(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6022936
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月9日
(54)【発明の名称】複合磁気シールドを有する磁気センサ
(51)【国際特許分類】
G11B 5/39 20060101AFI20161027BHJP
G11B 5/31 20060101ALI20161027BHJP
H01L 43/08 20060101ALI20161027BHJP
H01L 43/10 20060101ALI20161027BHJP
【FI】
G11B5/39
G11B5/31 Q
H01L43/08 Z
H01L43/10
【請求項の数】15
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-519709(P2012-519709)
(86)(22)【出願日】2010年7月8日
(65)【公表番号】特表2012-533141(P2012-533141A)
(43)【公表日】2012年12月20日
(86)【国際出願番号】US2010041285
(87)【国際公開番号】WO2011005914
(87)【国際公開日】20110113
【審査請求日】2013年3月12日
【審判番号】不服2015-5977(P2015-5977/J1)
【審判請求日】2015年4月1日
(31)【優先権主張番号】12/499,157
(32)【優先日】2009年7月8日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500373758
【氏名又は名称】シーゲイト テクノロジー エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Seagate Technology LLC
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バスコ,ブラディスラフ・アレクサンドロビチ
(72)【発明者】
【氏名】イントゥリ,ベンカテスワラ・ラオ
(72)【発明者】
【氏名】カウツキー,マイケル・シィ
(72)【発明者】
【氏名】ルー,チホン
(72)【発明者】
【氏名】キーフ,マーク・ティ
(72)【発明者】
【氏名】チャン,イーファン
【合議体】
【審判長】
森川 幸俊
【審判官】
酒井 朋広
【審判官】
関谷 隆一
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2008/0158741(US,A1)
【文献】
特開2008−227297(JP,A)
【文献】
特開2008−300840(JP,A)
【文献】
特開2008−218640(JP,A)
【文献】
特開2002−298314(JP,A)
【文献】
特開平10−334418(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G11B5/31-5/39
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気抵抗リーダであって、
第1の磁気シールド素子を備え、前記第1の磁気シールド素子は、グレイン成長抑制層によって分離される2つの強磁性異方性層を備え、前記2つの強磁性異方性層のうちの少なくとも一方は、第1の磁化方向を有し、前記2つの強磁性異方性層は、およそ等しい厚みを有し、
前記磁気抵抗リーダは、さらに、
第2の磁気シールド素子と、
前記第1の磁気シールド素子および前記第2の磁気シールド素子に電気的に接続され、かつ、前記第1の磁気シールド素子を前記第2の磁気シールド素子から分離する磁気抵抗センサ積層体とを備え、
前記磁気抵抗リーダは、200%以上のTMR比を有するトンネリング磁気抵抗リーダであり、前記トンネリング磁気抵抗リーダは、自由磁化配向を有する自由磁気素子と、参照磁化配向を有する参照磁気素子と、前記自由磁気素子と前記参照磁気素子との間の電気的絶縁層とを含み、
前記第1の磁化方向は、前記自由磁化配向または前記参照磁化配向に垂直である、磁気抵抗リーダ。
【請求項2】
前記グレイン成長抑制層は、100オングストローム未満の厚みを有する、請求項1に記載の磁気抵抗リーダ。
【請求項3】
