(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記他の部材は、前記取付部材のうち、前記取付孔に囲まれた領域の少なくとも一部を、前記エアバッグモジュール側から押さえていることを特徴とする請求項4又は5記載のエアバッグモジュール装備シート。
前記取付部材の外面のうち、少なくとも前記シート後側の面には、前記取付孔の縁部を位置決めするための凸部が設けられていることを特徴とする請求項1乃至8いずれか記載のエアバッグモジュール装備シート。
前記取付部材は、前記サイドフレームに設けられた異なる部材の取付部と異なる位置に配置されることを特徴とする請求項1乃至11いずれか記載のエアバッグモジュール装備シート。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の発明では、リスティングワイヤを知恵の輪状に絡み合うように設けているため、リスティングワイヤの構造が複雑であり、取付工程も煩雑であった。また、力布をサイドフレームに取り付けるためにリスティングワイヤを要するため、サイドフレーム周辺が大型になり、よりコンパクトな構成が求められていた。
また、特許文献1の発明では、一般使用時やエアバッグの膨張時に、力布が取付位置周辺でサイドフレームに接触するおそれがあった。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、エアバッグの高い展開性能を保ったまま、エアバッグの展開方向を案内する案内部材の取付部周辺がコンパクトで、案内部材の取付が容易なエアバッグモジュール装備シートを提供することにある。
本発明の他の目的は、エアバッグの展開方向を案内する案内部材とサイドフレームとの接触が抑制されたエアバッグモジュール装備シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題は、請求項1のエアバッグモジュール装備シートによれば、エアバッグを格納するエアバッグモジュールを装備したシートであって、該シートのサイド部に沿って延出するサイドフレームと、該サイドフレームに取り付けられる前記エアバッグモジュールと、該エアバッグモジュールの展開方向を案内する案内部材と、該案内部材を前記サイドフレームに取付けるための取付部材と、を有し、前記サイドフレームは、前記エアバッグモジュールを取付ける軸部とは異なる位置に、前記取付部材の取付孔を備え、前記取付部材は、前記案内部材の端部を着脱可能に内部に保持する保持空間を備え、該保持空間に前記案内部材の端部を保持した状態で、前記取付孔に挿通されていること、により解決される。
【0008】
このように、取付部材は、案内部材の端部を着脱可能に内部に保持する保持空間を備え、保持空間に案内部材の端部を保持した状態で、取付孔に挿通されているため、コンパクトな構成で、案内部材をサイドフレーム側に取付けることができる。
【0009】
このとき、請求項2のように、前記取付孔は、前記軸部よりも前記シート前側に設けられていると好適である。
このように構成しているため、シート表皮の破断部からサイドフレーム前側に引き込むインナー側の案内部材を、簡単にかつ耐久性よくサイドフレーム側に連結できる。
【0010】
このとき、請求項3のように、前記取付孔は、前記軸部よりも前記シート後側に設けられていると好適である。
このように構成しているため、シート表皮の破断部からサイドフレーム後側に引き込むアウター側の案内部材を、簡単にかつ耐久性よくサイドフレーム側に連結できる。
【0011】
このとき、請求項4のように、前記取付部材は、前記取付孔の形状に沿った外形を有した孔当接部と、該孔当接部から外側へ向かって張り出した張出部と、を備え、前記張出部の少なくとも一部は、前記エアバッグモジュール側から前記サイドフレーム側に向かって、他の部材により押さえられていると好適である。
このように構成しているため、エアバッグモジュール展開時に案内部材に引張力が掛かったときの支持剛性を、簡単かつコンパクトな構成で向上できる。
