【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)JST研究成果展開事業(先端計測分析技術・機器開発プログラム)平成24年度 開発課題名「超1GHz NMRシステムの開発」
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1記載のクライオスタットであって、前記超流動ヘリウム冷却器は、液体ヘリウム槽内の液体ヘリウムを前記超流動ヘリウム槽の内部を経由してクライオスタットの外部に導出する形状の冷却用配管と、この冷却用配管の途中に設けられ、当該冷却用配管を流れる液体ヘリウムを絞り膨張させる膨張器と、を有し、前記冷却用配管は、前記超流動ヘリウム槽内に配置されて前記絞り膨張した後のヘリウムと前記超流動ヘリウム槽内の超流動ヘリウムとを熱交換させる超流動ヘリウム冷却用熱交換部と、この超流動ヘリウム冷却用熱交換部から前記液体ヘリウム槽内を通ってクライオスタットの外部に至る排気管部と、を有し、前記接続端子冷却部は、前記排気管部を流れるヘリウムと前記接続端子との間の熱交換を前記液体ヘリウム槽内で行う、クライオスタット。
請求項2記載のクライオスタットであって、前記接続端子冷却部は、前記排気管部の途中に設けられてこの排気管部を流れるヘリウムにより冷却される被冷却部と、この被冷却部と前記接続端子との間での熱伝導を可能にするように当該被冷却部と前記電気接続部とに連結される伝熱部材と、を有する、クライオスタット。
請求項1〜3のいずれかに記載のクライオスタットであって、前記電流リードは、前記首管内において前記導電体の少なくとも第1導電部を外側から覆うことにより当該第1導電部の周囲に前記液体ヘリウムが蒸発したヘリウムガスが流れるヘリウムガス通路を形成するガスダクトを含む、クライオスタット。
請求項1〜4のいずれかに記載のクライオスタットであって、前記液体ヘリウム槽及び前記超流動ヘリウム槽の外側を覆うように配置される熱シールド部材と、前記熱シールド部材と熱伝導可能となるように当該熱シールド部材に接続される状態で前記首管内に配置される熱シールド部材側受熱部と、をさらに備え、前記電流リードは、前記首管内で前記熱シールド部材側受熱部と接触することにより前記導電体から前記熱シールド部材側受熱部を介しての前記熱シールド部材への熱伝導を可能にする電流リード側熱伝導部を含む、クライオスタット。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記超電導マグネットの中には、前記永久電流ではなく常に外部電源から電流リードを通じて電流の供給を受けることにより駆動されるものがあり、この場合には当該電流リードを通じてのクライオスタット外部から内部への熱の侵入の抑制が課題となる。すなわち、前記電流リードはその高温端と低温端との間に非常に大きな温度差を有する上、熱伝導率の高い銅等で構成されるため、何らの対策をとらないと当該電流リードを経由した著しい熱侵入は免れない。
【0006】
特に近年は、前記超電導コイルの一部が酸化物系超電導材料により構成されたものの使用が検討されており、この場合には前記電流リードによる常時接続が余儀なくされるために前記課題の解決はさらに重要となる。すなわち、前記酸化物系超電導材料を使用する場合、当該材料と従来の金属系超電導材料との間での接続構造が完全には確立されていないことから永久電流スイッチの使用が難しく、よって前記電流リードを媒介とする外部電源と超電導マグネットとの常時接続は実質上必須のものとなる。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑み、超流動ヘリウムにより超電導マグネットを保冷するとともに液体ヘリウムの絞り膨張により前記超流動ヘリウムの冷却が行われるクライオスタットであって、前記超電導マグネットと当該クライオスタットの外部の電源とを電流リードを介して常時接続しながら当該電流リードを経由する熱侵入を有効に抑止することが可能なものを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための手段として、本発明者は、電流リードを構成する導電体の一部(具体的には低温部分)を酸化物系超電導材料により構成することに想到した。