前記グレイン成長抑制層は、非磁性である、請求項1または請求項2に記載の磁気抵抗リーダ。
【請求項4】
前記グレイン成長抑制層は、磁性である、請求項1または請求項2に記載の磁気抵抗リーダ。
【請求項5】
前記第1の磁気シールド素子は、さらに、硬質磁性層を備える、請求項1から4のいずれかに記載の磁気抵抗リーダ。
【請求項6】
前記強磁性異方性層は、NiFeを備え、前記グレイン成長抑制層は、Ru,Ta,Nb,ZrまたはHfを備える、請求項1から5のいずれかに記載の磁気抵抗リーダ。
【請求項7】
前記グレイン成長抑制層は、前記磁気抵抗リーダの磁気アニーリングの間、拡散、欠陥移動およびグレイン結晶化を抑制する、請求項1から6のいずれかに記載の磁気抵抗リーダ。
【請求項8】
前記第1の磁気シールド素子は、さらに、第3の強磁性異方性層を備え、
第2のグレイン成長抑制層が、前記第3の強磁性異方性層と前記第2の強磁性異方性層との間に位置する、請求項1から8のいずれかに記載の磁気抵抗リーダ。
【請求項9】
磁気抵抗リーダを製造する方法であって、
第1のシールド素子を蒸着するステップを備え、前記第1のシールド素子は、グレイン成長抑制層によって分離される2つの強磁性異方性層を備え、前記2つの強磁性異方性層のうちの少なくとも1つは、第1の磁化方向を有し、前記2つの強磁性異方性層は、およそ等しい厚みを有し、
前記方法は、さらに、
前記第1のシールド素子を磁気設定アニール温度でアニーリングして設定アニールされた第1のシールドを形成するステップと、
前記アニールされた第1のシールドに磁気抵抗センサ積層体を蒸着するステップと、
前記磁気抵抗センサ積層体を磁気クロス設定アニール温度でアニーリングしてクロス設定アニールされた磁気抵抗センサ積層体を形成するステップと、
前記クロス設定アニールされた磁気抵抗センサ積層体に第2のシールド素子を蒸着するステップとを備え、
前記磁気抵抗センサ積層体は、前記第1のシールド素子および前記第2のシールド素子に電気的に接続されて、前記第1のシールド素子を前記第2のシールド素子から分離して、前記磁気抵抗リーダは、200%以上のTMR比を有するトンネリング磁気抵抗リーダであり、
前記トンネリング磁気抵抗リーダは、自由磁化配向を有する自由磁気素子と、参照磁化配向を有する参照磁気素子と、前記自由磁気素子と前記参照磁気素子との間の電気的絶縁層とを含み、
前記第1の磁化方向は、前記自由磁化配向または前記参照磁化配向に垂直である、方法。
【請求項10】
前記磁気設定アニール温度は、390℃より大きい、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記磁気クロス設定アニール温度は、300℃より大きい、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
前記グレイン成長抑制層は、100オングストローム未満の厚みを有する、請求項9から11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記グレイン成長抑制層は、非磁性である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記第1のシールド素子を形成するステップは、
前記第1のシールド素子の露出した表面を研磨して、平坦な露出した第1のシールド表面を形成するステップと、
前記平坦な露出した第1のシールド表面に化学機械研磨ストップ層を蒸着するステップと、
前記第1のシールド素子の周囲に絶縁材料を蒸着するステップと、
前記化学機械研磨ストップ層まで化学機械研磨を行なうことにより絶縁材料を除去するステップと、
前記化学機械研磨ストップ層を除去して、研磨された第1のシールド素子を形成するステップとを含む、請求項9から13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記研磨するステップは、研磨対象の強磁性異方性層の2%未満を除去する、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
背景
電子データ記憶および検索システムにおいて、磁気記録ヘッドは、磁気媒体に記憶された、磁気的に符号化された情報を検索するためのセンサを有するリーダ部を含むことができる。媒体の表面からの磁束は、センサの1または複数の感知層(a sensing layer or layers)の磁化ベクトルの回転をもたらすが、このことは、同じく、センサの電気的特性
