特許第6022927号(P6022927)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

<>
  • 6022927-熱電モジュール 図000002
  • 6022927-熱電モジュール 図000003
  • 6022927-熱電モジュール 図000004
  • 6022927-熱電モジュール 図000005
  • 6022927-熱電モジュール 図000006
  • 6022927-熱電モジュール 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6022927
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月9日
(54)【発明の名称】熱電モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01L 35/32 20060101AFI20161027BHJP
【FI】
   H01L35/32 A
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-277845(P2012-277845)
(22)【出願日】2012年12月20日
(65)【公開番号】特開2014-123596(P2014-123596A)
(43)【公開日】2014年7月3日
【審査請求日】2015年5月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】西岡 雄亮
【審査官】 今井 聖和
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第06121539(US,A)
【文献】 特開2012−038980(JP,A)
【文献】 特開2000−232244(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0126184(US,A1)
【文献】 特開2005−079347(JP,A)
【文献】 特開2000−286464(JP,A)
【文献】 特開平11−307824(JP,A)
【文献】 特開2007−258571(JP,A)
【文献】 特開2008−244239(JP,A)
【文献】 特開2003−282972(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/001598(WO,A1)
【文献】 特開2001−007411(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/057543(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持基板と、該支持基板の上面に設けられた第1電極と、該第1電極の上面に接合された複数の熱電素子と、該複数の熱電素子の上面に接合された第2電極とを備え、
該第2電極の上面および前記複数の熱電素子の側面にセラミックスから成る絶縁層が設けられており、
前記支持基板の外周に近接する位置に配置された前記熱電素子の側面に設けられた前記絶縁層は、前記支持基板の外周側に面する部位がそれ以外の部位よりも上下方向に長いことを特徴とする熱電モジュール。
【請求項2】
支持基板と、該支持基板の上面に設けられた第1電極と、該第1電極の上面に接合された複数の熱電素子と、該複数の熱電素子の上面に接合された第2電極とを備え、
該第2電極の上面および前記複数の熱電素子の側面にセラミックスから成る絶縁層が設けられており、
前記支持基板の外周に近接する位置に配置された前記熱電素子の側面に設けられた前記絶縁層は、前記支持基板の中央部に近接する位置に配置された前記熱電素子の側面に設けられた前記絶縁層よりも上下方向に長いことを特徴とする熱電モジュール。
【請求項3】
前記絶縁層は、前記第2電極の上面に設けられた部位と前記熱電素子の側面に設けられた部位とが繋がっていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の熱電モジュール。
【請求項4】
前記絶縁層が窒化アルミニウムから成ることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の熱電モジュール。
【請求項5】
前記絶縁層は、前記熱電素子の側面に設けられた部位の密度が前記第2電極の上面に設けられた部位の密度よりも小さいことを特徴とする請求項1乃至請求項のいずれかに記載の熱電モジュール。
【請求項6】
前記支持基板の外周に近接する位置に配置された前記熱電素子の側面に設けられた前記絶縁層は、前記支持基板の中央部に近接する位置に配置された前記熱電素子に設けられた前記絶縁層よりも厚いことを特徴とする請求項1乃至請求項のいずれかに記載の熱電モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用燃料電池の温度調節または廃熱発電等に使用される熱電モジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
熱電モジュールとして、例えば、特許文献1に記載の熱電モジュールが知られている。特許文献1に記載の熱電モジュールは、複数の熱電素子と、複数の熱電素子を接続する熱電素子用配線パターンと、熱電素子と外部とを絶縁するセラミック製の基板とを備えている。熱電モジュールは、例えば、電圧を加えることによって、一端側と他端側との間に温度差を生じさせることができる。また、熱電モジュールは、例えば、一端側と他端側との間に温度差を与えることによって、電力を生じさせることができる。これらの性質から、熱電モジュールは、温度調節または熱電発電等に用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−244100号公報
【特許文献2】特開2001−185768号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の熱電モジュールにおいては、熱電素子の一端側と他端側との間の温度差が大きくなった場合に、大きな熱応力が生じる場合があった。そして、それによって熱電素子に歪みが生じる場合があった。そのため、熱電素子と熱電素子用配線パターンとの接触が悪くなる可能性があった。その結果、熱電モジュールの信頼性が低下する可能性があった。
【0005】
ここで、熱応力による影響を低減するために、特許文献2に記載のペルチェモジュールのように、熱電素子の側面に樹脂製の補強部材を設ける方法が知られている。しかしながら、特許文献2に記載のペルチェモジュールにおいては、補強部材が樹脂製であることから、熱電素子の歪みを効果的に抑制するためには補強部材を厚くする必要があった。そのため、補強部材を通じて熱電素子の一端側から他端側に熱が伝わりやすくなってしまう可能性があった。その結果、熱電素子の一端側と他端側との温度差が小さくなってしまい、熱電モジュールの熱電変換効率が低下してしまう可能性があった。
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、信頼性を向上させつつ熱電変換効率を維持することができる熱電モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様の熱電モジュールは、支持基板と、該支持基板の上面に設けられた第1電極と、該第1電極の上面に接合された複数の熱電素子と、該複数の熱電素子の上面に接合された第2電極とを備え、該第2電極の上面および前記複数の熱電素子の側面にセラミックスから成る絶縁層が設けられている。そして、前記支持基板の外周に近接する位置に配置された前記熱電素子の側面に設けられた前記絶縁層が、前記支持基板の外周側に面する部位がそれ以外の部位よりも上下方向に長い、もしくは、前記支持基板の中央部に近接する位置に配置された前記熱電素子の側面に設けられた前記絶縁層よりも上下方向に長い。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様の熱電モジュールによれば、第2電極の上面および複数の熱電素子の側面に絶縁層が設けられていることによって、熱電素子に生じる歪みを抑制できる。さらに、この絶縁層がセラミックスから成ることによって、絶縁層の強度を上げることができる
。これにより、絶縁層を厚くする必要性を低下させることができるので、絶縁層を薄くすることができる。このため、絶縁層を通じて熱電素子の一端側から他端側に熱が伝わることを抑制できる。この結果、熱電モジュールの信頼性を向上させつつ熱電変換効率を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態の熱電モジュールを示す断面図である。
図2】本発明の変形例1の熱電モジュールを示す断面図である。
図3】本発明の変形例2の熱電モジュールを示す断面図である。
