特許第6023045号(P6023045)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6023045新規7α−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼノックアウト突然変異体およびその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6023045
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月9日
(54)【発明の名称】新規7α−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼノックアウト突然変異体およびその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/21 20060101AFI20161027BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20161027BHJP
   C12N 9/04 20060101ALI20161027BHJP
   C12P 33/02 20060101ALI20161027BHJP
   C12P 33/06 20060101ALI20161027BHJP
【FI】
   C12N1/21
   C12N15/00 AZNA
   C12N9/04 A
   C12P33/02 Z
   C12P33/06 Z
【請求項の数】16
【全頁数】64
(21)【出願番号】特願2013-511696(P2013-511696)
(86)(22)【出願日】2011年5月27日
(65)【公表番号】特表2013-528381(P2013-528381A)
(43)【公表日】2013年7月11日
(86)【国際出願番号】EP2011058711
(87)【国際公開番号】WO2011147957
(87)【国際公開日】20111201
【審査請求日】2014年4月30日
(31)【優先権主張番号】10015726.2
(32)【優先日】2010年12月16日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】10164003.5
(32)【優先日】2010年5月27日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】510255107
【氏名又は名称】ファルマツェル、ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100060368
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 迪夫
(74)【代理人】
【識別番号】100124648
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 和夫
(74)【代理人】
【識別番号】100154450
【弁理士】
【氏名又は名称】吉岡 亜紀子
(72)【発明者】
【氏名】シュミット,ロルフ
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン,ミハエル
(72)【発明者】
【氏名】リュー,ルオ
(72)【発明者】
【氏名】アイグナー,アルノ
(72)【発明者】
【氏名】ヴォイスター・ボッツ,ディルク
【審査官】 福間 信子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/118176(WO,A1)
【文献】 特表2005−520497(JP,A)
【文献】 CARREA G et al., Enzymatic synthesis of 12-ketoursodeoxycholic acid from dehydrocholic acid in a membrane reactor,Biotechnology Letters, Vol.14, No.12,p.1131-1135, 1992
【文献】 MOBUS E et al., Molecular cloning, overexpression, and characterization of steroid-inducible 3-alpha-hydroxysteroid dehydrogenase/carbonyl reductase from Comamonas testosteroni,Journal of Biological Chemistry, Vol.273, No.47,p.30888-30896, 1998
【文献】 TANABE T et al., Roles of the Ser146, Tyr159, and Lys163 residues in the catalytic action of 7alpha-hydroxysteroid dehydrogenase from Escherichia coli, Journal of Biochemistry, Vol.124, No.3, p.634-641, 1998
【文献】 WARNER TG et al., Enhancing therapeutic glycoprotein production in Chinese hamster ovary cells by metabolic engineering endogenous gene control with antisense DNA and gene targeting, Glycobiology, Vol.9, No.9, p.841-850, 1999
【文献】 RecName: Full=3-alpha-hydroxysteroid dehydrogenase, Database UniProt [online], Accession No.P23457, 2010.03.02, [Retrieved on 2015.11.27], Internet<URL: http://www.uniprot.org/uniprot/P23457.txt?version=97>
【文献】 CARREA G. et al.,Biotechnology and Bioengineering,1984年,Vol.XXVI,pp.560-563
【文献】 COLEMAN J.P. et al.,Journal of Bacteriology,1994年,Vol.176, No.16,pp.4865-4874
【文献】 Carrea G., et al.,Enzymatic synthesis of 12-ketoursodeoxycholic acid from dehydrocholic acid in a membrane reactor,Biotechnology Letters,1992年,Vol.14, No.12,pp.1131-1135
【文献】 Giovannini P.P., et al.,7alpha- and 12alpha-hydroxysteroid dehydrogenases from Acinetobacter calcoaceticus lwoffii: a new integrated chemo-enzymatic route to ursodeoxycholic acid,Steroid ,2008年,Vol.73,pp.1385-1390
【文献】 Mobus E., et al.,Molecular cloning, overexpression, and characterization of steroid-inducible 3-alpha-hydroxysteroid dehydrogenase/carbonyl reductase from Comamonas testosteroni,J. Biol. Chem.,1998年,Vol.273, No.47,pp.30888-30896
【文献】 LIU LUO,APPLIED MICROBIOLOGY AND BIOTECHNOLOGY,2011年 4月,V90 N1,P127-135
【文献】 Braun M. et al.,12alpha-Hydroxysteroid dehydrogenase from Clostridium group P, strain C 48-50,Eur. J. Biochem,1991年,Vol.196,pp.439-450
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00−90
C12P 33/00−20
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
7α−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ(7α−HSDH)は阻害されているが、機能的に異なるヒドロキシテロイドデヒドロゲナーゼ活性は発現され
7α−HSDHを内因的に発現するEscherichia Coliから誘導され
前記機能的に異なるヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ活性は3α−,3β−,7β−,11α−,11β−,12α−,12β−,17α−,17β−,20α−または20β−HSDHから選択される、組換え微生物。
【請求項2】
7α−HSDHをコードする核酸配列が相同組換えにより、または遺伝子破壊によりノックアウトされている請求項1に従った組換え微生物。
【請求項3】
7α−HSDHとは機能的に異なるHSDHを組換え発現する請求項1または請求項2のいずれかに従った組換え微生物。
【請求項4】
ノックアウト7α−HSDHは配列同定番号10に従ったアミノ酸配列を有すか、または配列同定番号9に従った核酸配列によってコードされる請求項1から請求項3までのいずれか1項に従った組換え微生物。
【請求項5】
7α−HSDHとは機能的に異なる発現されたHSDHは以下のアミノ酸配列の一つを含有する請求項1から請求項4までのいずれか1項に従った組換え微生物:
a)配列同定番号29および31から選ばれた3α−HSDH配列、
b)配列同定番号25から選ばれた7β−HSDH配列、
c)配列同定番号12,14または16から選ばれた12α−HSDH配列、または
d)配列a)、b)およびc)の一つに対して少なくとも90%の同一度を有するHSDHをコードする、それらから誘導されたアミノ酸配列。
【請求項6】
7α−HSDHの酵素活性が阻害されている請求項1から請求項5までのいずれか1項に従った組換え微生物が所望のHSDHが発現される条件下で培養され、発現されたHSDHが単離され、単離されたHSDH中に機能性7α−HSDHが実質上検出されない、7α−HSDHとは機能的に異なる所望のHSDHの組換え生産方法。
【請求項7】
ステロイド構造の位置3α−,3β−,11α−,11β−,12α−,12β−,17α−,17β−,20α−または20β−の少なくとも1位置において、ヒドロキシル基に加え、ステロイド構造の7位に少なくとも一つのさらなるヒドロキシル基を含んでいるヒドロキシステロイドの選択的酵素酸化方法であって、該ヒドロキシステロイドが請求項6に従って調製された3α−,3β−,11α−,11β−,12α−,12β−,17α−,17β−,20α−または20β−HSDHの存在下において、または請求項1から請求項5までのいずれか1項の組換え微生物の存在下において反応させられ、そして生成した少なくとも一つの酸化生産物が任意に反応バッチから単離される前記方法。
【請求項8】
ヒドロキシステロイドがコール酸(CA)または塩、アミドまたはアルキルエステルのようなコール酸誘導体である請求項に従った方法。
【請求項9】
CAまたはその誘導体は12−ケトケノデオキシコール酸(12−ケト−UDCA)を与えるように、または対応する誘導体を与えるように反応させられる請求項に従った方法。
【請求項10】
式(1)
【化26】
(式中、Rはアルキル,H,アルカリ金属イオンまたはN(Rを表し、ここでRは同一または異なってHまたはアルコールを表す。)
のウルソデオキシコール酸(UDCA)の生産方法であって、
a)式(2)のコール酸(CA)
【化27】
(式中、Rは上と同じ意味を有し、Raは同一または異なってHまたはアシルを表す。)が請求項に従って調製された12α−HSDHの存在下、または請求項1から請求項5のいずれか1項前記12α−HSDHを発現する組換え微生物の存在下式(3)の対応する12−ケトケノデオキシコール酸(12−ケト−UDCA)
【化28】
(式中、RおよびRaは上に示した意味を有する。)へ酸化され、その後
b)式(3)の12−ケト−CDCAが式(4)のケノデオキシコール酸(CDCA)
【化29】
(式中、RおよびRaは上に示した意味を有する。)を与えるように脱素化反応させられ、そして
c)式(4)のCDCAが式(5)の7−ケトリトコール酸(KLCA)
【化30】
(式中、RおよびRaは上に示した意味を有する。)へ7位において化学的に酸化され、そして
d)式(5)のKLCAが還元され、そして
e)反応生産物が任意にさらに精製される、前記方法。
【請求項11】
ステロイド構造の位置3,11,12,17または20にある少なくとも一つのケト基に加え、ステロイド構造の7位に少なくとも一つのさらなるケト基を有するケトステロイドの酵素還元方法であって、請求項に従って調製された3α−,3β−,7β−,11α−,11β−,12α−,12β−,17α−,17β−,20α−または20β−HSDHの存在下において、または請求項1から請求項5までのいずれか1項の組換え微生物の存在下において前記ケトステロイドが反応させられ、そして生成した一つの還元生産物が任意に反応バッチから単離される前記方法。
【請求項12】
所望の反応を触媒する少なくとも一つの前記HSDHが溶解した、分散したまたは固定化した形で使用され、または該方法が請求項1から請求項5のいずれか1項の組換え微生物の任意に固定化された全細胞の存在下に実施される、請求項から請求項11までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
所望の反応を触媒する少なくとも一つの前記HSDHは7β−HSDH、3α−HSDHおよび/または12α−HSDHである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
式(1)のウルソデオキシコール酸(UDCA)
【化31】
(式中、Rはアルキル,H,アルカリ金属イオンまたはN(Rを表し、ここでRは同一または異なってHまたはアルキルを表す。)の生産方法であって、
a)任意に式(2)のコール酸(CA)
【化32】
(式中、Rは前記の意味を有する。)を式(3)のデヒドロコール酸(DHCA)へ化学的に酸化し、
【化33】
(式中、Rは前記の意味を有する。)
b)DHCAが請求項6に従って調製された7β−HSDHと3α−HSDHで任意の順序で、または両方の酵素の同時存在下で対応する式(5)の12−ケトウルソデオキシコール酸(12−ケト−UDCA)
【化34】
(式中、Rは前記の意味を有する。)へ還元され、
c)式(5)の12−ケト−UDCAが化学的にUDCAへ還元され、そして
d)反応生産物が任意にさらに精製される前記方法。
【請求項15】
酵素レドックス工程は助因子再生工程と組合わされる請求項7から請求項14のいずれか1項に従った方法。
【請求項16】
前記b)は、前記7β−HSDHと前記3α−HSDHを発現する1以上の微生物の存在下で行われる、請求項14に従った方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な微生物7α−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ(7α−HSDH)ノックアウト突然変異体と、そして例えば3α−,7β−または12α−HSDHのような異なる官能性の他のHSDHの製造のためのその使用と、そしてコール酸化合物の酵素反応におけるこのように製造されたHSDH酵素の使用、そして特にウルソデオキシコール酸(UDCA)の製造における使用に関する。本発明は特にUDCAの新規合成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
活性物質であるウルソデオキシコール酸(UDCA)および関連するジアステレオマーであるケノデオキシコール酸(CDCA)は永年胆石の医学的処置に使用されている。両化合物は炭素原子7上のヒドロキシ基の配位のみが相違する(UDCA:β配位、CDCA:α配位)。先行技術において純粋に化学的に実施されるか、または化学的および酵素的プロセスステップの組合せよりなる種々のUDCAの製造方法が記載されている。各場合出発点はコール酸(CA)またはコール酸から生産されるCDCAである。
【0003】
このようにUDCA製造のための古典的な化学的方法は以下のように概略的に表すことができる。
【0004】
重大な欠点は中でも以下のとおりである。化学的酸化は選択的ではないため、カルボキシル基および3αと7α−ヒドロキシル基はエステル化によって保護しなければならない。
【0005】
酵素12α−HSDHの使用に基づく代替的化学/酵素法が例えば本出願人のPCT/EP2009/002190に記載されている。特にここでは組換え生産された12α−HSDHが使用される。この酵素は好ましくは組換えE.coliホストによって生産され、それから単離され、そして反応に使用される。
【0006】
12α−HSDHはCAを選択的に12−ケト−CDCAへ酸化する。ここでは古典的化学方法において必要な二つの化学的保護ステップは必要でない。
【0007】
この方法ではこのように生産された価値ある生産物UDCAがこれまで未知の理由でリトコール酸(LCA)で汚染されることが問題である。
【0008】
新規7β−HSDHと、還元ルートでのUDCAの生産におけるその使用が本出願人のPCT/EP2010/068576に記載されている。ここで組み換えE.coliホストがやはり内因性7α−HSDHを生産し、そして7α−HSDHが3,12−ジケト−CDCA副生物をデヒドコール酸から生産するのが問題である。この3,12−ジケト−CDCAはもはや7β−HSDHの基質ではなく、そのため所望の生産物に加え、所望できない副産物も蓄積される。
【0009】
それ故本発明の目的は、上に記載した不利益を回避するUDCAの製造のための新規な方法の提供である。特にLCAまたは、3,12−ジケト−CDCAのような不純物なしでUDCAの酵素/化学的生産を可能にすることである。
【発明の概要】
【0010】
本発明に従い、驚くべきことに例えばLCAのような望まない不純物の出現の原因は複雑な化学的副反応の望まない結果ではないことが発見された。LCAの出現は12α−HSDH自体によって触媒される副反応の結果でもない。むしろ酵素反応ステップを触媒する12α−HSDH酵素が7α−HSDH活性の結果として酵素不純物を含有する。この結果は12−ケト−CDCAの7,12−ジケト−LCAへの酸化であり、これはUDCAへ導くさらなる化学的変換の途中で化学的副反応においてLCAへ還元される。このことは以下のスキームに示される。
【0011】
特に7,12−ジケト−LCAの生成の原因は12α−HSDHの7α−HSDHの酵素による汚染であることが発見された。12α−HSDH(その短い形のような)の組換え生産において、特にE.coliホスト細胞を用いる生産において、12α−HSDH自体が事実精製後内因性7α−HSDH酵素によって汚染される。両方の酵素は非常に似た分子量を有し、そして実質上同じ配列長さのため(12α−HSDH(短い形)または7α−HSDHのための257または255アミノ酸)精製の間他の点で全く似た分離挙動を有し、そのためこのように生産された12α−HSDHは実質上常に7α−HSDHで汚染されている。
【0012】
7β−HSDHも困難なしに望まない7α−HSDHから分離できない。
【0013】
本発明に従えば、例えばもはや7α−HSDH活性を有しない12α−HSDHまたは7β−HSDHのようなHSDHの調製は12α−HSDHまたは例えば7β−HSDHのような他のHSDHの組換え生産に使用される発現ホスト中の二次活性の選択的遮断のみによって驚くほど成功した。
【0014】
このため発現ホストE.coli BL21(DE3)(ゲノタイプ:FompT gal dcm Ion hsdS(r)λ(DE3[lacl lacUV5−T7遺伝子1ind1 sam7 nin5])(Novagen)(Journal of Molecular Biology(1985)189,113−130)が組換えタンパクの生産のために大部分使用される。しかしながら、E.coli BL21(DE3)はNADH−依存性7α−HSDHを含有し、これは本発明によって今や発見されたように、例えばUDCAの生産において望まない副産物であるリトコール酸の生成を生じる。
