(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記表示手段は、前記第1マーカと前記第2マーカとの相対位置の変化に応じて、前記第1対象骨の骨画像と前記第2対象骨の骨画像との相対位置が変化するように、前記第1対象骨の骨画像と前記第2対象骨の骨画像と前記参照骨の骨画像を表示する請求項1に記載の外科手術支援システム。
前記術前準備手段は、前記第1対象骨および前記第2対象骨を前記参照骨と重ね合わせた状態での、前記第1、第2マーカの支持部材の目標相対位置データを前記記憶手段に記憶し、
前記表示手段は、前記目標相対位置データに基づいて前記第2マーカの支持部材の目標位置を表示する請求項3に記載の外科手術支援システム。
前記記憶手段は、前記第1、第2対象骨に前記第1、第2マーカの支持部材が固定された状態で内部撮影することによって取得された前記第1、第2対象骨および前記支持部材の3次元データを記憶し、
前記記憶手段に記憶された前記第1マーカの支持部材の3次元データに基づいて、該支持部材に取り付けられるべき前記第1マーカの位置データを生成し、前記記憶手段に記憶された前記第2マーカの支持部材の3次元データに基づいて、前記第2マーカの位置データを生成し、それらの位置データを前記記憶手段に記憶する位置データ生成手段をさらに有する請求項1乃至4のいずれか1項に記載の外科手術支援システム。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、図面を参照して、本発明の実施の形態について例示的に詳しく説明する。ただし、以下の実施の形態に記載されている構成要素は単なる例示であり、本発明の技術範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0015】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態としての外科手術支援システム100について、
図1を用いて説明する。外科手術支援システム100は、画像処理により外科手術を支援するシステムである。
【0016】
図1に示すように、外科手術支援システム100は、記憶部110と、撮像部120と、表示部150と、を含む。
【0017】
記憶部110は、2つに分かれた手術対象骨101の一方である第1対象骨111の3次元データ、および第1対象骨111と一部が重なる参照骨113の3次元データを、第1対象骨111に固定される第1マーカ102の位置データと関連付けて記憶する。そして、2つに分かれた手術対象骨101の他方である第2対象骨112の3次元データを、第2対象骨112に固定される第2マーカ103の位置データと関連付けて記憶する。
【0018】
撮像部120は、第1対象骨111に固定された第1マーカ102と第2対象骨112に固定された第2マーカ103とを撮像する。そして、表示部150は、第2対象骨112が参照骨113に重なる際の第1マーカ102に対する第2マーカ103の目標位置が把握できるように、記憶部110に記憶されたデータを用いて、第1マーカ102と第2マーカ103との相対位置の変化に応じて表示を変化させる。
【0019】
本実施形態によれば、手術中における、生体内の骨の適切な配置の決定を支援することできる。
【0020】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態に係る外科手術支援システムについて説明する。本実施形態に係る外科手術支援システムは、あらかじめ手術対象骨の配置の基準となる手術対象骨の一方の第1対象骨の3次元データと参照骨の3次元データとを生成して、第1対象骨に固定された第1マーカ(例えば2次元コード)と関連付けて記憶する。また、手術対象骨の他方の第2対象骨の3次元データを生成して、第2対象骨に固定された第2マーカ(例えば2次元コード)と関連付けて記憶する。手術時には、AR(Augmented reality)技術を利用して、撮像した第1マーカおよび第2マーカから、第1対象骨および第2対象骨の3次元位置を判定して、記憶された3次元データに基づいて表示する。そして、第2対象骨と参照骨とが適正に重なったか否かを判定することで、手術対象骨の適切な配置を決定する。このような処理によって、医師による手術対象骨の適切な配置の決定を支援する。
【0021】
《外科手術支援システム》
以下、
図2〜
図7を参照して、本実施形態の外科手術支援システムの構成と処理の概要を説明する。外科手術支援システムは、大きく分けて、術前準備データ生成システムと術中画像処理システムとを含む。術前準備データ生成システムは、術前に第1対象骨、第2対象骨および参照骨の3次元データを生成、表示して、術中に使用するデータを生成し記憶するシステムである。術中画像処理システムは、マーカ撮像に基づいて対象骨画像および参照骨画像を生成し表示して、手術対象骨の配置決定を支援するシステムである。しかしながら、術前準備データ生成システムと術中画像処理システムとを、統合された1つのシステムとして構成してもよい。
【0022】
(外科手術の概要)
図2は、本実施形態に係る外科手術全体の概要を説明する図である。
図2は、変形治癒した罹患骨(手術対象骨)の骨切矯正手術の例を示している。骨切矯正手術は、準備段階201と、手術対象骨の位置決め段階202と、手術対象骨の位置固定段階203とを含む。本実施形態においては、橈骨遠位部変形治癒手術を例に説明するが、これに限定されない。他の部位や他の骨の変形治癒、あるいは、骨折治療手術にも同様に適用される。
【0023】
準備段階201においては、前腕213の手術対象骨の骨切平面を挟む2つの位置に、所定間隔(例えば、1cm、2cmの間隔)で2本が対となったピン211、212を、2つのマーカの支持部材として固定する。充分な強度と断面積があり、手術対象骨の長手方向に2本のピンが固定可能な場所がピンの挿入固定位置として望ましい。また、ピンの長さは、患部や骨により異なるが、前腕であれば外部にマーカを設定でき、かつ容易に撮像可能な長さとして、5cm〜10cm程度であればよい。ピン211、212を固定した状態でCT(Computed Tomography)撮影を行なって、手術対象骨の3次元データを生成し、記憶する。さらにピン211、212に対して後に固定されるマーカの位置および向きをあらかじめ設定してマーカの位置データ生成を行ない、マーカの位置データと手術対象骨の3次元データと参照骨の3次元データとを関連付ける。
【0024】
例えば、手術対象骨の3次元データに含まれるピンの3次元データを表示し、その2本のピンの根本位置と先端位置とを、ユーザにポインティングデバイスなどで指定させることにより、それらのピンに取り付けられるマーカの位置および向きを定義してもよい。2本のピンが生成する平面とマーカの位置および向きとの関係はあらかじめ設定されていてもよいし、複数の関係(例えば2本のピンが生成する平面に対して平行、垂直、45度をなすなど)から選択してもよい。また例えば、ピンの3次元モデルデータ、およびマーカをピンに固定するために使用される1つまたは複数の治具の3次元モデルデータを用意しておき、CT撮影によって取得したピンの3次元データに対して、3次元空間上で、3次元モデルデータを重ね、治具を取り付けてマーカの位置を定義してもよい。これにより、マーカの位置および向きと手術対称骨および参照骨の位置および向きとの関係がデータベース内に記憶される。
【0025】
手術中には、患部を切開して骨切りを実施した後、手術対象骨の位置決め段階202において、デジタルカメラを用いてマーカ221、222を撮影する。撮像画像からマーカ221、222のそれぞれの位置、大きさおよび向きを認識し、データベースを参照することにより、手術対象骨の位置、大きさおよび向きを導き出す。そして、導き出した位置、大きさおよび向きの手術対象骨223、224を表示する。
【0026】
医師が手226で患者の前腕213をつかみ、腕を曲げたりねじったりすると、撮像画像中のマーカ221の状態が変化する。このマーカ221の位置、大きさ、傾きの変化に応じて、表示画像中の手術対象骨223の表示位置、大きさ、傾きが変化するように表示する。一方、マーカ222の位置、大きさ、傾きとの相対関係と共に参照骨225の3次元形状データがあらかじめ記憶されており、マーカ222を撮像することにより、所定の位置に参照骨225が表示される。医師は、手術対象骨223が参照骨225と重なる位置を発見すると、手術対象骨の位置固定段階203に進む。
【0027】
手術対象骨の位置固定段階203においては、確定された患者の前腕213内部の手術対象骨223、224の適切な相対配置を維持するために、手術対象骨223が参照骨225と重なる位置におけるピン211、212を固定具231で固定する。
【0028】
このような外科手術支援システムによる支援を経ることで、切開部の縮小と、手術の迅速化とが可能になる。なお、
図2では、ピン211、212を創外に突出させているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、ピンの先端が創内に収まるような短いピン(1〜2cm)として、術中(位置決め段階202)に、その短いピンに新たに長いピンを接続した上で、マーカ221、222を取り付けてもよい。
【0029】
