特許第6023193号(P6023193)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6023193
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月9日
(54)【発明の名称】壁面被覆吸音材
(51)【国際特許分類】
   B32B 17/02 20060101AFI20161027BHJP
   G10K 11/162 20060101ALI20161027BHJP
   G10K 11/16 20060101ALI20161027BHJP
   E04B 1/86 20060101ALI20161027BHJP
   E04B 1/99 20060101ALI20161027BHJP
   B32B 5/18 20060101ALI20161027BHJP
   B32B 5/24 20060101ALI20161027BHJP
【FI】
   B32B17/02
   G10K11/16 A
   G10K11/16 D
   E04B1/86 D
   E04B1/99 Z
   B32B5/18
   B32B5/24 101
【請求項の数】13
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-522135(P2014-522135)
(86)(22)【出願日】2012年7月16日
(65)【公表番号】特表2014-527478(P2014-527478A)
(43)【公表日】2014年10月16日
(86)【国際出願番号】FR2012051685
(87)【国際公開番号】WO2013014363
(87)【国際公開日】20130131
【審査請求日】2015年6月16日
(31)【優先権主張番号】1156902
(32)【優先日】2011年7月28日
(33)【優先権主張国】FR
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】507392897
【氏名又は名称】サン−ゴバン アドフォル
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100193404
【弁理士】
【氏名又は名称】倉田 佳貴
(72)【発明者】
【氏名】ベンジャミン ブランシャール
(72)【発明者】
【氏名】エリゼラ ニカ
(72)【発明者】
【氏名】カタジナ フダ
(72)【発明者】
【氏名】シルバン ベルジェ
【審査官】 相田 元
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−008997(JP,A)
【文献】 米国特許第04283457(US,A)
【文献】 特表2011−506250(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0272983(US,A1)
【文献】 実開昭60−137528(JP,U)
【文献】 特開2007−118747(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
E04B 1/86
E04B 1/99
G10K 11/16
G10K 11/162
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)0.50と0.995との間の開放多孔率を有する有機ポリマー発泡体製の支持層と、
(b)ISO 9053規格に従って測定して、105N・s・m-4と106N・s・m-4との間の静的通気抵抗を有する、ガラス布帛で形成された表面層と、
(c)支持層(a)と表面層(b)との間の界面にあり、17g/m2と60g/m2との間の表面密度を有する非連続性の接着層、
とを含む、3.5mmと6mmとの間の全厚を有する多層構造体。
【請求項2】
前記支持層が、10kg/m3と120kg/m3との間の密度を有することを特徴とする、請求項1に記載の多層構造体。
【請求項3】
前記支持層(a)が、ISO 9053規格に従って測定して、10000N.s.m-4と60000N・s・m-4との間の静的通気抵抗を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の多層構造体。
【請求項4】
