成され、第1筒部材21、第2筒部材22、第3筒部材23の順に同軸となるように配置され、互いに接続している。
【0013】
第1筒部材21および第3筒部材23は、例えばフェライト系ステンレス等の磁性材料により形成され、磁気安定化処理が施されている。第1筒部材21および第3筒部材23は、硬度が比較的低い。一方、第2筒部材22は、例えばオーステナイト系ステンレス等の非磁性材料により形成されている。第2筒部材22の硬度は、第1筒部材21および第3筒部材23の硬度よりも高い。
【0014】
噴射ノズル30は、第1筒部材21の第2筒部材22とは反対側の端部に設けられている。噴射ノズル30は、例えばマルテンサイト系ステンレス等の金属により形成されている。噴射ノズル30は、所定の硬度を有するよう焼入れ処理が施されている。
【0015】
噴射ノズル30は、有底筒状に形成されている。噴射ノズル30には、ハウジング20の内部と外部とを連通する噴孔31が複数形成されている。また、噴射ノズル30の内壁の噴孔31の周囲には環状の弁座32が形成されている。噴射ノズル30は第1筒部材21に溶接されている。噴射ノズル30の詳細な構造は、後述する。
【0016】
ニードル40は、例えばマルテンサイト系ステンレス等の金属により形成されている。ニードル40は、所定の硬度を有するよう焼入れ処理が施されている。ニードル40の硬度は、噴射ノズル30の硬度とほぼ同等に設定されている。
【0017】
ニードル40は、ハウジング20内に収容されている。ニードル40は、軸部41、シール部42、および大径部43等から構成されている。軸部41、シール部42、および大径部43は一体に形成される。
【0018】
軸部41は、円筒棒状に形成されている。軸部41のシール部42近傍には、摺接部45が形成されている。摺接部45は、略円筒状に形成され、外壁451の一部が面取りされている。摺接部45は、外壁451の面取りされていない部分が噴射ノズル30の内壁と摺接可能である。これにより、ニードル40は、弁座32側の先端部での往復移動が案内される。軸部41には、軸部41の内壁と外壁とを接続する孔46が形成されている。
【0019】
シール部42は、軸部41の弁座32側の端部に設けられ、弁座32に当接可能である。ニードル40は、シール部42が弁座32から離間または弁座32に当接することにより噴孔31を開閉し、ハウジング20の内部と外部とを連通または遮断する。
【0020】
大径部43は、軸部41のシール部42とは反対側に設けられている。大径部43は、その外径が軸部41の外径より大きくなるように形成されている。大径部43の弁座32側の端面は、可動コア47に当接している。
【0021】
本実施形態では、ニードル40は、摺接部45が噴射ノズル30の内壁により支持され、軸部41が可動コア47を介して第2筒部材22の内壁により支持されつつ、ハウジング20の内部を往復移動する。
【0022】
可動コア47は、例えばフェライト系ステンレス等の磁性材料により略円筒状に形成され、表面には例えばクロムめっきが施されている。可動コア47は、磁気安定化処理が施されている。可動コア47の硬度は比較的低く、ハウジング20の第1筒部材21および第3筒部材23の硬度と概ね同等である。可動コア47の略中央には貫通孔49が形成されている。貫通孔49には、ニードル40の軸部41が挿通されている。
【0023】
固定コア35は、例えばフェライト系ステンレス等の磁性材料により略円筒状に形成されている。固定コア35は、磁気安定化処理が施されている。固定コア35の硬度は比較的低く、可動コア47の硬度と概ね同等であるが、可動コア47のストッパとしての機能を確保するために表面に例えばクロムめっきを施し、必要な硬度を確保している。固定コア35は、ハウジング20の第3筒部材23と溶接され、ハウジング20の内側に固定されるようにして設けられている。
【0024】
コイル38は、略円筒状に形成され、ハウジング20の特に第2筒部材22および第3筒部材23の径方向外側を囲むようにして設けられている。コイル38は、電力が供給されると磁力を生じる。コイル38に磁力が生じるとき、固定コア35、可動コア47、第1筒部材21および第3筒部材23に磁気回路が形成される。これにより、固定コア35と可動コア47との間に磁気吸引力が発生し、可動コア47は、固定コア35に吸引される。このとき、可動コア47の弁座32側とは反対側の面に当接しているニードル40は、可動コア47とともに固定コア35側、すなわち開弁方向へ移動する。
