(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記調圧バルブ制御手段は、前記高圧排気供給路のうち前記調圧バルブより前記アトマイザ側の部分と前記還流路のうち前記アトマイザの噴孔が設けられる部分との差圧が一定に維持されるように前記調圧バルブの開度を制御することを特徴とする請求項3に記載の内燃機関の制御装置。
前記調圧バルブ制御手段は、前記吸気通路のうち前記過給機のコンプレッサより下流側の過給圧に基づいて前記調圧バルブの開度を制御することを特徴とする請求項3又は4に記載の内燃機関の制御装置。
前記調圧バルブ制御手段は、前記第2排気区間における排気圧に基づいて前記調圧バルブの開度を制御することを特徴とする請求項3又は4に記載の内燃機関の制御装置。
前記燃料流量制御手段は、前記内燃機関の回転数又は負荷が大きくなるほど前記アトマイザに供給される燃料の流量が多くなるように前記流量制御バルブの開度を制御することを特徴とする請求項7に記載の内燃機関の制御装置。
前記内燃機関の排気ポートから前記アトマイザの気体導入部に至る排気の経路に設けられ、排気中のHCを酸化するHC酸化手段をさらに備えることを特徴とする請求項1から9の何れかに記載の内燃機関の制御装置。
前記劣化判定手段によって劣化したと判定された後、又は前記触媒再生処理の実行中である場合には、前記アトマイザへの燃料の供給は停止されることを特徴とする請求項13に記載の内燃機関の制御装置。
前記バイパス流量制御手段は、同一の前記内燃機関の運転状態の下で比較した場合、前記アトマイザで燃料を噴霧していない場合には、噴霧している場合よりも前記バイパス流量制御バルブの開度を大きくすることを特徴とする請求項15に記載の内燃機関の制御装置。
前記バイパス流量制御手段は、前記吸気通路のうち前記過給機のコンプレッサより下流側の過給圧が所定の目標値になるように前記バイパス流量制御バルブの開度を制御することを特徴とする請求項15又は16に記載の内燃機関の制御装置。
前記内燃機関の運転状態が低回転域内又は低負荷域内である場合には、前記アトマイザからの燃料の噴霧を停止することを特徴とする請求項1から17の何れかに記載の内燃機関の制御装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、改質触媒において改質反応を効率的に行うためには、液体燃料をできるだけ微粒化して改質触媒に供給することが好ましい。そこで、改質触媒に燃料を噴射するインジェクタとしては、圧縮気体を用いて液体燃料の微粒化を促進するアトマイザが用いられる場合がある。ここで微粒化を促進する圧縮気体としては、例えばエアコンプレッサによって圧縮した空気を用いることが考えられる。しかしながら、この場合、アトマイザの他にエアコンプレッサが必要となるばかりか、圧縮空気に含まれる酸素によって改質反応によって生成された水素やCOが酸化されてしまうため、投入した燃料に対して十分な量の水素やCOが得られない。また冷えた外気を用いて燃料を微粒化した場合には、改質触媒の温度が低下してしまうおそれもある。
【0005】
本発明は、改質に適した気体を用いて燃料を微粒化し、この微粒化した燃料を排気の還流路に設けられた改質触媒に噴霧する内燃機関の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)内燃機関(例えば、後述のエンジン1)の制御装置(例えば、後述の制御装置2)は、内燃機関の排気通路(例えば、後述の排気管13)のうちの第1排気区間(例えば、後述の低圧排気区間)と前記内燃機関の吸気通路(例えば、後述の吸気管12)とを連通する還流路(例えば、後述のEGR管31)と、当該還流路に設けられ、燃料を改質することで水素を生成する改質触媒(例えば、後述の改質触媒コンバータ71)と、前記還流路のうち前記改質触媒の上流側に設けられ、当該改質触媒に燃料を供給する燃料噴霧装置(例えば、後述のアトマイザ72)と、を備え、当該改質触媒で生成された含水素の改質ガスを前記内燃機関の燃焼室に導入する。前記燃料噴霧装置は、前記排気通路のうち前記第1排気区間より高圧の第2排気区間(例えば、後述の高圧排気区間)を通流する排気を用いて燃料を微粒化し、前記改質触媒へ噴霧するアトマイザである。
【0007】
(2)この場合、前記排気還流装置は、前記排気通路に設けられ排気のエネルギーを利用して吸気を加圧する過給機(例えば、後述の過給機8)をさらに備え、前記第1排気区間は前記排気通路のうち前記過給機のタービン(例えば、後述のタービンホイール81)より下流側の区間であり、前記第2排気区間は前記排気通路のうち前記タービンより上流側の区間であることが好ましい。
【0008】
(3)この場合、前記排気還流装置は、前記第2排気区間と前記アトマイザの気体導入部とを連通する高圧排気供給路(例えば、後述の高圧排気供給管741)と、当該高圧排気供給路に設けられた調圧バルブ(例えば、後述の調圧バルブ742)と、当該調圧バルブの開度を制御する調圧バルブ制御手段(例えば、後述のECU5)と、をさらに備えることが好ましい。
【0009】
