(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、車両の高度が高いほど、アイドル回転数を大きくするように制御すると、標高が比較的低い低地を車両が走行する場合と高地を走行する場合とで、運転者に違和感を感じさせてしまうことがある。例えば、複数のギヤ段を有する変速機が搭載された車両において、同一のギヤ段で低地と高地を走行する場合、前者に比べて後者でアイドル回転数が大きく制御されるため、運転者がアクセルペダルを踏み込まない状態で走行するアイドル走行時には、高地を走行する際の車速が、低地を走行する場合に比べて速くなってしまう。このため、運転者にとっては、同一のギヤ段でアイドル走行しているにもかかわらず、思った以上に車速が速くなってしまい、違和感を感じることがある。
【0006】
また、アイドル走行によって、例えば雪道をゆっくりと上ったり、坂道を惰性で下ったりする場合などには、内燃機関の回転数がほとんど変わらないのに、車両の高度が大きく変化することがある。この場合、上記と同様にアイドル回転数が制御されると、運転者にとっては、アクセルペダルを踏み込んでいないにもかかわらず、アイドル回転数が変化するために、違和感を感じることがある。
【0007】
さらに、内燃機関に直接又は間接的に接続され、車両に搭載された部品において、内燃機関の回転に伴い、所定の回転数で共振が発生することがある。この場合、アイドル回転数が、その部品において共振する回転数である共振回転数に一致すると、運転者にとっては、その部品が大きく振動するために、乗り心地が不快に感じることがある。
【0008】
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたものであり、アイドル回転数を車両の高度に応じて適切に調整することができ、それにより、車両の高度にかかわらず、良好な運転性及び乗り心地を得ることができる内燃機関のアイドル回転数制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、請求項1に係る発明は、内燃機関3を動力源として搭載する車両Vにおいて、内燃機関のアイドル回転数を制御する内燃機関のアイドル回転数制御装置1であって、車両の高度Hを検出する高度検出手段(実施形態における(以下、本項において同じ)大気圧センサ10)と、検出された高度に応じて、内燃機関のアイドル回転数(目標エンジン回転数NE_cmd)を調整するアイドル回転数調整手段(ECU2)と、内燃機関に接続され、複数のギヤ段を有する変速機4において、ギヤ段NGRを検出するギヤ段検出手段(ECU2)と、を備え、アイドル回転数調整手段は、
車両の走行中において、検出されたギヤ段が所定ギヤ段(ギヤ段のしきい値NGR_th)以上
になったとき(ステップ4:YES)に、アイドル回転数の変更を禁止する(ステップ6)ことを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、内燃機関を動力源として搭載する車両において、その高度が検出され、検出された高度に応じて、アイドル回転数調整手段によって内燃機関のアイドル回転数が調整される。具体的には、車両の高度が高いほど、内燃機関への吸入空気の密度が低下することで、内燃機関のアイドル回転が不安定になるのを回避するために、アイドル回転数を大きくするように制御する。
【0011】
また、
車両の走行中において、内燃機関に接続された変速機のギヤ段が検出され、その検出されたギヤ段が、所定ギヤ段以上
になったときには、アイドル回転数調整手段によるアイドル回転数の変更が禁止される。例えば、車両の高度が高くなり、本来であれば、アイドル回転数が大きくなるように制御される場合であっても、変速機のギヤ段が所定ギヤ段以上であるときには、アイドル回転数が大きくなるように制御されることはない。これにより、車両が高地を走行し、ギヤ段が所定ギヤ段以上になっても、そのとき以上にアイドル回転数が上昇することがないので、アイドル走行時の車速が速くなることはない。したがって、従来と異なり、運転者に違和感を感じさせるのを防止することができる。
【0012】
