(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
造粒粒状物を被覆するワックス類の量が、当該造粒粒状物100重量部に対して0.5〜10重量部である請求項1ないし3の何れかの項記載の水稲育苗箱処理用農薬粒状組成物。
造粒粒状物が、1種以上の農薬活性成分と、粉状の無機担体、界面活性剤および/またはバインダーよりなる群から選ばれた成分の1種または2種以上を含有する請求項1ないし5の何れかの項記載の水稲育苗箱処理用農薬粒状組成物。
農薬粒状組成物50gを、水中に没した時に付着する気泡の総体積が、大気圧下、20℃で5〜25mLである請求項1ないし7の何れかの項記載の水稲育苗箱処理用農薬粒状組成物。
少なくとも1種以上の農薬活性成分を含有する粉状農薬組成物を造粒して、造粒粒状物とし、次いで得られた造粒粒状物を、ワックス類および疎水性微粉末で被覆することを特徴とする水稲育苗箱処理用農薬粒状組成物の製造方法であって、ワックス類が、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、モンタン酸またはこれらのエステル類、ジアルキルケトン類、カルナバワックス、キャンデリラワックスおよびライスワックスよりなる群から選ばれたものであり、疎水性微粉末が、疎水性ホワイトカーボンおよび酸化アルミニウムよりなる群から選ばれたものである水稲育苗箱処理用農薬粒状組成物の製造方法。
造粒粒状物を、ワックス類および疎水性微粉末で被覆するに当たり、まず、ワックス類を融解させた後これで被覆し、次いで疎水性微粉末で被覆する請求項第9項ないし第11項の何れかの項記載の水稲育苗箱処理用農薬粒状組成物の製造方法。
請求項第1項ないし第8項の何れかの項記載の水稲育苗箱処理用農薬粒状組成物を、水稲を水稲育苗箱に播種するのと同時に散布することを特徴とする水稲への農薬投与方法。
請求項第1項ないし第8項の何れかの項記載の水稲育苗箱処理用農薬粒状組成物を、予め水稲育苗箱用培土に散布し、次いでこの培土中に水稲を播種することを特徴とする水稲への農薬投与方法。
【背景技術】
【0002】
現在、農薬製剤としては、粒剤、粉剤、乳剤、水和剤、フロアブル剤、粒状水和剤等が広く知られている。また近年は、農薬処理の省力化、減農薬が叫ばれていると同時に、散布者への曝露量低減を考慮した薬剤および処理方法が求められている。
【0003】
このような状況下、水稲の農薬処理として育苗箱処理が広く普及している。この育苗箱処理は、従来一般的であった、移植前数日から移植当日の稲が移植できる大きさに育った育苗箱に農薬処理する方法に代え、播種と同時に農薬処理をする方法で、省力化に役立つものである。
【0004】
しかしながら、播種と同時に農薬を含有する粒剤で処理する場合、植物体として弱い育苗期に農薬成分と接することになるため、薬害が発生する場合があった。この薬害の問題を回避するために、多くの制御技術が開示されているが、効果が不十分であったり、所定の農薬処理の効果が得られない等の問題が生じることがあった。
【0005】
例えば、従来の農薬活性成分の溶出を制御する技術として、農薬活性成分、ワックスや脂肪酸等の25℃で固体の疎水性物質、有機酸等の酸性物質および固体担体を含み、造粒水を加えて混練して造粒した固型農薬製剤が、特許文献1に記載されている。
【0006】
他にも、農薬活性成分、脂肪酸および/または脂肪酸誘導体、無機物質を混合・造粒し、該脂肪酸および/または脂肪酸誘導体の融点より低い温度で加熱処理する農薬粒剤が特許文献2に記載されている。
【0007】
また、農薬活性成分、融点50℃以上の疎水性物質および吸油能を有する物質を含有し、該融点50℃以上の疎水性物質を溶融し、融点以上の加熱条件下で押し出し造粒する農薬組成物が特許文献3に記載されている。
【0008】
さらに、農薬活性成分、融点が60℃以上で農薬活性成分の融点未満且つ酸価が10−50mgKOH/gであるエステル系組成物質、および無機系希釈担体を加熱混合し、造粒して得られる徐放性農薬製剤が特許文献4に記載されている。
【0009】