あるいは、ピンを挿入せずに骨のみのCTを撮って生成された骨のCGデータに対して仮想的にピンを挿入し、その後、術中に開創して、CGデータどおりの位置に実際にピンを挿入してもよい。その際、仮想ピン付きの骨のCGデータを用いてマーカの位置を決めておき、3Dプリンタで、その患部の骨にぴったりと嵌る型(ピン穴付きカタ)を生成し、その型に合わせてピンを挿入することにより、CGデータにおけるピンと同じ位置に実際のピンを挿入してもよい。さらに、そのような型を骨にぴったりと嵌はめた状態で、その型自体にマーカを取り付ける方法でもよい。デジタルカメラで撮像した骨の特徴点を判別して、ピン付きのCGデータと重ね合わせることにより、CGデータと同じ位置に同じ方向でピンを挿入してもよい。これにより、ピンを刺してCTスキャンを撮ってからの患者の負担、感染症の確立を抑えることができる。
【0030】
(ピン固定処理)
図3Aは、マーカ用ピン(以下、ピン)の骨への挿入処理の概要を説明する図である。
図3Aは、手術対象骨311に対して、骨切平面が存在すると推定される領域を挟んだ2箇所に2本ずつピン211、212を固定する例を示す。ピン固定用菅体312を皮膚に載せる位置決めステージ301と、ピン固定用菅体312にピンを挿入して骨に固定するピン固定ステージ302と、菅体取り外しステージ303とを示す。
【0031】
まず、位置決めステージ301において、骨切平面が存在すると推定される領域を挟んだ患部の前椀213の2箇所にピン固定用菅体312を載せる。ピン固定用菅体312は、ピンを正確に所定の間隔で挿入固定するための2つの管部を備える。かかるピン固定用菅体312にピン212を挿入する。
【0032】
次に、ピン固定ステージ302において、管部に挿入したピン212を患部の前椀213に差し込み、手術対象骨311に固定する。ピン212の先端にはねじが切られており、ピンを回転させて骨に差し込む。
【0033】
そして、菅体取り外しステージ303においては、ピン212を残して、ピン固定用菅体312のみを抜き外す。以上の様な位置決めステージ301、ピン固定ステージ302、および菅体取り外しステージ303を繰り返して、もう一対のピン211を固定する。これにより、ピン211、212が手術対象骨311に固定される。
【0034】
(術前準備データ生成システムの構成)
図3Bは、術前準備データ生成システム320の構成を示すブロック図である。
【0035】
術前準備データ生成システム320は、ネットワーク323により接続された、参照画像を生成するための情報処理装置324と、患者322の断層画像を取得するCTスキャナ321と、を有する。さらに、オプションとして、断層画像データから3次元骨表面データ(STLデータ)を生成するSTLデータ生成サーバ325を有してよい。なお、ネットワークは、広域ネットワークであってもLANであってもよい。
【0036】
本実施形態においては、CTスキャナ321によって患者322の患部および患部の参照となる部位の断層画像を取得する。本例では、例えば、4本のピンが手術対象骨に挿入固定された右腕前椀の断層画像と健側の左腕前腕の断層画像とを取得する。断層画像データは、ネットワーク323を介して、情報処理装置324に送られ、情報処理装置324において3次元データに変換される。なお、断層画像データから3次元データへの変換は、STLデータ生成サーバ325が行なってもよい。
【0037】
なお、本実施形態で使用される生体データは、CT/MRIにより取得されたデータに限定されるものではなく、3次元データはSTLデータに限定されるものではない。
【0038】
(術前準備データ生成処理)
図4は、情報処理装置324を用いた術前準備データ生成処理の概要を説明する図である。画像401〜406は、情報処理装置324の表示画面に表示されるCG(Computer Graphics)画像であり、それぞれ、術前準備データ生成処理の各ステージに対応している。
【0039】
まず、第1ステージにおいて、画像401に示すように、前腕213の手術対象骨と左右対称位置(健側)にある非罹患骨をCTスキャンなどで内部撮影して生成した非罹患骨3次元データ411を反転し鏡像データを生成する。これにより、手術対象骨と同様の(少なくとも一部が重なった)形状を有する参照骨の3次元データ(以降、参照骨と称す)
412を生成する。
【0040】
第2ステージにおいて、画像402に示すように、前腕213の手術対象骨をCTスキャンなどで内部撮影して生成した手術対象骨(罹患骨)の3次元データ(以降、手術対象骨と称す)421を表示する。手術対象骨421は、ピン211、212が固定された状態で撮影されたSTLデータから生成されているため3次元データ上でもピン211、212を含んでいる。そして、参照骨412と手術対象骨421とを表示画面上で対比させて、手術対象骨421の状態を確認する。
【0041】
第3ステージにおいては、3次元空間での観察点を手術対象骨に近づけた拡大表示画像405や、異なる観察点からの複数の画像を同時に表示する分割表示された画像406(ここでは、3方向からの画像)を参照しながら手術対象骨421を画像403上で操作する。すなわち、手術対象骨421を参照骨412に対して移動したり回転したりして、参照骨412の各端部と手術対象骨421の各端部とを重ね合わせる。
【0042】
骨切平面が上端側にあると推定できる場合には、まず、左側のように、手術対象骨421と参照骨412との下端同士を重ねて、手術対象骨421の骨切平面を決定する。特に、関節部の形状を重ねることにより、手術対象骨421の歪みや曲り、変形を認識した上で、下端から徐々に上方に見ていき、参照骨との離間が始まる分岐位置を骨切平面431とする。なお、医師が、参照骨412と手術対象骨421との重畳具合を見ながら骨切平面431を決定してもよいが、例えば、手術対象骨421と参照骨412との下端からの単位長さあたりの非重畳体積が所定値を越える位置を自動的に判定して骨切平面431としてもよい。あるいは、参照骨412の表面を単位面積に細かく分け、その単位面積ごとに手術対象骨421の表面までの鉛直方向の距離が所定値を越えた位置をつなぐことにより骨切平面431を自動的に導いてもよい。
【0043】
画像403の右の図のように、手術対象骨421と参照骨412の上端同士を重ねて、上側の分離骨における断面の位置を確認する。最終的に骨切平面431を決定すると、手術対象骨421を骨切平面431で分離し、2つの対象骨441、442の3次元データを生成する。
【0044】
第4ステージにおいては、重ね合わせた対象骨442と参照骨412とを1セットにして、ピン212に取り付けられるマーカ222と関連付けて記憶する。そして、画像404に示すように、対象骨442または参照骨412に対する対象骨441の目標位置を、ピン211に取り付けられるマーカ221の位置データと関連付けて、記憶する。これにより、実空間においてマーカ221の位置や傾きが認識できれば、目標とする対象骨441の位置や傾きが推定できる。さらに骨切平面431の位置、形状、傾きのデータを、マーカ221またはマーカ222の位置データと関連付けて記憶する。ピン211に対するマーカの221の位置および向き、および、ピン212に対するマーカの位置および向きは、あらかじめ一つに定められていてもよいが、本実施形態では、複数(例えば4通り)
から選べるものとする。第1のマーカ取り付けタイプは、2本のピンが形成するピン平面に対して、平行にマーカを取り付けるタイプである。第2のマーカ取り付けタイプは、ピンの軸方向に平行で、ピン平面に垂直をなす平面にマーカを取り付けるタイプである。第3のマーカ取り付けタイプは、ピンの軸方向に平行で、ピン平面に45度をなす平面にマーカを取り付けるタイプである。第4のマーカ取り付けタイプは、ピンの軸方向に平行で、ピン平面に135度をなす平面にマーカを取り付けるタイプである。その他、ピンの軸方向に垂直な平面にマーカを取り付けてもよい。実際のピンにどのようにマーカを取り付けるかに応じて、そのマーカと表示すべき手術対象骨や参照骨との相対位置関係を変更すればよい。
【0045】
このように準備されたデータを使用することにより、手術時に撮像されるマーカの位置、大きさおよび向きに基づいた、対象骨441および参照骨412の画像表示、対象骨442の画像表示、および骨切平面431の画像表示が可能となる。なおここで、対象骨441と対象骨442との間の間隙443は、手術時に必要な接合骨の形状を表わしている。したがって、この時点で、手術時に必要な接合骨の3次元形状も取得することができる。
【0046】
なお手術時に、健側から生成した参照骨412を用いずに、画像404において目標配置として決定された対象骨441、442の組合せを一体として用いて表示してもよい。その場合、対象骨441、442の両方を参照骨412と重ね合わせた状態での、第1、第2マーカ221、223の支持部材としてピン211、212の位置を、目標相対位置データとして記憶部に記憶すればよい。そして、記憶された目標相対位置データに基づいて第2マーカ222のピン212の目標位置を表示すればよい。また、本実施形態では、変形治癒した罹患骨(手術対象骨)の骨切矯正手術を例としているので骨切位置をこの段階で定めたが、単純骨折の治療手術の場合には、はじめから骨が2つに分離しているため、骨切位置の決定は不要となる。つまり、CTスキャン等で生成した3次元データをそのまま用いて、参照骨と重ね合わせればよい。また、第4ステージにおいて、対象骨442に対して対象骨441をどちら方向に何度回転し、何ミリ移動すれば参照骨412と重なるかを数値で記憶してもよい。そうすれば、手術時に実際のピン211に固定されるマーカ221(つまり腕)をどちら方向にどれだけ回転し、どちら方向にどれだけ移動すればよいかを、視覚的に(矢印などの画像で)示すことができる。
【0047】
(術中画像処理システムの構成)
図5Aは、本実施形態に係る術中画像処理システム500の概略構成を示す図である。
【0048】