請求項2に係る発明は、内燃機関3を動力源として搭載する車両Vにおいて、内燃機関のアイドル回転数を制御する内燃機関のアイドル回転数制御装置1であって、車両の高度Hを検出する高度検出手段(大気圧センサ10)と、検出された高度に応じて、内燃機関のアイドル回転数を調整するアイドル回転数調整手段(ECU2)と、内燃機関の回転数NEを検出する回転数検出手段(ECU2)と、を備え、アイドル回転数調整手段は、
車両のアクセルペダルが運転者に踏み込まれることによって、検出された回転数が所定回転数(回転数のしきい値NE_th)以上
に上昇したとき(ステップ3:YES)に、内燃機関のアイドル回転数の調整を実行する(ステップ5)ことを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、前述した請求項1と同様、車両の高度に応じて、内燃機関のアイドル回転数が調整される。また、
車両のアクセルペダルが運転者に踏み込まれることによって、検出された内燃機関の回転数が所定回転数以上
に上昇したときに、アイドル回転数調整手段によって、アイドル回転数の調整が実行される。
【0014】
前述したように、アイドル走行により、例えば雪道をゆっくりと上ったり、坂道を惰性で下ったりすると、内燃機関の回転数がほとんど変わらないのに、車両の高度が大きく変化することがあり、車両の高度に応じてアイドル回転数が調整されると、そのアイドル回転数が変化することで、車速が大きく変化し、運転者が違和感を感じることがある。そこで、運転者がアクセルペダルを踏み込むことによって、内燃機関の回転数が所定回転数以上になったきに、アイドル回転数の調整を実行することにより、運転者の意図を反映させながら、アイドル回転数の調整を行うことができ、運転者に違和感を感じさせるのを防止することができる。
【0015】
請求項3に係る発明は、内燃機関3を動力源として搭載する車両Vにおいて、内燃機関のアイドル回転数を制御する内燃機関のアイドル回転数制御装置1であって、車両の高度Hを検出する高度検出手段(大気圧センサ10)と、検出された高度に応じて、内燃機関のアイドル回転数を調整するアイドル回転数調整手段(ECU2)と、内燃機関に直接又は間接的に接続されかつ車両に設置された部品について、内燃機関の回転に伴って共振する回転数である共振回転数(NG領域1〜4)を記憶する共振回転数記憶手段(ECU2、ROM2a)と、を備え、アイドル回転数調整手段は、記憶された共振回転数以外において、内燃機関のアイドル回転数の調整を実行する(ステップ5)ことを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、前述した請求項1及び2と同様、車両の高度に応じて、内燃機関のアイドル回転数が調整される。また、内燃機関に直接又は間接的に接続されかつ車両に設置された部品については、共振回転数記憶手段によって共振回転数が記憶されている。アイドル回転数調整手段によるアイドル回転数の調整の際には、記憶された共振回転数以外において、アイドル回転数が調整される。つまり、アイドル回転数は、共振回転数に一致するのを回避するように調整される。これにより、アイドル回転数が共振回転数に一致することはないので、アイドル運転時に上記部品が共振するのを防止することができる。その結果、運転者にとって、良好な運転性及び乗り心地を確保することができる。
【0017】
請求項4に係る発明は、内燃機関3を動力源として搭載する車両Vにおいて、内燃機関のアイドル回転数を制御する内燃機関のアイドル回転数制御装置1であって、車両の高度Hを検出する高度検出手段(大気圧センサ10)と、検出された高度に応じて、内燃機関のアイドル回転数を調整するアイドル回転数調整手段(ECU2)と、内燃機関の回転数NEを検出する回転数検出手段(ECU2)と、内燃機関に直接又は間接的に接続されかつ車両に設置された部品について、内燃機関の回転に伴って共振する回転数である共振回転数(NG領域1〜4)を記憶する共振回転数記憶手段(ECU2、ROM2a)と、を備え、アイドル回転数調整手段は、検出された回転数が所定回転数(回転数のしきい値NE_th)以上のとき(ステップ3:YES)に、記憶された共振回転数以外において、内燃機関のアイドル回転数の調整を実行する(ステップ5)ことを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、前述した請求項1〜3と同様、車両の高度に応じて、内燃機関のアイドル回転数が調整される。