(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6023325
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月9日
(54)【発明の名称】ラジエータグリル内に超音波センサを含む超音波センサ構成、自動車および対応する方法
(51)【国際特許分類】
G01S 7/521 20060101AFI20161027BHJP
G01S 15/93 20060101ALI20161027BHJP
G01S 15/87 20060101ALI20161027BHJP
H04R 3/00 20060101ALI20161027BHJP
H04R 1/28 20060101ALI20161027BHJP
B60R 19/48 20060101ALI20161027BHJP
B60R 21/00 20060101ALI20161027BHJP
【FI】
G01S7/521 Z
G01S15/93
G01S15/87
H04R3/00 330
H04R1/28 330
B60R19/48 B
B60R21/00 628A
【請求項の数】11
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-523529(P2015-523529)
(86)(22)【出願日】2013年7月23日
(65)【公表番号】特表2015-531058(P2015-531058A)
(43)【公表日】2015年10月29日
(86)【国際出願番号】EP2013065505
(87)【国際公開番号】WO2014016291
(87)【国際公開日】20140130
【審査請求日】2015年3月25日
(31)【優先権主張番号】102012106693.0
(32)【優先日】2012年7月24日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】508108903
【氏名又は名称】ヴァレオ・シャルター・ウント・ゼンゾーレン・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヴェーリング ハンス−ヴィヘレム
(72)【発明者】
【氏名】ウェイランド ジョルグ
(72)【発明者】
【氏名】ウェーバー ナタリー
(72)【発明者】
【氏名】マックス ステファン
【審査官】
深田 高義
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−212349(JP,A)
【文献】
特開2007−038757(JP,A)
【文献】
特開平09−281222(JP,A)
【文献】
特開2009−058298(JP,A)
【文献】
特開2010−252017(JP,A)
【文献】
実開昭62−127195(JP,U)
【文献】
特開平11−237468(JP,A)
【文献】
独国特許出願公開第102011016287(DE,A1)
【文献】
国際公開第2007/019907(WO,A1)
【文献】
実開平05−055205(JP,U)
【文献】
国際公開第2004/088253(WO,A1)
【文献】
欧州特許第02293102(EP,B1)
【文献】
英国特許出願公開第02272819(GB,A)
【文献】
特開2008−191007(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/521
B60R 19/48
B60R 21/00
G01S 15/87
G01S 15/93
H04R 1/28
H04R 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車(1)用の超音波センサ構成(2)であって、バンパー(3)と、その間をエンジンへの冷却空気が流れる薄層を有するラジエータグリル(4)と、超音波信号を発信および/または受信する膜(11)を各々含む少なくとも1個の第1および1個の第2の超音波センサ(5、6)とを含み、
前記第1の超音波センサ(5)は、前記膜(11)が前記バンパー(3)を介して超音波信号を発信および/または受信するように、前記バンパー(3)の裏側に配置されており、