この酸化物系超電導材料は、一般に銅等の金属材料よりも熱伝導率が著しく低く、また、超電導状態では抵抗が実質上ゼロに等しく電気抵抗による発熱もないために、電流リードを経由する熱侵入の抑制に有効である。しかし、この酸化物系超電導材料を用いても熱侵入の低減には限界があり、また、当該酸化物系超電導材料は超電導状態を失うと金属材料に比べて著しく大きな抵抗を有することになるため、当該酸化物系超電導材料によって電流リードの一部を構成する場合はその部分が確実に当該酸化物系超電導材料の転移温度以下の温度に保冷される必要がある。そこで、本発明者は、前記熱侵入の更なる抑制及び前記酸化物系超電導材料の確実な保冷のための手段として、前記超流動ヘリウムを冷却するために生成される低温ヘリウムのもつ冷熱、すなわち、液体ヘリウムの絞り膨張により生成される冷熱であって従来はそのまま廃棄されていた冷熱に着目した。
【0009】
本発明は、このような着想に基づき次の構成を有するクライオスタットを提供する。すなわち、本発明が提供するクライオスタットは、液体ヘリウムを貯留するとともに、当該液体ヘリウムが蒸発したヘリウムガスが上昇可能な首管を有する液体ヘリウム槽と、超流動ヘリウムを貯留するとともにこの超流動ヘリウムにより保冷される超電導マグネットを収容する超流動ヘリウム槽と、前記液体ヘリウム槽内の液体ヘリウムを絞り膨張させて当該液体ヘリウムの温度を低下させ、当該温度が低下した液体ヘリウムと前記超流動ヘリウム槽内の超流動ヘリウムとの間で熱交換を行わせることにより当該超流動ヘリウムを冷却する超流動ヘリウム冷却器と、前記首管内に配置される電流リードであって、外部の電源と前記超電導マグネットとを電気的に接続するための導電体を含み、この導電体は金属材料により構成される第1導電部とこの第1導電部よりも低温側に位置して前記金属材料の熱伝導率よりも低い熱伝導率を有する酸化物超電導材料により構成される第2導電部とを有するものと、前記液体ヘリウム槽内に配置されて前記導電体の低温側端部と着脱可能に結合される接続端子を含み、この接続端子に結合された前記導電体を前記超電導マグネットに電気的に接続する電気接続部と、前記接続端子と前記冷却器において絞り膨張した低温のヘリウムとの間で熱交換を行わせることにより当該接続端子及びこれに結合される前記導電体の低温側端部を冷却する接続端子冷却部と、を備える。
【0010】
このクライオスタットでは、前記電流リードに含まれる導電体のうちの第2導電部が第1導電部を構成する金属材料よりも熱伝導率の低い酸化物系超電導材料で構成されていることから、当該導電体を経由してクライオスタットの外部から電気接続部を経由して超流動ヘリウム槽へ熱が侵入することが有効に抑止される。しかも、前記接続端子冷却部は、前記電気接続部の接続端子と超流動ヘリウム冷却器で生成された低温のヘリウムとの熱交換によって前記接続端子及びこれに結合される前記導電体の低温側端部を冷却するため、従来はそのまま廃棄されていた低温のヘリウムが保有する冷熱を有効に利用することにより、前記熱侵入の更なる抑制を可能にするとともに、前記導電体の第2導電部を構成する酸化物系超電導材料を確実に超電導状態に保つことを可能にする。
【0011】
具体的に、前記超流動ヘリウム冷却器は、液体ヘリウム槽内の液体ヘリウムを前記超流動ヘリウム槽の内部を経由してクライオスタットの外部に導出する形状の冷却用配管と、この冷却用配管の途中に設けられ、当該冷却用配管を流れる液体ヘリウムを絞り膨張させる膨張器と、を有し、前記冷却用配管は、前記超流動ヘリウム槽内に配置されて前記絞り膨張した後のヘリウムと前記超流動ヘリウム槽内の超流動ヘリウムとを熱交換させる超流動ヘリウム冷却用熱交換部と、この超流動ヘリウム冷却用熱交換部から前記液体ヘリウム槽内を通ってクライオスタットの外部に至る排気管部と、を有するものが、好適である。このような超流動ヘリウム冷却器を具備するクライオスタットでは、前記接続端子冷却部は、前記排気管部を流れるヘリウムと前記接続端子との間の熱交換を前記液体ヘリウム槽内で簡便に行うことが可能である。
【0012】
例えば、この場合、前記接続端子冷却部は、前記排気管部の途中に設けられてこの排気管部を流れるヘリウムにより冷却される被冷却部と、この被冷却部と前記接続端子との間での熱伝導を可能にするように当該被冷却部と前記電気接続部とに連結される伝熱部材と、を有するだけの簡素な構造で前記ヘリウムの冷熱を利用した前記接続端子の冷却を実現することができる。