術中画像処理システム500は、情報処理装置としてのタブレット型コンピュータ501と、表示装置502と、を有する。タブレット型コンピュータ501は、ディスプレイ511とカメラ512とを備えている。
【0049】
タブレット型コンピュータ501は、ディスプレイ511が医師503の方を向き、かつ、カメラ512がマーカ221、222を向く位置に固定される。タブレット型コンピュータ501は、あらかじめ手術対象骨の3次元データを記憶しており、マーカ221、222の画像から手術対象骨の位置および方向を認識する。タブレット型コンピュータ501は、ディスプレイ511において、認識した位置に、手術対象骨の画像を表示する。これにより、医師503は、一目で患部とその内部の骨との位置関係を把握することができる。
【0050】
医師503が、患者322の前腕213を掴み、ねじったりのばしたりすると、それに伴いマーカ221、222の位置も変化するため、ディスプレイ511中の手術対象骨421も移動したり、回転したりする。そのように前腕213を動かして、ディスプレイ511中の対象骨442を参照骨412に重ね合わせることによって、手術対象骨の目標位置を確定する。確定した位置で、固定具231を用いてピン211、212を固定する。
【0051】
(術中対象骨位置決め処理)
図5Bは、術中における手術対象骨の骨切作業および位置決め作業の概要を説明する画面遷移図である。手術前に、ピン211、212にマーカ221、222を固定する。
【0052】
骨切ステージにおいては、画像521のように、ディスプレイ511に骨切平面431を3次元表示させて、適正な位置で手術対象骨を切断する。画像521中、太線で示された部分は、カメラ512による撮像画像であり、細線で示され部分は、3次元データから生成されたCG画像である。
【0053】
医師は、骨切平面431に合わせて骨切ブレードを患部に挿入し、変形治癒した罹患骨を分離する。次に、座標空間の画像522や、分割表示された画像523〜526を参照しつつ、患者の前腕を動かして、対象骨441を、対象骨442に対して操作する。画像521〜526では、撮影により得られたマーカ221、222の位置、大きさおよび方向に応じた位置、大きさおよび方向の対象骨441、442が表示される。
【0054】
画像522は、3次元空間のX軸/Y軸/Z軸と観察点の角度を表示しており、参照骨412と対象骨441、442との3次元空間での相対位置を抽出して表示するものであり、観察点を移動させて、対象骨441、442の画像を画面上で回すことができる。画像523〜526は、1画面に表示される分割表示画像であり、画像523は、画像521と同じ、撮像画像とCG画像との重ね合わせ画像である。画像524は、画像523からCG画像のみを抽出したものであり、ここではピンの付いた参照骨と対象骨とが表示されている。画像525は、カメラ512とは90度をなす、骨の軸方向から見た場合の参照骨412および対象骨441、442の画像である。画像526は、カメラ512とは90度をなすピン挿入方向から見た場合の参照骨412および対象骨441、442の画像である。つまり、画像524〜526は、3次元空間の3軸方向をそれぞれ観察点とする3つの表示画像である。医師はこれらの表示画面を観察しながら、対象骨441、442の適切な配置を決める。
【0055】
画像527は、対象骨441を参照骨412上に重ね合わせた状態を示している。この状態で、対象骨441、442に付けられたピン211、212を固定具で固定する。
【0056】
(外科手術支援システムの処理手順)
図6は、術前準備データ生成システム320と術中画像処理システム500とを含む外科手術支援システム全体の処理手順を示すフローチャートである。
【0057】
まず、術前準備データ生成システム320は、ステップS601において、ピンを固定した手術対象骨の断層画像(例えば、CT画像)および健側骨の断層画像を取得して、それぞれの3次元データを生成する。
【0058】
次に、ステップS603において、生成した3次元形状データを表示しつつ、骨切平面431および骨切後の骨の適正配置を決定し、それらの位置データを記憶する
次に、術中画像処理システム500は、ステップS605において、手術対象骨に固定したマーカを撮像する。
【0059】
そして、術中画像処理システム500は、ステップS607において、患部撮像画像に重ねて、マーカの移動に従って変化する第1対象骨および参照骨の骨画像と、第2対象骨の骨画像とを生成して、表示する。医師は、表示画面を見ながら前腕を動かす。
【0060】
術中画像処理システム500は、ステップS609において、第2対象骨の骨画像が参照骨の骨画像に合致するように、前腕の2つの対象骨が配置されたことを確認する。合致していなければ、術中画像処理システム500は、ステップS605に戻って、合致する位置に対象骨が配置されるまで処理を継続する。
【0061】
(外科手術支援器具)
図7は、本実施形態に係る外科手術支援システムで使用される外科手術支援器具を示す図である。なお、
図7には、検査や手術に通常使用される器具については図示されていない。
【0062】
外科手術支援器具としては、手術対象骨のCT撮影前、あるいは、手術対象骨のCT撮影後の手術開始前に、手術対象骨の2箇所に2本ずつのピンを固定するために使用される支援器具類710が含まれる。また、手術時に2本のピンにマーカを取り付けるための支援器具類720が含まれる。
【0063】
支援器具類710は、2本で1対のピン211、212と、ピン211、212を正確に1cm間隔で挿入するためのピン固定用菅体312と、ピン211、212を正確に2cm間隔で挿入するためのピン固定用菅体712と、を含む。支援器具類710は、
図3Aを用いて説明した通りに使用される。
【0064】
支援器具類720は、紙やプラスティックフィルムに印刷された2次元コード729と、2次元コード729を支持するマーカ支持具722〜725と、マーカ支持具722〜725をピンに取り付けるためのピン接続具727、728と、接続具727、728の位置決めのために用いる逆L字に形成された位置決め用治具726とを含む。
【0065】
マーカ支持具722は、2本のピンが形成するピン平面に対して、平行にマーカを取り付ける支持具である。マーカ支持具723は、ピンの軸方向に平行で、ピン平面に垂直をなす平面にマーカを取り付ける支持具である。マーカ支持具724は、ピンの軸方向に平行で、ピン平面に45度(右45度)をなす平面にマーカを取り付ける支持具である。マーカ支持具725は、ピンの軸方向に平行で、ピン平面に135度(左45度)をなす平面にマーカを取り付ける支持具である。これらの本発明に係るマーカ支持具は、これらに限定されるものではなく、ピンの軸方向に垂直な平面にマーカを取り付ける支持具や、ピンに対して自由な向きにマーカを取り付けることのできるヒンジを有する支持具を用意してもよい。実際のピンにどのようにマーカを取り付けるかに応じて、そのマーカと表示すべき手術対象骨や参照骨との相対位置関係を変更すればよい。
【0066】
位置決め用治具726は、凸部726aと凹部726bと溝部726cとを有している。凸部726aおよび凹部726bは、ピン接続具727、728に設けられた凸部727a、728aおよび凹部727b、728bとぴったり嵌り合う(緩合する)大きさに形成されている。
【0067】
まず、第1ステップとして、凹部および凸部を用いて位置決め用治具726とピン接続具727とを合体させる。次に、第2ステップとして、ピンを、溝726c、727cに沿って挿入し、天井面726dにピンが当接する位置で、ねじ727dによって、ピン接続具727とピンとを固定する。その後、第3ステップとして、位置決め用治具726をピン接続具727から取り外す。同様に第1〜第3ステップを繰り返し、位置決め用治具726を用いて、ピン接続具728とピンとを正確な位置で接続する。
【0068】
そのようにピン接続具727、728をそれぞれ正確にピン211、212に接続する。
【0069】
マーカ支持具722〜725は、やはり凸部と凹部とをそれぞれ有している。そして、凸部727a、728aと凹部727b、728bとをはめ込むことにより、マーカ支持具722〜725のいずれかを、ピン接続具727、728のいずれかに固定する。
【0070】
《術前準備データ生成システムにおける情報処理装置の機能構成》
図8は、情報処理装置324の機能構成例324Aを示すブロック図である。なお、
図8においては、断層画像データとしてCTデータを示し、3次元骨表面モデルデータとしてSTLデータを示すが、これらに限定されない。情報処理装置324Aの各機能部は、CPUによりメモリを使用しながらプログラムを実行することにより画像データを処理することで実現される。
【0071】
図8のCTデータ取得部811は、患者322の画像として、CTスキャナ321からのCTデータ(DICOM)を取得する。CTデータベース812は、CTデータ取得部811が取得したCTデータを検索可能に蓄積する。
【0072】
骨形状データ生成部813は、CTデータから3次元骨表面モデルデータとしてSTLデータを生成する。STLデータDB814は、骨形状データ生成部813が生成したSTLデータを検索可能に蓄積する。
【0073】
表示部/操作部815は、ディスプレイやタッチパネルなどで構成され、骨形状データ生成部813が生成したSTLデータに基づいて、骨画像を3次元表示すると共に、医師の指示に従い骨画像の3次元移動(回転および移動)を行なう。本例においては、患者322の手術対象骨の画像と、健側骨の画像とが、同時に重ね合わせ可能に表示される。また、表示部/操作部815においては、手術対象骨の骨切位置情報を入力可能である。そして、手術対象骨を骨切位置で切断分離した複数の部分骨(第1対象骨/第2対象骨)がそれぞれ独立して3次元移動(回転および移動)表示可能である。参照骨データ生成部816は、健側骨の3次元データを左右反転することにより、参照骨データを生成する。