図4】本発明の変形例3の熱電モジュールを示す断面図である。
図5】本発明の変形例4の熱電モジュールを示す断面図である。
図6】本発明の変形例5の熱電モジュールを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態に係る熱電モジュール10について、図面を参照して詳細に説明する。
【0011】
図1に示すように、本発明の一実施形態の熱電モジュール10は、支持基板1と、支持基板1の上面に接合された第1電極2と、第1電極2の上面に設けられた複数の熱電素子3と、複数の熱電素子3の上面に接合された第2電極4とを備えている。熱電モジュール10は、さらに、第2電極4の上面および複数の熱電素子3の側面に設けられた絶縁層5を備えている。なお、本実施形態は、熱電モジュール10を温度調節のために使用する場合の例を説明している。そのため、第2電極4の上方には絶縁層5を介して温度調節の対象物6が位置している。温度調節の対象物6としては、例えば燃料電池等が挙げられる。
【0012】
<支持基板1の構成>
支持基板1は、熱電素子3を支持するための部材である。支持基板1は、上面に第1電極2が設けられることから、少なくとも上面側は絶縁材料からなる。支持基板1としては、例えば、アルミナフィラーを添加してなるエポキシ樹脂板または酸化アルミニウム質焼結体あるいは窒化アルミニウム質焼結体等のセラミック板の下面側の主面に、外部への伝熱または放熱用の銅板を貼り合わせた基板を用いることができる。また、支持基板1の他の例としては、銅板、銀板または銀−パラジウム板の上面にエポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、アルミナセラミックスまたは窒化アルミニウムセラミックス等からなる絶縁性の層を設けた基板を用いることができる。支持基板1は、平面視したときの形状が、例えば四角形状または多角形状等である。支持基板1の形状が四角形状である場合には、寸法は、例えば縦40〜70mm、横40〜70mm、厚さ0.05〜3mmに設定することができる。
【0013】
<第1電極2の構成>
第1電極2は、熱電素子3に電力を伝えるため、または熱電素子3で生じた電力を取り出すための部材である。第1電極2は、支持基板1の上面に設けられている。第1電極2は、第2電極4と共に、複数の熱電素子3を電気的に接続するように設けられている。具体的には、隣接するp型熱電素子32およびn型熱電素子31を直列に電気的に接続している。第1電極2は、例えば、銅、銀または銀−パラジウム等によって形成される。第1電極2は、例えば、支持基板1の上面に銅板を貼り付けておき、これをエッチングすることによって形成される。また、打ち抜き加工によって成形した銅板を支持基板1に貼り付けてもよい。
【0014】
<熱電素子3の構成>
熱電素子3は、ペルチェ効果によって温度調節を行なうため、またはゼーベック効果によって発電を行なうための部材である。熱電素子3は、p型熱電素子32とn型熱電素子31とに分類される。熱電素子3(p型熱電素子32およびn型熱電素子31)は、A型結晶(AはBiおよび/またはSb、BはTeおよび/またはSe)からなる熱電材料、好ましくはBi(ビスマス)またはTe(テルル)系の熱電材料で本体部が形成されている。具体的には、p型熱電素子32は、例えば、BiTe(テルル化ビスマス)とSbTe(テルル化アンチモン)との固溶体からなる熱電材料で形成される。また、n型熱電素子31は、例えば、BiTe(テルル化ビスマス)とSbSe(セレン化アンチモン)との固溶体からなる熱電材料で形成される。
【0015】
ここで、p型熱電素子32となる熱電材料は、一度溶融させてから固化させたビスマス、アンチモンおよびテルルからなるp型の形成材料を、ブリッジマン法によって一方向に凝固させて棒状にしたものである。また、n型熱電素子31となる熱電材料は、一度溶融させてから固化させたビスマス、テルルおよびセレンからなるn型の形成材料を、ブリッジマン法によって一方向に凝固させて棒状にしたものである。
【0016】
これらの棒状の熱電材料の側面にメッキが付着することを防止するレジストをコーティングした後、ワイヤーソーを用いて、例えば、0.3〜5mmの長さに切断する。次いで、切断面のみに電解メッキを用いてニッケル層および錫層を順次形成する。最後に、溶解液でレジストを除去することによって、熱電素子3(p型熱電素子32およびn型熱電素子31)を得ることができる。
【0017】