また、エアバッグモジュール側に元々ある部材を他の部材として用いて、取付部材をサイドフレーム側に向かって押さえることも可能であり、この場合には、少ない部品点数で、エアバッグモジュール展開時に案内部材に引張力が掛かったときの支持剛性を向上できる。
【0012】
このとき、請求項5のように、前記張出部の少なくとも一部は、前記軸部に近い側で、前記他の部材により押さえられていると好適である。
エアバッグモジュール展開時には、張出部の軸部側が、サイドフレームから離れる方向の強い引張力を受けるが、張出部の少なくとも一部が、軸部に近い側で、他の部材により押さえられているため、エアバッグモジュール展開時に案内部材に引張力が掛かったときの支持剛性を向上できる。
【0013】
このとき、請求項6のように、前記他の部材は、前記取付部材のうち、前記取付孔に囲まれた領域の少なくとも一部を、前記エアバッグモジュール側から押さえていると好適である。
このように構成しているため、取付部材とサイドフレームとが連結する領域をエアバッグモジュール側から押さえることにより、取付部材の支持剛性を高めることができる。
【0014】
このとき、請求項7のように、前記張出部は、前記サイドフレームよりも前記シート外側に配置され、前記孔当接部は、前記取付孔に挿通されていると好適である。
このように構成しているため、シート外側から取付部材をサイドフレームに取付けることができ、組付け易く、作業性がよい。また、取付部材をサイドフレームに取付けた後も、取付部材の取付状態や位置のチェックを容易に行うことができる。
【0015】
このとき、請求項8のように、前記案内部材の端部は、前記サイドフレームよりも前記シート内側に配置されると好適である。
このように構成しているため、案内部材の端部を保持する保持空間が、エアバッグモジュール側に突出することがなく、取付部材の取付位置の制約を受けにくい。
【0016】
このとき、請求項9のように、前記取付部材の外面のうち、少なくとも前記シート後側の面には、前記取付孔の縁部を位置決めするための凸部が設けられていると好適である。
このように構成しているため、取付部材の外面のうち、エアバッグモジュール展開時にサイドフレームから離れ易いシート後側の面を、サイドフレームに係止でき、エアバッグモジュール展開時に案内部材に引張力が掛かったときの取付部材の支持剛性を効率よく向上できる。
【0017】
このとき、請求項10のように、前記サイドフレームと前記シートの表皮との間に配置されるクッション材を備え、該クッション材は、前記サイドフレームの前記シート外側に、前記エアバッグモジュールを取付けるための開口を備え、前記取付部材は、該取付部材の少なくとも一部が、前記開口を通して視認可能な位置に配置されていると好適である。
このように構成しているため、取付部材をサイドフレームに取付けた後に、取付部材の取付状態や位置のチェックを容易に行うことができる。
【0018】
このとき、請求項11のように、前記他の部材は、前記エアバッグモジュールを構成する部材であると好適である。
このように構成しているため、エアバッグモジュールを構成する部材を、取付部材の支持剛性の向上の目的にも利用でき、少ない部品点数で、取付部材の支持剛性を向上できる。
【0019】
このとき、請求項12のように、前記取付部材は、前記サイドフレームに設けられた異なる部材の取付部と異なる位置に配置されると好適である。
このように構成しているため、取付部材の取付作業の作業性が向上されると共に、取付部材周辺の剛性が確保される。
【発明の効果】
【0020】
請求項1の発明によれば、取付部材は、案内部材の端部を着脱可能に内部に保持する保持空間を備え、保持空間に案内部材の端部を保持した状態で、取付孔に挿通されているため、コンパクトな構成で、案内部材をサイドフレーム側に取付けることができる。
【0021】
請求項2の発明によれば、シート表皮の破断部からサイドフレーム前側に引き込むインナー側の案内部材を、簡単にかつ耐久性よくサイドフレーム側に連結できる。
請求項3の発明によれば、シート表皮の破断部からサイドフレーム後側に引き込むアウター側の案内部材を、簡単にかつ耐久性よくサイドフレーム側に連結できる。
【0022】
