特許第6023157号(P6023157)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6023157ジルコニウム系ベリリウム非含有バルクアモルファス合金
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6023157
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月9日
(54)【発明の名称】ジルコニウム系ベリリウム非含有バルクアモルファス合金
(51)【国際特許分類】
   C22C 45/10 20060101AFI20161027BHJP
【FI】
   C22C45/10
【請求項の数】20
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-243708(P2014-243708)
(22)【出願日】2014年12月2日
(65)【公開番号】特開2015-113527(P2015-113527A)
(43)【公開日】2015年6月22日
【審査請求日】2014年12月2日
(31)【優先権主張番号】13196050.2
(32)【優先日】2013年12月6日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】506425538
【氏名又は名称】ザ・スウォッチ・グループ・リサーチ・アンド・ディベロップメント・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】アルバン・ドゥバッハ
(72)【発明者】
【氏名】イヴ・ウィンクレ
(72)【発明者】
【氏名】トミー・カロッツァーニ
【審査官】 相澤 啓祐
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−199318(JP,A)
【文献】 特開平08−074010(JP,A)
【文献】 特開平11−071661(JP,A)
【文献】 特開2000−050923(JP,A)
【文献】 特開2003−166044(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0053375(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 45/00−45/10
C22C 16/00
C22F 1/00− 1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バルクアモルファス合金であって、
前記合金はベリリウムを含有せず、原子百分率値で以下:
‐ジルコニウム及びハフニウムの総含有量が最小値50%、最大値63%である、ジルコニウム若しくはジルコニウム及びハフニウムからなる基材;
‐第1の添加金属。少なくとも1つの前記第1の添加金属、又は複数の前記第1の添加金属の合計値は最小値1.5%〜最大値4.5%(最小値及び最大値を含む)であり、前記少なくとも1つの第1の添加金属は、チタン、ニオブ、タンタルを含む第1の群から選択され、ニオブ含有量は2.5%以下である;
‐第2の添加金属。少なくとも1つの前記第2の添加金属、又は複数の前記第2の添加金属の合計値は最小値0.5%〜最大値4.5%(最小値及び最大値を含む)であり、前記少なくとも1つの第2の添加金属は、銀、金、白金を含む第2の群から選択される;
‐第3の添加金属。少なくとも1つの前記第3の添加金属、又は複数の前記第3の添加金属の合計値は最小値8.5%〜最大値17.5%(最小値及び最大値を含む)であり、前記少なくとも1つの第3の添加金属は、ニッケル、コバルト、マンガン、鉄を含む第3の群から選択される;
‐アルミニウム:最小値9%、最大値13%;
‐銅及び不可避不純物:100%にするための補完物、ただし18%以下
からなることを特徴とする、バルクアモルファス合金。
【請求項2】
前記少なくとも1つの第1の添加金属又は前記複数の第1の添加金属の合計値は、原子百分率で最小値2.5%〜最大値4.5%(最小値及び最大値を含む)であることを特徴とする、請求項1に記載の合金。
【請求項3】
前記少なくとも1つの第2の添加金属又は前記複数の第2の添加金属の合計値は、原子百分率で最小値1.0%〜最大値4.0%(最小値及び最大値を含む)であること特徴とする、請求項1に記載の合金。
