(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記低屈折率層からの光を受容する、及び/又は前記低屈折率層に光を透過するように配置されたプリズム輝度上昇フィルムであって、前記第2の平面に入射する光に圧縮された視野円錐を提供するように適合される、プリズム輝度上昇フィルムを更に備える、請求項3に記載のフィルム構造体。
前記低屈折率層からの光を受容する、及び/又は前記低屈折率層に光を透過するように配置された輝度上昇フィルムであって、前記フィルムが伸長プリズムを画定する構造化表面を有し、各プリズムが前記第1の平面と平行であるプリズム軸に沿って延在する、輝度上昇フィルムを更に備える、請求項3に記載のフィルム構造体。
【発明を実施するための形態】
【0014】
表示装置、バックライト、照明器具等で使用するのに適したほとんどの光学フィルムは、光の入射角と共に変化する光の透過及び反射特性を有している。多層光学フィルム、例えば、一部の光が複数のミクロ層の境界面から反射されて建設的又は相殺的干渉を受け、所望の反射又は透過特性をもたらすのに十分なだけ薄い複数のミクロ層を備える多層光学フィルムは、特定の媒体(典型的には空気)への特定の入射及び/又は出射角範囲用に設計される。同様に、プリズム輝度強化フィルムなどの表面構造化フィルムもまた、空気中への特定の入射及び/又は出射角範囲用に設計される。空気中への所定の入射角に関し、こうした光学フィルムの伝播角度及び出射角は、反射に関するスネルの法則などの周知の式、及び回折格子の式などのその他の式よって決定される。
【0015】
液晶表示装置(LCD)用途で使用される多くの光学フィルムは、空気中で使用するために設計される、即ち、光は、空気中からフィルムの第1の主表面にある範囲の入射角にわたって衝突し、光は、フィルムの第2の主表面からある範囲の出射角のにわたって空気中に出射し、入射角又は出射角の一方又は両方は、空気中で0°〜90°の範囲をカバーする。このようなフィルムは、空気中に「光学的に浸漬されている(optically immersed)」ということができる。これは、肉眼で任意の空気層を観察するのが難しい場合であっても当てはまる。例えば、1つの光学フィルムを別の光学フィルムの上に置く場合、肉眼には、2枚のフィルムはそれらの全主表面にわたって実質的に接触状態にあるように見える可能性がある。しかしながら、多くの場合、そのようなフィルムは、有限個の点で互いに接触しているだけであり、光学的に厚い空隙(即ち、その厚さが目的の光の波長を実質的に超える空隙)が、フィルムの主表面の間に実質的に維持されている。
【0016】
液晶表示装置及びその他の製品のコスト削減、並びに/又は製品の厚さを薄くするといった設計強化に対する市場動向は、不必要な構成要素を特定して排除し、個々の構成要素を組み合わせて1つ以上の一括セットにするという要求をもたらし得る。光学フィルムの場合、そのような要求は、光学フィルムを1つ以上の他のフィルム又はシステムの構成要素に固着して又は取り付けて、積層体の要素の間に空隙が実質的に存在しない積層構造体を形成するという試みをもたらし得る。
【0017】
図1は、参照しやすいようにデカルトx−y−z座標系の概念内で、ディスプレイアセンブリ112とバックライト114とを備える典型的な表示システム110の概略的側面図を示す。このシステム110がLCDの場合、ディスプレイアセンブリ112は、前後の吸収偏光子の間に挟まれた液晶(LC)表示パネルを備えてもよく、このLC表示パネルは、電極構造のアレイ及び個々にアドレス可能な画素(ピクセル)を形成するためのカラーフィルターグリッドを備え、その間に液晶材料が配置されたガラスのパネル板を更に備える。制御装置116は、接続部116aを介してディスプレイアセンブリ112に連結して、観察者118が認識することができる好適な画像を生成するために、電極構造を適切に駆動する。バックライト114は「エッジ照明」の種類のものであってもよく、その場合、1つ以上のLED、冷陰極蛍光ランプ(CCFL)、又はその他の好適な光源120a、120bが、バックライトの1つ以上の縁部又は境界に沿って、その表示領域の外側に位置付けられる。あるいは、バックライトは直接照明の種類のものであってもよく、その場合、1つ以上のかかる光源120c、120d、120eが、拡散板又はその他の好適な要素の後の表示領域内に位置付けられてもよい。いずれの場合にも、バックライト114は、ディスプレイアセンブリ112の表示領域に対応する大きな出力エリア114aにわたって光を提供する。バックライトによって提供される光は、典型的には白色である、即ち、観察者に少なくとも名目上白に見えるように、赤、緑、及び青色スペクトル成分(又はスペクトル成分のその他の好適な混合)の適正なバランスを含む。
【0018】
表示システム110はまた、典型的には、ディスプレイアセンブリ112とバックライト114との間、又はシステムの他の場所に1つ以上の光学フィルム又は他の構成要素を備える。表示システムの種類によっては、そのような構成要素は、例えば、1つ以上の偏光子(例えば、吸収性偏光子及び/又は反射偏光子など)、拡散体(例えば、拡散板、利得拡散体(gain diffuser)、体積拡散体、及び/又は表面拡散体)、及び/又はプリズム輝度強化フィルム(例えば、3M Company(St.Paul,Minnesota,USA)から市販されている各種Vikuiti(商標)BEF製品のいずれか)を備えてもよい。こういったフィルムは、「使用不可能な光」(即ち、ディスプレイアセンブリ112の中の後方吸収偏光子によって吸収されることになる偏光であるという理由、又は不適当な角度で伝播するという理由のいずれかによって、所望のシステム出力に貢献しないことになる光)をディスプレイアセンブリから離れるように反射した後、例えば、拡散、鏡面反射、又は半鏡面反射体を介して、こうした反射光の一部を「使用可能な光」(即ち、システム出力に貢献することができる光)としてディスプレイアセンブリに戻るように向け直すことによって、表示システムの効率及び/又は輝度を強化するためにしばしば使用される。こうした光の反射及び再方向付けは、表示システム内における少なくともある程度の光リサイクリングを提供し、このリサイクリングは、一般に矢印122a、122bで示される。
【0019】
通常ディスプレイアセンブリ112とバックライト114との間に設置される、又は他の場所に配置されるフィルム及び構成要素は、上述の空隙を有さない積層構造体で使用するための候補である。かかる積層構造体は、
図2の表示システム210に概略的に描かれている。積層構造体を除いて、システム210は、上述の種々の順列を含んで
図1のシステム110と実質的に同一であり得、同様の要素については同様の参照番号を使用し、簡潔にするためにここでは更なる説明を省略する。しかしながら、
図2の表示システムは、1つ以上の光学フィルムを他のフィルム又は構成要素に空隙なしで接合して、図のような1つ以上の積層体212a、212b、212cを提供している。この図では、積層体212aは、ディスプレイアセンブリ112(又はその構成要素)に空隙なしに付着し、積層体212cは、バックライト114(又はその構成要素)に空隙なしに付着している。場合によっては、1つ以上の光学フィルムを、他のフィルム(1枚又は複数)あるいは構成要素(1つ又は複数)に、それらの間に空隙なしに付着させるが、ディスプレイアセンブリ及びバックライトの両方から空隙を介して離間され得る積層体212bが提供されてもよい。
【0020】
積層体に含まれる光学フィルムの種類によっては、空気境界面又は空隙は、光学フィルムの作用に支障を与える場合があり、又は与えない場合もある。接合される各フィルム又は構成要素が、光の入射の過程で、又は光がフィルムの1つの主表面に入射した後で他の主表面から出射する前に、光を実質的に散乱ないしは別の方法で向け直さない場合には、このフィルムは、積層前、即ち、空隙の排除の前と同様に機能し続ける可能性がある。しかしながら、光が非平面を通って、又はフィルムと平行でない表面を通ってフィルムに入射する場合、フィルムは適切に機能しない可能性がある。この1つの例は、Vikuiti(商標)DBEF多層反射偏光フィルム上にコーティングされたBEFプリズムである。BEFプリズムフィルム及びDBEFフィルムは共に、空気中で使用するように設計されているが、両方のフィルムの平面を、例えば、光学接着剤で光学的に連結することによって空隙が排除されると、機能の損失は生じない。別の例は、吸収偏光子フィルムに積層されたVikuti(商標)DBEFフィルムである。これらの例の両方において、空隙の排除は、影響を受けたフィルムを通って伝播する光の角度分布に実質的に影響を与えない。別の言い方をすれば、積層構造体の中の各光学フィルムは、その主表面が空気と接触することができないにもかかわらず、空気中に光学的に浸漬されているということができる。このことは、
図3a〜
図3cに関連して以下に更に説明される。
【0021】
別の場合では、大きく傾斜した光を生成する少なくとも1枚のフィルム又は構成要素が積層体に提供され、空隙の排除とそのような大きく傾斜した光との組み合わせは、「超臨界」光を、システム性能を低下させるやり方で目的の光学フィルムを通して伝播させ、積層体から射出させる効果を有する。「超臨界」光とは、平坦で滑らかな空気/フィルム境界面を使用した空気中からの照射によって達成され得るよりも傾斜した角度でフィルムを通って移動する光を意味する。このように、フィルムが空気中に光学的に浸漬されている場合、空気中からフィルムの主表面に衝突する光の最大入射角は90度である。そのような斜入射光は、フィルムの屈折率の関数である臨界角(θ
c)でフィルムの中に屈折される。臨界角は、典型的には、光がフィルム内を伝播することになる最も傾斜した角度である。超臨界光を光学フィルムを通して伝播させて、最終的に積層構造体から出射させることができる積層構造体では、光学フィルムは、空気より高い屈折率の媒体に光学的に浸漬されているということができる。このことは、
図3cに関連して以下に更に説明される。本出願の文脈において、「光学的に浸漬されている」として記述されるフィルム又は構成要素は、他に指示がない限り、屈折率が空気よりも高い媒体に光学的に浸漬されていると考えられる。
【0022】
そのような状況は、BEFプリズムフィルムを、バックライトの拡散板、又はLCDパネルに、例えば、1.5に近い屈折率を有する従来の光学接着剤を使用して積層する場合に生じ得る。どちらにおいても、BEFフィルムの入射角及び出射角は、空気の屈折率と有意に異なる積層用接着剤の屈折率の影響を著しく受ける。この状況は、従来の光学接着剤を使用して拡散体を反射偏光子の片側に積層した後、その反対側をLCDパネルに積層する場合にも生じ得る。この場合、光学接着剤は、拡散体内で生成された大きく傾斜した光を、超臨界光として反射偏光子に透過させ、この超臨界光は、LCDパネルに更に透過することができる。反射偏光子もLCDパネルも、典型的には、かかる大きく傾斜した光に適合するように設計されていないので、このことにより、偏光子及びLCDパネル内の大量の内部散乱光によって性能が低下する結果となり得、ひいては、表示コントラスト及び輝度がかなり低下する結果となり得る。たとえ(例えば、ミクロ層の数を増やし、ミクロ層を特徴付ける厚さ勾配の上限を拡大して)多層スタックの反射偏光子の既に広い反射帯域を実質的に拡大することによって、より広範囲の入射角に対処するように反射偏光フィルムを再設計したとしても、そのような再設計されたフィルムは、より広範囲の角度にわたって通過軸偏光を透過させ続け、前述の問題は解決されないままとなる。
【0023】
積層構造体を伝播する超臨界光に伴う問題を最小限に抑えるために、光学設計の観点から、できるだけ空隙に似ている材料層、例えば、光学的に厚い光路に対する光の透過性が高く、その屈折率が1.0に近い材料層を使用することが望ましいことになる。別の言い方をすれば、表面対表面のやり方で透過光学構成要素を物理的に取り付け、尚且つ入射角及び出射角を空気に匹敵する角度に制限する手段の必要性が存在する。機械的完全性が良好でヘイズが低い超低屈折率フィルムが近年開発された。そのようなフィルムは、空隙を近似するためにほとんどあらゆる光学フィルムにコーティングされることができ、その後、任意の従来の光学接着剤を適用して、このコーティングされたフィルムをシステムの別の構成要素に近似することができる。好適な超低屈折率材料は、例えば、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる次の米国特許出願に記載されている:米国特許出願第61/169466号、「Optical Film」(代理人整理番号65062US002)、2009年4月15日出願;米国特許出願第61/169521号、「Optical Construction and Display System Incorporating Same」(代理人整理番号65354US002)、2009年4月15日出願;米国特許出願第61/169532号、「Retroreflecting Optical Construction」(代理人整理番号65355US002)、2009年4月15日出願;米国特許出願第61/169549号、「Optical Film for Preventing Optical Coupling」(代理人整理番号65356US002)、2009年4月15日出願;米国特許出願第61/169555号、「Backlight and Display System Incorporating Same」(代理人整理番号65357US002)、2009年4月15日出願;米国特許出願第61/169427号、「Process and Apparatus for Coating with Reduced Defects」(代理人整理番号65185US002)、2009年4月15日出願;米国特許出願第61/169429号、「Process and Apparatus for A Nanovoided Article」(代理人整理番号65046US002)、2009年4月15日出願;及び米国特許出願第61/254,243号、「Optical Construction and Method of Making the Same」(代理人整理番号65619US002)、2009年10月22出願。超低屈折率材料は、ゲルタイプのヒュームドシリカを使用して作製することもできる。超低屈折率材料は、例えば、可視波長にわたって1.1〜1.3、又は1.15〜1.25の範囲内の屈折率を有し得る。以下に更に論じられるように、超低屈折率材料はまた、屈折率勾配を呈してもよい。例えば、材料は、結合剤と複数の粒子とを含む勾配フィルム又は層の形態であってもよく、結合剤と複数の粒子の重量比は約1:2未満である。勾配光学フィルム(gradient optical film)は、局所体積分率を有する複数の相互接続したボイドを更に含んでもよく、複数の相互接続したボイドの局所体積分率はフィルムの厚さ方向に沿って変化して、フィルム内にこの厚さ方向に変化する局所屈折率をもたらす。共に本出願と同日に出願された米国特許出願第XX/XXX,XXX号、「GRADIENT LOW INDEX ARTICLE AND METHOD」(代理人整理番号65716US002);及び米国特許出願第XX/XXX,XXX号、「PROCESS FOR GRADIENT NANOボイドED ARTICLE」(代理人整理番号65766US002)を参照し、これらは参照により本明細書に組み込まれる。
【0024】
かかる超低屈折率材料を、角度感度の高い(angle-sensitive)光学フィルムを備える積層体で使用することができ、その結果、超臨界光伝播の悪影響を最小限に抑えた状態で、かかるフィルムを他のフィルム又は構成要素と機械的又は光学的に連結することができる。しかしながら、1つ以上のそのような超低屈折率材料層を積層構造体の中で使用するときでさえ、超臨界光伝播の影響は、依然としてシステム性能において重量な役割を果たし、実際に、多層光学フィルム及び/又はその他の角度感度の高い光学フィルムの設計面が適切に取り扱われないと、システム性能を実質的に低下させる可能性がある。
【0025】
超臨界光伝播を支持する積層体で使用される多層反射偏光フィルムの具体的な設計考慮を考察する前に、