前記接着層(c)が、前記支持層(a)を形成するポリマーの軟化点よりも少なくとも10℃低い軟化点を有するホットメルト接着剤を含むことを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の多層構造体。
【請求項5】
前記接着層(c)が、(a)層と(b)層との界面全体に均等に広がる点及び/又は線のネットワークから成ることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の多層構造体。
【請求項6】
前記表面層(b)が、ガラス布又はガラス不織布であることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の多層構造体。
【請求項7】
前記表面層(b)が80g/m2と450g/m2との間の表面密度を有することを特徴とする、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の多層構造体。
【請求項8】
前記支持層(a)の前記表面層(b)に接触している面と反対側の面に接着接合されている下層(d)をさらに含むことを特徴とする、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の多層構造体。
【請求項9】
前記表面層(b)に塗布した塗料の上層(e)をさらに含むことを特徴とする、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の多層構造体。
【請求項10】
4.0mmと5.5mmとの間の全厚を有することを特徴とする、請求項1乃至9のいずれか1項に記載の多層構造体。
【請求項11】
部屋又は建物の1以上の内面への請求項1乃至10のいずれか1項に記載の多層構造体の取り付けを含む、該部屋又は該建物の音響快適性の向上のための方法。
【請求項12】
有機ポリマー発泡構造体、ホットメルト接着剤のウェブ及びガラス布帛を重ね合わせ、次いで、このように形成した少なくとも3つの層を含む構造体を少なくとも前記ホットメルト接着剤の軟化点に等しい温度まで加熱することを含むことを特徴とする、請求項1乃至10のいずれか1項に記載の多層構造体の製造方法。
【請求項13】
接着組成物を規則的又は不規則なパターンで有機ポリマー発泡構造体及び/又はガラス布帛に塗布し、前記ガラス布帛を前記有機ポリマー発泡構造体に接着接合させるため、前記有機ポリマー発泡構造体を前記ガラス布帛に接触させることを含むことを特徴とする、請求項1乃至10のいずれか1項に記載の多層構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえ塗装した状態でも高い吸音能力を有する開放多孔性発泡体に接着接合したガラス布帛を含む、塗装可能な多層壁面被覆に関する。本発明は、そのような被覆の製造方法及び部屋又は建物の音響快適性を向上させるためのその用途にも関する。
【背景技術】
【0002】
「音響快適性」の概念は、一般的な快適性の概念と同様に、比較的主観的な概念である。しかし、人の声や音楽のような音の明瞭さ、こもり音の印象を避けることができないほど短くもなく、強すぎる残留エコーを避けることができないほど長くもない残響時間、及び過度の音響パワーを持つ音が存在しないことにより良好な音響快適性を定義することが一般的に同意されている。音響快適性の質は、例えば壁及び/又は床に定着した吸音材料を使用した音の減衰に主に支配される。
【0003】
音響快適性を防音と区別することは重要である。音が建物の壁のような障害物にぶつかった場合、入射音のエネルギーの一部分は反射し、もう一つの部分は吸収され、第三の部分は障害物により伝播される。防音の目的は音の伝播を減少させることであるのに対し、音響快適性の向上の目的は音の反射成分の減少及び最適化である。
【0004】
音響快適性の質を評価するための2つの最も使用されているパラメーターは、残響時間及び、アルファサビーネ指数(αw)とも呼ばれる吸音係数である。アルファサビーネ指数は所定の材料により吸収された音エネルギーの、入射音エネルギーに対する比(Ea/Ei)として定義される。アルファサビーネ指数はNF EN ISO 354規格(残響室における吸音の測定)に従って実行した拡散場の測定により求められ、NF EN ISO 11654規格(建物用吸収材−吸音の評価)に従って計算する。
【0005】
NF EN ISO 11654規格で説明されているように、拡散場で得られる吸音係数から、性能の各種クラスが定義される。
【0006】
