(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来から、エンジンとモータとを両方備えたハイブリッド式駆動装置が知られている。また、作業機(ローダ、ロータリ等)を備えた作業車両において、作業車両の移動又は作業機を駆動するために、ハイブリッド式駆動装置が採用されることがある。
【0003】
ここで、ハイブリッド式駆動装置には、シリーズタイプと、パラレルタイプと、が知られている。シリーズタイプとは、エンジンの駆動力を発電に用い、モータの駆動力のみによって作業車両の移動又は作業機の駆動を行うハイブリッド式駆動装置である。パラレルタイプとは、エンジンの駆動力により発電を行うとともに、エンジンとモータの両方の駆動力によって、作業車両の移動又は作業機の駆動を行うハイブリッド式駆動装置である。
【0004】
また、ハイブリッド式駆動装置を構成するエンジンとしては、ガソリンエンジンだけでなく、ディーゼルエンジンが用いられる。ディーゼルエンジンには、ディーゼルパティキュレートフィルタ(以下、DPF)が配置される。DPFは、フィルタ等により粒子状物質(以下、PM)を捕集する。また、DPFによるPMの捕集量が所定の値を超えた場合、DPF内の温度を上昇させて、PMを除去する必要がある。
【0005】
特許文献1及び2は、作業車両用のパラレルタイプのハイブリッド式駆動装置を開示する。
【0006】
特許文献1は、発電機とモータの両方の機能を発揮可能な発電電動機を備えたハイブリッド式駆動装置を開示する。このハイブリッド式駆動装置は、作業機の負荷が所定以下のときに発電電動機を発電機として機能させるように構成されている。
【0007】
特許文献2は、バッテリーの蓄電量が低い場合は充電を行い、バッテリーの蓄電量が所定以上である場合はヒータによりDPFを加熱するハイブリッド式駆動装置を開示する。これにより、エンジンによる熱だけではPMが除去できない場合であっても、ヒータでDPFの加熱補助を行うことでPMを除去できる。なお、特許文献2では、発電機とモータとを別に設けた構成が開示されている。
【0008】
また、特許文献3は、強制再生制御と、強制低回転制御と、を実行可能なエンジン装置を開示する。強制再生制御とは、エンジンを高回転させてDPF内の温度を上昇させることでPMを除去する制御である。強制低回転制御とは、作業機の負荷が掛かっていないときにエンジンを低回転にして低燃費及び低騒音を実現する制御である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、特許文献1の発電電動機は、発電機として機能させるか、モータとして機能させるかの選択的な制御しか行うことができない。これに対し、作業機の負荷、バッテリーの充電量、PMの堆積量は連続的な値を取る。従って、特許文献1のハイブリッド式駆動装置20は、状況に応じた柔軟な制御を行うことができなかった。
【0011】
また、特許文献2では、バッテリーの蓄電量が所定以上である場合はヒータによりDPFを加熱する方法が用いられている。しかし、この方法ではバッテリーを消費してDPFを除去するため、状況によっては、エネルギー効率が低下してしまうことがある。また、特許文献2では、作業機の負荷に応じて充電を制御する技術は開示されていない。
【0012】
また、特許文献3はハイブリッド式ではない通常のディーゼルエンジンについての発明である。
【0013】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その主要な目的は、作業機の負荷に応じてバッテリーの充電を柔軟に制御するパラレルタイプのハイブリッド式駆動装置を提供することにある。
【0014】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0015】
本発明の観点によれば、以下の構成のハイブリッド式駆動装置が提供される。即ち、このハイブリッド式駆動装置は、エンジンと、フィルタ部と、ジェネレータと、バッテリーと、モータと、伝達部と、