【請求項4】
前記少なくとも1つの第2の添加金属又は前記複数の第2の添加金属の合計値は:原子百分率で最小値1.5%〜最大値3.8%(最小値及び最大値を含む)であること特徴とする、請求項3に記載の合金。
【請求項5】
金含有量は、原子百分率で1.5%〜2.5%であること特徴とする、請求項1に記載の合金。
【請求項6】
白金含有量は、原子百分率で1.5%〜2.5%であることを特徴とする、請求項1に記載の合金。
【請求項7】
銀含有量は、原子百分率で1.0%〜3.8%であることを特徴とする、請求項1に記載の合金。
【請求項8】
前記基材中のジルコニウム及びハフニウムの合計値は、原子百分率で60%以下であることを特徴とする、請求項1に記載の合金。
【請求項9】
アルミニウム含有量は原子百分率で10.0%超であることを特徴とする、請求項1に記載の合金。
【請求項10】
銅の含有量に対するジルコニウム含有量の比Zr/Cuは3.0〜5.0であることを特徴する、請求項1に記載の合金。
【請求項11】
銅及びニッケルの総含有量に対するジルコニウムの含有量の比Zr/(Cu+Ni)は1.5〜3.0であることを特徴とする、請求項1に記載の合金。
【請求項12】
銅及びニッケルの総含有量に対するジルコニウム、ハフニウム、チタン、ニオブ、タンタルの総含有量の比(ZrHfTiNbTa)/(Cu+Ni)は1.5〜3.0であることを特徴とする、請求項1に記載の合金。
【請求項13】
前記合金はチタンを含有しないことを特徴とする、請求項1に記載の合金。
【請求項14】
前記合金はニオブを含有しないことを特徴とする、請求項1に記載の合金。
【請求項15】
前記合金はチタン又はニオブを含有しないことを特徴とする、請求項1に記載の合金。
【請求項16】
ジルコニウム及びハフニウムの総含有量は原子百分率で53.0%以下であること;並びに
前記第1の添加金属の総含有量は原子百分率で2.0%〜3.0%であることを特徴とする、請求項1に記載の合金。
【請求項17】
前記合金は、原子百分率で0.5%未満のニッケルを含むことを特徴とする、請求項1に記載の合金。
【請求項18】
バルクアモルファス合金であって、
前記合金はベリリウムを含有せず、原子百分率値で以下:
‐ジルコニウム及びハフニウムの総含有量が最小値50%、最大値63%である、ジルコニウム若しくはジルコニウム及びハフニウムからなる基材;
‐第1の添加金属。少なくとも1つの前記第1の添加金属、又は複数の前記第1の添加金属の合計値は:最小値1.5%〜最大値4.5%(最小値及び最大値を含む)であり、前記少なくとも1つの第1の添加金属は、チタン、ニオブ、タンタルを含む第1の群から選択され、前記ニオブの含有量は2.5%以下である;
‐第2の添加金属。少なくとも1つの前記第2の添加金属、又は複数の前記第2の添加金属の合計値は:最小値0.5%〜最大値4.5%(最小値及び最大値を含む)であり、前記少なくとも1つの第2の添加金属は、銀、金、白金を含む第2の群から選択される;
‐第3の添加金属。少なくとも1つの前記第3の添加金属、又は複数の前記第3の添加金属の合計値は:最小値8.5%〜最大値17.5%(最小値及び最大値を含む)であり、前記少なくとも1つの第3の添加金属は、クロム、コバルト、マンガン、鉄を含む第3の群から選択される;
‐アルミニウム:最小値9%、最大値13%;
‐銅及び不可避不純物:100%にするための補完物、ただし18%以下
からなることを特徴とする、バルクアモルファス合金。
【請求項19】
前記少なくとも1つの第1の添加金属又は前記複数の第1の添加金属の合計値は、原子百分率で最小値2.5%〜最大値4.5%(最小値及び最大値を含む)であることを特徴とする、請求項18に記載の合金。
【請求項20】
請求項1又は18に記載のアモルファス合金製の、時計又は宝飾品用の構成部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バルクアモルファス合金に関する。
【0002】
本発明は更に、そのような合金製の時計の構成部品に関する。
【0003】
本発明は、特に以下の構造に関する、時計学及び宝飾品の分野に関する:腕時計ケース、ケースの中央部分、地板、ベゼル、プッシュボタン、クラウン、バックル、ブレスレット、指輪、イヤリング等。
