(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6023340
(24)【登録日】2016年10月14日
(45)【発行日】2016年11月9日
(54)【発明の名称】粘着性の低い高屈折率眼用デバイス材料
(51)【国際特許分類】
A61L 27/00 20060101AFI20161027BHJP
【FI】
A61L27/00 D
【請求項の数】22
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2015-536751(P2015-536751)
(86)(22)【出願日】2012年10月15日
(65)【公表番号】特表2015-534839(P2015-534839A)
(43)【公表日】2015年12月7日
(86)【国際出願番号】US2012060193
(87)【国際公開番号】WO2014062151
(87)【国際公開日】20140424
【審査請求日】2015年9月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】504389991
【氏名又は名称】ノバルティス アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087871
【弁理士】
【氏名又は名称】福本 積
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(72)【発明者】
【氏名】チャンス リーマン
(72)【発明者】
【氏名】チャールズ フリーマン
(72)【発明者】
【氏名】ウォルター アール.ラレド
(72)【発明者】
【氏名】アリ イー.アキネイ
(72)【発明者】
【氏名】ジョセフ アイ.バインシェンク,ザ サード
【審査官】
小堀 麻子
(56)【参考文献】
【文献】
特表2009−544364(JP,A)
【文献】
国際公開第2012/109228(WO,A1)
【文献】
特表2002−501444(JP,A)
【文献】
特開昭64−015042(JP,A)
【文献】
特開昭56−145910(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 27/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼内デバイス材料
を形成するための組成物であって、
a)構造(I)
【化1】
(式中、Aは、HまたはCH
3であり、
Bは、(CH
2)
mまたは[O(CH
2)
2]
zであり、
mは、2〜6であり、
zは、1〜10であり、
Yは、無、O、S、またはNR’であるが、但し、YがO、S、またはNR’である場合、Bは(CH
2)
mであり、
R’は、H、CH
3、C
n’H
2n’+1、イソ−OC
3H
7、C
6H
5、またはCH
2C
6H
5であり、
n’=1〜10であり、
wは、0〜6であるが、但し、m+w≦8とし、
Dは、H、Cl、Br、C
1〜C
4アルキル、C
1〜C
4アルコキシ、C
6H
5、またはCH
2C
6H
5である)の重合可能なモノマーの50〜93%(w/w)と、
b)構造(II)
【化2】
(式中、EおよびFは、独立してH、C
1〜C
4アルキル、C
1〜C
4アルコキシ、CF
3、F、Cl、Br、またはN(CH
3)
2である)のベンズヒドリルメタクリレートモノマーの5〜20%(w/w)と、
c)重合可能な架橋剤と、を含む、
組成物。
【請求項2】
前記構造(I)のモノマーが、2−エチルフェノキシアクリレート;フェニルアクリレート;ベンジルアクリレート;2−フェニルエチルアクリレート;3−フェニルプロピルアクリレート;4−フェニルブチルアクリレート;4−メチルフェニルアクリレート;4−メチルベンジルアクリレート;2−2−メチルフェニルエチルアクリレート;2−3−メチルフェニルエチルアクリレート;2−4−メチルフェニルエチルアクリレート;2−(4−プロピルフェニル)エチルアクリレート;2−(4−(1−メチルエチル)フェニル)エチルアクリレート;2−(4−メトキシフェニル)エチルアクリレート;2−(4−シクロヘキシルフェニル)エチルアクリレート;2−(2−クロロフェニル)エチルアクリレート;2−(3−クロロフェニル)エチルアクリレート;2−(4−クロロフェニル)エチルアクリレート;2−(4−ブロモフェニル)エチルアクリレート;2−(3−フェニルフェニル)エチルアクリレート;2−(4−フェニルフェニル)エチルアクリレート;2−(4−ベンジルフェニル)エチルアクリレート;およびそれらの対応するメタクリレートからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記構造(I)のモノマーについて、AはHであり、Bは(CH2)mであり、mは2〜5であり、Yは無またはOであり、wは0〜1であり、DはHである、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記構造(I)のモノマーが、2−フェニルエチルアクリレート;4−フェニルブチルアクリレート;5−フェニルペンチルアクリレート;2−ベンジルオキシエチルアクリレート、および3−ベンジルオキシプロピルアクリレートからなる群から選択される、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物が、合計75〜90%(w/w)の前記構造(I)のモノマーを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記構造(II)のモノマーが、ベンズヒドリルメタクリレート;4,4’−ジフルオロベンズヒドリルメタクリレート;4,4’−ジメトキシベンズヒドリルメタクリレート;4,4’−ジクロロオベンズヒドリルメタクリレート;2−メチルベンズヒドリルメタクリレート;4−メチルベンズヒドリルメタクリレート;4−メトキシベンズヒドリルメタクリレート;4−(トリフルオロメチル)ベンズヒドリルメタクリレート;4−クロロベンズヒドリルメタクリレート;2−(トリフルオロメチル)ベンズヒドリルメタクリレート;3−(トリフルオロメチル)ベンズヒドリルメタクリレート;4,4’−ジメチルベンズヒドリルメタクリレート;4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンズヒドリルメタクリレート;3−クロロ−4’−エチルベンズヒドリルメタクリレート;4−クロロ−4’−エチルベンズヒドリルメタクリレート;3−クロロ−4’−メチルベンズヒドリルメタクリレート;3−クロロ−4’−メトキシベンズヒドリルメタクリレート;3,4’−ジクロロベンズヒドリルメタクリレート;4−メトキシ−3’−メチルベンズヒドリルメタクリレート;3−クロロ−3’−メチルベンズヒドリルメタクリレート;3−クロロ−3’−メトキシベンズヒドリルメタクリレート;4−(ジメチルアミノ)−3’−メチルベンズヒドリルメタクリレート;4−(ジメチルアミノ)−4’−メチルベンズヒドリルメタクリレート;4−クロロ−3’−フルオロベンズヒドリルメタクリレート;3,3’−ビス(トリフルオロメチル)ベンズヒドリルメタクリレート;3,4’−ジメチルベンズヒドリルメタクリレート;4−エチルベンズヒドリルメタクリレート;4−tert−ブチルベンズヒドリルメタクリレート;4−メトキシ−4’−メチルベンズヒドリルメタクリレート;3−フルオロ−3’−メチルベンズヒドリルメタクリレート;3−フルオロ−4’−メチルベンズヒドリルメタクリレート;3−フルオロ−4’−メトキシベンズヒドリルメタクリレート;4−(ジメチルアミノ)−3’−フルオロベンズヒドリルメタクリレート;4−(ジメチルアミノ)−4’フルオロベンズヒドリルメタクリレート;3−メトキシ−3’−メチルベンズヒドリルメタクリレート;3−メトキシ−4’−メチルベンズヒドリルメタクリレート;4−フルオロ−4’−メトキシベンズヒドリルメタクリレート;4−フルオロ−3’−メトキシベンズヒドリルメタクリレート;3−クロロ−3’−フルオロベンズヒドリルメタクリレート;4−クロロ−3’−メトキシベンズヒドリルメタクリレート;4−クロロ−4’−メトキシベンズヒドリルメタクリレート;3,3’−ジメチルベンズヒドリルメタクリレート;4−フルオロベンズヒドリルメタクリレート;4−ブロモベンズヒドリルメタクリレート;3−クロロ−4’−(ジメチルアミノ)ベンズヒドリルメタクリレート;4−エチル−4’−フルオロベンズヒドリルメタクリレート;3,3’−ジフルオロベンズヒドリルメタクリレート;4−フルオロ−4’−メチルベンズヒドリルメタクリレート;3−クロロ−4’−フルオロベンズヒドリルメタクリレート;3−フルオロ−3’−メトキシベンズヒドリルメタクリレート;4−tert−ブチル−4’−フルオロベンズヒドリルメタクリレート;4−エチル−3’−フルオロベンズヒドリルメタクリレート;3,4’−ジフルオロベンズヒドリルメタクリレート、および4−エチル−3’−メチルベンズヒドリルメタクリレートからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記構造(II)のモノマーについて、EおよびFは、独立してH、CH3、CF3、F、またはClである、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物は、合計8〜15%(w/w)の前記構造(II)のモノマーを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記架橋剤が、エチレングリコールジメタクリレート;ジエチレングリコールジメタクリレート;トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、アリルメタクリレート;1,3−プロパンジオールメタクリレート;2,3−プロパンジオールメタクリレート;1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート;1,4−ブタンジオールジメタクリレート;CH2=C(CH3)C(=O)O−(CH2CH2O)p−C(=O)C(CH3)=CH2(式中、p=1〜50)、およびCH2=C(CH3)C(=O)O(CH2)tO−C(=O)C(CH3)=CH2(式中、t=3〜20)、ならびにそれらの対応するアクリレートからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記架橋剤が、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、および1,4−ブタンジオールジアクリレートからなる群から選択される、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記組成物が、UV吸収剤、有色染料、およびグリスニングを軽減または排除するための添加剤からなる群から選択される薬剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記組成物が、2−(2’−ヒドロキシ−3’−メタリル−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾールを含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記組成物が、黄色染料を含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項14】
前記組成物が、ヒドロキシエチルメタクリレートを含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項15】