図3a〜
図3cを参照して、空気以外の媒体に光学的に浸漬するフィルムの概念を図示する。
【0026】
図3a〜
図3cは、フィルムを光媒体に浸漬する概念を説明する、他の層が適用される簡略化された積層フィルムの一連の概略的側面図である。
図3aにおいて、基本的なフィルム構造体310は、両側が屈折率n
0の媒体(これは空気(n
0=1.0)であると考えられる)に暴露された積層フィルム312から本質的になる。説明を簡単にするため、この
図3a〜
図3cに示されるn
0及び他の屈折率は、等方性であると仮定する。更に、フィルム312は、2つの層だけを有するものとして図示されており、第1の層は、屈折率n
1がほぼ1.5以上である、ポリマーなどの従来の低屈折率光学材料であり、第2の層は、屈折率n
2が約1.5以上であるが、n
2はn
1よりも実質的に大きい、異なるポリマーなどの高い屈折率光学材料である。フィルム312は、第1の主表面312aと、第1の層と第2の層を分離する表面又は境界面312bと、第2の主表面312cとを有する。表面312aは、空気の厚い層314に露出しており、表面312cは、空気の別の厚い層316に露出している。
【0027】
図3aを更に参照すると、光は、下方、即ち、空気の層314からフィルム312に入射する。入射光は、フィルム312の厚さの寸法に対して垂直であり得る図のz軸にほぼ沿って移動するが、入射光は、z軸に対して平行に方向付けられる光線、z軸に対して適度な斜角で方向付けられる光線、及びすれすれ入射で表面312aにぶつかるようにz軸に対して事実上垂直である極度な斜角で方向付けられる光線など、最大限広い範囲の光線伝播方向を含む。この最大限広い範囲の入射角は、5頭矢印記号305で表わされている。一部の例では、記号305の付いた配光は準均等拡散(quasi-Lambertian)であってもよく、他の例では大きく異なる分布を有してもよい。いずれの場合も、記号305の配光は、考えられる半球状(又は2π立体角)の光路にわたる全方向に進行する若干の光を含む。本発明者らは、ここでは、空気層314からフィルム312を通って反対側の空気層316へと通過する場合の入射光について追求する。そうすることで、様々な境界面における屈折に焦点を合わせ、簡略化のために反射を無視する。
【0028】
表面312a、312b、312cは全て、平面で滑らか、及びz軸に対して垂直であると仮定する。したがって、空気層314からの入射光が主表面312aに衝突すると、この光は、スネルの法則、即ち、n
0 sinθ
0=n
1 sinθ
1に従ってフィルム312の第1の層の中へ屈折する。入射光は、入射角範囲がθ
0=0〜θ
0≒90度である光線を含むので、屈折光は、その屈折角、又は伝播角がθ
1=0〜θ
1=θ
c1の範囲の屈折光線を含み、ここで、sin(90)=1及びn
0=1であるので、θ
c1は第1の層の材料の臨界、即ち、θ
c1=arcsin(1/n
1)である。第1の層での全屈折光線の収集は、その半角がθ
c1である円錐で表わされている。
【0029】
屈折光は、z軸にほぼ沿って前進し、表面又は境界面312bに遭遇し、そこで光が、その屈折率がn
2である第2の層に入射すると、第2の屈折が生じる。第2の屈折は、ここでもスネルの法則に従い、ある範囲の伝播方向又は角度θ
2にわたって第2の層内に屈折光を生成し、ここで、θ
2は、θ
2=0〜θ
2=θ
c2の範囲である。角度θ
c2は、第2の層の材料の臨界角、即ち、θ
c2=arcsin(1/n
2)である。第2の層での全屈折光線の収集は、その半角がθ
c2である円錐で表わされている。屈折率n
2は屈折率n
1よりも大きいと仮定されるので、角度θ
c2は、θ
c1よりも小さいものとして示されている。
【0030】
第2の層で屈折した光は、主表面312cに遭遇するまで更に前進する。ここで、光が第2の層から空気層316へと通過するときに、別の屈折が生じる。この場合も先と同様にスネルの法則に従って、第2の層の光の伝播角度θ
2の範囲は、屈折によって、空気層316の伝播角度範囲である0〜ほぼ90度の範囲(ここでも同様に記号305で示される)に変えられる。このように、フィルム312を進行する過程で、空気中から半球形に入射した光は、フィルムの異なる材料層において光の円錐分布へと変換された後、もう1つの空気層において半球形に伝播する光へと再度戻る。材料層における円錐分布の半角は、それぞれの材料の臨界角に等しい。
【0031】
ここで
図3bを参照すると、別のフィルム構造体320の概略的側面図が示されている。フィルム構造体320は、
図3aの2つの積層フィルム312を備えるが、フィルム312の各側に、屈折率n
o’を有する超低屈折率材料の1つの層が加えられて、構造体320を提供する。屈折率n
o’は、空気より大きいが、低屈折率n
1よりも実質的に小さい。屈折率n
o’の材料の第1の層322は、フィルム312の表面312aに適用され、屈折率n
o’の材料の第2の層324は、フィルム312の表面312cに適用される。元のフィルム312は層322、324と組み合わされて、空気に露出する平坦で滑らかな主表面322a、324aを有する新しいフィルムを形成し、表面322a、324aは表面312a〜312cと平行である。
【0032】
更に
図3bを参照すると、光は、下方、即ち、空気の層314から構造体320に入射する。
図3aと同様に、入射光は、図のz軸にほぼ沿って移動するが、光線は、ここでも5頭矢印記号305で表わされる最大限広い範囲の入射角に及ぶ。本発明者らは、ここでは、空気層314から構造体320を通って反対側の空気層316へと通過する場合の入射光について追求する。
【0033】
空気層314からの入射光が主表面322aに衝突すると、この光は、スネルの法則、即ち、n
0 sinθ
0=n
0’ sinθ
0’に従って層322の中へ屈折する。入射光は、入射角範囲がθ
0=0〜θ
0≒90度である光線を含むので、屈折光は、その屈折角、又は伝播角がθ
0’=0〜θ
0’=θ
c0の範囲の屈折光線を含み、ここで、θ
c0は超低屈折率材の臨界角、即ち、θ
c0=arcsin(1/n
0’)である。層322での全屈折光線の収集は、その半角がθ
c0である円錐で表わされている。
【0034】
この屈折光は、次に構造体320の残部を通って前進する。その間に、個別層のそれぞれにおける伝播方向の範囲を表す角度の円錐が、スネルの法則によって決定される。簡単なやり方で、
図3bに示されるように、光が層322から層324へと前進するにつれて、伝播方向の円錐の半角が、θ
c0からθ
c1、θ
c2、θ
c0へと変化することは、容易に推測され得る層324から空気層316の中へ屈折する光は、この場合も、最大限広い範囲の伝播角度305に屈折される。
【0035】
図3aと
図3bを比較すると、フィルム312への層322、324の追加は、フィルム312内部の伝播方向の範囲を変えるのに役に立たないのが分かる。フィルム312の2つの層のそれぞれに関し、伝播錐体の半角は同じままである。層322、324に用いられる屈折率に関係なく、この結果は同じとなることに留意されたい。そのため、フィルム312と空気の間に層322、324が存在するにもかかわらず、それでもやはり、フィルム312はなおも空気中に光学的に浸漬されていると特徴付けられる。
【0036】
ここで
図3cを参照すると、層322、324が層332、334で置き換えられていることを除いて、構造体330と実質的に同じであるフィルム構造体330が示されている。層332、334は、層322、324と同じ超低屈折率を有する。しかしながら、
図3bの平坦で滑らかな主表面322a、324aは、有意な拡散効果をもたらす粗面化された主表面332a、334aで置き換えられている。結果として、空気層314から主表面332aに衝突する半球形に分布した入射光線は、
図3bの場合のように半角θ
c0の円錐に拘束されるのではなく、層332において全ての伝播角度(記号305参照)で屈折及び拡散される。層332のこの拡大された伝播角度範囲は、境界面312aにおけるスネルの法則により、フィルム312の第1の層に伝播方向の円錐を生成し、その半角θ
c1’は、
図3bの対応する半角θ
c1よりも実質的に大きい。具体的には、θ
c1’=arcsin(n
0’/n
1)である。この光がフィルム312の第2の層に移行すると、光は表面312bで屈折して第2の層に伝播方向の円錐を生成し、この円錐もまた、
図3bの対応する円錐と比べて拡大されている。半角θ
c2’は、θ
c2’=arcsin(n
0’/n
2)に従って計算される。この光は表面312cで屈折して、スネルの法則により全ての角度で超低屈折率層334に入り、次にこの光は、粗面化された主表面334aのせいで屈折して、全ての角度で空気層316の中に拡散する。
【0037】
図3cを
図3a及び
図3bと比較すると、光は、構造体320、310と比べて、構造体330において、より斜角でフィルム312の層に伝播することができることが分かる。光は、超低屈折率層332から全ての角度でフィルム312上に衝突することができるので、また、任意のかかる角度でフィルム312に入射する光は、層334、316を介してフィルムを射出することができるので、
図3cのフィルム312は、屈折率n
0’の超低屈折率材料に光学的に浸漬されているということができる。
【0038】
図4は、層が空気以外の媒体に光学的に浸漬されている場合の円錐の拡大を例示している、所与の層を伝播する光の角度範囲、又は円錐の斜視図である。このように、円錐410の半角は、層材料の臨界角θ
cである。これは、層が空気中に光学的に浸漬されている場合に起こり得る光の伝播方向の範囲である。層が空気より大きい屈折率の媒体に光学的に浸漬されている場合、光伝播方向の範囲は、半角θ
c’であるより広い円錐412に拡大する。これら2つの円錐、又は立体角の間の差は、
図4では異なる角度θ
gapで表わされている。その伝播方向がこのギャップの中にある光は、層(又は層の一部のフィルム)が処理するように設計されていない可能性がある光を表す。
【0039】
多層光学フィルムが超低屈折率材料に光学的に浸漬されているものと考えることができるように、1つ以上の光学的に厚い超低屈折率の層を備える開示の積層構造体で使用することができる該多層光学フィルムにここで注意を向ける。まず、多層光学フィルムの一般的な性能の広範な記載から始め、その後、多層光学フィルムを、斜角反射又はコリメーティング特性を備える光学的に浸漬されている反射偏光子として使用するのを可能にする具体的な設計特性について記載する。
【0040】
図5は、典型的には1つ以上の隣接パケットに配列される数十又は数百というこのような層を備える多層光学フィルム500のうちの2つの層だけを図示している。フィルム500は、個別のミクロ層502、504を備えている。これらのミクロ層の屈折率特性は異なっており、隣接し合うミクロ層の境界面で一部の光を反射するようになっている。ミクロ層は、複数の境界面で反射された光が、建設的又は破壊的干渉を受けてフィルムに所望の反射又は透過特性を提供できるような薄さである。光を紫外線、可視又は近赤外線波長で反射するように設計された光学フィルムでは、各ミクロ層は、一般に約1μm未満の光学的な厚さ(即ち、物理的厚さに屈折率を乗じたもの)を有する。しかしながら、フィルムの外側表面の表面薄層又はミクロ層のパケットを分離させるフィルム内に配置されている保護境界層などのより厚い層を含めることもできる。
【0041】
多層光学フィルム500の反射及び透過の性質は、それぞれのミクロ層の屈折率、ミクロ層の総数、及びミクロ層の厚さの関数である。各ミクロ層は、少なくともフィルムの局所的位置で、面内屈折率nx、nyと、フィルムの厚さ方向軸と関連付けられる屈折率nzとによって特徴付けることができる。これらの屈折率は、それぞれ互いに直交するx軸、y軸及びz軸に沿って偏光された光の対象材料の屈折率を表わす(
図5を参照)。
【0042】
実際には、屈折率は、賢明な材料選択及び加工条件によって制御される。フィルム500は、典型的には数十又は数百の2種の高分子の交互層A、Bを同時押出形成し、その後で、必要に応じて多層押出物を1つ以上の倍増ダイに通し、次に押出物を伸張又は他の方法で延伸させて最終フィルムを形成することによって製造することができる。得られたフィルムは、典型的には数十又は数百の個々のミクロ層で構成されており、その厚み及び屈折率は、可視又は近赤外などの所望のスペクトル領域において1つ以上の反射帯域をもたらすように調整されている。妥当な数の層で高反射率を達成するために、隣接ミクロ層は、x軸に沿って偏光した光に対して少なくとも0.05である屈折率の差(Δn
x)を呈し得る。2つの直交する偏光に対して高反射率が所望される場合には、隣接ミクロ層は、y軸に沿って偏光した光に対して、例えば、少なくとも0.05の屈折率差(Δn
y)を呈し得る。
【0043】
必要に応じて、z軸に沿って偏光した光の隣接ミクロ層間の屈折率差(Δn
z)を調整して、斜めに入射した光のp偏光成分に望ましい反射率特性を達成することができる。説明を容易にするために、多層光学フィルム上の任意の対象点において、x軸は、面内Δnの大きさが最大となるようにフィルムの平面内で延伸されているとみなす。したがって、Δn
yの大きさは、Δn
xの大きさに等しいか又はそれ未満(超過ではない)であってもよい。更に、差Δn
x、Δn
y、Δn
zの計算を始める材料層の選択は、Δn
xが負にならないように決定される。言い換えれば、境界面を形成する2層間の屈折率の差はΔn
j=n
1j−n
2jであり、式中、j=x、y、又はzであり、層の表記1、2は、n
1x≧n
2x、即ち、Δn
x≧0となるように選定される。
【0044】
斜入射角のp偏光のほぼ軸上の反射率を維持するために、ミクロ層間のz屈折率の不一致Δn
zを、実質的に最大面内屈折率差Δn
x未満、Δn
z≦0.5
*Δn
xとなるように制御することができる。あるいは、Δn
z≦0.25
*Δn
xである。ゼロ又はほぼゼロの大きさのz屈折率の不一致が、p偏光に対する反射率が入射角の関数として一定又はほぼ一定である境界面をミクロ層の間にもたらす。更に、z屈折率の不一致Δn
zは、面内屈折率の差Δn
xと比較して反対の極性を有するように、即ち、Δn
z<0であるように、制御することができる。この条件は、s偏光の場合と同様に、p偏光に対する反射率が、入射角の増加と共に増加する境界面をもたらす。
【0045】
所与の多層フィルムのミクロ層の全ての厚さが同じであるように設計される場合には、フィルムは、狭波長帯域のみにわたって高反射率をもたらすことになる。帯域が可視スペクトル内のどこかにあるする場合、そのようなフィルムは高度に着色されて見えることになり、色は角度の関数として変化する。ディスプレイ装置用途との関連では、目立つ色を呈するフィルムは一般に避けられるが、場合によっては、システムの他の場所の色のアンバランスを補正するために、所与の光学フィルムがわずかな色を導入するのは有益であり得る。ミクロ層(もっと正確にいうと、典型的には一対の隣接するミクロ層に対応する光学的反復ユニット)がある範囲の光学的な厚さを有するように調整することにより、例えば、全可視スペクトルにわたって広帯域反射率及び透過率を備える多層フィルムを提供することができる。典型的には、ミクロ層は、フィルム又はパケットの一方の側の最も薄い光学的反復ユニットから、反対側の最も厚い光学的反復ユニットまで、フィルムのz軸又は厚さ方向に沿って配列され、最も薄い光学的反復ユニットは、反射帯域の最短波長を反射し、最も長い光学的反復ユニットは最長波長を反射する。帯域端部を鋭くするように調整された厚さ勾配を含む、多層光学フィルムの厚さ勾配の更なる考察は、米国特許第6,157,490号(Wheatleyら)に提供されている。
【0046】