低回転制御部と、を備える。前記フィルタ部は、前記エンジンの排気経路に配置され、排気ガスを浄化する。前記ジェネレータは、前記エンジンの駆動力により発電を行う。前記バッテリーは、前記ジェネレータが発電を行うことで充電される。前記モータは、前記ジェネレータが発電した電力又は前記バッテリーに充電された電力で駆動する。前記伝達部は、前記エンジンの駆動力及び前記モータの駆動力を、少なくとも作業機の駆動のために伝達する。
低回転制御部は、前記作業機の負荷が所定以下である場合に、前記エンジンの回転数を低下させる低回転制御を指示する。前記低回転制御部が前記低回転制御を指示した場合に、前記エンジンから前記ジェネレータへ伝達される駆動力を増加させる充電速度上昇制御を行う。
【0016】
これにより、作業機の負荷が小さい場合であっても、充電速度を早くすることでエンジンに負荷を掛けることができる。従って、フィルタ部のPMの堆積を防止することができる。また、ジェネレータとモータとが別構成なので、バッテリーの充電中においてもモータを駆動できる。従って、バッテリーの充電中に作業機の負荷が少し大きくなった場合であっても、エンジンの駆動力の一部を伝達部に伝達させることで、充電を継続できる。
また、低回転制御部の指示に基づいて作業機の負荷が所定以下であることを検出できるので、特別なセンサを追加することなく本発明の効果が実現できる。
【0019】
前記のハイブリッド式駆動装置においては、
前記低回転制御部が前記低回転制御を指示した場合であって、
更に、前記作業機の負荷が所定以下であって、前記バッテリーの蓄電量が閾値以下であることを検出した場合に、前記充電速度上昇制御を行うことが好ましい。
【0020】
これにより、バッテリーの蓄電量が少ない場合にのみ充電速度を上昇させることになるので、エネルギー効率の低下を防止できる。
【0021】
前記のハイブリッド式駆動装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記フィルタ部のPM量又はその推測量を取得するPM量取得部を備える。
前記低回転制御部が前記低回転制御を指示した場合であって、
更に、前記PM量取得部が取得したPM量が所定以上である場合に、前記充電速度上昇制御を行う。
【0022】
これにより、PM量が多い場合にのみ充電速度上昇制御を行ってエンジンの負荷を上昇させるので、騒音が発生する回数を低減することができる。
【0023】
前記のハイブリッド式駆動装置においては、前記作業機の負荷の大きさに応じて、前記エンジンから前記ジェネレータへ伝達される駆動力の増加量が決定されることが好ましい。
【0024】
これにより、作業機の負荷が小さくなるにつれて充電速度を上昇させることができる。従って、エンジンの駆動力を一層有効に活用して充電を行うことができる。
【0025】
前記のハイブリッド式駆動装置においては、前記伝達部は、前記エンジンの駆動力及び前記モータの駆動力を、前記作業機の駆動に加え、作業車両の移動のために伝達することが好ましい。
【0026】
これにより、ハイブリッド式駆動装置により作業車両の移動を行う構成において本発明の効果を発揮させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
次に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、トラクタ(作業車両)の側面図である。
【0029】
図1に示す作業車両としてのトラクタ1は、前部又は後部に各種作業機(ローダ、ロータリ等)を装着して、様々な種類の作業を行うことが可能に構成されている。トラクタ1は、車体11と、フロントフレーム12と、シャーシフレーム13と、前輪14と、後輪15と、キャビン17と、を主要な構成として備えている。
【0030】
車体11の前部にはボンネット16が設けられており、このボンネット16の内部には、エンジン及びモータ等から構成されるハイブリッド式駆動装置(詳細は後述)が配置されている。
【0031】
また、トラクタ1の下部には、左右一対で設けられたフロントフレーム12と、同じく左右一対で設けられ、前記フロントフレーム12の後端部から後方に延びるように配置されたシャーシフレーム13と、が配置されている。これらのフレームによって、エンジン等が支持されている。