【0074】
3次元データ生成部817は、骨切位置情報に基づいて分離された第1対象骨と参照骨との3次元形状データを仮想3次元空間で重ね合わせ、3次元基準骨データを生成する。そして、生成した3次元基準骨データを、術前準備データDB819に格納する。また、3次元データ生成部818は、第2対象骨の3次元形状データを生成する。そして、生成した3次元形状データを、術前準備データDB819に格納する。なお、対象骨と参照骨との重ね合わせは、医師の操作に基づいて行なってもよいし、3次元データ生成部817、818が骨形状(特に、関節部の形状)に基づいて自動的に行なってもよい。術前準備データDB819は、3次元データ生成部817、818が生成した3次元データをSTLデータによって検索可能に蓄積する。かかる術前準備データDB819に蓄積したSTLデータは、術中画像処理システム500において使用される。
【0075】
図9は、情報処理装置324の他の機能構成例324Bを示すブロック図である。なお、
図9において、
図8と同様の機能構成部には同じ参照番号を付して、説明を省略する。
図9に示す各機能部は、CPUによりメモリを使用しながらプログラムを実行することにより画像データを処理することで実現される。
【0076】
図9の構成は、
図8の構成と異なり、CTデータからSTLデータを生成する機能を情報処理装置324が有しない(プログラムが搭載されてない)ので、外部のSTLデータ生成サーバ325にSTLデータを依頼する。SLTデータ要求部921は、CTデータをSTLデータ生成サーバ325に送信して、STLデータの生成を依頼する。SLTデータ取得部922は、STLデータ生成サーバ325から生成されたSTLデータを受信する。なお、STLデータ生成サーバ325へのCTデータや、STLデータ生成サーバ325からのSTLデータは、記憶媒体により送受されてもよい。
【0077】
(STLデータDB)
図10は、本実施形態に係るSTLデータDB814の構成を示す図である。STLデータDB814には、本実施形態における3次元骨表面モデルを表わすSTLデータが検索可能に蓄積されている。なお、STLデータDB814の構成は
図10に限定されない。
【0078】
STLデータDB814は、画像ID1001に対応付けて、CTデータ取得日時1002、患者名1003、患部1004、症状1005、CTデータ1006を格納する。また、STLデータDB814は、CTデータ1006から生成されたSTLデータ1007と、外部でSTLデータが生成された場合はSTLデータ生成元1008とを格納する。
【0079】
(3次元術前準備画像DB)
図11は、本実施形態に係る術前準備データDB819の構成を示す図である。術前準備データDB819には、本実施形態における3次元骨画像を表わすSTLデータが検索可能に蓄積されている。なお、術前準備データDB819の構成は
図11に限定されない。
【0080】
術前準備データDB819は、患者名1101に対応付けて、患部1102、症状1103、第1マーカに関連付けられた3次元データ1104、第2マーカに関連付けられた3次元データ1105、を格納する。3次元データ1104は、第1対象骨の3次元データと第1マーカ支持器具の3次元位置データと参照骨の3次元データとを含む。3次元データ1105は、第2対象骨の3次元データと第2マーカ支持器具の3次元位置データとを含む。なお、3次元データ1104および1105は、表示骨画像が3次元空間で移動および回転が可能な形式で格納される。
【0081】
(参照骨画像生成テーブル)
図12は、本実施形態に係る参照骨データ生成テーブル1200の構成を示す図である。参照骨データ生成テーブル1200は、
図8または
図9の参照骨データ生成部816が参照骨データを生成するために使用するテーブルである。
【0082】
参照骨データ生成テーブル1200は、3次元参照骨画像ID1201に対応付けて、患者名1202、患部1203、症状1204、健骨STLデータ1205、および、参照骨としての参照骨STLデータ1206を記憶する。
【0083】
《情報処理装置の処理手順》
図13は、情報処理装置324内の処理手順を示すフローチャートである。このフローチャートは、情報処理装置324のCPUがRAMを使用しながら術前準備データ生成プログラムとして実行し、
図8または
図9の機能構成部を実現する。
【0084】
情報処理装置324は、ステップS1301において、ピンを固定した対象骨および健骨のCT画像を取得する。情報処理装置324は、ステップS1301において、CT画像データからSTLデータを生成する。
図9の情報処理装置324Bにおいては、CT画像データを送信しSTLデータを取得する。
【0085】
情報処理装置324は、ステップS1305において、骨切平面を設定し、その骨切平面で分離される第1対象骨および第2対象骨を参照骨に重ね合わせる位置変換(STLデータの座標変換)を行なう。情報処理装置324は、ステップS1307において、手術対象骨と参照骨とがうまく重なり合ったかを判定する。かかる判定は、重ね合わせが情報処理装置324の自動処理であれば形状判定により行なわれる。
【0086】
対象骨と参照骨とが適正に重畳していなければ、情報処理装置324は、ステップS1305に戻って、第1対象骨に対する第2対象骨の回転および移動を繰り返す。対象骨と参照骨とが適正に重畳すれば、情報処理装置324は、ステップS1309において、その位置関係での対象骨、参照骨の3次元データおよびマーカ、骨切平面の位置データを術前準備データDB819に記憶する。
【0087】
《術中画像処理システムにおける情報処理装置の機能構成》
図14は、本実施形態に係る術中画像処理システム500におけるタブレット型コンピュータ501の機能構成を示すブロック図である。タブレット型コンピュータ501の各機能部は、不図示のCPUによりメモリを使用しながらプログラムを実行することにより実現される。なお、本実施形態ではタブレット型コンピュータ501を用いているが本発明はこれに限定されるものではなく、ディスプレイとカメラを備えた可搬性の情報処理端末であればよい。また、カメラや表示部/操作部が、情報処理装置と分離して、互いにデータ通信するものであってもよい。
【0088】
カメラ512は、手術室における患者322の患部を撮像する。カメラ512の撮像範囲には、患者322の前腕213の手術対象骨の2箇所に固定された、マーカ221、222が含まれる。マーカ解析部1411は、マーカDB1412を参照して、カメラ512が撮像したマーカの画像から、表示すべき画像の種類、およびその画像を表示すべき位置および向きを解析する。
【0089】
術前準備データ1419は、
図8および
図9に示した術前準備データDB819に格納されたデータと同じものである。例えば、
図8および
図9に示す情報処理装置324から通信によりタブレット型コンピュータ501に複製されてもよいし、記憶媒体を介してコピーしてもよい。さらには、タブレット型コンピュータ501から直接通信で情報処理装置324内の術前準備データDB819にアクセスすることにより取得してもよい。
【0090】
CG画像生成部1414は、マーカ解析部1411から取得したマーカの3次元位置および方向と、術前準備データ1419に含まれる対象骨および参照骨の3次元データなどに基づいて、表示するCG画像を生成する。CG画像生成部1414は、撮像された第1マーカの位置、大きさおよび向きに基づいて、第1対象骨の3次元データおよび参照骨の3次元データから、第1対象骨の骨画像および参照骨の骨画像を生成する第1骨画像生成手段として機能する。さらに、CG画像生成部1414は、撮像された第2マーカの位置、大きさおよび向きに基づいて、第2対象骨の3次元データから、第2対象骨の骨画像を生成する第2骨画像生成手段としても機能する。
【0091】
表示画像生成部1415は、カメラ512が撮像した患者322の前腕213の患部画像上に、CG画像生成部1414が生成した手術対象骨画像および参照骨画像を重ね合わせて、ディスプレイの表示画像データを生成する。これにより、ディスプレイ511には、患部画像上に、対象骨画像および参照骨画像を同時に重ね合わせて表示する。また、観察点を移動した画像表示や複数の観察点からの画像同時表示が可能である。すなわち、表示画像生成部1415は、第2対象骨が参照骨に重なるような第1マーカおよび第2マーカの位置を探すため、第1対象骨の骨画像および参照骨の骨画像と、第2対象骨の骨画像とを表示する。この表示において、表示画像生成部1415は、第1マーカと第2マーカとの相対位置の変化に応じて第1対象骨の骨画像と第2対象骨の骨画像1との相対位置が変化するように表示する。
【0092】
(マーカDB)
図15は、本実施形態に係るマーカDB1412の構成を示す図である。マーカDB1412は、マーカ解析部1411が、カメラ512が撮像した画像データからマーカの3次元の位置および向き(すなわち、2本で対のピンの位置および向き)を解析するために使用される。
【0093】
マーカDB1412は、マーカID1501に対応付けて、2次元コードを正面から撮像した場合のマトリクスデータ1502を記憶する。ここで、マトリクスデータ1502とは、例えば、白黒あるいは色を示す2値または多値ビットデータを2次元座標で配置したものであり、この座標値の変化により3次元位置および方向が認識可能である。なお、2次元コードはこれに限定されない。また、マーカDB1412は、マーカを正面から撮像した場合のマーカの形状1503と、所定距離におけるマーカの大きさ1504とを記憶する。