(4)この場合、前記調圧バルブ制御手段は、前記高圧排気供給路のうち前記調圧バルブより前記アトマイザ側の部分と前記還流路のうち前記アトマイザの噴孔が設けられる部分との差圧が一定に維持されるように前記調圧バルブの開度を制御することが好ましい。
【0010】
(5)この場合、前記調圧バルブ制御手段は、前記吸気通路のうち前記過給機のコンプレッサ(例えば、後述のコンプレッサホイール82)より下流側の過給圧に基づいて前記調圧バルブの開度を制御することが好ましい。
【0011】
(6)この場合、前記調圧バルブ制御手段は、前記第1排気区間における排気圧に基づいて前記調圧バルブの開度を制御することが好ましい。
【0012】
(7)この場合、前記排気還流装置は、燃料を貯留する燃料タンク(例えば、後述の燃料タンク731)と前記アトマイザの燃料導入部(例えば、後述の燃料通路722)とを連通する燃料供給路(例えば、後述の燃料供給管732)と、当該燃料供給路に設けられた流量制御バルブ(例えば、後述の燃料バルブ734)と、当該流量制御バルブの開度を制御する燃料流量制御手段(例えば、後述のECU5)と、をさらに備えることが好ましい。
【0013】
(8)この場合、前記燃料流量制御手段は、前記内燃機関の回転数又は負荷が大きくなるほど前記アトマイザに供給される燃料の流量が多くなるように前記流量制御バルブの開度を制御することが好ましい。
【0014】
(9)この場合、前記排気還流装置は、前記還流路のうち前記改質触媒の下流側の空燃比を検出する空燃比センサ(例えば、後述の空燃比センサ97)をさらに備え、前記燃料流量制御手段は、前記空燃比センサの検出値が所定の目標値になるように前記流量制御バルブの開度を制御することが好ましい。
【0015】
(10)この場合、前記排気還流装置は、前記内燃機関の排気ポートから前記アトマイザの気体導入部(例えば、後述の作動ガス通路723)に至る排気の経路に設けられ、排気中のHCを酸化するHC酸化手段(例えば、後述の酸化触媒コンバータ743)をさらに備えることが好ましい。
【0016】
(11)この場合、前記排気還流装置は、前記内燃機関の排気ポートから前記アトマイザの気体導入部(例えば、後述の作動ガス通路723)に至る排気の経路に設けられ、排気中のHCを酸化するHC酸化手段(例えば、後述の酸化触媒コンバータ743)をさらに備え、前記改質触媒は水蒸気改質反応によって燃料を改質し改質ガスを生成することが好ましい。
【0017】
(12)この場合、前記排気還流装置は、前記内燃機関の排気ポートから前記アトマイザの気体導入部に至る排気の経路に設けられ、排気中のHCを酸化するHC酸化手段(例えば、後述の酸化触媒コンバータ743)をさらに備え、前記調圧バルブは、前記高圧排気供給路のうち前記HC酸化手段と前記気体導入部の間に設けられることが好ましい。
【0018】
(13)この場合、前記HC酸化手段は、HCを酸化する機能を有する酸化触媒であり、前記排気還流装置は、当該酸化触媒が劣化したか否かを判定する劣化判定手段(例えば、後述のECU5)と、前記劣化判定手段によって劣化したと判定された場合には、前記酸化触媒のHC酸化機能を回復させる触媒再生処理を実行する触媒再生手段(例えば、後述のECU5)と、をさらに備えることが好ましい。
【0019】
(14)この場合、前記劣化判定手段によって劣化したと判定された後、又は前記触媒再生処理の実行中である場合には、前記アトマイザへの燃料の供給は停止されることが好ましい。
【0020】
(15)この場合、前記排気還流装置は、前記排気通路のうち前記タービンの上流側と下流側とを連通するバイパス路(例えば、後述のバイパス通路86)と、当該バイパス路に設けられたバイパス流量制御バルブ(例えば、後述のウエストゲートバルブ85)と、当該バイパス流量制御バルブの開度を制御するバイパス流量制御手段(例えば、後述のECU5)と、をさらに備えることが好ましい。
【0021】
(16)この場合、前記バイパス流量制御手段は、同一の前記内燃機関の運転状態の下で比較した場合、前記アトマイザで燃料を噴霧していない場合には、噴霧している場合よりも前記バイパス流量制御バルブの開度を大きくすることが好ましい。
【0022】
(17)この場合、前記バイパス流量制御手段は、前記吸気通路のうち前記過給機のコンプレッサより下流側の過給圧が所定の目標値になるように前記バイパス流量制御バルブの開度を制御することが好ましい。
【0023】
(18)この場合、前記内燃機関の運転状態が低回転域内又は低負荷域内である場合には、前記アトマイザからの燃料の噴霧を停止することが好ましい。
【発明の効果】
【0024】