熱電素子3(p型熱電素子32およびn型熱電素子31)の形状は、例えば、円柱状、四角柱状または多角柱状等にすることができる。特に、熱電素子3の形状を円柱状にすることが好ましい。これにより、ヒートサイクル下において熱電素子3に生じる熱応力の影響を低減できる。熱電素子3を円柱状に形成する場合には、寸法は、例えば直径が1〜3mmに設定される。
【0018】
熱電素子3は、熱電素子3の直径の0.5〜2倍の間隔で縦横の並びに複数設けられる。そして、熱電素子3は、第1電極2と同様のパターンに塗布された半田7によって第1電極2に接合されている。複数の熱電素子3は第1電極2および第2電極4によって直列に電気的に接続されている。
【0019】
<第2電極4の構成>
第2電極4は、第1電極2と同様に、熱電素子3に電力を伝えるため、または熱電素子3で生じた電力を取り出すための部材である。第2電極4は、熱電素子3の上面に設けられて、熱電素子3の上面に接合されている。熱電素子3と第2電極4との接合には、例えば半田7が用いられる。第2電極4は、第1電極2と共に、複数の熱電素子3を電気的に接続するように設けられている。具体的には、隣接するp型熱電素子32およびn型熱電素子31を直列に電気的に接続している。第2電極4は、例えば、銅、銀または銀−パラジウム等によって形成される。第2電極4としては、例えば銅板が用いられる。第2電極4の成形方法としては、例えば打ち抜き加工またはエッチング等を用いることができる。
【0020】
<絶縁層5の構成>
絶縁層5は、第2電極4の上面および熱電素子3の側面に設けられている。ここで、第2電極4の上面に設けられた絶縁層5を第1絶縁層51とし、熱電素子3の側面に設けられた絶縁層5を第2絶縁層52として、それぞれ説明する。
【0021】
第1絶縁層51は、第2電極4の上面に設けられている。第1絶縁層51は、温度調節の対象物6と第2電極4との間の絶縁性を確保するために設けられている。第1絶縁層51は、セラミックスからなる。セラミックスとしては、例えば酸化アルミニウム質焼結体
または窒化アルミニウム質焼結体等を用いることができる。特に、第1絶縁層51が窒化アルミニウムセラミックスからなることが好ましい。これにより、温度調節の対象物6と熱電素子3との間の熱伝導を良好に行なうことができる。その結果、熱電モジュール10の熱電変換効率を向上させることができる。さらに、窒化アルミニウムは六方晶系の結晶構造を有することから、力が加わったときにc軸を収縮させることができる。その結果、温度調節の対象物6からかかる力の大きさに応じて、第1絶縁層51の歪み量を変化させることができる。そのため、温度調節の対象物6との間の密着性を良好に保つことができる。その結果、熱電モジュール10と温度調節の対象物6との間の熱伝導を良好に行なうことができる。
【0022】
第1絶縁層51は、各種の成膜法によって形成することができる。成膜法としては、蒸着法、スパッタリング法、ディッピング法またはエアロゾルデポジション法等を用いることができる。第1絶縁層51をこれらの成膜法で形成することによって、第1絶縁層51を薄く形成することができる。これにより、温度調節の対象物6と熱電素子3との間の熱伝導を良好に行なうことができる。その結果、熱電モジュール10の熱電変換効率を向上させることができる。また、所望の形状に成型したセラミックスを第2電極4の上面に貼り付けることで第1絶縁層51としてもよい。
【0023】
第2絶縁層52は、複数の熱電素子3の側面に設けられている。第2絶縁層52は、熱電素子3に生じる歪みを抑制するために設けられている。第2絶縁層52は、第1絶縁層51と同様にセラミックスからなる。セラミックスとしては、例えば酸化アルミニウム質焼結体または窒化アルミニウム質焼結体を用いることができる。第2絶縁層52は、第1絶縁層51と同様の各種の成膜法によって形成することができる。また、第1絶縁層51と同様に、所望の形状に成形したセラミックスを熱電素子3の側面に貼り付けることで第2絶縁層52としてもよい。本実施形態においては、第2絶縁層52は、熱電素子3の上側の全周に設けられている。第2絶縁層52が全周に設けられていることによって、熱電素子3に生じる歪みをさらに抑制できる。
【0024】
本実施形態の熱電モジュール10によれば、複数の熱電素子3の側面に第2絶縁層52が設けられていることによって、熱電素子3に生じる歪みを抑制できる。さらに、この第2絶縁層52がセラミックスから成ることによって、絶縁層5の強度を上げることができる。これにより、絶縁層5を厚くする必要性を低下させることができるので、絶縁層5を薄くすることができる。このため、絶縁層5を通じて熱電素子3の一端側から他端側に熱が伝わることを抑制できる。これらの結果、熱電モジュール10の信頼性を向上させつつ、熱電変換効率を維持することができる。