請求項4の発明によれば、エアバッグモジュール展開時に案内部材に引張力が掛かったときの支持剛性を、簡単かつコンパクトな構成で向上できる。
また、エアバッグモジュール側に元々ある部材を他の部材として用いて、取付部材をサイドフレーム側に向かって押さえることも可能であり、この場合には、少ない部品点数で、エアバッグモジュール展開時に案内部材に引張力が掛かったときの支持剛性を向上できる。
【0023】
エアバッグモジュール展開時には、張出部の軸部側が、サイドフレームから離れる方向の強い引張力を受けるが、請求項5の発明によれば、張出部の少なくとも一部が、軸部に近い側で、他の部材により押さえられているため、エアバッグモジュール展開時に案内部材に引張力が掛かったときの支持剛性を向上できる。
【0024】
請求項6の発明によれば、取付部材とサイドフレームとが連結する領域をエアバッグモジュール側から押さえることにより、取付部材の支持剛性を高めることができる。
【0025】
請求項7の発明によれば、シート外側から取付部材をサイドフレームに取付けることができ、組付け易く、作業性がよい。また、取付部材をサイドフレームに取付けた後も、取付部材の取付状態や位置のチェックを容易に行うことができる。
【0026】
請求項8の発明によれば、案内部材の端部を保持する保持空間が、エアバッグモジュール側に突出することがなく、取付部材の取付位置の制約を受けにくい。
請求項9の発明によれば、取付部材の外面のうち、エアバッグモジュール展開時にサイドフレームから離れ易いシート後側の面を、サイドフレームに係止でき、エアバッグモジュール展開時に案内部材に引張力が掛かったときの取付部材の支持剛性を効率よく向上できる。
【0027】
請求項10の発明によれば、取付部材をサイドフレームに取付けた後に、取付部材の取付状態や位置のチェックを容易に行うことができる。
請求項11の発明によれば、エアバッグモジュールを構成する部材を、取付部材の支持剛性の向上の目的にも利用でき、少ない部品点数で、取付部材の支持剛性を向上できる。
請求項12の発明によれば、取付部材の取付作業の作業性が向上されると共に、取付部材周辺の剛性が確保される。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態に係るエアバッグモジュール装備シートについて、
図1〜
図13を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るエアバッグモジュール装備シートの外観図である。
図2は、本発明の一実施形態に係るエアバッグモジュール装備シートのシートフレームの斜視図である。
図3は、
図1のA−A断面図であって、本発明の一実施形態に係る取付部材を介して力布をサイドフレームに連結した状態を示す説明図である。
図4は、本発明の一実施形態に係るトリムカバーと力布を破断部で共縫いした状態を示す説明図である。
図5は、本発明の一実施形態に係る取付部材の斜視図である。
図6は、本発明の一実施形態に係る取付部材の平面図である。
図7は、本発明の一実施形態に係る取付部材の側面図である。
図8は、本発明の一実施形態に係る取付部材の底面図である。
図9は、本発明の一実施形態に係る取付部材を介して力布をサイドフレームに連結した状態を示す断面説明図である。
図10は、本発明の一実施形態に係る取付部材を介して力布をサイドフレームに連結した状態を示す断面説明図であって、力布の取付部材への取り付け方を変更した例である。
図11は、
図1のA−A断面図であって、本発明の他の実施形態に係る取付部材を介して力布をサイドフレームに連結した状態を示す説明図である。
図12は、本発明の他の実施形態に係る取付部材を介して力布をサイドフレームに連結した状態を示す断面説明図である。
図13は、本発明の他の実施形態に係る取付部材を介してサイドフレームに連結された力布に引張力が掛かったときの状態を示す説明図である。
【0030】
本実施の形態に係るエアバッグモジュール装備シートとしての車両用シートSは、
図1で示すように、シートバックS1、着座部S2、ヘッドレストS3より構成されている。