(1)本発明では、排気通路のうち第1排気区間から延びる還流路に改質触媒を設け、アトマイザによって微粒化した燃料を改質触媒に噴霧し、この改質触媒で生成された含水素の改質ガスを燃焼室に導入する。特に本発明では、燃料を微粒化するにあたり、酸素をほとんど含まない排気を用いることにより、改質触媒における改質反応を促進するとともに、改質ガス中の水素やCO等の燃焼改善に寄与する成分の酸化による減少を軽減できる。また燃料の微粒化に暖かい排気を用いることにより、改質触媒及び改質ガスの温度の低下も防止できる。またアトマイザによって燃料を微粒化するには、十分な流速の排気を用いる必要がある。これに対し本発明では、排気通路のうち上述の第1排気区間よりも高圧の第2排気区間を通流する排気を用いて燃料を微粒化する。すなわち本発明によれば、排気通路の第1排気区間と第2排気区間との間の差圧によって生じる排気の流れを利用して燃料を微粒化することにより、排気を圧縮するためのコンプレッサを用いることなく微粒化を促進できる。
【0025】
(2)本発明では、改質触媒に連通する第1排気区間をタービンより下流側の区間とし、アトマイザの気体導入部に連通する第2排気区間をタービンより上流側とする。すなわち本発明では、タービンの前後に発生する十分な大きさの差圧によって生じる排気の流れを利用することにより、燃料の微粒化を促進することができる。
【0026】
(3)本発明では、第2排気区間とアトマイザとを高圧排気供給路で接続し、この高圧排気供給路に調圧バルブを設け、制御手段を用いてその開度を制御する。これにより、第2排気区間で圧力変動が生じても、アトマイザにおいて燃料を微粒化するための排気の流量を適切に調整できるので、燃料を安定して微粒化できる。
【0027】
(4)本発明では、アトマイザの排気の入口側と出口側の部分の差圧が一定に維持されるように調圧バルブの開度を制御することにより、アトマイザにおいて燃料を微粒化するための排気の流量を適切に調整できるので、燃料を安定して微粒化できる。
【0028】
(5)過給圧は、アトマイザの排気の入口側と出口側の部分の差圧と相関がありかつ脈動が少ない。本発明では、このような過給圧に基づいて調圧バルブの開度を制御することにより、燃料を安定して微粒化できる。
【0029】
(6)排気圧は、アトマイザの排気の入口側と出口側の部分の差圧と直接の相関がある。本発明では、このような排気圧に基づいて調圧バルブの開度を制御することにより、排気圧の変動に対して高い応答性で安定して燃料を微粒化できる。
【0030】
(7)本発明では、燃料タンクとアトマイザとを連通する燃料供給路に流量制御バルブを設け、制御手段を用いてその開度を制御する。これにより、内燃機関の運転状態や改質触媒の状態等に応じて、アトマイザの排気の入口側と出口側の部分の差圧と独立して改質触媒に供給される燃料の量を適切に調整できる。特に、(4)の発明と組み合わせることにより、必要な量の燃料を改質触媒に供給しつつ、安定して燃料を微粒化できる。
【0031】
(8)本発明では、内燃機関の回転数又は負荷が大きくなるほどアトマイザへ供給する燃料の流量が多くなるように流量制御バルブの開度を制御する。これにより、高負荷域や高回転域等ではノッキングを抑制するために十分な量の改質ガスを生成し、低負荷域や低回転域等では不要な燃料消費を抑制できる。
【0032】
(9)本発明では改質触媒の下流側の空燃比が所定の目標値になるように流量制御バルブの開度を制御することにより、改質触媒の状態に関わらず目標とする量の改質ガスが得られるように適切な量の燃料をアトマイザに供給できる。
【0033】
(10)本発明では、排気ポートからアトマイザに至る排気の経路にHC酸化手段を設けることにより、アトマイザに導入される排気中のHCを除去することができるので、内燃機関の未燃HCが付着することによってアトマイザが故障するのを防止できる。またHC酸化手段によってHCを酸化することにより、改質触媒には酸素が少ない排気を供給できるので、改質触媒において生成された水素やCOが再び酸化されるのを防止できる。また、HC酸化手段を経た排気を改質触媒に供給することにより、改質触媒には暖かい燃料を噴霧できる。
【0034】
(11)水蒸気改質反応は吸熱反応であるため、安定して燃料を改質するには改質触媒の温度を適切な温度に維持する必要がある。本発明では、HCを酸化することによって昇温した排気を用いて燃料を微粒化することにより、改質触媒の温度が急激に低下し、水蒸気改質反応の効率が低下するのを防止できる。
【0035】
(12)本発明では、アトマイザとHC酸化手段との間に調圧バルブを設ける。これにより、HC酸化手段の状態によらず安定してアトマイザの噴射圧を調整できる。
【0036】
(13)本発明では、酸化触媒が劣化した場合には、触媒再生処理を実行し、そのHC酸化機能を回復させる。これにより、酸化触媒が劣化することによってアトマイザに未燃HCが供給されてしまい、アトマイザが故障するのを防止できる。
【0037】
(14)本発明では、酸化触媒が劣化したと判定された後、又は触媒再生処理の実行中である場合には、アトマイザへの燃料の供給を停止する。これにより、酸化触媒が十分に機能しない状態で改質触媒に燃料が噴霧され、結果として改質触媒における効率が低下するのを防止することができる。
【0038】
(15)アトマイザを用いると、第1排気区間を通流する排気の一部は還流路側へ流れるため、その分だけ第1排気区間の排気圧が低下する。また第1排気区間の排気圧が低下すると、その分だけタービンを通過する排気の流量も少なくなり、ひいては過給圧が低下する。本発明では、タービンの上流側と下流側とを連通するバイパス路にバイパス流量制御バルブを設け、制御手段を用いてその開度を制御する。これにより、アトマイザを用いることによる過給圧変動を抑制できる。