前記第2の超音波センサ(6)は、非搭載状態において前記第1の超音波センサ(5)と同一の共振周波数を有し、外部に露出するように前記ラジエータグリル(4)の前記薄層上に配置され、前記第2の超音波センサ(6)により発信される超音波信号の周波数と前記第1の超音波センサ(5)により発信される超音波信号の周波数とを同一の周波数とする離調手段(7、9)を有することを特徴とする超音波センサ構成(2)。
【請求項2】
前記離調手段(7、9)が、前記第2の超音波センサ(5、6)を離調すべく前記第2の超音波センサ(6)の前記膜(11)の前面(10)に接触して配置された円盤状の離調要素(9)を含んでいることを特徴とする、請求項1に記載の超音波センサ構成(2)。
【請求項3】
前記離調要素(9)が前記膜(11)の前面(10)接着されていることを特徴とする、請求項2に記載の超音波センサ構成(2)。
【請求項4】
前記離調要素(9)がプラスチックから形成されていることを特徴とする、請求項2または3に記載の超音波センサ構成(2)。
【請求項5】
前記離調要素(9)が前記バンパー(3)と同一材料から形成されていることを特徴とする、請求項2から4のいずれか1項に記載の超音波センサ構成(2)。
【請求項6】
前記離調要素(9)が、前記第1の超音波センサ(5)の前記膜(11)に接触している領域において前記バンパー(3)と厚さが同一であることを特徴とする、請求項2から5のいずれか1項に記載の超音波センサ構成(2)。
【請求項7】
前記超音波センサ構成(2)が、セラミックから形成されていて前記第2の超音波センサ(6)のポット状の前記膜(11)に周囲に配置された環状補強要素(21)を含み、前記離調要素(9)が前記第2の超音波センサ(6)の前記膜(11)の前面(22)および前記補強要素(21)の前面(10)の両方に接触すべく配置されていることを特徴とする、請求項2から6のいずれか1項に記載の超音波センサ構成(2)。
【請求項8】
前記離調手段(7、9)が、前記第2の超音波センサ(6)を離調すべく前記センサ(6)を励起周波数とは異なる共振周波数で動作させるべく構成された電子制御装置(7)を含むことを特徴とする、請求項1から7のいずれか1項に記載の超音波センサ構成(2)。
【請求項9】
前記電子制御装置(7)が、励起周波数を、前記第2の超音波センサ(6)により発信される超音波信号の周波数が前記第1の超音波センサ(5)により発信される超音波信号の周波数に等しい値に設定すべく構成されていることを特徴とする、請求項8に記載の超音波センサ構成(2)。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載の超音波センサ構成(2)を含む自動車(1)。
【請求項11】
バンパー(3)と、その間をエンジンへの冷却空気が流れる薄層を有するラジエータグリル(4)と、超音波信号を発信および/または受信する膜(11)を各々含む少なくとも1個の第1および1個の第2の超音波センサ(5、6)とを含み、前記第1の超音波センサ(5)は、前記膜(11)が前記バンパー(3)を介して超音波信号を発信および/または受信するように、前記バンパー(3)の裏側に配置されており、前記第2の超音波センサ(6)は、外部に露出するように前記ラジエータグリル(4)の前記薄層上に配置されている自動車(1)の前記第1、第2の超音波センサ(5、6)を動作させる方法であって、
離調手段(7、9)により、前記第2の超音波センサ(6)により発信される超音波信号の周波数と前記第1の超音波センサ(5)により発信される超音波信号の周波数とを同一の周波数とすることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車用の超音波センサ構成に関し、当該構成は、特にバンパーであるトリム要素と、特に少なくとも1個の薄層を有するラジエータグリルと、各々が超音波信号を発信および/または受信する膜を含む少なくとも1個の第1および1個の第2の超音波センサとを含み、第1の超音波センサの膜がトリム要素を介して超音波信号を発信および/または受信するように、第1の超音波センサが自身の膜と共にトリム要素の裏側に、特に接触するように配置されていて、第2の超音波センサがラジエータグリルの上、特にラジエータグリルの少なくとも1個の薄層の上に配置されている。本発明は更に、そのような超音波センサ構成を有する自動車に関し、また自動車の少なくとも2個の超音波センサを動作させる方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
