特許第6022988号(P6022988)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6022988自動取引装置、自動取引装置の操作誘導方法および自動取引装置の操作誘導プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6022988
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月9日
(54)【発明の名称】自動取引装置、自動取引装置の操作誘導方法および自動取引装置の操作誘導プログラム
(51)【国際特許分類】
   G07D 9/00 20060101AFI20161027BHJP
   G07D 13/00 20060101ALI20161027BHJP
   G07F 19/00 20060101ALI20161027BHJP
   G06Q 20/18 20120101ALI20161027BHJP
【FI】
   G07D9/00 426C
   G07D9/00 321C
   G06Q20/18
【請求項の数】9
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-82593(P2013-82593)
(22)【出願日】2013年4月11日
(65)【公開番号】特開2014-206798(P2014-206798A)
(43)【公開日】2014年10月30日
【審査請求日】2015年6月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000237639
【氏名又は名称】富士通フロンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【弁理士】
【氏名又は名称】大菅 義之
(72)【発明者】
【氏名】小川 嘉治
【審査官】 望月 寛
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−026061(JP,A)
【文献】 特開2001−148046(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07D 9/00
G06Q 20/18
G07D 13/00
G07F 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作者がタッチパネルに接触して行う操作が異常であったか否かを判定する第1の判定部と、
前記操作により前記タッチパネルの画面が遷移したときに、前記第1の判定部による判定が前記画面の遷移前および遷移後で異常であったか否かを判定する第2の判定部と、
前記第2の判定部が異常と判定したときに、前記操作者が前記タッチパネルに接触している部位の位置から前記タッチパネルの外部に設けられている音声案内装置に向けて前記操作者を音声により誘導する誘導部と、
を備えた自動取引装置。
【請求項2】
前記第1の判定部は、前記タッチパネルの複数個所で接触を検出した場合または前記タッチパネルの接触領域が予め設定された閾値の領域よりも広い場合に、前記操作が異常であると判定する、
請求項1記載の自動取引装置。
【請求項3】
前記誘導部は、前記第2の判定部が異常であると判定したときに、前記タッチパネルを用いた操作を通常の取引を行うための機能から前記操作者を誘導するための機能に切り替える、
請求項2記載の自動取引装置。
【請求項4】
前記誘導部は、前記操作者の前記タッチパネルに接触している部位を前記タッチパネルに接触させた状態で、前記タッチパネルのうち前記音声案内装置に近い側の端部まで移動させる第1の意思確認動作の指示を行う、
請求項3記載の自動取引装置。
【請求項5】
前記誘導部は、前記操作者の前記タッチパネルに接触している部位を前記端部に沿って往復動作させる第2の意思確認動作の指示を行う、
請求項4記載の自動取引装置。
【請求項6】
前記誘導部は、前記操作者が前記往復動作を行っているときに、前記音声案内装置を把持する部位に対応した位置で前記操作者の前記タッチパネルに接触している部位を停止させる指示を行う、
請求項5記載の自動取引装置。
【請求項7】
前記タッチパネルのうち前記操作者の前記タッチパネルに接触している部位を停止させた領域から前記音声案内装置を把持する部位に向けた案内部が装置筐体に形成されている、
請求項1乃至6のうち何れか1項に記載の自動取引装置。
【請求項8】
操作者がタッチパネルに接触して行う操作が異常であったか否かを判定し、
前記操作により前記タッチパネルの画面が遷移したときに、前記画面の遷移前および遷移後で異常であったか否かを判定し、
