(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記凸形プッシャーの、プッシャー外径に対する加圧面のプッシャー軸線方向長さの比が、前記凹形プッシャーの、プッシャー外径に対する加圧面のプッシャー軸線方向長さの比よりも大きいことを特徴とする、請求項3に記載の免震プラグの製造方法。
前記凸形プッシャーが、加圧方向最後端よりも加圧方向側に位置する頂辺で交差する二つの平面を加圧面として有する楔形プッシャーであることを特徴とする、請求項3または4に記載の免震プラグの製造方法。
前記凸形プッシャーの、プッシャー外径に対する加圧面のプッシャー軸線方向長さの比が、前記凹形プッシャーの、プッシャー外径に対する加圧面のプッシャー軸線方向長さの比よりも大きいことを特徴とする、請求項8に記載の免震プラグの製造装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記従来のすり鉢形プッシャーや楔溝形プッシャーを用いた免震プラグの製造方法では、中央部が突出した形状に加圧成形した粉体材料を平面プッシャーで再び加圧成形して免震プラグの両端を平面状に加圧成形しているので、製造された免震プラグの端面の外周部が崩れ(欠け)てしまうことがあった。即ち、すり鉢形プッシャーや楔溝形プッシャーを用いた従来の免震プラグの製造方法では、免震プラグの端面が平坦にならず、成形不良が生じて所望の減衰性能や変位追従性等を有する免震プラグを得ることができないことがあった。また、上記従来のすり鉢形プッシャーや楔溝形プッシャーを用いた免震プラグの製造方法には、空気含有率を更に低減するという点において改善の余地があった。
【0009】
そこで、本発明は、成形不良の発生を抑制しつつ空気含有率の低い免震プラグを製造することができる免震プラグの製造方法および製造装置を提供することを目的とする。また、本発明は、端面が平坦で空気含有率が低い、減衰性能や変位追従性に優れる免震プラグを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、成形不良の発生を抑制しつつ空気含有率の低い免震プラグを製造することを目的として、鋭意検討を行った。そして、本発明者は、平面プッシャーで加圧する前の粉体材料の形状、特に、粉体材料の突出している部分の大きさ(中央部の突出高さ)が、免震プラグの端面の外周部の崩れ(欠け)の発生および免震プラグの空気含有率に大きな影響を及ぼしていることを見出し、本発明を完成させた。
【0011】
即ち、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の免震プラグの製造方法は、塑性流動材および硬質充填材を含有する粉体材料を金型内で加圧成形して免震構造体用の免震プラグを製造する方法であって、金型内に充填された粉体材料の少なくとも一方側を、加圧方向最先端に対し中央部が加圧方向とは反対の方向に陥没した加圧面を有する凹形プッシャーを用いて加圧する予備加圧成形工程と、前記予備加圧成形工程で加圧された粉体材料の、少なくとも前記凹形プッシャーを用いて加圧された側を、加圧方向に直交する平面を加圧面として有する平面プッシャーを用いて加圧する最終加圧成形工程とを含み、前記凹形プッシャーは、プッシャー外径に対する加圧面のプッシャー軸線方向長さの比が0.5未満であることを特徴とする。このように、予備加圧成形工程において、プッシャー外径(D)に対する加圧面のプッシャー軸線方向長さ(L)の比(L/D)が0.5未満である凹形プッシャーを用いて粉体材料を加圧すれば、金型内で粉体材料を強制的に流動させて粉体材料中に混入した空気を抜くことができる。従って、空気含有率の低い免震プラグを製造することができる。また、予備加圧成形工程においてL/Dが0.5未満である凹形プッシャーを用いて粉体材料を加圧した後、最終加圧成形工程において、凹形プッシャーで加圧された側を平面プッシャーで加圧し、免震プラグを製造すれば、免震プラグの端面における成形不良の発生を抑制することができる。
なお、本発明において、「加圧方向」とは、金型内の粉体材料をプッシャーで加圧する際にプッシャーが進行する方向を指す。また、「中央部」とは、加圧方向最先端のプッシャー径方向内側に位置する部分を指す。更に、「プッシャー外径」とは、プッシャーの、加圧面が形成されている部分の最大外径を指す。そして、「加圧面のプッシャー軸線方向長さ」とは、加圧面の加圧方向最先端を通って加圧方向に直交する平面と、加圧面の加圧方向最後端を通って加圧方向に直交する平面との間の加圧方向に沿う長さを指す。
【0012】
ここで、本発明の免震プラグの製造方法は、前記凹形プッシャーが、加圧方向最先端よりも加圧方向とは反対の方向に位置する底辺で交差する二つの平面を加圧面として有する楔溝形プッシャーであり、前記二つの平面が、鋭角側から測定して90°超の角度で交差することが好ましい。二つの平面の交差角度が90°超の楔溝形プッシャーを凹形プッシャーとして用いれば、金型内で粉体材料を更に大きく流動させて粉体材料中に混入した空気を十分に抜くことができるので、免震プラグの空気含有率を更に低減することができるからである。また、2つの平面の交差角度が90°超の楔溝形プッシャーを凹形プッシャーとして用いれば、予備加圧成形工程後の最終加圧成形工程において、免震プラグの端面における成形不良の発生を更に抑制することができるからである。
【0013】