自動車に複数の超音波センサを搭載することは既に従来技術でなされている。超音波センサを車両の後部だけでなく前部にも、すなわち特に各々のバンパーに搭載することが一般に知られている。これらのセンサは運転者支援装置に割り当てられて、車両の環境に関する情報を提供する。運転者支援装置には例えば、駐車支援システム、死角監視システム、距離保持システム、車線監視システム、制動支援システム等がある。
【0003】
超音波センサは、超音波を受発信するためのポット状の膜を有していることが知られている。膜は圧電素子により励起されて機械的振動を発生させ、受信の場合、圧電素子における電圧を検出し、当該電圧に基づいて障害物からの距離が計算される。
【0004】
そのような超音波センサを露出した状態でバンパーに組み込むことは既に知られている。これは、センサがバンパーの開いた凹部に配置されていて外部から見えることを意味する。このような仕方で配置された超音波センサの場合、指向放射特性は一般に、超音波センサのアルミニウムポット(膜)の内部形状に応じて水平および垂直方向に生じる。可視的に搭載されたセンサの場合、音響伝搬と干渉する障害物が存在しないため、トランスデューサの機能、例えば車両を駐車する際に障害物を認識する機能は損なわれない。
【0005】
バンパーの開いた凹部内への超音波センサの配置は、公差が大きいにもかかわらず、露出したトランスデューサには充分である。例えば、超音波センサは、バンパーに押圧接着された保持部により固定されている。
【0006】
更に、遮蔽して搭載された超音波センサもまた従来技術から公知である。これらは従ってバンパーの外部から見た際に視認できず、バンパーにより覆われている。ここで、超音波センサの膜はバンパーの裏側と接触しており、超音波信号はバンパーを介して受発信される。これは、トランスデューサを取り付けるためにバンパーに凹部を設けることが不可能であるため、トランスデューサがバンパーの裏側に機械的に堅牢に固定されている必要があることを意味する。2個の表面、すなわち超音波センサの表面と、バンパーの表面とが隙間なく密着している必要があり、更に平坦であっても、または折れ曲がっていたり湾曲していてもよい。この関連において超音波センサは、バンパーを介した無損失発信ができなければならない。従って、バンパーの裏側に遮蔽されて搭載されたセンサの場合、位置合わせ、接着、および守るべき公差に関して本質的に極めて高い要件が与えられる。受発信に関わる損失を抑えるべく、超音波センサの放射面は、バンパーに機械的に堅牢に固定されているか。または、膜の放射面または前面と、バンパーとの間にある無損失結合要素と共に形成されている必要がある。
【0007】
超音波センサの遮蔽配置は、例えば特許文献1から公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】独国特許第4238924A1号明細書
【発明の概要】
【0009】
ここで、(特にバンパーである)トリム要素の裏側に遮蔽または隠蔽されて配置された第1の超音波センサと、自動車のラジエータグリル、すなわちラジエータグリルの少なくとも1個の薄層に取り付けられた第2の超音波センサの組み合せに注目する。いくつかのシステムにおいて少なくとも2個の異なる仕方で搭載された超音波センサのそのような組み合せが必要であることが分かっており、これはバンパーの裏側に遮蔽された第1の超音波センサの配置に起因する。この関連において、必要とされるセンサの種類を最小限に抑えるために同種の超音波センサを用いることを目的とする。これは、ラジエータグリルに搭載された超音波センサが、設計の観点から、従ってまた非搭載状態での共振周波数の観点から、バンパーの裏側で超音波センサと同種のものである。しかし、2個の超音波センサがそのような同一設計に基づいていることで、当該2個の超音波センサが、全体的には構成が異なるために異なる放射特性を有し、更には双方の信号の周波数も異なってしまう。これはまた、一方の超音波センサが他方のセンサの信号を受信できないため、2個の超音波センサを用いた相互測定が不可能であることを意味する。従って、更に、信号の評価がより複雑になる。これら全ては、バンパーの裏側に搭載された超音波センサの放射挙動がバンパー材料に決定的に影響されるのに対し、他の超音波センサは「素通し」であるという事実による。
