特許第6023009号(P6023009)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6023009
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月9日
(54)【発明の名称】紙幣処理機
(51)【国際特許分類】
   G07D 9/00 20060101AFI20161027BHJP
【FI】
   G07D9/00 403D
【請求項の数】5
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2013-131693(P2013-131693)
(22)【出願日】2013年6月24日
(65)【公開番号】特開2015-5256(P2015-5256A)
(43)【公開日】2015年1月8日
【審査請求日】2015年12月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】500265501
【氏名又は名称】ローレル精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】岩渕 智明
【審査官】 角田 貴章
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−008095(JP,A)
【文献】 特開2003−281602(JP,A)
【文献】 特開2004−147879(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/188804(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07D 1/00−3/16
9/00−13/00
G07F 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機外から投入された紙幣を底部に突当状態で載置させる投入口を有する紙幣処理機であって、
前記投入口の底部には、投入された紙幣に沿って延在し硬貨の進入を許容するスリットが形成されており、
前記スリットの下側には、該スリットに進入した硬貨に当接して該硬貨の前記スリットの通過を規制する規制部が、前記スリットに対し離間して設けられていることを特徴とする紙幣処理機。
【請求項2】
前記投入口の壁側に設けられて該投入口内の紙幣を取込口から機内に取り込む取込機構と、
前記取込機構に対し近接および離間するように前記投入口の底部に沿って移動するビルプレスと、
を有し、
前記投入口の底部には、最も離間した状態にある前記取込機構と前記ビルプレスとの間に前記スリットが形成されていることを特徴とする請求項1記載の紙幣処理機。
【請求項3】
前記取込口の紙幣を検出する取込検出センサと、
前記ビルプレスの移動状態を検出する移動状態検出手段と、
前記取込検出センサが紙幣の滞留を検出すると取込不良解消の指示ガイダンスを表示手段に表示させる一方、前記移動状態検出手段が前記ビルプレスの途中停止を検出すると異物排除の指示ガイダンスを表示手段に表示させる制御手段と、を有することを特徴とする請求項2記載の紙幣処理機。
【請求項4】
前記ビルプレスと前記投入口の底部との対向面同士が、互いに噛み合うように凹凸形状をなすことを特徴とする請求項2または3記載の紙幣処理機。
【請求項5】
前記規制部は、処理機本体に対し着脱可能な容器状部材の底部からなることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項記載の紙幣処理機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙幣処理機に関する。
【背景技術】
【0002】
紙幣入出金機において、紙幣が投入される投入口の底部に硬貨等の異物を排除する紙幣受けを設けたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−65435号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記の紙幣入出金機では、紙幣受けで投入口から排除した硬貨を返却ダクトを経由して返却容器に返却するようになっている。このように硬貨を返却容器に返却するのでは、返却した硬貨の返却容器からの取り忘れを生じてしまう可能性がある。一方で、硬貨以外の異物は、基本的には廃棄されるものであるため、投入口から返却容器に排除するのが好ましい。
【0005】
したがって、本発明は、硬貨を投入口に残しつつ硬貨以外の異物を投入口から排除することが可能となる紙幣処理機の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、機外から投入された紙幣を底部に突当状態で載置させる投入口を有する紙幣処理機であって、前記投入口の底部には、投入された紙幣に沿って延在し硬貨の進入を許容するスリットが形成されており、前記スリットの下側には、該スリットに進入した硬貨に当接して該硬貨の前記スリットの通過を規制する規制部が、前記スリットに対し離間して設けられていることを特徴とする。
【0007】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、前記投入口の壁側に設けられて該投入口内の紙幣を取込口から機内に取り込む取込機構と、前記取込機構に対し近接および離間するように前記投入口の底部に沿って移動するビルプレスと、を有し、前記投入口の底部には、最も離間した状態にある前記取込機構と前記ビルプレスとの間に前記スリットが形成されていることを特徴とする。
【0008】
請求項3に係る発明は、請求項2に係る発明において、前記取込口の紙幣を検出する取込検出センサと、前記ビルプレスの移動状態を検出する移動状態検出手段と、前記取込検出センサが紙幣の滞留を検出すると取込不良解消の指示ガイダンスを表示手段に表示させる一方、前記移動状態検出手段が前記ビルプレスの途中停止を検出すると異物排除の指示ガイダンスを表示手段に表示させる制御手段と、を有することを特徴とする。
【0009】
請求項4に係る発明は、請求項2または3に係る発明において、前記ビルプレスと前記投入口の底部との対向面同士が、互いに噛み合うように凹凸形状をなすことを特徴とする。
【0010】
請求項5に係る発明は、請求項1乃至4のいずれか一項に係る発明において、前記規制部は、処理機本体に対し着脱可能な容器状部材の底部からなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明によれば、投入口に紙幣とともに投入された硬貨は、底部に形成されたスリットに進入したとしても規制部によってスリットを通過することが規制されて投入口に残存する。他方、硬貨以外の異物は、底部に形成されたスリットを通過することが可能であり、投入口から排除可能となる。したがって、硬貨を投入口に残しつつ硬貨以外の異物を投入口から排除することが可能となる。しかも、投入口に投入された紙幣に沿って延在するようにスリットが形成されていることから、誤投入パターンとして多い、紙幣の間に挟まれるようにして投入される硬貨を、スリットに進入させて規制部で停止させた状態とすることができる。したがって、硬貨は投入口の底部に立った状態となり、操作者による排除が容易となる。
【0012】
請求項2に係る発明によれば、投入口の底部には、最も離間した状態にある取込機構とビルプレスとの間にスリットが形成されているため、誤投入された硬貨は、スリットに進入し規制部で停止させられた状態になり易い。したがって、より一層、硬貨が投入口の底部に立った状態となり易く、操作者による排除がより容易となる。しかも、紙幣の投入後に、ビルプレスが取込機構側に移動すると、スリットに進入し規制部で停止させられた状態にある硬貨に当接して移動が規制されることになり、この状態から硬貨の誤投入を検知することができる。
【0013】