車両用シートSの中には、
図2に示すようなシートフレームFが設けられている。シートフレームFは、シートバックS1のフレームであるシートバックフレーム1と、着座部S2のフレームである着座フレーム2とから構成されている。着座フレーム2とシートバックフレーム1は、リクライニング機構3を介して連結されている。シートバックフレーム1および着座フレーム2の外側には、クッションおよびトリムカバーが設けられることで、シートバックS1および着座部S2が構成される。
【0031】
シートバックS1は、
図1乃至
図3に示すように、シートバックフレーム1と、シートバックフレーム1上に載置されるクッションパッド5と、シートバックフレーム1及びクッションパッド5,5aを覆うトリムカバー4と、トリムカバー4の破断部40に一端が縫い付けられた力布32を主要構成要素とする。
シートバックフレーム1は、
図1,
図2に示すように、左右に離間して配置され上下方向に延在するサイドフレーム10と、このサイドフレーム10の上端部を連結する上部フレーム21と、下端部を連結する下部フレーム22とにより枠状に構成されている。
上部フレーム21には、ピラー支持部23が設けられ、ピラー支持部23には、不図示のヘッドレストフレームが設けられる。ヘッドレストフレームの外側にクッション部材を設けることでヘッドレストS3が構成される。
【0032】
サイドフレーム10は、板金をプレス加工して成形され、上方よりも下方の幅が広くなるように湾曲した略板体からなる。
図3に示すように、ほぼ平板状の側板11と、この側板11の前端部を内側にU字状に折り返してなる前縁部12と、後端部をL字型に内側に屈曲させた後縁部13とを有している。
サイドフレーム10には、乗員を後方から支持するSバネからなる一対の乗員支持部材としての架設部材25の両端が係止される係止孔を備えた係止部15と、取付部材50を取付けるための一対の取付孔16とが設けられている。
取付孔16は、側板11の前縁部12に近い部分に、前縁部12の傾斜に沿った縦長の長方形の孔として設けられている。
サイドフレームは、エアバッグモジュール6を取付けるボルト18の軸部とは異なる位置に、取付部材50の取付孔16を備えており、力布32をボルト18の軸部で支持する必要がなく、力布32自体に直接孔をあける必要がない。従って、力布32とサイドフレーム10との連結箇所の耐久性を向上できる。また、エアバッグモジュール6のサイドフレーム10への取付と、力布32のサイドフレーム10への連結とを、異なる位置で行うため、取付構造を単純化できると同時に、力布32のサイドフレーム10への連結構造により、エアバッグモジュール6への取付が、影響を受けることがない。
なお、本実施形態では、サイドフレーム10の前縁部12に近い位置のみに、インナー側の力布32取付用の取付孔16を備えているが、インナー側の力布32とアウター側の力布31の双方を取付部材50を用いてサイドフレーム10に取付ける場合には、後縁部13に近い位置にも、アウター側の力布31取付用の取付孔16を設けるとよい。
【0033】
取付孔16は、側板11の上端近くと下端近くに一対設けられ、架設部材25の係止部15を挟むように、係止部15の上方と下方に形成されている。このように、取付孔16は、係止部15と水平方向に並ばず、上下方向において異なる位置に形成されている。このように構成することにより、架設部材25及び取付部材50の取付の作業性を向上できると共に、サイドフレーム10の剛性が、架設部材25又は取付部材50の取付箇所において低下することを抑制できる。係止部15が、特許請求の範囲のサイドフレームに設けられた異なる部材の取付部に対応する。
サイドフレーム10の前後の幅の狭い前後幅狭部は、サイドフレーム10下方の前後の幅の広い前後幅広部よりも剛性が低いが、上方の取付孔16は、サイドフレーム10の前後幅狭部の中でも、上部フレーム21近くに配置されるため、剛性を補うことができる。
サイドフレーム10には、
図3に示すように、シート外側の面に、エアバッグモジュール6が固定されている。
【0034】