一般的に、所定の多孔質構造及び化学的性質を有する吸音材料又は吸音被覆は、それが厚い場合により一層効果的に音を吸収し、換言すればそのαw指数がその厚さとともに増加する。しかし、理解しやすい理由により、必要以上の厚さを持つ壁面被覆を販売することは望ましくない。それらは大きな保管能力及び輸送能力を必要とするであろうし、一私人によるそれらの取り付けは困難であろう。過度の厚さ、例えば約1cmを超える厚さは、特に一私人向けの住宅の分野において、審美的な問題も引き起こすであろう。
【0007】
吸音壁面被覆の別の問題はそれらの表面の外観である。最良の吸音特性は、一般的に、空気を大いに透過させ、その結果音を大いに透過させる多孔質表面層を有する被覆により得られる。しかし、そのような多孔質表面層は美的観点から常に申し分のないものとは限らず、特にそれらは塗装されることを意図しておらず、それらが塗料の層で被覆された場合、それらの吸音能力は大幅に減少する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、たとえ塗装した状態であっても、NF EN ISO 11654規格に従った吸音被覆として、少なくともクラスE(αw=0.15〜0.25)又はクラスD(αw=0.30〜0.55)に分類することを可能とする吸音係数を有し、かつ厚さが塗装前において6mmを超えない塗装可能な壁面被覆を提案することである。本発明の壁面被覆はこうして、良好な吸音特性と、ガラス繊維布を基礎材料とする被覆のような商用の塗装可能な壁面被覆にできるだけ近い申し分のない美的外観とを組み合わせるものである。
【0009】
いくつかの書類が、防音多層の壁面被覆を説明している。
【0010】
例えば、スイス国特許出願第650196号明細書は、充填材及び難燃性の成分を含む開放多孔性発泡体の支持体並びに例えばポリエステル製の布帛表面層を含む多層壁面被覆を説明している。2つの層の間に挿入されたものは孔が開いたアルミ箔であり、被覆の耐火性を向上させることを目的としている。
【0011】
フランス国特許出願公開第2672908号明細書は、布帛の層がヒートシール性の連続的な薄膜により発泡体の支持体に接着接合され、発泡体の支持体が同様に第2のヒートシール性の連続的な薄膜により下層に接着接合されている多層壁面被覆を説明している。
【0012】
同様に、フランス国特許出願公開第0061369号明細書は、合成ポリマー布帛がポリエチレン製のヒートシール性の連続的な薄膜により開放多孔性発泡体のシートに接着接合されている壁面被覆を開示している。
【0013】
ヨーロッパ特許出願公開第0271681号明細書は、空気を透過させる紙又は布帛の層が、スペーサー構造体、例えば布帛、孔が開いた板又はプラスチック格子に接着接合されている吸音壁面被覆を開示している。布帛で覆われたスペーサー構造体は同様に吸音多孔質構造体に接着接合される。
【0014】
米国特許第5681408号明細書は、2つの比較的緩んだ布帛がポリエチレン薄膜により互いに接着接合されている吸音多層壁面被覆を説明している。
【0015】
米国特許第4283457号明細書は、ガラス繊維製のニードルパンチフェルトが反応型接着剤により開放多孔性のポリウレタン発泡体に接着接合されている吸音壁面被覆を説明している。この材料は良好な吸音特性を有するものと説明されているが、これらの特性は1cmと2cmとの間の厚さを有する非常に厚い被覆で、かつ塗装していない状態で得られる。この被覆の表面層を形成するガラス繊維製のニードルパンチフェルトは、アクリル又はグリプタルの塗装の用途に全く適していないか、あまり適していない。
【0016】
これらの書類は、薄くて塗装した状態であってもNF EN ISO 11654規格に従った吸音材としての分類を可能とする0.2以上の吸音係数(αw)を有するガラス布帛を基礎材料とする被覆を開示していない。
【課題を解決するための手段】
【0017】
出願人は、発泡体支持体に接着接合されたガラス布帛を基礎材料とする、塗装した又は塗装していない壁面被覆についての、多くの拡散場での吸音試験を経て、次の3つの傾向を明らかにすることに成功した。
【0018】
塗装又は部屋の雰囲気に接触することになるガラス布帛は、特定の範囲内の通気を有していなければならない。通気性は、音が下層の発泡体層に入り込むことができるように十分でなければならないが、材料が塗装された状態において不満足な外観を有するであろう値を上回るべきではない。
【0019】