【0025】
スプリング24は、一端が大径部43のスプリング当接面431に当接するよう設けられている。スプリング24の他端は、固定コア35の内側に圧入固定されたアジャスティングパイプ11の一端に当接している。スプリング24は、軸方向に伸びる力を有している。これにより、スプリング24は、ニードル40を可動コア47とともに弁座32の方向、すなわち閉弁方向に付勢している。
【0026】
スプリング26は、一端が可動コア47の段差面48に当接するよう設けられている。スプリング26の他端は、ハウジング20の第1筒部材21の内側に形成された環状の段差面211に当接している。スプリング26は、軸方向に伸びる力を有している。これにより、スプリング26は可動コア47をニードル40とともに弁座32とは反対の方向、すなわち開弁方向に付勢している。
本実施形態では、スプリング24の付勢力は、スプリング26の付勢力よりも大きく設定されている。これにより、コイル38に電力が供給されていない状態では、ニードル40のシール部42は、弁座32に着座した状態、すなわち閉弁状態となる。
【0027】
図1に示すように、第3筒部材23の第2筒部材22とは反対側の端部には、略円筒状の燃料導入パイプ12が圧入および溶接されている。燃料導入パイプ12の内側には、フィルタ13が設けられている。フィルタ13は、燃料導入パイプ12の導入口14から流入した燃料の中の異物を捕集する。
【0028】
燃料導入パイプ12および第3筒部材23の径方向外側は、樹脂によりモールドされている。当該モールド部分にコネクタ15が形成されている。コネクタ15には、コイル38へ電力を供給するための端子16がインサート成形されている。また、コイル38の径方向外側には、コイル38を覆うようにして筒状のホルダ17が設けられている。
【0029】
燃料導入パイプ12の導入口14から流入する燃料は、固定コア35の径内方向、アジャスティングパイプ11の内部、ニードル40の大径部43および軸部41の内側、孔46、第1筒部材21とニードル40の軸部41との間の隙間を流通し、噴射ノズル30の内部に導かれる。すなわち、燃料導入パイプ12の導入口14から第1筒部材21とニードル40の軸部41との間の隙間までが、噴射ノズル30の内部に燃料を導入する燃料通路18となる。なお、燃料噴射弁1の作動時、可動コア47の周囲は燃料で満たされた状態となる。
【0030】
第1実施形態による燃料噴射弁1は、噴射ノズル30の形状に特徴がある。ここでは、
図2および3に基づいて噴射ノズル30の構成を説明する。
【0031】
図2(a)には、
図1のIIa矢視図であって噴射ノズル30の模式図を示す。
図2(b)には、噴射ノズル30の要部断面図であって、
図2(a)のb−b線断面の拡大図を示す。
図3には、
図2(b)のIII部拡大図を示す。
【0032】
噴射ノズル30は、筒部301および底部302から構成されている。
筒部301は、一部が第1筒部材21の端部に嵌合し、溶接されている。筒部301の内壁には、ニードル40のシール部42が当接可能な弁座32が形成されている。
【0033】
底部302は、略中央が噴射ノズル30の外部側に突出するように半球状に形成されている。底部302には、複数の噴孔31が形成されている。噴孔31は、噴射ノズル30の内部側から外部側に向かって噴射ノズル30の中心軸φから離れるように形成されている。第1実施形態による燃料噴射弁1では、
図2(a)に示すように噴孔31が6個形成されている。噴射ノズル30の内部と外部とを連通する噴孔31は、噴射ノズル30の内壁に形成される内側開口311、底部302の外壁303に形成される外側開口313、および内側開口311と外側開口313とを連通する連通路312から構成されている。また、外壁303には凹部33が形成されている。
【0034】
凹部33は、噴射ノズル30の中心軸φに垂直な仮想平面上に投影した形状が
図2(a)に示すように円形状となるように形成されている。
凹部33の底面331は、噴射ノズル30の外部側に突出する曲面状に形成されている。底面331は、半球状に形成される底部302の外壁303より噴射ノズル30の内部側に位置する。底面331には、噴孔31の外側開口313が形成されている。凹部33の側面332は、噴射ノズル30の中心軸φから離れる方向に底面331から立ち上がり、底面331と凹部33が形成されていない外壁303とを接続する。