における変化をもたらす。感知層の磁化ベクトルが外部の磁束に応答して自由に回転するため、感知層は、しばしば自由層と呼ばれる。センサの電気的特性は、センサに電流を流してセンサの電圧を測定することよって検出され得る。素子の形状に依存して、センス電流は、素子の層の平面内(CIP)を流れ得るか、素子の層に垂直に(CPP)流れ得る。外部回路は、次に、電圧情報を適切な形式に変換して、その情報を必要に応じて扱い、ディスクに符号化された情報を再生する。
【背景技術】
【0002】
現代の磁気読み取りヘッドにおける構造は、ある種の磁気抵抗を示す強磁性材料を含む薄膜多層構造である。1つの磁気抵抗センサ構造は、合成反強磁性体(SAF)と強磁性自由層との間、または2つの強磁性自由層の間に位置する(薄い絶縁バリア層または非磁性材料のような)非磁性層から形成される。磁気センサの抵抗は、磁気層の磁化の相対的な配向に依存する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第7,236,333号明細書
【特許文献2】米国特許第6,437,949号明細書
【特許文献3】米国特許第5,515,221号明細書
【特許文献4】米国特許第7,369,360号明細書
【特許文献5】米国特許第5,621,592号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開2010/0214698号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
磁気読み取りセンサは、その読み取りセンサを漂游磁場から遮蔽することによって、当該読み取りセンサの空間分解能を増大させるための磁気シールドを有する。磁気シールドの磁区構成(magnetic domain configuration)および、記録媒体からの小さい磁場に対するその応答性が、大きく不均一な磁場にさらされていても安定であるということは、読み取りセンサにおいて検知される不要なノイズを最小化するために、重要である。強磁性シールド材料の磁気異方性を制御することによって、磁区構成を確立することが可能である。しかしながら、読み取りセンサの処理は、そのシールドが、好ましくない方法で当該磁気シールドの磁気異方性を再配向する(たとえば磁気グレインの成長をもたらす)可能性がある、高められた温度において、強い磁場にさらされることが要求される可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
簡単な要約
本開示は、複合磁気シールドを有する磁気センサに関する。本開示は、さまざまな種類の磁気抵抗(MR)リーダの、面密度能力を改善することができる。複合した第1の磁気シールドは、高められた磁気設定およびクロスアニール(cross anneal)温度において、安定的な異方性を提供する。
【0006】
1つの特定的な実施の形態において、磁気抵抗リーダは、第1の磁気シールド素子と、第2の磁気シールド素子と、第1の磁気シールド素子を第2の磁気シールド素子から分離するトンネリング磁気抵抗センサ積層体とを含む。第1の磁気シールド素子は、グレイン成長抑制層によって分離される2つの強磁性異方性層を含む。磁気抵抗リーダは、100%以上のTMR比を有するトンネリング磁気抵抗リーダであり得る。
【0007】
これらのおよびさまざまな他の特徴および利点は、続く詳細な説明を読むことで明らかとなるであろう。
【0008】
図面の簡単な説明
本開示は、添付の図面と関連して、この開示のさまざまな実施の形態の以下に続く詳細な説明を考慮することでより完全に理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】平面に垂直な異方性および側面シールドを有する自由層アセンブリを含むリーダの前面視図である。
【
図2B】別の例証的な複合シールドの層概略図である。
【
図3A】例証的なリーダを形成する方法を示す層概略図である。
【
図3B】例証的なリーダを形成する方法を示す層概略図である。
【
図3C】例証的なリーダを形成する方法を示す層概略図である。
【
図4】例証的なリーダを形成する例証的な方法のフロー図である。
【
図5A】例証的なシールド素子を形成する方法を示す層概略図である。