【背景技術】
【0004】
アモルファス合金は、特に以下の構造のために、時計及び宝飾品の分野で使用されることが増えている:腕時計ケース、ケースの中央部分、地板、ベゼル、プッシュボタン、クラウン、バックル、ブレスレット、指輪、イヤリング等。
【0005】
ユーザの肌に接触することを意図して作製される外側の構成部品は、特にベリリウムやニッケル等のいくつかの金属の毒性又はアレルゲン性の影響のために、特定の制約に従わなければない。このような金属の特定の固有の特性にもかかわらず、少なくともユーザの肌に接触する可能性が高い構成部品用の、ベリリウム又はニッケルを僅かしか含有しない、又は含有しない合金を市販する試みがなされている。
【0006】
ジルコニウム系バルクアモルファス合金は、1990年代から公知である。以下の刊行物はそのような合金に関するものである:非特許文献1、非特許文献2、特許文献1、非特許文献3、非特許文献4、非特許文献5、非特許文献6。
【0007】
最も優れたガラス形成能(「GFA」として公知であり、以下では「GFA」という)を有するアモルファス合金は、以下の系:
‐Zr−Ti−Cu−Ni−Be(例えばLM1b、Zr44Ti11Cu9.8Ni10.2Be25);及び
‐Zr−Cu−Ni−Al
において認められる。
【0008】
ベリリウムの毒性を考えると、ベリリウムを含有する合金を、腕時計の外装部品や同様の部品等の皮膚との接触を伴う用途には使用できない。しかしながら、ジルコニウム系ベリリウム非含有アモルファス合金は一般に、ベリリウムを含有する合金よりも低い臨界直径を示し、これはバルク部品を作製するのに不都合である。臨界直径(Dc)、及びZr−Cu−Ni−Al系における結晶化温度Txとガラス転移温度Tg(過冷液体領域)との差ΔTの観点から最良の組成物は、合金Zr65Cu17.5Ni10Al7.5である(非特許文献1)。
【0009】
チタン及び/又はニオブを添加することによりGFAを向上させた修正例も公知である:
‐Zr52.5Cu17.9Ni14.6Al10Ti5(Vit105)(非特許文献2);
‐Zr57Cu15.4Ni12.6Al10Nb5(Vit106)及びZr58.5Cu15.6Ni12.8Al10.3Nb2.8(Vit106a)(特許文献1);
‐Zr61Cu17.5Ni10Al7.5Ti2Nb2(非特許文献3)。
【0010】
一般に、チタン及び/又はニオブの添加により合金の臨界直径が増大するが、この修正により勾配ΔTxが低下し、従ってこのような合金のいずれの熱変形のためのプロセスウィンドウが大幅に低下する。更に、その極めて高い融解温度(2468℃)を考えると、ニオブは容易に融解せず、これにより均質な合金の製造が困難となる。
【0011】
また、三元Zr−Cr−Al合金に銀を添加することにより、特に、例えばZr42Cu4218Ag8である組成物Zr46Cu4618の修正のために、臨界直径を増大させることも公知である(非特許文献4)。
【0012】
しかしながら、銅の含有量が高くニッケルが含まれないため、これらの合金の耐食性は高くなく、周囲温度で徐々に退色(及び/又は黒変)する傾向さえある。
【0013】
更に、5%超の銀、金、パラジウム又は白金をZr−Cu−Ni−Alアモルファス合金に添加することにより、Tg、Tx間の熱処理による前記合金の失透の間に、準結晶の形成を促すことが公知である(非特許文献5)。
【0014】
非特許文献6において、Zr−Cu−Ni−Al−M合金のGFAに対する添加元素(M=Ti、Hf、V、Nb、Cr、Mo、Fe、Co、Pd又はAg)の効果が試験されている。
【0015】
結果は、チタン、ニオブ、パラジウムのみが合金の臨界直径を増大させることを示しているが、ここでも勾配ΔTxは大幅に低下したままである。合金に銀を添加することに関して、特定の効果は記載されていない。
【0016】
以下の文献は、銀又は金を含むジルコニウム系合金を含む。
【0017】
特許文献2、3は以下のタイプの合金:
Zrbal−(Ti,Hf,Al,Ga)5-20−(Fe,Co,Ni,Cu)20-40−(Pd,Pt,Au,Ag)0-10
とりわけパラジウム及び/又は白金を含む合金を記載しているが、ただ1つの例のみが1%の金又は1%の銀の添加に言及しており、この例ではこの添加による臨界直径の増大に対する効果は評価されていない。