【0035】
凹部33は、
図3に示すように、噴孔31の外側開口313および凹部33を外側開口313の中心軸φ1に対して垂直な第1仮想平面P1上に投影したとき、第1仮想平面P1上に投影される外側開口313の開口端上の点314から第1仮想平面P1上に投影される凹部33の底面331の外周端333上の点のうち点314に最も近い点334までの距離D1が0.2mm以内となるように形成されている。
【0036】
また、凹部33は、凹部33を外側開口313の中心軸φ1に平行な第2仮想平面P2上に投影したとき、第2仮想平面P2上に投影される凹部33の外周端333上の点336から第2仮想平面P2上に投影される凹部33の開口端335上の点337までの距離D2が0.01mm以上かつ0.2mm以下となるように形成されている。
【0037】
次に、燃料噴射弁1の作動について説明する。
コイル38に通電されると、固定コア35と可動コア47との間に磁気吸引力が発生する。固定コア35と可動コア47との間に磁気吸引力が発生すると、スプリング24の付勢力よりスプリング26の付勢力と磁気吸引力との合計が大きくなり、可動コア47は固定コア35に吸引される。ニードル40は、可動コア47とともに固定コア35側へ移動し、シール部42が弁座32から離間する。これにより、噴孔31は開放され、噴射ノズル30の内部の燃料は噴孔31に流入する。
【0038】
噴孔31の内側開口311に流入する燃料は、連通路312を通って外側開口313から噴射ノズル30の外部に噴射される。1回の噴射終了時、燃料の一部が外側開口313から垂れて外側開口313の近傍に付着する。外側開口313の近傍に付着している燃料(以下、「付着燃料」という)Sは、合体し大きな液滴となる。大きな液滴となった付着燃料Sは、
図4(a)および(b)に示すように、凹部33の底面331の外周端333付近に留まる。
【0039】
続いて、燃料噴射弁1が燃料を噴射するとき、燃料は、
図4(b)に示すように、外側開口313から矢印F2の方向に噴射される。このとき、底面331の外周端333付近に留まっている付着燃料Sは、外側開口313から噴射される燃料の噴流により矢印F1の方向に吹き飛ばされ、凹部33から離れる。燃料噴射弁1における燃料噴射が継続されている間、上述したような付着燃料の移動、外周端333付近での停留、および噴射される燃料による吹き飛ばしが行われる。なお、
図4(b)には、外側開口313から噴射される燃料の最も外側の軌跡を示す点線Fを示す。
【0040】
燃料噴射弁1では、コイル38への通電がオフされると、固定コア35と可動コア47との間の磁気吸引力が消滅する。このとき、スプリング24の付勢力により可動コア47およびニードル40が弁座32側に移動する。ニードル40のシール部42が弁座32に着座すると、外部への燃料噴射が遮断される。
【0041】
ここで、第1実施形態による燃料噴射弁1の作用および効果について、比較例と比較しながら説明する。
図4(c)には、比較例として噴射ノズルに凹部が形成されていない燃料噴射弁の噴射ノズル130の断面図を示す。比較例の燃料噴射弁では、噴孔131の外側開口132から噴射される燃料のうち噴射ノズル130の外壁133に付着する付着燃料Sは、外壁133に沿って矢印F3の方向、すなわち、外側開口132から離れる方向に移動する。外壁133に沿って移動する付着燃料Sは、外側開口132から離れるため、次回の燃料噴射時に外側開口313から噴射される燃料によっても噴射ノズル130の外壁から離れず堆積する。比較例の燃料噴射弁では、このように燃料が噴射される度に付着燃料が堆積するため、付着燃料が燃焼したとき生成される粒子状物質の生成量が多くなる。
【0042】
一方、第1実施形態による燃料噴射弁1では、外側開口313からの燃料噴射時、外側開口313付近に付着する燃料は底面331の外周端333付近に留まる。外周端333付近に留まる付着燃料は、次回の燃料噴射時に外側開口313から噴射される燃料の噴流により、凹部33から離れる。これにより、噴射ノズル30の外壁に付着する付着燃料の量は、比較例に比べて少なくなる。したがって、第1実施形態による燃料噴射弁1では、付着燃料が燃焼したとき生成される粒子状物質の生成量を低減することができる。
【0043】