開示される多層フィルムは、可視スペクトルのほとんどにわたる波長の光を、超低屈折率(ULI)媒体の中でほとんどの角度で反射するのに十分な帯域幅の反射帯域を有するのが望ましい。多くのディスプレイ及び照明器具に適合する可視スペクトルは、一部のシステムでは約630nm、その他では650nm、最も高い色域システムの一部では670nmの長さに及ぶ。任意のULI/ポリマー境界面における90度に近い高いフレネル反射に起因して、光はこうした高角度であまり透過されない。このため、p偏光に対するフィルムの通過軸の右側帯域(RBE)は、ULI中でθ=75度において約650nmを上回るのが望ましい。屈折率が1.2のULIでは、フィルムの通過軸の最小RBEは、垂直入射で少なくとも950nmであるのが望ましい。液晶ディスプレイのコントラスト及びカラーバランスを改善するために、p偏光に対するこうしたフィルムの通過軸のRBEは、垂直入射で1000nmを超える、若しくは1050nm、又は1100nmのように長いのが望ましい。ULIが1.15の屈折率を有する場合、p偏光に対する通過軸のRBEは、垂直入射で少なくとも約900nmを超えるのが望ましく、より望ましくは950nmを超え、又は更に1000nmである。1.15又は1.2のいずれかより高いULIでは、フィルムの右側帯域を比例して高くするのが望ましい。
【0047】
多層光学フィルムは、任意の好適な技術を用いて製造され得る。典型的には、製造は、ポリマー材料をその融解温度又はガラス転移温度より高い温度で加熱することと、溶融ポリマーを多層供給ブロックに供給することと、1つ以上の層増幅器を使用して層を任意に増やすことと、フィルム押出しダイを通して溶融材料を送ることと、ダイをキャスティングホイールの上に残した状態で押出品をキャスティングすることと、キャストフィルムを1つ又は2つのフィルム方向に沿って延伸ないしは別の方法で配向することとを含む。例えば、米国特許第5,882,774号(Jonzaら)及び同第6,783,349号(Neavinら)を参照されたい。一部の実施形態では、フィルムは層増幅器を使用せずに製造され得る。層増幅器は、多数の光学層の生成を大幅に単純化するが、各合成層パケットに、各パケット毎に同一でない歪みを与えることがある。この理由のため、供給ブロック内で生成された層の層厚さプロファイルの調整は、各パケット毎に同じではなく、即ち、スペクトル分断のない均一で滑らかなスペクトルを生成するために全てのパケットを同時に最適化できるとは限らない。したがって、低透過色及び反射色のための最適なプロファイルを、増幅器を使用して製造されたマルチパケットフィルム(multipacket film)を使用して作製するのは困難であり得る。供給ブロック内で直接生成された単一パケット内の層の数が、十分な反射率を提供しない場合は、2つ以上のそのようなフィルムが貼り付けられ、反射率を高めることができる。ローカラーフィルムに滑らかな分光反射率及び透過率を提供するための層厚み制御の更なる考察は、PCT国際公開特許WO 2008/144656(Weberら)に提供されている。
【0048】
多層光学フィルムを製造するのに使用される材料は、典型的には、少なくとも可視及び近可視波長にわたって、また、フィルム内の典型的な光路距離に関して非常に低い吸光度を有するポリマー材料である。このように、所与の光線に対する多層フィルムの%反射R及び%透過率Tは、典型的には、実質的に相補的、即ち、R+T≒100%であり、通常約1%の精度内である。このように、特に記載のない限り、本明細書に開示される高反射率を有する多層光学フィルムは、低透過率を有すると考えることができ、逆もまた同様であり、本明細書に開示される低反射率を有する多層光学フィルムは、高透過率を有すると考えることができ、逆もまた同様であり、R+T≒100%の関係により、反射率又は透過率の報告値は、それぞれ透過率又は反射率も報告すると考えることができる。
【0049】
光学フィルムの透過及び反射特性を考慮する際に留意すべき別の問題は、フィルムの最も外側の前側及び裏側主表面における表面反射の寄与を考慮に入れるか否かの問題である。そのような表面反射は、垂直入射では、例えば、合計約10%反射率と比較的小さくあり得るが、大きく傾斜した角度ではかなり大きくなり得、また、s偏光成分とp偏光成分との間では大きな差があり得る。本出願の場合には、開示の光学フィルムは、必ずしもその必要はないが、積層構造体に組み込むためのものであるのが好ましく、その場合、フィルムの外側主表面の少なくとも一方及び可能であれば両方は、空気ではなく光学材料と接触する。その結果、特に記載のない限り、本明細書に記載の反射及び透過特性は、フィルムの最も外側の前側及び裏側主表面における表面反射の寄与を含まない。そのような値は、前側及び裏側表面反射率の寄与を含む「外部反射」及び「外部透過率」と区別するために、「内部反射」及び「内部透過率」と呼ばれることがある。しかしながら、用語「内部」が本明細書で使用されていないとしても、本明細書で論じられる反射及び透過特性は、特に記載のない限り、内部反射及び内部透過率の値であると考えるべきである。
【0050】
コンピュータモデル化された光学フィルムを取り扱っているか、又はその特性が実験室で測定される実際のフィルムを取り扱っているかを問わず、内部反射及び透過特性を容易に決定することができる。モデル化されたフィルムの反射率及び透過率の計算値の場合、これは、計算された値からそれらの表面反射率の計算を削除することによって達成される。複屈折多層フィルムに関するあらゆる角度及び帯域端部における反射スペクトル及びその特徴(例えば、反射率など)の全ては、Berremen and Scheffer,Phys.Rev.Lett.25,577(1970)の4×4スタックコードを用いて計算することができる。この方法の説明は、Azzam及びBashara著の「Ellipsometry and Polarized Light」(Elsevier Science(Holland)発行)に提供されている。
【0051】
反射率又は透過率の測定値の場合、内部反射及び透過特性は、空気中でフィルムの測定を行い、表面反射率のみを表す計算又は測定値を差し引くことによって達成される。例えば、多層フィルムが、ミクロ層よりもはるかに厚い、滑らかで透明な表面層を有していると仮定すると、この表面層の屈折率を測定することができる。表面層の屈折率が分かったら、当該技術分野において周知である数式を用いて、測定した総反射率から表面反射率を差し引くことができる。この方法は、空気中への垂直入射(0度)並びに60度などのより大きな角度の両方で有効である。同じフィルムの空気中又は実施例の屈折率1.2のような屈折率のより高い媒体中での90度における反射率は、既知の屈折率のガラスプリズムをフィルムの両側に光学的に連結し、スネルの法則で容易に決定される適切な角度で反射率を測定することによって直接測定することができる。屈折率が約1.5〜1.7のガラスプリズムは、こうした測定に適している。かかるガラスプリズムとこうしたポリマーフィルムとの間の境界面反射は、45度に近い角度において小さいが、多層光学フィルムの内部反射率のより正確な測定にとって必要な場合には、境界面反射を容易に計算することができる。
【0052】
特に非ゼロの角度では、フィルムの反射の代わりに透過率を正確に測定する方が簡単なことが多い。目的のフィルムの吸光度は比較的小さい(一般に垂直入射光に関して1%未満)ので、単に透過率の値T測定して、R=1−Tと仮定することができる。吸光度が約数パーセントより大きい場合、R及びTを別々に測定することにより、垂直入射における吸光度を測定することができる。次に、より大きな角度における吸光度を容易に推定することができ、すると反射率をR=1−A−Tとして計算することができ、式中、R,A、及びTは、典型的にはパーセントで表わされ、1=100%である。
【0053】
本明細書に開示される多層光学フィルムは、垂直入射光に対して偏光特性を、また、大きく傾斜した光に対して様々な反射及び透過特性を呈する。こうした特性の考察は、「通過」偏光(及び「通過」軸、「通過」平面等)、「ブロック」偏光(及び「ブロック」軸、「ブロック」平面等)、s偏光、及びp偏光と様々に呼ばれるパラメータへの言及を必要とする。明瞭にするために、及び読者がこれらの用語を混同しないようにするのを助けるために、ここでこれらの用語を詳細に説明する。
【0054】
従来の偏光フィルムに関しても、光は直交する2つの平面内で偏光されると考えることができ、この場合、光の伝播方向と交差する光の電気ベクトルが、特定の偏光平面内にある。更に、所与の光線の偏光状態を2つの異なる偏光成分(p偏光とs偏光)に分解することができる。p偏光は、光線の入射平面と所定の表面で偏光された光であり、この場合、入射平面は、局所表面法線ベクトルと光線伝播方向又はベクトルの両方を含む平面である。
【0055】
例えば、
図6は、標準的な偏光子602に入射角θで入射し、それによって入射面612を形成する光線610を示している。偏光子602は、x軸に平行な通過軸604及びy軸と平行なブロック軸606を含む。光線610の入射面612はブロック軸606に平行である。光線610は、入射面612中にあるp偏光成分及び入射面と直交するs偏光成分を有する。光線610のp偏光は、偏光子602のブロック軸606と平行なベクトル成分を有し、したがって偏光子によってほぼ反射されるが、一方で光線610のs偏光は偏光子602の通過軸604と平行であり、少なくとも部分的に透過する。
【0056】
更に、
図6は、偏光子602の通過軸604と平行なベクトル成分を有する入射面622内で偏光子602に入射する光線620を例示している。したがって、光線620のp偏光は、偏光子602の通過軸604と平行であり、一方で、光線620のs偏光は、偏光子602のブロック軸606と平行である。結果として、偏光子602が、ブロック軸における偏光の全ての角度の入射光において100%の、通過軸における偏光の全ての角度の入射光において0%の反射率を有する「理想的」偏光子である場合、偏光子は光線610のs偏光及び光線620のp偏光を透過し、一方で光線610のp偏光及び光線620のs偏光を反射する。換言すれば、偏光子602はp偏光とs偏光の組み合わせを透過する。本明細書で更に詳しく説明されるように、p偏光とs偏光の透過量と反射量は、偏光子の特性に依存する。
【0057】
光学的に浸漬されている反射偏光子として使用するのに適しており、また有利には、「通過」偏光状態の斜めに入射した光に対する反射率の有意な増加を呈する光学フィルムを製造するために、多層光学フィルムの隣接するミクロ層の間の屈折率の関係をどのように調整することができるかを、以下により完全に説明する。斜めに入射した光に対する有意な反射率の増加は、1つの入射面のみに生じるように、又は2つの直交する入射面に生じるように設計されてもよく、いずれの場合も、(少なくとも1つの入射面、及びいくつかの実施形態では2つの直交する入射面における高反射率及び低透過型反射率(low transmission off-axis)の結果として)光をより狭い視野円錐に拘束又は「コリメート」するのを助けて、表示システムに増加した輝度及び/又はコントラストをもたらすために、あるいは照明器具からの光をコリメートするために、リサイクリングシステムで用ることができる。用語「コリメート」は、開示される反射偏光フィルムに関連して用いられるとき、代表的な実施形態において、偏光フィルムによって反射された一部の光を少なくとも部分的にリサイクルする他の反射性又は拡散性フィルム若しくは要素とフィルムが組み合わされる、という了解の下で広く用いられることを読者は理解すべきである。そのため、偏光フィルムが、垂直入射光に対して高透過率を有し、大きく傾斜した光に対してはるかに低い透過率(より高い反射率)を有する場合、反射された斜光の少なくとも一部は、偏光フィルムによって透過される可能性が高くなるように、システムの別の光学要素によって傾斜の少ない方向で偏光フィルムに戻る向きに再度反射されることができる。この意味で、最初は大きく傾斜している光は、偏光フィルムによって透過されるときまでに傾斜の小さい光に「変換され」、また、偏光フィルムはそこに衝突する光を「コリメートする」ということができる。
【0058】
図7a〜
図7cは、開示される積層体で使用される浸漬した多層反射偏光子のいくつかの望ましい透過及び反射特性を例示するために提供されている。
【0059】
図7aには方向半球の斜視図が示されている。半球上の任意の点は光の伝播方向を表しており、極角θ及び方位角φによって特徴付けられる。z軸は、フィルムの平面に対して垂直である。
図7a〜
図7cの目的上、角度θ、φは、光学的に厚い超低屈折率(ULI)材料内で測定されると仮定され(したがって、θ
low index及びφ
low indexと呼ばれることもある)、このULI材料層が多層光学フィルム(その反射及び透過特性が関心の対象である)に対してどこに位置決めされるかは問わない。例えば、ULI層は、多層光学フィルムに隣接していてもよく、多層光学フィルムと光源との間に配置されてもよい。あるいは、ULI層は、多層光学フィルムに隣接しているが、光源の反対側に配置されてもよい。あるいは、ULI層は、積層構造体の中で1つ以上の他のフィルム又は構成要素によって多層光学フィルムから分離されているが、それらの間に有意な空隙がなくてもよい。
【0060】
開示される多層光学フィルムは、少なくとも小さな入射角(即ち、垂直又はほぼ垂直な入射角、θ≒0)の光に対して、有意な偏光特性を呈するのが好ましい。したがって、垂直入射光に対し、フィルムは、可視波長にわたって低反射率及び高透過率の通過軸(例えば、面内y軸に沿った)、及び可視波長にわたって非常に高い反射率及び非常に低い透過率のブロック軸(例えば、面内x軸に沿った)を画定するのが好ましい。好ましくは、「ブロック」偏光の光は、θとφとのほぼ全ての組み合わせにわたって、即ち、半球で表わされる全方向にわたって「ブロックされる」、即ち、非常に高い反射率及び非常に低い透過率によって特徴付けられる。したがって、606がブロック軸である
図6の図形を参照すると、開示される反射偏光フィルムは、ULI材料で測定される最大約90度の角度θ及びほぼ全ての可視波長に関して、平面622に入射するs偏光及び平面612に入射するp偏光に対して高反射率を維持するのが好ましい。
【0061】
開示される偏光フィルムは、
図7b及び7cに理想的及び質的な様式で示されるように、「通過」偏光された光に対してより複雑で興味深い挙動を呈するのが好ましく、この偏光フィルムは、
図7aの方向半球を作り出し、通過偏光に対する別の開示フィルムの透過及び反射特性をこの方向半球の上に重ね合わせる。いずれの場合も、フィルムは、垂直及びほぼ垂直な入射に対して比較的高い光透過率を提供する。この透過率は、垂直/ほぼ垂直な入射のブロック状態の光の透過率との関係で「高い」ということができ、通常少なくとも50%であり、またある場合にはそれよりもはるかに高く100%近くなることさえあるが、ある場合には、透過率は、実質的に50%未満であり得、依然としてブロック状態の透過率よりもはるかに高くあり得る。後者の特性を有するフィルムは、例えば、損失が最小である非常に高効率のリサイクリングシステムにおいて有用であり得る。
【0062】
通過状態の垂直入射光に対して「高い」透過率を有する他に、フィルムは、少なくとも方位角φの或る範囲内では、大きく傾斜した角度θで入射する通過状態の光に対してはるかに低い透過率(及び高い反射率)を有するのが望ましい。角度の増加と共に増加する反射率は、フィルムを横断する光の視野錐体又は伝播錐体を効果的に圧縮する。「高い」透過率から「低い」透過率への遷移は、通常段階的であるので、高い透過率領域と低い透過率領域とを分離する中間反射率領域が見られる。斜角において「低い」透過率は、垂直入射で通過状態の光の透過率との関係で「低い」といわれる。極端な入射角(例えば、超臨界入射角)で進行する通過状態の光に対する透過率を減少させて反射率を増加させることにより、設計された角度より大きな角度でフィルムを通って伝播する光に伴う問題、例えば、
図4のギャップに伴う問題を回避することができる。特に、表示装置及び照明用途では、システムに顕著な色が導入されるのを回避するために、反射率の増加を実質的に可視スペクトル全体にわたって比較的均一に維持するのが好ましい。これによって今度は、入射角に伴う多層フィルム反射帯域の固有の波長シフトに起因して、フィルムの反射帯域の右側帯域の位置に対する一定の要件が生じる。
【0063】
以下に更に記述されるように、通過偏光状態の光に対する高い及び低い透過率領域が、
図7bに示されるように方位角φの影響を比較的受けないように、又は
図7cに示されるようにφに強く依存し得るように、多層偏光フィルムを調整することができる。明白な理由から、
図7bの方位角の影響を受けない特性は、「2軸コリメート(2-axis collimating)」多層反射偏光フィルムを特徴付けるということができ、