【0032】
ハイブリッド式駆動装置の出力は、まず変速装置で変速された後に、前輪14の車軸のデファレンシャルギアと、後輪15の車軸のデファレンシャルギアと、に伝達される。それぞれのデファレンシャルギアに伝達された駆動力は、図略の伝達機構を介して、それぞれ前輪14及び後輪15に伝達される。以上の構成で、前輪14及び後輪15を駆動することにより、車体11を所望の速度で走行させることができる。
【0033】
また、ハイブリッド式駆動装置の出力は、油圧ポンプ等に伝達される。これにより、上述の作業機を駆動することができる。
【0034】
また、ボンネット16の後方には、オペレータが搭乗してトラクタ1の各種操作を行うためのキャビン17が配置されている。例えばキャビン17には、作業機を操作するための作業機操作レバーが配置されている。
【0035】
次に、
図2及び
図3を参照して、ハイブリッド式駆動装置20を構成する機器について説明する。
図2は、ハイブリッド式駆動装置20の信号、電力、駆動力等を伝達する構成を示すブロック図である。
図3は、DPF22及びエンジン21を概略的に示す図である。
【0036】
図2に示すように、ハイブリッド式駆動装置20は、エンジン21と、DPF(フィルタ部)22と、ジェネレータ23と、バッテリー24と、インバータ25と、モータ26と、伝達部27と、を備えている。
【0037】
エンジン21は、
図3に示すように、ECU(エンジンコントロールユニット)21aと、吸気マニホールド41と、シリンダヘッド42と、コモンレール43と、インジェクタ44と、出力軸45と、排気マニホールド46と、を備えている。
【0038】
ECU21aは、様々なセンサから情報を取得し、これらの情報に基づいてエンジン21に関する制御を行う。
【0039】
吸気マニホールド41は、外部から吸引した空気をエンジン21の内部へ導入するための管である。吸気マニホールド41が導入した空気は、シリンダヘッド42のシリンダ内へ送られる。
【0040】
また、シリンダヘッド42の近傍には、燃料噴射機構としての、コモンレール43と、インジェクタ44と、が配置されている。コモンレール43には、燃料タンクから高圧ポンプ等によって高圧の燃料が供給される。また、コモンレール43は、燃料供給管を介してインジェクタ44へ燃料を供給する。インジェクタ44は、シリンダ毎に配置されており、ECU21aの指示したタイミング及び噴射量でシリンダ内に燃料を噴射する。
【0041】
これにより、燃料を燃焼させてピストンを上下させることで、駆動力を発生させることができる。この駆動力は、出力軸45等を介して、ジェネレータ23及び伝達部27に伝達される。なお、ECU21aは、エンジン21の駆動力の何割をジェネレータ23へ伝達するか(分配比率)を制御することができる。
【0042】
また、シリンダヘッド42には、排気マニホールド46が接続される。排気マニホールド46は、シリンダで発生した排気ガスを外部へ送出する。排気マニホールド46が送出した排気ガスは、排気ガスを浄化するDPF22へ送出される。
【0043】
DPF22は、挿入口51と、排出口52と、フィルタケース53,54と、ディーゼル酸化触媒55と、PMフィルタ56と、差圧検出器(PM量取得部)57と、を備える。
【0044】
ディーゼル酸化触媒55は、筒状のフィルタケース53内に設置されており、パラジウム又は白金等の触媒による酸化作用で排気ガス中のPMを減少させる。PMフィルタ56は、ハニカム構造のフィルタ体によって排気ガス中のPMを捕集する。
【0045】
差圧検出器57は、差圧センサ57a,57bを含んでいる。差圧センサ57aは、ディーゼル酸化触媒55及びPMフィルタ56の通過前における圧力を検出する。差圧センサ57bは、ディーゼル酸化触媒55及びPMフィルタ56の通過後における圧力を検出する。差圧検出器57は、差圧センサ57a,57bの圧力差に基づいて、DPF22に堆積するPM量を推測することができる。
【0046】