【0015】
UDCAの製造においてE.coli BL21(DE3)からの7α−HSDHの結果としての副反応の回避のため、内因性7α−HSDHをコードする遺伝子は、例えば最初相同組換えによってE.coli BL21(DE3)から本発明に従って成功してノックアウトされた。得られた株E.coli BL21(DE3)Δ7α−HSDHは、UDCAの製造においてもはや前記の望まない副反応を生じさせない12α−HSDHの組換え生産を許容する。
【0016】
本発明に従えば、以下の概略図に示すように、7α−HSDHによって触媒される副反応なしにはじめてUDCAの合成が可能になる。このため12α−HSDHはCAを12−ケト−CDCAへ選択的に酸化する。
【0017】
上の目的の提案した解決法は、内因性7α−HSDHはNADH依存性酵素であるが,組換え発現された12α−HSDHはNADPH依存性であることが発見されたから、すべてもっと驚くべきである。しかしながらこの7α−HSDHも、本発明に従って発見されたように、NADPHの存在においてNADHの不存在にもかかわらず僅かの活性を示す。この僅かの活性は、たとえ酵素合成ステップが全細胞でなく単離された酵素で実施されたとしても、価値ある生産物UDCAを望まない態様においてLCAで終局的に汚染するのに十分である。全細胞を使用する時、細胞からの細胞NADHの存在のため、7α−HSDHが完全に活性であり、それにより副生成物生成がさらに劇的に増加されるであろう。
【0018】
このため本発明により、上の酵素/化学的合成ルートに従ったLCA不含UDCAの製造が、12α−HSDH活性を発現するがしかし妨害する7α−HSDH活性なしの組換えた全細胞を用いて可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、コロニーPCRの結果を示す。特に、組換えによって集積したアパレマイシン抵抗性遺伝子に相当する1500塩基対を含んでいるバンドを見ることができる。抵抗性はゲノム中に集積され、そして7α−HSDHの遺伝子はノックアウトされた。痕跡1にDNAマーカーを示す。痕跡2は1500塩基対を含んでいるPCR生成物を示す。
図2図2は、種々のE.coliとのコール酸(CA)のインキュベーションの結果を示す。A:E.coli BL21(DE3)とコール酸;B:ノックアウト突然変異体E.coli BL21(DE3)Δ7α−HSDHとコール酸;C:対照としてのコール酸。図A中の矢印は酸化生成物(7−ケト−3,12−ジヒドロキシコラン酸)を示す;E.coli BL21(DE3)による変換における保持時間(RT)=7.5分。不純物のため7−ケト−3,12−ジヒドロキシコラン酸の領域の小さいピークがノックアウト株E.coli BL21(DE3)にも見られたが、しかし観察されたピークは陰性対照(C)におけるよりも大きくない。
図3図3は、ノックアウト技術により、7α−HSDH遺伝子を遮断するための戦略を概略的に図示する。H1およびH2は相同配列を指し、P1およびP2はプライマーを指す。遺伝子AおよびCは7α−HSDH遺伝子の両脇配列セクションを指す。H1およびH2は両方とも両脇領域からの配列セクションであることができ(図3に示すように)、または7α−HSDH遺伝子からの例えば5’−および3’−末端セクションを表すことができる(出所:K.Datsenko and B.Wanner, PNAS June 6, 2000 vol.97 No.12, 6640−6645)。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は特に以下の具体例に関する。
1. 7α−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ(7α−HSDH)の酵素活性は阻害されているが、機能的に異なるヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ(例えば3α−,3β−,7β−,11α−,11β−,12α−,12β−,17α−,17β−,20α−,または20β−HSDH,特に3α−,7β−,または12α−HSDHのような)の酵素活性は発現可能に含まれている組換え微生物。
【0021】
ここでは阻害された7α−HSDHは例えばNADHまたはNADPH(またはNADまたはNADP)のような任意の所望助因子依存性を示す。
【0022】
任意に、そのように修飾された微生物は、所望のHSDH活性を発現するばかりでなく、例えば助因子再生を助ける酵素(後でもっと詳しく説明するような)のような、HSDHと組合せて任意に作用することができる他のタンパクまたは酵素を発現するように付加的に修飾されることができる。これらの例はアルコールデヒドロゲナーゼ(ADH)およびホルメートデヒドロゲナーゼ(FDH)である。
【0023】
特に本発明は、特に7α−HSDH(例えばNADH−依存性)の内因性酵素活性は阻害されているが、12α−HSDH(例えばNADPH依存性)の酵素活性は発現可能に含まれているタイプの微生物のような、7α−HSDHの酵素活性は阻害されているが、外因性12α−HSDHの酵素活性は発現可能に含まれている組換え微生物に関する。基本的には7α−HSDHと12α−HSDHとは同じまたは異なる助因子依存性を発揮することができ、すなわち7α−HSDHおよび12α−HSDHの両方がNADHまたはNADPH(またはNADまたはNADP)依存であることができる。しかしながら7α−HSDHおよび12α−HSDHは種々の助因子に依存性であることができる。このため7α−HSDHは例えばNADH(またはNAD)に依存性であることができ、そして12α−HSDHはNADPH(またはNADP)に依存性であること、またはその逆であることができる。特に種々の助因子に依存性の場合、各ケースにおいて他の助因子の存在下分析的に検出可能な酵素活性も観察できる。このため例えば7α−HSDHがNADH(またはNAD)に依存性であることができるが、しかしNADPH(またはNADP)の存在下分析的に検出できる酵素活性を示すこともできる。
【0024】
もし12α−HSDHの代りに3α−,3β−,11α−,11β−,12β−,17α−,17β−,20α−,および20β−HSDHのような1種以上の他のHSDHを発現させ、そして任意に例えば3α−および/または7β−HSDHのように単離することを意図するならば、上記が対応してあてはまる。
【0025】
2. 7α−HSDHをコードする核酸配列が特に相同組換えにより、または遺伝子破壊(特にコードされる遺伝子産物の酵素機能を阻害する核酸配列の挿入によって)によってノックアウトされた具体例1に従った組換え微生物。
【0026】
3. 7α−HSDHを発現する前駆体微生物、特にEscherichia属の細菌、特にE.coliのような、7α−HSDHを内因的に発現する前駆体微生物から誘導された前出具体例の一つに従った組換え微生物。
【0027】
4. E.coli BL21から誘導された具体例3に従った組換え微生物。
【0028】
5. 特に3α−,7β−および/または12α−HSDHのような、7α−HSDHとは機能的に異なるHSDHを組換え発現する前出具体例の一つに従った組換え微生物。
【0029】
6. 阻害された(ノックアウトされた)7α−HSDHが配列同定番号10に従ったアミノ酸配列を有するか、または配列同定番号9に従った核酸配列によってコードされる、前出具体例の一つに従った組換え微生物。
【0030】
7. 7α−HSDHとは機能的に異なる発現されたHSDHが以下のアミノ酸配列の一つを含んでいる前出具体例の一つに従った組換え微生物:
a)配列同定番号29および31から選択された3α−HSDH配列、
b)配列同定番号25から選ばれた7β−HSDH配列、
c)配列同定番号12,14または16から選ばれた、または
d)少なくとも50%または少なくとも60%または少なくとも75%の、特に例えば90,91,92,93,94,95,96,97,98または99%のような少なくとも85%のa),b)またはc)の配列の一つとの同一度を有する、a),b)またはc)から誘導されたHSDHをコードするアミノ酸配列を含んでいる12α−HSDH配列。
【0031】
8. 例えば3α−,3β−,7β−,11α−,11β−,12α−,12β−,17α−,17β−,20α−または20β−HSDH、特に3α−,7β−または12α−HSDHのような、7α−HSDHとは機能的に異なる所望のHSDHの組換え生産方法であって、7α−HSDHの酵素活性が阻害されている前出具体例の一つに従った組換え微生物が所望のHSDHの発現される条件下で培養され、そしてこのように発現されたHSDHが単離され、単離されたHSDH中に7α−HSDHが実質上検出されない方法。
【0032】
特に、本発明は前出具体例の一つに従った組換え微生物が12α−HSDHを発現する条件下で培養され、そして発現された12α−HSDHが単離され、単離された酵素が7α−HSDHによって汚染されていない、特にNADPH依存性の12α−HSDHの生産に関する。
【0033】
しかしながら本発明は特に、前出具体例の一つに従った組換え微生物が12α−HSDHを発現する条件下で培養され、そして発現された酵素が単離され、単離された酵素が7α−HSDHによって汚染されていない、NADH、特にNADPH依存性の7β−HSDHの生産に関する。
【0034】
9. 具体例1ないし7の一つに従った組換え微生物から得ることができる、7α−HSDH酵素または酵素活性によって汚染されていない、特にNADPH依存性7α−HSDHまたはNADPH依存性二次活性を有するNADH依存性7α−HSDHによって汚染されていない、3α−,3β−,7β−,11α−,11β−,12α−,12β−,17α−,17β−,20α−または20β−HSDH、特に3α−,7β−または12α−HSDH、特にNADPH依存性7β−HSDHまたは12α−HSDHのような組換えHSDH。
【0035】
10. 具体例6に従った配列番号から選ばれ、そしてこれら配列に対して少なくとも50%、または少なくとも60%、または少なくとも75%、特に90,91,92,93,94,95,96,97,98または99%のような少なくとも85%の同一度でそれらから誘導されたアミノ酸配列を含む具体例9に従った、例えば3α,3β−,7β−,11α−,11β−,12α−,12β−,17α−,17β−,20α−または20β−HSDH、特に3α−,7β−または12α−HSDHのような組換えHSDH。
【0036】
11. ステロイド構造の3α−,3β−,11α−,11β−,12α−,12β−,17α−,17β−,20α−または20β−位の少なくとも一つの、特にステロイド構造の12α−位のヒドロキシル基に加え、ステロイド構造の7α−位の少なくとも一つのさらなるヒドロキシル基を含んでいるヒドロキシステロイドの選択的酵素酸化方法であって、ヒドロキシステロイドが3α−,3β−,11α−,11β−,12α−,12β−,17α−,17β−,20α−または20β−HSDH、特に具体例9または10に従った12α−HSDHの存在下に、または具体例1ないし7の一つに従った組換え微生物の存在下に反応させられ、そして生成した少なくとも一つの酸化生成物が任意に反応バッチから単離される方法。
【0037】
12. ヒドロキシステロイドがコール酸(CA)または特に塩、アミドまたはアルキルエステルのようなコール酸誘導体である具体例11に従った方法。
【0038】
13. CAまたはその誘導体が12−ケトケノデオキシコール酸(12−ケト−CDCA)を与えるように、または対応する誘導体を与えるように反応させられる具体例12に従った方法。
【0039】
14. 反応がNAD(P)の存在下に行われる具体例11ないし13の一つに従った方法。
【0040】
15. 消費されたNAD(P)が電気化学的にまたは酵素で再生される具体例14に従った方法。
【0041】
16. 式(1)のウルソデオキシコール酸(UDCA)の製造方法であって、
【化1】
(式中、Rはアルキル、NR,H,アルカリ金属イオンまたはN(Rを表し、ここでRは同一または異なったHまたはアルキルを表す。)
ここで、
a)式(2)のコール酸(CA)
【化2】
(式中、Rは上記の意味を有し、基Raは同一または異なってHまたはアシルを表す。)が具体例9または10に従った12α−HSDHの存在下、あるいは具体例1ないし7の一つに従った組換え微生物の存在下、式(3)の対応する12−ケトケノデオキシコール酸(12−ケト−CDCA)へ酸化され、
【化3】
(式中、RおよびRaは上記の意味を有する。)
その後、
b)式(3)の12−ケト−CDCAが式(4)のケノデオキシコール酸(CDCA)を与えるように脱酵素化反応に供せられ、
【化4】
(式中、RおよびRaは上記の意味を有する。)
そして、
c)式(4)のCDCAが7位において式(5)の7−ケトリトコール酸(KLCA)へ酸化され、
【化5】
(式中、RおよびRaは上記の意味を有する。)
そして、
d)式(5)のKLCAが還元され、そして
e)任意に反応生成物がさらに精製されることを含む方法。
【0042】
17. もしRaがアシルを表すならば、反応スッテプb)またはc)の実施後任意にこのアシル基が除去される具体例16に従った方法。
【0043】
18. ステップa)がNAD(P)の存在下で行われる具体例16または17に従った方法。
【0044】
19. 消費されたNAD(P)が電気化学的にまたは酵素により再生される具体例18に従った方法。
【0045】
20. ステロイド構造の3,11,12または20位に、特にステロイド構造の12位および/または3位の少なくとも一つのケト基に加え、ステロイド構造の7位にさらなるケト基を持っているケトステロイドの選択的酵素還元方法であって、該ケトステロイドが具体例9または10に従った3α−,3β−,7β−,11α−,11β−,12α−,12β−,20α−または20β−HSDHの存在下、特に7β−HSDHおよび/または3α−HSDHの存在下、あるいは具体例1ないし7の一つに従った組換え微生物の存在下反応させられ、そして生成した少なくとも一つの還元生成物が任意に反応バッチから単離される方法。
【0046】
21. 式(1)のウルソデオキシコール酸(UDCA)の製造方法であって、
【化6】
(式中、Rはアルキル、NR,H,アルカリ金属イオンまたはN(Rを表し、ここで基Rは同一または異なってHまたはアルキルを表す。)
ここで、
a)任意に式(2)のコール酸(CA)
【化7】
(式中、Rは上記の意味を有する。)が式(3)のデヒドロコール酸(DHCA)へ化学的に酸化され、
【化8】
(式中、Rは上記の意味を有する。)
b)DHCAが、具体例9または10の一つに従った7β−HSDHと3α−HSDHにより、両酵素の任意の所望順番また同時存在下、式(5)の対応する2−ケトウルソデオキシコール酸(12−ケト−UDCA)へ還元され、
【化9】
(式中、Rは上記の意味を有する。)
そして次に、
d)式(5)の12−ケト−UDCAが化学的にUDCAへ還元され、そして
e)反応生成物が任意にさらに精製される、方法。
【0047】
22. 酵素レドックスステップが助因子再生ステップ(特定の酵素的な)と組み合わされる具体例11ないし21に従った方法。
【0048】
23. HSDHが溶解、分散または固定化した形で使用されるか、または方法が具体例1ないし7の一つに従った組換え微生物の任意に固定化された全細胞の存在下に実施される、具体例11ないし22の一つに従った方法。
[本発明のさらなる具体例]
【0049】
1.一般的定義および使用した略号
ステロイド構造の置換基に関しここで使用される位置番号は以下の命名法に一致して与えられる。
【化10】
下表に、表の形で構造式、その化学名および使用した略号を要約する。
【0050】
【表1】
【0051】
本発明の文脈において、ある遺伝子(例えば7α−HSDH遺伝子のような)のための微生物の「ノックアウト」突然変異体(またはノックアウト株)は、関係する遺伝子がDNAレベルで「不活性化」されている微生物の突然変異体を意味するものと理解すべきである。
【0052】
そのような不活性化は最も広い意味に解すべきであり、そして例えばタンパクが翻訳されないように適切な構造遺伝子の核酸配列の完全欠失か、またはもとの構造遺伝子によってコードされるタンパクに比較してその機能が制限された、特に完全に抑制された不完全タンパクがコードされ、翻訳されるように部分的欠失に基づくことができる。さらに構造遺伝子は、読取りフレーム中に一以上の早熟ストップコドンが出現し、そしてタンパクの有意な部分が翻訳されない程度に構造遺伝子の核酸配列が変性する、当業者に知られた“ナンセンス変異”によってノックアウトされることができる。
【0053】
代って、“ミスセンス変異”を導入することができる。この場合は機能のために必須の個々のまたは多数のアミノ酸(例えば基質結合に責任あるアミノ酸、触媒中心またはアロステリック領域、または他のタンパクまたは分子と結合また相互作用に責任があるアミノ酸)が除去されるか、または関心ある機能の部分的または完全損失へ導くアミノ酸によって置換される。さらに読取りフレームのシフトへ導き(フレームシフト)そしてそのため制限された機能を有するタンパクの発現へ導き、そして特にN−末端近くのフレームシフトの発生において、完全な機能損失へ導く一以上のヌクレオチドの挿入を実行することができる。また、ノックアウトすべきタンパクの構造遺伝子中へ個々のタンパク(マーカータンパク)(例えば抗生物質抵抗性へ導くタンパク)をコードする核酸配列の挿入を使用することができ、そして成功したノックアウトの遺伝表現型検出として挿入した核酸配列の発現を使用することができる。
【0054】
ノックアウト突然変異体は、関心ある構造遺伝子の発現に必要な調節領域、例えば構造遺伝子のプロモーターまたはエンハンサーに核酸の完全または部分的欠失または挿入のための前述した対策によってもつくることができる。しかしながらノックアウトは特に、ノックアウトすべき構造遺伝子の核酸配列中のマーカータンパクのための転写可能な核酸配列の挿入によって構造遺伝子の部分的または完全欠失により、または両方の方法の組合せによって生起する。もし関心ある遺伝子の機能を果たすことができる関心ある遺伝子またはその相同体のコピーの数が微生物または細胞に存在すれば、例えば細菌染色体上の、細菌染色体上および同時に原核生物細胞内のプラスミドのような染色体外エレメント上の、または原核生物染色体の異なるポイントに、または種々の原核生物染色体上と任意に付加的に原核生物細胞中の染色体外DNA上に多数の遺伝子が存在すれば、関心ある遺伝子のコピーまたは相同体の多数、好ましくは全部をノックアウトすることができる。
【0055】
“内因性”とは、例えば野生タイプゲノム(ここで定義した)中に既に含まれている遺伝子のような、遺伝子情報を意味するものと理解すべきである。
【0056】
“外因性”とは、例えば野生タイプゲノム中に含まれていない遺伝子のような、遺伝子情報を意味するものと理解すべきである。もし、外因性遺伝子情報、例えば本発明に従った12α−HSDH含有発現ユニットが野生タイプ株のゲノム中に導入され、それによって遺伝子的に変性された株が生産されたならば、この遺伝子情報ははじめて生産された遺伝子株をその子孫と比較すれば内因性であるが、しかしこの遺伝子情報を含んでいない元の野生タイプ株との比較において外因性である。
【0057】
術語“野生タイプ”は、本発明に従い、対応する出発微生物を意味するものと理解すべきであり、必ずしも自然に存在する微生物に対応する必要はない。
【0058】
関係に応じて、術語“微生物”は出発微生物(野生タイプ)または本発明に従って遺伝子的に変性された微生物を意味するものと理解すべきである。
【0059】
もし対応するタンパク生産物に永久にまたは限られた期間(例えばインキュベーション後)翻訳されるならば、コードする配列は、“発現可能”に微生物に含まれている。
【0060】
本発明の意味において、“阻害”は生物学的機能の完全なまたは部分的な阻害を含む。特に、例えば酵素活性のような生物学的機能をある理由で望まなければ、例えば7α−HSDHの酵素活性が分析的に検出できなければ、本発明によって阻害が存在する。
【0061】