図7cの強度に変化する方位角特性は、「1軸コリメート」多層反射偏光フィルムを特徴付けるということができる。こうしたカテゴリーの区別は、フィルムが目的とする用途、及び異なる方位角方向の間の差が所与の用途においてどれだけ有意であると考えられるかに依存し得る。以下の議論の便宜上、単純に、2軸コリメート偏光フィルムを、x−z平面及びy−z平面などの2つの直交する入射面の極角θの関数として透過率においても同様の低下を示すと特徴付けることができる一方、1軸コリメート偏光フィルムを、1つの入射面では透過率の大きな低下を示し、直交する入射面では透過率の低下をほとんどあるいは全く示さないと特徴付けることができる。1軸コリメート偏光フィルムの場合には、透過率の大きな低下を示す入射面は、フィルムの通過軸又はブロック軸のいずれかと整列され得ることに留意されたい。透過率が低下する平面が通過軸と整列される場合、通過状態の光のp偏光成分が入射角の増加に伴ってより多く反射されるので、フィルムをp偏光コリメーティングフィルムと呼ぶことができ、平面がフィルムのブロック軸と整列される場合、通過状態の光のs偏光成分が入射角の増加に伴ってより多く反射されるので、s偏光コリメーティングフィルムと呼ぶことができる。
【0064】
システムの特徴、要件、及び設計制約に応じて、あるシステムは、1軸コリメートフィルムよりも2軸コリメート偏光フィルムを使用することにより、より利益を得ることができる一方で、他のシステムに関してはその反対が当てはまる場合がある。そうした設計考慮の更なる議論は、本明細書の他の場所に提供される。本出願は、1軸に加えて2軸コリメート偏光フィルムに関する教示を提供するが、2軸コリメートフィルムに関する更なる情報及び例は、米国特許出願第XX/XXX,XXX号、「Immersed Reflective Polarizer With High Off−Axis Reflectivity」(代理人整理番号65809US002)(本出願と同日に出願)に見出すことができ、当該特許出願は参照により本明細書に組み込まれる。
【0065】
十分な軸外反射率をもたらして、
図4の「ギャップ」に対応する超臨界角で伝播する光がシステム性能を不当に低下させないのを確実にする他に、二次的な設計課題は、空気中で光線のかなりの部分を更により低角度(例えば、約45〜90度)で反射及びリサイクルする必要があることである。一部の液晶テレビでは、この角度範囲は、マイクロレンズアレイフィルムを用いて垂直に向かって向け直される。本明細書に開示される反射偏光子の少なくともいくつかは、少なくとも1つの入射面において、この中〜高角度の斜光の十分な反射率をもたらすことができ、また、1つ又は2つのマイクロレンズフィルムの性能を近似することができる。
【0066】
本発明者らは、上述した透過及び反射特性が、妥当な設計の実用的多層フィルム、例えば、妥当な数のミクロ層を有し、既存のポリマー材料及び加工技術を用いて達成可能な屈折率関係を有する実用的多層フィルムで達成され得ることを見出した。いくつかの開示の実施形態は、例えば、
図4に示されるギャップの中の光の最大90%を反射することができると同時に、垂直入射で高透過値をもたらすことができる、約500層を備える多層反射偏光子を構成することができることを確実とする。
【0067】
多層光学フィルムの光学特性は、例えば、フィルムのミクロ層の数、フィルム内の1つ以上のコヒーレントパケット(coherent packet)の中へのそれらの分布、種々のミクロ層の厚さ及び層厚さプロファイル、並びに層の屈折率など、「主要」と考えることができる有限個のパラメータを含む。本出願では、積層構造体の浸漬したフィルムとして使用するのに適している多層反射偏光フィルムを製造するために、こういった主要なパラメータをどのように選択することができるかの例を提供するだけでなく、かかる構造体における多層フィルムの適切性を評価するのに重要であり得る、特定の二次的なフィルムのパラメータ、及びかかるパラメータを含む関係もまた特定する。こうした二次的なフィルムのパラメータとしては、次のうちの1つ以上を挙げることができる。
【0068】
フィルムの内部反射率は、所与の入射角θにおける4種類の偏光の場合のいずれか、即ち:通過平面に入射するp偏光に対する反射率(「RPpass(θ)」);通過平面に入射するs偏光に対する反射率(「RSblock(θ)」);ブロック平面に入射するp偏光に対する反射率(「RPblock(θ)」);及びブロック平面に入射するs偏光に対する反射率(「RSpass(θ)」);に関して特定され、この場合、通過平面は、フィルムの通過軸と垂直軸とを含む平面であり、ブロック平面は、フィルムのブロック軸と垂直軸とを含む平面であり、角度θは、空気中(θ
air)又は超低屈折率材料中(θ
low index)で測定された角度であり得る。
【0069】
フィルムの内部透過率は、所与の入射角θにおける4種類の偏光の場合のいずれか、即ち:通過平面に入射するp偏光に対する透過率(「TPpass(θ)」);通過平面に入射するs偏光に対する透過率(「TSblock(θ)」);ブロック平面に入射するp偏光に対する透過率(「TPblock(θ)」);及びブロック平面に入射するs偏光に対する透過率(「TSpass(θ)」);に関して特定される。
【0070】
本発明者らは、前述のパラメータのうちの特定のものの平均を定義する。例えば、
Rpass(θ)は、RPpass(θ)とRSpass(θ)の平均であり、
Tpass(θ)は、TPpass(θ)とTSpass(θ)の平均である。
【0071】
本発明者らは、特定条件下の前述のパラメータのいずれかを定義する。例えば、
%T00は、通過偏光の光に対する垂直入射でのフィルムの内部透過率であり、Tpass(0)、TSpass(0)、及びTPpass(0)とも等しい。
【0072】
%Tブロックは、ブロック偏光の光に対する垂直入射でのフィルムの内部透過率であり、Tblock(0)、TSblock(0)、及びTPblock(0)とも等しい。
【0073】
%TA60Sは、ブロック平面に入射するs偏光に対する、空気中で測定された60度の入射角でのフィルムの内部透過率であり、TSpass(θ
air=60)とも等しい。
【0074】
%TA60Pは、通過平面に入射するp偏光に対する、空気中で測定された60度の入射角でのフィルムの内部透過率であり、TPpass(θ
air=60)とも等しい。
【0075】
%TA60は、%TA60Sと%TA60Pの平均である。
【0076】
%TA90Sは、ブロック平面に入射するs偏光に対する、空気中で測定された90度の入射角でのフィルムの内部透過率であり、TSpass(θ
air=90)とも等しい。
【0077】
%TA90Pは、通過平面に入射するp偏光に対する、空気中で測定された90度の入射角でのフィルムの内部透過率であり、TPpass(θ
air=90)とも等しい。
【0078】
%TA90は、%TA90Sと%TA90Pの平均である。
【0079】
%TU90Sは、ブロック平面に入射するs偏光に対する、超低屈折率材料で測定された90度の入射角でのフィルムの内部透過率であり、TSpass(θ
low index=90)とも等しい。
【0080】
%TU90Pは、通過平面に入射するp偏光に対する、超低屈折率材料で測定された90度の入射角でのフィルムの内部透過率であり、TPpass(θ
low index=90)とも等しい。
【0081】
%TU90は、%TU90Sと%TU90Pの平均である。
【0082】
反射帯域の長波長帯域端部の位置は、特定の入射角の反射帯域の赤色帯域端部(RBE)又は右側帯域と呼ばれる場合もある。垂直入射での通過偏光の有意な反射率を有する偏光子の場合、通過偏光に対する垂直入射における反射帯域は、ブロック状態の光に対する垂直入射における反射帯域と異なる。そのような場合、特に記載のない限り、RBEは、ブロック偏光された光に関し、反射帯域の長波長境界、例えば、内部反射率が帯域内の平均値の90%に低下する波長を指す。
【0083】
先に言及したように、斜角で通過軸に対して実質的に反射性でもある反射偏光子を作製することができる。高角度における通過軸反射率は、s偏光、p偏光、又はその両方に対して大きくなるように調整され得る。これら2つの成分は直交方向から入射するが、これらは共に、フィルムの通過軸を含む平面と平行な電場ベクトルを有する。p偏光通過軸光に対して高反射率が望ましいが、s偏光通過軸光に対しては望ましくない場合には、z屈折率差が大きく、y屈折率差が小さいフィルムを使用することができる。s偏光通過軸光に対して高反射率が望ましいが、p偏光通過軸光に対しては望ましくない場合には、y屈折率差が大きく、z屈折率差が小さいフィルムを使用することができる。ブロック偏光状態の光に対して高反射率をもたらすために、x屈折率差はy屈折率差を実質的に超える必要があることに留意されたい。
【0084】
図5に戻って参照し、フィルムが延伸又は配向されて、第1の材料(ミクロ層502)が複屈折性となり、第2の材料(ミクロ層504)が屈折率n
2を有する等方性となり、更に、Δn
x>Δn
y>0>Δn
z、即ち、Δn
zが負である場合を考える。この場合、第1の材料は、スタックにおいて最も高い(n
1x)及び最も低い(n
1z)屈折率の両方を示すが、本発明者らは、便宜上、前述にかかわらず、第1の材料を高屈折率材料と呼ぶこともあり、第2の材料を低屈折率材料(超低屈折率材料と混同しないようにすべきである)と呼ぶものとする。通過軸s偏光に対して高い軸外反射率を呈するためには、低屈折率層は、高屈折率材料のn
1yよりも実質的に低い屈折率n
2を有する必要がある。p偏光に対して高反射率を提供するためには、同じ低屈折率材料は、高屈折率材料のn
1zよりも実質的に高い屈折率n
2を有する必要がある。n
2を変えることによりこれらの値の一方を最大にすると、もう一方が最小となるので、s偏光及びp偏光の両方が最大となり、斜角でほぼ等しく反射するようにするためには、複屈折層のy−z屈折率差(n
1y−n
1z)を最大にする必要があることは明白である。ブロック軸が通過軸よりもはるかに多くの光を反射するためには、n
1xがn
1yよりも実質的に大きいという更なる拘束が存在する。
【0085】
p偏光及びs偏光の両方に対して非常に反射性であるフィルムは、大きなΔy及びΔz屈折率差を必要とする。ほとんどの多層複屈折反射偏光子は、テンターによってのみ延伸される、即ち、x方向にのみ延伸される。しかしながら、これは、制限された範囲のy屈折率の値を生成する。同様にフィルムをy方向に延伸することによって、y屈折率を増加させることができる。これは、同時2軸延伸工程で、又は逐次的延伸により行われることができる。両方の例を以下に示す。
【0086】
図9に関連して非対称フィルムの加工に関する考察、及びそれらがミクロ層の屈折率にどのような影響を与えるかについての更に説明する前に、2軸コリメーションを提供することができる特定の多層偏光フィルムの例を記述する。
【0087】
光学フィルム1.1:2軸コリメートフィルム、550のミクロ層(モデル化)
斜角反射率は、高複屈折、多数のミクロ層、又は両方を用いることにより高めることができる。これは両方の手法を用いる例である。下の表に記載の好適に1軸延伸された90/10 coPEN(材料1の)及びcoPET(材料2)の代表的な屈折率を用い、更に、coPET材料(等方性屈折率1.555)の表面薄層が550のミクロ層の単一スタックの両側にあり、平坦なスペクトル用に最適化された連続的層厚さプロファイルがミクロ層に提供され、垂直入射の帯域端部(LBE)が400nm及び垂直入射の右側帯域(RBE)が1150nmであると仮定すれば、1軸延伸フィルムの角度反射率を大幅に増加させることができる。
【0089】
計算された(内部)反射率と入射角曲線の比較が
図8aにプロットされており、入射角は、屈折率1.2のULI媒体の中のものであると仮定される。図中、曲線810はRSblock(θ)及びRPblock(θ)の両方を表し、曲線812はRSpass(θ)を表し、曲線814はRPpass(θ)を表す。s偏光及びp偏光の両方に関する通過状態の反射率は、最高角度でほぼ0.9まで上昇することに留意されたい。ほとんどの角度で、これらの反射率の値は、システム構造の表面及び境界面反射を支配する。
図8bは、通過偏光及びブロック偏光の両方の右側帯域(RBE)を、屈折率1.2のULI材料の中の入射角の関数としてプロットしており、曲線820はブロック状態でs偏光された光のRBEの位置を示し、曲線822はブロック状態でp偏光された光のRBEの位置を示し、曲線824は通過状態でs偏光された光のRBEの位置を示し、曲線826は通過状態でp偏光された光のRBEの位置を示す。
【0090】
ポリマーの選択及び加工も、フィルム製品の価格及び製造歩留まりに影響を与える。このため、異なる低屈折率材料を使用する、又は偏光子を異なって加工することが有利であり得る。例えば、光学フィルム1.1の550層の偏光子を作製するのに必要な押出装置は、やや高価であり得、また設計が難しくあり得る。以下に記載の代替的手法で作製される2枚の275層フィルムを積層する又は共押出するのが好ましくあり得る。
【0091】
任意の所定の入射角に対する反射率に影響を与える、多層光学フィルムのミクロ層に関するいくつかの屈折率パラメータが存在し、この情報を
図9にまとめる。s偏光の反射率は、横座標に沿って右に向かって増加するΔny=n1y−n2yの値と共に増加する。s偏光の反射率はΔnyに依存するが、
図9の縦軸に沿って増加する−Δnz=n2z−n1zにも大きく依存する。拘束1軸延伸フィルムでは、高屈折率層の最大y−z複屈折は、交互層の間で得ることができる最大値Δny及びΔnzを決定する。coPEN高屈折率層では、拘束1軸延伸PENの最も高いy屈折率は約n=1.62であり、最も低いz屈折率は約n=1.50であるので、この限界は約Δn=0.12である。この複屈折は、ポリエステルフィルム製造分野で周知のように、PEN含有量を最大にし、比較的低温、若しくは高い延伸倍率、又はその両方でキャストウェブを延伸することにより達成される。
【0092】
3M Companyから入手可能ないくつかの多層光学フィルム反射偏光子製品、つまり、Vikuiti(商標)DBEF−qフィルム及びVikuiti(商標)APFフィルムの屈折率差Δny及びΔnzの値は、
図9のプロットにそれぞれ参照番号910、912で印が付けられている。1軸延伸された多層構造のものに関する、斜め入射したs偏光及びp偏光に対する反射率の最大値は、プロットの中で対角点線920に沿った屈折率差の値を有するフィルムで生じる。s偏光及びp偏光に対して等しい反射率を有するフィルム1.1は、この線上の点(Δny=0.065、Δnz=0.05)に当てはまる。グラフの下側の右下隅では、s偏光された光がコリメートする可能性は、Δnyが大きいという理由から最大であるが、p偏光された光がコリメートする可能性は、Δnzがゼロであるという理由からゼロであり、p偏光された光の反射率は入射角と共に変わらない。グラフの左上隅では、p偏光に対する反射率は大きく、s偏光に対してはゼロである。点(Δny、Δnz)=(0.04、0.8)の近くで、反射率はp偏光に対して最大となる。偏光子構造体の最大複屈折を有するcoPENフィルムを使用する場合、低屈折率層の屈折率の値の変化は、屈折率の値を点線920の設計空間に沿って移動させる。点線920の左側で下側の全屈折率セットは、所与の入射角の光に対してより低い反射率を有する。点線の上側で右側の全屈折率セットは、同じ入射角でより大きな反射率をもたらす。点916は光学フィルム3.4を表す。
【0093】
屈折率差Δny及びΔnz、ひいては斜光に対する反射率の増加は、フィルムを機械方向(MD)又はy方向に追加的に延伸することによって、上述と同じ材料セットを用いて達成することができる。この処理は、x方向の屈折率を必然的に低下させるので、この手法には制限がある。しかしながら、
図9の点線920の上側及び右側のスペースで動作するのを可能にする。例えば、点918は、フィルムをMD方向に延伸し、後続の熱処理により作製することができる反射偏光フィルムを表している。かかるフィルムは、本明細書では光学フィルム1.2と呼ばれ、以下に更に記述される。点914は、光学フィルム1.2の説明に従って作製されたフィルムを表しているが、フィルムはMD又はy方向に延伸されていない。