また、本発明の免震プラグの製造方法は、前記金型内の粉体材料はプッシャーで両側から挟んで加圧成形され、前記予備加圧成形工程では、前記粉体材料を、前記凹形プッシャーで一方側から加圧すると共に、加圧方向最後端に対し中央部が加圧方向に突出した加圧面を有する凸形プッシャーで他方側から加圧することが好ましい。予備加圧成形工程において、凹形プッシャーと凸形プッシャーとで粉体材料を両側から挟んで加圧すれば、金型内で粉体材料を更に大きく流動させて粉体材料中に混入した空気を十分に抜くことができるので、免震プラグの空気含有率を更に低減することができるからである。
なお、本発明において、「中央部」とは、加圧方向最後端のプッシャー径方向内側に位置する部分を指す。
【0014】
更に、本発明の免震プラグの製造方法は、前記凸形プッシャーの、プッシャー外径に対する加圧面のプッシャー軸線方向長さの比が、前記凹形プッシャーの、プッシャー外径に対する加圧面のプッシャー軸線方向長さの比よりも大きいことが好ましい。凸形プッシャーの、プッシャー外径(d)に対する加圧面のプッシャー軸線方向長さ(l)の比(l/d)を、凹形プッシャーの、プッシャー外径(D)に対する加圧面のプッシャー軸線方向長さ(L)の比(L/D)よりも大きくすれば、金型内で粉体材料を十分に流動させて粉体材料中に混入した空気を十分に抜くことができるので、免震プラグの空気含有率を更に低減することができるからである。
【0015】
そして、本発明の免震プラグの製造方法は、前記凸形プッシャーが、加圧方向最後端よりも加圧方向側に位置する頂辺で交差する二つの平面を加圧面として有する楔形プッシャーであることが好ましい。楔形プッシャーを凸形プッシャーとして用いれば、金型内で粉体材料を更に大きく流動させて粉体材料中に混入した空気を十分に抜くことができるので、免震プラグの空気含有率を更に低減することができるからである。
【0017】
なお、本発明において、「空気含有率」とは、免震プラグの製造に使用した粉体材料の理論比重(ρA)と免震プラグの実比重(ρB)との差(ρA−ρB)を、免震プラグの製造に使用した粉体材料の理論比重(ρA)で除し、百分率で表した値(={(ρA−ρB)/ρA}×100%)を指す。また、「端面の平坦化度」とは、免震プラグの端面の中央1箇所および外周4箇所において測定した免震プラグの高さの最大値hmaxと最小値hminとの差(hmax−hmin)を、免震プラグの両端面のそれぞれにおいて互いに直交する2方向に測定した免震プラグ径の平均値davで除し、百分率で表した値(={(hmax−hmin)/dav}×100%)を指す。
【0018】
また、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の免震プラグの製造装置は、塑性流動材および硬質充填材を含有する粉体材料を金型内で加圧成形して免震構造体用の免震プラグを製造する装置であって、前記粉体材料が充填される金型と、前記金型内の粉体材料の加圧に用いられる複数のプッシャーと、前記粉体材料の加圧に使用するプッシャーを交換するプッシャー交換機構とを備え、前記複数のプッシャーには、加圧方向最先端に対し中央部が加圧方向とは反対の方向に陥没した加圧面を有する凹形プッシャーおよび加圧方向に直交する平面を加圧面として有する平面プッシャーが含まれ、前記凹形プッシャーは、プッシャー外径に対する加圧面のプッシャー軸線方向長さの比が0.5未満であることを特徴とする。このように、プッシャー外径(D)に対する加圧面のプッシャー軸線方向長さ(L)の比(L/D)が0.5未満である凹形プッシャーを設ければ、凹形プッシャーを用いて粉体材料を加圧することにより、金型内で粉体材料を強制的に流動させて粉体材料中に混入した空気を抜くことができる。従って、空気含有率の低い免震プラグを製造することができる。また、平面プッシャーおよびプッシャー交換機構を設ければ、凹形プッシャーで加圧した粉体材料を平面プッシャーで加圧して、免震プラグの端面における成形不良の発生を抑制することができる。
なお、本発明において、「加圧方向」とは、金型内の粉体材料をプッシャーで加圧する際にプッシャーを進行させる方向を指す。また、「中央部」とは、加圧方向最先端のプッシャー径方向内側に位置する部分を指す。更に、「プッシャー外径」とは、プッシャーの、加圧面が形成されている部分の最大外径を指す。そして、「加圧面のプッシャー軸線方向長さ」とは、加圧面の加圧方向最先端を通って加圧方向に直交する平面と、加圧面の加圧方向最後端を通って加圧方向に直交する平面との間の加圧方向に沿う長さを指す。
【0019】
ここで、本発明の免震プラグの製造装置は、前記凹形プッシャーが、加圧方向最先端よりも加圧方向とは反対の方向に位置する底辺で交差する二つの平面を加圧面として有する楔溝形プッシャーであり、前記二つの平面が、鋭角側から測定して90°超の角度で交差することが好ましい。二つの平面の交差角度が90°超の楔溝形プッシャーを凹形プッシャーとして設ければ、楔溝形プッシャーを用いて粉体材料を加圧することにより、金型内で粉体材料を更に大きく流動させて粉体材料中に混入した空気を十分に抜くことができるので、免震プラグの空気含有率を更に低減することができるからである。また、2つの平面の交差角度が90°超の楔溝形プッシャーを設ければ、楔溝形プッシャーで加圧した粉体材料を平面プッシャーで加圧し、免震プラグの端面における成形不良の発生を更に抑制することができるからである。
【0020】
また、本発明の免震プラグの製造装置は、前記複数のプッシャーとして、加圧方向最後端に対し中央部が加圧方向に突出した加圧面を有する凸形プッシャーを更に含むことが好ましい。凸形プッシャーを設ければ、凹形プッシャーおよび凸形プッシャーで粉体材料を両側から加圧することにより、金型内で粉体材料を更に大きく流動させて粉体材料中に混入した空気を十分に抜くことができるので、免震プラグの空気含有率を更に低減することができるからである。