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、冒頭に挙げた種類の超音波センサ構成において2個の同種超音波センサの使用を可能にしながら、一方のセンサが他方のセンサの超音波信号を受信できる相互測定も可能にする方法に関する解決策を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明による上記課題は、超音波センサ構成により、自動車により、また各々の独立特許請求項による特徴を有する方法により解決される。本発明の有利な実施形態が従属特許請求項、明細書の記述、および図面の主題である。
【0012】
本発明によれば、自動車用の超音波センサ構成は、特にバンパーであるトリム要素と、特に少なくとも1個の薄層を有するラジエータグリルと、超音波信号を発信および/または受信すべく構成された膜を各々が含む少なくとも1個の第1および1個の第2の超音波センサとを含んでいる。第1の超音波センサは自身の膜と共にトリム要素の裏側に、特に接触するように配置されている。第1の超音波センサの膜は従って、トリム要素を介して超音波信号を発信および/または受信する。対照的に、第2の超音波センサはラジエータグリルの上、特にラジエータグリルの少なくとも1個の薄層の上に配置されている。本発明によれば、第2の超音波センサを離調することにより第2の超音波センサの発信および/または受信挙動を第1の超音波センサの発信および/または受信挙動に適合させるべく構成された離調手段が設けられている。
【0013】
本発明は、いくつかの前提に基づいている。最初に、いくつかのシステムにおいて超音波センサがバンパーその他のトリム要素の裏側に遮蔽されている構成の場合、少なくとも1個の超音波センサをラジエータグリル内に配置することも必要であるという前提に基づいている。更に、本発明は、同種の超音波センサの場合において、第2の超音波センサが「素通し」であるためその放射周波数が膜の共振周波数と基本的に一致するのに対し、トリム要素が放射周波数および第1の超音波センサに放射特性に影響を及ぼすため、当該センサの膜だけでなくトリム要素の領域も共振して、実際の放射周波数が超音波センサの非搭載状態での実際の共振周波数とは異なる事実が不都合であるという前提に基づいている。本発明は更に、従来技術で挙げられた不都合な点により、一方の超音波センサが他方の超音波センサの信号を受信できないため、2個の超音波センサによる相互測定(間接測定)を実行することも不可能であるという前提に基づいている。ここで本発明のアプローチは、ラジエータグリル内に配置された超音波センサを、その発信および/または受信特徴あるいは挙動がトリム要素の裏側に配置された超音波センサの挙動に一致するように、放射周波数の観点から離調するかまたは影響下に置くことである。これにより、同種センサを用いることができ、従って必要なセンサの種類を最小限に抑えられ、超音波センサの配置が異なっていても、一方の超音波センサが超音波信号を発信するのに対し、他方の超音波センサが同一信号を受信する相互測定が可能であるという利点が得られる。
【0014】
この場合におけるラジエータグリルという用語は、自動車の前部のラジエータの前に配置された構成要素、特にグリルに関する。ラジエータグリルは通常、冷却空気の吸入機能以外に車両設計の機能を有しているため、往々にして極めて特徴的な設計により車種の認知度を向上させる。ラジエータグリルはまた、「吸気溝」、「車種固有の設計要素としてのラジエータグリル」、「ラジエータグリル」、「プラスチックリブ」、および「プラスチック面板」の用語でも知られている。
【0015】
上記は、第2の超音波センサの発信および/または受信挙動が第1の超音波センサの挙動に適合されていることを意味する。これは特に、第2の超音波センサが、自身の放射特性および/または放射周波数が第1の超音波センサに適合すべく影響されることを意味する。