これらの農薬組成物は、溶出の制御に必須な原料として、ワックスや固体の脂肪酸類等を、農薬活性成分を含むその他の原料と均一に混合して成形したものである。このような構成の組成物は、疎水性物質が農薬組成物内でマトリックスを形成しているが、マトリックスの構造が弱いと溶出制御の効果が得られず、一方、多量の疎水性物質を含有させて強固なマトリックスを形成させると、農薬成分の溶出は制御されるものの、反対にマトリックスが強固過ぎて農薬成分の全量が効率よく溶出できないという問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、従来の農薬活性成分の溶出を制御する技術の問題点を解決しようとするものであり、育苗箱に播種と同時に散布処理するか、あるいは育苗箱用培土に混合して使用する所謂育苗前処理の時期から移植時の間に処理をした場合であっても、期待した農薬の防除効果が得られ、且つ、長い残効性を有し、且つ薬害のない水稲育苗箱処理用農薬粒状組成物を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題を解決すべく研究を行った結果、農薬粒状組成物を水稲育苗箱に処理した時、特に、播種と同時に処理をする場合や、育苗箱用培土に混合して使用する場合において、発芽した稲に薬害が生じず、且つ所定の防除効果が得られる農薬粒状組成物とするためには、優れた徐放性が要求されることを知った。そして、このような徐放性を農薬粒状組成物に付与するには、1種以上の農薬成分を含む、造粒された粒状組成物の表面を熱可塑性樹脂と疎水性微粉末を被覆することによって、当該組成物が水中に没した時に空気層を形成し、これが徐放性に寄与できるようにすることが有効であることを見出し、本発明に至った。
【0013】
即ち、本発明は、以下の内容のものである。
(1)少なくとも1種以上の農薬活性成分を含有する造粒粒状物を、ワックス類および疎水性微粉末で被覆することにより得られる水稲育苗箱処理用農薬粒状組成物、
(2)ワックス類の融点が、50℃〜120℃である(1)の水稲育苗箱処理用農薬粒状組成物、
(3)ワックス類が、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、モンタン酸またはこれらのエステル類、ジアルキルケトン類、カルナバワックス、キャンデリラワックスおよびライスワックスよりなる群から選ばれたものである(1)または(2)の水稲育苗箱処理用農薬粒状組成物、
(4)疎水性微粉末が疎水性ホワイトカーボンである、(1)ないし(3)の水稲育苗箱処理用農薬粒状組成物、
(5)造粒粒状物を被覆するワックス類の量が、当該造粒粒状物100重量部に対して0.5〜10重量部である(1)ないし(4)の水稲育苗箱処理用農薬粒状組成物、
(6)1種以上の農薬活性成分が、殺菌剤、殺虫剤もしくは植物成長調節剤より選ばれる成分である、(1)ないし(5)の水稲育苗箱処理用農薬粒状組成物、
(7)造粒粒状物が、1種以上の農薬活性成分と、粉状の無機担体、界面活性剤および/またはバインダーよりなる群から選ばれた成分の1種または2種以上を含有する(1)ないし(6)の水稲育苗箱処理用農薬粒状組成物、
(8)造粒粒状物の平均粒径が、0.5mmないし1.5mmである(1)ないし(7)の水稲育苗箱処理用農薬粒状組成物、
(9)農薬粒状組成物50gを、水中に没した時に付着する気泡の総体積が、大気圧下、20℃で5〜25mLである(1)ないし(8)の水稲育苗箱処理用農薬粒状組成物、
(10)少なくとも1種以上の農薬活性成分を含有する粉状農薬組成物を造粒して、造粒粒状物とし、次いで得られた造粒粒状物を、ワックス類および疎水性微粉末で被覆することを特徴とする水稲育苗箱処理用農薬粒状組成物の製造方法、
(11)造粒を湿式造粒で行う(10)の水稲育苗箱処理用農薬粒状組成物の製造方法、
(12)湿式造粒が押し出し造粒であり、使用するスクリーンの孔径が、0.5〜1.5mmの細孔である(11)の水稲育苗箱処理用農薬粒状組成物の製造方法、
(13)造粒粒状物を、ワックス類および疎水性微粉末で被覆するに当たり、まず、融解したワックス類で被覆し、次いで疎水性微粉末で被覆する(10)ないし(12)の何れかの水稲育苗箱処理用農薬粒状組成物の製造方法、
(14)ワックス類の融解を、熱可塑性樹脂の融点である50℃〜120℃以上に加温して行う(13)の水稲育苗箱処理用農薬粒状組成物の製造方法、
(15)(1)ないし(9)の何れかの水稲育苗箱処理用農薬粒状組成物を、水稲を水稲育苗箱に播種するのと同時に散布することを特徴とする水稲への農薬処理方法、
(16)(1)ないし(9)の何れかの水稲育苗箱処理用農薬粒状組成物を、予め水稲育苗箱用培土に散布し、次いでこの培土中に水稲を播種することを特徴とする水稲への農薬処理方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、例えば、育苗箱において稲の播種と同時に散布処理をしても、また、播種に先立ち培土に散布処理しても苗に薬害を与えることなく、かつ長い残効性をもって期待した農薬の効果が得られる水稲育苗箱処理用農薬粒状組成物が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の水稲育苗箱処理用農薬粒状組成物(以下、「農薬粒状組成物」という)は、少なくとも1種以上の農薬活性成分を含有する造粒粒状物の表面を、ワックス類と疎水性微粉末とで被覆することにより得られるものである。