前記画面の遷移前および遷移後で異常と判定したときに、前記操作者が前記タッチパネルに接触している部位の位置から前記タッチパネルの外部に設けられている音声案内装置に向けて前記操作者を音声により誘導する、
自動取引装置の操作誘導方法。
【請求項9】
自動取引装置に、
操作者がタッチパネルに接触して行う操作が異常であったか否かを判定する手順、 前記操作により前記タッチパネルの画面が遷移したときに、前記画面の遷移前および遷移後で異常であったか否かを判定する手順、
前記画面の遷移前および遷移後で異常と判定したときに、前記操作者が前記タッチパネルに接触している部位の位置から前記タッチパネルの外部に設けられている音声案内装置に向けて前記操作者を音声により誘導する手順、
を実行させるための自動取引装置の操作誘導プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ATM(Automatic Teller Machine)など金融機関向けの自動取引装置、自動取引装置の操作誘導方法および自動取引装置の操作誘導プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
金融機関などに設置されているATMでは、一般に、タッチパネルディスプレイ(以下、タッチパネル)に表示された画面を参照しながら入出金、残高照会、記帳、振込などの各種金融取引の操作が行われる。しかしながら、タッチパネルを用いた操作は視覚を必要とし、視覚障がい者がタッチパネルを用いて操作を行うことは難しい。このために、ATMには、従来からタッチパネルの近傍に音声案内装置が設けられている。この音声案内装置はハンドセットとも呼ばれる。音声案内装置は音声案内機能とボタンとを有しており、視覚障がい者は音声案内に従ってボタン操作を行うこと。これにより、タッチパネルを用いることなく、金融取引を行うことができる。
【0003】
従って、視覚障がい者がATMで金融取引を行う際には、音声案内装置の位置を手探りで探し出さなくてはならない。このための技術が例えば特許文献1に開示されている。特許文献1の技術では、「ハンドセット」と点字表示された操作部位表示部から突起状のガイドを指で辿ることによりハンドセットに視覚障がい者を導いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−148046号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
視覚障がい者がATMを用いて取引を行うときには、音声案内装置を手探りで探し出す必要がある。このため、視覚障がい者はATMの各部に触れて、触覚により音声案内装置を探し出す。特許文献1の技術では、突起状のガイドを用いて音声案内装置まで視覚障がい者を導いている。しかし、特許文献1の場合でも、ガイドの起点となる接客操作部に左手を乗せる必要があり、やはり視覚障がい者はATMの各部を触れて接客操作部を探し出さなければならない。
【0006】
ATMには各種取引を行うためのタッチパネルが設けられている。視覚障がい者が音声案内装置を手探りで探り出すために、誤ってタッチパネルに触れる可能性がある。ATMは、操作者が視覚障がい者であるか否かの区別をしていないため、視覚障がい者がタッチパネルに触れると、触れた箇所に応じた取引が開始される。
【0007】
つまり、視覚障がい者が意図しない取引が開始されることになる。この取引の操作は誤ったものであり、取り消さなければならない。しかし、既に行われた操作の取消を視覚障がい者に強いることは大きな負担となる。また、視覚障がい者の意図しない取引動作が開始されるため、視覚障がい者に混乱を来たすことになる。
【0008】
そこで、本発明は、視覚障がい者が自動取引装置の操作を行うときに、タッチパネルに誤って触れたとしても、取引に支障を来たすことなく、視覚障がい者を音声案内装置まで誘導することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以上の課題を解決するため、本発明の自動取引装置は、操作者がタッチパネルに接触して行う操作が異常であったか否かを判定する第1の判定部と、前記操作により前記タッチパネルの画面が遷移したときに、前記第1の判定部による判定が前記画面の遷移前および遷移後で異常であったか否かを判定する第2の判定部と、前記第2の判定部が異常と判定したときに、前記操作者が前記タッチパネルに接触している部位の位置から前記タッチパネルの外部に設けられている音声案内装置に向けて前記操作者を音声により誘導する誘導部と、を備えたことを特徴としている。
【0010】
また、本発明の自動取引装置の操作誘導方法は、操作者がタッチパネルに接触して行う操作が異常であったか否かを判定し、前記操作により前記タッチパネルの画面が遷移したときに、前記画面の遷移前および遷移後で異常であったか否かを判定し、前記画面の遷移前および遷移後で異常と判定したときに、前記操作者が前記タッチパネルに接触している部位の位置から前記タッチパネルの外部に設けられている音声案内装置に向けて前記操作者を音声により誘導する、ことを特徴としている。