前記
組成物が、構造(IIIa)または(IIIb)
【化3】
(式中、IIIaおよびIIIbについて、
e=1〜50であり、
X=−O−、NH−、−N(CH
3)−、−N(CH
2CH
3)−、または−N(C
6H
5)−であり、
Y=−H、−(CH
2)
pOH、−CH
2CH
2N(CH
3)
2、−CH
2CH
2N(CH
2CH
3)
2、−CH
2CH(OH)CH
2OH、−(CH
2CH
2O)
qCH
3、−(CH
2CH
2O)
qH、−(CH
2CH
2O)
qC
6H
5、または
【化4】
であり、
p=1〜12であり、
q=1〜230であり、
T、T’は、独立して=O(CH
2)
d’、NH(CH
2)
d’、NCH
3(CH
2)
d’、O(CH
2)
d’C
6H
4、O(CH
2CH
2O)
d’CH
2、O(CH
2CH
2CH
2O)
d’CH
2、O(CH
2CH
2CH
2CH
2O)
d’CH
2、または無であり、
K=(CH
2)
a’、O(CH
2CH
2O)
b’、O、または無であるが、但し、TおよびT’=無である場合、K≠無であり、
d’=0〜12であり、
a’=1〜12であり、
b’=1〜24であり、
L=H、Cl、Br、−CH
2C(O)CH
3、CH
2C(O)C(CH
3)
3、−CH
2C(O)C
6H
5、−CH
2C(O)C
6H
4OH、−CH
2C(O)C
6H
4OCH
3、
【化5】
または−CH
2CH=CH
2であり、
R
4、R
5は、独立して=H、CH
3、CH
2CH
3、CH
2CH
2CH
3、CH(CH
3)
2、CH
2CH
2CH
2CH
3、またはCH
2CH(CH
3)
2であり、
R
6=−CO
2CH
3、−CO
2CH
2CH
3、−CN、または−CONHCH
2CH
2CH
2CH
3であり、
R
7、R
8は、独立して=H、CH
3、CH
2CH
3、またはCH
2OHである)の添加剤を含む、請求項11に記載の
組成物。
【請求項16】
前記組成物が、ヒドロキシエチルメタクリレートをさらに含む、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれか1項に記載の組成物を共重合する工程を含む、眼用デバイス材料の製造方法。
【請求項18】
前記眼用デバイス材料が、Tg≦37℃を有する、請求項17に記載の眼用デバイス材料の製造方法。
【請求項19】
前記眼用デバイス材料は、少なくとも130%の伸びを有する、請求項17に記載の眼用デバイス材料の製造方法。
【請求項20】
前記眼用デバイス材料は、35℃で完全に水和した状態で1.55以上の屈折率、60MPa未満のヤング率、および16〜45℃の温度範囲にわたって1.8重量%未満の平衡含水量を有する、請求項17に記載の眼用デバイス材料の製造方法。
【請求項21】
請求項17〜20のいずれか1項に記載の方法により製造した眼用デバイス材料を用いた、眼用デバイスを製造するための方法であって、前記眼用デバイスが、眼内レンズ、コンタクトレンズ、人工角膜、角膜内レンズ、角膜インレーまたはリング、および緑内障濾過デバイスからなる群から選択される、方法。
【請求項22】
前記眼用デバイスが眼内レンズである、請求項21に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高屈折率ポリマーおよび眼用レンズにおけるそれらの使用に関し、特に、小さな切開部を通して挿入することができる眼内レンズに関する。
【背景技術】
【0002】
高屈折率アクリル材料は、眼内レンズ(IOL)に使用されることが知られている。例えば、米国特許第5,290,892号は、IOL材料として使用するのに適した高屈折率アクリル材料を開示している。この材料は折り畳み可能であるため、小さな切開部を通して挿入することができる。これらのアクリル材料は、主要成分として2つのアリールアクリルモノマーを含有する。
【0003】
柔軟なアクリル材料は、粘着性である可能性がある。一般に、折り畳み可能な眼内レンズとしての使用が企図される材料の表面粘着性の程度を低減することが望ましい。粘着性材料は、取り扱うことおよび広げることが困難な場合がある。粘着性を排除するための手法は、米国特許第5,603,774号に記載されるプラズマガス処理等の表面処理を含む。他の手法は、米国特許第6,241,766号、同第6,245,106号、同第7,585,900号、および同第7,714,039号に記載されるもの等の成分または添加剤の使用を含む。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、問題のあるレベルの粘着性または表面接着性を有しないアクリル眼用デバイス材料を対象とする。眼用デバイス材料は、
a)構造
【化1】
(式中、Aは、HまたはCH
3であり、
Bは、(CH
2)
mまたは[O(CH
2)
2]
zであり、
mは、2〜6であり、
zは、1〜10であり、
Yは、無、O、S、またはNR’であるが、但し、YがO、S、またはNR’である場合、Bは(CH
2)
mであり、
R’は、H、CH
3、C
n’H
2n’+1、イソ−OC
3H
7、C
6H
5、またはCH
2C
6H
5であり、
n’=1〜10であり、
wは、0〜6であるが、但し、m+w≦8とし、
Dは、H、Cl、Br、C
1〜C
4アルキル、C
1〜C
4アルコキシ、C
6H
5、またはCH
2C
6H
5である)の重合可能なモノマーの50〜93%と、
b)構造
【化2】
(式中、EおよびFは、独立してH、C
1〜C
4アルキル、C
1〜C
4アルコキシ、CF
3、F、Cl、Br、またはN(CH
3)
2である)のベンズヒドリルメタクリレートモノマーの5〜20%(w/w)と、
c)重合可能な架橋剤と、を含む組成物を共重合することによって形成される。
【0005】