【0039】
(16)上述のようにアトマイザを用いると過給圧が低下する。本発明では、アトマイザで燃料を噴霧していない場合には、噴霧している場合よりもバイパス流量制御バルブの開度を大きくする。これにより、アトマイザによる噴霧の有無の影響を受けずに安定した過給圧を維持できる。
【0040】
(17)本発明では、過給圧が目標値になるように、バイパス流量制御バルブの開度を制御する。これにより、アトマイザからの噴霧の有無によらず、安定した過給圧を維持できる。
【0041】
(18)本発明では、内燃機関の運転状態が低回転域内又は低負荷域内である場合には、アトマイザからの燃料の噴霧を停止することにより、不必要な燃料の消費を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態に係る内燃機関(以下、単に「エンジン」という)1と、その制御装置2の構成を示す図である。
【0044】
エンジン1には、吸気が流れる吸気管12と、排気が流れる排気管13と、排気管13内の排気の一部をEGRガスとして吸気管12に還流する排気還流装置3と、排気の運動エネルギーを利用して吸気を加圧する過給機8と、エンジン1、排気還流装置3及び過給機8を制御する電子制御ユニット(以下、「ECU」という)5と、が設けられている。
【0045】
エンジン1には、その気筒内に適切な空燃比の混合気が形成されるように、図示しない燃料タンクから供給された燃料を噴射する燃料インジェクタ11が設けられている。燃料インジェクタ11から噴射される燃料の量は、排気管13に設けられた空燃比センサ(図示せず)の検出信号に基づくフィードバック制御によって制御される。なお、この燃料インジェクタ11による燃料噴射制御の具体的な手順については、詳細な説明を省略する。またこの燃料タンク内に貯蔵される燃料としては、例えば、ガソリンや軽油の他、これらにエタノール等のアルコール燃料が混合された燃料が用いられる。
【0046】
吸気管12は、吸気マニホールドの複数の分岐部を介してエンジン1の各シリンダの吸気ポートに接続されている。排気管13は、排気マニホールドの複数の分岐部を介してエンジン1の各シリンダの排気ポートに接続されている。
【0047】
過給機8は、排気管13に設けられたタービンホイール81と、吸気管12に設けられたコンプレッサホイール82と、これらタービンホイール81とコンプレッサホイール82とを連結するタービンシャフト83と、を備える。タービンホイール81は、エンジン1から排出された排気が吹き付けられることで回転駆動する。コンプレッサホイール82は、タービンホイール81により回転駆動され、エンジン1の吸気を加圧し吸気管12内へ圧送する。なお以下では、吸気管12のうちコンプレッサホイール82より下流側の部分の圧力を過給圧ともいう。また排気管13の内部は、タービンホイール81より上流側の高圧排気区間と、タービンホイール81より下流側の低圧排気区間とに分けられる。以下では、排気管13のうち高圧排気区間の圧力を排気圧ともいう。
【0048】
また排気管13には、タービンホイール81の上流側と下流側とを連通するバイパス通路86が設けられ、さらにこのバイパス通路86には開閉可能でありタービンホイール81に吹き付けられる排気の流量を変化させるウエストゲートバルブ85が設けられている。ウエストゲートバルブ85を開くと、排気はタービンホイール81を介さずにバイパス通路86を経由して排出され、ウエストゲートバルブ85を閉じると、排気はバイパス通路86を介さずタービンホイール81を経由して排出される。従って、過給機8を駆動せずに自然吸気の下でエンジン1を運転する場合には、ウエストゲートバルブ85は全開に制御され、過給機8を駆動し過給された吸気の下でエンジン1を運転する場合には、ウエストゲートバルブ85は全開から全閉の間で制御される。
【0049】
ウエストゲートバルブ85は、アクチュエータ87を介してECU5に接続されている。ウエストゲートバルブ85の開度は、図示しないバッテリからアクチュエータ87へ供給される駆動電流のデューティ比を、ECU5によって制御することによって調整される。ECU5では、後に
図3を参照して説明する手順に従ってウエストゲートバルブ85の指示開度を算出し、この指示開度が実現されるようにアクチュエータ87の通電制御を行う。
【0050】
排気還流装置3は、排気管13と吸気管12とを連通するEGR管31と、このEGR管31内を通流する排気を用いて燃料を改質する燃料改質器7と、EGR管31を通流する排気ガス量を調整するEGRバルブ32と、を備える。なおこの排気還流装置3は、低圧排気区間を通流する排気の一部を吸気管12へ還流する、いわゆる低圧型の排気還流装置である。
【0051】