【0016】
従って一実施形態において、第1および第2の超音波センサが、同一設計のセンサであるか、または非搭載状態で同一共振周波数を有する同種のセンサである点が有利であると考えられる。従って、必要なセンサの種類が最小限で済む。
【0017】
好適には、離調手段を用いて、第2の超音波センサにより発信される超音波信号の周波数が、第1の超音波センサにより発信される超音波信号に適合される。従って、双方の超音波信号は、2枚の膜が同一周波数で振動するように同一周波数を有している。従って、2個の超音波センサによる相互測定が可能である。
【0018】
離調手段の設計に関して、基本的に2個の異なる実施形態を提供することができ、これらは互いに組み合わせることができる。一方、第2の超音波センサの発信および/または受信挙動に対し、膜の前面に取り付けられた円盤状の離調要素を用いて、影響を及ぼすことができる。追加的または代替的に、第2の超音波センサの離調はまた、電子的に行われてもよい。
【0019】
従って、一実施形態において、離調手段が円盤状の離調要素であって第2の超音波センサの膜の前面を接触するように配置されていると考えられる。そのようなプレート状または円盤状の離調要素はまた、多大な労力無しに、膜の共振周波数に影響を及ぼすか、または膜と共振する。このように、第2の超音波センサの挙動に影響を及ぼし、且つ第1の超音波センサの挙動を適合させることができるようになる。
【0020】
好適には、離調要素は膜の前面に接着されている。従って、離調要素が超音波センサの膜に確実に、ずれないように結合され、且つ確実に動作することが保証される。更に、離調要素と膜の接続を、他方の超音波センサとトリム要素との場合と同様に行われる。
【0021】
好適には、離調要素はプラスチックから形成されている。本実施形態は、知られているように、自動車のトリム要素もプラスチックから形成可能であるという事実を利用している。本実施形態は従って、第1の超音波センサがトリム要素に影響されるのと同程度に、第2の超音波センサが離調要素に影響されるように、トリム要素の振動技術特性を離調要素に持たせることができる。
【0022】
従って、離調要素がトリム要素と同種の材料から形成されていれば特に好適である。従って、第1の超音波センサが離調要素に影響されるのと同程度に、離調要素が第2の超音波センサに影響を及ぼすことができるようになる。従って、一方で全体的に同一放射特徴および同一放射周波数が得られて相互測定が実行可能になり、また双方で信号の電子評価を行くことが容易になる。離調要素用に同一材料を選択することはまた特に、離調要素の振動技術特性が、トリム要素の特性と同様に周囲温度に依存して変化するという利点がある。従って、特に、離調要素の電子モジュールはトリム要素の電子モジュールと同様に変化する。従って、第2の超音波センサの発信および/または受信挙動は第1の超音波センサの挙動と同じに保たれ、これは現在の温度によらない。
【0023】
追加的または代替的に、離調要素の厚さが、第1の超音波センサの膜が配置されている部分におけるトリム要素の厚さと同一であるとも考えられる。従って、2個の超音波センサの特性もまた互いに適合されている。
【0024】
一実施形態において、超音波センサ構成は、第2の超音波センサのポット状の膜の周囲に配置されている、好適にはセラミックから形成された1個の環状補強要素を含んでいると考えられる。ここで離調要素は、第2の超音波センサの膜の前面および補強要素の前面の両方と接触すべく配置されていてよい。そのような補強要素は、膜、または膜と離調要素からなる構成全体の振動を、膜の振動の減衰時間が所定の測定幅を超えない程度に抑えることができるという利点がある。そのような補強要素を用いることにより、膜と離調要素からなる構成全体の振動周期を依然として受容可能な時間まで短縮することができる。内部の補強要素は、トリム要素の裏側に配置された第1の超音波センサの同様の補強要素よりも小型化できる。当該補強要素のそのように小型化された設計により、超音波センサがラジエータグリル内で目立たないようにすることができる。
【0025】