【0016】
原料である造粒粒状物は、種々の方法により得ることができるが、例えば、1種以上の農薬活性成分と、必要により界面活性剤、バインダーおよび無機担体等を配合した粉状農薬組成物を、湿式造粒法により押し出し造粒等することにより得られる。より具体的には、所定の粒度に調整した農薬活性成分と、必要名界面活性剤、バインダーおよび無機担体を均一に混合した後、適量の水を加えて混練し、細孔を開けたスクリーンより押し出して成型し、乾燥して造粒粒状物とする。この際用いる細孔の大きさは、通常0.5mm〜1.5mmが好ましい。
【0017】
上記のようにして得られる造粒粒状物の粒径は、特に制約はないが農薬粒状組成物としての利用しやすさから、平均粒径が0.5mmないし1.5mmであることが好ましく、特に、0.7mm〜1.5mmであることが好ましい。このような粒径の造粒粒状物は、造粒、乾燥後篩い分けすることにより得られる。
【0018】
本発明において、造粒粒状物に配合される農薬活性成分としては、例えば、殺菌剤では、3’−イソプロポキシ−2−メチルベンズアニリド(メプロニル)、α,α,α−トリフルオロ−3’−イソプロポキシ−O−トルアニリド(フルトラニル)、3,4,5,6−テトラクロロ−N−(2,3−ジクロロフェニル)フタルアミド酸(テクロフタラム)、1−(4−クロロベンジル)−1−シクロペンチル−3−フェニル尿素(ペンシクロン)、6−(3,5−ジクロロ−4−メチルフェニル)−3(2H)−ピリダジノン(ジクロメジン)、メチル=N−(2−メトキシアセチル)−N−(2,6−キシリル)−DL−アラニナ−ト(メタラキシル)、(E)−4−クロロ−α,α,α−トリフルオロ−N−(1−イミダゾール−1−イル−2−プロポキシエチリデン)−o−トルイジン(トリフルミゾール)、〔5−アミノ−2−メチル−6−(2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシシクロヘキシロキシ)テトラヒドロピラン−3−イル〕アミノ−α−イミノ酢酸(カスガマイシン)、バリダマイシン、3−アリルオキシ−1,2−ベンゾイソチアゾール−1,1−ジオキシド(プロベナゾール)、ジイソプロピル−1,3−ジチオラン−2−イリデン−マロネート(イソプロチオラン)、5−メチル−1,2,4−トリアゾロ[3,4−b]ベンゾチアゾール(トリシクラゾール)、1,2,5,6−テトラヒドロピロロ[3,2,1−ij]キノリン−4−オン(ピロキロン)、5−エチル−5,8−ジヒドロ−8−オキソ[1,3]ジオキソロ[4,5−g]キノリン−7−カルボン酸(オキソリニック酸)、(Z)−2’−メチルアセトフェノン=4,6−ジメチルピリミジン−2−イルヒドラゾン、4,5,6,7−テトラクロロフタリド(フェリムゾン)、3−(3,5−ジクロロフェニル)−N−イソプロピル−2,4−ジオキソイミダゾリジン−1−カルボキサミド(イプロジオン)、1,4−ビス−(2,2,2−トリクロル−1−ホルムアミドエチル)−ピペラジン(トリホリン)、(2E)−2−(メトキシイミノ)−2−[2−[(3E,5E,6E)−5−(メトキシイミノ)−4,6−ジメチル−2,8−ジオキサ−3,7−ジアザノナ−3,6−ジエン−1−イル]フェニル]−N−メチルアセトアミド(オリサストロビン)などが挙げられ、また、殺虫剤としては、2,3−ジヒドロ−2,2−ジメチル−7−ベンゾ[b]フラニル=N−ジブチルアミノチオ−N−メチルカルバマート(カルボスルファン)、エチル=N−[2,3−ジヒドロ−2,2−ジメチルベンゾフラン−7−イルオキシカルボニル(メチル)アミノチオ]−N−イソプロピル−β−アラニナ−ト(ベンフラカルブ)、(RS)−α−シアノ−3−フェノキシベンジル=(RS)−2,2−ジクロロ−1−(4−エトキシフェニル)シクロプロパンカルボキシラート(シクロプロトリン)、1−ナフチル−N−メチルカーバメート(NAC)、O,O−ジエチル−O−(3−オキソ−2−フェニル−2H−ピリダジン−6−イル)ホスホロチオエート(ピリダフェンチオン)、O,O−ジメチル−O−3,5,6−トリクロロ−2−ピリジルホスホロチオエート(クロルピリホスメチル)、O,O−ジメチル−S−(N−メチルカルバモイルメチル)ジチオホスフェート(ジメトエート)、O,S−ジメチル−N−アセチルホスホロアミドチオエート(アセフェート)、エチルパラニトロフェニルチオノベンゼンホスホネート(EPN)、1,3−ビス(カルバモイルチオ)−