ガラス布帛を発泡体支持体に貼りつける接着剤層は、その支持体の表面のすべての細孔を塞いではならず、換言すれば、表面の層を通過した音が発泡体で吸収されるように発泡体に入り込むことができる微細な領域を空いたままにしておかなければならない。しかし、接着剤の量は、ガラス布帛の発泡体支持体への良好な接着を可能とするのに十分でなければならず、そうでなければ吸音係数は減少する。
【0020】
発泡体の開放多孔率は可能な限り高くなければならない。なぜならば、音が吸収されるのは、発泡体の壁と発泡体中の空気との界面においてだからである。この音が到達できる界面の広さが広いほど、吸音係数は良くなる。
【0021】
こうして、出願人は上記の3つの要素(ガラス布帛の通気性、接着層の構造及び発泡体支持体の気孔率)を最適化することにより、塗装した状態で、NF EN ISO 354規格とNF EN ISO 11654規格に従って測定された、0.25以上のαw指数を持つ薄い壁面被覆を得ることが可能であることを認めた。
【0022】
したがって、本発明の1つの対象は壁面、天井又は床用の被覆として使用することを意図した多層構造体であって、以下のものを含むものである。
(a)0.50と0.995との間の開放多孔率を有する有機ポリマー発泡体製の支持層、
(b)ISO 9053規格に従って測定して、105N・s・m-4と106N・s・m-4との間、好ましくは5×105N・s・m-4と8.5×105N・s・m-4との間、特に7×105N・s・m-4と8×105N・s・m-4との間の静的通気抵抗を有する、ガラス布帛で形成された表面層、
(c)支持層(a)と表面層(b)との界面にあり、17g/m2と60g/m2との間の表面密度を有する非連続性の接着層。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明においては、3つの層(a)、(b)及び(c)は互いに接触しており、言い換えれば、(a)層と(b)層との間にいかなる他の層(例えば、アルミ箔、強化層又はスペーサー層)も存在することなく、接着層(c)が表面層(b)を直接発泡体支持層(a)に貼り付けている。
【0024】
上記の静的通気抵抗の値は塗装していない状態で、かつ、当然発泡体に接着接合する前のガラス布帛について測定されたものである。
【0025】
本発明の音響複合体の層(a)を形成する発泡体の支持体は開放多孔性を有する、換言すれば全ての細孔又はほとんど全ての細孔が互いに通じている、柔らかくしなやかな発泡体である。この開放多孔性の測定は規格の対象ではないので、支持層(a)の発泡体の特性を示すために使用した方法は、L.L.Beranekによる論文「Acoustic impedance of porous materials」,J.Acoust.Soc.Am.,13:248−260,1942で説明されていることに基づく。
【0026】
支持層(a)に使用するフォームの開放多孔率は好ましくは0.80と0.97との間、特に0.83と0.96との間、さらに特に0.87と0.95との間である。
【0027】
そのような発泡体の例として、ポリウレタンを基礎材料とする発泡体、特にポリエステルウレタン、ネオプレン(商標)、シリコーン、ポリエチレン、SBRラテックス及びメラミンを基礎材料とする発泡体を挙げることができる。
【0028】
1つの好ましい実施形態では、使用する発泡体は再生利用により生じる発泡体粒子により形成され、かつ例えば結合剤を使用することにより、又は単純に加圧下で加熱することにより凝集した塊である。
【0029】
支持層(a)は、好ましくは10kg/m3と120kg/m3との間、特に30kg/m3と100kg/m3との間、さらに好ましくは50kg/m3と90kg/m3との間の密度を有する。
【0030】
支持層(a)の通気性は、表面層(b)のそれと比べて決定的ではない。出願人は、ISO 9053規格に従って測定して、10000N・s・m-4と60000N・s・m-4との間、好ましくは13000N・s・m-4と50000N・s・m-4との間、特に14000N・s・m-4と40000N・s・m-4との間の静的通気抵抗を有する発泡体について良好な結果を得た。
【0031】
そのような発泡体は、呼称Agglo80(Carpenter社で販売している凝集ポリウレタン発泡体)、呼称LM 2033、呼称SKT 2537及び呼称HYPORE 30 FR(FoamPartner社で販売しているポリウレタン発泡体)、呼称Basotech 3012(FoamPartner社で販売しているメラミン発泡体)、並びに呼称Resorbson BS(Pinta Enac社で販売しているメラミン発泡体)で、各種の厚さで市場において入手可能である。