【
図5B】例証的なシールド素子を形成する方法を示す層概略図である。
【
図5C】例証的なシールド素子を形成する方法を示す層概略図である。
【
図5D】例証的なシールド素子を形成する方法を示す層概略図である。
【
図6】例証的なシールド素子を形成する例証的な方法のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図面は拡大縮小される必要がない。図面に用いられる同様の符号は、同様の構成要素を参照する。しかしながら、所与の図面中の構成要素を参照する符号の使用は、同じ符号が付された別の図面中の構成要素を限定する意図がないということが理解されるであろう。
【0011】
詳細な説明
以下の説明において、説明の一部を形成する添付の図面の組が参照され、図面においては、図示によって、いくつかの特定の実施形態が示される。他の実施形態が意図されるとともに本開示の範囲または精神から逸脱することなくなされ得る、ということが理解されるべきである。したがって、以下の詳細な説明は限定する意味で解釈されるべきではない。本明細書で与えられる定義は、本明細書で頻繁に用いられる特定の用語の理解を容易にするためのものであり、本開示の範囲を制限することを意味するものではない。
【0012】
それ以外が示されていなければ、明細書および請求項で用いられる形状、量および物理特性を表わすすべての数は、「約(about)」との用語によって、すべての例において変
更されるということが理解されるべきである。したがって、逆に示されていなければ、上述の明細書および添付の請求項において説明される数値パラメータは、近似であって、その近似は、本明細書に開示された教示を利用する当業者によって取得されることが目指される、所望の特性に依存して変化し得る。
【0013】
端点による数値範囲の記載は、その範囲内に包含されるすべての数を含む(たとえば1から5は、1,1.5,2,2.75,3,3.80,4および5を含む)とともに、その範囲内の任意の範囲を含む。
【0014】
この明細書および添付の請求項において用いられるように、単数形「a」、「an」、「the」は、その内容が明らかにそれ以外を示さない限りは、複数の対象を有する実施形態
を包含する。この明細書および添付の請求項において用いられるように、「または(or)」との用語は、その内容が明らかにそれ以外を示さない限りは、概して「および/または(and/or)」を含む意味において用いられる。
【0015】
なお、この開示では、「上(top)」、「下(bottom)」、「上方(above)」、「下方(below)」等の用語が用いられ得る。これらの用語は、構造の位置または向きを限定す
るように解釈されるべきものではなく、構造間の空間的な関係を与えるものとして用いられるべきものである。シード層またはキャップ層といった他の層は、明確さのために示されるのではなく、技術的必要性が生じたときに含まれうるものである。
【0016】
本開示は、複合磁気シールドを有する磁気センサに関連する。複合磁気シールドは高められた磁気設定アニールおよびクロス温度において安定的な異方性を提供する。複合磁気シールドは、グレイン成長抑制層によって分離された2つの強磁性層を含む。グレイン成長抑制層は、高温アニールの間、強磁性層における構造的な変化を抑制して、シールドの異方性磁区構造を安定化させる。本開示はそのように限定されるものではないが、本開示のさまざまな局面の理解は、以下に与えられる例の議論を通じて得られるであろう。
【0017】
図1は、複合した第1のシールド24を含む磁気抵抗(MR)リーダ10の前面視図であり、いくつかの実施の形態において、磁気抵抗(MR)リーダはトンネリング磁気抵抗(TMR)リーダである。トンネリング磁気抵抗(TMR)リーダ10は、第2の磁気シールド14を第1の複合磁気シールド24から分離するセンサ積層体12を含む。センサ積層体12は、参照磁化配向のM
R方向を有する参照磁気素子34と、その参照磁化配向
のM
R方向に対して実質的に垂直(および平面内)の自由磁化配向のM
F方向を有する自由磁気素子30と、参照磁気素子34を自由磁気素子30から分離する非磁性スペーサ層32とを含む。
図1は、参照磁化配向のM
R方向に対して実質的に垂直である自由磁化配向
のM
F方向を有する自由磁気素子30を示しているが、自由磁化配向のM
F方向が、参照磁化配向のM