【0025】
特に絶縁層5がスパッタリング法によって成膜されていることが好ましい。これにより、絶縁層5における結晶の配向を揃えることができる。特に、窒化アルミニウムから成るを絶縁層5スパッタリング法で形成した場合には、成膜面の法線方向に結晶のc軸を優先的に配向させることができる。窒化アルミニウムは六方晶系の結晶構造を有することから、力が加わったときにc軸を収縮させることができることにより、温度調節の対象物6と熱電素子3との間にかかる力を吸収させることができる。
【0026】
なお、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更、改良などが可能である。例えば、上述の熱電モジュール10は、対象物6の温度調節のために用いる例を示したが、これに限られない。具体的には、熱電発電のために用いられてもよい。
【0027】
<変形例1>
熱電モジュール10の変形例1について説明する。なお、本例の各構成において、上述
の熱電モジュール10と同様の構成および機能を有する部材については、同じ参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0028】
図1に示す熱電モジュール10においては、第1絶縁層51と第2絶縁層52が別々に形成されているが、これに限らない。例えば、図2に示す変形例1のように、第1絶縁層51と第2絶縁層52とが一体的に形成されていてもよい。
【0029】
変形例1の熱電モジュール10aにおいては、絶縁層5aは、第2電極4の上面に設けられた部位と熱電素子3の側面に設けられた部位とが繋がっている。言い換えると、上述の熱電モジュール10における第1絶縁層51と第2絶縁層52とが繋がっている。これにより、熱電素子3の歪みを上方と側方の2方向から防ぐことができる。その結果、熱電モジュール10の信頼性をさらに向上させることができる。
【0030】
<変形例2>
熱電モジュール10の変形例2について説明する。なお、本例の各構成において、上述の熱電モジュール10と同様の構成および機能を有する部材については、同じ参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0031】
変形例2の熱電モジュール10bにおいては、図3に示すように、絶縁層5bは、熱電素子3の側面に設けられた部位の密度が第2電極4の上面に設けられた部位の密度よりも小さい。第2電極4の上面に設けられた部位の密度を大きくすることによって、温度調節の対象物6と熱電素子3との間の熱伝導を良好に行なうことができる。その結果、熱電モジュール10bの熱電変換効率を向上させることができる。さらに、熱電素子3の側面に設けられた部位の密度を小さくすることによって、絶縁層5bを通じて熱電素子3の一端側から他端側に熱が伝わることを抑制できる。これらの結果、熱電モジュール10bの熱電変換効率を向上させることができる。絶縁層5bの密度としては、例えば、窒化アルミニウムを絶縁層5bとして用いる場合、熱電素子3の側面に設けられた部位の密度を2.0〜2.8g/cmに設定することが好ましく、第2電極4の上面に設けられた部位の
密度を2.5〜3.2g/cmに設定することが好ましい。
【0032】
なお、変形例2においては、絶縁層5bは、第2電極4の上面に設けられた部位と熱電素子3の側面に設けられた部位とが繋がっているが、これに限られない。具体的には、絶縁層5bのうち、第2電極4の上面に設けられた部位と熱電素子3の側面に設けられた部位とが別々に形成されていてもよい。
【0033】
<変形例3>
熱電モジュール10の変形例3について説明する。なお、本例の各構成において、上述の熱電モジュール10と同様の構成および機能を有する部材については、同じ参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0034】