他に詳細が与えられていなければ、術語“7α−HSDH”は、NAD(P),特にNADの化学量論的消費を伴う、少なくとも12−ケト−CDCAの、7,12−ジケト−LCAへの立体特異性および/またはレジオ特異性酸化を触媒するデヒドロゲナーゼ酵素を指す。そのような酵素はEC番号1.1.1.159として分類されている。7α−HSDHは特に、例えばClostridium absonum, Clostridium sordellii(Journal of Bacteriology,1994,4865−4874)のようなClostridia属、Escherichia coli (Journal of Bacteriology 1991,2173−2179), Bacteroides fragilis(Current Micrology 2003,47,475−484)そしてBrucella Eubacteriumのような腸内叢の微生物中に発見される。このため本発明は基本的にこれら微生物のすべてに適用できる。
【0062】
もし他に詳細が与えられていなければ、術語“12α−HSDH”は、NADまたはNADPの化学量論的消費を伴う、少なくともコール酸(CA)の12−ケトケノデオキシコール酸(12−ケト−CDCA)への立体特異性および/またはレジオ特異性酸化を触媒するデヒドロゲナーゼ酵素を指す。そのような酵素はEC番号1.1.1.176として分類されている。NADP−依存性(Harris and Hylemon(1978)Biochim Biophys Acta 528(1):148−57)およびNAD−依存性(Macdonald et al.(1976)Biochim Biophys Acta 450(2):142−53)タイプ両方が存在する。他のHSDH不存在で高い2α−HSDH活性を発現する唯一の既知微生物は、Clostriduim sp.グループP株48−50 DSM 4029である。特に好適な12α−HSDHおよびこれらの変異体は本出願人のPCT/EP2009/002190に記載されており、さらに参照される。
【0063】
もし他に詳細が与えられていなければ、術語“7β−HSDH”は、NADPHの化学量論的消費を伴う、少なくともDHCAの3,12−ジケト−7β−CAへの立体特異性および/またはレジオ特異性還元、またはその逆反応を触媒するデヒドロゲナーゼ酵素を指す。この酵素は天然または組換え生産された酵素であることができる。基本的にこの酵素は例えば細胞タンパク不純物との混合物中に存在するが、しかし好ましくは純粋形である。好適な検出方法は、例えば次の文献に記載されている。(例えば、Characterization of NADP−Dependent 7β−hydroxysteroid Dehydrogenases from Peptostreptococcus productus and Eubacterium aerofaciens. S. Hirano and N. Masuda. Appl Environ Microbiol. 1982)。しかしながらここでは7−ケト基の還元を可能にするEubacterium aerofaciensからの7β−HSDHは検出できなかった。この活性の酵素はEC番号1.1.1.201に分類されている。
【0064】
もし他に詳細が与えられていなければ、術語“3α−HSDH”は、特にNADHおよびNHDPHの化学量論的消費および任意に対応する逆反応を伴う、少なくとも13,2−ジケト−7β−CAの12−ケト−UDCAへの立体特異性および/またはレジオ特異性還元を触媒するデヒドロゲナーゼ酵素を指す。好適な検出方法は、例えば以下の実験の部に記載されているか、または文献から既知である。好適な酵素は、例えばComanomonas testosteroni(例えばATCC11996)から得ることができる。NADPH依存性3α−HSDHは、例えばネズミから得られ、同様に使用できることが知られている。(Cloning and sequencing of the cDNA for rat liver 3 alpha−hydroxysteroid/dihydrodiol dehydrogenase, J E Pawlowski, M Huizinga and T M Penning, May 15, 1991, The Journal of Biological Chemistry, 266,8820−8825)。この活性の酵素はEC番号1.1.1.50に分類されている。
【0065】
本発明に従えば、“純粋形”または“純粋”または“本質的に純粋”な酵素とは、例えばビウレット法またはLowreyらの方法に従ったタンパク検出方法(R.K.Scopes,Protein Purification,Spring Verlag,New York,Heiderberg,Berlin(1982)を見よ)のような通常のタンパク検出方法によって決定し、全タンパク質の80%以上、好ましくは90%以上、特に95%以上、そして99%以上の純度を有する酵素を意味するものと理解すべきである。
【0066】
“レドックス均等物”とは、例えばNADおよびNADHのようなニコチンアミド誘導体、またはその還元形であるNADHおよびNADPHのような電子供与体または電子受容体として使用し得る小分子有機化合物を意味するものと理解すべきである。
【0067】
本発明に従えば、“コール酸化合物”とは、コール酸の基本炭素骨格、特にステロイド構造を有し、環位置7および任意に環位置3および/または12にケトおよび/またはヒドロキシもしくはアシルオキシ基が存在する化合物を意味するものと理解すべきである。
【0068】
例えば“コール酸化合物”または“ウルソデオキシコール酸”のような特定タイプの化合物は、出発化合物(例えばコール酸またはウルソデオキシコール酸のような)の誘導体をも意味するものと理解すべきである。
【0069】
そのような誘導体は、例えば化合物のリチウム、ナトリウムおよびカリウム塩のようなアルカリ金属塩、およびアンモニウム塩のような“塩”を含む。ここでアンモニウム塩はNH塩、および少なくとも1個の水素原子をC−Cアルキル基で置換したアンモニウム塩を含む。典型的なアルキル基は、メチル、エチル、n−またはi−プロピル、n−,sec−またはtert−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシルおよび1回または複数回分岐したそれらの類縁体である。
【0070】
本発明に従った“アルキルエステル”化合物は、例えばC−Cアルキルエステルのような低級アルキルエステルである。非限定的な例として、メチル、エチル、n−またはi−プロピル、n−,sec−またはtert−ブチルエステル、または例えばn−ペンチルおよびn−ヘキシルエステルおよびその1回または多数回分岐類縁体を挙げることができる。
【0071】
“アミド”は、アンモニアまたは1級もしくは2級アミンによる、本発明に従った酸の変換生成物である。そのようなアミンは、例えばモノ−またはジ−C−Cアルキルアミンであり、アルキル基は相互に独立し例えばカルボキシ、ヒドロキシ、ハロゲン(F,Cl,BrまたはIのような)、ニトロおよびスルホネート基で任意にさらに置換されることができる。
【0072】
本発明に従った“アシル基”は、例えばアセチル、プロピオニルおよびブチリルのような炭素原子2ないし4個を有する非芳香基、および任意に置換された単環芳香環を有する芳香族基であり、ここで好適な置換基は、例えば、ヒドロキシ、ハロゲン(F,Cl,BrまたはIのような)、ニトロ、例えばC−Cアルキル基であり、例えばベンゾイルまたはトルオイル基である。
【0073】
例えばコール酸、ウルソデオキシコール酸、12−ケト−ケノデオキシコール酸、ケノデオキシコール酸および7−ケト−リトコール酸のような本発明に従って使用され、または生産されるヒドロキシステロイド化合物は、立体異性的に純粋な形か、または他のまたはそれから得ることができる他の立体異性体との混合物の形で本発明方法に使用することができる。しかしながら好ましくは、使用または製造される化合物は、本質的に立体異性的に純粋な形で使用または単離される。
【0074】
本発明に従えば、“固定化”とは、例えば7β−HSDHのような本発明に従った生触媒を固体、例えば周囲の液体媒体に本質的に不溶な支持体へ共有または非共役的に結合することを意味するものと理解される。
【0075】
2.タンパク、特に本発明に従って製造することができる組換え酵素
【0076】
2.1 12α−HSHD類
そのような12α−HSHDは本出願人のWO2009/118176に記載されている。
【0077】
本発明に従えば、発現された12α−HSDHは特にClostridium sp.から得ることができ、そして還元条件下においてSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS PAGE)によって決定し、約27ないし30kDのような約26kDより大きい、特に26.5kDより大きい分子量を持っている。それらは特に12α−HSDH長鎖バージョンについて約29kDより大きい、特に29.359kDのような約29.1ないし29.5kDの、または12α−HSDH短鎖バージョンについて27.8の計算分子量を有する。ここでは分子量の詳細はそれに限られないが酵素のサブユニットに関し、天然タンパクは例えば大体同じサイズのサブユニット4から構成される。
【0078】
特にそのようなタンパクはClostridium sp.グループP株48−50(DSM4029)から得られる。この酵素は、例えば20ないし100U/mgまたは25ないし85U/mgのような約10,15,20または25U/mgより大きい範囲の比活性において調製される。比活性の決定は実験の部に示した標準条件下に実施される。
【0079】
本発明に従えば、特に以下のアミノ酸配列モチーフを含む12α−HSDHが使用される。
a)LINN
b)RMGIFD
c)(1)MDFIDFKEMGRMGIFDGKVAIITGGGKAKSIGYGIAVAYAK
(2)MDGFIDFKEMGRMGI
(3)ITGGGKAKSIGYGIA
(4)IFDGK
(5)GIFDGK
から選ばれたN−末端配列
d)FGDPELDI,または例えばGDPELDI,FGDPELD,DPELDI, FGDPEL,GDPEL,DPELD,GDPELD
【0080】
さらに本発明に従って使用される12α−HSDHは、Xが任意のアミノ酸残基を表すTGXGXGタイプのN末端(すなわち約1ないし30アミノ酸残基のN−末端の領域を含んでいないことを特徴としている。
【0081】
特に以下の12α−HSDHが使用される。
a)各場合位置+1また+2から始まって配列同定番号12,14または16に従ったアミノ酸配列の一つを含むもの;または
b)少なくとも60%の配列同一度パーセントを有する、a)に従った配列から誘導されたアミノ酸配列を含むもの;または
c)アミノ酸配列a)およびb)に従ったタンパクコードする核酸配列によってコードされたもの;または
d)配列同定番号11,13または15に従ったコードする核酸配列により、または発現のため使用される微生物のそれぞれのコドン使用に適応させたそれから誘導された配列によりコードされたもの;または
e)少なくとも60%の配列同一度パーセントを有する、配列同定番号11,13または15に従った核配配列の一つから誘導されたコードする配列によってコードされたもの。
【0082】
コドン使用に対する核酸配列の適応化は例えばhttp://slam.bs.jhmi.edu/cgi−bin/gdRevTrans.cgi.においてアクセス可能な慣用方法に従って実施することができる。
【0083】
修飾した共基質使用および/または減少した生成物阻害を有する12α−HSDH突然変異体も使用することができ、そして特に配列モチーフVLTGRNE中の共基質使用を修飾する少なくとも一つの突然変更を持つ、上の定義に従った12α−ヒドロキシステロイドデヒドゲナーゼから誘導された突然変異体を使用することができる。そのような突然変異体の非限定例は、このモチーフ中少なくとも一つの以下のアミノ酸置換:G→D;R→Aを有するもの、および例えば少なくとも配列同定番号16の位置98または100に対応するアミノ酸Qの突然変異を含む、特に配列同定番号16中のQ98Hに対応する突然変異を含むような、酵素の基質結合ポケットを形成するアミノ酸残基の領域における生成物阻害を減少させる少なくとも突然変異を持つ突然変異体を含む。
【0084】
位置98(配列同定番号16に基づいて)におけるさらなる可能なアミノ酸置換は、A,N,D,C,E,G,H,M,S,T,Vを含む。本発明に従った12α−HSDHの相同性モデルに基づいて、置換は生成物のカルボキシル結合の弱化へ導くものと推測される。それ故、隣接位置S100(配列同定番号16に基づいて)も以下のアミノ酸A,N,D,C,Q,E,G,H,M,T,V,Kへ突然変異された。
【0085】
本発明に従った12α−HSDHのグループは、このように、
Q→A,N,D,C,E,G,H,M,S,T,V;
S→A,N,D,C,Q,E,G,H,M,T,V,K;
から選ばれた位置98または100(配列同定番号16に基づいて)における一または二の突然変異を含む。
【0086】
2.2 7β−HSDH類
7β−HSDH類は本出願人のPCT/EP2010/068576に記載されている。嫌気性細菌、特にCollinsella aerofaciens DSM 3979(ATCC25986)のようなCollinsella属から得ることができる7β−HSDHは配列番号25に従ったアミノ酸配列およびそれから誘導される機能的均等物を含む。
【0087】
Collinsella aerofaciens DSM3979から得られる7β−HSDHは以下の性質の少なくとも一つ、例えばそのような性質の2,3,4,5,6,7またはすべてによって特徴付けられる。
a)分子量(SDSゲル電気泳動):約28−32kDa,特に29−31kDa,特に約30kDa;
b)分子量(特にSDS不存在下のような非変性条件下でのゲル濾過);約53ないし60kDa、特に55ないし57kDa、例えば56.1kDa;これにより本発明に従った7β−HSDHは、45kDaのHirano et al.(上を見よ)によって記載されたC.aerofaciens ATCC25986からの7β−HSDH酵素と明らかに異なる。これはCollinsella aerofaciens DSM3979からの7β−HSDHのダイマー性格(四次元構造)を確認する。
c)7−ケト−LCAのカルボニル基の7β−ヒドロキシル基への立体特異性還元;
d)pH8.5ないし10.5、特に9ないし10の範囲のUDCA酸化のための至適pH;
e)pH3.5ないし6.5、特にpH4ないし6の範囲のDHCAおよび7−ケト−LCAの還元のための至適pH;これにより驚くべきことにpHの選択による酸化(特徴(d))および還元操作へ影響させる可能性が与えられる。
f)各場合以下の表に述べた値の±20%、特に±10%、±5%、±3%、±2%または1%範囲内のここで述べた基質/助因子の少なくとも一つに対する下表からの動力学パラメータの少なくとも一つ;
【0088】
【表2】
a)非常に低い活性のため決定できず。
b)1U=1μmol/分
c)これにより本発明に従った酵素は、明らかに低いKmおよびVmax値(0.4および0.2)が記載され、そしてNADHに対しては活性が、測定できなかったHirano et al.(上を見よ)によって記載されたC.aerofaciens ATCC25986からの7β−HSDH酵素とは明らかに異なる。
【0089】
g)Cavia porcellus, Homo sapiensおよびMus musulus を含む、動物11β−HSDHサブグループに関連するC.aerofaciens DSM3979からの生核生物7β−HSDHの分子進化配列;
【0090】
例えば、本発明に従った7β−HSDHは以下の性質または性質の組合せを示す。a);b);a)およびb);a)および/またはb)およびc);a)および/またはb)およびc)およびd);a)および/またはb)およびc)およびd)およびe);a)および/またはb)およびc)およびd)およびe)およびf)。
【0091】
そのような7β−HSDHは7−ケトステロイドの対応する7β−ヒドロキシステロイドへの立体特異性還元(水素化)および/またはステロイド構造上に7位と少なくともさらなるケト基を含んでいるケトステロイドの対応する7β−ヒドロキシステロイドへのレジオ特異性水素化(還元)、例えばデヒドロコール酸(DHCA)の7位の対応する3,12−7β−コラン酸の対応する3,12−ジケト−7β−コラン酸塩への還元を触媒し、そして例えばNADPH依存性である。
【0092】
好適な7β−HSDHは配列同定番号25(アクセッション番号ZP_01773061)に従ったアミノ酸配列、またはこの配列に対し、例えば少なくとも65,70,75,80,85または90のような、例えば少なくとも91,92,93,94,95,96,97,98,99および99.5%の同一度を持ち、任意に付加的に上の定義に従った以下の性質または組み合わせによって特徴化される配列から誘導される配列を持つ。
【0093】
2.3 他のタンパク
本発明は、例えば3α−,3β−,7β−,11α−,11β−,12α−,12β−,17α−,17β−,20α−,または20β−HSDH、特に3α−,7β−,または12α−HSDH活性を有する実際に記載したタンパクまたは酵素に限定されず、反対にそれらの機能的均等物にも及ぶ。
【0094】
本発明の文脈において実際に記載された酵素の“機能的均等物”またはアナログは、実際に記載された酵素とは異なるが、例えば7β−または12α−HSDH活性のような所望の生物学的活性を有するポリペプチドである。
【0095】
このため例えば“機能的均等物”とは7β−または12α−HSDHのようなHSDH活性のために使用されるテストにおいて少なくとも1%、例えば少なくとも10%または20%、例えば少なくとも50%または70%または90%高いまたは低い酵素活性を有し、ここで規定したアミノ配列を含む酵素を意味するものと理解すべきである。機能的均等物はさらに、好ましくはpH4ないし11の間において安定であり、そしてpH6ないし10、特に8.5ないし9.5の範囲に至適pHを有し、そして15℃ないし80℃または20℃ないし70℃、例えば約45ないし60℃または約50ないし55℃の範囲に至適温度を有する。
【0096】
7β−または12α−HSDH活性のようなHSDH活性は、種々の既知テストにより検出することができる。限定しないが、例えば実験の部に規定したような標準化条件下、例えばコール酸のような参照基質を使用するテストを挙げることができる。
【0097】
本発明に従い、“機能的均等物”とは、前述したアミノ酸配列の少なくとも1配列位置において実際に挙げた以外の異なるアミノ酸を有し、しかしながら前述の生物学的活性の一つを有する“突然変異体”をも含む。このため“突然変異体”は一以上のアミノ酸の付加、置換、欠失および/または逆位によって得ることができる突然変異体を含み、ここで挙げた変化はそれらが本発明に従った性質プロフィルを有する突然変異体へ導く限り、どの配列位置でも起こることができる。特にもし突然変異体と未変化ポリペプチドの間の反応パターンが定性的に一致するならば、すなわち例えば同じ基質が異なる速度で変換されるならば、その時機能的均等物が達成される。好適なアミノ酸置換の例は以下の表に要約されている。
【0098】
【表3】
【0099】
上の意味で"機能的均等物"は記載したポリペプチドおよび機能的均等物の"前駆体"および該ポリペプチドの"塩"でもある。
【0100】
ここで"前駆体"は、所望の生物学的活性有り無しのポリペプチドの天然または合成前駆体である。
【0101】
表現"塩"は、本発明に従ったタンパク分子のカルボキシル基の塩およびアミノ基の酸付加塩の両方を意味する。カルボキシル基の塩は公知の態様で調製することができ、そして例えば、ナトリウム、カルシウム、アンモニウム、鉄および亜鉛塩のような無機塩、および例えばトリエタノールアミン、アルギニン、リジン、ピペリジン等のような有機塩基との塩を含む。同様に本発明は、塩酸または硫酸のような鉱酸との塩、および酢酸およびシュウ酸のような有機酸との塩のような酸付加塩にも関する。
【0102】
本発明に従ったポリペプチドの"機能性誘導体"は、公知の技術によって機能性アミノ酸側鎖上またはそれらのN−またはC−末端に生成させることができる。そのような誘導体は、例えば、カルボキシル基の脂肪族エステル;アンモニアまたは1級または2級アミンとの反応によって得られるカルボキシル基のアミド;アシル基との反応によって調製される遊離アミノ基のN−アシル誘導体、またはアシル基との反応によって調製された遊離ヒドロキシ基のO−アシル誘導体を含む。
【0103】
"機能的均等物"は、勿論他の生物からアクセスし得るポリペプチドと、天然に存在する変種をも含む。例えば、相同性配列領域の範囲は配列比較によって確立することができ、均等酵素は本発明の詳細な説明によって決定することができる。