なお、DPF22に堆積するPM量は、差圧検出器57以外によって推測することもできる。例えば、エンジン21の動作履歴に基づいて演算を行うことで、DPF22に堆積するPM量を推定できる。
【0047】
ジェネレータ23は、上述のようにエンジン21の出力軸45に接続されており、エンジン21の駆動力によって発電を行う。ジェネレータ23は、発生させた電力でバッテリー24を充電したり、モータ26を駆動したりすることができる。
【0048】
インバータ25は、バッテリー24の直流電流を交流電流に変換してモータ26へ供給する。インバータ25は、また、インバータ25は、交流電流の大きさを調整することで、モータ26の出力を制御することができる。
【0049】
モータ26は、インバータ25等から供給される電力により回転し、駆動力を発生させる。モータ26が発生させた駆動力は伝達部27へ伝達される。
【0050】
伝達部27には、エンジン21が発生させた駆動力と、モータ26が発生させた駆動力と、が入力される。伝達部27は、この2つの駆動力を合成し、油圧ポンプ31を動作させる。伝達部27は、油圧ポンプ31を動作させることで、作業機30へ供給される作動油の流量を変化させ、作業機30を駆動する。なお、油圧センサ32は、作業機30へ供給される作動油の圧力を検出する。
【0051】
ハイブリッド式駆動装置20は以上のように構成される。また、本実施形態では、
図2に破線で示すように、エンジン21(ECU21a)、ジェネレータ23、インバータ25は互いに通信可能に構成される。
【0052】
エンジン21、ジェネレータ23、及びインバータ25の通信には、例えばCAN(Controller Area Network)通信を用いることができる。CAN通信は、自動車等において機器間の相互通信に用いられる公知の規格であり、耐ノイズ性に優れ信頼性が高い等の特徴がある。
【0053】
次に、作業機30の負荷が所定以下のときに行われる制御について説明する。
【0054】
初めに、本制御の概要について
図4を参照して説明する。
図4は、作業機30の負荷が所定以下であるときのエンジン21の駆動力とジェネレータ23の発電量の関係を示すブロック図である。
【0055】
本制御は、作業機30の負荷が所定以下の場合に、エンジン21の駆動力を多めにジェネレータ23に割り付けて充電速度を上昇させる(充電電流を増加させる、充電速度上昇制御)。これにより、作業機30の負荷が小さい場合であっても、エンジン21を所定の負荷(PMを除去できる程度の負荷)で駆動することができるので、DPF22に堆積したPMを除去できる(PMが堆積することを予防できる)。
【0056】
なお、本実施形態では、作業機30の負荷のみに応じて充電速度上昇制御を行うのではなく、その他の条件を満たしたときに、充電速度上昇制御を行う。以下、
図5を参照して詳細に説明する。
図5(a)は、エンジン21の駆動力をジェネレータ23に多めに割り付けるか否かを決定する処理を示すフローチャートである。
図5(b)は、バッテリー24の蓄電量について説明する図である。
【0057】
図3に示す差圧検出器57は、上述したように、DPF22に堆積したPM量を推定することができる。差圧検出器57は、推定したPM量をエンジン21のECU21aへ出力する。そして、ECU21aは、差圧検出器57から入力されたPM量に基づいて、DPF22内のPMを除去する必要があるか(即ちPM量が所定以上か)を判断する(S101)。
【0058】
DPF22内のPMを除去する必要がない場合、充電速度上昇制御を行う必要がないので、ECU21aは、例えば所定時間後に再びS101の処理を行う。
【0059】
ECU21aはDPF22内のPMを除去する必要があると判断した場合、作業機30の負荷が所定の閾値以下であるか否かを判断する(S102)。ECU21aは、例えば油圧センサ32から取得した作動油の圧力(即ち作業機30の負荷)に基づいて、この判断を行う。なお、この閾値は、エンジン21の駆動力をジェネレータ23に多めに割り付けても適切に作業機30を駆動できるか否かに基づいて決定される。
【0060】