【0032】
本発明で使用する発泡体は、多層構造体に組み込む前において2mmと5mmとの間、好ましくは3mmと4mmとの間の厚さを有する。その弾力性により、それはガラス布帛と任意選択的な下層との接着接合の後、基本的にこの厚さを保持する。
【0033】
序論ですでに説明したとおり、(a)層と(b)層との界面の接着層が、例えば接着薄膜の挿入により、例えばフランス国特許出願公開第2672908号明細書、米国特許第5681408号明細書又はフランス国特許出願公開第0061369号明細書におけるように形成された、連続層ではないことが、本発明における本質的要素である。
【0034】
接着層(c)は、(a)層と(b)層との界面に位置する細孔の最大量を開いたままにしておくのと同時に、ガラス布帛(b)を支持体(a)にしっかりと接着接合しなければならない。最終製品の閉じた表面細孔又は開いた表面細孔の割合を正確に定量することは、不運にも非常に困難であるか又は不可能である。
【0035】
満足のいく音響的な結果に達するためには、単位表面当たりの所定の塗布量を保つこと及び接着剤を連続的な薄膜又は層の形で被着させないことが必要である。接着剤は巨視的規模においては界面の全範囲を比較的均一に被覆するように被着させなければならないが、微視的規模においては、特定の領域のみを接着剤で被覆し、他の領域は被覆していないままにしておくことが保証される。そのような「非連続的な」塗布は、例えば、組み立て品を加圧下で接着剤の軟化点又は融点を上回る温度での熱処理にさらす前に発泡体支持体とガラス布帛との間に挿入する、周囲温度で固体であるウェブ又は格子の形のホットメルト接着剤を使用することにより実行すればよい。ホットメルト接着剤の粉末の形で接着剤を発泡体支持体(a)の上又はガラス布帛(b)の上に塗布し、次いで2つ目の(b)層又は(a)層を載せて加圧下で加熱することも想定可能である。
【0036】
ホットメルト接着剤の化学的性質は本発明にとって決定的な要素ではなく、ポリウレタン、コポリアミド(coPA)又はPETのコポリマー(coPET)を基礎材料とする従来のホットメルト接着剤、例えばProtechnic社が提供する製品のTexiron 9D8のようなものを使用することができよう。
【0037】
最後に、接着剤は、必ずしもホットメルト接着剤ではなく、接着接合しようとする2つの構成要素のうちの1つに印刷することにより塗布する反応性又は熱硬化性の接着剤の液体組成物であって、接着剤組成物が連続的な薄膜又は層を形成しないことを確実にするものでもよい。
【0038】
しかし、上記で説明した「非連続的な」態様での塗布は、上に明記した、17g/m2と60g/m2との間、好ましくは20g/m2と40g/m2との間、特に21g/m2と30g/m2との間、理想的には22g/m2と27g/m2との間の塗布量も順守されてはじめて良好な音響的な結果をもたらす。実際に、塗布された表面の接着剤の量が60g/m2を有意に上回った場合、ホットメルト接着剤は溶かした時に発泡体の支持層の表面細孔を塞ぐ連続的な層が形成されるまで広がる虞があり、それは絶対に避けなければならない。逆に、塗布された量が17g/m2を有意に下回った場合、発泡体/ガラス布帛の界面の接着強度が不十分である虞があり、出願人はその場合に最終製品が、相当に悪い、およそ0.1〜0.15の吸収係数を有することを観測した。
【0039】
接着層(c)がホットメルト接着剤で形成されている場合、接着剤の軟化点は、好ましくは支持層(a)を形成するポリマーの軟化点よりも少なくとも10℃、特に少なくとも15℃、理想的には少なくとも20℃低い。なぜならば、発泡体の多孔質構造が積層処理の熱及び圧力の影響下で、不利に変更されないようにすることが必要だからである。
【0040】
塗布方法及び塗布量に関する上記の説明の全てが順守された場合、最終製品における接着層(c)は、(a)層と(b)層との界面全体に均等に広がる点及び/又は線のネットワークから成る。ここでの形容詞「均等」は巨視的規模における均一を意味し、微視的規模においては規則的なパターンと不規則なパターンとのいずれをも包含する。
【0041】
表面層(b)を形成するガラス布帛は、ガラス布(すなわち、縦糸及び横糸から成る織布)又はウェブ(すなわち、不織布)でよい。織布と不織布の組み合わせ、例えば織物構造により強化した不織布も想定することができる。しかし、本発明はニードルパンチにより得られる非常に緩い構造を有するガラスフェルトのようなガラス布帛は包含しない。そのような布帛は、満足のいく機械的強度を有する場合、特に厚さが大きすぎ、何より一般的に塗料の塗布の役に立たない。
