【実施例1】
【0017】
先ず、本発明の実施例1を図面に基づいて説明する。
図1に示されるように、排ガス浄化装置10は、内部に排気ガスが流され排ガスを浄化するための浄化部材20と、この浄化部材20に巻かれているマット30と、このマット30に巻かれた浄化部材20を収納しているケース40とからなる。
排ガス浄化装置10に用いられている浄化部材20について詳細を
図2において説明する。
【0018】
図2は、浄化部材20を軸O方向から見た状態が示されている。
図2に示されるように、浄化部材20には、セラミック製のディーゼルパーティキュレートフィルタ(Diesel Particulate Filter)を用いることができる。浄化部材20は、一般部21と、この一般部21を削ることにより円柱状に形成される円柱部22とからなる。円柱部22の中心軸は、一般部21の中心軸に一致している。これらの中心軸をまとめて浄化部材20の軸線Oという。
【0019】
一般部21の外周は、平坦面24と、円弧形状の円弧面25とが連続してなる。4つの平坦面24は、それぞれ同形状を呈し、浄化部材20の軸線Oを中心に90°ずつ位相をずらしながら形成されている。向かい合う平坦面24は、それぞれ平行に形成されていると共に、隣り合う平坦面24に対して垂直に延びている。円弧面25も4箇所に形成され、軸線Oを中心とした円弧を描いていると共に、それぞれが同形状を呈する。円弧面25は、隣り合う平坦面24を繋ぐようにして、軸線Oを中心に90°ずつ位相をずらしながら4箇所に形成されている。
【0020】
なお、浄化部材20には、ディーゼルパーティキュレートフィルタの他、キャタライズドスートフィルター(Catalyzed Soot Filter)、ディーゼルエンジン用触媒担体、ガソリンエンジン用触媒担体にも適用可能である。即ち、内燃機関において発生する排ガスを浄化する目的で用いられるものであれば、浄化部材は、これらのものに限られない。
浄化部材20の成形方法について
図3において詳細を説明する。
【0021】
図3(a)に示されるように、まず、直方体ブロック状の浄化部材20aを準備する。このブロック状の浄化部材20aは、複数の棒状の浄化部材27を合わせてブロック状に形成されたものである。棒状の浄化部材27は、それぞれ正面視において正方形を呈する。このような棒状の浄化部材27を縦及び横に同数合わせることにより、正面視略正方形のブロック状の浄化部材20aが形成されている。
【0022】
軸線Oを中心として準備した浄化部材20aの外周を直径Dの円形状に削る。直径Dは、浄化部材20aの1辺よりも長く、対角線よりも短い。これにより、浄化部材20aに平坦面24を残しつつ角を削り、角を円弧状に形成する。即ち、浄化部材20aの外周の一部を円弧状に削ることにより、平坦面24を残しつつ円弧面(
図3(b)、符号25)を形成する。
【0023】
削ることにより、
図3(b)及び
図3(c)に示されるように、円弧面25を有する浄化部材20bが形成される。このような浄化部材20bの軸方向の中心を残し、両端を削る。
【0024】
図3(d)に示されるように、両端に円柱部22,22が形成される。これにより、4箇所の平坦面24と、4箇所の円弧面25とからなる凸部形状をなす浄化部材20が完成する。
このような浄化部材20の外周に巻かれるマット(
図1、符号30)を
図4において詳細に説明する。
【0025】
図4に示されるように、マット30には、アルミナ繊維を含有したマットを用いることができる。マット30は、作業員による手巻きの他、マット巻き装置によって浄化部材に巻くことができる。浄化部材(
図1、符号20)に巻いた際に嵌合させることができるよう、マット30の一端には、長さL1の凹形状部31が形成され、他端には、長さL2の凸形状部32が形成されている。また、マット30には複数の貫通穴33が形成されている。これらの貫通穴33は、浄化部材とマット30との密着性を向上させると共に、ケース(
図1、符号40)によるマット30の挟込みを防止する効果をもつ。
なお、浄化部材の最大径部と最小径部の周長差を考慮してL1,L2を設定することが望ましい。
【0026】
凸形状部32は、凹形状部31に嵌合させることのできる構成とされている。嵌合させた際に、凸形状部32の先端部32aは、凹形状部31の底部31aに接触しない。即ち、凸形状部32の先端部32aから凹形状部31の底部31aまでの長さは、浄化部材20の外周の長さよりも短い。一方、凸形状部32の先端部32aから凹形状部31の先端部31bまでの長さは、浄化部材20の外周の長さよりも長い。
【0027】