R方向に対して実質的に平行または反平行でもあり得ることが理解される。電
気的絶縁層19,21は、第2の磁気シールドを第1の複合磁気シールド24から電気的に絶縁する。
【0018】
示された実施の形態において、自由磁気素子30は、センサ積層体12の上にあり、参照磁気素子34は、センサ積層体12の下にある。その代わりに、センサ積層体12が、センサ積層体12の上にある参照磁気素子34と、センサ積層体12の下にある自由磁気素子30とを含んでもよいことが明らかであるだろう。
【0019】
自由磁気素子30は、外部磁場に応答して回転する磁化M
Fを有する単一構造、または
複合構造、または多層構造である。多くの実施の形態において、センサ積層体12は磁気媒体からの磁束を検知する。トンネリング磁気抵抗(TMR)リーダの実施形態において、センサ積層体12は、トンネリング磁気抵抗(TMR)タイプのリーダであるが、その場合には、参照磁気素子34と自由磁気素子30とは、絶縁スペーサ層32によって分離された強磁性層であり、絶縁スペーサ層32は、電子が一方の強磁性層から他方の強磁性層へとトンネリングすることが可能なほどに十分に薄い(たとえば1から5ナノメートルの厚み)。
【0020】
スペーサ層32は、自由磁気素子30と参照磁気素子34との間に配置された非磁性絶縁層である。多くの実施の形態において、スペーサ層32は、Mg,Al,HfまたはTiからなる酸化物のような、非磁性かつ、絶縁性または半導電性の材料である。いくつかの実施の形態では、スペーサ層32はMgOである。
【0021】
参照磁気素子34は、その磁気素子34の1または複数の層(the layer or layers)
に対して平面内にある、固定された磁化方向M
Rを有する。自由磁気素子30の磁化方向M
Fは、静止状態において、固定された磁化方向M
Rに対して垂直であるか、または、静止状態において、固定された磁化方向M
Rに対して平行あるいは反平行であるか、のいずれかである。参照磁気素子34は、異方性に定義された磁化方向を有する単一の強磁性層であり得る。参照磁気素子34は、また、固定された方向を有する磁化M
Rを提供するため
に、層のさまざまな組み合わせを含み得るが、その組み合わせは、たとえば、反強磁性ピニング(pinning)層と強磁性ピンド(pinned)層、合成強磁性ピンド層(すなわち、Ruのような非磁性金属によって結合された2つの強磁性層)、または、反強磁性ピニング層に結合された合成強磁性ピンド層である。参照層アセンブリ34の強磁性層は、CoFe,NiFeまたはNiFeCoのような強磁性合金により作成され得るとともに、反強磁性層は、PtMn,IrMn,NiMnまたはFeMnにより作成され得る。
【0022】
動作において、センス電流がセンサ積層体12の1または複数の層の平面に対して垂直に流れるように、センス電流は、シールド14,24(いくつかの実施の形態において、それらは電子的リード線として機能することができる)を介して流れる。磁化M
Fが外部
磁場に応答して回転するので、センサ積層体12の抵抗は、磁化M
Fと磁化M
Rとの間の角度の関数として変化する。外部回路(図示せず)によって、センサ積層体12の電圧がリード線/シールド14,24の間で測定されて、センサ積層体12の抵抗の変化が検出される。
【0023】
センサ積層体12の部分は、そこでの磁化方向を設定するためにアニーリングを必要とする。トンネリング磁気抵抗タイプのセンサ積層体12の設計は、300℃以上、または340℃以上、または390℃以上といった、より高いアニーリング温度がセンサ積層体12のTMR比(%)を改善することを示した。高温アニールは、100%以上、または200%以上、または300%以上のTMR比を有するトンネリング磁気抵抗タイプのセンサ積層体12を作成することを可能にする。TMR(トンネリング磁気抵抗)比(%)は、以下の式(1)から導かれる。
【0024】
TMR比(%)=(Rmax−Rmin)/Rmax×100 (1)
RmaxおよびRminは、平行(低抵抗状態)および反平行(高抵抗状態)においてセンサ積層体12に電流を印加したときに得られる抵抗値である。TMR比を増大させることは、センサ積層体の感度および信頼性を改善する。
【0025】