【0011】
また、本発明の自動取引装置の操作誘導プログラムは、自動取引装置に、操作者がタッチパネルに接触して行う操作が異常であったか否かを判定する手順、前記操作により前記タッチパネルの画面が遷移したときに、前記画面の遷移前および遷移後で異常であったか否かを判定する手順、前記画面の遷移前および遷移後で異常と判定したときに、前記操作者が前記タッチパネルに接触している部位の位置から前記タッチパネルの外部に設けられている音声案内装置に向けて前記操作者を音声により誘導する手順、を実行させることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、視覚障がい者が自動取引装置の操作を行うときに、タッチパネルに誤って触れたとしても、取引に支障を来たすことなく、視覚障がい者を音声案内装置まで誘導することを目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施形態の自動取引装置の一例を示す外観図である。
図2】制御部を含むブロック図である。
図3】本実施形態の処理の流れを示すフローチャートである。
図4】タッチパネルの初期画面の一例を示す図である。
図5】(a)はタッチパネルを複数本の指で触れている状態を説明する図、(b)は画面が遷移する前後でタッチパネルを複数本の指で触れている状態を説明する図である。
図6】(a)はタッチパネルを手で触れている状態を説明する図、(b)は画面が遷移する前後でタッチパネルを手で触れている状態を説明する図である。
図7】第1の意思動作確認を行うときの動作を説明する図である。
図8】第2の意思動作確認を行うときの動作を説明する図である。
図9】第2の意思動作確認の動作の停止領域を説明する図である。
図10図9にテーパ溝を形成した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。図1は自動取引装置1の一例を示している。自動取引装置1は、図示しないホストコンピュータと通信して、入出金、残高照会、記帳、振込等の各種の金融取引を行うATMである。自動取引装置1はタッチパネル2と音声案内装置3と紙幣処理部4と硬貨処理部5とカード処理部6と通帳処理部7とスピーカ8とを備えている。自動取引装置1の各部(タッチパネル2〜スピーカ8)は装置筐体9に取り付けられている。
【0015】
タッチパネル2はタッチパネルディスプレイである。タッチパネル2には各種の情報が表示されており、タッチパネル2に操作者がタッチ(接触)することで、操作を行うことができる。従って、タッチパネル2は入力手段と表示手段との両者の機能を併せ持つ。タッチパネル2としては、任意のタッチパネルを適用することができるが、一般的なタッチパネルは矩形をしている。
【0016】
音声案内装置3は、視覚障害がある操作者(以下、視覚障がい者)の操作を補助するための装置である。この音声案内装置3はハンドセットと呼ばれることもある。音声案内装置3は音声ガイダンスにより視覚障がい者の金融取引をアシストする。音声案内装置3にはプッシュ式のテンキーのボタンが配置されている。視覚障がい者は音声案内装置3の音声案内に従ってボタン操作を行うことで、金融取引を実行することができる。
【0017】
紙幣処理部4は紙幣の入金および出金を行う。硬貨処理部5は硬貨の入金および出金を行う。カード処理部6は自動取引装置1を使用して金融取引を行う操作者のカードの挿入および排出を行う。通帳処理部7は操作者の操作に応じて、金融取引の履歴を記録した通帳の挿入および排出を行う。
【0018】
スピーカ8は操作者に対して所定の情報を音声案内するために設けられている。自動取引装置1におけるスピーカ8の位置としては、高い位置に設けられることが望ましい。これは、操作者の耳に近い位置にスピーカ8を配置した方がスピーカ8からの音声を聞き取り易いためである。また、スピーカ8は、操作者の左右の耳に対応して、自動取引装置1の左右の両側に設けられるようにしてもよい。
【0019】
図2は、本実施形態の制御部10を示している。制御部10は自動取引装置1の各種機能の一部の機能を実行するために設けられている。制御部10は、接触位置認識部11と画面遷移制御部12と第1の判定部13と第2の判定部14と誘導部15と操作取消部16とを備えている。接触位置認識部11および画面遷移制御部12はタッチパネル2に接続されている。また、誘導部15はスピーカ8に接続されている。
【0020】