また、請求項2と同様に、内燃機関の回転数が検出されるとともに、請求項3と同様に、内燃機関に直接又は間接的に接続されかつ車両に設置された部品の共振回転数が記憶されている。そして、検出された回転数が所定回転数以上のときに、記憶された共振回転数以外において、アイドル回転数が調整される。これにより、前述した請求項2及び3と同様の作用効果、すなわち、運転者の意図を反映させながら、アイドル回転数の調整を行えることで、運転者に違和感を感じさせるのを防止することができ、また、アイドル運転時に上記部品が共振するのを防止できることで、運転者にとって、良好な運転性及び乗り心地を確保することができる。また、内燃機関の回転数がほとんど変わらない状態で、車両の高度が大きく変化する場合でも、内燃機関の回転数が所定回転数以上にならない限り、アイドル回転数は、共振回転数が含まれる領域を超えて大きく変化するように調整されることがない。このように、上記のようなアイドル回転数の調整を防止でき、それにより、運転者に違和感を感じさせるのを効果的に防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態によるアイドル回転数制御装置を適用した内燃機関を概略的に示している。この内燃機関(以下「エンジン」という)3は、動力源として車両Vに搭載され、例えば直列4気筒タイプのディーゼルエンジンである。
【0021】
図2に示すように、エンジン3は、変速機4を介して、駆動輪である前輪Wに接続されている。この変速機4は、前進第1段〜第5段と後進1段の変速段を有するマニュアルトランスミッションである。
【0022】
エンジン3には、クランク角センサ6が設けられており、クランクシャフト3cの回転に伴い、パルス信号であるCRK信号及びTDC信号を、ECU2に出力する。CRK信号は、所定のクランク角(例えば30°)ごとに出力される。ECU2は、CRK信号に基づき、エンジン3の回転数(以下「エンジン回転数」という)NEを算出する。また、TDC信号は、気筒3aのピストン3bが吸気行程開始時のTDC(上死点)付近の所定のクランク角度位置にあることを表す信号であり、本実施形態のような4気筒タイプのエンジン3では、クランク角180°ごとに出力される。
【0023】
変速機4の出力軸5には、その回転数(以下「出力軸回転数」という)NOUTを検出する出力軸回転数センサ7が設けられている。ECU2は、この出力軸回転数NOUTとエンジン回転数NEに基づいて、変速機4で設定されているギヤ段NGRを算出する。このように、ギヤ段NGRが算出されると、変速比も一義的に決まり、ギヤ段NGRが高いほど、変速比はより小さい関係にある。
【0024】
エンジン3のシリンダブロックには、エンジン水温センサ8が設けられている。エンジン水温センサ8は、シリンダブロック内を循環する冷却水の温度であるエンジン水温TWを検出し、それを表す検出信号をECU2に出力する。
【0025】
また、ECU2には、アクセル開度センサ9及び大気圧センサ10が接続されている。アクセル開度センサ9は、図示しないアクセルペダルの操作量であるアクセル開度APを検出し、大気圧センサ10は、大気圧PAを検出し、それらの検出信号がECU2に出力される。この検出された大気圧PAに基づき、ECU2により、車両Vの高度Hが算出される。したがって、大気圧センサ10は、本発明の高度検出手段に相当する。
【0026】
ECU2は、CPU、RAM、ROM2a(共振回転数記憶手段)及びI/Oインターフェース(図示せず)などからなるマイクロコンピュータで構成されており、前述した各種のセンサ6〜10の検出信号などに応じて、エンジン3の運転状態を判別するとともに、各種の制御処理を実行する。なお、本実施形態では、ECU2は、本発明のアイドル回転数調整手段、ギヤ段検出手段及び回転数検出手段に相当する。
【0027】