これらのデバイス材料は、表面粘着性が低く、かつ屈折率の高い眼内レンズを形成するために使用することができる。これらの材料でできたレンズは、可塑性および透明であり、比較的小さな切開部を通して目の中に挿入することができ、挿入された後に元の形状を回復する。
【0006】
他の要因の中でも特に、本発明は、特定のモノマーを架橋剤と共重合することによって得られる眼用デバイス材料が、他のメタクリレート成分を含有するコポリマー材料と比較して比較的低い表面接着性または粘着性を有するという発見に基づいている。
【発明を実施するための形態】
【0007】
別途指示のない限り、パーセントの数値で表される全ての成分量は、%w/wとして提示される。
【0008】
本発明の眼用デバイス材料は、構造(I)
【化3】
(式中、Aは、HまたはCH
3であり、
Bは、(CH
2)
mまたは[O(CH
2)
2]
zであり、
mは、2〜6であり、
zは、1〜10であり、
Yは、無、O、S、またはNR’であるが、但し、YがO、S、またはNR’である場合、Bは(CH
2)
mであり、
R’は、H、CH
3、C
n’H
2n’+1、イソ−OC
3H
7、C
6H
5、またはCH
2C
6H
5であり、
n’=1〜10であり、
wは、0〜6であるが、但し、m+w≦8とし、
Dは、H、Cl、Br、C
1〜C
4アルキル、C
1〜C
4アルコキシ、C
6H
5、またはCH
2C
6H
5である)の重合可能なモノマーの50〜93%を含む組成物を共重合することによって形成される。
【0009】
構造(I)のモノマーは、当該技術分野で既知の方法によって作製することができる。例えば、所望のモノマーの複合アルコールを、反応容器内でメチルアクリレート、チタン酸テトラブチル(触媒)、および4−ベンジルオキシフェノール等の重合抑制剤と組み合わせることができる。次いで、容器を加熱して反応を促進し、蒸留により反応副産物を除去して、該反応を終了まで推進することができる。代替の合成スキームは、アクリル酸を複合アルコールに加えてカルボジイミドを用いて触媒すること、または複合アルコールを塩化アクリロイル、およびピリジンもしくはトリエチルアミン等の塩基と混合することを含む。
【0010】
適切な構造(I)のモノマーとしては、限定されないが、2−エチルフェノキシアクリレート;フェニルアクリレート;ベンジルアクリレート;2−フェニルエチルアクリレート;3−フェニルプロピルアクリレート;4−フェニルブチルアクリレート;4−メチルフェニルアクリレート;4−メチルベンジルアクリレート;2−2−メチルフェニルエチルアクリレート;2−3−メチルフェニルエチルアクリレート;2−4−メチルフェニルエチルアクリレート;2−(4−プロピルフェニル)エチルアクリレート;2−(4−(1−メチルエチル)フェニル)エチルアクリレート;2−(4−メトキシフェニル)エチルアクリレート;2−(4−シクロヘキシルフェニル)エチルアクリレート;2−(2−クロロフェニル)エチルアクリレート;2−(3−クロロフェニル)エチルアクリレート;2−(4−クロロフェニル)エチルアクリレート;2−(4−ブロモフェニル)エチルアクリレート;2−(3−フェニルフェニル)エチルアクリレート;2−(4−フェニルフェニル)エチルアクリレート;2−(4−ベンジルフェニル)エチルアクリレート;およびそれらの対応するメタクリレートが挙げられる。
【0011】
好ましい式(I)のモノマーは、AがHであり、Bが(CH
2)
mであり、mが2〜5であり、Yが無またはOであり、wは0〜1であり、DがHであるモノマーである。最も好ましいのは、2−フェニルエチルアクリレート;4−フェニルブチルアクリレート;5−フェニルペンチルアクリレート;2−ベンジルオキシエチルアクリレート;および3−ベンジルオキシプロピルアクリレートである。
【0012】
本発明のデバイス材料に含有される構造(I)のモノマーの総量は、一般的に、眼用デバイス材料の重合可能な成分の総量の50〜93重量%であり、好ましくは75〜90重量%であるが、そのような量は、1つの構造(I)のモノマーまたは構造(I)のモノマーの組み合わせを含んでもよい。
【0013】
構造Iのモノマー(複数可)に加えて、本発明の共重合デバイス材料は、構造(II)
【化4】
(式中、EおよびFは、独立してH、C
1〜C
4アルキル、C
1〜C
4アルコキシ、CF
3、F、Cl、Br、またはN(CH
3)
2である)のベンズヒドリルメタクリレートモノマーを5〜20%を含む。
【0014】
構造(II)のモノマーは、市販されているか、または当該技術分野で既知の方法によって作製されてもよい。適切な構造(II)のモノマーとしては、限定されないが、ベンズヒドリルメタクリレート;4,4’−ジフルオロベンズヒドリルメタクリレート;4,4’−ジメトキシベンズヒドリルメタクリレート;4,4’−ジクロロオベンズヒドリルメタクリレート;2−メチルベンズヒドリルメタクリレート;4−メチルベンズヒドリルメタクリレート;4−メトキシベンズヒドリルメタクリレート;4−(トリフルオロメチル)ベンズヒドリルメタクリレート;4−クロロベンズヒドリルメタクリレート;2−(トリフルオロメチル)ベンズヒドリルメタクリレート;3−(トリフルオロメチル)ベンズヒドリルメタクリレート;4,4’−ジメチルベンズヒドリルメタクリレート;4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンズヒドリルメタクリレート;3−クロロ−4’−エチルベンズヒドリルメタクリレート;4−クロロ−4’−エチルベンズヒドリルメタクリレート;3−クロロ−4’−メチルベンズヒドリルメタクリレート;3−クロロ−4’−メトキシベンズヒドリルメタクリレート;3,4’−ジクロロベンズヒドリルメタクリレート;4−メトキシ−3’−メチルベンズヒドリルメタクリレート;3−クロロ−3’−メチルベンズヒドリルメタクリレート;3−クロロ−3’−メトキシベンズヒドリルメタクリレート;4−(ジメチルアミノ)−3’−メチルベンズヒドリルメタクリレート;4−(ジメチルアミノ)−4’−メチルベンズヒドリルメタクリレート;4−クロロ−3’−フルオロベンズヒドリルメタクリレート;3,3’−ビス(トリフルオロメチル)ベンズヒドリルメタクリレート;3,4’−ジメチルベンズヒドリルメタクリレート;4−エチルベンズヒドリルメタクリレート;4−tert−ブチルベンズヒドリルメタクリレート;4−メトキシ−4’−メチルベンズヒドリルメタクリレート;3−フルオロ−3’−メチルベンズヒドリルメタクリレート;3−フルオロ−4’−メチルベンズヒドリルメタクリレート;3−フルオロ−4’−メトキシベンズヒドリルメタクリレート;4−(ジメチルアミノ)−3’−フルオロベンズヒドリルメタクリレート;4−(ジメチルアミノ)−4’フルオロベンズヒドリルメタクリレート;3−メトキシ−3’−メチルベンズヒドリルメタクリレート;3−メトキシ−4’−メチルベンズヒドリルメタクリレート;4−フルオロ−4’−メトキシベンズヒドリルメタクリレート;4−フルオロ−3’−メトキシベンズヒドリルメタクリレート;3−クロロ−3’−フルオロベンズヒドリルメタクリレート;4−クロロ−3’−メトキシベンズヒドリルメタクリレート;4−クロロ−4’−メトキシベンズヒドリルメタクリレート;3,3’−ジメチルベンズヒドリルメタクリレート;4−フルオロベンズヒドリルメタクリレート;4−ブロモベンズヒドリルメタクリレート;3−クロロ−4’−(ジメチルアミノ)ベンズヒドリルメタクリレート;4−エチル−4’−フルオロベンズヒドリルメタクリレート;3,3’−ジフルオロベンズヒドリルメタクリレート;4−フルオロ−4’−メチルベンズヒドリルメタクリレート;3−クロロ−4’−フルオロベンズヒドリルメタクリレート;3−フルオロ−3’−メトキシベンズヒドリルメタクリレート;4−tert−ブチル−4’−フルオロベンズヒドリルメタクリレート;4−エチル−3’−フルオロベンズヒドリルメタクリレート;3,4’−ジフルオロベンズヒドリルメタクリレート;および4−エチル−3’−メチルベンズヒドリルメタクリレートが挙げられる。
【0015】
好ましい構造(II)のモノマーは、EおよびFが、独立してH、CH
3、CF
3、F、またはClであるモノマーである。
【0016】
本発明のデバイス材料に含有される構造(II)のモノマーの総量は、デバイス材料の重合可能な成分の総量の5〜20重量%、好ましくは8〜15重量%、最も好ましくは10〜15重量%であるが、そのような量は、1つの構造(II)のモノマーまたは構造(II)のモノマーの組み合わせを含んでもよい。
【0017】
本発明の眼用デバイス材料は、重合可能な架橋剤も含有する。架橋剤は、1つより多くの不飽和基を有する任意の末端エチレン性不飽和化合物であってもよい。適切な架橋剤としては、例えば、エチレングリコールジメタクリレート;ジエチレングリコールジメタクリレート;トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、アリルメタクリレート;1,3−プロパンジオールジメタクリレート;2,3−プロパンジオールジメタクリレート;1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート;1,4−ブタンジオールジメタクリレート;CH
2=C(CH
3)C(=O)O−(CH
2CH
2O)
p−C(=O)C(CH
3)=CH
2(式中、p=1〜50);およびCH
2=C(CH
3)C(=O)O(CH
2)
tO−C(=O)C(CH
3)=CH
2(式中、t=3〜20)、ならびにそれらの対応するアクリレートが挙げられる。好ましい架橋モノマーは、CH
2=C(CH
3)C(=O)O−(CH
2CH
2O)
p−C(=O)C(CH
3)=CH
2(式中、pは、数平均分子量が約400、約600、または約1000になるような数である)である。他の好ましい架橋モノマーは、エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、および1,4−ブタンジオールジアクリレート(BDDA)である。
【0018】
一般的に、架橋成分の総量は、少なくとも0.1重量%であり、残りの成分の同一性および濃度、ならびに望ましい物理特性に応じて、約20重量%まで及んでもよい。架橋成分の好ましい濃度範囲は、典型的に500ダルトン未満の分子量の小さな疎水性化合物で1〜5%、典型的に500〜5000ダルトンの分子量のより大きな親水性化合物で5〜17%(w/w)である。
【0019】
1つ以上の構造(I)のモノマー、1つ以上の構造(II)のモノマー、および1つ以上の架橋剤に加えて、本発明の共重合デバイス材料は、限定されないが、UV吸収剤、有色染料、およびヒドロキシエチルメタクリレート、ならびにグリスニングを軽減または排除するための他の添加剤を含む他の成分も含有してもよい。
【0020】
紫外線吸収剤も本発明の材料に含めることができる。紫外線吸収剤は、紫外線、すなわち、約400nmより短い波長を有する光線は吸収するが、いずれの相当量の可視光線も吸収しない任意の化合物とすることができる。紫外線吸収化合物は、モノマー混合物に組み込まれ、モノマー混合物が重合されるとポリマーマトリックスに封入される。適切な紫外線吸収化合物としては、2−ヒドロキシベンゾフェノンおよび2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール等の置換ベンゾフェノンが挙げられる。モノマーと共重合可能であり、それによってポリマーマトリックスに共有結合する紫外線吸収化合物を使用することが好ましい。このようにして、レンズから目の内側への紫外線吸収化合物の潜在的な浸出が最小限に抑えられる。適切な共重合可能な紫外線吸収化合物の例は、米国特許第4,304,895号に開示される置換2−ヒドロキシベンゾフェノンおよび米国特許第4,528,311号に開示される2−ヒドロキシ−5−アクリルオキシフェニル−2H−ベンゾトリアゾールである。好ましい紫外線吸収化合物は、2−(2’−ヒドロキシ−3’−メタリル−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾールである。