接触位置認識部11はタッチパネル2の接触位置を認識する。タッチパネル2は縦横に所定の表示領域を有しており、当該表示領域のうち操作者が接触(または押下)した位置を接触位置の情報として接触位置認識部11に出力する。接触位置はXY座標系で示してもよい。従って、接触位置認識部11は接触位置の情報に基づいて、タッチパネル2の何れの位置が接触されたかを認識する。
【0021】
画面遷移制御部12は、接触位置認識部11が認識した接触位置に基づいて、タッチパネル2の画面遷移を制御する。タッチパネル2には後述する図4に示すように、様々な取引キーが表示されている。操作者が目的の取引キーに接触することで、画面遷移制御部12は、接触された取引キーの内容に応じた画面に表示内容を遷移させる。
【0022】
第1の判定部13は、接触位置認識部11が認識した接触位置に基づいて、タッチパネル2の操作が異常であったか否かを判定する。第1の判定部13は、タッチパネル2の離間した複数個所に同時に接触があった場合または接触領域が広範であった場合に、操作が異常であったと判定する。
【0023】
第2の判定部14は、タッチパネル2の画面が遷移したときに、第1の判定部13が遷移する前と遷移した後との両者でタッチパネル2の操作が異常であったか否かを判定する。第1の判定部13が画面遷移前にタッチパネル2の操作が異常であると判定し、画面遷移後にも依然としてタッチパネル2の操作が異常であると判定した場合には、操作者が視覚障がい者であると判定する。
【0024】
誘導部15は、第2の判定部14によって操作者が視覚障がい者であると判定された場合には、スピーカ8から音声案内を開始する。視覚障がい者は、スピーカ8から出力される音声案内の指示に従って動作を行う。誘導部15は、視覚障がい者の手を音声案内装置3まで導く機能を有している。
【0025】
操作取消部16は、第2の判定部14によって操作者が視覚障がい者であると判定された場合には、既に行われた操作を取り消す。これにより、タッチパネル2による入出金や記帳等の金融取引が停止される。そして、音声案内装置3による操作を有効にする。
【0026】
以上の制御部10の各部はコンピュータが実行可能なプログラムとすることができる。ROM(Read Only Memory)や補助記憶装置に記憶されているプログラムをRAM(Random Access Memory)に読み出して、CPU(Central Processing Unit)が実行することにより、制御部10の各部の機能を実行させることができる。
【0027】
次に、図3のフローチャートを用いて本実施形態について説明する。本実施形態では、視覚障がい者が自動取引装置1を使用して操作を行う場合について説明する。従って、操作者はタッチパネル2を視認することができず、タッチパネル2を用いた操作を行うことはできない。
【0028】
初期的に、タッチパネル2には図4に示すような初期画面が表示されている。初期画面はタイトル部21と取引キーエリア22とを有している。タイトル部21は初期画面の内容を示している。ここでは、「いらっしゃいませ。ご希望のお取引を選んでください」との表示がされている。
【0029】
取引キーエリア22は複数の取引キー23を有している。図4では、「お引出し」、「お預け入れ」、「お振込」、「残高照会」、「通帳記帳」、「マルチペイメント」、「宝くじ購入」の7つの取引キー23を有している。各取引キー23はそれぞれの内容に応じた操作を行うための入力部になっている。操作者が目的に応じた取引キー23に接触することで、タッチパネル2の画面が遷移して、所望の操作が行われる。
【0030】
健常者は、指先1本でタッチパネル2の操作を行う。一方、視覚障がい者は取引キー23を視認することができないため、目的に応じた取引キー23を選択することができない。つまり、タッチパネル2を用いて金融取引を行うことはできない。このため、視覚障がい者は音声案内装置3を使用して金融取引を行う。
【0031】
従って、視覚障がい者はまず自動取引装置1から音声案内装置3を手探りで探し出す。音声案内装置3はタッチパネル2の近傍に配置されていることが多く、視覚障がい者が手探りで音声案内装置3を探すときに、タッチパネル2に手を触れてしまうことがある。タッチパネル2に手を触れることにより、意図しない取引が開始される。
【0032】
視覚障がい者が音声案内装置3を手探りで探すときには、手Hまたは複数本の指Fを移動させて触覚により音声案内装置3を探り出す。または、手Hの手のひらを移動させて触覚により音声案内装置3を探り出す。従って、視覚障がい者が音声案内装置3を探し出しているときにタッチパネル2に触れた場合、手Hまたは複数本の指Fがタッチパネル2に触れる。
【0033】