2−(N,N−ジメチルアミノ)プロパン塩酸塩(カルタップ)、5−ジメチルアミノ−1,2,3−トリチアンシュウ酸塩(チオシクラム)、S,S’−2−ジメチルアミノトリメチレン=ジ(ベンゼンチオスルホナート)(ベンスルタップ)、2−タ−シャリ−ブチルイミノ−3−イソプロピル−5−フェニル−1,3,5,6−テトラヒドロ−2H−1,3,5−チアジアジン−4−オン(ブプロフェジン)、1,1’−イミニオジ(オクタメチレン)ジグアニジニウム=トリアセタート(グアザチン)、(RS)−α−シアノ−3−フェノキシベンジル=(S)−2−(4−ジフルオロメトキシフェニル)−3−メチルブチラート(フルシトリネート)、ジメチルエチルスルフィニルイソプロピルチオホスフェート(ESP)、1−(6−クロロ−3−ピリジルメチル)−N−ニトロイミダゾリジン−2−イリデンアミン(イミダクロプリド)、4−[(6−クロロ−3−ピリジルメチル)(2,2−ジフルオロエチル)アミノ]フラン−2(5H)−オン(フルピラジフロン)、(E)−1−(2−クロロ−1,3−チアゾール−5−イルメチル)−3−メチル−2−ニトログアニジン(クロチアニジン)、3−ブロモ−N−[4−クロロ−2−メチル−6−(メチルカルバモイル)フェニル]−1−(3−クロロピリジン−2−イル)−1H−ピラゾール−5−カルボキサミド(クロラントラニリプロール)などが挙げられ、植物成長調節剤としては、4’−クロロ−2’−(α−ヒドロキシベンジル)イソニコチンアニリド(イナベンフィド)、(2RS,3RS)−1−(4−クロロフェニル)−4,4−ジメチル−2−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)ペンタン−3−オール(パクロブトラゾール)、(E)−(S)−1−(4−クロロフェニル)−4,4−ジメチル−2−(1H−1,2,4−トリアゾ−ル−1−イル)ペンタ−1−エン−3−オール(ウニコナゾール)、6−(N−ベンジルアミノ)プリン(ベンジルアミノプリン)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの農薬活性成分は単独、または2種以上を混合して用いることができる。農薬活性成分の配合割合の合計は、最終的に農薬粒状組成物100重量部に対して、通常0.01重量部〜50重量部であり、好適には0.1重量部〜20重量部である。
【0019】
更に、前記造粒粒状物には、必要により、界面活性剤、バインダーおよび無機担体が配合される。このうち、界面活性剤としては、例えば、ポリエチレングリコール高級脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンアリールフェニルエーテル、ソルビタンモノアルキレート等のノニオン性界面活性剤、アルキルアリールスルホン酸塩、ジアルキルスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキル燐酸エステル塩、アルキルアリール硫酸エステル塩、アルキルアリール燐酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸塩およびその縮合物、リグニンスルホン酸塩、アクリル酸とイタコン酸の共重合物あるいはメタアクリル酸とイタコン酸の共重合物、マレイン酸とスチレンの共重合物、マレイン酸とジイソブチレンの共重合物およびこれらのアルカリ金属塩等のポリカルボン型高分子活性剤、ポリオキシエチレンアリールフェニルエーテル燐酸エステル塩、ポリオキシエチレンアリールフェニルエーテル硫酸エステル塩等のアニオン性界面活性剤等が挙げられる。この界面活性剤が通常配合される量としては、0.1重量部〜5重量部であるが、特に限定されない。
【0020】
また、造粒粒状物に配合されるバインダーとしては、例えば、カルボキシメチルセルロース金属塩、ポリビニルアルコール、アルファー化デンプン、デキストリン、キサンタンガム、グアシードガム、蔗糖、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸金属塩等が挙げられ、通常配合される量は、0.1重量部〜5重量部であるが、特に限定されない。更に、造粒粒状物に配合される無機担体としては、特に限定されるものではないが、例えば、クレー類、炭酸カルシウム、タルク、珪藻土、ゼオライト、アタパルジャイト、石膏、陶石等が挙げられる。
【0021】
上記した造粒粒状物は、前記したように塑性樹脂類および疎水性微粉末によりその表面が被覆し、本発明の農薬粒状組成物とすることができる。
【0022】