【0018】
特許文献4は下記のタイプの合金:
(Zr,Hf)25-85−(Ni,Cu,Fe,Co,Mn)5-70−Al>0-35−T>0-15
を記載している。ここでTは、他の元素のうちの1つと混合する負のエンタルピーを有する元素であり、以下の群から選択される:T=Ru、Os、Rh、Ir、Pd、Pt、 V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Au、Ga、Ge、Re、Si、Sn又はTi。この文献は、パラジウムを用いた1つの例を挙げているだけである。この例は、Dc、ΔTxに対する元素Tのいずれのプラスの効果を立証していない。
【0019】
特許文献5は、Zr25-85−(Ni,Cu)5-70−Al>0-35−Ag>0-15の熱処理による、多相合金(アモルファスマトリックス中の14〜23%の結晶相)を製造する方法を記載している。
【0020】
特許文献6は、以下のタイプの合金:
Zr41-63−Cu18-46−Ni1.5-12.5−Al4-15−Ag1.5-26
を記載している。
【0021】
要するに、このようなアモルファス合金に低濃度の銀又は金を添加することの効果については、殆ど知られておらず、このような効果は文献中のいずれの調査の対象にもなっていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】米国特許第6592689号
【特許文献2】米国特許第5980652号
【特許文献3】米国特許第5803996号
【特許文献4】欧州特許第0905268号
【特許文献5】欧州特許第0905269号
【特許文献6】中国特許第101314838号
【非特許文献】
【0023】
【非特許文献1】Zhang,et al.,Amorphous Zr−Al−TM (TM=Co,Ni,Cu) Alloys with Significant Supercooled Liquid Region of Over 100 K,Materials Transactions,JIM,Vol.32,No.11(1991) pp.1005−1010.
【非特許文献2】Lin,et al.,Effect of Oxygen Impurity on Crystallization of an Undercooled Bulk Glass Forming Zr−Ti−Cu−Ni−Al Alloy, Materials Transactions,JIM,Vol.38,No.5(1997) pp.473−477.
【非特許文献3】Inoueet al., Formation,Thermal Stability and Mechanical Properties of Bulk Glassy Alloys with a Diameter of 20 mm in Zr−(Ti,Nb)−Al−Ni−Cu System, Materials Transactions,JIM,Vol.50,No.2(2009)pp.388−394.
【非特許文献4】Zhang,et al., Glass−Forming Ability and Mechanical Properties of the Ternary Cu−Zr−Al and Quaternary Cu−Zr−Al−Ag Bulk Metallic Glasses,Materials Transactions,Vol.48,No.7(2007) pp.1626−1630.
【非特許文献5】Zhang,et al.,Glass−Forming Ability and Mechanical Properties of the Ternary Cu−Zr−Al and Quaternary Cu−Zr−Al−Ag Bulk Metallic Glasses, Materials Transactions,Vol.48,No.7(2007) pp.1626−1630.
【非特許文献6】Inoue,et al., Effect of Additional Elements on Glass transition Behavior and Glass Formation tendency ofZr−Al−Cu−Ni Alloys,Materials Transactions,JIM,Vol.36,No.12(1995) pp.1420−1426.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