【0013】
一方、前記電流リードは、前記首管内において前記導電体の少なくとも第1導電部を外側から覆うことにより当該第1導電部の周囲に蒸発ヘリウムガスの通路を形成するガスダクトを含むことが、好ましい。このガスダクトは、前記接続端子冷却部による導電体の低温側端部の冷却に加えて前記蒸発ヘリウムガスを利用した第1導電部の冷却を行うことにより、当該導電体を経路とする熱侵入のさらなる抑止を可能にする。
【0014】
また、本発明に係るクライオスタットが前記液体ヘリウム槽及び前記超流動ヘリウム槽の外側を覆うように配置される熱シールド部材を有する場合、当該クライオスタットは、前記熱シールド
部材と熱伝導可能となるように当該熱シールド
部材に接続される状態で前記首管内に配置される熱シールド
部材側受熱部をさらに備え、前記電流リードは、前記首管内で前記熱シールド
部材側受熱部と接触することにより前記導電体から前記熱シールド
部材側受熱部を介しての前記熱シールド
部材への熱伝導を可能にする電流リード側熱伝導部を含むことが、好ましい。前記熱シールド
部材側受熱部及び前記電流リード側熱伝導部は、前記導電体から前記熱シールド
部材への熱伝導による熱の逃がしを可能にすることにより、当該導電体から電気接続部への熱の侵入をさらに有効に抑止することができる。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明によれば、超流動ヘリウムにより超電導マグネットを保冷するとともに液体ヘリウムの絞り膨張により前記超流動ヘリウムの冷却が行われるクライオスタットであって、前記超電導マグネットと当該クライオスタットの外部の電源とを電流リードを介して常時接続しながら当該電流リードを経由する熱侵入を有効に抑止することが可能なものが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の好ましい実施の形態を、
図1を参照しながら説明する。
【0018】
図1は、この実施の形態に係るクライオスタットを示す。このクライオスタットは、真空容器10と、液体ヘリウム槽12と、超流動ヘリウム槽14と、低温側熱シールド板16と、高温側熱シールド板18と、を備える。
【0019】
前記液体ヘリウム槽12は、大気圧飽和常流動ヘリウム(以下、単に液体ヘリウムと称する。)2を貯留する。
図1には示されないが、前記液体ヘリウム槽12の上端からは前記真空容器10の上部を貫いて上方に複数の首管が延び、そのうちの少なくとも一部の首管を通じて液体ヘリウム槽12内に適宜液体ヘリウムが補給される。この首管の上端は、前記液体ヘリウムの補給時以外は、通常蓋により塞がれる。
【0020】
前記超流動ヘリウム槽14は、後述のように生成される超流動ヘリウム4を貯留する。この超流動ヘリウム槽14内には前記超流動ヘリウム4とともに冷却対象である超電導マグネット6が収容される。
【0021】
前記液体ヘリウム槽12は、前記超流動ヘリウム槽14の直上方に配置され、この液体ヘリウム槽12の底面と超流動ヘリウム槽14との間にセパレータ13が介在している。このセパレータ13は、両槽12,14を連通する連通路である安全弁通路を形成するとともに、当該安全弁通路を開閉する安全弁15を具備する。この安全弁15は、例えば超電導マグネット6がクエンチして超流動ヘリウム槽14の内圧が急上昇したときに開弁することにより当該内圧を開放する。
【0022】
前記熱シールド板16,18は、前記真空容器10内で前記両槽12,14を覆うように配置され、輻射による熱侵入を抑止する。このうち高温側熱シールド板18は低温側熱シールド板16の外側に配置され、当該高温側熱シールド板18の外周には保冷用の液体窒素を収容する液体窒素槽17が形成されている。これらの熱シールド板16,18は前記液体ヘリウム槽12とともに冷凍機によって保冷されてもよい。
【0023】