【0021】
紫外線吸収材料に加えて、本発明のコポリマーでできた眼用デバイスは、米国特許第5,470,932号に開示される黄色染料等の有色染料を含んでもよい。
【0022】
本発明のデバイス材料は、グリスニングを軽減または排除するための添加剤も含有してもよい。そのような添加剤の例としては、ヒドロキシエチルメタクリレート等のヒドロキシアルキルメタクリレート、ならびに米国特許出願公開第20090088493号、同第20090088544号、同第20090093603号、および同第20090093604号に開示されるものが挙げられる。一実施形態において、本発明のデバイス材料は、ヒドロキシアキルメタクリレートと、グリスニングを軽減または排除するための別の添加剤との両方を含有する。好ましい添加剤は、ヒドロキシエチルメタクリレート、ならびに構造(IIIa)および(IIIb)
【化5】
(式中、IIIaおよびIIIbについて、
e=1〜50であり、
X=−O−、NH−、−N(CH
3)−、−N(CH
2CH
3)−、または−N(C
6H
5)−であり、
Y=−H、−(CH
2)
pOH、−CH
2CH
2N(CH
3)
2、−CH
2CH
2N(CH
2CH
3)
2、−CH
2CH(OH)CH
2OH、−(CH
2CH
2O)
qCH
3、−(CH
2CH
2O)
qH、−(CH
2CH
2O)
qC
6H
5、または
【化6】
であり、
p=1〜12であり、
q=1〜230であり、
T、T’は、独立して=O(CH
2)
d’、NH(CH
2)
d’、NCH
3(CH
2)
d’、O(CH
2)
d’C
6H
4、O(CH
2CH
2O)
d’CH
2、O(CH
2CH
2CH
2O)
d’CH
2、O(CH
2CH
2CH
2CH
2O)
d’CH
2、または無であり、
K=(CH
2)
a’、O(CH
2CH
2O)
b’、O、または無であるが、但し、TおよびT’=無である場合、K≠無であり、
d’=0〜12であり、
a’=1〜12であり、
b’=1〜24であり、
L=H、Cl、Br、−CH
2C(O)CH
3、CH
2C(O)C(CH
3)
3、−CH
2C(O)C
6H
5、−CH
2C(O)C
6H
4OH、−CH
2C(O)C
6H
4OCH
3、
【化7】
または−CH
2CH=CH
2であり、
R
4、R
5は、独立して=H、CH
3、CH
2CH
3、CH
2CH
2CH
3、CH(CH
3)
2、CH
2CH
2CH
2CH
3、またはCH
2CH(CH
3)
2であり、
R
6=−CO
2CH
3、−CO
2CH
2CH
3、−CN、または−CONHCH
2CH
2CH
2CH
3であり、
R
7、R
8は、独立して=H、CH
3、CH
2CH
3、またはCH
2OHである)の添加剤である。
【0023】
本発明の共重合デバイス材料に含まれるモノマーの割合は、結果として生じるコポリマーが、通常なヒトの体温である約37℃を超えないガラス転移点(T
g)を有するように選択されるべきである。37℃よりも高いガラス転移点を有するコポリマーは、折り畳み可能なIOLに使用するのに適しておらず、そのようなレンズは、37℃を超える温度でのみ丸めるかまたは折り畳むことができ、通常な体温では開かないかまたは広がらない。そのようなコポリマーでできたIOLを好都合にも室温で丸めるかまたは折り畳むことができるように、通常な体温よりも若干低く、かつ通常な室温(例えば、約20〜25℃)よりも低いガラス転移点を有するコポリマーを使用することが好ましい。T
gは、10℃/分の示差走査熱量測定により測定され、熱流束曲線の推移の中心点で決定される。
【0024】
IOLにおいて使用する場合、本発明の材料は、この材料でできたデバイスを破砕することなく折り畳むかまたは操作することを許容するのに十分な強度を呈することが好ましい。したがって、本発明のコポリマーは、少なくとも100%、好ましくは少なくとも130%、最も好ましくは130〜300%の伸び(破断時のひずみ%)を有する。この特性は、通常、そのような材料でできたレンズが折り畳まれたときに、亀裂が入ったり、断裂したり、または割れたりしないことを意味する。ポリマーサンプルの伸びは、全長20mm、把持領域の長さ4.88mm、全幅2.49mm、狭窄部の幅0.833mm、フィレット半径8.83mm、および厚み0.9mmのダンベル型の引張試験片において決定される。50ニュートンのロードセルを装備したInstron Material Tester(モデル番号4442または均等物)を使用して、周囲条件でサンプルに対して試験が行われる。把持長さを14mmに設定し、クロスヘッド速度を500mm/分に設定し、破断するまでサンプルを引っ張る。伸び(ひずみ)は、元の把持長さに対する破壊時の変位の割合として報告される。試験される材料は、本質的に柔軟なエラストマーであるため、Instron機にそれらの材料を装填すると材料がゆがむ傾向がある。材料サンプルのたるみを除去するために、サンプルに先行荷重をかける。これは、たるみを軽減し、より一貫性のある測定値を提供するのに役立つ。サンプルに所望の値(典型的には0.03〜0.05N)まで先行荷重をかけてから、ひずみをゼロに設定し、試験を開始する。
【0025】
本発明のデバイス材料は、35℃で完全に水和した状態では1.55〜1.56またはそれよりも高い屈折率を有することが好ましい。IOLの適用に関して、デバイス材料の剛性は、注入後に断裂または変形することなく、折り畳みおよび小さな直径の開口部(例えば、1〜3mm)を通した注入を許容するのに十分に低くなければならない。好ましい実施形態において、デバイス材料のヤング率は、60MPa未満、好ましくは50MPa未満、最も好ましくは5〜40MPaである。