既に述べたように、第2の超音波センサの離調は電子的に同様に実行することができる。この目的のため、離調手段は、第2の超音波センサを離調すべく当該センサを、超音波センサの共振周波数または膜の固有周波数とは異なる励起周波数で動作させる電子制御部を含んでいてよい。従って、この場合も第2の超音波センサの放射挙動を第1の超音波センサの放射挙動に信頼性高く且つ良好に適合させることができる。この関連において、第2の超音波センサのそのような電子的離調は、機械的離調要素を用いる必要なく、単独で行えるとさえ考えられる。しかし、本実施形態では代替的に、電子離調を部分的に実行し、また追加的に、離調要素を用いて第2の超音波センサを部分的に離調することが好適である。この関連において、離調の例えば50%が追加的な離調要素により実現でき、同じく50%が第2の超音波センサの励起周波数のシフトすることにより実現できる。
【0026】
電子離調は従って、超音波センサが自身の共振周波数または固有振動数ではなく、それとは異なる周波数で励起されるという事実により行われる。この励起周波数がこのように第2の超音波センサの実際の共振周波数とは異なるため、膜も理想的には励起されず、発信または受信性能が低下する。本実施形態は、以下の考察に基づいている。ある状況(電子モジュールが高いトリム要素に起因する高い減衰)においてトリム要素の裏側に搭載された見えない第1の超音波センサは、「素通し」である第2の超音波センサに比べて明らかに大きく減衰することを示す。これは、第2の超音波センサの性能が明らかに向上し、センサの感度もまた明らかに向上することを意味する。換言すれば、第2の超音波センサでも明らかに性能が向上している。ここで当該第2の超音波センサを共振周波数とは異なる励起周波数で動作させた場合、当該センサの発信信号を第1の超音波センサの信号に適合させることができ、第2の超音波センサの機能モードが損なわれることはない。
【0027】
制御装置は、第2の超音波センサの励起周波数を、当該超音波センサにより発信される超音波信号の周波数が第1の超音波センサの超音波信号の周波数に等しい値に設定することができる。
【0028】
本発明は更に、本発明による超音波センサ構成を備えた自動車に関する。
【0029】
本発明による方法は、第1の超音波センサの膜がトリム要素を介して超音波信号を発信および/または受信すべく第1の超音波センサが自身の膜と共に自動車の特にバンパーであるトリム要素の裏側に配置されていて、第2の超音波センサが自動車のラジエータグリル上に配置されている自動車の少なくとも2個の超音波センサを動作させる役割を果たす。離調手段により、第2の超音波センサは離調されるため、その発信および/または受信挙動が第1の超音波センサの発信および/または受信挙動に適合される。
【0030】
本発明による超音波センサ構成に関して提示する好適な実施形態およびそれらの利点は、本発明による自動車と共に本発明による方法にも同様にあてはまる。
【0031】
本発明の更なる特徴が、請求項、図面、および図面の説明から導かれる。これらの説明で既に言及した全ての特徴および特徴の組み合せ、更には複数の図面および/または単独の図面の以下の説明において言及する特徴および特徴の組み合せは、個別に示す組み合せだけでなく、他の組み合せあるいは単独でも利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
以下、個々の好適な実施形態と合わせて添付図面を参照しながら、本発明をより更に詳細に開示する。
【0033】
【
図1】本発明の一実施形態による自動車の模式図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態による超音波センサ構成の模式的断面図である。
【
図4】本発明の第2の実施形態による構成の概略断面図である。
【0034】
図面において、同一要素または同一機能を有する要素には同一参照符号が付されている。
【発明を実施するための形態】
【0035】
実施形態において