【0021】
更に、本発明の免震プラグの製造装置は、前記凸形プッシャーの、プッシャー外径に対する加圧面のプッシャー軸線方向長さの比が、前記凹形プッシャーの、プッシャー外径に対する加圧面のプッシャー軸線方向長さの比よりも大きいことが好ましい。凸形プッシャーの、プッシャー外径(d)に対する加圧面のプッシャー軸線方向長さ(l)の比(l/d)を、凹形プッシャーの、プッシャー外径(D)に対する加圧面のプッシャー軸線方向長さ(L)の比(L/D)よりも大きくすれば、凹形プッシャーおよび凸形プッシャーで粉体材料を両側から加圧した際に、金型内で粉体材料を十分に流動させて粉体材料中に混入した空気を十分に抜くことができるので、免震プラグの空気含有率を更に低減することができるからである。
【0022】
そして、本発明の免震プラグの製造装置は、前記凸形プッシャーが、加圧方向最後端よりも加圧方向側に位置する頂辺で交差する二つの平面を加圧面として有する楔形プッシャーであることが好ましい。楔形プッシャーを凸形プッシャーとして用いれば、楔形プッシャーを用いて粉体材料を加圧することにより、金型内で粉体材料を更に大きく流動させて粉体材料中に混入した空気を十分に抜くことができるので、免震プラグの空気含有率を更に低減することができるからである。
【発明の効果】
【0023】
本発明の免震プラグの製造方法および製造装置によれば、成形不良の発生を抑制しつつ空気含有率の低い免震プラグを製造することができる。また、本発明によれば、端面が平坦で空気含有率が低い、減衰性能や変位追従性に優れる免震プラグを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。ここで、本発明の免震プラグの製造方法は、塑性流動材および硬質充填材を含有する粉体材料を金型内で加圧成形して免震プラグを製造する際に、所定の形状を有するプッシャーを所定の順番で用いて粉体材料を加圧することを特徴とする。具体的には、本発明の免震プラグの製造方法は、金型内に充填された粉体材料の少なくとも一方側を、加圧方向最先端に対し中央部が加圧方向とは反対の方向に陥没した加圧面を有する凹形プッシャーを用いて加圧した後、加圧された粉体材料の、少なくとも凹形プッシャーを用いて加圧された側を、加圧方向に直交する平面を加圧面として有する平面プッシャーを用いて加圧することを特徴とする。なお、本発明の免震プラグの製造方法は、プッシャー外径に対する加圧面のプッシャー軸線方向長さの比が0.5未満である凹形プッシャーを用いることを必要とする。また、本発明の免震プラグの製造方法では、任意に、凹形プッシャーを用いて粉体材料加圧する際に、加圧方向最後端に対し中央部が加圧方向に突出した加圧面を有する凸形プッシャーと、凹形プッシャーとで粉体材料を挟み込んで加圧してもよい。
そして、本発明の免震プラグの製造方法を用いて製造された本発明の免震プラグは、免震装置の支承等として使用される免震構造体に用いられる。
【0026】
具体的には、本発明の免震プラグは、例えば
図2(a)に上面図を示し、
図2(b)に
図2(a)のI―I線に沿う断面図を示すような、略ドーナツ盤状の弾性を有する軟質板51と剛性を有する硬質板52とを交互に積層してなり、積層方向(鉛直方向)に伸びる円柱状の中空部53を有する積層体54と、積層体54の両端(上端および下端)に固定された略ドーナツ盤状のフランジ板56および円盤状の封止板55よりなる2枚のフランジと、積層体54の外周面を覆うゴム製の被覆材57とを具える免震構造体50の中空部53に圧入されて用いられる。そして、積層体54の中空部53に免震プラグ20を圧入してなる免震構造体50は、例えば地盤と構造物との間に取り付けられて用いられる。
【0027】
ここで、本発明の免震プラグの一例は、塑性流動材および硬質充填材を含有する粉体材料が充填される金型と、金型内の粉体材料の加圧に用いられる複数のプッシャーと、粉体材料の加圧に使用するプッシャーを交換するプッシャー交換機構とを備える本発明の免震プラグの製造装置の一例を用いて、例えば後述のようにして製造することができる。
【0028】
なお、免震プラグの製造装置のプッシャー交換機構は、使用する順に並列配置した複数のプッシャーに沿って金型を移動させることにより使用するプッシャーを交換し得るようにした機構であっても良いし、位置を固定した金型に対して使用する順に並列配置した複数のプッシャーを移動させることにより使用するプッシャーを交換し得るようにした機構であっても良い。更に、プッシャー交換機構は、粉体材料を加圧する方向と平行な方向に延びる回転軸線に関してプッシャーおよび金型の少なくとも一方を回転させる回転機構を有していても良い。
【0029】
また、免震プラグの製造に用いられる粉体材料を構成する塑性流動材としては、特に限定されることなく、例えば、天然ゴム、ポリブタジエンゴム、アクリルゴム、シリコンゴム、ポリウレタン、ウレタン系エラストマーなどのエストラマー成分と、ロジン樹脂、フェノール樹脂などの樹脂と、カーボンブラック、シリカなどの補強性充填材と、フタル酸、マレイン酸、クエン酸などの可塑剤と、ヒマシ油、アマニ油、ナタネ油などの軟化剤とを含む混合物が挙げられる。また、硬質充填材としては、特に限定されることなく、例えば、銅粉、ステンレス鋼粉、ジルコニウム粉、タングステン粉、青銅粉、アルミニウム粉、ニッケル粉、モリブデン粉、チタン粉、鉄粉などの金属粉体や金属化合物が挙げられる。そして、これら塑性流動材および硬質充填材の組成等は、免震プラグ20に求められる性能に応じて適宜変更することができる。
【0030】
本発明の免震プラグの製造方法の一例では、
図1(a)〜(k)に示す工程に従い、凸形プッシャーとしての楔形プッシャー3と、凹形プッシャーとしての楔溝形プッシャー4と、平面プッシャー5とを所定の順序・組合せで用いて、金型内の粉体材料を加圧成形して免震プラグを製造する。なお、粉体材料を加圧成形する際の圧力は、所望の免震プラグの性能等に応じて適宜設定することができる。
【0031】
ここで、楔形プッシャー3は、粉体材料を加圧する側の先端部の正面図を
図3(a)に、側面図を
図3(b)に、平面図を
図3(c)にそれぞれ示すように、加圧方向最後端33a,33bよりも加圧方向側(
図3(a),(b)では上側)に突出して位置する頂辺31で交差する二つの平面32a,32bを加圧面として有するプッシャーである。即ち、楔形プッシャー3では、加圧面の加圧方向最後端33a,33bに対し、加圧面の中央部(加圧方向最後端33a,33bのプッシャー径方向内側に位置する部分)が加圧方向に突出している。
そして、楔形プッシャー3の先端部では、頂辺31に直交する断面が、加圧方向に凸のV字形をしており、頂辺31の延在方向および加圧方向の双方に直交する方向(
図3(a)では左右方向)の楔形プッシャー3の幅が、頂辺31に向かって漸減している。
なお、楔形プッシャー3では、二つの平面32a,32bは、交差角度βで交差している。また、楔形プッシャー3のプッシャー外径はdであり、加圧面のプッシャー軸線方向長さはlである。
【0032】
因みに、
図3に示す楔形プッシャー3では、金型に対して楔形プッシャー3を真っ直ぐに挿入し易くする観点から頂辺31を平面視で楔形プッシャー3の中央に位置させているが、本発明の免震プラグの製造方法では、平面視における頂辺31の位置が中央からオフセットした楔形プッシャーを用いても良い。また、
図3に示す楔形プッシャー3では、頂辺31が加圧方向に直交しているが、本発明の免震プラグの製造方法では、頂辺が加圧方向に対して傾斜した楔形プッシャーを用いても良い。
【0033】
楔溝形プッシャー4は、粉体材料を加圧する側の先端部の正面図を
図4(a)に、側面図を
図4(b)に、平面図を
図4(c)にそれぞれ示すように、加圧方向最先端43a,43bよりも加圧方向(
図4(a),(b)では上方)とは反対方向に窪んで位置する底辺41(換言すれば、楔溝形プッシャー4の加圧方向最先端43a,43bよりも加圧方向後方(
図4(a),(b)では下方)に位置する底辺41)で交差する二つの平面42a,42bを加圧面として有するプッシャーである。即ち、楔溝形プッシャー4の先端部には、底辺41に直交する断面の形状がV字形の溝が形成されている。
そして、楔溝形プッシャー4の先端部では、底辺41に直交する断面が、加圧方向とは反対の方向に凸のV字形をしており、底辺41の延在方向および加圧方向の双方に直交する方向(
図4(a)では左右方向)の平面42a,42b間の距離が、底辺41に向かって漸減している。
なお、楔溝形プッシャー4では、二つの平面42a,42bは、交差角度αで交差している。また、楔溝形プッシャー4のプッシャー外径はDであり、加圧面のプッシャー軸線方向長さはLである。そして、この楔溝形プッシャー4では、プッシャー外径Dに対する加圧面のプッシャー軸線方向長さLの比L/Dが0.5未満である。また、交差角度αは、90°超である。
【0034】
因みに、
図4に示す楔溝形プッシャー4では、金型に対して楔溝形プッシャー4を真っ直ぐに挿入し易くする観点から底辺41を平面視で楔溝形プッシャー4の中央に位置させているが、本発明の免震プラグの製造方法では、平面視における底辺41の位置が中央からオフセットした楔溝形プッシャーを用いても良い。また、
図4に示す楔溝形プッシャー4では、底辺41が加圧方向に直交しているが、本発明の免震プラグの製造方法では、底辺が加圧方向に対して傾斜した楔溝形プッシャーを用いても良い。
【0035】
平面プッシャー5は、加圧方向に直交する平面を加圧面として有するプッシャーである。なお、平面プッシャー5の平面の形状は、粉体材料が充填される金型の中空部の加圧方向に直交する断面の形状と略等しい形状である。
因みに、楔形プッシャー3のプッシャー外径d、楔溝形プッシャー4のプッシャー外径D、平面プッシャー5のプッシャー外径および金型1の内径は略等しい。
【0036】
そして、
図1(a)〜(k)に製造工程を示す本発明の免震プラグの製造方法の一例では、まず、
図1(a)〜(h)に示すように、円筒状の金型1の内部に投入した粉体材料2を、加圧方向に対向させた一対の楔形プッシャー3および楔溝形プッシャー4で両側から挟んで加圧する。
具体的には、最初に、
図1(a)に示すように、金型1内に充填した粉体材料2の一方側(
図1では上側)から楔形プッシャー3を金型1内に挿入すると共に、粉体材料2の他方側(
図1では下側)から楔溝形プッシャー4を金型1内に挿入し、粉体材料2を、加圧方向に対向させた楔形プッシャー3および楔溝形プッシャー4で両側から挟んで加圧する。次に、
図1(b)に示すように、楔形プッシャー3および楔溝形プッシャー4を金型1から抜き取った後、
図1(c)に示すように、楔形プッシャー3および楔溝形プッシャー4を例えば90°回転させ、90°回転させた楔形プッシャー3および楔溝形プッシャー4で粉体材料2を両側から挟んで再び加圧する。その後、
図1(d)に示すように、楔形プッシャー3および楔溝形プッシャー4を金型1から抜き取る。そして、
図1(e)〜(h)に示すように、楔形プッシャー3および楔溝形プッシャー4を例えば90°回転させ、90°回転させた楔形プッシャー3および楔溝形プッシャー4で粉体材料2を両側から挟んで再び加圧する操作を更に2回繰り返す。即ち、楔形プッシャー3の頂辺31の延在方向および楔溝形プッシャー4の底辺41の延在方向を一回前の加圧時とは異ならせつつ、粉体材料2を合計4回加圧する(予備加圧成形工程)。
【0037】
なお、この予備加圧成形工程では、粉体材料2を、一方側から楔形プッシャー3で加圧し、他方側から楔溝形プッシャー4で加圧している。従って、加圧された粉体材料2の端面(受圧面)の形状は、一方側が楔形プッシャー3の加圧面の形状に対応した形状となり、他方側が楔溝形プッシャー4の加圧面の形状に対応した形状となる。即ち、予備加圧成形工程で加圧された粉体材料2は、一方側の端面が、角度βで交差する二つの平面よりなり、他方側の端面が、角度αで交差する二つの平面よりなる。
【0038】
最後に、この一例の免震プラグの製造方法では、
図1(i)〜(k)に示すように、予備加圧成形工程において楔形プッシャー3および楔溝形プッシャー4を用いて加圧された粉体材料2を、加圧方向に対向させた一対の平面プッシャー5,5で両側から挟んで加圧する。具体的には、まず、
図1(i)に示すように、粉体材料2の両側から平面プッシャー5,5を金型1内に挿入して粉体材料2を加圧する。次に、
図1(j)に示すように、二つの平面プッシャー5,5を金型1から抜き取る(最終加圧成形工程)。そして、加圧成形された粉体材料2よりなる免震プラグ20を金型1から取り外す。
【0039】
そして、この一例の免震プラグの製造方法によれば、予備加圧成形工程において、粉体材料2の他方側を楔溝形プッシャー4で加圧しているので、金型1内で粉体材料2を強制的に流動させて粉体材料2中に混入した空気を抜くことができる。従って、空気含有率の低い免震プラグ20を製造することができる。なお、楔溝形プッシャー4を用いることで粉体材料2を強制的に流動させることができる理由は、明らかではないが、楔溝形プッシャー4のプッシャー外径Dに対する加圧面のプッシャー軸線方向長さLの比L/Dが0.5未満であるので、傾斜が緩やかな加圧面に沿って粉体材料2を楔溝形プッシャー4の加圧面の加圧方向後端側(底辺41側)まで十分に流動させることができるからであると推察される。即ち、楔溝形プッシャー4は、比L/Dが0.5未満であり、加圧面となる二つの平面42a,42bの交差角度αが鈍角(90°超)であるので、楔溝形プッシャー4を用いれば、傾斜が緩やかな平面42a,42bに沿って粉体材料2を楔溝形プッシャー4の底辺41側まで十分に流動させることができると推察される。また、金型内で粉体材料が強く流動させられることにより粉体材料内の空気が抜けて免震プラグの空気含有率が低くなるのは、粉体材料の流動により粉体材料内の硬質充填材同士が密に配置されるためであると推察される。
【0040】
また、この一例の免震プラグの製造方法では、予備加圧成形工程において粉体材料2の他方側を楔溝形プッシャー4で加圧した後、最終加圧成形工程において粉体材料2の他方側(楔溝形プッシャー4で加圧された側)を平面プッシャー5で加圧し、免震プラグ20を製造している。従って、この一例の免震プラグの製造方法では、免震プラグ20の端面(特に他方側(
図1では下側)の端面)における成形不良の発生を抑制することができる。なお、予備加圧成形工程と最終加圧成形工程とを順次実施することにより免震プラグの端面における成形不良の発生を抑制することができる理由は、明らかではないが、以下の通りであると推察される。即ち、楔溝形プッシャー4の、プッシャー外径Dに対する加圧面のプッシャー軸線方向長さLの比L/Dは0.5未満であり、予備加圧成形工程において楔溝形プッシャー4で加圧された粉体材料2の受圧面の傾斜は緩やかになるので、最終加圧成形工程において平面プッシャー5で粉体材料2を加圧した際に、粉体材料2が金型1の内周面側(即ち、免震プラグ20の端面の外周縁側)まで良好に流動し、成形不良の発生を抑制することができると推察される。換言すれば、楔溝形プッシャー4は、比L/Dが0.5未満であり、加圧面となる二つの平面42a,42bの交差角度αが鈍角であるので、比L/Dが0.5以上(交差角度αが90°以下)の楔溝形プッシャーを用いた場合と比較し、傾斜が緩やかな(平面の交差角度αが鈍角の)粉体材料2の受圧面を平面プッシャー5で加圧して粉体材料2を金型1の内周面側まで良好に流動させることができると推察される。
【0041】
ここで、この一例の免震プラグの製造方法では、予備加圧成形工程において粉体材料2の一方側を楔形プッシャー3で加圧した後、最終加圧成形工程において粉体材料2の一方側(楔形プッシャー3で加圧された側)を平面プッシャー5で加圧している。そのため、最終加圧成形工程において、粉体材料2の一方側では、粉体材料2が受圧面の中央部側(楔形プッシャー3の頂辺31に対応する位置)に向かって流れ込む。従って、この一例の免震プラグの製造方法では、免震プラグ20の一方側の端面においても、端面の外周部の崩れ(欠け)の発生を抑制し、成形不良の発生を抑制することができる。
【0042】
また、この一例の免震プラグの製造方法では、予備加圧成形工程において、楔形プッシャー3および楔溝形プッシャー4で粉体材料2を挟み込んで加圧しているので、金型1内で粉体材料2を強制的に流動させ、粉体材料2内の空気を十分に抜くことができる。更に、この一例の免震プラグの製造方法では、予備加圧成形工程において、楔形プッシャー3の頂辺31の延在方向および楔溝形プッシャー4の底辺41の延在方向を異ならせつつ粉体材料2を複数回(
図1では4回)加圧しているので、金型1内での粉体材料2の流動を強く促し、粉体材料2内の空気を十分に抜くことができる。
【0043】