このクライオスタットは、さらに、前記超流動ヘリウム槽14内の超流動ヘリウム4を冷却するための超流動ヘリウム冷却器を備える。この超流動ヘリウム冷却器は、前記液体ヘリウム12槽内の液体ヘリウム2を絞り膨張させてそのJT(ジュールトムソン)効果により当該液体ヘリウムの温度を低下させ、この低温の液体ヘリウムと前記超流動ヘリウム14槽内の超流動ヘリウム4との間で熱交換を行わせることにより前記低温の液体ヘリウムを蒸発させて当該超流動ヘリウム4から熱を奪い、これによって当該超流動ヘリウム4を冷却する。
【0024】
具体的に、この実施の形態に係る超流動ヘリウム冷却器は、前記液体ヘリウム槽12内の液体ヘリウム2を外部に吸引するための冷却用配管20と、その途中で前記液体ヘリウム2を絞り膨張させるための膨張器であるJT弁28と、を備える。
【0025】
前記冷却用配管20は、前記液体ヘリウム槽12の下部に配置される上流端と、図略の排気ポンプに接続される下流端と、有する。この冷却用配管20は、その上流端から順に、上流管部22、超流動ヘリウム冷却用の熱交換部24、及び排気管部26により構成される。
【0026】
前記上流管部22は前記上流端から前記超流動ヘリウム槽14の上部に至るまでの部分であって、その途中に前記JT弁28が設けられている。前記熱交換部24は前記超流動ヘリウム槽14内の上部に位置し、前記JT弁28での絞り膨張により液体ヘリウム2よりも低温となった液体ヘリウムは前記熱交換部24において超流動ヘリウム槽14内の超流動ヘリウム4と熱交換することにより蒸発して当該超流動ヘリウム4を冷却する。
【0027】
前記排気管部26は前記熱交換部24で超流動ヘリウム4と熱交換して蒸発した後の低温のヘリウムガスをクライオスタットの外部に導出するためのもので、前記熱交換部24の下流端から前記液体ヘリウム槽12を貫くようにして上方に延び、真空容器10の外部に至る。
【0028】
このクライオスタットにおける初期の超流動ヘリウム4の生成は、次のとおり、従来のクライオスタットと同様にして行われる。まず、超流動ヘリウム槽14及び液体ヘリウム槽12内に液体ヘリウムが導入された状態で図略の排気ポンプが作動することにより液体ヘリウム槽12内の液体ヘリウム2が冷却用配管20を通じて吸引される。この液体ヘリウム2はJT弁28で絞り膨張し、熱交換部24において超流動ヘリウム槽14内の液体ヘリウムと熱交換することにより当該液体ヘリウムを冷却する。このようにして、初期に超流動ヘリウム槽14を満たしていた大気圧飽和液体ヘリウムは、前記熱交換部24における熱交換で冷却されることにより、大気圧を保持したまま同槽14内で超流動ヘリウム4に変態する。この超流動ヘリウム4は超流動ヘリウム槽14内の超電導マグネット6の保冷に寄与する。
【0029】
このクライオスタットにおいて、前記超電導マグネット6は、超電導状態においてクライオスタットの外部に設置された電源からの給電を受けて駆動し、高強度の磁場を生成する。そして、この超電導マグネット6に前記の電源から電流を供給するための手段として、当該クライオスタットは、
図2に示すような電流リード30と、電気接続部40と、接続端子冷却部50と、を備える。
【0030】
前記電流リード30は、前記の複数の首管のうち
図2に示される特定の首管19に挿脱可能に挿入されるものであり、一対の導電体32とガスダクト34とを有する。
【0031】
前記導電体32は、前記電気接続部40を介して前記超電導マグネット6と前記電源とを電気的に接続するためのものであって、前記首管19に沿う方向(図の上下方向)に延びるブスバーにより構成される。各導電体32は、第1導電部35と、この第1導電部35よりも低温側に位置する第2導電部36と、低温側端部(すなわち下端部)である雄端子部38と、を順に有する。
【0032】
前記第1導電部35は、例えば銅または銅合金のように導電性に優れた金属材料により構成され、前記導電体32の主要部分を占める。具体的に、第1導電部35は、前記導電体32のうち
図2に示すように電流リード30が首管19内に完全に挿入された状態で前記首管19内に位置する部分のほぼ全体を占める。この第1導電部35の上端部は当該状態において前記首管19の上端よりも上側に突出して前記電源に接続される電源接続端部を構成する。この第1導電部35の断面形状は円、矩形など、自由に設定可能である。また、後述する蒸発ヘリウムガスとの熱交換を促進するために第1導電部35にその表面積を増加させるためのフィンが形成されてもよい。
【0033】