【0094】
広くは、前述の処理は、非対称な2軸延伸(asymmetrical biaxial orientation)と呼ばれる。この処理により、coPENのy屈折率を高めることができる。nyが約1.75まで増加し、z屈折率が1.5である極限では、nxは約1.75まで減少し、この時点で、フィルムは対称ミラーとなる。屈折率n1yのある中間の値では、フィルムは依然として有効な偏光子であり、通過軸光に対する反射率は、総数が275層と少ない場合でさえ高くなる。次に、以下の実施例で説明するように、2つ以上のかかるフィルムを、必要に応じて積層することができる。
【0095】
光学フィルム1.2:2軸コリメートフィルム、275のミクロ層(モデル化)
coPEN及びPETgが90/10である交互層の多層材料のスタックを共押出し、およそy方向に3:1及びx方向に5:1で延伸し、その後高温熱処理した後に、下の表に示される交互ミクロ層の屈折率特性を得ることができる。
【0097】
得られた非対称に延伸された多層光学フィルムが、275のミクロ層の単一パケットを有し、等方性PETgの表面薄層がこのパケットの両側にあり、平坦なスペクトル用に最適化された連続的層厚さプロファイルがミクロ層に提供され、垂直入射の帯域端部(LBE)が400nm及び垂直入射の右側帯域(RBE)が1150nmであると仮定すれば、その計算された反射率特性が
図10に示されるものである反射偏光フィルムが製造される。この図では、曲線1010はRSblock(θ)を表し、曲線1012はRPblock(θ)を表し、曲線1014はRPpass(θ)を表し、曲線1016はRSpass(θ)を表している。線1018は、空気中への入射角90度に相当するULI屈折率1.2の媒体中への入射角を表す。
【0098】
光学フィルム1.3:2軸コリメートフィルム、275ミクロ層×2パケット
合計550層を有する(が、低屈折率のミクロ層で使用される光学的に厚い材料の層によって互いに分離される2つのコヒーレントパケットに配列される)光学フィルム1.3を作製するために、2つの光学フィルム1.2を積層すると、
図11に示される計算された反射率が生成される。この図では、曲線1110はRSblock(θ)を表し、曲線1112はRPblock(θ)を表し、曲線1114はRPpass(θ)を表し、曲線1116はRSpass(θ)を表す。線1118は、空気中への入射角90度に相当するULI屈折率1.2の媒体中への入射角を表す。
【0099】
いくつかの2軸コリメート多層反射偏光フィルムを記述し終え、また、更なる1軸及び2軸コリメート反射偏光フィルムを記述する前に、その中でフィルムを使用することができる積層構造体のいくつかに注目する。バックライト及び液晶パネルなどの光学表示装置用用途にある程度の重点を置いているが、開示されるフィルム及び積層体の他の用途も考えられることを読者は理解すべきである。多くの場合、積層構造体は、少なくとも4つの要素、つまり、開示の1軸又は2軸コリメート多層反射偏光フィルム、ULI材料の光学的に厚い層、超臨界光を多層フィルムに注入するための層又は他の機構、あるいは、システムから超臨界光の一部を抽出するための機構を備える。後者は、表面構造を備える任意の層、又はLCDテレビパネルなどの内部散乱及び吸収要素を備える厚い層であり得る。
【0100】
図12は、液晶パネル1212を備える積層構造体1210の概略的側面図を示す。構造体1210はまた、本明細書に開示される反射性偏光多層光学フィルム1214と、ULI材料の光学的に厚いフィルム又は層1216と、拡散層1218とを備える。構造体1210に後方から入射するバックライトからの光は、各種層を通って進行して、鑑賞者のために表示装置を照明する。
【0101】
浸漬した反射偏光子1214のリサイクルされた斜めの通過軸光は、照明システムの軸上の光束利得を増加させる一方で、システムの斜角出力を減少させる。拡散層1218は、例えば、50% T、60% T、又は70% T拡散板の代替物などの大きな反射率を備える重い拡散体であり得、あるいは、プリズム、ビーズ、又は小型レンズアレイなどの微細構造化表面であり得る。反射偏光子1214とLCDガラスパネル1212との間に追加の拡散層を加えることも可能である。そうした追加の拡散体は、例えば、反射偏光子が何らかの望ましくない色を有する場合に望ましくあり得る。あるいは、追加の拡散体は、反射偏光子によって透過された光の更なるコリメートに役立つ微細構造の形態であってもよい。拡散体が微細構造化表面の形態をとる場合には、ULIは、LCDパネル1212と微細構造化表面との間に設置される必要がある。あるいは、より高い効率を得るため、第1のULI層を
図12に示される位置に保持したままで、第2のULI層をその境界面に挿入することができる。
【0102】
図13は、エッジ照明若しくは直接照明バックライト、又はその一部を形成するために、少なくとも1つの光学的に厚い超低屈折率層1316及び本明細書に開示されるような多層反射偏光フィルム1314を組み込んだ、別の積層構造体1310の概略的側面図である。層1312は拡散層であり、この拡散層は、反射偏光子に存在する場合がある色を隠すのに役立つ半鏡面であってもよく、又は、光を拡散し、また、反射偏光子によって透過された光のコリメートにも役立つ構造化面、例えば、線状プリズム表面であってもよく、若しくはこれを含んでもよい。層1318は、直接照明バックライト構成のLED又はその他の好適な光源(図示せず)のアレイの上方に位置付けられる拡散板であってもよく、又はこれを含んでもよい。あるいは、層1318は、中実のライトガイドであってもよく、又はこれを含んでもよく、その場合、LED 1320、又はその他の好適な光源は、1つ以上の側面又は端面を介して、超臨界角の光をシステムに注入してもよい。これは、
図14の正面又は平面図により明確に示されており、図中、要素1410は、積層体1310又はその層1318を表し、領域1412a〜1412dは、光をライトガイドに注入するために光源が設置され得る可能位置を示している。光源が領域1412b、1412dの一方又は両方に設置される場合、超臨界光伝播に伴う問題は、y軸よりもx軸(図中のx−y−z軸は参照目的のためのものであることに留意されたい)と平行な軸に沿ってより深刻となり得る。同様に、光源が領域1412a、1412cの一方又は両方に設置される場合、超臨界光伝播に伴う問題は、x軸よりもy軸と平行な軸に沿ってより深刻となり得る。
【0103】
図15〜
図18は、表示パネルと開示される反射偏光フィルムとを備える、様々な異なる積層構造体を示す。
【0104】
図15では、積層構造体1510は、LC表示パネルなどの表示パネル1512と、光学的に厚い光学接着剤層1514と、本明細書に開示の多層反射偏光フィルム1516と、偏光フィルム1516に適用されるビーズ利得拡散体等などの拡散層1518とを備える。この実施形態では、接着剤層1514は、ULI材料ではなく、およそ1.5の屈折率を有し得る従来の接着剤材料からなってもよい。したがって、構造体1510は、ULI層をその中に備えていなくてもよく、同様に、図示される要素の間に空隙が存在しなくてもよい。このようなULIを含まない実施形態については、下で更に論じられる。構造体1510は、構造体1510及びパネル1512を下から照明するように位置付けられることができる好適なバックライトと組み合わされてもよい。
【0105】
図16には、
図15の構造体1510と同様の積層構造体1610が示されており、同様の要素には同じ参照番号が付されている。
図16の実施形態では、光学的に厚いULI層1612が、多層反射偏光フィルム1616と従来の光学接着剤層1514との間に設けられている。ULI層1612が積層体の中に設置されているか否かに依存して(例えば、反射偏光子1616と拡散層1618との間に位置するように再配置されてもよい)、層は、層1514の従来の接着剤材料よりもはるかに大きな程度まで、反射偏光子内での大きく傾斜した光の伝播を制限する又はそのような大きく傾斜した伝播光を反射偏光子に戻るように向け直す働きをすることができる。結果として、反射偏光フィルム1616の反射帯域の帯域幅は、
図15の偏光フィルム1516のそれよりも有意に小さくされ得る。
【0106】
図17では、いくつかの追加の拡散又はコリメーティング要素を備える積層構造体1710が提供されている。この場合、線状プリズムBEFフィルムなどのプリズム構造化フィルムを備える層1709が設けられている。層1709の中には、フィルム基材の上にプリズムが配置されており、プリズム点は接着剤層1514とごく近接している又は接触している。プリズムと接着剤層との間の隙間は、ULI材料で充填される。したがって、層1709のULI材料はプリズムを平坦化する。層1711は、別の従来の光学接着剤層である。層1712は光学的に厚いULI層である。層1716は、本明細書に開示の多層反射偏光フィルムである。層1718は、ビーズ利得拡散体などの拡散層である。
【0107】
図18では、積層構造体1810は、既に記載した他の要素に加えて、図のように配列された光学的に厚いULI層1812と、本明細書に開示の多層反射偏光フィルム1816と、体積拡散層1818と、を備えている。
【0108】
図16〜
図18は、表示パネルと、多層反射偏光フィルムと、光学的に厚い超低屈折率層と、を備える積層構造体の概略的側面図である。
【0109】
いくつかの異なる積層表示パネル構造体を記載してきたが、例示の積層ライトガイド構造体1910に関して
図19を参照する。この実施形態では、BEFプリズムフィルムで使用されるようなプリズム構造体1912が、本明細書に開示の多層反射偏光フィルム1914に適用される。この場合、プリズムは空気中に露出し、偏光フィルム1914を通過した透過光は、一般に、表示パネル又は鑑賞者に向かって上方に向かう。こうした光は、中実のライトガイド1924の端部のエッジ照明構造に図示されている光源1930a、1930bから生じる。ライトガイド1924は、従来の抽出器1926のパターンを備えている。ライトガイド1924の底部から逃散した光は、白背面の反射体1928によって反射される。感圧接着剤層1922は、ライトガイド1924を、例えば、傾斜屈折率ULI層1920、ヘイズが大きいULI層1918(体積拡散体でもあり得る)、及びヘイズの小さいULI層1916などの上方の他の構成要素に接着する。
【0110】
更なる実施形態
光学フィルム3.4:1軸コリメートフィルム(s偏光)、275のミクロ層(作製)
低屈折率ポリマーと高屈折率ポリマーが交互に存在する多層構造のキャストウェブを、フィルムライン上でのインラインテンター延伸のために、冷却されたキャスティングホイールの上に押し出した。フィードブロック法(例えば、米国特許第6,783,349号(Neavinら)を参照されたい)を用いて、275の屈折率ポリマー材料と高屈折率ポリマー材料の交互層のキャストウェブを共押し出しした後、このキャストウェブを、まず長さ延伸機(LO)で、次にテンターで延伸することによって、低屈折率ポリマーと高屈折率ポリマーの交互層の反射偏光子を作製するためのキャストウェブを作製した。高屈折率層を90/10 coPEN(10%PET)を用いて作製した。EcdelポリマーFN007(Eastman Chemicalsより入手可能)を使用して低屈折率層を作製した。共押出プロセスの間に、低屈折率材料の15%を溶融トレインから転用して、保護境界層を形成した(275層押出品の各側に7.5%)。PETg 14285(Eastman Chemicalsより入手可能)の表面薄層を、押出ダイの直前の位置に、フィルムの各側に約8マイクロメートルの厚さの最終表面薄層を提供する割合で、溶融流れに適用した。フィルムの高屈折率層の目標屈折率は、nx=1.82、ny=1.62、nz=1.51であった。633nmにおけるEcdelの屈折率は約1.505であり、PETgの屈折率は約1.564である。
【0111】
層の各パケットの低及び高屈折率材料の相対押出速度は、完成したフィルムの隣接する材料層が、それぞれほぼ同じ光学的な厚さを有するように調整された。低及び高屈折率材料の両方の押出速度は、層の両方の組がそれぞれ、フィルムの最も薄い層の約400nmの反射から、べき法則分布で単調に厚さが増加して、最も厚い層で約950nmの光を反射するように調整されたブロック軸に関して約1/4波長の光学的な厚さを有するように調整された。押出成形キャスティングホイール速度は、得られた反射帯域がこの波長範囲に及ぶように調整された。べき法則分布の形状は、結果として得られるスペクトルが、各パケット毎のスペクトルの大部分にわたって比較的平坦となるように選択された。スペクトル形状は、米国特許第6,783,349号(Neavinら)に概説されている軸線ロッドの技術を用いて微調整された。最終的な延伸フィルムにおいて、表面薄層の厚さは、それぞれ約6マイクロメートルであった。最終的なフィルムの合計厚さは、厚さ約45マイクロメートルであった。
【0112】
キャストウェブを、標準的なフィルムの製造テンターで延伸した。キャストウェブをテンターの中で約144℃で20秒間予熱した。次に、フィルムを、144℃で約50%/秒の初期速度で延伸した。x方向の合計の全延伸率は約5.5:1であった。次に、フィルムを、幅の約1%を引っ張りながら、227℃で約20秒間熱処理した。
【0113】
得られたフィルムのブロック(曲線2016)、通過(曲線2012)、s偏光60(曲線2014)、及びp偏光60(曲線2010)スペクトルが、
図20にプロットされている。プロットされた反射帯域内の長波長帯域端部(赤色帯域端部又はRBE)及び平均透過率を下の表Bに記載する。この光学フィルム3.4に関するT s偏光(θ=60度空気中)/Tpass(0)の比率は0.29である。
【0115】
光学フィルム3.4をULI層と共に積層体の形態で表示装置の中に設置して試験した。これを構造体1.1と呼び、以下に説明する。光学フィルム3.4(あるいは本明細書では光学フィルム4.4とも呼ばれる)もまた同様に他の種類の表示装置の中に設置し、その結果を更に以下に説明する。
【0116】
構造体1.1:積層されたLCDパネル/エアガイド
光学フィルム3.4をSamsung LCDテレビパネルに積層した。(2軸コリメート反射偏光フィルム(Two-axis collimating reflective polarizer film)も同様にパネルに積層して試験し、その結果は、米国特許出願第XX/XXX,XXX号(代理人整理番号65809US002)「IMMERSED REFLECTIVE POLARIZER WITH HIGH OFF−AXIS REFLECTIVITY」(本願と同日に出願)に論じられている。)パネルは、Samsungから市販のTVセット(型番:LN32B360C5D)から入手し、32”(81.3cm)の対角寸法を有した。実験では、32”(81.3cm)パネルの一部だけを、パネル後方の200mm×400mmバックライトで照明した。
【0117】
このバックライト2210の概略側面図が
図21に示されている。図中、寸法(ミリメートル単位)が括弧の中に提供されている。白色LED及び放射物状の反射体を備えた光エンジン(アイテム2134を参照)が、中空キャビティの左側に取り付けられている。光エンジン及びキャビティの内部は、特記されない限りESR(3M Companyから入手可能)で裏打ちされている。中空キャビティ2132は、深さ17mm、幅200mm、及び長さ400mmである。20個の冷白色Rebcool whiteel LED(Philips Lumileds Lighting Company(San Jose,California,USA)から入手可能)を、左縁部(200mmの縁部)に沿ってメタルコア印刷回路基板(MCPCB)上に9.8mmのピッチの直線配列で配置した後、温度管理のために押出アルミニウムヒートシンクに取り付けた。
【0118】
視野角の関数としてのバックライト中央部の輝度、軸方向の輝度(ニトの単位)、輝度半値角、及びコントラスト比を、Autronic Conoscope Conostage 3(Autronic−Melchers GmbH,Karlsruhe(Germany)より入手可能)を使用して測定した。