本発明において、造粒粒状物を被覆するために用いることのできるワックス類は、常温(25℃)では固体で、加熱していくに従い軟化、溶融する疎水性物質であり、その融点が50℃〜120℃のものが好ましい。このようなワックス類としては、単一の脂肪酸類並びに植物から産出される複数の脂肪酸の混合物、またはそれらのエステル類、更にはジアルキルケトン類等、熱可塑性を有する物質であれば使用可能であるが、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、モンタン酸、ジアルキルケトン、カルナバワックス、キャンデリラワックス、ライスワックス等より選ばれる1種または2種以上の混合が望ましい。これらのワックス類の配合量は、農薬粒状組成物100重量部に対して、通常は0.5重量部から10重量部であり、好ましくは2重量部から8重量部である。0.5重量部以下の場合、農薬粒状組成物の表層全体を被覆することが困難であり、一方、10重量部以上の場合、ワックス類が農薬活性成分の溶出を阻害し、農薬活性成分の全量が溶出できない恐れがある。
【0023】
また、本発明において造粒粒状物の被覆に用いる疎水性微粉末としては、疎水性のホワイトカーボンや、酸化アルミニウムの微粉等を挙げることができるが、疎水性のホワイトカーボン、特に本発明においては粒子が小さい方が好ましく、気相法にて製造された疎水性のホワイトカーボンが好ましい。また、これらの疎水性微粉末の平均粒径は、通常5μm以下、好ましくは2μm以下、さらに好ましくは1μm以下である。これらの疎水性微粉末の配合量は、農薬粒状組成物100重量部に対して、通常は0.1重量部から10重量部、望ましくは0.5重量部から5重量部である。
【0024】
前記造粒粒状物を、ワックス類および疎水性微粉末で被覆するには、次の如くすれば良い。すなわち、造粒粒状物に所定量のワックス類を加え、これをワックス類の融点(例えば、50℃〜120℃)以上に加熱しながら混合し、溶融したワックス類で造粒粒状物の表面に均一に被覆する。次いでこれに、所定量の疎水性微粉末を加えて更に混合し、ワックス類で被覆された造粒粒状物の表面に均一に被覆する。疎水性微粉末の被覆が終わった後、加熱を止めるか、加熱を行っていた混合機より被覆された造粒粒状物を取り出し、常温に戻るまで冷却して、本発明の農薬粒状組成物と得る。
【0025】
次に、本発明農薬粒状組成物の好ましい製造方法の一態様を示せば次の通りである。すなわち、少なくとも1種以上の農薬活性成分、粉状の無機担体、界面活性剤、バインダーを含有する粉状農薬組成物に水を加えて混練し、これを孔径が0.5〜1.5mmの細孔を有するスクリーンより押し出し造粒する。次いで、乾燥して得た造粒粒状物に、融点が50℃〜120℃のワックス類を加えて融点以上に加温してワックス類を融解させ、混合被覆後、疎水性微粉末を加えて更に混合被覆する、農薬粒状組成物の製造方法である。
【0026】
以上のようにして得られる本発明の農薬粒状組成物は、水稲を水稲育苗箱に播種するのと同時に散布することで、水稲へ農薬を投与することができる。また、予め農薬粒状組成物を水稲育苗箱用培土に散布し、次いでこの培土中に水稲を播種することでも、水稲へ農薬を投与することができる。
【0027】
本発明の農薬粒状組成物が、薬害の問題を引き起こすことなく、長い残効性を有する農薬の効果を得られる理由は、農薬成分を含む、造粒粒状物の表面をワックス類と疎水性微粉末とで被覆することによるものと考えられる。
【0028】
すなわち、疎水性のワックス類が造粒粒状物の表面を被覆することで水が存在する環境下での農薬活性成分を含む造粒粒状物の崩壊を遅らせる作用を奏するが、これと同時に、当該ワックス類と一緒に被覆する疎水性微粉末がその周囲に空気を保持することで、製剤に付着あるいはこれを包み込む空気層を形成する。
【0029】
一般に、疎水性微粉末は、水に濡れる状態が熱力学的に不安定であるため、水中に没する際には、疎水性微粉末はその表面に空気を吸着し、水中でも疎水性微粉末と水とが直接接触しない存在形態を保つ性質を有する。これを本願発明の農薬粒状組成物についてみると、造粒粒状物の表面が疎水性微粉末で被覆されているため、該農薬粒状組成物が水中に没したときに、この疎水性微粉末が空気を吸着する結果として、該農薬粒状組成物の表面に空気の層が形成される。このことによって、造粒粒状物と水の接触が制限されることとなる。そして、農薬活性成分の溶出は、造粒粒状物と水の接触する部分で起こるのであるから、この造粒粒状物と水の接触の制限は、農薬粒状組成物からの農薬活性成分の溶出を抑制することになるのであり、このような現象は従来の技術では使用されることはなかったことである。
【0030】