本実施形態のエアバッグモジュール6は、モジュールケースを有しないケースレスエアバッグモジュールからなる。エアバッグモジュール6は、
図3に示すように、インフレータ6aと、折り畳まれたエアバッグ6bと、インフレータ6aを保持するリテーナ6cと、エアバッグ6bを包むラップ材6dを備えている。
インフレータ6aの外周部は、シートS内側に向かって立設されたボルト18により、リテーナ6c及びサイドフレーム10に固定されている。なお、インフレータ6aは、ボルト以外のインフレータ取付部材によりサイドフレーム10に固定されていてもよい。
【0035】
インフレータ6aは、エアバッグ6b内に配設され、エアバッグ6bは、インフレータ6aから噴出されるガスによってシートS前方に展開するようになっている。
エアバッグ6bは、布袋等からなるラップ材6dによって折り畳み状態に保持されており、このラップ材6dは、エアバッグ6bが展開する場合に、容易に破けるようになっている。
なお、本実施形態では、エアバッグモジュール6を、ケースレスのものから構成しているが、これに限定されるものでなく、モジュールケースを備えたものとして構成してもよい。
クッションパッド5には、
図3に示すように、エアバッグモジュール6を格納するための開口8が形成され、この開口8により、空間7が形成されている。
【0036】
トリムカバー4は、公知の材料からなり、
図3,
図4に示すように、座面中央から左右の土手面を被包する前面マチ部41と周側面から背面に至る側面マチ部42とを縫い合わせ、更に、側面マチ部42の前面マチ部41逆側の端部に不図示の後面マチ部を縫い合わせることにより袋状に縫製されている。
前面マチ部41と側面マチ部42との土手部において膨出した頂点には、破断部40が形成されている。破断部40は、前面マチ部41と側面マチ部42の端部を、通常の使い勝手に耐えられる強度を保ちつつ、エアバッグの膨張による引張力で裂断可能なように、相互に縫製されている。
【0037】
図4に示すように、破断部40には、力布31,32が共縫いされている。
力布32は、伸縮性の小さい布状素材からなり、エアバッグの膨張による応力を破断部40に伝達する役割を果たす。力布31,32は、特許請求の範囲の案内部材に対応する。
【0038】
力布32は、
図4に示すように、略矩形の布からなる。破断部40に対向する辺35には、両端に、矩形状に突出したトリムプレート37取付用の取付部36が、それぞれ複数設けられている。
トリムプレート37は、硬質樹脂製からなる矩形の板体である。トリムプレート37は、力布32の取付部36の端末の形状を保持するために用いられる。力布32の端末にトリムプレート37が固定されていることにより、力布32の端末を保持空間59に差込む際の作業性が向上する。本実施形態では、力布32の取付部36にトリムプレート37を固定しているが、これに限定されるものではなく、トリムプレート37を用いずに、力布32の取付部36の端末を複数回折り返して縫成したものや、複数重に巻回して縫成したもの、複数重に巻回して縫成したものを一方向に押し潰したものを取付部材50の保持空間59に挿入してもよい。
【0039】
力布32は、
図3に示すように、破断部40より空間7へ引き込まれている。力布32の取付部36に固定されたトリムプレート37は、取付部材50を介してサイドフレーム10の取付孔16に係止されている。
また、
図3に示すように、力布31の他端には、係止フック33が縫合により固定されている。力布31は、エアバッグモジュール6の後方に配置されたクッションパッド5aとエアバッグモジュール6との間の空間に引き込まれ、係止フック33がサイドフレーム10の後縁部13に係止されている。
なお、アウター側の力布31の取付にも、取付部材50を用いる場合には、力布31の端部にも、トリムプレート37を縫合により固定する。サイドフレーム10の後縁部13の近くに取付孔16を設け、インナー側の力布32の場合と同様に、この取付孔16に、取付部材50を介して力布31を取付ける。
力布31を取付部材50を介してサイドフレーム10に取付ける構成は、シート前後方向で逆に取り付けることを除いては、力布32の取付の構成と同様であるため、説明を省略する。