また、第1実施形態による燃料噴射弁1では、凹部33は、外側開口313および凹部33を中心軸φ1に対して垂直な仮想平面P1上に投影したとき、仮想平面P1上に投影される外側開口313の開口端上の点314から仮想平面P1上に投影される凹部33の底面331の外周端333上の点のうち点314に最も近い点334までの距離D1が0.2mm以内となるように形成されている。これにより、噴射ノズル30の外壁に付着する付着燃料の量をさらに少なくすることができる。
【0044】
図5に距離D1と噴射ノズル30の外壁に付着する燃料の量(以下、「燃料付着量」という)との関係についての実験結果を示す。本実験では、第1実施形態による燃料噴射弁1、および比較例として噴射ノズルに凹部が形成されていない燃料噴射弁において、燃料を100回噴射した後、燃料付着量を紫外蛍光法により測定した。
図5の特性図では、横軸の一番左側に比較例の燃料噴射弁の結果をプロットし、右側に第1実施形態による燃料噴射弁1の結果をプロットした。第1実施形態による燃料噴射弁1については、距離D1が、0.15mm、0.2mm、および0.4mmの3つの場合の結果を示す。
図5より、噴射ノズルに凹部が形成されていない比較例の燃料噴射弁に比べ、噴射ノズルに凹部が形成されている第1実施形態による燃料噴射弁1の方が燃料付着量が少なくなることが判明した。さらに、距離D1が0.15mmおよび0.2mmの場合、燃料付着量がさらに少なくなることが判明した。
【0045】
このように、距離D1を0.2mm以内となるように凹部33を形成することにより噴射ノズル30の外壁に付着する燃料の量がさらに少なくなる。これにより、第1実施形態による燃料噴射弁1では、付着燃料が燃焼したとき生成される粒子状物質の生成量をさらに低減することができる。
【0046】
また、第1実施形態による燃料噴射弁1では、凹部33は、凹部33を中心軸φ1に平行な仮想平面P2上に投影したとき、仮想平面P2上に投影される外周端333上の点336から仮想平面P2上に投影される凹部33の開口端335上の点337までの距離D2が0.01mm以上かつ0.2mm以下となるように形成されている。これにより、噴射ノズル30の外壁に付着する付着燃料を適度に凹部33内に留めやすくなり、また外側開口313からの燃料噴射時に凹部33から離れるように吹き飛ばしやすくなる。したがって、第1実施形態による燃料噴射弁1では、付着燃料が燃焼したとき生成される粒子状物質の生成量をさらに低減することができる。
【0047】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態による燃料噴射弁を
図6に基づいて説明する。第2実施形態は、第1実施形態と異なり、凹部の形状が異なる。なお、第1実施形態と実質的に同一の部位には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0048】
第2実施形態による燃料噴射弁では、噴射ノズル30の外壁に形成される凹部53は、噴射ノズル30の中心軸φに垂直な仮想平面上に投影した形状が外側開口313の近傍を通る多辺形状となるように形成されている。凹部53は、多辺形状の底面531および側面532を有し、
図6(a)に示すように、側面532は、6個の噴孔31のそれぞれに対して噴孔31の外周側を回るように形成されている。
【0049】
第2実施形態による燃料噴射弁では、外側開口313からの燃料噴射時、外側開口313付近に付着する燃料は底面531の外周端533付近に留まる。外周端533付近に留まる付着燃料は、次回の燃料噴射時に外側開口313から噴射される燃料の噴流により、凹部53から離れる。これにより、噴射ノズル30の外壁に付着する付着燃料の量は少なくなる。したがって、第2実施形態による燃料噴射弁は、第1実施形態と同じ効果を奏する。
【0050】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態による燃料噴射弁を
図7および8に基づいて説明する。第3実施形態は、第1実施形態と異なり、凹部が形成される位置が異なる。なお、第1実施形態と実質的に同一の部位には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0051】
第3実施形態による燃料噴射弁では、噴射ノズル30の外壁に形成される凹部63は、噴射ノズル30の中心軸φに垂直な仮想平面上に投影した形状が円形状となるように形成されている。また、