図2に示した接触位置認識部11は、タッチパネル2から入力した接触位置の情報を第1の判定部13に出力する。第1の判定部13は、接触位置に基づいてタッチパネル2に対する操作が異常であったか否かを判定する(ステップS1)。タッチパネル2に対する異常な操作の一例としては、上述したように、手Hや複数本の指Fをタッチパネル2に触れて行う操作になる。一方、正常な操作としては、指先1本をタッチパネル2に触れて行う操作になる。
【0034】
図5(a)は複数本(3本)の指Fがタッチパネル2に触れている場合を示している。視覚障がい者は3本の指Fを使用して手探りで音声案内装置3を探し出そうとしている。このときに、3本の指Fが同時にタッチパネル2に触れることがある。同図(a)は3本の指Fがタッチパネル2に触れている状態を示している。このとき、タッチパネル2から接触位置認識部11に接触位置の情報が出力される。
【0035】
指Fがタッチパネル2に触れたとき、指Fはタッチパネル2に1点だけで触れるのでなく、一定の領域が触れることになる。ここでは、操作者の3本の指がタッチパネル2に触れている領域(接触領域)をそれぞれF1、F2およびF3とする。接触領域F1乃至F3は、タッチパネル2の縦横のクロスした中心点とクロスしている幅とに基づいて認識することができる。例えば、F1は人差し指の接触領域、F2は中指の接触領域、F3は薬指の接触領域であるものとする。
【0036】
タッチパネル2を用いて行われる正常な操作は指先1本の操作になり、接触領域は1つになる。一方、同図(a)のように、接触領域がF1、F2およびF3の3箇所になっている場合には、正常な操作ではなく異常な操作になる。このため、当該操作を行った操作者は視覚障がい者の可能性がある。ただし、操作者が視覚障がい者でない場合にも、偶然に3本の指Fをタッチパネル2に触れる可能性もある。従って、第1の判定部13は、この時点で操作者が視覚障がい者であると判定しない。
【0037】
接触領域F1乃至F3が人の手によるものだとすると、1本の手Hの3本の指Fは大きく離間していない。そこで、第1の判定部13は、接触領域F1乃至F3が所定範囲内にあるか否かを判定することで、操作者が視覚障がい者である可能性を認識することができる。上記の所定範囲は任意に設定することができるが、操作者で最も手の大きな人が最大限に手を開いたときの範囲として設定することができる。
【0038】
視覚障がい者であっても、健常者であっても、操作者がタッチパネル2に触れることで、取引キー23に応じた内容の画面に遷移する(ステップS2)。つまり、接触位置認識部11が認識した接触位置に応じた画面に遷移するように、画面遷移制御部12がタッチパネル2を制御する。健常者であれば、意図した画面遷移になるが、視覚障がい者の場合には、意図しない画面遷移になる。
【0039】
図5(b)は、画面が遷移する前後で視覚障がい者がタッチパネル2に触れている状態を示している。実線は画面遷移後であることを示し、点線は画面遷移前であることを示している。F1´乃至F3´は画面が遷移する前の接触領域を示しており、F1乃至F3は画面が遷移した後の接触領域を示している。つまり、同図(b)において、画面遷移の前後で接触領域はF1´乃至F3´からF1乃至F3に移動している。従って、第1の判定部13は、上述したように、接触領域が1つではなく、F1、F2およびF3の3つであることから、タッチパネル2の操作が依然として異常であることを認識する。
【0040】
図5(a)および(b)は複数本の指Fがタッチパネル2に触れている例を示したが、タッチパネル2の操作が異常であると判定されるケースはこれに限定されない。例えば、図6(a)および(b)に示すように、手Hがタッチパネル2に触れている場合もある。正常な操作は1本の指先で行われるため、手Hがタッチパネル2に触れている場合も異常な操作と判定される。
【0041】
図6(a)は、画面が遷移する前に手Hがタッチパネル2に触れている状態を示している。この場合、タッチパネル2の広範な領域が接触されていることが接触位置認識部11に出力される。接触位置認識部11は、第1の判定部13に接触位置を出力する。そして、第1の判定部13は、手Hと判定するための領域が閾値として設定されており、当該閾値とタッチパネル2に触れている手Hの領域とを比較する。手Hの領域の方が閾値よりも広ければ、操作が異常であると判定する。このときの閾値としては、操作者の手で最も小さい手の領域よりも小さい領域を設定することができる。
【0042】
第1の判定部13が異常と判定する手法はこれに限定されない。例えば、タッチパネル2に触れている手Hを含む矩形の領域をH1とする。この矩形の領域H1は縦横にクロスする中心点と手Hの縦横の長さとから形成することができる。第1の判定部13には予め所定の領域が閾値として設定されており、第1の判定部13は領域H1と閾値とを比較する。比較の結果、閾値よりも領域H1の方が大きければ、第1の判定部13は、操作者の手Hがタッチパネル2に触れていると判定する。つまり、操作が異常であると判定する。