請求項3に係る発明によれば、制御手段は、取込不良時に生じる紙幣の取込口での滞留を取込検出センサが検出すると取込不良解消の指示ガイダンスを表示手段に表示させる一方、異物混入時に生じるビルプレスの途中停止を移動状態検出手段が検出すると異物排除の指示ガイダンスを表示手段に表示させることになるため、異常発生時の早期復旧が可能となる。
【0014】
請求項4に係る発明によれば、ビルプレスと投入口の底部との対向面同士が、互いに噛み合うように凹凸形状をなすため、ビルプレスと投入口の底部との間を異物が通過してしまうことを規制できる。
【0015】
請求項5に係る発明によれば、スリットの下側にある規制部が容器状部材の底部からなるため、スリットを通過した硬貨以外の異物を、この容器状部材の底部に受け入れることになる。そして、着脱可能な容器状部材を処理機本体から取り外すことで、容器状部材に受け入れた硬貨以外の異物を機外に容易に排除することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係る紙幣処理機の入金口周辺を示す側断面図であって、ビルプレスの全閉状態を示すものである。
図2】本発明の一実施形態に係る紙幣処理機の入金口周辺を示す斜視図であって、ビルプレスの全開状態を示すものである。
図3】本発明の一実施形態に係る紙幣処理機の制御系のブロック図である。
図4】本発明の一実施形態に係る紙幣処理機の入金口周辺を示す側断面図であって、ビルプレスの全開状態を示すものである。
図5】本発明の一実施形態に係る紙幣処理機のビルプレスの駆動機構の一部を示す側面図である。
図6】本発明の一実施形態に係る紙幣処理機のビルプレスの駆動機構の他の一部を示す側面図であって、ビルプレスの全開状態を示すものである。
図7】本発明の一実施形態に係る紙幣処理機のビルプレスの駆動機構の他の一部を示す側面図であって、ビルプレスの全閉状態を示すものである。
図8】本発明の一実施形態に係る紙幣処理機の紙幣受板を示す斜視図である。
図9】本発明の一実施形態に係る紙幣処理機の紙幣受板、受皿部材およびビルプレスを示す側断面図である。
図10】本発明の一実施形態に係る紙幣処理機の入金口周辺を示す斜視図であって、処理機本体から受皿部材を取り外した状態を示すものである。
図11】本発明の一実施形態に係る紙幣処理機のビルプレスの下部構成部材を示す斜視図である。
図12】本発明の一実施形態に係る紙幣処理機のビルプレスの下部構成部材および紙幣受板を示す斜視図である。
図13】本発明の一実施形態に係る紙幣処理機の表示部の指示ガイダンスの表示内容を示す図である。
図14】本発明の一実施形態に係る紙幣処理機の紙幣受板のスリットに硬貨が進入した状態を示す斜視図である。
図15】本発明の一実施形態に係る紙幣処理機の紙幣受板上に硬貨が倒れた状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の一実施形態に係る紙幣処理機を図面を参照して以下に説明する。なお、各図において矢印X方向が、操作を行うオペレータ側すなわち前方(機体正面側)を示す。また、以下において特に記載のない場合、「前」はオペレータ側、「後」はオペレータに対し反対側であり、左右は、オペレータ側から見たときの左右である。
【0018】
本実施形態に係る紙幣処理機は、具体的には紙幣入出金機であり、紙幣の入金、収納、回収および出金等、紙幣に関する各処理を行うものである。この紙幣処理機には、図1に示すように、機体10の上部の前部側に投入口12が上方に向け若干前方に傾いた状態で開口して設けられている。投入口12は、主として入金処理時に、図2に示すように紙幣Sが操作者により機外から投入される部分で、紙幣Sは基本的には複数枚が集積状態で長手方向を左右方向にし集積方向を前後にした後下がりの姿勢で投入口12に投入される。
【0019】
投入口12は、図4に示すように、その底部を構成するように水平面に対し後側を若干上側にするように傾斜して配置された紙幣受板14と、この紙幣受板14の左右両端縁部から鉛直に沿って上方に延出する一対(図4においては一方のみ図示)の側壁部15と、紙幣受板14の後端縁部近傍から紙幣受板14にほぼ垂直をなして上方に延出する後壁部17と、紙幣受板14の前端縁部から紙幣受板14にほぼ垂直をなして上方に延出する前壁部18とを有している。後下がりの姿勢で投入口12に投入された紙幣Sは、後側かつ下側に位置する端縁部において紙幣受板14に突き当てられて載置される。つまり、投入口12は、機外から投入された紙幣Sを底部である紙幣受板14に突当状態で載置させる。投入口12には、紙幣受板14の後端縁部と後壁部17との間すなわち投入口12の下部の後端縁部に、紙幣Sを機体10内に取り込むための取込口19が形成されている。なお、紙幣受板14は、水平から水平に対し30°の範囲に配置される。
【0020】
投入口12には、取込口19の近傍位置に、投入口12に投入された紙幣Sを投入口12の後側(一側)において機体10内に取り込む取込機構21が設けられている。この取込機構21は、左右方向に軸線を配置した状態で、しかも後壁部17から一部が前方に突出するように設けられた蹴出ローラ22と、左右方向に軸線を配置した状態で取込口19の後側かつ下側に配置された取込ローラ23と、左右方向に軸線を配置した状態で取込口19の前側に取込ローラ23と接触可能に配置された分離ローラ24と、これら蹴出ローラ22、取込ローラ23および分離ローラ24を回転駆動する図3に示す取込駆動モータ26とを有している。
【0021】
図4に示す蹴出ローラ22は、前端部が下方に移動するように回転するもので、投入口12に投入された紙幣Sのうち最も後側の一枚に接触してこれを取込口19の方向に蹴り出すものである。取込ローラ23は、蹴出ローラ22と同じ方向に回転することで、蹴出ローラ22で蹴り出された紙幣Sをその機体10内後側に設けられた入金側搬送路25に向け送り出すものである。分離ローラ24は、取込ローラ23と同じ方向に回転しまたは停止することにより、二枚以上の紙幣Sが取込ローラ23との間に取り込まれるのを防止し、その結果、紙幣Sを一枚ずつに分離する。このような取込機構21により、投入口12に投入された紙幣Sは、一枚ずつに分離されて後方の入金側搬送路25へと送り込まれる。つまり、取込機構21は、投入口12の後壁部17側に設けられて投入口12内の紙幣Sを取込口19から機内に取り込むものである。
【0022】
また、投入口12には、取込機構21の前側に、取込機構21に対し近接および離間するように紙幣受板14に沿って移動するビルプレス27が設けられている。ビルプレス27は、投入口12に投入された紙幣Sを後壁部17側すなわち取込口19側に寄せて取込機構21の蹴出ローラ22に押し付けるものである。このビルプレス27は、取込機構21に対し近接・離間するように紙幣受板14に沿って移動可能とされる板状の押圧板28を有しており、この押圧板28が、投入口12に投入された紙幣Sを取込機構21への近接時にこの取込機構21の蹴出ローラ22に押し付ける。
【0023】
紙幣受板14に沿うように投入口12の一対の側壁部15にはガイド孔30がそれぞれ形成されている。ビルプレス27は、左右方向に軸線を沿わせて配置されるとともに、このガイド孔30内に沿って移動する前後一対のガイドローラ31,32と、これらガイドローラ31,32を保持するベース部33と、紙幣受板14に垂直をなすようにこのベース部33に立設されたピン部材34とを有しており、このピン部材34に押圧板28が後壁部17と対向するように支持されている。押圧板28は、ピン部材34を中心に左右に若干回転可能とされており、後壁部17に対し、平行をなす状態を通常とし左側を近接させかつ右側を離間させたり右側を近接させかつ左側を離間させたりすることができる。これは、押圧する紙幣Sがその状態によっては厚みが部分的に異なることになるため、押圧板28が揺動することでこのような厚みの部分的相違等に対応するのである。なお、取込機構21が設けられた後壁部17と押圧板28との間であって左右一対の側壁部15の間の部分が、操作者により外部から紙幣Sが投入される入金スペース35となっており、この入金スペース35は、押圧板28の移動により大きさが変わる。
【0024】