本発明は、高いΔTx値を維持しながら、ジルコニウム系ベリリウム非含有アモルファス合金の臨界直径を増大させることを提案する。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明は、その臨界直径を増大させるために、銀及び/又は金及び/又は白金を添加した、ジルコニウム及び/又はハフニウム系ベリリウム非含有固体アモルファス合金に関する。
【0026】
この目的のために、本発明はバルクアモルファス合金に関し、前記バルクアモルファス合金はベリリウム非含有であり、原子百分率値で以下からなることを特徴とする:
‐ジルコニウム及びハフニウムの総含有量が最小値50%、最大値63%である、ジルコニウム及び/又はハフニウムからなる基材;
‐第1の添加金属。少なくとも1つの前記第1の添加金属、又は複数の前記第1の添加金属の合計値は最小値1.5%〜最大値4.5%(最小値及び最大値を含む)であり、前記少なくとも1つの第1の添加金属は、チタン、ニオブ、タンタルを含む第1の群から選択され、ニオブ含有量は2.5%以下である;
‐第2の添加金属。少なくとも1つの前記第2の添加金属、又は複数の前記第2の添加金属の合計値は最小値0.5%〜最大値4.5%(最小値及び最大値を含む)であり、前記少なくとも1つの第2の添加金属は、銀、金、白金を含む第2の群から選択される;
‐第3の添加金属。少なくとも1つの前記第3の添加金属、又は複数の前記第3の添加金属の合計値は最小値8.5%〜最大値17.5%(最小値及び最大値を含む)であり、前記少なくとも1つの第3の添加金属は、ニッケル、コバルト、マンガン、鉄を含む第3の群から選択される;
‐アルミニウム:最小値9%、最大値13%;
‐銅及び不可避不純物:100%にするための補完物、ただし18%以下。
【0027】
本発明の特定の特徴によると、前記少なくとも1つの第1の添加金属又は前記複数の第1の添加金属の合計値は、最小値2.5%〜最大値4.5%(最小値及び最大値を含む)である。
【0028】
本発明は更に、このタイプの合金製の時計又は宝飾品の構成部品に関する。
【0029】
本発明の別の特徴及び利点は、添付の図面を参照して、以下の詳細な説明を読むことにより、より明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1図1は、円錐形試料における臨界直径測定の概略図である。
図2図2は、本発明のよる合金製の時計の概略図である。
【0031】
本発明は、特に以下の構造に関する、時計学及び宝飾品の分野に関する:腕時計ケース、ケースの中央部分、地板、ベゼル、プッシュボタン、クラウン、ブレスレット、指輪、イヤリング等。
【0032】
本発明は、ベリリウムを含有するアモルファス合金と同様の特性を有するよう考案された、ベリリウム非含有アモルファス合金を製造することを提案する。以下、ベリリウムを含有しない合金を「ベリリウム非含有合金」と呼び、0.5原子百分率未満のニッケルを含有する合金を「ニッケル非含有合金」と呼ぶ。
【0033】
「ベリリウムを含有しない」とは、ベリリウムのレベルが好ましくはゼロであるか、又は極めて低いことを意味し、不純物に関しても同様に0.1%であることが好ましい。
【0034】
従って、ベリリウムの置換元素を含み、高い値の臨界直径Dc及び勾配ΔTxを有する合金の製造を試みる。
【0035】
本発明は更に、臨界直径Dcを増大させるために、銀及び/又は金及び/又は白金を添加したジルコニウム系ベリリウム非含有バルクアモルファス合金に関する。
【0036】
より具体的には、本発明はバルクアモルファス合金に関し、前記バルクアモルファス合金はベリリウムを含有しないこと、及び原子百分率値で以下からなることを特徴とする:
‐ジルコニウム及びハフニウムの総含有量が最小値50%、最大値63%である、ジルコニウム及び/又はハフニウムからなる基材;
‐第1の添加金属。少なくとも1つの前記第1の添加金属、又は複数の前記第1の添加金属の合計値は:最小値1.5%〜最大値4.5%(最小値及び最大値を含む)であり、前記少なくとも1つの第1の添加金属は、チタン、ニオブ、タンタルを含む第1の群から選択され、ニオブ含有量は2.5%以下である;