【0094】
(マーカ解析テーブル)
図16Aは、マーカ解析部1411が用いるマーカ解析テーブル1601の構成を示す図である。マーカ解析テーブル1601は、カメラ512が撮像したマーカの画像から、マーカ上の2次元データや、マーカの位置、大きさおよび向き、あるいはマーカ支持器具の3次元データを求めて、対象骨画像や参照骨画像の3次元表示データ生成に使用するテーブルである。
【0095】
マーカ解析テーブル1601は、撮像画像から抽出したマーカの2次元コード枠1611と、マーカの2次元コードのマトリクスデータ1612と、マトリクスデータ1612から判別したマーカID1613とを記憶する。さらに、マーカの位置、大きさおよび向き1614と、マーカの位置、大きさおよび向き1614から算出したマーカの3次元位置および向き1615を記憶する。マーカの3次元位置および向き1615に応じて、ディスプレイに表示すべき対象骨の3次元データを表示する位置、大きさおよび向きを決定できる。
【0096】
(3次元データ生成テーブル)
図16Bは、CG画像生成部1414が用いる術中対象骨位置決めテーブル1602、1603の構成を示す図である。術中対象骨位置決めテーブル1602は、第1対象骨および参照骨ID1621に対応付けて、解析された第1マーカの3次元位置データ1622と、術前準備データDB819に記憶されている第1マーカの3次元位置データ1623とを記憶する。そして、第1マーカの3次元位置データ1623を、3次元位置データ1622に変換する変換ベクトルを用いて、術前準備データDB819に記憶されている第1対象骨の3次元データを座標変換する。その座標変換によって生成された、表示用の第1対象骨の3次元データ1624を記憶する。また、同じ変換ベクトルを用いて術前準備データDB819に記憶されている参照骨の3次元データを座標変換して、表示用の参照骨の3次元データ1625を生成し、記憶する。
【0097】
術中対象骨位置決めテーブル1603は、第2対象骨ID1631に対応付けて、解析された第2マーカの3次元位置データ1632と、術前準備データDB819に記憶されている第2マーカの3次元位置データ1633とを記憶する。そして、第2マーカの3次元位置データ1633を3次元位置データ1632に変換する変換ベクトルを用いて、術前準備データDB819に記憶されている第2対象骨の3次元データを座標変換する。そして、その座標変換によって生成された、表示用の第2対象骨の3次元データ1634を記憶する。
【0098】
《術中画像処理システムにおける情報処理装置の処理手順》
図17は、本実施形態に係るタブレット型コンピュータ501の処理手順を示すフローチャートである。このフローチャートは、タブレット型コンピュータ501のCPUがRAMを使用しながら術中画像生成プログラムとして実行し、
図14の機能構成部を実現する。
【0099】
タブレット型コンピュータ501は、ステップS1701において、患部領域(本例では、前腕部)を撮像して2つのマーカおよび患部画像の画像データを取得する。次に、タブレット型コンピュータ501は、ステップS1703において、患部領域の画像データから2次元コードを含む枠を抽出する。なお、本例では、2次元コードを含む枠は矩形であるが、円や他の形状であっても構わない。そして、タブレット型コンピュータ501は、ステップS1705において、枠内の2次元コードのマトリクスを取得する。
【0100】
タブレット型コンピュータ501は、ステップS1707において、取得した2次元コードのマトリクスと、マーカDB1412に格納された正面からの2次元コードとを対比してマーカを特定する。また、タブレット型コンピュータ501は、マーカの位置、大きさおよび向きも考慮してマーカ座標系(3次元空間での位置および向き)を解析する。タブレット型コンピュータ501は、ステップS1709において、解析された各マーカの3次元位置および向きに基づいて、第1対象骨に固定された第1マーカの3次元データおよび第2対象骨に固定された第2マーカの3次元データを算出する。タブレット型コンピュータ501は、ステップS1711において、術前準備データ1419として格納された3次元データに基づいて、算出された第1マーカ支持器具の3次元データから表示用の第1対象骨と参照骨との3次元データを算出する。また、タブレット型コンピュータ501は、ステップS1713において、術前準備データDB819に格納された3次元データに基づいて、算出された第2マーカ支持器具の3次元データから表示用の第2対象骨の3次元データを算出する。そして、タブレット型コンピュータ501は、ステップS1715において、患部撮像画像と、生成した第1対象骨および参照骨の画像と、生成した第2対象骨の骨画像とを重ねて表示する。
【0101】
タブレット型コンピュータ501は、ステップS1717において、参照骨画像に生成した第2対象骨画像が重なって適正に重畳しているか否かを判定する。参照骨画像と第2対象骨画像とが適正に重畳していなければ、タブレット型コンピュータ501は、ステップS1701に戻って、手術対象骨の移動に伴う2つのマーカの位置および向きを改めて検出する。参照骨画像と第2対象骨画像とが適正に重畳すれば、処理は終了する。なお、実際には、参照骨画像と第2対象骨画像とが適正に重畳した時点で、2箇所のピンを固定することで、手術対象骨の配置を適切な位置に固定することになる。
【0102】
本実施形態によれば、手術対象骨の適切な配置を患部の大きな切開なしに確定できるので、最小限の患部切開により手術ができる。また、手術対象骨の適切な配置が術前処理で確定しているので、迅速かつ的確な手術ができる。すなわち、手術時において、正確な手術対象骨の配置、正確な骨切位置の設定、必要な接合骨の作成、および確実な接骨処理を支援することが可能となる。
【0103】
なお、本実施形態では、
図4で説明した方法によりあらかじめ骨切平面431を決定し、定めた骨切平面431も術中に医師に対して提示して、骨切の正確性を期したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば骨切りに関しては、術中にその面を決定してもよい。その場合、骨切面を挟む2つの骨の相対位置関係を参照骨に正確に合わせることに対してのみAR技術を用いてもよい。その場合、
図3Bに示したように術前にピンを挿入する必要は無い。すなわち、適当な位置に骨切面を設定した後、
図4の画像404に示したような理想位置に配置するための、分離した対象骨441、442の相対移動距離および回転角度のみを記憶すればよい。そのようにすれば、あらかじめピンを挿入した骨のCTスキャンする必要はなく、術中に骨切面を挟む適当な位置にピンを挿入してマーカを取り付ければよい。骨切前のピンの相対位置関係を、骨切後に、どのように変化させればいいかが分かっているため、矢印などで骨の目標変位(回転量、回転方向、移動量、および移動方向)を表示して医師に提示すればよい。特に通常の骨折治療の場合、はじめから骨が2つに分離しているため、骨切位置の決定は不要となる。つまり、CTスキャン等で生成した3次元データをそのまま用いて、参照骨と重ね合わせればよい。
【0104】
また、第4ステージにおいて、対象骨442に対して対象骨441をどちら方向に何度回転し、何ミリ移動すれば参照骨412と重なるかを数値で記憶してもよい。そうすれば、手術時に実際のピン211に固定されるマーカ221(つまり腕)をどちら方向にどれだけ回転し、どちら方向にどれだけ移動すればよいかを、視覚的に(矢印などの画像で)示すことができる。
【0105】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態に係る外科手術支援システムについて説明する。本実施形態に係る外科手術支援システムは、上記第2実施形態と比べると、ヘッドマウントディスプレイ(Eye-Trek)を使用することにより患部と表示画面とを重ね合わせて観察できる点で異なる。その他の構成および動作は、第2実施形態または第3実施形態と同様であるため、同じ構成および動作については同じ符号を付してその詳しい説明を省略する。なお、本実施形態においては、両眼式ヘッドマウントディスプレイ1801には、ステレオカメラが配備されて3次元撮像が可能である。また、両眼式ヘッドマウントディスプレイ1801は両眼式オプティカルシースルー型で、ステレオ3次元表示が可能な例を示す。しかしながら、カメラが1つで2次元表示であってもよい。また、ヘッドマウントディスプレイは片眼式であってもビデオシースルー型であってもよい。
【0106】
(術中画像処理システムの構成)
図18は、本実施形態に係る術中画像処理システム1800の構成を示す図である。なお、
図18において、
図5Aと同様の構成要素には同じ参照番号を付して、説明は省略する。
【0107】
両眼式ヘッドマウントディスプレイ1801は、カメラを備えた表示部を兼ねるメガネである。両眼式ヘッドマウントディスプレイ1801により、カメラにより患者322の患部領域(本例では、前腕部)のマーカ221、222を撮像して、対象骨画像と参照骨画像とを表示すると共に、表示部を透過して患者322の患部を透視することが可能である。
【0108】
この両眼式ヘッドマウントディスプレイ1801の使用により、患者の患部と、位置合わせのための表示画面とを重ね合わせて観察できることになる。
【0109】
(情報処理装置の処理)
図19は、本実施形態に係る術中画像処理システム1800の情報処理装置1802の処理を説明する図である。なお、
図19において、