【0040】
取付部材50は、硬質樹脂から一体成形されてなり、
図5,
図7に示すように、中空直方体の一辺の周囲が切り欠かれた形状からなる保持部51と、保持部51の切欠かれた一辺の逆側から連続して、四方に向かって張り出した板状のフランジ部52と、を備えている。フランジ部52が、特許請求の範囲の張出部に対応する。
保持部51は、前壁53,水平壁54,後壁55,水平壁56と、前壁53のフランジ部52逆側の端部から後方に向かって垂直に立設する天壁57と、水平壁54と水平壁56を架橋し、前壁53及び後壁55に平行な仕切壁58と、を備えている。
前壁53,水平壁54,後壁55,水平壁56,天壁57に囲まれた空間が、トリムプレート37を内部に係止する保持空間59となっている。保持空間59は、仕切壁58によって、前側空間59aと、後側空間59bに分割されている。
また、取付部材50がシートSの右側のサイドフレーム10に取付けられる場合には、水平壁54が上方、水平壁56が下方に位置し、取付部材50がシートSの左側のサイドフレーム10に取付けられる場合には、水平壁54が下方、水平壁56が上方に位置する。
【0041】
水平壁54,水平壁56は、
図5,
図7に示すように、長方形の一つの角が切り欠かれた略L字状の形状からなっている。
また、天壁57の上下方向の中央は、
図5,
図6に示すように、前壁53まで後退して切欠かれた形状となっている。
水平壁54,水平壁56,天壁57の切欠かれた部分は、全体として略T字状の開口を形成しており、この開口を通して保持空間59内に係止される力布32及びトリムプレート37を視認可能である。また、この開口により、保持部51側からとフランジ部52側からの二つの型割により取付部材50を成形可能となる。
【0042】
後壁55の上下方向の中央には、スリット55sが形成されている。このスリット55sは、フランジ部52の後方部分の中央に設けられたスリット52sに連続しており、このスリット55s,52sにより、後壁55とフランジ部52の後方部分が中央で二つに分割されている。スリット55s,52sは、力布32を保持空間59に挿入するために用いられる。
後壁55のシート後側の外面には、
図5〜
図7に示すように、スリット55sを挟んだ両側に、それぞれ突起60が形成されている。
突起60は、フランジ部52側の面60aが、後壁55に対して直角に近い角度をなし、フランジ部52逆側の面60bが、後壁55に対して、小さい鋭角の角度をなした略三角柱状からなる。面60aとフランジ部52との間の距離は、サイドフレーム10の取付孔16における厚みと同じかそれより僅かに大きく形成されている。面60aは、フランジ部52に対向した面となっており、面60aとフランジ部52との間に、取付孔16の縁部を挟持して、取付孔16から取付部材50が抜けることを抑制可能となっている。
保持部51のうち、フランジ部52に隣接した部分であって、突起60とフランジ部52との間の厚みの部分が、特許請求の範囲の孔当接部に対応する。
【0043】
仕切壁58と前壁53は、シート外側の端部で、架橋部61により連結されている。架橋部61は、仕切壁58及び前壁53の上下方向の中央に短い帯板状の部分として設けられ、フランジ部52の面と同じ面を形成している。架橋部61のシート上下方向の幅は、天壁57の中央に設けられた切欠き部分の幅よりも小さく形成され、保持部51側からとフランジ部52側からの二つの型割により取付部材50を成形可能となっている。架橋部61は、保持空間59に挿入されたトリムプレート37及び力布32の端部が保持空間59から抜け出ることを防止する抜け止めとしての役割を果たす。
天壁57の内面の後壁55側先端には、前側空間59aに向かって突出する突起57aが設けられている。この突起57aは、前側空間59aに挿入されたトリムプレート37が、エアバッグ6b膨張時に、力布32を介して前側空間59a外に引き出す力を受けたときに、前側空間59a外に引き出されることを抑制する抜け止めとしての機能を果たす。