【0119】
実験例において、反射偏光子は、そのブロック軸がバックライトの400mm縁部と平行になるように配列された。反射偏光フィルムを
図21の概略図に従ってテレビパネルに積層した。図中、アイテム2112は液晶パネルであり、2114は光学接着剤であり、2116は試験される多層光学フィルムであり、2118は光学接着剤であり、2120はPETの層であり、2122はULI材料の層であり、2124は光学接着剤であり、2126はポリカーボネートフィルムであり、2128は、ビーズ状の利得拡散体フィルムと同様のビーズコーティングである。
【0120】
浸漬していないフィルムシステムを使用した、テレビ性能を比較するための対照試料として、テレビの輝度及びコントラストを、まずこのSamsungテレビパネルに関してバックライトを使用して測定したが、パネルとフィルムスタックとの間に空隙は存在していなかった。剛性のために、フィルムスタックを、
図21でパネル2112が示されている場所にある透明なポリカーボネートシートに積層した。次に、テレビパネルを透明なポリカーボネートシートの上方約1mmに位置付けた。テレビの輝度及びコントラストを、Autronics社の機器によって、0〜360度の全方位角における80度に達する全極角に対して得た。偏光フィルムの2つの主軸(ブロック軸及び通過軸)に沿ってテレビを出射する光の輝度及びコントラストをプロットすることにより、このデータをまとめることができる。反射偏光子の通過軸は、いうまでもなく、テレビパネルの隣接する吸収偏光子の通過軸と整列される。
【0121】
実質的に通過軸p偏光のみが、テレビの通過軸と垂直軸の入射面に入射するので、このデータは、p偏光の輝度及びコントラストとしてプロットされる。同様に、通過軸s偏光のみが、テレビのブロック軸と垂直軸の入射面に入射するので、このデータは、s偏光の輝度及びコントラストとしてプロットされる。以下に示すデータによって示されるように、テレビの輝度及びコントラストは、角度と偏光子帯域幅の値の関数としてのs偏光及びp偏光の反射偏光子の透過特性による影響を大きく受ける。帯域幅は、長波長帯域端部、又は赤色帯域端部(RBE)に関して記載された値によって表わされる。
【0122】
対照試料に用いられる反射偏光フィルムは、s偏光コリメーティングフィルムとも呼ばれる光学フィルム3.4であった。2つの主軸に関するテレビの輝度及びコントラスト(s偏光(曲線2210、2216)及びp偏光(曲線2212、2218)を表わす)が、それぞれ
図22a及び
図22bにプロットされている。輝度単位は単に相対的なものであり、本明細書に記載の様々な試料を比較するために用いられる。輝度半値視野角は、輝度が軸上(0度)で測定される輝度値の半分まで減少する極角であると定義され得る。この視野角は、典型的には、ブロック軸及び通過軸によって異なる。
【0123】
コントラストデータは、「オフ」又は「暗」状態のパネル輝度で除された「オン」又は「白」状態のテレビの輝度の比率である。テレビパネルに入射する高角度の光は、LCDパネル内の様々な画素素子によるこの光の散乱に起因して、テレビパネルのコントラストを低下させることは公知である。光散乱は、典型的には垂直入射で入射する光に対して最も小さい。このため、高角度でLCDパネルに入射する光の量を制限するのが望ましい。拡散体とテレビパネルとの間の空隙が排除される場合、光は、空気から入射され得る角度よりも大きな角度でパネルに注入され得るので、パネルのコントラストを著しく低下させる。本明細書に記載のフィルムは、超低屈折率フィルム層と組み合わされて、こうした極端な角度でパネルに入射する光の量を低減するように設計される。
【0124】
空気中で使用するように設計された光学フィルム3.4を、
図21に示されるテレビパネルにこのフィルムスタックを積層することによって浸漬すると、輝度及びコントラストの両方が実質的に低下する。このことは、
図22c(輝度)及び
図22d(コントラスト)にプロットされている測定値から明らかである。これらの図中、曲線2220はULIがある場合のs偏光を表し、曲線2222はULIがある場合のp偏光を表し、曲線2224はULIがない場合のp偏光を表し、曲線2226はULIがない場合のs偏光を表し、曲線2230はULIがある場合のp偏光を表し、曲線2232はULIがある場合のs偏光を表し、曲線2234はULIがない場合のp偏光を表し、曲線2236はULIがない場合のs偏光を表す。低屈折率層なしにフィルムが適用されると、輝度及びコントラストが更に実質的に減少することにも留意すべきである。しかしながら、低屈折率層は、TIR機構によって高角度の光の全てをブロックできない。56.4度〜90度の角度で屈折率1.2の層を伝播する光は空気から入射することはできないが、低屈折率層によってTIRされない。この角度範囲(即ち先に言及された「ギャップ」範囲)の光は、こうした角度の通過軸光に対する高反射率を有するように設計される場合、反射偏光子によって実質的に反射され得る。
【0125】
得られた結果の更なる考察及び分析は、上で引用された同時係属中の米国特許出願である代理人整理番号65809US002に見出すことができる。
【0126】
以下の追加の光学フィルムも製造又はモデル化し、それらのいくつかをディスプレイ関連の積層構造体において試験した。
【0127】
光学フィルム4.1:1軸コリメートフィルム(p偏光)、275のミクロ層×2つのパケット(モデル化)
屈折率がnx1=1.82、ny1=1.623、n1z=1.505及びn2=1.595(引用符で囲まれた全ての屈折率値は633nmの波長について示されている)である2種類のポリマー材料を使用した多層スタックを、高角度のp偏光通過軸光を実質的に反射するように設計した。ブロック軸及び通過軸に対する4種類の主な偏光状態のs偏光及びp偏光の反射率を、これら材料の275の交互層の多層フィルムに関してモデル化した後、この多層フィルムを第2の同一フィルムに積層し、総層数が550の1/4波長の厚さの光学層とした。内部反射率は、屈折率1.2の媒体中への0〜90度の全角度に関して
図23にプロットされており、ブロック軸反射帯域は、垂直入射で400nm〜1100nmに及ぶ。この図では、曲線2310はRSblock(θ)を表し、曲線2312はRPblock(θ)を表し、曲線2314はRPpass(θ)を表し、曲線2316はRSpass(θ)を表している。線2318は、空気中への入射角90度に相当するULI屈折率1.2の媒体中への入射角を表す。
【0128】
%R≒100−%Tと仮定すると、p偏光の内部透過率は、屈折率1.2の媒体への垂直入射で92%、43度で68%、46度で63%、及び90度で13%である。ブロック軸透過率は垂直入射で5%である。屈折率1.2の媒体中への43度及び46度の角度は、空気中への約55度及び60度の角度に対応する。
【0129】
p偏光通過軸光に対する高い反射率は、低屈折率層に屈折率がわずかに低いポリマーを使用することによって、例えば、屈折率を1.595〜1.58に低下させることによって達成され得る。これによりz屈折率差が減少するが、p偏光の反射率はΔnz及びΔnyの両方の関数であるので、p偏光の反射率は、この場合は実際には増加する。この変化はブロック軸の屈折率差も増加させ、Tブロックも減少させる。しかしながら、より多くのs偏光が反射されることになる。したがって、低屈折率材料の屈折率の選択は、望ましい量のp偏光及びs偏光の両方の反射率に依存する。
【0130】
光学フィルム4.2:1軸コリメートフィルム(p偏光)、275のミクロ層×2パケット(作製)
フィードブロック法(例えば、米国特許第6,783,349号(Neavinら)を参照)を用いて、275の低屈折率ポリマー材料と高屈折率ポリマー材料の交互層の2つの同様のパケットを共押し出しした後、この2つの層のパケットを接合することによって、低屈折率ポリマーと高屈折率ポリマーの交互層の反射偏光子を作製した。275層パケットのそれぞれに関し、90/10 coPEN(90%のエチレンナフタレート繰り返し単位及び10%エチレンテレフタレート繰り返し単位を含有するコポリエステル)を用いて高屈折率層を作製した。押出成形機の中で55重量%のPETg GN071(Eastman Chemicalsから入手可能)と45重量%の90/10 coPENの混合物を混ぜ合わせて、低屈折率層を作製した。共押出プロセスの間に、低屈折率材料の15%を溶融トレインから転用して、保護境界層を形成した(275層押出品の各側に7.5%)。100% PETG GN071の表面薄層を、押出ダイの直前の位置に、総溶融流れの24%の割合で(フィルムの各側に12%)溶融流れに適用した。
【0131】
キャストウェブを、標準的なフィルムの製造テンターで延伸した。キャストウェブをテンターの中で約157℃で18秒間予熱した。次に、フィルムを、154℃で約60%/秒の初期速度で4.5秒、続いて約15%/秒の速度で18秒延伸した。x方向の合計の全延伸率は約5.5:1であった。次に、フィルムを、幅の約1%を引っ張りながら、227℃で18秒間熱処理した。
【0132】
層の各パケットの低及び高屈折率材料の相対押出速度は、完成したフィルムの隣接する材料層が、それぞれほぼ同じ光学的な厚さを有するように調整された。記載の材料、キャスティング速度、及び延伸条件は、およそnx1=1.82、ny1=1.62、nz1=1.505、及びn2=1.595の一連の屈折率をもたらし、各パケットの最も薄い層の約425nmの反射から、べき法則分布で単調に厚さが増加して、最も厚い層で約1150nmの光を反射するように調整されたブロック軸に関して、低及び高屈折率層の両方が1/4波長の光学的な厚さを有するように意図された。押出成形キャスティングホイール速度は、得られた反射帯域がこの波長範囲に及ぶように調整された。べき法則分布の形状は、結果として得られるスペクトルが、各パケット毎のスペクトルの大部分にわたって比較的平坦となるように選択された。スペクトル形状は、米国特許第6,783,349号(Neavinら)に概説されている軸線ロッドの技術を用いて微調整された。最終的な延伸フィルムにおいて、表面薄層の厚さは、それぞれ約11マイクロメートルであった。最終的なフィルムの合計厚さは、厚さ約90マイクロメートルであった。
【0133】
空気中への垂直入射におけるブロック軸(曲線2410を参照)及び通過軸(曲線2412を参照)、並びに空気中への60度におけるp偏光に対する通過軸(曲線2414を参照)に関する測定されたスペクトルが
図24にプロットされている。425〜1150nmの平均ブロック透過率(Tブロック)は6%である。垂直入射における400nm〜1080nmの通過軸透過率は84%であり、60度における400〜875nmでは63%である。
【0134】
ブロック、通過、及び60度のp偏光通過軸に関する右側帯域端部は、およそ1150nm、1080nm、及び875nmである。
【0136】
これらの値は、光学フィルム4.1の内部透過率値の計算値とほぼ一致する。
図23にプロットされたデータは、それぞれ、0度及び60度のp偏光に関する5%の内部Tブロック、並びに92%及び63%の内部通過軸透過率を示している。
【0137】
この光学フィルム4.2を、更に以下に説明される積層構造体3.2の中で試験したが、このフィルム4.2は積層されてユニタリー光を形成した。
【0138】
光学フィルム4.3:1軸コリメートフィルム(s偏光)、275のミクロ層(モデル化)
屈折率がnx1=1.82、ny1=1.623、n1z=1.505、及びn2=1.505の(引用符で囲まれた全ての屈折率値は633nmの波長について示されている)である2種類のポリマー材料を使用した多層スタックを、高角度のs偏光通過軸光を実質的に反射するように設計した。これは、大きなΔny=1.623−1.505を用いることによって達成される。ブロック軸及び通過軸に対する4種類の主な偏光状態のs偏光及びp偏光の反射率を、275の交互層の多層フィルムに関してモデル化した。内部反射率は、屈折率1.2の媒体中への0〜90度の間の全角度に関して
図25にプロットされており、ブロック軸反射帯域は垂直入射で400nm〜950nmに及ぶ。この図では、曲線2510はRSblock(θ)及びRPblock(θ)を表し、曲線2512はRSpass(θ)を表し、曲線2514はRPpass(θ)を表している。線2516は、空気中への入射角90度に相当するULI屈折率1.2の媒体への入射角を表す。通過軸透過率は垂直入射で約35%である。s偏光通過軸光の反射率は角度と共に急激に増加し、通過軸p偏光の反射率は角度によらずほぼ一定である。
【0139】
光学フィルム4.4:1軸コリメートフィルム(s偏光)、275のミクロ層(作製)
光学フィルム4.4は、既に上述された光学フィルム3.4の別名である。
【0140】
光学フィルム4.4を、様々な追加の表示装置の中にそのほとんとがULI層を含む積層体の形態で設置して、試験した。こうした追加の構造体は構造体2.1〜2.5と呼ばれ、以下に説明する。
【0141】
構造体2.1:板上のフィルム、パネルと離間(空隙)
この構造体では、反射偏光フィルムを光学接着剤でアクリル板に積層し、この組み合わせをLC表示パネルとバックライトとの間に設置し、組み合わせ、LCパネル、及びバックライトの間に空隙をもたせた。LC表示パネルは、Samsungから市販のTVセット(型番:LE−40M91B)から入手したが、40インチ(101.6cm)の対角寸法を有し、前側及び後側の吸収偏光子を備えていた。積層構造体は、いうまでもなく、反射偏光フィルムの通過軸が表示パネルの後側の吸収偏光子の通過軸と整列するように配向された。バックライトは30インチ(76.2cm)の対角線寸法を有していた。したがって、40インチ(101.6cm)テレビパネルの一部のみをバックライトで(構造体を通して)照明した。
【0142】
構造体2.2:ULIを有さない表示パネルに積層されたフィルム
この構造体は、反射偏光フィルムがアクリル板でなくLC表示パネルに積層されたこと以外は構造体2.1と同様であった。ビーズ利得拡散層が光学フィルムの他の主表面に適用され、構造体は
図15に示されるものと同様になった。
【0143】
構造体2.3:ULIを有する表示パネルに積層されたフィルム
光学的に厚いULI層が反射偏光フィルムと光学接着剤との間に適用されて、構造体が
図16に示されるものと同様になったこと以外は、この構造体は構造体2.3と同様であった。
【0144】
構造体2.4:ULI及びプリズムフィルムを有する表示パネルに積層されたフィルム
プリズムがULIの第2の層で平坦化されたプリズムBEFフィルムが積層体の中に含まれて、構造体が
図17に示されるものと同様になったこと以外は、この構造体は構造体2.3と同様であった。BEFフィルムはPET基材層を含み、この層の複屈折は、積層構造体内の光の偏光状態を部分的に変化させる効果を有し、輝度測定値をいくらか低下させるのに寄与した。
【0145】
構造体2.5:ULI及び体積拡散体を有する表示パネルに積層されたフィルム
この構造体は、体積拡散層がビーズ拡散層と置き換えられて、構造体が
図18に示されるものと同様になったこと以外は構造体2.3と同様であった。体積拡散体の移動係数(移動係数=(F−B)/(F+B)、式中、Fは、前方半球部で要素によって散乱された入射ランバート光の量を表し、Bは、後方半球部で要素によって散乱された入射ランバート光の量を表す)は80%であった。
【0146】
構造体2.1〜2.5のそれぞれを、光学フィルム4.4(3.4)を使用して、軸上輝度、最大輝度、コントラスト、及び視野角に関して測定した。視野角は、「水平」及び「垂直」視野平面(viewing plane)で別個に測定された。テレビ鑑賞で用いられる標準的な配向で設置された、即ち、標準的な室内の壁に平行に設置された表示パネルでは、「水平」視野平面は室内の床に平行に(及び表示パネルの平面と垂直に)配向され、また「垂直」視野平面は、垂直であるが、表示パネルの平面及び水平視野平面の両方と垂直に配置された。したがって、水平視野平面と垂直視野平面の交点は、表示パネルと垂直な軸方向を画定する。所与の平面で測定された視野角は、輝度が最大輝度の50%まで低下する面内方向間の全角度であった。
【0149】