以下では、EGR管31を介して吸気管12へ還流されるガス(エンジン1から排出された排気ガスに、後述のアトマイザ72から噴霧された燃料及び排気ガスを加えたものを含む)を、EGRガスという。また、EGR管31によって還流されるEGRガスの量を、EGR量という。また、エンジン1の気筒内に導入される全ガス量に対するEGRガス量の割合をEGR率という。
【0052】
EGRバルブ32は、EGR管31内で開閉可能に設けられた電磁弁であり、アクチュエータ33を介してECU5に接続されている。EGRバルブ34の開度は、図示しないバッテリからアクチュエータ33に供給される駆動電流をECU5で調整することによって制御される。ECU5は、エンジン1の運転状態に応じて目標EGR率及びこの目標EGR率に応じたEGRバルブ32の開度を決定し、この開度が実現されるように駆動電流のデューティ比を決定する。このEGRバルブ32の制御の詳細については説明を省略する。
【0053】
燃料改質器7は、EGR管31に設けられ燃料改質することで含水素の改質ガスを生成する改質触媒コンバータ71と、EGR管31のうち改質触媒コンバータ71より上流側に設けられこの改質触媒コンバータ71に燃料を噴霧するアトマイザ72と、アトマイザ72に燃料を供給する燃料供給装置73と、アトマイザ72を作動させるための排気ガスを供給する排気供給装置74と、を備える。
【0054】
改質触媒コンバータ71は、改質反応を促進する改質触媒をフロースルー型のハニカム構造体に担持したものが用いられる。この改質触媒としては、例えば、Pt/CeO
2等の既知の材料が用いられる。改質触媒が設けられた改質触媒コンバータでは、アトマイザ72から噴霧される改質燃料と、水を含んだ排気ガスが供給されると、例えば、下記式(1)に示すような水蒸気改質反応(吸熱反応)が進行し、エンジン1における燃焼改善効果がある水素やCO等が生成される。なお以下では、改質触媒コンバータ71から排出されるガスを改質ガスともいう。この改質触媒コンバータ71において生成された改質ガスは、エンジン1の燃焼状態を改善すべく、EGR管31を介して燃焼室に導入される。
C
nH
m+nH
2O→nCO+(n+1/2m)H
2 (1)
【0055】
図2は、アトマイザ72の燃料噴霧部721の構成を模式的に示す図である。
アトマイザ72は、霧状に微粒化された燃料が噴霧される燃料噴霧部721がEGR管31内に位置するように設けられる。アトマイザ72は、燃料供給装置73から供給される液体燃料が通流する燃料通路722と、排気供給装置74から供給される排気ガスが通流する作動ガス通路723と、の2つの通路を備える。
図2に示すように、これら2つの通路722,723の先端部は、アトマイザ72の燃料噴霧部721において隣接するようになっている。
【0056】
ここで、EGR管31のうち燃料噴霧部721が設けられた部分と作動ガス通路723との間で差圧(以下、「アトマイザの前後差圧」ともいう)が発生すると、作動ガス通路723内の排気ガスがその先端部からEGR管31へ向けて流れる。作動ガス通路723から排出された排気ガスは、燃料通路722の先端部から吐出された燃料に衝突し、これによって燃料が霧状に微粒化される。排気ガスによって微粒化された燃料は、燃料噴霧部721から、EGR管31内に設けられた改質触媒コンバータ71に噴霧される。
【0057】
図1に戻って、燃料供給装置73は、液体燃料を貯蔵する燃料タンク731と、この燃料タンク731とアトマイザ72の燃料通路722とを連通する燃料供給管732と、燃料タンク731内の燃料を、燃料供給管732を介してアトマイザ72へ圧送する燃料ポンプ733と、燃料供給管732に設けられアトマイザ72に供給される燃料の流量を調整する燃料バルブ734と、を備える。
【0058】
燃料バルブ734は、燃料供給管732内で開閉可能に設けられた電磁弁であり、アクチュエータ735を介してECU5に接続されている。燃料バルブ734の開度は、図示しないバッテリからアクチュエータ735に供給される駆動電流をECU5で調整することによって制御される。ECU5は、後に
図3を参照して説明する手順に従って燃料バルブ734の指示開度を決定し、この指示開度が実現されるように駆動電流のデューティ比を決定する。
【0059】
排気供給装置74は、排気管13のうちタービンホイール81より上流側の高圧排気区間とアトマイザ72の作動ガス通路723とを連通する高圧排気供給管741と、この高圧排気供給管741に設けられアトマイザ72の前後差圧を調整する調圧バルブ742と、高圧排気供給管741のうち調圧バルブ742より上流側に設けられた酸化触媒コンバータ743と、を備える。
【0060】
図2を参照して説明したように、アトマイザ72で燃料を微粒化するためには、作動ガス通路723から十分な流量で排気ガスが排出されるように、アトマイザ72の前後で十分な大きさの差圧が生じている必要がある。排気供給装置74は、高圧排気供給管741を用いて排気管13の高圧排気区間とアトマイザ72とを連通することにより、排気ポンプ等の特別な装置を用いることなくアトマイザ72で燃料を微粒化するために必要な差圧を発生させる。
【0061】
酸化触媒コンバータ743は、排気中に含まれる未燃HCの酸化を促進する酸化触媒をフロースルー型のハニカム構造体に担持したものが用いられる。このような酸化触媒コンバータ743を高圧排気供給管741に設けることにより、改質触媒コンバータ71における水蒸気改質反応が効率的に進行するように、アトマイザ72を介して改質触媒コンバータ71に供給される排気の温度を上昇させることができる。また、改質触媒コンバータ71で生成された水素やCOが再び酸化されないように、改質触媒コンバータ71に供給される排気の酸素濃度を低減することもできる。
【0062】
調圧バルブ742は、高圧排気供給管741内で開閉可能に設けられた電磁弁であり、アクチュエータ744を介してECU5に接続されている。調圧バルブ742の開度は、図示しないバッテリからアクチュエータ744に供給される駆動電流をECU5で調整することによって制御される。ECU5は、後に
図3を参照して説明する手順に従って調圧バルブ742の指示開度を決定し、この指示開度が実現されるように駆動電流のデューティ比を決定する。
【0063】
ECU5は、センサの検出信号をA/D変換するI/Oインターフェース、各種演算処理を実行するCPU、及び各種データやマップを記憶するRAMやROM等で構成されるマイクロコンピュータである。ECU5は、エンジン1の燃料インジェクタ11からの燃料噴射量を制御する燃料噴射制御(図示せず)、EGRバルブ32を駆動しEGR率を制御するEGR制御(図示せず)、並びに
図3を参照して以下で説明する燃料改質器及び過給機制御を実行する。
【0064】
このECU5には、エンジン1や排気還流装置3等の運転状態を把握するためのセンサとして、筒内圧センサ92、クランク角センサ93、アクセル開度センサ95、過給圧センサ96、及び空燃比センサ97等が接続されている。
【0065】
筒内圧センサ92は、エンジン1の気筒内圧を検出し、検出値に略比例した信号をECU5に送信する。エンジン1の燃焼変動率は、ECU5における図示しない処理によって、この筒内圧センサ92の検出信号を用いて算出される。
【0066】
クランク角センサ93は、エンジン1のクランクシャフトに固定されたパルサの回転に応じて、所定のクランク角ごとにパルス信号をECU5に送信する。ECU5では、このクランク角センサ93からのパルス信号に基づいてエンジン1の回転数が算出される。
【0067】
アクセル開度センサ95は、運転者が走査するアクセルペダルの踏み込み量を検出し、これに応じた検出信号をECU5に送信する。運転者からエンジン1に要求される負荷に相当する要求トルクは、このアクセル開度センサ75の検出信号やエンジン回転数に基づいて、ECU5における図示しない処理によって算出される。
【0068】
過給圧センサ96は、吸気管12のうちコンプレッサホイール82より下流側の過給圧を検出し、過給圧に比例した検出信号をECU5に送信する。以下では、この過給圧センサ96によって検出される過給圧を、実過給圧ともいう。
【0069】
空燃比センサ97は、EGR管31のうち改質触媒コンバータ71より下流側に設けられる。空燃比センサ97は、改質触媒コンバータ71の下流側へ排出される改質ガスの空燃比(改質ガス中の酸素に対する燃料成分(水素、HC、CO等)の比)を検出し、検出値に略比例した信号をECU5に送信する。なおこの空燃比センサ97としては、リッチな領域からリーンな領域までの間でリニアな出力特性を有するものが用いられる。
【0070】
図3は、ECUにおける過給機及び燃料改質器の制御の手順を示すフローチャートである。より具体的には、ECUにおいて、ウエストゲートバルブ、調圧バルブ、及び燃料バルブのそれぞれの指示開度を所定の周期ごとに決定する手順を示すフローチャートである。
図3に示す処理は、図示しないイグニッションスイッチがオンにされたことに応じて、ECUにおいて所定の周期で繰り返し実行される。
【0071】
S1では、ECUは、触媒劣化フラグの値が1であるか否かを判定する。この触媒劣化フラグは、燃料改質器用の酸化触媒が未燃HCや析出炭素の付着によって劣化した状態であることを示すフラグであり、その値は後述の
図8に示す処理において適宜更新される。
【0072】
S1の判定がYESである場合には、ECUは、酸化触媒のHC酸化機能を回復すべく、燃料バルブを全閉にし(S2)、さらに調圧バルブを所定の開度まで開き(S3)、S12に移る。後に
図8を参照して説明するように、触媒劣化フラグの値が1になると、エンジンの混合気の空燃比はストイキよりリーンに設定される。したがってS3において調圧バルブを開くと、酸化触媒には酸素を多く含んだ排気が供給されるので、酸化触媒に付着していた未燃HCや析出炭素の燃焼が促進され、これにより酸化触媒のHC酸化機能が徐々に回復する。なお、このように酸化触媒の再生処理を行っている間は、排気に多くの酸素が含まれている状態となるので、改質触媒に燃料を噴霧し水素を生成しても再び酸化するおそれがある。そこで酸化触媒の再生処理を行っている間は、S2に示すように燃料バルブは全閉にし、改質触媒における水素の生成は一時的に停止することが好ましい。また、このように調圧バルブを開くと、排気の一部がアトマイザを介して吸気に還流されることとなる。したがってS3では、酸化触媒の再生処理を優先するあまり必要のない時にまで排気の一部が還流されないように、目標EGR率が0である場合には、調圧バルブも全閉にすることが好ましい。