このようなビルプレス27は、ガイドローラ31,32がガイド孔30に案内されることでベース部33がガイド孔30に沿って移動すると、押圧板28が後壁部17に対向する姿勢を維持したまま後壁部17に近接・離間するように前後方向に移動する。そして、ビルプレス27は、後壁部17に近接する方向に移動することで、入金スペース35に投入されていた紙幣Sを取込機構21の蹴出ローラ22に押し付ける。
【0025】
ビルプレス27は、押圧板28の取込機構21に対し反対側に、図4に示すように押圧板28が取込機構21から離間する位置にあるときに投入口12を開放する一方、図1に示すように押圧板28が取込機構21に近接する位置にあるときに投入口12を閉塞する投入口シャッタ37を有している。この投入口シャッタ37は、投入口12における開口側に位置する押圧板28の上部に左右方向に軸線を配置して設けられた連結ピン39と、押圧板28の取込機構21に対し反対側に配置された状態でこの連結ピン39に基端側が回動可能に連結される投入口シャッタ本体40と、この投入口シャッタ本体40をその先端側すなわち取込機構21に対し反対側の係合部41が押圧板28から離間する方向に付勢するネジリバネ42とを有している。なお、投入口シャッタ本体40の係合部41よりも連結ピン39側には、前壁部18に当接しこの前壁部18に沿って転動するローラ43が回転可能に支持されている。
【0026】
投入口シャッタ37は、投入口シャッタ本体40の係合部41の移動を案内するとともにこの係合部41の移動上限位置を決めることで投入口シャッタ本体40の投入口12からの飛び出しを規制する図示せぬ案内部を有している。この案内部は、例えば前壁部18に形成された上下方向に沿う溝状のもので、この案内部の範囲内で係合部41が昇降するとともに、係合部41が案内部の上端部に当接することでそれ以上の上方への移動を規制する。なお、この案内部で係合部41が上限位置に位置する状態において、投入口シャッタ本体40は、ローラ43が連結ピン39よりも若干紙幣受板14に近接する状態とされている。すなわち、紙幣受板14に沿ってスライドする押圧板28のスライド方向を基準として連結ピン39の位置がローラ43の位置よりも高くなっている。
【0027】
このような投入口シャッタ37は、押圧板28が前後に移動すると、この押圧板28の移動に連動して投入口12の上部開口を開閉する。すなわち、図4に示すように、押圧板28が取込機構21から最も離間する第1離間位置にあるとき、この押圧板28に基端側が連結された投入口シャッタ本体40が、投入口12の取込機構21に対し反対側に設けられた図示せぬ案内部に全体として近接し、ネジリバネ42の付勢力に抗してその先端側の係合部41が押圧板28に近接するように折り畳まれた状態となる。このとき、投入口12の押圧板28と前壁部18との間のスペース44は、折り畳まれた投入口シャッタ37で閉塞される。なお、入金処理時において機体10の外から紙幣Sを投入口12に受け入れる投入待ちのタイミングで、押圧板28はこの第1離間位置に位置させられる。図2および図4に示すように押圧板28が取込機構21から最も離間する第1離間位置にあるときの状態を、ビルプレス27の全開状態とする。
【0028】
一方、この状態から、図1に示すように、押圧板28が取込機構21に近接する側に移動すると、投入口シャッタ本体40がネジリバネ42の付勢力でその係合部41を投入口12の開口側に位置させるように案内部で案内されながら上側に回動して、押圧板28と前壁部18との間に拡がっていくスペース44をその拡がりに応じて塞いでいく。そして、押圧板28と取込機構21との間に紙幣Sがない状態で最終的に押圧板28が取込機構21に最も近接する図1に示す第1近接位置に位置すると、投入口シャッタ本体40は、係合部41が案内部で投入口12からの飛び出しが規制される位置まで移動して、投入口12の押圧板28よりも取込機構21に対し反対側のスペースすなわち押圧板28と前壁部18との間のスペース44を全て覆って閉塞した状態となる。図1に示す押圧板28が取込機構21に最も近接する第1近接位置にあるときの状態を、ビルプレス27の全閉状態とする。
【0029】
このとき、投入口シャッタ本体40は、押圧板28のスライド方向を基準として連結ピン39の位置がローラ43の位置よりも高くなっている。また、このとき、投入口12の押圧板28よりも取込機構21側の入金スペース35も押圧板28が取込機構21に近接することで閉塞される。なお、入金処理時以外のタイミングでは、押圧板28はこの第1近接位置に位置させられる。
【0030】
押圧板28が、第1近接位置に位置する状態から、図4に示すように、取込機構21に対し離間する側に移動すると、投入口シャッタ本体40は、押圧板28で押される。押圧板28が第1近接位置に位置する状態で、投入口シャッタ本体40は、押圧板28のスライド方向を基準として連結ピン39の位置がローラ43の位置よりも高くなっているため、押圧板28の押圧でネジリバネ42の付勢力に抗してローラ43を前壁部18に沿って下降させることになる。そして、押圧板28と前壁部18との間で狭まっていくスペース44に応じて折り畳まれ、最終的に押圧板28が取込機構21から最も離間する第1離間位置に位置して停止する。
【0031】
投入口シャッタ37は、押圧板28が取込機構21側に位置して入金スペース35を閉塞している状態において形成されてしまう前壁部18と押圧板28との間のスペース44に誤って操作者が紙幣Sを投入してしまうことを防止する。
【0032】
次に、ビルプレス27の押圧板28を駆動する駆動機構48について説明する。図5に示すように、駆動機構48は移動駆動モータ50を有している。移動駆動モータ50は、投入口12の側方に設けられており、左右方向に軸線を配置した姿勢で位置固定で設けられている。この移動駆動モータ50の後方の斜め下側には、ビルプレス用駆動軸51が左右方向に軸線を配置しかつ位置固定で回転可能に設けられている。
【0033】
移動駆動モータ50の出力軸54にはプーリ55が同軸に固定されている。一方、ビルプレス用駆動軸51にはプーリ56が同軸かつプーリ55と左右方向の位置を合わせて固定されている。そして、これらプーリ55およびプーリ56にベルト57が巻回されている。
【0034】
ビルプレス用駆動軸51には、ビルプレス用駆動ディスク61が同軸に固定されている。ビルプレス用駆動ディスク61には、半径方向外方に突出する検出片部62が一体に形成されており、またその外径側から軸線に平行をなして突出するように駆動ピン63が固定されている。
【0035】
このビルプレス用駆動ディスク61の下側には、図6に示すビルプレス作動軸65が左右方向に軸線を配置しかつ位置固定で回転可能に設けられており、このビルプレス作動軸65にはこのビルプレス作動軸65から半径方向一側に延出するように稼動アーム66が回転可能に支持されている。この稼動アーム66には、その長さ方向に沿って長孔67が形成されており、この長孔67内に上記した駆動ピン63が挿入されている。
【0036】
この稼動アーム66は、移動駆動モータ50が正回転してビルプレス用駆動ディスク61が一方向に回転すると、円弧状に移動する駆動ピン63で駆動されて、図6に示すように、ビルプレス作動軸65に対し反対側をビルプレス作動軸65に対し前方に位置させる第2離間位置と、図7に示すように、ビルプレス作動軸65に対し反対側をビルプレス作動軸65に対し上方に位置させる第2近接位置の間で繰り返し往復動する。
【0037】
ここで、上記のようにビルプレス用駆動ディスク61が一方向に回転すると、駆動ピン63は長孔67内で移動することになるが、長孔67には、図6に示すように稼動アーム66が第2離間位置にあるときに駆動ピン63が位置する場所に駆動ピン63が入り込むように若干凹む凹部68が形成されており、図7に示すように稼動アーム66が第2近接位置にあるときに駆動ピン63が位置する場所にも駆動ピン63が入り込むように若干凹む凹部69が形成されている。
【0038】