追加研究では、光学フィルム4.2を、中実のライトガイドを含むディスプレイ関連構造体の中に設置した。この追加構造体は構造体3.2と呼ばれ、基本構造体3.1と共に以下に説明する。
【0150】
構造体3.1:中実のライトガイドを使用するエッジ照明バックライト、基本(空隙)
構造体3.1及び3.2の実施形態の調製に使用される次の材料を少し詳しく説明する:反射偏光フィルム上にハンドコーティングされたプリズムの調製(Verde重合性樹脂組成物、及びMOF上のプリズムの調製を含む);接着剤(PSA);3層コーティング(体積拡散コーティング溶液の調製、超低ヘイズ低屈折率コーティング溶液の調製、及びPET上の3層コーティングの調製を含む);ライトガイド板;白背面の反射体;及びバックライト。
【0151】
反射偏光フィルム上にハンドコーティングされたプリズムの調製
「Verde樹脂組成物」は:75%(w/w)エポキシアクリレート、CN120として販売(Sartomer(Exton,PA)より入手可能);25%(w/w)2−フェノキシエチルアクリレート、SR−339として販売(Sartomer(Exton,PA)より入手可能);並びに0.1%(pph)2,4,6トリメチルベンゾイル−ジフェニル−ホスフィンオキシド、Darocur(登録商標)TPOとして販売、及び0.25%(pph)2−ヒドロキシ−2−メチル−l−フェニル−プロパン−1−オン、Darocur(登録商標)1173として販売(共にCiba Specialty Chemicals Inc.(Switzerland)から入手可能)、であった。
【0152】
多層光学フィルム上のプリズムの調製
Verde樹脂組成物を使用して輝度上昇フィルムを調製した。Vikuiti(商標)BEF II 90/50(3M Co.(St.Paul,MN)から市販されている)に見られるプリズム形状パターンに類似した50マイクロメートルの公称ピッチ間隔を有する90度プリズムの線状の列よりなる8”(20.3cm)×11”(27.9cm)のメタルマスターをホットプレート上に配置し、150°Fに加熱した。約3グラムの温かい樹脂をMOFに適用し、線状プリズムがMOFの縦方向にほぼ平行になるように配向されたミクロ複製されたツールにくっつけて設置した。MOF、重合性Verde樹脂、及びツールを、約150°F(66℃)に設定された加熱されたラミネーターに通過させ、均一に厚い試料を形成した。フィルムとコーティングされた重合性樹脂試料とを収容したツールを、50fpm(15.2メートル/分)で、出力100パーセントに設定された2つの600W/in(236W/cm)Dバルブを含むFusion UV Systems,Inc.(Gaithersburg)のMDプロセッに通過させた。
【0153】
接着剤(PSA)
0.1%のビスアミド架橋剤をSK Dyne 2003K湿潤接着剤(Soken Chemicals(Tokyo,Japan)から入手可能)に加え、この混合物を従来型スロットダイを使用して2ミル(0.051mm)のポリエステル−シリコーン剥離ライナ(CP Films(St.Louis,MO)から入手可能なT50)にコーティングし、溶媒を乾燥させて厚さ1ミル(0.025mm)の接着剤コーティングとした。第2の剥離ライナ(別の剥離剤を有する2ミル(0.051mm)のポリエステル−シリコーン剥離ライナ(同様にCP Filmsから入手可能なT10))を乾燥した接着剤の表面に積層した。
【0154】
3層コーティング
体積拡散コーティング溶液の調製体積拡散
コーティング溶液(A)を調製した。最初に、144.8gのメタノール、49.5gのphotomer 6010(Cytec Industries(Woodland Park,NJ))、22.0gのSR833S、及び25.3gのSR9003(Sartomer(Exton,PA))を、均質な溶液になるまで超音波下で混合した。その後、96.8gのSX−350H(Soken Chemical & Engineering Co.,Ltd(Tokyo,Japan)から入手可能な3.5マイクロメートルのポリスチレンビーズ)を高速撹拌下で加えた。白濁溶液を一晩撹拌した後、144.8gの1−メトキシ−2−プロパノール及び2.48gのDarocur(登録商標)4265(Ciba Specialty Chemicals(High Point,NC))を上記溶液に高速撹拌下で加えて、均質な体積拡散溶液を形成した。
【0155】
超低ヘイズ低屈折率コーティング溶液の調製
コーティング溶液「B」を作製した。冷却器及び温度計を備えた2リットル三つ口フラスコの中で、960グラムのIPA−ST−upオルガノシリカの細長い粒子、19.2グラムの脱イオン水、及び350グラムの1−メトキシ−2−プロパノールを高速撹拌下で混合した。細長い粒子は、約9nm〜約15nmの範囲内の直径及び約40nm〜約100nmの範囲内の長さを有していた。粒子を15.2重量%のIPAの中に分散し、22.8グラムのSilquest A174シランをフラスコに加えた。得られた混合物を30分間撹拌した。この混合物を81℃で16時間保持した。次に、この溶液を室温まで冷却し、40℃の水槽の下のロータリーエバポレータを使用して溶液中の約950グラムの溶媒を除去し、41.7重量%のA−174で修飾された伸長シリカが1−メトキシ−2−プロパノール中に分散された透明なA174修飾伸長シリカ溶液を得た。次に、200グラムの透明なA−174修飾伸長シリカ溶液、83.4グラムのSR 444、1.6gのTEGO Rad 2250、0.4gのIrgacure 819、1.25グラムのIrgacure 184、及び233gのイソプロピルアルコールを混合及び撹拌して、32.5重量%の固形分を有する均質なコーティング溶液Cを得た。
【0156】
低ヘイズ低屈折率コーティング溶液の調製
コーティング溶液「C」を作製した。まず、360gのNalco 2327コロイドシリカ粒子(40重量%固形分及び平均粒径約20ナノメートル)及び300gの1−メトキシ−2−プロパノールを、冷却器及び温度計を備えた2リットル三つ口フラスコの中で高速撹拌下で混合した。次に、22.15gのSilquest A−174シランを加え、この混合物を10分間撹拌した。次に、追加の400gの1−メトキシ−2−プロパノールを加え、混合物を加熱マントルを使用して85℃で6時間加熱した。得られた溶液を室温まで冷却し、60℃水槽の下のロータリーエバポレータを使用して、水及び1−メトキシ−2プロパノール溶媒(約700g)のほとんどを除去した。得られた溶液は、44重量%のA−174で修飾された20nmのシリカが1−メトキシ−2−プロパノールの中に分散された透明なA−174修飾シリカ溶液であった。次に、120gのA−174修飾シリカ溶液、17.6gのCN2302、35.2gのSR444、1.05gのTEGO Rad 2250、0.264gのIrgacure 819、0.81gのIrgacure 184、及び156gのイソプロピルアルコールを撹拌により混合して、均質なコーティング溶液Cを形成した。
【0157】
コーティング手順
コーティング手順Dを開発した。まず、コーティング溶液を、10cc/分の速度で幅20.4cm(8インチ)のスロットタイプのコーティングダイの中にシリンジポンプ注入した。スロットコーティングダイは、152cm/分(10ft/分)で移動する基材の上に幅20.4cmのコーティングを均一に分配した。次に、UV照射の通過を可能にする石英窓を備えるUVLED硬化チャンバに、コーティングされた基材を通過させることによって、コーティングを重合した。UV−LEDバンクは、160個(ダウンウェブ方向に8個、クロスウェブ方向に20個)のUV−LEDの矩形アレイ(10.2cm×20.4cm領域をほぼカバーする)を含んだ。これらLED(Cree,Inc.(Durham NC)から入手可能)は、385nmの公称波長で動作し、典型的には45ボルト、8アンペアで駆動され、その結果UV−A線量は平方センチメートル当たり0.212ジュールとなる。ファン冷却式UV−LEDアレイは、TENMA 72−6910(42VIlOA)電力供給装置(Tenma(Springboro OH)より入手可能)によって給電された。UV−LEDは、基材から約2.5cm離れて硬化チャンバの石英窓の上方に配置された。UV−LED硬化チャンバに毎時46.7リットル/分(100立方フィート)の流速で窒素流を供給し、硬化チャンバの酸素濃度は約150ppmとなった。追加の酸素流を供給して、UVLEDチャンバの中の総酸素濃度を制御した。UV−LEDによって重合された後、コーティングされた基材を150°F(66℃)の乾燥オーブンに10ft/分(152cm/分)のウェブ速度で1分間移動させることによって、硬化したコーティング中の溶媒を除去した。次に、乾燥したコーティングを、Hバルブ(Fusion UV Systems(Gaithersburg MD)より入手可能)で構成されたFusion System Model I300Pを使用して後硬化した。UV Fusionチャンバに、チャンバの中の酸素濃度が約50ppmになるように窒素流を供給した。
【0158】
PET上の3層コーティングの調製
コーティング溶液Aを、まず、コーティング手順Dに従って、UV−LEDをオフにし流速30cc/分で、接着剤を下塗りした2ミル(0.051mm)のPETフィルム(DuPont Teijin Filmsより入手可能)にコーティングした。コーティングされた基材を150°F(66℃)の乾燥オーブンに移動させることによって、硬化したコーティング中の溶媒を除去した。次に、乾燥したコーティングを、窒素雰囲気及び100% UV出力で作動するHバルブ(Fusion UV Systems(Gaithersburg MD)より入手可能)で構成されたFusion System Model I300Pを使用して後硬化した。これによりPETフィルム上の体積拡散コーティングが生成される。コーティング溶液Cを、9アンペアのUV−LEDを使用し、流速12cc/分であり、酸素濃度を2000ppmに制御したコーティングプロセスDを用いて体積拡散コーティングの反対側にコーティングした。UV−LEDによって重合された後、硬化したコーティング中の溶媒を除去し、窒素雰囲気及び100% UV出力で作動するHバルブ(Fusion UV Systems(Gaithersburg MD)より入手可能)で構成されたFusion System Model I300Pを使用して最終硬化した。これにより、上面の有効屈折率が1.4及びPETと低屈折率コーティングとの間の境界面の有効屈折率が1.21の低屈折率の勾配コーティングが生成された。9アンペアのUV−LEDを使用し、流速10cc/分であり、酸素濃度を1000ppmに制御した同じDのプロセスを用いて、体積拡散コーティングの上にコーティング溶液Bをコーティングした。UV−LEDによって重合された後、硬化したコーティング中の溶媒を除去し、窒素雰囲気及び100% UV出力で作動するHバルブ(Fusion UV Systems(Gaithersburg MD)より入手可能)で構成されたFusion System Model I300Pを使用して最終硬化した。これにより、上面の有効屈折率が1.26及び体積拡散体と低屈折率コーティングとの間の境界面の有効屈折率が1.20の低屈折率の勾配コーティングが生成された。
【0159】
ライトガイド板(LGP)
LGPは、Coretronic Company(Hsinchu,Taiwan 300,R.O.C.)から入手した型番AUT1982T32であった。LGPはポリ(メチルメタクリレート)で作製され、底面に白い印刷ドットを有し、厚さ6mm、幅385mm、長さ306mmであった。
【0160】
白背面の反射体(WBR)
WBRは、Viewsonic 22インチ(55.9cm)モニタ(型式番号:VLED221wm)(Viewsonic Company(Walnut,CA,USA)より入手可能)から得た。
【0161】
バックライト
22”(55.9cm)Viewsonicモニタ、型式番号VLED221wmを、パネルからバックライトを分離するために分解した。バックライトは、およそ幅473mm×長さ306mmに寸法設定された。バックライトは、バックライトの各473mm縁部に沿って6mmのピッチで78個のLEDの列を収容し、後壁はWBRで裏打ちされていた。実施例では、各縁部上の63個のLEDのみを使用した。構造体3.2は、LGPに積層された多層反射偏光子を備え、反射偏光子の通過軸は385mmの長さと整列されている。次に、多層反射偏光子の通過軸がLEDの列と平行になるように、偏光LGPをバックライトの中でWBRの上にセットする。積層体を使用してULIと実施例のプリズムコーティングされたMOFを組み合わせた。エンタイトルメント構造では、3層コーティングは、積層体を必要とせずにMOF上に直接コーティングされ得る。全ての実施例において、MOFの通過軸が中実LGPの長い辺と平行になるようにMOFを配列し、光エンジンを取り付けた。
【0162】
上述の基礎的な情報を用いて、空隙を組み込んだ基本バックライト構造体(構造体3.1)を、
図26aの概略的側面図に描かれているように作製した。図は、反射偏光フィルム2612と、BEFフィルム2614と、利得拡散体2616と、ライトガイド板2618(背面に抽出ドット(extraction dot)2620を有する)と、白背面の反射体2622と、を有するバックライト2610を示している。LED 2624a、2624bは、ライトガイドのエッジライト照明を提供する。図l(a)に概略側側面図が示されているバックライトを作製した。バックライトは、上述のWBR(要素2622)と、LGP(要素2618)と、LEDランプ(要素2624a、2624b)と、利得拡散体(要素2616)と、BEF3−7Tプリズムフィルム(要素2614)と、反射偏光子2612のためのDBEF−D400と、を備えた。63個のLEDをLGPの縁部近くに設置し、LGPの幅(385mm)に沿って一定の間隔で配列した。
【0163】
視野角の関数としてのバックライト中央部の輝度、軸方向の輝度(ニトの単位)、輝度半値角を、Autronic Conoscope Conostage 3(Autronic−Melchers GmbH,Karlsruhe(Germany)より入手可能)を使用して測定した。測定を始める前に、線形吸収偏光子(
図26aには図示せず)を、その通過軸をLGPの長い辺と平行にした状態でDBEF−D400の上に配置した。空気中への極角の関数としての輝度は、水平面(曲線2632参照)及び垂直面(曲線2630参照)で測定され、
図26bにプロットされている。
【0164】
構造体3.2:ULIがある場合の中実ライトガイド/フィルム/プリズム積層体を有するバックライト
空隙を組み込まずに積層されたバックライト、1軸コリメート浸漬反射偏光フィルム(光学フィルム4.2)、及び光学的に厚いULI層を、
図27aの概略的側面図に示されるように作製した。この図は、多層反射偏光子2714(光学フィルム4.2)の上に形成されたBEFプリズム2712と、感圧接着剤(PSA)層2716、2726と、光学的に厚いULI層2718と、体積拡散体2720と、3層コーティングされたPET層2722と、z勾配を有するULI層2724と、その上に抽出ドット2730を有するライトガイド板2728と、白背面の反射体2732と、エッジライト光源2734a、2734bと、を有する積層バックライト構造体2710を示している。こうした構成要素の詳細は上述されている。光源2734a、2734bとして、63個のLEDをLGPの縁部近くに設置し、LGPの幅(385mm)に沿って一定の間隔で配列した。
【0165】
構造体3.2に関連して記載されたものと同様の測定を行った。
図27bは、水平面(曲線2742参照)及び垂直面(曲線2740参照)で測定された空気中への極角の関数としての輝度を示している。
【0166】