しかし、造粒粒状物と水の接触を完全に遮断した場合には、農薬活性成分の溶出が全く起こらなくなってしまうので、農薬粒状組成物中の農薬活性成分に所望の効果を発揮させるためには、造粒粒状物と水の接触を制限しつつも、若干量の水は造粒粒状物に接触できるような設計でなければならない。そのためには、農薬粒状組成物が水中に没した時に形成される空気の層が適切な体積となるように調節し、造粒粒状物の表面のある程度の部分は水と接触する必要がある。ここで言う適切な体積の例は、後記の通りである。
【0031】
なお、疎水性微粉末による造粒粒状物の被覆は、単独であっても農薬粒状組成物からの農薬活性成分の溶出を抑制しうるが、物理的にはやや脆弱ともいえる機構である。そこで、施用から長期間にわたって効果を発揮することが期待される徐放性農薬粒状組成物においては、疎水性微粉末による溶出制御手段の他に、造粒粒状物が別の溶出制御手段を備えていることが望ましい。
【0032】
このような別の溶出制御手段として、公知の方法を任意に用いることができるが、特に、本発明のようにワックス類で造粒粒状物を被覆する方法が好適である。ワックス類で被覆した造粒粒状物を、さらに疎水性微粉末で被覆した農薬粒状組成物は、機構の異なる2つの溶出制御手段が相補的に機能し、安定的に長期間、農薬活性成分の徐放性を維持することができ、薬害を引き起こすことなく長期間の徐放性が得られると考えられている。
【0033】
上記のように、本発明の農薬粒状組成物は、これを水中に没した時、一定量の空気層を纏う(付着ないし包み込む)ことが特徴である。このような農薬粒状組成物を水中に没した時に付着する空気量(以下、「付着空気量」ということがある)は、例えば、農薬粒状組成物50gを計量し、水温20℃の水中に沈めた後、少量の界面活性剤を注入して、水中で農薬粒状組成物から発生する気泡を捕集し、さらにメスシリンダー等に導入して、該気泡の集合としてなる気相の体積を測定することにより求めることができる。
【0034】
本発明の農薬粒状組成物において、農薬活性成分による薬害を抑え、更に所期の防除効果を得るための好ましい付着空気量(農薬粒状組成物50g当たり)は、大気圧下、20℃で5〜25mLであり、さらに好ましくは10〜20mLである。一方、付着空気量(農薬粒状組成物50g当たり)が5mLを下回る場合は、播種と同時に組成物を処理する場合、農薬活性成分が過剰に稲に吸収され、農薬活性成分の種類によっては薬害が生じる場合がある。一方、付着空気量(農薬粒状組成物50g当たり)が25mLを超える場合は、稲の農薬活性成分の吸収が過剰に制限され、農薬活性成分の所期の防除効果が発揮されない虞がある。
【実施例】
【0035】
以下、本発明を実施例および試験例にて詳細に説明するが、本発明はこれら実施例等に何ら制約されるものではない。尚、以下の実施例において、部は重量部を表す。
【0036】
実 施 例 1
トリシクラゾール4.3部、アルファー化デンプン3.0部、ドデシルベンゼンスルホン酸塩0.2部およびクレー92.5部を混合し、更に少量の水を加えて混練した後、1.2mmの穴をあけたスクリーンから押し出して造粒した。得られた造粒物を60℃の温風で乾燥後、目開き1.0mmと1.7mmの篩の間の大きさの粒を篩分し、造粒粒状物とした。
【0037】
得られた造粒粒状物92.5部、カルナバワックス5.0部を外壁がジャケット構造の混合機で混合した。十分に混合した後、混合機のジャケット部にスチームを通し、内部の混合物の温度が85〜90℃となるようにスチームの圧を調整しながら更に5分間混合し、溶融したカルナバワックスが造粒粒状物に均一に被覆されたのを確認した後、疎水性ホワイトカーボン(アエロジルR−972)2.5部を加えて更に十分に混合して粒の表面に均一に被覆した。その後、混合機より組成物を取り出し、室温まで冷却してカルナバワックスを固化させ、本発明の水稲育苗箱処理用農薬粒状組成物を得た。
【0038】
実 施 例 2
トリシクラゾール4.6部、アルファー化デンプン3.0部、ドデシルベンゼンスルホン酸塩0.2部およびクレー92.2部を混合し、更に少量の水を加えて混練した後、1.2mmの穴をあけたスクリーンから押し出して造粒した。得られた造粒物を60℃の温風で乾燥後、目開き1.0mmと1.7mmの篩の間の大きさの粒を篩分し、造粒粒状物とした。
【0039】
得られた造粒粒状物87.5部、ミリスチン酸8.0部を外壁がジャケット構造の混合機で混合した。十分に混合した後、混合機のジャケット部にスチームを通し、内部の混合物の温度が85〜90℃となるようにスチームの圧を調整しながら更に混合し、溶融したミリスチン酸が造粒粒状物に均一に被覆されたのを確認した後、疎水性ホワイトカーボン(アエロジルR−972)4.5部を加えて更に十分に混合して粒の表面に均一に被覆した。その後、混合機より組成物を取り出し、室温まで冷却してミリスチン酸を固化させて、本発明の水稲育苗箱処理用農薬粒状組成物を得た。