また、稼動アーム66のビルプレス作動軸65側には、ビルプレス作動軸65と平行をなす係止ピン70,71がビルプレス作動軸65を介して略両側にそれぞれ固定されている。ビルプレス作動軸65には、このビルプレス作動軸65から半径方向一側に延出するように補助アーム73が回転可能に支持されている。この補助アーム73には、ビルプレス作動軸65に対し反対側にU字溝74が形成されており、このU字溝74には、ビルプレス27のベース部33に支持された一対のガイドローラ31,32の一方、具体的には後側のガイドローラ31が嵌合されている。この補助アーム73のビルプレス作動軸65に対し反対側には、U字溝74を挟んで両側に係止ピン75,76がそれぞれ固定されている。また、この補助アーム73のビルプレス作動軸65に対し反対側には検出片部77が一体的に設けられている。
【0039】
そして、稼動アーム66の後側の係止ピン70と補助アーム73の後側の係止ピン75とには、引張バネ79が介装されており、稼動アーム66の前側の係止ピン71と補助アーム73の前側の係止ピン76とにも、引張バネ80が介装されている。すなわち、補助アーム73は、これら引張バネ79,80を介して稼動アーム66に連結されている。ここで、これら二本の引張バネ79,80のうち、後側の引張バネ79の方が前側の引張バネ80よりもバネ力が強くされており、補助アーム73は、通常、後側の引張バネ79の方に依存されており、引張バネ79の方向に付勢されている。
【0040】
駆動機構48は、図5に示す移動駆動モータ50によって図6および図7に示す稼動アーム66を図6に示す第2離間位置と図7に示す第2近接位置との間で往復動させることで、稼動アーム66に二本の引張バネ79,80によって繋がれている補助アーム73をもこの稼動アーム66の作動にしたがってビルプレス作動軸65を中心として同方向に作動させることになる。このとき、補助アーム73のU字溝74にベース部33のガイドローラ31が嵌合しているので、稼動アーム66の作動で図1および図4に示すベース部33はガイド孔30に沿って移動する。このようにして、移動駆動モータ50の駆動力がベース部33に支持された押圧板28に伝えられて押圧板28がスライドする。
【0041】
ここで、駆動機構48は、稼動アーム66と補助アーム73とを設けることで、移動駆動モータ50からの駆動力を直接押圧板28に伝達せず、引張バネ79,80を介して伝達するようになっている。これは、上記のように入金された紙幣Sの厚さの変動に対応するためと、押圧板28による取込機構21への紙幣Sの付勢をバネ力で行うようにしているためである。これにより、入金動作の際に、取り込まれて減っていく紙幣量に合わせて押圧板28の位置を緻密に制御する必要がなくなり、第1近接位置と第1離間位置との間の移動量だけを設定しておけば良いことになる。また、上記により、操作者の無理な操作による破損や異物の挟み込みがあっても、押圧板28が直接駆動系につながっていないため、紙幣処理機の破損等を防止することができる。
【0042】
上記のように、移動駆動モータ50によって稼動アーム66が第2離間位置に位置させられるとき、この稼動アーム66に引張バネ79,80を介して連結することにより移動駆動モータ50によって引張バネ79,80を介して駆動される補助アーム73は、通常、異物の挟み込み等がなければ、ガイドローラ31,32をガイド孔30内で前側に位置させることになり、このとき、ガイドローラ31,32を支持するベース部33に設けられた押圧板28は、上記した第1離間位置に位置することになる。
【0043】
また、移動駆動モータ50によって稼動アーム66が第2近接位置に位置させられるとき、通常、補助アーム73はガイドローラ31,32をガイド孔30内で後側に位置させることになり、このとき、ガイドローラ31,32を支持するベース部33に設けられた押圧板28は、異物の挟み込みや紙幣Sが取込機構21との間にない状態では上記した第1近接位置に位置することになる。なお、紙幣Sが取込機構21との間にある状態では、稼動アーム66が第2近接位置に位置させられていても、押圧板28は、引張バネ79,80を変形させることで第1近接位置よりも紙幣Sの厚さに応じた前側位置で停止することになり、このときは、主に後側の引張バネ79の付勢力で紙幣Sを取込機構21の蹴出ローラ22に押し付ける。
【0044】
ここで、補助アーム73のビルプレス作動軸65に対し反対外側の所定位置には、補助アーム73が押圧板28を取込機構21に最も近接する所定の第1近接位置に位置させるときに図7に示すように補助アーム73の検出片部77をこれにより光路が遮光されることで検出する第1近接位置検出センサ82が設けられており、補助アーム73が押圧板28を取込機構21から最も離間する所定の第1離間位置に位置させるときに図6に示すように補助アーム73の検出片部77をこれにより光路が遮光されることで検出する第1離間位置検出センサ83が設けられている。なお、これら第1近接位置検出センサ82および第1離間位置検出センサ83は、駆動機構48において、緩衝手段である引張バネ79,80よりもビルプレス27側に設けられた補助アーム73の位置データを検出するもので、押圧板28の実際の位置を確認する。
【0045】
また、図5に示すように、ビルプレス用駆動ディスク61の半径方向外側の所定位置には、ビルプレス用駆動ディスク61が稼動アーム66を第2近接位置に位置させるときに、稼動アーム66に直結されたビルプレス用駆動ディスク61の検出片部62をこれにより光路が遮光されることで検出する第2近接位置検出センサ85が設けられており、ビルプレス用駆動ディスク61が稼動アーム66を第2離間位置に位置させるときに、稼動アーム66に直結されたビルプレス用駆動ディスク61の検出片部62をこれにより光路が遮光されることで検出する第2離間位置検出センサ86が設けられている。
【0046】
ここで、上記第2近接位置検出センサ85および第2離間位置検出センサ86は、駆動機構48において、緩衝手段である引張バネ79,80よりも移動駆動モータ50側に設けられたビルプレス用駆動ディスク61の位置データを検出するもので、稼動アーム66の位置を確認する。
【0047】
より詳しくは、第2近接位置検出センサ85は、押圧板28が取込機構21に近接する第1近接位置に位置すると予想される移動駆動モータ50側の予想近接位置データである稼動アーム66の第2近接位置を検出することになり、第2離間位置検出センサ86は、押圧板28が取込機構21に対し離間する第1離間位置に位置すると予想される移動駆動モータ50の予想離間位置データである稼動アーム66の第2離間位置を検出するものである。
【0048】
第1近接位置検出センサ82、第1離間位置検出センサ83、第2近接位置検出センサ85および第2離間位置検出センサ86は、ビルプレス27の移動状態を検出する移動状態検出部(移動状態検出手段)87を構成している。
【0049】
投入口12には、図1および図4に示すように、紙幣受板14よりも上側に、紙幣受板14上に載置された紙幣Sをこれにより光路が遮光されることで検出する光学式の載置検出センサ88が設けられており、取込口19に、取込口19の紙幣Sをこれにより光路が遮光されることで検出する光学式の取込検出センサ89が設けられている。これら載置検出センサ88および取込検出センサ89も、ビルプレス27の移動状態を検出する移動状態検出部87を構成している。
【0050】
この紙幣処理機の作動を制御する制御部(制御手段)90は、図3に示すように、取込駆動モータ26、移動駆動モータ50、第1近接位置検出センサ82、第1離間位置検出センサ83、第2近接位置検出センサ85、第2離間位置検出センサ86、載置検出センサ88および取込検出センサ89に接続されている。また、制御部90は、操作者による操作入力を受け付ける操作入力部91と、操作者に向け画面表示を行う表示部(表示手段)92と、データを記憶する記憶部93にも接続されている。
【0051】