トンネリング磁気抵抗タイプのセンサ積層体12は複合した第1のシールド24上に蒸着されるので、より高いTMR比(パーセント)を有するセンサ積層体12を提供するために必要な、より高いアニール温度において、複合した第1のシールド24は安定的な異方性を提供しなければならない。本明細書で説明される複合した第1のシールド24は、より高いアニール温度において安定的な異方性を提供する。
【0026】
複合した第1のシールド24は、グレイン成長抑制層25によって分離された2つの強磁性異方性層26,27を含む。グレイン成長抑制層25は、磁気抵抗リーダ10の磁気アニーリングの間、拡散、欠陥移動、およびグレイン結晶化を抑制する。グレイン成長抑制層25は、100オングストローム以下または50オングストローム以下の厚み、あるいは5オングストロームから50オングストロームまでの範囲内の厚みを有する。多くの実施の形態において、複合した第1のシールド24の全体厚みは約1マイクロメートルであり、多くの実施の形態において、2つの強磁性異方性層26,27の各々の厚みはおよそ等しい。
【0027】
いくつかの実施の形態において、グレイン成長抑制層25は、非磁性である。いくつかの実施の形態において、グレイン成長抑制層25は、磁性である。例示された実施の形態において、グレイン成長抑制層25は、Ru,Ta,Nb,ZrまたはHfであり、2つの強磁性異方性層26,27はNiFeである。多くの実施の形態において、グレイン成長抑制層25は、RuまたはTaであり、2つの強磁性異方性層26,27はNiFeである。
【0028】
図2Aは、例証的な、複合した第1のシールド24の層概略図である。複合した第1のシールド24は、上述のように、グレイン成長抑制層25によって分離された2つの強磁性異方性層26,27を含む。いくつかの実施の形態において、グレイン成長抑制層25は、非磁性である。いくつかの実施の形態において、グレイン成長抑制層25は、磁性である。複合した第1のシールド24は、さらに、任意選択的な硬質磁性層28を含む。硬質磁性層28は、複合シールド層の下に磁気的に結合することが可能であるとともに、動作中に媒体および漂游磁場からの磁化反転に耐えるだけの十分に高い磁気保磁力を有する、任意の実用的な磁性材料によって形成することが可能である。
【0029】
図2Bは、別の例証的な、複合した第1のシールド24の層概略図である。複合した第1のシールド24は、上述のように、グレイン成長抑制層25,29によって分離された3つの強磁性異方性層26,27,23を含む。いくつかの実施の形態において、グレイン成長抑制層25,29は、非磁性である。いくつかの実施の形態において、グレイン成長抑制層25,29は、磁性である。複合した第1のシールド24は、さらに、
図2Aと同様の硬質磁性層を含むことができる。硬質磁性層28は、任意の実用的な磁性材料により形成することができる。
【0030】
図3A−3Cは、例証的なトンネリング磁気抵抗(TMR)リーダ10を形成する方法を示す層概略図である。
図4は、例証的なトンネリング磁気抵抗(TMR)リーダを形成する例証的な方法のフロー図である。方法は、基板5に第1のシールド素子24を蒸着するステップを含む。第1のシールド素子24を、半導体製造技術を用いてスパッタ蒸着することができる。ブロック101において、第1のシールド素子24は、グレイン成長抑制層25によって分離された2つの強磁性異方性層27,26を含む。第1のシールド素子24は、上述した通りである。
【0031】
次に方法は、ブロック102において、第1のシールド素子24を磁気設定アニール温度でアニーリングして、設定アニールされた第1のシールドを形成するステップを含む。高められた温度において磁場が第1のシールド素子24に印加されて、第1のシールド素子24の強磁性異方性層27,26の少なくとも1つの磁気配向を設定する。多くの実施の形態において、磁気設定アニール温度は、350℃より高い、または390℃より高い、または440℃より高い。上述のように、グレイン成長抑制層25は、グレイン成長を抑制して、第1のシールド素子24の異方性を改善する。
【0032】
次に方法は、ブロック103において、アニールされた第1のシールド24にトンネリング磁気抵抗センサ積層体12を蒸着するステップを含む。トンネリング磁気抵抗センサ積層体12は、参照磁気素子34と、自由磁気素子30と、参照磁気素子34を自由磁気素子30から分離する非磁性スペーサ32とを含む。トンネリング磁気抵抗センサ積層体12は、上述の通りであり、半導体製造技術を用いてスパッタ蒸着することができる。