【0040】
実 施 例 3
トリシクラゾール4.4部、アルファー化デンプン3.0部、ドデシルベンゼンスルホン酸塩0.2部およびクレー92.4部を混合し、更に少量の水を加えて混練した後、1.2mmの穴をあけたスクリーンから押し出して造粒した。得られた造粒物を60℃の温風で乾燥後、目開き1.0mmと1.7mmの篩の間の大きさの粒を篩分し、造粒粒状物とした。
【0041】
得られた造粒粒状物91.0部、モンタン酸エステルワックス5.0部を外壁がジャケット構造の混合機で混合した。十分に混合した後、混合機のジャケット部にスチームを通し、内部の混合物の温度が85〜90℃となるようにスチームの圧を調整しながら更に混合し、溶融したモンタン酸エステルワックスが造粒粒状物に均一に被覆されたのを確認した後、疎水性酸化アルミニウム(アルミニウムオキシドC)4.0部を加えて更に十分に混合して粒の表面に均一に被覆した。その後、混合機より組成物を取り出し、室温まで冷却してモンタン酸エステルワックスを固化させて、本発明の水稲育苗箱処理用農薬粒状組成物を得た。
【0042】
実 施 例 4
イミダクロプリド2.1部、アルファー化デンプン3.0部、ドデシルベンゼンスルホン酸塩0.2部およびクレー94.7部を混合し、更に少量の水を加えて混練した後、1.0mmの穴をあけたスクリーンから押し出して造粒した。得られた造粒物を60℃の温風で乾燥後、目開き1.0mmと1.7mmの篩の間の大きさの粒を篩分し、造粒粒状物とした。
【0043】
得られた造粒粒状物96.0部、ジアルキルケトン2.5部を外壁がジャケット構造の混合機で混合した。十分に混合した後、混合機のジャケット部にスチームを通し、内部の混合物の温度が85〜90℃となるようにスチームの圧を調整しながら更に混合し、溶融したジアルキルケトンが造粒粒状物に均一に被覆されたのを確認した後、疎水性ホワイトカーボン(アエロジルR−972)1.5部を加えて更に十分に混合して粒の表面に均一に被覆した。その後、混合機より組成物を取り出し、室温まで冷却してジアルキルケトンを固化させて、本発明の水稲育苗箱処理用農薬粒状組成物を得た。
【0044】
実 施 例 5
イミダクロプリド2.1部、アルファー化デンプン3.0部、ドデシルベンゼンスルホン酸塩0.2部およびクレー94.7部を混合し、更に少量の水を加えて混練した後、1.0mmの穴をあけたスクリーンから押し出して造粒した。得られた造粒物を60℃の温風で乾燥後、目開き1.0mmと1.7mmの篩の間の大きさの粒を篩分し、造粒粒状物とした。
【0045】
得られた造粒粒状物96.0部、カルナバワックス2.5部を外壁がジャケット構造の混合機で混合した。十分に混合した後、混合機のジャケット部にスチームを通し、内部の混合物の温度が85〜90℃となるようにスチームの圧を調整しながら更に混合し、溶融したカルナバワックスが造粒粒状物に均一に被覆されたのを確認した後、疎水性ホワイトカーボン(アエロジルR−972)1.5部を加えて更に十分に混合して粒の表面に均一に被覆した。その後、混合機より組成物を取り出し、室温まで冷却してカルナバワックスを固化させて、本発明の水稲育苗箱処理用農薬粒状組成物を得た。
【0046】
比 較 例 1
トリシクラゾール4.0部、アルファー化デンプン3.0部、ドデシルベンゼンスルホン酸塩0.2部、カルナバワックス5.0部、疎水性ホワイトカーボン(アエロジルR−972)2.5部およびクレー85.3部を混合し、更に少量の水を加えて混練した後、1.2mmの穴をあけたスクリーンから押し出して造粒した。得られた造粒物を60℃の温風で乾燥後、室温まで冷却し、水稲育苗箱処理用農薬粒状組成物を得た。
【0047】
比 較 例 2
トリシクラゾール4.3部、アルファー化デンプン3.0部、ドデシルベンゼンスルホン酸塩0.2部、およびクレー92.5部を混合し、更に少量の水を加えて混練した後、1.2mmの穴をあけたスクリーンから押し出して造粒した。得られた造粒物を60℃の温風で乾燥後、目開き1.0mmと1.7mmの篩の間の大きさの粒を篩分し、造粒粒状物とした。
【0048】
得られた造粒粒状物92.5部、カルナバワックス5.0部を外壁がジャケット構造の混合機で混合した。十分に混合した後、混合機のジャケット部にスチームを通し、内部の混合物の温度が85〜90℃となるようにスチームの圧を調整しながら更に混合し、溶融したカルナバワックスが造粒粒状物に均一に被覆されたのを確認した後、非疎水性ホワイトカーボン(カープレックス#80)2.5部を加えて更に十分に混合して粒の表面に均一に被覆した。その後、混合機より組成物を取り出し、室温まで冷却してカルナバワックスを固化させて、水稲育苗箱処理用農薬粒状組成物を得た。