図1に模式的に示す自動車は乗用車である。自動車1は、超音波センサ装置または超音波センサ構成2を含み、超音波センサ構成2は、トリム要素としての前部バンパー3、ラジエータグリル4、および同実施形態では4個の超音波センサ、すなわち2個の第1の超音波センサ5および2個の第2の超音波センサ6を含んでいる。第1の超音波センサ5は、超音波センサ5の膜がバンパー3の裏側と接触して無孔バンパー3を介して超音波信号が発信または受信されるように、バンパー3の裏側に遮蔽または隠蔽されて配置されている。ここで第1の超音波センサ5は側面または外付けセンサであるのに対し、第2の超音波センサ6は2個の外付けされた第1の超音波センサ5の間に配置されている。
【0036】
2個の超音波センサ6は、対照的に、ラジエータグリル4内、すなわち各々少なくとも1個の薄層上に配置されている。
【0037】
超音波センサ5、6の個数は、
図1に例示的に示しているに過ぎず、実施形態に応じて異なっていてよい。従って、ラジエータグリル4内に1個の第2の超音波センサ6だけが設けられていても、あるいは3個のそのようなセンサが設けられていてもよい。また、第1の超音波センサ5の個数も例示的なものに過ぎない。
【0038】
全ての超音波センサ5、6は、超音波センサ5、6の受信された信号に基づいて障害物からの距離を計算する電子制御装置7に電気的に結合されている。例えばマイクロコントローラとして設計されている制御装置7は次いで例えば、測定された距離を出力する出力装置8を制御する。出力装置8は、例えば拡声器および/または光ディスプレイであってよい。
【0039】
本実施形態の例にある全ての超音波センサ5、6は、同種または同型のセンサであり、従ってまた非搭載状態で同一固有振動数または共振周波数を有する。しかし、第1の超音波センサ5の放射周波数は、バンパー3上での配置に起因して、バンパー3の材料に応じて変化する。全般的に、これらの超音波センサ5の放射特徴もまたバンパー3によ応じて変化する。また、これらの特性は、バンパー3の振動技術特性、特に電子モジュールが温度に応じて変化するため、温度に依存して変化する。対照的に、第2の超音波センサ6は原理的に「素通し」であるためバンパー3に影響されない。このような構成において、第1の超音波センサ5は、超音波センサ6の場合には予想されないかまたは当該第2の超音波センサ6には受信できない周波数の超音波信号を発信するため、第1の超音波センサ5と、第2の超音波センサ6との間のクロス測定、従って障害物の位置の正確な判定は不可能である。この理由により、本実施形態では第2の超音波センサ6の放射および受信特性が第1の超音波センサ5に適合されていることを保証する対策がとられている。この目的のため、放射周波数、すなわち第2の超音波センサ6の発信された超音波センサの周波数を第1の超音波センサ5の放射周波数に適合させる離調手段が設けられている。
【0040】
ここで
図2を参照するに、一実施形態において言及した離調手段は、円盤状且つプレート状の要素であって第2の超音波センサ6の膜11の前面10に、特に接着されて、配置されている離調要素9(ラジエータグリル4上に配置された全ての第2の超音波センサ6にもあてはまる)を含んでいてよい。離調要素9は従って膜11の前面10に接触しており、当該前面10を介して超音波信号が発信される。膜11は、アルミニウムポットであり、その周囲に柔軟な弾性材料からなる分離リング12が巻かれている。この関連において膜11は超音波センサ6の筐体13から突出しており、当該筐体は超音波センサ6を制御装置7に接続するプラグ14を含んでいる。この関連において筐体13は、2枚の薄層16、17の間で、または代替的に単一の薄層の凹部内へ、ラッチイン要素15を介してラッチ係合されていて、ラッチイン要素15は、薄層16、17内の対応または補完的ラッチイン開口内へラッチ係合されている。この関連において膜11の前面10は、前方の運転方向を向いている。言及した薄層16、17以外に、薄層18と16の間および17と19の間を自動車1のエンジンを冷却すべく空気が流れることができるように、
図2の矢印20により模式的に示すように、更なる薄層18、19が設けられている。
【0041】
接着性の接続を用いることにより、離調要素9が前面で膜11の前面10に固定される。離調要素9は更に、バンパー3と同一の材料から形成され、更に第1の超音波センサ5の部分においてバンパー3と同じ厚さである。実施形態3における厚さは3mmである。
【0042】