【0104】
同様に"機能的均等物"は、例えば所望の生物学的機能を有する、本発明に従ったポリペプチドのフラグメント、好ましくは個々のドメインまたは配列モチーフを含む。
【0105】
"機能的均等物"はさらに、前述したポリペプチド配列の一つまたはそれからの機能的均等物と、機能的N−またはC−末端結合において機能的に異なる少なくとも一つのさらなる非相同性配列を含む融合タンパク(すなわち融合タンパク部分の相互に有意な損傷なしの)である。そのような非相同配列の非限定例は、シグナルペプチド、ヒスチジンアンカーまたは酵素である。
【0106】
本発明に従って付加的に含まれた"機能的均等物"は、実際に開示されたタンパクの相同体を含む。これらは、実際に開示されたアミノ酸配列の一つに対して、Pearson and Lipman,Proc.Natl.Acad.Sci.(USA),1988,2444−2448のアルゴリズムに従って計算し、少なくとも60%、好ましくは少なくとも75%、特に90,91,92,93,94,95,96,97,98または99%の相同性(同一性)を持っている。本発明に従った相同ペプチドの相同性または同一性は、特にここに実際に記載されたアミノ酸配列の一つの全長に対する、同一アミノ酸残基のパーセンテージを意味する。
【0107】
パーセンテージ同定値は、BLASTアライメント、アルゴリズムblastp(タンパク−タンパクBLAST)により、または後で示すClustalアジャストメントの使用によって決定とすることができる。
【0108】
可能性あるタンパクグリコシル化の場合、本発明に従った"機能的均等物"は、脱グリコシル化したまたはグリコシル化した形およびグリコシル化パターンの変化によって得られる修飾形において上で指定したタイプのタンパクを含む。
【0109】
本発明に従ったタンパクまたはポリペプチドの相同体は、突然変異生成により、例えば点突然変異、タンパクの伸長またはトランケーションによって生成させることができる。
【0110】
本発明に従ったタンパクの相同体は、例えばトランケーション突然変異体のようなコンビナトリアルバンクのスクリーニングによって同定することができる。例えば、タンパク変種の斑入りバンクは、例えば合成オリゴヌクレオチドの混合物の酵素的リゲーションにより、核酸レベルにおけるコンビナトリアル突然変異生成によって生成させることができる。退化オリゴヌクレオチド配列から可能性ある相同体のバンクの生成のために使用できる多数のプロセスが存在する。退化遺伝子配列の化学合成はDNAシンセサイザー中で実施することができ、そして次に合成遺伝子は好適な発現ベクター中へリゲートすることができる。遺伝子の退化セットの使用は、可能性あるタンパク配列の所望のセットをコードする混合物中にすべての配列の生成を可能にする。退化オリゴヌクレオチドの合成方法は当業者に知られている(例えば、Narang,S.A.(1983)Tetrahedron 39:3;Itakura et al.(1984)Annu.Rev.Biochem.53:323;Itakura et al.(1984)Science 198:1056;Ike et al.(1983)Nucleic Acids Res.11:477)。
【0111】
点突然変異またはトランケーションによって生成させたコンビナトリアルバンクの遺伝子生産物のスクリーニングのための、および選択された性質を有する遺伝子生産物のcDNAバンクのスクリーニングのためのいくつかの技術が先行技術において知られている。これらの技術は、本発明に従った相同体のコンビナトリアル突然変異生成によって生産された遺伝子バンクの急速スクリーニングに適応化させることができる。高いスループットで分析が行われる大きな遺伝子バンクのスクリーニングのために最も頻繁に使用される技術は、複製可能な発現ベクター中への遺伝子バンクのクローニング、生成したベクターバンクでの適当な細胞の形質転換、および所望の活性の検出がその生産物が検出された遺伝子をコードするベクターの単離を容易化する条件下でコンビナトリアル遺伝子の発現を含む、バンク中の機能的突然変異体の頻度を増大させる技術である、Recursive emsemble mutagenis(REM)をスクリーニングテストと組み合わせて相同体を同定するために使用することができる(Arkin and Yourvan(1992)PNAS 89:7811−7815;Delgrave et al.(1993)Protein Engineering 6(3):327−331)。
【0112】
3.核酸および構造体
3.1 核酸
本発明はまた、例えば3α−,3β−,7β−,11α−,11β−,12α−,12β−,17α−,17β−,20α−または20β−HSDH活性、特に3α−,7β−または12α−HSDH活性のようなHSDH活性を有する酵素をコードする核酸配列、または本発明に従ったノックアウト突然変異体の生産に使用される構造体に関する。
【0113】
本発明はまた、ここに記載した実際の配列に対し一定の程度の同一性を有する核酸に関する。
【0114】
二つの核酸間の"同一性"は、各場合核酸全長にわたってヌクレオチドの同一性を意味し、特に以下のパラメータで調節した、Clustal Methodを使用するInformax社(USA)のVector NTI Suite 7.1ソフトウエア(Higgins DG,Sharp PM.Fast and sensitive multiple sequence alignments on a microcomputer.Compt.Appl.Biosci.1989 Apr;5(2):151−1)の助けによる比較によって計算した同一性を意味する。
【0115】
マルチプルアライメントパラメータ:
ギャップオープニングペナルティ 10
ギャップエキステンションペナルティ 10
ギャップセパレーションペナルティ範囲 8
ギャップセパレーションペナルティ オフ
アライメント遅延のための%アイデンティティ 40
残基特異性ギャップ オフ
親水性残基ギャップ オフ
トランジション計量 0
対アライメントパラメータ:
FAST アルゴリズム オン
K−tuple サイズ 1
ギャップペナルティ 3
ウインドウサイズ 5
ベストダイアゴナルの数 5
【0116】
これに代って、同一性は以下のパラメータをもって、Chenna,Ramu,Sugawara Hideaki,Koike Tadashi,Lopez,Rodorigo,Gibson,Toby J,Higgins,Desmond G,Thompson,Julie D.Multiple Sequence alignment with Clustal series of progams(2003)Nucleic Acids Res 31(13):3497−500;インターネットアドレス:http://www.ebi.ac.uk/Tools/clustalw/index.html#に従って決定することができる。
【0117】
DNAギャップオープンペナルティ 15.0
DNAギャップエキステンションペナルティ 6.66
DNAマトリックス アイデンティティ
タンパクギャップオープンペナルティ 10.0
タンパクギャップエキステンションペナルティ 0.2
タンパクマトリックス Gonnet
タンパク/DNA ENDGAP −1
タンパク/DNA GAPDIST 4
【0118】
ここで述べたすべての核酸配列(例えばcDNAおよびmRNAのような1本鎖または2本鎖DNAおよびRNA)は、例えば二重らせんの個々の重複する相補的核酸構造単位のフラグメント縮合によるような、ヌクレオチド構造単位からの化学合成によってそれ自体公知の態様で生産することができる。オリゴヌクレオチドの化学合成は、例えば、ホスホアミダイト法(Voet,Voet,2nd edition,Wiley Press,New York,pp.896−897)に従って公知の態様で実施することができる。合成オリゴヌクレオチドの付加と、DNAポリメラーゼおよびリゲーション反応のKlenowフラグメントによるギャップの充填、および一般クローニング方法は、Sambrook et al.(1989),Molecular Cloning:A laboratory manual,Cold Spring Harbor Laboratory Pressに記載されている。
【0119】
本発明は、上記ポリペプチドの一つ、および例えば合成ヌクレオチドアナログを用いてアクセス可能なそれらの機能的均等物をコードする核酸配列(例えばcDNAおよびmRNAのような1本鎖および2本鎖DNAおよびRNA)に関する。
【0120】
本発明は、本発明に従ったポリペプチドおよびタンパクまたは生物学的に活性なそれらのセクションをコードする単離された核酸分子と、例えば本発明に従ったコードする核酸の同定または増幅のためのハイブリダイゼーションプローブまたはプライマーとして使用することができる核酸フラグメントの両方に関する。
【0121】
本発明に従った核酸分子は、さらに暗号遺伝子領域の3'−および/または5'−端に翻訳されない配列を含むことができる。
【0122】
さらに本発明は、実際に記載された核酸配列およびそのセクションに対し相補的な核酸分子またはその部分を含む。
【0123】
本発明に従ったヌクレオチド配列は、他の細胞タイプおよび生物中の相同性配列の同定および/またはクローニングに使用することができるプローブおよびプライマーの生産を可能にする。そのようなプローブまたはプライマーは、通常"厳格"な条件下、本発明に従った核酸配列のセンスストランドの、または対応するアンチセンスストランドの少なくとも約12,好ましくは約25,例えば40,50または75の連続するヌクレオチドにハイブリダイズするヌクレオチド配列領域を含んでいる。
【0124】
"単離"された核酸分子が核酸の天然源中に存在する他の核酸分子から分離され、そしてもしそれが組換え技術によって生産されるならば他の細胞物質または培地が実質上皆無にされるか、またはもしそれが化学的に合成されるならば化学的前駆体または他の化学品が実質上皆無にされることでできる。
【0125】
本発明に従った核酸分子は、分子生物学的に標準技術によって単離されることができ、そして配列情報が本発明によって提供される。例えば、cDNAは、ハイブリダイゼーションプローブとして実際に開示した完成した配列の一つまたはその部分と、そして標準ハイブリダイゼーション技術(例えば、Sambrook,J.,Fristsch,E.F.and Maniatis,T.Molecular Cloning:A Laboratory Mannual.2nd ed.,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor,NY.1989に記載されいるような)を使用することによって適当なcDNAバンクから単離することができる。さらに、開示した配列の一つまたはその部分を含んでいる核酸分子は、ポリメラーゼ連鎖反応によって単離することができ、この配列に基づいて調製されたオリゴヌクレオチドプライマーが使用される。このようにして増幅された核酸は適当なベクターにクローンされ、そしてDNA配列分析によって特徴化される。本発明に従ったオリゴヌクレオチドは、例えば自動DNAシンセサイザーを使用して標準合成プロセスによって生産されることができる。
【0126】
本発明に従った核酸配列またはその誘導体、これらの配列の相同体およびその部分は、他の細菌から、例えばゲノムまたはcDNAバンクを用い、慣用のハイブリダイゼーションプロセスまたはPCR技術を使用して単離することができる。
【0127】
"ハイブリダイズ"とは、ポリマーまたはオリゴヌクレオチドが、標準条件下で大部分相補的な配列へ結合する能力を意味し、非相補的パートナー間の非特異性結合はこれら条件下では抑制される。このため、配列は90〜100%相補的であることができる。相互に特異的に結合し得る相補配列の性質は、例えばノーザンまたはサウザンブロット技術またはPCRまたはRT−PCRにおいてプライマー結合において使用される。
【0128】
ハイブリダイゼーションのため、保存された領域の短いオリゴヌクレオチドが有利に使用される。しかしながら、ハイブリダイゼーションのため、本発明に従った核酸のもっと長いフラグメントまたは完全な配列を使用することも可能である。これらの標準的条件は使用する核酸に従って(オリゴヌクレオチド、長いフラグメント、または完全な配列)変動し、またはどのタイプの核酸、DNAかRNAが使用されるかによって変動する。このため、例えばDNA/DNAハイブリッドのための溶融温度は、同じ長さのDNA/RNAハイブリッドのそれよりも約10℃低い。
【0129】
標準的条件は、例えば、核酸に従い、0.1ないし5×SSC(1×SSC=0.15M NaCl,15mMクエン酸ナトリウム、pH7.2)の濃度を有する水性緩衝溶液中42ないし58℃の温度、または付加的に50%ホルムアミドの存在下、例えば5×SSC、50%ホルムアミド中42℃の温度を意味する。有利には、DNA/DNAハイブリッドのためのハイブリダイゼーション条件は、0.1×SSCと約30℃ないし45℃の温度である。DNA/RNAハイブリッドについては、ハイブリダイゼーション条件は、有利には0.1×SSCと約30℃ないし55℃、好ましくは45℃ないし55℃の温度である。ハイブリダイゼーションのためのこれらの規定した温度は、例示であって、約100ヌクレオチドの長さと、G+C含量50%の核酸のためのホルムアミド不存在下の計算された溶融温度である。DNAハイブリダイゼーションのための実験条件は、例えばSambrook et al.,"Molecular Cloning",Cold Spring Harbor Laboratory,1989のような遺伝子学の教科書に記載されており、そして例えば核酸の長さ、ハイブリッドの性格またはG+C含量に応じて当業者に知られた式に従って計算することができる。当業者はさらにハイブリダイゼーションについての情報を以下の教科書から推論することができる。
【0130】
Ausubel et al.(eds),1985,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,New York;Hames and Higgins(eds),1985,Nucleic Acids Hybridization:A Practical Approach,IRL Press at Oxford University Press,Oxford;Brown(ed),1991,Essential Molecular Biology:A Practical Approach,IRL Press at Oxford University Press,Oxford
【0131】
"ハイブリダイゼーション"は特に、厳格な条件下で実施することができる。そのようなハイブリダイゼーション条件は、例えばSambrook,J.,Fritsch,E.F.,Maniatis,T:Molecular Cloning(A Laboratory Manual),2nd edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press,1989,9.31−9.5またはCurrent Protocols in Molecular Bioloy,John Wiley & Sons,N.Y.(1989),6.3.1−6.3.6に記載されている。
【0132】
"厳格な"ハイブリダイゼーション条件は、50%ホルムアミド、5×SSC(750mM NaCl,75mMクエン酸三ナトリウム)、50mMリン酸ナトリウム(pH7.6)、5×Denhardt溶液、10%デキストランサルフェートおよび変性したサケ精子DNA20g/ml中42℃でのインキュベーションと、65℃において、0.1×SSCを使用し、フィルター上の洗浄ステップを意味すると理解すべきである。
【0133】
本発明はまた、実際に開示された、または誘導し得る核酸配列の誘導体に関する。
【0134】
このように本発明に従ったさらなる核酸配列は、例えば配列同定番号1ないし9,11,13,15,17ないし22,24,26,27,28,30および33ないし37から誘導することができ、そして単一または多数のヌクレオチドの付加、置換、挿入また欠失によってそれらから区別することができるが、しかし所望の性質プロフィルを有するポリペプチドをさらにコードすることができる。
【0135】
本発明に従えば、実際に挙げた配列、および例えば天然に存在する変種、例えばそれらのスプライス変種または対立遺伝子変種のような天然に存在する変種と比較して、“サイレント”突然変異を含む。または特別の起源または宿主生物のコドン使用に対応して修飾された核酸配列が含まれる。
【0136】
同様に本発明は、保守的ヌクレオチド置換(すなわち関係するアミノ酸が同じ電荷、サイズ、極性および/または溶解度のアミノ酸によって置換される)によって得ることできる配列に関する。
【0137】
本発明はまた、実際に開示された核酸の配列多形によって誘導された分子に関する。これらの遺伝子多形は天然変異による集団内の個々間に存在することができる。これら天然の変異は慣例的に遺伝子の核酸配列中に1ないし5%の変動を生ずる。
【0138】
本発明に従った前述の核酸配列の誘導体は、誘導されたアミノ酸レベルにおいて全体の配列範囲にわたって少なくとも60%の相同性、好ましくは少なくとも80%の相同性、非常に好ましくは少なくとも90%の相同性を有する例えば対立遺伝子変動を意味するものと理解すべきである(アミノ酸レベルの相同性に関し、ポリペプチドのための前出の具体例を参照することができる。)。有利には、相同性は配列のサブエリアより高いことができる。
【0139】
さらに誘導体は、例えばプロモーターとの融合を意味するものと理解すべきである。指示した核酸配列の上流に位置するプロモーターは、プロモーターの機能または効率を傷つけることなく、少なくとも1個のヌクレオチド置換、少なくとも1個の挿入、逆位および/または欠失によって修飾することができる。加えて、プロモーターはそれらの配列の修飾によってそれらの活性を増加されることができ、または外来生物が一層活性なプロモーターによって完全に置換されることができる。
【0140】
さらに機能性突然変異体の生産は当業者に既知である。
【0141】
使用される技術に応じて、当業者は遺伝子中または代って非コーディング核酸領域(これは例えば発現の調節のために重要である)中にランダムなまたはもっとターゲット化した突然変異体を完全に導入することができ、そして後で遺伝子バンクを創製することができる。このために必要な分子生物学的方法は当業者に既知であり、そして例えばSambrook and Russel,Molecular Cloning.3rd Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press 2001に記載されている。
【0142】
遺伝子の修飾およびこれらによってコードされるタンパクの修飾方法は永年当業者に熟知されており、例えば以下を含む。
【0143】
−遺伝子の一つまたは多数のヌクレオチドが標的化された態様で置換される部位特異性変異生成(Trower MK(Ed.)1996;In vitro mutagenesis protocols, Humana Press, New Jersey)
【0144】
−所望のアミノ酸のためのコドンが遺伝子の任意の望む部位において置換または付加される既知変異生成(Kegler−Ebo DM,Docktor CM,DiMaio D(1994)Nucleic Acids Res 22:1593;Barettino D,Feigenbutz M, Valcarel R, Stunnenberg HG(1994)Nucleic Acids Res 22:541;Barik S (1995) Mol Biotechnol 3:1)
【0145】
−核酸配列がエラープローンポリメラーゼ連鎖反応によって変異されるエラープローンポリメラーゼ連鎖反応(エラープローンPCR)(Eckert KA,Kunnkel TA(1990)Nucleic Acids Res 18:3739)
【0146】
−例えば核酸配列の増加した変異率が欠陥DNA修復メカニズムのために発生するミューテーター株中の遺伝子の通過(Greener A,Callahan M,Jerpseth B(1996)An efficient random mutagenesis technique using an E.colimutator strain.In:Trower MK(Ed.)In vitro mutagenesis protocols,Hamana Press,New Jersey),または