制御部90は、押圧板28を取込機構21に近接する方向に移動させる際には、移動駆動モータ50を正回転させるとともに、第2近接位置検出センサ85によってビルプレス用駆動ディスク61の検出片部62が検出されるタイミングで移動駆動モータ50を停止させる。また、押圧板28を取込機構21から離間する方向に移動させる際には、移動駆動モータ50を正回転させるとともに、第2離間位置検出センサ86によってビルプレス用駆動ディスク61の検出片部62が検出されるタイミングで移動駆動モータ50を停止させる。
【0052】
そして、制御部90は、このような作動時に、移動状態検出部87を構成する第1近接位置検出センサ82、第1離間位置検出センサ83、第2近接位置検出センサ85、第2離間位置検出センサ86、載置検出センサ88および取込検出センサ89の検出結果に基づいて、投入口12の異物の有無等を検出する。
【0053】
すなわち、図5に示すように、第2近接位置検出センサ85によってビルプレス用駆動ディスク61の検出片部62が検出されると、取込機構21の駆動後、紙幣Sが押圧板28と取込機構21との間になくなるまで正常に押圧板28が作動すれば、載置検出センサ88および取込検出センサ89がいずれも紙幣Sを検出しない状態となり、且つ、図7に示すように第1近接位置検出センサ82が補助アーム73の検出片部77を検出する状態になる。よって、制御部90は、第2近接位置検出センサ85によってビルプレス用駆動ディスク61の検出片部62が検出された状態で、取込機構21の駆動後、載置検出センサ88および取込検出センサ89がいずれも紙幣Sを検出しない状態となり、且つ、第1近接位置検出センサ82が補助アーム73の検出片部77を検出する状態となれば、異物がなく押圧板28が正常に全閉位置まで移動できたと判定する。
【0054】
他方、制御部90は、第2近接位置検出センサ85によってビルプレス用駆動ディスク61の検出片部62が検出された状態で、取込機構21の駆動後、載置検出センサ88が紙幣Sを検出し、取込検出センサ89が紙幣Sを所定時間以上検出しない状態となれば、異物があって押圧板28が正常に移動できなかったと判定する。加えて、制御部90は、第2近接位置検出センサ85によってビルプレス用駆動ディスク61の検出片部62が検出された状態で、取込機構21の駆動後、載置検出センサ88および取込検出センサ89が紙幣Sを検出しない状態となっても、第1近接位置検出センサ82が補助アーム73の検出片部77を検出する状態にならなければ、異物があって押圧板28が正常に移動できなかったと判定する。
【0055】
また、第2離間位置検出センサ86によってビルプレス用駆動ディスク61の検出片部62が検出されると、押圧板28と取込機構21との間の紙幣Sの有無に係わらず、正常に押圧板28が作動すれば、図6に示すように、第1離間位置検出センサ83が補助アーム73の検出片部77を検出することになる。よって、制御部90は、第2離間位置検出センサ86によってビルプレス用駆動ディスク61の検出片部62が検出された状態で、第1離間位置検出センサ83が補助アーム73の検出片部77を検出する状態になれば、異物がなく押圧板28が正常に移動できたと判定する。
【0056】
他方、第2離間位置検出センサ86によってビルプレス用駆動ディスク61の検出片部62が検出された状態で、第1離間位置検出センサ83が補助アーム73の検出片部77を検出する状態にならなければ、異物があって押圧板28が正常に移動できなかったと判定する。
【0057】
さらに、制御部90は、取込検出センサ89によって取込口19の紙幣Sの所定時間以上の継続検出つまり滞留が検出されると、紙幣Sの取込不良が発生したと判定する。
【0058】
投入口12の底部を構成する紙幣受板14は、図8に示すように、底板部101と、底板部101の短辺方向に沿う一対の端縁部に立設された一対の側縁壁部102と、底板部101の長辺方向に沿う一方の端縁部に立設された縁壁部103とを有している。また、底板部101には、縁壁部103とは反対側の端縁部に、縁壁部103側に凹む凹状部104が形成されている。この凹状部104には、図2に示すように分離ローラ24が配置されることになる。図8に示すように、底板部101には、凹状部104の位置において側縁壁部102に平行をなして底板部101を横断する一対のリブ106が、底板部101の長辺方向に間隔をあけて立設されており、また、凹状部104の両外側位置において側縁壁部102に平行をなして底板部101を横断する一対のリブ107が立設されている。
【0059】
底板部101の一対のリブ106間には、底板部101の短辺方向の中間位置に、底板部101の長辺方向に延在するスリット108が、底板部101の短辺方向に並んで複数具体的には3カ所形成されている。また、底板部101の一対のリブ106の一方とこれに隣り合う一対のリブ107の一方との間には、底板部101の短辺方向の中間位置に、底板部101の長辺方向に延在するスリット109が、底板部101の短辺方向に並んで複数具体的には3カ所形成されている。また、底板部101の一対のリブ106の他方とこれに隣り合う一対のリブ107の他方との間にも、底板部101の短辺方向の中間位置に、底板部101の長辺方向に延在するスリット109が、底板部101の短辺方向に並んで複数具体的には3カ所形成されている。3カ所のスリット108と、一方の3カ所のスリット109と、他方の3カ所のスリット109とは、一カ所ずつが底板部101の短辺方向の位置を合わせるように形成されている。
【0060】
また、底板部101の一対のリブ107の一方とこれに隣り合う一対の側縁壁部102の一方との間には、底板部101の短辺方向の中間位置に、底板部101の長辺方向に延在するスリット110が、底板部101の短辺方向に並んで複数具体的には3カ所形成されている。また、底板部101の一対のリブ107の他方とこれに隣り合う一対の側縁壁部102の他方との間にも、底板部101の短辺方向の中間位置に、底板部101の長辺方向に延在するスリット110が、底板部101の短辺方向に並んで複数具体的には3カ所形成されている。一方の3カ所のスリット110および他方の3カ所のスリット110は、3カ所のスリット108に対し縁壁部103側に若干ずれて形成されている。これらスリット108,109,110は、格子状に配設されており、図9にスリット108を例示するように、すべて底板部101を板厚方向に貫通している。
【0061】
ここで、図2に示すように、投入口12に投入される紙幣Sは、長辺方向を紙幣受板14の長辺方向に合わせて投入されることになり、この状態で紙幣受板14に突当状態で載置される。よって、図8に示すスリット108,109,110は、すべて、投入口12に適正に投入された紙幣Sに沿って延在することになる。スリット108,109,110は、すべての幅が、流通硬貨の最大厚のものの厚さよりも広く且つ流通硬貨の最小径のものの直径よりも狭くなっており、すべての長さが、流通硬貨の最大径のものの直径よりも長くなっている。このため、すべてのスリット108,109,110は、図9にスリット108を例示するように、硬貨Cの進入を許容することになり、具体的には径方向に沿って移動する硬貨Cの進入を許容する。すべてのスリット108,109,110は、図2図4に示す全開状態にあるビルプレス27と取込機構21との間、つまり最も離間した状態にあるビルプレス27と取込機構21との間に形成されている。
【0062】
図9にスリット108を例示するように、すべてのスリット108,109,110の下側には、スリット108,109,110を通過して落下した異物Iを返却するための容器状の受皿部材(容器状部材)115が配置されている。この受皿部材115は、図10に示すように、その底部を構成する底板部(規制部)116と、底板部116の全周縁部に立設された囲壁部117と、囲壁部117の一部から側方に延出する取手部118とを有している。受皿部材115は、紙幣処理機における受皿部材115以外の処理機本体119に対し着脱可能となっており、着脱される際に操作者に取手部118において把持される。
【0063】