図3は、ECU2で実行されるエンジン3のアイドル回転数制御処理を示している。本処理は、所定の周期で実行される。
【0028】
本処理ではまず、ステップ1(「S1」と図示。以下同じ)おいて、エンジン3が始動時であるか否かを判別する。具体的には、エンジン回転数NEが0で、エンジン3のスタータスイッチ(図示せず)がON状態になったときなどに、エンジン3が始動時であると判別される。この判別結果がYESのときには、後述するステップ2〜4をスキップし、始動直後に設定すべきアイドル回転数としての目標エンジン回転数NE_cmdを、
図4に示すマップから算出された設定用回転数NE_mapにセットし(ステップ5)、本処理を終了する。
【0029】
図4は、車両Vの高度Hに応じてアイドル回転数を算出するためのマップ(以下「アイドル回転数マップ」という)を示している。このアイドル回転数マップでは、設定用回転数NE_mapは、車両Vの高度Hが所定の高度H1以上において、高いほど大きくなるとともに、複数(本実施形態では4つ)の所定の回転数領域(以下「NG領域」という)において、それらのNG領域を避けるように設定されている。これらのNG領域は、エンジン3に直接又は間接的に接続されかつ車両Vに設置された複数の部品(例えばシートベルトのバックル、エンジンルーム内の各種部品)について、それらの共振回転数の領域があらかじめ設定されたものである。
【0030】
具体的には、第1のNG領域1は、第1回転数NE1よりも小さい所定の領域に設定されている。また、第2のNG領域2は、第2回転数NE2と第3回転数NE3の間の領域に設定されている。また、第3のNG領域3は、第4回転数NE4と第5回転数NE5の間の領域に設定されている。さらに、第4のNG領域4は、第5回転数NE5よりも大きい所定の領域に設定されている。
【0031】
このアイドル回転数マップでは、高度Hが第1高度H1未満のときには、設定用回転数NE_mapが、第1回転数NE1(例えば800rpm)に設定されている。また、高度Hが、第1高度H1以上で第2高度H2未満のとき、第3高度H3以上で第4高度H4未満のとき、及び第5高度H5以上のときには、高度Hが高くなるほど、アイドル回転数を大きくするよう、設定用回転数NE_mapが設定されている。
【0032】
さらに、高度Hが第2高度H2以上で第3高度H3未満のときには、アイドル回転数が第2のNG領域2に設定されるのを回避するために、設定用回転数NE_mapは、第2のNG領域2の上限回転数NE3よりも若干大きい値に設定されている。加えて、高度Hが第4高度H4以上で第5高度H5未満のときには、アイドル回転数が第3のNG領域3に設定されるのを回避するために、設定用回転数NE_mapは、第3のNG領域3の上限回転数NE5よりも若干大きい値に設定されている。
【0033】
上記のように設定されたアイドル回転数マップを用い、前述した
図3のステップ5において、車両Vの高度Hに応じて算出された設定用回転数NE_mapを、目標エンジン回転数NE_cmdとしてセットする。なお、上記の算出された設定用回転数NE_mapを、エンジン水温TWに応じて補正してから、目標エンジン回転数NE_cmdとしてセットしてもよい。
【0034】
そして、エンジン回転数NEが、目標エンジン回転数NE_cmdになるよう、フィードバック制御されることにより、エンジン始動時のアイドル回転数が制御される。
【0035】
前述した
図3のステップ1の判別結果がNOで、エンジン3が始動時でないときには、エンジン回転数NEが、前記設定用回転数NE_map以上であるか否かを判別する(ステップ2)とともに、所定のしきい値NE_th以上であるか否かを判別する(ステップ3)。上記の設定用回転数NE_mapは、前述したアイドル回転数マップに基づき、車両Vの高度Hに応じて算出されるものである。一方、上記のしきい値NE_thは、アイドル回転数の変更を許容するエンジン回転数として、あらかじめ設定されたものである。
【0036】