【0073】
S1の判定がNOである場合には、ECUは、S4に移り、改質触媒における水素生成量の要求値に相当する要求水素生成量を算出し、S5に移る。より具体的には、S1では、エンジン回転数及び要求トルク値を取得し、これらに基づいて
図4に例示するようなマップを検索することによって、現在のエンジン回転数及び要求トルク値に応じた要求水素生成量を算出する。
図4に例示するマップによれば、エンジン回転数が小さい領域又は要求トルク値が小さい領域では、燃焼室に水素やCOを導入せずとも点火時期を最適にしつつノッキングを抑制できるため、要求水素生成量は0となる。また、この低回転数又は低負荷以外の領域では、ノッキングが抑制されるように、エンジン回転数又は要求トルク値が増加するほど要求水素生成量も増加する。
【0074】
S5では、S4で算出した要求水素生成量は0より多いか否かを判定する。S5の判定がNOである場合には、ECUは、アトマイザからの燃料の噴霧を停止すべく、燃料バルブを全閉にし(S6)、さらに調圧バルブも全閉にし(S7)、S12に移る。
【0075】
S5の判定がYESである場合には、ECUは、十分な大きさのアトマイザの前後差圧が確保されるように、すなわち十分な流量の排気で燃料を微粒化できるように調圧バルブの指示開度を決定し(S8)、S9に移る。なお、アトマイザで燃料を微粒化するためには、アトマイザの前後で所定値以上の差圧が生じていればよい。また運転中にこの差圧が大きく変動することは好ましくない。そこでS8では、ECUは、このアトマイザの前後差圧が所定値以上で一定に維持されるように、過給圧及びエンジン回転数に基づいて
図5に例示するようなマップを検索することによって、調圧バルブの指示開度を決定する。
図5に例示するマップによれば、調圧バルブは、過給圧が高くなるほど又はエンジン回転数が増加するほど閉側に制御される。これにより、アトマイザの前後差圧は微粒化を促進するのに十分な大きさに維持され、かつその不要な変動も抑制される。
【0076】
S9では、ECUは、S4で算出した要求水素生成量に基づいて
図6に例示するようなマップを検索することによって、燃料バルブの基本開度を算出し、S10に移る。水素の生成量は、概ねアトマイザから噴霧する燃料の量に比例して増加する。したがって
図6に例示するマップによれば、要求水素生成量が増加するほど多くの量の燃料が噴霧されるよう、燃料バルブの基本開度は要求水素生成量に略比例して開側に増加する。
【0077】
S10では、ECUは、空燃比センサの出力値に基づいて燃料バルブの基本開度に対する補正値を算出し、S11に移る。より具体的には、S10では、S4で算出した要求水素生成量の水素が実際に改質触媒で生成されるように、要求水素生成量に基づいて空燃比センサの出力値に対する目標値を決定するとともに、この目標値と空燃比センサの出力値とが一致するように既知のフィードバック制御則に従って燃料バルブの基本開度に対する補正値を算出する。S11では、ECUは、S9で算出した基本開度とS10で算出した補正値とを合算することによって燃料バルブの指示開度を決定し、S12に移る。
【0078】
S12では、ECUは、エンジン回転数及び要求トルク値に基づいて図示しないマップを検索することによって目標過給圧を決定し、S13に移る。S13では、ECUは、過給圧センサの出力に基づいて算出される実過給圧とS12で算出された目標過給圧とが一致するように既知のフィードバック制御則に従ってウエストゲートバルブの指示開度を決定し、この処理を終了する。
【0079】
図7は、
図3のフローチャートに従って過給機及び燃料改質器を制御した場合における各種パラメータの変化の一例を示す図である。
図7には、所定時間にわたって要求水素生成量が0以上となったときにおけるアトマイザからの燃料噴霧量(燃料バルブの開度)、調圧バルブの開度、ウエストゲートバルブの開度、及び過給圧の変化を示す。
【0080】
図3を参照して説明したように、要求水素生成量が0より大きい場合、燃料バルブの開度は、要求水素生成量に応じた量の水素が改質触媒で生成されるように、マップ(
図6参照)検索及び空燃比センサの出力値に基づくフィードバック制御によって定められる(
図3のS9〜S11参照)。このため、燃料バルブの開度は、
図7に示すように要求水素生成量に応じて調整される。一方調圧バルブの開度は、アトマイザの前後差圧が概ね一定に維持されるように過給圧に基づいて調整される(
図3のS8参照)。このため
図7に示すように、調圧バルブの開度は要求水素生成量の増減によらず、概ね一定に維持される。
【0081】
また、
図3を参照して説明したように、ウエストゲートバルブの開度は、要求水素生成量の増減に関わらず実過給圧と目標過給圧とが一致するように制御される。これに対し、