変形例3の熱電モジュール10cにおいては、図4に示すように、支持基板1の外周に近接する位置に配置された熱電素子3の側面に設けられた絶縁層5cは、支持基板1の外周側に配置されているとともに支持基板1の外周側に面する部位が、それ以外の部位よりも上下方向に長い。絶縁層5cのうち支持基板1の外周側に面する部位を上下方向に長くしておくことによって、支持基板1の外周側における熱電素子3の歪みを特に抑制できる。支持基板1の外周側において熱電素子3の歪みを重点的に抑制しておくことによって、支持基板1に生じる歪みを抑制することができる。これにより、熱電モジュール10全体に生じる熱応力を低減できる。さらに、絶縁層5cのうち支持基板1の外周側に面する部位以外の部位を上下方向に短くしておくことによって、絶縁層5cを通じて熱電素子3の一端側から他端側に熱が伝わることを抑制できる。これらの結果、熱電モジュール10の
熱電変換効率を保ちつつ、信頼性を向上させることができる。絶縁層5cの上下方向の長さとしては、例えば、熱電素子3の上下方向の長さが1mmの場合には、支持基板1の外周側に面する部位の長さを0.4〜0.9mmに設定することが好ましく、支持基板1の外周側に面する部位以外の部位の長さを0.1〜0.5mmに設定することが好ましい。
【0035】
<変形例4>
熱電モジュール10の変形例4について説明する。なお、本例の各構成において、上述の熱電モジュール10と同様の構成および機能を有する部材については、同じ参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0036】
変形例4の熱電モジュール10dにおいては、図5に示すように、支持基板1の外周に近接する位置に配置された熱電素子3の側面に設けられた絶縁層5dは、支持基板1の中央部に近接する位置に配置された熱電素子3の側面に設けられた絶縁層5dよりも上下方向に長い。支持基板1の外周に近接する位置に配置された熱電素子3の側面に設けられた絶縁層5dを上下方向に長くしておくことによって、支持基板1の外周側における熱電素子3の歪みを特に抑制できる。支持基板1の外周側において熱電素子3の歪みを重点的に抑制しておくことによって、支持基板1に生じる歪みを抑制することができる。これにより、熱電モジュール10d全体に生じる熱応力を低減できる。さらに、支持基板1の中央部に近接する位置に配置された熱電素子3の側面に設けられた絶縁層5dを上下方向に短くしておくことによって、絶縁層5dを通じて熱電素子3の一端側から他端側に熱が伝わることを抑制できる。これらの結果、熱電モジュール10dの熱電変換効率を保ちつつ、信頼性を向上させることができる。
【0037】
絶縁層5dの上下方向の長さとしては、例えば、熱電素子3の上下方向の長さが1mmの場合には、支持基板1の外周に近接する位置に配置された熱電素子3の側面に設けられた絶縁層5dの長さを0.4〜0.9mmに設定することが好ましく、支持基板1の中央部に近接する位置に配置された熱電素子3の側面に設けられた絶縁層5dの長さを0.1〜0.5mmに設定することが好ましい。なお、変形例4においては、支持基板1の外周に近接する位置に配置された熱電素子3の側面に設けられた絶縁層5dおよび支持基板1の中央部に近接する位置に配置された熱電素子3の側面に設けられた絶縁層5dの長さがそれぞれ一様であるが、これに限られない。これらの長さが一様でない場合には、絶縁層5dのそれぞれの部位における任意の10か所の長さの平均を絶縁層5dのそれぞれの長さとして見なすことができる。
【0038】
<変形例5>
熱電モジュール10の変形例5について説明する。なお、本例の各構成において、上述の熱電モジュール10と同様の構成および機能を有する部材については、同じ参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0039】
変形例5の熱電モジュール10eにおいては、図6に示すように、支持基板1の外周に近接する位置に配置された熱電素子3の側面に設けられた絶縁層5eは、支持基板1の中央部に近接する位置に配置された熱電素子3に設けられた絶縁層5eよりも厚い。支持基板1の外周に近接する位置に配置された熱電素子3の側面に設けられた絶縁層5eを厚くしておくことによって、支持基板1の外周側における熱電素子3の歪みを特に抑制できる。支持基板1の外周側において熱電素子3の歪みを重点的に抑制しておくことによって、支持基板1に生じる歪みを抑制することができる。これにより、熱電モジュール10e全体に生じる熱応力を低減できる。さらに、支持基板1の中央部に近接する位置に配置された熱電素子3の側面に設けられた絶縁層5を薄くしておくことによって、絶縁層5を通じて熱電素子3の一端側から他端側に熱が伝わることを抑制できる。これらの結果、熱電モジュール10eの熱電変換効率を保ちつつ、信頼性を向上させることができる。