上記のステップ2又は3の判別結果がNOのときには、そのまま本処理を終了する。一方、ステップ2及び3の判別結果がYESのときには、ステップ4に進み、変速機4のギヤ段NGRが、所定のしきい値NGR_th(例えば第3段)以上であるか否かを判別する。この判別結果がNOのときには、前記ステップ5を実行し、本処理を終了する。一方、ステップ4の判別結果がYESで、ギヤ段NGRがしきい値NGR_th以上のときには、アイドル回転数の変更を禁止すべきとして、そのことを表すフラグF_NGを1にセットし(ステップ6)、本処理を終了する。
【0037】
上記のフラグF_NGは、エンジン3の始動時などに、あらかじめ0にセットされるものであり、F_NG=1のときには、アイドル回転数の変更(上昇)を禁止する。具体的には、目標エンジン回転数NE_cmdが、現在設定されているアイドル回転数を上回らないように制御される。また、この場合には、アイドル回転数としての目標エンジン回転数NE_cmdを、低地において一般に設定される所定回転数(例えば、
図4の第1回転数NE1)にするように制御してもよい。
【0038】
図5及び
図6は、上述したアイドル回転数制御によって得られる動作例を示しており、両図の(a)及び(b)はそれぞれ、走行する車両Vの高度H及び大気圧PAの推移を示しており、
図5(c)〜(e)は、車両Vが上り走行する際の3つの動作例(パターン1〜3)を示す一方、
図6(c)〜(e)は、車両Vが下り走行する際の3つの動作例(パターン4〜6)を示している。
【0039】
図5(a)及び(b)に示すように、車両Vが上り走行すると、その高度Hは次第に高くなり、それに伴い、大気圧PAが次第に小さくなる。
図5(c)に示すパターン1は、車両Vが走行経路の全体にわたり、アイドル走行したときの動作例を示している。このパターン1では、エンジン回転数NEが常時、設定用回転数NE_map及びしきい値NE_thを下回っている(ステップ2:NO、ステップ3:NO)。これにより、目標エンジン回転数NE_cmdは、エンジン始動時に設定された回転数に維持される(ステップ5)。したがって、パターン1の動作例におけるアイドル回転数は、エンジン始動時に設定された目標エンジン回転数NE_cmdと同じ値で、一定に推移する。
【0040】
また、
図5(d)に示すパターン2は、車両Vの走行中、アクセルペダルが2回踏み込まれることで、エンジン回転数NEが2回上昇したときの動作例を示している。より具体的には、1回目のアクセルペダルの踏込みでは(時刻t1〜t2)、エンジン回転数NEが、設定用回転数NE_mapを一旦超えるものの、常時、しきい値NE_thを下回っている(ステップ3:NO)。このため、アイドル回転数としての目標エンジン回転数NE_cmdは、アクセルペダルの踏込み前の回転数がそのまま維持される。
【0041】
一方、2回目のアクセルペダルの踏込みでは(時刻t3〜t6)、エンジン回転数NEが、設定用回転数NE_map及びしきい値NE_thを一旦上回った(時刻t4、ステップ2:YES、ステップ3:YES)後、しきい値NE_thを下回っている(時刻t5、ステップ2:NO)。このため、アイドル回転数としての目標エンジン回転数NE_cmdは、エンジン回転数NEがしきい値NE_th以上になったとき(時刻t4、ステップ3:YES)に、設定用回転数NE_mapに更新される(ステップ5)。この更新は、エンジン回転数NEがしきい値NE_thを下回るとき(時刻t5)まで、継続される。そして、エンジン回転数NEがしきい値NE_thを下回ったとき(時刻t5、ステップ3:NO)には、目標エンジン回転数NE_cmdは、直前に更新された設定用回転数NE_mapに維持される。したがって、2回目のアクセルペダルの踏込み後におけるアイドル回転数は、上記の時刻t5で更新された目標エンジン回転数NE_cmdと同じ値で、一定に推移する。
【0042】
さらに、
図5(e)に示すパターン3は、車両Vの走行中、アクセルペダルが一旦大きく踏み込まれ、その後もアクセルペダルの踏込みが継続したときの動作例を示している。この場合、アクセルペダルの踏み込みにより、エンジン回転数NEが、しきい値NE_th及び設定用回転数NE_mapを上回ったとき(時刻t7、ステップ2:YES、ステップ3:YES)に、目標エンジン回転数NE_cmdが、設定用回転数NE_mapに更新される(ステップ5)。この時刻t7では、設定用回転数NE_mapがしきい値NE_thよりも大きく、その後もアクセルペダルの踏込みが継続され、エンジン回転数NEがしきい値NE_mapを上回っているので、設定用回転数NE_mapによる目標エンジン回転数NE_cmdの更新が継続される。すなわち、このパターン3の動作例では、アイドル回転数を規定するための目標エンジン回転数NE_cmdは、時刻t7以降、設定用回転数NE_mapに従って増大するように推移する。