因みに、予備加圧成形工程では、粉体材料2を楔溝形プッシャー4の加圧面の加圧方向後端側(底辺41側)まで十分に流動させる観点からは、加圧時に、楔形プッシャー3の頂辺31の延在方向と楔溝形プッシャー4の底辺41の延在方向とを一致させることが好ましい。しかし、本発明の免震プラグの製造方法では、頂辺31の延在方向と底辺41の延在方向とを異ならせた状態で粉体材料2を加圧しても良い。また、粉体材料2を加圧する回数は、製造する免震プラグの直径や粉体材料の組成に応じて適宜変更しても良い。更に、楔形プッシャー3および楔溝形プッシャー4を回転させる角度は、頂辺31および底辺41の延在方向を変えることができれば(即ち、180°の整数倍以外であれば)任意の角度とすることができるが、金型1内で粉体材料2を均等に隅々まで流動させる観点からは、90°とすることが好ましい。なお、本発明の免震プラグの製造方法では、楔形プッシャーおよび楔溝形プッシャーの位置を固定した状態で、内部に粉体材料を充填した金型を回転させることにより、頂辺および底辺の延在方向を変えても良い。
【0044】
上述した通り、この一例の免震プラグの製造方法によれば、予備加圧成形工程および最終加圧成形工程を順次実施することにより、金型1内で粉体材料2を強制的に流動させて粉体材料2中に混入した空気を抜くことができるので、空気含有率の低い免震プラグ20を製造することができる。また、免震プラグ20の端面における成形不良の発生を抑制することができる。従って、成形不良の発生を抑制しつつ空気含有率の低い免震プラグを製造することができる。
そして、上記一例の免震プラグの製造方法を用いて製造した免震プラグは、空気含有率
が2.8%以下となり、また、端面の平坦化度が例えば1.0%以下、好ましくは0.8%以下となる。この免震プラグは、免震構造体に用いた際に非常に良好な減衰性能や変位追従性を発揮する。
【0045】
ここで、予備加圧成形工程において粉体材料を金型内で良好に流動させ、免震プラグの空気含有率を低減する観点からは、凹形プッシャー(上記一例では楔溝形プッシャー4)のプッシャー外径Dに対する加圧面のプッシャー軸線方向長さLの比L/Dは、0.134以上であることが好ましく、0.182以上であることが更に好ましく、0.289以下であることが特に好ましい。比L/Dが小さすぎる場合、凹形プッシャーの先端部の形状が平面プッシャーに近づき、金型内で粉体材料を十分に流動させることができなくなる虞があるからである。また、比L/Dを0.289以下とすれば、成形不良の発生の抑制と、空気含有率の低減とを更に高いレベルで両立させることができるからである。
【0046】
また、予備加圧成形工程において粉体材料を金型内で良好に流動させ、免震プラグの空気含有率を低減する観点からは、凹形プッシャーとしての楔溝形プッシャーの平面の交差角度αは、150°以下であることが好ましく、140°以下であることが更に好ましく、120°以上であることが特に好ましい。交差角度αが大きすぎる場合、楔溝形プッシャーの先端部の形状が平面プッシャーに近づき、金型内で粉体材料を十分に流動させることができなくなる虞があるからである。また、交差角度αを120°以上とすれば、成形不良の発生の抑制と、空気含有率の低減とを更に高いレベルで達成することができるからである。
【0047】
更に、予備加圧成形工程において粉体材料を金型内で良好に流動させ、免震プラグの空気含有率を低減する観点からは、凸形プッシャー(上記一例では楔形プッシャー3)のプッシャー外径dに対する加圧面のプッシャー軸線方向長さlの比l/dは、凹形プッシャー(上記一例では楔溝形プッシャー4)の比L/Dよりも大きいことが好ましい。比l/dが比L/Dよりも大きい場合、粉体材料を凹形プッシャーの加圧面の加圧方向後端側まで十分に流動させ、粉体材料から空気を十分に抜くことができるからである。
【0048】
また、成形不良の発生の抑制と、空気含有率の低減とを更に高いレベルで達成する観点からは、凸形プッシャー(上記一例では楔形プッシャー3)のプッシャー外径dに対する加圧面のプッシャー軸線方向長さlの比l/dは、0.50以下であることが好ましく、0.134以上であることが更に好ましく、0.50未満であることが特に好ましく、0.233以上であることがより好ましい。比l/dが大きすぎる場合、凸形プッシャーで加圧した側を平面プッシャーで加圧した際に、粉体材料が中央部まで流れ込まず、免震プラグの端面の中央部に窪み(成形不良)が発生する場合があるからである。また、比l/dが小さすぎる場合、凸形プッシャーの先端部の形状が平面プッシャーに近づき、金型内で粉体材料を十分に流動させることができなくなる虞があるからである。
【0049】
更に、成形不良の発生の抑制と、空気含有率の低減とを高いレベルで達成する観点からは、凸形プッシャーとしての楔形プッシャーの平面の交差角度βは、90°以上であることが好ましく、150°以下であることが更に好ましく、90°超であることが特に好ましく、130°以下であることがより好ましい。交差角度βが小さすぎる場合、楔形プッシャーで加圧した側を平面プッシャーで加圧した際に、粉体材料が中央部まで流れ込まず、免震プラグの端面の中央部に窪み(成形不良)が発生する場合があるからである。また、交差角度βが大きすぎる場合、楔形プッシャーの先端部の形状が平面プッシャーに近づき、金型内で粉体材料を十分に流動させることができなくなる虞があるからである。
【0050】
以上、図面を参照して本発明の実施形態を説明したが、本発明の免震プラグの製造方法、免震プラグの製造装置および免震プラグは上述した一例に限定されることは無く、本発明の免震プラグの製造方法、免震プラグの製造装置および免震プラグには適宜変更を加えることができる。
【0051】