【0040】
絶縁層5eの厚みとしては、例えば、支持基板1の外周に近接する位置に配置された熱電素子3の側面に設けられた絶縁層5eの厚みを1.3〜1.7μmに設定することが好ましく、支持基板1の中央部に近接する位置に配置された熱電素子3に設けられた絶縁層5eの厚みを0.8〜1.2μmに設定することが好ましい。なお、変形例5にいては、支持基板1の外周に近接する位置に配置された熱電素子3の側面に設けられた絶縁層5eの厚みおよび支持基板1の中央部に近接する位置に配置された熱電素子3に設けられた絶縁層5eの厚みがそれぞれ一様であるが、これに限られない。これらの厚みが一様ではない場合には、絶縁層5eのそれぞれの部位における任意の10か所の厚みの平均を絶縁層5eのそれぞれの厚みとして見なすことができる。
【実施例】
【0041】
上述の実施形態にかかる熱電モジュール10を以下のようにして作製した。
【0042】
まず、p型熱電素子32として、Bi0.5Sb1.5Te2.91Se0.09組成のインゴットを準備し、アルゴン雰囲気下で溶融させたインゴットをφ1.4mmの穴の空いたカーボン型に流し込み、徐々に冷却することでφ1.4mmの棒状インゴットとした。これを1.0mm間隔でスライスすることにより、φ1.4mm、高さ1.0mmのp型熱電素子32を作製した。
【0043】
同様に、n型熱電素子31として、Bi2.0Te2.85Se0.15組成に0.02質量%のSbI粉末と0.04質量%のSbBr粉末とを添加したインゴットを準備し、アルゴン雰囲気中で溶融させたインゴットをφ1.4mmの穴の空いたカーボン型に流し込み、徐々に冷却することでφ1.4mmの棒状のインゴットとした。これを1.0mm間隔でスライスすることにより、φ1.4mm、高さ1.0mmのn型熱電素子31を作製した。
【0044】
次に、支持基板1として、縦54mm、横54mm、厚さ0.36mmの寸法のアルミナ基板を準備した。また、第1電極2および第2電極4として縦1.5mm、横4.0mm、厚さ0.06mmの寸法の銅板を準備した。支持基板1の上面に、第1電極2を間隔を空けて配列し、半田7を第1電極2上に塗布した。半田7には、Sb−Snペーストを用いた。
【0045】
次に、p型熱電素子32およびn型熱電素子31を、互いに間隔をあけて、半田7上に交互に配列し、接合した。そして、p型熱電素子32およびn型熱電素子31の上面に半田7を塗布し、各熱電素子3が電気的に直列になるよう第2電極4を配置し、接合した。
【0046】
次に、高周波マグネトロンスパッタリング法にて、ターゲット直上から垂直方向に60mm離れた位置に支持基板1をセットし、ターゲットはφ50mmの高純度セラミックスAl板を用い、チャンバー内温度100℃、到達真空度2×10−4Paで予熱を行った後に、アルゴンガス導入し、成膜圧力3.0Pa、電流密度70W/mで10時間成膜を行なった。これにより、第2電極4上面に、絶縁層として膜厚1μmのアルミナ薄膜を作製した。また、スパッタ粒子の回り込ませることによって、第2電極4の側面、p型熱電素子32の側面およびn型熱電素子31の側面にも絶縁層5を成膜し、本発明の熱電モジュール10とした。
【0047】
次に、作製した熱電モジュール10の評価を行なった。具体的には、温度調節に用いた際の消費電力を求めることによって熱電変換効率を評価した。また、繰り返し電力を加えたときの抵抗変化率を求めることによって長期信頼性を評価した。
【0048】
消費電力は以下の方法で求めた。具体的には、絶縁層5のうち第2電極4の上面に設けられた部位の上に温度調節の対象物6としてアルミニウムから成るブロックを設け、このブロックの上面に120℃の熱源を設けるとともに、支持基板1の下面にはヒートシンクを設けた。この状態で、絶縁層5のうち第2電極4の上面に設けられた部位の温度が67℃であって、ヒートシンクの上面が27℃を保つように、熱電モジュール10に電力を加えた。その結果、熱電モジュール10が消費した電力は平均14.3Wであった。
【0049】
長期信頼性は反転通電試験にて評価した。具体的には、印加電流を7.5秒間隔で1万サイクル反転させ、試験前後の抵抗変化率を求めた。その結果、抵抗変化率は1.3%であった。
【0050】