【0049】
比 較 例 3
イミダクロプリド2.0部、アルファー化デンプン3.0部、ドデシルベンゼンスルホン酸塩0.2部、ジアルキルケトン2.5部、疎水性ホワイトカーボン(アエロジルR−972)1.5部およびクレー90.8部を混合し、更に少量の水を加えて混練した後、1.0mmの穴をあけたスクリーンから押し出して造粒した。得られた造粒物を60℃の温風で乾燥後、室温まで冷却し、水稲育苗箱処理用農薬粒状組成物を得た。
【0050】
試 験 例 1
水中で農薬粒状組成物に付着する空気量の測定:
実施例1〜5、比較例1〜3の農薬粒状組成物50gを計量し、100mLの水温20℃の水道水を入れた200mLのビーカーに一気に投入した。その後、当該200mLビーカーを、15L容のプラスチック製容器に入れた水温20℃の水道水10L中に静かに沈めた。次に、300mLビーカーを、同じプラスチック製容器の水中に空気が入らないように静め、そのまま当該200mLビーカーに被せた。
【0051】
次に、界面活性剤水溶液(ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩5%とジアルキルスルホサクシネートナトリウム塩20%の混合水溶液)2mLを、10mL駒込ピペットを用いて当該200mLビーカー内の農薬粒状組成物に静かに注入した。この時、駒込ピペットが入るように、当該200mLビーカーに被せた300mLビーカーを少しずらした。界面活性剤水溶液を注入して発生する気泡を、被せた300mLビーカーで捕集した。更に、200mLビーカーに振動を与えたり、中の農薬粒状組成物をガラス棒などで攪拌して付着した気泡を外し、すべて300mLビーカーで捕集した。
【0052】
次に、50mLメスシリンダーを気泡が入らないようにプラスチック製容器内に沈め、300mLビーカーを傾けて捕集した気泡をすべて100mLメスシリンダーに移し、捕集した気泡の体積を測定した。以上の操作は20℃に設定した恒温室で行った。結果を表1に示す。
【0053】
【表1】
【0054】
試 験 例 2
播種と同時に散布処理した場合の薬害の有無:
30cm×60cmの育苗箱に水稲の籾を播種し、実施例1〜5および比較例1〜3の農薬粒状組成物を育苗箱当たり50g処理した。その後覆土して、慣行の方法に従って稲の苗が2.5葉期になるまで育苗し、発芽率および薬害の発生程度を調べた。結果を表2に示す。
【0055】
【表2】
【0056】
各実施例の農薬粒状組成物は発芽率、薬害の程度は無処理とほぼ同等であり、問題なかったのに対し、比較例では発芽率が劣り、その後の成長において許容外の薬害が認められた。
【0057】
試 験 例 3
播種と同時に散布処理した場合のいもち病防除効果:
30cm×60cmの育苗箱に水稲の籾を播種し、その後覆土前に、実施例1〜3および比較例1〜2の農薬粒状組成物を育苗箱当たり50g処理した。その後覆土して、慣行の方法に従って稲の苗が2.5葉期になるまで育苗し、代かきをした1/10000aポットに2株ずつ深度2cmで移植した。
【0058】
移植14日および42日後にいもち病胞子懸濁液(5×10
5個/mL)を噴霧接種した。接種後6日後に病斑数を計測し、下記式により防除価を算出した。この結果を表3に示す。
【0059】
防除価=[1−(薬剤処理区の病斑数/無処理区の病斑数)]×100
【0060】
【表3】
【0061】
各実施例の農薬粒状組成物は高いいもち病防除効果が認められた。一方、比較例では薬害が強く、病害防除効果は判然としなかった。
【0062】
試 験 例 4
稲育苗箱培土に散布処理した場合のトビイロウンカの防除効果:
30cm×60cmの育苗箱に充填する培土に対し、実施例4,5および比較例3の農薬粒状組成物を50g加えて均一に混合処理し、この培土を育苗箱に充填後、潅水後水稲の籾を播種した。その上に農薬粒状組成物を含まない培土を覆土後、慣行の方法に従って稲の苗が2.5葉期になるまで育苗し、代かきをした1/10000aポットに2株ずつ深度2cmで移植した。
【0063】
移植14日および30日後に金網で覆い、トビイロウンカ雌成虫を5頭ずつポットに放した後、5日後に調査し、死虫率を調べた。結果を表4に示す。
【0064】
【表4】
【0065】
各実施例は高い殺虫効果が長期間認められた。一方、比較例はトビイロウンカは死亡していたものの、薬害が強く薬剤の殺虫効果で死亡したか餓死したか判別ができず、効果は判然としなかった。