【0147】
−密接に関連した遺伝子が生成され、消化され、そしてフラグメントがポリメラーゼ連鎖反応のための鋳型として使用され、繰り返したストランド分離および再接近によって全長さのモザイク遺伝子が最後につくられるDNAシャッフリング(Stemmer WPC(1994)Nature 370:389;Stemmer WPC(1994)Proc Natl Acad Sci USA91:10747)。
【0148】
“指令した進化”を使用し(Reetz MT and Jaeger K−E(1999), Topics Curr Chem 200:31; Zhao H,Moore JC, Volkov AA, Arnold FH(1999),Methods for optimizing industrial enzymes by directed evolution, in; Demain AL, Davies JE(Ed.)Manual of industrial microbiology and biotechnology,American Society for Microbiologyに記載されている)当業者は機能的突然変異体を選択した態様で、そして大スケールで製造することができる。ここでは、第1工程においてそれぞれのタンパクの遺伝子バンクが製造され、そこでは上に示した方法を使用することができる。遺伝子バンクは適当な態様に、例えば細菌により、またはファージディスプレーシステムによって発現される。
【0149】
大部分所望の性質に相当する性質を有する機能性突然変異体を発現する宿主生物の関心ある遺伝子は突然変異のさらなるラウンドに服させることができる。この変異のステップおよびスクリーニングのステップは現在の機能的突然変異体が適当な程度まで所望の性質を持つまで反復的に繰り返すことができる。この反復操作により、限られた数の変異、例えば1ないし5の変異を段階的に実施することができ、そして関心ある酵素性質に対するそれらの影響について評価され、選択される。選択された突然変異体は次に同じ態様でさらなる変異ステップに服される。これによって検討すべき個の突然変異体の数を有意に減らすことができる。
【0150】
本発明に従った結果は、所望の修飾した性質を有するさらなる酵素を選択的に生成させるために必要な、関心ある酵素の構造および配列に関する重要な情報を収穫する。特に“ホットスポット”、すなわち選択した変異の導入によって酵素性質を修飾するために潜在的に適した配列部分を規定することができる。
【0151】
本発明に従ったHSDHのホットスポット領域の非限定例を以下に要約する。
35−40、特に37−38(各場合HSDH_ショート(配列同定番号14)のアミノ酸配列に基づいて)
90−105、93−100または96−100、特に97および/または98(各場合HSDH_ショート(配列同定番号14)のアミノ酸配列に基づいて)
【0152】
3.2. 構造体
本発明はさらに、調節核酸配列の遺伝子コントロールのもとに本発明に従ったポリペプチドをコードする核酸配列を含む発現構造体、および少なくとも一つのこれらの発現構造体を含むベクターに関する。
【0153】
“発現ユニット”とは、本発明に従って、ここで規定し、そして発現すべき核酸または遺伝子へ機能的に連結された後、発現を調節する、すなわちこの核酸またはこの遺伝子の転写および翻訳を調節するプロモーターを含んでいる、発現活性を有している核酸を意味するものと理解すべきである。それ故これを“調節核酸配列”ということもできる。プロモーターに加え、例えばエンハンサーのようなさらなる調節エレメントが存在することができる。
【0154】
本発明に従えば、“発現カセット”または“発現構造体”とは、発現すべき核酸または発現すべき遺伝子へ機能的に連結されたまたは発現すべき遺伝子へ機能的に連結された発現ユニットを意味するものと理解すべきである。発現ユニットと対照的に、発現カセットはこのため、転写および翻訳を調節する核酸配列のみならず、転写および翻訳の結果タンパクとして発現される核酸配列をも含む。
【0155】
本発明の文脈において、術語“発現”または“過発現”は、対応するDNAによってコード化される微生物中の一以上の酵素の細胞内活性の生産および増加を記載する。この目的で、例えば遺伝子を生物へ導入することができ、存在する遺伝子を他の遺伝子で置換することができ、遺伝子のコピー数を増加することができ、強力なプロモーターを使用することができ、または高い活性を有する対応する酵素をコードする遺伝子を使用することができ、そしてこれらの方策は任意に組み合わせることができる。
【0156】
好ましくは、本発明に従ったそのような構造体は、それぞれのコード化配列の5’−上流のプロモーターと、3’−下流のターミネーター配列と、そして任意に慣用の調節エレメント、すなわち各場合コード化配列へ作用的に連結された調節エレメントを含む。
【0157】
本発明に従えば、“プロモーター”、“プロモーター活性を有する核酸”、または“プロモーター配列”は、転写すべき核酸との機能的連結において核酸の転写を調節する核酸の意味であると理解すべきである。
【0158】
“機能的”または“作用的”連結は、例えば核酸の転写を保証する核酸配列と、そして例えばターミネーターのように、プロモーター活性を有する核酸の一つと、転写すべき核酸配列と、そして任意の調節エレメントの配列とが、調節エレメントの各自が核酸配列の転写においてその機能を充足するように配置された配列を意味するものと理解すべきである。この目的のため、化学的意味での直接連結は絶対的に必要ではない。例えばエンハンサー配列のような遺伝子制御配列は、標的配列においてさらに除去された位置において、または他のDNA分子からそれらの機能を発揮することができる。転写される核酸配列がプロモーター配列の後に(すなわち3’−末端側に)配置され、そのため両方の配列が共有結合で連結されることが好ましい。ここでは、プロモーター配列と、発現すべき核酸配列の間の距離は、200塩基対未満、または100塩基対以下、または50塩基対以下であることができる。
【0159】
プロモーターおよびターミネーターに加え、挙げることができるさらなる調節エレメントの例は、標的化配列、エンハンサー、ポリアデニル化信号、選択できるマーカー、増幅信号、複製起源等を含む。好適な調節配列は、例えばGoeddel,Gene Expression Technology:Methods in Enzymology 185,Academic Press,San Diego,CA(1990)に記載されている。
【0160】
特に本発明に従った構造体は、配列同定番号11,13または15、またはこれの誘導体および相同体と、そして遺伝子発現の制御、例えば増大のため有利には一以上の調節信号と作用的または機能的に連結されたそれから誘導し得る核酸配列を含む。
【0161】
これらの調節配列に加え、これら配列の天然の調節が実際の構造遺伝子以前に存在することができ、そして天然調節がスイッチオフされ、遺伝子発現が増大されるように任意に遺伝子的に修飾されることができる。しかしながら核酸構造体は、もっと簡単に、すなわち追加の調節信号がコード化配列の前に挿入されず、そしてその調節を有する天然プロモーターが除去されずに構築することができる。これに代って、天然調節配列は、もはや調節が行われず、そして遺伝子発現が増大されるように突然変異される。
【0162】
好ましい核酸構造体は、有利には、核酸配列の増大した発現を可能にするプロモーターへ機能的に連結された既に述べた“エンハンサー”の一つ以上を含んでいる。さらなる調節エレメントまたはターミネーターのような、追加的有益配列をDNA配列の3'−末端へ挿入することもできる。本発明に従った核酸は、構造体中に1以上のコピーで存在することができる。構造体の任意の選択のため、抗生物質耐性または栄養補給性を補足する遺伝子のようなさらなるマーカーが構造体中に存在することができる。
【0163】
cos,tac,trp,tet,trp−tet,lpp,lac,lpp−lac,laclq,T7,T5,T3,gal,trc,ara,rhaP,(rhaPBAD)SP6,ラムダ−PRのようなプロモーター中に、またはラムダーPプロモーター中に好適な調節配列の例が存在する。これらはグラム陰性細菌に有利に使用される。さらなる有利な調節配列は、イーストまたはカビプロモーターADC1,MFアルファ,AC,P−60,CYC1,GAPDH,TEF,rp28およびADH中のグラム陽性プロモーター中に存在する。人工プロモーターも調節のために使用し得る。
【0164】
宿主生物中に発現のため、核酸構造体は、有利には、例えば宿主中で遺伝子の最適で発現を可能にするプラスミドまたはファージのようなベクター中に挿入される。プラスミドおよびファージのほかに、ベクターは、当業者に知られたすべての他のベクター、例えばSV40,CMV,バキュロウイルスおよびアデノウイルスのようなウイルス、トランスポソン、ISエレメント、ファスミド、コスミド、および鎖状またはサークル状DNAを意味するものと理解すべきである。これらのベクターは宿主生物中で自発的に複製または染色体的に複製されることができる。これらのベクターは本発明のさらなる具体例を代表する。
【0165】
好適なプラスミドは、例えば、E.coli中のpET28a(+),pLG338,pACYC184,pBR322,pUC18,pUC19,pKC30,pRep4,pHS1,pKK223−3,pDHE19.2,pHS2,pPLc236,pMBL24,pLG200,pUR290,pIN−III113−B1,λgt11;ストレプトミセス中のpIJ101,pIJ364,pIJ702またはpIJ361;バチルス中のpUB110,pC194またはpBD214;コリネバクテリウム中のpSA77またはpAJ667;カビ中のpALS1,pIL2またはpBB116;イースト中の2αM,pAG−1,YEp6,YEp13またはpEMBLYe23;または植物中のpLGV23,pGHIac,pBIN19,pAK2004またはpDH51である。言及したプラスミドは可能性あるプラスミドの小さな選択である。さらなるプラスミドは当業者には既知であり、そして例えば専門書Cloning Vectors(Eds.Pouwels P.H.et al.Elsevier,Amsterdam−New York−Oxford,1985,ISBN0444904018)から推論することができる。
【0166】
ベクターのさらなる具体例において、本発明に従った核酸構造体、または本発明に従った核酸は、直鎖状DNAの形で微生物に有利に導入され、そして同種または異種組み換えによって宿主生物中に集積されることができる。この直鎖状DNAはプラスミドのような直鎖状ベクターから、または単に本発明に従った核酸構造体または核酸のみから構成されることができる。
【0167】
生物中の異種遺伝子の最適発現のため、生物に使用される特異的"コドン利用"に対応して核酸を修飾するのが有利である。“コドン利用”は、関連する生物の既知の遺伝子のコンピューター分析によって容易に決定することができる。
【0168】
本発明に従った発現カセットの生産は、適当なコード化ヌクレオチド配列と、ターミネーターまたはポリアデニル化信号との適切なプロモーターの融合によって実施される。この目的のため、例えば、T.Maniatis,E.F.Fritsch and J.Sambrook,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,NY(1989)、およびT.J.Silhavy,M.L.Berman and L.W.Enquist,Experiments with Gene Fusions,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,NY(1984)、およびAusubel,F.M.et al.,Current Protocols in Molecular Biology,Greene Publishing Assoc.and Wiley Interscience(1987)に記載されているような慣用の組み換えおよびクローニング技術が使用される。
【0169】
好適な宿主生物中の発現のため、組換え核酸構造体または遺伝子構造体が、宿主中に遺伝子の最適発現を可能にする宿主特異性ベクター中に有利に挿入されるベクターは当業者には良く知られ、そして例えば“Cloning Vectors”(Pouwels P.H.et al.,editor,Elsevier,Amsterdam−New York−Oxford(1985)から推論することができる。
【0170】
4. 微生物
文脈に応じて、用語“微生物”は出発微生物(野生タイプ)、または遺伝子的に修飾された組換え微生物、または両者を意味するとして理解できる。
【0171】
本発明に従ったベクターの助けにより、本発明に従った少なくとも一つのベクターで形質転換された組換えノックアウト微生物が調製され、本発明に従ったポリペプチドの生産のために使用することができる。有利には、上に記載した本発明に従った組換え構造物が宿主システムに導入され、発現される。ここでは、例えば共沈澱、プロトプラスト融合、エレクトロポレーション、レトロウイルストランスフェクション等のような、当業者が熟知しているクローニングおよびトランスフェクション方法が前述した核酸をそれぞれの発現システム中に発現させるために好ましく使用される。好ましいシステムは、例えばCurrent Protocols in Molecular Biology,F.Ausubel et al.,editor,Wiley Interscience,New York 1997またはSambrook et al.Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd ed.,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY,1989に記載されている。
【0172】
本発明に従った核酸または核酸構造体のための細換え宿主生物は原則として原核または真核生物である。有利には宿主生物としてバクテリア、カビまた酵母のような微生物が使用される。有利には、グラム陽性またはグラム陰性バクテリア、好ましくはEnterobacteriaceae,Pseudomonadaceae,Rhizobiaceae,StreptomycetaceaeまたはNocardiaceae科のバクテリア、特に好ましくはEscherichia,Pseudomonas,Streptomyces,Norcardia,Burkholderia,Salmonella,Agrobacterium,ClostridiumまたはRhodococcus属のバクテリアが使用される。特に好ましくは、Escherichia coliである。さらなる有利なバクテリアはアルファプロトバクテリア、ベータプロトバクテリアまたはガンマプロトバクテリアのグループ中に見出される。
【0173】
本発明に従った宿主生物は、好ましくは本発明において記載した少なくとも一つの核酸配列、核酸構造体またはHSDH活性を有する酵素、例えば3α−,3β−,7β−,11α−,11β−,12α−,12β−,17α−,17β−,20α−,または20β−HSDH活性、特に本発明に従った3α−,7β−,または12α−HSDH活性を有する酵素をコードするベクターを含んでいる。
【0174】
本発明に従った方法に使用される生物は、宿主生物に応じて当業者に知られた態様で増殖または培養される。原則として微生物は通常糖の形の炭素源と、通常イースト抽出物のような有機窒素源または硫酸アンモニウムのような塩の形の窒素源と、鉄、マグネシウムおよびマンガン塩のような微量元素と、そして任意にビタミンを含む液体培地中で0℃および100℃の間の、好ましくは10℃および60℃の間の温度において酸素通気下に培養される。この間栄養液のpHを固定値に保つことができる。すなわち培養の間調節し、または調節しないことができる。培養はバッチ式、半バッチ式または連続式に実施することができる。栄養分は発酵開始時に提供するか、または後で半連続的または連続的に供給することができる。
【0175】
5.UDCAの酵素/化学的生産
5.1 酸化方法
これは例えば本出願人のWO2009/11876に記載されている。
【0176】
長年胆石症の医学的処置のため、活性物質ウルソデオキシコール酸(UDCA)と、関連するジアステレオマーであるケノデオキシコール酸(CDCA)が使用されて来た。両化合物は7C原子上のヒドロキシル基の配位によってのみ異なる(UDCA:β−配位、CDCA:α−配位)。UDCAの商業的量の生産のため、以前は原料としてCDCAが使用される方法が好ましくは使用されて来た。CDCAは代ってコール酸(CA)から好ましく製造される。
【0177】
5.1.1 CDCA生産
専ら化学的な方法に代り、本発明に従ってCAの12−ケトケノデオキシコール酸(12−ケト−CDCA,CAS2458−08−4)への酵素触媒酸化と、次にこの化合物のCDCAへのさらなる変換が提供される。この合成ルートはたった二工程であり、このため純粋に化学的なルートに比較して実施するのに明らかに簡単である。
第1工程:酵素酸化
【化11】
第2工程:脱酵素化
【化12】
【0178】
第1工程に従って、コール酸が12α−HSDHによって12−ケトケノデオキシコール酸(12−ケト−CDCA)へNADP依存的に酸化される。この反応は可逆的である。12α−HSDHは酵素クラス1.1.1.176に属し、主にClostridium属の細菌に見出される。
【0179】
この酵素酸化は、本発明に従った12α−HSDH(ロングまたはショートバージョン)と、例えばADH msまたはADH tのようなADHによる助因子再生により好ましくは生起する。
【0180】
第2工程に従った脱酵素化は、古典的な化学的Wolf−Kishner還元であり、上に記載したCDCAIIIの脱酵素化に類似して実施される。このルートの有意義な利益は、酵素の選択性のため不純物リトコール酸が生成されないことである。
【0181】
5.1.2 CDCAのUDCAへの反応
上のCDCAがUDCA(CAS128−13−2)のための原料として使用される。第1の合成工程において、CDCAの7位のヒドロキシル基が対応ケトンへ酸化される。7−ケトリトコール酸(3α−ヒドロキシ−7−ケトコラン酸、略してKLCA,CAS 4651−67−6)が生成する。第2工程において、7位のケト基の立体特異性還元が続く。この目的はできるだけ高いジアステレオマー選択性をもってUDCAを得ることである。一般にUDCAは還元直後ジアステレオマーCDCAの数パーセントをなお含有している。活性物質UDCAへ到達するため粗UDCAは第3工程で精製しなければならない。
【0182】
第1工程:
【化13】
第2工程
【化14】
第3工程:精製
粗UDCA→純粋UDCA
【0183】
CDCAの酸化は、慣例的に次亜塩素酸ナトリウム水溶液で行われる。文献では代りにクロム酸酸化がなお見られる。KLCAは固体として得られ、これは第2工程でさらに処理される。還元はアルコール中の金属ナトリウムで実施することができる。UDCA:CDCA約85:15の組成を有する粗製物が得られる。代替法において、KLCAは溶媒としてアルコール(脂肪族アルコールのような)中カリウムt−ブチレートまたは水酸化カリウム(EP−A−0230085)のような塩基と共にニッケル触媒(ラネーニッケル)上水素を使用して還元される。加えて、カリウムおよびリチウム(ナトリウムより高い選択性、C.Giordano et al.Angew.Chem.1985,97,510)および亜鉛(ES489661)および電気化学的(US4547271)も付加的に可能である。
【0184】
粗製UDCAの純UDCAへの精製は、ジアステレオマー塩の分離である。これはUDCAの適当な塩の調製、単離およびその後の分裂によって実施される。文献には以下の精製方法が挙げられている。対応するUDCAエステルの調製、再結晶および分裂(EP−A−0386538)、押出(JP60006699)およびクロマトグラフ法(IT2000MI1177)。
【0185】
5.2 還元方法
そのような方法は、例えば本出願人のPCT/EP2010/068576に記載されている。
【0186】
5.2.1
CAのヒドロキシル基が酸性溶液(例えばHSO)中のクロム酸またはクロム酸により、既知の態様において古典的化学的経路においてカルボニル基へ酸化される。それによりDHCAが生成する。
【0187】
5.2.2 DHCAの12−ケト−UDCAへの酵素または微生物反応