【0043】
前述したように、
図6は、車両Vが下り走行する際の3つの動作例を、車両Vの高度H及び大気圧PAの推移とともに示している。
図6(a)及び(b)に示すように、車両Vが下り走行すると、その高度Hは次第に低くなり、それに伴い、大気圧PAが次第に大きくなる。
図6(c)に示すパターン4は、車両Vが走行経路の全体にわたり、アイドル走行したときの状態を示している。このパターン4では、エンジン回転数NEが常時、しきい値NE_thを下回り、かつ設定用回転数NE_mapを上回っている(ステップ3:NO、ステップ2:YES)。これにより、目標エンジン回転数NE_cmdは、エンジン始動時に設定された回転数に維持される(ステップ5)。したがって、パターン4の動作例におけるアイドル回転数は、エンジン始動時に設定された目標エンジン回転数NE_cmdと同じ値で、一定に推移する。
【0044】
また、
図6(d)に示すパターン5は、車両Vの走行中、アクセルペダルが3回踏み込まれることで、エンジン回転数NEが3回上昇したときの動作例を示している。より具体的には、1回目のアクセルペダルの踏込みでは(時刻t8〜t11)、エンジン回転数NEが、設定用回転数NE_map及びしきい値NE_thを一旦上回った(時刻t9、ステップ2:YES、ステップ3:YES)後、しきい値NE_thを下回っている(時刻t10、ステップ3:NO)。このため、目標エンジン回転数NE_cmdは、エンジン回転数NEがしきい値NE_thを上回ったとき(時刻t9、ステップ3:YES)に、設定用回転数NE_mapに更新される(ステップ5)。この更新は、エンジン回転数NEがしきい値NE_thを下回るとき(時刻t10)まで、継続される。そして、エンジン回転数NEがしきい値NE_thを下回ったとき(時刻t10、ステップ3:NO)には、目標エンジン回転数NE_cmdは、直前に更新された設定用回転数NE_mapに維持される。
【0045】
その後の2回目のアクセルペダルの踏込みでは(時刻t12〜t13)、エンジン回転数NEが、設定用回転数NE_mapを上回っているものの、常時、しきい値NE_thを下回っている(ステップ3:NO)。このため、目標エンジン回転数NE_cmdは、2回目のアクセルペダルの踏込み前の回転数がそのまま維持される。したがって、1回目及び2回目のアクセルペダルの踏み込み後におけるアイドル回転数は、上記の時刻t10で更新された目標エンジン回転数NE_cmdと同じ値で、一定に推移する。
【0046】
さらにその後の3回目のアクセルペダルの踏込みでは(時刻t14〜t17)、エンジン回転数NEが、設定用回転数NE_map及びしきい値NE_thを一旦上回った(時刻t15、ステップ2:YES、ステップ3:YES)後、しきい値NE_thを下回っている(時刻t16、ステップ3:NO)。このため、目標エンジン回転数NE_cmdは、エンジン回転数NEがしきい値NE_th以上になったとき(時刻t15、ステップ3:YES)に、設定用回転数NE_mapに更新される(ステップ5)。この更新は、エンジン回転数NEがしきい値NE_thを下回るとき(時刻t16)まで、継続される。そして、エンジン回転数NEがしきい値NE_thを下回ったとき(時刻t16、ステップ3:NO)に、目標エンジン回転数NE_cmdは、直前に更新された設定用回転数NE_mapに維持される。したがって、3回目のアクセルペダルの踏込み後におけるアイドル回転数は、上記の時刻t16で更新された目標エンジン回転数NE_cmdと同じ値で、一定に推移する。
【0047】
また、
図6(e)に示すパターン6は、エンジン回転数NEがしきい値NE_thを上回っている状態で、アクセルペダルが踏み込まれ、その後、アイドル走行してから再度、アクセルペダルが踏み込まれたときの動作例を示している。