【0026】
共重合デバイス材料は、好ましくは16〜45℃の温度範囲にわたって1.8重量%未満の平衡含水量を有し、好ましくは16〜23℃の温度範囲で1.6重量%未満の平衡含水量を有する。デバイス材料は、好ましくはグリスニング耐性を示し、45℃の水中で平衡化した後、周囲温度(約22℃)まで冷却したときに、顕微鏡検査によって検出されるようにごく少数からゼロ個の微小空胞を生成する。
【0027】
本発明のコポリマーは、従来の重合方法によって調製される。例えば、UV吸収剤、黄色染料、および/またはグリスニングを軽減もしくは排除するための添加剤等の任意の他の重合可能な成分、ならびに従来の熱フリーラジカル開始剤と一緒に、所望の割合の構造(I)、構造(II)の液体モノマーと架橋剤の混合物が調製される。次いで、所望の形状の型に混合物を導入し、開始剤を活性化するために加熱することによって重合を行うことができる。典型的な熱フリーラジカル開始剤としては、過酸化ベンゾイル等の過酸化物、ビス−(4−t−ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート等のペルオキシカーボネート、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)等のアゾニトリル、及び同様のものが挙げられる。好ましい開始剤はAIBNである。代替として、重合を開始することが可能な波長の化学線に対して透明な型を使用することによって、モノマーを光重合することができる。従来の光開始剤化合物、例えば、ベンゾフェノン系光開始剤も、重合を促進するために導入することができる。選択される開始剤または硬化方法にかかわらず、より緩徐に重合された同じ材料よりも高い粘着性を有する重合材料を生じる場合がある急速な重合を回避するように、硬化プロセスが制御されるべきである。
【0028】
一旦、本発明の眼用デバイス材料が硬化してから、材料の未反応成分をできるだけ多く除去するのに適した溶媒中でそれらを抽出する。適切な溶媒の例としては、アセトン、メタノール、およびシクロヘキサンが挙げられる。抽出に好ましい溶媒は、アセトンである。
【0029】
開示される眼用デバイス材料で構築されるIOLは、比較的小さな切開部を通ることができる小さな断面になるように丸めるかまたは折り畳むことが可能な任意の設計とすることができる。例えば、IOLは、ワンピースまたはマルチピース設計として知られるものであってもよい。典型的には、IOLは、1つの光学部と、少なくとも1つのハプティックとを含む。光学部は、レンズとしての役割を果たす部分であり、ハプティックは、光学部に取り付けられ、目の中の適切な位置に光学部を維持するアームのようなものである。光学部およびハプティック(複数可)は、同じかまたは異なる材料とすることができる。マルチピースレンズは、光学部およびハプティック(複数可)が別々に作製され、次いでハプティックが光学部に取り付けられるため、そのように称される。単一ピースレンズでは、光学部およびハプティックが、一片の材料から作製される。材料に応じて、次いでハプティックが材料から切削または旋盤加工で作り出され、IOLが生成される。
【0030】
IOLに加えて、本発明の眼用デバイス材料は、コンタクトレンズ、人工角膜、角膜内レンズ、角膜インレーまたはリング、および緑内障濾過デバイスを含む他のデバイスにおける使用にも適している。
【0031】
本発明は、限定的ではなく例示的であることが意図される以下の実施例によってさらに説明される。
実施例1
【0032】
表1に示す配合物を次の通りに調製した。冷蔵庫、冷凍庫、またはキャビネットから成分を取り出し、約2時間実験台上に置いた。成分を指示された比率で計量し、20mlガラスバイアル中に溶解し、ボルテックス混合した。各配合物を2分間窒素でパージし、高真空下に2分間置き(<0.5mm Hg)、0.2ミクロンPTFEフィルタを通して標準的なポリプロピレンスラブ型またはレンズウエハに注入し、次いで、室温〜70℃(20分)、70℃(60分)、70〜90℃(60分)、90〜105℃(60分)で加熱した。
【表1】
PEA:2−フェニルメタクリレート
BzhyMA:ベンズヒドリルメタクリレート
BDDA:1,4−ブタンジオールジアクリレート
PMA:フェニルメタクリレート
ポリPEGMA:メタクリレート末端を有するポリ(エチレングリコール)モノメチルエーテルメタクリレートのマクロモノマー(MW=550)、Mn(SEC):4100ダルトン、Mn(NMR):3200ダルトン、PDI=1.50
PERK:Perkadox 16s
AIBN:2,2’アゾビスイソブチロニトリル
実施例2
【0033】
実施例1の共重合デバイス材料の機械的特性を評価した。金型およびプレスを使用して、各サンプル群から「ドッグボーン」型の引張試験片を切り出した。典型的には、スラブ当たり3つの試験片を調製し、配合物当たり合計9個の試験片を調製した。Instron 5543伸び計を500mm/分のクロスヘッド速度で使用して引張特性を測定した。破断時の応力、破断時のひずみ%、ヤング率、25%割線係数、および100%割線係数のデータを得た。その結果を表2に示す。
【表2】
実施例3
【0034】