なお、作業機30の負荷を取得する方法は任意であり、適宜変更することができる。例えば、ECU21aが低回転制御を行う低回転制御部としての機能を有する場合について考える。低回転制御とは、作業機30の負荷が掛かっていないときにエンジン21を低回転にして低燃費及び低騒音を実現する制御である。
【0061】
より具体的には、低回転制御部としてのECU21aは、例えば作業機30を操作するレバーの操作状況や、ユーザによって低回転制御が許可されているか否か等に基づいて、低回転制御を行うか否かを決定する。そのため、ECU21aが低回転制御を行うと決定した場合、作業機30の付加は小さいと考えられる。従って、ECU21aが行う低回転制御の指示に応じて、作業機30の負荷が所定より小さいことを取得できる。このように、低回転制御の指示の有無に基づいて作業機30の負荷を取得することもできる。
【0062】
ここで、ジェネレータ23は、バッテリー24の蓄電量を検出可能である。ジェネレータ23は、バッテリー24の蓄電量を検出し(S201)、ECU21aへ出力する。
【0063】
ECU21aは、バッテリー24の蓄電量をジェネレータ23から取得し、バッテリー24の蓄電量が満充電か否かを判断する(S103)。ここで、満充電とは、
図5(b)に示すように、所定の閾値よりも蓄電量が多い場合である。
【0064】
バッテリー24の蓄電量が満充電である場合、充電速度を早める必要はないので、この場合、ECU21aは、例えば所定時間後に再びS101の処理を行う。
【0065】
ECU21aは、バッテリー24の蓄電量が満充電でない場合、エンジン21の負荷が所定の閾値以上であるか否かを判断する(S104)。この閾値として、例えばDPF22内のPMを除去できる程度の負荷を設定することができる。
【0066】
ECU21aは、エンジン21の負荷が所定の閾値より小さい場合、エンジン21の負荷を閾値程度まで(DPF22内のPMを除去できる程度まで)上昇させる(S105)。その後、ECU21aは、エンジン21の駆動力をジェネレータ23に多めに割り付ける(S106)。なお、S104の判断において、エンジン21の負荷が所定の閾値以上であった場合、S105を経由することなく、エンジン21の駆動力をジェネレータ23に多めに割り付ける(S106)。
【0067】
これにより、必要な場合にのみ充電速度上昇制御を行うことができる。なお、
図5(a)で示したフローチャートは一例である。例えば
図5(a)では、PM量、作業機30の負荷、バッテリー24の蓄電量の全ての条件を満たしたときに充電速度上昇制御を行う構成であるが、充電速度上昇制御は、作業機30の負荷のみを条件として行っても良いし、PM量と作業機30の負荷を条件として行っても良いし、作業機30の負荷とバッテリー24の蓄電量を条件として行っても良い。
【0068】
また、S106において、どの程度の駆動力をジェネレータ23に割り付けるかは各種値に基づいて制御することができる。例えば、作業機30の負荷が小さいほど、駆動力をジェネレータ23に多めに割り付けることができる。また、バッテリー24の蓄電量が少ないほど、駆動力をジェネレータ23に多めに割り付けることができる。
【0069】
これにより、状況に応じて充電量を柔軟に調整することができる。
【0070】
次に、
図6を参照して、ハイブリッド式駆動装置20によりトラクタ1を移動させる構成を説明する。
図6には、上述のハイブリッド式駆動装置20に加え、変速装置61と、デファレンシャルギア62,64と、車軸63,65と、を備えている。
【0071】
ハイブリッド式駆動装置20のエンジン21及びモータ26が発生させた駆動力は、伝達部27を介して変速装置61に伝達される。変速装置61は、オペレータにより指定されたギア比でこの駆動力を前輪側のデファレンシャルギア62と、後輪側のデファレンシャルギア64と、に伝達する。また、各デファレンシャルギア62,64は、この駆動力をそれぞれ車軸63,65に伝達する。これにより、ハイブリッド式駆動装置20によりトラクタ1を移動させることができる。
【0072】