【0042】
ガラス布帛はガラス布、すなわち複数のガラスフィラメント(又はストランド)から成るガラス糸から得られる織布又はこれらの糸に由来するもの、特にロービングとしてのこれらのストランドの集成体が好ましい。
【0043】
ガラス布又はウェブは、比較的限られた割合、一般的に20重量%未満、好ましくは10重量%未満の有機材料から成る繊維を所望により含んでもよい。これらの別の繊維は、絹の繊維、羊毛の繊維、木の繊維、セルロースの繊維若しくはコットンの繊維のような天然繊維、ビスコース又はレーヨンの繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレンテレフタラート繊維、ポリスチレン繊維、ポリメチルメタクリレート繊維、ポリアミド繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ポリアクリロニトリル繊維、ポリ酢酸ビニル繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリエステル繊維、ポリテトラフルオロエチレン繊維及びアラミド繊維のような合成繊維又は化学繊維、例えば銀繊維、銅繊維若しくは鋼鉄繊維のような金属繊維、炭素繊維、例えば玄武岩の繊維、シリカ繊維、アルミナ繊維若しくはセラミック繊維のような鉱物繊維でよい。
【0044】
糸の構成に組み込まれるガラスは、例えばE,C,R又はAR(アルカリ耐性)タイプのように、いかなるタイプでも良い。特にEガラスが好ましい。
【0045】
糸を構成するガラスフィラメントの直径は広範囲で変更することができ、例えば5μm〜30μmでよい。フィラメントの線密度は30texと1500texとの間でよい。
【0046】
有利には、ガラス布は、縦糸として、ガラス撚糸(織編用糸)と、横糸として、ガラスフィラメントにボリュームを与えるためにガラスフィラメントを分離することを目的とする処理がなされたガラス不撚糸(ボリュマイズドヤーン)とを含む。縦糸及び横糸の線密度は、好ましくは50〜500texで変化する。
【0047】
通常は、塗装する布又はウェブは、糸を保持し、最終の支持体の取り付けを適切に行うことができるようにそれらに適切な剛性を与えるサイズ剤組成物で被覆する。
【0048】
本発明に使用するガラス布帛は当業界で周知であり、例えば、Adfor社の呼称Novelioのように市場で入手可能である。それらは、好ましくは80g/m2と450g/m2との間、特に100g/m2と300g/m2との間、より一層好ましくは150g/m2と250g/m2との間の表面密度を有する。
【0049】
本発明の多層構造体は、上記の(a)(b)及び(c)の3層に加え、下記において下層(d)と呼ばれる、好ましくは水蒸気透過性で、支持層(a)の表面層(b)と接触する面と反対側の面に接着接合されている第4の層を含んでもよい。
【0050】
この層は、例えば、プラスチックの薄膜、紙のシート、孔が空いた金属薄膜、織布、不織布、又はこれらの組み合わせでよい。
【0051】
この層は主に、音響快適性を向上させる部屋の壁面への取り付けの前に、多層構造体の接着剤による被覆を促進することを意図している。この下層(d)は、当然予め接着剤で被覆してもよい。
【0052】
最後に、本発明の多層構造体は、下記において上層(e)と呼ばれる、表面層(b)に塗布された塗料の層で形成された第5の層を含んでもよい。
【0053】
この塗料は、その構造体の壁面への接着接合の前に塗布してもよく、あるいはその多層構造体を壁面へ接着接合してから初めて塗装してもよい。
【0054】
塗料の上層(e)は、居住空間の装飾に通常使用されるいかなる塗料であってもよい。それは水性アクリル塗料であっても、グリプタル塗料であってもよい。塗料の最終層は、微小孔性であってもなくてもよい。それは一般的に600g/m2未満の塗布量で、好ましくは50〜500g/m2の量、特に100〜350g/m2の量で塗布される。
【0055】
序論で説明したように、各種層の材料の選択は、塗装した状態でNF EN ISO 11654規格に従った吸音被覆としての分類(クラスD又はE)を可能とするために十分な吸音係数を有する壁面被覆を得ることを可能にする。この分類は薄い厚さで得ることができる。それゆえ、本発明の多層構造体は3.5mmと6mmとの間、好ましくは4.0mmと5.5mmとの間の全厚を有する。