配合物を、接着性試験にも供した。鋳型から個々にスラブを取り出し、金型およびプレスを使用して10mmの円板を打ち抜いた。円板の片側には手を触れずに、表を上にしてプラスチック製ペトリ皿内に置いた。サンプルを皿カバーで覆い、脱型から1時間以内の接着性を測定した。接着装置を慎重に配置し、8mmポストの上に中心が来るように置いた。試験には500Nロードセルを用いた。開始位置にあるとき、ポストをハンガーの底から1.0mm上に位置付けた。ソフトウェアキャリブレーション(Bluehill)を使用してロードセルを較正した。ハンガー上に300gの重りを置いた状態でロードセルの重量を差し引いた。10mmの円板を8mmポストの上に慎重に位置付け、試料の上に300gの重りを置いた。サンプルおよび重りに1分間手を触れずに静置させた後、接着性試験を開始した。次いで、機器によりハンガーアセンブリを上向きに引っ張り、サンプルを引っ張って8mmポストから離した。最大負荷(N)およびエネルギー(mJ)を表3に示す。
【表3】
実施例4
【0035】
各配合物を、平衡含水量、屈折率、抽出物%、および微小空胞(グリスニング)形成に対する耐性を決定するためにも試験した。35℃の水浴中でスラブを水和させ、EWC%および屈折率を決定した。別個に、各硬化配合物の3〜5つのポリマースラブの重量を計測して抽出物%を得た。最初の1時間後に1回溶媒を交換して、周囲温度で少なくとも16時間ポリマースラブをアセトン中で抽出し、次いで、アルミ箔で覆ったまま周囲温度で8時間乾燥させた。減圧雰囲気下60℃で少なくとも16時間、スラブをさらに乾燥させた。スラブを取り出し、室温(23℃)まで冷却した。以前に重量を計測したスラブの重量を再び計測して抽出物%を得た。各配合物の3つのレンズを約20mLの脱イオン水を収容する20mLバイアル内に配置し、45℃の水浴中で24時間それらをインキュベートすることによって、グリスニング耐性を決定した。サンプルバイアルを水浴から取り出し、実験台に置いて室温(典型的には23〜24℃)まで冷却した。室温まで冷却した後、Olympus BX60顕微鏡を使用して、2倍率拡大鏡を用いて10倍率の明視野(BF)および暗視野(DFA)設定下で各レンズを画像化した。平衡含水量(「EWC」)、屈折率(「RI」)、抽出物%(「抽出物」)、およびグリスニング(「グリスニング」)の結果を表4に示す。
【表4】
実施例5
【0036】
配合物G〜Iでできたサンプルレンズを、アルゴンガスを用いてプラズマ処理し(米国特許第5,603,774号による)、注入試験において評価して、IOL送達カートリッジにレンズを通過させるのに必要な力を決定した。表5中の報告された力の値は、空のカートリッジにプランジャーを押して通過させることから得られた10〜12Nのベースラインの力を含む。
【表5】
実施例6
【0037】
表6aに示す配合物は、実施例1に記載される様式で調製したが、但し、硬化プロファイルが粘着性に及ぼす影響を調査するために、3つの異なる硬化プロファイルを用いて硬化した。硬化条件および粘着性の結果を表6bに示す。結果は、より緩徐な加熱ランプ速度が粘着性能の向上をもたらすことを示した。1つのサンプルは、15分で室温から90℃まで加熱ランプで硬化し、第2のサンプルは、15分で室温から70℃まで加熱ランプで硬化し、第3のサンプルは、20分で室温から70℃まで加熱ランプで硬化した。第1のサンプルは、適度な粘着性を有すると判断されたのに対し、第2および第3のサンプルは、低い粘着性を有すると判断された。
【表6a】
【表6b】
実施例7
【0038】
表7に示す配合物は、実施例1に記載される様式で調製したが、但し、以下の硬化プロファイル:10〜30分で室温から少なくとも60℃まで(1時間)、次いで、10〜30分で少なくとも90℃まで(2時間)を用いた。
【表7】
TEGDA:トリエチレングリコールジアクリレート
DEGDMA:ジエチレングリコールジアメタクリレート
V−65:2,2’−アゾビス(2.4−ジメチルバレロニトリル)
TBPO:Trigonox 21S(tert−ブチルペルオキシ−2−ヘキサン酸エチル)
ABCC:1,1’−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)
実施例8
【0039】
開始剤が粘着性に与える影響を調査するために、上記実施例2〜4に記載した手順を用いて、実施例8の配合物M、P、R、S、およびTを粘着性およびアセトン抽出物について試験した。その結果を表8に示す。AIBNおよびTBPO等の比較的高い1時間半減期分解温度を有する開始剤で、より緩徐な硬化性能およびより良好な粘着性能が得られた。
【表8】
実施例9
【0040】
4,4’−ジメトキシベンズヒドリルメタクリレートの合成。磁気撹拌棒および窒素流入口を備えた1L丸底フラスコに、阻害剤としてBHTを含有する700mlの無水THF、98gの無水ピリジン、および51.6g(211mmol)の4,4’−ジメトキシベンズヒドロールを加えた。反応混合物を−10℃まで冷却し、26.5g(254mmol)の塩化メタクリロイルを10分かけて滴下で加えた。反応混合物を−10〜0℃で1時間撹拌し、次いで周囲温度で20時間撹拌した。固体を濾過し、Et
2O/水を用いて濾液を抽出した。1N NaHCO
3、1N HCl、かん水、および水で有機層を洗浄し、次いでMgSO
4で乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮して所望の粗生成物を得、−20℃の冷エーテル/ヘキサンから再結晶化した。
【化8】
実施例10
【0041】
本発明を代表するさらなる配合物を表9に示す。これらの配合物は、実施例1に記載される手順によって調製することができる。
【表9】
【0042】
以上、本発明を完全に説明したが、本発明は、その主旨または本質的な特徴から逸脱することなく、他の特定の形態または変形例において具現化される場合があることを理解されたい。したがって、上述の実施形態は、全ての観点において限定的ではなく例示的であると解釈されるべきであり、前述の説明によってではなくむしろ上記添付の特許請求の範囲によって示唆される本発明の範囲、ならびに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内の全ての変更が、その中に包含されることが企図される。