要求水素生成量が0より大きくなりアトマイザからの燃料の噴霧を開始すると、ウエストゲートバルブは閉側へ制御される。これは、調圧バルブを開くと、その分だけタービンを通過する排気の流量が少なくなり、ひいては過給圧も低下するからである。このため、調圧バルブが開かれていると、同じ過給圧に制御しようとした場合、ウエストゲートバルブの開度はより小さな開度へ収束する。すなわち、同一のエンジンの運転状態の下で比較した場合、アトマイザで燃料を噴霧していない場合には、噴霧している場合よりもウエストゲートバルブの開度は大きくなる。
【0082】
図8は、ECUにおける燃料改質器用の酸化触媒の劣化判定処理の手順を示すフローチャートである。
図8の処理は、酸化触媒が未燃HCや析出炭素の付着によって劣化したことを示す触媒劣化フラグの値を更新する処理であり、ECUにおいて、
図3の処理と並行して所定の周期で繰り返し実行される。
【0083】
S31では、ECUは、現在改質触媒において水素が生成されている状態であるか否か、より具体的には要求水素生成量が0より大きいか否かを判定する。S31の判定がYESである場合には、ECUは、筒内圧センサの出力値に基づいてエンジンの燃焼変動率を算出し、燃焼変動率が、酸化触媒の劣化を判定するために予め定められた触媒劣化判定値より大きいか否かを判定する(S32)。酸化触媒が未燃HCや析出炭素の付着に起因して劣化すると、そのHC酸化機能が低下し、ひいては改質触媒に流入する酸素量が増加してしまう。そうすると、
図3の処理の下で実際に生成される水素の量は要求水素生成量より少なくなってしまい、結果として十分な燃焼改善効果が得られなくなり、燃焼変動率が増加してしまう。したがって、燃焼変動率に基づいて間接的に酸化触媒の劣化を判定することができる。
【0084】
S32の判定がYESである場合、ECUは、酸化触媒は劣化したと判定し、これを明示すべく触媒劣化フラグの値を1にし(S33)、この処理を終了する。ここで触媒劣化フラグの値が1とされたことに応じて、図示しないエンジンの燃料噴射制御では混合気の空燃比をストイキよりリーンにし、
図3の処理では燃料バルブを閉じるとともに調圧バルブを開く。これにより酸化触媒には酸素を多く含んだ排気が供給されるので、付着した未燃HCや析出炭素が酸化され、ひいては酸化触媒のHC酸化機能が回復する。一方、S31又はS32の判定がNOである場合、ECUは、酸化触媒は劣化していないと判定し、これを明示すべく触媒劣化フラグの値を0にし(S34)、この処理を終了する。
【0085】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこれに限るものではない。本発明の趣旨の範囲内で、細部の構成を適宜変更してもよい。
【0086】
例えば上記実施形態では、アトマイザに供給される排気中のHCを酸化させるHC酸化手段として、酸化触媒を用いた場合に付いて説明したが、本発明はこれに限らない。例えば、酸化触媒の代わりに、排気中のHCを酸化する機能を有する三元触媒やプラズマリアクタを用いてもよい。
【0087】
また、上記実施形態では、酸化触媒が担持された酸化触媒コンバータ743を高圧排気供給管741に設けた場合について説明したが、本発明はこれに限らない。例えば、エンジン1の排気ポートからアトマイザ72の作動ガス通路723に至る排気の経路上であれば、高圧排気供給管741に限らず排気管13に設けてもよい。
【0088】
また、上記実施形態では、アトマイザの前後差圧が一定になるように、過給圧センサによって検出される実過給圧を用いて調圧バルブの開度を制御したが(
図3のS8参照)、本発明はこれに限らない。例えば、排気圧を検出する排気圧センサを設け、このセンサで検出される実排気圧を用いて調圧バルブの開度を制御してもよい。過給圧は排気圧と比較して脈動が小さい。従って上記実施形態のように過給圧を用いた場合には、安定性に優れるという利点がある。一方、排気圧はアトマイザの前後差圧とより相関が強い。このため排気圧を用いた場合には、応答性に優れるという利点がある。
【0089】
また上記実施形態では、エンジン回転数及び要求トルク値に基づいて要求水素生成量を決定する場合について説明したが(
図3のS4参照)、本発明はこれに限らない。改質触媒で生成される水素やCOには、EGR率の上限を拡大する作用もある。したがって例えば、要求水素生成量は、目標EGR率に基づいて決定してもよい。
【0090】
上記実施形態では、燃料改質器の酸化触媒の未燃HCや析出炭素の付着による劣化を、筒内圧センサを用いて判定する場合について説明したが(
図8参照)、酸化触媒の劣化を判定する手段はこれに限らない。酸化触媒の劣化が進行すると、酸化触媒の温度が低下する傾向がある。したがって、酸化触媒の温度を検出する温度センサを設け、この温度センサの出力値を用いて酸化触媒の劣化を判定することもできる。また、酸化触媒の劣化の進行度合いは、エンジンの燃料噴射量の積算値に概ね比例する。したがって、エンジンの燃料噴射量の積算値を算出し、この積算値が所定の劣化判定値を超えた場合には、酸化触媒は劣化したものとみなし、触媒劣化フラグの値を1にするようにしてもよい。