図7(a)に示すように、凹部63は噴孔31からみて噴射ノズル30の中心軸φ側に形成されている。
【0052】
凹部63は、底面631および側面632を有する。
凹部63の底面631は、
図7(b)に示すように、噴射ノズル30の外部側に突出する曲面状に形成されている。底面631は、半球状に形成される底部302の外壁303より噴射ノズル30の内部側に位置する。凹部63の側面632は、噴射ノズル30の中心軸φから離れる方向に底面631から立ち上がり、底面631と外側開口313が形成されている外壁303とを接続する。
【0053】
凹部63は、
図8に示すように、噴孔31の外側開口313および凹部63を外側開口313の中心軸φ1に対して垂直な第1仮想平面P1上に投影したとき、第1仮想平面P1上に投影される外側開口313の開口端上の点314から第1仮想平面P1上にと応永される凹部63の底面631の外周端633上の点のうち点314に最も近い点634までの距離D3が0.2mm以内となるように形成されている。
【0054】
また、凹部63を外側開口313の中心軸φ1に平行な第2仮想平面P2上に投影したとき、凹部63は、第2仮想平面P2上に投影される凹部63の底面631の外周端633上の点636から第2仮想平面P2上に投影される凹部63の開口端635上の点637までの距離D4が0.01mm以上かつ0.2mm以下となるように形成されている。
【0055】
第3実施形態による燃料噴射弁では、外側開口313からの燃料噴射時、外側開口313付近に付着する燃料は底面631の外周端633付近に留まる。外周端633付近に留まる付着燃料は、次回の燃料噴射時に外側開口313噴射される燃料の噴流により、付着燃料は凹部63から離れる。これにより、噴射ノズル30の外壁に付着する付着燃料の量は少なくなる。したがって、第3実施形態による燃料噴射弁は、第1実施形態と同じ効果を奏する。
【0056】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態による燃料噴射弁を
図9に基づいて説明する。第4実施形態は、第3実施形態と異なり、凹部の形状が異なる。なお、第2実施形態と実質的に同一の部位には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0057】
第4実施形態による燃料噴射弁では、噴射ノズル30の外壁に形成される凹部73は、噴射ノズル30の中心軸φに垂直な仮想平面上に投影した形状が外側開口313の近傍を通る多辺形状となるように形成されている。凹部73は、多辺形状の底面731および側面732を有し、
図9(a)に示すように、側面732は、6個の噴孔31のそれぞれに対して噴孔31の内周側を回るように形成されている。
【0058】
第4実施形態による燃料噴射弁では、外側開口313からの燃料噴射時、外側開口313付近に付着する燃料は底面731の外周端733付近に留まる。外周端733付近に留まる付着燃料は、次回の燃料噴射時に外側開口313から噴射される燃料の噴流により、凹部73から離れる。これにより、噴射ノズル30の外壁に付着する付着燃料の量は少なくなる。したがって、第4実施形態による燃料噴射弁は、第3実施形態と同じ効果を奏する。
【0059】
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態による燃料噴射弁を
図10に基づいて説明する。第5実施形態は、第3実施形態と異なり、凹部の形状が異なる。なお、第1実施形態と実質的に同一の部位には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0060】
第5実施形態による燃料噴射弁では、噴射ノズル30の外壁に形成される凹部83は、噴射ノズル30の中心軸φに垂直な仮想平面上に投影した形状が円形状となるように形成されている。また、凹部83は、
図10(b)に示すように、噴孔31からみて噴射ノズル30の中心軸φ側に形成され、凹部83の底面831は、噴射ノズル30の内部側に窪むように形成されている。
【0061】