この受皿部材115は、図9に示すように処理機本体119に装着された状態で、底板部116が、図9にスリット108を例示するように、スリット108,109,110に対し下方に離間しており、スリット108,109,110に進入した硬貨Cに当接してこの硬貨Cのスリット108,109,110の通過を規制する。言い換えれば、処理機本体119に対し着脱可能な容器状の受皿部材115の底部が、スリット108,109,110に進入した硬貨Cに当接してこの硬貨Cのスリット108,109,110の通過を規制する。受皿部材115の底板部116の上面と紙幣受板14の底板部101の上面との距離は、流通硬貨の最小径のものの直径よりも短くなっており、流通硬貨の最小径のものが、いずれのスリット108,109,110に進入した状態であっても、常に紙幣受板14の底板部101の上面よりも上方に所定量(例えば少なくとも5mm)突出する距離となっている。また、受皿部材115の底板部116の上面と紙幣受板14の底板部101の下面つまりスリット108,109,110の下端部との距離は、異物Iがクリップである場合に、いずれのスリット108,109,110に進入しても、これを通過させる距離となっている。
【0064】
図8に示すように、紙幣受板14の底板部101の一対のリブ106間には、縁壁部103とスリット108との間に、リブ106と平行をなすリブ121が底板部101の長辺方向に間隔をあけて複数具体的には2カ所立設されている。また、底板部101の一対のリブ106の一方とこれに隣り合う一対のリブ107の一方との間には、縁壁部103とスリット109との間に、リブ107と平行をなすリブ122が1カ所立設されている。また、底板部101の一対のリブ106の他方とこれに隣り合う一対のリブ107の他方との間にも、縁壁部103とスリット109との間に、リブ107と平行をなすリブ122が1カ所立設されている。
【0065】
また、底板部101の一対のリブ107の一方とこれに隣り合う一対の側縁壁部102の一方との間には、縁壁部103とスリット110との間に、リブ107と平行をなすリブ123が底板部101の長辺方向に間隔をあけて複数具体的には2カ所立設されている。また、底板部101の一対のリブ107の他方とこれに隣り合う一対の側縁壁部102の他方との間にも、縁壁部103とスリット110との間に、リブ107と平行をなすリブ123が底板部101の長辺方向に間隔をあけて複数具体的には2カ所立設されている。
【0066】
また、底板部101の一対のリブ107の一方とこれに隣り合う一対の側縁壁部102の一方との間には、スリット110の縁壁部103とは反対側に、リブ107と平行をなすリブ124が底板部101の長辺方向に間隔をあけて複数具体的には2カ所立設されている。また、底板部101の一対のリブ107の他方とこれに隣り合う一対の側縁壁部102の他方との間にも、スリット110の縁壁部103とは反対側に、リブ107と平行をなすリブ124が底板部101の長辺方向に間隔をあけて複数具体的には2カ所立設されている。複数のリブ123と複数のリブ124とは、一カ所ずつが底板部101の長辺方向の位置を合わせている。
【0067】
図11に示すように、ビルプレス27の押圧板28の下部を構成する下部構成部材130には、下方に突出する凸状部131が押圧板28の長さ方向に間隔をあけて複数具体的には8カ所形成されている。図12に示すように、中央側の2カ所の凸状部131は、底板部101の一対のリブ106とこれらの内側の一対のリブ121との間に入り込むように配置され、その両側の2カ所の凸状部131は、底板部101の一対のリブ106とこれらの外側に隣り合う一対のリブ122との間に入り込むように配置される。また、その両側の2カ所の凸状部131は、底板部101の一対のリブ107とこれらの内側に隣り合う一対のリブ122との間に入り込むように配置され、その両側の2カ所の凸状部131は、底板部101の一対のリブ107とこれらの外側に隣り合う一対のリブ123との間に入り込むように配置される。これにより、ビルプレス27の押圧板28と投入口12の底部を構成する紙幣受板14との対向面(摺動面)同士が、互いに噛み合うように凹凸形状をなしている。言い換えれば、押圧板28は下面が長さ方向に交互に凹凸を繰り返すジグザグの櫛歯形状をなし、紙幣受板14は上面が長さ方向に交互に凹凸を繰り返すジグザグの櫛歯形状をなしていて、押圧板28の凹部が紙幣受板14の凸部と、押圧板28の凸部が紙幣受板14の凹部と位置を合わせて、凸部を入れ子状に凹部内に配置している。
【0068】
以上に述べた紙幣処理機の作動について説明する。
【0069】
投入口12は、全閉状態が待機状態となっており、主として入金処理時に紙幣Sが操作者により機体10の外から投入される際に開作動される。投入口12が待機状態(図1図5図7の状態)にあるとき、制御部90は、図5に示すようにビルプレス用駆動ディスク61をその検出片部62が第2近接位置検出センサ85で検出される位置で停止させており、図7に示すように稼動アーム66が第2近接位置にある。そして、この稼動アーム66に引張バネ79,80を介して連結された補助アーム73はその検出片部77が第1近接位置検出センサ82で検出される位置にある。
【0070】
この状態では、押圧板28は取込機構21に最も近接する第1近接位置に位置することになり、投入口シャッタ37はその投入口シャッタ本体40で投入口12の押圧板28よりも取込機構21に対し反対側のスペース44を全て覆って閉塞した状態となっており、同時に押圧板28が後壁部17に近接してこれらの間の入金スペース35を閉じた状態となっている。よって、投入口12は全体として閉塞されている。
【0071】
投入口12が上記待機状態にある状態で、操作入力部91に入金処理を行う旨の操作入力がなされると、制御部90は、移動駆動モータ50を正回転させる。すると、ビルプレス用駆動ディスク61が一方向に回転する。そして、制御部90は、ビルプレス用駆動ディスク61をその検出片部62が第2離間位置検出センサ86で検出される位置まで回転させて移動駆動モータ50を停止させる(図2図4図6の状態)。
【0072】
この移動駆動モータ50の正回転によるビルプレス用駆動ディスク61の一方向回転で、稼動アーム66は第2近接位置から図6に示すように第2離間位置に揺動する。この揺動により、この稼動アーム66に引張バネ79,80を介して連結された補助アーム73も同様に揺動し、補助アーム73のU字溝74にガイドローラ31において係合しているベース部33が前方に移動し、ベース部33に設けられた押圧板28が前方すなわち取込機構21に対し離間する側に移動する。すると、押圧板28で押されることにより、投入口シャッタ本体40が、押圧板28の押圧でネジリバネ42の付勢力に抗してローラ43を前壁部18に沿って下降させることになる。そして、投入口シャッタ本体40は、押圧板28と前壁部18との間で狭まっていくスペース44に応じて折り畳まれ、最終的に押圧板28が取込機構21から最も離間する図4に示す第1離間位置に位置して停止する。
【0073】
ここで、押圧板28の第1近接位置から第1離間位置までの上記移動が正常に行われれば、ビルプレス用駆動ディスク61の検出片部62が第2離間位置検出センサ86で検出された時点を基準として、ほぼ同時と判断できる所定の時間範囲内で、補助アーム73の検出片部77が第1離間位置検出センサ83で検出されることになり、このような検出状態になれば、制御部90は、以降の作動を続けさせることになる。この状態では、押圧板28が最も後壁部17から離間する第1離間位置に位置することになり、押圧板28と後壁部17との間に入金スペース35が形成される。また、押圧板28と前壁部18との間のスペース44は折り畳まれた投入口シャッタ本体40で閉塞されることになる。このようにして形成された入金スペース35に、図4に示すように紙幣Sが投入されることになる。投入された紙幣Sは、投入口12の紙幣受板14上に突き当たって載置される。
【0074】
入金スペース35に紙幣Sが投入されたことを載置検出センサ88が検出すると、制御部90は、操作入力部91への確認操作の入力を待ち、操作入力部91へ確認操作が入力されると、図5に示す移動駆動モータ50を正回転させる。すると、ビルプレス用駆動ディスク61が一方向に回転する。そして、制御部90は、ビルプレス用駆動ディスク61をその検出片部62が第2近接位置検出センサ85で検出される位置まで回転させて移動駆動モータ50を停止させる。