図5Aと同様の構成要素は、図示および説明を省くか、あるいは、同じ参照番号を付して説明を省略する。
【0110】
両眼式ヘッドマウントディスプレイ1801は、マーカ221、222を撮像するカメラ1911、1912と、参照骨画像と対象骨画像とを表示する表示部1913と、情報処理装置1802と通信する通信部1914とを含む。表示部1913には、対象骨441、442および参照骨412のCG画像が表示される。また、表示部1913は、半透過ディスプレイであるため、破線で示したように患者322の患部である前腕213を透視して観察できる。なお、
図19には、2つのカメラ1911、1912を示したが、1つのカメラであってもよい。また、カメラを別途準備してもよい。
【0111】
なお、
図19の情報処理装置1802は、
図14で説明したタブレット型コンピュータ501の機能構成からカメラ512とディスプレイ511とを除いて、通信部1921を設けた構成である。したがって、情報処理装置1802は、タブレット型コンピュータ501と異なり、マーカ221、222の2次元コードの画像データをカメラ1911、1912から受信し、準備された参照骨画像と生成した対象骨画像との表示データを表示部1913に送信する。
【0112】
《術中画像処理システムにおける情報処理装置の機能構成》
図20は、本実施形態に係る術中画像処理システムにおける情報処理装置2110の機能構成を示すブロック図である。なお、
図20において、
図14と同様の機能構成部には同じ参照番号を付して、説明を省略する。
【0113】
通信部1921は、カメラ1911、1912からの画像データの受信、および、両眼式ヘッドマウントディスプレイ1801の表示部1913(右目部1913a/左目部1913b)への表示画像データの送信を制御する。画像受信部2011は、カメラ1911、1912が撮像した画像の画像データを受信する。
【0114】
目座標系推定部2012は、受信したカメラ1911、1912の撮像画像データから両眼式ヘッドマウントディスプレイ1801を装着した医師の視線や視野に基づく目座標系を推定する。
【0115】
右眼用HMD表示データ生成部2016は、目座標系推定部2012からの目座標系情報を参照して、3次元カメラ座標系の表示画像データを2次元HMDスクリーン座標系の右眼用表示データに変換する。また、左眼用HMD表示データ生成部2017は、目座標系推定部2012からの目座標系情報を参照して、3次元カメラ座標系の表示画像データを2次元HMDスクリーン座標系の左眼用表示データに変換する。変換した2次元HMDスクリーン座標系の表示データは、3次元対象骨画像および参照骨画像が両眼式ヘッドマウントディスプレイ1801の表示部1913を透過する患部の前腕213と重なるように、表示位置が調整されている。また、観察点を移動した画像表示や複数の観察点からの画像同時表示が可能である。なお、観察点の移動による画像表示の変換は座標系の変換により可能であり、詳細な説明は省略する。画像送信部2018は、2次元HMDスクリーン座標系の表示画像データを、通信部1921を介して両眼式ヘッドマウントディスプレイ1801の表示部1913に送信する。
【0116】
本実施形態によれば、患者の患部と、位置合わせのための表示画面とを重ね合わせて観察できるので、位置合わせにおける医師の負担を軽減できる。なお、手術室内であるので無線通信による影響を考慮して、メガネと情報処理装置間は有線通信にしてもよい。
【0117】
[第4実施形態]
次に、本発明の第4実施形態に係る外科手術支援システムについて説明する。本実施形態に係る外科手術支援システムは、上記第2実施形態および第3実施形態と比べると、骨画像の表示画面に手術対象骨と参照骨との重畳程度(マッチング率)および患部を曲げる方向や引っ張る方向や距離などを表示する点で異なる。その他の構成および動作は、第2実施形態と同様であるため、同じ構成および動作については同じ符号を付してその詳しい説明を省略する。なお、本実施形態においては、パーセンテージでマッチング率を表示したが、色の違いによる表示や棒グラフの長さなどの他の表示方法であってもよい。
【0118】
(マッチング率の表示)
図21は、本実施形態に係る参照骨と手術対象骨とのマッチング率の表示例を示す図である。
図21は、第2実施形態の
図5Bに示した画像522〜526に対応している。
【0119】
表示画面2101には、手術対象骨および参照骨の画像に加えて、マッチング率が表示されている。また、表示画面2102は、画像523〜526に加えて、マッチング率が表示されている。なお、マッチング率は、例えば、お互いの3次元骨表面データの距離の平均値あるいは最大値を、所定値で乗算した値が使用できるが、これに限定されない。既存の種々のマッチング率が利用できる。
【0120】
また、表示画面2127には、患部をどのように操作すれば、手術対象骨が参照骨に適正に重畳するかを示す矢印2181が表示される。この図の例でいえば、矢印2181を参考にして手を曲げることにより、罹患骨の矯正をより容易、迅速かつ確実に行なうことが可能となる。
【0121】
本実施形態によれば、表示画面上の骨画像同士の重畳具合やマーカやピンの重畳具合を視覚的、感覚的に把握するだけではなく、客観的な数値により判定できるので、対象骨をより適正な位置に配置することができる。なお、あるべきマーカの位置をあらかじめ決定して、手術中に表示し、現実のマーカの位置と、表示されたマーカの位置とのマッチング率を表示してもよい。マッチング率に合わせて音を出してもよい。
【0122】
[第5実施形態]
次に、本発明の第5実施形態に係る外科手術支援システムについて説明する。本実施形態に係る外科手術支援システムは、上記第2実施形態乃至第4実施形態と比べると、術前準備データ生成時に対象骨に実際のマーカを配置することなく、仮想的な3次元マーカを画面上で生成して、3次元プリンタにより作成する点で異なる。なお、上記実施形態と同様の構成および動作については同じ符号を付してその詳しい説明を省略する。
【0123】
なお、本実施形態においては、主に肘の人工関節置換術について説明するが、他の術式、例えば変形治癒矯正骨切り術や変形性関節症術などにおいても適用される。
【0124】
《外科手術支援処理の概要》
図22Aおよび
図22Bは、本実施形態に係る外科手術支援システム2200の処理概要を説明する図である。
図22Aは、人工関節置換術の全体の流れを示す図であり、
図22Bは、本実施形態における各処理を具体的に示す図である。なお、
図22Aおよび
図22Bにおいては、肘における上腕骨と尺骨との関節を人工関節に置換する手術について説明する。また、
図22Aおよび
図22Bにおいて、画面は表示部の表示画面である場合も、オプティカルスルーにおける目視が画面と表示画面との重ね合わせである場合も、含んでいる。
【0125】
(術前準備処理)
本実施形態の人工関節置換術においては、まず術前準備として、患部のCT撮像を行ないCTデータに基づきSTLデータを生成する。このSTLデータにより上腕骨と尺骨との画像を表示しながら、仮想的な3次元マーカを生成して上腕骨と尺骨とに配置する。なお、配置位置は、上腕骨と尺骨との人工関節埋込位置の近傍で、形状が特徴的な位置であり3次元マーカのマーカ面が手術中にカメラにより撮像容易な(カメラの視界から消えない)向きが望ましい。なお、
図22Aの下方に図示したように、カメラにより撮像容易とするため、3次元マーカにおける骨に設置するベースブロック(台)とマーカ面との向きを変更することができる。この時に、骨切りが必要であれば骨切り面、本手術で使用する人工関節のインプラント、そのインプラントを設置するための骨の面(削るため)、あるいは、インプラントを固定するための骨孔、などの位置と方向とが、3次元マーカの位置と向きとが設定され、3次元データにより関連付けて記憶される。
【0126】
次に、使用するインプラントの準備、および、3次元マーカの3Dプリンタによる制作が行なわれる。また、術中の骨切りや骨の面を削るための器具、あるいは、骨孔を開ける器具などが準備される。
【0127】
(術中処理)
術中には、画面2213、2214のように、上腕骨用3次元マーカのベースブロックが骨の形状にマッチングするよう設置される。そして、この3次元マーカをカメラで撮像することにより、3次元マーカの位置と向きから上腕骨の位置と向きとを判断し、上腕骨2210の骨切り面2211を手術対象の上腕骨に重ねて表示しながら、骨切りを実行する。次に、インプラントに合致する形状を有する上腕骨のSTLデータの画像を手術対象の上腕骨に重ねて表示ながら、骨を削る。また、インプラントを固定するための骨孔を手術対象の上腕骨に重ねて表示ながら、骨に孔を開ける。そして、インプラントの上腕骨コンポーネント2212を設置する。
【0128】
同様に、画面2223、2224、または、画面2225、2226のように、尺骨用3次元マーカのベースブロックが骨の形状にマッチングするよう設置される。そして、この3次元マーカをカメラで撮像することにより、3次元マーカの位置と向きから上腕骨の位置と向きとを判断し、尺骨2220の骨切り面2221を手術対象の上腕骨に重ねて表示しながら、骨切りを実行する。次に、インプラントに合致する形状を有する尺骨のSTLデータの画像を手術対象の上腕骨に重ねて表示ながら、骨を削る。また、インプラントを固定するための骨孔を手術対象の上腕骨に重ねて表示ながら、骨に孔を開ける。そして、インプラントの尺骨コンポーネント2222を設置する。
【0129】
このようにして、術中は、3Dプリンタで制作した3次元マーカを骨の形状にマッチングするよう設置することで、上記実施形態のような術前および術中においても、患者の手術対象骨に孔を開けてマーカを設置することなしに、手術を行なうことができる。