【0056】
本発明の多層構造体は、既知の方法と非常に類似しているラミネーション法に従い、壁面被覆の製造に通常使用される既存の装置を使用して生産することができる。
【0057】
本発明の主題であるそのような製造方法の1つにおいては、有機ポリマー発泡構造体、ホットメルト接着剤のウェブ及びガラス布帛を順に重ね合わせ、次いでこのように形成された少なくとも3つの層を含む構造体を、好ましくは例えばカレンダリングにより圧力をかけながら、少なくともそのホットメルト接着剤の軟化点に等しい温度にさらす。
【0058】
ホットメルトウェブの使用の1つの有力な代替案は、発泡体又はガラス布帛の1つの面への粉末又は液体の接着組成物の塗布である。塗布は、例えば印刷による規則的なパターン(格子、等距離の点のネットワーク)に従い、又は例えば粉末接着組成物の散布若しくは液体接着組成物の噴射による不規則なパターンに従って実行することができる。接着組成物の塗布の後、有機ポリマー発泡構造体を、ガラス布帛を有機ポリマー発泡構造体にしっかりと接着接合させるため、好ましくは加圧及び加熱下でガラス布帛に接触させる。
【0059】
本発明の最後の主題は、部屋又は建物の音響快適性の向上のための上記に示したような多層構造体の使用である。音響快適性を向上させる方法は、好ましくは接着接合による、上記の部屋又は上記の建物の1以上の内面、特に壁面への本発明に従う多層構造体の取り付けを含む。
【実施例】
【0060】
[被覆A(本発明による)]
Carpenter社で、呼称Agglo80で販売している、0.93の開放多孔率、80kg/m3の密度及び1.6×104N・s・m-4の静的通気抵抗を有する、凝集した発泡体粒子を基礎材料とするポリウレタン発泡体を、220g/m2の表面密度及び7.7×105N・s・m-4の静的通気抵抗を有する塗装可能なガラス布に積層する。この積層は、ポリエチレンテレフタラート(PET)コア及びPETの単独ポリマー製の中心部の軟化点よりも低い軟化点を有するcoPETコポリマーシェルを備えたバイコンポーネント繊維で構成されるホットメルト接着剤のウェブを使用して行う。ホットメルト接着剤のウェブは25g/m2の表面密度を有する。3つの層を互いに重ね合わせ、その組み立て品をおよそ0.5barのカレンダリング圧力の下、およそ90℃の温度で加熱することで接着接合する。得られた三層構造体は5mmの全厚を有する。次いでそれを、ビニル接着剤(Henkel社からのOvalit Ultra)を使用してBA13石膏ボードに接着接合させ、サテンアクリル塗料(150g/m2)で塗装する。10.80m2の表面を残響室における試験(NF EN ISO 354)のために使用して、NF EN ISO 11654に従って計算した吸収係数は、この三層構造体をクラスDに分類することを可能とする0.3である。
【0061】
[被覆B(本発明による)]
25g/m2の表面密度を有する接着剤のウェブを使用せずに、理想的な表面密度を有する接着剤の格子を使用する点を除いて、上記の被覆Aの生産の手順を繰り返す。
【0062】
[被覆C(本発明による)]
ポリウレタン発泡体粒子を基礎材料とする発泡体を、FoamPartner社により、Basotec(商標)という呼称で販売されているおよそ10kg/m3の密度を有するメラミン発泡体に置き換える点を除いて、上記の被覆Aの生産の手順を繰り返す。
【0063】
[被覆G(本発明による)]
グラファイト粒子(10重量%未満)を充填したポリウレタンフォームを使用する点を除いて、上記の被覆Aの生産の手順を繰り返す。
【0064】
[被覆H(本発明による)]
難燃剤(80kg/m3)を浸み込ませたポリウレタン発泡体Aを使用する点を除いて、上記の被覆Aの生産の手順を繰り返す。それゆえ、この難燃性発泡体は160kg/m3の総重量を有する。
【0065】
[被覆D(比較例)]
ポリウレタン発泡体粒子を基礎材料とする発泡体を、SilentWay社により販売されているおよそ10kg/m3の密度を有するメラミン発泡体に置き換える点を除いて、上記の被覆Aの生産の手順を繰り返す。この発泡体は被覆の全厚が3mmとなるような厚さを有する。
【0066】
[被覆E(比較例)]
25g/m2の表面密度を有する接着剤のウェブを、同一の化学的性質を有するが16g/m2の表面密度を有する接着剤(PET/coPET)のウェブに置き換える点を除いて、上記の被覆Aの生産の手順を繰り返す。