水溶液中に、DHCAはNADPHまたはNADHの存在下3α−HSDHまたは7β−HSDHまたはその突然変異体によって12−ケト−UDCAへ特異的に還元される。助因子NADPHまたはNADHは、アルコールデヒドロゲナーゼ(ADH)、またはホルメートデヒドロゲナーゼ(FDH)、またはグルコースデヒドロゲナーゼ(GDH)、またはそれらの突然変異体により、そしてイソプロパノールまたはギ酸ナトリウムまたはグルコースの存在下再生することができる。反応は緩和な条件下で進行する。例えば、反応はpH=6ないし9、特にpH=約8において、そして約10ないし30、15ないし25または約23℃において実施することができる。3α−HSDHおよび7β−HSDHは段階的に、すなわち任意の順番で次々に、または同時に、すなわち組み合わせて使用することができる。
【0188】
微生物反応工程においては、必要な酵素活性を発現する組換え微生物は適当な液体培地中、反応すべき基質(DHCA)の存在下嫌気的または好気的に培養されることができる。好適な培養条件は当業者に知られている。それは例えば5ないし10または6ないし9のpH範囲と、10ないし60、または15ないし45または25ないし40または37℃の範囲の温度を含む。好適な培地は、例えばLBおよびTB培地を含む。反応は例えばバッチ式または連続式または他の慣用のプロセス(上に記載したような)で行うことができる。反応時間は例えば分から数時間または数日の範囲であることができ、例えば1ないし48時間であることができる。任意に、もし酵素活性が連続的に発現されなければ、例えば約OD600=0.5ないし10の標的細胞密度に達した後適当なインデューサーの添加によって誘発することができる。
【0189】
5.2.3 12−ケト−UDCAのUDCAへの化学反応
12−ケト−UDCAの12−ケト基はそれ自体既知のWolf−Kishner還元によって除去される。これによって12−ケト−UDCAが生成する。この反応においてカルボニル基は最初ヒドラジンでヒドラゾンへ変換される。その後ヒドラゾンは塩基(例えばKOH)の存在下200℃へ加熱され、窒素が分解除去されてUDCAが生成する。
【0190】
6.HSDHの組換え生産
本発明はまた、3α−,3β−,7β−,11α−,11β−,12α−,12β−,20α−,または20β−HSDH、特に3α−,7β−,または12α−HSDHのようなHSDH、またはこれらの機能的生物学的活性フラグメントの組換え生産であって、ここでHSDH生産ノックアウト微生物が培養され、ポリペプチドの発現が任意に誘発され、そしてポリペプチドが培養物から単離される組換え生産を含む。もし望むならば、ポリペプチドは大規模工業スケールで生産することができる。
【0191】
本発明に従って調製されるノックアウト微生物はバッチプロセスで(バッチ式培養)において、または流加培養プロセスまたは反復流加培養プロセスにおいて連続的にまたは非連続的に培養することができる。公知の培養方法の要約はChmielの教科書(Bioprocess Technology 1.Introduction to bioprocess technology(Gustav Fischer Verlag,Stuttgart,1991))またはStorhasの教科書(Bioreactors and peripheral devices (Vieweg Verlag,Braunschweig/Wiesbaden,1994))に見られる。
【0192】
使用すべき培養培地はそれぞれの株の要求を好適に満たさなければならない。種々の微生物の培地は、ハンドブック“Manual of Methods for General Bacteriology”,American Society for Bacteriology(Washington D.C.,USA,1981)に含まれている。
【0193】
本発明に従って使用し得るこれらの培地は、通常一以上の炭素源、窒素源、無機塩、ビタミンおよび/または微量元素を含んでいる。
【0194】
好ましい炭素源は、単糖類、二糖類または多糖類である。非常に良い炭素源は、例えばグルコース、フラクトース、マンノース、ガラクトース、リボース、ソルボース、リブロース、ラクトース、マルトース、スクロース、ラフィノース、デンプンまたはセルロースである。糖は、糖蜜または製糖の他の副産物のような複合化合物として培地へ添加することもできる。種々の炭素源の混合物を添加することも有利である。他の可能性ある炭素源は、例えば大豆油、ヒマワリ油、ピーナッツ油およびココナッツ油のような油脂、例えばパルミチン酸、ステアリン酸またはリノレイン酸のような脂肪酸、例えばグリセロール、メタノールまたはエタノールのようなアルコールおよび例えば酢酸または乳酸のような有機酸である。
【0195】
窒素源は、通常有機または無機窒素化合物か、またはこれら化合物を含んでいる材料である。例示的窒素源は、アンモニアガスまたは硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、リン酸アンモニウム、炭酸アンモニウムまたは硝酸アンモニウムのようなアンモニウム塩、硝酸塩、尿素、アミノ酸、またはコーンスティープリカー、大豆粉、大豆タンパク、イーストエキス、ミートエキス等の複合窒素源を含む。窒素源は個別にまたは混合物として使用することができる。
【0196】
培地中に存在することができる無機塩は、塩化物、またはカルシウム、マグネシウム、ナトリウム、コバルト、モリブデン、カリウム、マンガン、亜鉛、銅および鉄のリン酸または硫酸塩である。
【0197】
イオウ源として、例えば硫酸塩、亜硫酸塩、ジチオナイト、テトラチオネート、チオ硫酸塩、硫化物のような無機イオウ含有化合物を使用することができるが、メルカプタンおよびチオールのような有機イオウ化合物を使用することもできる。
【0198】
リン源としては、リン酸、リン酸二水素カリウム、またはリン酸水素二カリウムまたは対応するナトリウム含有塩を使用することができる。
【0199】
金属イオンを溶液中に保持するためキレート剤を培地へ添加することができる。特に好適なキレート剤は、カテコールまたはプロトカテキュエートのようなジヒドロキシフェノール、クエン酸のような有機酸を含む。
【0200】
本発明に従って使用し得る発酵培地は、ビタミンのような他の発育因子または発育プロモーターを慣用的に含み、これらは、例えばビオチン、リボフラビン、チアミン、葉酸、ニコチン酸、パントテン酸塩およびピリドキシンを含む。発育因子および塩は、イーストエキス、糖蜜、コーンスチープリカー等のような複合培地成分からしばしば誘導される。さらに培地へ好適な前駆体を添加することもできる。培地配合物の正確な組成は、詳細な実験に強く依存し、そしてそれぞれの特定のケースのために個別的に決定される。培地最適化のための情報は教科書“Applied Microbiol.Physiology,A Practical Approach”(Ed.P.M.Rhodes,P.F.Stanbury,IRL Press(1997)pp.53−73,ISBN 0 19 963577 3)から得られる。発育培地は、スタンダード1(Merck)またはBHI(Brain heart infusion,DIFCO)等のような商業的サプライヤーからも得ることができる。
【0201】
すべての培地成分は熱(1.5バールおよび121℃において20分)または無菌濾過によって滅菌される。成分は一所に、またはもし必要ならば別々に滅菌することができる。すべての培地成分は発育のスタートから存在することができ、または場合によって連続的またはバッチ式に添加することができる。
【0202】
培養物の温度は通常15℃ないし45℃、好ましくは25℃ないし40℃の間であり、そして実験の間コンスタントに保つか、または変えることができる。培地のpHは5ないし8.5の範囲内でなければならず、好ましくは7付近である。培養のためのpHは、培養の間、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニアまたはアンモニア水のような塩基性化合物の添加、またはリン酸または硫酸のような酸性化合物の添加によってコントロールすることができる。泡発生の制御のため、例えば脂肪酸ポリグリコールエステルのような消泡剤を使用することができる。プラスミドの安定性の維持のため、例えば抗生物質のような好適な選択的に作用する物質を培地へ加えることができる。好気的条件を維持するため、酸素または環境空気のような酸素含有ガス混合物が培養物中に導入される。培養物の温度は通常20℃ないし45℃である。培養は所望の生成物が最大に生産されるまで継続される。この目的は通常10時間ないし160時間で達成される。
【0203】
発酵ブロスはその後さらに処理される。要請に応じ、バイオマスは、例えば遠心、濾過、デカンテーションまたはこれらの組合せのような分離方法によって、または完全に放置することによって完全にまたは部分的に発酵ブロスから除去することができる。
【0204】
もしポリペプチドが培養培地中に分泌されないならば、細胞を破壊し、そして既知タンパク単離方法に従って溶解物から回収することもできる。代って細胞は、高周波数超音波により、例えばフレンチ圧力セル中のような高圧力により、オスモリシスにより、界面活性剤、分解酵素または有機溶媒の作用により、または言及したプロセスのいくつかの組合せによって破壊することができる。
【0205】
ポリペプチドの精製は、Q−セファロースクロマトグラフィーのような分子ふるいクロマトグラフィー(ゲル濾過)、イオン交換クロマトグラフィー、および疎水性クロマトグラフィーのような既知のクロマトグラフィープロセスを使用し、および限外濾過、結晶化、塩析、透析および天然ゲル電気泳動のような他の慣用のプロセスを使用して達成することができる。好適プロセスは、例えば、Cooper,F.G.,Biochemical Working Methods Verlag Walter de Gruyter,Berlin,New YorkまたはScopes,R.,Protein Purification,Springer Verlag,New York,Heidelberg,Berlinに記載されている。
【0206】
組換えタンパク単離のため、決定したヌクレオチド配列を伸長し、そしてそのため例えばより簡単な精製のために役立つ修飾したポリペプチドまたは融合タンパクをコードするベクターシステムまたはオリゴヌクレオチドを使用することが組換えタンパクの単離のために有利であり得る。このタイプの好適な修飾は、例えば、ヘキサヒスチジンアンカーとして知られた修飾、または抗体によって抗原として認識されることができるエピトープのような(例えばHarlow,E.and Lane,D.,1988,Antibodies:A laboratory Manual.Cold Spring Harbor(N.Y.)Pressに記載されているような)アンカーとして機能する"タグ"である。これらのアンカーは、例えばクロマトグラフィーカラムへ充填することができる、またはマイクロタイタープレート上または他のキャリア上に使用されるポリマーマトリックスのような固体担体へのタンパクの付着のために役立つことができる。
【0207】
同時に、これらアンカーはタンパクの認識のためにも使用することができる。タンパクの認識のため蛍光染料のような慣用なマーカー、基質との反応後検出可能な反応生成物を形成する酵素マーカー、または放射性マーカーが単独で、またはタンパクの誘導体化のアンカーと組合せて使用されることができる。
【0208】
7. 酵素固定化
本発明に従った酵素は、ここに記載したプロセスにおいて遊離または固定形で使用することができる。固定化酵素とは、不活性担体へ固定される酵素の意味であると理解される。好適な担体材料およびその上に固定化された酵素は、EP−A−1149849,EP−A−1069183およびDE−OS−100193773およびそれらに引用された参照から知られている。この点に関し、これら明細書の開示全体が参照される。好適な担体材料は、例えばカオリナイト、ケイ藻土、パーライトのような粘土、粘土鉱物、シリカ、アルミナ、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、セルロース粉、アニオン交換材料、ポリスチレン、アクリル樹脂、フェノールホルムアルデヒド樹脂、ポリウレタンおよびポリエチレンおよびポリプロピレンのような合成高分子を含む。担体材料は慣例的に固定された酵素のために微粉砕された粒子の形で使用され、多孔質形が好ましい。担体材料の粒子寸法は5mm以下、特に2mm以下(分布カーブ)である。同様に、全細胞触媒としてデヒドロゲナーゼの使用において、遊離または固定化形を選ぶことができる。担体材料は、例えばアルギン酸カルシウムおよびカラギーナンである。酵素それに細胞は、グルタルアルデヒドを用いて直接架橋する(CLEAへの架橋)ことができる。対応してそしてさらなる固定化プロセスは、例えば、J.Lalonde and A.Margolin“Immobilization of Enzymes”in K.Drauz and H.Waldmann,Enzyme Catalysis in Organic Synthesis 2002,vol.III,991−1032,Wiley−VCH,Weinheimに記載されている。
【0209】
8.ノックアウト突然変異体の生産
ノックアウト方法、例えば核酸または核酸配列を欠失または挿入する方法は当業者に知られており、そして例えばオリゴヌクレオチドとPCRを使用する慣用方法、および所望の修飾した核酸配列をプラスミド中に組入れることができる、プラスミドと制限酵素を使用する方法を含む。このおよび他の分子遺伝子方法は一般に知られており、そして例えば以下の文献に記載されている。T.Maniatis,E.F.Fritsch and J. Sambrook, Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor, NY(1989)and in T.J.Silhavy,M.L.Berman and L.W.Enquist,Experiments with Gene Fusions, Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,NY(1984),Ausubel,F.M.et al.,Current Protocols in Molecular Biology,Greene Publishing Assoc.and Wiley Interscience(1987);“Gene Expression Technology”,in:Methods in Enzymology,Vol185,Elsevier,1990;“Bacterial Genetic Systems”,in:Methods in Enzymology,Vol.204,Elsevier,1991;“Recombinant DNA,Part E”,in Methods in Enzymology, Vol. 154,Elsevier,1987;and C.D.Smolke(ed.),The metabolic pathway engineering handbook;tools and applications, CRC Press. Boca Raton, 2010;C.Muhlhardt, “The Experimentator:Molekularbiologie/Genomics”,6th ed.,Spektrum Akademischer Verlag,Heidelberg 2010;D.Clark,N.Pazdernik,“Molekulare Biotechnologie”,Spektrum Akademischer Verlag,Heidelberg,2009;M.Jahnson(Ed.),”Gentechnische Methoden”,4th ed., Spektrum Akademischer Verlag,Heidelberg,2006;J.M.S.Bartlett,D.Stirling(Ed.),“Methods in Molecular Biology”,Vol.226,“PCR Protocols”,Springer Verlag GmbH,2003
【0210】
ノックアウト突然変異体生産のためのさらなる知られた方法は相同組換えに基づいている。ここではマーカー遺伝子は、ノックアウトすべき遺伝子の配列と相同であり、そして適当なビヒクル(例えばプラスミド、挿入配列、トランスポゾン)によってノックアウトすべき標的配列と合体される両脇配列が備えられる。これは好ましくは宿主生物中、染色体中に(宿主生物に応じて細菌染色体また真核生物染色体)、または関係する宿主中の染色体外核酸構造体(例えばプラスミド)上に配置される。しかしながら無細胞またはインビトロシステムも同様に考えられる。適当な組換えシステムの存在下(例えばレコンビナーゼ)、相同組換えが生起し、両脇配列の相同性のためマーカー遺伝子が標的配列中に集積され、そして標的配列の両脇配列間に横たわる核酸領域が置換により除去される。この態様において挿入されたマーカー遺伝子の遺伝子産物はノックアウト突然変異体の選択のために使用することができる。好ましくはマーカー遺伝子は、抗生物質含有固形培地プレートまたは液体培地によって選択を行うことができるように、抗生物質抵抗を仲介するタンパクをコードする。しかしながらマーカー遺伝子は他のタンパク、例えば蛍光タンパク、例えばグリーン蛍光タンパク(GFP)をコードし、そのため蛍光顕微鏡によるコロニー観察によって、または蛍光活性化細胞ソーティング(FACS)によって選択を行うことができるようにされる。相同組換えの原理は、一般に知られており、そして組換えの他の形に加え、例えば以下の文献に記載されている。R.Y.Stanier,J.L.Ingraham,M.L.Wheelis,P.R.Painter(ed.)”General Microbiology”,5th ed;, 1986,Macmillan Education Ltd., Houndmills, London, pp.278−285,furthermore in ”DNA Cloning”, Volume II, D.M.Glover (ed.), IRL Press,Oxford, washington D.C., 1986, pp.57−65;Karl Drlica, “DNA und Genklonierung−ein Leitfaden”,G.Fischer Verlag, Stuttgart, Jena, 1995,”Transposition”chapter,pp.155−161, and D.H.Jones and S.C.Winistorfer, ”Recombination and Site−Directed Mutagenesis using Recombination PCR“, in:J.M.S.Bartlett, D.Stirling(eds.),”Methods in Molecular Biology”,Vol.226,“PCR Protocols”, Springer Verlag GmbH,2003,Chapter 70,pp.517−525;and A.S.Waldman(ed.),“Methods in Molecular Biology”,Vol.262,”Genetic Recombination−Reviews and Protocols”,Springer Verlag GmbH,2004;F.P.Miller,A.F.Vandome,J.McBrewster(Ed.),”Genetic Recombination”,Alphascript Publishing,2009; F.P.Miller, A.F.Vandome, J.McBrewster(Eds.),”Gene Targeting”,Alphascript Publishing, 2010 A.Aguilera and R.Rothstein,Molecular Genetics of Recombination, Springer−Verlag GmbH, 2007. Special publications on gene−knockout methods are described, in particular for eukaryotic cells and animals ”Gene knockout Protocols”,Ralf Kuhn and Wolfgang Wurst(eds.), Humana Press., 2nd edition 2009, and Wolf S.E. and Woodside, K.J, Transgenic and gene knockout techniques and burn reserach, J. Surg. Res. 123(2):328−339,2005.