マット30や浄化部材を製造することにより、不可避的に製品誤差が生ずる。凸形状部32の先端部32aを凹形状部31の底部31aに接触しない構成とすることにより、不可避的に生ずる製品誤差を凹形状部31によって吸収し、確実にマット30を浄化部材に巻くことができる。
【0028】
マット30の巻き付けの際、貫通穴33の形成されている部位が、浄化部材の円弧面に一致するように配置する。
また、マット30を引張りながら巻くことにより、マット30が伸び、マット30を浄化部材により密着させることができる。さらに、マット30を伸ばすことにより、最大径部と最小径部の周長差を吸収することができる。
【0029】
なお、マット30は、アルミナ繊維以外の金属繊維やセラミックス繊維を含有するもの、抄造マット、バーミキュライトを含んだマット、ニードル、グラスファイバー等任意のマットを用いることができる。
マット30の巻かれた浄化部材は、ケース(
図1、符号40)に収納される。
図5において詳細を説明する。
【0030】
図5に示されるように、ケース40は、軸O方向の断面を基準として、略半円形状を呈し浄化部材20の下部を覆う第1ケース半体50と、略半円形状を呈すると共に浄化部材20の上部を覆う第2ケース半体60とからなる。第1及び第2ケース半体50,60は、互いに接合されると共に、それぞれが浄化部材20の周方向の略半分を覆う部材である。
【0031】
第1ケース半体50は、平坦な底部51と、この底部51の両端からそれぞれ円弧形状に延び主要部を構成する円径部52,52と、これらの円径部52,52からそれぞれ立ち上げられている立上げ部53,53と、これらの立上げ部53,53から斜めに延びるテーパ部54,54と、これらのテーパ部54,54の先端から延びているフランジ部55,55とからなる。フランジ部55,55は、浄化部材20の軸方向に渡って形成されている。
【0032】
第2ケース半体60も同様である。即ち、平坦な底部61と、この底部61の両端からそれぞれ円弧形状に延び主要部を構成する円径部62,62と、これらの円径部62,62からそれぞれ立ち上げられている立上げ部63,63と、これらの立上げ部63,63から斜めに延びるテーパ部64,64と、これらのテーパ部64,64の先端から延びているフランジ部65,65とからなる。フランジ部65,65は、浄化部材20の軸方向に渡って形成されている。
【0033】
まず、マット30を巻かれた浄化部材20を第1ケース半体50に向かって押し込む。マット30を押し込む前の状態において、マット30は全体を通して一定の厚さに保たれている。
【0034】
次に、浄化部材20に向かって第2ケース半体60を押し込む。第2ケース半体60を押し込むことによって、フランジ部55,65が合される。即ち、第2ケース半体60を押し込むことによって、浄化部材20が収納される。
フランジ部55,65が合された後、これらのフランジ部55,65を溶接する。詳細を
図6において説明する。
【0035】
図6に示されるように、フランジ部55,65を溶接することにより排ガス浄化装置10が完成する。浄化部材20の円弧面25からケース40までの距離と、平坦面24からケース40までの距離とが異なることにより、外周に巻かれるマット30の圧縮量が浄化部材20の部位によって異なる。詳細を
図7において説明する。
【0036】
図7に示されるように、軸線Oから浄化部材20の円弧面25までの距離Rは、軸線Oから平坦面24までの距離L3に比べ長い。
即ち、本発明による製造方法は、浄化部材20の平坦面24を残しつつ円弧面25を形成する工程(
図3(b)参照)と、浄化部材20を断面略円形状のケース40に収納する工程(
図5)とを有している。これらの工程を経て製造された排ガス浄化装置10は、浄化部材20に円弧面25と平坦面24とが形成されると共に、これらの円弧面25と平坦面24とが断面略円形状のケース40によって囲われる。ケース40が断面略円形であるため、円弧面25からケース40までの距離W1は、平坦面24からケース40までの距離W2に比べ、短くなる。即ち、円弧面25とケース40との間のスペースは小さく、平坦面24とケース40との間のスペースは大きく形成される。
図1も参照して、浄化部材20の周りに巻かれるマット30は、円弧面25とケース40との間の狭いスペースにおいて強く圧縮される。強く圧縮されることにより、マット30は浄化部材20を高い保持力で保持し、浄化部材20のケース40内での移動を防止する。一方、平坦面24とケース40との間の広いスペースは、スペースが狭い部位において圧縮されるマット30の逃げ部になる。マット30の逃げ部が形成されていることにより、マット30が所定の範囲に収まる。マット30を所定の範囲に収めることにより、ケース40によるマット30の挟込みを抑制することができる。
【0037】
加えて、浄化部材20の軸Oに沿って排ガス浄化装置10を断面した状態(特に