第2の超音波センサ6内のそのような離調要素9により、第1の超音波センサ5と同一の発信および受信状態が生じるため、双方の超音波信号も同一周波数で発信され、これは支配温度によらない。バンパー3の特性が変化すれば、離調要素9の特性も変化する。バンパー3は離調要素9と共にプラスチックから形成されていてよい。
【0043】
これは、離調要素9により、第2の超音波センサ6は、第1の超音波センサ5と同一の放射および受信挙動を有するように影響されることを意味する。これは、当該センサ6の放射周波数が第1のセンサ5の放射周波数に適合されているかまたはこの放射周波数に一致することを意味する。
【0044】
図2に従う実施形態において、離調要素9は単に膜11の前面10と接触しているだけである。この関連において、離調要素9の表面は、膜11の前面10よりも小さいかまたは高々等しい。離調要素9の各種幾何学的形状を
図3a〜3fにより詳細に示す。
図3aに示すように、離調要素9は、矩形の断面を有するように設計された丸い円盤であってよい。この関連において要素9を離調する直径は膜11の直径に一致していてよい。
図3bによる実施形態において、離調要素9は、円弧または隆起状に設計されていて、離調要素9の外面は球面の一部を表す。
図3cによる離調要素9は
図3aによる離調要素に基本的に一致し、且つ角が丸まっている。
【0045】
離調要素9の更なる可能な設計を
図3d〜3fに示す。各側面図の下に、離調要素9の上面図および膜11の前面10も示す。
図3d、3eにおいて、離調要素9は膜11の前面10より小型に設計されている。
図3eにおいて離調要素9は膜11よりも小さい直径の円形に設計されているのに対し、
図3dによる離調要素9は、特に上面図から分かるように楕円形に設計されている。
図3fによる離調要素9は楕円形であって、面取り縁を更に備えている。
【0046】
バンパー3または離調要素9の材料、または振動技術要件、あるいは幾つかの実施形態における光学的要件に応じて、膜11の振動の減衰時間を短縮する必要があろう。この理由のため
図4による実施形態では、分離リング12の周囲に、従って膜11の周囲に配置されたセラミック製の環状補強要素21が用いられる。当該補強要素21は従って、膜11の振動の減衰時間が適切な値まで短縮されるように、膜11の振動を減らす。また、本実施形態において、離調要素9は膜11の前面10に接触しているが、
図2による実施形態とは対照的に当該離調要素9はまた、前面において補強要素21の前面22全体にわたり延在している。更に、離調要素9は補強要素21が配置されている保持部23と一体形成されており、且つ超音波センサ6の筐体13はラッチイン要素15を介してラッチ係合されている。当該一体的に形成された保持部23はラッチイン要素24および25を介して、薄層16と17の間でラッチ係合されている。ここでも、保持部23の底部を表す離調要素9は、バンパー3と同一材料から形成されていて厚さが同一である。保持部23全体が当該材料から形成されていてもよい。補強要素21は更に、接着接続26を介してホルダー23に接続されている。
【0047】
保持部23は、ラジエータグリル4に射出成型されていても、あるいは別々の部品として設計されていてもよい。
【0048】
図2、4において、第2の超音波センサ6の発信および受信挙動がどのように第1の超音波センサ5の発信および受信挙動に適合できるかを示す。追加的または代替的に、電子制御装置7自身が第2の超音波センサ6を離調する機能を備えることも考えられる。これは例えば、当該第2の超音波センサ6が、共振周波数とは異なる励起周波数で動作させられる形式であってよい。本実施形態は例えば、離調要素9を用いた更なる離調が行われる間、第2の超音波センサ6の部分的離調にも利用可能である。その結果、完全な離調が行われれば、第2の超音波センサ6から発信された超音波信号の周波数が、第1の超音波センサ5の超音波信号の周波数に等しくなる筈である。
【符号の説明】
【0049】
1 自動車、2 超音波センサ構成、3 前部バンパー、4 ラジエータグリル、5,6 超音波センサ、7 電子制御装置、8 出力装置、9 離調要素、10 前面、11 膜、12 分離リング、13 筐体、14 プラグ、15 ラッチイン要素、16〜19 薄層、20 矢印、21 補強要素、22 前面、23 保持部、24,25 ラッチイン要素、26 接着接続。