【0067】
[被覆F(比較例)]
この例はこれまでの例に使用したものと同一のガラス繊維布、25g/m2の塗布量の接着剤についての数値モデリングにより得られた結果を示すが、発泡体は0.3の多孔率を有する。
【0068】
6つの被覆の吸音係数を下の表に示す。
【0069】
【表1】
【0070】
得られた結果は、請求項1に定義した要素の選択は、塗装した状態であっても、吸音被覆としての分類を可能とする少なくとも0.25の吸音係数を有する薄い壁面被覆(5mm)を得ることを可能とすることを示す。
本発明の実施態様の一部を以下の項目〈1〉−〈13〉に記載する。
〈1〉 (a)0.50と0.995との間、好ましくは0.80と0.97との間、特に0.83と0.96との間、さらに特に0.87と0.95との間の開放多孔率を有する有機ポリマー発泡体製の支持層と、
(b)ISO 9053規格に従って測定して、105N・s・m-4と106N・s・m-4との間、好ましくは5×105N・s・m-4と8.5×105N・s・m-4との間、特に7×105N・s・m-4と8×105N・s・m-4との間の静的通気抵抗を有する、ガラス布帛で形成された表面層と、
(c)支持層(a)と表面層(b)との間の界面にあり、17g/m2と60g/m2との間、好ましくは20g/m2と40g/m2との間、特に21g/m2と30g/m2との間、理想的には22g/m2と27g/m2との間の表面密度を有する非連続性の接着層、
とを含む、3.5mmと6mmとの間の全厚を有する多層構造体。
〈2〉 前記支持層が、10kg/m3と120kg/m3との間、好ましくは30kg/m3と100kg/m3との間であり、特に50kg/m3と90kg/m3との間の密度を有することを特徴とする、項目1に記載の多層構造体。
〈3〉 前記支持層(a)が、ISO 9053規格に従って測定して、10000N・s・m-4と60000N・s・m-4との間、好ましくは13000N・s・m-4と50000N・s・m-4との間、特に14000N・s・m-4と40000N・s・m-4との間の静的通気抵抗を有することを特徴とする、項目1又は2に記載の多層構造体。
〈4〉 前記接着層(c)が、前記支持層(a)を形成するポリマーの軟化点よりも少なくとも10℃、好ましくは少なくとも15℃、理想的には少なくとも20℃低い軟化点を有するホットメルト接着剤を含むことを特徴とする、項目1乃至3のいずれか1項に記載の多層構造体。
〈5〉 前記接着層(c)が、(a)層と(b)層との界面全体に均等に広がる点及び/又は線のネットワークから成ることを特徴とする、項目1乃至4のいずれか1項に記載の多層構造体。
〈6〉 前記表面層(b)が、ガラス布又は不織布であることを特徴とする、項目1乃至5のいずれか1項に記載の多層構造体。
〈7〉 前記表面層(b)が80g/m2と450g/m2との間、好ましくは100g/m2と300g/m2との間、特に150g/m2と250g/m2との間の表面密度を有することを特徴とする、項目1乃至6のいずれか1項に記載の多層構造体。
〈8〉 前記支持層(a)の前記表面層(b)に接触している面と反対側の面に接着接合されており、好ましくは水蒸気透過性の下層(d)をさらに含むことを特徴とする、項目1乃至7のいずれか1項に記載の多層構造体。
〈9〉 前記表面層(b)に塗布した塗料の上層(e)をさらに含むことを特徴とする、項目1乃至8のいずれか1項に記載の多層構造体。
〈10〉 4.0mmと5.5mmとの間の全厚を有することを特徴とする、項目1乃至9のいずれか1項に記載の多層構造体。
〈11〉 好ましくは接着接合による、部屋又は建物の1以上の内面への項目1乃至10のいずれか1項に記載の多層構造体の取り付けを含む、該部屋又は該建物の音響快適性の向上のための方法。
〈12〉 有機ポリマー発泡構造体、ホットメルト接着剤のウェブ及びガラス布帛を重ね合わせ、次いで、このように形成した少なくとも3つの層を含む構造体を少なくとも前記ホットメルト接着剤の軟化点に等しい温度まで加熱することを含むことを特徴とする、項目1乃至10のいずれか1項に記載の多層構造体の製造方法。
〈13〉 接着組成物を規則的又は不規則なパターンで有機ポリマー発泡構造体及び/又はガラス布帛に塗布し、前記ガラス布帛を前記有機ポリマー発泡構造体にしっかりと接着接合させるため、前記有機ポリマー発泡構造体を前記ガラス布帛に接触させることを含むことを特徴とする、項目1乃至10のいずれか1項に記載の多層構造体の製造方法。