図1参照)において、円弧面25は、ケース40に重なる位置に形成されている。浄化部材20が軸方向に移動しようとした場合に、進行方向にケース40が配置されているため、ケース40が浄化部材20の移動を防止する。
【0038】
図6に戻り、さらに、浄化部材20の平坦面24に対応する部位に、フランジ部55,65が形成されている。即ち、浄化部材20との距離が長く、マット30が逃げ得る広い部位にフランジ部55,65を形成する。浄化部材20を第1ケース半体50へ押込む際に、押込み作業の最後まで逃げ部が残っているので、浄化部材20を第1ケース半体50へ容易に押込むことができる。また同様の理由により、第2ケース半体60を浄化部材20へ容易に押込むことができる。即ち、排ガス浄化装置10の組立作業が容易になる。
排ガス浄化装置10は、さらなる作用を有する。
図8において詳細を説明する。
【0039】
また、第1及び第2ケース半体50,60のそれぞれにテーパ部54,64が形成されていることにより、第1及び第2ケース半体50,60の間には隙間41が生じる。この隙間41があることにより、さらにケース40によるマット30の挟込みを抑制することができる。テーパ部54,64に代え、円径部62からフランジ部65までを、段階的に曲率半径が変化する、いわゆる複合r形状とすることもできる。
【0040】
図8(a)の比較例に示されるように、マット330の凸形状部332の幅W10が、浄化部材320の一般部321の幅W11と同等である場合、又は小さいことがある。
【0041】
この場合、
図8(a)のb−b線断面図である
図8(b)に示されるように、マット330の凸形状部332と凹形状部331との間に一般部321の段差によって隙間335,335が生じる。隙間335,335が生じていることにより、浄化部材320を通過しなかった排気ガスが漏れる。
【0042】
即ち、
図8(a)の矢印(11)〜矢印(13)において示されるように、排ガスの一部は、浄化部材320の外周に向かって流れる。浄化部材320の外周に向かって流れた排気ガスの一部が、凸形状部332と凹形状部331との間を通過し、浄化部材320を通過することなく、排ガス浄化装置310の外部へと流れる。即ち、浄化されていない排ガスが排ガス浄化装置310の外部へと流れる。
【0043】
一方、
図8(c)の実施例に示されるように、実施例に係る排ガス浄化装置10は、マット30の凸形状部32の幅W3が、浄化部材20の一般部21の幅W4よりも大きく形成されている。
【0044】
この場合、
図8(c)のd−d線断面図である
図8(d)に示されるように、一般部21の幅よりも長くすることにより、マット30の凸形状部32と凹形状部31とが密着する。密着することにより、浄化部材20を通過しなかった排気ガスが下流側に漏れることを防止する。
【0045】
即ち、
図8(c)の矢印(1)において示されるように、排ガスの一部は、浄化部材20の外周に向かって流れる。浄化部材20の外周に向かって流れた排気ガスは、マット30によって下流側へ流れることを防止されている。即ち、浄化されていない排ガスが排ガス浄化装置10の外部へと流れることを防止することができる。
マット30の変更例を
図9において説明する。
【0046】
図9には、マットの変更例が示されている。
図9は、上記
図4に対応させて表している。
マット70に切込み73を入れることもできる。マット70に切込み73を形成した場合には、貫通穴(
図4、符号33)を形成した場合に比べ、マット70の浄化部材(
図1、符号20)への締付け力を弱めることなく、浄化部材へよりマット70を密着させることができる。
【0047】
なお、切込み73は、貫通穴と共に形成することもでき、切込み73の方向や貫通穴の大きさは、適宜選択することができる。
排ガス浄化装置の別実施例を、
図10において詳細に説明する。
【実施例3】
【0055】
次に、本発明の実施例3を図面に基づいて説明する。
図11は実施例3の排ガス浄化装置の軸方向の断面構成を示している。
図11は、上記
図1に対応させて表している。
【0056】
図11に示されるように、排ガス浄化装置140は、陸上トラック(track)形状の浄化部材150が、略楕円(oval)形状のケース160によって収納されている。
【0057】
浄化部材150は、平坦面154と円弧面155とを有している。向かい合う平坦面154,154が平行に形成されていると共に、これらの平坦面154,154の両端をそれぞれ繋ぐように、半円形状の円弧面155,155が2箇所形成されている。
【0058】