【0043】
正常なタッチパネル2の操作は手Hではなく指先1本で行うため、第1の判定部13が手Hによる操作であることを判定したときには、当該操作は異常であると判定する。ただし、前述した場合と同様に、この時点で、操作者が視覚障がい者であると判定しない。
【0044】
手Hがタッチパネル2に触れたときに画面が遷移する。図6(b)はその状態を示している。同図(b)の点線は画面遷移前を示し、実線は画面遷移後を示している。画面遷移前の手H´から画面遷移後の手Hに移動しており、画面遷移前の領域H1´も画面遷移後の領域H1に移動している。第1の判定部13は、画面遷移前も操作が異常であると判定したが、画面の遷移後も依然として操作が異常であると判定している。
【0045】
前述したように、第1の判定部13は画面が遷移する前のタッチパネル2の操作が異常であったと判定した。また、第1の判定部13は画面が遷移した後もタッチパネル2の操作が異常であると判定した。従って、第1の判定部13は、画面が遷移する前後の両方でタッチパネル2の操作が異常であったことを判定したことになる(ステップS3)。
【0046】
画面が遷移する前後でタッチパネル2の操作が異常であったと判定された場合には(ステップS4)、第2の判定部14は操作者が視覚障がい者であることを認識する。従って、画面が遷移する前にタッチパネル2の操作が異常であったとしても、それだけで操作者が視覚障がい者であると認識するのではなく、画面が遷移した後にも操作が異常であるときに初めて操作者が視覚障がい者であることを認識する。これにより、操作者が視覚障がい者であることを確実に認識することができる。なお、ステップS4において、画面が遷移する前後の両方で異常であると判定されなかった場合には、処理を終了する。
【0047】
操作者が視覚障がい者である場合には、タッチパネル2による通常の操作を行うことはできない。そこで、第2の判定部14により操作者が視覚障がい者であると判定されたときには、その旨を誘導部15に通知する。そして、誘導部15は、視覚障がい者の手Hを音声案内装置3に誘導する動作を開始する。
【0048】
この誘導動作が開始するまでは、タッチパネル2は金融取引を行うために用いられていた。もともと、タッチパネル2は健常者が金融取引を行うために設けられているものであり、取引キー23に接触することで、所望の金融取引を行う。従って、誘導部15による動作が開始するまでは、タッチパネル2は金融取引を行うために機能している。
【0049】
しかし、誘導部15による動作が開始されたということは、操作者が視覚障がい者であると判定されたことになる。従って、タッチパネル2は金融取引を行うためでなく、視覚障がい者の手Hを音声案内装置3に誘導するために機能する。つまり、誘導部15による誘導動作が開始したときに、タッチパネル2が通常の操作を行うための機能から視覚障がい者を誘導する機能に切り替わる。
【0050】
まず、誘導部15は、第1の意思確認動作をスピーカ8から指示する(ステップS5)。意思確認動作とは、視覚障がい者に対して音声案内装置3による金融取引を行う意思があるか否かを確認する動作になる。以下に例示する第1の意思確認動作および第2の意思確認動作は例示であり、これら以外の意思確認動作が行われてもよい。
【0051】
誘導部15は、タッチパネル2に視覚障がい者の手Hを接触させた状態で、音声案内装置3が配置されている方向に向けて手Hを移動させるようにスピーカ8から指示を出す。音声案内装置3はタッチパネル2の近傍に設置されており、その設置位置は予め認識されている。そして、タッチパネル2に手Hを接触させていることで、接触位置の情報は接触位置認識部11から誘導部15に入力される。これにより、誘導部15は、手Hと音声案内装置3との位置関係を認識することができる。
【0052】
ここでは、図7に示すように、誘導部15は、タッチパネル2の接触位置に基づいて、音声案内装置3に近い側の端部に向けて矢印31の方向に手Hを移動させるようにスピーカ8からガイダンスを行う。例えば、「音声案内装置を使ったお取引をご希望の場合は、操作パネルを触れたまま左端の突き当たりまでなぞってください」等のガイダンスを行う。このガイダンスにより、視覚障がい者はタッチパネル2に手Hを接触させた状態のまま、矢印31の方向に手Hを移動させる。
【0053】
なお、上述したように、タッチパネル2は通常の取引操作を行う機能から視覚障がい者の手Hを誘導する機能に切り替わっている。従って、視覚障がい者が手Hをタッチパネル2に接触させた状態で矢印31の方向に移動させたとしても、図4で示した取引キー23は機能しない。
【0054】