【0075】
この移動駆動モータ50の正回転によるビルプレス用駆動ディスク61の一方向回転で、稼動アーム66は第2離間位置から第2近接位置に揺動する。この揺動により、この稼動アーム66に引張バネ79,80を介して連結された補助アーム73も略同様に揺動し、補助アーム73のU字溝74にガイドローラ31において係合しているベース部33が後方に移動し、ベース部33に設けられた押圧板28が第1離間位置から第1近接位置に向けて移動して、入金スペース35に投入された紙幣Sに当接して停止しこれを主に引張バネ79の付勢力で取込機構21の蹴出ローラ22に押し付ける。このように押圧板28が第1離間位置から第1近接位置に向けて移動すると、押圧板28に連結された投入口シャッタ本体40が押圧板28の移動量に応じてローラ43をネジリバネ42の付勢力で前壁部18に沿って上昇させることになる。これにより、押圧板28と前壁部18との間のスペース44の拡がりに応じて投入口シャッタ本体40が揺動してこのスペース44を常に閉塞させる。
【0076】
そして、制御部90は、稼動アーム66の第2離間位置から第2近接位置への揺動で、ビルプレス用駆動ディスク61の検出片部62が第2近接位置検出センサ85で検出されると、このタイミングに基づいて取込機構21により紙幣Sの取り込みを開始させる。すなわち、最も後壁部17側の紙幣Sを蹴出ローラ22で取込口19に向け蹴り出すとともに、取込ローラ23および分離ローラ24で紙幣Sを一枚ずつに分離しつつ入金側搬送路25に繰り出す。その際に、取込検出センサ89が取込口19を通過する紙幣Sを検出する。
【0077】
制御部90は、取込機構21を駆動してから載置検出センサ88で紙幣Sが検出されなくなって最後の一枚と判断できる紙幣Sの通過を取込検出センサ89が検出するまでの取込時間中に、取込検出センサ89による一枚の紙幣Sの検出時間が取込機構21の繰出速度に応じた正常繰出判定基準時間内であれば、取込口19から入金側搬送路25に正常に紙幣Sが繰り出されていると判定する。一方、取込時間中に、取込検出センサ89による一枚の紙幣Sの検出時間が正常繰出判定基準時間を超えた場合、つまり紙幣Sが取込口19に滞留した場合、取込不良が発生したと判断する。
【0078】
制御部90は、取込検出センサ89が紙幣Sの滞留つまり取込不良を検出すると、取込機構21を停止させて、移動駆動モータ50の正回転により、ビルプレス用駆動ディスク61をその検出片部62が第2離間位置検出センサ86で検出される位置まで回転させて停止させる。これにより、稼動アーム66は第2近接位置から第2離間位置に揺動し、この稼動アーム66に引張バネ79,80を介して連結された補助アーム73も略同様に揺動し、補助アーム73のU字溝74にガイドローラ31において係合しているベース部33が前方に移動し、ベース部33に設けられた押圧板28が前方すなわち取込機構21に対し離間する側に移動する。押圧板28は、正常に移動すれば最終的に取込機構21から最も離間する第1離間位置に位置して停止する。制御部90は、押圧板28が正常に第1離間位置に位置したことを、第1離間位置検出センサ83が補助アーム73の検出片部77を検出することで確認する。
【0079】
次に、制御部90は、取込不良解消の指示ガイダンスを表示部92に表示させる。つまり、まず、図13(a)に示すように、取込不良が発生したことを示す「紙幣取込不良」の表示と、投入口12からの紙幣Sの抜き取りを促す「投入口の紙幣を抜取って下さい。」の表示とを表示部92に表示させる。そして、載置検出センサ88および取込検出センサ89が紙幣Sを検出しない状態となると、図13(b)に示すように、投入口12への紙幣Sの取り揃えた状態での再投入を促す「紙幣を取り揃えて再セットして下さい。」の表示を表示部92に表示させる。そして、再び入金スペース35に紙幣Sが投入されたことを載置検出センサ88が検出すると、制御部90は、操作入力部91への確認操作の入力を待ち、操作入力部91へ確認操作が入力されると、移動駆動モータ50によりビルプレス用駆動ディスク61をその検出片部62が第2近接位置検出センサ85で検出される位置まで回転させて移動駆動モータ50を停止させる。
【0080】
この移動駆動モータ50の回転で、上記と同様に、稼動アーム66は第2離間位置から第2近接位置に揺動する。この揺動により、この稼動アーム66に引張バネ79,80を介して連結された補助アーム73も揺動し、補助アーム73のU字溝74にガイドローラ31において係合しているベース部33が後方に移動し、ベース部33に設けられた押圧板28が第1離間位置から第1近接位置に向けて移動して、入金スペース35に投入された紙幣Sに当接して停止しこれを主に引張バネ79の付勢力で取込機構21の蹴出ローラ22に押し付ける。
【0081】
そして、制御部90は、稼動アーム66の第2離間位置から第2近接位置への揺動を、ビルプレス用駆動ディスク61の検出片部62が第2近接位置検出センサ85で検出されることで確認すると、このタイミングに基づいて取込機構21により紙幣Sの取り込みを開始させる。
【0082】
取込機構21による紙幣Sの取り込みが正常に進行すると、押圧板28と蹴出ローラ22との間に挟持された紙幣Sの量が徐々に減ることになるが、主に引張バネ79の付勢力で押圧板28は紙幣Sの量に応じて蹴出ローラ22に近づいて常に紙幣Sを蹴出ローラ22に押し付けることになる。最終的に紙幣Sをすべて取り込むと押圧板28は第1近接位置に位置する。そして、載置検出センサ88で紙幣Sが検出されなくなるタイミングに基づいて取込検出センサ89による最後の紙幣Sの取込口19の通過検出を行うと、制御部90は、入金スペース35の紙幣Sがすべて取り込まれたと判定して、取込時間が終了した判定するとともに取込機構21の駆動を停止させる。
【0083】
上記のように移動駆動モータ50によりビルプレス用駆動ディスク61をその検出片部62が第2近接位置検出センサ85で検出される位置まで回転させると、入金スペース35の減少および紙幣Sの取り込みの進行により、押圧板28が第1離間位置から第1近接位置に向け移動することになる。この移動が正常に行われれば、載置検出センサ88で紙幣Sが検出されなくなって最後の一枚と判断できる紙幣Sの通過を取込検出センサ89が検出すると、この時点を基準に、ほぼ同時と判断できる所定の時間範囲内で、補助アーム73の検出片部77が第1近接位置検出センサ82で検出されることになり、このような検出状態になれば、制御部90は、正常と判定して以降の作動を続けさせることになる。
【0084】
ここで、上記した紙幣Sの投入口12への投入時に、紙幣Sとともに硬貨、クリップ、糸くず類等の異物が投入口12に混入することがある。紙幣Sの投入時に補助アーム73の検出片部77が第1離間位置検出センサ83で検出された状態では、投入口12の底部の紙幣受板14には、押圧板28と取込機構21との間つまり入金スペース35にスリット108〜110が配置されている。このため、クリップ、糸くず類等の通過可能物はスリット108〜110から落下してスリット108〜110を通過して受皿部材115の底板部116上に載置される。よって、クリップ、糸くず類等の通過可能異物が紙幣受板14上に残存する可能性は低くなる。紙幣受板14上に異物が残存していなければ、上記のように、取込時間中に載置検出センサ88で紙幣Sが検出されなくなって最後の一枚と判断できる紙幣Sの通過を取込検出センサ89が検出すると、この時点を基準に、ほぼ同時と判断できる所定の時間範囲内で、補助アーム73の検出片部77が第1近接位置検出センサ82で検出されることになる。
【0085】