同様に、変形例1の熱電モジュール10を作製した。支持基板1の上面に第1電極2、p型熱電素子32、n型熱電素子31および第2電極4を半田7で接合し、高周波マグネトロンスパッタリング法にて、第2電極4上に絶縁層5として膜厚1μmのアルミナ薄膜を成膜した。その際、支持基板1の中心をターゲット中心から水平方向に10mm離し、ターゲット直上から垂直方向に60mm離れた位置にセットし、支持基板1を6rpmで回転させることで、第2電極4の上面から第2電極4の側面、p型熱電素子32の側面およびn型熱電素子31の側面を被覆する絶縁層5を成膜した。同様の評価を行なったところ、消費電力は平均14.1W、抵抗変化率は1.2%であった。
【0051】
さらに、変形例1の熱電モジュール10を絶縁層5の材質をアルミナから窒化アルミニウムに変更して、同様の方法で作製した。同様の評価を行なったところ、消費電力は平均13.3W、抵抗変化率は1.1%であった。
【0052】
同様に、変形例2の熱電モジュール10を作製した。支持基板1の上面に第1電極2、p型熱電素子32、n型熱電素子31および第2電極4を半田7で接合し、高周波マグネトロンスパッタリング法にて、第2電極4上に絶縁層5として膜厚1μmの窒化アルミニウム薄膜を成膜した。その際、支持基板1の中心をターゲット中心から水平方向に10mm離し、ターゲット直上から垂直方向に80mm離れた位置にセットし、支持基板1を6rpmで回転させることで、絶縁層5を形成した。絶縁層5は、第2電極4の上面から第2電極4の側面、p型熱電素子32の側面およびn型熱電素子31の側面に形成され、且つ、熱電素子3の側面に設けられた部位の密度が第2電極4の上面に設けられた部位よりも小さくなっていた。同様の評価を行なったところ、消費電力は平均13.1W、抵抗変化率は0.6%であった。
【0053】
同様に、変形例3の熱電モジュール10を以下の方法で作製した。支持基板1の上面に第1電極2、p型熱電素子32、n型熱電素子31および第2電極4を半田7で接合し、高周波マグネトロンスパッタリング法にて、第2電極4上に絶縁層5として膜厚1μmの窒化アルミニウム薄膜を成膜した。その際、支持基板1の中心をターゲット中心から水平方向に30mm離し、ターゲット直上から垂直方向に40mm離れた位置にセットし、支持基板1を6rpmで回転させることで絶縁層5を形成した。絶縁層5は、第2電極4の上面から第2電極4の側面、p型熱電素子32の側面およびn型熱電素子31の側面に形成され、且つ、支持基板1の外周近くにある熱電素子3を被覆した部位は、外周に面する領域が他の部位よりも長くなっていた。同様の評価を行なったところ、消費電力は平均13.2W、抵抗変化率は0.8%であった。
【0054】
同様に、変形例4の熱電モジュール10を以下の方法で作製した。支持基板1の上面に第1電極2、p型熱電素子32、n型熱電素子31および第2電極4を半田7で接合し、高周波マグネトロンスパッタリング法にて、支持基板1の中心をターゲット中心から水平方向に30mm離し、ターゲット直上から垂直方向に40mm離れた位置にセットし、支
持基板1を6rpmで回転させることで、第2電極4上に絶縁層5として膜厚0.5μmの窒化アルミニウム薄膜を成膜した。次に、高周波マグネトロンスパッタリング法にて、支持基板1の中心をターゲット中心から水平方向に20mm離し、ターゲット直上から垂直方向に50mm離れた位置にセットし、支持基板1を6rpmで回転させることで、第2電極4上に絶縁層5として膜厚0.5μmの窒化アルミニウム薄膜を成膜した。絶縁層5は、支持基板1の外周近くにある熱電素子3を被覆した部位が、支持基板1の中央部に近い熱電素子3を被覆した部位よりも上下方向に長く熱電素子3の側面を被覆していた。同様の評価を行なったところ、消費電力は平均13.0W、抵抗変化率は0.7%であった。
【0055】
同様に、比較例として、第2電極4の上面および側面に絶縁層5の代わりに樹脂層を設けた熱電モジュールを作製した。樹脂層はエポキシ樹脂で作製した。その他の構成は、上述の実施例と同様とした。同様の評価を行なったところ、消費電力は平均15.2W、抵
抗変化率2.5%であった。つまり、比較例の熱電モジュールは消費電力および抵抗変化率が上述した複数の実施例の熱電モジュール10よりも大きい結果となった。
【0056】
これらの結果、本発明の熱電モジュール10は、熱電変換効率および信頼性が向上していることが確認できた。
【符号の説明】
【0057】
1:支持基板
2:第1電極
3:熱電素子
31:n型熱電素子
32:p型熱電素子
4:第2電極
5、5a〜5e:絶縁層
51:第1絶縁層
52:第2絶縁層
6:対象物
7:半田
10、10a〜10e:熱電モジュール
図1
図2
図4
図5
図6
図3