ここで、図1図7にも示すように、タッチパネル2は装置筐体9に嵌合されている。つまり、タッチパネル2は装置筐体9の上面から窪んだ位置に取り付けられている。これにより、図7に示すような段差32が形成される。スピーカ8からのガイダンスによって、視覚障がい者が手Hを矢印31の方向に移動させると、段差32に手Hが突き当たる。
【0055】
タッチパネル2は、視覚障がい者の手Hの接触位置を検出しており(ステップS6)、誘導部15の指示通りの位置に手Hが移動されたか否かを判定する(ステップS7)。ここでは、スピーカ8からのガイダンスにより、段差32に突き当たるまで手Hを移動させるように指示しているため、タッチパネル2の端部に手Hが移動されたか否かが判定される。なお、視覚障がい者の手Hが指示通りの操作が行われていなければ、処理を終了する。
【0056】
接触位置認識部11が認識した接触位置により、視覚障がい者の手Hがタッチパネル2の端部に位置したときに、指示通りの操作が行われたことが確定する。これが第1の意思確認動作である。タッチパネル2に手Hを接触させながら、タッチパネル2の端部に手Hを移動させる動作は特殊な動作であり、これを第1の意思確認動作とすることで、視覚障がい者が音声案内装置3を用いた金融取引を行う意思があるか否かを確認することができる。
【0057】
誘導部15は、視覚障がい者が第1の意思確認動作を行ったことを認識したときに、操作取消部16に対してその旨を指示する。操作取消部16は、視覚障がい者が行ったタッチパネル2に対する操作を取り消す(ステップS8)。これにより、視覚障がい者が音声案内装置3を探すときに誤って開始された金融取引が取り消される。つまり、既に行った操作が初期化される。
【0058】
タッチパネル2の取引キー23に触れると、スピーカ8から所定の操作が行われたことが音声で案内される。従って、視覚障がい者が音声案内装置3を探すときに、誤ってタッチパネル2を触れることにより操作が開始されると、視覚障がい者は本来意図していない取引が行われたか否かの不安感を持つ。そこで、誘導部15は、第1の意思確認動作が行われことを確認したときに、誤って開始された操作は取り消されたことをスピーカ8からガイダンスすることもできる。これにより、視覚障がい者の不安感を解消することができる。
【0059】
次に、誘導部15は第2の意思確認動作を行うように、スピーカ8から指示を出す(ステップS9)。第1の意思確認動作により、視覚障がい者の手Hは段差32に突き当たった箇所で停止する。図8にハッチングで示した領域33は段差32に沿った辺を基準とした所定の領域である。第1の意思確認動作が行われた後には、視覚障がい者の手Hは領域33の中に入っている。
【0060】
そして、誘導部15は、第1の意思確認動作で手Hを移動させた方向と直交する方向に手Hを移動するように視覚障がい者に対して指示を出す。これが第2の意思確認動作である。第2の意思確認動作も第1の意思確認動作と同様に、手Hをタッチパネル2に接触させながら移動(往復動作)させるように指示を出す。
【0061】
このとき、視覚障がい者の手Hは段差32に突き当たっている。そして、段差32は第2の意思確認動作を行う方向に延出している。従って、誘導部15は、「段差に沿って手を前後に動かしてください」等のガイダンスを行うことで、視覚障がい者に第2の意思確認動作を行わせることができる。図8の矢印34は第2の意思確認動作における手Hの往復動作の方向を示している。
【0062】
タッチパネル2は手Hの位置を検出している(ステップS10)。そして、誘導部15は、接触位置認識部11から接触位置を取得している。誘導部15が、段差32に沿って手Hが往復動作していることを検出したときに、第2の意思確認動作が行われたことが認識される。
【0063】
第2の意思確認動作は、タッチパネル2の段差32に沿って手Hを往復させる特殊な動作なため、この動作が行われたことにより、視覚障がい者は音声案内装置3による取引を希望する意思を有していることを確認することができる。第1の意思確認動作だけでも視覚障がい者の意思を確認することはできるが、第2の意思確認動作を確認することにより、より確実に視覚障がい者の意思を確認することができる。
【0064】
ところで、音声案内装置3は受話器の形状をしており、一般に、音声案内装置3の長手方向とタッチパネル2の辺とは平行になるように配置されている。そして、音声案内装置3のうち視覚障がい者の手Hで把持する部位は中央部分である。第2の意思確認動作で視覚障がい者は手Hをタッチパネル2の段差32、すなわちタッチパネル2の端部に沿って往復動作を行っている。これは、音声案内装置3の長手方向に往復動作を行っていることになる。
【0065】