‐第2の添加金属。少なくとも1つの前記第2の添加金属、又は複数の前記第2の添加金属の合計値は:最小値0.5%〜最大値4.5%(最小値及び最大値を含む)であり、前記少なくとも1つの第2の添加金属は、銀、金、白金を含む第2の群から選択される;
‐第3の添加金属。少なくとも1つの前記第3の添加金属、又は複数の前記第3の添加金属の合計値は:最小値8.5%〜最大値17.5%(最小値及び最大値を含む)であり、前記少なくとも1つの第3の添加金属は、ニッケル、コバルト、マンガン、鉄を含む第3の群から選択される;
‐アルミニウム:最小値9%、最大値13%;
‐銅及び不可避不純物:100%にするための補完物、ただし18%以下。
【0037】
より具体的には、前記少なくとも1つの第1の添加金属、又は前記複数の第1の添加金属の合計値は最小値2.5%〜最大値4.5%(最小値及び最大値を含む)である。前記少なくとも1つの第1の添加金属は、チタン、ニオブ、タンタルを含む第1の群から選択され、ニオブのレベルは2.5%以下である。
【0038】
多数のジルコニウム系アモルファス組成物が公知であるが、本発明の組成物によるアモルファス合金の開発は、新規の、極めて驚くべき効果をもたらす。これは、特に2%の添加物が、臨界直径を有意に増大させるのに十分であるためである。
【0039】
銀、金、白金を含む第2の群から選択される第2の添加金属の範囲が0.5%〜4.5%であることの効果は明らかである。これら元素のいずれか1つ又は複数を合金に添加すると、これらの添加物を含有しない合金と比較して、勾配ΔTxが低下することなく臨界直径が増大する。
【0040】
臨界直径の負の勾配を示す転移領域は約4.5%において始まり、5%を超えると、臨界直径は、第2の添加金属の添加の影響が見られ始める下側閾値0.5%と上側閾値4.5%との間(最小値及び最大値を含む)である最適量に対して大幅に減少する。
【0041】
1.0%〜4.0%の範囲が好都合であり、1.5%〜3.8%の範囲内で非常に良い結果が得られた。
【0042】
より具体的には、金含有量は1.5%〜2.5%である。
【0043】
より具体的には、白金含有量は1.5%〜2.5%である。
【0044】
より具体的には、銀含有量は1.0%〜3.8%である。
【0045】
特定の実施形態では、基材中のジルコニウム及びハフニウムの総含有量は60%までに限定される。
【0046】
特定の変形例では、本発明による合金はチタンを含有しない。
【0047】
特定の変形例では、本発明による合金はニオブを含有しない。
【0048】
特定の変形例では、本発明による合金はチタン又はニオブを含有しない。
【0049】
第2の群の金属:銀、金、白金とは異なり、パラジウムは、本発明の開発中にいずれのプラスの効果を示さなかった。パラジウムをこの第2の群に含めることはできるが、その含有量は好ましくは極めて低く、特に1.0%以下に維持するべきである。
【0050】
非限定的な実施形態を以下に記載する。約70gの合金装填物を、純粋な元素(99.95%超の純度)を使用して、アーク炉において準備する。このようにして得られた予備合金を、続いて遠心鋳造機において再度融解し、円錐形(最大厚さ11mm、幅20mm、開角度6.3°)の銅金型で鋳造する。
【0051】
各円錐の端部から採取した試料に対して、ガラス転移温度及び結晶化温度のDSC測定を行う。各円錐の中央を縦に金属組織的に切断し、臨界直径Dc*を測定する。ここでDc*は、図1に示すように、結晶領域が始まる場所である円錐の厚さである。
【0052】
以下の表は実施した試験をまとめたものである(イタリック体の組成物は、前記文献において公知の組成物である)。適切な量の銀、金又は白金添加物を用いると、これらの添加物を含有しない基本的な合金と比べて、Dc*臨界直径を増大させることができることが分かる。更に、これらの添加物は勾配ΔTxを低下させない。
【0053】
【表1】
【0054】
より具体的には、以下の合金は特に満足の行く所定の結果を有する:
参考例
Zr62Cu15Ag3Ni10Al10;
Zr58.5Cu15.6Ni12.8Al10.3Ag2.8;
Zr57.9Cu15.44Ni12.67Al10.9Ag3.8;
実施例
Zr52.5Ti2.5Cu15.9Ag2Ni14.6Al12.5;