【0130】
図22Bは、本実施形態に係る外科手術支援システム2200の処理概要を説明する図である。
図22Bは、人工関節置換術の術中の各処理中の本実施形態における画面を示している。なお、
図22B中の3次元マーカは同じである。なお、
図22Bは、本実施形態の理解のためにその一部を切り出したものであり、これに限定されない。
【0131】
画面2230は、上腕骨の骨切り時の画面である。画面2230には、上腕骨に設置した3次元マーカ2231、骨切り面2232、尺骨のSTLデータの画像2233が見えている。画面2240は、上腕骨の表面と設置するインプラントをマッチングするために骨の表面を削っている時の画面である。画面2240には、3次元マーカ2241、骨を削る器具2243、器具2243の配置面2242が見えている。画面2250は、上腕骨に配置するインプラントを固定するための骨孔を開けている時の画面である。3次元マーカ2251、孔を開ける器具2253、骨孔の目標位置画像2252が見えている。
【0132】
画面2260は、上腕骨にインプラントを設置する前の画面を示している。画面2260には、3次元マーカ2261、尺骨のSTLデータの画像2262が見えている。画面2270は、上腕骨にインプラントを設置している時の画面を示している。画面2270には、3次元マーカ2271、インプラントの配置画像2272、実際のインプラント2273が見えている。画面2280は、尺骨へのインプラントの設置前の画面を示している。画面2280には、3次元マーカ2281、上腕骨に設置されたインプラント2273、尺骨に配置されるインプラント画像2282が見えている。
【0133】
《外科手術支援処理の処理手順》
図23は、本実施形態に係る外科手術支援システム2200の処理手順を示すフローチャートである。
【0134】
外科手術支援システム2200は、ステップS2301において、患者の患部のCT撮影を行なう。外科手術支援システム2200は、ステップS2303において、例えばSTLデータなどのより3次元モデル化を行なう。外科手術支援システム2200は、ステップS2305において、3次元データを表示しながら、術前のプラニングを行なう。例えば、3次元マーカを画面上で生成して、3次元マーカを制作するデータを生成する。また、3次元マーカと手術対象骨、骨切り面、骨孔、インプラント、などとの3次元座標における関連付けを行なう。外科手術支援システム2200は、ステップS2307において、3次元マーカのデータに基づいて、対象骨とマッチングするベースブロックを有する3次元マーカを3Dプリンタで制作する。
【0135】
外科手術支援システム2200は、ステップS2309において、術中アプリケーションの処理プログラム、および、上記3次元マーカと関連付けられた各データを入力する。そして、外科手術支援システム2200は、ステップS2311において、術中アプリケーションの処理プログラム、および、上記3次元マーカと関連付けられた各データに基づいて、手術支援を実行する。
【0136】
《術前準備データ生成システムの機能構成》
図24は、本実施形態に係る術前準備データ生成システム2400における情報処理装置2410の機能構成を示すブロック図である。なお、
図24において、
図8と同様の機能構成部には同じ参照番号を付して、説明を省略する。
【0137】
図24のように、CT321における患部撮影時には、患者322にはマーカが設置されていない。骨画像データ生成部2411は、
図8の参照骨データ生成部816および3次元データ生成部817、818を含む機能構成部である。3次元マーカデータ生成部2412は、表示部/操作部2415に入力された3次元マーカ情報に基づいて生成した3次元マーカの3次元データを生成する。人工関節データ生成部2413は、表示部/操作部2415に入力された人工関節情報に基づいて生成した人工関節の3次元データである。なお、あらかじめ用意された人工関節を使用する場合には、あらかじめSTLデータDB814に格納されていてもよい。術前準備データDB2419は、3次元マーカの3次元データに関連付けて、手術対象骨や骨切り面、骨孔、人工関節のインプラント、などの3次元データを格納する。
【0138】
3Dプリンタ2420は、3次元マーカの3次元データから生成された3Dプリンタ用データに基づいて、3次元マーカを制作する。
【0139】
(3次元術前準備画像DB)
図25は、本実施形態に係る術前準備データDB2419の構成を示す図である。
図25は、本実施形態に特有の術式でプラニングされる準備データの構成を示している。なお、
図25には、
図11に図示した構成も含まれる。
【0140】
術前準備データDB2419は、患者名2501に対応付けて、患部2502と、術式2503とを記憶する。そして、それぞれの患部2502と術式2503とに必要なプラニング項目2504と、それに必要な3次元データを3次元マーカと関連付けて記憶する。
【0141】
《術前準備データ生成システムの処理手順》
図26は、本実施形態に係る術前準備データ生成システム2400における情報処理装置2410の処理手順を示すフローチャートである。このフローチャートは、情報処理装置2410のCPUがRAMを使用しながら実行して、
図24の機能構成部を実現する。なお、
図26においても、人工関節置換術の場合を説明するが、他の術式においても適応される。
【0142】
情報処理装置2410は、ステップS2601において、患者の患部と必要であれば健側骨のCT画像を取得する。情報処理装置2410は、ステップS2603において、CT画像データからSTLデータを生成する。外部にSTLデータの生成を依頼する場合は、STLデータを取得する。情報処理装置2410は、ステップS2605において、術式を判定する。
【0143】
術式が人工関節置換である場合、情報処理装置2410は、ステップS2607において、インプラント形状および設定位置情報、骨切り面および骨孔の位置情報、3次元マーカ形状および設置位置情報、を取得する。情報処理装置2410は、ステップS2609において、インプラント3次元データ、骨切り面および骨孔の3次元データ、3次元マーカデータ、などをSTL骨の3次元データに対応付けて生成する。そして、情報処理装置2410は、ステップS2611において、生成した各3次元データを関連付けて術前準備データDB2419に格納する。また、情報処理装置2410は、ステップS2613において、インプラントを新たに生成する場合はインプラント3次元データを出力し、また、3Dプリンタ用の3次元マーカデータを出力する。
【0144】
ステップS2605において他の術式であれば、情報処理装置2410は、ステップS2615において、他の術式における準備の3次元データを3次元マーカに関連付けて生成する(他の術式のデータについては、
図25参照)。
【0145】
《術中画像処理システムの機能構成》
図27は、本実施形態に係る術中画像処理システム2700におけるタブレット型コンピュータ2710の機能構成を示すブロック図である。
図27において、
図5または
図14と同様の機能構成部には同じ参照番号を付して、説明を省略する。
【0146】
術前準備データDB2419は、
図24に術前準備データ生成システム2400で生成された同じ準備データを格納する。CG画像生成部2714は、術前準備データDB2419から手術対象骨や骨切り面、骨孔などの3次元データを、マーカ解析部1411からの3次元マーカの位置と向きに対応して3次元座標変換して、目視の手術部位に重ね合わせるCG画像を生成する。表示画像生成部2715は、CG画像生成部2714が生成した画像を、ディスプレイ511や外部モニタ2720、あるいは、HMD2730に表示する表示画像に変換する。なお、本実施形態では、オプティカルシースルーのHMDを使用することが望ましい。
【0147】
《術中画像処理システムの処理手順》
図28は、本実施形態に係る術中画像処理システム2700におけるタブレット型コンピュータ2710の処理手順を示すフローチャートである。このフローチャートは、
図27のタブレット型コンピュータ2710のCPUがRAMを使用しながら実行して、
図27の機能構成部を実現する。なお、
図28においても、人工関節置換術の場合を説明するが、他の術式においても適応される。
【0148】
タブレット型コンピュータ2710は、ステップS2801において、術式を判定する。術式が人工関節置換の場合、タブレット型コンピュータ2710は、ステップS2803において、上腕骨の肘関節部と、3Dプリンタ2420で制作され上腕骨に設置された3次元マーカとを撮像する。タブレット型コンピュータ2710は、ステップS2805において、3次元マーカ上の2次元コードを解析して、上腕骨位置と向きとを算出する。そして、タブレット型コンピュータ2710は、ステップS2807において、3次元マーカの位置および方向に対応して、骨切り面、骨孔、人工関節インプラント、各器具の位置および方向、などを手術の進行に伴って肘関節部に重なるように表示する(
図22Aおよび
図22B参照)。タブレット型コンピュータ2710は、ステップS2809において、上腕骨の処理が済んだか否かを判定する。処理が済んでない場合は、タブレット型コンピュータ2710は、ステップS2803に戻って、上腕骨の処理を行なう。
【0149】
タブレット型コンピュータ2710は、ステップS2811において、尺骨の肘関節部と、3Dプリンタ2420で制作され尺骨に設置された3次元マーカとを撮像する。タブレット型コンピュータ2710は、ステップS2813において、3次元マーカ上の2次元コードを解析して、尺骨位置と向きとを算出する。そして、タブレット型コンピュータ2710は、ステップS2815において、3次元マーカの位置および方向に対応して、骨切り面、骨孔、人工関節インプラント、各器具の位置および方向、などを手術の進行に伴って肘関節部に重なるように表示する(