この突起57aは、前側空間59a外側の面が、天壁57の先端から連続した平面からなり、前側空間59a側の面に、略L字状の鉤型の段差を備えているため、トリムプレート37の前側空間59aへの挿入は、人の手の力によっても可能であるが、前側空間59aからトリムプレート37を引き出す力が掛かったときには、段差でトリムプレート37の端部が係止して、トリムプレート37は、容易に前側空間59aから引き出されない。
【0044】
フランジ部52は、サイドフレーム10に当接する当接面52aと、当接面52aの裏側の押え面52bを備えた平板状からなる。当接面52aは、平面からなり、押え面52bは、端部が当接面52aの端部に交わるよう、周囲の縁の部分が、当接面52aに向かって湾曲した曲面52cを形成している。
フランジ部52は、保持部51よりも前方の部分が、後方の部分よりも長く形成され、サイドフレーム10への組付け時に、サイドフレーム10の側板11と前縁部12との境界部分に力布32が接触して傷つくことを抑制可能となっている。
【0045】
力布32の端部を取付部材50を介してサイドフレーム10の側板11に取付けた状態の横断面図を
図9に示す。
取付部材50は、フランジ部52の長く形成された部分を前方にして、保持部51のフランジ部52側の端部の外面をサイドフレーム10の取付孔16の内面に当接させて、取付孔16に挿通されている。このとき、取付孔16の後方部分の縁が、フランジ部52と突起60により挟持されている。
このように、取付部材50は、取付孔16に挿通されているため、取付部材50の上下前後方向の取付位置を、取付孔16と取付部材50の当接面により容易に規制できると同時に、力布52の引張り方向によって、力布52がサイドフレーム10の端部に接触することが抑制される。
トリムプレート37は、力布32の端部に縫合された状態で、トリムプレート37を仕切壁37の前側の面に対向させて、前側空間59aに保持されている。トリムプレート37及び力布32の端部は、架橋部61のシート内側の面に当接している。
このように、力布32の端部には、力布32よりも剛性の高いトリムプレート37が固定され、取付部材50は、保持空間59にトリムプレート37を保持した状態で、取付孔16に挿通されているため、力布32自体に孔をあけてこの孔にサイドフレーム側の軸を挿通して固定するような場合と比較し、力布32が、エアバッグ6bの膨張による引張力を受けたときの耐久性を向上できる。
図9では、トリムプレート37を、前壁53の内面に対向させているが、
図10のように、力布32をトリムプレート37の幅に合わせて折り返すことにより、前側空間59a内でトリムプレート37が力布32に挟まれ、トリムプレート37の両面が力布32に当接した状態としてもよい。このとき、力布32が前壁53の内面に当接する。
力布32は、仕切壁58と天壁57との間を通って、後側空間59bに入り、後側空間59bのフランジ部52側の開口を通って、取付部材50の外側に導出されている。
【0046】
フランジ部52は、当接面52aを側板11に当接させて配置されている。また、フランジ部52の押え面52bは、力布32を押え面52bとリテーナ6cとの間に挟んだ状態で、リテーナ6cにより、押え付けられている。
なお、本実施形態では、押え面52bの略全面が、リテーナ6cによって側板11に向かって押さえつけられているが、これに限定されるものでなく、押え面52bの少なくとも一部が、リテーナ6cによって押えつけられていればよい。
押え面52bのシート前方を押え付けるようにすると、押え面52bのみでなく、力布32も共に押え付けることになるため、エアバッグ6bの膨張による引張力の取付部材50への伝達を効果的に抑えることができる。その結果、力布32によるエアバッグ6bの膨張力を、破断部40にスムーズに伝達可能となる。
【0047】
また、本実施形態では、押え面52bを、リテーナ6cによって押えつけているが、インフレータ6aやエアバッグ6bで押さえつけてもよい。エアバッグ6bを押え面52bに当接させて配置した場合、一般使用時には、エアバッグ6bからの押圧力は請けないが、エアバッグ6bが膨張したときに、押え面52bが側板11側に押えつけられる。