前記第2導電部36は当該金属材料の熱伝導率よりも低い熱伝導率を有する酸化物超電導材料、例えばイットリウム系やビスマス系の酸化物系超電導材料により構成され、その転移温度以下の温度領域において超電導状態を維持する。第2導電部36は、
図2に示す状態では前記導電体32のうち前記首管19よりも下側の液体ヘリウム槽12の本体部分の上部に位置する部分、すなわち液体ヘリウム2の液面に近い領域の部分を占める。
【0034】
前記雄端子部38は、前記第1導電部35と同じく導電性に優れた金属材料により構成され、通常のコネクタの雄端子と同様の形状を有する。本発明では、これとは逆に、導電体の低温側端部が雌端子を構成して電気接続部の接続端子が雄端子であってもよい。
【0035】
前記ガスダクト34は、前記首管10内において前記両導電体32を外側から覆う筒状をなし、当該ガスダクト34の内周面と前記各導電体32の外表面との間にヘリウムガス通路、すなわち、液体ヘリウム槽12内に収容された液体ヘリウム2が蒸発してなるヘリウムガスが前記各導電体32のすぐ外側で上昇するのを許容する通路、を形成する。このヘリウムガス通路の形成は、蒸発ヘリウムガスによる各導電体32の冷却を促進する。当該ガスダクト34の上端には、上昇した蒸発ヘリウムガスを排出するための排出管37が形成されている。
【0036】
前記電気接続部40は、前記電流リード30の各導電体32と前記超電導マグネット6との間に介在して前記電源から前記超電導マグネット6に至る給電経路を完成するものであり、端子支持板42と、一対の雌端子44と、一対の接続用配線46と、を有する。
【0037】
前記端子支持板42は、前記液体ヘリウム槽12内に水平な姿勢で配置され、前記各雌端子44を支持する。この端子支持板42は、前記液体ヘリウム槽12において前記液体ヘリウム2の液面よりも上方に位置するように当該液体ヘリウム槽12に支持される。好ましくは当該液体ヘリウム槽12の底壁上に立設される図略の複数の柱によって支持される。この端子支持板42の材質は、高い電気絶縁性と高い熱伝導率を併有するものが好ましく、例えばサファイヤやアルミナ焼結体といった酸化アルミニウムが好適である。
【0038】
前記各雌端子44は、
図3に示すように前記各導電体32の低温側端部である雄端子部38と嵌合可能な形状を有する接続端子であり、これらの雄端子部38の配列に対応する配列で前記端子支持板42上に上向きの姿勢で固定されている。従って、前記各導電体32の雄端子部38は、当該導電体32を含む電流リード30の前記首管19内への下向きの挿入に伴い、その挿入方向にそのまま前記各雌端子44と嵌合することが可能であり、この嵌合が完了する位置が前記電流リード30の挿入完了位置に相当する。
【0039】
前記各接続用配線46は、好ましくは超電導線材により構成され、前記各雌端子44と前記超電導マグネット6を構成する超電導コイルの両端とをそれぞれ接続するように配線される。具体的に、各接続用配線46は、前記各雌端子44から液体ヘリウム2の底壁を通ってその下方に導出され、さらに超流動ヘリウム槽14内の超電導マグネット6に導かれるように配線されている。
【0040】
前記接続端子冷却部50は、前記各雌端子44と前記JT弁28で絞り膨張した低温のヘリウムとの間で熱交換を行わせることにより当該雌端子44及びこれに結合される前記導電体32の雄端子部38を冷却するものであり、
図4に示される被冷却部52及び伝熱板54を有する。
【0041】
被冷却部52は、前記超流動ヘリウム冷却器を構成する冷却用配管20の排気管部26の途中部分、具体的には液体ヘリウム槽12内において前記端子支持板42と略同じ高さに位置する部分、に設けられ、この排気管部26を流れる低温のヘリウムにより冷却される。具体的に、
図4に示される被冷却部52は、被冷却体56と、これを収容する被冷却体容器58とを有する。
【0042】
前記被冷却体56は、前記低温ヘリウムとの接触により効率よく冷却される材質及び構造を有することが好ましく、例えば複数枚の銅製のメッシュが積層された積層体により構成される。前記被冷却体容器58は、底壁58aと、その周縁から上向きに筒状に延びる周壁58bと、を一体に有し、前記底壁58a上でかつ前記周壁58bの内側に前記被冷却体56を収容する空間を形成する。また、底壁58aの外周部は、前記周壁58bの外周面からさらに径方向の外側に突出するフランジ部58cを構成する。