具体的には、本発明の免震プラグの製造方法では、粉体材料をプッシャーで両側から加圧しなくても良く、例えば
図5(a)〜(e)に示すように、一端が閉止された有底円筒状の金型61に充填した粉体材料2を一方側から加圧して免震プラグを製造しても良い。ここで、この他の例の免震プラグの製造方法では、具体的には、
図5(a)に示すように、まず、金型61内に充填した粉体材料2の一方側(
図5では上側)から、凹形プッシャーとしての楔溝形プッシャー4を金型61内に挿入し、粉体材料2を加圧する(予備加圧成形工程)。次に、
図5(b)に示すように、楔溝形プッシャー4を金型61から抜き取った後、
図5(c)に示すように、粉体材料2の一方側(
図6では上側)から平面プッシャー5を金型61内に挿入し、粉体材料2を再び加圧する(最終加圧成形工程)。そして最後に、
図5(d)に示すように、平面プッシャー5を金型61から抜き取ることにより、
図5(e)に示すような免震プラグ20を得ることができる。
【0052】
また、本発明の免震プラグの製造方法および製造装置では、凹形プッシャーとして、
図7(a),(b)示すプッシャーを用いてもよい。また、本発明の免震プラグの製造方法および製造装置では、凸形プッシャーとして、
図7(c),(d)に示すプッシャーを用いてもよい。
【0053】
ここで、
図7(a)に正面図を示すプッシャー4Aは、円錐形状の窪みよりなる加圧面42Aを有するすり鉢形プッシャーである。そして、このすり鉢形プッシャー4Aは、窪みの底点41Aが、加圧方向最先端縁43Aよりも加圧方向とは反対の方向に位置している。即ち、すり鉢形プッシャー4Aは、加圧方向最先端に対し中央部が加圧方向とは反対の方向に陥没した加圧面42Aを有している。また、このすり鉢形プッシャー4Aは、プッシャー外径Dに対する加圧面42Aのプッシャー軸線方向長さLの比L/Dが0.5未満である。
【0054】
図7(b)に正面図を示すプッシャー4Bは、階段状に縮径する略円柱状の窪みよりなる加圧面42Bを有するプッシャーである。そして、このプッシャー4Bは、窪みの底面41Bが、加圧方向最先端縁43Bよりも加圧方向とは反対の方向に位置している。即ち、プッシャー4Bは、加圧方向最先端に対し中央部が加圧方向とは反対の方向に陥没した加圧面42Bを有している。また、このプッシャー4Bは、プッシャー外径Dに対する加圧面42Bのプッシャー軸線方向長さLの比L/Dが0.5未満である。
【0055】
図7(c)に正面図を示すプッシャー3Aは、円錐形状の突出部よりなる加圧面32Aを有する円錐形プッシャーである。そして、この円錐形プッシャー3Aは、突出部の頂点31Aが、加圧面32Aの加圧方向最先後端縁33Aよりも加圧方向側に位置している。即ち、円錐形プッシャー3Aは、加圧方向最後端に対し中央部が加圧方向に突出した加圧面32Aを有している。
【0056】
図7(d)に正面図を示すプッシャー3Bは、階段状に縮径する略円柱状の突出部よりなる加圧面32Bを有するプッシャーである。そして、このプッシャー3Bは、突出部の頂面31Bが、加圧面32Bの加圧方向最後端縁33Bよりも加圧方向側に位置している。即ち、プッシャー3Bは、加圧方向最後端に対し中央部が加圧方向に突出した加圧面32Bを有している。
【0057】
また、本発明の免震プラグの製造方法では、予備加圧成形工程において、粉体材料を、2つの凹形プッシャーで両側から挟み込んで加圧してもよい。更に、本発明の免震プラグの製造方法では、予備加圧成形工程において粉体材料の一方側のみを凹形プッシャーで加圧し、粉体材料の他方側は任意の形状のプッシャーを用いて加圧してもよい。そして、予備加圧成形工程において粉体材料の他方側を任意の形状のプッシャーで加圧した場合には、最終加圧成形工程において、粉体材料の他方側を平面プッシャー以外のプッシャーで加圧し、加圧後に切断等の手段を用いて他方側の端面を平坦化してもよい。
【実施例】
【0058】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0059】
(実施例1)
表1に示す組成を有する塑性流動材および硬質充填材を含む粉体材料を用いて、内径16cmの円筒状の金型内で免震プラグを製造した。
具体的には、表2に示すように、予備加圧成形工程として、表2に示す形状の楔形プッシャーおよび楔溝形プッシャーで粉体材料を両側から挟み込んで加圧した。その後、最終加圧成形工程として、粉体材料を2つの平面プッシャーで両側から挟み込んで合計1回加圧した。なお、予備加圧成形工程では、楔形プッシャーおよび楔溝形プッシャーを90°ずつ回転させながら粉体材料を合計4回加圧した。
そして、得られた免震プラグについて、空気含有率、端面の平坦化度、外観および減衰性能を以下の方法で評価した。結果を表2に示す。
【0060】
【表1】
【0061】
*1 不定形粉末、平均粒径40μm
*2 天然ゴムと合成ゴムのブレンド
【0062】
<空気含有率>
免震プラグの製造に使用した粉体材料の理論比重(ρ
A)と免震プラグの実比重(ρ
B)とを求めた。そして、免震プラグの製造に使用した粉体材料の理論比重(ρ
A)と免震プラグの実比重(ρ
B)との差(ρ
A−ρ
B)を免震プラグの製造に使用した粉体材料の理論比重(ρ
A)で除した値を百分率で表して空気含有率ε(={(ρ
A−ρ
B)/ρ
A}×100%)とした。なお、免震プラグの実比重は、下記式(1)を用いて算出した。また、免震プラグの製造に使用した粉体材料の理論比重(ρ
A)を算出したところ、5.204g/cm
3であった。
ρ
B=W
B/V
B=W
B/(A
B×h
av) ・・・(1)
ここで、式(1)中、W