以上に説明したように、本実施形態のハイブリッド式駆動装置20は、エンジン21と、DPF22と、ジェネレータ23と、バッテリー24と、モータ26と、伝達部27と、を備える。DPF22は、エンジン21の排気経路に配置され、排気ガスを浄化する。ジェネレータ23は、エンジン21の駆動力により発電を行う。バッテリー24は、ジェネレータ23が発電を行うことで充電される。モータ26は、ジェネレータ23が発電した電力又はバッテリー24に充電された電力で駆動する。伝達部27は、エンジン21の駆動力及びモータ26の駆動力を、少なくとも作業機30の駆動のために伝達する。作業機30の負荷が所定以下である場合に、エンジン21からジェネレータ23へ伝達される駆動力を増加させる充電速度上昇制御を行う。
【0073】
これにより、作業機30の負荷が小さい場合であっても、充電速度を早くすることでエンジン21に負荷を掛けることができる。従って、DPF22のPMの堆積を防止することができる。また、ジェネレータ23とモータ26とが別構成なので、バッテリー24の充電中においてもモータ26を駆動できる。従って、バッテリー24の充電中に作業機30の負荷が少し大きくなった場合であっても、エンジン21の駆動力の一部を伝達部27に伝達させることで、充電を継続できる。
【0074】
また、本実施形態のハイブリッド式駆動装置20は、作業機30の負荷が所定以下である場合に、エンジン21の回転数を低下させる低回転制御を指示するECU21aを備える。ハイブリッド式駆動装置20は、ECU21aが低回転制御を指示した場合に、充電速度上昇制御を行う。
【0075】
これにより、ECU21aの指示に基づいて作業機30の負荷が所定以下であることを検出できるので、特別なセンサを追加することなく本発明の効果が実現できる。
【0076】
また、本実施形態のハイブリッド式駆動装置20は、作業機30の負荷が所定以下であって、バッテリー24の蓄電量が閾値以下であることを検出した場合に、充電速度上昇制御を行う。
【0077】
これにより、バッテリー24の蓄電量が少ない場合にのみ充電速度を上昇させることになるので、エネルギー効率の低下を防止できる。
【0078】
また、本実施形態のハイブリッド式駆動装置20は、DPF22のPM量又はその推測量を取得する差圧検出器57を備える。差圧検出器57が取得したPM量が所定以上である場合に、充電速度上昇制御を行う。
【0079】
これにより、PM量が多い場合にのみ充電速度上昇制御を行ってエンジン21の負荷を上昇させるので、騒音が発生する回数を低減することができる。
【0080】
また、本実施形態のハイブリッド式駆動装置20は、作業機30の負荷の大きさに応じて、エンジン21からジェネレータ23へ伝達される駆動力の増加量が決定される。
【0081】
これにより、作業機30の負荷が小さくなるにつれて充電速度を上昇させることができる。従って、エンジン21の駆動力を一層有効に活用して充電を行うことができる。
【0082】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0083】
上記の
図2では、エンジン21、ジェネレータ23、及びインバータ25をそれぞれ直接的に接続しているが、ハイブリッド式駆動装置20の全体的な制御を行う制御部を別に備え、この制御部を介してそれぞれが接続されていても良い。また、ジェネレータ23及びインバータ25等の電気駆動側を制御する制御部を別に備え、この制御部がECU21aと通信を行う構成であっても良い。
【0084】
作業機30の負荷は、油圧センサではなく、キャビン17に配置された作業機操作レバーの操作に基づいて求められる構成であっても良い。
【0085】
トラクタのネットワークはCANによって構成するとしたが、これに限らず、トラクタの通信制御ユニットと各作業機とが通信可能に構成されていれば他の形態のネットワークであっても良い。
【0086】
本発明のハイブリッド式駆動装置は、トラクタ以外の作業車両の駆動源に対しても適用可能である。作業車両としては、コンバイン及び田植機等の農業機械やパワーショベル等の建設機械等を例として挙げることができる。