第5実施形態による燃料噴射弁では、外側開口313からの燃料噴射時、外側開口313付近に付着する燃料は底面831上に留まる。底面831上に留まる付着燃料は、次回の燃料噴射時に外側開口313の近傍に付着する燃料と接触し、外側開口313の内周側、すなわち凹部83内に集める。外側開口313の内周側に形成されている凹部83の周囲には複数の外側開口313が形成されており、外側開口313から噴射される燃料の噴流の影響が第1実施形態による燃料噴射弁に比べて大きい。これにより、次回の燃料噴射時に外側開口313から噴射される燃料の噴流により、付着燃料は凹部83から離れ、また、すでに付着している粒子状物質を取り除く。したがって、第5実施形態による燃料噴射弁は、第1実施形態と同じ効果に加えて、すでに付着している粒子状物質を取り除くことができる。
【0062】
(第6実施形態)
次に、本発明の第6実施形態による燃料噴射弁を
図11に基づいて説明する。第6実施形態は、第1実施形態と異なり、凹部の形状が異なる。なお、第1実施形態と実質的に同一の部位には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0063】
第6実施形態による燃料噴射弁では、噴射ノズル30の外壁に形成される凹部93は、外側開口313が形成される底面931、および側面932、934の3つの面を有する。側面932は外側開口313の外周側に設けられる。また、側面934は外側開口313の内周側に設けられる。これにより、凹部93は、噴射ノズル30の中心軸φに垂直な仮想平面上に投影した形状が二重の円形状となるように形成されている。
【0064】
第6実施形態による燃料噴射弁では、外側開口313からの燃料噴射時、外側開口313付近に付着する燃料は底面931の外周端933、935付近に留まる。外周端933、935付近に留まる付着燃料は、次回の燃料噴射時に外側開口313から噴射される燃料の噴流により、凹部93から離れる。これにより、噴射ノズル30の外壁に付着する付着燃料の量は少なくなる。したがって、第6実施形態による燃料噴射弁は、第1実施形態と同じ効果を奏する。
【0065】
また、第6実施形態による燃料噴射弁の変形例を
図12に示す。
図12に示す燃料噴射弁では、外側
開口313は、第1凹部98の「第1底面」としての底面981に形成されている。第1凹部98の側面982は、底面981から立ち上がるように形成されている。また、第1凹部98の略中央には第2凹部99が形成されている。第2凹部99の「第2底面」としての底面991は、底面981より噴射ノズル30の内部側に形成され、底面981と底面991とを接続する第2凹部99の側面992は、底面991から立ち上がるように形成されている。
【0066】
第6実施形態による燃料噴射弁の変形例では、外側開口313からの燃料噴射時、外側開口313付近に付着する燃料は底面981の外周端983、および底面991の外周端993付近に留まる。外周端983、993付近に留まる付着燃料は、次回の燃料噴射時に外側開口313から噴射される燃料の噴流により、第1凹部98および第2凹部99から離れる。これにより、噴射ノズル30の外壁に付着する付着燃料の量は少なくなる。したがって、第6実施形態による燃料噴射弁の変形例は、第1実施形態と同じ効果を奏する。
【0067】
(他の実施形態)
(ア)上述の実施形態では、噴孔の数は6個とした。しかしながら、噴孔の数はこれに限定されない。1つ以上あればよい。
【0069】
(ウ)第1〜4実施形態および第6実施形態では、第2仮想平面上に投影される凹部の外周端上の点から第2仮想平面上に投影される凹部の開口端上の点までの距離は、0.01mm以上かつ0.2mm以下となるように凹部が形成されているとした。しかしながら、上述の距離の長さはこれに限定されない。0.01mmより小さくてもよいし、0.2mmより大きくてもよい。
【0070】
(エ)上述の実施形態では、凹部は、噴射ノズルの中心軸に垂直な仮想平面上に投影した形状が円形状または多辺形状であるとした。しかしながら、凹部の形状はこれに限定されない。
【0071】
(オ)上述の実施形態では、噴孔は、噴射ノズルの内部側から外部側に向かって噴射ノズルの中心軸から離れるように形成されているとした。しかしながら、噴孔が形成される方向はこれに限定されない。噴射ノズルの内部側から外部側に向かって噴射ノズルの中心軸に近づくように形成してもよいし、噴射ノズルの中心軸に並行であってもよい。
【0072】
以上、本発明はこのような実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の形態で実施可能である。