Zr52.5Ti2.5Cu15.9Au2Ni14.6Al12.5;
Zr52.5Ti2.5Cu15.9Pt2Ni14.6Al12.5;
Zr52.5Ti2.5Cu16.9Ag1Ni14.6Al12.5;
Zr52.5Ti2.5Cu14.9Ag3Ni14.6Al12.5;
Zr52.5Nb2.5Cu15.9Ag2Ni14.6Al12.5。
【0055】
第1の好ましい副群は、第1の添加金属の総含有量が0.5%以下の、57.0%超のジルコニウム及びハフニウムの総含有量に関する。
【0056】
第2の好ましい副群は、第1の添加金属の総含有量が1.5%〜3.0%、より詳細には2.0%〜3.0%の、53.0%以下のジルコニウム及びハフニウムの総含有量に関する。実際、最も大きい臨界直径を有する合金は、約2.5%のチタン又はニオブを含有する。
【0057】
本発明の別の変形例では、鉄、マンガン等の他の元素を組み込む。
【0058】
妥協案の探究により、特に理想的な銀含有量を含む、最良の組成物を特定できる。銀は、金及び白金よりもコストがかからず、更に所望の効果をもたらすため、有利である。
【0059】
合金を最適化するために、実験中にいくつかのルールを定めた。
特に好ましい結果は以下によって得られた:
‐銅の含有量に対するジルコニウム含有量の比Zr/Cuが3.0〜5.0;
‐銅及びニッケルの総含有量に対するジルコニウムの含有量の比Zr/(Cu+Ni)が1.5〜3.0;
‐銅及びニッケルの総含有量に対するジルコニウム、ハフニウム、チタン、ニオブ、タンタルの総含有量の比(Zr,Hf,Ti,Nb,Ta)/(Cu+Ni)が1.5〜3.0;
‐少なくとも1つの前記第1の添加金属、又は複数の前記第1の添加金属の合計値(最小値及び最大値を含む)が最小値2.5%〜最大値4.5%;
‐アルミニウム含有量が10.0%超。
【0060】
ニッケルがそれ自体で、又は特定の他の金属を含有する合金組成物において呈するアレルゲン性の影響により、ニッケルを合金に組み込むことには疑問が生じる。しかしながら、アモルファス合金中のニッケルの存在は、高い臨界直径及び良好な防食特性を有するジルコニウム系アモルファス合金を得るのに好都合である。同様に、ステンレス鋼もまた高いニッケル含有量を有し、宝飾品及び時計学において広く使用されている。
【0061】
観察される重要な制約は、得られた合金がEN1811に準拠したニッケル溶出試験を満たすことである。
【0062】
本発明の特定の変形例では、合金は0.5%未満のニッケルを含む。
【0063】
同等の特徴を得るために、単にニッケルを別の金属に置換するだけでは不十分であることが理解される。近い原子半径を有する元素は、鉄、コバルト、パラジウム、マンガン、クロムである。これは即ち、アモルファス合金の組成全体を見直すことを意味する。
【0064】
よって本発明は第2のバルクアモルファス合金に関し、前記第2のバルクアモルファス合金は、ベリリウムを含有しないこと、及び原子百分率値で以下からなることを特徴とする:
‐ジルコニウム及びハフニウムの総含有量が最小値50%、最大値63%である、ジルコニウム及び/又はハフニウムからなる基材;
‐第1の添加金属。少なくとも1つの前記第1の添加金属、又は複数の前記第1の添加金属の合計値は:最小値1.5%〜最大値4.5%(最小値及び最大値を含む)であり、前記少なくとも1つの第1の添加金属は、チタン、ニオブ、タンタルを含む第1の群から選択され、ニオブのレベルは2.5%以下である;
‐第2の添加金属。少なくとも1つの前記第2の添加金属、又は複数の前記第2の添加金属の合計値は:最小値0.5%〜最大値4.5%(最小値及び最大値を含む)であり、前記少なくとも1つの第2の添加金属は、銀、金、パラジウム、白金を含む第2の群から選択される;
‐第3の添加金属。少なくとも1つの前記第3の添加金属、又は複数の前記第3の添加金属の合計値は:最小値8.5%〜最大値17.5%(最小値及び最大値を含む)であり、前記少なくとも1つの第3の添加金属は、クロム、コバルト、マンガン、鉄を含む第3の群から選択される;
‐アルミニウム:最小値9%、最大値13%;
‐銅及び不可避不純物:100%にするための補完物、ただし18%以下。
【0065】
本発明はまた、本発明による合金製の時計若しくは宝飾品の構成部品、又は特に腕時計若しくはブレスレット等である時計若しくは宝飾品にも関する。
図1
図2