【0043】
この実施の形態に係る排気管部26は
図4に示すように上側配管26aと下側配管26bとに分割されており、これらの配管26a,26b同士の間に前記被冷却体容器58が介在している。具体的に、前記上側配管26aの下端は前記被冷却体容器58における周壁58bの上端に結合され、前記下側配管26bの上端は当該被冷却体容器58の底壁58aの下面に結合されている。また、当該底壁58aには、前記低温ヘリウムの上向きの流通を許容して前記被冷却体56を通過させるための多数の通気孔が設けられている。
【0044】
前記伝熱板54は、前記被冷却部52と前記雌端子44との間での熱伝導を可能にするように当該被冷却部52と前記電気接続部40とに連結される伝熱部材を構成する。具体的に、当該伝熱板54の一方の端部は
図3に示す端子支持板42の下面に接合され、他方の端部は
図4に示すフランジ部58c、すなわち、前記被冷却体容器58の底壁58aのうち周壁58bの外周面及び下側配管26bの外周面よりも径方向外側に突出する部分、の下面に接合される。電気接続部40においては、好ましくは、前記伝熱板54の下面にこれを覆うようにして
図3に示すような絶縁板48が固定される。
【0045】
このクライオスタットでは、電流リード30に含まれる導電体32のうちの第2導電部36が第1導電部35を構成する金属材料よりも熱伝導率の低い酸化物系超電導材料で構成されていることから、当該導電体32を経由してクライオスタットの外部から電気接続部40への熱の侵入が有効に抑止される。
【0046】
その一方、接続端子冷却部50が前記電気接続部40の雌端子44と超流動ヘリウム冷却器で生成された低温のヘリウムとの間で熱交換を行わせることにより前記雌端子及びこれに結合される前記導電体32の低温側端部すなわち雄端子部38を冷却するから、従来はそのまま廃棄されていた低温のヘリウムが保有する冷熱を有効に利用することにより、前記熱侵入のさらなる抑制が可能になるとともに、前記導電体の第2導電部36を構成する酸化物系超電導材料がその転移温度よりも十分に低い温度領域(例えば4K〜10K)に確実に保つことができ、その超電導状態を維持することができる。
【0047】
例えば、
図1及び
図2に示されるようなクライオスタットにおいて、前記導電体32の低温側部分を酸化物系超電導材料で構成したときに熱侵入を0.6W程度まで抑えられるとした場合、これに前記接続端子冷却部50を加えることによって当該熱侵入を0.2W程度まで低減させることが可能である。
【0048】
さらに、この実施の形態では、前記超流動ヘリウム冷却器が液体ヘリウム槽12内を通る排気管部26を有することから、前記接続端子冷却部50は、同じ液体ヘリウム槽12内に位置する排気管部26と電気接続部40とを接続することにより、前記排気管部26を流れる低温ヘリウムと前記雌端子44との間の熱交換を前記液体ヘリウム槽12内で簡便に行うことができる。
【0049】
本発明に係る接続端子冷却部の構成は前記のものに限られない。より簡易な構造として、例えば、前記排気管部26の管壁の一部が伝熱材で構成されてこの伝熱材の外周部と電気接続部40とに前記伝熱板54の端部がそれぞれ連結されたものでもよい。
【0050】
一方、前記電流リード30では、ガスダクト34が両導電体32を外側から覆うように配置されて当該両導電体32の周囲にヘリウムガス通路、すなわち、液体ヘリウム槽12内の液体ヘリウム2が蒸発したヘリウムガスが流れる通路を形成することにより、当該ヘリウムガスと各導電体32とを効率よく接触させて当該導電体32(特に第1導電部35)を冷却することにより、当該導電体32を経路とする熱侵入をより有効に抑止することができる。
【0051】
また、
図2〜
図4には示されていないが、前記のように液体ヘリウム槽12及び超流動ヘリウム槽14の外側を覆うように配置される熱シールド部材(
図1では低温側熱シールド板16及び高温熱シールド板18)を有するクライオスタットにおいては、前記第1導電部35の適当な部位と前記熱シールド部材(例えば低温側熱シールド板16)とを熱伝導可能に接続して当該第1導電部35の熱を当該熱シールド部材に逃がすことによって、前記の熱侵入効果をさらに高めることが可能である。
【0052】