Bは免震プラグの質量、V
Bは免震プラグの体積、A
Bは免震プラグの断面積、h
avは免震プラグの平均高さである。なお、A
Bは、免震プラグ径の平均値d
avを用いて算出することができ(A
B=(d
av/2)
2×π)、免震プラグの平均径d
avは、
図6に示すように免震プラグ20の両端面(上面および下面)のそれぞれにおいて互いに直交する2方向にノギスで測定した免震プラグ径(d
1,d
2,d
3,d
4)の平均値(d
av=(d
1+d
2+d
3+d
4)/4)である。また、h
avは、
図6に示す免震プラグ20の端面の外周4箇所においてノギスで測定した免震プラグの高さ(h
1,h
2,h
3,h
4)の平均値(h
av=(h
1+h
2+h
3+h
4)/4)である。
<端面の平坦化度>
製造した免震プラグについて、
図6に示すように免震プラグ20の端面の外周4箇所および中央1箇所の合計5箇所において免震プラグの高さ(h
1,h
2,h
3,h
4,h
5)をノギスで測定した。また、
図6に示すように、免震プラグ20の両端面(上面および下面)のそれぞれにおいて互いに直交する2方向に免震プラグ径(d
1,d
2,d
3,d
4)をノギスで測定した。そして、測定した5箇所の免震プラグの高さの最大値h
maxと最小値h
minとの差(h
max−h
min)を、測定した免震プラグ径の平均値d
av(=(d
1+d
2+d
3+d
4)/4)で除した値を百分率で表して平坦化度f(={(h
max−h
min)/d
av}×100%)とした。
<免震プラグの外観>
製造した免震プラグの外観を目視で観察し、目立った欠損(成形不良)が無い場合を「○(非常に良好)」、欠損はあるが著しいものではない場合を「△(良好)」、欠損が著しくて成形性が非常に悪い場合を「×(不良)」として評価した。
<減衰性能>
製造した免震プラグを圧入した免震構造体に対し、動的試験機を用いて鉛直方向に基準面圧をかけた状態で水平方向に加振して規定変位のせん断変形を生じさせた。なお、加振変位は、積層体のゴム(軟質板)総厚さを100%として、歪50〜250%とし、加振周波数は0.33Hzとし、垂直面圧は15MPaとした。
図8に、水平方向の変形変位(δ)と免震構造体の水平方向荷重(Q)との関係の一例を示す。
図8中のヒステリシス曲線で囲まれた領域の面積ΔWが広くなるほど、振動のエネルギーを多く吸収できることを意味する。ここでは、簡便のため、歪100%における切片荷重Q
d(変位0における水平荷重値)を免震プラグ断面積A
Bで除した値τp(=Q
d/A
B)で免震プラグの減衰性能を評価した。なお、切片荷重Q
dは、ヒステリシス曲線が縦軸と交差する点での荷重Q
d1、Q
d2を用いて、下記式(2)から計算した。
Q
d=(Q
d1+Q
d2)/2 ・・・(2)
τpが大きくなる程、ヒステリシス曲線で囲まれた領域の面積が広くなり、減衰性能が優れていることを示す。
【0063】
(
参考例
1,2)
予備加圧成形工程において使用した楔形プッシャーおよび楔溝形プッシャーの形状を表2に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして免震プラグを製造した。
そして、得られた免震プラグについて、空気含有率、端面の平坦化度、外観および減衰性能を実施例1と同様の方法で評価した。結果を表2に示す。
【0064】
(
参考例
3)
予備加圧成形工程の操作を表2に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして免震プラグを製造した。
具体的には、表2に示すように、予備加圧成形工程として、2つの楔溝形プッシャーで粉体材料を両側から挟み込んで加圧した。その後、最終加圧成形工程として、粉体材料を2つの平面プッシャーで両側から挟み込んで合計1回加圧した。なお、予備加圧成形工程では、楔溝形プッシャーを90°ずつ回転させながら粉体材料を合計4回加圧した。
そして、得られた免震プラグについて、空気含有率、端面の平坦化度、外観および減衰性能を実施例1と同様の方法で評価した。結果を表2に示す。
【0065】
(従来例1)
表1に示す組成を有する塑性流動材および硬質充填材を含む粉体材料を用いて、内径16cmの円筒状の金型内で免震プラグを製造した。
具体的には、表2に示すように、2つの平面プッシャーで粉体材料を両側から挟み込んで加圧した。
そして、得られた免震プラグについて、空気含有率、端面の平坦化度、外観および減衰性能を実施例1と同様の方法で評価した。結果を表2に示す。
【0066】
(比較例1)
予備加圧成形工程において使用した楔形プッシャーおよび楔溝形プッシャーの形状を表2に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして免震プラグを製造した。
そして、得られた免震プラグについて、空気含有率、端面の平坦化度、外観および減衰性能を実施例1と同様の方法で評価した。結果を表2に示す。
【0067】
【表2】
【0068】
表2より、実施例1
、参考例1〜3の免震プラグは、従来例1の免震プラグに比べ、空気含有率が低いので、優れた減衰性能を発揮し得ることが分かる。また、実施例1
、参考例1〜3の免震プラグは、比較例1の免震プラグに比べ、端面の平坦化度の値が小さく(即ち、端面が平坦であり)、成形不良の発生が抑制されていると共に、空気含有率が低いので、優れた減衰性能を発揮し得ることが分かる。特に、実施例1の免震プラグは、
参考例1〜3の免震プラグに比べ、端面の平坦化度の値が小さく(即ち、端面が平坦であり)、成形不良の発生が抑制されていると共に、空気含有率が低いことが分かる。