【0211】
さらに遺伝子ノックアウト生産のための商業的キット、例えばE.Coliおよび関連する細菌種のための“Targe Tron”遺伝子ノックアウトシステムがSigma−Aldrichから得ることができる。
【0212】
ノックアウト突然変異体生産または遺伝子修飾に適当な他のシステムの例は、Sauer B and Henderson N,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85(14):5166−5170,1988に記載されているCre/Loxシステム、また“Red/ET Recombination−Cloning without Restriction Enzymes”と題するユーザーハンドブックに記載され、さらにUS6,355,412;US6,509,156およびEP4139561の特許に記載されている、“Red/ET Recombination”システム(Gene Bridges GmbH,Heidelberg, Germany)である。
【0213】
9.助因子再生
助因子の必要性は、助因子再生酵素との組合せにより減らすことができる。このため先行技術の種々の方法を使用することができる。
【0214】
先行技術は、例えば、グルタメートデヒドロゲナーゼ(GLDH)(Carrea,G.et al.,Biotechnology and Bioengineering, 1984,26(5):pp560−563)の使用を教える。GLDHはα−ケトグルタレートのグルタメートへの同時還元的アミノ化を伴ってNADPHをNADPへ再酸化する。
【0215】
これに代って助因子再生のためにアルコールデヒドロゲナーゼADH−Tb、ADH−LbおよびADH−msが提案されている(Fossati,E.et.al.,Biotechnol Bioeng,2006,93(6):p.1216−20)。ADHはNADPの再生と同時に2−プロパノールをアセトンに変換する。
【0216】
NADHまたはNADの再生のための他の2級アルコールデヒドロゲナーゼは、Candida属およびPichia属のイーストから単離されるものであり、例えば以下のものがある。Candida parapsilosis(CPCR)(US5,523,223,US5,763,235;Enzyme Microb.Technol.1993 Nov;15(II):950−8);Pichia capsulata(DE 10327454.4);Pichia farinosa CA 1261/2005,K1.C12N);Pichia finlandica (EP1179595A1);Candida nemodendra(A 1261/2005,K1.C12N);Lodderomyces elongisporus (A 1261/2005,K1.C12N);およびPichia stipidis (A 1261/2005,K1.C12N)からのカルボニルレダクターゼ。加えてNADHの再生はActinobacteriaのクラスの細菌、例えばRhodococcus erythropolis (US5,523,223);Norcardia fusca(Biosci.Biotechnol.Biochem.,63(10)(1999),p.1721−1729;Appl.Microbiol.Biotechnol.2003 Sep:62(4):380−6,Epub 2003 Apr 26);Rhodocuccus ruber(J.Org.Chem.2003 Jan 24;8(2):402−6)またはMicrobacterium Spec.(A 1261/2005,K1.C12N)から単離された2級アルコールデヒドロゲナーゼで実施することもできる。
【0217】
NADPHまたはNADPの再生のために適切な2級アルコールデヒドロゲナーゼ/オキシドレダクターゼは、例えば、Luctobacillus kefir(US5,200,335);Lactobacillus Drevis(DE19610984A1,Acta crystallogr.D.Biol.Crystallogr.2000 Dec;56 Pt12:1696−8);Lactobacillus minor(DE 10119274);Leuconostoc carnosum(A 1261/2005,K1.C12N)からのLactobacillaes属の生物から単離されたもの、またはThemoanerobium brockii,Themoanerobium ethanolicusまたはClostridium beijerinckiiからのものである。
【0218】
ラクテートデヒドロゲナーゼ(LDH,NADの再生と共にピルベートのラクテートへの反応)はEP−A−1731618に記載されている。
【0219】
助因子再生のための好適な他のデヒドロゲナーゼはグルコースデヒドロゲナーゼ、少なくともギ酸をCOへの酸化を触媒するホルメートデヒドロゲナーゼ、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ、またはホスファイトデヒドロゲナーゼである。
【0220】
実験の部
もし他に詳細が与えられていなければ、本発明の文脈において実施されるクローニング工程、例えばPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)、制限切断、アガロースゲル電気泳動、DNAフラグメントの精製、ニトロセルロースまたはナイロン膜への核酸の転写、DNAフラグメントの連結、微生物の形質転換、微生物の培養、ファージの複製、および組換えDNAの配列分析は、上で引用したSambrook et al.(1989)の記載のとおりに実施することができる。
【0221】
相同組換えによるノックアウト実験は、K.Datsenko and Wanner(PNAS June 6,2000,vol.97,no.12,6640−6645)の記載に従って行われる。
【0222】
A.一般的詳細
1.材料
【表4】
【0223】
2.方法
2.1 12α−HSDH活性測定のための標準条件
この活性は以下のように定義される。この酵素1U(1単位)は、リン酸カリウム緩衝液(50mM,pH8.0)中の5mMコール酸溶液の1μmol/分の室温(すなわち約20℃−23℃)における反応を触媒する酵素の量に相当する。
【0224】
反応混合液は、全容積1ml中、
50mMリン酸カリウム緩衝液、pH8.0 880μl
100mMコール酸(水に溶解、2M KOHでpH8に調節) 10μl
酵素溶液(上の緩衝液中1ないし10U/mlの範囲) 10μl
1mM NADP(上の緩衝液中)(これで反応がスタート) 100μl
を有する。
【0225】
340nmにおいて吸収の増加を測定し、そして活性は6.22mM−1xcm−1のモル消衰係数を用いて酵素単位(Uすなわちμmol/分)として計算される。
【0226】
2.2 7β−HSDH活性測定のための標準条件
反応混合物は、全容積1ml中、
50mMリン酸カリウム緩衝液、pH8.0 880μl
10mM UDCA(水に溶解、pH8.0) 10μl
酵素溶液(上の緩衝液中1ないし10U/mlの範囲) 10μl
1mM NADP(上の緩衝液中)
100μl
を含有する。
【0227】
340nmにおける吸収の増加を測定し、そして活性は6.22mM−1xcm−1のモル消衰係数を用いて酵素単位(Uすなわちμmol/分)として計算される。
【0228】
2.3 コール酸の反応生成物の分析のためのHPLC法カラム:Purospher STAR RP−18(Hitbar RT125−4 プレパック、プレカラム LiChro(ART STAR RP18,Merck)HPLCシステム:LC20AD(島津、日本)
フロー:1ml/分
サンプル:1mg/mlにおいて20μl
検出波長:200nm
【表5】
保持時間:
7−ケト−3,12−デヒドロキシコラン酸 7.5分
コール酸 13.5分
【0229】
3.発現ベクターとプラスミドおよびそれらの生産
pIJ773(配列同定番号1)
このプラスミドpIJ773は、アパラマ抵抗(B.Gust et al. PNAS February 18, 2003 vol.100,No.4,1541−1546)をコードする遺伝子を含んである。この抵抗は組換えが行われた後の選別のために必要である。
【0230】
pJOE6038.1(pIJ790から誘導)(配列同定番号2)
このプラスミドpJOE6038.1(B.Gust et al. PNAS February 18, 2003 vol.100,No.4,1541−1546)は、Gam,BetおよびExoの3遺伝子よりなるラムダレッド組換えシステムを含んでいる(K.Murthy,J.Bacteriology,Apr.1998,p.2063−2071)。Gamは宿主エクソヌクレアーゼRec BCD Vを阻害し、そしてBetとExoが組換えを実施するのを可能にする。
【0231】
pCP20
選択マークの切り出しのため、このプラスミドpCP20(K.Datsenko and B.Wanner,PNAS June 6,2000 vol.97,No.12,6640−6645)が使用され、切り出しのために必要なFLPレコンビナーゼをコードする。FLPレコンビナーゼはDNAをFRT部位の間で切断する。
【0232】
pET28a(+)
pET28a(+)(Novagen,Darmstadt)は、T7プロモーターおよび転写スタートのコントロールのもとにMCSを含み、そして12α−HSDHの発現に役立つベクターである。発現はイソプロピル−B−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)によって誘発される。
【0233】
pET28a(+)−7β−HSDH
このプラスミドは以下のように調製した(出願人のPCT/EP2010/068576も参照)。
【0234】
最初17β−HSDHコード配列を増幅した。鋳型としてCollinsella aerofaciens ATCC25986(DSM3979)のゲノムDNAと、プライマー
5’−gggaattcCATATGAACCTGAGGGAGAAGTA−3’(配列同定番号26)と、
5’−cccAAGCTTTAGTCGCGGTAGAACGA−3’(配列同定番号27)を使用してPCR産物を得た。プライマー配列中のNdeIおよびHindIII切断部位はアンダーラインで示してある。PCR産物はPCR精製キット(Qiagen)により精製し、次に酵素NdeIおよびHindIIIを用いて切断した。
【0235】
消化したPCR産物は精製し、そして発現ベクター産物のためT4リガーゼを用いてpET−28(a)(+)にクローンされた。得られた発現構造体は次にE.ColiDH5の細胞に形質導入された。期待されるタンパクは、信号ペプチドとN−末端6xHisタグとトロンビン切断部位を含む20のアミノ酸残基を含むべきである。挿入したDNAの配列は配列決定によってチェックされた(配列同定番号24および25参照)。
【0236】
pET22b(+)3α−HSDH
これはComamonas testosteroniからの3α−HSDH配列(配列同定番号28および29を参照)が慣用のやり方で切断部位NdeIおよびEcoRIを介してクローンされたpET22b(+)ベクターである(Oppermann et al.,J.Biochem.1996,241(3):744−749)。
【0237】
pET21a(+)FDH D221G
これはMycobacterium vaccae N10からのホルメートデヒドロゲナーゼ(配列同定番号32)が切断部位NaeIおよびEcoRIを介してクローンされたpET21a(+)ベクターである。部位指向突然変異生成により、ホルメートデヒドロゲナーゼの位置221(位置1のメチオニンは考慮しない)または位置222(位置1のメチオニンから計算:配列同定番号38および23参照)がグリシン残基で置換された。このようにして得られたFDH突然変異体はNADHばかりでなくNADPHも再生することができる。ホルメートデヒドロゲナーゼはヌクレオチド配列の位置1202に(スタートコドンATGを考慮に入れて計算)1個の塩基欠失を有し、これは最後のアミノ酸バリンのアラニンへの置換に導く。同時にこの塩基欠失は停止コドンの遮断と、もともと読取り枠外にあったHisタグの活性化へ導く(配列同定番号22および23参照)(HisタグなしのFDHD221Gについては配列同定番号37および38を見よ)。
【0238】
発現ベクターは以下のように調製された(本出願人のEP出願10015726を見よ)。
a)pET21a(+)のクローニング
Biology Department of Moscow State University,Russiaのカルチャーコレクションから得たMycobacterium vaccae N10(寄託番号43292)のゲノムDNAが増幅の鋳型として役立つ。増幅のプライマーは、Eurofins MWG GmbH,Ebersbergから注文し得た以下の配列であった。
【0239】
【化15】
後方プライマーはEcoRI切断部位を含み、前方プライマーはNdeI切断部位を含んでいる。
【0240】
PCRバッチおよびPCRプログラムは下表に示されている。
【0241】
Mycobacterium vaccaeからのホルメートデヒドロゲナーゼの増幅のためのPCRバッチ
【表6】
【0242】
Mycobacterium vaccaeからのホルメートデヒドロゲナーゼの増幅のためのPCRプログラム
【表7】
水に溶解したDNA(pET21a(+)またはFDH−PCR生成物)が10xNE緩衝液EcoR1の5μlと、Ndel(20U/mL)の2.5μlと、EcoRI(20U/mL)の2.5μL(各場合New England Biolabs,Frankfurt)とで処理され、そして蒸留水で全体積50μlにされた。バッチは各場合37℃で1時間インキュベートされた。その後切断したDNAフラグメントは1%アガロースゲル(アガロース1%w/v,臭化エチジウム0.05%u/v)に適用され、DNAフラグメントが12UVにおいて55分の電気泳動によって分離された。その後正しいサイズのバンド(FDH遺伝子1.2kb、pET21a(+)プラスミド5.4kb)がアガロースゲルからメスで切り取られ、製造者のプロトコールに従ってQIAQuick Gel抽出キット(QIAGEN,Hilden)を使って単離された。
【0243】
切断したベクターDNA100ngと切断したFDH−DNA111ngとがT4リガーゼ(3U/μL)の1μlと10メリガーゼ緩衝液の1μl(各場合New England Biolabs,Frankfurt)で処理され、そして蒸留水で全体積10μlへもたらされた。リゲーションバッチは4℃において一夜インキュベートされた。
【0244】
リゲーション工程終了後、リゲーションバッチ10μLが標準的プロトコールに従って生成された化学的に適格なE.ColiDH5αの200μLへ加えられた。その後氷上のインキュベーション工程30分間行われ、42℃におけるヒートショック(90秒)が続いた。その後無菌LB培地600μlが形質転換バッチへ加えられ、そして細胞が振とうインキュベーター中200rpmおよび37℃において45分間インキュベートされた。次の工程においてベンチ遠心機中3000rpmにおいて60秒遠心され、上清700μlが捨てられ、細胞は残りの上清中に再懸濁され、アンピシリン100mg/Lを加えたLB寒天プレート上にプレートアウトされた。その後この寒天プレートは37℃において一夜インキュベートされる。
【0245】
b)pET21a(+)FDH D221Gの生産
以下のプライマーが使用された。
【0246】
【化16】
最初、mtlプライマーとNI_fdh_Rプライマーの助けにより、二つの相補的メガプライマーのセットが生産された。使用した鋳型は、プラスミドpET21a(+)FDHであった。使用したPCRプログラムは次表に示されている。
【0247】
メガプライマーPCRプログラム
【表8】
プライマーmtlとプライマーNI_fdh_Rの組合せにより、メガプライマーの長さは650bpへ変化する。1回目のこのPCR産物を使用し、ゲル電気泳動およびゲルからの所望のバンドの単離が行われる。第2のPCRは、プライマーとしてこのメガプライマー、そして鋳型としてプラスミドDNA(pETfdh)を使用し、全プラスミドPCRとして実施される。以下の表は全プラスミドPCRのための反応バッチと温度スキームを示す。
2xEZCloneミックス、EZClone溶液1、1.1kbマーカーおよびDpn1は、GeneMorphIIEZClone Domain Mutagenesis キット(Stratagene)から得た。
【0248】
MEGA WHOP PCRのためのバッチ(全体積50μL)
【表9】
このPCRの第1工程(68℃、5分)は、MEGA WHOP PCRに使用したポリメラーゼの3’−75’エクソヌクレアーゼ活性により、Taqポリメラーゼによって非特異的に付属する塩基を除去する役目をする。
【0249】
MEGA WHOPのPCRプログラム
【表10】
このPCR産物はE.Coliにおいてのみ閉じている1本鎖中断を有する2本鎖プラスミドである。このPCR産物50μLへDpnlの10Uが加えられ、バッチは37℃において2時間インキュベートされた。Dpnlはメチル化DNA,すなわち使用した鋳型DNAのみを分解するが、しかしメガプライマーまたは合成したプラスミドは分解しない。鋳型プラスミドはメチル化した出発DNAを得るためdam株(DH10BまたはJM109のような)を用いて製造しなければならない。
【0250】
このようにして前述した発現プラスミドであるpET21a(+)FDH D221Gが得られる。
【0251】
4.微生物
株 Escherichia coli BL21(DE3)
遺伝子型 FompTgal dcmIon hsdS(r
λ(DE3[1acI IacUV5 T7gene1 ind1 sam7 nin5])
【0252】
B.実施例
実施例1:E.Coli株BL21(DE3)の7α−HSDH欠失変異体(E.Coli BL21(DE3)Δ7α−HSDH)(タイプ1)(相同組換えによるノックアウト)の生産
【0253】
1.1 E.Coli BL21(DE3)からの7α−HSDHの配列情報
アミノ酸配列(配列番号10)
長さ:255アミノ酸
タイプ:タンパク