また、エアバッグ6bがモジュールケースに格納される場合には、モジュールケースで押え面52bを押えつけてもよい。また、押え面52bを押え付けるための専用部材を設けてもよい。
【0048】
力布32端部のサイドフレーム10への取付手順について説明する。
まず、取付部材50に、トリムプレート37が縫合された力布32の取付部36の端部を係止する。
力布32の取付部材50への取付は、次の手順で行う。取付部36のトリムプレート37に垂直な2辺のうち1辺を、スリット55s,52sを通して、後側空間59bに挿入する。このとき、トリムプレート37が後壁55側、取付部36の端部が前壁53側を向くようにする。
次いで、取付部36のトリムプレート37に垂直な2辺のうち、残りの1辺も、スリット55s,52sを通して、後側空間59bに挿入し、取付部36が後側空間59bを貫通した状態とする。
次に、トリムプレート37を180°反転させ、取付部36の端部側を前側空間59a側に向かって折り曲げて、トリムプレート37を、仕切壁58と天壁57との間の隙間から前側空間59aに挿入し、トリムプレート37の先端が架橋部61に当接するまで押し込む。以上で、力布32と取付部材50との連結が完了する。
【0049】
次いで、取付部材50を、サイドフレーム10のシート外側から、取付孔16に挿入し、側板11の取付孔16の後側の縁部が、フランジ部52と突起60との間に挟まれるまで、取付部材50を押し込む。
エアバッグモジュール6を、シート外側から組付ける。このとき、リテーナ6cが、フランジ部52の少なくとも一部を押え付けるようにして、ボルト18により、固定する。
その後、クッションパッド5aをエアバッグモジュール6の外側に配置し、トリムカバー4でクッションパッド5aごと被覆して、完成する。
【0050】
本発明の取付部材の他の実施形態を、
図11〜
図13に示す。
本実施形態の取付部材70は、硬質樹脂から一体成形されてなり、
図12に示すように、上下端が開口となった略筒体からなる保持部71と、保持部71の側壁面に上下方向に沿って設けられたスリットの両側からそれぞれ連続して設けられた一対の板状のフランジ部72a,72bと、を備えている。フランジ部72a,72bが、特許請求の範囲の張出部に対応する。
【0051】
保持部71は、一方のフランジ部72aから連続して形成され、略半円筒形状からなる保持壁73と、保持壁73と他方のフランジ部72bとの間に連続して形成された当接壁74と、保持壁73の内面とフランジ部72aとの間から、内側に向かって立設された板状の係止部75と、を備えている。
保持壁73は、略半円筒形からなり、係止部75からトリムプレート37の厚みよりも若干離れた位置の内面に、係止部75に略平行な面を備えた突起76が形成されている。
保持壁73と当接壁74との間は、薄肉のヒンジ部77となっており、取付部材70を取付孔16に押し込んだときに、ヒンジ部77で、保持壁73と当接壁74との間の角度が小さくなって、取付部材70を取付孔16に取付け易くしている。
【0052】
係止部75は、保持壁73とフランジ部72aとの間からヒンジ部77に向かって延出した板状体からなり、先端とヒンジ部77との間には、少なくとも力布32の厚み分の空間が空いている。
係止部75の先端には、保持壁73に向かって垂直に鉤状に突出した突起75aが形成されている。
当接壁74は、外面が略平面からなり、内面は、断面略M字状に隆起した形状からなっている。
図13に示すように、エアバッグ6b展開時に、力布32に引張力が掛かると、係止部75がトリムプレート37に押されて先端がフランジ部72a,72bの間に移動する。このとき、M字状に隆起した面のうち、ヒンジ部77寄りの内側隆起部74aには、トリムプレート37が当接し、トリムプレート37が係止部75から外れることが抑制される。その結果、エアバッグ6bの膨張力を、力布32を介して破断部40にスムーズに伝達可能となる。
取付部材70及びサイドフレーム10,エアバッグモジュール6のその他の構成は、
図1〜
図10に示した取付部材50及びサイドフレーム10,エアバッグモジュール6と同様であるため、説明を省略する。