光学フィルム4.2を使用した構造体3.2は、バックライト用途にとって望ましいいくつかの重要な機能、即ち(1)光出力コリメーション(light output collimation)、(2)偏光出力、を実証した。ULI、特にライトガイドに近いz勾配ULI層の固有のヘイズにより、表示の均一性はわずかに変化した。既存のシステムよりも多くの光がエッジの近くで抽出されたが、これは抽出器の設計を再度最適化することによって容易に補償され得る。このため、実施形態の間で公正な比較を行うために、ディスプレイ上部、中央部、及び底部といったディスプレイ上の3点を測定した。結果は下の表に要約されている。実施例2である一体型偏光中実ライトガイドの平均輝度は、既存のシステムの86.5%である。その性能は、(1)ハンドコーティングではなく精密なプリズムコーティング、(2)PSA及びPETの層といった付加価値のない構成要素の排除、(3)ULIのヘイズ低減、(4)プリズムコーティング用のより高屈折率の樹脂、(5)更なるMOF最適化、によって更に改善され得る。
【0168】
更なる分析及び考察
先に言及したように、反射偏光子の性能のいくつかのパラメータは、高角度における強度の低減及び/又は軸上の強化された強度を必要とするLCDバックライト、又は任意の他の偏光照明システムにおける有用性に対して有意なものとなり得る。こうしたパラメータは、上述の%Tブロックと%T00とを含む。通過状態のs偏光成分及びp偏光成分の透過率値が斜角において互いに同様であり得る、2軸コリメートの浸漬した反射偏光子の場合では、パラメータは、それぞれがs及びp偏光成分の平均である%TA60、%TA90、及び%TU90も含み得る。
【0169】
こうした透過率値は、それらが適用され得るシステムの要件によって、ある範囲の好ましい値を有する。更に、フィルムのこれらのパラメータのうちの1つを変更すると、他のパラメータの1つ以上が変化することになるので、トレードオフが存在する。この理由の1つは、任意の材料から得られる複屈折の限界である。PEN及びPETなどのポリマーは、ポリマー微結晶及び半結晶性ポリマーフィルムの分子鎖のいくつかの延伸に起因して、複屈折を呈する。結晶及び分子秩序を形成するこの処理は、一般に、フィルムの延伸と呼ばれている。ポリマーフィルムは、x方向若しくはy方向のいずれか、又はその両方に延伸され得る。任意の方向へのフィルムの延伸は、その方向、並びにその他の2方向への反射率に影響を与えることになる。フィルムがx及びy方向の両方に高度に延伸される場合、z屈折率は最小となる。x屈折率は、y屈折率を最小値まで減少させるという犠牲によってのみ、最大値まで増加され得る。こうした特性は既知であるが、上述された5つのパラメータの最適化に関連したトレードオフについて論じるために、ここで再び記載する。例えば、高屈折率層のy屈折率を高めるようにフィルムを処理することにより%T00が低下するが、x屈折率も同様に低下するので、%Tブロックは増加する。一次近似で、x、y、及びz屈折率の合計は一定である。x方向若しくはy方向のいずれか、又はその両方に最大延伸すると、ポリエステル系システムではz屈折率は最小になり、また、その他のいわゆる「正の複屈折システム」でも同様である。延伸の非対称、例えば、y方向への延伸の増加を伴うx方向の低下などは、z屈折率をほぼ一定の状態に保つことができる。
【0170】
LCDパネルの吸収偏光子への吸収を介したブロック軸偏光を有する光の損失を低減するために、LCDバックライトの%Tブロックの値を最小にすることを望む場合がある。しかしながら、%Tブロックは、高屈折率層に対して大きな値のnxを必要とするので、y屈折率は、Tブロックが大きくなり過ぎる点までnxが減少するような大きな値まで増加させるべきではない。一般に、%Tブロックは、垂直入射で可視スペクトルにわたる平均である15%又は20%よりも小さいのが望ましい。10%未満、又は5%の%Tブロック値がより望ましい。
【0171】
例示の実施形態では、特に、拒絶された通過軸光線をフィルムに戻すのにリサイクリングシステムが有効でない場合には、%T00は、通過軸の光の相当量が最終用途まで透過されるように、十分に高くされる。システムの要件が、s偏光通過軸光に対する高反射率を含む場合には、垂直入射で中程度の内部反射率が必要である。交互ミクロ層のy屈折率に不整合が存在する場合に限り、s偏光は反射される。この不整合、並びに層の数も、%T00の値を決定する。相当量のs偏光を反射するあらゆるフィルムは、相当量の垂直入射の光も反射する。したがって、s偏光の強い反射が意図されるフィルムは、垂直入射において少なくとも20%、より典型的には30%、又は更に50%若しくは60%の内部反射を必要とし得る。バックライトシステムがより効率的になればなるほど、%T00の許容可能な値が低くなり得る。したがって、内部透過率%T00の値は、40%から80%の高さにまで及び得る。
【0172】
興味深いことに、大きな入射角のs偏光又はp偏光の実質的に一方のみに高反射率をもたらす偏光反射体(いわゆる1軸コリメートフィルム)は、特にp偏光コリメートフィルムに関して、2軸コリメートフィルムと比べていくつかの利点を有する。したがって、高角度の全光の大きな割合を反射することができる2軸コリメートフィルムは、広くは、1軸コリメートフィルムよりも多くの光をバックライトに向けてリサイクルし、吸光損失がより大きくなる。例えば、
図10の反射対角度曲線を
図23のそれと比較する。2軸コリメートフィルムは、s偏光及びp偏光の両方のかなりの部分を反射する。これは、相当な屈折率差の値Δnyを必要とする。この屈折率差は、所与の数の層及び帯域幅のTpass(0)を決定するものでもある。
【0173】
こうして、相当量のs偏光を反射するあらゆるフィルムは、相当量の垂直入射の光も反射する。したがって、s偏光の強い反射が意図されるフィルムは、垂直入射において少なくとも20%、より典型的には30%、又は更に50%若しくは60%の内部反射を必要とし得る。高度のコリメートフィルム4.4(スペクトルは
図20に示されている)は、たった39%の通過軸内部透過率、したがって約61%の反射率を有する。
【0174】
p偏光コリメートフィルムは、屈折率差Δny及びΔnzの両方に依存する。このため、s偏光のほんの中程度の反射率又は更に反射率なしで、p偏光の十分な反射率を達成することができる。p偏光反射体の垂直入射における反射率は、s偏光の望ましい量の反射及びリサイクリング照明システム又はバックライトの効率といったシステムのニーズに応じて、0%〜30%の範囲内、例えば約0、10、20、又は30%であれば十分である。垂直入射における低反射率は、全体的に低い半球反射率の値及び高い半球透過率を提供する。したがって、p偏光に対して高反射率をもたらすフィルムは、s偏光に対して高反射率をもたらすフィルムよりも全体的により透過的に作製され得る。こうしたフィルムは、その結果、s偏光及びp偏光の両方に対して高反射率をもたらすフィルムよりも透過的である。
【0175】
総反射率及び透過率は、一般に半球反射率及び透過率と呼ばれ、半球体の全ての立体角にわたって反射又は透過された光の集積割合を指す。この場合、本発明者らは、フィルムのブロック軸及び通過軸のみに入射する光の反射率及び透過率のデータを計算して表示した。任意の所定の入射極角θに関し、主軸の間の全方位角φの通過軸偏光に対する反射率及び透過率の値は、周知の重み関数であるR
s*cos
2φ+R
p*sin
2φによって推定することができ、式中、R
s及びR
pはs偏光及びp偏光値を指す。
【0176】
別掲の通り、最低の層数を有する広帯域反射体の最も高い反射率を生成するために最も効果的なスタック設計は、スタックの1つの表面から他の表面までの1/4波長の厚さの値に連続的な階調を有するものである。光学フィルム1.1は、550の連続的に勾配が付けられている層を備えて、この様式で設計されている。しかしながら、好結果の製品のための光学設計の選択は、材料などの製造原価及び機器費用に制限されることがしばしばである。その反射率が
図11に示されている光学フィルム1.3は、それぞれが275層を有する2つの独立して作製された勾配が付けられているスタックを、積層又は共押し出しすることによって作製されるように設計される。2つの独立した反射体は、互いに対してコヒーレントに光を反射せず、また、2つの反射体のコヒーレントでない組み合わせに対して「パイルオブプレーツ」の式を用いて、平均的に反射率の増加をもたらす。
【0177】
R={R1+R2
*(1−2
*R1)}/(1−R1
*R2)
図10と
図11を比較することにより観察され得るように、このようなフィルムの組み合わせは、%TA90若しくは%TU90又は%Tブロックよりも、%T00の反射率を増加させるという点で、より有効である。
【0178】
1軸コリメート反射偏光子に関する軸位置合わせの選択
直交軸へのコリメーションをもたらすために、又は同軸に沿った光のコリメーションを支援するために、1軸コリメート反射フィルムをレンズ状の微細構造化表面と組み合わせて使用することができる。光学フィルム4.2、及び
図27aの構造体3.2の中でのその機能を考察する。この場合の通過軸は、上面上のプリズムの長軸と位置合わせされる。通過軸光に対するフィルムの反射率は、y軸の平面に出射する光のコリメーティング効果を引き起こす一方で、プリズムは、x軸の平面に出射する光のコリメーティング効果を引き起こす。このようにして、この構造体は、一体型積層体との両軸に沿った十分なコリメーションを引き起こす。
【0179】
しかしながら、位置合わせの選択は、その中で構造体が使用されるシステムによって制約され得る。構造体3.2の中のフィルムの通過軸は、テレビパネルの吸収偏光子の通過軸とほぼ平行になるように制約される。典型的には、プリズムフィルムもまたこの方向に位置合わせされる。しかしながら、システム設計者が、プリズムが吸収偏光子のブロック軸と位置合わせされるのを望む場合には、光学フィルム4.2をその方向に同様に位置合わせすることはできない。しかしながら、この場合、s偏光通過軸光はフィルムのブロック軸の平面に出射するので、システム設計者はs偏光コリメートフィルムを利用することができる。反対に、システム設計者が、反射フィルム及びプリズムフィルムの両方が光を同一方向にコリメートするのを望む場合には、s偏光及びp偏光コリメートフィルムの使用は、今説明した場合と逆になることになる。要約すると、使用するs偏光又はp偏光反射フィルムを選択することにより、コリメーション軸が偏光子通過軸と平行になる、又は通過軸と垂直になるように選択することができる。2軸コリメートフィルムはいずれの構造体でも機能し得るが、低輝度の低効率なシステムをもたらし得る。
【0180】
2軸コリメートフィルムは、照明器又はバックライトの中で高効率の反射体を使用する高効率システムに最適である。反射フィルムの反射率が95以上であるのが、かかるシステムで最も有用である。リサイクリングキャビティに対するフィルム中の厚い光学層及び薄い光学層の相対位置も、システム効率に影響を与える可能性がある。大量の傾斜した光が光学フィルムに入射する浸漬システムでは、最も高角度で伝播する光線が最初に反射される場合、多層フィルムの吸収は一般に少ない。換言すれば、そのような場合には、フィルムの最も厚い層を有する側をリサイクリングキャビティに向けて位置決めすることにより、より効率的なシステムを得ることができる。
【0181】
1軸コリメートフィルムを、例えばビーズ利得拡散フィルム又はマイクロレンズアレイ複製表面などの二次元コリメート微細構造と組み合わせて使用することもできる。
【0182】
項目1は、可視波長を含む広範な波長領域にわたり角度及び偏光の関数として光を選択的に透過及び反射するように構成され、第1の偏光の可視光線を垂直に入射するための通過軸と、第2の偏光の可視光線を垂直に入射するためのブロック軸と、を画定し、更に(a)第1の光を圧縮された視野円錐の中に透過するように、第1の入射面に斜角で入射する第1の偏光の第1の光に対する増加した反射率、及び(b)第2の光を広い視野円錐の中に透過するように実質的に増加しない、第2の入射面に入射する第1の偏光の第2の光に対する斜角での反射率によって特徴付けられる、複数のミクロ層と;ミクロ層への大きく傾斜した光の伝播を制限する、又はかかる大きく傾斜した伝播光をミクロ層に向けて向け直すという方法でミクロ層に連結される、超低屈折率を有する光学的に厚い低屈折率層と;を備えるフィルム構造体である。
【0183】
項目2は、項目1のフィルム構造体であり、第1の光はp偏光可視光線であり、第2の光はs偏光可視光線である。
【0184】
項目3は、項目1のフィルム構造体であり、第1の光はs偏光可視光線であり、第2の光はp偏光可視光線である。
【0185】
項目4は、項目1のフィルム構造体であり、線状プリズムフィルムを更に備える。
【0186】
項目5は、項目4のフィルム構造体であり、プリズムフィルムの各プリズムはプリズム軸に沿って延在し、プリズム軸は第1の入射面と実質的に整列する。
【0187】
項目6は、項目4のフィルム構造体であり、プリズムフィルムの各プリズムはプリズム軸に沿って延在し、プリズム軸は第2の入射面と実質的に整列する。
【0188】
項目7は、可視波長を含む広範な波長領域にわたり角度及び偏光の関数として光を選択的に透過及び反射するように構成され、第1の偏光の可視光線を垂直に入射するための通過軸と、第2の偏光の可視光線を垂直に入射するためのブロック軸と、を画定し、更に(a)ブロック軸を含む第1の平面に入射する第1の偏光の可視光線を圧縮された視野円錐の中に透過するように、第1の偏光のs偏光に対する斜角での増加した反射率、及び(b)通過軸を含む第2の平面に入射する第1の偏光の可視光線を広い視野円錐の中に透過するように実質的に増加しない、第1の偏光のp偏光の斜角での反射率によって特徴付けられる、複数のミクロ層と;ミクロ層への大きく傾斜した光の伝播を制限する、又はかかる大きく傾斜した伝播光をミクロ層に向けて向け直すという方法でミクロ層に連結される、超低屈折率を有する光学的に厚い低屈折率層と;を備えるフィルム構造体である。
【0189】
項目8は、斜角で第1の入射面に入射する可視光線のミラーとして、垂直入射の可視光線、及び第2の入射面に斜角で入射する可視光線用反射偏光子、として実質的に機能するように構成された多層光学フィルムと、多層光学フィルムに取り付けられる超低屈折率を有する光学的に厚い低屈折率層と、を備えるフィルム構造体。
【0190】
項目9は、項目7又は8に記載のフィルム構造体であり、光学的に厚い低屈折率層からの光を受容する、及び/又は光学的に厚い低屈折率層に光を透過するように配置されたプリズム輝度上昇フィルムであって、第2の平面に入射する光に圧縮された視野円錐を提供するように適合される、プリズム輝度上昇フィルムを更に備える。
【0191】
項目10は、項目7又は8に記載のフィルム構造体であり、光学的に厚い低屈折率層からの光を受容する、及び/又は光学的に厚い低屈折率層に光を透過するように配置された輝度上昇フィルムであって、フィルムは伸長プリズムを画定する構造化表面を有し、各プリズムは第1の平面と実質的に平行であるプリズム軸に沿って延在する、輝度上昇フィルムを更に備える。
【0192】
特に別段の指定がない限り、本明細書及び特許請求の範囲において使用する、数量、特性の測定値等を表す全ての数値は、「約」という語で修飾されるものとして理解されるべきである。したがって、そうでない旨が指定されない限り、本明細書及び特許請求の範囲において記載された数値パラメータは、本出願の教示を利用する当業者が得ようと求める望ましい特性に応じて変化し得る、概算値である。均等論を「特許請求の範囲」の範疇に適用することを制限しようとする試みとしてではなく、各数値パラメータは少なくとも、記録された有効数字の桁数を考慮して、また通常の四捨五入を適用することによって解釈されるべきである。本発明の広範な範囲を示す数値範囲及びパラメータは近似であるにもかかわらず、いかなる数値も本明細書で述べられる具体的な例で示される程度に、これらは妥当に可能な限り精確に報告される。しかしながら、いかなる数値も試験及び測定の限界に関連する誤差を含み得る。
【0193】
本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく本発明の様々な改変及び変形が当業者には明らかであり、本発明が本明細書に記載された例示的な実施形態に限定されるものではないことは理解されるはずである。例えば、読者は、別段の指示がない限り、1つの開示された実施形態の特徴がその他全ての開示された実施形態にも適用され得ると仮定するべきである。また、本明細書において参照された全ての米国特許、公開特許出願、並びに他の特許及び非特許文書は、それらが上述の開示に矛盾しない範囲において、参照により組み込まれると理解すべきである。