図5は、当該熱伝導を可能にするための構造の例を示す。この構造では、前記
図2に示す電流リード30が導電体保持部材及びこれを支持する支持部材を有する一方、熱シールド部材(
図5では低温側熱シールド板16)に熱シールド板側受熱部が接続されている。
【0053】
前記熱シールド板受熱部は、前記低温側熱シールド板16と熱伝導可能となるように当該熱シールド板16に接続される状態で前記首管19内に配置されるものであり、
図5に示す例では伝熱板68により構成される。この伝熱板68は、銅系材料などの高い熱伝導率を有する材料によりその中央に貫通穴69を囲むドーナツ板状に形成され、前記首管19の途中部分に水平な姿勢で固定されている。前記首管19は前記伝熱板68を境として上側管19aと下側管19bとに分割され、上側管19aの下端が前記伝熱板68の上面に接合され、下側管19bの上端が伝熱板68の下面に接合されている。また、前記貫通穴69は、前記首管19の内径よりも小さくかつ前記電流リード30の外径よりも大きな直径(すなわち電流リード30が挿通可能な直径)を有している。
【0054】
前記導電体保持部材は、両導電体32の間に介在する中間ブロック60と両導電体32の両外側に配置される外側ブロック62とを有し、各ブロック60,62は高い電気絶縁性と高い熱伝導性を併有する材料、例えば前記のサファイヤやアルミナ焼結体といった酸化アルミニウムにより構成されている。各ブロック60,62は、好ましくは各導電体32の幅寸法(
図5では奥行き方向の寸法)よりも大きな幅寸法を有し、互いに隣接するブロックの幅方向の端部同士の間にそれぞれ蒸発ヘリウムガスの通路が形成される。
【0055】
前記支持部材は、一対の挟持板64及び連結板66を有する。挟持板64は前記中間ブロック60及び両外側ブロック62を挟持するようにこれらブロック60,62の両外側に配置されて互いに締結される。前記連結板66は、前記各挟持板64から両外側に延び、その外側端部が前記伝熱板68の内周縁に載せられた状態でボルト等により締結される。当該連結板66には、好ましくは、ガスダクト34内を上昇する蒸発ヘリウムガスの流通を許容する多数の通気孔67が設けられる。前記連結板66及び前記挟持板64は熱伝導性の高い金属材料で構成されることが可能である。前記ガスダクト34は、前記連結板66を境に上側ガスダクト34aと下側ガスダクト34bとに分割されている。
【0056】
この構造は、前記両導電体32から両外側ブロック62、両挟持板64、両連結板66及び伝熱板68を経由して低温側熱シールド板16に至る熱伝導を許容することにより、当該導電体32の熱を有効に低温側熱シールド板16に逃がすことができる。また、電流リード側熱伝導部である連結板66と熱シールド部材側受熱部である伝熱板68とを上下に切り離すことで、電流リード30全体を首管19内から容易に抜き出すことが可能である。
【0057】
この電流リード30の抜き出しは、
図6に示すような構造によってさらに容易化される。この構造では、熱シールド部材側受熱部として、前記伝熱板66の内周縁に円筒状の受熱管70が上下を向く姿勢で接合される一方、電流リード側熱伝導部として、前記連結板66の外周縁に同じく円筒状の熱伝導リング72が上下を向く姿勢で接合されている。換言すれば、前記連結板64は、前記挟持板82と前記熱伝導リング72との間に介在して両者を径方向に連結する。
【0058】
前記熱伝導リング72の外周面の直径(外径)は前記受熱管70の内周面の直径(内径)よりも僅かに大きく設定され、当該熱伝導リング72の径方向の圧縮弾性変形を伴いながら当該熱伝導リング72が前記受熱管70内に挿入されることにより、当該熱伝導リング72の弾発力でその外周面が前記受熱管70の内周面に接触して熱伝導経路を形成する。熱伝導リング72は、その径方向の弾性圧縮変形を容易にするための構造、例えば径方向に弾性的に撓み可能な複数枚のルーバーが周方向に配置されて各ルーバーの外側端部が撓み変形しながら受熱管70の内周面に接触する構造、を有するのが好ましい。
【0059】
図6に示される構造では、熱伝導リング72を受熱管70からそのまま上向きに抜き取ることにより、両導電体32を含む電流リード30全体を首管19から容易に取り出してそのメンテナンス作業または交換作業を遂行することができる。