【0033】
次にブロック104において、トンネリング磁気抵抗センサ積層体12を磁気クロス設定アニール温度でアニーリングして、クロス設定アニールされたトンネリング磁気抵抗センサ積層体12を形成する。高められた温度において磁場をトンネリング磁気抵抗センサ積層体12に印加して、トンネリング磁気抵抗センサ積層体12の強磁性層30,34の少なくとも1つの磁気配向を設定する。多くの実施の形態において、クロス設定磁場は磁気設定磁場に垂直である。磁気クロス設定アニール温度は、第1のシールド素子24の磁気配向を乱さないために設定アニーリング温度より低く、かつ積層体中の反強磁性体のブロック温度より高く、したがって参照層は、アニーリング後に冷却されたときにピン止めされる。多くの実施の形態において、磁気クロス設定アニール温度は、350℃より高い、または390℃より高い。次にブロック105において、第2のシールド素子14は、クロス設定アニールされたトンネリング磁気抵抗センサ積層体12に蒸着されて、トンネリング磁気抵抗(TMR)リーダ10が形成される。
【0034】
図5A−5Dは、例証的な第1のシールド素子を形成する方法を示す層概略図である。
図6は、例証的なシールド素子を形成する例証的な方法のフロー図である。方法は、第1のシールド素子24を蒸着するステップを含む。第1のシールド素子24は、グレイン成長抑制層25によって分離された2つの強磁性異方性層27,26を含み、上述のように、第1のシールド素子24をアニーリングして設定アニールされた第1のシールドを形成する。第1のシールド素子24の露出面が次に、半導体製造技術を用いて研磨されて、平坦で露出した第1のシールド表面を形成する。研磨するステップは、研磨対象の層の少量を除去する。たとえば、研磨するステップは、研磨対象の強磁性層の2%未満または1%未満を除去する。
【0035】
第1のシールド素子24の構造は、たとえばフォトリソグラフィによるパターニングおよびその次のエッチングのような、任意の実用的な方法によって定義することができる。パターニングは、ブロック201の蒸着ステップに続いて実行可能である。結果としての構造は、以下のパターニングされた第1のシールド素子24として説明される。
【0036】
多くの実施の形態において、次にブロック201において、平坦で露出した第1のシールド表面に、化学機械研磨(CMP)ストップ層が蒸着される。CMPストップ層50は、たとえばクロム、a−カーボンといった任意の実用的なCMPストップ材料であり得る。多くの実施の形態において、この構造は次にパターニングされて、所望の第1のシールド素子寸法が、半導体製造技術を用いて形成される。他の実施の形態において、化学機械研磨(CMP)ストップ層50が蒸着されない。
【0037】
絶縁材料60がブロック202において、パターニングされた第1のシールド素子24の周囲に蒸着される。絶縁材料は、たとえば金属酸化物あるいは半導体酸化物のような任意の実用的な電気的絶縁材料であり得る。絶縁材料60はパターニングされた第1のシールド素子24を封入することができる。
【0038】
次に、方法は、ブロック203において、化学機械研磨によって、化学機械研磨(CMP)ストップ層50まで研磨することにより、絶縁材料60を除去するステップを含む。CMP方法のステップは、絶縁領域およびCMPストップ層領域の平坦な表面を形成する。次に、ブロック204において化学機械研磨ストップ層50が除去される。次にセンサ積層体を、上述のように第1のシールド素子の、平坦で露出した表面に蒸着することができる。
【0039】
この方法は、複合した第1のシールドの上部強磁性層の層厚みの制御を提供する。CMP処理の間に極めて少ない上部強磁性層が除去されて、平坦な研磨の方法のステップは、センサ積層体を蒸着するための平坦な表面を提供するとともに、蒸着の間のセンサ積層体の均一性を改善する。
【0040】
したがって、「複合磁気シールドを有する磁気センサ」の実施の形態が開示される。上述の実現例および他の実現例は、以下に続く請求項の範囲内にある。当業者は、この開示が、開示された以外の実施の形態で実現可能であることを理解するであろう。開示された実施の形態は例示の目的で提示されるものであって制限する目的で提示されるものではなく、本発明は以下に続く請求項によってのみ限定される。