図22Aおよび
図22B参照)。タブレット型コンピュータ2710は、ステップS2817において、尺骨の処理が済んだか否かを判定する。処理が済んでない場合は、タブレット型コンピュータ2710は、ステップS2811に戻って、上腕骨の処理を行なう。
【0150】
なお、
図28においては、上腕骨の処理後の尺骨の処理を行なうように図示したが、処理が逆であっても同時進行であってもよい。
【0151】
本実施形態によれば、術中は、3Dプリンタで制作した3次元マーカを骨の形状にマッチングするよう設置することで、術前および術中においても、患者の手術対象骨に孔を開けてマーカを設置することなしに、手術を支援ことができる。
【0152】
[第6実施形態]
次に、本発明の第6実施形態に係る外科手術支援システムについて説明する。本実施形態に係る外科手術支援システムは、上記第2実施形態乃至第5実施形態と比べると、マーカとして対象骨の外科手術を行なう部位の3次元データを使用して、術中画像処理においては深度センサにより対象骨の3次元データを取得する点で異なる。なお、上記実施形態と同様の構成および動作については同じ符号を付してその詳しい説明を省略する。
【0153】
なお、本実施形態における術前準備データは、手術対象骨の3次元表面画像をマーカとして使用するため別途のマーカ情報を含まない以外は、上記実施形態と類似であるので、説明を省略する。また、以下の実施形態においては、HMDと深度センサとが一体の場合を説明するが、HMDと深度センサとが離れている場合には、位置センサ(GPSなど)や深度センサにマーカを付して位置判定する必要がある。
【0154】
《術中画像処理システムの機能構成》
図29は、本実施形態に係る術中画像処理システム2900における情報処理装置2910の機能構成を示すブロック図である。
なお、
図29において、
図14または
図14または
図20と同様の機能構成部には同じ参照番号を付して、説明を省略する。
【0155】
深度センサ&HMD2920は、深度センサとオプティカルシースルーのHMDとを備える。なお、深度センサとHMDとは別であってもよいが、一体であるのが望ましい。深度センサは赤外線プロジェクタ2921と赤外線カメラ2922とで構成され、術中に手術部位の深度画像(距離画像)を取得する。距離画像は、表面の3次元画像と等価である。
【0156】
画像受信部2911は、深度画像(距離画像)を受信する。骨表面画像照合部2912は、深度画像(距離画像)をマーカとして、術前準備データ1419の対象骨画像の特徴的な表面画像と照合する。そして、CG画像生成部1414は、骨表面画像照合部2912から得た骨表面の照合に必要な位置および向きの変化に対応して、術前準備データ1419の3次元データを3次元座標変換して、CG画像を生成する。
【0157】
深度センサ&HMD2920の表示部2923は、右目用HMD表示データ生成部2016からの表示画像を右目画面2923aに表示し、左目用HMD表示データ生成部2017からの表示画像を右目画面2923bに表示する。
【0158】
このように、本実施形態においては、手術対象骨の表面の3次元画像をマーカとして使用することにより、上記実施形態のように別途にマーカを作成することなしに、手術を支援することができる。
【0159】
(骨画像照合部のデータテーブル)
図30は、本実施形態に係る骨画像照合部2912において使用されるデータテーブル3000を示す図である。データテーブル3000は、深度センサが患者の患部の手術対象骨の表面から取得した深度画像(距離画像)と、術前準備データ1419として格納された手術対象骨とを照合して、現在の手術対象骨の位置と向きとを決定する。
【0160】
データテーブル3000は、深度センサが取得した深度センサ画像3001に対応付けて、照合した3次元骨データ3002と、照合結果から決定された対象骨の実空間位置と向き3003と、を記憶する。そして、データテーブル3000は、対象骨の実空間位置と向き3003に対応して、3次元座標変換した、3次元骨データ3004と、骨切り面、骨孔、インプラント、各器具の位置と向き、などの3次元データ3005と、を記憶する。
【0161】
《術中画像処理システムの処理手順》
図31は、本実施形態に係る術中画像処理システム2900における情報処理装置2910の処理手順を示すフローチャートである。このフローチャートは、
図29の情報処理装置2910のCPUがRAMを使用しながら実行して、
図29の機能構成部を実現する。なお、
図28と同様のステップには同じステップ番号を付して、説明を省略する。また、
図31においても、人工関節置換術の場合を説明するが、他の術式においても適応される。
【0162】
情報処理装置2910は、ステップ3103において、上腕骨の肘関節部を深度センサにより撮像する。次に、人工情報処理装置2910は、ステップ3105において、深度センサ画像の上腕骨表面と格納された上腕骨対応部位の3次元骨データとをマッチングして、上腕骨位置と向きとを算出する。そして、情報処理装置2910は、ステップ3107において、上腕骨の位置および方向に対応して、骨切り面、骨孔、人工関節インプラント、各器具の位置および方向、などを肘関節部に重なるように表示する。情報処理装置2910は、ステップ3109において、上腕骨の処理が済んだか否かを判定する。処理が済んでない場合は、情報処理装置2910は、ステップS3103に戻って、上腕骨の処理を行なう。
【0163】
情報処理装置2910は、ステップ3111において、尺骨の肘関節部を深度センサにより撮像する。次に、情報処理装置2910は、ステップ3113において、深度センサ画像の尺骨表面と格納された尺骨対応部位の3次元骨データとをマッチングして、尺骨位置と向きとを算出する。そして、情報処理装置2910は、ステップ3115において、尺骨の位置および方向に対応して、骨切り面、骨孔、人工関節インプラント、各器具の位置および方向、などを肘関節部に重なるように表示する。情報処理装置2910は、ステップ3117において、尺骨の処理が済んだか否かを判定する。処理が済んでない場合は、情報処理装置2910は、ステップS3111に戻って、尺骨の処理を行なう。
【0164】
なお、
図31においては、上腕骨の処理後の尺骨の処理を行なうように図示したが、処理が逆であっても同時進行であってもよい。
【0165】
本実施形態によれば、手術対象骨の表面の3次元画像をマーカとして使用することにより、上記実施形態のように別途にマーカを作成することなしに、手術を支援することができる。
【0166】
[他の実施形態]
なお、上記実施形態においては、マーカ用器具を固定した患部を断層撮影し、術前準備画像生成処理において、2つの分かれた手術対象骨である第1対象骨と参照骨の組みを第1マーカに関連付けて記憶し、第2対象骨を第2マーカに関連付けて記憶することにより、術中の手術対象骨の配置の決定を支援した。しかしながら、マーカ用器具の固定は固定位置を正確に決定できる場合には、断層撮影後あるいは術中に行なってもよい。この場合には、術中に、第1対象骨と第1マーカとの関連付け、第2対象骨と第2マーカとの関連付けを行なう。また、第1対象骨と参照骨の組みを第1マーカに関係付けて記憶せずに、術中に、参照骨に第1対象骨および第2対象骨をそれぞれ合致させてもよい。その場合には、例えば、術中に、第1対象骨を参照骨に合致させて、第1対象骨と参照骨の組みを第1マーカに関係付けて記憶してから、第2対象骨を参照骨に合致するように操作してもよい。
【0167】
また、上記実施形態においては、偽関節手術を例に本発明の外科手術支援システムを説明したが、骨折治療あるいは人工関節置換手術などへ適用され、同様の効果を奏する。また、上記実施形態においては、2つに分かれた手術対象骨の場合を説明したが、3つ以上に分かれた手術対象骨に対してはそれぞれの別れた対象骨にマーカを固定することにより、上記実施形態はそのまま拡張できる。例えば、人工関節置換手術においては、関節両側の2つの骨と人工関節とに3つのマーカを固定することが考えられる。
【0168】
また、実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。また、それぞれの実施形態に含まれる別々の特徴を如何様に組み合わせたシステムまたは装置も、本発明の範疇に含まれる。
【0169】
また、本発明は、複数の機器から構成されるシステムに適用されてもよいし、単体の装置に適用されてもよい。さらに、本発明は、実施形態の機能を実現する外科手術支援プログラムが、システムあるいは装置に直接あるいは遠隔から供給される場合にも適用可能である。したがって、本発明の機能をコンピュータで実現するために、コンピュータにインストールされる制御プログラム、あるいはその制御プログラムを格納した媒体、その制御プログラムをダウンロードさせるWWW(World Wide Web)サーバも、本発明の範疇に含まれる。特に、少なくとも、上述した実施形態に含まれる処理ステップをコンピュータに実行させる制御プログラムを格納した非一時的コンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)は本発明の範疇に含まれる。
【0170】
この出願は、2013年6月11日に出願された日本国特許出願 特願2013−123209号を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。