【0048】
このパターン6の前半のアクセルペダルの踏込みでは(時刻t18〜t20)、エンジン回転数NEが、しきい値NE_thを下回る(時刻t19、ステップ3:NO)まで、目標エンジン回転数NE_cmdは、設定用回転数NE_mapに継続して更新される(ステップ5)。その後、エンジン回転数NEがしきい値NE_thを下回った状態で、アイドル走行しているとき(時刻t20〜t21)には、目標エンジン回転数NE_cmdは、直前に更新された設定用回転数NE_mapに維持される。したがって、前半のアクセルペダルの踏込み後におけるアイドル回転数は、上記の時刻t19で更新された目標エンジン回転数NE_cmdと同じ値で、一定に推移する。
【0049】
一方、後半のアクセルペダルの踏込みでは(時刻t21〜t24)、エンジン回転数NEが、設定用回転数NE_map及びしきい値NE_th以上を上回った(時刻t22、ステップ2:YES、ステップ3:YES)後、しきい値NE_thを下回っている(時刻t23、ステップ3:NO)。このため、目標エンジン回転数NE_cmdは、エンジン回転数NEがしきい値NE_th以上になったとき(時刻t22、ステップ3:YES)に、設定用回転数NE_mapに更新される(ステップ5)。この更新は、エンジン回転数NEがしきい値NE_thを下回るとき(時刻t23)まで、継続される。そして、エンジン回転数NEがしきい値NE_thを下回ったとき(時刻t23、ステップ3:NO)に、目標エンジン回転数NE_cmdは、直前に更新された設定用回転数NE_mapに維持される。したがって、後半のアクセルペダルの踏込み後におけるアイドル回転数は、上記の時刻t23で更新された目標エンジン回転数NE_cmdと同じ値で、一定に推移する。
【0050】
以上詳述したように、本実施形態によれば、車両Vの高度Hが高いほど、エンジン3への吸入空気の密度が低下することで、エンジン3のアイドル回転が不安定になるのを回避するために、アイドル回転数を大きくするように制御する。また、エンジン3に接続された変速機4のギヤ段NGRが、所定のしきい値NGR_th以上のときには、アイドル回転数の変更を禁止する。これにより、車両Vが高地を走行し、ギヤ段NGRが所定のしきい値NGR_th以上になっても、そのとき以上にアイドル回転数が上昇することがないので、アイドル走行時の車速が速くなることはない。したがって、従来と異なり、運転者に違和感を感じさせるのを防止することができる。
【0051】
また、運転者がアクセルペダルを踏み込むことによって、エンジン回転数NEがしきい値NE_th以上になったきに、アイドル回転数としての目標エンジン回転数NE_cmdを更新するので、運転者の意図を反映させながら、アイドル回転数の調整を行うことができ、運転者に違和感を感じさせるのを防止することができる。
【0052】
さらに、アイドル回転数の調整の際には、エンジン3に直接又は間接的に接続されかつ車両Vに設置された部品の共振回転数以外において、アイドル回転数が調整される。これにより、アイドル回転数が共振回転数に一致することはないので、車両Vのアイドル運転時に、上記部品が共振するのを防止することができる。その結果、運転者にとって、良好な運転性及び乗り心地を確保することができる。
【0053】
なお、本発明は、説明した上記実施形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。例えば、実施形態は、本発明を車両Vに搭載したディーゼルエンジンに適用した例であるが、本発明は、これに限らず、ディーゼルエンジン以外のガソリンエンジンなどの各種エンジンに適用してもよい。また、実施形態では、エンジン3に接続された変速機が、有段の手動変速機4であるが、自動変速式の有段変速機でもよく、変速比を任意に設定できる機構を有する無段の変速機を採用することも可能である。さらに、実施形態では、本発明の高度検出手段として大気圧センサ10を採用したが、車両Vの高度Hを検出可能なその他のセンサを採用することも可能である。その他、本発明の趣旨の範囲内で、細部の構成を適宜、変更することができる。