他方、硬貨等の通過不可物は、スリット108〜110に進入しても受皿部材115の底板部116に当接してスリット108〜110の通過が規制されることになる。少なくとも硬貨Cの場合は、図14にスリット108を例示するように、スリット108〜110に進入すると、紙幣受板14から所定長さ突出する状態になる。あるいは、硬貨Cは、スリット108〜110に進入しなければ、図15に示すように、紙幣受板14上で倒れる。よって、押圧板28の第1離間位置から第1近接位置までの上記移動途中で、図14に示すようにスリット108〜110のいずれかにより停止させられた硬貨C、あるいは図15に示すように後壁部17で停止させられた硬貨Cによって押圧板28が停止させられることになる。
【0086】
すると、押圧板28は引張バネ79,80を伸ばしつつ停止させられた状態が維持されることになる。この状態では、取込機構21の駆動中つまり取込時間中に、載置検出センサ88で投入口12内の紙幣Sを検出した状態のまま取込検出センサ89で取込口19の紙幣Sの通過を所定時間以上検出しなくなるか、あるいは、載置検出センサ88および取込検出センサ89が紙幣Sを検出しなくなっても、第1近接位置検出センサ82が補助アーム73の検出片部77を検出しない状態になる。
【0087】
よって、制御部90は、移動駆動モータ50によりビルプレス用駆動ディスク61をその検出片部62が第2近接位置検出センサ85で検出されるまで回転させ、取込機構21を駆動した後、載置検出センサ88で紙幣Sが検出された状態のまま紙幣Sの取込口19の通過を取込検出センサ89が所定時間以上検出しなくなると、ビルプレス27の押圧板28が途中停止状態にあることを検出する。加えて、制御部90は、移動駆動モータ50によりビルプレス用駆動ディスク61をその検出片部62が第2近接位置検出センサ85で検出されるまで回転させ、取込機構21を駆動した後、載置検出センサ88および取込検出センサ89が紙幣Sを検出しなくなっても、第1近接位置検出センサ82が補助アーム73の検出片部77を検出していない状態にあると、ビルプレス27の押圧板28が途中停止状態にあることを検出する。
【0088】
制御部90は、上記のように押圧板28が途中停止状態にあると判定すると、取込機構21を停止させて、移動駆動モータ50を、ビルプレス用駆動ディスク61の検出片部62が第2離間位置検出センサ86で検出されるまで正回転させて停止させる。これにより、稼動アーム66は第2近接位置から第2離間位置に揺動し、この稼動アーム66に引張バネ79,80を介して連結された補助アーム73も同様に揺動し、補助アーム73のU字溝74にガイドローラ31において係合しているベース部33が前方に移動し、ベース部33に設けられた押圧板28が前方すなわち取込機構21に対し離間する側に移動する。押圧板28は、正常に移動すれば最終的に取込機構21から最も離間する第1離間位置に位置して停止する。制御部90は、押圧板28が正常に第1離間位置に位置したことを、第1離間位置検出センサ83が補助アーム73の検出片部77を検出することで確認する。
【0089】
次に、制御部90は、異物排除の指示ガイダンスを表示部92に表示させる。つまり、まず、図13(c)に示すように、異物を検知したことを示す「紙幣異物検知」の表示と、投入口12からの紙幣Sの抜き取りおよび異物の排除を促す「投入口の紙幣を抜取り底部の異物を排除して下さい。」の表示とを表示部92に表示させる。そして、載置検出センサ88が紙幣Sを検出しない状態となると、図13(c)に示すように、異物を排除後に投入口12への紙幣Sの再投入を促す「異物を排除後、紙幣を再セットして下さい。」の表示を表示部92に表示させる。そして、再び入金スペース35に紙幣Sが投入されたことを載置検出センサ88が検出すると、制御部90は、操作入力部91への確認操作の入力を待ち、操作入力部91へ確認操作が入力されると、移動駆動モータ50によりビルプレス用駆動ディスク61をその検出片部62が第2近接位置検出センサ85で検出される位置まで回転させて移動駆動モータ50を停止させる。
【0090】
この移動駆動モータ50の回転で、上記と同様に、稼動アーム66は第2離間位置から第2近接位置に揺動する。この揺動により、この稼動アーム66に引張バネ79,80を介して連結された補助アーム73も略同様に揺動し、補助アーム73のU字溝74にガイドローラ31において係合しているベース部33が後方に移動し、ベース部33に設けられた押圧板28が第1離間位置から第1近接位置に向けて移動して、入金スペース35に投入された紙幣Sに当接して停止しこれを主に引張バネ79の付勢力で取込機構21の蹴出ローラ22に押し付ける。
【0091】
そして、制御部90は、稼動アーム66の第2離間位置から第2近接位置への揺動で、ビルプレス用駆動ディスク61の検出片部62が第2近接位置検出センサ85で検出されると、このタイミングに基づいて取込機構21により紙幣Sの取り込みを開始させる。
【0092】
以上に述べた本実施形態に係る紙幣処理機によれば、投入口12に紙幣Sとともに投入された硬貨Cは、紙幣受板14に形成されたスリット108〜110に進入したとしても受皿部材115の底板部116によってスリット108〜110を通過することが規制されて投入口12内に残存する。他方、硬貨以外のクリップや糸くず類等の異物は、紙幣受板14に形成されたスリット108〜110を通過することが可能であり、投入口12から排除可能となる。したがって、硬貨Cを投入口12に残しつつ硬貨以外の異物を投入口12から排除することが可能となる。しかも、投入口12に投入された紙幣Sに沿って延在するようにスリット108〜110が形成されていることから、誤投入パターンとして多い、紙幣Sの間に挟まれるようにして投入される硬貨Cを、スリット108〜110に進入させて受皿部材115の底板部116で停止させた状態とすることができる。したがって、硬貨Cは投入口12の紙幣受板14に立った状態となり、操作者による排除が容易となる。
【0093】
また、投入口12の紙幣受板14には、最も離間した状態にある取込機構21とビルプレス27との間にスリット108〜110が形成されているため、誤投入された硬貨Cは、スリット108〜110に進入し受皿部材115の底板部116で停止させられた状態になり易い。したがって、より一層、硬貨Cが投入口12の紙幣受板14に立った状態となり易く、操作者による排除がより容易となる。しかも、紙幣Sの投入後に、ビルプレス27が取込機構21側に移動すると、スリット108〜110に進入し受皿部材115の底板部116で停止させられた状態にある硬貨Cに当接して移動が規制されることになり、この状態から硬貨Cの誤投入を検知することができる。
【0094】
また、制御部90は、取込不良時に生じる紙幣Sの取込口19での滞留を取込検出センサ89が検出すると取込不良解消の指示ガイダンスを表示部92に表示させる一方、異物混入時に生じるビルプレス27の途中停止を移動状態検出部87が検出すると異物排除の指示ガイダンスを表示部92に表示させることになるため、異常発生時の早期復旧が可能となる。
【0095】
また、ビルプレス27と投入口12の紙幣受板14との対向面同士が、互いに噛み合うように凹凸形状をなすため、ビルプレス27の紙幣受板14上での摺動が円滑になるとともに、ビルプレス27と投入口12の紙幣受板14との間を異物が通過することを規制できる。したがって、ビルプレス27が移動することで、落下可能な異物をスリット108〜110に円滑に排除することができる。
【0096】
また、スリット108〜110の下側にある規制部が容器状の受皿部材115の底部からなるため、スリット108〜110を通過した硬貨以外の異物を、この受皿部材115の底部に受け入れることになる。そして、着脱可能な受皿部材115を処理機本体119から取り外すことで、受皿部材115に受け入れた硬貨以外の異物を機外に容易に排除することができる。
【符号の説明】
【0097】
12 投入口
14 紙幣受板(底部)
19 取込口
21 取込機構
27 ビルプレス
87 移動状態検出部(移動状態検出手段)
89 取込検出センサ
90 制御部(制御手段)
92 表示部(表示手段)
108 スリット
109 スリット
110 スリット
115 受皿部材(容器状部材)
116 底板部(規制部)
図1
図2
図3
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