ケース160は、第1ケース半体170と第2ケース半体180とを重合わせる構成とされている。第1ケース半体170は、浄化部材150の円弧面155と同心円状に形成されている第1曲面171と、この第1曲面171の端部から一体的に形成され第1曲面171とは異なる曲率半径を有する第2曲面172,172とからなる。第2ケース半体180も同様に、第1曲面181と、第2曲面182,182とからなる。第1ケース半体170の第1曲面171と第2ケース半体180の第1曲面181とは同一の形状を呈し、第1ケース半体170の第2曲面172と第2ケース半体180の第2曲面182とも同一の形状を呈している。ケース160は、全体が曲面によって構成されている。
【0059】
第1ケース半体170の第2曲面172の端部から複合r形状部174を介して、フランジ部175が延びている。第2ケース半体180も同様である。即ち、第2ケース半体180の第2曲面182の端部から複合r形状部184を介して、フランジ部185が延びている。複合r形状とは、第2曲面172,182からフランジ部175,185に向かって段階的に曲率半径が変化する形状をいう。複合r形状部174,184の間には隙間161が形成されている。
【0060】
ケース160は、円弧面155に対して略平行に一定の距離を保って形成されると共に、平坦面154に対しては連続的に距離が変化するように形成されている。ケース160から平坦面154までの距離は、ケース160から円弧面155までの距離よりも長く形成されている。浄化部材150の平坦面154とケース160との間のスペースが、円弧面155とケース160との間のスペースよりも大きい。このように構成した排ガス浄化装置140においても、本発明の所定の効果を得ることができる。
【0061】
なお、陸上トラック(track)形状の浄化部材150が、略楕円(oval)形状のケース160に収納される構成の他、周方向において浄化部材とケースとの距離が部位によって変化する構成であれば、その他の形状の浄化部材及びケースであっても採用することができる。具体的には、縦横の径が一定でない、長円形状、陸上トラック形状、幾何学楕円、複合rの略楕円形状を含むことができる。これにより、車載レイアウトの自由度が増す。
【実施例4】
【0062】
次に、本発明の実施例4を図面に基づいて説明する。
図12は実施例4の排ガス浄化装置の軸方向の断面構成を示している。
図12は、上記
図11に対応させて表している。
図11に示された排ガス浄化装置に対して、フランジ部の位置を変更した。
【0063】
即ち、排ガス浄化装置140Aは、陸上トラック形状の浄化部材150が、略楕円形状のケース160Aによって収納されている。
【0064】
ケース160Aは、第1ケース半体170Aと第2ケース半体180Aとを重合わせる構成とされている。第1ケース半体170Aは、所定の曲率半径を有する第1曲面171Aと、この第1曲面171Aの端部から一体的に形成され円弧面155に対して同心円状に形成されている第2曲面172Aとからなる。第2ケース半体180Aも同様に、第1曲面181Aと、第2曲面182Aとからなる。第1ケース半体170Aの第1曲面171Aと第2ケース半体180Aの第1曲面181Aとは同一の形状を呈し、第1ケース半体170Aの第2曲面172Aと第2ケース半体180Aの第2曲面182Aとも同一の形状を呈している。ケース160Aは、全体が曲面によって構成されている。
【0065】
第1ケース半体170Aの第2曲面172Aの端部から複合r形状部174Aを介して、フランジ部175Aが延びている。第2ケース半体180Aも同様である。即ち、第2ケース半体180Aの第2曲面182Aの端部から複合r形状部184Aを介して、フランジ部185Aが延びている。複合r形状部174A,184Aの間には隙間161Aが形成されている。
【0066】
ケース160Aは、円弧面155に対して略平行に一定の距離を保って形成されると共に、平坦面154に対しては連続的に距離が変化するように形成されている。ケース160Aから平坦面154までの距離は、ケース160Aから円弧面155までの距離よりも長く形成されている。浄化部材150の平坦面154とケース160Aとの間のスペースが、円弧面155とケース160Aとの間のスペースよりも大きい。このように構成した排ガス浄化装置140Aにおいても、本発明の所定の効果を得ることができる。
【0067】
尚、本発明による製造方法により製造された排ガス浄化装置は、乗用車の他、バスやトラック等の車両、船舶等にも搭載することができ、乗り物に限らず、任意の装置に搭載することができる。
【0068】
また、排ガス浄化装置に用いられるケースは、浄化部材の周方向の半分をそれぞれ覆う第1及び第2ケース半体を用いたが、浄化部材の軸方向の半分をそれぞれ覆う第1及び第2ケース半体を用いることもできる。