起源:E.Coli BL21(DE3)
【化17】
【0254】
核酸配列(配列同定番号9)
長さ:768塩基対
タイプ:核酸
起源:E.Coli BL21(DE3)
アクセッション:NC_012971REGION:164270.1643237
【化18】
【0255】
1.2 アパラマイシン欠失カセットの生産
E.Coli BL21(DE3)からの7α−HSDHをノックアウトするため以下のプライマーが製造された。
【化19】
7α−HSDHの配列に対し相同配列にはアンダーラインがしてあり、ここで前方プライマーから
VFNSDENLRLDGK (N→C)
がそして後方プライマーから
TVSGGGVQELN (N→C)
がコードされる。
【0256】
アパラマイシン抵抗カセットのための相同配列はイタリックになっている。プラスミドpIJ773からのアパラマイシン抵抗カセットは両脇をFRT部位で挟まれ(B.Gust et al.PNAS February 18, 2003,vol.100,No.4,1541−1546)、組換え実施後ゲノムから再び除去されることを許容する。
【0257】
鋳型としてプラスミドpIJ773からのアパラマイシン抵抗カセットを用いたPCRはSambrook(1998)のような標準的プロトコールに従って実施された。7α−HSDHの遺伝子からの二つの相同性アームを有する製造されたPCR産物は精製された。
【0258】
1.3 標準的配列の組換え/欠失
pIJ790(B.Gust et al.PNAS February 18, 2003,vol.100,No.4,1541−1546)の反転したNhel切断部位を備えたプラスミドpJOE6038.1はエクソヌクレアーゼ(ラムダレッドレコンビナーゼ、K.Murphy;J.Bacteriology Apr.1998、p.2063−2071)をコードする。このプラスミドpJOE6038.1は温度感受性であり、37℃において培養によって失われる。プラスミドpJOE6038.1はエレクトロポレーション(25μF,200オームおよび2.5kV)によってE.Coli BL21(DE3)に形質導入された。1コロニーをLBの5ml中に取り、30℃で一夜培養した。LB培地40mlが1:100で接種され、30℃でインキュベートされた。OD600約0.3において、培養物が0.4%L−アラビノースで誘発され、組換えを可能とするエクソヌクレアーゼ(ラムダレッドレコンビナーゼ)を発現させるため37℃で1時間インキュベートされた。
【0259】
細胞を遠心分離し、氷冷水30mlで洗った。細胞を再び遠心分離し、氷水700μlで再懸濁した。この懸濁液50μlはPCR産物(上の工程1からの)5μlと共に氷上で30分インキュベートされた。エレクトロポレーション後(25μF、200オーム、2.5kV)、予冷したLB培地1mlを直ちにそれへピペットした。細胞は37℃において2時間45分インキュベートされた。次に細胞はLBアパラマイシン寒天プレート上にプレートアウトされた。1コロニーがピックアップされた。7α−HSDHでのコロニーPCRは1500bsバンド(アパラマイシン抵抗カ)を示した。このことは、7α−HSDHの遺伝子が置換され、そしてアパラマイシン抵抗がゲノム中に集積したことを示す。(図1を見よ)。このようにして得られたノックアウト株は、E.Coli BL21(DE3)Δ7α−HSDH Aparと命名された。
【0260】
1.4 抵抗の切除
二つのFRT部位によって挟まれたノックアウトのための抵抗遺伝子は再び切り出さなければならない。切り出しのため、必要なFLPレコンビナーゼをコードするプラスミドpCP20(K.Datsenko and B.Wanner,PNAS June 6,2000,vol.97,No.12,6640−6645)が使用される。プラスミドpCP20も温度感受性であり、37℃における培養によって失われる。プラスミドpCP20はノックアウト株E.Coli BL21(DE3)Δ7α−HSDH中にエレクトロポレーション(25μF,200オーム、2.5kV)によって形質導入される。4コロニーがLB−0上にすじつけされ、42℃で一夜培養される。FLPレコンビナーゼが発現され、アパラマイシン抵抗遺伝子が切り出される。このようにしてノックアウト株E.Coli BL21(DE3)Δ7α−HSDHが得られる。
【0261】
抵抗の損失テストのため、LBアパラマイシン培地およびLB−0培地上に50コロニーがすじつけされる。LB−0上で増殖するコロニーだけがもはやアパラマイシン抵抗性を持っていない。1コロニーをLB5ml中に取り、コール酸20mMを培養物5mlへ加える。HPLCによって酸化物7−ケト−3,12−ジヒドロキシコール酸(RT:7.5分)がノックアウト株では検出できなかった。しかしながらE.Coli BL21(DE3)はコール酸に対して7α−HSDH活性を明らかに示した(RT:13.5分)。このように7α−HSDH遺伝子は成功的にノックアウトされた(図2を見よ)。このように7α−HSDHなしの株E.Coli BL21(DE3)Δ7α−HSDHが成功して作られた。
【0262】
実施例2 E.Coli BL21(DE3)Δ7α−HSDH(タイプ1)を用いる12α−HSDHの不均質発現
【0263】
T7プロモーターのコントロール下にあるMCSと転写スタートとを含み、T7ターミネーターを有するベクターpET28a(+)(Novagen,Darmstadt)が12α−HSDHの発現に用いられた。発現はイソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)によって誘発される。
【0264】
このため、配列をコードする12α−HSDH(ショートバージョン)がPCR増幅された(本出願人のPCT/EP2009/002190も参照)。PCR産物は、鋳型としてClostridium sp.グループ株48−50のゲノムDNAと、プライマー対、
【化20】
を用いて得られた。イタリック体の核酸基は余剰である。太字は切断部位をコードする。他の基は12α−HSDHへ相同の配列である。
【0265】
PCR産物はアガロースゲルへ適用され、分離され、そして切り出された。その後NdeIおよびBamHIで制限され、そしてpET28a(+)ベクターとリゲートされ、そしてNdeIおよびBamHIで切断された。
【0266】
N−末端His−タグは以下の配列番号7および8のプライマーを使用するQuick−Changeによりその後除去された。プラスミドを配列決定し、検証した。
【化21】
【0267】
E.Coli BL21(DE3)Δ7α−HSDHを用いる発現の研究のため、以下に示したプロトコールに従って化学的に適格な細胞が生産された。12α−HSDHを有する(His−タグなし)のベクターpET28a(+)(Novagen,T7プロモーターおよびカナマイシン抵抗を含んでいる)がE.Coli BL21(DE3)Δ7α−HSDHに形質導入された。
【0268】
化学的に適格な細胞の生産
E.Coliの一夜培養物1mlがLB培地100ml中に接種された。細胞は37℃および180rpmにおいてOD6000.4〜0.6までインキュベートされた。細胞は氷上で15分冷却され、4℃および4000rpmにおいて遠心された。上清を除去し、細胞を予め冷やしたTfbI溶液(酢酸カリウム30mM,塩化ルビジウム100mM,塩化カルシウム10mM,塩化マグネシウム50mM、グリセロール15%)40mlに再懸濁した。氷上で15分インキュベーション後、細胞を遠心分離した。上清は除去した。細胞を予め冷やしたTfbII溶液(MOPS10mM,塩化カルシウム75mM,塩化ルビジウム10mM,グリセロール15%)4mlに再懸濁した。形質転換のため、適格細胞200μl中にプラスミドDNA1μlを加え、混合物を氷上で10分インキュベートした。細胞のヒートショックは42℃で40秒実施された。次にLB培地800μlが直ちに加えられた。細胞は37℃および200rpmにおいて1時間インキュベートされた。形質転換した細胞を遠心分離し、上清を除去した。ペレットをLB寒天プレート上にプレートアウトした。プレートをコロニー生産のため37℃でインキュベートした。1コロニーをLB5mlに取った。4時間後、LB50mlにプレ培養物5mlを接種した。約0.8のOD600において、細胞を0.5mM・IPTGで誘発した。細胞を25℃および140rpmで一夜インキュベートした。細胞を再び遠心分離し、再懸濁し、消化した。上に示した方法に従って12α−HSDH活性が決定された。12α−HSDHの収率はLB培地1Lあたり約50kUであった。
【0269】
実施例3 E.Coli 7α−HSDHノックアウト突然変異体
(E.Coli BL29(DE3)hdhAKanR)(タイプ2)の生産(遺伝子破壊によるノックアウト)
【0270】
目的は、発現株E.Coli BL21(DE3)の妨害7α−HSDH活性の欠失である。
【0271】
以下の方法を使用し、抗生物質抵抗遺伝子が7α−HSDHの標的遺伝子中に挿入され、それにより標的遺伝子がスイッチオフされる。
【0272】
3.1 E.Coli BL21(DE3)からの7α−HSDHのための配列情報
実施例1を参照。
【0273】
3.2 使用したプライマー
E.Coli BL21(DE3)からの7α−HSDHのスイッチオフのため以下のプライマーが作成された。
【0274】
TargeTronTM遺伝子ノックアウトシステム(セクション3.3を見よ)に使用される。LI.LtrBイントロンの再ターゲティングのためのプライマー:
【化22】
(対照反応のためユーザーガイドに従った)
【0275】
以下の部位への再プログラムされたイントロンの挿入位置
【化23】
【0276】
3.3 ノックアウト突然変異体の作成
ノックアウトされた突然変異体の作成は、製造者の指図書に従ってSigma AldrichのTargeTron遺伝子ノックアウトシステムにより実施された。それはQiagenのQIAquick PCR精製キットのTargeTron遺伝子ノックアウトシステムのステップB.6.に従ったPCR生産物の精製に使用された。
【0277】
リニヤー化されたpACD4K−Cベルター中へHidIII/BsrGI消化イントロンのリゲーションは以下のように実施された。反応は16℃で一夜行われた。
20μlバッチ:
2μl PACD4K−Cリニヤーベクター(40ng)
6μl HindIII/BsrGI消化イントロンPCR産物
2μl ATP(10mM)
2μl リガーゼ緩衝液(10x)(Fermentas)
2μl T4リガーゼ(Fermenta)
6μl H
【0278】
リゲーション反応溶液5μlを化学的に適格なE.Coli BL21(DE3)細胞200μlへ加え、氷上で20分インキュベートした。さらなる形質転換は製造者の指示書によって実施した。
【0279】
形質転換バッチをカナマイシン33μg/mLを含有するLB寒天プレート上にプレートアウトした。カナマイシン抵抗性細胞を採取し、各場合LB一夜培養物(各場合カナマイシン溶液5μl(33mg/mL)を含有)中に数夜再接種した。最後にLB培養物(カナマイシン溶液(33mg/mL)200μl含有)200mlへ一夜培養物を接種し、シェーカーインキュベーター中37℃および180rpmにおいて5時間インキュベートした。次に温度を42℃へ1時間上げた。LB一夜培養物5mLへこの培養物(各場合カナマイシン溶液(33mg/mL)を含む)を接種した。37℃および180rpmにおいて一夜インキュベーション後、培養物をカナマイシン33μg/mL含有するLB寒天プレート上にすじつけした。37℃において一夜インキュベーション後、コロニーを採取し、カナマイシン33μg/mLとクロラムフェニコール34μg/mLを含んでいるLB寒天プレート上にすじつけした。
【0280】
37℃で一夜インキュベートション後、クロラムフェニコール抵抗性突然変異株が見出された。これは誘発し得るノックアウトシステムを支持し、そしてノックアウト成功後もはや必要としないプラスミドの消失を確認するために必要である。
【0281】
カナマイシン抵抗性は挿入によってのみ活性である。それはベクターpACD4K−C上に欠失を有する。カナマイシンおよびクロラムフェニコールの両方の上で増殖するコロニーは、このため所望のノックアウトを最大の確率で含んでいるが、さらにpACD4K−Cベクターも含んでいる。もし菌株が付加的にのみカナマイシン抵抗性であるならばそれらはpACD4K−Cだけでなく、所望のノックアウトも失っている。
【0282】
3.4 ノックアウトの検出
プライマー
【化24】
を使用するコロニーPCRによって7α−HSDH遺伝子が増幅される。
【0283】
生成したフラグメントは2.5〜3kbの長さを有し、プライマー7alpha−ko−check_fwdを使用して配列決定された。この配列決定に基づいて、7α−HSDHのDNA配列はpACD4Kベクターの挿入によって中断されており、7α−HSDHのノックアウトが生じたことを検出することができた。(配列決定データは示さず)。
【0284】
3.5 ノックアウト株での12α−および7β−HSDH突然変異体の発現
このノックアウト株の有用性は、例えばシエーカーフラスコスケールの12α−および7β−HSDH突然変異体の酵素発現によって検証された(結果は示さず)。
【0285】
実施例4:各場合ノックアウト株E.Coli BL21(DE3)Δ7α−HSDH(タイプ1)の使用により生産された、7β−HSDH、FHD D221Gおよび3α−HSDHによるDHCAの12−ケト−UDCAへの酵素反応
【0286】
この実施例においては、特別のFDH突然変異体を用いる同時助因子再生を伴うDHCAの12−ケト−UDCAへの二段階酵素反応が検証される。使用したFDH突然変異体は助因子としてNADPとNADの両方を受け入れるので、NADH依存性3α−HSDHのための反応バッチへ追加の助因子再生システムを導入する必要はない。
【0287】
例示のため、以下にグラフの形で示した二つの部分反応によって反応が示される。
【化25】
【0288】
この目的のため、Collinsella aerofaciensからの酵素7β−HSDHと、Comamonas testosteroniからの酵素3α−HSDHのと、上の実施例1に従って作ったノックアウト株E.Coli BL21(DE3)Δ7α−HSDH(タイプ1)に互いに別々に調製された。
【0289】
4.1 使用したプラスミド:
7α−HSDH,3α−HSDDおよびFDH D221Gの発現のためのプラスミド:
pET28a(+)−7β−HSDH
pET22b(+)−3α−HSDH
pET21a(+)−FDH−D221G
【0290】
4.2 細菌株および培養条件:
実施例1に従って作ったノックアウト株E.Coli BL21(DE3)Δ7β−HSDH(タイプ1)が必要な抗生物質を含有するLB培地中で培養された。0.5mM IPTGで誘発し、OD600=0.8に到達後、インキュベーションが25℃および140rpmにおいて12時間継続された。
【0291】
4.3 酵素過発現および精製
E.Coli BL21(DE3)Δ7α−HSDH中の7β−HSDH、3α−HSDHおよびFDH突然変異体D221Gの過発現、および酵素精製は以下の条件下で行われた。
【0292】
E.Coliノックアウト株が発現構造体を用いて形質転換された。このため発現構造体を含有する株がカナマイシン30μg/mlを含有するLB培地(2リットルシェーカーフラスコ中2x400ml)中で増殖された。
【0293】
遠心により(10000xg、15分、4℃)細胞が収穫された。ペレットがリン酸緩衝液(50mM,pH8,0.1M PMSF含有)20ml中に再懸濁された。細菌はSonifier超音波装置(Bransonドイツ)を用いて1分間の超音波処理(40W出力、40%作業インターバルおよび1分間ブレーク)によりコンスタント冷却下消化された。タンパク濃度が製造者の指令書に従ってBCAテストキット(テルモUSA)を用いて決定された。さらに、サンプルが12.5% SDS−PAGEにより、そしてCoomassieブリリアントブルー染色により分析された。タンパクの純度はScion Image Beta 4.0.2(Scion USA)を用いてデンシトメトリーにより決定された。7β−HSDH、3α−HSDHおよびFDHの細胞抽出物は粗抽出物であった。7α−HSDHは既にノックアウトされているので、さらなる精製は余分であった。
【0294】
培養培地リットル当たりの収量(シェーカーフラスコ中OD600約6において)は次のとおりであった。
7β−HSDH:3883U(DHCAおよびNADPHに対して)
3α−HSDH:6853U(DHCAおよびNADHに対して)
FDH変異体 :47U(ギ酸ナトリウムおよびNADに対して)
【0295】
タンパクの含量および純粋はSDS−PAGEおよびScion Image Beta 4.0.2(Scion USA)によるデンシトメーター走査によって決定された。
【0296】
4.4 調製的スケールにおける12−ケト−UDCAの酵素合成
7β−HSDH(2.4U/ml)、3α−HSDH(2.4U/ml),FDH D221G(0.325U/ml),NADP(10μM),NAD(10μM),ギ酸ナトリウム(250mM),DHCA(10mM,3.2g)およびリン酸カリウム緩衝液(50mM,pH6)を含んでいる反応バッチ800mlを24℃において撹拌した。この実験に使用した3種の酵素すべては追加の精製工程なしで粗抽出物として使用した。12時間後、10kDaのポアサイズを有する膜(Millipore,USA)を用いて限外濾過によって酵素を除くことによって反応を停止した。濾液中の生産物を塩酸でpH2へ酸性化し、その後紙で濾過することによって精製した。60℃で一夜乾燥後、所望の生産物2.9gが得られた。
【0297】
分析データ(一部):
H NMR(重水素化DMSO,500MH)δ=3.92(2H,m,H−3αおよびH−7β)、
H NMR(重水素化DMSO,125MH)δ=69.38(CH,3−C);δ=69.09(CH,7−C);δ=213.86(C,12−C)
収率90.6%、純度99%
【0298】
配列割り当て表
【表11】
AA=アミノ酸配列
NA=核酸配列
L=ロング形
K=ショート形
図1
図2A
図2B
図2C
図3
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]