そこで、誘導部15は、視覚障がい者が音声案内装置3を把持する部位に対応する領域(停止領域35)で手Hの往復動作を停止するように指示を出す(ステップS11)。図9に示すように、視覚障がい者が手Hを往復移動しているときに、停止領域35に手Hが位置したときに、往復動作を停止するように指示を出す。そして、誘導部15は、そのまま視覚障がい者の手Hを音声案内装置3に向けて直線状に移動させる指示を出す。例えば、「手を止めて、操作パネル左横にある音声案内装置をお取りください」等の指示を出す。
【0066】
これにより、視覚障がい者は音声案内に従って手Hを直線状に移動させることで、音声案内装置3のうち把持する部位に手Hを簡単に移動させることができる。そして、視覚障がい者は音声案内装置3を用いて、金融取引を開始することができる。このときには、既に操作取消部16により誤った操作が取り消されているため、最初から音声案内装置3を用いた金融取引を行うことが可能になる。
【0067】
ところで、誘導部15は第1の意思確認動作および第2の意思確認動作を視覚障がい者に対して指示している。これら第1の意思確認動作および第2の意思確認動作は、視覚障がい者が音声案内装置3による金融取引を希望しているか否かを確認するための動作になる。しかしながら、第1の意思確認動作および第2の意思確認動作は、視覚障がい者の手Hを音声案内装置3に誘導する動作も行っている。つまり、第1の意思確認動作および第2の意思確認動作は、視覚障がい者の意思の確認と音声案内装置3への誘導との2つの動作を同時に行っている。
【0068】
ここでは、第1の意思確認動作と第2の意思確認動作との両者を行っているが、第1の意思確認動作だけでもよい。第1の意思確認動作は、上述したように、タッチパネル2に手Hを接触させながら移動させる動作であるため、特殊な動作である。このため、第1の意思確認動作だけでも、視覚障がい者の意思を確認することができる。また、誘導部15が第1の意思確認動作を指示し、視覚障がい者が指示通りの動作を行えば、タッチパネル2の中で音声案内装置3に近い位置に視覚障がい者の手Hを移動させることができる。これにより、視覚障がい者の手Hを音声案内装置3の近傍に位置させることができる。従って、視覚障がい者は音声案内装置3を取りやすくなる。
【0069】
しかしながら、第1の意思確認動作だけではなく、第2の意思確認動作を実施することで、より確実に視覚障がい者の意思を確認することができる。また、第2の意思確認動作を実施することで、音声案内装置3を把持する部位に対応する位置に視覚障がい者の手Hを位置させることができることから、視覚障がい者にとって、よりユーザーフレンドリーな誘導を実施することができる。
【0070】
また、視覚障がい者が音声案内装置3を探し出すときにタッチパネル2に触れた誤操作の取消は、第1の意思確認動作の後に行われる例を示したが、第2の意思確認動作の後に行われるようにしてもよい。また、ステップS4で異常であったと判定されたときに、誤操作を取り消すようにしてもよい。これは、ステップS4で異常であったと判定されたときには、操作者が視覚障がい者であることが確定しているためである。
【0071】
次に、装置筐体9にテーパ溝40を設けた例を示している。第2の意思確認動作を行うことにより、音声案内装置3を最も把持し易い停止領域35に視覚障がい者の手Hを位置させることができる。ただし、タッチパネル2と音声案内装置3との間には所定の間隔が存在しているため、視覚障がい者はタッチパネル2から音声案内装置3に手Hを移動させなければならない。
【0072】
上述したように、視覚障がい者は手Hを直線状に移動させればよいため、簡単に音声案内装置3に視覚障がい者の手Hを導くことができる。ただし、視覚障がい者がタッチパネル2の停止領域35から音声案内装置3に手Hを移動させるときには、タッチパネル2から手Hを離した後に、音声案内装置3まで手Hを移動させることになる。
【0073】
このときに、手Hの移動方向にずれを生じると、音声案内装置3の把持する部位に手Hを移動させることができなくなる場合がある。そこで、装置筐体9にテーパ溝40を設ける。テーパ溝40は音声案内装置3の把持する部位を頂点として、停止領域35から視覚障がい者の手Hを案内する案内部として機能する。視覚障がい者は停止領域35から手Hをテーパ溝40に沿って移動させることで、音声案内装置3の把持する部位に確実に導くことができる。
【0074】
タッチパネル2は装置筐体9よりも窪んだ位置に取り付けられているため、テーパ溝40の下面を傾斜させるようにしてもよい。また、案内部としてはテーパ溝だけでなく、任意の形状を採用してもよい。例えば、凸型形状の溝等を採用してもよい。
【符号の説明】
【0075】
1 自動取引装置
2 タッチパネル
3 音声案内装置
10 制御部
11 接触位置認識部
12 画面遷移制御部
13 第1の判定部
14 第2の判定部
15 誘導部
16 操作取消部
図1
図2
図3
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図4